JP2014173172A - 二相分離溶融塩 - Google Patents

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Abstract

【課題】核燃料、核廃棄物、放射性汚染物質、鉱石、酸化物、塩等の各種の処理対象物から目的イオンの分離等の各種の用途に有用な溶融塩について、更に、改良された優れた性能を有する溶融塩を提供する。
【解決手段】本発明によれば、Liを含む二種以上のカチオンと二種以上のアニオンからなり、クーロンポテンシャルが最も高いアニオン(α)を含むA相とクーロンポテンシャルが最も低いアニオン(β)を含むB相の二相に分離した、新規な二相分離溶融塩が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、二相に分離した溶融塩、その製造方法、及びその用途に関する。
溶融塩は、1種または2種類以上の塩を含み、溶融状態で利用されるものであり、例えば、工業電解または金属精錬に用いられる電解液として利用されており、更に、原子力システムにおいて金属プルトニウムの製造においても利用されている。
例えば、核燃料、鉱石、酸化物、塩等に含まれる各種のイオンを分離して回収する方法として、高温の溶融塩中で処理対象物を反応させた後、沈殿させる方法等が知られており、核燃料の処理方法としては、ウランを溶融炭酸塩中で処理して酸化させてM2UO4(M:アルカリ金属)として取り出し、溶融炭酸塩に溶解した核廃棄物元素については、別途分離して溶融炭酸塩を再生利用する方法などが検討されている(下記非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3等参照)。
しかしながら、核廃棄物元素の中には溶融炭酸塩から取り除きにくい1価のイオンがあり、これらの分離には、長い反応時間や多量の溶媒が必要となり、また、分離操作のために各種の資材が要求され、廃棄物の増量化などの問題点がある。このため多大な労力や長い処理時間を要し、処理のために多量のエネルギーも必要となる。
このため、省資源、省エネルギー、低公害、廃棄物低減等の観点から分離・精製技術の革新が望まれている。
Y.-J. Cho, H. Yang, H. Eun, J. Yoo, and J. Kim, "Axial Gas Phase Dispersion in a Molten Salt Oxidation Reactor," Korean J. Chem. Eng., 21(6), 1250-1255 (2004). V. A. Volkovich, T. R. Griths, D. J. Fray, R. C. Thied, "Solubility and solubilisation enthalpies of alkali metal urinates (VI) in molten carbonate," Phys. Chem. Chem. Phys, 1, 3297-3302 (1999). T. R. Griffiths, V. A. Volkovich, Sergey M. Yakimov, I. May, C. A. Sharrad, J. M. Charnock, "Reprocessing spent nuclear fuel using molten carbonates and subsequent precipitation of rare earth fission products using phosphate," J. Alloys Compounds, 418, 116−121(2006).
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、核燃料、核廃棄物、放射性汚染物質、鉱石、酸化物、塩等の各種の処理対象物から目的イオンの分離のために利用される溶融塩について、更に、改良された優れた性能を有する溶融塩を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その過程において、2種類以上のカチオン成分と2種類以上のアニオン成分を含む混合物を加熱して溶融塩とする際に、特定の条件を満足する複数のカチオン成分とアニオン成分を組み合わせて用いると、驚くべきことに、二相に分離した溶融塩が形成されるという、従来全く知られていない現象を見出した。そして、この現象について更に研究を重ねる過程において、二相に分離した溶融塩を形成するための最適の条件を見出すと共に、二相分離した溶融塩を用いることによって、例えば、核燃料中に含まれる核分裂生成物等を効率良く分離精製することや核廃棄物中のセシウムイオンやヨウ素イオン、ストロンチウムイオンなどを分離濃縮することが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、二相分離する溶融塩、その製造方法、及びその用途を提供するものである。
項1. Liを含む二種以上のカチオンと二種以上のアニオンからなり、
クーロンポテンシャルが最も高いアニオン(α)を含むA相とクーロンポテンシャルが最も低いアニオン(β)を含むB相の二相に分離していることを特徴とする、二相分離溶融塩。
項2. アニオン(α)及びアニオン(β)以外のアニオンが含まれる二相分離溶融塩であって、
アニオン(α)に近いクーロンポテンシャルを有するアニオンが主としてA相に含まれ、アニオン(β)に近いクーロンポテンシャルを有するアニオンが主としてB相に含まれる、上記項1に記載の二相分離溶融塩。
項3. クーロンポテンシャルが高いカチオンから順にA相に含まれる、上記項1又は2に記載の二相分離溶融塩。
項4. A相に含まれるアニオンとカチオンの平均クーロン力FAと、B相に含まれるアニオンとカチオンの平均クーロン力FBとの差ΔF=F−Fが2.5×10−9N以上である、上記項1〜3のいずれかに記載の二相分離溶融塩。
項5. 平均クーロン力が、下記式(3)
Figure 2014173172
(式中、naは相中に含まれるアニオン種の数、ncは相中に含まれるカチオン種の数、 Zaiはアニオンiの価数、raiはアニオンiのイオン半径、ηai はアニオンiの電荷シェア、Zcj はカチオンjの価数、rcjはカチオンjのイオン半径、ηcjはカチオンjの電荷シェア、kはクーロン定数、eは電気素量である)により算出されたものである、上記項4に記載の二相分離溶融塩。
項6. 上記項1〜項5のいずれかに記載の二相分離溶融塩の製造方法であって、
A相及びB相を形成するアニオンとカチオンを含む混合物を加熱して溶融することを特徴とする、二相分離溶融塩の製造方法。
項7. 上記項1〜項5のいずれかに記載の二相分離溶融塩と、セシウムイオンを含む使用済み核燃料を接触させて、セシウムイオンをB相中に濃縮させることを特徴とする、使用済み核燃料の処理方法。
以下、まず、二相分離した溶融塩を形成するための条件を記載し、次いで、該溶融塩の用途の一例について記載する。
二相分離した溶融塩
本発明者の研究によれば、Liを含む二種以上のカチオンと二種以上のアニオンを含む混合物を加熱して溶融塩を形成する際に、以下に記載する条件を満足するカチオンとアニオンを組み合わせて用いることによって、二相に分離した溶融塩が形成されることが明らかとなった。
(1)二相溶融塩の形成条件
以下、二相に分離した溶融塩が形成される条件について具体的に説明する。
まず、二相に分離した溶融塩を形成するためには、原料としては、Liを含む二種以上のカチオンと二種以上のアニオンを含む混合物を用いることが必要である。
具体的な原料としては、従来から溶融塩の原料として用いられている各種の物質を用いることができる。例えば、アニオンとしては、高温で安定であることから、無機アニオンが好ましく、例えば、CO3 2-、F-、OH-、O2 2-、O2-、MO4 2-(MはS,Cr,Mo又はWである)、PO4 3-、NO3 -、I-、Br-、OCN-、CN-、NO2 -等を例示できる。これらの内で、O2 2-、O2-、PO4 3-等のクーロンポテンシャルが高いアニオンは、カチオンと強く結びつき二相分離溶融塩を形成し難いので、CO3 2-より低いクーロンポテンシャルを有するアニオンが好ましい。また、Cl-は、カチオンと錯体を形成する傾向が強く、二相分離する溶融塩の形成を阻害する可能性があるので、原料中には含まれないことが好ましい。
カチオン成分としては、二相分離した溶融塩を安定に形成するためには、Li+、Na+、Ag+、K+、Tl+、Rb+、Cs+、Fr+などの1価のカチオンが好ましい。特に、二相分離溶融液の形成を容易にするためには、カチオン成分としてLi+が存在することが好ましく、カチオン成分全体を基準として、Li+が40モル%程度以上含まれることが好ましい。Mg2+、Zn2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+等の2価カチオンについては、アニオン成分との相互作用が強く、安定した二相分離溶融塩を形成しにくいが、カチオン成分全体を基準として40モル%程度までであれば含まれていてもよい。
本発明の二相分離溶融塩では、原料として用いた混合物中に含まれるアニオンに基づいて、最もクーロンポテンシャルが高いアニオン(α)を含む相(A相)と、最もクーロンポテンシャルが低いアニオン(β)を含む相(B相)の二相に分離される。原料中にアニオンが3種類以上含まれる場合には、アニオン(α)とアニオン(β)以外のアニオンについては、各アニオンのクーロンポテンシャルFiを、最もクーロンポテンシャルが高いアニオン(α)のクーロンポテンシャルFi及び最もクーロンポテンシャルが低いアニオン(β)のクーロンポテンシャルFiと比較して、クーロンポテンシャルがより近いアニオンが含まれる相に主として取り込まれる。具体的には、クーロンポテンシャルがアニオン成分(α)により近いアニオンについては、二相分離した場合に主としてA相に含まれる。
カチオンについては、最もクーロンポテンシャルが高いカチオン(α)は、最もクーロンポテンシャルが高いアニオン(α)が含まれるA相中に、A相中のアニオンの電荷の合計量に対応する電荷量となるまで含まれる。カチオン(α)の電荷の合計がA相に含まれるアニオンの電荷の合計と比較して多い場合には、残余のカチオン(α)は、B相に含まれる。一方、カチオン(α)の電荷の合計がA相に含まれるアニオン成分の電荷の合計と比較して少ない場合には、カチオン(α)以外のカチオンの内で、クーロンポテンシャルが高い順に、A相に含まれるアニオンの電荷の合計量に対応する電荷量となるまでA相に含まれる。残余のカチオンは、B相に含まれる。但し、A相とB相に共通して含まれるカチオンが存在する場合には、同一のカチオンが両相に同時に多量に存在すると二相分離が生じ難くなる傾向がある。このため、両相に共通して存在するカチオンについては、一方の相における存在量が他方の相の存在量より十分低いことが好ましく、特に、良好に相分離するためには、一方の相に含まれる量を100モル%として、他の相に含まれる同一のカチオンは40モル%程度以下であることが好ましく、30%程度以下であることがより好ましい。
尚、イオンiのクーロンポテンシャルFiとは、あるイオンiに、その反対符号の単位電荷(±e)を無限遠方からイオンに接触させた場合の安定化エネルギーであり、下記式(1)により定義される。
Figure 2014173172
ここでZiはイオンiの価数、riはイオンiのイオン半径である。下記表1に各種のカチオン及びアニオンについて、イオン半径と各イオン1モルあたりのFiの値を示す。このFiは、反対電荷イオンの作り出す場に、イオンiを持ち込んだ場合の安定化エネルギーに関連している。
Figure 2014173172
上記した基準に基づいて決まるアニオンとカチオンの分布において、A相に含まれるアニオンとカチオンのクーロン力と、B相に含まれるアニオンとカチオンのクーロン力との差が一定値よりも十分に大きければ、構成成分が分解、析出等を起こさず、溶融するために十分高い温度において、2相に分かれた溶融塩を得ることができる。
具体的には、二相分離した溶融塩の一方の相に含まれるアニオンaとカチオンcの価数をそれぞれZa、Zc、イオン半径をra、rc(m)とすれば、アニオンとカチオン間に働くクーロン力F(N)は下記式(2)で求めることができる。
Figure 2014173172
ここでkはクーロン定数(k=1/4πε0=8.9876×109Nm2A-2S-2、ε0は真空の誘電率8.854×10-12A2S2N-1m-2)、eは電気素量1.602×10-19Cである。
この計算式に基づいて、A相に含まれるアニオンとカチオンのクーロン力FAと、B相に含まれるアニオンとカチオンのクーロン力FBを求め、この差ΔF=FA−FBを算出した場合に、クーロン力の差ΔFが大きい程、明確に二相分離した溶融塩が得られる。良好な相分離を生じるためには、クーロン力の差ΔFは、好ましくは2.5×10-9N以上であり、より好ましくは、4×10-9N以上である。
尚、本発明の二相分離溶融塩では、クーロン力が強いカチオンとアニオンの組み合わせからなるA相中には、B相を形成する成分の一部がA相全体を基準として、15モル%程度まで分散して含まれる場合がある。一方、クーロン力が弱いカチオンとアニオンの組み合わせからなるB相については、B相を形成する成分を主成分とする純度の高い相が形成され易い。
下記表2に、A相及びB相がそれぞれ一種類のカチオンとアニオンの組み合わせによって形成される場合について、二相分離を生じる溶融塩のA相とB相の具体例、及びクーロン力の差ΔFを示す。
Figure 2014173172
(2)混合塩のクーロン力の算出方法
二相分離する溶融塩のA相及びB相の少なくとも一方が混合塩である場合について、各相におけるクーロン力の算出方法を以下に示す。
A相又はB相の何れか一方について、カチオン成分c1,c2,…cncと、アニオン成分a1,a2,…anaが含まれ、その組成比がそれぞれ、λc1, λc2,…λcncと λa1, λa2,…λana,である場合には、c1λc1c2λc2…cncλcnca1λa1a2λa2…anaλanaで表される混合塩が形成される。この混合塩について、各カチオンとアニオンの価数をzc1, zc2, …zcnc及び za1, za2, …zanaとすると、カチオンの全電荷Zcは、アニオンの全電荷Zaに等しく、Zc=λc1zc1 + λc2zc2 +…λcnczcnc = Za= λa1za1 + λa2za2 +…λanazanaとなる。
この混合塩が含まれる相内での各イオンの電荷の分担率を電荷シェアηと定義し、カチオン成分cjの電荷シェアをηcj=zcjλcj/ Zc、アニオンaiの電荷シェアをηai=zaiλai/ Zaとおく。これを用いることにより、上記組成の混合塩が含まれる相の内部に働く平均クーロン力Fpを下記式(3)によって求めることができる。尚、下記式において、naは相中に含まれるアニオン種の数、ncは相中に含まれるカチオン種の数を示す。
Figure 2014173172
ただし、2価カチオンM2+(Ba2+,Sr2+,Ca2+,Zn2+,Mg2+など)がLi+とともに溶融塩中に存在する場合は、リチウムと同等の効果があるものと考え、M2+=2Li+と置き換えて計算する。
上記式(3)を用いることにより、混合塩(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3が含まれる相の平均クーロン力を下記式によって求めることができる。
Figure 2014173172
ここでZLi+= ZNa+= ZK+=1、ZCO32-=2、ηLi+=0.435、ηNa+=0.315、ηK+=0.25、ηCO32-=1、であり、イオン半径は表1の数値を用いて、(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3の溶融塩からなる相の平均クーロン力Fpは6.80×10-9Nとなる。
二相分離溶融塩における一方の相が(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3の溶融塩からなる相であり、他方の相がKNO3の溶融塩からなる相である場合にはKNO3のクーロン力が2.51×10-9Nであることから、両相のクーロン力差ΔFは4.29×10-9Nとなり、相分離に必要な閾値である2.5×10-9Nを上回り、(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3−KNO3系の溶融塩は、2相分離した溶融塩となる。
上記した式(3)は、任意の組成の混合塩についてFpを計算できるので、前述した条件に基づいて、各相に含まれるアニオン及びカチオンの種類を予測した上で、検討したい組成について分離が可能かどうかを評価する判定式として用いることが出来る。
(3)混合溶融塩の組成決定方法
以下、二種以上のカチオンと二種以上のアニオンを含む混合物について、二相分離溶融塩の組成を求める方法について具体的に説明する。
先ず、前述したA相とB相の各相についての電荷シェアの求め方と同様にして、原料とする混合物全体を基準として、カチオン及びアニオンのそれぞれについて、電荷シェアを算出し、アニオンとカチオンのシェアをそれぞれ横棒の棒グラフに描く。その際イオンiのクーロンポテンシャルFiの序列で高いものを横棒グラフで示す電荷シェアグラフの左に置き、順次クーロンポテンシャルが低いものを右に置く。カチオンとアニオンにそれぞれ同様なグラフを並べて描いた場合、アニオンの電荷シェアの境目に対応してカチオンがそれぞれのアニオンに振り分けられる。この作業により、2種それぞれのアニオンに対応するカチオンの組成が決定できる。
以下、カチオン成分としてA,B,C及びDを含み、アニオン成分としてX及びYを含む混合塩について、二相に分離した溶融塩の各相の組成の予測方法を示す。
まず、該混合塩に含まれるイオンiのクーロンポテンシャルFiがカチオン成分についてA>B>C>Dであり、アニオン成分についてX>Yであって、それぞれの電荷シェアηがカチオンについてηA=0.2、ηB=0.3、ηC=0.4、ηD=0.1であり、アニオンについてηX=0.3、ηY=0.7である場合について、図1に示す電荷シェアを示す横棒グラフを用いて、グラフの上段にカチオンをクーロンポテンシャルが高い成分を左から順に記載する。同様に、グラフの下段に、アニオンをクーロンポテンシャルが高い成分を左から順に記載する。これらの場合、棒グラフにおける各成分の長さは、電荷シェアの大きさに対応した長さとして、カチオン全体の長さとカチオン全体の長さを同一とする。
二相に分離する境界は、アニオンに基づいて決まるので、クーロンエンルギーが強いアニオンXが含まれる相がA相となり、クーロンポテンシャルが低いアニオンYが含まれる相がB相となる。カチオンはアニオンに対応してカチオンBのみがA相およびB相の両相に分布する。
図1によれば、A相の組成は、相内でのカチオンの電荷シェアがA=2/3、B=1/3、アニオンはXのみとなる。これを組成式にあらわすと電荷シェアをそれぞれのイオンの価数で割ったA2/3/ZAB1/3/ZBX1/ZXとなり、A相の組成を知ることが出来る。一方B相は、相内でのカチオンの電荷シェアがB、C、Dそれぞれ2/7、4/7、1/7であり、アニオンはYのみであるので、組成式はB2/7/ZBC4/7/ZCD1/7/ZDY1/ZYとなる。
アニオンが3種類以上含まれる場合には、前述した通り、最もクーロンポテンシャルが高いアニオン(α)を含む相(A相)と最もクーロンポテンシャルが低いアニオン(β)を含む相(B相)の二相に分離され、アニオン(α)とアニオン(β)以外のアニオンについては、各アニオンのクーロンポテンシャルFiを、アニオン(α)のクーロンポテンシャルFiとアニオン(β)のクーロンポテンシャルFiと比較して、クーロンポテンシャルがより近いアニオンが含まれる相に取り込まれる。
上記した具体例において、アニオンとしてXとYの他に、その間のイオンのクーロンポテンシャルを示すアニオンWが存在する場合には、アニオンWは、アニオンXとアニオンYの内で、イオンのクーロンポテンシャルが近いアニオンが含まれる相に取り込まれる。
具体的には、原料とする混合塩全体を基準とした場合に、カチオンA,B,C及びDの電荷シェアが上記例と同じであって、アニオンX,W,Yについて、電荷シェアがX0.3、W0.3、Y0.4である場合には、電荷シェアは図2に示す横棒グラフで表すことができる。
WのイオンのクーロンポテンシャルがXよりもYに近い場合、アニオンWはB相に取り込まれて、A相とB相の界面が決定される。カチオンについては、アニオンの電荷シェアの境目に対応してカチオンがそれぞれのアニオンに振り分けられるので、図2の棒グラフにおいて、点線で示される界面が決定される。
相分離が予想されるA相とB相が実際に分離するかどうかを予想するためには、それぞれの相について上記式(3)を用いて平均クーロン力Fpを求め、その差ΔFを評価すればよい。上記式(3)を用いるためには、分離した相内での各イオンの電荷シェアを求めなくてはならない。図2では、電荷シェアグラフの電荷シェアの値は、2相分離する前の数値なので、それぞれ分離した相での電荷シェアを計算しなおす必要がある。B相での合計の電荷シェアはカチオンもアニオンも等しく、0.2+0.4+0.1=0.3+0.4=0.7となる。それぞれのイオンの電荷シェアを合計の電荷シェアで割ると、相分離後の電荷シェアを求めることができる。B相の各イオンの分離後の電荷シェアは、ηB=0.2/0.7=2/7、ηC=0.4/0.7=4/7、ηD=0.1/0.7=1/7、ηW=0.3/0.7=3/7、ηY=0.4/0.7=4/7となり、同様にA相については、分離後の合計電荷シェアは0.2+0.1=0.3となり、イオンそれぞれの電荷シェアは、ηA=0.2/0.3=2/3、ηB=0.1/0.3=1/3、ηX=0.3/0.3=1となる。
まずB相について上記式(3)を展開すると、示すアニオン2種(W,Y)とカチオン3種(B,C,D)を総当りした3×2=6項の下記多項式となる。
Figure 2014173172
また、A相について、同様に上記式(3)を展開すると、アニオン1種(X)とカチオン2種(A,B)を総当りした1×2=2項の下記多項式となる。
Figure 2014173172
具体的数値は、上で求めたそれぞれの相でのイオンの電荷シェアと、A,B,C,D,X,Y,Wにイオンを具体的にあてはめ、そのイオンに対応した価数、イオン半径を代入して計算を行うことによって得ることができる。
上記方法で求めたB相の平均クーロン力FpBとA相の平均クーロン力FpAの差を求めて、2.5×10-9Nより大きな値なら、図2のように分離すると予想でき、2.5×10-9Nより小さな値なら、分離せず、均一に混ざった溶融塩となることが予想される。
A相およびB相のそれぞれの組成は、各相に含まれるアニオンまたはカチオンそれぞれについて振り分けられた電荷シェアの合計で個別のイオンの電荷シェアを割り、さらに価数で割ることでモル分率を求めることができる。上記例の場合には、A相について、Aを2価、Bを1価、Xを2価、Wを1価とすると、A相の組成は、A1/3B1/3X1/2と求めることができる。同様にC,D,Yを1価とすると、B相の組成は、B2/7C4/7D1/7W3/7Y4/7となる。
W以外にさらに別のアニオンが含まれる場合には、そのアニオンのクーロンポテンシャルがXより小さく、Yより大きい限り、Wと同様の方法によって、Xが含まれるA相またはYが含まれるB相に帰属される。
(4)2相分離の可否及び組成予測方法
上記した原則に基づいて、任意の組成の混合塩について、2相分離の可否及び二相分離した場合の各相の組成予測方法について記載する。
カチオンA, B,・・I・・L, Mと、アニオンX, W, V,…Y、からなる混合塩について、上記式(1)に基づいて、各イオンのイオン半径よりイオンiのクーロンポテンシャルFiを求め、次のようにイオンを序列化する。
FA > FB >…> FI…> FL > FM
FX > FW > …>FV > FY
混合塩中の各イオンのモル分率を、カチオンについてxA, xB,…xI,…xL,とし、アニオンについてxM, xX, xW, xV,…xYとすると、混合塩の組成は下記式で表される。
AxABxB…IxI…LxLMxMXxXWxWVxV…YxY
各イオンの価数を、カチオンについてzA, zB,…zI,…zLとし、アニオンについて zM、zX, zW, zV,…zYとすれば、各イオンについてそれぞれモル分率と価数を掛け合わせ、アニオンまたはカチオンについて合算することで、カチオンの全電荷Zc及びアニオンの全電荷Zaを求めることができる。この場合、アニオンとカチオンの電荷はつりあわなければならないのでZc = Zaである。
Zc = zAxA + zBxB +…+ zIxI +…+ zMxM
Za = zXxX + zWxW + zVxV…+ zYxY
得られたZc及びZaを用いることによって、混合塩中におけるアニオンとカチオンそれぞれについて電荷シェアηを下記式により求めることができる。
ηA = zAxA/Zc、ηB = zBxB/Zc、…、ηI = zIxI/Zc、…、ηL = zLxL/Zc、ηM = zMxM/Zc、
ηX = zXxX/Za、ηW = zWxW/Za、ηV = zVxV/Za、…、ηY = zYxY/Za
アニオンまたはカチオンの電荷シェアの合算であるηaとηbはそれぞれ1となる。
ηa = 1 = ηA + ηB +…+ ηI +…+ ηL + ηM
ηb = 1 = ηX + ηW + ηV +…+ ηY
上記混合物が二相分離溶融塩を形成する場合には、アニオン成分に着目して、単イオンiのクーロンポテンシャルFiが最も高いXを含む相と、クーロンポテンシャルが最も低いYを含む相に分離され、その他のアニオンW,V,…については、イオンiのクーロンポテンシャルFiを比較して、XまたはYのFiの値の近い方に帰属される。A相のアニオンはXとこの相に帰属されたアニオンにより構成され、B相のアニオンはYとこの相に帰属されたアニオンにより構成される。それぞれの相で電荷シェアを足し合わせた、ηAphaseおよびηBphaseを下記式より計算する。
ηAphase = ηX +…
ηBphase = 1 - ηAphase = ηY +…
A相におけるアニオン電荷シェアηAphaseに等しくなるように、イオンiのクーロンポテンシャルFiの高い順にカチオンの電荷シェアを足し合わせる。A相に入ることができるカチオンは、イオンiのクーロンポテンシャルFiの高い順なので、あるカチオンIについては、A相とB相に振り分けられる場合がある。A相に振り分けられたIの分率をx(B相には1-x分が振り分けられる)とおくと、ηAphase= ηAB+…+xηI、となるので、これを解いてx=(ηAphase- ηXA - ηB -…)/ ηIとなる。同様にB相のカチオンについては、求めたxを用いてηBphase= (1-x) ηI+…+ηLM、となる。
A相とB相に属するイオンそれぞれの電荷シェアをηAphaseまたはηBphaseで割ったものが、二相分離後の各相内における電荷シェアとなる。この電荷シェアを用いて、上記した式(3)に基づいて、A相及びB相の各相内に働く平均クーロン力Fpを求めることができる。この様にして求めたA相に含まれるアニオンとカチオンの平均クーロン力FAと、B相に含まれるアニオンとカチオンの平均クーロン力FBの差ΔF=FA−FBが、好ましくは2.5×10-9N以上、より好ましくは4×10-9N以上の場合に、仕込み組成AxABxB…IxI…LxLMxMXxXWxWVxV…YxYの混合塩について2相分離した溶融塩を得ることができる。
二相分離した各相の組成については、A相またはB相の構成イオンの電荷シェアを、各相の電荷シェアの合計と価数で割るとそれぞれの相でのイオンの組成比λを求めることができる。
A相:λA = ηA /(zAηAphase)、λB = ηB /(zBηAphase)、…、λIa = xηI /(zIηAphase)、λX = ηX /(zXηAphase)、…
これからA相の組成式はAλABλB…IλIa XλX…となる。
B相:λIb = (1 − x)ηI /(zIηBphase) 、…、λL=ηL /(zLηBphase)、λM=ηM /(zMηBphase)、…、λY = ηY /(zYηBphase)
これからB相の組成式はIλIb …LλLMλM YλY…となる。
以上の方法によって、任意の組成の混合塩について、2相分離の可否及び二相分離した場合に各相の組成について、求めることができる。
二相分離溶融塩の製造方法
本発明の二相分離溶融塩は、上記した条件を満足するカチオンとアニオンを含む混合物を加熱して溶融させることによって得ることができる。
加熱時の雰囲気については特に限定的ではなく、使用する原料の種類に応じて適宜決めればよい。例えば、原料として炭酸塩を用いる場合には600℃を超える温度では二酸化炭素雰囲気とすることが好ましい。また、酸化反応を生じ易い原料として例えばヨウ化物を用いる場合には、還元性雰囲気、不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。
加熱温度については、使用する原料の組み合わせによって、前述した組成予測方法によりその組成が決まる二相分離溶融塩のそれぞれの相が溶解する温度以上とすればよい。温度の上限については、使用する原料の分解温度によって決めればよい。たとえば、原料として硝酸塩または炭酸塩を用いる場合には、硝酸イオン(500℃以下)または炭酸イオンの分解(1100℃以下)の温度を上限とする必要がある。
二相分離溶融塩の用途
一般に、溶融塩は、水や有機溶媒では溶解し得ないものを溶解することができ、更に、高温状態であることから、反応速度が速く、水や有機溶媒中では困難な反応を常圧で進行させることができる。このため、本発明の二相分離溶融塩は、二相に分離する特性に加えて、溶融塩としての特性を利用して各種の用途に用いることができる。
例えば、本発明の二相分離溶融塩のA相及びB相は、それぞれの相の構成成分となり得るイオンを選択的に多く溶解する性質を有する。このため、本発明の二相分離溶融塩は、多種類のイオンを含む混合物、例えば、核燃料、核廃棄物、鉱石、酸化物、塩類等から、特定のイオンを選択的に濃縮、分離する方法に用いることができる。
例えば、KNO3と(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3の二相に分離する溶融塩を用い、これに使用済み核燃料を溶解して反応させることによって、溶融炭酸塩中でウランを酸化してLi2UO4のような化合物として沈殿させて、ろ過回収することができる、この際、溶融炭酸塩中に残った核分裂生成物に含まれる希土類イオン、Ba2+、Sr2+、Ag+、Br-、I-、Cs+、Rb+等のうち、希土類や2価カチオンの多くはLi3PO4の添加によりリン酸塩として沈殿させ、ろ過分離させることが出来る。これらの反応は、前述した非特許文献3に記載されている条件に従って行うことができ、例えば、空気雰囲気下700℃程度の温度で反応させることができる。
(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3を主成分とする相中に残った一価のカチオン(Ag+、Cs+、及びRb+)やアニオン(Br-及びI-)は、リン酸塩としては沈殿し難く、上相となるKNO3に溶解し易いために、上相に移動して濃縮・分離することができる。当初使用した炭酸塩はさらなる核燃料処理に再利用可能となる。
尚、Csはクーロンポテンシャルが低いカチオンであることから、上記した組成の二相分離溶融塩以外の場合にも、クーロンポテンシャルの低いアニオンが含まれるB相中に濃縮させることができる。
また、溶融炭酸塩は有機物をガス化する能力に優れるため、例えば、KNO3-(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3二相分離溶融塩を用い、これに放射性Cs+イオンなどを含む有機物を添加して反応させることによって、有機物を水と一酸化炭素に変換し、ナトリウムやカリウムなどの灰分を溶融炭酸塩にとりこみ、除去したい放射性Cs+イオンについては、上相となるKNO3相に溶解し易いために、KNO3によって濃縮・分離することができる。これにより、汚染された有機物の減量化を図ることが出来る。
また、一般に溶融塩は電気やイオンを通しやすい利点を生かして電解により水溶液の電解では得がたい目的物を金属や析出物として得ている。二相の異なる組成からなる溶融塩に、それぞれの相でそれぞれ異なる電極に異なる電位を印加し電解を行うことで、異なる金属析出など、電解を利用した分離を行うことができる。
また、溶融塩の電解精錬においては金属を得る還元反応と、アニオンに関係した酸化反応が起きるが、2相溶融塩を用いることで、それぞれの反応を別の反応と置き換えることが可能になり、電解電圧の低減による省エネ化や、酸素のような不要な電解生成物を減らし工業的に有用な反応生成物を増やすことが可能になる。
また、塩類、鉱石等に不純物成分等の微量成分が含まれる場合に、この塩類、鉱石等を加熱して溶融塩とした場合に、塩類や鉱石からなる溶融塩の相とは異なる第二の溶融塩の相を微量成分と共に形成できる成分を添加して加熱することによって、塩類や鉱石の相から微量成分を第二の相に分離することができる。この場合、該微量成分と新たな相を形成する成分は、本発明における二相分離溶融塩を形成できるカチオンとアニオンの組み合わせから選択すればよい。この方法によれば、塩類、鉱石等から、効率良く不純物を分離することができ、また、有用な微量成分が含まれる場合に、これを濃縮することができる。
その他、セシウムの鉱石であるポルックス石(CsAlSi2O6)を二相分離溶融塩(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3-KNO3に加えて、二酸化炭素雰囲気下に添加して、炭酸塩と反応させることで、珪酸成分とアルミニウムを下相のA相(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3に残し、セシウムを上相B相のKNO3のカリウムイオンと置換することでセシウムを濃縮分離することができる。
更に、アニオンおよびカチオンがともに異なる塩類の混合物を加熱して溶融させる場合に、クーロン力が強いカチオンとアニオンの組み合わせの相と、クーロン力が弱いカチオンとアニオンの組み合わせの相に分離することができる。この方法によれば、原料として用いる塩のカチオンとアニオンを交換した新たな塩を容易に製造することができる。たとえば、炭酸セシウムおよび臭化リチウムをモル比1:2で混合し、二酸化炭素雰囲気下で800℃に過熱後冷却することで、炭酸リチウムと、純粋な臭化セシウムを分離して得ることができる。また、炭酸リチウムは臭化セシウムよりも先に固化し、臭化セシウム近傍の温度を低く傾斜させた環境で時間をかけて固化させることにより単結晶のより純粋な臭化セシウムを得ることができる。
本発明の溶融塩は、特定のカチオン成分とアニオン成分の組み合わせからなる二相に分離した従来知られていない新規な溶融塩である。
該溶融塩は、高温の溶融塩であることによって、水や有機溶媒では溶解し得ないものを溶解することができ、更に、反応性が高く、水や有機溶媒中では困難な反応を進行させることができるという優れた特性を有するものであり、更に、これに加えて二相に分離する特性を有することから、例えば、分離した二相間の親和性の差を利用したイオンの分離、イオン交換、特定のイオンの抽出、濃縮等の用途に有効に用いることができる。
アニオン成分が二種類の場合の電荷シェアを示す横棒グラフ。 アニオン成分が三種類の場合の電荷シェアを示す横棒グラフ。 実施例4で得られた二相分離溶融塩の上相及び下相のそれぞれから形成された固体について、X線回折測定により求めた回折パターンを示す図面。 液面からの深さと最大泡圧との関係を測定する方法の概略を示す図面。 実施例10で求めた液面からの深さと最大泡圧との関係を示すグラフ。 液面からの深さと電気抵抗との関係を測定する方法の概略を示す図面。 実施例11で求めた液面からの深さと電気抵抗との関係を示すグラフ。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
炭酸リチウム(キシダ化学、純度99.99%、以下同様)36.65g、炭酸カリウム(キシダ化学、純度99.5%、以下同様)36.49g、及びヨウ化カリウム(キシダ化学、純度99.5%、以下同様)13.28gをルツボ中で混合し、二酸化炭素雰囲気中、780℃で加熱して溶融塩を作製した。
この溶融塩の温度を変化させて表面張力を測定したところ、温度の上昇と共に表面張力が上昇する通常とは逆の異常な挙動を示した。得られた溶融塩を含むルツボを取り出して目視で確認したところ、透明な液体の下のルツボの底部に赤みのある液体相の存在が確認できた。
各相について、原子吸光分析装置(セイコーインスツルメンツ製 SAS760)によりカチオンを分析し、イオンクロマト装置(ICS-1000)によりアニオンを分析した結果、上相はLi2CO3-K2CO3(Li:Kモル比=62:33)(0.76モル=73.11g)からなる炭酸塩の液体で、下相はヨウ化カリウム(0.08モル=13.34g)を主成分として微量のヨウ素を含む液体であることが確認できた。上記した式(3)を用いて、各相のクーロン力を算出し、クーロン力の差ΔFを求めた結果、ΔF=5.18×10-9Nであった。
比較例1
炭酸リチウム30.74g、炭酸ナトリウム(キシダ化学、純度99.5%)36.46g、及びヨウ化ナトリウム(キシダ化学、純度99.5%)11.99gをルツボ中で混合し、二酸化炭素雰囲気中、780℃で加熱して溶融塩を作製した。
得られた溶融塩を含むルツボを取り出して目視で観察したが、二相分離した溶融液は確認できなかった。
これは、分離を期待した二相((Li0.55Na0.45)2CO3-NaI)にそれぞれ高い比率で共通にナトリウムイオンが存在したため、二相分離を起こさなかったものと考えられる。
実施例2
炭酸リチウム20.00g、炭酸セシウム(キシダ化学、純度99.99%)20.00g、及び硝酸カリウム(キシダ化学、純度99%)40.00gをルツボ中で混合し、二酸化炭素雰囲気中、650℃で加熱して溶融塩を作製した。
得られた溶融塩を含むルツボを取り出して、目視で観察したところ、透明の液体からなる上相と黄緑がかった液体からなる下相の二相に分離した溶融塩が形成されていることが確認できた。
各相について、原子吸光分析装置(セイコーインスツルメンツ製 SAS760)によりカチオンを分析し、イオンクロマト装置(ICS-1000)により炭酸イオンを除くアニオンを分析した結果、上相はリチウム-カリウムをカチオンの主成分とする炭酸塩(Li0.82K0.18)2CO3(0.33モル=28.5g)であり、下相はセシウムが濃縮されカリウムをカチオンとして含む硝酸塩K0.69Cs0.31NO3(0.4モル=51.5g)であった。上記した式(3)を用いて、各相のクーロン力を算出し、クーロン力の差ΔFを求めた結果、ΔF=5.10×10-9Nであった。
実施例3
炭酸リチウム20.00g、ヨウ化カリウム20.00g、及び炭酸セシウム40.00gをルツボ中で混合し、二酸化炭素雰囲気中、650℃で加熱して融解させたところ、透明な液体の上に濁った丸い液滴が浮かんでいるのが観察された。
各相について、原子吸光分析装置(セイコーインスツルメンツ製 SAS760)によりカチオンをイオンクロマト装置(ICS-1000)により炭酸イオンを除くアニオンを分析した結果、上相の液滴は、(Li0.69K0.15Cs0.16)2CO3(0.39モル=48.70g)あり、下相はヨウ化セシウム(0.12モル=31.30g)であった。上記した式(3)を用いて、各相のクーロン力を算出し、クーロン力の差ΔFを求めた結果、ΔF=5.42×10-9Nであった。
実施例4
炭酸セシウムCs2CO3 23.94gおよび臭化リチウムLiBr(キシダ化学、純度95%)13.92gの混合物を金ルツボに入れ、空気雰囲気中で750℃に加熱して融解させた。電気炉から取り出して観察したところ、二相に分離した溶融塩が観察された。この溶融塩を大気中に放置したところ、上相が先に固化し、ルツボを傾けることでまだ液体であった下相と分離することが出来た。
上相及び下相のそれぞれから形成された固体について、X線回折法(XDR)により求めた回折パターンを図3に示す。
上相から形成された固体は白く、XRDによりCsBrを少量含むLi2CO3であることが確認できた。一方、下相から形成された固体は、XRDによりほぼ純粋なCsBrであることが確認できた。
クーロン力が強い組み合わせとなるLi2CO3が集まってA相を形成し、クーロン力の弱い組み合わせであるCsBrがこれから分離されてB相が形成された結果と考えられる。式(3)を用いて算出したクーロン力の差は、ΔF=6.26×10-9Nであった。
以上の方法によって、炭酸セシウムと臭化リチウムのアニオンとカチオンが交換することにより、水溶液を経ない新しい方法でほぼ純粋な臭化セシウムを合成することが出来た。
実施例5
炭酸セシウムCs2CO3 14.5549g、臭化リチウムLiBr14.4252gおよび炭酸ストロンチウムSrCO30.8852gを混合後、金ルツボに入れ二酸化炭素雰囲気中800℃で混合した後、温度を下げてLi2CO3を主成分とする上相を固体として分離した。分離された上相の固体5.6707gを塩酸に溶かし、炭酸ナトリウムを加え中和した後、硫酸カリウム水溶液を加えて硫酸ストロンチウムを沈殿させ、ろ過することにより、硫酸ストロンチウム0.9858g(ストロンチウムの89.5%)を得た。
このことから、核廃棄物成分としてストロンチウム、セシウム、ヨウ素などが含まれる核燃料の再処理において、本発明の二相分離溶融塩を用いることにより、クーロン力が弱い成分の組み合わせであるCsBrからなるB相に溶けやすいセシウムやヨウ素と、クーロン力が強い成分の組み合わせである炭酸塩からなるA相に溶けやすいストロンチウムとを分離出来ることがわかった。
実施例6
ヨウ化カリウム9.95g(融点685℃)及び炭酸リチウム7.24gの混合物を水素雰囲気900℃で融解したところ、二相に分離した液体を得た。
温度を下げて固化させて二相に分離した固体を得た後、各相のXDR測定を行ったところ、固化した下相は純粋なKIであり、固化した上相はLi2CO3を主成分とし、KIの結晶を含む固体であることが分かった。式(3)を用いて算出したクーロン力の差は、ΔF=6.21×10-9Nであった。
実施例7
ヨウ化カリウム5.05g(融点685℃)及びフッ化リチウム8.22g(キシダ化学、98%、融点845℃)の混合物を水素雰囲気900℃で融解したところ、二相に分離した液体を得た。
温度を下げて固化させて二相に分離した固体を得た後、各相のXDR測定を行ったところ、固化した下相は純粋なKIであり、固化した上相はLiFを主成分とし、KIの結晶を含む固体であることが分かった。この実験により、性質のよく似たアルカリ金属イオン同士(Li+とK+)や、ハロゲンイオン同士(F-とI-)でもクーロン力の違いにより分離することが明らかとなった。式(3)を用いて算出したクーロン力の差は、ΔF=3.48×10-9Nであった。
また、以上の結果から、カリウムイオンよりもクーロンポテンシャルの低いイオンであるルビジウムイオンまたはセシウムイオンを含むヨウ化物とフッ化リチウムを原料とする場合に、LiF-RbI(ΔF=3.61×10-9N)又はLiF-CsI(ΔF=3.74×10-9N)という二相分離した溶融塩を生ずることが予測できる。
実施例8
硝酸カリウム(キシダ化学、純度99%、融点337℃)23.21g及び無水水酸化リチウム(キシダ化学、純度98%、融点462℃)8.61gの混合物を窒素雰囲気下500℃以上に加熱して溶融させたところ、二相に分離した液体が得られた。
この液体の温度を下げて固化させて、各相のXDR測定を行ったところ、固化した下相は純粋なKNO3であり、固化した上相はLiOHを主成分とし、KNO3の結晶を含む固体であることが分かった。式(3)を用いて算出したクーロン力の差は、ΔF=2.57×10-9Nであった。
この結果からカリウムイオンよりもクーロンポテンシャルの低いイオンであるルビジウムイオンまたはセシウムイオンの硝酸塩と、無水水酸化リチウムを原料とする場合には、LiOH-RbNO3(ΔF=2.79×10-9N)又はLiOH-CsNO3(ΔF=2.99×10-9N)という二相分離した溶融塩を生ずることが予測できる。
実施例9
ヨウ化カリウム(融点685℃)20g及び硫酸リチウム(キシダ化学、純度99%、融点859℃)20gの混合物を窒素雰囲気下850℃以上に加熱して溶融させたところ、二相に分離した液体が得られた。
この液体の温度を下げて固化させたところ、明瞭に二相に分離した固体が得られた。各相についてXDR測定を行ったところ、固化した下相は純粋なKIであり、固化した上相はLi2SO4を主成分とし、KIの結晶を含む固体であることが分かった。式(3)を用いて算出したクーロン力の差は、ΔF=2.71×10-9Nであった。
この結果から、カリウムイオンよりもクーロンポテンシャルの低いイオンであるルビジウムイオンまたはセシウムイオンのヨウ化物と、硫酸リチウムを原料とする場合には、Li2SO4-RbI(ΔF=2.84×10-9N)又はLi2SO4-CsI(ΔF=2.97×10-9N)という二相分離した溶融塩を生ずることが予測できる。
実施例10
炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムのモル比が0.435:0.315:0.25となるようにそれぞれ32.147g,33.391g,34.556g秤量し混合し、炭酸塩混合物を得た。
この炭酸塩混合物と硝酸カリウムをそれぞれ52.544gと17.694g秤量し、混合して二酸化炭素雰囲気下430℃以上に加熱して溶融させたところ、二相に分離した液体が得られた。
得られた溶融塩の液面にアルミナキャピラリを接触させ、深さを変化させて内部に窒素ガスを送り、気泡が生じる際の圧力を差圧計により測定した。測定方法の概略を図4に示す。アルミナキャピラリの深さに伴って測定される圧力は上昇し、この傾きから液体の密度を求めることができた。液面からの深さと最大泡圧との関係を図5のグラフに示す。
図5に示された直線には、明瞭なギャップが存在し、ギャップをはさんで測定された直線の傾きがそれぞれ異なることから、密度が異なることが確認できる。この結果から、上記した溶融塩では、2つの密度の異なる液体が界面をはさんで存在していることがわかった。また、ギャップの位置から二相に分離した液体の界面の位置を求めることができた。
上相の密度は溶融硝酸カリウムに近い値を示し、下相の密度は炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムの混合物の溶融塩に近い値を示した。この結果から、この系では上相が溶融した硝酸カリウムであり、下相が溶融した炭酸塩の混合物(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3と考えられる。この結果は、固化した固体の分析結果と一致した。
実施例11
実施例10で調製した炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムのモル比が0.435:0.315:0.25の炭酸塩混合物26.290gと硝酸カリウム8.8497gの混合物をAuPd合金ルツボにいれ、二酸化炭素雰囲気下400℃以上で加熱して、溶融させたところ、二相に分離した液体が得られた。
アルミナ製絶縁管(内径1mmφ)から先端部のみ露出した金電極2本を5mmの間隔をあけて同じ高さに並べ、溶融塩に差し込み、1kHzの交流を用いて電気抵抗を測定した。測定方法の概略を図6に示す。この方法で測定した液面からの深さと電気抵抗との関係を図7のグラフに示す。図7から明らかなように、液面から5mmを超える位置までは、電気抵抗が比較的低くほぼ一定の値を示し、これより深い位置で電位抵抗が急上昇して、その後、ほぼ一定の値を示した。この結果から、上記した溶融塩では、2つの異なる均一な相が境界線を挟んで接していることがわかった。上相は、KNOの溶融塩からなる相であり、下相は、溶融した炭酸塩の混合物(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3と考えられる。この方法によれば、二相分離した溶融塩について、境界線の深さを求めることが可能である。
実施例12
塩化リチウム(キシダ化学、純度99%、融点610℃)4.239g及び炭酸セシウム(融点793℃)16.293gを混合し、二酸化炭素雰囲気下電気炉により760℃に昇温し溶融させたところ、二相に分離した液体が得られた。
各相についてXRDにより分析した結果、上相は炭酸リチウムであり、下相は塩化セシウムであった。
この溶融塩の原料は、塩化リチウムと炭酸セシウムが等モル(0.05モル)同士の混合であることから、それぞれのアニオンに対してカチオンが交換して、二相に分離した溶融塩となった。二相分離した溶融塩の各相について、式(3)を用いて算出したクーロン力の差は、ΔF=6.10×10-9Nである。
実施例13
ヨウ化カリウム(キシダ化学、純度99.5%、融点685℃)5.227g及びモリブデン酸リチウム(キシダ化学、純度98%、融点705℃)4.561gの混合物を窒素雰囲気下で800℃以上に加熱して溶融させ、その後、温度を低下させて固化させたところ、二相に分離した固体が得られた。
800℃で分離が予想される液相の密度(KI2.33gcm-3、Li2MoO42.81gcm-3)および上相の粗な結晶から考えて、上相はKI、下相はLi2MoO4と考えられる。この場合、式(3)を用いて算出したクーロン力の差は、ΔF=3.65×10-9Nである。
この結果から、カリウムイオンよりもクーロンポテンシャルの低いイオンであるルビジウムイオンまたはセシウムイオンのヨウ化物と、モリブデン酸リチウムを原料とする場合には、Li2MoO4-RbI(ΔF=3.78×10-9N)又はLi2MoO4-CsI(ΔF=3.91×10-9N)という二相分離した溶融塩を生ずることが予測できる。
実施例14
ヨウ化カリウム(融点685℃)及びタングステン酸リチウム(ナカライテスク、98%、融点742℃)の混合物を800℃以上で融解したのち温度を低下させて固化させたところ、二相に分離した個体が得られた。
800℃で分離が予想される液相の密度(KI2.33gcm-3、Li2WO4 4.21gcm-3)および上相の荒い結晶から考えて、溶融塩の状態で分離した際、上相はKI、下相はLi2WO4となっていたと考えられる。この場合、式(3)を用いて算出したクーロン力の差は、ΔF=3.84×10-9Nである。
この結果から、カリウムイオンよりもクーロンポテンシャルの低いイオンであるルビジウムイオンまたはセシウムイオンのヨウ化物と、タングステン酸リチウムを原料とした場合には、Li2WO4-RbI(ΔF=3.97×10-9N)又はLi2WO4-CsI(ΔF=4.10×10-9N)という二相分離した溶融塩を生ずることが予測できる。
実施例15
炭酸イオンと臭化物イオンを主体に分離する2相溶融塩にフッ化物イオンと硝酸イオンがどのように分配されるかを調べるため、以下の実験を行った。
まず、炭酸リチウムLi2CO37.3765g、炭酸ナトリウムNa2CO3 10.6075g、臭化リチウムLiBr(キシダ化学、純度95%)8.6829g、フッ化カリウム5.8247g、及び硝酸カリウム20.2216gを混合し金パラジウム(80:20wt%)合金ルツボに入れ、窒素雰囲気500℃で溶解させた。2相分離した溶融塩に、底付近と表面付近それぞれの場所でアルミナ管を用いて、上相と下相それぞれの溶融塩を採取した。採取塩をそれぞれ乳鉢で粉砕後、上相0.1006g及び下相0.1084gを採取して水に溶かし、100mlにメスアップ後、1mlとり水を加えて100mlの試料液とした。これら試料液について、原子吸光分析装置(セイコーインスツルメンツ製 SAS760)によりリチウム、ナトリウム、カリウムの分析を行い、イオンクロマト装置(ICS-1000)により炭酸イオンを除く硝酸イオン、フッ化物イオンおよび臭化物イオンの分析を行った。結果を下記表3に示す。
Figure 2014173172
表3から、Brを主体とするB相にはNO3が取り込まれ、CO3を主体とするA相にはFが取り込まれることがわかる。この結果から、2相分離溶融塩は、アニオンの分離にも使用できることが明らかとなった。
また、アニオンのクーロンポテンシャルの序列は、CO3 2->F->NO3 ->Br-であり、表1から、F-はCO3 2-に近く、NO3 -はBr-に近いクーロンポテンシャルを示す。その結果、F-は大部分がCO3 2-を主体とするA相に存在し、NO3 -は大部分がBr-を主体とするB相に存在することがわかった。
この実験について、2相分離の有無及びその組成を予測した計算方法を以下に示す。使用した試薬の秤量値とモル数は下記表4の通りであった。
Figure 2014173172
この表をもとに、溶融塩中での各イオンの電荷量をモル数×価数により求め、その総和をカチオンまたはアニオンについて求めた0.8という数値でそれぞれのイオンの電荷量を割ることで、各イオンの電荷シェアを求めた。結果は、下記表5の通りである。
Figure 2014173172
表1に示す値から、クーロンポテンシャルの序列はCO3 2-> F->> NO3 ->Br-であり、炭酸イオンと臭化物イオンを主体にアニオンは分離すると予想された。これらのアニオンのクーロンポテンシャルFiを比較して、フッ化物イオンは、炭酸イオンの相に帰属し、硝酸イオンは臭化物イ
オンの相に帰属すると判断された。
A相における炭酸イオンとフッ化物イオンの電荷シェアの合計は0.5+0.125=0.625であり、B相における臭化物イオンと硝酸イオンの電荷シェアの合計は0.125+0.25=0.375であった。A相においてカチオンの電荷シェアの合計が0.625になるようにクーロン力の強い順Li+>Na+>K+に、電荷シェアを足し合わせたところ、リチウムイオン+ナトリウムイオン=0.625となったので、A相にはリチウムとナトリウムが帰属させ、B相には残余のカリウムを帰属させた。この結果、分離後のA相におけるLi,Na,CO3,Fの電荷シェアは、分離前の電荷シェアを0.625で割ってそれぞれ、0.600、0.400、0.800、0.200となり、一方、分離後のB相におけるK,NO3,Brの電荷シェアは、分離前の電荷シェアを0.375で割ってそれぞれ、1.000、0.667、0.333となった。また、これらの値に基づいて、各相におけるカチオン及びアニオンのそれぞれのモル比を求めた。これらの結果を下記表6に示す。
Figure 2014173172
これらの電荷シェアの数値と、表1に記載したイオン半径、および式(3)を用いて、A相における平均クーロン力FpAと、B相における平均クーロン力FpBを次式により求めた。
Figure 2014173172
計算値は、FpA=6.90、FpB=2.36、ΔF=FpA−FpB=4.54となり、クーロン力の差から、十分に二相分離することが予想された。
上記予測方法により、Li2CO3-Na2CO3-LiF-LiBr-KNO3混合塩は、Li0.6Na0.4(CO3)0.4F0.2およびKBr1/3(NO3)2/3の組成に分離した2相溶融塩となることが予想される。
表3に示した分析結果より、2相分離したアニオンの各相の組成は予想値と良い一致を示した。カチオンについては、A相中のKの分析値が予想値と比較して高い値を示したが、これは、二相溶融塩の形成条件の項に記載した通り、クーロン力の弱いB相の成分が、A相に混入し易い効果によるものと考えられる。
実施例16
炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムのモル比が0.435:0.315:0.25となるようにそれぞれ32.1439g,33.3878g,34.5569g秤量し混合し、700℃の空気中で溶融させ固化した炭酸塩混合物を作製した。
この炭酸塩混合物5.0392gと硝酸カリウム7.5672g、炭酸セシウム(キシダ化学99.99%)0.8547gおよび炭酸ストロンチウム(95%)0.7065gを金ルツボに入れ、空気中600℃に加熱して溶融させたところ、透明な二相に分離した液体が得られた。液体をアルミナルツボ(ニッカトー製、SSA-S)に移しかえ、炉に戻して600℃からゆっくりと冷ました。
得られた固体は2相に分離しており、それぞれ上相および下相の試料を分割、粉砕して採取した。XRD測定により上相は硝酸塩(KNO3およびCsNO3)を示すプロファイルが得られ、一方下相の固体は炭酸塩に一致する複雑なピークを示した。上相および下相のそれぞれの粉末100.89mgおよび105.11mgを塩酸2mlで溶解し、100mlに希釈したものを1mlとり、さらに50mlに希釈した液を、イオンクロマトグラム(ダイオネクス製ICS-1000)によりカチオン成分について分析を行った。結果を下記表7に示す。
Figure 2014173172
上記表から、KNO3と(Li0.435Na0.315K0.25)2CO3-の二相に分離した溶融塩において、クーロンポテンシャルの低いセシウムイオンは主としてKNO3相に帰属し、クーロンポテンシャルの高いストロンチウムイオンは、主として炭酸塩相に帰属することが確認できる。
この結果から、使用済み核燃料に含まれるセシウムイオンとストロンチウムイオンについて、上記した二相分離溶融塩で処理することによって、セシウムイオンはKNO3を主成分とする上相に濃縮でき、ストロンチウムイオンは溶融炭酸塩に溶解させ、セシウムと分離できることがわかる。

Claims (7)

  1. Liを含む二種以上のカチオンと二種以上のアニオンからなり、
    クーロンポテンシャルが最も高いアニオン(α)を含むA相とクーロンポテンシャルが最も低いアニオン(β)を含むB相の二相に分離していることを特徴とする、二相分離溶融塩。
  2. アニオン(α)及びアニオン(β)以外のアニオンが含まれる二相分離溶融塩であって、
    アニオン(α)に近いクーロンポテンシャルを有するアニオンが主としてA相に含まれ、アニオン(β)に近いクーロンポテンシャルを有するアニオンが主としてB相に含まれる、請求項1に記載の二相分離溶融塩。
  3. クーロンポテンシャルが高いカチオンから順にA相に含まれる、請求項1又は2に記載の二相分離溶融塩。
  4. A相に含まれるアニオンとカチオンの平均クーロン力FAと、B相に含まれるアニオンとカチオンの平均クーロン力FBとの差ΔF=F−Fが2.5×10−9以上である、項1〜3のいずれかに記載の二相分離溶融塩。
  5. 平均クーロン力が、下記式(3)
    Figure 2014173172
    (式中、naは相中に含まれるアニオン種の数、ncは相中に含まれるカチオン種の数、 Zaiはアニオンiの価数、raiはアニオンiのイオン半径、ηai はアニオンiの電荷シェア、Zcj はカチオンjの価数、rcjはカチオンjのイオン半径、ηcjはカチオンjの電荷シェア、kはクーロン定数、eは電気素量である)により算出されたものである、上記項4に記載の二相分離溶融塩。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の二相分離溶融塩の製造方法であって、
    A相及びB相を形成するアニオンとカチオンを含む混合物を加熱して溶融することを特徴とする、二相分離溶融塩の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の二相分離溶融塩と、セシウムイオンを含む使用済み核燃料を接触させて、セシウムイオンをB相中で濃縮させることを特徴とする、使用済み核燃料の処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN105506311A (zh) * 2015-12-28 2016-04-20 中南大学 一种制取金属砷块的方法
JP2016188347A (ja) * 2015-03-30 2016-11-04 綜研テクニックス株式会社 溶融塩型熱媒体

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