JP2014176335A - 慢性腎臓病の遺伝的リスク検出法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】3q28中のrs9846911多型(G→A)、ALPK1中のrs2074380多型(A→G)、rs2074381多型(A→G)の遺伝子多型のうちの少なくとも1個の遺伝子多型を決定することを特徴とする日本人におけるCKDの遺伝的リスクの検出方法。前記ALPK1中のrs2074380多型およびrs2074381多型については、糖尿病を罹患する日本人について、遺伝子多型を決定することを特徴とするCKDの遺伝的リスクの検出方法。
【選択図】図3
Description
CKDについては、従来より指摘されている糖尿病や高血圧といった危険因子に加えて、近年の研究によって、遺伝因子や、多数の遺伝子と環境因子の相互作用との関連性があることが分かってきた(非特許文献5,6)。
白人(非特許文献7-9)や黒人(アフリカ系アメリカ人)集団(非特許文献10,11)においては、近年のゲノム全領域関連解析(GWASs)によって、腎機能に関連する遺伝子や、CKD及びESRDの感受性遺伝子がいくつか明らかとなっており、東アジア人種(非特許文献12)についても腎臓機能関連遺伝子が見つかっている。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、日本人集団においてCKDに罹患し易い遺伝的素因を特定すること、及び日本人におけるCKDのリスク評価を行うための精度の高い情報を提供することである。
その結果、集団AによるGWASでは、染色体3q28領域、ALPK1、FAM78B、UMODL1中の5個のSNPsが有意に関連した。集団Bでは、これら5個のSNPsに加え、上記遺伝子座中の22個のSNPs(合計29個のSNPs)についてCKDとの関連を検討した。3q28のrs9846911(配列番号116:ATTCTCCAGAAAAGTCTCCTCTTTCA[A/G]TAACAAATCTTCCTCGGGCTTCCAA)は全個体においてCKDに有意に関連し、ALPK1のrs2074381(配列番号117:CCACAGAGGAAGGAAATCAGCCTGGA[A/G]ACATGCTAAACTGCAGCCAGAACTC)とrs2074380(配列番号118:TGGATGTTCCCTGCACAAATGGGCAC[A/G]GCTCTCATAGACTGTGCATTCTGAG)は、糖尿病を有する個体においてCKDに関連した。集団Cについて、rs2074381とrs2074380は有意にCKDに関連した。集団BとCを組み合わせた解析では、rs9846911は全個体においてCKDと有意に関連し、rs2074381とrs2074380は糖尿病を有する個体においてCKDに関連した。
本発明において、前記ALPK1中のrs2074380多型およびrs2074381多型については、糖尿病を罹患する日本人について、遺伝子多型を決定することが好ましい。
SNPsを検出する方法としては、特に限定されないが、PCR-Luminex法、Invader法、TaqMan PCR法、一塩基伸長法、Pyrosequencing法、Exonuclease Cycling Assay法などが例示される。
このうち、PCR-Luminex法を使用する場合は、所定の多種類(例えば、500種類)の色分けされたビーズを一度に分別測定することが可能なマルチビーズアレイ技術をMultiplex-PCR技術と複合化することにより、1回の反応で色分けされた種類のビーズに相当する種類の遺伝子変異を検出できる。このとき、rs9846911多型の検出には、PCR用センスプライマーとして配列番号15(5'-AGTTGTGTGCCAGATTCTCCAG-3')、アンチセンスプライマーとして配列番号16(5'-'TCTTCACTGAGACCTTGGGAAG-3')、プローブ1として配列番号17(5'-TCTCCTCTTTCAATAACAAATCTTC-3')、プローブ2として配列番号18(5'-AAAGTCTCCTCTTTCAGTAACAAAT-3')を用いることが好ましい。ALPK1中のrs2074380多型の検出には、PCR用センスプライマーとして配列番号43(5'- CTCCACAGTGGATGAGGAGG -3')、アンチセンスプライマーとして配列番号44(5'- CTTACAGAGGAATTGGGGGTC -3')、プローブ1として配列番号45(5'- ACAAATGGGCACAGCTCTCATA -3')、プローブ2として配列番号46(5'- TATGAGAGCCGTGCCCATTTGT -3')を用いることが好ましい。
これまでのCKDに関連するSNPsの研究において、本願発明に開示されているSNPsとCKDの関連が示唆されたことはない。この点において、日本人集団において特異的なCKD関連SNPsが特定されたことになる。
<試験方法>
本研究の全ストラテジを図1に示した。まず、集団A(CKD患者群252名、対照群249名)についてGWASを行い、5個のSNPs(FDR<0.05)を特定した。ここに、5'-UTRと非同義置換を含む22個のSNPsを追加した。集団B(CKD患者群910名、対照群838名)について27個のSNPsについて関連解析を行い、3個のSNPs(FDR<0.05)を特定した。集団C(CKD患者群190名、対照群1412名)について関連解析を行った。更に、複合集団B,C(CKD患者群1100名、対照群2250名)について解析を行った。
eGFR(mL min-1 1.73 m-2) = 194×[年齢]-0.287×[血清クレアチニン値 (mg/dL)]-1.094×[0.739 女性の場合]。
K/DOQI診療ガイドライン・慢性腎臓病によれば、eGFR値が60 mL min-1 1.73 m-2未満のときには、CKDと診断するとされている(非特許文献4)。eGFR値が60 mL min-1 1.73 m-2未満になると、有害事象(死亡、心臓疾患、入院など)のリスクが急速に増大することが認められており、45 mL min-1 1.73 m-2未満になると、更にリスクが増大する(非特許文献14)。また、日本人では、eGFR値が50 mL min-1 1.73 m-2未満になると、その後のeGFR値の低下率が増大するため、予後が悪いことが明らかになっている(非特許文献15)。そこで、本研究では、eGFR値が50 mL min-1 1.73 m-2未満のCKD患者を研究対象とした。
研究対象は、3個の独立した日本人集団3851名(1352名のCKD患者と、2499名の対照群)であった。集団Aは、501名から構成されていた。その内訳は、2002年10月から2009年3月までに外来受診または入院した252名のCKD患者と、毎年の健康診断のために来院した249名の腎機能正常者であった。集団Aの基準は次の通りであった:CKD患者群は、eGFRが40 mL min-11.73 m-2 未満(具体的には、2.8〜39.8 mL min-1 1.73 m-2の範囲)の者とした。対照群は、(1) eGFRが90 mL min-11.73 m-2 以上(具体的には、90〜327.2 mL min-1 1.73 m-2の範囲)の者、(2)年齢が64歳以上(具体的には、64〜89歳の範囲)の者、(3)腎臓疾患が無い者、(4)重要な健康上の問題がない者とした。対照群の中には、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症を伴う者が存在したが、いずれも軽症であり、上記基準は満たしていた。GWASについては、遺伝因子の効果が出やすいように、中年のCKD患者と、高齢の対照群を選択した。
集団Bは、1748名(910名のCKD患者と、838名の対照群)から構成されており、2002年10月から2011年12月までの間に外来受診または入院した者であった。集団Bの基準は次の通りであった:CKD患者は、eGFRが50 mL min-1 1.73 m-2 未満(具体的には、2.5〜49.9 mL min-11.73 m-2の範囲)の者とした。対照群は、(1)eGFRが90 mL min-1 1.73 m-2 以上(具体的には、90〜584.9 mL min-11.73 m-2の範囲)の者、(2)腎臓疾患が無い者、(3) 重要な健康上の問題がない者とした。
集団Cは、1602名の地域住民(190名のCKD患者と、1412名の対照群)から構成されており、一般住民のコホート研究に参加したいなべ市または中之条の住民であった。集団Cの基準は次の通りであった:CKD患者は、eGFRが50 mL min-1 1.73 m-2 未満(具体的には、13.0〜49.9 mL min-11.73 m-2の範囲)の者とした。対照群は、(1)eGFRが90 mL min-1 1.73 m-2 以上(具体的には、90〜156.7 mL min-11.73 m-2の範囲)の者、(3)腎臓疾患が無い者、(4)健康上の問題がない者とした。
研究プロトコールは、ヘルシンキ宣言に従い、三重大学医学部、弘前大学医学部、東京都健康長寿医療センター、名古屋市立大学医学部および参加病院の倫理委員会によって承認された。各参加者に対しては書面によるインフォームドコンセントを得た。
集団A(252名のCKD患者、249名の対照群)に関して、CKDについてのGWASを実施した。GWASには、全ゲノム中に分布する297,707個のSNPsを含むHumanCytoSNP-12 array(イルミナ、カリフォルニア州サンディエゴ市)を使用した。各アレイチップにおいてデータ取得率が98%未満のジェノタイピングデータについては破棄した。解析に使用したデータの平均データ取得率は99.7%であった。各SNPのアレル頻度とCKDとの関連をカイ二乗検定で解析した。CKDに対する遺伝子型の多重比較については、false discovery rate (FDR)により補正し(非特許文献16)、FDRが0.05未満の場合には、統計的に有意であるとした。GWASにおける遺伝子型データは、EIGENSTRAT法を用いた主成分分析によって人口層別化を検討した(非特許文献17)。人口層別を施した主成分分析によってFDRを求め、0.05以上の場合には、そのSNPを除外した。また、マイナーアレルの頻度が0.05未満の遺伝子多型、又は遺伝子型の分布がハーディ・ワインバーグ平衡から有意に(FDRが0.05未満)逸脱した遺伝子多型については解析から除外した。この方法によって、66個のSNPsを除外し、最終的に5個のSNPsを選択し、集団B及び集団Cについて更なる研究を行った。
7mL の静脈血を50mmol/L EDTA(ジナトリウム塩)を含むチューブに採取し、ゲノムDNAをキット(ゲノミックス社製)によって分離した。集団B及び集団Cについては、SNPsの遺伝子型は、PCRと配列特異的オリゴヌクレオチドプローブをサスペンジョン・アレイ・テクノロジー(SAT: Luminex 100)と組み合わせて使用する方法(マルチプレックス・ビーズベース・ルミネックス・アッセイ; PCR-Luminex法)によって、G&Gサイエンス株式会社にて決定した。遺伝子タイピングには、PCR増幅、ハイブリダイゼーション、ストレプトアビジン・フィコエリスリン反応、及び蛍光測定の工程が含まれる。
簡単に説明すると、次の通りである。まず、標的遺伝子配列に対して高度に特異的な5'-ビオチンラベルプライマーを用いて、標的DNAをPCR法によって増幅した。DNAを95℃にて変性させた後、増幅されたDNAをマイクロビーズに結合したcDNAプローブとハイブリダイズした。ハイブリダイズしたPCR産物をストレプトアビジン・フィコエリスリンと反応させ、マイクロビーズに結合したcDNAプローブと結合したフィコエリスリンの蛍光強度を測定した。集団Bについて試験した27個のSNPsの遺伝子タイピングに用いたプライマー、プローブ、その他の条件を表1に示した。遺伝子タイピングに関する詳細な方法は、既報(非特許文献18)にならって実施した。サスペンジョン・アレイ・テクノロジーの再現性については、既報(非特許文献19)に記載されている。
糖尿病性糸球体硬化症または正常な腎機能を持つ個体の死後に得られたヒト腎臓を免疫組織化学分析に供した。ホルマリン固定し、パラフィン包埋後の切片からパラフィンを取り除き、水洗した後、0.01 mol/Lクエン酸緩衝液(pH6.0)に浸し、加圧処理装置にて10分間熱処理した。EnVision+ウサギ/西洋ワサビ・パーオキシダーゼ・キット(ダコ社製)を用いて、染色を行った。ALPK1に対するウサギ・ポリクローナル抗体(ab60161:Abcam社製)は、50倍希釈して用いた。
トランスフェクション、免疫ブロット、及び定量的RT-PCR解析
ヒトALPK1 cDNAを含む発現ベクターpFLAG-CMV-2(シグマ社製)又はベクターのみをHEK293T細胞に対して、リポフェクタミン2000試薬(インビトロージェン社製)を用いる方法によってトランスフェクションした。48時間後、HEK293T細胞を2×ラエムリ・サンプルバッファを加えて、100℃で溶解し、1000倍希釈した抗ヒトAKPK1ウサギポリクローナル抗体(ab89140:Abcam社製)、又は10000倍希釈したFLAGエピトープに対するマウスモノクローナル抗体(M2:シグマ社製)を用いて、イムノブロット解析に供した。免疫複合体は、増強化学発光試薬(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)によって検出した。遺伝子を導入した細胞からRNイージーキット(キアゲン社製)を用いて全RNAを単離し、腎障害に関連する84個のヒト遺伝子のcDNAに特異的なプライマーとプローブとを用いて、逆転写反応及びリアルタイムPCRに供した(RT2プロファイラーPCRアッセイ:SAバイオサイエンス社製)。
定量データは、CKD患者群と対照群との間で、対応のないスチューデントt検定により比較した。質的(カテゴリー)データは、カイ二乗検定によって比較した。対立遺伝子頻度は遺伝子カウント法によって概算し、ハーディ・ワインベルク平衡にあてはまるかどうかを判断するためにカイ二乗検定を使った。SNPsの対立遺伝子頻度は、CKD患者群と対照群との間で、カイ二乗検定によって比較した。CKDと関連するSNPは、多項ロジスティック回帰分析法により交絡因子を補正して解析した。交絡因子については、年齢(age)・性別(sex:女性=0、男性=1)・肥満指数(body mass index:BMI)・喫煙状態(smoking status:非喫煙者=0、現在または過去の喫煙者=1)・代謝変数(高血圧(hypertension)・糖尿病(diabetes mellitus)又は高コレステロール血症(hypercholesterolemia)の病歴なし=0、病歴あり=1)、及び各SNPの遺伝子型を独立変数とし、CKDを従属変数とした。各遺伝子型は、優性遺伝モデル(野生型ホモ接合体=0,ヘテロ接合体とバリアント型ホモ接合体の結合群=1)及び劣性遺伝モデル(野生型ホモ接合体とヘテロ接合体の結合群=0,バリアント型ホモ接合体=1)、並びにP値、オッズ比、及び95%信頼区間を計算した。CKDに関連する遺伝子型の解析において多重比較を行っているため、統計的な有意性の評価にFDR(非特許文献16)を使用し、FDRが0.05未満の場合に統計的有意差を認めるという判断基準を用いた。その他の統計解析では、危険率5%未満(P<0.05)を統計的に有意とした。集団A〜集団Cにおける統計的検出力を表5に示した。統計解析には、JMPゲノミクス・バージョン6.0ソフトウエア(SASインスティテュート社製)を用いた。連鎖不平衡とハプロタイプ解析には、SNPAlyzeバージョン6ソフトウエア(ダイナコム社製)を用いた。
研究対象者に関するデータを表2に示した。表には、左欄より順に、特徴(Characteristic)、集団A〜集団C(Subject panel A -Subject panel C)のそれぞれについて、CKD患者群(CKD)と対照群(Controls)を示している。特徴欄は、上より順に、症例数(No. of subjects)、年齢(Age(years))、性別(男性/女性)(Sex(male /female))、肥満指数(BMI)、現在又は過去の喫煙率(Current or former smoker)、高血圧罹患率(Hypertension)、糖尿病罹患率(Diabetes mellitus)、高コレステロール血症罹患率(Hypercholesterolemia)、血中尿素窒素濃度(Blood urea nitrogen)、血清クレアチニン濃度(Serum creatinine)、eGFR値を示している。
集団AによるCKDに関するGWASを実施したところ、5個のSNPsが有意に(FDR<0.05)CKDに関連した(表3)。これらのSNPsとCKDとの関連は、EIGENSTRAT法を用いた主成分分析によって人口層別化を行った場合にも有意に認められた。
FAM78B、AKPK1およびUMODL1について、5'-非翻訳領域または非同義変異SNPs(日本人集団において、マイナーアレルの頻度が0.05以上のもの)を抽出するために、dbSNPデータベース(NCBI)を検索した。その結果、GWAS(表4)によって特定された5個のSNPsに加えて、22個のSNPsを抽出した。集団Bについて、これら27個のSNPsとCKDとの関連を検討した結果、染色体3q28のrs9846911がCKDと有意に(FDR <0.05)関連した(表4、表5)。CKDについては糖尿病と高血圧が重要な危険因子であるため、糖尿病または高血圧の罹患者について、SNPsとCKDとの関係を解析した。糖尿病罹患者においては、AKPK1中のrs2074381とrs2074380がCKDに有意に関連し、高血圧罹患者においては、rs9846911がCKDに有意に関連した(表5)。これらのSNPsの遺伝子型分布は、全集団において、CKD患者群および対照群について、ハーディ・ワインバーグ平衡にあった(表5)。
次に、集団Cにおいて、CKDと3q28中のrs9846911との関係、及びCKDとALPK1のrs2074381とrs2074380の関連を調べた。ALPK1中の2個のSNPsは、集団Cにおいても、CKDと有意に関連した(表6)。これら3個のSNPsは、全集団のCKD患者群と対照群において、ハーディ・ワインバーグ平衡にあった(表6)。
複合集団B、Cにおいて、3q28のrs9846911とCKDとの関連を調べたところ、有意に関連した(表7)。糖尿病罹患者では、AKPK1中のrs2074381と rs2074380、及び3q28のrs9846911は、CKDと有意に関連した。高血圧罹患者では、rs9846911がCKDと有意に関連した(表7)。これらのSNPsの遺伝子型分布は、全集団のCKD患者群及び対照群において、ハーディ・ワインバーグ平衡にあった(表7)。
複合集団B,Cについて、年齢・性別・BMI・喫煙状態・代謝変数(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症の罹患率)を交絡因子とする多項ロジスティック回帰分析を行った結果、3q28及びALPK1の3個のSNPsはCKDと有意に関連した(表8)。3q28のrs9846911は、優性遺伝モデル及び劣性遺伝モデルのいずれについてもCKDと有意に関連し、このときマイナーGアレルは防御因子であった。糖尿病罹患者においては、ALPK1のrs2074381とrs2074380は、rs9846911と同様に、優性遺伝モデルにおいてCKDと有意に関連し、このとき各SNPのマイナーアレルは防御因子であった。高血圧罹患者においては、rs9846911は、優性遺伝モデル及び劣性遺伝モデルのいずれについてもCKDと有意に関連し、このときマイナーGアレルは防御因子であった。
複合集団B、Cにおいて、ALPK1のrs2074381とrs2074380は、連鎖不平衡にあった(標準連鎖不平衡計数(r2)=0.9454、危険率P = 9.0 × 10-214))ので、これらのSNPsについてハプロタイプ解析を行った。その結果、複合集団B、Cの糖尿病罹患群においては、対照群よりもCKD患者群の方が、メジャーハプロタイプの頻度(A (rs2074381)-G (rs2074380))が有意に高く、マイナーハプロタイプの頻度(G (rs2074381)-A (rs2074380))は有意に低かった(表9)。
複合集団B、Cについて、糖尿病罹患者におけるCKDの遺伝的リスクを評価するために、rs9846911, rs2074381及びrs2074380の3個のSNPsの複合遺伝子型について、多項ロジスティック回帰分析を行った。複合遺伝子型解析の結果、rs9846911のAA、rs2074381のAA、rs2074380のGAまたはAAを持つ複合遺伝子型は、rs9846911のAGまたはGG、rs2074381のAGまたはGG、rs2074380のGAまたはAAを持つ複合遺伝子型に比べ、7.4倍の高いオッズ比を示した(表10)。
ヒト腎臓組織について、ALPK1の免疫組織染色を行った(図2)。正常な腎組織(図2(A))及び糖尿病性糸球体硬化症(図2(B))のサンプルにおいて、尿細管上皮細胞はALPK1によって染色された。糖尿病性糸球体硬化症に関連付けられている萎縮した腎尿細管及び尿円柱は、ALPK1に強陽性であった(図2(B))。
正常な腎臓組織に比べ、糖尿病性糸球体硬化症に罹患した腎臓組織では、尿細管上皮細胞のALPK1の発現量が増加していることから、腎障害に関連する84の遺伝子のmRNAの発現量に対する、ALPK1の過剰発現の効果を調べた。ヒトALPK1 cDNAを含有するpFLAG-CMV-2をHEK293T細胞にトランスフェクションすると、ALPK1量は著しく増加した(図3(A))。逆転写及びリアルタイムPCR解析により、ALPK1の過剰発現によって、溶質キャリアファミリー22、メンバー1(SLC22A1)とシスタチンC(CST3)遺伝子の発現が顕著に増加することが明らかになった(図3(B))。
本発明者は、日本人集団において、染色体3q28のrs9846911 SNPがCKDに有意に関連し、このときマイナーGアレルが防御因子であることを示した。また、染色体4q25中のALPK1のrs2074381 及びrs2074380 SNPsが糖尿病罹患者におけるCKDに有意に関連し、それぞれのマイナーGおよびAアリルが防御因子であることを見出した。これら3個のSNPsの複合遺伝子型解析を行ったところ、低リスク遺伝子型に比べ高リスク遺伝子型では最大で7.4倍のオッズ比が認められた。
rs9846911 SNPは、3q28の非遺伝子領域に位置している。この位置は、リセプター・トランスポータ・タンパク質4(RTP4、約130kbp)、ソマトスタチン(SST、約170kbp)、リセプター・トランスポータ・タンパク質2(RTP2、約200kbp)及びB細胞CLL/リンフォーマ6(BLC6、220kbp)の下流、並びにマンナン結合レクチン・セリン・ペプチダーゼ1遺伝子(MASP1、210kbp)の上流にあたる。この領域には、大きな連鎖不平衡ブロックが存在しているので、CKDの発症・進展に実際に関与する遺伝子の他の多型とrs9846911が連鎖不平衡の関係にある可能性は否定できない。CKDの発症について、rs9846911が如何に関与しているかについては不明である。
結論として、我々の今回の結果は、3q28は、日本人集団においてCKDの感受性遺伝子座であること、及びALPK1は糖尿病罹患者にけるCKDの感受性遺伝子であることが分かった。今回特定されたSNPsの遺伝子型を判定することにより、日本人におけるCKDの遺伝的リスクを評価できる。
本研究には、発明者の一人である山田芳司に対する文部科学省の科研費(No. 24590746)、公益財団法人ひと・健康・未来研究財団、及び岡三加藤文化振興財団からの研究補助金を受けた。
このように本実施形態によれば、CKDについて、遺伝的リスクを予測するための検出法を提供することができる。この実施形態を用いることにより、CKDの予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・生活の質の向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
Claims (2)
- 3q28中のrs9846911多型、ALPK1中のrs2074380多型、rs2074381多型の遺伝子多型のうちの少なくとも1個の遺伝子多型を決定することを特徴とする日本人におけるCKDの遺伝的リスクの検出方法。
- 前記ALPK1中のrs2074380多型およびrs2074381多型については、糖尿病を罹患する日本人について、遺伝子多型を決定することを特徴とする請求項1に記載のCKDの遺伝的リスクの検出方法。
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