JP2014161275A - Atpの定量方法及びそれに用いるキット - Google Patents

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Abstract

【課題】検量線を使用することなく、ATP濃度を経時的に測定することが可能なATPの定量方法及びこの方法に用いるキットを提供すること。
【解決手段】ATPをルシフェラーゼの触媒活性の下でルシフェリンと反応させることにより発生する発光強度を測定することにより試料中に含まれるATPを定量する方法であって、前記ルシフェラーゼとしてATPに対するKm値が互いに異なる少なくとも2つのルシフェラーゼを使用し、各ルシフェラーゼについての発光強度を同じ時系列で少なくとも2つの時点において測定することを含むATPの定量方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応による発光を利用したATP(アデノシン三リン酸)の定量方法、及び、この方法に用いるキットに関する。
細胞内のシグナル伝達および遺伝子発現といった細胞の機能を測定するためには、蛍光色素および蛍光タンパク質といった蛍光プローブ並びにルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を利用する発光プローブが用いられている。特に遺伝子の発現調節の解析には、励起光による細胞のダメージが生じず且つ自家発光の問題が生じない、定量性に優れた発光計測が用いられる。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子が導入された細胞を観察する場合、ルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量を測定することで、ルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さ(具体的には発現量)を調べることができる。
また、ルシフェラーゼの発光反応は、ATP量に依存するため、ルシフェラーゼは、ATPの定量的検出のために利用されている。ATPは、細胞内でのエネルギー通貨であるとともに、シグナル伝達系のリン酸化反応の基質でもあり、細胞内で非常に重要な役割を担っている。そのため、細胞内のATP濃度の測定は細胞機能解析にとって重要である。
従来において細胞内のATP量の測定は、例えば、最初に細胞を溶解して細胞溶解液を作製し、その後この細胞溶解液にルシフェリンおよびルシフェラーゼ等を添加し、光電子増倍管を用いたルミノメーターで定量するという手順で行われる。すなわち、発光量の測定は細胞を溶解した後に行われる。このため、ある時点での発光量は、細胞全体の平均値として測定される。すなわち、個々の細胞の持つ情報は失われ、単一の細胞内のATP濃度を知ることはできず、また、時間経過によるATP濃度の変化を知ることもできない。
時間経過に沿ってATP量を分析するには、生きた細胞からの発光量を経時的に測定する必要がある。このような測定は、通常、ルミノメーターを備えたインキュベーターにて細胞を培養し、全細胞集団からの発光量を一定時間ごとに定量し、これをATP標準液を用いて作成した検量線に照らして発光量に対するATP濃度を定量することにより行われる(例えば、非特許文献1を参照)。しかしながら、このような測定方法は、細胞集団全体の観測に止まり、個々の細胞におけるATP濃度を経時的に測定することはできない。
Pierre Maechler,Haiyan Wang,Claes B.Wollheim,"Continuous monitoring of ATP levels in living insulin secreting cells expressing cytosolic firefly luciferase",FEBS Letters 422,pp.28−332,1998
同一の生きた単一細胞内のATP濃度を時系列で定量することができれば、ATPの新しい役割が解明されることが期待されるため、細胞機能解析にとって極めて重要であるところ、上掲の通り、この要望に応えられる適切なATP(ATMになっておりましたので、訂正しました。)の定量技術が確立されていないのが実情である。
本発明は、検量線を使用することなく、ATP濃度を経時的に測定することが可能なATPの定量方法及びこの方法に用いるキットを提供することを目的とする。
上記課題を達成するために、本発明に係るATPの定量方法は、一態様において、ATPをルシフェラーゼの触媒活性の下でルシフェリンと反応させることにより発生する発光強度を測定することにより試料中に含まれるATPを定量する方法であって、上記ルシフェラーゼとしてATPに対するKm値が互いに異なる少なくとも2つのルシフェラーゼを使用し、各ルシフェラーゼについての発光強度を同じ時系列で少なくとも2つの時点において測定することを含む。
本発明の一形態において、時系列的に発光強度が測定された少なくとも2つの上記ルシフェラーゼの中から、第一のルシフェラーゼと第二のルシフェラーゼが選択され、第一のルシフェラーゼにおける任意の2つの時点における発光強度の比と、第二のルシフェラーゼにおける、上記2つの時点と同じ2つの時点における発光強度の比とが求められる。
例えば、この第一のルシフェラーゼにおける任意の2つの時点における発光強度の比と、第二のルシフェラーゼにおける、上記2つの時点と同じ2つの時点における発光強度の比と、更に、第一のルシフェラーゼのATPに対するKm値と、第二のルシフェラーゼのATPに対するKm値を、ミカエリス・メンテン式に代入することにより下式(I)及び(II)が導かれ、上記2つの時点におけるATP濃度が定量される。
Figure 2014161275
式中の各記号は以下に示す意味を表す。
:時点tにおけるATP濃度(M)
:時点tにおけるATP濃度(M)
ma:第一のルシフェラーゼのATPに対するKm値
mb:第二のルシフェラーゼのATPに対するKm値
:Va2/Va1
:Vb2/Vb1
a1:時点tにおける第一のルシフェラーゼの発光強度
a2:時点tにおける第一のルシフェラーゼの発光強度
b1:時点tにおける第二のルシフェラーゼの発光強度
b2:時点tにおける第二のルシフェラーゼの発光強度
本発明の一形態において、時系列的に発光強度が測定される少なくとも2つの上記ルシフェラーゼにおけるATPに対するKm値の差は、10μM以上であってよい。
また、本発明の一形態において、時系列的に発光強度が測定される少なくとも2つの上記ルシフェラーゼ中、最も高いKm値を有するルシフェラーゼにおけるKm値が100μM以上であってよい。
また、本発明の一形態において、時系列的に発光強度が測定される少なくとも2つの上記ルシフェラーゼの中の1つが、マレーシア産のLuciola属に属するホタルに由来するルシフェラーゼであってよい。
また、本発明の一形態において、マレーシア産のLuciola属に属するホタルに由来する上記ルシフェラーゼは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むものであってよい。
また、本発明の一形態において、時系列的に発光強度が測定される少なくとも2つの上記ルシフェラーゼにおける最大発光波長が互いに異なり、これらルシフェラーゼがATPを含む同じ試料中に導入され得る。
また、本発明の一形態において、ATPを含む上記試料は生体由来であってよく、また、この生体は、例えば細胞であってよい。
本発明は、他の態様において、上掲のATP定量方法において使用される、ATPに対するKm値が互いに異なる2以上のルシフェラーゼ遺伝子をそれぞれ含む2以上の核酸を含むキットに関する。
本発明の一形態において、このキットにおける少なくとも2つの上記ルシフェラーゼ遺伝子におけるATPに対するKm値の差は、10μM以上であってよい。
また、本発明の一形態において、このキットに含まれる核酸の一つは、配列番号2に示される塩基配列を含むものであってよい。
本発明により、検量線を使用することなく、ATP濃度を経時的に測定することが可能なATPの定量技術が提供されたため、単一の生細胞内のATP濃度における経時による変化量を測定することが可能になった。これにより、ATPの新しい役割が解明されることが期待される。
Km値が互いに異なる2つのルシフェラーゼの触媒反応における、発光強度とATP濃度との関係を示す図。 本発明の一形態において使用されるSP2ルシフェラーゼの各種pHにおける発光スペクトルを示す図。 本発明の一形態において測定される、Km値が互いに異なる2つのルシフェラーゼの発光強度の経時変化を示す図。
以下、本発明を詳細に説明する。
ルシフェラーゼは、一般に、発光が生じる化学反応を触媒する酵素を指す。ルシフェラーゼは、ATPに感受性があり、ATPの濃度変化に応じて発光強度が変化する。本発明に係るATPの定量方法は、このルシフェラーゼによる発光を利用したものであり、ATPをルシフェラーゼの触媒活性の下でルシフェリンと反応させることにより発生する発光強度を測定することにより試料中に含まれるATPを定量する。
ルシフェラーゼのATPに対する感受性は、酵素学的パラメーターの1つであるミカエリス定数(Km)で表される。ここにいう、ATPに対するKmとは、ルシフェラーゼによって触媒されるATPとルシフェリンとの反応において、ルシフェリンが十分に存在している場合に、ATP濃度と反応速度との関係を示すミカエリス・メンテン式におけるKmである。すなわち、以下の式(1)に示されるミカエリス・メンテン式におけるKmである。
Figure 2014161275
この式において、vは反応速度または発光強度を意味し、[S]はATP濃度を意味する。また、VmaxはATPが十分量存在するときの反応速度を意味する。
図1は、ルシフェラーゼの触媒反応におけるATP濃度と発光強度との関係を、ATP濃度を横軸とし発光強度を縦軸としてプロットしたものであり、この図には、ATPに対するKm値が互いに異なる2つのルシフェラーゼに関するプロットが示されている。この図から、同じATP濃度の変化量に対する発光強度の変化量が、ATPに対するKm値が互いに異なる2つのルシフェラーゼの間で異なっていることがわかる。
本発明に係るATPの定量方法は、この知見に基づき開発されたものであり、ATPに対するKm値が互いに異なる少なくとも2つのルシフェラーゼを使用し、各ルシフェラーゼについての発光強度を同じ時系列で少なくとも2つの時点において測定することを第一の特徴とするものである。
具体的には、上記方法により時系列的に発光強度が測定された少なくとも2つのルシフェラーゼの中から、第一のルシフェラーゼと第二のルシフェラーゼを選択し、第一のルシフェラーゼにおける任意の2つの時点(t、t)における発光強度(Va1、Va2)の比(Va2/Va1=X)と、第二のルシフェラーゼにおける、前記2つの時点と同じ2つの時点(t、t)における発光強度(Vb1、Vb2)の比(Vb2、Vb1=X)とを求める。得られたこれら2つの比(X、X)と、第一のルシフェラーゼのATPに対するKm値(Kma)と、第二のルシフェラーゼのATPに対するKm値(Kmb)とを、ミカエリス・メンテン式(上掲の式(1))に代入し、時点tにおけるATP濃度(S)、及び、時点tにおけるATP濃度(S)について解くことにより、下記に示す式(I)及び(II)を得る。
Figure 2014161275
式中の各記号は以下に示す意味を表す。
:時点tにおけるATP濃度(M)
:時点tにおけるATP濃度(M)
ma:第一のルシフェラーゼのATPに対するKm値
mb:第二のルシフェラーゼのATPに対するKm値
:Va2/Va1
:Vb2/Vb1
a1:時点tにおける第一のルシフェラーゼの発光強度
a2:時点tにおける第一のルシフェラーゼの発光強度
b1:時点tにおける第二のルシフェラーゼの発光強度
b2:時点tにおける第二のルシフェラーゼの発光強度
本発明に係るATPの定量方法によれば、ATPに対するKm値が互いに異なる第一及び第二のルシフェラーゼの各Km値と、上記定量方法により時系列的に発光強度が測定された第一のルシフェラーゼにおける任意の2つの時点における発光強度の比と、第二のルシフェラーゼにおける、上記2つの時点と同じ2つの時点における発光強度の比とを求めることにより、ATP標準液を用いて作成される検量線を使用することなく、ATP濃度を時系列で測定することが可能となる。
本発明に係るATPの定量方法に使用される少なくとも2つのルシフェラーゼは、精度等の観点から、Km値の差が10μM以上であることが好ましく、100μM以上であることがより好ましく、500μM以上であることが更に好ましい。
本発明の一形態において、ATPの定量方法に使用される少なくとも2つのルシフェラーゼは、ATPに対するKm値が高いことが好ましい。Km値が高いルシフェラーゼは、ATP濃度に対する測定のダイナミックレンジが広いため、より高いATP濃度における測定が可能となり、生物学または医学の研究において生きた試料中のATP量の経時的測定にも応用でき好ましい。特に限定されるものではないが、例えば、Km値は100μM以上であることが好ましい。
また、本発明の一形態において、ATPの定量方法に使用される少なくとも2つのルシフェラーゼ中、最も高いKm値を有するルシフェラーゼにおけるATPに対するKm値は、例えば、100μM以上であることが好ましく、500μM以上であることがより好ましく、1000μM以上であることが更に好ましい。
また、本発明の一形態において、ATPの定量方法に使用されるルシフェラーゼとして、マレーシア産のLuciola属に属するホタルに由来するルシフェラーゼを含むことが好ましい。このルシフェラーゼは、特にKm値が高い。例えば、後述するSP2ルシフェラーゼにおいては1260μM付近のKm値を有し、特に有利な効果を奏する。すなわち、このマレーシア産のLuciola属に属するホタルに由来するルシフェラーゼは、ATP濃度に対する測定のダイナミックレンジが広いため、より高いATP濃度における測定が可能となり、また、ATP濃度の変化に対する発光量の変化の割合が高い。例えば、後述するSP2ルシフェラーゼにあっては、ATP量が1.3mMから2.5mMに増大した場合、15.7%の発光強度変化を起こすと考えられる。このようなルシフェラーゼを使用することで、測定の際に検出すべきシグナルとバックグラウンドとを明瞭に区別できることは言うまでもなく、本発明の定量方法において使用される他のルシフェラーゼとのKm値の差を大きくすることができるため、細胞内ATPが高濃度域で推移した場合であっても、経時的な試料内ATP量の変化を精度よく継続して測定することができる。
このマレーシア産のLuciola属に属するホタルに由来するルシフェラーゼの一例として、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むルシフェラーゼを挙げることができる。当該ルシフェラーゼは、主としてマレーシアに生息するホタルであって、現時点においてLuciola属に属することは判明しているものの正式な学名が決定されていないホタルから得られたものである。本発明において、当該ホタルをLuciola sp2と称し、このホタルから取得されたルシフェラーゼをSP2ルシフェラーゼと称する。図2に示された発光スペクトルによれば、SP2ルシフェラーゼのpH8における最大発光波長は572nm付近であることがわかる。配列番号1は以下の通りである。
Figure 2014161275
本発明に係るATPの定量方法において、ATP濃度を定量する試料は、ルシフェラーゼ・ルシフェリン反応が生じ得るあらゆる試料であってよい。例えば、試料は、細胞または溶液とすることができる。細胞とは、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞または動物細胞であってよい。動物細胞は、哺乳細胞であってよく、例えばマウス、サルまたはヒトの細胞であってよい。また、試料は、細胞の集合した組織であってもよい。試料として使用する溶液は、生体由来の溶液であってよく、または非生体由来の溶液であってよい。生体由来の溶液は、たとえば細胞破砕液または組織破砕液であってよい。
本発明において使用される、ATPに対するKm値が互いに異なる2以上のルシフェラーゼは、1つの試料に導入されてもよいし、2以上に分けられた試料にそれぞれ別々に導入されてもよい。1つの試料に2以上のルシフェラーゼが導入される場合、各ルシフェラーゼは最大発光波長が互いに異なることが必要である。
ルシフェラーゼを試料に導入する工程は既知の手法によって行うことができる。
試料が細胞である場合、当該手法の1つは、細胞外で精製したルシフェラーゼを細胞内に直接導入する方法である。例えば、マイクロインジェクション法によってルシフェラーゼを細胞内に直接注入することができる。または、ルシフェラーゼを含む培養液にて細胞をインキュベートさせて、エンドサイトーシスによってルシフェラーゼを細胞に取り込ませることができる。また別の方法は、まずルシフェラーゼをコードする塩基配列を含む核酸を導入し、その後細胞内でルシフェラーゼを発現させる方法である。例えば、当該核酸を含む発現ベクターを、リン酸カルシウム法、リポフェクション法またはエレクトロポレーション法等によって細胞内に導入し、発現ベクターからルシフェラーゼを発現させることができる。試料として細胞を使用する場合、細胞は生きた状態でも固定した状態でもよい。例えば、細胞の機能の一部または全部が維持された生きた状態の細胞を使用することで、同一細胞内のATP濃度の経時に伴う変化を測定したり、外部からの刺激に応じた同一細胞内のATP濃度の変化を経時的に測定したりすることができる。
試料が溶液である場合、その手法の1つは、当該溶液とルシフェラーゼと含む溶液とを混合することである。対象とする溶液として細胞破砕液または組織破砕液を使用する場合は、それらの溶液にルシフェラーゼを添加してもよい。
ルシフェラーゼの発光を検出する工程は既知の手法によって行うことができる。例えば、ルシフェラーゼを含む試料にルシフェリンおよびMg2+イオン等を適宜与えて、ルシフェラーゼによる発光反応を生じさせ、発生した発光を検出装置により検出することができる。ここにいう検出装置とは、特定の波長の発光または特定の波長域の発光を検出できる装置である。例えば、Luminescensor(ATTO社)を使用することができる。検出装置によって、特定の波長(例えば、発光スペクトルにおいてピークを示す波長)の発光を検出し、または特定の波長域(例えば、発光スペクトルにおいてシグナルが検出できる全域)の発光を検出する。試料が溶液である場合、当該溶液に対して、ルシフェラーゼと、ルシフェリンおよびMg2+イオン等を含む溶液とを同時に添加してもよい。また、試験対象となる溶液とルシフェリンおよびMg2+イオン等を含む溶液とを予め混合しておき、そこへルシフェラーゼを添加することで発光反応を開始させてもよい。
本発明は、他の態様において、上述した本発明に係るATPの定量方法において使用される試薬キットに関する。この試薬キットは、ATPに対するKm値が互いに異なる2以上のルシフェラーゼ遺伝子をそれぞれ含む2以上の核酸を含むものであり、一例において、配列番号2に示される塩基配列を含む核酸を含む。配列番号2は以下の通りである。
Figure 2014161275
本発明に係るATPの定量方法は、検量線を使用することなく、ATP濃度を経時的に測定することが可能であるため、ルミノメーター又は発光イメージングを用いた単一生細胞内のATP濃度の測定に応用することができる。例えば、発光色とATPに対するKm値の異なる2種類のルシフェラーゼを使用し、フィルターによる分光を行うことで、生細胞内のATP濃度の経時による変化を連続的に検出することができる。
<例1:ATPに対するKm値の決定>
本発明に係るATPの定量方法において必要なルシフェラーゼのATPに対するKm値の決定方法について、本発明において好適に使用し得る2つのルシフェラーゼの組み合わせ(SP2ルシフェラーゼ、P.pyralisルシフェラーゼ)を用いて説明する。
[発光タンパク質の精製]
JM109(DE3)を含む大腸菌溶液50μlにP.pyralisルシフェラーゼおよびSP2ルシフェラーゼ発現ベクター0.5μlを添加し、氷上で10分、その後42℃で1分、最後に氷上で2分インキュベートした。その後、大腸菌溶液50μlをSOC培地200μlに加えた。その大腸菌/SOC培地混合溶液を37℃で20分間振とうしながらインキュベートした。インキュベート後のサンプル100μlをLB培地プレート(100μg/mlのAmpicillinを含む)にストリークし、37℃で一晩インキュベートした。翌日得られたコロニーをピックアップし、500mlスケールのLB培地で培養した。培養は37℃で24時間、18℃で24時間行った。合計48時間の培養の後、遠心分離で菌体を回収し、0.1M Tris−HCl溶液(pH8.0)に再度懸濁して超音波破砕した。菌体破砕液を遠心分離(15000rpm、10分)し、沈査を除去して上清を回収した。ベッドボリューム2mlのカラムにNi−Agar懸濁液500μlと0.1M Tris−HCl2mlを加え、カラムを平衡化した。回収した上清をカラムに添加し、自然落下させた。上清の全量がカラムを通過するまでの間の操作は全て4℃の条件で行った。25mMイミダゾール/0.1M Tris−HCl溶液2mlでカラムを洗浄した。洗浄後のカラムに500mMイミダゾール/0.1M Tris−HCl溶液を2ml加え、ルシフェラーゼを溶出した。溶出されたサンプルをゲルろ過カラムPD−10(GEヘルスケア)でろ過し、脱塩した。脱塩後のサンプルをVivaspin6(ザルトリウス)で限界ろ過し、濃縮されたサンプルにグリセリンを添加して、50%グリセリン溶液とした。保存は−20℃で行った。
[速度論的解析]
・D−ルシフェリンおよびATPの濃度の決定
D−ルシフェリン溶液中のD−ルシフェリン濃度およびATP溶液中のATP濃度を以下の通りに決定した。
UV−Visible Spectrometer(Hitachi)を用いて、D−ルシフェリン溶液およびATP溶液の紫外可視吸収スペクトルを測定し、この測定結果と以下のε値とから濃度を算出した。
D−ルシフェリン:λmax 328nm、ε18200、pH5.0
ATP:λmax 259nm、ε15400、pH7.0。
測定はそれぞれ10回ずつ行い、吸光度の平均値を濃度算出に用いた。このように濃度を決定したD−ルシフェリン溶液およびATP溶液を用いて、以下のKm値算出を行った。
・ATPに対するKm値の測定
様々なATP濃度の環境下において、得られたルシフェラーゼによる発光の強度を測定した。測定結果に基づいて、ATPに対する各ルシフェラーゼのKm値を決定した。
ATPを0.1M Tris−HCl(pH8.0)に添加して、異なる濃度の12種類のATP溶液を作製した。これらの溶液は、ATPの終濃度がそれぞれ5、10、20、40、80、160、320、480、640、800、1280、1600および1920μMとなるようにATPを含む。これらのATP溶液をそれぞれ96穴マイクロプレートに50μlずつ分注した。各種精製ルシフェラーゼ、1mM D−ルシフェリン、8mM MgSOを含む0.1M Tris−HCl(pH8.0)溶液をLuminescensor(ATTO)の標準ポンプに接続し、当該溶液をウェルに50μl添加すると同時にフォトンカウント測定を行った。測定は室温で行い、各ATP濃度について3回ずつ実施した。得られたフォトンカウント値のピーク強度を初速度Vとして、ATP濃度Sに対してプロットした。得られた曲線を図1に示す。このプロットにミカエリス・メンテン型のカーブフィッティングを行い、Km値を算出した。カーブフィッティングは非線形の最小二乗法で行い、パラメータの探索にはニュートン法を用いた。
上記のようにして決定されたATPに対するKm値を表1に示す。
Figure 2014161275
<例2:ATP濃度の経時変化の測定>
上記のようにして測定したKm値を使用して、HeLa細胞のアポトーシスに伴うATP量変化を経時的に算出した。
[HeLa細胞のアポトーシスに伴うATP量変化の計測]
コドンを哺乳細胞用に最適化したP.pyralisおよびSP2ルシフェラーゼ遺伝子をpcDNA3.1ベクター(Invitorogen)のマルチクローニングサイトにBamHI, EcoRIサイトで挿入したプラスミドを作成した。各プラスミドを35mmプラスチックディッシュに播種したHeLa細胞にリポフェクション法で遺伝子導入し、24時間後10%FBSを含むD−MEM培地から10%FBSを含むCO2 Independent Medium(Invitrogen)に交換した。測定直前にD-luciferinを最終濃度1mMで添加した。さらにHeLa細胞にアポトーシスを誘導することが知られている薬剤スタウロスポリンを最終濃度4μMで添加し、培養細胞用ルミノメーターKronos(ATTO)を用いて発光強度を経時的に測定した。アポトーシスが誘導されたHeLa細胞の発光量の経時変化を図3に示す。
0時間経過時点tおよび0.6時間経過時点tにおけるP.pyralisルシフェラーゼとSP2ルシフェラーゼのフォトンカウント値はそれぞれ以下のようになる。
Figure 2014161275
以上の実験結果より、数式(I)および(II)中の各記号は以下のように決定される。
Figure 2014161275
ma:P.pyralisルシフェラーゼのATPに対するKm値 71.3μM
mb:SP2ルシフェラーゼのATPに対するKm値 1260μM
:Va2/Va1 22516996/18411538
:Vb2/Vb1 3982267/2491629
a1:時点tにおけるP. pyralisルシフェラーゼの発光強度 18411538
a2:時点tにおけるP. pyralisルシフェラーゼの発光強度 22516996
b1:時点tにおけるSP2ルシフェラーゼの発光強度 2491629
b2:時点tにおけるSP2ルシフェラーゼの発光強度 3982267
これらの数値を数式(I)および数式(II)に代入すると、0時間経過時点tおよび0.6時間経過時点tにおけるHeLa細胞内のATP濃度SおよびSは以下のように算出される。
Figure 2014161275
こように、本法を用いることで、検量線を使用すること無く、生きたサンプルのATP量の変化を経時的に計測することが可能である。

Claims (13)

  1. ATPをルシフェラーゼの触媒活性の下でルシフェリンと反応させることにより発生する発光強度を測定することにより試料中に含まれるATPを定量する方法であって、前記ルシフェラーゼとしてATPに対するKm値が互いに異なる少なくとも2つのルシフェラーゼを使用し、各ルシフェラーゼについての発光強度を同じ時系列で少なくとも2つの時点において測定することを含むATPの定量方法。
  2. 時系列的に発光強度が測定された少なくとも2つの前記ルシフェラーゼの中から、第一のルシフェラーゼと第二のルシフェラーゼを選択し、第一のルシフェラーゼにおける任意の2つの時点における発光強度の比と、第二のルシフェラーゼにおける、前記2つの時点と同じ2つの時点における発光強度の比とを求めることを含む、請求項1に記載のATPの定量方法。
  3. 第一のルシフェラーゼのATPに対するKm値と、第二のルシフェラーゼのATPに対するKm値と、第一のルシフェラーゼにおける任意の2つの時点における発光強度の比と、第二のルシフェラーゼにおける、前記2つの時点と同じ2つの時点における発光強度の比を、ミカエリス・メンテン式に代入することにより下式(I)及び(II)を導き、前記2つの時点におけるATP濃度が定量される、請求項2に記載のATPの定量方法。
    Figure 2014161275
    式中の各記号は以下に示す意味を表す。
    :時点tにおけるATP濃度(M)
    :時点tにおけるATP濃度(M)
    ma:第一のルシフェラーゼのATPに対するKm値
    mb:第二のルシフェラーゼのATPに対するKm値
    :Va2/Va1
    :Vb2/Vb1
    a1:時点tにおける第一のルシフェラーゼの発光強度
    a2:時点tにおける第一のルシフェラーゼの発光強度
    b1:時点tにおける第二のルシフェラーゼの発光強度
    b2:時点tにおける第二のルシフェラーゼの発光強度
  4. 時系列的に発光強度が測定される少なくとも2つの前記ルシフェラーゼにおけるATPに対するKm値の差が10μM以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のATPの定量方法。
  5. 時系列的に発光強度が測定される少なくとも2つの前記ルシフェラーゼ中、最も高いKm値を有するルシフェラーゼにおけるKm値が100μM以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のATPの定量方法。
  6. 時系列的に発光強度が測定される少なくとも2つの前記ルシフェラーゼの中の1つが、マレーシア産のLuciola属に属するホタルに由来するルシフェラーゼである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のATPの定量方法。
  7. マレーシア産のLuciola属に属するホタルに由来する前記ルシフェラーゼが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のATPの定量方法。
  8. 時系列的に発光強度が測定される少なくとも2つの前記ルシフェラーゼにおける最大発光波長が互いに異なり、これらルシフェラーゼがATPを含む同じ試料中に導入される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のATPの定量方法。
  9. ATPを含む前記試料が生体由来である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のATPの定量方法。
  10. 前記生体が細胞である、請求項9に記載のATPの定量方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のATPの定量方法において使用される、ATPに対するKm値が互いに異なる2以上のルシフェラーゼ遺伝子をそれぞれ含む2以上の核酸を含むキット。
  12. 少なくとも2つの前記ルシフェラーゼ遺伝子におけるATPに対するKm値の差が
    10μM以上である、請求項11に記載のキット。
  13. 前記核酸の一つが配列番号2に示される塩基配列を含む、請求項11又は12に記載のキット。
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