JP2014144952A - 双極性トランスカロテノイド塩及びそれらの使用 - Google Patents

双極性トランスカロテノイド塩及びそれらの使用 Download PDF

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Abstract

【課題】哺乳動物における、赤血球と体組織との間の酸素の拡散性を改善するのに有用なトランスカロテノイド塩化合物、それらの製造方法、それらの可溶化方法、及びそれらの使用方法を提供する。
【解決手段】下式で示されるトランスカロテノイド化合物。但し、トランスソディウムクロセチネートは除く。YZ−TCRO−ZY[YはNa、K等のカチオン;Zはカルボキシル基(COO)、硫酸基(OSO3)等の前記カチオンに結合した極性基;TCROはトランスカロテノイド骨格]
【選択図】なし

Description

本発明は、双極性トランスカロテノイド塩化合物、それらを可溶化する方法、それらを製造する方法、及びそれらを使用する方法に関する。これらの双極性トランスカロテノイド塩(BTCS)化合物は、ヒトを含めた哺乳動物において、赤血球と体組織との間の酸素の拡散性を改善するのに有用である。
カロテノイドは、分子の中央でその配置が逆転するように連結したイソプレノイドユニットからなる炭化水素の一種である。この分子の骨格は、共役した炭素−炭素二重結合及び単結合からなり、場合によりペンダント基も有する。かつては、カロテノイドの骨格は炭素40個を含むと考えられていたが、かなり以前から、カロテノイドには、炭素原子が40個未満の炭素骨格を有するものもあることが認識されている。炭素−炭素二重結合の周囲の4つの単結合は、すべて同一平面内に位置する。ペンダント基が炭素−炭素二重結合に対して同じ側に存在すれば、それらの基はシスと称される。ペンダント基が炭素−炭素結合に対して反対側に存在すれば、それらはトランスと称される。多数の二重結合により、カロテノイドの幾何(シス/トランス)異性に関しては莫大な可能性があり、また、異性化は溶液中で容易に起こる。近年の一連の書籍は、カロテノイドの性質等の多くに関する優れた参照文献である(「Carotenoids」、G.Britton、S.Liaaen−Jensen及びH.Pfander編、Birkhauser Verlag、バーゼル、1995、参照することにより、本明細書にそのまま組み込まれる)。
多くのカロテノイドは非極性であり、それ故、水に不溶である。これらの化合物は、極度に疎水的であり、それ故、それらを可溶化するために、水性溶媒よりもむしろ有機溶媒を用いる必要があるので、生物学的使用のための製剤化が困難となっている。カロテノイドには、単極性で、界面活性剤の性質(疎水性部分及び親水性極性基)を有するものもある。これらの化合物は、バルク液体に溶解するよりむしろ水溶液表面に引き付けられる。天然の双極性カロテノイド化合物は少数存在し、これらの化合物は、中央の疎水性部分と、分子の各末端に1つずつ存在する2つの極性基とを含む。カロテノイドサルフェートは、水に対して「0.4mg/mLまでの大きな溶解性」を有することが報告されている(「Carotenoids」1A巻、283頁)。双極性と考えられるカロテノイドには、水にあまり溶解しないものもある。例えば、ジアルデヒド及びジケトンである。クロセチンのジピリジン塩も報告されているが、水に対する溶解性は、室温で1mg/mL未満である。双極性カロテノイドとしては、他にクロセチン及びクロシン(いずれも、香辛料のサフラン中に見出される。)が挙げられる。しかし、クロセチンは水にわずかに溶けるにすぎない。実際には、すべての双極性カロテノイドのうち、クロシンのみが水に対する顕著な溶解性を示す。
米国特許第4176179号、第4070460号、第4046880号、第4038144号、第4009270号、第3975519号、第3965261号、第3853933号及び第3788468号は、クロセチンの種々の使用に関する。
米国特許第5107030号は、2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアール及びその誘導体の製造方法に関する。
米国特許第6060511号は、トランスソディウムクロセチネート(trans sodium crocetinate)(TSC)及びその使用に関する。TSCは、天然サフランを水酸化ナトリウムと反応させ、その後抽出することによって製造される。
Royら、Shock 10、213〜7頁(1998)では、出血したラット(血液容積の55%)に、出血終了後、トランスソディウムクロセチネート(TSC)がボーラス投与され、その後更に30分間、食塩水が与えられた。TSCで処置した動物はすべて生存したが、対照動物はすべて死亡した。TSC群では全身酸素消費量が増加し、約15分後に正常安静値の75%に達した。
Laidigら、J Am Chem.Soc. 120、9394〜9395頁(1998)は、TSCのコンピューターモデリングに関する。シミュレーションされたTSC分子は、水分子で取り囲むことによって「水和」された。TSC周辺の水を並べ換えると、酸素分子が系に拡散するのが更に容易になった。計算上は拡散性が約30%増大したが、これは、インビトロ及び動物実験の両方で得られた結果と一致した。
Singerら、Crit Care Med 28、1968〜72頁(2000)では、急性低酸素症のラットモデルにおいて、TSCが血液動態を改善し、ラットの生存を延長した。低酸素濃度(10%)空気混合物を用いて低酸素症が誘発され、10分後、動物に食塩水又はTSCが与えられた。低酸素症は、血流の減少、及び塩基欠乏の増大をもたらした。対照群では、6匹の動物のうち、2匹しか生存しなかった。処置群では、すべてが生存し、血液動態は、2時間以上、十分な安定性を示し、その後緩やかに悪化した。
本発明は、下記構造:
YZ−TCRO−ZY
[式中、
Yはカチオンであり、
Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
を有する双極性トランスカロテノイド塩(BTCS)化合物、及びそのような化合物の合成に関する。
本発明はまた、可視光波長領域で生じる(BTCS組成物の水溶液の)最大ピークの吸光度を、UV波長領域で生じるピークの吸光度で割った値が7.0を超え、好適には7.5を超え、最も好適には8を超える、個々のBTCS化合物の組成物(TSC組成物を含む。)に関する。
本発明はまた、下記式:
YZ−TCRO−ZY
を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含む、種々の疾患の治療方法に関する。
本発明はまた、下記式:
YZ−TCRO−ZY
を有する化合物を可溶化し、また、合成するいくつかの方法を包含する。
本発明はまた、本発明の化合物を送達するための吸入器にも関する。
新たな種類のカロテノイド及びカロテノイド関連化合物が見出されている。これらの化合物は、「双極性トランスカロテノイド塩」(BTCS)と称されている。
(本発明の化合物)
本発明は、疎水性のカロテノイド又はカロテノイド関連骨格が水溶液に溶解することを可能にする一群の化合物である双極性トランスカロテノイド塩、及びそれらの製造方法に関する。これらの塩のカチオンとしては、多くの種が挙げられるが、ナトリウム又はカリウム(これらは大部分の生体系で見出される。)が好適である。本願の発明者が保有する米国特許第6060511号(参照することにより、本明細書にそのまま組み込まれる。)には、トランスソディウムクロセチネート(TSC)(BTCSの1つ)をサフランから製造する抽出方法が記載されている。
双極性トランスカロテノイド塩の一般構造は下記式で表される。
YZ−TCRO−ZY
式中、Y(両末端で同一でも異なってもよい。)はカチオンであり、好ましくはNa、K又はLiである。Yは、好適には一価金属イオンである。Yは、有機カチオン、例えばR、R[Rは、H、又はC2n+1(nは、1〜10、好適には1〜6)である。Rは、例えば、メチル、エチル、プロピル又はブチルである。]でもよい。
式中、Z(両末端で同一でも異なってもよい。)は、上記カチオンに結合する極性基である。このような基は、カロテノイド(又はカロテノイド関連化合物)上の末端炭素を任意的に含み、例えば、カルボキシル(COO)基又はCO基である。また、硫酸基(OSO )、又はモノリン酸基(OPO )、(OP(OH)O )、ジリン酸基、トリリン酸、又はそれらの組合せでもよい。
式中、TCROは、直鎖で、ペンダント基(以下で定義する。)を有するトランスカロテノイド又はカロテノイド関連骨格(好適には炭素100個未満)であって、一般に、「共役した」、すなわち交互に連結された炭素−炭素二重結合及び単結合(一実施形態において、TCROは、リコペンのように完全には共役していない。)を含むものである。ペンダント基は、一般にメチル基であるが、後述のように他の基でもよい。好適な一実施形態において、骨格のユニットは、分子の中央でその配置が逆転するように連結している。炭素−炭素二重結合の周囲の4つの単結合はすべて同一平面内に位置する。ペンダント基が炭素−炭素二重結合に対して同じ側に存在すれば、それらの基はシスと称される。炭素−炭素結合に対して反対側に存在すれば、トランスと称される。本発明の化合物はトランスである。シス異性体は、一般に有害であり、拡散性を増大させない。一実施形態では、骨格が直鎖のままのトランス異性体を利用することができる。
トランスカロテノイド又はカロテノイド関連骨格は、例えば、下記式で表されるものである。
Figure 2014144952
式中、ペンダント基X(同一でも異なってもよい。)は、水素(H)原子、又は10個以下、好適には4個以下の炭素原子を有する直鎖状若しくは分岐鎖状の基(ハロゲンを任意的に含む)、又はハロゲンである。Xは、例えば、メチル基(CH)、エチル基(C)、ハロゲン含有アルキル基(C1〜C10)(例えば、CHCl)、又はハロゲン(例えば、Cl又はBr)である。ペンダント基Xは同一でも異なってもよいが、X基としては、骨格を直鎖状に維持するものを用いる必要がある。
自然界に存在するカロテノイドは多いが、カロテノイド塩は自然界に存在しない。本願の発明者が保有する米国特許第6060511号は、トランスソディウムクロセチネート(TSC)に関する。TSCは、天然サフランを水酸化ナトリウムと反応させた後、主にトランス異性体を選択する抽出を行うことによって製造された。
BTCSのシス異性体及びトランス異性体の存在は、水溶液に溶解したカロテノイド試料の紫外−可視スペクトルを調べることによって決定することができる。スペクトルが得られれば、可視光波長領域416〜423nm(数字は、用いる溶媒に応じて決まる。)で生じる最大ピークの吸光度の値を、UV波長領域250〜256nmで生じるピークの吸光度で割った値を、トランス異性体の純度レベルの決定に用いることができる。BTCSが水に溶解している場合、可視光波長領域の最大ピークは約421nmにあり、UV波長領域のピークは約254nmにある。M.Craw及びC.Lambert、Photochemistry and Photobiology、第38巻(2)、241〜243頁(1983)(参照することにより、本明細書にそのまま組み込まれる。)によると、計算結果(クロセチンを分析した場合)は3.1であり、その値は精製後、6.6に増加した。
本願の発明者が保有する米国特許第6060511号のトランスナトリウムクロセチン(天然サフランを水酸化ナトリウムと反応させた後、主にトランス異性体を選択する抽出を行うことによって製造されたTSC)について、UV及び可視光波長領域用に設計されたキュベットを用いてCraw及びLambertの分析を行うと、平均約6.8の値が得られる。この試験を本発明の合成TSCについて行うと、その比は、7.0を超える値(例えば7.0〜8.5)、好適には7.5を超える値(例えば7.5〜8.5)、最も好適には8を超える値となる。実施例5を改良した方法により合成されたTSCに関しては、その比が7.4を超える(例えば7.4〜8.5)。合成された物質は、「より純粋な」、すなわち高度に精製されたトランス異性体である。
近年、TSCは室温で約10mg/mLの水溶性を有することが見出されているが、その値は、そのような長い疎水性部分を含む分子の値としては異例である。TSCは、液体中における酸素の拡散性を増大させることも見出されている。
米国特許第6060511号には、サフランからTSCを製造する抽出方法が記載されているが、サフランを用いても、単一のカロテノイド骨格しか塩に組み込むことができないので、同方法を用いて他の双極性カロテノイドを製造することはできない。
本明細書に開示する発明によれば、一群の化合物、すなわち種々のカロテノイド又はカロテノイド関連骨格を含む双極性トランスカロテノイド塩のすべての合成が可能になる。そのような化合物は水溶液に可溶であり、有利な生物学的用途を有し、例えば、酸素利用を増大させるために用いることができる。この増大は、双極性トランスカロテノイド塩の疎水性部分(骨格)が水分子の結合に影響を及ぼすことができるためと考えられる。実際に、これによって、酸素分子がその領域をより速やかに拡散することが可能になる。
(本発明の化合物及び組成物の可溶化)
本発明によれば、水溶液中へのトランスカロテノイド又はカロテノイド関連骨格分子の溶解が可能になる。以下、新規の溶解方法を説明する。本方法は、任意の双極性トランスカロテノイド塩及びその組成物に適用される。
BTCS含有注入用食塩水:
出血性ショックの治療のために、大量(推定失血量の3倍)の等張食塩水(生理食塩水とも呼ばれる。)を注入する。等張食塩水は、体内に注入された時に血漿のイオン強度を乱さないように、水1リットル当たりNaCl9gを含有する。この食塩水にTSCを添加すると、優れた注入液が得られることが明らかになっているが、TSC粉末とその食塩水とを単に混合しても、そのような溶液を調製することはできない。(1mL当たり数ミリグラムまでは、)どんなにTSCを添加しても、生理食塩水に溶解するのはTSC約50%である。これは、不溶のTSC粒子がまだ存在することを意味する。それを防止するには、必要量の2倍を超えるTSCを添加し、その後、溶解していない粒子を遠心分離で除去することによって原液を調製すればよい。原液の実際の組成は、UV−可視スペクトロスコピーを用いて確認することができる。この原液は生理食塩水に添加することができるが、TSCは溶解したままである。
この方法は、他のタイプの塩化ナトリウム溶液や、塩(KCl、NaSO、乳酸塩等)の溶液にBTCSを溶解させるのに用いることができる。このようにして、数mg/mL(例えば1〜3mg/mL)を溶液化することができる。
炭酸ナトリウムの希薄溶液はBTCSを溶解させる:
TSCのようなBTCSは、極希薄炭酸ナトリウム溶液に溶解する。炭酸ナトリウムの希薄溶液(例えば0.00001〜0.001M溶液)は、脱イオン水のpH(通常5〜6である。)が8.0になるまで、脱イオン水に滴下することができる。これには、例えば脱イオン水50mL当たり、極希薄炭酸ナトリウム2、3滴しか要しない。この炭酸ナトリウム−脱イオン水溶液は、大量のTSC(約10mg/mL)を完全に溶解させることができる。BTCSのカロテノイド部分の疎水性を考慮すると、驚くべき量である。
BTCSは、炭酸ナトリウム水入りの滅菌びんと共に、粉末として供給することができる。この高濃度溶液は直接注射することができ(血漿よりも低いイオン強度を有する溶液のごく少量を注射することができる)、また、高濃度溶液は、生理食塩水に添加した後、注射することができる。TSCが炭酸ナトリウム−水溶媒に溶解していれば、その後、更に多量の同溶媒を添加しても、TSCは溶液状態のままである。
別の一実施形態では、炭酸ナトリウムの代わりに炭酸水素ナトリウムを用いる。塩基性pHを有する脱イオン水を生成する他の塩を用いることもできる。
この方法で5〜10mg/mLのカロテノイド骨格濃度を実現することができる。
水はBTCSを溶解させる:
TSCは水(水道水、蒸留水、脱イオン水)に溶解するが、これらの溶液は、塩基性になるようにpHを調整しない限り安定しない。TSCは、標準水よりも脱イオン水(ごく少量のNaイオンが存在する。)に多く溶解する。TSCを始めとするBTCSは、脱イオンしただけの水単独に溶解するものの、無調整の脱イオン水をその溶液に添加すると、TSCは析出する。BTCSは、脱イオンしただけの水単独に溶解するが、わずかに塩基性になるようにpHを調整しなければ、脱イオン水の追加はBTCSの析出を引き起こす。
BTCSを可溶化する他の方法:
BTCSは、薬物送達を高める送達システムに製剤化することができる。本発明の化合物の製剤化(後述)を参照のこと。
(本発明の化合物である双極性トランスカロテノイド塩の合成法)
以下、双極性トランスカロテノイド塩の合成に用いることができる新規の合成方法を説明する。場合により、種々の合成ステップには、当業者に自明の変形態様が存在する。
A. TSCの合成法:
トランスソディウムクロセチネート(TSC)は、共役炭素−炭素二重結合を含む対称C10ジアルデヒド(2,7−ジメチルオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジアール)を[3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン]トリフェニルホスホランとカップリングさせることによって、合成することができる。これにより、クロセチンのトランスジメチルエステルが形成される。そして、このジメチルエステルは、けん化により最終生成物のTSCに変換する。一般に、けん化は、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化ナトリウムのTHF(テトラヒドロフラン)溶液のいずれかでエステルを処理することによって行われるが、この場合、これらの方法では最良の結果が得られなかった。この場合は、エステルをNaOH/メタノール溶液と反応させることによって、けん化を非常に良好に行うことができる。TSCは、けん化の後、真空乾燥により回収する。
本合成に用いる反応物質であるC10ジアルデヒド及びトリフェニルホスホランは、種々の経路で調製することができる。例えば、C10ジアルデヒドは、ウィッティヒ(Wittig)反応を用いて、ブロモ酢酸エチル及びフランから調製した。所望のホスホランの調製では、チグリン酸を出発物質とした。種々の長さの反応物質(例えば、C14ジアルデヒド及びトリフェニルホスホラン)を連結することによって、種々の長さのカロテノイド骨格を製造することができる。この方法により、種々のトランス双極性カロテノイド塩が形成される。改変を行って、種々のペンダント基を得ることもできる(TSCは、ペンダント基としてメチル基を有する)。
このように製造されたTSCは、室温で、(炭酸ナトリウムの極希薄溶液でpHを8.0に調整した)水に、>10mg/mLのレベルで可溶である。他にも、中性以上のpHを有する水に室温で可溶である双極性トランスカロテノイド塩は存在する。本明細書において、「可溶である」とは、室温で、水1mL当たり5mgを超える量が溶解することを意味する(前述のように、カロテノイドの参照文献では、0.4mg/mLを「極めて大きな溶解性」と述べているが、これは本明細書における溶解性の定義よりも低い)。
B. 一般的な合成法:
カロテノイド又はカロテノイド関連構造は、下記のように構築することができる。
Figure 2014144952
(3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホラン(Xがメチル基以外である場合は、関連化合物)は、イソプレノイドユニット(又はイソプレノイド関連ユニット)を対称カロテノイド(又はカロテノイド関連化合物)の両端に付加する重要な前駆体である。このプロセスは無限に繰り返すことができる。例えば、ジメチルトランスクロセチネートは、上記の化学反応を用いて、対応する対称ジアルデヒドに還元することができる。このジアルデヒドを過剰の(3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホランと反応させて、対応するジエステルを得ることができる。この一連の合成手順は何度も繰り返すことができる。
(改良合成法)
2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアール(2,7−ジメチルオクタ2,4,6−トリエン−1,8ジアール)は、TSC合成の重要な中間体である。この重要な前駆体は、3つの二重結合を有し、それ故、いくつかの異性体が可能である。TSCについては、オールトランス異性体(E,E,E−異性体)が必要である。一般的な合成経路では11ステップの合成を要し、いくつかのステップでは、収率が比較的低く、選択性も乏しい(実施例1参照)。結局、途中で、いくつかの中間体を精製するためにカラムクロマトグラフィーを行う必要がある。
改良合成経路ははるかに簡単である(以下の反応スキームを参照のこと)。米国特許第5107030号(参照することにより、本明細書にそのまま組み込まれる。)に記載の3ステップ製法によれば、ジアルデヒドの幾何異性体混合物が得られる(米国特許第5107030号では、この混合物に言及されていない)。実施例1に記載の本発明の方法では、96〜97%の所望の異性体(オールトランス又はE,E,E−異性体)が、メタノール又は酢酸エチルからの数回の再結晶により、59%の収率で得られる。
本発明の改良合成方法は、適切な溶媒(例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、又はジアルキルエーテル[アルキル基は、1つ又は2つのC1〜C10直鎖又は分岐アルキル基である。])中で、パラ−トルエンスルフィン酸のようなスルフィン酸(RSOH)[式中、RはC1〜C10直鎖若しくは分岐アルキル基、又はアリール基(置換フェニル基)である。]を用いて異性化することにより、ジアルデヒドの残りの異性体混合物を所望のトランスアルデヒド(E,E,E)に変換することを含む。更に8%の収率で純粋な所望のジアルデヒドが得られ、最終ステップの全収率は59%から76%に高まる。この収率の改善は重要である。この異性化ステップを米国特許第5107030号の方法の第三ステップに組み込めば、更に良好な収率を得ることができる。
改良合成経路:
Figure 2014144952
2種の望ましくない異性体:
Figure 2014144952
望ましくないジアルデヒドから所望のジアルデヒドへの異性化:
Figure 2014144952
けん化は、メタノールにジエステルを溶解させ、次いで、NaOHのような塩基を添加することによって行うことができる(NaOHの場合、BTCSのYはNaである)。或いは、ジエステルは、既に塩基を含有するメタノールに溶解させてもよい。NaOHは、一般に水溶液(20〜60wt%)であるが、固体でもよい。ジエステルを溶解させる溶媒としては、メタノールに替えて、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールを用いてもよい。けん化は、種々の方法で商業的に行うことができる。一相系又は二相系(1つの有機相及び1つの水相)を用いることができる。
上記の方法により、トランスクロセチンを合成することもできる。
更に、TSCに関して報告されているように、このようなBTCS化合物は水中における酸素の拡散性を増大させる(カロテノイド骨格と水との疎水性相互作用が拡散性の増大をもたらすと考えられていることから、拡散性の増大は、最終生成物に組み込まれた疎水性部分の性質(例えば炭素鎖長)にも依存すると思われる)。
(本発明の化合物の製剤)
双極性トランスカロテノイド塩の高濃度溶液は、前述のように、炭酸ナトリウムの極希薄溶液に溶解させることによって調製することができる。得られた混合物は、そのまま使用しても、また、生理食塩水又は他の水性溶媒で更に希釈してもよい。双極性トランスカロテノイド塩の溶液は、更に、塩溶液に双極性トランスカロテノイド塩を直接溶解させ、次いで、溶解していない物質を除去することによって調製することができる。
双極性トランスカロテノイド塩は、室温で、乾燥形態で安定であり、長期保存することができる。そのような塩の製剤は、経口的に投与された場合、胃よりもむしろ腸管で吸収されるのが好適である。
本発明の化合物は、単独で投与することができるが、医薬製剤の一部として投与することもできる。そのような製剤は、当業者に公知の薬学的に許容される担体及び他の治療薬を含んでもよい(下記参照)。その製剤は、酸素の拡散性を改善する本発明の化合物の能力を阻害する化合物を含まないのが好適である。
本発明の化合物及び組成物の適切な投与量は、治療対象である病状の重症度に依存する。用量が「治療的に有効」であるためには、所望の効果、すなわち酸素の拡散性の増大という効果を有する必要がある。これにより、次は、酸素関連パラメータが正常値に戻ることになる。
投与は、任意の適切な経路(例えば、経口、経鼻、局所、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、骨内、等)、経膣又は経直腸)によって行うことができる。好ましい投与経路は状況に依存する。BTCSが血流に非常に迅速に入ることが必要な緊急状況では、吸入経路が治療に有利である。従って、製剤には、そのような経路の投与に適したもの(噴霧用の液体又は粉末)も含まれる。好ましい経路は、例えば患者の状態及び年齢により変わることは理解されるであろう。製剤は、ユニット剤形、例えば錠剤及び徐放性カプセルの形で適宜提供することができ、薬学分野で公知の方法によって調製し、投与することができる。製剤は、BTCSの即時放出、又は徐放若しくは放出制御用のものでもよい。例えば、WO99/15150(参照することにより、本明細書にそのまま組み込まれる。)の徐放性製剤を参照のこと。
経口投与に適した本発明の製剤は、丸剤、カプセル剤、カシェ剤(cachet)若しくは錠剤(tablet)のような個別のユニットとして、又は散剤若しくは顆粒剤として、又は液剤、懸濁剤若しくは乳剤として提供することができる。経口投与に適した製剤の例としては、更に、トローチ剤(lozenge)、錠剤(pastille)、及び適切な基剤又は液体担体に入った状態で投与される吸入ミストが挙げられる。皮膚への局所投与用の製剤は、有効薬剤及び薬学的に許容される担体を含む軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤若しくはパスタ剤として、又は貼付剤の形で提供することができる。
経鼻投与に適した製剤のうち、担体が固体であるものの例としては、鼻腔通過を介した迅速な吸入により投与することができる粒子サイズの粉末が挙げられる。担体が液体である適切な製剤は、例えば鼻孔スプレー(nasal spray)又は点鼻液(nasal drop)として投与することができる。
非経口投与に適した製剤の例としては、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び当該製剤を対象となるレシピエントの血液と等張にする溶質を含んでもよい水性及び非水性の滅菌注射液、並びに懸濁化剤及び増粘剤を含んでもよい水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、ユニット型又は多容量型(multi−dose)容器、例えば密閉アンプル又は密閉バイアルの形で提供することができ、また、凍結乾燥を行い、後は、注射用水のような滅菌液体担体を使用直前に添加すればよいだけの状態にすることができる。注射液及び懸濁注射液は、滅菌した粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
(本発明の化合物及び組成物の使用)
体組織への酸素の送達は、多種多様な状態を制御又は仲介する。クロセチンについて記載されているのと同じ医薬用途、同じ有効量で、本発明の化合物及び組成物を使用することができる。米国特許第4176179号、第4070460号、第4046880号、第4038144号、第4009270号、第3975519号、第3965261号、第3853933号、及び第3788468号(これらは、各々、参照することにより、本明細書にそのまま組み込まれる。)を参照のこと。
TSCは、水溶液中における酸素の拡散性を約30%増大させることが示されている。TSCは、哺乳動物における低酸素症後の生存を延長させ、低酸素症又は身体的ストレス後の酸素消費を増加させ、低酸素症後の血圧を増加させ、低酸素症後の血液アシドーシスを低減させ(すなわち、血中塩基の欠乏を低減させ、血液pHを増加させ、かつ血漿乳酸レベルを低下させる)、低酸素症後の臓器傷害(例えば肝臓、腎臓)を低減させる。従って、本発明の化合物は、低酸素(低酸素症)を特徴とする哺乳動物(ヒトを含む。)の疾患/状態、例えば、呼吸器疾患、出血性ショック及び循環器疾患、特に、(例えば、ARDS敗血症又は出血性ショックによる)多臓器不全、慢性腎不全、アテローム性動脈硬化、気腫、喘息、高血圧症、脳浮腫、乳頭腫、脊髄損傷、脳卒中を治療するのに有用である。本発明の化合物はまた、上記疾患/状態のリスクのある哺乳動物を治療するのにも有用である。他の双極性トランスカロテノイド塩も類似の性質を有する。そのような化合物は、体内の酸素利用を増大させる方法として一般に提案されている他の方法(例えば、酸素療法、及びヘモグロビン又はフルオロカーボンの使用)と併用することもできる。
本発明の一実施形態では、酸素を投与する一方で、患者にBTCSを投与する。或いは、ヘモグロビン又はフルオロカーボンとBTCSとを共に与えることができる。これらの場合には、相加的効果が実現される。
これらの塩のいずれに関しても、治療に必要な最小投与量は、酸素の拡散性が増大する投与量である。本発明の化合物の有効投与量は、治療される病状、病状の重症度、並びに対象となる各哺乳動物患者の病期及び特質に依存する。しかし、投与量は、有効化合物の量が、体重1kg当たり約0.001mgから約500mgまで、好適には体重1kg当たり約0.01〜30mgとなる範囲で変動すると思われる。IV投与は好適であるが、他の注射経路(例えば、筋肉内、皮下)、又は吸入経路を用いることもできる。経皮送達又は骨内送達が可能なのと同様に、経口投与を用いることもできる。
呼吸器障害:
双極性トランスカロテノイド塩は、急性及び慢性の呼吸器障害の治療に使用することができる。これらは、動脈酸素分圧が、90〜100mmHgの正常値より低下した状態、例えば、60〜70mmHgの値に低下した状態と説明されている。そのような急性及び慢性の呼吸器障害の例としては、気腫、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び喘息が挙げられる。
TSCは、血中の酸素分圧が低い場合(これは気腫、ARDS及びCOPDの症状である)、その分圧の値を増加させる。血中の酸素分圧の増加によって、気腫、ARDS及びCOPDの症状の多くが軽減する。TSCは、疾患の原因を取り除くことはないが、酸化的損傷、及びその根底にある原因から生じる損傷を軽減する。
出血性ショック:
出血性ショックは、酸素消費の減少によって特徴づけられる。双極性トランスカロテノイド塩は、より多くの酸素を赤血球から組織に拡散させることによって、身体の酸素消費を増加させる。TSCは、出血性ショックの状態にあるラットの酸素消費を増加させることが示され、また、ショックの他の症状を軽減することも示されている。本発明の化合物は、低い血圧を増加させ、増加した心拍数を減少させ、かつショックの間に生じた血液アシドーシスを逆転させる。本発明の化合物は、出血性ショック後の臓器傷害も低減させる。
本発明の化合物は、吸入投与又は注射によって、或いは、標準的な蘇生液(ラクテートリンゲル液又は生理食塩水)に添加することによって、出血性ショックに使用することができる。
循環器疾患:
欧米文化において、主な死因は虚血性心疾患である。死亡は、心臓の収縮能力が徐々に低下するか、或いは、頻繁にあることだが、突然停止するかのいずれかによって生じる。心突然死(SCD)は、症状開始後60秒から24時間後までの時間に生じる。これらの死は、通常、急性冠閉塞(遮断)、又は(場合により閉塞に起因する)心室細動の結果である。
心筋虚血は、心筋への酸素の供給が不十分な場合に見られる。冠血流が極端に低い場合、心筋は機能できず、死滅する。筋肉のその領域は梗塞したといわれる。冠血流の減少は、冠動脈に生じるアテローム性動脈硬化によって生じることが最も多い。虚血によって、機械的及び電気的パフォーマンスの障害、並びに筋細胞の傷害が起こるが、これらは、心室細動(VF)と呼ばれる致死的な不整脈を引き起こすことがある。心室細動では、心室の電気活動が無秩序となり、心電図が、不規則なリズムを伴い、かつ判別可能なパターンを有しないものとなる。心室細動は、心筋虚血及び心筋梗塞に伴って起こることが多く、ほぼ常に、心突然死を引き起こす。双極性トランスカロテノイド塩は、心筋虚血の治療に有効である。心筋虚血に先行して起こることが多いアテローム性動脈硬化、及びうっ血性心不全も、これらの塩で治療することができる。
虚血:
双極性トランスカロテノイド塩は、腎虚血、肝虚血、脊髄虚血及び脳虚血(例えば脳卒中)のような他の形態の虚血(組織又は臓器への血流不足)の治療にも有効である。
手術:
手術は、失血又は動脈のクリッピング(例えばバイパス術)のいずれかを伴うことが多いが、これらは虚血の原因となることがある。双極性トランスカロテノイド塩は、手術の前治療に、又は手術中若しくは手術後の治療に有効である。
高血圧症:
高血圧症(hypertension)、すなわち高血圧(high blood pressure)は、循環器疾患に関連することが多い。本発明の化合物は、血圧の低下に用いることができる。
パフォーマンスの増強:
BTCSは歩行、走行、リフティング等の間の酸素消費レベルを増加させて、好気的代謝を増強する。持久力も増加する。
外傷性脳損傷:
外傷性脳損傷後の低酸素症は脳障害を増大させる。BTCSは、衝撃損傷(限局性及びびまん性損傷)後の脳組織中の酸素レベルを増加させる。衝撃損傷の例としては、自動車/オートバイ事故及び落下が挙げられる。BTCSはまた、高酸素療法が用いられる場合に、正常な脳組織に到達する酸素の量を増加させる。
アルツハイマー病:
BTCSは、アルツハイマー病における脳の酸素消費レベルを増加させ、それ故、アルツハイマー病の症状を緩和する。血流及び酸素消費は、認知症に罹患していない高齢者に見られる値よりも約30%低いレベルに低下する(Wurtman、Scientific American、第252巻、1985)。
BTCSによる脳内酸素消費レベルの増加は、記憶喪失も低減させる。
糖尿病:
BTCSは、糖尿病の合併症(潰瘍、壊疽、糖尿病性網膜症等)の治療に有用である。糖尿病性足部潰瘍は、高圧酸素呼吸療法を用いた方が、治癒が良好である(M.Kalaniら、Journal of Diabetes & Its Complications、第16巻、2号、153〜158頁、2002)。
BTCSはまた、低酸素分圧に関連する糖尿病性網膜症という合併症も治癒させる(Denninghoffら、Diabetes Technology & Therapeutics、第2巻、1号、111〜113頁、2000)。
その他の使用:
双極性トランスカロテノイド塩はまた、脊髄損傷、脳浮腫、貧血及び皮膚乳頭腫の治療にも使用することができる。いずれの場合にも、状態を緩和し、重症度を低下させる。これは、双極性トランスカロテノイド塩の使用に起因する酸素消費の増加によるものと考えられる。
双極性トランスカロテノイド塩は更に、生理学的に重要な他の分子(例えば、グルコース、CO又はNO)の拡散性を増大させるのに使用することができる。BTCSはまた、酸素由来フリーラジカルを除去する。
以下の実施例は例示的なものであり、本発明の組成物及び方法を限定するものではない。通常行われる、種々の条件及びパラメータの適切な変更及び調整は、当業者に自明であり、本発明の精神及び範囲に属する。
(実施例1:トランスソディウムクロセチネートの合成)
Figure 2014144952
共役した炭素−炭素二重結合を含む対称C10ジアルデヒドを[3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン]トリフェニルホスホランとカップリングさせることによって、トランスソディウムクロセチネートを合成する。そして、NaOH/メタノールの溶液を用いて、この生成物をけん化する。
酢酸エチルに(約2モル/リットルの濃度で)溶解させたトリフェニルホスフィンを、ブロモ酢酸エチルにゆっくりと加える。単離、及び塩基を用いた処理後に、生成物をヨウ化メチル及び苛性剤で順次処理して、ホスホランを形成することができる。この場合、カロテノイド骨格を形成するための基本化合物は、フランのような環状化合物から製造することができる。フランを臭素及びメタノールと反応させ、選択的脱プロトンステップを経て、モノアルデヒドを形成する。そして、これをホスホランとカップリングさせる。酸性条件でもう一方のジメチルアセタール基を脱保護して、遊離アルデヒドを形成した。その後、この化合物を同ホスホランともう一度反応させて、ジエチルジエステルを得る。エステル基を還元してアルコールにし、更に、(例えばMnOを用いて)酸化することにより、ジアルデヒド型のC10骨格が形成される。そして、これを、チグリン酸から製造されたホスホランと反応させる。酸性条件でチグリン酸をメタノールでエステル化して、メチルエステルを得、次いで、臭素化ステップを行う。その結果、アリルブロマイド異性体が形成されるが、これは、結晶化を用いて分離することができる。その後、所望の臭化物を水酸化ナトリウムで処理することにより、所望のホスホランが得られる。更に、このホスホラン及びC10ジアルデヒドを、トルエン又はベンゼンのような溶媒に溶解させ、還流する。得られた生成物を粉末として単離し、次いで、40%NaOH/メタノール混液でけん化し、溶媒を除去した後、TSCを形成する。
トランス−ソディウムクロセチネート1(TSC)を、17ステップの合成手順で、全収率1.5%で調製した。出発物質としてブロモ酢酸エチル、フラン及びチグリン酸を用いて、全量4.1gのTSCを調製した。
Figure 2014144952
ジメチルクロセチネートのけん化から、トランス−ソディウムクロセチネート(TSC)を合成した。ジメチルクロセチネートの調製は、Buchta及びAndreeによって報告された全合成に基づいて行った。ジメチルクロセチネートを調製する合成戦略は、対称C10ジアルデヒド(2,7−ジメチルオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジアール)を(3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホランとカップリングさせることに基づくものだった。
Figure 2014144952
元のBuchta及びAndreeの論文は、「トランス−2,2−ビスジメチル−クロセチン−ジメチルエステル及びトランス−クロセチン−ジメチルエステルの全合成」という表題が付されていたが、実験の詳細及び収率は報告されていなかった。C10ジアルデヒド及びホスホランに至る種々のステップに関する手順は、文献の広範囲な調査の後に見出された。結局、TSCは、ブロモ酢酸エチル、フラン及びチグリン酸を出発物質として用いた17ステップの手順で、全収率1.5%で調製された。
ウィッティヒ反応を用いて、ブロモ酢酸エチル及びフランからC10対称ジアルデヒドを調製した。ブロモ酢酸エチルをトリフェニルホスフィン及びヨウ化メチルで処理して、ホスホラン6を得た。
Figure 2014144952
第一ステップの収率は、相当高い92%であった。この一連の手順のその後のステップの定量は、ホスホラン4及びホスホニウム塩5の性質から複雑であった。これらの化合物はいずれも、極端に粘性の高いシロップであり、ロータリーエバポレーターで濃縮中に活発に発泡した。両化合物は、好都合なことに、塩化メチレン溶液として取り扱うことができ、ホスホラン6の全収率は、定性的な観点から許容可能と考えられた(75%よりも高いと推定された)。
臭素を用いてフランを開環し、フマルアルデヒドビス(ジメチルアセタール)8を形成した
Figure 2014144952
酸性条件下のビス(ジメチルアセタール)8のモノ脱保護から、アルデヒド9を得、次いで、それをホスホラン6とカップリングさせて、収率45%で10を得た。ジメチルアセタール10の脱保護には酸性条件を用いた。ホスホラン6で11を処理して、ジエステル12を得た。DIBAL−Hによってエステル基をアルコールに還元し、更にMnOで酸化して、C10ジアルデヒド14を得た。NMRデータから、14の立体化学特性はトランスであると判断した。特に、この化合物のC対称性は、13C NMRスペクトルに、予想された5つの共鳴を与え、H NMRスペクトルは、δ9.54(1H)、7.07(2H)及び1.95(3H)にシグナルを示した。
Figure 2014144952
ステップh〜kの収率の幅は、最初の試験的実験からスケールアップした反応にかけて単離が改善したことを反映している。
4ステップの手順で、チグリン酸15をホスホラン20に変換した。フィッシャーエステル化条件を15に適用することによって、メチルエステル16を得た。NBSを用いた反応から、γ−ブロモチグリン酸メチル59%、α−ブロモチグリン酸メチル26%の混合物を得たが、残りの物質は未反応の出発物質であった。報告された文献に基づいて位置異性体の形成が予想された。次のステップでは、ホスホニウム塩のα/γ混合物を再結晶させて、所望のγ−ホスホニウムブロマイド19を得た。更に水酸化ナトリウムで処理して、ホスホラン20を得た。
Figure 2014144952
ホスホラン20及びC10ジアルデヒド14を、ベンゼン中で還流することによってカップリングさせた。ジメチルクロセチネート21を赤色粉末として単離した。メチルエステルのけん化は予想よりも困難であることが判明した。室温下、エステル21をTHF/HO中の2当量のNaOHで処理し、還流しても、物質は変化しなかった。溶解性が重大な問題であると考えられたため、ピリジンを加えた。この操作は固体の大部分を溶解させたが、ピリジン及び2.5N NaOHの混合物を還流しても、生成物が得られなかった。標準的なTHF/2.5N NaOHけん化条件も、このエステルに作用しなかった。結局、40%NaOH/メタノールを一晩還流すると好結果となることが判明した。これにより、TSC1を橙色固体として得た。
Figure 2014144952
H NMRスペクトルを得るために、TSCを溶解させることを試みた。しかし、TSCは、大部分の通常の有機溶媒(クロロホルム、DMSO、ピリジン、メタノール、アセトン及び氷酢酸)に事実上不溶であった。このプロジェクトから生成したTSCを、IR、UV、HPLC及び元素分析によって同定した。IRは、1544及び1402cm−1で特徴的な吸光を示した(共役したカルボキシレートと一致)。UV及びHPLCは基準TSCと一致した。元素分析からは、満足な値が得られた。
一連の反応の全収率は1.5%であった(フランに基づく)。
以下、合成について詳細に説明する。
すべての試薬及び化学物質はAldrich又はSigmaから購入し、特に断らない限り、入手時の状態で使用した。溶媒は、ACS試薬又はHPLC等級としてFisher Scientificから購入し、それ以上精製せずに使用した。無水溶媒は、Sure/Seal(商標)ボトルに入った状態でAldrichから購入し、それ以上精製せずに直接使用した。脱イオン水は、社内のCulligan水処理システムから得た。
融点は、Mel−Temp IIで得、補正を行わなかった。赤外スペクトルは、Perkin−Elmer 1600 FTIR分光光度計で測定した。核磁気スペクトルは、試料の性質に応じて内部又は外部重水素ロックを有する5mm多核プローブを用いて、JEOL FX90Qスペクトロメータで測定した。プロトン及びカーボンNMR化学シフトは、それぞれTMS又は重水素溶媒に対応させた。5%リン酸水溶液の同軸挿入管を用いて、プロトンデカップリングモードでリンNMRスペクトルを通常通り測定し、これを外部標準とした。
反応の進行を評価し、また、生成物の組成を推定するためのガスクロマトグラフィーによる通常の分析は、水素炎イオン化検出器及びHewlett Packard 3394Aインテグレータを備えるVarian 3700ガスクロマトグラフで行った。ヘリウムキャリアガスを伴う15メートルのDB5カラム(内径0.53mm、フィルム厚1.5ミクロン)に溶液1マイクロリットルを注入し、20℃/分で50℃から250℃に変化させ、250℃に10分間維持するという温度プログラムを使用した。インジェクター及び検出器温度を、通常通り250℃に設定した。
検出方法に応じて蛍光指示薬(1B2又は1B2−F)を用いて、又は用いずに、Baker−flex2.5×7.5cmシリカゲルプレートで薄層クロマトグラフィーを行った。展開後のプレート上の成分をUVで検出した。
元素分析は、Quantitative Technologies,Inc.(ホワイトハウス、ニュージャージー州)が行った。
[(エトキシカルボニル)メチレン]トリフェニルホスホラン(4) (ACL−G29−1):
トリフェニルホスフィン(235.6g、0.90mol)をEtOAc(540mL)に溶解させた。すべての固体が溶解するのに約30分を要した。この過程は吸熱的であった(周囲温度が20℃の時、溶液は13℃まで冷却された)。EtOAc(400mL)に溶解させたブロモ酢酸エチル(100mL、0.90mol)の溶液を1.5時間かけて滴下した。その添加の間に白色沈殿が形成した。周囲温度(18℃)で一晩(20時間)攪拌した。
固体を真空ろ過により収集し、多量のEtOでリンスした。減圧下、45℃で一晩乾燥させ、3を収率92.6%(0.83mol)で、白色固体(356.3g)として得た。H NMRは文献値と一致した。
この固体を塩化メチレン(3L)に溶解させ、12L容のフラスコ中で、1M NaOH(3.6L)と共に45分間激しく攪拌して処理した。有機相を分離し、水相を、塩化メチレン(2×1L)を追加して抽出した。有機相を乾燥させ(MgSO)、残りの体積が約1Lとなるまで濃縮した。少量の物質を取り出し、H NMRで検査し、文献値と一致することが判明した。
[1−(エトキシカルボニル)エチリデン]トリフェニルホスホニウムアイオダイド(5) (ACL−G29−2):
反応フラスコを氷浴中で冷却しながら、ACL−G29−1で得た物質をヨードメタン(64.0mL、1.03mol)で処理した。添加が完了した時(1時間)、反応混合物をTLC(シリカゲル、10%MeOH/CHCl)でチェックし、かなりの量の出発物質が残っていることが示された。氷浴を外し、反応混合物を1.5時間後にTLCでチェックした。主バンドの幅の減少(出発物質は筋状になる。)に基づき、反応は完全であるように見えた。ロータリーエバポレーターで反応混合物を濃縮し、大部分の溶媒が除去された時、生成物は発泡し始め、蒸気ダクトまで上昇した。出現したホスホニウム塩5は、極めて粘度の高いシロップであったが、取扱いを容易にするために、塩化メチレン溶液として保存した。5の性質が原因で、この物質の定量は行わなかった。
[1−(エトキシカルボニル)エチリデン]トリフェニルホスホラン(6) (ACL−G29−2A):
5の一部をCHCl(350mL)に溶解させ、1M NaOH(500mL)と共に45分間激しく攪拌した。有機相を分離し、水相をCHClで抽出した(2×100mL)。有機相を合わせ、乾燥し(MgSO)、濃縮して、6を黄色固体8.0gとして得た。H NMRスペクトルは文献値と一致した。
フマルアルデヒドビス(ジメチルアセタール)(8) (ACL−G29−3):
無水MeOH(650mL)に溶解させたフラン(88.0g、1.29mol)の溶液をN下で−45℃に冷却した。臭素(68.0mL、1.32mol)の溶液を、≦−45℃を維持する速度で2.5時間かけて滴下した。赤色溶液を2.5時間かけて−10℃に温め、更に2時間そのままに保持した。反応混合物は淡琥珀色であった。NaCO5gの添加により、かなりの量のガス放出及び4℃の発熱が生じた。反応混合物をドライアイスで冷却し、残りのNaCO(全量210g)を50分かけて添加した。一晩(11時間)、−10℃に保持した後、氷浴を外し、反応混合物を室温に温め、20時間攪拌した。
得られた塩を減圧ろ過により取り出し、ヴィグリュー(vigreux)カラムを用いて、約150mLが除去されるまでろ液を減圧蒸留した。塩が更に析出し、蒸留器の激しい衝突を引き起こした。ろ過後、更に150mLを蒸留し、更に多量の塩が溶液から析出した。再度、猛烈な衝突が問題となった。蒸留器を冷却し、ろ過し、ろ液をEtO(400mL)で処理し、沈殿を減圧ろ過によって取り出した。少なくとも塩120gを収集した(初期に収穫した塩は定量せずに捨てた)。水流吸引器を備えるロータリーエバポレーターを用いて、25℃でEtOの大部分を除去した。ヴィグリューカラムを用いて蒸留を再開し、8を、沸点86〜92℃/9torr(文献値85〜90℃/15torr)の無色透明液体175.2gとして収集した(収率76.9%)。H NMRスペクトルは所望の生成物と一致した。GC分析:純度81.9%。
フマルアルデヒドモノ(ジメチルアセタール)(9) (ACL−G29−4):
フマルアルデヒドビス(ジメチルアセタール)8(5.29g、0.03mol)をアセトン(120mL)に溶解させた。HO(1.80mL)及びアンバーリスト15(1.20g)を順次添加した。得られた混合物を5分間激しく攪拌し、次いで、ろ過して樹脂を除去した。この間に、溶液は無色から黄色に変わった。室温下、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し、小麦色の残留物をクーゲルロール(kugelrohr)で蒸留し(37℃/200ミリtorr)、9を、71.8%の収率で、黄色液体2.80gとして得た。蒸留器が最初に衝突した時に少量の物質が失われた。H NMRスペクトルは所望の生成物と一致した。GC分析では、純度が80%であることが示された。
(ACL−G29−7):
フマルアルデヒドビス(ジメチルアセタール)8(72.1g、0.41mol)をアセトン(1600mL)に溶解させた。HO(25.0mL)及びアンバーリスト15(16.7g、アセトンで予洗)を加えた。混合物を5分間激しく攪拌し、次いで、ろ過して酸性樹脂を除去した。反応混合物はわずかに黄色に呈色し、その色は以前の大規模調製よりもはるかに淡かった。GC分析では、生成物34.5%及び出発物質46.1%の存在が示された。更に5分間、樹脂で処理した。GC分析では、生成物59.5%及び出発物質21.7%の存在が示された。更に10分間、樹脂で処理した(合計時間20分)。GC分析では、生成物73.9%及び出発物質2.0%の存在が示された。室温下、ロータリーエバポレーターでろ液を濃縮して、褐色油状物質54gを得た。減圧蒸留により黄緑色油状物質34.48gを得た。GC分析では、純度64.7%(8.22分)であり、主不純物17.5%(9.00分)及び6.9%(9.14分)が存在することが示された。正味の回収収量は、22.3g(0.17mol)であった。GCによる初期カットの分析では、不純物を極めて多く含んだ物質であることが示された。
(ACL−G29−13):
アンバーリスト15(8.61g)をアセトン(100mL)中で30分間攪拌し、ろ過によって収集した。アセタール8(35.0g、0.16mol)をアセトニトリル(620mL)に溶解させ、機械的に攪拌しながら、酸性樹脂及び脱イオン水(10.0mL、0.55mol)を添加した。TLC(ヘキサン:EtO(10:3))で反応過程を観察したところ、15分後には、大部分の出発物質が変換されていた。20分後には、痕跡量のジメチルアセタールしか検出されなかった。樹脂をろ過によって除去し、≦40℃で、ロータリーエバポレーターでろ液を濃縮した。粗生成物をBiotageカラム(7.5×9.0cm)にロードし、ヘキサン中の15%EtOで溶出させて、19.8gを得た(収率65%)。
6,6−ジメトキシ−2−メチルヘキサ−2,4−ジエノエート(10) (ACL−G29−5):
イリド6(7.80g、22mmol)を塩化メチレン(65mL)に溶解させた。フマルアルデヒドモノ(ジメチルアセタール)9(2.80g、17mmol)の溶液を添加し、この溶液を一晩攪拌した。ロータリーエバポレーターで減圧して、溶媒を除去した。粗製物のH NMRは、所望の生成物が存在することを示した。静置すると、結晶が成長した(トリフェニルホスフィンオキシドと推定された)。この固体(減圧ろ過による乾燥後、14.1g)を石油エーテル中でスラリーとし、ろ過した。ろ液を濃縮して、固体が析出した黄色油状物質を得、これを塩化メチレン(15mL)に溶解させ、Biotage4×7.5cmカラムを用いてクロマトグラフィーを行い、塩化メチレンで溶出させて、10を黄色油状物質1.8gとして得た(収率50%)。黄色油状物質のH NMRスペクトルは文献値と一致したが、痕跡量の塩化メチレンが残留していたため(0.75当量)、その物質を45分間、ロータリーエバポレーターに入れた。質量は1.5g(収率40.6%)に減少し、塩化メチレンの共鳴は消失した。GC分析の主ピークは12.6分。87.5%(50℃に5分間保持し、20℃/分で最終温度250℃まで上昇させた)。
(ACL−G29−6):
塩化メチレン(650mL)に溶解させたイリド6(59.2g、0.16mol)の溶液を氷浴中で冷却し、9(25.7g、0.19mol)の溶液を添加した。氷浴が溶けるのを放置したまま、溶液を一晩攪拌した。TLC(ヘキサン:EtO(10:3))は、生成物のごく近くを移動する少なくとも3つの他の化合物が存在することを示した。GC分析によるアルデヒドの検査では、純度が50.0%であることが示された。溶媒を除去して、固体/油混合物を得た。
(ACL−G29−8):
イリド6(59.2g、0.16mol)及びアセタール9(0.19mol)を塩化メチレン(1.1L)中でカップリングさせて、上述のようにワークアップして、黄緑色油状物質80gを得た。粗反応混合物の一部(元の80gのうちの4.13g)をクーゲルロールに入れ、50℃/250mtorrで蒸留した。無色油状物質を濃縮して2.28gとしたが、H NMRは、それが出発アルデヒドであり、他方、生成物10(1.85g)が蒸留器中に残留していることを示した。50℃/250mtorrのクーゲルロール蒸留によって、大部分の粗生成物から揮発性成分を除去した(正味35g)。
エチル2−メチル−6−オキソ−ヘキサ−2,4−ジエノエート(11) (ACL−G29−9):
予備蒸留器から得たアセタール10(ACL−G29−8、1.85g、9mmol)をアセトン(33mL)に溶解させた。脱イオン水(0.50mL)及びアンバーリスト15樹脂(0.35g、アセトンで予洗)を添加した。この混合物を20分間攪拌した。ろ過し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、黄緑色油状物質1.53gを得た。Biotageカラム(4.5×7cm)を用いてクロマトグラフィーを行い、ヘキサン中の15%EtOで溶出させた。このシステムでは分離が不完全であったが、主成分0.32gを単離し、分析した。H NMRスペクトルは文献データと一致し、IR(1711、1682cm−1)は所望の生成物と一致した。GCでは95.6%。更に0.35gを回収したが、極性のより低い物質と、より高い物質とが交差混入していた。H NMRスペクトルは、かなり純度の高い物質であることを示した。GCでは90.6%。収率:42%。
ジエチル2,7−ジメチルオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジオエート(12) (ACL−G29−10):
G29−9で得たアルデヒド11(0.65g、3.5mmol)を塩化メチレンに溶解させ、マグネチックスターラーで攪拌した。イリド(1.59g、4.4mmol)を加えた。薄黄緑色溶液は、数分以内により暗い色合いの黄色に変わった。10分後のTLCは、出発物質がほぼ完全に消費されたことを示した。20時間攪拌後、反応混合物(褐色溶液)を、シリカゲルが部分的に充填されたピペットに通してろ過した。ろ液を濃縮して褐色固体を得た。少量のCHClを含むヘキサン中の5%EtOに固体を溶解させた。Biotageカラム(4×7.5cm)を用いてクロマトグラフィーを行い、ヘキサン中の5%EtOで溶出させた。主生成物を白色結晶固体045gとして単離した(収率50%)。H NMRスペクトルは文献データと一致した。
(ACL−G29−14):
12を上述のようにして更に調製し、クロマトグラフィーで精製後、21.8gを得た(81.6%)。H NMRスペクトルは所望の生成物と一致した。
2,7−ジメチルオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジオール(13) (ACL−G29−11):
ジエステル12(0.45g、1.8mmol)を無水ヘキサン(15.0mL)に入れた。物質の一部は溶解したように見えたが、混合物はかなり濁っていた。この混合物を−78℃の浴中で冷却すると、より多くの物質が溶液から析出したように見えた。ニートのDIBAL−H(2.50mL)を無水ヘキサン(総容積10.0mL)に溶解させたが、そのジエステルをドライアイス浴で冷却している時に、不注意により、DIBAL−H溶液の一部(約2mL)を反応混合物中に吸引してしまった。合計5.0mL(6.7mmol)が添加されるまで、DIBAL−H溶液を更に添加した。CO浴を温めた。2時間50分攪拌後に、ジエステルが完全に消費されたことがTLCで示された。浴温度を−20℃に調整して、20分間で0℃に加温した。HO/シリカゲル混合物(2mL/7g)で30分間処理した。KCO及びMgSOを添加した。ろ過して固形物を除去し、塩化メチレンで十分にリンスした。濃縮して、白色固体0.14gを得た(収率50%)。TLCのR=0.21(5%MeOH/CHCl)は非常に極性が高いことに注意。塩化メチレンでリンスしても、すべての生成物を回収するのに十分でないことがある。H NMRスペクトルは文献値と一致した。
(ACL−G29−15):
ジエステル(5.4g、21mmol)を無水ヘキサン(175mL、溶解性は非常に低い)に入れ、−78℃浴中で冷却して、35分間DIBAL−Hの溶液(無水ヘキサン50mL中14.5mL)で処理した。添加中に激しい気体の発生を観察した。スラリーの色は、先ず白色から暗黄色となり、DIBAL−Hを更に添加すると、色は薄まった。2時間かけて−40℃に温めた後、−28℃の浴に移し、一晩置いた。反応混合物をHO/シリカゲル(4mL/14.4g)の均質混合物で30分間処理した。MgSO(7.5g)及びKCO(5.1g)を添加し、反応混合物を冷却浴から取り出した。20分間攪拌し、次いで、焼結ガラス漏斗でろ過した。得られた固体を塩化メチレンで洗浄した。これにより相当量の沈殿が形成した。ロータリーエバポレーターに入れて加温することによって、沈殿した固体を溶解させた。焼結ガラス漏斗に残留した固体をEtOAc(4×75mL)で洗浄して、ろ液を濃縮した。
CHClでリンスすることにより、淡黄色固体1.7gを得た。H NMRは文献値と一致した。EtOAcでリンスすることにより、灰白色固体1.0gを得た。H NMRは文献値と一致した。合計回収量2.7g、収率75%。
(ACL−G29−17):
ジエステル(16.4g、6.5mmol)をN下、無水ヘキサン(500mL)に入れて攪拌し、−78℃に冷却した。ヘキサン(150mL)に溶解させたDIBAL−H(45mL、253mmol)の溶液を1時間かけて添加した。−30℃に温め、一晩(合計17.5時間)攪拌した。HO/シリカゲル(12.3g/43.7g)の均質混合物を添加して、45分間、混合物を手動でかき混ぜた。KCO(15.5g)及びMgSO(23.5g)を添加した。更に30分間かき混ぜた。焼結ガラス漏斗でろ過し、塩化メチレンでリンスし(恐らく蒸発冷却が原因となって、沈殿が形成される)、ろ液を濃縮した。固体を数回EtOAc(約100mLずつ、合計容積2L)でリンスし、元のろ液と共にプールした。濃縮して、黄色固体8.9g、粗収率81%を得た。H NMRスペクトルは所望の生成物と一致した。
2,7−ジメチルオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジアール(14) (ACL−G29−12):
MnO(7.80g、90mmol)のスラリーをN下、氷浴中で冷却した。ジオール13(0.14g、0.8mmol)の溶液を、アセトン溶液(5.0mL)としてピペットで添加した。アセトン2.0mLを更に用いて、フラスコをリンスし、移し替えを完了した。氷浴が溶けるのを一晩放置したまま、反応混合物を攪拌した。Hyfloに通すろ過により固体を除去し、濃縮して、黄色固体を得た。最小量のCHClを用いて、10%EtO/ヘキサンにその物質を溶解させ、シリカゲルのカラム(30×190mm)にアプライし、10%EtO/ヘキサンで溶出させた。生成物は、溶出する際に黄色のバンドとして目で追うことができ、14を薄黄色固体37mgとして単離した(収率26%)。H NMRスペクトルは文献値と一致した。
(ACL−G29−16):
アセトン(500mL)に溶解させたジオール13(2.70g、16mmol)の溶液をN下、氷浴中で冷却した。MnO(60.0g、0.69mol)を、20分間に何回かに分けて添加した。氷浴が溶けるのを放置したまま、反応混合物を一晩攪拌した。反応混合物を、Hyfloに通してろ過し、ろ液を濃縮して、黄色固体1.6gを得た(粗収率61%)。H NMRは文献値と一致した。粗黄色固体を塩化メチレン(ヘキサン中の少量の10%EtOと共に添加した。)に溶解させ、Biotageシリカゲルカラム(4×7.5cm)にチャージした。先ず、ヘキサン中の10%エーテル(1L)で溶出させ、次いで、15%EtO(1L)及び20%EtO(0.5L)まで極性を上げた。黄色固体1.0gを回収した(収率38%)。H NMRスペクトルは所望の生成物と一致した。
(ACL−G29−21):
アセトン(500mL)に溶解させたジオール(9.31g、60mmol)の溶液をN下、氷浴中で冷却した。MnO(100g、1.15mol)を添加して、氷浴が溶けるのを放置したまま、混合物を一晩攪拌した。24時間後にIRでチェックすると、かなりの量の生成物が形成されていたが、依然としてかなり多くのアルコールが存在していた。酸化剤50gを更に添加し、もう一晩攪拌を続けた。反応混合物の一部をろ過し、H NMRでチェックし、出発物質の消費に基づいて、反応は完了したと思われた。反応混合物の残りを、Hyfloのパッドに通してろ過して、アセトンで十分にリンスした。濃縮して、暗黄色固体を得た。ベンゼン40mLで一度共沸させ、次いで、40℃で5時間、更に室温で一晩、真空乾燥した。5.28gを回収した(収率58%)。H NMR及びIRスペクトルは所望の生成物と一致した。
チグリン酸メチル(16):
オーバーヘッドスターラー、冷却器及び温度計を取り付けた2L容の三つ口フラスコ中で、メタノール900mLにチグリン酸15(89.8g、0.9mol)及び濃硫酸5mL(0.09mol)を溶解させた溶液を20時間加熱還流した。溶液を25℃に冷却し、ロータリーエバポレーターで30℃、27インチHg減圧下で過剰のメタノールを除去した。回収したメタノール蒸留液のGLC分析により、オーバーヘッドに生成物が存在することが示された。得られた2相の小麦色濃縮液をエチルエーテル500mLに入れ、水250mL、10%炭酸水素ナトリウム水溶液250mL及び飽和食塩水250mLで順次洗浄した。エーテル溶液を無水炭酸カリウムで乾燥させ、ろ過し、ロータリーエバポレーターで25℃、27in Hg減圧下で溶媒除去し、粗チグリン酸メチル43.6gをほぼ無色の油状物質として得た(収率42%)。GLC分析により、出発物質であるチグリン酸の保持時間3.8分に対して、保持時間が2.7分の1つの主揮発性生成物が示された。CDCl中でのプロトンNMRは、痕跡量のエチルエーテルの混入を伴った予想シグナルを示した。1.79ppm(d,3H)、1.83(s,3H)、3.73(s,3H)、6.86(q,6.6Hz)。IR(KBrでニート):1718cm−1にエステルカルボニル。この油状物質は、そのまま次のステップで使用した。
γ−ブロモチグリン酸メチル(17)
オーバーヘッドスターラー、温度計及び冷却器を取り付けた1L容の四つ口フラスコ中で、四塩化炭素500mL中の粗チグリン酸メチル(43.6g、0.38mol)、N−ブロモスクシンイミド(68g、0.38mol)及び70%ベンゾイルペルオキシド(5.34g、0.015mol)の攪拌混合物を2時間加熱還流した。20℃に冷却した後、不溶性のスクシンイミド(38.1g、回収率100%)を吸引ろ過して除去した。ろ液を水250mLで3回洗浄して、MgSOで乾燥させ、次いで、ロータリーエバポレーターで25℃、26in Hg減圧下で除き、黄色油状物質78.8gを得た。CDClに溶解させた上記油状物質のプロトンNMRから複雑なスペクトルを得た。所望のγ−ブロモエステルのメチレンプロトンは、4.04ppmを中心とする二重線(8.6Hz)に帰属され、α−ブロモ異性体の同プロトンは4.24ppmの一重線に帰属された。これらのシグナル、及び1.6〜2.0ppmのメチル多重線のプロトン積分値から、以下の組成(モル%)が示唆された。
γ−ブロモエステル:59%
α−ブロモエステル:26%
出発物質:15%
この粗油状物質は、それ以上精製せずに次のステップで使用した。
わずか0.87当量のN−ブロモスクシンイミドを用い、その他は同一条件で、0.05モルスケールでもこの反応を行った。この粗油状物質の組成は、そのプロトンNMRスペクトルに基づいて、γ−ブロモエステル52%、α−ブロモエステル24%及び未反応のチグリン酸メチル23%と推定された。この油状物質のGLC分析では、他の副成分の存在が示され、もう少し複雑であった。
γ−ブロモチグリン酸メチルのトリフェニルホスホニウム塩(19)
温度計、100mLの定圧添加漏斗、及び静止窒素システムに接続した冷却器を取り付けた2L容の四つ口フラスコ中で、ベンゼン350mLに粗γ−ブロモチグリン酸メチル(78.8g)を攪拌して溶解させた溶液に、ベンゼン350mLに溶解させたトリフェニルホスフィン(95g、0.36mol)の溶液を1.75時間かけて滴下して処理した。混合物の温度は、わずかに発熱して24℃から27℃に上昇し、その他は周囲条件であった。添加後、反応物を一晩激しく攪拌して、フラスコの壁に付着した帯黄色ガム状物質を含有する白色固体のスラリーを得た。帯黄色ガム状物質を乱さずに白色固体を焼結ガラス漏斗で吸引ろ過した。フラスコをベンゼン100mLで2回洗浄して、フィルターに注いだ。フィルターケーキをベンゼン50mLで洗浄し、次いで、ヘキサン50mLで2回洗浄した。湿ケーキを真空乾燥器中、周囲温度で5.5時間かけて乾燥させた。乾燥した白色粉末(93g、mp=125℃dec)を加熱しながら、アセトニトリル150mLに溶解させ、透明な黄色溶液を得た。この熱溶液に酢酸エチル(300mL)を添加し、更に酢酸エチル約100mLを添加した後に、生成物が結晶化し始めた。フラスコを冷蔵庫に一晩保存した。生成物を吸引ろ過して、最小量のアセトニトリル及び酢酸エチル(1:2)で洗浄した。45.0g。mp=187〜190℃(分解)。文献mp=183℃(分解)。
反応フラスコ中のガム状固体を、アセトニトリル10mL及び酢酸エチル20mLから再結晶させた。同様に、ベンゼン母液から固体を、一晩かけて更に沈殿させた。これらの固体をろ過して、同様に再結晶させた。両試料を2時間冷蔵して、吸引ろ過して、生成物13.3gを更に得た。
ベンゼンろ液をロータリーエバポレーターで除去し、黄色油状物質をアセトニトリル10mLに入れ、酢酸エチル20mLで沈殿させた。このスラリーを冷蔵庫に一晩保存して、生成物4.6gを白色固体として更に得た。m.p.185〜187℃(分解)。白色固体である所望のホスホニウム塩の合計収量は62.9g、すなわち粗チグリン酸メチルに対して収率36.2%であった。プロトンNMR(CDCl、TMS)ppm1.55(d,4Hz,3H)、3.57(s,3H)、4.9(dd,15.8, 7.9Hz,2H)、6.55(ブロード q,6.6〜7.9Hz,1H)、7.4〜7.9(m,15H)。プロトンデカップリングを行ったリンNMR(CDCl、5%HPO水溶液、同軸外部標準)22.08ppm。部分的カーボンNMR(CDCl):CH(166.6ppm,d,JCP=3Hz)、オレフィンH(117.5ppm,d,JCP=86.1Hz)、CO (52.0ppm)、PhP−(25.4ppm,d,JCP=50.6Hz)及び(13.4ppm,d,JCP=2.4Hz)。部分的IR(KBrペレット):1711cm−1にエステルカルボニル。
(3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホラン(20)
オーバーヘッドスターラー、添加漏斗及び温度計を取り付けた5L容の五つ口フラスコ中で、水250mLに溶解させた水酸化ナトリウム(5.12g、0.128mol)の溶液を、水2500mL中でγ−ブロモチグリン酸メチルのトリフェニルホスホニウム塩(58.3g、0.128mol)を激しく攪拌した溶液に、25℃で41分かけて滴下した。得られた黄色スラリーを室温で10分間攪拌し、次いで、吸引ろ過した。フィルターケーキを水1800mLで洗浄し、次いで、窒素雰囲気下、フィルター上で完全に乾燥させた。次いで、この黄色固体を室温及び27”Hg減圧下で、Pを入れた真空デシケーター中で一晩乾燥させた。35.3g(収率73.7%)。mp=145〜150℃。文献mp=145〜165℃。プロトンデカップリングを行ったCDCl中のリンNMRは、17.1ppm及び21.1ppmに93:7の比で2つのピークを示した。プロトンNMR(CDCl、TMS)ppm1.89(s,3H)、3.58(s,3H)、7.3〜7.8(m,17H)。小さいが検出可能な1.74ppmでの一重線もこのスペクトルに現れ、これは不純物に起因すると考えた。この固体は、それ以上精製せずに次のステップに使用した。
ジメチルクロセチネート(21) (ACL−G29−18):
ジアルデヒド14(0.48g、2.9mmol)を100mL容丸底フラスコに入れた。ベンゼン(20mL)を添加し、マグネチックスターラーで攪拌して固体を溶解させた。イリドを添加し、ベンゼン10mLを更に用いて、その化合物をフラスコに洗い入れた。加温して、6時間激しく還流した。反応混合物を一晩冷却した。文献の報告とは逆に、非常に少量の固体しか形成されなかった。反応混合物を濃縮し、残渣をMeOH(30mL)に入れ、30分間沸騰させた。周囲温度まで冷却し、得られた固体を真空ろ過により収集した。CDCl0.5mLに20mgを溶解させることによってNMR試料を調製し、多少驚くことに、この時、完全に溶解させるのにヒートガンで加温する必要があった。H NMRスペクトルを記録して、所望の生成物と一致することがわかった。残りの物質を熱ベンゼンに溶解させ、ろ過し、ろ液を濃縮し、MeOH中に入れ、氷浴中で冷却し、赤色固体334mgを収集した(収率33%)。この物質の溶解性は、最初に単離した物質よりも何ら高くないようであった。
(ACL−G29−18A):
ジアルデヒド14(5.78g、35mmol)をN下でベンゼン(300mL)に溶解させた。イリド20(35.3g、94mmol)を添加して、得られた混合物を加温して6時間還流し、暗赤色溶液を形成した。反応混合物を一晩冷却させた後、赤色固体を真空ろ過により収集し、メタノールでリンスした。RBF500mLに移して、メタノール約65mLと共に30分間還流した。冷却し、赤色固体を収集した。冷メタノールでリンスし、真空乾燥し、21(3.00g)を赤色固体として得た。H NMR及びIRスペクトルは所望の生成物と一致した。
元の(反応混合物から得た)ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し、黒っぽい残渣をメタノール100mLに入れ、40分間還流した。氷浴中で冷却し、赤色固体を真空ろ過により収集した。冷メタノールでリンスし、真空乾燥し、21(1.31g)を赤色固体として得た。H NMRスペクトルは所望の生成物と一致した。
ろ液をプールし、濃縮し、メタノール75mLに入れ、室温で一晩静置した。赤色固体0.38gを真空ろ過により回収した。H NMRスペクトルは所望の生成物と一致した。
更に多量の固体がろ液中に形成した。真空ろ過により単離して、赤色固体0.127gを得た。IRは上記と一致した。合計回収量:4.89g、収率39%。
THF/NaOHを用いたけん化の試み (ACL−G29−19):
THF(2mL)中のジエステル21(100mg、0.28mmol)及び1N NaOH(0.56mL、2当量)の攪拌懸濁液を添加した。室温で一晩攪拌した。TLCは出発物質のみの存在を示した。加温して還流したが、数時間後も変化はなかった。より多量の固体を溶解させようとTHF(6mL)を添加したが、重要でないように思われた。一晩還流し続けた。より多量のTHFを添加し(約6mL、TLCは出発物質のみの存在を示した)、もう一晩還流した。濃縮し、H NMRでチェックしたが、出発物質のみであった(メチル及びメチルエステルの積分値に基づく)。加熱マントルで加温しながらピリジン(10mL)に溶解させた。2.5N NaOH(1.0mL)を添加した。数分後に暗橙色溶液が紅色に変わった。加熱マントルを取り外し、固体が形成し始め、マントルを30分間再度使用し、次いで、室温で一晩攪拌した。高真空で濃縮した。残渣はクロロホルム、DMSO、ピリジンに不溶であり、HOにやや溶けにくかった。IR(ヌジョールムル)は、出発物質の特徴であるC=O吸収を示した。
2.5N NaOH及びTHFを用いたけん化 (ACL−G29−20):
ジエステル21(37mg、0.10mmol)をフラスコに秤量し、ジエチルエーテル(4mL)中で攪拌した。溶媒は橙色を呈したが、固体は依然として存在した。2.5N NaOH1mLを添加して、加温して還流した。半時間後、エーテルの大部分が蒸発した。これをTHF(3mL)と交換し、数時間還流を続けた。固体を真空ろ過により収集し、脱イオン水でリンスし、次いで、真空乾燥器中で乾燥させた。IRは出発物質のみの存在を示した。
40%NaOHを用いたけん化(1) (ACL−G29−22):
ジエステル21(32mg、8.9mmol)をフラスコに秤量し、メタノール(1.5mL)中で攪拌した。溶媒は橙/赤色を呈したが、固体は依然として存在した。40%NaOH1.5mLを添加して、加温して17時間還流した。室温に冷却した後、橙色固体を真空ろ過により収集し、脱イオン水でリンスした。40℃で真空乾燥して、1を橙色粉末21mgとして得た(59%)。IR(KBrペレット) 3412、1544、1402cm−1。この化合物は恐らく吸湿性である。カルボニルの高磁場シフトは共役と合致している。
(ACL−G29−22A):
ジエステル1(35mg)を用いて繰り返し、15時間還流した。反応混合物を氷浴中で冷却し、真空ろ過により収集し、冷脱イオン水で洗浄した。40℃で真空乾燥した。1を橙色固体25.5mgとして回収した(65%)。
(ACL−G29−23):
ジエステル21(0.48g、1.3mmol)をメタノール(15.0mL)及び40%水酸化ナトリウム(15.0mL)中に入れ、加温して還流した。不均一な赤色混合物が約2時間後に橙色に変わった。6時間後に加熱を止めて、この混合物を一晩冷却させた。橙色固体を真空ろ過により収集し、冷脱イオン水で洗浄した。真空乾燥して、脆い橙色固体0.36gを得た(収率68%)。
(ACL−G29−24):
ジエステル21(1.10g、3.1mmol)を100mL容の回収フラスコに入れて、メタノール(20mL)及び40%NaOH(20mL)中で12時間加熱還流した。氷浴中で冷却した後、橙色固体を真空ろ過により収集し、脱イオン水でリンスした。真空乾燥し、1.4g(100%)を得た。C2022Na−0.4HOに関する分析計算値:C:63.29、H:6.05、Na:12.11、HO:1.90。実測値:C:63.41、H:6.26、Na:11.75、HO:1.93。
(ACL−G29−25):
ジエステル21(3.00g、8.4mmol)をメタノール(80mL)及び40%NaOH(60mL)中で12時間還流した。上述のように、生成物を橙色固体として単離した(2.7g、80%)。C2022Na−0.4HOに関する分析計算値:C:63.29、H:6.05、Na:12.11、HO:1.90。実測値:C:63.20、H:6.00、Na:11.93、HO:1.81。試料ACL−G29−23、−24及び25をめのう乳鉢で摩砕し、ACL−G29−Aとして混ぜ合わせた。
参照文献:
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(実施例2:トランスポタジウムノルビキシネートの合成)
Figure 2014144952
トランスポタジウムノルビキシネートは、共役した炭素−炭素二重結合を含む対称C20ジアルデヒドを[1−(エトキシカルボニル)メチリデン]トリフェニルホスホランとカップリングさせることによって合成する。この化合物の調製法は、フラン出発物質を適切な環状構造と交換する点を除いて、トランスソディウムクロセチネートに関して前述した調製法と類似している。そして、この生成物は、KOH/メタノール溶液を用いてけん化する。
(実施例3:より長鎖のBTCSの合成)
Figure 2014144952
上記化合物は、共役した炭素−炭素二重結合を含む対称C10ジアルデヒドを過剰の[3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン]トリフェニルホスホランに添加することによって合成する。この化合物の調製法は、フラン出発物質を適切な環状構造と交換する点を除いて、トランスソディウムクロセチネートに関して前述した調製法と類似している。次いで、トランス40−炭素生成物は、クロマトグラフィーのような手法を用いて単離する。そして、この生成物は、NaOH/メタノールの溶液を用いてけん化する。
(実施例4:吸入によるTSC)
TSCは、吸入経路によりラットに与えられた。10匹のラットは、肺に直接TSCを投与された。これは、気管にチューブを挿入し、空気約3〜6mLと共にTSC溶液(希薄炭酸ナトリウム溶液に溶解したTSC)0.2mLを噴霧することによって行った。検討した全投与量(0.5〜2mg/kg)について、薬物投与後1分以内は薬物の約20%が血流中に存在した。0.8〜1.6mg/kgの投与量については、少なくとも2時間、薬物が血流中に存在した。
(実施例5:改良合成方法)
2−ブテニル−1,4−ビスホスホネートテトラエチルの調製:
Figure 2014144952
250mL容の三つ口フラスコにテフロンコート熱電対、60mL定圧添加漏斗及び簡易蒸留ヘッドを装備した。窒素雰囲気下で、JKemコントローラで140℃に制御した加熱マントルを用いて、ニートの亜リン酸トリエチル(59mL、0.344mol)を加熱した。トランス−1,4−ジクロロ−2−ブテン(26.9g、0.215mol)及び亜リン酸トリエチル(35mL、0.204mol)の溶液を、134〜144℃で93分かけて滴下した。そして、得られた透明溶液を窒素下で140℃に保持した。37分後、酢酸エチル1mL中の一定量(1滴)に対するガスクロマトグラフィーは、所望の生成物、中間生成物及び2つの出発物質の存在を示した。
140℃で15.5時間経過した後、一定量(EtOAc0.5mL中の1滴)に対するガスクロマトグラフィーは所望の生成物の存在を示したが、出発ジクロリド及び中間生成物は検出されなかった。16時間後、微黄色溶液を窒素下で室温に冷却した。2バルブ受け器及びドライアイス−アセトン浴中で冷却したバルブを更に備えるクーゲルロールを用いて、25〜100℃、0.1〜0.2torrで微黄色油状物質を蒸留し、無色油状物質(14.8g)を初期カットとして得た。ガスクロマトグラフィーは、クーゲルロールポット中に生成物のみが存在することを示した。この薄琥珀色油状物質を、クーゲルロールを用いて、140℃、0.1〜0.15torrで蒸留して、蒸留物を無色油状物質66.45gとして得た(収率94.1%)。ガスクロマトグラフィーは、1つの揮発性成分のみの存在を示した。GC−MS分析では、328m/zに小分子イオンが、191m/zにベースイオン(POEtの損失)が得られ、この成分が所望の生成物であることが示された。プロトンNMRは所望の生成物と一致した。カーボンNMRもまた、所望のビス(ホスホン酸ジエステル)と一致し、アリル炭素へのロングレンジ(W−カップリング)、及び通常の炭素−リンカップリングのみを示した。
ポット残渣:薄黄色油状物質0.8g。
1,1,8,8−テトラメトキシ−2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンの調製:
Figure 2014144952
窒素雰囲気下、トルエン10mL及びシクロヘキサン10mL中でトランス−2−ブテニル−1,4−ビスホスホネートテトラエチル(3.3g、10.0mmol)、ピルビン酸アルデヒドジメチルアセタール(2.6mL、21.5mmol)をマグネチックスターラーで混合したものを無水炭酸カリウム(10.2g、73.8mmol)及び粉末水酸化ナトリウム(1.25g、31.2mmol)で順次処理した。溶液は直ちに黄色に変化した。得られたスラリーを窒素下、周囲温度で攪拌した。反応物はゆっくりと発熱し、約25分後に最大38℃に達した。また、ガム状沈殿物が形成され、これはマグネチックスターラーによる攪拌に悪影響を与えた。2.5時間後、一定量(トルエン0.5mL中の1滴)の黄橙色溶液のガスクロマトグラフィーは、2つの出発物質及び3つの他の新規成分の存在を示した。
周囲温度で16.75時間後、一定量(トルエン0.5mL中の1滴)の橙色溶液のガスクロマトグラフィーは、少量の出発ビス(ホスホン酸ジエステル)のみの存在を示した。得られた、ガム状塊を有する橙色混合物(攪拌不能)を氷浴中で冷却し、10%NaCl水溶液100mLでクエンチした。スパーテルを用いて作業することにより、この水溶液中に固体を溶解させた。次いで、この混合物をエーテル:ヘキサン(1:1)200mLで抽出した。有機相を10%NaCl水溶液(200mL)、飽和食塩水(100mL)で順次洗浄した。無色有機相をNaSOで乾燥させた。ガスクロマトグラフィーは3つの主成分の存在を示したが、出発ビス(ホスホン酸ジエステル)は検出されなかった。薄層クロマトグラムは、2つの主スポット及び1つの副スポットを示した。NaSOを吸引ろ過して除去し、エーテルで洗浄した。ろ液を35℃で、ロータリーエバポレーターで濃縮して、無色油状物質1.8gを得た。GC−MS分析では、256m/zに分子イオンが、75m/zにベースイオン[(MeO)CH]が得られ、3つの主揮発性成分が異性体生成物であることが示された。プロトンNMRもまた、他の未同定不純物と共に異性体生成物の混合物が存在することに合致した。粗生成物の収率=70.3%。
1,1,8,8−テトラメトキシ−2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンの調製:
Figure 2014144952
トルエン200mL及びシクロヘキサン200mL中でトランス−2−ブテニル−1,4−ビスホスホネートテトラエチル(63.2g、0.19mol)、ピルビンアルデヒドジメチルアセタール(50mL、0.41mol)を機械的に攪拌して得た混合物を、無水炭酸カリウム(196g、1.42mol)及び粉末水酸化ナトリウム(24.0g、0.60mol)で順次処理した。溶液は直ちに黄色に変化した。得られたスラリーを窒素下、周囲温度で攪拌した。反応物は約11分後に61℃に発熱し、攪拌混合物を氷浴中で冷却して、温度を35℃に下げた。29〜35℃で4.7時間経過した後、一定量(トルエン0.5mL中の3滴)に対するガスクロマトグラフィーは、出発ビス(ホスホネート)が存在しないことを示した。約5時間後、混合物を氷浴中で13℃に冷却したが、10%塩化ナトリウム水溶液400mLを添加したところ、温度は30℃に上昇した。更に10%塩化ナトリウム水溶液(1500mL)を添加し、混合物をエーテル:ヘキサン(1:1)3000mLで抽出した。黄色味がかった有機相を10%塩化ナトリウム水溶液(2×1000mL)、飽和食塩水(1000mL)で順次洗浄した。この黄色味がかった有機相をNaSOで乾燥させ、ろ過し、30℃で、ロータリーエバポレーターで濃縮して、淡黄色油状物質43.4gを得た。ガスクロマトグラフィーは、混合物の89%を含む3つの主成分の存在を示したが、出発ビス(ホスホネート)は検出されなかった。TLC分析では、1つの主成分及び3つの副成分の存在が示された。
プロトンNMRは異性体生成物及びトルエンの存在を示した。この油状物質を、クーゲルロールを用いて、50℃、0.2torrで更に30分間蒸発させた(31.9g)。プロトンNMRは異性体ビス(アセタール)生成物の存在を示したが、トルエンは検出されなかった。
収率=65.5%。
より高いペイロードでの2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールの調製:
Figure 2014144952
窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン(160mL)、水(80mL)及び氷酢酸(320mL)中で粗1,1,8,8−テトラメトキシ−2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン異性体(31.9g、124.4mmol)をマグネチックスターラーで攪拌した溶液を、テフロンコート熱電対を介してJKemコントローラで制御した加熱マントルで45℃に加熱した(午前9:03)。約30分後、その混合物は発熱して最大54℃まで上昇し、その後、45℃の設定温度に戻った。3時間後、一定量(THF0.5mL中の3滴)に対するガスクロマトグラフィーは、いくらか残留した出発物質、2つの主生成物、及び1つの副生成物の存在を示した。黄色反応溶液を氷浴中で21℃に冷却した後、エーテル:ジクロロメタン(4:1)(2000mL)で希釈した。そして、この溶液を20%NaCl水溶液(2000mL×2)、20%NaCl水溶液:1M NaOH水溶液(4:1)(2000mL×3)及び20%NaCl水溶液(1000mL×2)で順次洗浄した[:中性pHにより明らかであるが、最初の2回の洗浄で酢酸が除去されたと思われる。3回目の洗浄により赤くなったが、依然として塩基性であり、副生成物が除去されたことが示唆される]。黄色有機相をMgSOで乾燥させ、ろ過し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、黄色固体18.9gを得た。ガスクロマトグラフィーは、1つの主成分及び1つの副成分である出発ビス(アセタール)の存在を示した。TLC分析では、1つの主スポット及び数個の副スポットとして、より極性の高い不純物の存在が示された。この固体を還流メタノール250mLに溶解させ、室温に冷却した後、1時間氷浴中で冷却した。得られたスラリーを吸引ろ過して、黄色綿花様針状物質14.15gを得た。ガスクロマトグラフィーは、異性体ジアルデヒドの95:5混合物の存在を示した。この固体を還流メタノール200mLでもう一度再結晶させ、室温に冷却し、その後、一晩冷蔵庫で冷却した。
このスラリーを吸引ろ過して、冷凍庫で冷却したメタノールで洗浄して、黄色針状物質11.2gを得た。ガスクロマトグラフィーは、異性体ジアルデヒドの97:3混合物の存在を示した。TLC分析では、1つのスポットが示された。針状物質を真空乾燥器中、45℃で160分間、一定の重量(10.75g)になるまで乾燥させた。
未補正mp=154〜156℃。文献mp=161〜162℃[: Dictionary of Organic Compounds. Verson 10:2、2002年9月]。プロトンNMR及びカーボンNMRは所望の対称ジアルデヒドと一致した。
再結晶から得た2つのメタノールろ液を混ぜ合わせた。薄層クロマトグラムは、生成物及び他の不純物の存在を示した。以下に示すように、ろ液を濃縮して、種々の収穫物(crop)を収集した。
Figure 2014144952
収穫物2及び3: これらの収穫物を混ぜ合わせて還流酢酸エチル20mLに溶解させ、室温に冷却した後、冷凍庫で1時間冷却した。スラリーを吸引ろ過して、冷凍庫で冷却した酢酸エチルで洗浄して、黄色針状物質(1.95g)を得た。ガスクロマトグラフィーは、異性体の86:14の混合物の存在を示した。この固体を酢酸エチル(10mL)に入れてもう一度再結晶させて、黄色針状物質(1.55g)を得た。ガスクロマトグラフィーは、92:8の比の異性体の存在を示した。酢酸エチル(10mL)からの3回目の再結晶により、黄色針状物質1.25gを得た。mp=152〜154℃。ガスクロマトグラフィーは96:4の異性体比を示した。プロトンNMRにより、所望のジアルデヒドと確認した。GC−MS分析では、164m/zに顕著なMイオンが、91m/zにベースイオンが示され、所望のジアルデヒドと一致した。
酢酸エチルろ液を、メタノールろ液から得た黄色固体(収穫物4)と混ぜ合わせ、ロータリーエバポレーターで濃縮して、黄色固体6.0gを得た。ガスクロマトグラフィーは、他の不純物と共に2つの異性体の53:34の混合物が存在することを示した。
この固体をジクロロメタン100mL中に溶解させ、Davisilグレード643シリカゲル(33.5g)を添加した。この混合物を35℃で、ロータリーエバポレーターで除去した。次いで、物質が吸着したシリカゲルを、Biotageシステム用の試料導入モジュールに加えた。そのモジュールは、既にグラスウールのプラグ及び砂の層を含んでいた。次いで、シリカゲルの上にろ紙を載せた。Biotage75Sカラムを、ラジアル圧縮圧35psi及び溶媒圧20psiで、予め溶媒混合物で湿らせた。カラムをヘキサン:酢酸エチル(85:15)(6000mL)で溶出させた。予め湿らせた段階を含むボイド容積1000mLを採取した。250mLの画分を収集し、薄層クロマトグラム分析に基づいて混ぜ合わせた。以下に示すように、これらの画分を35℃で、ロータリーエバポレーターで濃縮した。
Figure 2014144952
画分5〜10: 黄色固体をヘキサン中でスラリーとし、吸引ろ過して、山吹色固体2.5gを得た。ガスクロマトグラフィーは、67:33の比のジアルデヒド異性体混合物が存在することを示した。
合計収率96〜97%。E,E,E−ジアルデヒド=10.75+1.25=12.0g(収率58.8%)。
パラ−トルエンスルフィン酸を用いた2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールの異性化:
Figure 2014144952
窒素雰囲気下、2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールの2:1異性体混合物及びそのオフ異性体(2.5g、15.2mmol)、4−トルエンスルフィン酸(0.35g、2.2mmol)及び無水1,4−ジオキサン50mLを15分間加熱還流した。一定量(7滴)をエーテル:ジクロロメタン(4:1)0.5mLで希釈して、KCOで乾燥させた。ガスクロマトグラフィーは、所望の異性体及びオフ異性体の91:9の混合物の存在を示した。
室温で一晩冷却した後、得られたスラリーをエーテル:ジクロロメタン(4:1)100mLに溶解させ、水(50mL×3)、0.2M NaOH水溶液(50mL)、水(50mL×2)及び飽和食塩水(50mL×3)で順次洗浄した。相の分離後に、残ったラグ相(rag layer)をジクロロメタンに溶解させた。混ぜ合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、ろ過し、40℃で、ロータリーエバポレーターで濃縮して、橙色固体2.2gを得た。ガスクロマトグラフィーは、93:7の比の所望のジアルデヒド対オフ異性体の存在を示した。この固体をヘキサン中でスラリーとし、吸引ろ過して、橙色固体2.15gを得た。30〜40℃に冷却した後、冷凍庫で1時間冷却することによって、還流酢酸エチル20mLからこの固体を再結晶させた。スラリーを吸引ろ過し、冷凍庫で冷却した酢酸エチルで洗浄して、黄橙色針状物質1.65gを得た。mp=158〜160℃。文献mp=161〜162℃。ガスクロマトグラフィーは、96:4の比の所望のジアルデヒド対オフ異性体の存在を示した。プロトンNMR及びカーボンNMRは所望のジアルデヒド異性体と一致した。
収率=66%。
メタノール中における塩化チオニルを用いたチグリン酸メチルのスケールアップ調製:
Figure 2014144952
メタノール3000mL中に入れて機械的に攪拌して得たチグリン酸(397.35g、3.97mol)の溶液に、ニートの塩化チオニル(397mL、5.44mol)を、外部冷却せずに130分かけて滴下して処理した。この時、温度は14℃から80分後には最高50℃に上昇した。一定量に対するガスクロマトグラフィーは、エステルへの完全な変換を示し、チグリン酸は検出されなかった。周囲温度で1時間攪拌した後、銀メッキした真空ジャケット付きヴィグリューカラム(400mm×20mm)に通して、大気圧でその溶液を蒸留した。ポット温度を58〜63℃にして、主に57〜61℃で濃縮液を収集した(2時間で630mL)。ガスクロマトグラフィーは、蒸留物中にかなりのメチルエステルが存在することを示した。
ヴィグリューカラムをより効率の低いカラム(30×2cm w/窪みがより少ない)に換えて、蒸留の速度を加速した。ポット温度を69〜71℃にして、65〜69℃のヘッド温度で蒸留物を収集した(2.25時間かけて1300mL)。ガスクロマトグラフィーは、蒸留物中にかなりのメチルエステルが存在することを示した。ポット温度が87℃に達するまで大気圧蒸留を続け、69〜83℃のヘッド温度で、この間に蒸留物を収集した(2時間かけて975mL)。ガスクロマトグラフィーは、初期の画分よりも蒸留物中にかなり多量のメチルエステルが存在することを示した。
ポット中の黄色二相混合物をエーテル(300 & 200mL)で抽出し、KCOで乾燥させ、ろ過し、25℃で、ロータリーエバポレーターで濃縮して、橙色油状物質132.6gを得た(収率29.3%)。ガスクロマトグラフィーは生成物の存在を示した。プロトンNMR及びカーボンNMRは、痕跡量のエチルエーテルを伴う所望の生成物と一致した。エーテル濃縮液のガスクロマトグラフィーは、オーバーヘッド中にいくらかメチルエステルが存在することを示した。
蒸留物3: 3回目のメタノール蒸留物(975mL)を25℃で、ロータリーエバポレーターで濃縮して、二相混合物(100〜150mL)を得た。この混合物をエーテル(100 & 50mL)で抽出し、KCOで乾燥させた。
蒸留物2: 2回目のメタノール蒸留物(1300mL)を25℃で、ロータリーエバポレーターで濃縮して、二相混合物(30〜50mL)を得た。この混合物をエーテル(2×50mL)で抽出し、KCOで乾燥させた。
蒸留物2及び蒸留物3の濃縮エーテル抽出物を混ぜ合わせ、吸引ろ過し、25℃で、ロータリーエバポレーターで濃縮して、無色油状物質77.3gを得た。
プロトンNMR及びカーボンNMRは、以前得た所望のメチルエステルのスペクトルと合致した。
合計収量=132.6+77.3=209.9g(46.3%)。
或いは、1)チグリン酸メチルは、Alfa、Lancaster又はAcrosから商業的に入手可能であり、また、2)JOC、64、8051〜8053頁(1999)に従って、試験的にホスホニウム塩を製造することができる。
チグリン酸メチルの臭素化:
Figure 2014144952
四塩化炭素2000mLにチグリン酸メチル(209.9g、1.84mol)及びN−ブロモスクシンイミド(327.5g、1.84mol)、70%過酸化ベンゾイル(3.2g、0.009mol)を入れて機械的に攪拌して得たスラリーを、5L容の反応フラスコと還流冷却管との間に1Lのクーゲルロールバルブを設けて加熱還流した(78〜81℃)。2時間後、還流を停止して、マントルを外し、スターラーを止めた。すべての固体はCCl溶液に浮遊した。これにより、無視しうる量のNBSを有するスクシンイミドであることを示唆された。スラリーを氷浴中で20℃に冷却し、吸引ろ過して、灰白色固体180.7gを得た。洗浄は行わなかった。黄色ろ液を水(1L×3)で洗浄し、MgSOで乾燥させた。ガスクロマトグラフィーは、他の副成分と共に、出発チグリン酸メチル及び2つの一臭化物が約1:2:1の比で存在することを示した。
MgSOをろ過して除去した後、薄黄色ろ液を35℃で、ロータリーエバポレーターで濃縮し、薄黄色油状物質327.1gを得た。プロトンNMR及びガスクロマトグラフィーにより、以下の組成が示唆された。
Figure 2014144952
50%アッセイで調整した所望の生成物の収率=46.0%。
この油状物質は、そのまま次のステップで用いる。
わずかに高いペイロードでの、アセトニトリル中におけるγ−ブロモチグリン酸メチルとトリフェニルホスフィンとのスケールアップ反応:
Figure 2014144952
窒素雰囲気下、5L容の四つ口フラスコに入れた無水アセトニトリル1300mL中のγ−ブロモチグリン酸メチルの粗混合物(322.6g、85%アリルブロマイド、1.42mol)を機械的に攪拌した。
酢酸エチル2000mLに溶解させたトリフェニルホスフィン(387.0g、1.48mol)の溶液を4時間かけて滴下した。添加中、最初の75分間で約40%が添加され、その後、温度は22℃から最高30℃に上昇した。120分間でトリフェニルホスフィン溶液の約60%が添加され、その後、溶液は濁り、残りの添加により固体が沈殿し続けた。添加後、漏斗を酢酸エチル(600mL)でリンスし、反応混合物に更に添加した。クリーム状のスラリーを、週末にわたり周囲温度で攪拌した。
この白色スラリーを吸引ろ過し、得られたケーキを酢酸エチル:アセトニトリル(2:1)(150mL×3)で洗浄した。得られた白色固体352.55gを真空乾燥器中、40℃で4時間乾燥させた(2時間後に一定重量)(322.55g)。mp=187〜188℃(分解)。文献mp=183℃(分解)。プロトンNMR及びカーボンNMRは、以前得た所望のホスホニウム塩のスペクトルと合致した。LC−MS分析では、375m/zに分子イオンが得られ、1つの主成分の存在が示された。ポジティブモードにおけるその主成分のエレクトロスプレーマススペクトルは所望のホスホニウム塩と一致した。リンNMRは、22.0ppmに単一のリンシグナルを示した。
出発チグリン酸メチルに基づいた収率=100×322.55/(455.32×1.84×322.6/327.1)=39.0%。
(3−カルボメトキシ−2−Z−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホランの調製:
Figure 2014144952
脱イオン水3400mL中で(3−カルボメトキシ−2−E−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホニウムブロマイド(154.8g、0.34mol)を機械的に攪拌して得た微スラリーに、23℃で32分かけて水500mLに溶解させた水酸化ナトリウム(13.6g、0.34mol)の溶液を滴下して処理したところ、明らかな発熱はなかったが、直ちに山吹色固体の沈殿が生じた。15分間攪拌した後、山吹色スラリーを吸引ろ過し、水(1500mL)で洗浄し、吸引乾燥して、明黄色固体151.7gを得た。この固体を真空乾燥器中で35〜45℃(午後3時50分)で一晩乾燥させた。
真空乾燥器中、35〜45℃で22.5時間乾燥させた後、一定重量が得られた(107.8g)。mp=144〜160℃。文献mp=145〜165℃。プロトンNMRは、NMRの磁場の強度における差異を考慮すると、以前得た所望のイリドのスペクトルに類似していた。カーボンNMRは、50.2ppm及び11.8ppmにメチル炭素を示し、複雑な芳香族領域を伴い、オレフィン炭素及びイリド炭素については、明らかなシグナルを有しなかった。
収率=84.7%。
ジメチルクロセチネートの試験的調製:
Figure 2014144952
窒素雰囲気下で、ベンゼン(128mL)に(3−カルボメトキシ−2−Z−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホラン(12.8g、34.2mmol)及び2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアール(2.1g、12.8mmol)を入れてマグネチックスターラーで攪拌して得た混合物を、タイマーを用いて6時間加熱還流した。
得られたスラリーを氷浴中で40分間冷却して、吸引ろ過し、ベンゼンで洗浄し、吸引乾燥して凍ったベンゼンを溶かし、赤色固体2.1gを得た。TLC分析では、単一の黄色スポットが示された。この固体を真空乾燥器中、40〜45℃で70分間乾燥させた(1.85g、収率40.5%)。未補正mp=210〜213℃。文献mp=214〜216℃[:E.Buchta & F.Andree、Chem Ber、93、1349(1960)]。プロトンNMRは、以前得た、90MHz装置におけるジメチルクロセチンのスペクトルに類似していた。カーボンNMRは、所望のジメチルエステルの正確な化学シフトを有する11個の特有のカーボンシグナルをすべて示したが、それらのシグナルは、残留ベンゼンの可能性がある1つの副不純物シグナルを伴った。エレクトロスプレーマススペクトルからは、フラグメントの分解及び再結合が示唆された。
TLC分析では、赤色ろ液が、追加の生成物であるトリフェニルホスフィンオキシド、及び単離された固体よりもわずかに小さいRを有する橙色成分を含有することが示された。赤色ろ液を35℃で、ロータリーエバポレーターで濃縮して、赤色固体13.2gを得た。この固体をメタノール25mL中で加熱還流した。そして、得られたスラリーを氷浴中で冷却し、60分後に吸引ろ過し、メタノールで洗浄して、赤色固体0.6gを得た。この固体を真空乾燥器中、45℃で135分間乾燥させた(0.5g)。mp=203〜208℃。プロトンNMRは、残留不純物を伴う所望のジエステルの存在を示した。カーボンNMRは、所望の生成物のシグナルのみを示した。TLC分析では、筋状の生成物スポットが示された。
ろ液は濃縮して、保存した。
クロセチンのジメチルエステルの第2の調製:
Figure 2014144952
窒素雰囲気下、ベンゼン400mLに(3−カルボメトキシ−2−Z−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホラン(73.0g、195.0mmol)を入れて機械的に攪拌して得たスラリーに、2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアール(11.95g、12.8mmol)を一度に添加した後、ベンゼン330mLを更に添加した。得られた褐色スラリーを、タイマーを用いて6時間加熱還流し、更に、室温に冷却し、窒素下で一晩置いた。
得られたスラリーを氷浴中で6〜10℃に冷却し、吸引ろ過し、ベンゼン(50mL×2)で洗浄して、赤色固体10.05gを得た。TLC分析では、単一の黄色いスポットが示された。この固体を真空乾燥器中、40℃(午前9時)で3.5時間乾燥させたが、重量損失は見られなかった(10.05g、収率38.7%)。mp=211〜214℃。文献mp=214〜216℃。プロトンNMR及びカーボンNMRは、以前得たクロセチンの所望のジメチルエステルのスペクトルと合致した。
赤色ろ液を40℃で、ロータリーエバポレーターで濃縮し、赤色固体84.4gを得た。TLC分析は、試験的調製と類似していた。この固体をメタノール165mLに入れ、還流下、マグネチックスターラーで攪拌してスラリーとした。そして、得られたスラリーを氷浴中で2.5時間冷却し、吸引ろ過し、最小量のメタノールで洗浄して、橙色ペースト10.5gを得た。TLC分析では、単一の黄色スポットが示された。このペーストを真空乾燥器中、45℃で190分間乾燥させた(5.6g)。mp=201〜208℃。NMRは、未知の芳香族不純物と共に所望のジエステルが存在することを示した。
この不純物固体、及び初期の操作から得た2つの他の類似の固体(合計6.5g)を、還流したクロロホルム75mLに溶解させ、メタノールで希釈し、一晩冷蔵庫に入れて冷却した。
スラリーを吸引ろ過し、最小量のメタノールで洗浄して、赤色結晶固体6.1gを得た。この固体を真空乾燥器中、45℃で3時間、一定重量になるまで乾燥した(4.25g)。mp=211〜213℃。プロトンNMR及びカーボンNMRは、他のオレフィン族不純物又は芳香族不純物の存在を示した。その固体を、還流したトルエン150mLに溶解させ、最後に、冷蔵庫に入れて130分間冷却した。スラリーを吸引ろ過し、トルエンで洗浄して、赤色固体2.05gを得た。この固体を真空乾燥器中、45℃で50分間乾燥させたが、重量変化は見られなかった(2.05g)。mp=214〜216℃。プロトンNMRは、いくらかの残留トルエン及び無視しうる量のオフ異性体不純物を伴った所望のジメチルクロセチンの存在を示した。カーボンNMRは所望のジメチルクロセチンの存在を示したが、オフ異性体不純物は検出されず、トルエンと一致する2〜3の新規残留物シグナルが見られた。収率=45.5%。
クロセチンの二ナトリウム塩の調製:
Figure 2014144952
ジメチルクロセチン(13.95g、39.1mmol)、40wt%水酸化ナトリウム水溶液(273mL、3.915mol)及びメタノール(391mL)を機械的に攪拌して得たスラリーを、74℃で、タイマーを用いて12時間加熱還流した。
この橙色スラリーを、ろ紙を備えるブフナー漏斗及び焼結ガラス漏斗に通して吸引ろ過した。ろ過はゆっくり行った:乾燥後にフィルターが詰まるまでは、焼結ガラスに通した方がろ過は迅速であった。しかし、水で洗浄するとろ紙の詰まりは解消された]。焼結ガラス漏斗に残ったスラリーを、ブフナー漏斗に残った固体に加えた。この橙色ペーストを水(100mL×3)、メタノール(50mL×3)で順次洗浄した。橙色ペーストを真空乾燥器中、45〜50℃で乾燥させた。
21時間後、橙色塊の重量は24.25gであった。その物質をスパーテルで粉砕し、真空乾燥器中、45〜50℃で乾燥させた。
合計65.5時間の乾燥の後、橙色粉末の量は23.1gであった。赤外スペクトルは、報告されているTSCのIRスペクトルと比較して余分のバンドを示し、特に3424及び1444cm−1に大きなバンドを示した。プロトンNMRは、メチルエステルの証拠を示さなかった。しかし、オレフィン領域及びメチル領域の積分値は、恐らくフェージング問題のために消失していた。
重量の過剰は水酸化ナトリウムが原因であると仮定して、その橙色固体を脱イオン水400mL中、35分間マグネチックスターラーで攪拌した。スラリーを吸引ろ過し、得られたケーキを脱イオン水(50mL×2)で洗浄して、橙色ペーストを得た。この物質を真空乾燥器中、45〜50℃で一定重量になるまで乾燥させた。約7時間後、この固体を破砕し、粉砕し、更に真空乾燥器中、45℃で一晩乾燥させた。
45℃で21時間乾燥させた後、固体の量は13.25gであった。更に粉砕して、真空乾燥器中、45℃で乾燥させた後、固体の量は13.15gであった。赤外スペクトルは、報告されているIRスペクトルと一致した。プロトンNMRでは、二ナトリウム塩と一致するプロトンNMRスペクトルが得られた。HPLC分析では、可能性のある1つの副不純物を伴う1つの主成分の存在が示された。主成分のエレクトロスプレー負イオンマススペクトルは、クロセチンの所望の二ナトリウム塩と一致した。カーボンNMRは、クロセチンの二ナトリウム塩の10個の特有のカーボンシグナルをすべて示し、分子の対称性が立証された。
水、水酸化ナトリウム及びメタノールの元のろ液は、水洗浄中に更に多くの固体を沈殿させた。このスラリーを吸引ろ過し、水で洗浄して、橙色ペーストを得た。このペーストを真空乾燥器中、45℃で18.5時間乾燥させて、橙色固体0.65gを得た。スペクトルデータは、クロセチンの所望の二ナトリウム塩と一致した。この固体を第一収穫物と混ぜ合わせた。
収量=13.15+0.65=13.8g(94.8%)。
第一収穫物の元素分析では、所望の生成物に関する許容できない値が示され、これにより、クロセチンの二ナトリウム塩に水酸化ナトリウムが混入していることが示唆された。
クロセチンの二ナトリウム塩の水洗浄:
クロセチンの二ナトリウム塩(13.6g)を脱イオン水150mLに入れてスラリーとし、室温で1時間、マグネチックスターラーで攪拌した。スラリーをブフナー漏斗で吸引ろ過した。そして、得られた橙色ペーストを水で洗浄して、橙色ろ液のpHを観察した。
橙色のペーストを、ラバーダムを用いてフィルター上で吸引乾燥した。このペーストを25〜55℃で5.5時間、真空乾燥して、脆い橙色固体11.2gを得た。この固体を粉砕し、ボトルに移し、真空乾燥器中、45℃で一晩乾燥させた。
量=11.1g。回収率=81.6%。IR及びプロトンNMRスペクトルは、以前得た、クロセチンの所望の二ナトリウム塩のIR及びプロトンNMRスペクトルと合致した。HPLC分析では、420nmで単一成分が示され、負イオンモードにおける当該成分のエレクトロスプレーマススペクトルはクロセチンと一致した。
カーボンNMRは、クロセチンの所望の二ナトリウム塩の正確な化学シフトを有する10個の特有のカーボンシグナルをすべて示した。元素分析からは、所望の生成物に関する許容可能なデータが得られた。
参照文献:
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(実施例6:改良合成方法に従って製造されたTSCの純度の決定)
実施例5の方法に従って合成したTSC物質について、254nmの吸光度に対する421nmの吸光度の比は、UV−可視分光光度計を用いて11.1であった。
(実施例7:TSCの経口投与)
TSCは、ラットにおいて、(胃管栄養法(gavage)により)経口投与した場合に血流に吸収されることが示された。2匹のラットにおいて、与えた投与量の1〜2%が、投与後15〜30分の時点で血流に存在することが判明した。経口的に吸収される量は、実際には、その時点よりも前に最大になった。
開示された本発明から逸脱することなく、本発明の化合物及び組成物の両方、並びに関連の方法に対して、多数の変更及び追加を行うことができることは、当業者に容易に理解できるであろう。

Claims (42)

  1. 下記構造:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する化合物であって、
    トランスソディウムクロセチネートでない化合物。
  2. Yが、Na、K、Liからなる群より選ばれる一価金属イオン、又はR、R[Rは、H、又はC2n+1(nは1〜10)である。]からなる群より選ばれる有機カチオンである、請求項1に記載の化合物。
  3. Zが、カルボキシル(COO)基、硫酸基(OSO )、又はモノリン酸基(OPO )、(OP(OH)O )、ジリン酸基、トリリン酸、又はそれらの組合せからなる群より選ばれる、請求項1に記載の化合物。
  4. TCROが、炭素原子を含む共役した炭素−炭素二重結合及び単結合であり、1つの炭素−炭素二重結合の周囲の4つの単結合がすべて同一平面内に位置する、請求項1に記載の化合物であって、
    直鎖状である化合物。
  5. TCROが、
    Figure 2014144952

    [式中、同一でも異なってもよいXは、H、10個以下の炭素を有し、ハロゲンを任意的に含む直鎖状若しくは分岐鎖状の基、又はハロゲンである。]
    である、請求項1に記載の化合物。
  6. TCROが、
    Figure 2014144952

    [式中、同一でも異なってもよいXは、H、10個以下の炭素を有し、ハロゲンを任意的に含む直鎖状若しくは分岐鎖状の基、又はハロゲンである。]
    である、請求項1に記載の化合物。
  7. TCROが、
    Figure 2014144952

    [式中、同一でも異なってもよいXは、H、10個以下の炭素を有し、ハロゲンを任意的に含む直鎖状若しくは分岐鎖状の基、又はハロゲンである。]
    である、請求項1に記載の化合物。
  8. TCROが、
    Figure 2014144952

    [式中、同一でも異なってもよいXは、H、10個以下の炭素を有し、ハロゲンを任意的に含む直鎖状若しくは分岐鎖状の基、又はハロゲンである。]
    である、請求項1に記載の化合物。
  9. 哺乳動物における酸素の拡散性を増大させる方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  10. 前記投与が吸入による、請求項9に記載の方法。
  11. 呼吸器疾患を治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  12. 気腫を治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  13. 出血性ショックを治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  14. 循環器疾患を治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  15. アテローム性動脈硬化を治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  16. 喘息を治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  17. 脊髄損傷を治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  18. 脳浮腫を治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  19. 乳頭腫を治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  20. 低酸素症を治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  21. 可視光波長領域で生じた最大ピークの吸光度を、UV波長領域で生じたピークの吸光度で割った値が7.5を超える双極性トランスカロテノイド塩組成物。
  22. 可視光波長領域で生じた最大ピークの吸光度を、UV波長領域で生じたピークの吸光度で割った値が7.5を超えるトランスソディウムクロセチネート組成物。
  23. 哺乳動物における酸素の拡散性を増大させる方法であって、
    治療有効量の双極性トランスカロテノイド塩を哺乳動物に投与することを含み、
    可視光波長領域で生じた最大ピークの吸光度を、UV波長領域で生じたピークの吸光度で割った値が7.5を超える方法。
  24. 気腫を治療する方法であって、
    治療有効量の双極性トランスカロテノイド塩を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    可視光波長領域で生じた最大ピークの吸光度を、UV波長領域で生じたピークの吸光度で割った値が7.5を超える方法。
  25. 出血性ショックを治療する方法であって、
    治療有効量の双極性トランスカロテノイド塩を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    可視光波長領域で生じた最大ピークの吸光度を、UV波長領域で生じたピークの吸光度で割った値が7.5を超える方法。
  26. 前記双極性トランスカロテノイド塩がトランスソディウムクロセチネートである、請求項23〜25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 哺乳動物における酸素の拡散性を増大させる方法であって、
    治療有効量のトランスソディウムクロセチネートを、吸入によって哺乳動物に投与することを含む方法。
  28. オレフィンジアルデヒドの異性体混合物をオールトランスアルデヒドに変換する方法であって、
    ジアルデヒドの前記異性体混合物を、溶媒中でスルフィン酸を用いて異性化することを含む方法。
  29. 前記スルフィン酸が式RSOH[Rは、C1〜C10の直鎖若しくは分岐アルキル基、又はアリール基である。]を有する、請求項28に記載の方法。
  30. 前記溶媒が、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジアルキルエーテルからなる群より選ばれ、前記アルキル基がC1〜C10の直鎖又は分岐アルキル基である、請求項28に記載の方法。
  31. 前記スルフィン酸がパラ−トルエンスルフィン酸であり、前記溶媒が1,4−ジオキサンである、請求項28に記載の方法。
  32. 前記オレフィンジアルデヒドが2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールである、請求項28に記載の方法。
  33. 前記オレフィンジアルデヒドが2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールであり、前記スルフィン酸がパラ−トルエンスルフィン酸であり、前記溶媒が1,4−ジオキサンである、請求項28に記載の方法。
  34. 虚血を治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  35. 外傷性脳損傷を治療する方法であって、
    下記式:
    YZ−TCRO−ZY
    [式中、
    Yはカチオンであり、
    Zは、前記カチオンに結合した極性基であり、
    TCROはトランスカロテノイド骨格である。]
    を有する治療有効量の化合物を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    前記化合物がトランスソディウムクロセチネートでない方法。
  36. 哺乳動物における虚血を治療する方法であって、
    治療有効量の双極性トランスカロテノイド塩を哺乳動物に投与することを含み、
    可視光波長領域で生じた最大ピークの吸光度を、UV波長領域で生じたピークの吸光度で割った値が7.5を超える方法。
  37. 外傷性脳損傷を治療する方法であって、
    治療有効量の双極性トランスカロテノイド塩を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    可視光波長領域で生じた最大ピークの吸光度を、UV波長領域で生じたピークの吸光度で割った値が7.5を超える方法。
  38. パフォーマンスを増強する方法であって、
    有効量の双極性トランスカロテノイド塩を哺乳動物に投与することを含み、
    可視光波長領域で生じた最大ピークの吸光度を、UV波長領域で生じたピークの吸光度で割った値が7.5を超える方法。
  39. 糖尿病を治療する方法であって、
    治療有効量の双極性トランスカロテノイド塩を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    可視光波長領域で生じた最大ピークの吸光度を、UV波長領域で生じたピークの吸光度で割った値が7.5を超える方法。
  40. アルツハイマー病を治療する方法であって、
    治療有効量の双極性トランスカロテノイド塩を、治療を要する哺乳動物に投与することを含み、
    可視光波長領域で生じた最大ピークの吸光度を、UV波長領域で生じたピークの吸光度で割った値が7.5を超える方法。
  41. 前記双極性トランスカロテノイド塩がトランスソディウムクロセチネートである、請求項36〜40のいずれか一項に記載の方法。
  42. 哺乳動物の手術に起因する虚血を治療又は予防し、或いはその量を減少させる方法であって、
    治療有効量の双極性トランスカロテノイド塩を、手術前、手術中又は手術後に、哺乳動物に投与することを含む方法。
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