JP2014047157A - 口腔用殺菌組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】口腔内の衛生状態の維持、環境改善が可能で、人体に対する作用が温和な殺菌性の口腔用組成物を提供する。
【解決手段】大黄に含まれる成分であるレインおよびアロエエモジンならびにこれらの配糖体から選ばれた少なくとも1種のアントラキノン誘導体を含有する口腔用組成物。これらのアントラキノン誘導体は大黄、アロエ、またはセンナに由来するものでもよい。組成物は練歯磨き剤、液体歯磨き剤、デンタルゲル、含嗽剤、洗口剤、飴、トローチまたはチューインガムの形態をとりうる。本組成物は歯周病病原菌の1つであるポルフィロモナス・ジンジバリスに対する抗菌活性が高く、歯周病及びその関連疾患の治療剤または予防剤、誤嚥性肺炎の予防剤として使用できる。
【選択図】 図1
【解決手段】大黄に含まれる成分であるレインおよびアロエエモジンならびにこれらの配糖体から選ばれた少なくとも1種のアントラキノン誘導体を含有する口腔用組成物。これらのアントラキノン誘導体は大黄、アロエ、またはセンナに由来するものでもよい。組成物は練歯磨き剤、液体歯磨き剤、デンタルゲル、含嗽剤、洗口剤、飴、トローチまたはチューインガムの形態をとりうる。本組成物は歯周病病原菌の1つであるポルフィロモナス・ジンジバリスに対する抗菌活性が高く、歯周病及びその関連疾患の治療剤または予防剤、誤嚥性肺炎の予防剤として使用できる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、殺菌効果や病原菌生育の抑制効果に優れ、かつ人体に対する作用が温和な口腔用殺菌組成物に関する。
口腔内の衛生状態が悪化すると、虫歯や、歯肉炎、歯槽膿漏などのいわゆる歯周病といった、細菌性の口腔内疾病を引き起こす。特に歯周病は、ほとんどの成人に罹病する可能性があるとされており、高齢化が進む現在における罹病率は益々増加する傾向にある。歯周病の症状としては、歯肉からの出血や、不快な口臭の発生、歯の喪失等が挙げられるが、近年の研究では、歯周病が単に口腔内の局所的疾病に止まらず、全身の各臓器に影響を及ぼすことが報告され、歯周病と多くの成人病との関連性についても注目されている。
歯周病の原因とされている歯周病原菌としては、現在、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、タンネレラ(バクテロイデス)・フォルシチア(Tannerella (Bacteroides) forsythia)、トレポネマ・デンチコラ(Treponema denticola)、プレボテラ・インテルメディア(Prevotella intermedia)、カンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)、フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アクチノミセス・ビスコーサス(Actinomyces viscosus)等が挙げられる。これらはいずれも、歯周ポケット(歯と歯茎の間)の歯垢や歯石中で繁殖する嫌気性細菌である。従って、歯垢や歯石を除去して口腔内をこれらの細菌が繁殖しにくい衛生状態に維持することで歯周病を予防することができる。
特に慢性歯周炎の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスはグラム陰性の偏性嫌気性桿菌で、血小板の凝集を引き起こすタンパクや血液凝固因子を活性化する酵素を産生することが知られており、心血管系疾患を誘発する可能性が指摘されている(下記非特許文献1〜3)。
また、高齢者に多い誤嚥性肺炎は、MRSA(methicillin resistant Staphylococcus aureus)を含む黄色ブドウ球菌、緑膿菌やガンジダ菌が病原菌とされており、介護を必要とする高齢者や身体的に口腔洗浄が不可能な場合等のように衛生状態の悪化した口腔内において、上記細菌類が著しく増殖し、それを無意識下で下気道に誤嚥することで発症するとされている。従って、高齢者の死因として無視できない誤嚥性肺炎も、歯周病と同様に、口腔内を衛生に保つことで予防が期待できる。
従来、口腔内の衛生状態を維持する方法としては、歯磨き、うがい等の口腔洗浄が一般的である。しかし、多くの成人が歯周病を発症している現状からすると、充分な口腔洗浄が行われているとはいえない。特に、歯の表面をブラッシングして行う歯磨きでは、歯周ポケット内の歯垢を完全に取り除くようにブラッシングするのは容易ではなく、水のみで行う「うがい」では、非水溶性物質の除去は困難である。従って、その際に使用する洗浄剤(例えば、歯磨き剤、うがい薬<含嗽剤>)には、単なる清涼感のみを要するのではなく、歯周ポケットに付着する歯周病菌等の殺菌効果、増殖抑制効果、及びその抑制効果の持続性に優れ、さらには日常的に頻度高く使用するものであるから、人体に対して極めて安全なものが強く求められている。
また、歯科治療においても口腔内衛生管理が重要である。例えば、口腔内インプラント治療は最先端医療として広く行われているが、インプラント体周囲組織への真菌類の感染の有無はインプラント手術の予後に大きく影響を与える。そのため感染防御が不可欠であるが、例えば、エタノール等による殺菌は周囲組織中のタンパク質の変性を招きインプラント定着の観点から好ましくない。現在では、一般に洗口剤による口腔内洗浄のほかに、抗生物質の投与が行われているが、抗生物質の投与は、耐性菌の誘導、菌交替等の点で問題があり、抗生物質と同等あるいはそれ以上の抗菌効果を有する安全な口腔用組成物が切望されている。
安全な口腔用組成物として天然物、特に植物由来の抗菌成分を有効成分とする口腔用組成物がこれまでにも提案されている。延命草 (Rabdosia trichocarpa) のジテルペンやユーカリ(Eucalyptus globulus) のフロログルシノール類には強い活性が報告されている (非特許文献4)。さらに、オイゲノールには抗菌、抗真菌作用が報告されており、オイゲノールを主成分として含有するチョウジ油は歯科用薬原料として使用されている。また、ヒノキ抽出エキスを主成分とする口腔内殺菌剤が下記特許文献1に提案され、ヒノキ抽出エキスの主成分であるヒノキチオールは市販の一部の歯磨き剤に利用されている。さらに、決明子抽出を有効成分とする口腔用組成物が下記特許文献2に提案されている。
西原達次「身体を蝕むデンタルプラーク-口腔細菌の全身への影響」日本歯科医師会雑誌 (1999), 51(11), 1101-1104
吉江正弘「歯周炎のリスク診断」日本歯科医師会雑誌 (2005), 57(11), 1140-1147
本田朋之「歯周病が心血管系に及ぼす影響」日本歯科医師会雑誌(2010), 232(3), 176-180
本発明は、口腔内の衛生状態の維持、口腔内環境改善のための口腔用組成物、特に殺菌効果、細菌等の増殖抑制効果に優れ、かつ人体に対する作用が温和な口腔用殺菌組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、歯周病病原細菌に対して成長阻害活性を示す化合物について種々研究を続けた結果、特に生薬「大黄」に含有されるアントラキノン類に、既存の抗歯周病菌物質質のトリクロサンよりも強い、歯周病原菌、特にポルフィロモナス・ジンジバリスに対する成長阻害作用を有する成分が含まれることを見出し、本発明を完成するに至った。
ここに、本発明は次の通りである。
(1)レインおよびアロエエモジンならびにこれらの配糖体から選ばれた少なくとも1種のアントラキノン誘導体を含有することを特徴とする、口腔用組成物。
(1)レインおよびアロエエモジンならびにこれらの配糖体から選ばれた少なくとも1種のアントラキノン誘導体を含有することを特徴とする、口腔用組成物。
(2)前記アントラキノン誘導体が大黄、アロエ、およびセンナから選ばれた少なくとも1種の生薬に由来する、上記(1)に記載の口腔用組成物。
(3)練歯磨き剤、液体歯磨き剤、デンタルゲル、含嗽剤、洗口剤、飴、トローチまたはチューインガムの形態である、上記(1)または(2)に記載の口腔用組成物。
(4)歯周病及びその関連疾患の治療剤または予防剤である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の口腔用組成物。
(5)誤嚥性肺炎の予防剤である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の口腔用組成物。
(6)レインおよびアロエエモジンならびにこれらの配糖体から選ばれた少なくとも1種のアントラキノン誘導体を有効成分とする、抗ポルフィロモナス・ジンジバリス活性を有する口腔用抗菌剤。
本発明の口腔用組成物に含まれるアントラキノン誘導体は、既存の抗生物質よりも歯周病病原細菌に対して強い成長阻害活性を有するが、従来から食用・薬用としても利用されている天然物由来の成分であるため、本発明組成物を歯磨き剤やうがい薬等として常用して一部が体内に吸収されたとしても、身体には著しい有害作用はない。本発明組成物を口腔内リンス(洗口液)として用いることにより、頭頚部外科手術後の口腔衛生管理、及び高齢者の口腔ケアにも有効である。
まず、本発明を完成するに至った経緯を簡単に説明する。
本発明者らは、前述した課題を解決する目的で、わが国における代表的な生薬である株式会社ツムラから市販されている128種のツムラ医療用漢方製剤(エキス顆粒)の抗菌活性について、ペーパーディスク法(実施例に詳述)によるスクリーニングを実施した。この試験に使用した菌株は次の3種類であった。
本発明者らは、前述した課題を解決する目的で、わが国における代表的な生薬である株式会社ツムラから市販されている128種のツムラ医療用漢方製剤(エキス顆粒)の抗菌活性について、ペーパーディスク法(実施例に詳述)によるスクリーニングを実施した。この試験に使用した菌株は次の3種類であった。
1)根面齲蝕原因菌(グラム陽性桿菌)であるアクチノマイセス・ビスコーサス(Actinomyces viscosus)(以下、Av菌とも呼ぶ)、
2)限局性侵襲性歯周炎原因菌(グラム陰性桿菌)であるアグレガチバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)Y4(以下、Aa菌とも呼ぶ)、および
3)慢性歯周炎原因菌(グラム陰性桿菌)であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)ATCC 33277(以下、Pg菌とも呼ぶ)。
2)限局性侵襲性歯周炎原因菌(グラム陰性桿菌)であるアグレガチバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)Y4(以下、Aa菌とも呼ぶ)、および
3)慢性歯周炎原因菌(グラム陰性桿菌)であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)ATCC 33277(以下、Pg菌とも呼ぶ)。
陽性対照として、一般細菌に対する抗菌作用を示すトリクロサンを使用した。トリクロサンは、抗菌剤として石鹸、歯磨き剤など多くの製品に使用されている。なお、本スクリーニング試験において、集菌するまでの寒天平板上での予備培養時間およびサンプル共存下での試験中の本培養時間は、いずれもPg菌で72時間、Av菌およびAa菌で48時間であった。
このスクリーニングの結果、128種類のうち16種類の漢方製剤に活性が認められ、なかでも9種類の製剤はトリクロサンより強い活性を示すことが判明した。これら16種類の製剤はいずれも大黄を含んでおり、大黄の含有量が多いほど、活性が高くなる傾向を示した。最も活性が高かったのは、大黄甘草湯(エキス顆粒)であった。
最も高い活性を示した大黄甘草湯のMIC(最小発育阻止濃度)およびMBC(最小殺菌濃度)を、微量液体希釈法を用いて測定した。小試験管に液体培地850μL、サンプル50μLを分注した。さらに、寒天平板上に72時間前培養したPg菌の集落を無菌的に掻き取り、これをPBSに懸濁して2マクファーランドの濁度となるよう調製し、接種菌液(終濃度約106CFU/mL)とした。この菌液を小試験管に100μL接種し、37℃で48時間嫌気培養した後、菌の発育が肉眼的に認められない最少の大黄甘草湯の濃度をMICとした。被験菌1μLを、イノキュレーションループ(アシスト社)を用いて、寒天培地に接種した。37℃で72時間嫌気培養した後、菌の発育が肉眼的に認められない最少の大黄甘草湯の濃度をMBC値とした。
その結果、Pg菌に対する大黄甘草湯のMICは156.25μg/mLであり、MBCは625μg/mLであった。大黄甘草湯一回量を水100mLに溶かした濃度25mg/mLと比較して、MICは160分の1、MBCは40分の1であった。なお、同じ方法で測定したトリクロサンのMICおよびMBCはいずれも15.625μg/mLであった。
以上の結果から、大黄の成分中に活性物質があることが推定された。そこで、順相TLC(薄層クロマトグラフィー)を用いて、大黄の活性画分について調査した。
具体的には、TLCカラムとしてメルク社製のシリカゲルカラム60F254を使用し、展開溶媒として酢酸エチル:メタノール:水=100:13.5:10を使用した。メタノールに溶解した大黄MeOH抽出物(ウチダ和漢薬より入手した中国産大黄をメタノールで冷浸した抽出液を減圧固化したもの)と水に溶解した大黄甘草湯エキスをTLCに吸着させた後、上記展開溶媒を用いて展開した。展開したTLCをスポットの真ん中で半分に切りとり、片方を活性評価サンプルとし、他方を硫酸噴霧して解析用に用いた。寒天平板上に72時間前培養したPg菌の集落を無菌的に掻き取り、これをPBSに懸濁して1マクファーランド濁度となるよう調整し、接種菌液(終濃度約107〜108CFU/mL)とした。寒天培地上に菌液を0.1mL塗布し、サンプルをのせ、37℃で72時間嫌気培養を行い、活性画分の評価を行った。別にいずれも和光純薬から購入した標品アロエエモジン、クリソファノール、エモジン、レイン、センノシドA、センノシドB、没食子酸およびカテキンを、MeOH抽出物および大黄甘草湯エキスの展開時にTLCに吸着させて展開し、それぞれの物質がどの画分に含まれるかを確認した。
その結果、大黄メタノール抽出物はRf値0.2〜0.53と0.73〜0.9に活性が見られ、大黄甘草湯はRf値0.25〜0.45、0.71〜0.89に活性が見られた。大黄に含まれる上記成分のうち、没食子酸以外の成分は、大黄メタノール抽出物及び大黄甘草湯の活性画分に含まれていることが確認された。
さらに、購入した大黄成分の標品についてペーパーディスク法で抗菌活性を評価したところ、アントラキノン類であるレイン、エモジン、アロエエモジン、クリソファノール、および没食子酸に抗Pg菌活性が見られた。特に、レインおよびアロエエモジンは、陽性対照として用いたトリクロサンよりも非常に高い抗Pg活性を示した。したがって、レインおよびアロエエモジンならびにそれらの配糖体は、抗ポルフィロモナス・ジンジバリス活性を有する口腔用殺菌剤として有用である。
Pg(ポルフィロモナス・ジンジバリス)は歯周病原菌として知られていることから、高い抗Pg活性を示すレインおよびアロエエモジンは、歯周病および関連疾患の予防および治療に効果があると推定される。したがって、本発明に係る「レインおよびアロエエモジンならびにこれらの配糖体から選ばれた少なくとも1種のアントラキノン誘導体を含有することを特徴とする口腔用組成物」は、歯周病及びその関連疾患の治療剤または予防剤として有用であり、さらには、誤嚥性肺炎の予防剤としても有用であると判断される。すなわち、本発明の口腔用組成物は、例えば、歯磨き剤、飴、チューインガム、含嗽剤などとして口腔内の衛生状態の維持や口腔内環境改善に役立ち、また、例えば、デンタルゲル、洗口剤などとして、インプラント治療後や頭頚部外科手術後の口腔衛生管理、高齢者の口腔ケアなどにも使用できる。
本発明の口腔用組成物において有効成分として使用されるレインおよびアロエエモジンはいずれも、下記の構造式に示すようにアントラキノン誘導体である。レインは、レインアンスロンと呼ばれることもある。
レインとアロエエモジンはいずれも、前述したように大黄に含まれる成分であるが、アロエエモジンは他にも同じく生薬として利用されているアロエやセンナにも含まれている。したがって、本発明で使用するレインおよびアロエエモジンは、大黄、アロエおよび/またはセンナの抽出液を分画することにより得たものであってもよい。もちろん、市販されている化学的な純品を使用してもよい。抽出する場合の抽出溶媒として好ましいのは、水、エチルアルコール、酢酸エチル、ヘキサン、超臨界二酸化炭素などである。
また、レインとアロエエモジンはいずれも、その配糖体を使用することができる。使用可能な配糖体の例としては、8−グルコシルレイン、8−グルコシルアロエエモジンなどが挙げられる。配糖体は、口腔内で例えば酸性条件下で分解してレインまたはアロエエモジンを放出する。
本発明の口腔用組成物は、例えば、練歯磨き剤、液体歯磨き剤、デンタルゲル、含嗽剤、洗口剤、飴、トローチまたはチューインガムといった形態をとることができる。有効成分であるレイン、アロエエモジンおよびそれらの配糖体から選ばれたアントラキノン誘導体の口腔用組成物中の濃度は、0.0001〜1wt%(以下、単に%とあるのは、特に指定しない限りwt%)の範囲内とすることが適当である。
口腔用組成物の上記有効成分以外の成分(賦形剤)は、口腔用組成物の製剤にこれまで使用されてきたものを利用することができる。例えば、飴であれば、50〜90%の砂糖、10〜50%の水飴、0〜3%の酸、0.05〜1%の香料等を、チューインガムには、10〜30%のガムベース(植物性樹脂、酢酸ビニル樹脂、エステルガム等)、50〜85%の砂糖、3〜10%の水飴、その他適量の香料、軟化剤を、練歯磨き剤や液体歯磨き剤には、20〜90%の研磨剤(リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム等)、10〜40%の湿潤剤(グリセリン、ソルビット等)、0.5〜2%の界面活性剤(ラウリル硫酸エステル塩等)、0.05〜0.2%の甘味料、0.5〜1.5%の香料、0.2〜1.5%の増粘剤(カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、メチルセルロース等)を配合することができる。その他の形態の口腔用組成物についても、当業者であれば、賦形剤の種類およびその配合割合は周知である。例えば、含嗽剤や洗口剤は、有効成分以外に、エタノール0〜40%、香料0.05〜1%、甘味料0.1〜10%を含有させることができ、残部は水である。トローチは、ブドウ糖および乳糖を合計で0〜99%、結合剤(アラビアゴムなど)を0〜50%、香料0.05〜1%配合することができる。
本発明の口腔用組成物にはその他、う蝕予防効果を付与するために、クロロヘキシジン、ベンザルコニウム等の殺菌剤を添加したり、或いは保存剤や着色剤等を添加することができる。
本発明の口腔用組成物を歯周病およびその関連疾患の予防又は治療用に使用する場合、その服用頻度、服用時期に特に制限はないが、1日に2〜8回程度服用することが好ましい。服用時期は、食事の前後、食間のいずれでもかまわない。誤嚥性肺炎の予防用に使用する場合も同様であるが、特に食事の前後に服用することが好ましい。また、誤嚥を生じた場合、その直後に服用することで肺炎を予防できる可能性がある。
各種濃度の大黄メタノール(MeOH)抽出物、ならびに大黄の成分であるセンノシドA(Sennoside A)、センノシドB(Sennoside B)、カテキン(Cathechin)、没食子酸(gallic acid)、レイン(Rhein)、クリソファノール(Chrysophanol)、エモジン(Emodin)およびアロエエモジン(Aloe-emodin)のそれぞれ標品(いずれも和光純薬製)について、抗ポルフィロモナス・ジンジバリス菌(Pg菌)活性を、次に述べるペーパーディスク法を用いて測定した。
寒天平板培地上でPg菌を72時間前培養し、形成された集落を無菌的に掻き取り、これをPBS溶液に懸濁して、1マクファーランド濁度となるように濃度を調整して、接種菌液(終濃度約107〜108CFU/mL)とした。使用した固形培地は、BHI寒天培地52g/L、酵母エキス5mg/mL、ヘミン5mg/mLを純水(MilliQ水)に溶かし、高圧蒸気滅菌処理を行い、手で触れる温度まで下がってから、ビタミンK0.1μg/mL、5%ウマ溶血液を添加したものであった。
得られた接種菌液0.1mLを寒天培地(上記と同じもの)上に塗布した。ペーパーディスク(直径8mm、厚手、アドバンテック製)を寒天培地上に乗せ、各サンプル(上記標品の場合はジメチルスルホキシドに溶解した1mg/mL濃度の溶液)40μlを添加し、37℃で嫌気培養した。この本培養時間は72時間であった。陽性対照として、トリクロサンの10mg/mL溶液を使用した。
上記の本培養後のペーパーディスクに見られる阻止円の直径を測定し、抗菌活性を評価した。この阻止円の直径が大きいほど、抗菌活性(成長阻害活性)は高い。
試験結果を図1に示す。図1の縦軸は阻止円の直径である。図1からわかるようにレインおよびアロエエモジンは、歯周病原菌の1つであるポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg)に対して非常に高いPg成長阻害活性を示した。したがって、これらは、口腔内の衛生状態の維持、口腔内環境改善に有用であって、歯周病に対する予防および治療作用を示すことが期待できることが判明した。これらはいずれも天然物由来であって、人体に対する作用が温和であるという利点がある。
Claims (6)
- レインおよびアロエエモジンならびにこれらの配糖体から選ばれた少なくとも1種のアントラキノン誘導体を含有することを特徴とする、口腔用組成物。
- 前記アントラキノン誘導体が大黄、アロエ、およびセンナから選ばれた少なくとも1種の生薬に由来する、請求項1に記載の口腔用組成物。
- 練歯磨き剤、液体歯磨き剤、デンタルゲル、含嗽剤、洗口剤、飴、トローチまたはチューインガムの形態である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
- 歯周病及びその関連疾患の治療剤または予防剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
- 誤嚥性肺炎の予防剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
- レインおよびアロエエモジンならびにこれらの配糖体から選ばれた少なくとも1種のアントラキノン誘導体を有効成分とする、抗ポルフィロモナス・ジンジバリス活性を有する口腔用抗菌剤。
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