JP2014210822A - 抗ウイルス剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】センダングサ属植物酵素処理物は宿主細胞とHSVの吸着を阻害し、更に感染後宿主細胞内でのHSV増殖を抑制するなど複数の作用点があり、HSVの薬剤耐性株に対して高い効果を奏することから、センダングサ属植物酵素処理物を有効成分とする、薬剤耐性単純ヘルペスウイルスに対する抗HSV剤におり、課題が解決される。
【選択図】なし
Description
一方、ビデンス・ピローサ等のセンダングサ属植物は昔から身近にあるハーブであり、干した地上部分を煎じたものが飲用に供されている。ビデンス・ピローサの抗炎症作用については特許文献1に報告がある。
1.センダングサ属植物酵素処理物を有効成分として含む、薬剤耐性単純ヘルペスウイルスに対する抗単純ヘルペスウイルス剤。
2.薬剤耐性単純ヘルペスウイルスが、アシクロビル耐性株、アシクロビル・ホスホノ酢酸多剤耐性株、ガンシクロビル耐性株、ペンシクロビル耐性株、ピリブジン耐性株、シドフォビル耐性株、からなる群より選択される、上記1記載の抗単純ヘルペスウイルス剤。
3.センダングサ属植物がビデンス・ピローサ類である、上記1または2に記載の抗単純ヘルペスウイルス剤。
4.センダングサ属植物を処理する酵素が、多糖類加水分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種である、上記1〜3のいずれか一に記載の抗単純ヘルペスウイルス剤。
5.センダングサ属植物酵素処理物の含有量(乾燥固形分換算)が0.001〜5g/kg体重/日となるように投与されることを特徴とする、上記1〜4のいずれか一に記載の抗単純ヘルペスウイルス剤。
6.更にアシクロビル、ガンシクロビル、ペンシクロビル、ピリブジン、からなる群より選択される抗単純ヘルペスウイルス剤を有効成分として含む、上記1〜5のいずれか一に記載の抗単純ヘルペスウイルス剤。
7.センダングサ属植物酵素処理物からなる第一の抗単純ヘルペスウイルス剤と、アシクロビル、ガンシクロビル、ペンシクロビル、ピリブジン、シドフォビルからなる群より選択される少なくとも一種である第二の抗単純ヘルペスウイルス剤とを有効成分として含み、第二の抗単純ヘルペスウイルス剤の投与量が、第二の抗単純ヘルペスウイルス剤を単独で使用する際の投与量範囲の1/2〜1/100の投与量であることを特徴とする、抗単純ヘルペスウイルス剤。
8.第二の抗単純ヘルペスウイルス剤がアシクロビルであり、アシクロビルの投与量が0.5〜25mg/kg/日である、上記7記載の抗単純ヘルペスウイルス剤。
Bidens pilosa L. var. bisetosa Ohtani et S.Suzuki(アワユキセンダングサ)
Bidens pilosa L. f. decumbens Scherff (ハイアワユキセンダングサ)
Bidens pilosa L. var. radiata Scherff (タチアワユキセンダングサ、ハイアワユキセンダングサを含むこともある)
Bidens pilosa L. var. radiata Schultz Bipontinus (シロノセンダングサ、オオバナノセンダングサ)
Bidens biternata Lour. Merrill et Sherff(センダングサ)
Bidens bipinnata L.(コバノセンダングサ、センダングサ)
Bidens cernua L.(ヤナギタウコギ)
Bidens frondosa L.(アメリカセンダングサ、セイタカタウコギ)
Bidens maximowicziana Oett(羽叶鬼針草)
Bidens parviflora Willd(ホソバノセンダングサ)
Bidens radiata Thuill. var. pinnatifida (Turcz.)Kitamura(エゾノタウコギ)
Bidens tripartita L.(タウコギ)
上記センダングサ属植物は、生で用いても良いが、乾燥物、あるいは加工乾燥物でもよい。通常、生の植物を天日乾燥または熱風(例えば70〜80℃)乾燥したもの、又は蒸気で、例えば1時間〜1時間半程度蒸した後、乾燥したものを使用する。また、特開2001−178390の方法により加工乾燥した物を用いてもよい。
本発明において酵素はAsp.nigerなどの菌類由来のものを初めとして様々な由来のものを使用することができる。また、酵素を含有する微生物の培養液、麹などの培養物そのもの、あるいはそれらの抽出物を用いてもよい。
酵素を作用させた後、抽出に使用される溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン等のアルコール類、並びにこれらの含水物、アセトン、エチルメチルケトン、クロロホルム、塩化メチレン及び酢酸エチル、並びにそれらの含水物を用いてもよい。また、上記溶媒を二種以上含む混合物であってもよい。溶媒の添加量は、例えば用いる植物の合計乾燥重量1kgに対して1L〜100L程度使用することができる。本発明において特に水抽出が好ましい。
抽出液は必要により溶媒を留去濃縮して濃縮物または固形物(乾燥物)としてもよい。
濾液または抽出液を濃縮し、乾燥することにより、本発明のセンダングサ属植物の酵素処理物を得ることができる。
経口で投与する場合には、センダングサ属植物酵素処理物固形分に換算して、0.001〜5g/kg体重/日程度投与することが好ましく、0.01〜2g/kg体重/日程度投与することが更に好ましい。
本発明の抗HSV剤は、ウイルス感染後のみではなく、ウイルス感染前に接種することによりウイルス感染を予防的に防ぐことができる。
経皮投与する場合には、例えば、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、溶液、チック剤等の剤形に形成して皮膚に適用してもよい。
より具体的には、アシクロビル、アシクロビル−ホスホネート、ブリブジン、ブシクロビル、シドホビル、デスシクロビル、エドクスウジン、フアムシクロビル、ガンシクロビル、ガンシクロビル−ホスホネート、等が挙げられる。
薬剤製造例
ビデンス・ピローサ(Bidens pilosa L. var. radiate Sch)の加工乾燥物(特開2001−178390の方法により加工した乾燥物)100kgを1800Lの熱水に2時間浸漬後、pH4.5、50℃に調整してセルラーゼ(阪急バイオインダストリー(株)のセルロシンAC−40)とペクチナーゼ(セルロシンPE−60)各200gを添加して攪拌後、一夜置いた。その後、90℃で1時間加熱して酵素を失活させ、濾過して固形物を除去し、濾液を減圧濃縮した。減圧濃縮物に、デキストリン8kgを添加混合し、噴霧乾燥した。得られた乾燥粉末物は40kgであった。以下、これを“BP酵素処理物”と呼ぶ。なお、以下の実験において、BP酵素処理物の量を述べる場合には、乾燥粉末中のビデンス・ピローサの固形物量に換算した値を述べる。例えば、「BP酵素処理物粉末1g」とは、「デキストリンを含まないビデンス・ピローサ酵素処理物の乾燥固形物に換算した1g」に相当し、デキストリンを含む粉末の1.25gに相当する。
BP酵素処理物粉末単体に毒性がないことを確認するため、以下の実験を行った。
Vero細胞とRaw264.7細胞をそれぞれ1×105/mlの濃度に調整し、96穴プレートに50μl入れ、炭酸ガスインクベーター内で24時間培養した。培養後BP酵素処理物粉末を培養液(Vero細胞は10%FBS添加イーグルMEM培養液、Raw264.7細胞は10%FBS添加ダルベッコMEM培養液)で各濃度に調整し、50μlずつ入れた。炭酸ガスインキュベーターで72時間培養後、WST−8法により細胞毒性を測定した。
WST−8法は、高感度水溶性ホルマザンを生成する新規テトラゾリウム塩WST−8(2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム,一ナトリウム塩)を発色基質として用いる方法である(M. Ishiyama, Y. Miyazono, K. Sasamoto, Y. Ohkura, K. Ueno, Talanta Volume 44, Issue 7, July 1997, Pages 1299-1305)。WST−8は細胞内脱水素酵素により還元され、水溶性のホルマザンを生成する。このホルマザンの450 nmの吸光度を測定することにより、細胞毒性を計測することができる。結果を図1に示す。
BP酵素処理物粉末は2mg/ml程度の濃度まで殆ど細胞毒性は見られなかった。
Vero細胞6×105/Wellを6穴プレートに入れ、炭酸ガスインキュベーターで24時間培養した後、培地を除去しPBS(リン酸緩衝液)で洗浄後EMEM培地を1ml入れた。また、PBSで各濃度に調整したBP酵素処理物粉末と培地で希釈したヘルペスウイルス(HSV−1:HF株、HSV−2:savage株)(各々1×106PFU/ml)を37℃で1時間反応させた。これを上記Vero細胞に0.1ml感染させた。4℃で1時間感染後PBSで洗浄し、0.5%メチルセルロース添加EMEM培地を2ml/well入れ、72時間炭酸ガスインキュベーターで培養した。これをメタノールで固定し、0.5%クリスタルバイオレットで染色し、水洗後プラーク数を測定した。BP酵素処理物を添加していないものを100%とし、各濃度の感染率を比較した。結果を図2に示す。
図2の結果から明らかなとおり、本発明の抗HSV剤は、単純ヘルペスウイルスに直接作用して感染力を不活化し、Vero細胞との吸着を阻害する。
本発明の抗HSV剤がウイルス粒子に直接作用する以外に抗HSV作用を持つかどうか調べるためにtime−of−addition実験を行った。この実験はウイルスのライフサイクルにあわせて本発明の抗HSV剤を作用させ、それぞれの感染価を比較することで作用点を解明する方法である。
BP酵素処理物の作用点を(1)細胞前処理、(2)吸着時、(3)侵入時、(4)増殖時、(5)全過程とした。Vero細胞6×105/Wellを6穴プレートに入れ、炭酸ガスインキュベーターで24時間培養した後、培地を除去しPBSで洗浄後EMEM培地を0.9ml入れた。(1)細胞前処理と(5)全過程にEMEM培地で各濃度に調整したBP酵素処理物溶液を0.1ml加え、37℃で1時間炭酸ガスインキュベーターに静置した。(2)と(3)と(4)にはEMEM培地を0.1ml加えた。すべてのプレートをPBSで洗浄後、EMEM培地を0.8ml入れた。すべてのプレートに1×104PFU/mlに調整したウイルス溶液(HSV−1:HF株、HSV−2:savage株)を0.1ml加え、(2)吸着時と(5)全過程にEMEM培地で各濃度に調整したBP酵素処理物溶液を0.1ml、(1)と(3)と(4)EMEM培地を0.1ml加え、4℃で1時間冷蔵庫内で静置した。すべてのプレートをPBSで洗浄後、EMEM培地を0.9ml入れた。(3)侵入時と(5)全過程にEMEM培地で各濃度に調整したBP酵素処理物溶液を0.1ml加え、37℃で1時間炭酸ガスインキュベーターに静置した。(1)と(2)と(4)にはEMEM培地を0.1ml加えた。すべてのプレートをPBSで洗浄後、EMEM培地を0.9ml入れた。(4)増殖時と(5)全過程にEMEM培地で各濃度に調整したBP酵素処理物溶液を0.1ml、(1)と(2)と(3)EMEM培地を0.1ml入れた。すべてのプレートに1%メチルセルロース添加EMEM培地を1ml加え、37℃で72時間炭酸ガスインキュベーターに静置した。培養後すべてのプレートをPBSで洗浄しメタノールで固定し、0.5%クリスタルバイオレットで染色し、水洗後プラーク数を測定した。
HSV−1,2が細胞に吸着時、侵入時、増殖時でBP酵素処理物粉末はHSVの感染を抑制した。また細胞に1時間BP酵素処理物粉末を前処理した場合は抗HSV作用は見られなかった(図3)。
この結果は本発明の抗HSV剤の抗HSV作用が、ウイルスに直接作用しているだけでなく、感染後の増殖についても関与していることを示唆している。
BP酵素処理物粉末のウイルス増殖時の抗HSV作用について詳細に検討するため、HSVを細胞に感染させた直後からBP酵素処理物粉末を作用させ、一定時間ごとに培養上清と培養細胞内でのウイルスの感染価を比較した。この実験ではウイルスが細胞に感染し、1回の増殖サイクルを経て細胞外に放出されるまでを調べることができる。
Vero細胞4×105/Wellを24穴プレートに入れ、炭酸ガスインキュベーターで24時間培養した後、培地を除去しPBSで洗浄後EMEM培地を0.9ml入れた。すべてのプレートに4×105PFU/mlに調整したウイルス溶液(HSV−1:HF株)を0.1ml加え、4℃で1時間冷蔵庫内で感染させた。すべてのプレートをPBSで洗浄し、EMEM培地を0.9mlとEMEM培地で各濃度に調整したBP酵素処理物溶液を0.1ml加え、37℃で炭酸ガスインキュベーター内で培養した。0、3、6、9、12、18、24時間後に培養上清を回収し、ウェルには新たにEMEM培地を1ml入れた。培養上清は3000rpm15分遠心しウイルス溶液とした。細胞はプレートごと3回凍結・融解を繰り返し回収後3000rpm15分遠心しウイルス溶液とした。
Vero細胞6×105/Wellを6穴プレートに入れ、炭酸ガスインキュベーターで24時間培養した後、培地を除去しPBSで洗浄後EMEM培地を0.9ml入れた。培養上清と細胞のウイルス溶液を0.1ml入れ、4℃で1時間冷蔵庫内で感染させた。すべてのプレートをPBSで洗浄後0.5%メチルセルロース添加EMEM培地を2ml/well入れ、72時間炭酸ガスインキュベーターで培養した。これをメタノールで固定し、0.5%クリスタルバイオレットで染色し、水洗後プラーク数を測定した。結果を図4に示す。
図4からわかるように、細胞外へのウイルス放出以前の段階でBP酵素処理物粉末はHSVの増殖を抑制した。
これらのことから、本発明の抗HSV剤の抗HSV作用は、ウイルスが細胞に吸着するときと、感染後細胞内で増殖するときの両方に働いていることが示唆された。
これまでの研究でマクロファージ様細胞(Raw264.7)においてBP酵素処理物粉末はNO産生を誘導することで免疫賦活作用を発揮することが明らかにされている。
Raw264.7細胞4×105/Wellを24穴プレートに入れ、炭酸ガスインキュベーターで24時間培養した後、培地を除去しPBSで洗浄後DMEM培地を0.9ml入れた。すべてのプレートに4×105PFU/mlに調整したウイルス溶液を0.1ml加え、4℃で1時間冷蔵庫内で感染させた。すべてのプレートをPBSで洗浄し、DMEM培地を0.9mlとDMEM培地で各濃度に調整したBP酵素処理物溶液を0.1ml加え、37℃で炭酸ガスインキュベーター内で培養した。24時間後、48時間後、72時間後に培養上清を回収し、ウェルには新たにDMEM培地を1ml入れた。培養上清は3000rpm15分遠心しウイルス溶液(HSV−1:HF株)とした。細胞はプレートごと3回凍結・融解を繰り返し回収後3000rpm15分遠心し、ウイルス溶液とした。Vero細胞6×105/Wellを6穴プレートに入れ、炭酸ガスインキュベーターで24時間培養した後、培地を除去しPBSで洗浄後EMEM培地を0.9ml入れた。培養上清と細胞のウイルス溶液を0.1ml入れ、4℃で1時間冷蔵庫内で感染させた。すべてのプレートをPBSで洗浄後0.5%メチルセルロース添加EMEM培地を2ml/well入れ、72時間炭酸ガスインキュベーターで培養した。これをメタノールで固定し、0.5%クリスタルバイオレットで染色し、水洗後プラーク数を測定した。
結果を図5に示す。
また同様の実験をBP酵素処理物溶液に代わりにNO合成阻害剤であるL−NAMEを用いて行った。培養上清中のNO量は阻害剤によって低下しているにも関わらず、抗HSV作用は変化が見られなかったことからBP酵素処理物粉末の抗HSV作用にNOは関与していないことを示唆している。結果を図6に示す。
Vero細胞6×105/Wellを6穴プレートに入れ、炭酸ガスインキュベーターで24時間培養した後、培地を除去しPBSで洗浄後EMEM培地を0.8ml入れた。
EMEM培地で1×104PFU/mlに調整したウイルス溶液(野生型HSV−1株:
7401H株、アシクロビル耐性HSV−1株:TK-HSV-1、アシクロビル・酢酸多剤耐性HSV−1株:AprHSV-1)、を0.1mlとEMEM培地で各濃度に調整したBP酵素処理物溶液を0.1ml加え、4℃で1時間冷蔵庫内で感染させた。すべてのプレートをPBSで洗浄後、EMEM培地を0.9mlとEMEM培地で各濃度に調整したBP酵素処理物溶液を0.1ml入れた。すべてのプレートに1%メチルセルロース添加EMEM培地を1ml加え、37℃で72時間炭酸ガスインキュベーターに静置した。
培養後すべてのプレートをPBSで洗浄しメタノールで固定し、0.5%クリスタルバイオレットで染色し、水洗後プラーク数を測定した。結果を図7に示す。
BP酵素処理物は明らかに、薬剤耐性株(アシクロビル耐性HSV−1株:TK-HSV-1、アシクロビル・酢酸多剤耐性HSV−1株:AprHSV-1)に対して、アシクロビル、ホスホノ酢酸よりも強い効果を示した。
Vero細胞6×105/Wellを6穴プレートに入れ、炭酸ガスインキュベーターで24時間培養した後、培地を除去しPBSで洗浄後EMEM培地を0.8ml入れた。
EMEM培地で1×104PFU/mlに調整したウイルス溶液(HSV−1:HF株)を0.1mlとEMEM培地で各濃度(0.125,0.25,0.5,1.0mg/mL)に調整したBP酵素処理物溶液を0.1ml、EMEM培地で各濃度(1.25,2.5,5,10μg/mL)に調整したアシクロビル溶液を0.1ml加え、4℃で1時間冷蔵庫内で感染させた。すべてのプレートをPBSで洗浄後EMEM培地を0.8mlとEMEM培地で各濃度(0.125,0.25,0.5,1.0mg/mL)に調整したBP酵素処理物溶液を0.1ml、EMEM培地で各濃度(1.25,2.5,5,10μg/mL)に調整したアシクロビル溶液を0.1ml加えた。すべてのプレートに1%メチルセルロース添加EMEM培地を1ml加え、37℃で72時間炭酸ガスインキュベーターに静置した。培養後すべてのプレートをPBSで洗浄しメタノールで固定し、0.5%クリスタルバイオレットで染色し、水洗後プラーク数を測定した。結果を図8に示す。
図8の結果から明らかなとおり、アシクロビルと本発明の抗HSV剤を併用した場合、ウイルス感染を抑制することができた。
BP酵素処理物の構成成分の一つである、カフェ酸(Caffeic acid)とルチン(Rutin)について感染不活化による抗HSV作用を検討した。Vero細胞6×105/Wellを6穴プレートに入れ、炭酸ガスインキュベーターで24時間培養した後、培地を除去しPBS(リン酸緩衝液)で洗浄後EMEM培地を0.9ml入れた。
また、PBSで各濃度に調整したカフェ酸もしくはルチンとEMEM培地で希釈したヘルペスウイルス(HSV−1:HF株1×106PFU/ml)を37℃で1時間反応させた。これを先ほどのVero細胞に0.1ml感染させた。4℃で1時間感染後PBSで洗浄し、0.5%メチルセルロース添加EMEM培地を2ml/well入れ、72時間炭酸ガスインキュベーターで培養した。これをメタノールで固定し、0.5%クリスタルバイオレットで染色し、水洗後プラーク数を測定した。BP酵素処理物を添加していないものを100%とし、各濃度の感染率を比較した。結果を図10に示す。
この結果から、BP酵素処理物粉末の抗HSV作用はカフェ酸によることが示唆されたが、含有濃度からカフェ酸だけによるものではないことも示唆される。
マウスを対照群、BP酵素処理物粉末前投与群、BP酵素処理物粉末投与群、アシクロビル投与群の4群(各群6匹づつ)に分けて感染実験を行った。
使用したマウス:C57BL/6J 4週齢
使用したウイルス:7401H株(単純ヘルペスウイルス1型)
BP酵素処理物粉末投与量:1g/kg(マウス体重) 2回/日
アシクロビル投与量:5mg/kg(マウス体重) 2回/日
BP酵素処理物粉末前投与群は、ウイルス感染1週間前から投与を開始した。
C57BL/6jマウスにセボフレン麻酔後固定し、左側の後肢、腰部をハサミと除毛クリームで除毛処置を行った。除毛後27G注射針で乱切し、1×107 pfuのHSV−1(7401H株)を滴下、塗布することによりHSV−1経皮接種を行った。ウイルス接種後、帯状疱疹の発生をスコア化し、各群で比較した。病変のスコア化は報告されている方法(Takasaki et al.,Pain 86:95-101,2000)で行った。
対照群に比較してBP酵素処理物粉末前投与群、BP酵素処理物粉末投与群、アシクロビル投与群で帯状疱疹スコアの低下が確認された(図11)。
BP酵素処理物粉末を投与することで、マウスにおける帯状疱疹の軽減が確認され、その効果は感染後からBP酵素処理物粉末を投与した群よりも1週間前から前投与した方がより強かった。またその効果はアシクロビルとほぼ同程度であった。
Claims (7)
- センダングサ属植物酵素処理物を有効成分として含む、薬剤耐性単純ヘルペスウイルスに対する抗単純ヘルペスウイルス剤。
- 薬剤耐性単純ヘルペスウイルスが、アシクロビル耐性株、アシクロビル・ホスホノ酢酸多剤耐性株、ガンシクロビル耐性株、ペンシクロビル耐性株、ピリブジン耐性株、シドフォビル耐性株、からなる群より選択される、請求項1記載の抗単純ヘルペスウイルス剤。
- センダングサ属植物がビデンス・ピローサ類である、請求項1または2に記載の抗単純ヘルペスウイルス剤。
- センダングサ属植物を処理する酵素が、多糖類加水分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗単純ヘルペスウイルス剤。
- センダングサ属植物酵素処理物の含有量(乾燥固形分換算)が0.001〜5g/kg体重/日程度となるように投与されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗単純ヘルペスウイルス剤。
- 更にアシクロビル、ガンシクロビル、ペンシクロビル、ピリブジン、シドフォビル、からなる群より選択される抗単純ヘルペスウイルス剤を有効成分として含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗単純ヘルペスウイルス剤。
- センダングサ属植物酵素処理物からなる第一の抗単純ヘルペスウイルス剤と、アシクロビル、ガンシクロビル、ペンシクロビル、ピリブジン、シドフォビルからなる群より選択される少なくとも一種である第二の抗単純ヘルペスウイルス剤とを有効成分として含み、第二の抗単純ヘルペスウイルス剤の投与量が、第二の抗単純ヘルペスウイルス剤を単独で使用する際の投与量範囲の1/2〜1/100の投与量であることを特徴とする、抗単純ヘルペスウイルス剤。
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