JP2014174062A - コンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コンクリートで被覆された鋼材の腐食状態を的確に診断することができる、コンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法を提供する。
【解決手段】部分的にコンクリート1で被覆された鋼材2について、コンクリート1で被覆された部分2aの腐食状態を診断する際に、電位を測定するための照合電極11をコンクリート1に接触させ、鋼材2aとコンクリート1の間に生じた隙間に電解質を浸透させた上で、自然電位を電位測定装置12で測定し、測定した自然電位に基づいて、鋼材2aの腐食状態を診断する。
【選択図】図1
【解決手段】部分的にコンクリート1で被覆された鋼材2について、コンクリート1で被覆された部分2aの腐食状態を診断する際に、電位を測定するための照合電極11をコンクリート1に接触させ、鋼材2aとコンクリート1の間に生じた隙間に電解質を浸透させた上で、自然電位を電位測定装置12で測定し、測定した自然電位に基づいて、鋼材2aの腐食状態を診断する。
【選択図】図1
Description
本発明は、コンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法に関するものである。
一般に、コンクリートは強アルカリ性であるため、コンクリート中の鋼材(全体がコンクリートで被覆された鋼材)は、鋼材表面に不動態被膜を形成して、ほとんど腐食しない。
しかしながら、コンクリート中の鋼材は、コンクリートの中性化や塩害などの原因により、鋼材表面が不動態化しなくなったり、鋼材表面の不動態被膜の一部が不安定になったりして、腐食が発生することがある。
また、部分的にコンクリートで被覆されて一部が露出している鋼材は、鋼材とコンクリートの間に隙間を生じて、この隙間に水が浸透することで、隙間内部の鋼材表面に腐食が発生することがある。
また、コンクリートで根元を固定した鋼製支柱なども、外面からは分からないうちにコンクリートと鋼製支柱との間に隙間を生じ、隙間内部に生じた腐食により鋼製支柱が十分な強度を保つことができず、根元から挫屈することもあった。
このようにして、コンクリートで被覆された鋼材は、さびが生じて減肉したり、さびのためにコンクリートのひび割れやさらにはコンクリートの脱落を招いたりすることによって、大きな問題を引き起こす場合がある。
そこで、大きな問題を引き起こす前に、コンクリートで被覆された鋼材の腐食を診断・検知する方法として、例えば、特許文献1には、2個以上の電位測定検出端をコンクリート構造物の表面に接触させ、2個所以上のコンクリート構造物中の鋼材の自然電位を測定して、その自然電位の差の値から鋼材の腐食状態を診断する方法が提案されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載の鋼材の腐食診断方法を用いた場合に、鋼材は腐食していないと判断したものの、実際には鋼材が腐食していた事例があった。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、コンクリートで被覆された鋼材の腐食状態を的確に診断することができる、コンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、前記課題を解決すべく種々検討した結果、上記のような、特許文献1に記載の鋼材の腐食診断方法を用いた場合に、鋼材は腐食していないと判断したものの、実際には鋼材が腐食していた事例は、以下のことが原因であることを突き止めた。
すなわち、コンクリートで被覆された鋼材が腐食している場合、さびは元の鋼材と比較して体積が大きく膨張し、しかもさびは多孔質であるため、鋼材とコンクリートの間には微細な隙間が発生する。一方、コンクリート中の鋼材はコンクリートが健全である場合は不動態化しており、鋼材の電位は貴であるが、鋼材が腐食している場合、鋼材の電位は卑化する。しかし、上述した鋼材とコンクリートの間の隙間は、空気で満たされていることが多く、電気抵抗が大きくなるため、鋼材近傍のコンクリート表面に設置した照合電極で鋼材の電位を測定すると、健全なコンクリートと接触している部分の鋼材の電位を測定するようになり、隙間内の鋼材表面が腐食していても、貴な電位を示すことになって、鋼材は腐食していないという誤った判断をすることになる。
そこで、本発明者は、さらに検討を行い、上記の問題に対しては、鋼材とコンクリートの間に生じた隙間の電気抵抗を小さくすればよく、具体的には、鋼材とコンクリートの間に生じた隙間に電解質を浸透させてから、自然電位を測定すればよいということを見出した。
本発明は上記の考え方に基づいており、以下の特徴を有している。
[1]部分的にコンクリートで被覆された鋼材について、前記コンクリートで被覆された部分の腐食状態を診断する際に、電位を測定するための照合電極を前記コンクリートに接触させ、前記鋼材と前記コンクリートの間に生じた隙間に電解質を浸透させた上で、自然電位を測定し、測定した自然電位に基づいて、前記鋼材の腐食状態を診断することを特徴とする、コンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法。
[2]前記鋼材に超音波で振動を加えて、前記隙間への電解質の浸透を促進させることを特徴とする前記[1]に記載のコンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法。
[3]前記電解質に表面活性剤または/および防錆剤を添加することを特徴とする前記[1]または[2]に記載のコンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法。
[4]全体がコンクリートで被覆された鋼材の一部を露出させて、部分的にコンクリートで被覆された状態にして、鋼材の腐食状態を診断することを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のコンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法。
本発明においては、コンクリートで被覆された鋼材の腐食状態を的確に診断することができる。
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図1に示すように、この実施形態においては、部分的にコンクリート1で被覆された鋼材2について、コンクリート1で被覆された部分2aの腐食状態を診断する際に、電位を測定するための照合電極11をコンクリート1に接触させ、鋼材2aとコンクリート1の間に生じた隙間(図1中のさび3に該当;以下、単に「隙間」ともいう)に電解質(図示せず)を浸透させた上で、自然電位を電位測定装置12で測定し、測定した自然電位に基づいて、鋼材2(2a)の腐食状態を診断するようにしている。なお、隙間に浸透させる電解質には、例えば、水道水や硫酸塩水溶液などを用いる。
これによって、この実施形態においては、鋼材2aとコンクリート1の間に生じた隙間に浸透させた電解質により、当該隙間の電気抵抗が小さくなり、上述したような誤判断を招くことなく、コンクリート1で被覆された鋼材2aの腐食状態を的確に診断することができる。
ここで、診断対象とする鋼材2としては、鉄筋コンクリート用棒鋼、PC棒鋼、PC鋼線、一般構造用圧延鋼材、一般構造用溶接軽量H形鋼、一般構造用角型鋼管、軟鋼線材、硬鋼線材、ピアノ線、ワイヤーロープ、溶接金鋼、アンカーボルト、鋼製支柱等が挙げられる。
また、使用する照合電極11には、通常、銅/硫酸銅電極、銀/塩化銀電極、カロメル電極などの照合電極を用いる。
なお、照合電極11については、保水材(脱脂綿、スポンジ、多孔質セラミック等)に電解質溶液を含浸させたものに被覆された状態、あるいは、保水材の乾燥を防ぐために容器内に電解質溶液を蓄えて保水材へ常に電解質溶液を供給できるものの中に収納された状態で使用する。照合電極11はコンクリート1表面への電気的な接触が必要であるので、湿潤材である保水材をコンクリート1表面に接触させるようにする。
また、測定に際しては、コンクリート1と照合電極11との電気的な接触抵抗を低下させるため、測定の前にコンクリート1面を水道水や硫酸塩水溶液などの電解質溶液で湿潤状態にしておくことが好ましい。ただし、鋼材2と照合電極11の間が水膜で繋がっていると、コンクリート1の表面抵抗が小さくなり、鋼材2の露出部分2bの電位を測定してしまう可能性があるため、もし、鋼材2と照合電極11の間が水膜で繋がってしまった場合は、コンクリート1の表面を乾いた布などで拭いて、鋼材2bと照合電極11の間の表面抵抗が大きくなるようにする。
また、図1に示すように、超音波発生電源14に接続した振動子13を鋼材2に接触させて、超音波で鋼材2に振動を付与することで、隙間への電解質の浸透を促進させるようにしてもよい。なお、超音波の周波数は10〜100kHz、特に15〜40kHzを用いるのが好ましい。
さらに、隙間へ浸透させる電解質に表面活性剤または/および防錆剤を添加するようにしてもよい。表面活性剤によって、隙間への電解質の浸透が促進される。また、防錆剤によって、鋼材2aのさび3の進行が抑制される。
そして、コンクリート1中の鋼材2aの自然電位は、鋼材2aの腐食状態により変化するので、測定した自然電位によって、鋼材2aの腐食状態を診断すればよい。
例えば、海洋構造物に見受けられる塩害劣化を受けた構造物は、照合電極に銅/硫酸銅電極(CSE)を用いた場合、規格ASTM C−876では、以下の表1に示すような判定基準が定められている。
したがって、照合電極に銅/硫酸銅電極(CSE)を用いた場合、測定した自然電位が、−350mVより卑(−350mV未満)であれば、ほぼ鋼材2aは腐食していると診断できる。
また、全体がコンクリートで被覆された鋼材については、その一部を露出させて、部分的にコンクリートで被覆された状態にして、腐食状態を診断するようにすればよい。
本発明の実施例1として、鋼材を部分的に被覆(埋設)したコンクリート試験体を作製して、鋼材の腐食状態を診断した。
具体的には、セメント688kg/m3、水413kg/m3、砂1205kg/m3となるように配合して、縦60cm、横60cm、厚さ20cmのコンクリート試験体を作製した。そのコンクリート試験体には、深さ10cmまで直径10mmの鋼材(丸棒)を埋設し、そのうち下部5cmはコンクリートと接触させ、残りの上部5cmは周囲に紙を巻いてコンクリートと接触させないようにして、隙間が形成されて、さびが発生しやすい状態にした。
コンクリート試験体は、打設後30日間の養生を行った後、丸棒の腐食を促進させるために1回/2日の散水を繰り返しながら3ヶ月間に放置し、その後屋外に1ヶ月保持した。
そして、照合電極に銅/硫酸銅電極(CSE)を用い、照合電極と丸棒に被覆銅線を繋ぎ、これを電位測定装置(電位差計)に接続して、自然電位を測定し、その測定結果に基づいて、コンクリート試験体に被覆されている丸棒の腐食状態を診断した。なお、コンクリートと照合電極との電気的な接触抵抗を低下させるため、測定の前に照合電極を接触させるコンクリート面(約30mmφ)を水道水で湿潤状態にした。
まず、比較例1として、コンクリートと丸棒の間の隙間に電解質を浸透させないで、自然電位を測定した。その結果、自然電位は−184mVであった。したがって、前記表1に示すように、測定電位が−200mVより貴であるので、丸棒は腐食していないという判断になった。
これに対して、本発明例1として、コンクリートに埋設されていない部分の丸棒の周囲を防錆剤と表面活性剤を添加・混合した水溶液(電解質溶液)を含ませた脱脂綿で巻いて、コンクリートと丸棒の間の隙間に電解質を浸透させた。そして、10分経過後、自然電位を測定した。その結果、自然電位は−425mVであった。したがって、前記表1に示すように、測定電位が−350mVより卑であるので、丸棒は腐食しているという判断になった。
次に、本発明例2として、コンクリートに埋設されていない部分の丸棒の周囲を防錆剤と表面活性剤を添加・混合した水溶液(電解質溶液)を含ませた脱脂綿で巻いた状態で、25Hzの超音波で丸棒に振動を加えて、コンクリートと丸棒の間の隙間への電解質の浸透を促進させた。そして、1分経過後、自然電位を測定した。その結果、自然電位は−455mVであった。したがって、前記表1に示すように、測定電位が−350mVより卑であるので、丸棒は腐食しているという判断になった。
上記の測定が終了した後、コンクリートを剥離して丸棒を取り出すと、コンクリートと丸棒の間に隙間を設けた部分で腐食が発生していた。
これによって、本発明の有効性が確認された。
本発明の実施例2として、コンクリートで鋼材が被覆されている状態での電位状態についてモデル解析(シミュレーション計算)を行った。
シミュレーションモデルは図2に示すものであり、実施例1で用いたコンクリート試験体をモデル化したものである。
そして、図3は、比較例11として、コンクリート1と鋼材2aの間の隙間(さびの部分)に電解質が浸透していない状態での電位分布のシミュレーション計算結果であり、図4は、本発明例11として、コンクリート1と鋼材2aの間の隙間(さびの部分)に電解質が浸透している状態での電位分布のシミュレーション計算結果である。
これによって、図3に示す比較例11のようにコンクリート1と鋼材2aの間の隙間(さび3の部分)に電解質が浸透していない場合に比べて、図4に示す本発明例11のように、コンクリート1と鋼材2aの間の隙間(さび3の部分)に電解質が浸透している場合には、鋼材2a周囲(さび3周辺)の電位が卑化するため、鋼材2aが腐食していることが的確に判別できる。
1 コンクリート
2 鋼材
2a コンクリートで被覆された部分の鋼材
2b 露出している部分の鋼材
3 さび
11 照合電極
12 電位測定装置
13 振動子
14 超音波発生装置
2 鋼材
2a コンクリートで被覆された部分の鋼材
2b 露出している部分の鋼材
3 さび
11 照合電極
12 電位測定装置
13 振動子
14 超音波発生装置
Claims (4)
- 部分的にコンクリートで被覆された鋼材について、前記コンクリートで被覆された部分の腐食状態を診断する際に、電位を測定するための照合電極を前記コンクリートに接触させ、前記鋼材と前記コンクリートの間に生じた隙間に電解質を浸透させた上で、自然電位を測定し、測定した自然電位に基づいて、前記鋼材の腐食状態を診断することを特徴とする、コンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法。
- 前記鋼材に超音波で振動を加えて、前記隙間への電解質の浸透を促進させることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法。
- 前記電解質に表面活性剤または/および防錆剤を添加することを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法。
- 全体がコンクリートで被覆された鋼材の一部を露出させて、部分的にコンクリートで被覆された状態にして、鋼材の腐食状態を診断することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリートで被覆された鋼材の腐食診断方法。
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2013
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