図1に、本発明の実施形態による量子通信システムの概念図を示す。送信者側に、送信装置1が配置され、受信者側には、受信装置2が配置されている。
送信装置1は、量子系出射器としての光子出射器4、及び送信者側コンピュータ5を備える。受信装置2は、振り分け器6、第1の連続測定器7、第2の連続測定器10、及び受信者側コンピュータ13を備える。
量子チャンネル3によって、光子出射器4と振り分け器6とが接続されている。量子チャンネル3は、例えば、光ファイバや自由空間等で構成される。
公衆チャンネル14によって、送信者側コンピュータ5と受信者側コンピュータ13とが接続されている。公衆チャンネル14は、例えば、電話回線やインターネット回線等で構成される。
以下、本発明の実施形態による量子通信方法について説明する。
前提として、送受信者間で、第1のPVMと、この第1のPVMの要素とは非直交な要素よりなる第2のPVMとを予め決めている。第1及び第2のPVMの一方のPVMの全要素は、他方のPVMの任意の要素に対して互いに不偏(mutually unbiased)である。
本実施形態では、第1のPVMは|H><H|及び|V><V|よりなり、第2のPVMは|R><R|及び|L><L|よりなるものとする。これら第1及び第2のPVMの各要素は、測定演算子であると共に、密度演算子で表現された偏光状態でもある。
光子出射器4が、第1及び第2のPVMの和集合{|H><H|,|V><V|,|R><R|,|L><L|}からランダムに選ばれる偏光状態に光子を準備して次々に出射する。出射された光子は、量子チャネル3を通じて、振り分け器6に入射する。
光子出射器4は、例えば、エンタングル光子対の一方を振り分け器6に、他方を送信者側に出射するエンタングル源と、その他方の光子に対して第1及び第2のPVMの和集合よりなるPOVMで記述されるPOVM測定を行うPOVM測定器とを備えて構成することができる。
図2(a)は、送信者側コンピュータ5が記憶するデータの概念図である。送信者側コンピュータ5は、光子出射器4から光子が出射される毎に、その光子を識別する識別情報と対応付けて、その光子の、光子出射器4によって準備された偏光状態を自己のメモリに記憶する。
識別情報は、具体的には、光子が光子出射器4から出射される時刻又は順番を表す時間スロットの情報である。光子出射器4から或る一定時間間隔で光子が次々に出射される場合、光子が何番目に出射されたかの順番を特定できれば、各光子を識別できる。
図1に戻って説明を続ける。振り分け器6が、光子出射器4から取得した各光子を第1及び第2の連続測定器7及び10のいずれかにランダムに入射させる。振り分け器6は、例えば、音響光学偏向器や電気光学偏向器等の光偏向器を備えて構成することができる。
第1の連続測定器7は、第1の射影測定器8、及び第1の弱測定器9を備える。第1の射影測定器8は、第1のPVMを基底とする射影測定(以下、第1の射影測定という。)、即ち偏光状態が|H>であるか|V>であるかの判定を行う。
第1の弱測定器9は、第1の射影測定に先立って弱測定を行う。その弱測定は、第1の連続測定器7に入射する光子の偏光状態が第2のPVMに属する場合には、第2のPVMを固有状態の集合とする縮退のないオブザーバブル(以下、第2のオブザーバブルという。)についてなされる。本実施形態では、第2のオブザーバブルとして、パウリ演算子σYを採用する。
なお、第1の連続測定器7に入射する光子の偏光状態が第1のPVMに属する場合は、その偏光状態を第1の射影測定器8で正しく知ることができるから、その場合の、第1の弱測定器9の測定結果は用いなくてよい。従って、その場合に、第1の弱測定器9がどのような弱測定を行うかは任意である。弱測定である以上、その弱測定行為が被測定光子の偏光状態に与える擾乱は無視できる程小さい。
第2の連続測定器10は、第2の射影測定器11、及び第2の弱測定器12を備える。第2の射影測定器11は、第2のPVMを基底とする射影測定(以下、第2の射影測定という。)、即ち偏光状態が|R>であるか|L>であるかの判定を行う。
第2の弱測定器12は、第2の射影測定に先立って弱測定を行う。その弱測定は、第2の連続測定器10に入射する光子の偏光状態が第1のPVMに属する場合には、第1のPVMを固有状態の集合とする縮退のないオブザーバブル(以下、第1のオブザーバブルという。)についてなされる。本実施形態では、第1のオブザーバブルとして、パウリ演算子σZを採用する。
なお、第2の連続測定器10に入射する光子の偏光状態が第2のPVMに属する場合は、その偏光状態を第2の射影測定器11で正しく知ることができるから、その場合の、第2の弱測定器12の測定結果は用いなくてよい。従って、その場合に、第2の弱測定器12がどのような弱測定を行うかは任意である。弱測定である以上、その弱測定行為が被測定光子の偏光状態に与える擾乱は無視できる程小さい。
図2(b)は、受信者側コンピュータ13が記憶するデータの概念図である。受信者側コンピュータ13は、光子出射器4から取得した光子について第1又は第2の連続測定器7又は10による弱測定及び射影測定がなされる毎に、受信者側でその光子を識別する識別情報と対応付けて、その弱測定結果及び射影測定結果を自己のメモリに記憶する。
なお、受信者側の識別情報は、送信者側の識別情報と対応がとれている。具体的には、各光子の時間スロットは、送受信者間で同期がとれている。従って、双方のコンピュータ5及び13の間で、共通の識別情報によって同一の光子を識別できる。識別情報は、いわば各光子に割り当てたラベルである。
以上のようにして、充分な数(例えば、1千個以上、好ましくは1万個以上)の光子が光子出射器4から第1又は第2の連続測定器7又は10に送信され、送信者側コンピュータ5及び受信側コンピュータ13にそれぞれ充分な数のデータ(図2(a)及び(b)参照)が蓄積される。
図3を参照し、以降のフローについて説明する。
送信者側コンピュータ5が、第1及び第2のPVMの和集合{|H><H|,|V><V|,|R><R|,|L><L|}から1つの偏光状態を選択する(ステップS1)。この選択の仕方はランダムでもよいし恣意的であってもよいが、盗聴に対する安全性の面からランダムであることが好ましい。なお、選択の主体は送信者であってもよい。
次に、送信者側コンピュータ5は、自己のメモリに蓄積されたデータ(図2(a)参照)を参照し、ステップS1で選択した偏光状態で受信者側へ送られた光子を複数個(例えば、100個以上)特定し、それら光子の識別情報(以下、識別情報群という。)を抽出して、公衆チャンネル14を通じて、受信者側コンピュータ13に通知する(ステップS2)。
受信者側コンピュータ13は、識別情報群を通知されると、自己のメモリに蓄積されたデータ(図2(b)参照)を参照し、その識別情報群に対応する第1及び第2の射影測定結果の統計分布、具体的にはヒストグラムを求める(ステップS3)。
次に、受信者側コンピュータ13は、求めたヒストグラムに基づいて、ステップS1で送信者側コンピュータ5が選択した偏光状態、即ち送信者側で識別情報群の抽出に用いられた共通の偏光状態(以下、送信者側で選ばれた共通の偏光状態という。)を推定できるか否か判定する(ステップS4)。
以下、ステップS1で、送信者側コンピュータ5が状態|H>を選択し、ステップS2で、それに対応する識別情報群を受信者側コンピュータ13に通知した場合を例に挙げて具体的に説明する。
図4に、この場合にステップS3で受信者側コンピュータ13が求めるヒストグラムを例示する。受信者側コンピュータ13は、図4(a)及び(b)の少なくともいずれか一方のヒストグラムを得る。
図4(a)は、第1の射影測定がなされた光子についてのヒストグラムである。状態|H>で送られてきた光子に対し、|H>であるか|V>であるかの判定を行うのだから、正しい結果|H>を得る度数が、誤った結果|V>を得る度数よりも大きい。このような偏りがみられるヒストグラムが得られた場合、受信者側では、送信者側で選ばれた共通の偏光状態が|H>であると推定できる。即ち、ステップS4でYESと判定できる。
一般に、振り分け器6によって射影測定の基底に選ばれたPVMが、送信者側で選ばれた共通の偏光状態の属するPVMと偶然一致したイベントの、射影測定結果のヒストグラムには偏りがみられる。従って、そのヒストグラムによれば、送信者側で選ばれた共通の偏光状態を原理的には正しく推定できる。
なお、図4(a)には、理想的に偏りがみられる結果を示したが、射影測定結果のヒストグラムにおいて、最も高い度数をUとし、次に高い度数をVとしたとき、U/Vが、例えば1.5以上、好ましくは2以上であるような偏りが得られれば、その最も高い頻度を得た量子状態を、送信者側で選ばれた共通の量子状態であると推定してよい。
図4(b)は、第2の射影測定がなされた光子についてのヒストグラムである。状態|H>で送られてきた光子に対し、間違った基底による射影測定、即ち|R>であるか|L>であるかの判定を行うのだから、どちらの結果を得る確率も1/2であり、測定結果に偏りがみられない。このため、図4(b)の測定結果のみからは、射影測定の基底に選んだPVMが間違いであったということ、従って、送信者側で選ばれた共通の偏光状態が|H>又は|V>であるということは分かるものの(∵|<H|R>|2=|<V|R>|2=|<H|L>|2=|<V|L>|2=1/2)、そのどちらであるかについては何も言えない。即ち、ステップS4でNOと判定する。
一般に、振り分け器6によって射影測定の基底に選ばれたPVMが、送信者側で選ばれた共通の偏光状態の属するPVMと一致しなかったイベントの、射影測定結果のヒストグラムには偏りがみられない。このため、そのヒストグラムからは、射影測定の基底に選んだPVMが間違いであったということ、従って、送信者側で選ばれた共通の偏光状態が第1及び第2のPVMのどちらに属するかは特定しうるものの、その正しいPVM内のどの偏光状態かについては原理的に推定できない。
なお、図4(b)には、理想的に偏りのない結果を示したが、総度数が、識別情報群が表す光子数の1/2超、好ましくは3/5超の第iの射影測定結果のヒストグラムにおいて、最も高い度数をUとし、最も低い度数をVとしたとき、U/Vが、例えば1.5未満、好ましくは1.2未満であれば、送信者側で選ばれた共通の量子状態は第jのPVMに属すると特定し、かつその第jのPVM内のどの量子状態かについては推定できないと判断してよい。ここでiは1又は2、jはiが1のとき2、iが2のとき1である。
振り分け器6は50%の確率で正しい基底を選ぶので、受信者側コンピュータ13は通常、図4(b)のヒストグラムと共に図4(a)のヒストグラムも得る。その場合は、図4(b)のヒストグラムは無視して、図4(a)のヒストグラムのみから、送信者側で選ばれた共通の偏光状態が|H>であると推定できる。
しかし、識別情報群が特定する光子数(イベント数)は有限であり、かつその数は盗聴に対する安全性の観点からできるだけ少ないことが望まれるため、識別情報群が特定するイベントの実質すべてにおいて振り分け器6が間違った基底を選ぶこともありうる。即ち、受信者側では、実質的に図4(b)のヒストグラムしか得ない場合もありうる。
ここで実質的にとは、正しい基底(いまの場合、第1のPVM)を選んだイベント数はゼロではないものの、そのイベント数が少なすぎ、かつノイズや先立つ弱測定の反作用の影響等も受けて、図4(a)のような明瞭なHとVの度数の偏りが現れないため、|H>か|V>かが判然としない場合も含むことを指す。
総度数が、識別情報群が特定する光子数の例えば1/15未満、好ましくは1/10未満のヒストグラムは、たとえそれが正しい基底が選ばれた射影測定の結果と特定できる場合であっても、ステップS4の判定に際して考慮しないことが好ましい。
図3に戻って説明を続ける。受信者側コンピュータ13は、図4(a)の結果が得られた場合のように、射影測定結果のヒストグラムから、送信者側で選ばれた共通の偏光状態を推定できるならば(ステップS4;YES)、推定完了として再びステップS1に戻り、送信者側コンピュータ5に次の識別情報群を通知してもらう(return)。
一方、受信者側コンピュータ13は、実質的に図4(b)の結果しか得られなかった場合のように、射影測定結果のヒストグラムからは、送信者側で選ばれた共通の偏光状態を推定できないと判断する場合(ステップS4;NO)、その間違った基底の射影測定に先立ってなされた弱測定の結果から、その平均値としての弱値を求める(ステップS5)。
ステップS4でNOの場合、受信者側では、送信者側で選ばれた共通の偏光状態が第1及び第2のPVMのどちらに属するかは特定できている。弱値を求めることにより、その特定したPVMのどの要素が、送信者側で選ばれた共通の偏光状態であるかを絞り込むことができる。
以下、弱値に基づいて、送信者側で選ばれた共通の偏光状態を推定し得る点について、理論的な観点から説明する。
一般に、弱測定は、量子系の或る始状態|i>の準備と、POVM{|fm><fm|}(但し、mは測定結果を識別するインデックスである。)で記述される最終測定との間の中間段階で、その量子系に無視できる程小さな擾乱しか与えない条件で、その量子系のオブザーバブルに関する情報を取得する操作をいう。量子系に与える擾乱は無視できる程小さいが、1回の弱測定では量子系から充分な情報が得られない。しかし、同じ始状態の準備と最終測定を繰り返すことができる場合、その繰り返し数に応じた数の弱測定結果のアンサンブルを得、そのアンサンブルを最終測定の結果別にサブアンサンブルに分類すると、各サブアンサンブル内での平均値が繰り返し数の増大に伴って弱値と呼ばれる値(の実部)に収束する。なお、そのように弱測定結果を最終測定の結果別に分類することを事後選択という。最終測定結果の状態、即ち終状態|fm>に事後選択されたオブザーバブルAの弱値の理論値は次式で与えられる。
本実施形態では、式(1)の弱値を、始状態|i>を推定するための手段として用いる。即ち、始状態|i>を具体的に知らなくても弱値を計算できるならば、既知のオブザーバブルAと終状態|fm>とから|i>を推定できる。
受信者は、始状態としての、送信者側で選ばれた共通の偏光状態が、具体的にどの偏光状態かは知らなくても、識別情報群の通知によって、とにかく始状態が同じイベントを特定できるので、弱測定結果を、最終測定としての射影測定の結果に応じて事後選択することにより、弱値を算出できる。従って、その弱値と既知のオブザーバブルσZ又はσYと終状態|R>,|L>,|H>,又は|V>とから、始状態を推定できる。
例えば、図4(b)のヒストグラムしか得られなかった場合のように、始状態が第1のPVMに属することは特定できても、それが|H>なのか|V>なのかは判然としない状況を考える。最終測定として第2のPVM(|R>又は|L>)を基底とする第2の射影測定がなされ、それに先立ち第2の弱測定器12によるオブザーバブルσZの弱測定がなされている。その弱測定結果のアンサンブルを、終状態が|R>であるか|L>であるかによって2つのサブアンサンブルに分類する。即ち、事後選択する。すると、その各サブアンサンブル内の平均値として弱値を計算できる。
一方、始状態が|H>又は|V>ということは分かっているので、それぞれの場合についての、終状態|R>に事後選択されたオブザーバブルσZの弱値として、式(1)より、次の各理論値が与えられる。
受信者は、始状態が|H>なのか|V>なのか知らないが、終状態|R>に事後選択されたオブザーバブルσZの弱値の計算値が1に近い値であれば、式(2)より、始状態が|H>であると特定できる。また、その弱値の計算値が−1に近い値であれば、式(3)より、始状態が|V>であると特定できる。
同様に、終状態|L>に事後選択されたオブザーバブルσZの弱値の理論値は、式(1)より、次のように与えられる。
この場合も、受信者は、終状態|L>に事後選択されたオブザーバブルσZの弱値の計算値が1に近い値であれば、式(4)より、始状態が|H>であると特定でき、その弱値の計算値が−1に近い値であれば、式(5)より、始状態が|V>であると特定できる。
結局、式(3)〜(5)より、終状態としての第2の射影測定結果の状態が|R>であろうと|L>であろうと、弱値の計算値が1に近いか−1に近いかによって始状態を特定できることが分かる。このことは、事後選択の必要がないことを意味する。即ち、第2の射影測定結果には着目せずに、とにかく第2の弱測定結果の平均値を求めればよい。その平均値は、事後選択をしない場合の弱値である。
簡単な計算により、事後選択をしない場合の弱値の理論値は、次式に示すように、始状態についての期待値と等価であることが示される。
そこで、受信者は、最終測定としての第2の射影測定に付随する弱測定の結果、即ち、第2の弱測定器12の測定結果の平均値を算出し、その値(事後選択をしない場合の弱値)が1に近ければ、式(6)より始状態が|H>であると特定でき、−1に近ければ、式(7)より始状態が|V>であると特定できる。
以上、始状態が第1のPVMに属するにも関わらず、受信者側で第2の射影測定を選んだ場合について述べた。同様に、始状態が第2のPVMに属するにも関わらず、受信者側で第1の射影測定を選んだ場合についても、事後選択をしない場合のオブザーバブルσYの弱値の理論値は、次式に示すように始状態についての期待値と等価である。
そこで、受信者は、第1の射影測定に付随する弱測定の結果、即ち、第1の弱測定器9の測定結果の平均値を算出し、その値(事後選択をしない場合の弱値)が1に近ければ、式(8)より始状態が|R>であると特定でき、−1に近ければ、式(9)より始状態が|L>であると特定できる。
図3に戻って、ステップS5以降のフローの説明を続ける。
受信者側コンピュータ13は、ステップS4でNOと判定する場合、識別情報群に対応する弱測定結果の全アンサンブルの中から、間違った基底での射影測定に先立ってなされた弱測定の結果を抽出し、その抽出したサブアンサンブル内での平均値を算出する(ステップS5)。この平均値は、既述のように、事後選択をしない場合の弱値に相当する。
次に、受信者側コンピュータ13は、その算出した弱値に基づき、送信者側で選ばれた共通の偏光状態を特定できるか否かを判定する(ステップS6)。
例えば、ステップS3で図4(b)のヒストグラムしか得られなかった場合でも、その弱値が1に近ければ、式(6)より送信者側で選ばれた共通の偏光状態が|H>であると特定でき、−1に近ければ、式(7)よりそれが|V>であると特定できる。即ち、ステップS6でYESと判定できる。
同様に、受信者側コンピュータ13は、ステップS3で基底{|H>、|V>}について図4(b)と同様のヒストグラムしか得られなかった場合でも、事後選択をしない場合の弱値を算出し、それが1に近ければ、式(8)より送信者側で選ばれた共通の偏光状態が|R>であると特定でき、−1に近ければ、式(9)よりそれが|L>であると特定できる。即ち、ステップS6でYESと判定できる。
具体的には、例えば、事後選択をしない場合の弱値をW、弱測定する縮退のないオブザーバブルの1つの固有値をM、これに最も近い他の固有値をN(但し、N>Mとする。)、δ=|N−M|/10としたとき、W<(M+N)/2−δならば、WはMに近いため送信者側で選ばれた共通の量子状態は固有値Mに対応する固有状態であると判断し、W>(M+N)/2+δならば、WはNに近いため送信者側で選ばれた共通の量子状態は固有値Nに対応する固有状態であると判断してよい(ステップS6;YES)。一方、任意のM、Nについて、(M+N)/2−δ≦W≦(M+N)/2+δであれば、送信者側で選ばれた共通の量子状態を推定不可能と判断すればよい(ステップS6;NO)。なお、δは|N−M|/5であることが好ましい。
いまの具体例では、事後選択をしない場合の弱値が、−0.2未満であれば送信者側で選ばれた共通の偏光状態が|V>であると特定し(ステップS6;YES)、0.2超であれば|H>であると特定し(ステップS6;YES)、−0.2以上0.2以下であれば、特定不可能と判断する(ステップS6;NO)。
受信者側コンピュータ13は、事後選択をしない場合の弱値に基づいて、送信者側で選ばれた共通の偏光状態を特定できるならば(ステップS6;YES)、推定完了として再びステップS1に戻り、送信者側コンピュータ5に次の識別情報群を通知してもらう(return)。
送信者側で選ばれた共通の偏光状態を特定できたとき(ステップS4;YES及びステップS6;YES)、第1及び第2のPVMの和集合の要素数、即ちいまの場合4つの要素から1つを特定できたという意味で2ビットの情報が送信者側から受信者側に伝達されたことになる。なお、一般には、量子系をN準位系とすると、1回の識別情報群の通知ごとに、1+log2Nビットの情報が伝達されることとなる。
本実施形態によれば、この情報伝達に際し、BB84プロトコルでは必要であった送受信者間での量子系ごとのPVMの照合が不要となるので、古典通信、具体的には公衆チャンネル14を通じた双方のコンピュータ5及び13間の通信の煩雑さが緩和される。ステップS1に戻って次の識別情報群を通知してもらうことを繰り返すことにより(return)、所望のビット数の情報、例えば鍵データを送受信者間で共有できる。
一方、受信者側コンピュータ13は、事後選択をしない場合の弱値に基づき、送信者側で選ばれた共通の偏光状態を特定できないならば(ステップS6;NO)、盗聴の可能性がある旨を、公衆チャンネル14を通じて、送信者側コンピュータ5に伝える(ステップS7)。
これは、識別情報群が表すイベントでは始状態は同じであるにも関わらず、射影測定結果からも、弱測定結果からも、その始状態を推定できない場合は、光子が量子チャンネル3を通過する過程で、第三者が盗聴目的のPOVM測定又は射影測定をその光子に行った可能性があるからである。即ち、盗聴目的の測定によって、振り分け器6に到達時点の偏光状態が始状態とは異なる状態にばらつくと、射影測定結果も弱測定結果もノイジーとなって結果の統計分布に偏りがみられなくなる。即ち、明瞭度が低下する。
本実施形態によれば、このように、受信者側において、識別情報群に対応する射影測定結果の統計分布及び弱値より、盗聴目的のPOVM測定又は射影測定が行われた可能性も評価することができる。
ステップS7で盗聴の可能性がある旨を送信者側に通知した場合の対処としては、再びステップS1に戻り、送信者側に別の識別情報群を通知してもらってもよいし(return)、本フロー自体を中止してもよい。
なお、盗聴目的の量子測定が弱測定の場合は、受信者側でこれを検知できないが、弱測定は最終測定と組み合わせて始めて意味をもつところ、本実施形態によれば、受信者側
コンピュータ13は、最終測定としての射影測定の結果は勿論、その基底が第1のPVMなのか第2のPVMなのかさえ公表しないので、盗聴者は弱測定結果から意味のある情報を原理的に得ることができない。このため、盗聴に対する安全性を確保できる。
以上、実施形態による量子通信方法について説明したが、本発明はこれに限られない。
例えば、図3の例では、ステップS4でYESならば、直ちにreturnとしたが、確認的に、誤った方の射影測定結果に付随する弱測定結果から得られる弱値を求めてもよい。例えば、図4(a)及び(b)の両方のヒストグラムが得られ、図4(a)のみから始状態が|H>であると推定できる場合でも、確認的に図4(b)の射影測定結果に付随する弱測定結果から得られる弱値を求めてもよい。その結果、1に近い弱値が得られれば、始状態が|H>であることが首肯されることとなる。
また、図3のステップS4でYESの場合に、確認的に、正しい方の射影測定結果に付随する弱測定結果から得られる弱値を求めてもよい。この場合にノイジーな弱値、具体的にはステップS6でNOと判定する場合と同様の弱値(理想的にはゼロ)が得られるようにしておけば、そのノイジーな弱値が得られることによって、付随する射影測定の基底の選択が正しいことが首肯されることとなる。
この意味で、第i(但しiは1又は2とする。)の弱測定器は、第iの連続測定器に入射する光子の偏光状態が第iのPVMに属する場合には、第iのPVMの全要素に対して不偏な状態を固有状態の集合とする縮退のないオブザーバブルについての弱測定を行うように構成されていることが好ましい。なお、第1のPVM(|H>又は|V>)の全要素に対して不偏な状態を固有状態の集合とする縮退のないオブザーバブルとしては、例えば第2のオブザーバブルとしてのパウリ演算子σYの他、σX等も挙げられる。また、第2のPVM(|R>又は|L>)の全要素に対して不偏な状態を固有状態の集合とする縮退のないオブザーバブルとしては、例えば第1のオブザーバブルとしてのパウリ演算子σZの他、σX等も挙げられる。
また、図3のフローを複数回繰り返す場合、送信者側コンピュータ5は、ステップS1において、以前のステップS1で既に選んだ偏光状態と同じ偏光状態を再び選ぶことがある。その場合に、送信者側コンピュータ5が通知する識別情報群は、同じ偏光状態について既に通知した識別情報群が含まない識別情報を含むことが、盗聴に対する安全上、好ましい。これは、識別情報の通知は公衆チャンネル14を通じて行われるため、同じ偏光状態についての識別情報群が毎回同じであると、盗聴者は、少なくとも同じ情報についての伝達が行われていることを察知しうるからである。
或る識別情報群が、同じ偏光状態について既に通知した識別情報群が含まない識別情報を含む場合、受信者は、その或る識別情報群に対する偏光状態の推定の確かめの目的で、その或る識別情報群に対応する弱測定結果及び射影測定結果を、それぞれ既に終えた推定に用いた弱測定結果及び射影測定結果と併合し、その併合された射影測定結果の統計分布及び弱測定結果から得られる弱値を求めることが好ましい。
また、図3の例では、識別情報群の通知のたびに、受信者側で偏光状態の推定を行ったが、まず送信者側から受信者側への識別情報群の通知を複数回繰り返し行った後に、受信者側で各々の識別情報群についての量子状態の推定を一括して行ってもよい。
また、送信者側から送信者側への識別情報群の複数回の通知によって受信者側が或るビット数のデータを得た後は、BB84の場合と同じように、受信者側から送信者側へそのデータの部分集合を送り、送信者側で誤り率を解析するようにしてもよい。誤り率が例えば25%以下ならば盗聴が行われておらず、送受信者間で残りのデータを秘密鍵として保持するようにしてもよい。さらに、誤り訂正を行うようにしてもよい。
図5は、図1の第1の連続測定器7の一構成例を示す。
まず、偏光状態が第2のPVM(|R>又は|L>)に属する光子が入射する場合について説明する。
1/4波長板91に、図1の光子出射器4から出射した光子が入射する。1/4波長板91は、右回り円偏光状態|R>を+45°方向の直線偏光状態(以下、|+>と表記する。)に変換し、左回り円偏光状態|L>を−45°方向の直線偏光状態(以下、|−>と表記する。)に変換する。ここで、|+>と|−>はそれぞれ|H>と|V>の重ね合せ状態、|+>∝|H>+|V>、|−>∝|H>−|V>で書き表せる。
偏光ビームスプリッタ92に、偏光状態が|+>又は|−>の光子が入射する。偏光ビームスプリッタ92は、自己に入射する光子の|H>成分と|V>成分の間の位相関係を保ったまま、|H>成分(確率波)を透過させ、|V>成分(確率波)を反射させる。|H>成分は第1の内部光路aを伝搬し、|V>成分は第2の内部光路bを伝播する。
第1の1/2波長板93が、第1の内部光路a上に配置されている。第1の1/2波長板93はその主軸が水平方向から角度θだけ傾けられていて、自己に入射した|H>成分の偏光方向を角度2θだけ回転させる。
第2の1/2波長板94が、第2の内部光路b上に配置されている。第2の1/2波長板94はその主軸が水平方向から角度−θだけ傾けられていて、自己に入射した|V>成分の偏光方向を角度−2θだけ回転させる。
ビームスプリッタ95が、第1の内部光路aと第2の内部光路bとが交差する位置に配置され、偏光ビームスプリッタ92と共にマッハツェンダ型干渉計を構成している。
第1の内部光路aからビームスプリッタ95に入射する成分の偏光状態を|X>、第2の内部光路bからビームスプリッタ95に入射する成分の偏光状態を|Y>とすると、第1の内部光路aを、ビームスプリッタ95を透過させて延長させた第1の出射光路cに出射する光子の偏光状態は|X>−|Y>に比例し、第2の内部光路bを、ビームスプリッタ95を透過させて延長させた第2の出射光路dに出射する光子の偏光状態は|X>+|Y>に比例する。
第1の射影測定器8は、第2の出射光路d上に配置された偏光ビームスプリッタ80と、偏光ビームスプリッタ80を透過した光子が入射する第1の光子検出器81と、偏光ビームスプリッタ80で反射された光子が入射する第2の光子検出器82と、第1の出射光路c上に配置された偏光ビームスプリッタ83と、偏光ビームスプリッタ83を透過した光子が入射する第3の光子検出器84と、偏光ビームスプリッタ83で反射された光子が入射する第4の光子検出器85とを備える。光子検出器には、例えば、アバランシェフォトダイオード(APD)、光電子増倍管(PMT)、又は超伝導単一光子検出器(SSPD)等を用いることができる。
以上において、1/2波長板93及び94の、主軸からの回転角度を表すθが、オブザーバブルσYについての測定強さを表す。
θ=22.5°の場合に、測定強さが最も強くなる。このとき、内部光路a及びbを伝播する成分の偏光状態は、それぞれ1/2波長板93及び94によって共に|+>となり区別がつかなくなることにより最大の干渉が生じる。1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|R>のとき、内部光路aを伝播する成分|+>と内部光路bを伝播する成分|+>とが同位相であるため、両者が強め合う第2の出射光路dのみから状態|+>の光子が出射し、両者が相殺する第1の出射光路cからは光子は出射しない。同様に、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|L>のとき、内部光路aを伝播する成分|+>と内部光路bを伝播する成分|+>とが逆位相であるため、第1の出射光路cのみから状態|+>の光子が出射し、第2の出射光路dからは光子は出射しない。
このため、第1の出射光路cから光子が出射すれば、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|L>だと確実に分かり、第2の出射光路dから光子が出射すれば、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|R>だと確実に分かる。このような測定は射影測定に相当する。なお、|R>と判定することは、オブザーバブルσYの測定結果が1ということであり、|L>と判定することは、オブザーバブルσYの測定結果が−1ということである(σY=|R><R|−|L><L|)。
但し、θ=22.5°とすると、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が第1のPVM(|H>又は|V>)に属する場合に、第1の射影測定器8において|H>なのか|V>なのかを全く判定できなくなるという弊害が生じる。
θ=0°の場合に、測定強さがゼロになる。このとき、内部光路a及びbを伝播する成分の偏光状態はそれぞれ|H>及び|V>と区別がつくため干渉が生じない。このとき、上記弊害は完全に解消されるものの、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|R>であろうと|L>であろうと、第1の出射光路cから光子が出射する確率も、第2の出射光路dから光子が出射する確率も等しく50%となり、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|R>なのか|L>なのかについては全く情報を得ることができない。
0°<θ<22.5°とすることにより、弱測定を実現できる。このとき、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|R>であっても、第1の出射光路cから光子が出射する確率はゼロでなくなる。しかし、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|R>の場合、第1の出射光路cから光子が出射する確率よりも、第2の出射光路dから光子が出射する確率の方が高い。
また、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|L>であっても、第2の出射光路dから光子が出射する確率はゼロでなくなる。しかし、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|L>の場合、第2の出射光路dから光子が出射する確率よりも、第1の出射光路cから光子が出射する確率の方が高い。
こうして、光子が第1の出射光路cから出射するか、第2の出射光路dから出射するかによって、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|R>なのか|L>なのかを正しく言い当てることができる確率をある程度残しつつ、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が第1のPVM(|H>又は|V>)に属する場合に、第1の射影測定器8で|H>なのか|V>なのかを正しく判定できなくなる弊害を抑えることができるという兼ね合いが図られる。
かかる兼ね合いをより一層図るという観点から、θは、0°<θ≦16.875°であることが好ましく、5.625≦θ≦16.875°であることがより好ましい。例えば、θは11.25°とすることができる。
1/4波長板91に入射した光子の偏光状態が|R>又は|L>の場合、弱測定の結果は、光子が第1の出射光路cから出射するのか、第2の出射光路dから出射するのかによって与えられる。光子が第1の出射光路cから出射した場合、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態は|L>であったと判定し、オブザーバブルσYの弱測定結果は−1と記録する。光子が第2の出射光路dから出射した場合、1/4波長板91に入射した光子の偏光状態は|R>であったと判定し、オブザーバブルσYの弱測定結果は1と記録する。なお、これらの記録は図1の受信者側コンピュータ13が行う。
但し、第1の出射光路cから出射する光子の偏光状態も、第2の出射光路dから出射する光子の偏光状態も、|+>又は|−>である。第1の射影測定器8は、その|+>又は|−>の状態の光子に対して|H>であるか|V>であるかの判定を行う訳であるが、これは|R>又は|L>の状態の光子に対して|H>であるか|V>であるかの判定を行うことと全く等価である。いずれも、50%の確率で|H>と判定し、50%の確率で|V>と判定し、元の偏光状態が|+>なのか|−>なのか、あるいは|R>なのか|L>なのかについて何も言うことができない。なお、こういった理由から、出射光路c及びdの各々に、基底{|+>,|−>}を{|R>,|L>}に戻す1/4波長板を配置するか否かは任意である。
次に、偏光状態が第1のPVM(|H>又は|V>)に属する光子が、1/4波長板91に入射する場合について説明する。
1/4波長板91は、自己に入射する光子の偏光状態が|H>又は|V>の場合は、その偏光状態を変えない。
状態|H>の光子は、偏光ビームスプリッタ92を透過し、1/2波長板93で偏光方向を微小角度2θ(但し、0°<θ<22.5°)だけ回転させられる。その偏光状態を|H+ε>と表記する。そして、状態|H+ε>の光子が、出射光路c又はdから出射する。状態|H+ε>は元の状態|H>に近いので、第1の射影測定器8において|H>だと正しく判定される確率が、|V>だと誤って判定される確率より高い。即ち、|<H|H+ε>|2≒1が|<V|H+ε>|2≒0より大きい。
状態|V>の光子は、偏光ビームスプリッタ92で反射し、1/2波長板94で偏光方向を微小角度−2θ(但し、0°<θ<22.5°)だけ回転させられる。その偏光状態を|V−ε>と表記する。そして、状態|V−ε>の光子が、出射光路c又はdから出射する。状態|V−ε>は元の状態|V>に近いので、第1の射影測定器8において|V>だと正しく判定される確率が、|H>だと誤って判定される確率より高い。即ち、|<V|V−ε>|2≒1が|<H|V−ε>|2≒0より大きい。
以上のように、1/4波長板91に入射する光子の偏光状態が第1のPVM(|H>又は|V>)に属する場合の、第1の射影測定器8での測定結果の正確さは担保される。
なお、1/4波長板91に入射する光子の状態が|H>の場合、状態|H+ε>の光子が、第1の出射光路cから出射する確率も、第2の出射光路dから出射する確率も共に50%である。また、1/4波長板91に入射する光子の状態が|H>の場合、状態|V−ε>の光子が、第1の出射光路cから出射する確率も、第2の出射光路dから出射する確率も共に50%である。
このことは、第1の弱測定器9は、1/4波長板91に入射する光子の偏光状態が第1のPVM(|H>又は|V>)に属する場合には、第1のPVMの全要素に対して不偏な状態を固有状態の集合とする縮退のないオブザーバブルについての弱測定を行うことを意味する。この場合の弱測定結果は、|H>か|V>かについての情報を全く含んでいないため、必ずしも用いる必要がない。
以下、図1の受信者側コンピュータ13の記憶動作について説明する。
第1の光子検出器81で光子が検出された場合は、弱測定結果は1、かつ第1の射影測定結果は|H>であると、受信者側コンピュータ13が記憶する。弱測定結果を1とするのは、この場合、第2の出射光路dから光子が出射したと分かるからである。
なお、この弱測定結果は、1/4波長板91に入射する光子の状態が第2のPVM(|R>又は|L>)に属する場合に特に意味があり、1/4波長板91に入射する光子の状態が第1のPVM(|H>又は|V>)に属する場合は必ずしも用いる必要がないデータとなるが、とりあえず1と記憶する。
第2の光子検出器82で光子が検出された場合は、弱測定結果は1、かつ第1の射影測定結果は|V>であると、受信者側コンピュータ13が記憶する。弱測定結果を1とするのは、この場合、第2の出射光路dから光子が出射したと分かるからである。
第3の光子検出器81で光子が検出された場合は、弱測定結果は−1、かつ第1の射影測定結果は|H>であると、受信者側コンピュータ13が記憶する。弱測定結果を−1とするのは、この場合、第1の出射光路cから光子が出射したと分かるからである。
第4の光子検出器85で光子が検出された場合は、弱測定結果は−1、かつ第1の射影測定結果は|V>であると、受信者側コンピュータ13が記憶する。弱測定結果を−1とするのは、この場合、第1の出射光路cから光子が出射したと分かるからである。
図6は、図1の第2の連続測定器10の一構成例を示す。
まず、偏光状態が第1のPVM(|H>又は|V>)に属する光子が入射する場合について説明する。
1/2波長板121に、図1の光子出射器4から出射した光子が入射する。1/2波長板121は、その主軸が水平方向から角度22.5°だけ傾けられていて、|H>を|+>に変換し、|V>を|−>に変換する。
偏光ビームスプリッタ122に、状態|+>又は|−>の光子が入射する。偏光ビームスプリッタ122は、自己に入射する光子の|H>成分と|V>成分の間の位相関係を保ったまま、|H>成分(確率波)を透過させ、|V>成分(確率波)を反射させる。|H>成分は第1の内部光路eを伝搬し、|V>成分は第2の内部光路fを伝播する。
第1の1/2波長板123が、第1の内部光路e上に配置されている。第1の1/2波長板123はその主軸が水平方向から角度θだけ傾けられていて、自己に入射した|H>成分の偏光方向を角度2θだけ回転させる。
第2の1/2波長板124が、第2の内部光路f上に配置されている。第2の1/2波長板124はその主軸が水平方向から角度−θだけ傾けられていて、自己に入射した|V>成分の偏光方向を角度−2θだけ回転させる。
ビームスプリッタ125が、内部光路eとfが交差する位置に配置され、偏光ビームスプリッタ122と共にマッハツェンダ型干渉計を構成している。第1の内部光路eからビームスプリッタ125に入射する成分の偏光状態を|X>、第2の内部光路fからビームスプリッタ125に入射する成分の偏光状態を|Y>とすると、第1の内部光路eを、ビームスプリッタ125を透過させて延長させた第1の出射光路gに出射する光子の偏光状態は|X>−|Y>に比例し、第2の内部光路fを、ビームスプリッタ125を透過させて延長させた第2の出射光路hに出射する光子の偏光状態は|X>+|Y>に比例する。
第2の射影定器11は、第2の出射光路h上に配置された1/4波長板110、1/2波長板111、及び偏光ビームスプリッタ112と、偏光ビームスプリッタ112を透過した光子が入射する第1の光子検出器113と、偏光ビームスプリッタ112で反射された光子が入射する第2の光子検出器114と、第1の出射光路g上に配置された1/4波長板115、1/2波長板116、及び偏光ビームスプリッタ117と、偏光ビームスプリッタ117を透過した光子が入射する第3の光子検出器118と、偏光ビームスプリッタ119で反射された光子が入射する第4の光子検出器119とを備える。
以上において、1/2波長板123及び124の、主軸からの回転角度を表すθが、オブザーバブルσZについての測定強さを表す。
θ=22.5°の場合に、測定強さが最も強くなる。このとき、内部光路e及びfを伝播する成分の偏光状態は、それぞれ1/2波長板123及び124によって共に|+>となり区別がつかなくなることにより最大の干渉が生じる。1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|H>のとき、内部光路aを伝播する成分|+>と内部光路bを伝播する成分|+>とが同位相であるため、両者が強め合う第2の出射光路hのみから状態|+>の光子が出射し、両者が相殺する第1の出射光路gからは光子は出射しない。同様に、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|V>のとき、内部光路eを伝播する成分|+>と内部光路fを伝播する成分|+>とが逆位相であるため、第1の出射光路gのみから状態|+>の光子が出射し、第2の出射光路hからは光子は出射しない。
このため、第1の出射光路gから光子が出射すれば、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|V>だと確実に分かり、第2の出射光路hから光子が出射すれば、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|H>だと確実に分かる。このような測定は射影測定に相当する。なお、|H>と判定することは、オブザーバブルσZの測定結果が1ということであり、|V>と判定することは、オブザーバブルσZの測定結果が−1ということである(σZ=|H><H|−|V><V|)。
但し、θ=22.5°とすると、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が第2のPVM(|R>又は|L>)に属する場合に、第2の射影測定器11において|R>なのか|L>なのかを全く判定できなくなる弊害が生じる。
θ=0°の場合に、測定強さがゼロになる。このとき、内部光路e及びfを伝播する成分の偏光状態はそれぞれ|H>及び|V>と区別がつくため干渉が生じない。このとき、上記弊害は完全に解消されるものの、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|H>であろうと|V>であろうと、第1の出射光路gから光子が出射する確率も、第2の出射光路hから光子が出射する確率も共に50%となり、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|H>なのか|V>なのかについて何ら情報を得ることができない。
0°<θ<22.5°とすることにより、弱測定を実現できる。このとき、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|V>であっても、第2の出射光路hから光子が出射する確率はゼロでなくなる。しかし、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|V>の場合、第2の出射光路hから光子が出射する確率よりも、第1の出射光路gから光子が出射する確率の方が高い。
また、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|H>であっても、第1の出射光路gから光子が出射する確率はゼロでなくなる。しかし、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|H>の場合、第1の出射光路gから光子が出射する確率よりも、第2の出射光路hから光子が出射する確率の方が高い。
こうして、光子が第1の出射光路gから出射するか、第2の出射光路hから出射するかによって、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|H>なのか|V>なのかを正しく言い当てることができる確率をある程度残しつつ、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が第2のPVM(|R>又は|L>)に属する場合に、第2の射影測定器11で|R>なのか|L>なのかを正しく判定できなくなる弊害を抑えることができるという兼ね合いが図られる。
かかる兼ね合いをより一層図るという観点から、θは、0°<θ≦16.875°であることが好ましく、5.625≦θ≦16.875°であることがより好ましい。例えば、θは11.25°とすることができる。
1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|H>又は|V>の場合、弱測定の結果は、光子が第1の出射光路gから出射するのか、第2の出射光路hから出射するのかによって与えられる。光子が第1の出射光路gから出射した場合、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態は|V>であったと判定し、オブザーバブルσZの弱測定結果は−1と判定する。光子が第2の出射光路hから出射した場合、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態は|H>であったと判定し、オブザーバブルσZの弱測定結果は1と判定する。
但し、第1の出射光路gから出射する光子の偏光状態も、第2の出射光路hから出射する光子の偏光状態も|+>又は|−>である。第2の射影測定器11は、その|+>又は|−>の状態の光子に対して|R>であるか|L>であるかの判定を行う訳であるが、これは|H>又は|V>の状態の光子に対して|R>であるか|L>であるかの判定を行うことと全く等価である。いずれも、50%の確率で|R>と判定し、50%の確率で|L>と判定し、元の偏光状態が|+>なのか|−>なのか、あるいは|H>なのか|V>なのかについて何も言うことができない。なお、こういった理由から、出射光路h及びgの各々に、基底{|+>,|−>}を{|H>,|V>}に戻す光学素子を配置するか否かは任意である。
次に、偏光状態が第2のPVM(|R>又は|L>)に属する光子が、1/2波長板121に入射する場合について説明する。
1/2波長板121は、|R>を|L>に変換し、|L>を|R>に変換する。
偏光ビームスプリッタ122に、状態|R>又は|L>の光子が入射する。偏光ビームスプリッタ122は、自己に入射する光子の|H>成分と|V>成分の間の位相関係を保ったまま、|H>成分(確率波)を透過させ、|V>成分(確率波)を反射させる。|H>成分は第1の内部光路eを伝搬し、|V>成分は第2の内部光路fを伝播する。
第1の1/2波長板123が、|H>成分の偏光方向を微小角度2θ(但し、0°<θ<22.5°)だけ回転させる。その偏光状態を|H+ε>と表記する。
第2の1/2波長板124が、|V>成分の偏光方向を微小角度−2θ(但し、0°<θ<22.5°)だけ回転させる。その偏光状態を|V−ε>と表記する。
1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|R>のとき、50%の確率で第2の出射光路hから|H+ε>−i|V−ε>なる状態の光子が出射し、残り50%の確率で第1の出射光路gから|H+ε>+i|V−ε>なる状態の光子が出射する(但し、ここでは簡単のため状態の規格化定数は省略した)。
|H+ε>−i|V−ε>なる状態は左回り円偏光状態|L>に近い左回り楕円偏光状態であるため、簡単のため、状態|L>の光子が第2の出射光路hから第2の射影測定器11に入射する場合を説明する。1/4波長板110が|L>を|−>に変換し、1/2波長板111が|−>を|V>に変換する。なお、1/4波長板110及び1/2波長板111を偏角45°の1つの1/4波長板で兼ねることもできる。
状態|V>の光子は偏光ビームスプリッタ112で反射されて第2の光子検出器114に入射する。こうして、第2の光子検出器114で光子が検出されると、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|R>であると推定できる。
|H+ε>+i|V−ε>なる状態は右回り円偏光状態|R>に近い右回り楕円偏光状態であるため、簡単のため、状態|R>の光子が第1の出射光路gから第2の射影測定器11に入射する場合を説明する。1/4波長板115が|R>を|+>に変換し、1/2波長板116が|+>を|H>に変換する。なお、1/4波長板115及び1/2波長板116を偏角45°の1つの1/4波長板で兼ねることもできる。
状態|H>の光子は偏光ビームスプリッタ117を透過して第3の光子検出器118に入射する。こうして、第3の光子検出器118で光子が検出されると、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|R>であると推定できる。
1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|L>のとき、50%の確率で第2の出射光路hから|H+ε>+i|V−ε>なる状態の光子が出射し、残り50%の確率で第1の出射光路gから|H+ε>−i|V−ε>なる状態の光子が出射する(但し、ここでは簡単のため状態の規格化定数は省略した)。
状態|H+ε>+i|V−ε>は|R>に近いため、簡単のため、状態|R>の光子が第2の出射光路hから第2の射影測定器11に入射する場合を説明する。1/4波長板110が|R>を|+>に変換し、1/2波長板111が|+>を|H>に変換する。状態|H>の光子は偏光ビームスプリッタ112を透過して第1の光子検出器113に入射する。こうして、第1の光子検出器113で光子が検出されると、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|L>であると推定できる。
状態|H+ε>−i|V−ε>は|L>に近いため、簡単のため、状態|L>の光子が第1の出射光路gから第2の射影測定器11に入射する場合を説明する。1/4波長板115が|L>を|−>に変換し、1/2波長板116が|−>を|V>に変換する。状態|V>の光子は偏光ビームスプリッタ117で反射されて第4の光子検出器119に入射する。こうして、第4の光子検出器119で光子が検出されると、1/2波長板121に入射した光子の偏光状態が|L>であると推定できる。
なお、第2の射影測定器11は、状態|H+ε>−i|V−ε>を|R>と判定してしまうこともありうるが、これを|L>と判定する確率の方が高い。即ち、|<L|(|H+ε>−i|V−ε>)|2≒1が|<R|(|H+ε>−i|V−ε>)|2≒0より大きい。また、第2の射影測定器11は、状態|H+ε>+i|V−ε>を|L>と判定してしまうこともありうるが、これを|R>と判定する確率の方が高い。即ち、|<R|(|H+ε>+i|V−ε>)|2≒1が|<L|(|H+ε>+i|V−ε>)|2≒0より大きい。
従って、1/2波長板121に入射する光子の偏光状態が第2のPVM(|R>又は|L>)に属する場合の、第2の射影測定器11での測定結果の正確さは担保される。
なお、1/2波長板121に入射する光子の状態が|R>の場合、光子が第1の出射光路gから出射する確率も、第2の出射光路hから出射する確率も共に50%である。1/2波長板121に入射する光子の状態が|L>の場合も、光子が第1の出射光路gから出射する確率も、第2の出射光路hから出射する確率も共に50%である。
このことは、第2の弱測定器12は、1/2波長板121に入射する光子の偏光状態が第2のPVM(|R>又は|L>)に属する場合には、第2のPVMの全要素に対して不偏な状態を固有状態の集合とする縮退のないオブザーバブルについての弱測定を行うことを意味する。この場合の弱測定結果は、|R>か|L>かについての情報を全く含んでいないため、必ずしも用いる必要がない。
以下、図1の受信者側コンピュータ13の記憶動作について説明する。
第1の光子検出器113で光子が検出された場合は、弱測定結果は1、かつ第2の射影測定結果は|L>であると、受信者側コンピュータ13が記憶する。弱測定結果を1とするのは、この場合、第2の出射光路hから光子が出射したと分かるからである。
なお、この弱測定結果は、1/2波長板121に入射する光子の偏光状態が第1のPVM(|H>又は|V>)に属する場合に特に意味があり、1/2波長板121に入射する光子の偏光状態が第2のPVM(|R>又は|L>)に属する場合は必ずしも用いる必要がないデータとなるが、とりあえず1と記憶する。
第2の光子検出器114で光子が検出された場合は、弱測定結果は1、かつ第2の射影測定結果は|R>であると、受信者側コンピュータ13が記憶する。弱測定結果を1とするのは、この場合、第2の出射光路hから光子が出射したと分かるからである。
第3の光子検出器118で光子が検出された場合は、弱測定結果は−1、かつ第2の射影測定結果は|R>であると、受信者側コンピュータ13が記憶する。弱測定結果を−1とするのは、この場合、第1の出射光路gから光子が出射したと分かるからである。
第4の光子検出器119で光子が検出された場合は、弱測定結果は−1、かつ第2の射影測定結果は|L>であると、受信者側コンピュータ13が記憶する。弱測定結果を−1とするのは、この場合、第1の出射光路gから光子が出射したと分かるからである。
なお、図5及び6の構成は一具体例にすぎない。一般に、第1及び第2の各連続測定器として、第1の出射光路(c;g)から入射する光子、及び第2の出射光路(d;h)から入射する光子の各々に対して、最終測定用PVMを基底とする射影測定を行う射影測定器(8;11)と、自己に入射する光子の光路を、直交する直線偏光成分によって第1の内部光路(a;e)と第2の内部光路(b;f)とに分岐させた後、再び重ね合わせることにより前記第1及び第2の出射光路を画定する干渉計と、前記第1及び第2の各内部光路を伝播する成分の偏光方向が互いに近づくように、第1及び第2の少なくともいずれか一方の内部光路を伝播する成分の偏光方向を回転させる偏光回転子(93,94;123,24)とを備えた量子測定器を用いることができる。干渉計としてはマッハツェンダ型干渉計のみならずサニャック型干渉計等も挙げられる。用いる第1及び第2のPVMに応じて、かかる量子測定器をどのように実現するかは当業者の設計事項である。
以上、実施形態に沿って本発明を説明したが、本発明はこれに限られない。
上記実施形態では、情報を光子の偏光状態にのせる偏光エンコードの例を示したが、光子が第1の時間位置に存在する状態と、この第1の時間位置より後の第2の時間位置に存在する状態との重ね合せ状態を用い、それら2つの成分の位相差に情報をのせる位相エンコードを用いてもよい。
また、情報を担う媒体たる量子系としては、光子に限らず、電子その他の素粒子、天然又は人工の原子、分子、もしくは超伝導体その他の巨視系を用いることもできる。この他、種々の変更、改良、及び組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
以下、本願明細書の記載から抽出される本発明の好ましい態様を付記する。
(付記1)
前記工程(d)が、(d1)受信装置が、前記識別情報群に対応する各量子系についての前記工程(b)での射影測定結果の統計分布から、前記同一の量子状態を推定できるか否か判定する工程と、(d2)前記同一の量子状態を推定できないと判定した場合に、受信装置が、前記識別情報群に対応する各量子系についての前記工程(b)での弱測定結果のアンサンブルを、第1及び第2のいずれの射影測定が行われたかによって分類し、分類されたサブアンサンブル内での平均値を前記弱値として求め、その値によって前記同一の量子状態を推定する工程とを含む量子通信方法。
(付記2)
前記工程(d2)が、(d3)受信装置が、前記弱値から前記同一の量子状態を推定できるか否か判定する工程と、(d4)推定できないと判定した場合に、受信装置が、盗聴の可能性がある旨を送信装置に通知する工程とを含む付記1に記載の量子通信方法。
(付記3)
前記工程(c)では、或る量子状態で送った量子系を複数特定する識別情報群が、同じ量子状態について既に通知した識別情報群が含まない識別情報を含む条件で、受信装置への識別情報群の通知を繰り返し行う量子通信方法。
(付記4)
前記工程(d)が、1つの識別情報群に対応する弱測定結果及び射影測定結果を、他の識別情報群に対応する弱測定結果及び射影測定結果と併合し、併合されて得られた射影測定結果の統計分布及び弱測定結果から得られる弱値を求める工程を含む付記3に記載の量子通信方法。
(付記5)
前記第1及び第2の各連続測定器が、第1の出射光路から入射する光子、及び第2の出射光路から入射する光子の各々に対して、最終測定用PVMを基底とする射影測定を行う射影測定器と、自己に入射する光子の光路を、直交する偏光成分によって第1の内部光路と第2の内部光路とに分岐させた後、再び重ね合わせることにより前記第1及び第2の出射光路を画定する干渉計と、前記第1及び第2の各内部光路を伝播する成分の偏光方向が互いに近づくように、第1及び第2の少なくともいずれか一方の内部光路を伝播する成分の偏光方向を回転させる偏光回転子とを備える量子通信システム。
(付記6)
前記最終測定用PVMとは非直交な要素からなる弱測定用PVMに属する偏光状態の光子が前記干渉計に入射したときは、その偏光状態に応じて、第1の出射光路からの出射確率と第2の出射光路からの出射確率とに偏りが生じる条件で、いずれかの出射光路から、射影測定結果に偏りを生じさせない偏光状態の前記光子が出射する付記5に記載の量子通信システム。
(付記7)
前記最終測定用PVMに属する偏光状態の光子が入射したときは、前記第1及び第2のいずれかの出射光路から、射影測定結果に偏りを生じさせる偏光状態の前記光子が出射する付記5又は6に記載の量子通信システム。
(付記8)
前記最終測定用PVMに属する偏光状態の光子が入射したときの、前記第1の出射光路からの前記光子の出射確率と、前記第2の出射光路からの前記光子の出射確率とが等しい付記7に記載の量子通信システム。