JP2014127790A - 情報処理装置および方法、並びにプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】伝送遅延の差が大きい複数の経路を利用したマルチパス通信において、より効率的に帯域幅を活用することができるようにする。
【解決手段】OS(オペレーティングシステム201)上で実行されるTCP/IP通信制御部202、および、MPTCP制御部203が設けられている。TCP/IP通信制御部202、および、MPTCP制御部203の上位層としてアプリケーションプログラム204が実行される。MPTCP制御部203の一部として分配制御部211が設けられ、各ネットワークインタフェースから送信されるデータに係る分配を制御するようになされている。分配制御部211は、サブフロー毎に伝送遅延を特定し、輻輳ウィンドウサイズを予測しながら、到達予想時間を算出/更新し、到達予想時間が最小となるサブフローにセグメントを送出する。
【選択図】図6

Description

本技術は、情報処理装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、伝送遅延の差が大きい複数の経路を利用したマルチパス通信において、より効率的に帯域幅を活用することができるようにする情報処理装置および方法、並びにプログラムに関する。
近年、無線通信インフラの多様化により、スマートフォン等のモバイル機器には複数のネットワークインタフェースが搭載されることが多い。例えば、モバイル機器において、Bluetooth(登録商標)、Wi−Fiなどの近距離無線通信を行いつつ、3G(IMT-2000)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)などの広域無線通信を行うことが提案されている。
すなわち、物理層、データリンク層、または、ネットワーク層において、それぞれ異なる経路で同一の宛先と通信する、マルチパス通信が提案されている。
例えば、1つのアプリケーションプログラムが、複数のネットワークインタフェースを効率的に利用したマルチパス通信を行うことが可能であれば、アプリケーションプログラムの処理に係る時間を短縮することも可能になる。しかし、既存のトランスポート層プロトコルであるTCPでは、複数のインタフェースを同時に利用する負荷分散はできず、利用可能な帯域を十分に活用できない。
また、TCPセッションは、IPアドレスと1対1で対応していることから、ネットワーク層での接続が失われるとTCPセッションが切断されることになる。
例えば、Wi−Fiで通信中にエリア外に移動した場合、ネットワーク層での接続が一旦失われることになるが、この際に都度、TCPセッションが切断されると、アプリケーションの処理などに支障をきたしかねない。このような問題は、例えば、ユビキタスネットワークの発展を阻害する要因となり得る。
このような問題を解決するために提案されたプロトコルの1つに、マルチパスTCP(MPTCP)がある。MPTCPは、複数のネットワークインタフェースを同時に利用することで、マルチホーミング(通信経路の冗長性確保や負荷分散)を実現するトランスポート層プロトコルのである。MPTCPは、既存のTCPを拡張する(ヘッダ内のオプションを利用する)ものであるため、世界中に広く普及している既存のファイヤウォールやNATの変更なしに用いることが可能である。
MPTCPでは、リソース利用効率と冗長性を高めるために、同一宛先に対してTCPコネクション(リンクとも称する)を複数経路に確立することができ、複数のTCPコネクションを1つにまとめて上位層とのインタフェースを提供する。
一方、ネットワーク層でのマルチホーミングの方式として、SHAKE(SHAring multipath procedure for a cluster networK Environment)が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
SHAKEでは、Mobile IPをベースとしてホームエージェント(HA)にトラヒック分配機構を実装し、移動端末(MN)とHAとの間の帯域幅を集約する。
MNがセグメントを送信する際には、パケットが順序通りに到達するよう、最も早くHAへ到着すると推測される経路を用いてセグメントを送信する。リンクには仮想的な送信キューを設け、キューから出力されるまでの待ち時間と伝送遅延からパケット到達時刻を予想し各経路へ振り分けるようになされている。
K. Koyama, Y. Ito, H. Mineno and S. Ishihara, Performance Evaluation of TCP on Mobile IP SHAKE," IPSJ Journal, Vol. 45, No.10, pp. 2270{2278, Oct. 2004.
ところで、MPTCPでは、リンク性能差(伝送遅延や帯域幅)が大きいネットワークを同時に用いた通信では、送信側の経路選択に応じて受信側においてパケット到着の順序が大きく入れ替わる。しかし、受信側のアプリケーションプログラムでは、所定の順番でパケットを処理する必要があるため、到着したパケットを並べ替えるために、受信側でパケットを一時的に保管するバッファが必要となる。
つまり、伝送遅延が大きいネットワークを介して送信されるパケットは、受信側に到着する時間に遅れが生じるため、伝送遅延が小さいネットワークを介して送信されるパケットより後に到着する。そうすると、送信側から送信した順番とは異なる順番で受信側にパケットが到着することがある。
また、MPTCPでは、送信側でのパケットの分配方式が受信側での並べ替え時間に影響を与えるため、分配方式の如何により受信側のアプリケーションのスループットが不安定になりやすい。すなわち、送信側でのパケットの分配が適切に行われないと、全リンクの帯域幅を有効に活用できない場合もある。
この点、非特許文献1の技術では、キューから出力されるまでの待ち時間と伝送遅延に基づいてパケット到達時刻を予測したパケットの分配が行われる。しかしながら、輻輳やパケットロスなどが発生した場合、到達時刻を精度高く予測することは極めて困難であり、リンク毎に伝送遅延が異なる場合、やはり全リンクの帯域幅を有効に活用することは難しかった。
本技術はこのような状況に鑑みて開示するものであり、伝送遅延の差が大きい複数の経路を利用したマルチパス通信において、より効率的に帯域幅を活用することができるようにするものである。
本技術の一側面は、複数のTCPコネクションをまとめた単一のコネクションを確立し、API(Application Program Interface)により、アプリケーションプログラムに提供する情報処理装置であって、前記複数のTCPコネクションのそれぞれに対応するサブフローを介して送信されるセグメントを蓄積するキューに対応づけられた到達予想時間に基づいて、送信バッファから取り出したセグメントを挿入するキューを選択するキュー選択部と、前記キューから前記セグメントが送出されるときの輻輳ウィンドウサイズを予測するウィンドウサイズ予測部と、前記サブフローの遅延時間、および、前記輻輳ウィンドウサイズに基づいて、前記キューに挿入されたセグメントが前記キューから送出されるまでに要すると推測される送出予想時間を算出する送出予想時間算出部と、前記送出予想時間に基づいて、前記キューに対応づけられた到達予想時間を更新する更新部と、前記サブフローのいずれかにおいて輻輳またはパケットロスが発生した場合、少なくとも前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに対応付けられた到達予想時間を再計算するとともに、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに蓄積されたセグメントの少なくとも一部を、他のサブフローに対応するキューに分配する輻輳時キュー制御部とを備える情報処理装置である。
前記輻輳時キュー制御部は、前記輻輳またはパケットロスの発生に伴って縮小された輻輳ウィンドウサイズを初期値として取得し、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローのキューに、前記キューに蓄積されていたセグメントを1つずつ仮想的に挿入し、前記キューに対応づけられた到達予想時間を、前記セグメント毎に再計算し、前記再計算により、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフロー以外のサブフローに対応するキューのそれぞれに対応づけられた到達予想時間のうち、最大の到達予想時間を超える到達予想時間が得られた場合、そのセグメントより送信順が後のセグメントを、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフロー以外のサブフローに対応するキューに分配するようにすることができる。
前記複数のサブフローは、それぞれ伝送遅延が異なるネットワーク上でのデータの送受信により生成されたTCPコネクションに対応するようにすることができる。
前記複数のTCPコネクションのうちの少なくともいずれか1つは、広域無線通信によるネットワークを利用するようにすることができる。
本技術の一側面は、複数のTCPコネクションをまとめた単一のコネクションを確立し、API(Application Program Interface)により、アプリケーションプログラムに提供する情報処理装置の情報処理方法であって、キュー選択部が、前記複数のTCPコネクションのそれぞれに対応するサブフローを介して送信されるセグメントを蓄積するキューに対応づけられた到達予想時間に基づいて、送信バッファから取り出したセグメントを挿入するキューを選択し、ウィンドウサイズ予測部が、前記キューから前記セグメントが送出されるときの輻輳ウィンドウサイズを予測し、送出予想時間算出部が、前記サブフローの遅延時間、および、前記輻輳ウィンドウサイズに基づいて、前記キューに挿入されたセグメントが前記キューから送出されるまでに要すると推測される送出予想時間を算出し、更新部が、前記送出予想時間に基づいて、前記キューに対応づけられた到達予想時間を更新し、輻輳時キュー制御部が、前記サブフローのいずれかにおいて輻輳またはパケットロスが発生した場合、少なくとも前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに対応付けられた到達予想時間を再計算するとともに、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに蓄積されたセグメントの少なくとも一部を、他のサブフローに対応するキューに分配するステップを含む情報処理方法である。
本技術の一側面は、コンピュータを、複数のTCPコネクションをまとめた単一のコネクションを確立し、API(Application Program Interface)により、アプリケーションプログラムに提供する情報処理装置であって、前記複数のTCPコネクションのそれぞれに対応するサブフローを介して送信されるセグメントを蓄積するキューに対応づけられた到達予想時間に基づいて、送信バッファから取り出したセグメントを挿入するキューを選択するキュー選択部と、前記キューから前記セグメントが送出されるときの輻輳ウィンドウサイズを予測するウィンドウサイズ予測部と、前記サブフローの遅延時間、および、前記輻輳ウィンドウサイズに基づいて、前記キューに挿入されたセグメントが前記キューから送出されるまでに要すると推測される送出予想時間を算出する送出予想時間算出部と、
前記送出予想時間に基づいて、前記キューに対応づけられた到達予想時間を更新する更新部と、前記サブフローのいずれかにおいて輻輳またはパケットロスが発生した場合、少なくとも前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに対応付けられた到達予想時間を再計算するとともに、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに蓄積されたセグメントの少なくとも一部を、他のサブフローに対応するキューに分配する輻輳時キュー制御部とを備える情報処理装置として機能させるプログラムである。
本技術の一側面においては、前記複数のTCPコネクションのそれぞれに対応するサブフローを介して送信されるセグメントを蓄積するキューに対応づけられた到達予想時間に基づいて、送信バッファから取り出したセグメントを挿入するキューが選択され、前記キューから前記セグメントが送出されるときの輻輳ウィンドウサイズが予測され、前記サブフローの遅延時間、および、前記輻輳ウィンドウサイズに基づいて、前記キューに挿入されたセグメントが前記キューから送出されるまでに要すると推測される送出予想時間が算出され、前記送出予想時間に基づいて、前記キューに対応づけられた到達予想時間が更新され、前記サブフローのいずれかにおいて輻輳またはパケットロスが発生した場合、少なくとも前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに対応付けられた到達予想時間を再計算するとともに、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに蓄積されたセグメントの少なくとも一部が、他のサブフローに対応するキューに分配される。
本技術によれば、伝送遅延の差が大きい複数の経路を利用したマルチパス通信において、より効率的に帯域幅を活用することができる。
従来のマルチパス通信を説明する図である。 図1のマルチパス通信におけるパケットの分配方式を説明する図である。 図1のマルチパス通信におけるパケットの分配方式を説明する図である。 本技術を適用したネットワークシステムの構成を示す図である。 図4のスマートフォンの構成例を示すブロック図である。 図5のCPUで実行されるソフトウェアの機能的構成を説明する図である。 MPTCP制御部によるマルチパス通信の方式を説明する図である。 分配制御部によるデータの分配の方式を説明する図である。 輻輳、または、パケットロスが発生した場合の分配制御部によるデータの分配の方式を説明する図である。 セグメント分配処理の例を説明するフローチャートである。 セグメント退避処理の例を説明するフローチャートである。 遅延差の小さい複数のネットワークを用いた従来のマルチパス通信における受信側のリオーダ待ちデータの長さと、アプリケーションで処理可能なデータの送達レートの関係を示す図である。 遅延差の大きい複数のネットワークを用いた従来のマルチパス通信における受信側のリオーダ待ちデータの長さと、アプリケーションで処理可能なデータの送達レートの関係を示す図である。 図12および図13の測定結果を得るために用いたネットワークシステムの構成例を示す図である。 パーソナルコンピュータの構成例を示すブロック図である。
以下、図面を参照して、ここで開示する技術の実施の形態について説明する。
最初に従来の技術の問題点を説明する。
図1は、従来のマルチパス通信を説明する図である。同図に示されるネットワークシステム10においては、スマートフォン11とサーバ12がマルチパス通信を行うようになされている。
この例では、スマートフォン11は、Bluetooth(登録商標)、Wi−Fiなどの近距離無線通信を行うためのネットワークインタフェースと、3G、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)などの広域無線通信を行うネットワークインタフェースとを有している。
近距離無線通信では、スマートフォン11から送信されたデータは、アクセスポイント21を経由してインターネット31に送出され、サーバ12に受信される。一方、広域無線通信では、スマートフォン11から送信されたデータは、基地局23を経由してインターネット31に送出され、サーバ12に受信される。
ここで、近距離無線通信を行うネットワークインタフェースは、広帯域で遅延の小さい通信環境を提供するものとし、広域無線通信を行うネットワークインタフェースは、狭帯域で遅延の大きい通信環境を提供するものとする。
スマートフォン11は、より効率的な通信を行うために、サーバ12との通信において、近距離無線通信および広域無線通信のそれぞれのネットワークインタフェースを同時に利用したマルチパス通信を行う。このため、スマートフォン11は、自分の送信バッファに蓄積されたパケットを、それぞれのネットワークインタフェースに分配する。
図1の例では、送信バッファには、「1」、「2」、および、「3」のパケットが蓄積されており、パケットを表す番号は、サーバ12で実行されるアプリケーションプログラムにおける当該パケットの処理順序に対応している。
例えば、図2に示されるように、スマートフォン11は、パケット「1」を、広域無線通信を行うネットワークインタフェースに送出し、パケット「2」およびパケット「3」を、近距離無線通信を行うネットワークインタフェースに送出する。なお、広帯域の近距離無線通信には、2つのパケットが割り振られたのに対し、狭帯域の広域無線通信には、1つのパケットが割り振られている。
例えば、マルチパスTCP(MPTCP)を実装したスマートフォンおよびサーバ12によれば、上述したようなパケットの分配が行われる。MPTCPでは、リソース利用効率と冗長性を高めるために、同一宛先に対してTCPコネクション(リンクとも称する)を複数経路に確立することができ、複数のTCPコネクションを1つにまとめて上位層とのインタフェースを提供する。
しかしながら、スマートフォン11により、このようなパケットの分配が行われた場合、図3に示されるように、パケット「1」より先に、パケット「2」およびパケット「3」が先にサーバ12に到着する可能性が高い。広域無線通信は、近距離無線通信と比較して遅延が大きいため、サーバ12で受信されるまでに長い時間を要するからである。このような場合、サーバ12では、パケット「1」が到着するまで、パケット「2」およびパケット「3」を処理することができない。このため、サーバ12では、受信したパケット「2」、パケット「3」をバッファに蓄積し、パケット「1」を受信後に、これらのパケットを並べ替えに係る処理待ち(リオーダ待ち)が発生する。
このようなリオーダ待ちが発生すると、サーバ12のアプリケーションプログラムが使用できる情報の伝送効率であるグッドプットが低下し、アプリケーションプログラムの処理速度の低下を招くことになる。
MPTCPとは異なる方式でパケットを分配する技術も提案されている。例えば、一方、ネットワーク層でのマルチホーミングの方式として、SHAKE(SHAring multipath procedure for a cluster networK Environment)が提案されている。SHAKEでは、キューから出力されるまでの待ち時間と伝送遅延に基づいてパケット到達時刻を予測したパケットの分配が行われる。
しかしながら、輻輳やパケットロスなどが発生した場合、到達時刻を精度高く予測することは極めて困難であり、リンク毎に伝送遅延が異なる場合、やはり全リンクの帯域幅を有効に活用することは難しかった。
そこで、本技術では、輻輳やパケットロスなどが発生した場合であっても、極力リオーダ待ちを回避できるようにする。
図4は、本技術を適用したネットワークシステムの構成を示す図である。このネットワークシステム100においては、スマートフォン111とサーバ112がマルチパス通信を行うようになされている。
この例では、スマートフォン111は、Bluetooth(登録商標)、Wi−Fiなどの近距離無線通信を行うためのネットワークインタフェースと、3G、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)などの広域無線通信を行うネットワークインタフェースとを有している。さらに、スマートフォン111は、有線通信であるLANのネットワークインタフェースを有している。
近距離無線通信では、スマートフォン111から送信されたデータは、アクセスポイント121を経由してインターネット131に送出され、サーバ112に受信される。また、有線通信では、スマートフォン111から送信されたデータは、ルータ122を経由してインターネット131に送出され、サーバ112に受信される。広域無線通信では、スマートフォン111から送信されたデータは、基地局123を経由してインターネット131に送出され、サーバ112に受信される。
図5は、図4のスマートフォン111の構成例を示すブロック図である。
図5において、スマートフォン111のCPU(Central Processing Unit)151は、ROM(Read Only Memory)152に記憶されているプログラム、または記憶部163からRAM(Random Access Memory)153にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM153にはまた、CPU151が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
CPU151、ROM152、およびRAM153は、バス154を介して相互に接続されている。このバス154にはまた、入出力インタフェース160も接続されている。
入出力インタフェース160には、キーボード、マウスなどよりなる入力部161、LCD(Liquid Crystal Display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部162、および、ハードディスクやフラッシュメモリなどより構成される記憶部163が接続されている。
入出力インタフェース160にはまた、必要に応じてドライブ165が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア166が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部163にインストールされる。
入出力インタフェース160にはさらに、広域無線通信部171、有線通信部172、および近距離無線通信部173が接続されている。
広域無線通信部171は、基地局123と無線通信を行い、広域通信網を介した通信を行う無線通信デバイスである。広域無線通信部171は、例えば2GHzの周波数帯を使い、通話アプリケーションだけでなく、最大2Mbpsのデータ通信を用いてインターネット接続など各種通信アプリケーションに利用される。広域無線通信部171は、例えば、いわゆる第3世代携帯電話の通信方式による通信が可能なデバイスなどとして構成される。
有線通信部172は、例えば、イーサネット(登録商標)などのLANに対応するインタフェースとされ、最大100Mbpsのデータ通信を行う。
近距離無線通信部173は、例えば、Bluetooth(登録商標、BTとも称する)やIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.11x等の近距離無線通信デバイスである。ここで、近距離無線通信とは、通信可能最大距離が数メートル乃至数十メートル程度のローカルな(狭域の)無線通信を意味する。通信規格は任意である。例えば、近距離無線通信部173がBTの通信を行うものである場合は、アンテナを経由して2.4GHz帯にて最大通信速度3Mビット/秒(バージョン2.0+EDR以降)の通信を行う。
スマートフォン111の各部は、CPU151により制御される。制御プログラムの実行バイナリコードはROM152や記憶部163に保存されており、各種演算処理のためスタック、ヒープ領域はRAM153上に展開される。
図6は、図5のCPU151で実行されるソフトウェアの機能的構成を説明する図である。
図6の例では、OS(オペレーティングシステム201)上で実行されるTCP/IP通信制御部202、および、MPTCP制御部203が設けられている。そして、TCP/IP通信制御部202、および、MPTCP制御部203の上位層としてアプリケーションプログラム204が実行されるようになされている。
また、図6に示されるように、MPTCP制御部203の一部として分配制御部211が設けられている。分配制御部211は、後述するように、各ネットワークインタフェースから送信されるデータに係る分配を制御するようになされている。
図7は、MPTCP制御部203によるマルチパス通信の方式を説明する図である。
図7に示されるように、MPTCPでは、広域無線通信部171による広域無線通信におけるTCPコネクション、有線通信部172による有線通信におけるTCPコネクション、および、近距離無線通信部173による近距離無線通信におけるTCPコネクションのそれぞれがTCPサブフローとしてMPTCPコアにより管理される。そして、MPTCPコアが3つのTCPサブフローをまとめて単一のMPTCPコネクションを確立し、それをソケットAPI(Application Program Interface)により、アプリケーションプログラムに提供する。なお、ここでは、TCPサブフローの数を3としているが、2以上のいくつであってもよい。
図8は、分配制御部211によるデータの分配の方式を説明する図である。
図8の例では、送信バッファ231に送信すべきデータが蓄積されており、分配制御部211が、送信バッファ231からデータを取り出して、サブフローSF1乃至サブフローSFNに割り当てられたキュー241−1乃至キュー241−Nに分配している。
なお、分配制御部211は、トランスポート層における処理を実行する機能ブロックであるから、キュー241−1乃至キュー241−Nに分配されるデータは、セグメントと称される。
また、図中において送信バッファ231内の「8」、「9」・・・「12」の番号が付された矩形のそれぞれ、および、キュー241−1乃至キュー241−N内の「1」、「2」、・・・「7」の番号が付された矩形のそれぞれがセグメントを表している。これらの12個のセグメントのそれぞれは、同じデータサイズであるものとし、例えば、TCPの最大セグメントサイズ(Maximum Segment Size)のデータとされる。さらに、各セグメントに付された番号は、それぞれのセグメントを送信すべき順番を表しているものとする。
なお、図8の例では、サブフローSF1は、遅延が小さいサブフローであり、サブフローSF2は、サブフローSF1より遅延が大きいサブフローであり、・・・サブフローSFNはサブフローSFN−1より遅延が大きいサブフローであるものとする。例えば、図4のスマートフォン111の場合、サブフローSF1乃至サブフローSF3が存在することになり、サブフローSF1は有線通信に対応するサブフローとされ、サブフローSF2は近距離無線通信に対応するサブフローとされ、サブフローSF3は広域無線通信に対応するサブフローとされる。
分配制御部211は、キュー最後尾のセグメントが受信側に到達するまでの到達予想時間Dを算出し、到達予想時間Dが最も小さいキューを特定する。分配制御部211は、キューに格納されていたセグメントが出力され、ネットワーク層のプロトコルへ渡るときの輻輳ウィンドウを予測し、精度の高い到達予想時間Dを算出する。
TCPの輻輳制御アルゴリズムによれば、受信側から送出されたACKを送信側で受信した場合(輻輳が発生しなかった場合)、予め設定された割合で輻輳ウィンドウサイズが拡大される。すなわち、輻輳が発生しなかった場合、ネットワークの帯域に余裕があるとみなして伝送速度を上げるようになされている。
一方、TCPの輻輳制御アルゴリズムによれば、輻輳が発生した場合、または、パケットロスが発生した場合、輻輳ウィンドウサイズが縮小される。すなわち、輻輳またはパケットロスが発生した場合、輻輳またはパケットロスを回避するために伝送速度を下げるようになされている。
分配制御部211は、到達予想時間Dを次のようにして算出する。
まず、キューが空の場合、分配制御部211は、当該キューの到達予想時間Dを0に設定する。
分配制御部211は、サブフロー毎に、往復遅延時間(RTT:round-trip time)を特定する。そして片道遅延時間d=RTT/2を算出する。なお、セグメントが送信されてからACKが受信されるまでの時間の平均値が往復遅延時間とされ、サブフロー毎に逐次更新されるようになされている。
そして、分配制御部211は、D+dが最小となるキューを選択し、そのキューにセグメントを挿入する。
また、分配制御部211は、これからキューに挿入されるセグメントがキューから出力される時の輻輳ウィンドウサイズexpect_cwndを予測する。なお、輻輳ウィンドウサイズは、最初は十分に小さい初期値が設定され、その後、拡大されていく。
上述したように、TCPの輻輳制御アルゴリズムによれば、輻輳が発生しなかった場合、予め設定された割合で輻輳ウィンドウサイズが拡大される。すなわち、サーバ112とのセグメントの送受信が行われる都度、輻輳ウィンドウサイズが徐々に拡大されていくようになされている。分配制御部211は、輻輳が発生しないことを前提として、現在の輻輳ウィンドウサイズと、キューに蓄積されている全てのセグメントを合計したデータサイズに基づいて、これからキューに挿入されるセグメントがキューから出力される時のウィンドウサイズを予測する。
さらに、分配制御部211は、式(1)により送出予想時間Wを算出する。すなわち、1つのセグメントがキューから送出されるまでに要すると推測される時間が、送出予想時間Wとして算出される。
Figure 2014127790
なお、式(1)におけるMSSは、TCPの最大セグメントサイズ(Maximum Segment Size)を意味している。また、送出予想時間Wは、サーバ112がセグメントを受信した際に送信するACKを受信したときの到達予想時間Dの更新に用いられるため、メモリなどに記憶される。
そして、分配制御部211は、式(2)により、セグメントが挿入されたキューの新たな到達予想時間Dnewを求める。
Figure 2014127790
その後、分配制御部211は、式(2)により得られた到達予想時間Dnewを、当該キューの到達予想時間とし、到達予想時間Dを更新する。また、サーバ112からのACKを受信した場合、分配制御部211は、式(3)により得られた到達予想時間Dnewを、当該キューの到達予想時間とし、到達予想時間Dを更新する。
Figure 2014127790
なお、式(3)におけるWは、当該ACKに対応するセグメントをキューに挿入する際に算出した送出予想時間Wとされる。
そして、分配制御部211は、D+dが最小となるキューを選択し、そのキューに次のセグメントを挿入する。
このようにして、キュー241−1乃至キュー241−Nのそれぞれに対応する到達予想時間Dが算出/更新されていくとともに、到達予想時間Dに基づいてセグメントが分配されていく。
本技術では、サブフロー毎に伝送遅延を特定し、輻輳ウィンドウサイズを予測しながら、到達予想時間を算出/更新するようにしたので、スマートフォン111から送信されたセグメントが、意図した順番にサーバ112に到着するように制御することが可能となる。例えば、図8に示される「1」乃至「12」の各セグメントが、サブフローSF1乃至サブフローSFNを介して送信され、「1」乃至「12」の番号順にサーバ112に受信されるようになる。
このように、本技術では、伝送遅延の異なるネットワークを利用したマルチパス通信において、受信側でのリオーダ待ちを回避して、アプリケーションプログラムの処理に要する時間を短縮させることができる。その結果、より効率的にネットワークの帯域幅を活用することができる。
しかしながら、サブフローSF1乃至サブフローSFNにおいて、輻輳、または、パケットロスが発生する場合がある。このような場合、スマートフォン111から送信された各セグメントが、「1」乃至「12」の番号順にサーバ112に受信されなくなる可能性が高い。
そこで、分配制御部211は、サブフローSF1乃至サブフローSFNにおいて、輻輳、または、パケットロスが発生した場合、次のようにして、セグメントの再分配を行う。
最初に、分配制御部211は、輻輳、または、パケットロスが発生したサブフローを特定する。
次に、分配制御部211は、特定されたサブフローの輻輳ウィンドウサイズを取得する。上述したように、輻輳制御アルゴリズムによれば、輻輳が発生した場合、または、パケットロスが発生した場合、輻輳ウィンドウサイズが縮小される。分配制御部211は、輻輳、または、パケットロスが発生したサブフローの縮小後の輻輳ウィンドウサイズcwndを取得する。
そして、分配制御部211は、輻輳ウィンドウサイズexpect_cwnd=輻輳ウィンドウサイズcwndとし、輻輳、または、パケットロスが発生したサブフローに対応するキューに蓄積されているセグメントついて、式(1)および式(2)の計算を再度行う。つまり、当該キューのセグメントのそれぞれに対応する到達予想時間Dを再計算する。
さらに、分配制御部211は、輻輳、または、パケットロスが発生したサブフロー以外の全てのサブフローに対応するキューの到達予想時間Dをそれぞれ取得し、それらの中の最大値を特定するとともに、上述のように再計算されたDと比較する。そして、再計算されたDが最大値を超えたセグメント以降のセグメントを、退避バッファに退避させる。
図9を参照して、さらに詳細に説明する。例えば、サブフローSF1で、輻輳、または、パケットロスの発生が検出されたものとする。
分配制御部211は、サブフローSF1以外のサブフローであるサブフローSF2乃至サブフローSFNのそれぞれに対応するキュー241−2乃至キュー241−Nのそれぞれの到達予想時間Dを取得する。この場合、キュー241−2乃至キュー241−Nのそれぞれ最後のセグメントについて計算された到達予想時間D乃至到達予想時間Dが取得される。
そして、分配制御部211は、到達予想時間D乃至到達予想時間Dの中の最大値を特定する。いまの場合、キュー241−Kの到達予想時間である到達予想時間Dが最大値として特定されたものとする。
分配制御部211は、サブフローSF1の縮小後の輻輳ウィンドウサイズcwndを取得する。輻輳ウィンドウサイズcwndが輻輳ウィンドウサイズexpect_cwndの初期値となる。分配制御部211は、キュー241−1内に蓄積されているセグメントに対応する到達予想時間Dを再計算する。
図9のキュー241−1内には、4つのセグメントが蓄積されている。分配制御部211は、最も先に送出されるセグメント(図中最も下の矩形に対応するセグメント)の到達予想時間を再計算する。すなわち、キュー241−1が空であるものと仮定して、1つのセグメントがキュー241−1に挿入された場合の到達予想時間Dが算出される。
そして、分配制御部211は、到達予想時間Dと、到達予想時間Dを比較する。いまの場合、到達予想時間Dの方が到達予想時間Dより大きかった(D > D)ものとする。
この場合、分配制御部211は、キュー241−1の中で2番目に送出されるセグメント(図中下から2番目の矩形に対応するセグメント)の到達予想時間を再計算する。すなわち、キュー241−1にセグメントが1つ蓄積されているものと仮定して、1つのセグメントがキュー241−1に挿入された場合の到達予想時間Dがあらためて算出される。
このように、分配制御部211は、キュー241−1が1度空になったものと仮定し、輻輳ウィンドウサイズの初期値がcwndであるものとし、キュー241−1に蓄積されていたセグメントを、送信順に1つずつ仮想的にキュー241−1に挿入しながら、到達予想時間Dを算出して更新していく。
そして、分配制御部211は、到達予想時間Dと、到達予想時間Dを比較する。いまの場合、到達予想時間Dの方が到達予想時間Dより大きかった(D > D)ものとする。
この場合、分配制御部211は、キュー241−1の中で2番目に送出されるセグメントより後のセグメント(図中下から3番目と4番目の矩形に対応するセグメント)を退避バッファ232に退避させる。これにより、キュー241−1には、2つのセグメントのみが蓄積された状態となる。
分配制御部211は、退避バッファ232に蓄積されているセグメントを、キュー241−1乃至キュー241−Nに再度分配する。このとき、退避バッファ232内の最も下のセグメントから順に、D+dが最小となるキューが選択されて挿入されていく。そして、セグメントが挿入されたキューの到達予想時間が更新されていく。
このようにすることで、サブフローSF1乃至サブフローSFNにおいて、輻輳、または、パケットロスが発生した場合であっても、スマートフォン111から送信されたセグメントが、サーバ112にできるだけ順番に到着するようになる。
従って、本技術によれば、伝送遅延の異なるネットワークを利用したマルチパス通信において、受信側でのリオーダ待ちを回避して、アプリケーションプログラムの処理に要する時間を短縮させることができる。さらに、輻輳、または、パケットロスが発生した場合であっても、受信側でのリオーダ待ちをできるだけ回避することが可能となる。その結果、常に効率的にネットワークの帯域幅を活用することができる。
次に、図10のフローチャートを参照して、分配制御部211によるセグメント分配処理の例について説明する。この処理は、例えば、スマートフォン111がマルチパス通信を行っているとき実行される。
ステップS21において、分配制御部211は、退避バッファ232が空であるか否かを判定する。
ステップS21において、退避バッファ232が空であると判定された場合、処理は、ステップS23に進み、分配制御部211は、送信バッファ231からセグメントを取り出す。
一方、ステップS21において、退避バッファ232が空ではないと判定された場合、処理は、ステップS22に進み、分配制御部211は、退避バッファ232からセグメントを取り出す。
ステップS24において、分配制御部211は、キュー毎の到達予想時間を取得する。このとき、例えば、キュー241−1乃至キュー241−Nのそれぞれの到達予想時間Dが取得される。
ステップS25において、分配制御部211は、ステップS24の処理で取得した到達予想時間Dが最小のキューを選択する。
ステップS26において、分配制御部211は、ステップS22またはステップS23の処理で取り出したセグメントを、ステップS25の処理で選択したキューに挿入する。
ステップS27において、分配制御部211は、ステップS26の処理でキューに挿入されたセグメントがキューから出力される時の輻輳ウィンドウサイズexpect_cwndを予測する。
ステップS28において、分配制御部211は、ステップS27の処理で予測した輻輳ウィンドウサイズexpect_cwndを用いて送出予想時間Wを計算する。このとき、上述した式(1)により送出予想時間Wが算出される。
ステップS29において、分配制御部211は、当該キューに対応する到達予想時間Dを更新する。すなわち、ステップS28の処理で計算されたWを用いて式(2)の演算が行われ、到達予想時間Dが更新される。
ステップS30において、分配制御部211は、いずれかのサブフローにおいて輻輳、または、パケットロスが発生したか否かを判定する。
ステップS30において、輻輳、または、パケットロスが発生していないと判定された場合、処理は、ステップS21に戻り、それ以降の処理が繰り返し実行される。
一方、ステップS30において、輻輳、または、パケットロスが発生していないと判定された場合、処理は、ステップS30に進み、図11を参照して後述するセグメント退避処理が実行される。
次に、図11のフローチャートを参照して、図10のステップS30のセグメント退避処理の詳細な例について説明する。
ステップS51において、分配制御部211は、輻輳、または、パケットロスが発生したサブフロー以外のサブフローに対応するキューの到達予想時間Dを取得する。
例えば、サブフローSF1で輻輳、または、パケットロスが発生した場合、サブフローSF1以外のサブフローであるサブフローSF2乃至サブフローSFNのそれぞれに対応するキュー241−2乃至キュー241−Nのそれぞれの到達予想時間D乃至到達予想時間Dが取得される。そして、分配制御部211は、到達予想時間D乃至到達予想時間Dの中の最大値を特定する。いまの場合、キュー241−Kの到達予想時間である到達予想時間Dが最大値として特定されたものとする。
ステップS52において、分配制御部211は、サブフローSF1の縮小後の輻輳ウィンドウサイズcwndを取得する。
ステップS53において、分配制御部211は、サブフローSF1の最初のセグメントの到達予想時間を再計算する。すなわち、キュー241−1が空であるものと仮定して、1つのセグメントがキュー241−1に挿入された場合の到達予想時間Dが算出される。
ステップS54において、分配制御部211は、ステップS53の処理により得られた到達予想時間Dと、ステップS51の処理により得られた到達予想時間Dを比較し、到達予想時間Dが、到達予想時間Dを超えたか否かを判定する。
ステップS54において、到達予想時間Dが、到達予想時間Dを超えていないと判定された場合、処理は、ステップS55に進む。
ステップS55において、分配制御部211は、キュー241−1に挿入されたセグメントがキュー241−1から出力される時の輻輳ウィンドウサイズexpect_cwndを予測する。
ステップS56において、分配制御部211は、ステップS55の処理で予測した輻輳ウィンドウサイズexpect_cwndを用いて送出予想時間Wを計算する。このとき、上述した式(1)により送出予想時間Wが算出される。
ステップS57において、分配制御部211は、ステップS56の処理で計算されたWを用いて式(2)の演算を行い、次のセグメントが挿入されたときの到達予想時間を再度算出する。すなわち、キュー241−1にセグメントが1つ蓄積されているものと仮定して、1つのセグメントがキュー241−1に挿入された場合の到達予想時間Dがあらためて算出される。
ステップS54に戻り、分配制御部211は、ステップS57の処理により得られた到達予想時間Dと、ステップS51の処理により得られた到達予想時間Dを比較し、到達予想時間Dが、到達予想時間Dを超えたか否かを判定する。
ここで、到達予想時間Dが、到達予想時間Dを超えていないと判定された場合、処理は、ステップS55に進み、その後、ステップS54乃至ステップS57の処理が繰り返し実行される。
一方、ステップ54において、到達予想時間Dが、到達予想時間Dを超えていると判定された場合、ステップS55乃至ステップS57の処理はスキップされる。
ステップS58において、分配制御部211は、以降のセグメントを退避バッファ232に退避させる。
このようにして、セグメント退避処理が実行される。
図12と図13は、従来のマルチパス通信における受信側のリオーダ待ちデータの長さと、アプリケーションで処理可能なデータの送達レートの関係を示す図である。
図12と図13は、横軸が時間、縦軸がリオーダ待ちデータの長さ(Queue Length)、および、アプリケーションで処理可能なデータの送達レート(Goodput)とされ、線301により、時間の経過に伴うQueue Lengthの変化が示されており、線302により、時間の経過に伴うGoodputの変化が示されている。
図12と図13は、図14に示されるようなネットワークシステムにおける測定結果を表すものである。図14の例では、送信側(Sender)のパーソナルコンピュータ321から受信側(Receiver)のパーソナルコンピュータ322にデータが送信される。
パーソナルコンピュータ321は、例えば、イーサネットLANのような有線通信のネットワークインタフェースを2つ有している。すなわち、パーソナルコンピュータ321は、経路325−1および経路325−2の2つの経路でルータ324と接続されている。経路325−1には、遅延発生装置323−1が接続されており、経路325−2は、遅延発生装置323−2が接続されている。
なお、経路325−1の帯域幅は5Mbpsとされ、経路325−2の帯域幅も5Mbpsとされている。遅延発生装置323−1および遅延発生装置323−2は、それぞれ経路325−1および経路325−2上で任意の遅延時間を発生させることができる。
パーソナルコンピュータ322は、高速LANなどの有線通信のネットワークインタフェースを有しており、ルータ324と接続されている。
図12は、経路325−1上の遅延時間を10msとし、経路325−2上の遅延時間も10msとした場合のマルチパス通信における受信側のリオーダ待ちデータの長さと、アプリケーションで処理可能なデータの送達レートの関係を示している。なお、マルチパス通信における各径路へのデータの分配の方式は従来の方式を用いている。すなわち、ここでのマルチパス通信には、本技術のように、キューから出力されるまでの時間と伝送遅延を考慮して各経路にデータを分配するような方式が採用されていない。
つまり、図12は、従来のマルチパス通信であって、遅延差の小さい(無い)複数のネットワークを用いたマルチパス通信における受信側のリオーダ待ちデータの長さと、アプリケーションで処理可能なデータの送達レートの関係を示している。
図12に示されるように、約7ms経過後は、Queue Lengthがほぼ一定となり、Goodputは、10Mbpsよりやや低い値でほぼ一定となっている。なお、経路325−1と経路325−2の帯域幅の合計が10Mbpsなので、図12に示されるGoodputは、高い値で安定していると考えられる。
図13は、経路325−1上の遅延時間を100msとし、経路325−2上の遅延時間も10msとした場合のマルチパス通信における受信側のリオーダ待ちデータの長さと、アプリケーションで処理可能なデータの送達レートの関係を示している。なお、マルチパス通信における各径路へのデータの分配の方式は従来の方式を用いている。すなわち、ここでのマルチパス通信には、本技術のように、キューから出力されるまでの時間と伝送遅延を考慮して各経路にデータを分配するような方式が採用されていない。
つまり、図13は、従来のマルチパス通信であって、遅延差の大きい複数のネットワークを用いたマルチパス通信における受信側のリオーダ待ちデータの長さと、アプリケーションで処理可能なデータの送達レートの関係を示している。
図13に示されるように、Queue Lengthは大きく変化しており、goodputは、通信開始直後が著しく低く、また、その後もQueue Lengthの増加に伴って、goodputの谷が形成されている。
例えば、図14のパーソナルコンピュータ321に本技術を適用すれば、経路325−1上の遅延時間を100msとし、経路325−2上の遅延時間も10msとした場合であっても、図12とほぼ同様の結果を得ることができる。つまり、本技術によれば、遅延差の大きい複数のネットワークを用いたマルチパス通信において、Queue Lengthがほぼ一定となり、Goodputも高い値で安定させることが可能となる。
なお、キューから出力されるまでの時間と伝送遅延を考慮して各経路にデータを分配するアルゴリズムも存在する。例えば、SHAKE(SHAring multipath procedure for a cluster networK Environment)では、MNがセグメントを送信する際には、パケットが順序通りに到達するよう、最も早くHAへ到着すると推測される経路を用いてセグメントを送信する。リンクには仮想的な送信キューを設け、キューから出力されるまでの待ち時間と伝送遅延からパケット到達時刻を予想し各経路へ振り分けるようになされている。
しかしながら、SHAKEは、ネットワーク層でのマルチホーミングを行うためのプロトコルとされる。従って、ネットワーク層の制御情報などを用いてパケット到達時刻が予想される。しかしながら、ネットワーク層のプロトコル(例えば、IP)には、輻輳ウィンドウに関する制御情報が規定されておらず、本技術のように、これからキューに挿入されるセグメントがキューから出力される時の輻輳ウィンドウサイズexpect_cwndを予測することができない。
また、TCPのアルゴリズムでは、輻輳が発生しない限り、輻輳ウィンドウサイズが徐々に拡大されるようになされている。従って、送信側からのデータの送出レートが経路325−1または経路325−2の帯域幅を超えるまで輻輳ウィンドウサイズが拡大され続けることもある。送信側からのデータの送出レートが経路325−1または経路325−2の帯域幅を超えた場合、その時点で必ず輻輳が発生することになり、輻輳ウィンドウサイズが縮小されることになる。パケットロスが発生した場合も、やはり輻輳ウィンドウサイズが縮小されることになる。
このように、実際の通信では輻輳の発生に伴ってウィンドウサイズが適宜変更されるが、ネットワーク層での制御情報を用いたマルチホーミングの方式では、実際の輻輳ウィンドウサイズの変化を認識することができない。このため、輻輳やパケットロスが発生した場合、送信側で意図した順番で受信側にデータが到着しなくなる。すなわち、ネットワーク層での制御情報を用いたマルチホーミングの方式では、遅延差の大きい複数のネットワークを用いたマルチパス通信において、Goodputを高い値で安定させることができないと考えられる。
これに対して、本技術によれば、遅延差の大きい複数のネットワークを用いたマルチパス通信において、輻輳やパケットロスが発生しても、Goodputを高い値で安定させることができる。
なお、上述した実施の形態では、輻輳、または、パケットロスが発生したサブフローのみについて、セグメントの再分配を行っているが、輻輳、または、パケットロスが発生していない1以上のサブフローについて、未処理のセグメントの再分配を行うようにしてもよい。
以上においては、本技術をスマートフォン、パーソナルコンピュータなどに適用する例について説明したが、その他の電子機器にも本技術を適用することが可能である。
なお、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。上述した一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば図15に示されるような汎用のパーソナルコンピュータ700などに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
図15において、CPU(Central Processing Unit)701は、ROM(Read Only Memory)702に記憶されているプログラム、または記憶部708からRAM(Random Access Memory)703にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM703にはまた、CPU701が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
CPU701、ROM702、およびRAM703は、バス704を介して相互に接続されている。このバス704にはまた、入出力インタフェース705も接続されている。
入出力インタフェース705には、キーボード、マウスなどよりなる入力部706、LCD(Liquid Crystal display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部707、ハードディスクなどより構成される記憶部708、モデム、LANカードなどのネットワークインタフェースカードなどより構成される通信部709が接続されている。通信部709は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
入出力インタフェース705にはまた、必要に応じてドライブ710が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア711が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部708にインストールされる。
上述した一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、インターネットなどのネットワークや、リムーバブルメディア711などからなる記録媒体からインストールされる。
なお、この記録媒体は、図15に示される、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フロッピディスク(登録商標)を含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)(登録商標)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア711により構成されるものだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROM702や、記憶部708に含まれるハードディスクなどで構成されるものも含む。
なお、本明細書において上述した一連の処理は、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
100 ネットワークシステム, 111 スマートフォン, 112 サーバ, 121 アクセスポイント, 122 ルータ, 123 基地局, 131 インターネット, 151 CPU, 171 広域無線通信部, 172 有線通信部, 173 近距離無線通信部, 201 OS, 202 TCP/IP通信制御部, 203 MPTCP制御部, 204 アプリケーションプログラム, 211 分配制御部, 231 送信バッファ, 232 退避バッファ, 241−1乃至241−N キュー

Claims (6)

  1. 複数のTCPコネクションをまとめた単一のコネクションを確立し、API(Application Program Interface)により、アプリケーションプログラムに提供する情報処理装置であって、
    前記複数のTCPコネクションのそれぞれに対応するサブフローを介して送信されるセグメントを蓄積するキューに対応づけられた到達予想時間に基づいて、送信バッファから取り出したセグメントを挿入するキューを選択するキュー選択部と、
    前記キューから前記セグメントが送出されるときの輻輳ウィンドウサイズを予測するウィンドウサイズ予測部と、
    前記サブフローの遅延時間、および、前記輻輳ウィンドウサイズに基づいて、前記キューに挿入されたセグメントが前記キューから送出されるまでに要すると推測される送出予想時間を算出する送出予想時間算出部と、
    前記送出予想時間に基づいて、前記キューに対応づけられた到達予想時間を更新する更新部と、
    前記サブフローのいずれかにおいて輻輳またはパケットロスが発生した場合、少なくとも前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに対応付けられた到達予想時間を再計算するとともに、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに蓄積されたセグメントの少なくとも一部を、他のサブフローに対応するキューに分配する輻輳時キュー制御部と
    を備える情報処理装置。
  2. 前記輻輳時キュー制御部は、
    前記輻輳またはパケットロスの発生に伴って縮小された輻輳ウィンドウサイズを初期値として取得し、
    前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローのキューに、前記キューに蓄積されていたセグメントを1つずつ仮想的に挿入し、前記キューに対応づけられた到達予想時間を、前記セグメント毎に再計算し、
    前記再計算により、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフロー以外のサブフローに対応するキューのそれぞれに対応づけられた到達予想時間のうち、最大の到達予想時間を超える到達予想時間が得られた場合、そのセグメントより送信順が後のセグメントを、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフロー以外のサブフローに対応するキューに分配する
    請求項1に記載の情報処理装置。
  3. 前記複数のサブフローは、それぞれ伝送遅延が異なるネットワーク上でのデータの送受信により生成されたTCPコネクションに対応する
    請求項1に記載の情報処理装置。
  4. 前記複数のTCPコネクションのうちの少なくともいずれか1つは、広域無線通信によるネットワークを利用する
    請求項1に記載の情報処理装置。
  5. 複数のTCPコネクションをまとめた単一のコネクションを確立し、API(Application Program Interface)により、アプリケーションプログラムに提供する情報処理装置の情報処理方法であって、
    キュー選択部が、前記複数のTCPコネクションのそれぞれに対応するサブフローを介して送信されるセグメントを蓄積するキューに対応づけられた到達予想時間に基づいて、送信バッファから取り出したセグメントを挿入するキューを選択し、
    ウィンドウサイズ予測部が、前記キューから前記セグメントが送出されるときの輻輳ウィンドウサイズを予測し、
    送出予想時間算出部が、前記サブフローの遅延時間、および、前記輻輳ウィンドウサイズに基づいて、前記キューに挿入されたセグメントが前記キューから送出されるまでに要すると推測される送出予想時間を算出し、
    更新部が、前記送出予想時間に基づいて、前記キューに対応づけられた到達予想時間を更新し、
    輻輳時キュー制御部が、前記サブフローのいずれかにおいて輻輳またはパケットロスが発生した場合、少なくとも前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに対応付けられた到達予想時間を再計算するとともに、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに蓄積されたセグメントの少なくとも一部を、他のサブフローに対応するキューに分配するステップ
    を含む情報処理方法。
  6. コンピュータを、
    複数のTCPコネクションをまとめた単一のコネクションを確立し、API(Application Program Interface)により、アプリケーションプログラムに提供する情報処理装置であって、
    前記複数のTCPコネクションのそれぞれに対応するサブフローを介して送信されるセグメントを蓄積するキューに対応づけられた到達予想時間に基づいて、送信バッファから取り出したセグメントを挿入するキューを選択するキュー選択部と、
    前記キューから前記セグメントが送出されるときの輻輳ウィンドウサイズを予測するウィンドウサイズ予測部と、
    前記サブフローの遅延時間、および、前記輻輳ウィンドウサイズに基づいて、前記キューに挿入されたセグメントが前記キューから送出されるまでに要すると推測される送出予想時間を算出する送出予想時間算出部と、
    前記送出予想時間に基づいて、前記キューに対応づけられた到達予想時間を更新する更新部と、
    前記サブフローのいずれかにおいて輻輳またはパケットロスが発生した場合、少なくとも前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに対応付けられた到達予想時間を再計算するとともに、前記輻輳またはパケットロスの発生したサブフローに対応するキューに蓄積されたセグメントの少なくとも一部を、他のサブフローに対応するキューに分配する輻輳時キュー制御部とを備える情報処理装置として機能させる
    プログラム。
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