JP2014102149A - Imsドリフトタイム予測装置、imsドリフトタイム予測方法およびプログラム - Google Patents

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亜友子 橘
Takae Takeuchi
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Toshiki Sugai
俊樹 菅井
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Toho University
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Abstract

【課題】IMSによる化学物質のドリフトタイムを高精度に予測することにより、IMSによる計測値の検証を可能にする。
【解決手段】IMSによる化学物質の計測におけるドリフトタイムを予測するIMSドリフトタイム予測装置であって、化学物質の構造を単純な構造に近似してドリフトタイム予測値を算出する予測値計算部と、化学物質に含まれる分子の構造に基づいてドリフトタイム予測値を補正する予測値補正部と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、イオンモビリティ分光計(以下、IMS;Ion Mobility Spectrometry)による化学物質の計測におけるドリフトタイム予測装置、ドリフトタイム予測方法およびプログラムに関する。
IMSは、蒸気やガスなどに含まれる微量の化学物質の検出に用いられる計測装置である。IMSは、分子をイオン化してドリフト領域を通過させることにより、移動時間(ドリフトタイム)とシグナル強度を測定し、その移動度から分子を検出同定する。イオンモビリティ分析装置については、例えば特許文献1に開示されている。
特開2006−107929号公報
しかしながら、IMSでの計測は、湿度や温度などの環境要因の影響を受けるために計測値の再現性が低く、不要な信号が多いという問題があった。このため、計測値を検証する手段が必要となるが、特許文献1に記載されたイオンモビリティ分析装置では、計測値の検証を行うことができなかった。
そこで本発明の目的は、IMSによる化学物質のドリフトタイムを高精度に予測することにより、IMSによる計測値の検証を可能にすることである。
本発明に係るIMSドリフトタイム予測装置は、IMSによる化学物質の計測におけるドリフトタイムを予測するIMSドリフトタイム予測装置であって、前記化学物質の構造を単純な構造に近似してドリフトタイム予測値を算出する予測値計算部と、前記化学物質に含まれる分子の構造に基づいて前記ドリフトタイム予測値を補正する予測値補正部と、を備えたものである。
前記予測値計算部は、前記化学物質の構造を剛体球に近似し、モンテカルロ法を用いて衝突断面積を計算することにより前記ドリフトタイム予測値を算出するようにしてもよい。
前記予測値補正部は、前記分子の構造に関するパラメータを説明変数として、多変量解析によって前記ドリフトタイム予測値を補正するようにしてもよい。
本発明に係るIMSドリフトタイム予測方法は、IMSによる化学物質の計測におけるドリフトタイムを予測する方法であって、前記化学物質の構造を単純な構造に近似してドリフトタイム予測値を算出する工程と、前記化学物質に含まれる分子の構造に基づいて前記ドリフトタイム予測値を補正する工程と、を備えたものである。
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、IMSによる化学物質の計測におけるドリフトタイムを予測するIMSドリフトタイム予測装置として機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、前記化学物質の構造を単純な構造に近似してドリフトタイム予測値を算出する予測値計算部と、前記化学物質に含まれる分子の構造に基づいて前記ドリフトタイム予測値を補正する予測値補正部と、して機能させるものである。
本発明によれば、IMSによる化学物質のドリフトタイムを高精度に予測することにより、IMSによる計測値の検証を可能にすることができる。
本発明の実施の形態による、IMSドリフトタイム予測装置の構成を示すブロック図。 本発明の実施の形態による、IMSドリフトタイム予測装置の動作のフローチャート。 アミノ酸分子の分子構造を示す図。 アミノ酸分子の分子構造を示す図。 アミノ酸分子の分子構造を示す図。 本発明の実施例1による、各アミノ酸のIMSによるドリフトタイムの計測値と予測値を示す図。 本発明の実施例1による、ドリフトタイムの予測値補正に用いられる説明変数を示す図。 本発明の実施例1による、ドリフトタイム計測値と予測値及び補正後の予測値の比較結果を示す図。 本発明の実施例2による、モノマーのIMS計測値と化学構造式を示す図。 本発明の実施例2による、ドリフトタイムの予測値補正に用いられる説明変数を示す図。 本発明の実施例2による、ドリフトタイム計測値と予測値の比較結果を示す図。
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態による、IMSドリフトタイム予測装置10の構成を示すブロック図である。図に示すように、IMSドリフトタイム予測装置10は、入力装置101、予測値計算部102、予測値補正部103、出力装置104を備えている。
IMSドリフトタイム予測装置10は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、各種の情報を格納する外部記憶装置、入力インタフェース、出力インタフェース、通信インタフェース及びこれらを結ぶバスを備える専用又は汎用のコンピュータを適用することができる。なお、IMSドリフトタイム予測装置10は、単一のコンピュータにより構成されるものであっても、通信回線を介して互いに接続された複数のコンピュータにより構成されるものであってもよい。
予測値計算部102、予測値補正部103は、CPUがROM等に格納された所定のプログラムを実行することにより実現される機能のモジュールに相当する。
入力装置101は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等を含む各種デバイスであり、ユーザがIMSドリフトタイム予測装置10に対して各種情報の入力を行う際に使用される。また、USB(Universal Serial Bus)インタフェースを介して、メモリ媒体などからデータを読み込むことも可能である。
出力装置104は、ディスプレイ等の表示装置やプリンタであり、IMSドリフトタイム予測装置10のCPUから出力される信号を受けて、各種画像や文字を出力するものである。
次に、IMSドリフトタイム予測装置10の動作について説明する。
図2は、IMSドリフトタイム予測装置10の動作のフローチャートである。
まず、対象となる化学物質の分子式と、環境要因である温度、湿度の情報が入力装置101を介して予測値計算部102に供給される(ステップS1)。
次に、予測値計算部102において、入力された分子式に基づいて対象となる化学物質の分子構造を剛体球に近似し、衝突断面積をモンテカルロ法により算出する。さらに、衝突断面積からIMSドリフトタイムの予測値を算出する(ステップS2)。
次に、予測値補正部103において、化学物質の実際の分子の形状を考慮して、ステップS2で算出した予測値を補正する(ステップS3)。
具体的には、まず化学構造を基に分割し、各々の基の分子量と分子数を説明変数として取得する。これらのデータを説明変数として、多変量解析であるPLS(Partial Least Squares)回帰分析を行い、ドリフトタイムの予測値の補正値を得る。得られた補正値は出力装置104に出力される。
以上のように、本実施形態によれば、分子構造を単純化した上でモンテカルロ法を用いてドリフトタイムの予測値を算出し、さらに多変量解析を用いて予測値の補正を行うことにより、精度の高いドリフトタイム予測値を得ることができる。この予測値を用いて、IMSによる計測値の検証を行うことが可能となる。
また、予測値の補正を行う際に、説明変数として分子構造由来以外の実測値を追加することにより、さらに精度の高い予測値を得ることができる。
(実施例1)
本発明の実施例として、α−アミノ酸分子のIMSドリフトタイムの予測について説明する。
図3A〜図3Cは、アミノ酸分子20種類の分子構造を示したものである。アミノ酸はカルボキシル基−COOHと塩基性のアミノ基−NH2をもつ化合物である。カルボキシル基の隣接炭素原子(α炭素原子)にアミノ基が結合したアミノ酸をα−アミノ酸という。
まず、予測値計算部102において、化学構造を剛体球に近似してドリフトタイム予測値を算出する。まず、モンテカルロ法を用いて衝突断面積を求め、衝突断面積からドリフトタイムを算出する。
図4に、各アミノ酸のIMSによるドリフトタイムの計測値と予測値計算部102によるドリフトタイム予測値を示す。図4において、[name]カラムはアミノ酸の名称、[drift_time]カラムはIMS装置でのドリフトタイム計測値、[predict]カラムはドリフトタイム予測値を示している。
次に、予測値補正部103において、化学物質の実際の分子の形状を考慮して予測値を補正する。予測値補正に用いられる説明変数を図5に示す。図5において、[drift_time]カラムはIMS装置でのドリフトタイム計測値、[predict]カラムは予測値計算部102で予測されたドリフトタイムを示している。
予測値補正部103は、アミノ酸配列の側鎖を分割して数値化する。側鎖の分割方法を図3A〜図3Cに示す。数値化は、α炭素原子から近い順に番号(n=1,2,…)を付与し、N末端側の分子量[N]、側鎖n番目の分子量[scn]、側鎖n番目に含まれるC,O,N,S分子の数[Cn]を順に数値化する。
さらに、これらのデータを説明変数として用いて、PLS回帰分析により、ドリフトタイムの実験値(drift_time)を回帰予測する。
図6に、IMS装置での計測値とIMSドリフトタイム予測装置10による予測値及び補正後の予測値の比較結果を示す。図6に示すとおり、補正前の予測値(MC予測)と計測値との誤差は0.37〜22.04%であるのに対し、補正後の予測値(補正後)と計測値との誤差は0.11〜4.58%となり、全体として見ると補正が有効であることがわかる。
(実施例2)
本発明の他の実施例として、12種類の微生物揮発性有機化合物(MVOC)のダイマーのIMSドリフトタイムの予測について説明する。
化合物1分子をモノマーといい、分子間相互作用によってモノマーが2分子まとまったものをダイマーという。ダイマーのIMSドリフトタイム計測値を目的変数とし、モノマーのIMSドリフトタイム計測値に分子式からの説明変数を加えて、ダイマーのIMSドリフトタイムを予測する。
モノマーのIMS計測値と化学構造式を図7に示す。[name]カラムはMVOCの名称、[drift_time]カラムはIMS装置でのドリフトタイム計測値、[化学構造式]は化合物の化学構造式を示す。
次に、化学物質の実際の分子の形状を考慮して予測値を補正する。補正に用いる説明変数を図8に示す。次に、MVOC配列の側鎖を分割して数値化する。側鎖の分割方法を図3A〜図3Cに示す。数値化は、α炭素原子から近い順に番号(n=1,2,…)を付与し、側鎖n番目のC鎖の分子量[Cn]、側鎖n番目に含まれるC,O,N,S分子の数[CONSn]、側鎖n番目に含まれるH分子の数[Hn]と順に数値化する。
さらに、これらのデータを用いて、PLS回帰分析により、ダイマーのドリフトタイムを回帰予測する。
図9に、IMS装置での計測値とIMSドリフトタイム予測装置10による予測値の比較結果を示す。図9に示すとおり、誤差の範囲は0.00〜8.77%であることがわかる。
10 IMSドリフトタイム予測装置
101 入力装置
102 予測値計算部
103 予測値補正部
104 出力装置

Claims (5)

  1. IMSによる化学物質の計測におけるドリフトタイムを予測するIMSドリフトタイム予測装置であって、
    前記化学物質の構造を単純な構造に近似してドリフトタイム予測値を算出する予測値計算部と、
    前記化学物質に含まれる分子の構造に基づいて前記ドリフトタイム予測値を補正する予測値補正部と、を備えたIMSドリフトタイム予測装置。
  2. 前記予測値計算部は、
    前記化学物質の構造を剛体球に近似し、モンテカルロ法を用いて衝突断面積を計算することにより前記ドリフトタイム予測値を算出する、請求項1に記載のIMSドリフトタイム予測装置。
  3. 前記予測値補正部は、
    前記分子の構造に関するパラメータを説明変数として、多変量解析によって前記ドリフトタイム予測値を補正する、請求項1または2に記載のIMSドリフトタイム予測装置。
  4. IMSによる化学物質の計測におけるドリフトタイムを予測する方法であって、
    前記化学物質の構造を単純な構造に近似してドリフトタイム予測値を算出する工程と、
    前記化学物質に含まれる分子の構造に基づいて前記ドリフトタイム予測値を補正する工程と、を備えたIMSドリフトタイム予測方法。
  5. コンピュータを、
    IMSによる化学物質の計測におけるドリフトタイムを予測するIMSドリフトタイム予測装置として機能させるプログラムであって、
    前記コンピュータを、
    前記化学物質の構造を単純な構造に近似してドリフトタイム予測値を算出する予測値計算部と、
    前記化学物質に含まれる分子の構造に基づいて前記ドリフトタイム予測値を補正する予測値補正部と、して機能させるプログラム。
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