JP2014125405A - 光ファイバ素線 - Google Patents

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彰 鯰江
Akira Murata
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Abstract

【課題】損失増を抑制し、ガラスと被覆層との界面の密着性を向上することが可能な光ファイバ素線を提供する。
【解決手段】 直径が70μm〜90μmの範囲の光ファイバ裸線1と、光ファイバ裸線1を直接被覆する1次被覆層6を含み、外径が125μmの被覆層5とを備える。1次被覆層6のヤング率は、1000MPa〜3000MPaの範囲である。
【選択図】図1

Description

本発明は、光信号を伝送する光ファイバ素線に関する。
近年、ルータやサーバ、スーパーコンピュータなどのコンピュータ関連装置において、伝送データの大容量化に伴い、伝送速度の高速化が要求されている。このような要求に対して、電気による伝送速度は限界に達しており、新たな高速伝送手段が求められている。高速伝送手段の一つとして、光ファイバの広帯域性を活かした光インターコネクション技術が、コンピュータ関連装置に適用されつつある。
光インターコネクション用のコネクタとして、高密度実装を実現するためフェルール内で光路を90度変換させるPTコネクタなどが開発されている。このような高密度基板やバックプレーンなどで光配線を行う場合、配線経路が限定される関係で、光ファイバは小曲げ半径で使用される状況になる。このような環境に対して、光ファイバを適用するには、曲げ損失などの光学的特性と、機械的特性を改善する必要がある。
光学的特性の改善にはクラッドとコアの比屈折率差(コアΔ)を高くし、機械的特性の改善にはガラス径(クラッド径)を小さくすれば解決する。しかし、通常使用されている光ファイバのガラス径は125μmで、被覆径が250μmである。したがって、単純にガラス径を小さくした光ファイバでは、通常の光ファイバ用コネクタは使用できないという問題がある。
上記の問題を解決するために、高コアΔで、小ガラス径にした小曲げ半径適応の屈折率分布(GI)型光ファイバ素線が提案されている(特許文献1参照)。提案された光ファイバ素線では、現行の光ファイバ用コネクタに適用するため、小ガラス径の光ファイバ裸線に通常の光ファイバのガラス径(125μm)と同じになるように被覆層を施している。一般的に、光ファイバ裸線に直接接触する被覆層のヤング率は、ガラスコアへの衝撃を緩和するために1MPa程度に低く設計されている。しかし、提案された光ファイバ素線では、取り扱い性、及びコネクタの接続損失などの観点から、ヤング率が高く設計されていることが特徴である。
特開2009−053365号公報
上記提案された被覆径が125μmの細径GI型光ファイバ素線は、ガラスと、光ファイバ裸線に直接施される1次被覆層に使用する材料との熱収縮の相違により、低温環境で損失増加が発生してしまう。また、光ファイバ素線の端面を研磨すると、ガラスと被覆層との界面に研磨液がしみ込んでしまう。そのため、研磨後にガラスと被覆層の界面から研磨液が出てくるという問題がある。
上記問題点を鑑み、本発明の目的は、損失増加を抑制し、ガラスと被覆層との界面の密着性を向上することが可能な光ファイバ素線を提供することにある。
本発明の一態様によれば、直径が70μm〜90μmの範囲の光ファイバ裸線と、光ファイバ裸線を直接被覆する1次被覆層を含み、外径が125μmの被覆層とを備え、1次被覆層のヤング率が、1000MPa〜3000MPaの範囲である光ファイバ素線が提供される。
本発明によれば、損失増加を抑制し、ガラスと被覆層との界面の密着性を向上することが可能な光ファイバ素線を提供することが可能となる。
本発明の実施の形態に係る光ファイバ素線の一例を示す断面図である。 本発明の実施の形態に係る光ファイバ素線の損失温度特性の評価結果の一例を示す表である。 本発明の実施の形態に係る光ファイバ素線の研磨液のしみこみ及び強度劣化特性の評価結果の一例を示す表である。 本発明の実施の形態に係る光ファイバ素線の研磨液のしみ込み及び動疲労特性の評価結果の一例を示す表である。
以下図面を参照して、本発明の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
又、以下に示す本発明の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
本発明の実施の形態に係る光ファイバ素線は、図1に示すように、光ファイバ裸線1、及び被覆層5を備える。光ファイバ裸線1は、コア2及びクラッド4を含む。直径が70μm〜90μmの範囲である。被覆層5は、光ファイバ裸線1を直接被覆する1次被覆層6、及び1次被覆層6を被覆する着色層8を含む。光ファイバ裸線1は、直径が70μm〜90μmの範囲である。被覆層5は、外径が125μmである。なお、着色層8は、光ファイバ素線の識別のためであり、必要なければ用いなくてもよい。
実施の形態の説明に用いる光ファイバ素線の構成を以下に示す。光ファイバ裸線1は、シリカなどのガラス製である。コア2は直径が約50μmで、クラッド4は外径が約80μmである。光ファイバ裸線1のコアΔは、約2.1%である。被覆層5は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどの樹脂製である。被覆層5として、紫外線硬化樹脂が望ましい。1次被覆層6は外径が約110μmで、着色層8は外径が約125μmである。作製した光ファイバ素線は、被覆層5に対する光ファイバ裸線1の偏心量は3μm以下で、光ファイバ素線の直径は125μm±1μmとなるようにしている。
通常、光ファイバ裸線は、被覆層に用いる樹脂の硬化収縮や熱収縮により、応力を受けている。応力が大きくなると損失の増加を招くことになる。一般的な光ファイバ素線の1次被覆層のヤング率が1MPa程度であれば、応力は無視できるレベルである。高いヤング率の材料を使用する場合、光ファイバ裸線が受ける応力を考慮した被覆層の樹脂材料設計が必要となる。
そこで、1次被覆層6にヤング率が異なる樹脂材料を用いて作製したGI型光ファイバ素線について、損失温度特性を測定した。測定結果を図2の表に示す。測定に供した試料は、約300mmφ束で、長さが1000mである。損失温度特性は、パワーメータを用いて−40℃〜85℃の範囲で、測定波長1300nmにおける損失の増加量を測定している。
図2に示すように、損失増加量は、1次被覆層6のヤング率が3500MPa以上では0.23dB/km以上となり、ヤング率が3000MPa以下では0.03dB/km以下と抑えられる。また、挿入損失の観点からは、1次被覆層6のヤング率は1000MPa以上が望ましい。したがって、光ファイバ素線の損失を抑制するために、1次被覆層6は、1000MPa〜3000MPaの範囲が望ましい。
また、光ファイバ裸線の1次被覆層に高ヤング率の被覆材料を用いる場合、硬化時の樹脂の収縮により、光ファイバ裸線は締め付けられる。したがって、光ファイバ裸線と1次被覆層の密着性は十分に高いと考えられがちである。しかし、光ファイバ素線の端面を研磨すると、研磨液のしみ込みが発生する。このように、光ファイバ裸線と1次被覆層とが単に物理的に密着しているだけでは、研磨液のしみ込みを防止することはできない。
研磨液のしみ込みを抑制するため、1次被覆層6の添加剤として、ラジカル重合性及び非ラジカル重合性のシランカップリング剤、並びにアミン系材料を検討した。ラジカル重合性シランカップリング剤には、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランを用い、非ラジカル重合性シランカップリング剤には、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、及びテトラメトキシシランを用いた。アミン系材料には、ジエチルアミンを用いた。1次被覆層6のベース樹脂に対して、それぞれ、シランカップリング剤は0.5wt%で、アミン系材料は0.3wt%で添加している。1次被覆層6のヤング率は2000MPaとしている。
研磨液のしみ込みの評価は、各添加材料を添加して作製した光ファイバ素線の試験数を20として、端面を研磨した後、マイクロスコープにより観察して研磨液がしみ出した光ファイバ素線の数を求めた。併せて、添加材料による強度劣化特性についても評価した。光ファイバ素線を温度が85℃、湿度が85%の環境に、張力がかからない状態で1ヶ月間保持し、初期強度に対する強度の維持率を求めた。強度の測定は、国際電気標準会議(IEC)60793−1−31に準拠する方法で実施した。具体的には、引張試験機を用いて、スパン500mm、試験速度100mm/minで、試験数n=20の条件で試験し、F50の値を求めた。測定結果を、図3の表に示す。
図3に示すように、1次被覆層6にシランカップリング剤を添加すれば、試験数20本に対して、研磨液のしみ込み数が、16本から3〜4本に改善される。シランカップリング剤に加えてアミン系材料を添加すると、研磨液のしみ込み数は0と改善される。アミン系材料を加えることで、シランカップリング剤と、光ファイバ裸線1のガラスとの反応が促進され、1次被覆層6と光ファイバ裸線1との界面で化学的結合が生じているためである。
また、ラジカル重合性シランカップリング剤に加えてアミン系材料を添加すると、強度維持率が約64%〜約68%まで低下し、強度の劣化が確認される。一方、非ラジカル重合性シランカップリング剤に加えてアミン系材料を添加した場合は、強度維持率は約92%〜約96%であり、強度維持率の低下はほとんどない。このように、アミン系材料を用いて研磨剤のしみこみを抑制する場合、強度劣化を防止するために、非ラジカル重合性シランカップリング剤を用いることが望ましい。
次に、1次被覆層6に添加する非ラジカル重合性シランカップリング剤とアミン系材料の添加量を変化させ、研磨液のしみ込み、及び強度特性を評価した。非ラジカル重合性シランカップリング剤としてテトラエトキシシランを用い、アミン系材料としてジエチルアミンを用いている。1次被覆層6のヤング率は、2000MPaとしている。
研磨液のしみ込みは、上記と同様に、光ファイバ素線の試験数を20として、しみ込み数を求めた。強度特性としては、IEC60793−1−33に準拠する引張法を用いて試験を行い、動疲労n値を測定した。評価結果を図4の表に示す。
図4に示すように、非ラジカル重合性シランカップリング剤が0.2wt%〜2wt%の範囲で、アミン系材料が0.01wt%〜2wt%の範囲で、研磨液のしみ込みの発生は防止される。また、動疲労n値は、アミン系材料の添加量を増加させると小さくなる。アミン系材料の添加量が1wt%以下であれば、動疲労n値の大きな低下は見られない。したがって、1次被覆層6に添加する非ラジカル重合性シランカップリング剤及びアミン系材料の添加量は、それぞれ、0.2wt%〜2wt%の範囲、及び0.01wt%〜1wt%の範囲が望ましい。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者にはさまざまな代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係わる発明特定事項によってのみ定められるものである。
1…光ファイバ裸線
2…コア
4…クラッド
5…被覆層
6…次被覆層
8…着色層

Claims (5)

  1. 直径が70μm〜90μmの範囲の光ファイバ裸線と、
    前記光ファイバ裸線を直接被覆する1次被覆層を含み、外径が125μmの被覆層
    とを備え、
    前記1次被覆層のヤング率が、1000MPa〜3000MPaの範囲であることを特徴とする光ファイバ素線。
  2. 前記1次被覆層が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線。
  3. 前記1次被覆層が、アミン系材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ素線。
  4. 前記シランカップリング剤が、非ラジカル重合性であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光ファイバ素線。
  5. 前記シランカップリング剤の添加量が、0.2wt%〜2wt%の範囲で、前記アミン系材料の添加量が、0.01wt%〜1wt%の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバ素線。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024172150A1 (ja) * 2023-02-16 2024-08-22 住友電気工業株式会社 光ファイバ

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