JP2013502202A - 乳癌関連遺伝子C12orf32 - Google Patents

乳癌関連遺伝子C12orf32 Download PDF

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Abstract

本発明は、C12orf32遺伝子の発現レベルの決定を伴う、癌を検出および診断するための方法を提供する。この遺伝子は、癌細胞と正常細胞を区別することが発見された。さらに本発明は、癌の治療に有用な治療用物質をスクリーニングする方法を提供する。加えて本発明は、癌の治療において有用である、C12orf32遺伝子を標的化するsiRNAを提供する。

Description

優先権
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み入れられる2009年8月24日付で出願された米国特許仮出願第61/275,047号の恩典を主張する。
技術分野 本発明は、癌を検出および診断するための方法、ならびに癌を治療および予防するための方法に関する。
乳癌は、女性において最も一般的な癌であり、2002年の世界的規模での新規症例は115万例と推定されている(非特許文献1)。乳癌の発生率は大多数の国で増えており、その増加率は、これまで発生率が低かった国で大幅に高い(非特許文献1)。乳房X線撮影による早期検出、ならびにタモキシフェンおよびトラスツズマブなどの分子標的薬の開発によって、死亡率は低下し、患者の生活の質は改善されている(非特許文献2)が、進行期の患者、特にホルモン非依存性の腫瘍を有する患者は依然として、非常に限られた治療選択肢しか利用することができない。故に、そのような患者により良い管理を提供するための新規薬物の開発が依然として必要である。
cDNAマイクロアレイ分析により得られる遺伝子発現プロファイルは、個々の癌の詳細な特徴付けを提供しており、このような情報は新規薬物の開発を通じておよび個別化治療の基礎の提供により、個々の患者にさらに適した臨床戦略の選択において有用性を示し得る(非特許文献3)。ゲノム規模での発現分析を通じて、本発明者らは、乳癌(非特許文献4〜6)、滑膜肉腫(非特許文献7〜8)、および腎細胞癌(非特許文献9〜10)の発生および/または進行の一因となる癌遺伝子として機能するいくつかの遺伝子を単離した。そのような分子は、新しい治療法の開発における標的候補であると考えられる。
乳癌治療のための新規の分子標的を同定する試みにおいて、レーザーマイクロビームマイクロダイセクションにより精製された乳癌細胞の詳細な遺伝子発現プロファイルが、cDNAマイクロアレイを用いて分析された(非特許文献11、特許文献1〜3)。これらの研究を通じていくつかの乳癌マーカーが同定されているが、それらを標的化する新たな治療薬は依然として開発中である。それゆえ、抗癌治療のために標的化される新規遺伝子の同定は、引き続き当技術分野における目標である。
WO2005/029067 WO2006/016525 WO2007/013670
Parkin DM, et al. (2005) CA Cancer J Clin 55:74-108 Navolanic PM and McCubrey JA. (2005) Int J Oncol. 27:1341-1344 Petricoin EF 3rd, et al. (2002) Nat Genet. 32 Suppl:474-479 Park JH, et al. (2006) Cancer Res. 66:9186-9195 Shimo A, et al. (2007) Cancer Sci. 98:174-181 Lin ML, et al. (2007) Breast Cancer Res. 9, R17 Nagayama S, et al. (2004) Oncogene 23:5551-5557 Nagayama S, et al. (2005) Oncogene 24:6201-6212 Togashi A, et al. (2005) Cancer Res. 65:4817-4826 Hirota E, et al. (2006) Int J Oncol. 29:799-827 Nishidate T et al. (2004) Int J Oncol. 25:797-819
本発明は、癌細胞におけるC12orf32遺伝子の特異的発現パターンの発見に関する。
本発明を通じて、C12orf32遺伝子が、ヒト腫瘍、より具体的には乳房腫瘍において、高頻度に上方制御されていることが明らかにされた。さらに、低分子干渉RNA(siRNA)によるC12orf32遺伝子の抑制が、乳癌細胞の増殖抑制および/または細胞死をもたらすことから、この遺伝子はヒトの乳癌に対する新規の治療標的として役立ち得る。
本明細書において同定されるC12orf32遺伝子ならびにその転写産物および翻訳産物は、乳癌に対するマーカーとして、および癌遺伝子標的として診断に有用であり、癌の症状を治療または緩和するために、これらの発現および/または活性を変化させることができる。同様に、試験物質への曝露により生じるC12orf32遺伝子発現の変化を検出することによって、癌を治療または予防するための様々な剤を同定することができる。
したがって本発明の目的は、組織試料などの対象由来の生体試料におけるC12orf32遺伝子の発現レベルを決定することにより、対象における乳癌に対する素因を診断または決定するための方法を提供することである。正常対照レベルと比較した当該遺伝子の発現レベルの増加は、その対象が乳癌に罹患しているか、または乳癌を発症するリスクを有することを示す。
本発明の文脈において、「対照レベル」という語句は、対照試料において検出されるC12orf32遺伝子の発現レベルを意味し、正常対照レベルおよび癌対照レベルの両方を包含する。対照レベルは、単一の参照集団に由来する単一の発現パターンまたは複数の発現パターンから算出された平均値であってもよい。または、対照レベルは、以前に試験された細胞に由来する発現パターンのデータベースであってもよい。「正常対照レベル」という語句は、正常な健常個体または癌に罹患していないことが公知である個体集団において検出されるC12orf32遺伝子の発現レベルを意味する。正常な個体とは、乳癌の臨床症状が無い個体である。正常対照レベルは、非癌組織から得られた正常細胞を用いて決定することができる。「正常対照レベル」はまた、乳癌に罹患していないことが分かっている個体または集団の正常な健常組織または健常細胞において検出されるC12orf32遺伝子の発現レベルであってもよい。一方、「癌対照レベル」という語句は、乳癌に罹患している個体または集団の癌組織または癌細胞において検出されるC12orf32遺伝子の発現レベルを意味する。
試料中で検出されるC12orf32遺伝子の発現レベルが正常対照レベルと比較して上昇している場合、(その試料を得た)対象が乳癌に罹患しているか、または乳癌を発症するリスクを有することが示される。
または、試料中のC12orf32遺伝子の発現レベルを、C12orf32遺伝子の癌対照レベルと比較することもできる。ある試料の発現レベルと癌対照レベルが類似している場合、(その試料を得た)対象が癌に罹患しているか、または癌を発症するリスクを有することが示される。
本明細書において、例えば対照レベルと比較して10%、25%、もしくは50%、または少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも0.5倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、もしくは少なくとも10倍、もしくはそれ以上、遺伝子発現が増加している場合、遺伝子発現レベルは「変化した」とみなされる。C12orf32遺伝子の発現レベルは、試料中の遺伝子転写物に対する核酸プローブのハイブリダイゼーション強度の検出を用いて決定することができる。
本発明の文脈において、対象由来の組織試料は、試験対象、例えば癌を有することが公知であるか、または癌を有すると推測される患者から得られる任意の組織であってよい。例えば、組織は上皮細胞を含んでもよい。より具体的には、組織は癌上皮細胞であってよい。
C12orf32タンパク質を発現する試験細胞と試験物質とを接触させる段階、およびC12orf32遺伝子の発現レベルまたは遺伝子産物であるC12orf32タンパク質の活性を決定する段階により、C12orf32タンパク質の発現または活性を阻害する物質を同定するための方法を提供することが、本発明の別の目的である。試験細胞は癌性上皮細胞などの上皮細胞であってもよい。試験物質の非存在下での対照レベルと比べた遺伝子の発現レベルまたはその遺伝子産物の活性の減少は、当該試験物質を用いて乳癌の症状を低減できることを示す。
本発明はまた、C12orf32遺伝子の転写産物または翻訳産物に結合する少なくとも一つの検出試薬を含むキットを提供する。
C12orf32遺伝子またはその産物を標的とする癌の治療法のための方法を提供することが本発明のさらに別の目的である。本発明の治療方法は、アンチセンス組成物を対象に投与する段階を含む、対象における乳癌を治療または予防するための方法を含む。本発明に関して、アンチセンス組成物はC12orf32遺伝子の発現を低減する。例えば、アンチセンス組成物は、C12orf32遺伝子配列に相補的なヌクレオチドを含むことができる。あるいは、本方法は、二本鎖分子(例えば、siRNA)組成物を対象に投与する段階を含むことができる。本発明に関して、二本鎖分子(例えば、siRNA)組成物はC12orf32遺伝子の発現を低減する。さらに別の方法において、対象における乳癌の治療または予防は、リボザイム組成物を対象に投与することにより行うことができる。本発明に関して、核酸特異的なリボザイム組成物はC12orf32遺伝子の発現を低減する。
その目的のために、本発明者らは、C12orf32遺伝子に対するsiRNAの阻害効果を確認した。具体的には、siRNAによる癌細胞の細胞増殖の阻害を実施例の項で実証する。本明細書におけるデータは、乳癌の好ましい治療標的としてのC12orf32遺伝子の有用性を実証する。したがって、本発明はまた、C12orf32遺伝子に対するsiRNAとして働く二本鎖分子および該二本鎖分子を発現するベクターを提供する。
本明細書において記述される方法の一つの利点は、臨床的に顕性の乳癌の症状が検出される前にこの疾患が同定されるということである。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から、および特許請求の範囲から明らかであろう。
当業者は、本発明の一つまたは複数の局面が特定の目的を満たすことができる一方、一つまたは複数の他の局面が他の特定の目的を満たすことができることを理解するであろう。各目的は、全ての点が、等しく本発明のすべての局面に当てはまらない場合がある。したがって、前述の目的は、本発明の任意の一局面に関して択一的に考慮することができる。本発明のこれらおよびその他の目的および特徴は、添付の図面および実施例と併せて以下の詳細な説明を読めば、さらに十分に明らかになるであろう。しかし、前述の本発明の概要および以下の詳細な説明はいずれも好ましい態様のものであり、本発明または本発明のその他の代替的な態様を限定するものではないことが理解されるべきである。
本発明は、以下の発明を提供する。
[1]対象由来の生体試料におけるC12orf32遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む、対象における癌または癌発症の素因を診断するための方法であって、該遺伝子の正常対照レベルと比較した該発現レベルの増大が、該対象が癌に罹患しているまたは癌を発症するリスクがあることを示し、該発現レベルが、以下からなる群より選択される方法によって決定される、方法:
(a)C12orf32遺伝子のmRNAを検出する方法; (b)C12orf32遺伝子によってコードされるタンパク質を検出する方法;および
(c)C12orf32遺伝子によってコードされるタンパク質の生物学的活性を検出する方法。
[2]前記発現レベルが正常対照レベルよりも少なくとも10%高い、[1]の方法。
[3]癌が乳癌である、[1]の方法。
[4]C12orf32遺伝子の転写産物または翻訳産物に結合する検出試薬を含む、癌を検出するためのキット。
[5]以下の段階を含む、癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)C12orf32ポリペプチドまたはその断片と試験物質とを接触させる段階;
(b)前記ポリペプチドまたは断片と試験物質との間の結合を検出する段階;および
(c)前記ポリペプチドまたは断片に結合する試験物質を、癌を治療または予防するための候補物質として、選択する段階。
[6]以下の段階を含む、癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)C12orf32ポリペプチドまたはその断片と試験物質とを接触させる段階;
(b)前記ポリペプチドまたは断片の生物学的活性を検出する段階;
(c)前記ポリペプチドまたは断片の生物学的活性を、試験物質の非存在下で検出された生物学的活性と比較する段階;および (d)前記ポリペプチドの生物学的活性を抑制する試験物質を、癌を治療または予防するための候補物質として選択する段階。
[7]生物学的活性が細胞増殖活性である、[6]の方法。
[8]以下の段階を含む、癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)C12orf32遺伝子を発現する細胞と試験物質とを接触させる段階;
(b)C12orf32遺伝子の発現レベルを検出する段階;
(c)前記発現レベルを、試験物質の非存在下で検出された発現レベルと比較する段階;および (d)前記発現レベルを低減する試験物質を、癌を治療または予防するための候補物質として選択する段階。
[9]以下の段階を含む、癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)C12orf32遺伝子の転写調節領域および該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターを導入した細胞と試験物質とを接触させる段階; (b)前記レポーター遺伝子の発現レベルまたは活性を測定する段階;
(c)前記発現レベルまたは活性を、試験物質の非存在下で検出された発現レベルまたは活性と比較する段階;ならびに (d)前記発現レベルまたは活性を低減する試験物質を、癌を治療または予防するための候補物質として選択する段階。
[10]センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖分子であって、センス鎖が、SEQ ID NO:8、9または14からなる標的配列に対応するヌクレオチド配列を含み、かつアンチセンス鎖が前記標的配列に相補的なヌクレオチド配列を含み、センス分子、および該二本鎖分子が、C12orf32遺伝子を発現している細胞に導入された場合に、前記遺伝子の発現を阻害する、二本鎖分子。
[11]センス鎖が標的配列の位置でアンチセンス鎖とハイブリダイズして、長さが19〜25ヌクレオチド対である二本鎖分子を形成する、[10]の二本鎖分子。
[12]一本鎖ヌクレオチド配列によって連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む単一のポリヌクレオチド構築物である、[10]または[11]の二本鎖分子。
[13]一般式5'−[A]−[B]−[A']−3'を有する二本鎖分子であって、式中、[A]は、SEQ ID NO:8、9および14からなる群より選択される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖であり、[B]は、3〜23個のヌクレオチドからなる一本鎖であり、かつ[A']は、前記標的配列に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖である、[12]の二本鎖分子。
[14][10]〜[13]のいずれか一つの、二本鎖分子をコードするベクター。
[15]センス鎖核酸およびアンチセンス鎖核酸を含むポリヌクレオチドの組み合わせのそれぞれを含むベクターであって、センス鎖核酸が、SEQ ID NO:8、9または14に対応するヌクレオチド配列を含み、かつアンチセンス鎖核酸が、センス鎖に相補的な配列を含み、センス鎖およびアンチセンス鎖の転写物が互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成し、かつ該ベクターが、C12orf32遺伝子を発現している細胞に導入された場合に、細胞増殖を阻害する、ベクター。
[16]C12orf32遺伝子に対する二本鎖分子または該二本鎖分子をコードするベクターの薬学的有効量を対象に投与する段階を含む、対象において癌を治療または予防する方法であって、該二本鎖分子が、C12orf32遺伝子を発現している細胞に導入された場合に、C12orf32遺伝子の発現を阻害する、方法。
[17]二本鎖分子が[10]〜[13]のいずれか一つのものであり、ベクターが[14]または[15]のものである、[16]の方法。
[18]癌が乳癌である、[16]または[17]の方法。
[19]二本鎖分子が、C12orf32遺伝子を発現している細胞に導入された場合に、C12orf32遺伝子の発現を阻害する、C12orf32遺伝子に対する二本鎖分子または該二本鎖分子をコードするベクターの薬学的有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、癌を治療または予防するための組成物。
[20]二本鎖分子が[10]〜[13]のいずれか一つのものであり、ベクターが[14]または[15]のものである、[19]の組成物。
[21]癌が乳癌である、[19]または[20]の組成物。
[22]以下の段階によって得られるC12orf32タンパク質の断片:
(a)C12orf32タンパク質を発現するベクターを、乳癌細胞株またはCOS−7細胞にトランスフェクトする段階、および
(b)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定された翻訳産物の分子量が、約27kDa、23kDa、および16kDaからなる群より選択される、翻訳産物を前記細胞から回収する段階。
本発明のさまざまな局面および用途は、以下に続く図面の簡単な説明ならびに本発明の詳細な説明およびその好ましい態様を考慮することによって当業者に明らかになるであろう。
図1は、実施例においてアッセイされた臨床乳癌細胞および正常ヒト臓器におけるC12orf32の発現パターンを示す(パート(A)〜(C))。 (D)部は、C12orf32のORF領域に対応する領域のRT−PCRおよびマッピング分析の結果を示す。 図2は、乳癌細胞株およびそのトランスフェクタントのノーザンブロット分析の結果を示す(パート(A)〜(B))。 図3は、アフィジコリン処理による細胞周期の同調後のT47D細胞を用いたC12orf32発現のFACS(パート(A))、ウエスタンブロット(パート(B))およびRT−PCR(パート(C))分析の結果を示す。 パート(D)は、T47D細胞におけるC12orf32の免疫細胞染色の結果を示す。 図4は、実施例における乳癌細胞の増殖に対するsiRNAによるC12orf32ノックダウンの効果を示す(パート(A)〜パート(E))。パート(A)およびパート(B)は、2つのsiRNA(si−#2およびsi−#3)が対照siRNA構築物(si−対照)と比べて、C12orf32発現を有意に抑制したことを示す(上パネル)。ノックダウン効果と一致して、MTT(中央のパネル)およびコロニー形成アッセイ法(下パネル)から、si−#2およびsi−#3(MTTアッセイ法:HBC4)による有意な増殖抑制効果が明らかにされた。パート(C)は、si−#2配列において4塩基の置換を含むsiRNA(si−C12orf32−ミスマッチ(si−mis))には、C12orf32の発現に対するまたはT47D細胞の細胞増殖に対する抑制効果がないことが見出されたことを示す。パート(D)は、アポトーシス細胞集団の割合を測定するためのsiRNA−オリゴヌクレオチドを用いた蛍光活性化細胞選別(FACS)分析を示す。パート(E)は、抗C12orf32抗体を用いてウエスタン分析によりC12orf32タンパク質のノックダウンが確認されたことを示す。
態様の説明
本明細書において説明した方法および材料と同様または同等の任意の方法および材料が、本発明の態様の実践または試験に使用され得るが、好ましい方法、装置および材料をこれから説明する。しかし、本材料および方法を説明する前に、本発明が、本明細書において説明した特定のサイズ、形状、寸法、材料、方法論、プロトコルなどに限定されないことを理解されたい。なぜなら、これらは常法の実験および最適化に従って変更され得るからである。また、この説明で使用される専門用語は単に特定のバージョンまたは態様を説明する目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲でのみ限定される本発明の範囲を限定することは意図されていないことも理解されたい。
本明細書に記載した各刊行物、特許、または特許出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に明確に組み入れられる。しかし、本明細書のいかなる内容も、先行発明によって、そのような開示に本発明が先行しないとの承認と解釈されるものではない。
別段の定義がない限り、本明細書において使用される技術的および科学的用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先する。
定義
本明細書において使用される単語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別段の具体的な指示が無い限り、「少なくとも1つの」を意味する。ある物質(例えば、ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドなど)に関して使用される「単離された」および「精製された」という用語は、その物質が、天然の供給源において、それ以外に含まれ得る少なくとも1種類の物質を実質的に含まないことを示す。したがって、単離または精製された抗体とは、タンパク質(抗体)が由来する細胞もしくは組織供給源由来の糖質、脂質、もしくは他の混入タンパク質などの細胞材料を実質的に含まないか、または化学的に合成される場合は、化学的前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まない抗体を意味する。「細胞材料を実質的に含まない」という用語は、そこからポリペプチドが単離されるかまたは組換えにより作製される細胞の細胞成分から分離されている、ポリペプチドの調製物を含む。したがって、細胞材料を実質的に含まないポリペプチドには、(乾燥重量で)約30%未満、約20%未満、約10%未満、または約5%未満の異種タンパク質(本明細書においては「混入タンパク質」とも呼ばれる)を有するポリペプチド調製物が含まれる。ポリペプチドが組換えによって作製される場合も同様に、好ましくは培地を実質的に含まず、培地がタンパク質調製物の体積の約20%未満、約10%未満、または約5%未満であるポリペプチド調製物が含まれる。ポリペプチドが化学合成によって作製される場合、好ましくは化学的前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まず、タンパク質の合成に関与する化学的前駆物質または他の化学物質が、タンパク質調製物の体積の(乾燥重量で)約30%未満、約20%未満、約10%未満、または約5%未満であるポリペプチド調製物が含まれる。特定のタンパク質調製物が単離または精製されたポリペプチドを含むことは、例えばそのタンパク質調製物のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびゲルのクーマシーブリリアントブルー染色などに続く、単一バンドの出現によって示すことができる。好ましい態様において、本発明の抗体およびポリペプチドは、単離または精製される。cDNA分子などの「単離された」または「精製された」核酸分子は、組換え技術によって作製された場合、他の細胞材料もしくは培地を実質的に含まないか、または化学的に合成された場合、化学的前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まない。好ましい態様において、本発明の抗体をコードする核酸分子は、単離または精製される。
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを意味する。これらの用語は、1つもしくは複数のアミノ酸残基が、修飾残基または対応する天然アミノ酸の人工の化学的模倣体などの非天然の残基であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然のアミノ酸ポリマーに適用される。
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を意味する。天然アミノ酸は、遺伝コードによってコードされているもの、ならびに細胞において翻訳後に修飾されたもの(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−リン酸化セリン)である。「アミノ酸類似体」という語句は、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造(α炭素が、水素、カルボキシ基、アミノ基、およびR基に結合されている)を有するが、修飾されたR基または修飾された主鎖を有する化合物を意味する(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン、スルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)。「アミノ酸模倣体」という語句は、異なる構造を有するが、通常のアミノ酸と同様の機能を有する化学化合物を意味する。
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC−IUB生化学命名法委員会により推奨される、一般に公知の三文字記号または一文字記号によって示され得る。
「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、および「核酸分子」という用語は、別段の具体的な指示が無い限り、互換的に使用され、かつアミノ酸と同様に、一般に認められている一文字表記によって示される。アミノ酸と同様に、これらは、天然の核酸ポリマーおよび非天然の核酸ポリマーの双方を包含する。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸、または核酸分子は、DNA、RNA、またはその組合せから構成されてよい。
別段の定義がない限り、「癌」という用語は、C12orf32遺伝子を過剰発現している癌、特に、乳癌を意味する。
本明細書において使用される場合、「二本鎖分子」という用語は、例えば、低分子干渉RNA(siRNA;例えば、二本鎖リボ核酸(dsRNA)または低分子ヘアピンRNA(shRNA))および低分子干渉DNA/RNA(siD/R−NA;例えば、DNAおよびRNAの二本鎖キメラ(dsD/R−NA)またはDNAおよびRNAの低分子ヘアピンキメラ(shD/R−NA))を含む、標的遺伝子の発現を阻害する核酸分子を意味する。
本明細書において使用される場合、「標的配列」という用語は、この配列を標的化する二本鎖核酸分子が、標的遺伝子を発現している細胞に導入された場合に、標的遺伝子のmRNA全体の翻訳の抑制をもたらすと考えられる、標的遺伝子のmRNAまたはcDNA配列内のヌクレオチド配列を意味する。遺伝子のmRNAまたはcDNA配列内のヌクレオチド配列は、標的配列に対応する配列を含む二本鎖分子が、該遺伝子を発現している細胞において該遺伝子の発現を阻害する場合に、標的配列であると決定することができる。遺伝子発現を抑制する二本鎖ポリヌクレオチドは、標的配列および2〜5ヌクレオチド長を有する3'オーバーハング(例えば、uu)からなり得る。
標的配列がcDNA配列によって示される場合、二本鎖cDNAのセンス鎖配列、すなわち、mRNA配列がDNA配列に変換される配列が、標的配列を規定するために用いられる。二本鎖分子は、標的配列に対応する配列を有するセンス鎖および標的配列に相補的な配列を有するアンチセンス鎖から構成され、アンチセンス鎖は相補的配列の位置でセンス鎖とハイブリダイズして、二本鎖分子を形成する。
本明細書において、「に対応する」という語句は、二本鎖分子のセンス鎖を構成する核酸種にしたがって標的配列を変換することを意味する。例えば、標的配列がDNA配列で示され、かつ二本鎖分子のセンス鎖がRNA領域を有する場合、RNA領域内の塩基「t」は塩基「u」と置き換えられる。その一方で、標的配列がRNA配列で示され、かつ二本鎖分子のセンス鎖がDNA領域を有する場合、DNA領域内の塩基「u」は「t」と置き換えられる。
同様に、二本鎖分子のアンチセンス鎖の標的配列に相補的な配列は、アンチセンス鎖を構成する核酸種にしたがって規定することができる。
二本鎖分子は、標的配列に対応する配列およびそれに相補的な配列に加えて、2〜5ヌクレオチド長を有する1つもしくは2つの3'オーバーハング(例えば、uu)および/またはセンス鎖とアンチセンス鎖とを連結してヘアピン構造を形成するループ配列を持ち得る。
本明細書において使用される場合、「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を妨げる二本鎖RNA分子を意味する。DNAがRNA転写の鋳型であるものを含め、siRNAを細胞へ導入する標準的な技術が使用される。siRNAは、C12orf32センス核酸配列(「センス鎖」とも称される)、C12orf32アンチセンス核酸配列(「アンチセンス鎖」とも称される)またはその両方を含む。単一の転写産物が標的遺伝子のセンス核酸配列および相補的なアンチセンス核酸配列の両方を有する、例えば、ヘアピン型などのsiRNAを構築することもできる。siRNAはdsRNAまたはshRNAのいずれかであってよい。
本明細書において使用される場合、「dsRNA」という用語は、互いに相補的な配列を含み、かつ相補的配列を介してアニーリングして二本鎖RNA分子を形成した、2つのRNA分子の構築物を意味する。2つの鎖のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列のタンパク質コード配列より選択される「センス」RNAまたは「アンチセンス」RNAだけでなく、標的遺伝子の非コード領域より選択されるヌクレオチド配列を有するRNA分子も含んでよい。
「shRNA」という用語は、本明細書において使用される場合、互いに相補的な第1の領域および第2の領域、すなわちセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、ステムループ構造を有するsiRNAを意味する。これらの領域の相補性の程度および向きは、塩基対合がそれらの領域の間で生じるのに十分であり、第1の領域および第2の領域はループ領域によって連結され、このループは、ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の間で塩基対合が無いことに起因する。shRNAのループ領域は、センス鎖とアンチセンス鎖の間に介在する一本鎖領域であり、「介在性一本鎖」とも呼ばれ得る。
本明細書において使用される場合、「siD/R−NA」という用語は、RNAおよびDNAの両方から構成される二本鎖ポリヌクレオチド分子を意味し、RNAおよびDNAのハイブリッドおよびキメラを含み、標的mRNAの翻訳を妨げる。本明細書において、ハイブリッドとは、DNAから構成されるポリヌクレオチドおよびRNAから構成されるポリヌクレオチドが互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成している分子を示すのに対し、キメラとは、二本鎖分子を構成する鎖の一方または両方がRNAおよびDNAを含み得ることを示す。siD/R−NAを細胞に導入する標準的技術が使用される。siD/R−NAは、センス核酸配列(「センス鎖」とも呼ばれる)、アンチセンス核酸配列(「アンチセンス鎖」とも呼ばれる)、または両方を含む。siD/R−NAは、単一の転写物が標的遺伝子に由来するセンス核酸配列および相補的なアンチセンス核酸配列の両方を有するように、例えばヘアピン型で構築され得る。siD/R−NAは、dsD/R−NAまたはshD/R−NAのいずれかであってよい。
本明細書において使用される場合、「dsD/R−NA」という用語は、互いに相補的な配列を含み、かつ相補的配列を介してアニーリングして二本鎖ポリヌクレオチド分子を形成した、2つの分子の構築物を意味する。2つの鎖のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列のタンパク質コード配列より選択される「センス」ポリヌクレオチド配列または「アンチセンス」ポリヌクレオチド配列だけでなく、標的遺伝子の非コード領域より選択されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドも含んでよい。dsD/R−NAを構築する2つの分子のうち一方または両方が、RNAおよびDNAの両方から構成されるか(キメラ分子)、あるいは、これらの分子のうち一方がRNAから構成され、他方がDNAから構成される(ハイブリッド二本鎖)。
「shD/R−NA」という用語は、本明細書において使用される場合、互いに相補的な第1の領域および第2の領域、すなわちセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、ステムループ構造を有するsiD/R−NAを意味する。これらの領域の相補性の程度および向きは、塩基対合がそれらの領域の間で生じるのに十分であり、第1の領域および第2の領域はループ領域によって連結され、このループは、ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の間で塩基対合が無いことに起因する。shD/R−NAのループ領域は、センス鎖とアンチセンス鎖の間に介在する一本鎖領域であり、「介在性一本鎖」とも呼ばれ得る。
本明細書において使用される場合、「単離された核酸」は、その本来の環境(例えば、天然に存在するなら自然環境)から取り出された核酸であり、したがって、その自然状態から総合的にみて変更された核酸である。本発明に関して、単離された核酸の例としては、DNA、RNA、およびそれらの誘導体が挙げられる。
遺伝子およびポリペプチド
本発明は、乳癌患者由来の細胞におけるC12orf32遺伝子の発現上昇の発見に部分的に基づいている。ヒトC12orf32遺伝子のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:1に示されている。そのようなヌクレオチド配列は、GenBankアクセッション番号NM_031465としても利用可能である。本明細書において、C12orf32遺伝子はヒトC12orf32遺伝子の対立遺伝子変異体、ならびに非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシを含むがこれらに限定されない他の動物のものを包含し、さらに、対立遺伝子変異体およびC12orf32遺伝子に対応するものとして他の動物で見出された遺伝子を含む。
本発明において、乳癌細胞株において2種類の転写物変異体が過剰発現されることが確認された。これらの転写物変異体のcDNA配列はそれぞれ、SEQ ID NO:18(GenBankアクセッション番号NR_027365.1)およびSEQ ID NO:19(GenBankアクセッション番号NR_027363.1)に示されている。本明細書において、上記の変異体を含む、C12orf32遺伝子のあらゆる転写物変異体がC12orf32遺伝子のmRNAまたは転写産物に含まれる。また、そのような転写物変異体のcDNA配列もC12orf32遺伝子に含まれる。
ヒトC12orf32遺伝子にコードされるアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示されており、GenBankアクセッション番号NM_031465として利用可能でもある。本発明の文脈において、C12orf32遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質は「C12orf32」と称され、「C12orf32ポリペプチド」または「C12orf32タンパク質」と称されることもある。
実施例において実証されるように、ウエスタンブロット分析により、C12orf32遺伝子のオープンリーディングフレームから予測されたタンパク質に対応するおよそ34kDaのポリペプチドから3つの小サイズのポリペプチド(およそ27kDa、23kDa、および16kDa)が産生されることが示唆される。それらの小サイズのポリペプチドのうち、乳癌細胞株において23kDaのポリペプチドおよび16kDaのポリペプチドが特に過剰発現されることが確認された。したがって、それらの小サイズのポリペプチドもまた、C12orf32遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質に含まれる。
本発明の一局面によれば、C12orf32タンパク質にはそれぞれ機能的等価物も含まれる。本明細書において、タンパク質の「機能的等価物」は、そのタンパク質と等価な生物学的活性を有するポリペプチドである。すなわち、C12orf32タンパク質の生物学的能力を保持する任意のポリペプチドを、本発明における各タンパク質のそのような機能的等価物として使用することができる。
C12orf32タンパク質の生物学的活性には、例えば、癌細胞増殖活性が含まれる。
このような機能的等価物には、1つまたは複数のアミノ酸が、C12orf32タンパク質の天然のアミノ酸配列に対して置換、欠失、付加、または挿入されているものが含まれる。または、当該ポリペプチドは、C12orf32タンパク質の配列に対して少なくとも約80%の相同性(配列同一性とも称される)、より好ましくは少なくとも約90%〜95%の相同性、さらにより好ましくは少なくとも約96%〜99%の相同性を有するアミノ酸配列を含むものであってもよい。他の態様において、当該ポリペプチドはストリンジェントな条件下で、C12orf32遺伝子の天然のヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ得る。
「ストリンジェントな(ハイブリダイゼーション)条件」という語句は、ある核酸分子が、典型的には核酸の複合混合物中で、その標的配列にハイブリダイズするが、他の配列には検出可能な程度にはハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる状況において多様である。配列が長いほど、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範な指針は、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Probes, 「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993)において見出される。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度およびpHにおける特定の配列の熱融点(Tm)より約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、(規定のイオン強度、pH、および核酸濃度下で)標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは50%のプローブが平衡状態で占有される)。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤を添加することによって実現してもよい。選択的ハイブリダイゼーションまたは特異的ハイブリダイゼーションの場合、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドのハイブリダイゼーションの10倍である。以下のような例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が可能である:50%ホルムアミド、5xSSC、および1%SDS、42℃でインキュベーション、または5xSSC、1%SDS、65℃でインキュベーションし、0.2xSSCおよび0.1%SDS中、50℃で洗浄。
本発明に関して、当業者は、ヒトC12orf32タンパク質に対して機能的に等価なポリペプチドをコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーション条件を常法にしたがって選択することができる。例えば、ハイブリダイゼーションは「Rapid−hyb緩衝液」(Amersham LIFE SCIENCE)を用いて68℃で30分またはそれ以上の間プレハイブリダイゼーションを行い、標識プローブを添加し、68℃で1時間またはそれ以上の間加温することにより実施することができる。以下の洗浄段階は、例えば、低ストリンジェント条件で行うことができる。例示的な低ストリンジェント条件には、42℃、2×SSC、0.1% SDS、好ましくは50℃、2×SSC、0.1% SDSが含まれ得る。高ストリンジェンシー条件がしばしば好適に使用される。例示的な高ストリンジェンシー条件には、室温で20分間、2×SSC、0.01% SDS中での3回の洗浄、次いで37℃で20分間、1×SSC、0.1% SDS中での3回の洗浄、および50℃で20分間、1×SSC、0.1% SDS中での2回の洗浄が含まれ得る。しかし、温度および塩濃度などのいくつかの要因がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える可能性があり、当業者はそれらの要因を適切に選択して必要なストリンジェンシーを達成することができる。
一般的に、タンパク質における一つ、二つ、またはそれ以上のアミノ酸の改変は、タンパク質の機能に影響を与えない。実際に、変異タンパク質または改変タンパク質(すなわち、一つ、二つ、またはいくつかのアミノ酸残基が、置換、欠失、挿入、および/または付加により改変されたアミノ酸配列から構成されるペプチド)は、元の生物学的活性を保持することが知られている(Mark et al., Proc Natl Acad Sci USA 81: 5662-6 (1984); Zoller and Smith, Nucleic Acids Res 10:6487-500 (1982); Dalbadie-McFarland et al., Proc Natl Acad Sci USA 79: 6409-13 (1982))。したがって、当業者は、単一のアミノ酸もしくはわずかな割合のアミノ酸を変更する、アミノ酸に対する個々の付加、欠失、挿入、もしくは置換、またはタンパク質の改変によって類似の機能を有したタンパク質を生ずる「保存的改変」であると見なされる、アミノ酸に対する個々の付加、欠失、挿入、もしくは置換が、本発明に関して許容されることを認識するであろう。したがって、一態様において、本発明のペプチドは、ヒトC12orf32配列において一つ、二つまたはさらにそれ以上のアミノ酸が付加、挿入、欠失、および/または置換されているアミノ酸配列を有することができる。
タンパク質の活性が保持される限り、アミノ酸変異の数は特に限定されない。しかしながら、アミノ酸配列の5%以下を変更することが一般に好ましい。したがって、好ましい態様において、そのような変異体において変異されるアミノ酸の数は、一般に30アミノ酸またはそれ以下、好ましくは20アミノ酸またはそれ以下、より好ましくは10アミノ酸またはそれ以下、より好ましくは5または6アミノ酸またはそれ以下、およびさらにより好ましくは3または4アミノ酸またはそれ以下である。
変異されるアミノ酸残基は、アミノ酸側鎖の特性が保存された異なるアミノ酸へ変異されること(保存的アミノ酸置換として公知の過程)が好ましい。アミノ酸側鎖の特性の例は疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、ならびに共通して以下の官能基または特徴を有する側鎖:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシル基を含む側鎖(S、T、Y);硫黄原子を含む側鎖(C、M);カルボン酸およびアミドを含む側鎖(D、N、E、Q);塩基を含む側鎖(R、K、H);ならびに芳香族を含む側鎖(H、F、Y、W)である。機能的に類似するアミノ酸を規定する保存的置換表は当技術分野において周知である。例えば、以下の8つの群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:
(1)アラニン(A)、グリシン(G);
(2)アスパラギン酸(d)、グルタミン酸(E);
(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
(4)アルギニン(R)、リジン(K);
(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
(7)セリン(S)、トレオニン(T);および
(8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins 1984を参照のこと)。
そのような保存的に修飾されたポリペプチドが、本願のC12orf32タンパク質に含まれる。しかしながら、本発明はそれに限定されず、C12orf32タンパク質は、それらがC12orf32タンパク質の少なくとも一つの生物学的活性を保持する限り、非保存的改変を含む。さらに、改変タンパク質は多型変異体、種間相同体、およびこれらのタンパク質の対立遺伝子によってコードされるものを除外しない。
さらに、本発明のC12orf32遺伝子は、C12orf32タンパク質のそのような機能的等価物をコードするポリヌクレオチドを包含する。ハイブリダイゼーションに加えて、遺伝子増幅法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を利用し、当該タンパク質をコードするDNA(SEQ ID NO:1)の配列情報に基づき合成されたプライマーを用いて、C12orf32タンパク質に機能的に等価なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離することができる。ヒトC12orf32遺伝子およびタンパク質に機能的に等価である、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドはそれぞれ、通常、そのオリジナルのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に対して高い相同性を有する。「高い相同性」は、典型的には、40%またはそれ以上、好ましくは60%またはそれ以上、より好ましくは80%またはそれ以上、さらにより好ましくは90%〜95%またはそれ以上、さらにより好ましくは96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を意味する。特定のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性は、「Wilbur and Lipman, Proc Natl Acad Sci USA 80: 726-30 (1983)」におけるアルゴリズムにしたがうことによって決定することができる。
I.癌の診断
I−1.癌または癌を発症する素因を診断するための方法
C12orf32遺伝子の発現は、癌、より具体的には乳癌を有する患者において特異的に上昇していることが見出された。したがって、本明細書において同定された遺伝子、ならびにその転写産物および翻訳産物には、乳癌のマーカーとしての診断的有用性が見出され、細胞試料中のC12orf32遺伝子の発現を測定することによって、乳癌の診断を行うことができる。より具体的には、本発明は、対象におけるC12orf32遺伝子の発現レベルを決定することにより、対象における癌の存在または癌を発症する素因を検出する、診断する、および/または決定するための方法を提供する。本方法によって診断される好適な癌には、乳癌が含まれる。
そのような結果を付加的な情報と組み合わせて、対象が当該疾患に罹患しているか、または当該疾患を発症する素因があるかを医師、看護師、または他の実務者が診断するのを補助することができる。あるいは、本発明は、対象が当該疾患に罹患しているかを診断するのに有用な情報を医師に提供することもできる。例えば、本発明によれば、対象から得られた組織において癌細胞の存在の疑いまたは疑念が示唆される場合、医師はこの観察、および組織の病理所見、血液中の公知の腫瘍マーカーのレベル、または対象の臨床経過などを含む別の局面を考慮して臨床的判断を下す。乳癌の診断のためのいくつかの血液腫瘍マーカーの使用が周知である。例えば、乳癌関連抗原225(BCA225)、糖鎖抗原15−3(CA15−3)、または癌胎児性抗原(CEA)は、乳癌の好適な血液腫瘍マーカーである。例えば、本発明による特定の態様において、対象の状態を検査するための中間的な結果を提供することもできる。
別の態様において、本発明は、対象由来の生体試料におけるC12orf32遺伝子の発現を癌の診断マーカーとして検出する段階を含む、癌の診断マーカーを検出するための方法を提供する。本方法によって診断される好ましい癌は、乳癌を含む。
本発明の文脈において、「診断する」という用語は、予測および尤度解析を包含することが意図される。本発明の方法は、治療的介入、病期などの診断基準、ならびに疾患のモニタリングおよび癌のサーベイランスを含む治療様式に関する決断を下す際に臨床的に使用することを意図する。本発明によれば、対象の状態を検査するための中間的な結果もまた、提供され得る。このような中間的な結果を付加的な情報と組み合わせて、対象が疾患に罹患しているかを医師、看護師、または他の従事者が決定するのを補助することができる。すなわち、本発明は、癌を検査するための診断マーカーC12orf32を提供する。あるいは、本発明は、対象由来の生体試料におけるC12orf32遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む、対象由来の乳房組織試料における癌細胞を検出または同定するための方法であって、該遺伝子の正常対照レベルと比較した発現レベルの増加が該組織における癌細胞の存在または疑いを示す、方法を提供する。そのような結果を付加的な情報と組み合わせて、対象が疾患に罹患していると診断するうえで医師、看護師または他の医療実務者を補助することができる。換言すれば、本発明は、対象が疾患に罹患していると診断するのに有用な情報を医師に提供することができる。例えば、本発明によれば、対象から得られた組織において癌細胞の存在の疑いがある場合、組織病理、公知の血中腫瘍マーカーのレベル、および対象の臨床経過などを含む疾患の別の局面に加えて、C12orf32遺伝子の発現レベルを考慮することにより臨床判断を下すことができる。例えば、周知の血中乳房腫瘍診断マーカーにはBCA225、CA15−3、CA72−4、CEA、IAP、NSE、SP1およびTPAがある。すなわち、本発明のこの特定の態様において、遺伝子発現分析の結果は対象の疾患状態のさらなる診断のための中間的な結果となる。
本発明によって診断される対象は、好ましくは哺乳動物である。例示的な哺乳動物には、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシが含まれるが、これらに限定されない。
診断しようとする対象から生体試料を採取することが好ましい。C12orf32遺伝子の目的の転写産物または翻訳産物を含む限り、任意の生体材料を、判定のための生体試料として使用することができる。生体試料には、体組織、ならびに血液、痰、および尿などの体液が含まれるが、それらに限定されない。好ましくは、生体試料は、上皮細胞、より好ましくは乳癌上皮細胞、または癌であると疑われる組織由来の乳房上皮細胞を含む細胞集団を含む。さらに、必要であれば、得られた体組織および体液から細胞を精製し、その後、生体試料として使用してもよい。好ましい態様では、生体試料は、診断しようとする対象から採取された乳房組織を含んでもよい。
本発明によれば、C12orf32遺伝子の発現レベルは、対象由来の生体試料において決定される。発現レベルは、当技術分野において公知の方法を用いて、転写(核酸)産物レベルで決定することができる。例えば、C12orf32遺伝子のmRNAは、ハイブリダイゼーション法(例えばノーザンハイブリダイゼーション)によりプローブを用いて定量してもよい。検出は、チップまたはアレイ上で実施してもよい。アレイの使用は、本発明のC12orf32遺伝子を含む複数の遺伝子(例えば、様々な癌特異的遺伝子)の発現レベルを検出するのに好ましい。当業者は、C12orf322遺伝子の配列情報を用いてこのようなプローブを調製することができる。例えば、C12orf32遺伝子のcDNAを、プローブとして使用してもよい。必要であれば、プローブは、色素および同位元素などの適した標識で標識してもよく、遺伝子の発現レベルは、ハイブリダイズされた標識の強度として検出することができる。
さらに、C12orf32遺伝子の転写産物は、増幅に基づく検出方法(例えばRT−PCR)により、プライマーを用いて定量することができる。このようなプライマーもまた、遺伝子の入手可能な配列情報に基づいて調製することができる。例えば、実施例において使用されるプライマー(SEQ ID NO:3、4、11、12、16、および17)は、RT−PCRによる検出のために使用され得るが、本発明はそれらに限定されない。
具体的には、本発明の方法のために使用されるプローブまたはプライマーは、ストリンジェントな条件、中程度にストリンジェントな条件、または低ストリンジェントな条件下で、C12orf32遺伝子のmRNAにハイブリダイズする。本明細書において使用される場合、「ストリンジェントな(ハイブリダイゼーション)条件」という語句は、プローブまたはプライマーがその標的配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる状況下では異なる。より長い配列の特異的ハイブリダイゼーションは、短い配列よりも高温で観察される。一般に、ストリンジェントな条件の温度は、規定のイオン強度およびpHにおける特定の配列の熱融点(Tm)より約5℃低くなるように選択される。Tmは、(規定のイオン強度、pH、および核酸濃度下で)標的配列に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。標的配列は一般に過剰に存在するため、Tmでは50%のプローブが平衡状態で占有されている。典型的には、ストリンジェントな条件はpH7.0〜pH8.3で、塩濃度が約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的には約0.01M〜1.0Mのナトリウムイオン(もしくは他の塩)であり、かつ温度が、短いプローブまたはプライマー(例えば10〜50ヌクレオチド)の場合は少なくとも約30℃であり、より長いプローブまたはプライマーの場合は少なくとも約60℃である条件であると考えられる。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤を添加することによって実現してもよい。
あるいは、本発明の診断のために翻訳産物が検出され得る。例えば、C12orf32タンパク質の量を決定してもよい。翻訳産物としてのタンパク質の量を決定するための方法には、そのタンパク質を特異的に認識する抗体を使用するイムノアッセイ法が含まれる。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよい。さらに、抗体の任意の断片または改変体(例えば、キメラ抗体、scFv、Fab、F(ab')2、Fvなど)も、その断片がC12orf32タンパク質への結合能力を保持している限り、本検出に使用してもよい。タンパク質検出用のこれらの種類の抗体を調製する方法は、当技術分野において周知であり、任意の方法を本発明において使用して、このような抗体およびそれらの等価物を調製することができる。
C12orf32遺伝子の発現レベルをその翻訳産物に基づいて検出するための別の方法として、染色の強度を、C12orf32タンパク質に対する抗体を用いた免疫組織化学的解析を介して観察してもよい。すなわち、強い染色が観察された場合、当該タンパク質の存在の増加、および同時にC12orf32遺伝子の高い発現レベルが示唆される。
本発明において、C12orf32遺伝子の翻訳産物は、癌細胞または癌細胞培養物においてそのような断片を検出できる限り、その任意の断片を含む。例えば、抗C12orf32ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット分析にてC12orf32発現ベクターでトランスフェクトされたCOS−7の細胞溶解物においていくつかの小サイズのバンドが認められた(実施例の「ヒト乳癌細胞におけるC12orf32タンパク質の切断型」および図2を参照のこと)。したがって、それらの小サイズのバンドに対応するC12orf32タンパク質の断片を乳癌の診断および/または癌発症の素因の決定のために検出することができる。本明細書において、実施例における乳癌細胞株またはC12orf32タンパク質を発現するベクターでトランスフェクトされたCOS−7細胞の細胞溶解物において検出された断片もまた、C12orf32遺伝子の翻訳産物に含まれる。それらの断片は、C12orf32タンパク質に対するポリクローナル抗体、またはそのような断片を特異的に認識するモノクローナルもしくはポリクローナル抗体を用いて上記の任意の免疫学的方法により検出することができる。本発明によれば、およそ16kDaの断片が、乳癌の診断のために好適に検出され得る。というのは、乳癌細胞株においてそのような断片が他の断片よりも上方制御されることが確認されたからである。
上記のように、C12orf32タンパク質の断片は乳癌の診断のための用途も有する。したがって、本発明はC12orf32タンパク質の断片も提供する。C12orf32タンパク質の断片は、乳癌細胞株またはC12orf32タンパク質を発現するベクターでトランスフェクトされた細胞の細胞溶解物から得られる。そのような断片の分子量はおよそ27kDa、23kDa、または16kDaである。これらの分子量はSDS−PAGEによって決定することができる。本発明において、C12orf32タンパク質のそのような断片は、C12orf32タンパク質またはその断片に対する抗体を用いることにより免疫親和性クロマトグラフィー技術を通じて細胞溶解物から精製することができる。あるいは、ゲルろ過を用いて、細胞溶解物から本発明の断片を精製することもできる。C12orf32タンパク質の切断された断片は、各断片(27kDa、23kDa、および16kDa)を特異的に認識する抗体により検出することができる。一旦C12orf32タンパク質の断片のアミノ酸配列が決定されれば、当業者は、当技術分野において公知の方法を用いることによりそのような断片を得ることが可能である。例えば、本発明の断片は、その断片を発現するベクターを宿主細胞に導入し、その断片を宿主細胞から回収することによって調製することができる。ベクターが導入される宿主細胞は、特に限定されることはなく、それらが組換えタンパク質を産生できる限り任意の形態であってよい。あるいは、そのような断片は、その断片をコードするcDNAからのインビトロでの翻訳を通じて調製することもできる。
さらに、翻訳産物は、その生物学的活性に基づいて検出することもできる。本明細書において、特に、C12orf32タンパク質は癌細胞の増殖に関与していることが実証された。したがって、C12orf32タンパク質の癌細胞増殖促進能力(細胞増殖活性)は、生体試料中に存在するC12orf32タンパク質の指標として使用され得る。
さらに、C12orf32遺伝子の発現レベルに加えて、他の癌関連遺伝子、例えば乳癌において差次的に発現されることが公知である遺伝子の発現レベルも決定して、診断の精度を向上させることができる。あるいは、癌関連遺伝子の間の発現レベルの組み合わせは、より正確な診断のために決定されてもよい。
生体試料中のC12orf32遺伝子を含む癌マーカー遺伝子の発現レベルは、対応する癌マーカー遺伝子の対照レベルから、例えば10%、25%、もしくは50%上昇する;または1.1倍超、1.5倍超、2.0倍超、5.0倍超、10.0倍超、もしくはそれ以上まで上昇する場合、上昇しているとみなすことができる。
対照レベルは、疾患の状態(癌性または非癌性)が公知である対象から予め採取し保存しておいた試料を用いることにより、試験生体試料と同時に決定することができる。または、疾患の状態が公知である対象由来の試料中のC12orf32遺伝子の予め決定された発現レベルを解析することによって得られる結果に基づき、統計学的方法によって、対照レベルを決定してもよい。さらに、対照レベルは、予め試験された細胞由来の発現パターンのデータベースであってもよい。さらに、本発明の一局面によれば、生体試料中のC12orf32遺伝子の発現レベルは、複数の参照試料から決定された複数の対照レベルと比較してもよい。患者由来の生体試料の組織型と同様の組織型由来の参照試料から決定された対照レベルを使用することが好ましい。さらに、疾患の状態が公知である集団におけるC12orf32遺伝子の発現レベルの標準値を使用することが好ましい。標準値は、当技術分野において公知である任意の方法によって得ることができる。例えば、平均値±2S.D.または平均値±3S.D.の範囲を、標準値として使用することができる。
本発明の文脈において、非癌性であることが公知である生体試料から決定された対照レベルは「正常対照レベル」と称される。一方、対照レベルが癌性の生体試料から決定される場合、これは「癌性対照レベル」と称される。
C12orf32遺伝子の発現レベルが、正常対照レベルと比較して上昇しているか、または癌性対照レベルと同様である場合、その対象が癌に罹患しているか、または癌を発症するリスクを有すると診断され得る。さらに、複数の癌関連遺伝子の発現レベルが比較される場合、試料と癌性参照との間の遺伝子発現パターンの類似は、対象が癌に罹患しているか、または癌を発症するリスクを有することを示す。
試験生体試料の発現レベルと対照レベルとの間の差異は、対照核酸、例えばハウスキーピング遺伝子(その発現レベルが、細胞の癌性状態または非癌性状態によって異ならないことが公知である遺伝子)の発現レベルに対して標準化することができる。例示的な対照遺伝子には、β−アクチン、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ、およびリボソームタンパク質P1が含まれるが、これらに限定されない。
さらに、本発明は、癌のマーカーとしてのC12orf32遺伝子の使用を提供する。これらの遺伝子は乳癌のマーカーに特に有用である。例えば、癌のマーカーとしてC12orf32遺伝子の発現レベルを検出することにより、生体試料が癌性細胞、とりわけ乳癌性細胞を含むかどうかを決定することができる。具体的には、正常対照レベルと比較した生体試料におけるC12orf32遺伝子の発現レベルの増大は、生体試料が癌性細胞を含むことを示す。上記のようにこれらのマーカー遺伝子の転写産物または翻訳産物を検出することによって、発現レベルを決定することができる。翻訳産物は生物学的活性として決定することができる。
I−2.癌治療の有効性の評価
正常細胞と癌性細胞との間で差次的に発現するC12orf32遺伝子により、癌の治療の経過をモニターすることもまた可能であり、癌を診断するための前述の方法は、癌治療の有効性の評価に適用することができる。具体的には、癌治療の有効性は、治療を受けている対象由来の細胞におけるC12orf32遺伝子の発現レベルを決定することによって評価することができる。必要に応じて、試験細胞集団は、様々な時点、治療前、治療中、および/または治療後に対象から採取される。C12orf32遺伝子の発現レベルは、例えば「I−1.癌または癌を発症する素因を診断するための方法」の項目で前述した方法に従って決定することができる。本発明の文脈において、検出された発現レベルと比較される対照レベルは、関心対象の治療に曝露されていない細胞におけるC12orf32遺伝子発現から得られることが好ましい。
C12orf32遺伝子の発現レベルを、正常細胞からまたは癌細胞を含まない細胞集団から得られる対照レベルと比較する場合、発現レベルの類似は、関心対象の治療が有効であることを示唆し、発現レベルの上昇は、その治療の臨床転帰または予後があまり好ましくないことを示唆する。他方では、癌細胞からまたは癌細胞を含む細胞集団から得られる対照レベルに対して比較が実施される場合、発現レベルの低下が有効な治療を示唆するのに対し、発現レベルの類似は、臨床転帰または予後があまり好ましくないことを示唆する。
さらに、治療前および治療後のC12orf32遺伝子の発現レベルを、本発明の方法に従って比較して、治療の有効性を評価することもできる。具体的には、治療後の対象由来の生体試料において検出される発現レベル(すなわち、治療後レベル)が、同じ対象から治療開始前に採取された生体試料において検出される発現レベル(すなわち、治療前レベル)と比較される。治療前レベルと比較して治療後レベルが低下している場合、関心対象の治療が有効であることが示唆されるのに対し、治療前レベルと比較して治療後レベルが上昇しているか、または同様である場合、臨床転帰または予後があまり好ましくないことが示唆される。
本明細書において使用される場合、「有効な」という用語は、治療が、病的に上方制御されている遺伝子の発現の減少、病的に下方制御されている遺伝子の発現の増大、または対象における癌腫のサイズ、罹患率、もしくは転移能の低減をもたらすことを示す。関心対象の治療が予防的に適用される場合、「有効な」とは、治療が腫瘍の形成を遅延もしくは予防するか、または癌の少なくとも1種類の臨床症状を遅延、予防、もしくは緩和することを意味する。対象における腫瘍の状態の評価は、標準的な臨床的プロトコルを用いて実施することができる。
さらに、治療の有効性は、癌を診断するための任意の公知の方法に関連して決定することもできる。癌は、例えば徴候となる異常、例えば体重減少、腹痛、背痛、食欲低下、悪心、嘔吐、ならびに全身倦怠感、虚弱、および黄疸を同定することによって診断することができる。
本発明の方法および組成物に「予防」および「予防法」との関連で有用性が見出される限りにおいて、そのような用語は、疾患による死亡率および罹患率の負荷を軽減する任意の働きを意味するように本明細書において互換的に用いられる。予防および予防法は「一次、二次、および三次の予防レベルで」行うことができる。一次予防および予防法は疾患の発症を回避するのに対し、二次および三次レベルの予防および予防法は、疾患の進行および症状の出現の予防および予防法、ならびに機能の回復および疾患に関連する合併症の軽減による既存の疾患の悪影響の軽減を目的とした働きを包含する。あるいは、予防および予防法は、特定の障害の重症度の緩和、例えば、腫瘍の増殖および転移の低減を目的とした広範囲の予防的治療を含むことができる。
癌の治療および/もしくは予防法ならびに/またはその術後再発の予防は、以下の段階のいずれか、例えば、癌細胞の外科的除去、癌性細胞の増殖の阻害、腫瘍の退行または退縮、寛解の誘導および癌の発生の抑制、ならびに転移の低減または阻害などを含む。癌の効果的治療および/または予防は、癌を有する個体の死亡率を低減するかまたは予後を改善する、血中の腫瘍マーカーのレベルを低減する、ならびに癌に付随する検出可能な症状を緩和する。例えば、効果的な治療および/または予防を構成する、症状の軽減または改善には、10%、20%、30%、もしくはそれ以上の軽減、または安定した疾患が含まれる。
本発明において、C12orf32は有用な診断マーカーであるだけでなく、癌治療に適した標的でもあることが明らかにされる。それゆえ、本発明によってC12orf32を標的とする癌治療を達成することができる。本発明において、C12orf32を標的とする癌治療は、癌細胞におけるC12orf32の活性および/または発現の抑制または阻害を意味する。C12orf32を標的とする癌治療に、任意の抗C12orf32剤を用いることができる。本発明において、抗C12orf32剤は、以下の物質または活性成分を含む:
(a)本発明の二本鎖分子、
(b)それをコードするDNA、および
(c)それをコードするベクター。
したがって、好ましい態様において、本発明は、以下の段階を含む、(i)対象が抗C12orf32剤により治療される癌を有するかどうかを診断する、および/または(ii)C12orf32を標的とする癌治療用に対象を選別する方法を提供する:
(a)治療される癌を有することが疑われる対象から得られた癌細胞または組織におけるC12orf32の発現レベルを決定する段階;
(b)C12orf32の発現レベルを正常対照レベルと比較する段階; (c)C12orf32の発現レベルが正常対照レベルと比べて増大している場合、治療される癌を有すると対象を診断する段階;および
(d)段階(c)において、治療される癌を有すると対象が診断される場合、癌治療用に対象を選別する段階。
あるいは、そのような方法は以下の段階を含む:
(a)治療される癌を有することが疑われる対象から得られた癌細胞または組織におけるC12orf32の発現レベルを決定する段階;
(b)C12orf32の発現レベルを癌対照レベルと比較する段階;
(c)C12orf32の発現レベルが癌対照レベルと同様または同等である場合、治療される癌を有すると対象を診断する段階;および
(d)段階(c)において、治療される癌を有すると対象が診断される場合、癌治療用に対象を選別する段階。
II.キット
本発明は、癌を検出するための試薬、すなわち、C12orf32遺伝子の転写産物または翻訳産物を検出できる試薬も提供する。本発明は、本発明の二本鎖分子またはそれをコードするベクターにより治療することができる癌に罹患している対象を決定するための試薬も提供し、これは癌治療の効力の評価および/またはモニタリングでも有用であり得る。そのような試薬の例としては、
(a)C12orf32遺伝子のmRNAを検出することができるもの;
(b)C12orf32タンパク質を検出することができるもの;および/または
(c)対象由来の生体試料中のC12orf32タンパク質の生物学的活性を検出することができるもの
が挙げられる。
適切な試薬は、C12orf32遺伝子の転写産物に特異的に結合するかまたはその転写産物を同定する核酸を含む。例えば、C12orf32遺伝子の転写産物に特異的に結合するかまたはその転写産物を同定する核酸は、例えば、C12orf32遺伝子転写産物の一部分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド(例えば、プローブおよびプライマー)を含む。そのようなオリゴヌクレオチドは、関心対象の遺伝子のmRNAに特異的なプライマーおよびプローブによって例示され、当技術分野において周知の方法に基づいて調製され得る。あるいは、遺伝子の翻訳産物を検出するための試薬として抗体を例示することもできる。「I−1.癌または癌を発症する素因を診断するための方法」の項目において上述したプローブ、プライマー、および抗体は、そのような試薬の好適な例として言及され得る。これらの試薬を癌の上記の診断のために使用することができる。これらの試薬を使用するためのアッセイ様式は、例えば、ノーザンハイブリダイゼーションまたはサンドイッチELISAであってよく、このどちらも当技術分野において周知である。
検出試薬はキットの形態で一緒に包装されてもよい。例えば、検出試薬は個別の容器に包装されてもよい。さらに、検出試薬は検出に必要な他の試薬と共に包装されてもよい。例えば、キットは、検出試薬としての核酸もしくは抗体(固体マトリックスに結合されるか、もしくはマトリックスにそれらを結合するための試薬と共にマトリックスとは別々に包装されるかのいずれか)、対照試薬(陽性および/もしくは陰性)、および/または検出可能な標識を含むことができる。本発明のキットはさらに、緩衝剤、希釈剤、フィルタ、注射針、注射器を含む、商業上および利用者の観点から望ましい他の材料を含むこともできる。これらの試薬などを標識と共に容器内に保持することができる。好適な容器にはボトル、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成することができる。本アッセイを行うための説明書(例えば、文書、テープ、VCR、CD−ROMなど)がキットに含まれてもよい。
本キットは乳癌の検出および診断に適しているが、癌の予後の評価および/または癌治療の有効性のモニタリングにも有用であり得る。また、本キットは、抗C12orf32剤(例えば、本発明の二本鎖分子またはそれをコードするベクター)により治療することができる癌に罹患している対象の決定においても有用であり得る。
本発明の一局面として、癌を検出するための試薬を、多孔質ストリップなどの固体マトリックス上に固定して、癌を検出するための少なくとも1つの部位を形成することができる。多孔質ストリップの測定領域または検出領域は、それぞれが検出試薬(例えば核酸)を含む複数の部位を含んでもよい。テストストリップは、陰性対照および/または陽性対照用の部位も含んでもよい。または、対照部位は、テストストリップとは別のストリップ上に配置されてもよい。任意で、異なる検出部位は、異なる量の固定された検出試薬(例えば核酸)を含んでもよい。すなわち、第一の検出部位はより多くの量を含み、第二の部位はより少ない量を含んでもよい。試験生体試料を添加した際、検出可能なシグナルを提示している部位の数が、試料中のC12orf32遺伝子の発現レベルの定量的な指標を提供する。検出部位は、適切に検出することができる任意の形状で形成されてよく、典型的には、テストストリップの幅にわたるバーまたはドットの形状である。
本発明のキットはさらに、陽性対照試料および/もしくは陰性対照試料、ならびに/またはC12orf32標準試料を含むことができる。本発明の陽性対照試料は、C12orf32陽性試料を回収することによって調製することができる。そのようなC12orf32陽性試料は、例えば、ヒト乳癌細胞株HBC4、HBC5、BT−549、HCC1937、MCF−7、MDA−MB−231、MDA−MB−435S、SK−BR−3、T47D、YMB−1、ZR−75−1およびBSY−1を含む、樹立された乳癌細胞株から得ることができる。あるいは、陽性対照試料は、カットオフ値を決定し、カットオフ値を超えるC12orf32 mRNAまたはタンパク質の量を含有する試料を調製することによって調製することもできる。本明細書において、「カットオフ値」という語句は、正常範囲と癌性の範囲とを分ける値を意味する。例えば、当業者は受信者操作特性(ROC)曲線を用いてカットオフ値を決定することができる。本キットは、C12orf32 mRNAまたはポリペプチドのカットオフ値量を含有するC12orf32標準試料を含むことができる。一方、陰性対照試料は、正常乳房組織などの非癌性組織もしくは非癌性細胞株から調製することができるか、またはカットオフ値未満のC12orf32 mRNAもしくはタンパク質を含有する試料を調製することによって調製することができる。
あるいは、本発明は、癌を診断するための診断試薬を調製するための試薬の使用を提供する。いくつかの態様において、試薬は、以下からなる群より選択することができる:
(a)C12orf32遺伝子のmRNAを検出するための試薬;
(b)C12orf32タンパク質を検出するための試薬;および
(c)C12orf32タンパク質の生物学的活性を検出するための試薬。
具体的には、そのような試薬は、C12orf32ポリヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、またはC12orf32ポリペプチドに結合する抗体である。
III.スクリーニング方法
C12orf32遺伝子、この遺伝子もしくはその断片によってコードされるポリペプチド、またはこの遺伝子の転写調節領域を用いて、この遺伝子の発現またはこの遺伝子によってコードされるポリペプチドの生物学的活性を変更する物質をスクリーニングすることが可能である。このような物質は、癌、特に乳癌を治療または予防するための剤として使用してもよい。したがって、本発明は、C12orf32遺伝子、この遺伝子もしくはその断片によってコードされるポリペプチド、またはこの遺伝子の転写調節領域を用いて、癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明では、C12orf32ポリペプチドの断片を用いて、C12orf32ポリペプチドの断片の生物学的活性を変化させる物質をスクリーニングすることができる。例えば、そのような断片には、SDS−PAGEでの分子量が27kDa、23kDa、または16kDaである、C12orf32ポリペプチドの部分ペプチドが含まれる。そのような断片は、全長C12orf32遺伝子でトランスフェクトされた細胞または乳癌細胞株から単離することができる。該細胞または乳癌細胞株において発現される全長のC12orf32ポリペプチドを切断して、これらの断片を形成する。それらの断片、とりわけ23kDaおよび16kDaの断片は、乳癌細胞において、C12orf32ポリペプチドの全長よりも多く発現される。さらに、C12orf32遺伝子に対するsiRNAのトランスフェクトされた乳癌細胞株において、それらの断片が減少していることが確認された(図2A、4E)。総合すれば、C12orf32ポリペプチドのそれらの断片は、乳癌の生存において極めて重要な役割を果たし得る。したがって、それらの断片に結合する、またはそれらの断片の生物学的活性を変化させる物質は、癌治療の候補薬となり得る。したがって、そのような断片に結合する物質は、C12orf32のアンタゴニストの潜在的候補である。
本発明のスクリーニング方法によって単離される物質は、C12orf32遺伝子の発現またはこの遺伝子の翻訳産物の活性を阻害すると予想される物質であり、したがって、例えば、癌(具体的には、乳癌)などの細胞増殖性疾患を特徴とする疾患を治療または予防するための候補である。すなわち、本発明の方法によってスクリーニングされる物質は、臨床的な利益を有するとみなされ、さらに動物モデルまたは試験用対象において癌細胞増殖を防止する能力について試験することができる。
本発明の文脈において、本発明のスクリーニング方法によって同定される物質は、任意の化合物、またはいくつかの化合物を含む組成物であってよい。さらに、本発明のスクリーニング方法によって細胞またはタンパク質に曝露される試験物質は、単一の化合物、または化合物の組み合わせであってよい。化合物の組み合わせがこれらの方法において使用される場合、これらの化合物は、逐次的にまたは同時に接触させてもよい。
任意の試験物質、例えば細胞抽出物、細胞培養上清液、発酵微生物の産物、海洋生物からの抽出物、植物抽出物、精製タンパク質または粗製タンパク質、ペプチド、非ペプチド化合物、合成微小分子化合物(アンチセンスRNA、siRNA、リボザイムなどの核酸構築物を含む)、および天然化合物を、本発明のスクリーニング方法において使用することができる。本明細書に記載のスクリーニングにおいて有用な試験物質は、関心対象のタンパク質または元のタンパク質の生物学的活性をインビボで有さないその部分ペプチドに特異的に結合する抗体であってもよい。
本発明の試験物質はまた、
(1)生物ライブラリ、
(2)空間的にアドレス可能な平行な固相ライブラリまたは液相ライブラリ、
(3)デコンボリューションを必要とする合成ライブラリ法、
(4)「1ビーズ1化合物」ライブラリ法、および
(5)アフィニティークロマトグラフィー選別を使用する合成ライブラリ法
を含む、当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリ法における多数のアプローチのいずれかを用いて得ることもできる。
アフィニティークロマトグラフィー選別を使用する生物ライブラリ法は、ペプチドライブラリに限定されており、一方、他の4種のアプローチは、ペプチドライブラリ、非ペプチドオリゴマーライブラリ、または化合物の低分子ライブラリに適用可能である(Lam, Anticancer Drug Des 1997, 12:145-67)。分子ライブラリの合成方法の例は、当技術分野において見出すことができる(DeWitt et al., Proc Natl Acad Sci USA 1993, 90:6909-13;Erb et al., Proc Natl Acad Sci USA 1994, 91:11422-6;Zuckermann et al., J Med Chem 37:2678-85, 1994;Cho et al., Science 1993, 261:1303-5;Carell et al., Angew Chem Int Ed Engl 1994, 33:2059;Carell et al., Angew Chem Int Ed Engl 1994, 33:2061;Gallop et al., J Med Chem 1994, 37:1233-51)。化合物のライブラリは、溶液中(Houghten, Bio/Techniques 1992, 13:412-21を参照されたい)、またはビーズ上(Lam, Nature 1991, 354:82-4)、チップ上(Fodor, Nature 1993, 364:555-6)、細菌上(米国特許第5,223,409号)、胞子上(米国特許第5,571,698号、第5,403,484号、および第5,223,409号)、プラスミド上(Cull et al., Proc Natl Acad Sci USA 1992, 89:1865-9)、もしくはファージ上(Scott and Smith, Science 1990, 249:386-90;Devlin, Science 1990, 249:404-6;Cwirla et al., Proc Natl Acad Sci USA 1990, 87:6378-82;Felici, J Mol Biol 1991, 222:301-10;米国特許出願第2002103360号)に提示され得る。
試験物質ライブラリの構築は当技術分野において周知であるが、以下に、試験物質の同定、および本スクリーニング方法のためのそのような物質のライブラリ構築に関するさらなる指針を提供する。
A.分子モデリング:
求められている特性を有することが知られている化合物の分子構造、および/またはC12orf32の分子構造に関する知識は、試験物質ライブラリの構築に役立つ。さらなる評価に適した試験物質の予備スクリーニングに対する一つの手法では、試験物質とその標的との間の相互作用のコンピュータモデリングを利用する。
コンピュータモデリング技術によって、選択した分子の三次元原子構造の視覚化、および当該分子と相互作用する新しい化合物の合理的な設計が可能になる。三次元構築物は、典型的には、選択した分子のX線結晶構造解析またはNMR画像化のデータに依存する。分子動力学では力場データが必要になる。コンピュータグラフィックスシステムにより、新しい化合物がどのように標的分子に結び付くかの予測が可能になり、ならびに完全な結合特異性のための化合物および標的分子の構造の実験的操作が可能になる。一方または両方に小さな変化を起こした場合に分子-化合物間の相互作用がどうなるかの予測には、分子設計プログラムと使用者との間の使い勝手の良いメニュー選択式のインターフェースと通常は連係している、分子力学ソフトウェアおよび計算集約型コンピュータが必要である。
上記に一般的に記述した分子モデリングシステムの一例には、CHARMmおよびQUANTAプログラム(Polygen Corporation,Waltham,Mass)が含まれる。CHARMmはエネルギー最小化および分子動力学機能を行う。QUANTAは分子構造の構築、グラフィックモデリング、および解析を行う。QUANTAによって、分子の互いの挙動の相互的な構築、改変、視覚化、および解析が可能になる。
特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピュータモデリングに関していくつかの論文が発表されており、その例としては、Rotivinen et al. Acta Pharmaceutica Fennica 1988, 97: 159-66; Ripka, New Scientist 1988, 54-8; McKinlay & Rossmann, Annu Rev Pharmacol Toxiciol 1989, 29: 111-22; Perry & Davies, Prog Clin Biol Res 1989, 291: 189-93; Lewis & Dean, Proc R Soc Lond 1989, 236: 125-40, 141-62; および核酸成分に対するモデル受容体に関するAskew et al., J Am Chem Soc 1989, 111: 1082-90が挙げられる。
化学物質をスクリーニングし、画像として描写する他のコンピュータプログラムは、BioDesign,Inc.(Pasadena,Calif.)、Allelix,Inc(Mississauga,Ontario,Canada)、およびHypercube,Inc.(Cambridge,Ontario)などの会社から入手可能である。例えば、DesJarlais et al., J Med Chem 1988, 31: 722-9; Meng et al., J Computer Chem 1992, 13: 505-24; Meng et al., Proteins 1993, 17: 266-78; Shoichet et al., Science 1993, 259: 1445-50を参照されたい。
推定上の阻害剤が同定されたら、下記に詳述するように、同定された推定上の阻害剤の化学構造に基づき、コンビナトリアル化学の技術を利用して任意の数の変異体を構築することができる。結果として得られた推定上の阻害剤または「試験物質」のライブラリを本発明の方法を用いてスクリーニングし、癌の治療および/もしくは予防法ならびに/または癌、特に乳癌の術後再発の予防に適した試験物質を同定することができる。
B.コンビナトリアル化学合成:
試験物質のコンビナトリアルライブラリは、公知の阻害剤に存在するコア構造の知識を含む合理的薬物設計プログラムの一部として作出することができる。この手法により、ライブラリを適切なサイズに維持することが可能となり、ハイスループットスクリーニングに役立つ。あるいは、ライブラリを構成する分子ファミリーの全ての並べ換えを単純に合成することによって、単純な、特に短い重合体分子ライブラリを構築することも可能である。この後者の手法の一例は、全てのペプチドが6アミノ酸長のライブラリである。このようなペプチドライブラリは、6アミノ酸配列のあらゆる並べ換えを含み得る。この種のライブラリは、直線的コンビナトリアル化学ライブラリと称される。
コンビナトリアル化学ライブラリの調製は当業者に周知であり、化学的または生物学的合成のいずれかによって作出することができる。コンビナトリアル化学ライブラリはペプチドライブラリ(例えば、米国特許第5,010,175号; Furka, Int J Pept Prot Res 1991, 37: 487-93; Houghten et al., Nature 1991, 354: 84-6を参照のこと)を含むが、これに限定されない。化学的多様性ライブラリを作出するための他の化学物質も用いることができる。そのような化学物質は以下を含むが、それらに限定されない:ペプチド(例えば、PCT公開番号WO 91/19735)、コード化ペプチド(例えば、WO 93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、WO 92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドなどのダイバーソマー(DeWitt et al., Proc Natl Acad Sci USA 1993, 90:6909-13)、ビニローグ性ポリペプチド(Hagihara et al., J Amer Chem Soc 1992, 114: 6568)、グルコース骨格を有する非ペプチド性ペプチド模倣体(Hirschmann et al., J Amer Chem Soc 1992, 114: 9217-8)、小化合物ライブラリの類似の有機合成(Chen et al., J. Amer Chem Soc 1994, 116: 2661)、オリゴカルバメート(Cho et al., Science 1993, 261: 1303)、および/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al., J Org Chem 1994, 59: 658)、核酸ライブラリ(Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology 1995 supplement; Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, USAを参照のこと)、ペプチド核酸ライブラリ(例えば、米国特許第5,539,083号を参照のこと)、抗体ライブラリ(例えば、Vaughan et al., Nature Biotechnology 1996, 14(3):309-14およびPCT/US96/10287を参照のこと)、糖質ライブラリ(例えば、Liang et al., Science 1996, 274: 1520-22;米国特許第5,593,853号を参照のこと)、ならびに小有機分子ライブラリ(例えば、ベンゾジアゼピン、Gordon EM. Curr Opin Biotechnol. 1995 Dec 1;6(6):624-31.;イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号、および同第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号などを参照のこと)。
コンビナトリアルライブラリの調製のための装置は市販されている(例えば、357 MPS、390 MPS(Advanced Chem Tech,Louisville KY)、Symphony(Rainin,Woburn,MA)、433A(Applied Biosystems,Foster City,CA)、9050 Plus(Millipore,Bedford,MA)を参照のこと)。加えて、多数のコンビナトリアルライブラリそれ自体が市販されている(例えば、ComGenex,Princeton,N.J.,Tripos,Inc.,St.Louis,MO,3D Pharmaceuticals,Exton,PA,Martek Biosciences,Columbia,MDなどを参照のこと)。
C.他の候補:
別の手法では組換えバクテリオファージを用いてライブラリを作出する。「ファージ法」(Scott & Smith, Science 1990, 249: 386-90; Cwirla et al., Proc Natl Acad Sci USA 1990, 87: 6378-82; Devlin et al., Science 1990, 249: 404-6)を用いて、非常に大きなライブラリ(例えば、106〜108個の化学物質)を構築することができる。第二の手法では主に化学的方法を用い、Geysen法(Geysen et al., Molecular Immunology 1986, 23: 709-15; Geysen et al., J Immunologic Method 1987, 102: 259-74);およびFodorらの方法(Science 1991, 251: 767-73)がその例である。Furkaら(14th International Congress of Biochemistry 1988, Volume #5, Abstract FR:013; Furka, Int J Peptide Protein Res 1991, 37: 487-93)、Houghten(米国特許第4,631,211号)およびRutterら(米国特許第5,010,175号)は、アゴニストまたはアンタゴニストとして試験できるペプチドの混合物を作出するための方法について記述している。
アプタマーは、特異的な分子標的に強く結合する、核酸から構成される巨大分子である。Tuerk and Gold(Science. 249:505-510 (1990))は、アプタマーの選択のためのSELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的発生;Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)法について開示している。SELEX法では、核酸分子の大きなライブラリ(例えば、1015個の異なる分子)をスクリーニングに用いることができる。
本発明のスクリーニング方法のいずれかによってスクリーニングされた化合物の構造の一部が、付加、欠失、および/または置換によって変換されている化合物は、本発明のスクリーニング方法によって得られる物質に含まれる。
さらに、スクリーニングされる試験物質がタンパク質である場合、そのタンパク質をコードするDNAを得るために、そのタンパク質のアミノ酸配列全体を決定し、そのタンパク質をコードする核酸配列を推定してもよく、または得られたタンパク質のアミノ酸配列の一部を解析し、その配列に基づいてオリゴDNAをプローブとして調製し、かつそのプローブを用いてcDNAライブラリをスクリーニングし、そのタンパク質をコードするDNAを得てもよい。得られるDNAは、癌を治療または予防するための候補である試験物質を調製する際に使用される。
III−1.タンパク質に基づくスクリーニング方法
本発明によれば、C12orf32遺伝子の発現は癌細胞、特に乳癌細胞の増殖および/または生存に不可欠である。したがって、これらの遺伝子によってコードされるポリペプチドの機能を抑制する物質は、癌細胞の増殖および/または生存を阻害するものと推測され、それゆえ、癌の治療または予防において用途が見出されると考えられる。したがって、本発明は、C12orf32ポリペプチドを用いて、癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法を提供する。さらに、本発明はまた、C12orf32ポリペプチドを用いて、癌細胞の増殖および/または生存を阻害するための候補物質をスクリーニングする方法を提供する。
C12orf32ポリペプチドに加え、天然に存在するC12orf32ポリペプチドの少なくとも一つの生物学的活性を保持する限り、これらのポリペプチドの断片を本スクリーニングに用いることができる。実施例において実証されるように、全長C12orf32ポリペプチドだけではなくC12orf32ポリペプチドの切断された断片も極めて重要である。それらの断片は、C12orf32に対するポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングにおいておよそ27kDa、23kDa、および16kDaのサイズのバンドとして検出された。それらのおよそ27kDa、23kDa、および16kDaのサイズの断片を、好ましくは、本スクリーニングにおいてC12orf32ポリペプチドの断片として用いることができる。
前記ポリペプチドまたはその断片は、該ポリペプチドおよび断片がその生物学的活性の少なくとも1種類を保持している限り、他の物質にさらに連結されてもよい。使用可能な物質には、ペプチド、脂質、糖および糖鎖、アセチル基、天然および合成のポリマーなどが含まれる。これらの種類の修飾は、付加的な機能を与えるため、またはポリペプチドおよび断片を安定化させるために実施してもよい。
本発明の方法に使用される前記ポリペプチドまたは断片は、従来の精製方法により天然のタンパク質として自然界から、または選択されたアミノ酸配列に基づく化学合成を通じて、得ることができる。例えば、合成のために採用することができる従来のペプチド合成方法には、以下のものが含まれる:
(1)Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966;
(2)The Proteins, Vol.2, Academic Press, New York, 1976;
(3)ペプチド合成、丸善出版、1975年;
(4)ペプチド合成の基礎と実験、丸善出版、1985年;
(5)医薬品の開発 続 第14巻(ペプチド合成)、広川書店、1991年;
(6)WO 99/67288;ならびに
(7)Barany G. and Merrifield R.B., Peptides Vol.2, 「Solid Phase Peptide Synthesis」, Academic Press, New York, 1980, 100-118。
または、前記タンパク質は、ポリペプチドを作製するための任意の公知の遺伝子工学的方法を通じて、得ることもできる(例えば、Morrison J., J Bacteriology 1977, 132:349-51;Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology(Wu et al. 編)1983, 101:347-62)。例えば最初に、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可能な形態で(例えば、プロモーターを含む調節配列の下流に)含む適切なベクターを調製し、適切な宿主細胞中に形質転換し、次いでその宿主細胞を培養して、そのタンパク質を産生させる。より具体的には、C12orf32ポリペプチドをコードする遺伝子を、pSV2neo、pcDNA I、pcDNA3.1、pCAGGS、またはpCD8など外来遺伝子を発現させるためのベクター中に挿入することによって、その遺伝子を宿主(例えば動物)細胞などにおいて発現させる。発現のために、プロモーターを使用してもよい。一般に使用される任意のプロモーターを使用してもよく、例えばSV40初期プロモーター(Rigby、Williamson(編), Genetic Engineering, vol.3.Academic Press, London, 1982, 83-141)、EF−αプロモーター(Kim et al., Gene 1990, 91:217-23)、CAGプロモーター(Niwa et al., Gene 1991, 108:193)、RSV LTRプロモーター(Cullen, Methods in Enzymology 1987, 152:684-704)、SRαプロモーター(Takebe et al., Mol Cell Biol 1988, 8:466)、CMV前初期プロモーター(Seed et al., Proc Natl Acad Sci USA 1987, 84:3365-9)、SV40後期プロモーター(Gheysen et al., J Mol Appl Genet 1982, 1:385-94)、アデノウイルス後期プロモーター(Kaufman et al., Mol Cell Biol 1989, 9:946)、およびHSV TKプロモーターなどが含まれる。C12orf32遺伝子を発現させるための宿主細胞中へのベクターの導入は、任意の方法、例えばエレクトロポレーション法(Chu et al., Nucleic Acids Res 1987, 15:1311-26)、リン酸カルシウム法(Chen et al., Mol Cell Biol 1987, 7:2745-52)、DEAEデキストラン法(Lopata et al., Nucleic Acids Res 1984, 12:5707-17;Sussman et al., Mol Cell Biol 1985, 4:1641-3)、およびリポフェクチン法(Derijard B, Cell 1994, 7:1025-37;Lamb et al., Nature Genetics 1993, 5:22-30;Rabindran et al., Science 1993, 259:230-4)などに従って実施することができる。
C12orf32タンパク質はまた、インビトロの翻訳システムを採用して、インビトロで産生してもよい。
試験物質と接触させるC12orf32ポリペプチドは、例えば精製ポリペプチド、可溶性タンパク質、または他のポリペプチドと融合された融合タンパク質であってもよい。
III−1−1.前記ポリペプチドに結合する物質の同定
前記タンパク質に結合する物質は、当該タンパク質をコードする遺伝子の発現または当該タンパク質の生物学的活性を変更すると考えられる。したがって、一局面として、本発明は、以下の段階を含む、癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法を提供する:
(a)試験物質を、C12orf32ポリペプチドまたはその断片と接触させる段階;
(b)前記ポリペプチドまたはその断片と試験物質との結合(または結合活性)を検出する段階;および
(c)前記ポリペプチドに結合する試験物質を、癌を治療または予防するための候補物質として選択する段階。
本発明によれば、細胞増殖の阻害に対する試験物質の治療効果またはC12orf32関連疾患を治療もしくは予防するための候補物質の評価を行うことができる。それゆえ、本発明はまた、以下の段階を含む、C12orf32ポリペプチドまたはその断片を用いて、細胞増殖を阻害するための候補物質またはC12orf32関連疾患を治療もしくは予防するための候補物質をスクリーニングする方法を提供する:
(a)C12orf32ポリペプチドまたはその断片と試験物質とを接触させる段階;
(b)前記ポリペプチドまたは断片と試験物質との間の結合(または結合活性)を検出する段階;および
(c)(b)の結合を、試験物質の治療効果と関連付ける段階。
本発明の文脈において、治療効果と、C12orf32ポリペプチドまたはその機能的断片に対する結合レベルとを関連付けることができる。例えば、試験物質がC12orf32ポリペプチドまたはその機能的断片に結合する場合、その試験物質を、必要不可欠な治療効果を有する候補物質として同定または選択することができる。あるいは、試験物質がC12orf32ポリペプチドまたはその機能的断片に結合しない場合、その試験物質を、有意な治療効果を持たない物質と同定することができる。
あるいは、本発明によれば、癌の治療または予防に対する試験物質の潜在的な治療効果を評価または推定することもできる。いくつかの態様において、本発明は、以下の段階を含む、癌の治療もしくは予防またはC12orf32の過剰発現と関連する癌の阻害に対する試験物質の治療効果を評価または推定するための方法を提供する:
(a)試験物質をC12orf32ポリペプチドまたはその断片と接触させる段階;
(b)該ポリペプチドまたは断片と試験物質との間の結合(または結合活性)を検出する段階;および
(c)物質が該ポリペプチドに結合する場合に、潜在的な治療効果が示される、潜在的な治療効果と試験物質とを関連付ける段階。
本発明の文脈において、治療効果を、試験物質とC12orf32タンパク質との結合レベルに関連付けることができる。例えば、試験物質がC12orf32タンパク質に結合する場合、その試験物質を、必要不可欠な治療効果を有する候補物質として同定または選択することができる。あるいは、試験物質がC12orf32タンパク質に結合しない場合、その試験物質を、有意な治療効果を持たないと特徴付けることができる。
本発明において、C12orf32の発現を抑制することで、癌細胞の増殖が低減されることが明らかとなる。したがって、C12orf32に結合する候補物質をスクリーニングすることにより、癌を治療または予防する可能性がある候補物質を同定することができる。これらの候補物質が癌を治療または予防する可能性を、第二のおよび/またはさらなるスクリーニングにより評価して、癌の治療剤を同定することができる。
C12orf32ポリペプチドへの試験物質の結合は、例えば当該ポリペプチドに対する抗体を使用する免疫沈降法によって検出することができる。したがって、このような検出の目的で、スクリーニングのために使用されるC12orf32ポリペプチドまたはその断片は、抗体認識部位を含むことが好ましい。スクリーニングのために使用される抗体は、調製方法が当技術分野において周知である、本発明のC12orf32ポリペプチドの抗原性領域(例えばエピトープ)を認識する抗体であってもよく、また、任意の方法を本発明において使用して、このような抗体およびそれらの等価物を調製してもよい。
あるいは、C12orf32ポリペプチドもしくはその断片は、ポリペプチドのN末端またはC末端に対する、特異性が明らかにされているモノクローナル抗体のエピトープを導入することにより、当該モノクローナル抗体の認識部位(エピトープ)を含む融合タンパク質として発現され得る。市販のエピトープ−抗体システムを使用することができる(Experimental Medicine 1995, 13:85-90)。例えば、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、緑色蛍光タンパク質(GFP)などとの融合タンパク質を、そのマルチクローニングサイトを用いることにより発現できるベクターが市販されており、本発明のために使用することができる。さらに、エピトープに対する抗体を用いた免疫沈降法によって検出され得る非常に小さなエピトープを含む融合タンパク質もまた、当技術分野において公知である(Experimental Medicine 1995, 13:85-90)。C12orf32ポリペプチドまたはその断片の性質を変えない数個〜数十個のアミノ酸から構成されるそのようなエピトープもまた、本発明において使用することができる。例には、ポリヒスチジン(His−タグ)、インフルエンザ凝集体HA、ヒトc−myc、FLAG、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV−GP)、T7遺伝子10タンパク質(T7−タグ)、ヒト単純ヘルペスウイルス糖タンパク質(HSV−タグ)、E−タグ(モノクローナルファージ上のエピトープ)などが含まれ、それらを認識するモノクローナル抗体を、C12orf32ポリペプチドに結合するタンパク質をスクリーニングするためのエピトープ−抗体システムとして用いることができる(Experimental Medicine 13: 85-90 (1995))。
グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)もまた、免疫沈降法によって検出される融合タンパク質の対応物として周知である。GSTがC12orf32ポリペプチドまたはその断片と融合されるタンパク質として使用され、融合タンパク質を形成する場合、この融合タンパク質は、GSTに対する抗体、またはGSTに特異的に結合する物質、すなわちグルタチオン(例えばグルタチオン−セファロース4B)などのいずれかを用いて検出することができる。
免疫沈降法において、(C12orf32ポリペプチドもしくはその断片それ自体、またはそのポリペプチドもしくは断片にタグ付加されたエピトープを認識する)抗体を、C12orf32ポリペプチドと試験物質との反応混合物に添加することにより、免疫複合体が形成される。試験物質がポリペプチドに結合する能力を有する場合、形成される免疫複合体は、C12orf32ポリペプチド、試験物質、および抗体からなると考えられる。これに対して、試験物質がこのような能力を欠いている場合、形成される免疫複合体は、C12orf32ポリペプチドおよび抗体のみからなる。したがって、C12orf32ポリペプチドに対する試験物質の結合能力は、例えば形成された免疫複合体のサイズを測定することによって調べることができる。クロマトグラフィー、電気泳動などを含む、物質のサイズを検出するための任意の方法を使用することができる。例えば、マウスIgG抗体が検出に使用される場合、プロテインAまたはプロテインGセファロースを、形成された免疫複合体を定量するのに使用することができる。
免疫沈降に関するさらに詳細な情報については、例えば、Harlow et al., Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory publications, New York, 1988, 511-52を参照されたい。免疫沈降タンパク質の分析には一般的にSDS−PAGEが使用され、適切な濃度を有するゲルを用いて、タンパク質の分子量により、結合タンパク質を分析することができる。検出はクマシー染色法もしくは銀染色法などの、従来の染色法を用いて達成してもよく、または、検出が困難な場合、タンパク質に対する検出感度は、放射性同位体35S−メチオニンまたは35S−システインを含有する培地中で細胞を培養して、細胞中のタンパク質を標識し、そしてタンパク質を検出することにより向上させることができる。タンパク質の分子量が明らかにされている場合、標的タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲルから直接精製し、その配列を決定してもよい。
さらに、C12orf32ポリペプチドもしくはその断片に結合する物質をスクリーニングするために使用されるC12orf32ポリペプチドまたはその断片は、担体に結合されてもよい。当該ポリペプチドに結合するのに使用され得る担体の例には、アガロース、セルロース、およびデキストランなどの不溶性多糖、ならびにポリアクリルアミド、ポリスチレン、およびシリコンなどの合成樹脂が含まれ、好ましくは、上記の材料から調製された、市販のビーズおよびプレート(例えば、マルチウェルプレート、バイオセンサーチップなど)が使用され得る。ビーズを使用する場合、これらをカラム中に充填してもよい。または、磁性ビーズの使用も当技術分野において公知であり、これにより磁気を用いてビーズに結合させたポリペプチドおよび物質を容易に単離することが可能になる。
担体へのポリペプチドの結合は、化学的結合および物理的吸着などの常法に従って実施してもよい。または、ポリペプチドは、当該ポリペプチドを特異的に認識する抗体を介して担体に結合され得る。さらに、担体へのポリペプチドの結合は、アビジンとビオチンの組み合わせなどの相互作用する分子を用いて実施することもできる。
担体に結合したこのようなC12orf32ポリペプチドまたはその断片を使用するスクリーニングは、例えば、担体に結合したポリペプチドに試験物質を接触させる段階、この混合物をインキュベートする段階、担体を洗浄する段階、ならびに担体に結合した物質を検出および/または測定する段階を含む。緩衝液が結合を阻害しない限り、緩衝液中で、例えば、限定されないが、リン酸緩衝液およびトリス緩衝液中で、結合を実施してもよい。
スクリーニング方法において、このような担体に結合したC12orf32ポリペプチドまたはその断片および組成物(例えば、細胞抽出物、細胞溶解物など)が試験物質として使用される場合、このような方法は一般にアフィニティークロマトグラフィーと呼ばれる。例えば、C12orf32ポリペプチドを、アフィニティーカラムの担体上に固定して、当該ポリペプチドに結合することができる物質を含む試験物質をカラムに添加してもよい。試験物質を添加した後、カラムを洗浄し、次いでポリペプチドに結合した物質を、適切な緩衝液を用いて溶出させる。
表面プラズモン共鳴現象を使用するバイオセンサーは、本発明において結合した物質を検出または定量するための手段として使用され得る。このようなバイオセンサーが使用される場合、C12orf32ポリペプチドと試験物質との間の相互作用は、ごくわずかな量のポリペプチドを用い、かつ標識せずに、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムで観察することができる(例えば、BIAcore、Pharmacia)。したがって、BIAcoreなどのバイオセンサーを用いてポリペプチドと試験物質との間の結合を評価することが可能である。
合成化学化合物、または天然物質バンクもしくはランダムペプチドファージディスプレイライブラリ中の分子の中から、担体上に固定された特定のタンパク質をそれらの分子に曝露させることによって、その特定のタンパク質に結合する分子をスクリーニングする方法、およびタンパク質だけでなく化学化合物も単離する、コンビナトリアルケミストリー技術に基づくハイスループットスクリーニング方法(Wrighton et al., Science 1996, 273:458-64;Verdine, Nature 1996, 384:11-3)もまた、当業者には周知である。これらの方法もまた、C12orf32タンパク質またはその断片に結合する物質(アゴニストおよびアンタゴニストを含む)をスクリーニングするために使用することができる。
試験物質がタンパク質である場合、例えばウェストウェスタンブロット解析(Skolnik et al., Cell 1991, 65:83-90)を本発明の方法に使用することができる。具体的には、C12orf32ポリペプチドに結合するタンパク質は、ファージベクター(例えばZAP)を用いて、C12orf32ポリペプチドに結合する少なくとも1種類のタンパク質を発現することが予想される細胞、組織、器官、または培養細胞(例えばPC細胞株)からcDNAライブラリを最初に調製し、そのcDNAライブラリのベクターによってコードされるタンパク質をLBアガロース上で発現させ、発現されたタンパク質をフィルター上に固定し、精製および標識したC12orf32ポリペプチドを前述のフィルターと反応させ、そしてC12orf32ポリペプチドの標識に従って、C12orf32ポリペプチドが結合したタンパク質を発現しているプラークを検出することによって、得ることができる。
放射性同位体(例えば、3H、14C、32P、33P、35S、125I、131I)、酵素(例えば、アルカリ性ホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ)、蛍光性物質(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン)、およびビオチン/アビジンなどの標識物質を、本発明の方法においてC12orf32ポリペプチドの標識のために使用してもよい。タンパク質を放射性同位体で標識する場合、検出または測定は、液体シンチレーションによって実施することができる。または、タンパク質が酵素で標識される場合、酵素基質を添加して、発色などの基質の酵素的変化を吸光光度計で検出することによって、該タンパク質を検出または測定することができる。さらに、蛍光物質が標識として使用される場合、蛍光光度計を用いて、結合したタンパク質を検出または測定してもよい。
さらに、タンパク質に結合したC12orf32ポリペプチドは、C12orf32ポリペプチド、またはC12orf32ポリペプチドに融合されているペプチドもしくはポリペプチド(例えばGST)に特異的に結合する抗体を使用することによって、検出または測定することができる。本発明のスクリーニングにおいて抗体を使用する場合、抗体は、好ましくは前述の標識物質の1つで標識され、標識物質に基づいて検出または測定される。または、C12orf32ポリペプチドに対する抗体を、標識物質で標識された二次抗体で検出される一次抗体として使用してもよい。さらに、本発明のスクリーニングにおいてC12orf32ポリペプチドに結合する抗体は、プロテインGカラムまたはプロテインAカラムを用いて検出または測定してもよい。
本スクリーニング方法において用いられる抗体は、当技術分野において周知の技術を用いて調製することができる。調製される抗体に対する抗原は任意の動物種に由来してもよいが、好ましくは、ヒト、マウス、ウサギ、またはラットなどの哺乳類に由来し、より好ましくは、ヒトに由来する。抗原として用いられるポリペプチドは、組換えによって産生されてもよく、または天然源から単離されてもよい。免疫抗原として用いられるポリペプチドは完全なタンパク質であっても、または完全なタンパク質に由来する部分ペプチドであってもよい。
任意の哺乳動物を抗原で免疫してもよいが、細胞融合に用いられる親細胞との適合性を考慮に入れることが好ましい。一般に、齧歯目(Rodentia)、ウサギ目(Lagomorpha)、または霊長目(Primate)の動物が用いられる。齧歯目の動物には、例えば、マウス、ラット、およびハムスターが含まれる。ウサギ目の動物には、例えば、ノウサギ、ナキウサギ、およびイエウサギが含まれる。霊長目の動物には、例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis)、アカゲザル、マントヒヒ、およびチンパンジーなどの狭鼻下目(Catarrhini)のサル(旧世界ザル)が含まれる。
動物を抗原で免疫するための方法は、当技術分野において周知である。抗原の腹腔内注射または皮下注射は、哺乳類を免疫するための標準的な方法である。より具体的には、抗原は、適切な量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理食塩水などに希釈および懸濁してもよい。所望の場合、抗原懸濁液を、適切な量のフロイント完全アジュバントなどの標準的なアジュバントと混合し、エマルジョンにし、次いで哺乳動物に投与してもよい。好ましくは、それに続いて、適切な量のフロイント不完全アジュバントと混合した抗原を4日〜21日毎に数回投与する。免疫するため、適切な担体を用いてもよい。上記の免疫の後、標準的な方法により、所望の抗体の量の増加に関して血清を検査する。
血清中の所望の抗体の増加に関して検査された免疫化哺乳類から血液を採取することによって、および任意の従来の方法によりその血液から血清を分離することによって、ポリクローナル抗体を調製することができる。ポリクローナル抗体には、ポリクローナル抗体を含有する血清、ならびに該血清から単離されたポリクローナル抗体を含有する画分が含まれる。免疫グロブリンGまたは免疫グロブリンMは、目的のポリペプチドのみを認識する画分から、例えば、該ポリペプチドが結合されたアフィニティーカラムを用いて、さらに当該画分をプロテインAカラムまたはプロテインGカラムを用いて精製して、調製することができる。
モノクローナル抗体を調製するため、前述したように、抗原で免疫し、かつ血清中の所望の抗体のレベル増加を確認した哺乳類から免疫細胞を採取し、それらを細胞融合に供する。細胞融合に用いられる免疫細胞は、脾臓から得ることが好ましい。上記の免疫細胞と融合される他の好ましい親細胞には、例えば、哺乳類の骨髄腫細胞、およびより好ましくは、薬物による融合細胞の選択のために獲得された特性を有する骨髄腫細胞が含まれる。
上記の免疫細胞および骨髄腫細胞は公知の方法、例えば、Milsteinらの方法(Methods Enzymol 73: 3-46 (1981))にしたがって融合することができる。
細胞融合によって結果的に得られたハイブリドーマは、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含有する培地)などの、標準的な選択培地中でそれらを培養することによって選択することができる。典型的には、HAT培地中で数日間〜数週間、つまり所望のハイブリドーマを除く他の細胞全てを死滅させるのに十分な時間、細胞培養を継続する。次いで、標準的な限界希釈を行って、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞をスクリーニングおよびクローニングする。
ハイブリドーマを調製するために非ヒト動物を抗原で免疫する上記の方法に加えて、EBウイルスに感染したものなどのヒトリンパ球を、抗原、このような抗原を発現する細胞、またはそれらの溶解物により、インビトロで免疫してもよい。次に、免疫されたリンパ球を、U266などの、無制限に分裂できるヒト由来骨髄腫細胞と融合させて、前記抗原に結合できる所望のヒト抗体を産生するハイブリドーマを得る(特開昭(JP−A)63−17688号)。
続いて、得られたハイブリドーマをマウスの腹腔へ移植して、そして腹水を取り出してもよい。得られたモノクローナル抗体は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、プロテインAカラムもしくはプロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、または目的の抗原を保有するアフィニティーカラムによって精製することができる。
C12orf32ポリペプチドに対する抗体は、本スクリーニング方法においてだけでなく、「I.癌の診断」に記述されているように生体試料中の癌マーカーとしての該ポリペプチドの検出のためにも使用することができる。それらはさらに、関心対象のポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストの候補としても役立ち得る。加えて、アンタゴニストの候補として役立つそのような抗体は、以下で記述されるように、乳癌を含む、C12orf32ポリペプチドに関連する疾患に対する抗体治療に適用することができる。
このようにして得られるモノクローナル抗体は、遺伝子工学技術を用いて組換えにより調製することもできる(例えば、MacMillan Publishers LTDによって英国で出版されたBorrebaeck and Larrick, Therapeutic Monoclonal Antibodies (1990)を参照のこと)。例えば、抗体をコードするDNAを、該抗体を産生するハイブリドーマまたは免疫化リンパ球などの免疫細胞からクローニングし、適切なベクターへ挿入し、そして宿主細胞へ導入して、組換え抗体を調製してもよい。このような組換え抗体を、本スクリーニングとの関連において使用することもできる。
さらに、スクリーニングなどにおいて用いられる抗体は、元の結合活性を保持する限り、抗体の断片または修飾抗体であってよい。例えば、抗体断片は、Fab、F(ab')2、Fv、またはH鎖およびL鎖由来のFv断片が適切なリンカーによって連結される単鎖Fv(scFv)であってよい(Huston et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 5879-83 (1988))。より具体的には、抗体断片は、パパインまたはペプシンなどの酵素で抗体を処理することによって作出されてもよい。あるいは、抗体断片をコードする遺伝子を構築し、発現ベクターへ挿入し、かつ適切な宿主細胞中で発現させてもよい(例えば、Co et al., J Immunol 152: 2968-76 (1994); Better and Horwitz, Methods Enzymol 178: 476-96 (1989); Pluckthun and Skerra, Methods Enzymol 178: 497-515 (1989); Lamoyi, Methods Enzymol 121: 652-63 (1986); Rousseaux et al., Methods Enzymol 121: 663-9 (1986); Bird and Walker, Trends Biotechnol 9: 132-7 (1991)を参照のこと)。
抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)などの種々の分子との結合によって修飾されてもよい。修飾抗体は、抗体を化学的に修飾することによって得ることができる。これらの修飾方法は当技術分野において常套である。
上記のようにして得られた抗体を、均質になるまで精製してもよい。例えば、抗体の分離および精製は、タンパク質全般に対して使用される分離および精製方法にしたがって行うことができる。例えば、抗体は、アフィニティークロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィー、ろ過、限外ろ過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動などを適切に選択および併用することによって、分離および単離することができる(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory (1988));しかしながら、本発明はそれに限定されない。プロテインAカラムおよびプロテインGカラムをアフィニティーカラムとして用いることができる。使用される例示的なプロテインAカラムには、例えば、Hyper D、POROS、およびセファロースF.F(Pharmacia)が含まれる。
例示的なクロマトグラフィーには、アフィニティークロマトグラフィー以外に、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲルろ過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィーなどが含まれる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1996))。クロマトグラフィーの手技は、HPLCおよびFPLCなどの液相クロマトグラフィーによって行うことができる。
あるいは、本発明のスクリーニング方法の別の態様において、細胞を利用するツーハイブリッドシステムを用いてもよい(「MATCHMAKER Two−Hybrid system」、「Mammalian MATCHMAKER Two−Hybrid Assay Kit」、「MATCHMAKER one−Hybrid system」(Clontech);「HybriZAP Two−Hybrid Vector System」(Stratagene);参考文献「Dalton et al., Cell 1992, 68:597-612」および「Fields et al., Trends Genet 1994, 10:286-92」)。ツーハイブリッドシステムでは、C12orf32ポリペプチドまたはその断片はSRF結合領域またはGAL4結合領域に融合され、酵母細胞中で発現される。cDNAライブラリを、ライブラリが、発現時に、VP16またはGAL4転写活性化領域に融合されるように、C12orf32ポリペプチドに結合する少なくとも一つのタンパク質を発現することが予想される細胞から調製する。次いでcDNAライブラリを上記の酵母細胞に導入し、ライブラリに由来するcDNAを、検出された陽性クローンから単離する(C12orf32ポリペプチドに結合するタンパク質が酵母細胞において発現される場合、この二つの結合がレポーター遺伝子を活性化し、陽性クローンを検出可能にする)。上記で単離されたcDNAを大腸菌(E.coli)へ導入し、タンパク質を発現させることにより、cDNAによってコードされるタンパク質を調製することができる。
レポーター遺伝子としては、例えば、HIS3遺伝子に加えてAde2遺伝子、lacZ遺伝子、CAT遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子などを用いることができる。
このスクリーニングによって単離された物質は、C12orf32ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストの候補である。「アゴニスト」という用語は、それに結合することによって、ポリペプチドの機能を活性化する分子を意味する。一方、「アンタゴニスト」という用語は、それに結合することによって、ポリペプチドの機能を阻害する分子を意味する。さらに、このスクリーニングによりアンタゴニストとして単離された物質は、C12orf32ポリペプチドと分子(核酸(RNAおよびDNA)ならびにタンパク質を含む)とのインビボでの相互作用を阻害する候補である。
III−1−2.ポリペプチドの生物学的活性の検出による物質の同定
本発明はまた、以下の通りの段階を含む、C12orf32ポリペプチドまたはその断片を用いて癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法を提供する:
(a)試験物質をC12orf32ポリペプチドまたはその断片と接触させる段階;
(b)段階(a)のポリペプチドまたは断片の生物学的活性を検出する段階;および
(c)試験物質の非存在下での生物学的活性と比べてポリペプチドの生物学的活性を低減する試験物質を選択する段階。
本発明によれば、細胞増殖の阻害に対する試験物質の治療効果またはC12orf32に関連する疾患を治療もしくは予防するための候補物質を評価することができる。それゆえ、本発明はまた、以下の通りの段階を含む、C12orf32ポリペプチドまたはその断片を用いて、細胞増殖を阻害するための候補物質またはC12orf32に関連する疾患を治療もしくは予防するための候補物質をスクリーニングする方法を提供する:
(a)試験物質を、C12orf32ポリペプチドまたはその機能的断片と接触させる段階;
(b)段階(a)のポリペプチドまたは断片の生物学的活性を検出する段階、および (c)(b)の生物学的活性を前記試験物質の治療効果と関連付ける段階。
あるいは、いくつかの態様において、本発明は、以下の段階を含む、癌の治療もしくは予防またはC12orf32の過剰発現と関連する癌の阻害に対する試験物質の治療効果を評価または推定するための方法を提供する:
(a)試験物質を、C12orf32ポリペプチドまたはその機能的断片と接触させる段階;
(b)段階(a)のポリペプチドまたは断片の生物学的活性を検出する段階、および
(c)物質が、試験物質の非存在下で検出された該ポリペプチドの生物学的活性と比べてC12orf32遺伝子のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的活性を抑制する場合、潜在的な治療効果が示される、潜在的な治療効果と試験物質とを関連付ける段階。
本発明において、治療効果を、C12orf32ポリペプチドまたはその機能的断片の生物学的活性と関連付けることができる。例えば、試験物質が、試験物質の非存在下で検出されたレベルと比べてC12orf32ポリペプチドまたはその機能的断片の生物学的活性を抑制または阻害する場合、その試験物質を、治療効果を有する候補物質として同定または選択することができる。あるいは、試験物質が、試験物質の非存在下で検出されたレベルと比べてC12orf32ポリペプチドまたはその機能的断片の生物学的活性を抑制または阻害しない場合、その試験物質を、有意な治療効果を持たない物質と同定することができる。
本発明において、C12orf32の発現の抑制が、癌細胞増殖を低減することが明らかにされている。したがって、該ポリペプチドの生物学的活性を抑制する候補物質をスクリーニングすることにより、癌を治療または予防する可能性がある候補物質を同定することができる。癌の治療または予防におけるこれらの候補物質の可能性を、第二のおよび/またはさらなるスクリーニングにより評価して、癌の治療物質を同定することができる。例えば、C12orf32タンパク質と結合している物質が、癌の上記活性を阻害する場合、このような物質はC12orf32特異的な治療効果を有すると結論付けることができる。
C12orf32ポリペプチドの生物学的活性を抑制または低減する限り、任意のポリペプチドをスクリーニングに用いることができる。本発明の文脈において、「生物学的活性を抑制または低減する」という語句は、その物質の非存在下と比べてC12orf32の生物学的活性の少なくとも10%の抑制、より好ましくは少なくとも25%、50%または75%の抑制および最も好ましくは少なくとも90%の抑制を包含する。そのような抑制は本スクリーニング法の指標となり得る。
本発明によれば、C12orf32ポリペプチドは乳癌細胞の増殖または生存に必要とされることが実証された。スクリーニングの指標として使用できるC12orf32ポリペプチドの生物学的活性には、ヒトC12orf32ポリペプチドのそのような細胞増殖促進活性が含まれる。
本方法において検出される生物学的活性が細胞増殖である場合、それは、例えば、C12orf32ポリペプチドまたはその断片を発現する細胞を調製し、試験物質の存在下で細胞を培養し、および細胞増殖の速度を決定することにより、細胞周期などを測定することにより、ならびにコロニー形成活性を測定することにより、検出することができる。
好ましい態様において、C12orf32ポリペプチドを発現しない対照細胞が用いられる。したがって、本発明はまた、以下の通りの段階を含む、C12orf32ポリペプチドまたはその断片を用いて、細胞増殖を阻害するための候補物質またはC12orf32に関連する疾患を治療もしくは予防するための候補物質をスクリーニングする方法を提供する:
(a)試験物質の存在下で、C12orf32ポリペプチドまたはその機能的断片を発現する細胞およびC12orf32ポリペプチドまたはその機能的断片を発現しない対照細胞を培養する段階;
(b)前記タンパク質を発現する細胞および対照細胞の増殖を検出する段階;ならびに (c)対照細胞でおよび試験物質の非存在下で検出された増殖と比べて前記タンパク質を発現する細胞での増殖を阻害する試験物質を選択する段階。
別の局面において、本発明はまた、以下の段階を含むスクリーニング方法を提供する:
(a)試験物質をC12orf32ポリペプチドまたはその断片と接触させる段階;
(b)前記ポリペプチドまたは断片と試験物質との間の結合を検出する段階;
(c)前記ポリペプチドに結合する試験物質を選択する段階;
(d)段階(c)で選択された試験物質をC12orf32ポリペプチドまたはその断片と接触させる段階;
(e)該ポリペプチドまたは断片の生物学的活性を、前記物質の非存在下で検出された生物学的活性と比較する段階;および
(f)乳癌を治療または予防するための候補剤として前記ポリペプチドの生物学的活性を抑制する物質を選択する段階。
本スクリーニング法によって単離された物質は、C12orf32ポリペプチドのアンタゴニストの候補であり、したがって、該ポリペプチドと分子(核酸(RNAおよびDNA)ならびにタンパク質を含む)とのインビボでの相互作用を阻害する候補である。
本スクリーニング法において用いられるポリペプチドは、標準的な手順を用いて組換えにより産生することができる。例えば、関心対象のポリペプチドまたはその断片をコードする遺伝子は、該遺伝子をpSV2neo、pcDNA I、pcDNA3.1、pCAGGSおよびpCD8といった、外来遺伝子用の発現ベクターへ挿入することにより動物細胞中で発現させることができる。発現のために用いられるプロモーターは、一般に使用され得る任意のプロモーターであってよく、例えば、SV40初期プロモーター(Rigby in Williamson (ed.), Genetic Engineering, vol. 3. Academic Press, London, 83-141 (1982))、EF−αプロモーター(Kim et al., Gene 91: 217-23 (1990))、CAGプロモーター(Niwa et al., Gene 108: 193 (1991))、RSV LTRプロモーター(Cullen, Methods in Enzymology 152: 684-704 (1987))、SRαプロモーター(Takebe et al., Mol Cell Biol 8: 466-72 (1988))、CMV極初期プロモーター(Seed and Aruffo, Proc Natl Acad Sci USA 84: 3365-9 (1987))、SV40後期プロモーター(Gheysen and Fiers, J Mol Appl Genet 1: 385-94 (1982))、アデノウイルス後期プロモーター(Kaufman et al., Mol Cell Biol 9: 946-58 (1989))、HSV TKプロモーターなどを含む。外来遺伝子を発現させるための動物細胞中への遺伝子の導入は、任意の従来の方法、例えば、エレクトロポレーション法(Chu et al., Nucleic Acids Res 15: 1311-26 (1987))、リン酸カルシウム法(Chen and Okayama, Mol Cell Biol 7: 2745-52 (1987))、DEAEデキストラン法(Lopata et al., Nucleic Acids Res 12: 5707-17 (1984); Sussman and Milman, Mol Cell Biol 4: 1641-3 (1984))、リポフェクチン法(Derijard B, Cell 76: 1025-37 (1994); Lamb et al., Nature Genetics 5: 22-30 (1993): Rabindran et al., Science 259: 230-4 (1993))などにしたがって行うことができる。ポリペプチドは、該ポリペプチドのN末端またはC末端に、特異性が明らかにされているモノクローナル抗体のエピトープを導入することによりモノクローナル抗体の認識部位(エピトープ)を含む融合タンパク質として発現させることができる。あるいは、市販されているエピトープ−抗体系を用いることもできる(Experimental Medicine 13: 85-90 (1995))。例えば、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)などとの融合タンパク質を、マルチクローニング部位の使用によって発現できるベクターが市販されている。
融合によってオリジナルのポリペプチドの特性を変えないように数個から十数個のアミノ酸から構成されたごく小さなエピトープを導入することにより調製された融合タンパク質も、本明細書において提供される。ポリヒスチジン(His−タグ)、インフルエンザ凝集体HA、ヒトc−myc、FLAG、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV−GP)、T7遺伝子10タンパク質(T7−タグ)、ヒト単純ヘルペスウイルス糖タンパク質(HSV−タグ)、E−タグ(モノクローナルファージ上のエピトープ)などのようなエピトープおよびそれらを認識する抗体を、ポリペプチド間の結合活性を検出するためのエピトープ−抗体系として用いることができる(Experimental Medicine 13: 85-90 (1995))。
III−2.ヌクレオチドに基づくスクリーニング方法
III−2−1.C12orf32遺伝子を用いるスクリーニング方法
上記で詳細に論じられているように、C12orf32遺伝子の発現レベルを制御することによって、癌の発症および進行を制御することができる。したがって、癌の治療または予防において使用できる物質を、指標としてC12orf32遺伝子の発現レベルを使用するスクリーニングを通じて同定することができる。本発明に関して、そのようなスクリーニングは、例えば、以下の段階を含むことができる:
(a)C12orf32遺伝子を発現する細胞と試験物質とを接触させる段階;
(b)C12orf32遺伝子の発現レベルを検出する段階;
(c)前記発現レベルを、前記物質の非存在下で検出された発現レベルと比較する段階;および
(d)前記発現レベルを低減する物質を、癌を治療または予防するための候補物質として選択する段階。
本発明によれば、細胞増殖の阻害に対する試験物質またはC12orf32関連疾患を治療もしくは予防するための候補物質の治療効果を評価することができる。それゆえ、本発明はまた、乳癌細胞の増殖を抑制する候補物質をスクリーニングする方法、およびC12orf32関連疾患を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明に関して、そのようなスクリーニングは、例えば、以下の段階を含むことができる:
(a)C12orf32遺伝子を発現する細胞と試験物質とを接触させる段階;
(b)C12orf32遺伝子の発現レベルを検出する段階;および
(c)(b)の発現レベルを、試験物質の治療効果と関連付ける段階。
あるいは、いくつかの態様において、本発明は、以下の段階を含む、癌の治療もしくは予防またはC12orf32の過剰発現と関連する癌の阻害に対する試験物質の治療効果を評価または推定するための方法を提供する:
(a)試験物質を、C12orf32遺伝子を発現する細胞と接触させる段階;
(b)C12orf32遺伝子の発現レベルを検出する段階;および
(c)試験物質がレポーター遺伝子の発現レベルまたは活性を低減する場合に、潜在的な治療効果が示される、潜在的な治療効果と試験物質とを関連付ける段階。
本発明に関連して、C12orf32遺伝子の発現レベルを治療効果と関連付けることができる。例えば、試験物質が、当該試験物質の非存在下で検出されたレベルと比べてC12orf32遺伝子の発現レベルを低減する場合、この試験物質を、治療効果を持つ候補物質として同定または選択することができる。あるいは、試験物質が、当該試験物質の非存在下で検出されたレベルと比べてC12orf32遺伝子の発現レベルを低減しない場合、この試験物質を、有意な治療効果を持たない物質として同定することができる。
本明細書において、C12orf32の発現を抑制することで、癌細胞の増殖が低減されることが明らかになった。したがって、C12orf32の発現レベルを低減する候補物質をスクリーニングすることにより、癌を治療または予防する可能性がある候補物質を同定することができる。これらの候補物質が癌を治療または予防する可能性を第二のおよび/またはさらなるスクリーニングにより評価して、癌の治療薬を同定することができる。
C12orf32遺伝子の発現またはその遺伝子産物の活性を阻害する物質は、C12orf32遺伝子を発現する細胞を試験物質と接触させ、次いでC12orf32遺伝子の発現レベルを決定することによって同定することができる。当然、同定は、単一の細胞の代わりに、この遺伝子を発現する細胞集団を用いて実施してもよい。ある物質の非存在下での発現レベルと比較して、その物質の存在下で検出される発現レベルが低下している場合、その物質がC12orf32遺伝子の阻害物質であることが示されて、その物質が癌を阻害するのに有用であり、したがって、癌の治療または予防用に使用され得る候補物質であることが示される。
遺伝子の発現レベルは、当業者に周知の方法によって推定することができる。C12orf32遺伝子の発現レベルは、例えば「I−1.癌または癌を発症する素因を診断するための方法」の項目で前述した方法にしたがって決定することができる。
このような同定のために使用される細胞または細胞集団は、C12orf32遺伝子を発現する限り、任意の細胞または任意の細胞集団であってよい。例えば、細胞または集団は、ある乳癌組織に由来する乳房上皮細胞であってもよく、またはそれを含んでいてもよい。または、細胞もしくは集団は、乳癌細胞を含む癌細胞由来の不死化細胞であってもよく、またはそれらを含んでいてもよい。C12orf32遺伝子を発現する細胞には、例えば癌から樹立された細胞株(例えば、HCC−1937、BT−549、MCF−7、BSY−1、MDA−MB−435S、SKBR−3、T−47D、MDA−MB−231、YMB−1などの乳癌細胞株)が含まれる。さらに、細胞または集団は、C12orf32遺伝子をトランスフェクトした細胞でもよく、またはそれを含んでもよい。
本発明の方法は、前述の様々な物質のスクリーニングを可能にし、かつアンチセンスRNA、siRNAなどを含む機能的核酸分子をスクリーニングするのに特に適している。
III−2−2.C12orf32遺伝子の転写調節領域を使用するスクリーニング方法
別の局面によれば、本発明は、以下の段階を含む方法を提供する:
(a)C12orf32遺伝子の転写調節領域と該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターを導入した細胞に、試験物質を接触させる段階;
(b)前記レポーター遺伝子の発現または活性を検出する段階;
(c)(b)の発現レベルまたは活性を、前記試験物質の非存在下で検出される発現レベルまたは活性と比較する段階;および
(d)前記レポーター遺伝子の発現または活性を低下させる試験物質を、癌を治療または予防するための候補物質として選択する段階。
本発明によれば、細胞増殖の阻害に対する試験物質の治療効果、またはC12orf32関連疾患を治療もしくは予防するための候補物質の治療効果を評価することができる。したがって、本発明はまた、癌細胞の増殖を抑制する候補物質をスクリーニングする方法、およびC12orf32関連疾患を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法を提供する。
別の局面によれば、本発明は、以下の段階を含む方法を提供する:
(a)試験物質を、C12orf32遺伝子の転写調節領域および該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子から構成されたベクターが導入された細胞と接触させる段階;
(b)前記レポーター遺伝子の発現または活性を検出する段階;および
(c)(b)の発現レベルを試験物質の治療効果と関連付ける段階。
あるいは、いくつかの態様において、本発明は、以下の段階を含む、癌の治療もしくは予防またはC12orf32の過剰発現と関連する癌の阻害に対する試験物質の治療効果を評価または推定するための方法を提供する:
(a)試験物質を、C12orf32遺伝子の転写調節領域および該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子から構成されたベクターが導入された細胞と接触させる段階;
(b)前記レポーター遺伝子の発現または活性を検出する段階;および
(c)試験物質が前記レポーター遺伝子の発現レベルまたは活性を低減する場合、潜在的な治療効果が示される、潜在的な治療効果と試験物質とを関連付ける段階。
本発明では、該レポーター遺伝子の発現または活性を治療効果と関連付けることができる。例えば、試験物質が、該試験物質の非存在下で検出されたレベルと比べて該レポーター遺伝子の発現または活性を低減する場合、この試験物質を、治療効果を持つ候補物質として同定または選択することができる。あるいは、試験物質が、該試験物質の非存在下で検出されたレベルと比べて該レポーター遺伝子の発現または活性を低減しない場合、当該試験物質を、有意な治療効果を持たない物質として同定することができる。
本明細書において、C12orf32の発現を抑制することで、細胞増殖が低減されることが明らかになった。したがって、該レポーター遺伝子の発現または活性を低減する候補物質をスクリーニングすることにより、癌を治療または予防する可能性がある候補物質を同定することができる。これらの候補物質が癌を治療または予防する可能性を第二のおよび/またはさらなるスクリーニングにより評価して、癌の治療薬を同定することができる。
好適なレポーター遺伝子および宿主細胞は当技術分野において周知である。遺伝子のヌクレオチド配列情報に基づきゲノムライブラリから転写調節領域を含むヌクレオチドセグメントとして得ることができるC12orf32遺伝子の転写調節領域を用いて、スクリーニングに必要なレポーター構築物を調製することができる。
転写調節領域は、例えば、C12orf32遺伝子のプロモーター配列であり得る。スクリーニングに必要なレポーター構築物は、C12orf32遺伝子の転写調節領域にレポーター遺伝子配列をつなげることによって調製することができる。本明細書におけるC12orf32遺伝子の転写調節領域は、開始コドンから少なくとも500bp上流まで、好ましくは1,000bp上流まで、より好ましくは5,000または10,000bp上流までの領域である。転写調節領域を含むヌクレオチドセグメントは、ゲノムライブラリから単離することができ、またはPCRによって増やすことができる。転写調節領域を同定するための方法、およびまたアッセイプロトコルは周知である(Molecular Cloning third edition chapter 17, 2001, Cold Springs Harbor Laboratory Press)。
C12orf32遺伝子の調節配列(例えばプロモーター配列)に機能的に連結されているレポーター遺伝子をトランスフェクトした細胞を使用する場合、レポーター遺伝子産物の発現レベルを検出することにより、C12orf32遺伝子の発現を阻害または亢進するものとして物質を同定することができる。
例示的なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、イソギンチャクモドキ(Discosoma sp.)赤色蛍光タンパク質(DsRed)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、lacZ、およびβグルクロニダーゼ(GUS)が挙げられるが、これらに限定されることはなく、宿主細胞はCOS7、HEK293、HeLa、Ade2遺伝子、HIS3遺伝子、および当技術分野において周知の他のものである。これらの遺伝子の発現の検出のための方法は、当技術分野において周知である。
レポーター構築物を含むベクターを、宿主細胞に感染させることができ、レポーター遺伝子の発現または活性を当技術分野において周知の方法によって(例えば、ルミノメーター、吸光光度計、フローサイトメーターなどを用いて)検出する。本発明に関して、「発現または活性を低減する」という語句は、化合物の非存在下における場合と比較したレポーター遺伝子の発現または活性の少なくとも10%の低減、より詳しくは少なくとも25%、50%または75%の低減、および最も好ましくは少なくとも95%の低減を包含する。
III−3.個々の個体に適切な治療物質の選択
個体の遺伝子構成の差異により、様々な薬物を代謝する相対的な能力が異なる場合がある。対象中で代謝されて抗腫瘍物質として作用する物質は、癌性状態に特徴的な遺伝子発現パターンから、非癌性状態に特徴的な遺伝子発現パターンへの、対象の細胞における遺伝子発現パターンの変化を誘導することによって、自ら顕在化することができる。したがって、本明細書において開示される癌性および非癌性の細胞間で差次的に発現されるC12orf32遺伝子により、選択された対象由来の試験細胞集団において、癌の推定上の治療的阻害物質または予防的阻害物質を試験して、その物質が対象において癌の適切な阻害物質であるかどうかを判定することが可能になる。
個々の対象にとって適切な癌の阻害物質を同定するために、対象由来の試験細胞集団を候補治療物質に曝露し、C12orf32遺伝子の発現を決定する。
本発明の方法の文脈において、試験細胞集団は、C12orf32遺伝子を発現する癌細胞を含む。好ましくは、試験細胞は乳房上皮細胞である。
具体的には、試験細胞集団は、候補治療物質の存在下でインキュベートしてもよく、かつ試験細胞集団におけるC12orf32遺伝子の発現を測定し、1種類または複数種類の参照プロファイル、例えば癌性の参照発現プロファイルまたは非癌性の参照発現プロファイルと比較してもよい。
癌を含む参照細胞集団と比較して試験細胞集団におけるC12orf32遺伝子の発現が減少している場合、その物質が治療能力を有することが示唆される。あるいは、癌を含まない参照細胞集団と比べて試験細胞集団におけるC12orf32遺伝子の発現が類似している場合、その物質が治療能力を有することが示唆される。
IV.癌を治療または予防するための医薬組成物:
本発明のスクリーニング方法のいずれかによってスクリーニングされた物質、C12orf32遺伝子のアンチセンス核酸および二本鎖分子(例えば、siRNA)、およびC12orf32ポリペプチドに対する抗体は、C12orf32遺伝子の発現、またはC12orf32ポリペプチドの生物学的活性を阻害または抑制し、かつ癌細胞の周期の調節および癌細胞の増殖を阻害するかまたは撹乱する。かくして、本発明は癌を治療または予防するための組成物を提供し、この組成物は、本発明のスクリーニング方法のいずれかによってスクリーニングされた物質、C12orf32遺伝子のアンチセンス核酸および二本鎖分子、またはC12orf32ポリペプチドに対する抗体を含む。本組成物は癌、具体的には乳癌を治療または予防するために用いることができる。
これらの組成物は、ヒト、ならびにマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、およびチンパンジーなど他の哺乳動物に対する医薬として使用してもよい。
本発明の文脈において、以下に詳述する本発明の活性成分(スクリーニングされた物質、アンチセンス核酸、二本鎖分子、抗体などを含む)に適した薬学的製剤には、経口投与、直腸投与、経鼻投与、局所投与(頬側および舌下を含む)、膣内投与もしくは非経口投与(筋肉内、皮下、および静脈内投与を含む)、または吸入もしくは吹入による投与に適したものが含まれる。好ましくは、投与は静脈内である。製剤は任意で、個別の投薬単位で包装される。
経口投与に適した医薬製剤には、カプセル剤、マイクロカプセル剤、カシェ剤、および錠剤が含まれ、それぞれ所定量の活性成分を含む。適切な製剤には、散剤、エリキシル剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、および乳剤も含まれる。活性成分は、任意で、ボーラス舐剤、またはペースト剤として投与される。または、必要に応じて、医薬組成物は、水または他の任意の薬学的に許容される液体による滅菌溶液または滅菌懸濁液の注射剤の形態で、非経口的に投与され得る。例えば、本発明の活性成分は、一般に認められている薬物製造に必要とされる単位用量形態で、薬学的に許容される担体または媒体、具体的には、滅菌水、生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁化剤、界面活性剤、安定化剤、矯味剤、賦形剤、溶剤、保存剤、および結合剤などと混合することができる。このような製剤中に含まれる活性成分の量により、指定された範囲内の適切な投薬量が取得できるようになる。
錠剤およびカプセル剤中に混合することができる添加剤の例には、ゼラチン、トウモロコシデンプン、トラガカントゴム、およびアラビアゴムなどの結合剤;結晶セルロースなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ゼラチン、およびアルギン酸などの膨張剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;スクロース、ラクトース、またはサッカリンなどの甘味剤;ならびにペパーミント、アカモノ(Gaultheria adenothrix)油、およびサクランボなどの矯味剤が含まれるが、これらに限定されない。錠剤は、任意で1種類または複数種類の製剤用成分と共に、圧縮または成形することによって製造してもよい。粉末または顆粒など易流動性の形態の活性成分を、任意で結合剤、滑沢剤、不活性な希釈剤、潤滑剤、界面活性剤、または分散剤と混合して、適切な機械で圧縮することによって、圧縮錠剤を調製してもよい。不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を適切な機械で成形することによって、成形錠剤を製造してもよい。当技術分野において周知の方法によって、錠剤をコーティングしてもよい。錠剤を任意で、インビボでの活性成分の徐放または制御放出を提供するように製剤化してもよい。錠剤のパッケージは、毎月服用されるべき錠剤1つを含んでもよい。
さらに、単位剤形がカプセル剤である場合、前述の成分に加えて、油などの液体担体をさらに含めることができる。
経口用液体製剤は、例えば水性もしくは油性の懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤、もしくはエリキシル剤の形態でもよく、または使用前に水もしくは他の適切な溶剤を用いて溶解するための乾燥製品として提供されてもよい。このような液体製剤は、懸濁化剤、乳化剤、非水性溶剤(食用油を含んでもよい)、または保存剤など従来の添加剤を含んでもよい。
非経口投与用の製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および対象とするレシピエントの血液とその製剤を等張性にする溶質を含んでもよい、水性および非水性の無菌注射液剤、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性の滅菌懸濁剤が含まれる。製剤は、単位投与用容器または複数回投与用容器、例えば密閉されたアンプルおよびバイアルに入れて提供してもよく、使用する直前に、無菌の液体担体、例えば生理食塩水、注射用水の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。または、製剤を持続注入用に提供してもよい。用時溶解注射用の液剤および懸濁剤は、先に述べた種類の無菌の散剤、顆粒剤、および錠剤から調製され得る。
さらに、注射用の無菌複合体は、注射に適した蒸留水などの溶剤を用いて、通常の薬物製造に従って製剤化することができる。D−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、および塩化ナトリウムなどのアジュバントを含む、生理食塩水、グルコース、および他の等張性の液体が、注射用の水性液剤として使用され得る。これらは、アルコール、例えばエタノール;プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなどの多価アルコール;ならびにポリソルベート80(商標)およびHCO−50などの非イオン性界面活性剤など適切な可溶化剤と組み合わせて使用することができる。
ゴマ油またはダイズ油を、油性の液体として使用することができ、これは可溶化剤としての安息香酸ベンジルまたはベンジルアルコールと組み合わせて使用してもよく、かつリン酸緩衝液および酢酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液、塩酸プロカインなどの鎮痛剤、ベンジルアルコールおよびフェノールなどの安定化剤、ならびに/または抗酸化剤と共に製剤化してもよい。調製した注射剤は、適切なアンプルに充填することができる。
直腸投与用の製剤には、ココアバターまたはポリエチレングリコールなど標準的な担体を伴う坐剤が含まれる。口に、例えば口腔内または舌下に局所投与するための製剤には、スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴムなどの風味付きの基剤中に活性成分を含むトローチ剤、ならびにゼラチン、グリセリン、スクロース、またはアラビアゴムなどの基剤中に活性成分を含む香錠が含まれる。活性成分を鼻腔内投与する場合、液体スプレーもしくは分散性の散剤、または滴剤の形態で使用され得る。滴剤はまた、1種類もしくは複数種類の分散剤、可溶化剤、または懸濁化剤を含む水性または非水性の基剤と共に製剤化することができる。
吸入による投与の場合、組成物は、注入器、ネブライザー、加圧パック、またはエアロゾルスプレーを送達する他の好都合な手段から都合よく送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切な気体など適切な噴射剤を含み得る。加圧したエアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するバルブを提供することによって、決定され得る。
または、吸入もしくは吹入による投与の場合、組成物は、乾燥粉末組成物、例えば活性成分とラクトースまたはデンプンなど適切な粉末基剤との粉末混合物の形態をとってもよい。粉末組成物は、単位剤形、例えばカプセル、カートリッジ、ゼラチンまたはブリスターパックに入れて提供されてもよく、散剤は、吸入器または注入器の補助によりこれらから投与され得る。
他の製剤には、治療剤を放出する、埋め込み可能な器具および接着性のパッチが含まれる。
所望の場合には、活性成分の持続放出を与えるように適合された、前述の製剤が使用され得る。医薬組成物は、抗菌剤、免疫抑制剤、または保存剤など他の活性成分も含んでよい。
具体的に前述した成分に加えて、本発明の製剤は、該当する製剤のタイプを考慮して、当技術分野において通常の他の剤を含み得ること、例えば経口投与に適したものは矯味剤を含み得ることが、理解されるべきである。
好ましい投薬単位製剤は、「V.癌を治療または予防するための方法」の項目(下記)で挙げられるように、本発明の各活性成分の有効量またはその適切な分割量を含むものである。
IV−1.スクリーニングされた物質を含む医薬組成物
本発明は、前述した本発明のスクリーニング方法によって選択された物質のいずれかを含む、癌を治療または予防するための組成物を提供する。
本発明の方法によってスクリーニングされた物質は、直接投与してもよく、または上記に詳述した任意の従来の製剤化方法に従って製剤化して、剤形にしてもよい。
IV−2.二本鎖分子を含む医薬組成物
C12orf32遺伝子に対する二本鎖分子(例えば、siRNA)を用いて、これらの遺伝子の発現レベルを低減することができる。本明細書において、「二本鎖分子」という用語は、「定義」に記述されているように、例えば、低分子干渉RNA(siRNA;例えば、二本鎖リボ核酸(dsRNA)または低分子ヘアピンRNA(shRNA))および低分子干渉DNA/RNA(siD/R−NA;例えば、DNAおよびRNAの二本鎖キメラ(dsD/R−NA)またはDNAおよびRNAの低分子ヘアピンキメラ(shD/R−NA))を含む標的遺伝子の発現を阻害する核酸分子を意味する。本発明に関して、二本鎖分子はC12orf32遺伝子に対するセンス核酸配列およびアンチセンス核酸配列を含む。二本鎖分子は、標的遺伝子(すなわち、C12orf32遺伝子)のセンス配列および相補的なアンチセンス配列の部分を両方含み、また、センス鎖およびアンチセンス鎖が一本鎖によって連結された、ヘアピン構造をとる単一の構築物であり得るように構築される。
二本鎖分子は、細胞に導入されると、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に向けてmRNA中の相同配列を同定するためのガイドとなる。同定された標的RNAはダイサーのヌクレアーゼ活性により切断および分解され、これを通じて二本鎖分子は、RNAによりコードされるポリペプチドの産生(発現)を最終的に低減または阻害する。したがって、本発明の二本鎖分子は、ストリンジェントな条件下でC12orf32遺伝子のmRNAと特異的にハイブリダイズする一本鎖を作出するその能力によって規定することができる。本明細書において、二本鎖分子から作出された一本鎖とハイブリダイズするmRNAの部分は、「標的配列」または「標的核酸」または「標的ヌクレオチド」と称される。本発明において、「標的配列」のヌクレオチド配列は、mRNAのRNA配列だけでなく、mRNAから合成されたcDNAのDNA配列を用いて示すこともできる。
本発明の文脈において、二本鎖分子の標的配列は、好ましくは、長さが500、200、100、50または25塩基対に満たない。より好ましくは、二本鎖分子の標的配列は、長さが19〜25塩基対である。C12orf32遺伝子に対する二本鎖分子の例示的な標的核酸配列にはSEQ ID NO:8、9または14のヌクレオチド配列が含まれる。配列中のヌクレオチド「t」はRNAまたはその誘導体では「u」と置き換えられるものとする。したがって、例えば、本医薬組成物はセンス鎖としてヌクレオチド配列
5'−AAGCUGACUGCCAUCAGUAAU−3'
(SEQ ID NO:8の場合)
5'−AACAGUUCAGUUUAGUGUCAU−3'
(SEQ ID NO:9の場合)、および
5'−GCUGACUGCCAUCAGUAAU−3'
(SEQ ID NO:14の場合)
を含む、二本鎖RNA分子(siRNA)を含むことができる。
二本鎖分子の阻害活性を増強するために、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の標的配列の3'末端に3'オーバーハングを付加することができる。付加されるヌクレオチドの数は少なくとも2個、一般には2〜10個、好ましくは2〜5個である。付加されたヌクレオチドは二本鎖分子のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の3'末端で一本鎖を形成する。付加されるヌクレオチドは、好ましくは、「u」または「t」であるが、これらに限定されることはない。
ヘアピンループ構造を形成させるために、任意のヌクレオチド配列からなるループ配列をセンス鎖とアンチセンス鎖との間に配置することができる。したがって、本発明の組成物に含有される二本鎖分子は、一般式5'−[A]−[B]−[A']−3'であってよく、式中、[A]は、標的配列に対応する配列を含んだセンス鎖であり、[B]は介在一本鎖であり、[A']は標的配列に相補的な配列を含んだアンチセンス鎖である。本明細書において、C12orf32遺伝子のmRNAまたはcDNAと特異的にハイブリダイズする標的配列に対応する配列を含むポリヌクレオチド鎖を、「センス鎖」ということができる。好ましい態様において、[A]はセンス鎖であり;[B]は、3〜23ヌクレオチドからなる一本鎖ポリヌクレオチドであり;[A']は、C12orf32遺伝子のmRNAまたはcDNAと特異的にハイブリダイズする標的配列の相補的配列を含んだアンチセンス鎖を含むポリヌクレオチド鎖(すなわち、センス鎖[A]の標的配列とハイブリダイズする配列)である。本明細書において、C12orf32遺伝子のmRNAまたはcDNAと特異的にハイブリダイズする標的配列に相補的な配列を含むポリヌクレオチド鎖を、「アンチセンス鎖」ということができる。領域[A]は[A']とハイブリダイズし、そして、領域[B]からなるループが形成される。ループ配列は、好ましくは、長さが3〜23ヌクレオチドであり得る。ループ配列は、例えば、以下の配列からなる群(www.ambion.com/techlib/tb/tb_506.html)より選択することができる: CCC、CCACC、またはCCACACC: Jacque JM et al., Nature 2002, 418: 435-8。 UUCG: Lee NS et al., Nature Biotechnology 2002, 20:500-5; Fruscoloni P et al., Proc Natl Acad Sci USA 2003, 100(4):1639-44。 UUCAAGAGA: Dykxhoorn DM et al., Nature Reviews Molecular Cell Biology 2003, 4:457-67。 「UUCAAGAGA(DNAでは「ttcaagaga」)」は特に適したループ配列である。さらに、23ヌクレオチドからなるループ配列もまた、活性なsiRNAをもたらす(Jacque JM et al., Nature 2002, 418:435-8)。
C12orf32遺伝子に適した例示的なヘアピンsiRNAには、以下が含まれる:
5'−AAGCUGACUGCCAUCAGUAAU−[b]−AUUACUGAUGGCAGUCAGCUU−3'
(SEQ ID NO:8の標的配列);
5'−AACAGUUCAGUUUAGUGUCAU−[b]−AUGACACUAAACUGAACUGUU−3'
(SEQ ID NO:9の標的配列);および
5'−GCUGACUGCCAUCAGUAAU−[b]−ATTACTGATGGCAGTCAGC−3'
(SEQ ID NO:14の標的配列)。
本発明における、適切な二本鎖分子の他のヌクレオチド配列は、Ambion社のウェブサイト(www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)から入手可能なsiRNA設計コンピュータプログラムを用いて設計することができる。このコンピュータプログラムは、以下のプロトコルに基づいて二本鎖分子合成のためのヌクレオチド配列を選択する。
二本鎖分子の標的部位の選択:
1.対象となる転写物のAUG開始コドンから始めて、AAジヌクレオチド配列を求めて下流にスキャンする。個々のAAの出現および潜在的な標的部位として3'側に隣接する19ヌクレオチドを記録する。Tuschlら(Tuschl et al. Genes Cev 1999, 13(24):3191-7)によると、5'および3'非翻訳領域(UTR)および開始コドン近傍(75ヌクレオチド以内)の領域は、調節タンパク質結合部位に豊富に存在する可能性があることから、これらに対してsiRNAを設計することは推奨されない。UTR−結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨害し得る。
2.潜在的な標的部位をヒトゲノムデータベースと比較し、かつ他のコード配列に対して有意な相同性を有する任意の標的配列を、考慮の対象から排除する。相同性検索は、BLAST(Altschul SF et al., Nucleic Acids Res 1997, 25:3389-402; J Mol Biol 1990, 215:403-10.)を用いて実施することができ、これはNCBIサーバー上のwww.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で確認することができる。
3.合成に適した標的配列を選択する。Ambionでは、好ましくは数個の標的配列を遺伝子の長さに沿って選択して評価することができる。
二本鎖分子を調製する方法は、当技術分野において公知の任意の化学合成方法を用いることができる。化学合成方法にしたがって、センスおよびアンチセンス一本鎖ポリヌクレオチドを別々に合成し、その後、適切な方法によりアニーリングして二本鎖分子を得る。あるいは、本発明の二本鎖分子またはsiRNA分子をインビトロ翻訳で合成することもできる。この態様において、標的配列およびそのアンチセンスを含むヌクレオチド配列をコードするDNAは、インビトロで二本鎖分子に転写される。アニーリングに関する一態様において、合成された一本鎖ポリヌクレオチドは少なくとも約3:7、例えば約4:6、例えば、実質的に等モル量(すなわち、約5:5のモル比)のモル比で混合される。次に、二本鎖分子が解離する温度までこの混合物を加熱し、その後、徐々に冷却する。アニーリングした二本鎖ポリヌクレオチドは、当技術分野において公知の、通常利用される方法によって精製することができる。精製方法の例としては、アガロースゲル電気泳動を利用する方法、または残存する一本鎖ポリヌクレオチドが、例えば適切な酵素での分解によって、任意に取り除かれる方法が挙げられる。
標的配列に隣接する調節配列は同一であっても異なっていてもよく、このためその発現を別々に、または一時的もしくは空間的な様式で調節することができる。二本鎖分子は、例えば低分子核RNA(snRNA)U6由来のRNAポリIII転写ユニットまたはヒトH1 RNAプロモーターを含むベクターに、C12orf32遺伝子鋳型をクローニングすることにより細胞内で転写することができる。
上記の標的配列を標的とする二本鎖分子を、標的遺伝子を発現する細胞の増殖を抑制するその能力についてそれぞれ調べた。したがって、本発明は、C12orf32遺伝子に対してSEQ ID NO:8、9および14の配列を標的とする二本鎖分子を提供する。
本発明の二本鎖分子は、単一の標的C12orf32遺伝子配列に指向してもよく、または複数の標的C12orf32遺伝子配列に指向してもよい。
C12orf32遺伝子の上記の標的化配列を標的とする本発明の二本鎖分子には、標的配列の核酸配列および/または標的配列に相補的な配列を含む単離されたポリヌクレオチドが含まれる。C12orf32遺伝子を標的とするポリヌクレオチドの例としては、SEQ ID NO:8、9および14の配列ならびに/またはこれらのヌクレオチドに相補的な配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。しかし、本発明はこの例に限定されず、改変された分子がC12orf32遺伝子の発現を抑制する能力を保持する限り、上記の核酸配列における軽微な改変は許容される。本明細書において、核酸配列に関連して用いられる「軽微な改変」という語句は、該配列に対する核酸の一つ、二つまたは数個の置換、欠失、付加または挿入を指す。
一態様において、二本鎖分子は二つのポリヌクレオチドから構成され、一つのポリヌクレオチドは、標的配列に対応する配列、すなわちセンス鎖を有し、もう一つのポリペプチドは、標的配列に相補的な配列、すなわちアンチセンス鎖を有する。センス鎖ポリヌクレオチドおよびアンチセンス鎖ポリヌクレオチドは互いにハイブリダイズして、二本鎖分子を形成する。そのような二本鎖分子の例としては、dsRNAおよびdsD/R−NAが挙げられる。
別の態様において、二本鎖分子は、標的配列に対応する配列、すなわちセンス鎖も、標的配列に相補的な配列、すなわちアンチセンス鎖も共に有するポリヌクレオチドから構成される。一般的に、センス鎖とアンチセンス鎖は介在鎖により連結され、互いにハイブリダイズしてヘアピンループ構造を形成する。そのような二本鎖分子の例としては、shRNAおよびshD/R−NAが挙げられる。
換言すれば、本発明の二本鎖分子は、標的配列のヌクレオチド配列を有するセンス鎖ポリヌクレオチドおよび標的配列に相補的なヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖ポリヌクレオチドを含み、両方のポリヌクレオチドが互いにハイブリダイズして、二本鎖分子を形成する。ポリヌクレオチドを含む二本鎖分子において、片方または両方の鎖のポリヌクレオチドの一部がRNAであってもよく、標的配列がDNA配列で規定される場合、標的配列およびそれに相補的な配列内のヌクレオチド「t」は「u」と置き換えられる。
本発明の一態様において、本発明のそのような二本鎖分子は、センス鎖およびアンチセンス鎖から構成される、ステム・ループ構造を含む。センス鎖およびアンチセンス鎖はループによって連結され得る。したがって、本発明は、介在一本鎖によって連結または隣接されたセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含む単一のポリヌクレオチドを含んだ二本鎖分子も提供する。
本発明において、C12orf32遺伝子を標的とする二本鎖分子は、標的配列としてSEQ ID NO:8、9および14の中から選択される配列を持ち得る。したがって、本発明の二本鎖分子の好ましい例としては、SEQ ID NO:8、9および14に対応する配列およびそれに相補的な配列の位置で互いにハイブリダイズするポリヌクレオチド、ならびにSEQ ID NO:8、9および14に対応する配列およびそれに相補的な配列を有するポリヌクレオチドが挙げられる。
本発明の文脈において、核酸の置換、欠失、付加、および/または挿入に適用される「数個の」という用語は、3〜7個、好ましくは3〜5個、より好ましくは3〜4個、さらにより好ましくは3個の核酸残基を意味し得る。
本発明によれば、実施例において利用される方法を用いて、本発明の二本鎖分子を、その能力について試験することができる。以下の本明細書における実施例においては、C12orf32遺伝子のmRNAのさまざまな部分のセンス鎖またはそれに相補的なアンチセンス鎖から構成される二本鎖分子を、標準的な方法にしたがい、癌細胞株におけるC12orf32遺伝子産物の産生を低減するその能力についてインビトロで試験した。さらに、例えば、候補分子の非存在下で培養された細胞と比べて候補二本鎖分子と接触された細胞におけるC12orf32遺伝子産物の低減は、例えば、実施例の「半定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)」という項目の下で述べるC12orf32 mRNAに対するプライマーを用いたRT−PCRにより検出することができる。次に、インビトロでの細胞に基づくアッセイ法においてC12orf32遺伝子産物の産生を低減する配列を、細胞増殖に対するその阻害効果について試験することができる。次に、インビトロでの細胞に基づくアッセイ法において細胞増殖を阻害する配列を、癌を有する動物、例えばヌードマウス異種移植モデルを用い、そのインビボでの能力について試験し、C12orf32産物の産生の低減および癌細胞増殖の低減を確認することができる。
単離ポリヌクレオチドがRNAまたはその誘導体である場合、ヌクレオチド配列において塩基「t」は「u」と置き換えられるものとする。本明細書において使用される場合、「相補性」という用語は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド単位間のワトソン・クリックまたはフーグスティーン塩基対合を意味し、「結合」という用語は、2つのポリヌクレオチド間の物理的または化学的相互作用を意味する。ポリヌクレオチドが修飾ヌクレオチドおよび/または非ホスホジエステル結合を含む場合には、これらのポリヌクレオチドも同様に互いに結合することができる。一般的に、相補的なポリヌクレオチド配列は、適切な条件下でハイブリダイズして、ほとんどまたは全くミスマッチを含有しない安定な二重鎖を形成する。さらに、本発明の単離ポリヌクレオチドのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、ハイブリダイゼーションによって二本鎖分子またはヘアピンループ構造を形成することができる。好ましい態様において、そのような二重鎖は10個のマッチごとにわずか1個のミスマッチしか含有していない。特に好ましい態様において、二重鎖の鎖が完全に相補的である場合、そのような二重鎖はミスマッチを含有しない。
ポリヌクレオチドは、好ましくは、C12orf32の場合には1872ヌクレオチド長未満である。例えば、ポリヌクレオチドは、全ての遺伝子の場合には500、200、100、75、50または25ヌクレオチド長未満である。本発明の単離ポリヌクレオチドは、C12orf32遺伝子に対する二本鎖分子を形成するのに、または二本鎖分子をコードする鋳型DNAを調製するのに有用である。ポリヌクレオチドが二本鎖分子を形成するのに用いられる場合、ポリヌクレオチドは19ヌクレオチドより長くてよく、好ましくは21ヌクレオチドより長く、より好ましくは約19〜25ヌクレオチドの長さを有する。
したがって、本発明は、センス鎖が、標的配列に対応するヌクレオチド配列を含む、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖分子を提供する。好ましい態様において、センス鎖が標的配列の位置でアンチセンス鎖とハイブリダイズして、長さが19〜25ヌクレオチド対である二本鎖分子を形成する。
細胞に二本鎖分子を導入するための標準的な技術が当業者に公知である。例えば、二本鎖分子を、mRNA転写物に結合することができる形態で、細胞中に直接導入することができる。これらの態様において、二本鎖分子は、典型的には、アンチセンス分子に関して前述したように修飾される。他の修飾もまた利用可能である。例えば、コレステロールを結合した二本鎖分子は、改善された薬理学的特性を示した(Song et al., Nature Med 2003, 9:347-51)。通常用いられるこれらの技術を、本発明の組成物に含まれる二本鎖分子に適用してもよい。
または、二本鎖分子をコードするDNAは、ベクター中に保有されてもよく(以下「siRNAベクター」とも称される)、二本鎖分子は、インビボで二本鎖分子を発現させるベクターの形で本発明の組成物に含まれてもよい。このようなベクターは、例えば(DNA分子の転写により)両方の鎖の発現が可能になる様式でその配列に隣接している機能的に連結された調節配列(例えば、核内低分子RNA(snRNA)U6由来のRNAポリメラーゼIII転写単位またはヒトH1 RNAプロモーター)を有する発現ベクター中に、標的遺伝子のインビボでの発現を阻害するのに適した標的遺伝子配列の部分をクローニングすることによって、作製することができる(Lee NS et al., Nature Biotechnology 2002, 20:500-5)。例えば、標的遺伝子のmRNAに対するアンチセンスであるRNA分子は、第一のプロモーター(例えば、クローン化DNAのプロモーター配列3')によって転写され、標的遺伝子のmRNAに対するセンス鎖であるRNA分子は、第二のプロモーター(例えば、クローン化DNAのプロモーター配列5')によって転写される。センス鎖およびアンチセンス鎖は、インビボでハイブリダイズして、標的遺伝子の発現をサイレンシングするための二本鎖分子構築物を生じる。あるいは、センス鎖およびアンチセンス鎖は、1つのプロモーターの助けを借りて一緒に転写され得る。この場合、センス鎖およびアンチセンス鎖はポリヌクレオチド配列を介して連結されて、二次構造、例えばヘアピンを有する一本鎖構築物を形成し得る。
したがって、癌を治療または予防するための本医薬組成物は、二本鎖分子(例えば、siRNA)またはインビボで該二本鎖分子を発現するベクターのどちらかを含むことができる。具体的には、本発明は、C12orf32遺伝子の発現を阻害する二本鎖分子、またはインビボで該二本鎖分子を発現するベクターを含む、癌を治療または予防するための医薬組成物を提供する。
本発明によれば、組成物は複数種類の二本鎖分子を含んでもよく、各々の分子がC12orf32の同じ標的配列、または異なる標的配列に指向してもよい。例えば、組成物はC12orf32に指向された二本鎖分子を含んでもよい。あるいは、例えば、組成物はC12orf32の一つ、二つ、またはそれ以上の標的配列に指向されたた二本鎖分子を含んでもよい。
本組成物はさらに、一つまたは複数の二本鎖分子をコードするベクターを含んでもよい。例えば、ベクターは一種、二種または数種の本発明の二本鎖分子をコードしてもよい。あるいは、本組成物は、各々のベクターが異なる二本鎖分子をコードする、複数種類のベクターを含んでもよい。
本発明はさらに、癌細胞の増殖を阻害するための医薬組成物であって、C12orf32遺伝子の発現を阻害する二本鎖分子または該二本鎖分子をインビボで発現するベクターを含む、医薬組成物を提供する。
二本鎖分子ベクターを細胞へ導入するために、トランスフェクション促進剤を用いることができる。FuGENE6(Roche diagnostics)、Lipofectamine 2000(Invitrogen)、Oligofectamine(Invitrogen)、およびNucleofector(Wako pure Chemical)は、トランスフェクション促進剤として有用である。それゆえ、本医薬組成物はそのようなトランスフェクション促進剤をさらに含むことができる。
別の態様において、本発明はまた、C12orf32遺伝子を発現する癌を治療するための医薬組成物の製造における、本発明の二本鎖核酸分子またはそれをコードするベクターの使用を提供する。例えば、本発明は、該遺伝子を過剰発現する細胞においてC12orf32遺伝子の発現を阻害する二本鎖核酸分子の、C12orf32遺伝子を発現する癌を治療するための医薬組成物を製造するための使用に関し、ここで、該分子は、互いにハイブリダイズして二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖およびそれに相補的なアンチセンス鎖を含み、かつSEQ ID NO:8、9、または14の配列を標的とする。
あるいは、本発明はさらに、C12orf32遺伝子を発現する癌の治療で用いるための本発明の二本鎖核酸分子を提供する。
あるいは、本発明はさらに、C12orf32遺伝子を発現する癌を治療する医薬組成物を製造するための方法または工程を提供し、ここで、該方法または工程は、薬学的または生理学的に許容される担体と、活性成分として該遺伝子を過剰発現する細胞においてC12orf32遺伝子の発現を阻害する二本鎖核酸分子とを製剤化する段階を含み、該分子は、互いにハイブリダイズして二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖およびそれに相補的なアンチセンス鎖を含み、かつSEQ ID NO:8、9、または14の配列を標的とする。
別の態様において、本発明はまた、C12orf32遺伝子を発現する癌を治療する医薬組成物を製造するための方法または工程を提供し、ここで、該方法または工程は、活性成分と薬学的または生理学的に許容される担体とを混合する段階を含み、該活性成分は、該遺伝子を過剰発現する細胞においてC12orf32遺伝子の発現を阻害する二本鎖核酸分子であり、該分子は、互いとハイブリダイズして二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖およびそれに相補的なアンチセンス鎖を含み、かつSEQ ID NO:8、9、または14の配列を標的とする。
IV−3.アンチセンス核酸を含む医薬組成物
C12orf32遺伝子を標的化するアンチセンス核酸は、乳癌細胞を含む癌細胞において上方制御されている遺伝子の発現レベルを低下させるのに使用することができる。このようなアンチセンス核酸は、癌、特に乳癌の治療に有用であり、したがって本発明に包含される。アンチセンス核酸は、C12orf32遺伝子のヌクレオチド配列もしくはそれに対応するmRNAに結合し、それによってその遺伝子の転写もしくは翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、かつ/またはこの遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を阻害することによって、作用する。
したがって、結果として、アンチセンス核酸は、C12orf32タンパク質が癌細胞において機能するのを阻害する。本明細書において、「アンチセンス核酸」という語句は、標的配列に特異的にハイブリダイズするヌクレオチドを意味し、かつ標的配列に完全に相補的なヌクレオチドだけでなく、1つまたは複数のヌクレオチドのミスマッチを含むヌクレオチドも含む。例えば、本発明のアンチセンス核酸には、C12orf32遺伝子またはその相補的配列の少なくとも15個の連続的ヌクレオチドの範囲に渡って、少なくとも70%またはそれ以上、好ましくは少なくとも80%またはそれ以上、より好ましくは少なくとも90%またはそれ以上、さらにより好ましくは少なくとも95%またはそれ以上の相同性を有するポリヌクレオチドが含まれる。当技術分野において公知のアルゴリズムを使用して、このような相同性を決定することができる。
本発明のアンチセンス核酸は、遺伝子のDNAまたはmRNAに結合し、それらの転写または翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、かつタンパク質の発現を阻害することにより、C12orf32遺伝子によってコードされるタンパク質を産生する細胞に対して作用し、最終的に当該タンパク質が機能するのを阻害する。
本発明のアンチセンス核酸は、核酸に対して不活性である適切な基剤材料と混合することによって、リニメント剤またはパップ剤などの外用製剤に調剤することができる。
また、必要に応じて、本発明のアンチセンス核酸は、賦形剤、等張化剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、鎮痛剤などを添加することによって、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル剤、注射剤、液剤、点鼻剤、および凍結乾燥剤に製剤化することもできる。アンチセンス封入剤もまた、耐久性および膜透過性を高めるために使用することができる。例には、リポソーム、ポリ−L−リシン、脂質、コレステロール、リポフェクチン、またはこれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。これらは、以下の公知の方法によって調製することができる。
本発明のアンチセンス核酸は、C12orf32遺伝子の発現を阻害し、かつこのタンパク質の生物学的活性を抑制するのに有用である。さらに、本発明のアンチセンス核酸を含む発現阻害物質は、C12orf32タンパク質の生物学的活性を阻害することができるという点で有用である。
本発明のアンチセンス核酸には、修飾されたオリゴヌクレオチドも含まれる。例えば、オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ抵抗性を与えるために、チオエート化オリゴヌクレオチドが使用され得る。
IV−4.抗体を含む医薬組成物
癌、特に乳癌において過剰発現されているC12orf32遺伝子の遺伝子産物の機能は、C12orf32遺伝子産物に結合するか、または別の方法でその機能を阻害する化合物を投与することによって阻害することができる。C12orf32ポリペプチドに対する抗体はこのような化合物として挙げることができ、癌を治療または予防するための医薬組成物の活性成分として使用することができる。
本発明は、C12orf32遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体、またはこれらの抗体の断片の使用に関する。本明細書において使用される場合、「抗体」という用語は、抗体を合成するために使用された抗原(すなわち、上方制御されたマーカーの遺伝子産物)またはそれに密接に関連した抗原とのみ相互作用(すなわち、結合)する、特異的な構造を有する免疫グロブリン分子を意味する。抗体を合成するために使用された抗原を含む分子、およびこの抗体によって認識される抗原のエピトープを含む分子を、それに密接に関連した抗原として挙げることができる。
さらに、本発明の医薬組成物において使用される抗体は、C12orf32遺伝子によってコードされるタンパク質に結合する限り、抗体の断片または修飾抗体であってもよい(例えば、抗C12orf32抗体の免疫学的活性断片)。例えば、抗体断片は、Fab、F(ab')2、Fv、またはH鎖およびL鎖由来のFv断片が適切なリンカーによって連結されている単鎖Fv(scFv)であってもよい(Huston JS et al., Proc Natl Acad Sci USA 1988, 85:5879-83)。このような抗体断片は、パパインまたはペプシンなどの酵素で抗体を処理することによって作製してもよい。または、抗体断片をコードする遺伝子を構築し、発現ベクター中に挿入し、適切な宿主細胞中で発現させてもよい(例えば、Co MS et al., J Immunol 1994, 152:2968-76;Better M et al., Methods Enzymol 1989, 178:476-96;Pluckthun A et al., Methods Enzymol 1989, 178:497-515;Lamoyi E, Methods Enzymol 1986, 121:652-63;Rousseaux J et al., Methods Enzymol 1986, 121:663-9;Bird RE et al., Trends Biotechnol 1991, 9:132-7を参照されたい)。
抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)などの様々な分子と結合させることによって、修飾してもよい。本発明は、このような修飾抗体を含む。修飾抗体は、抗体を化学的に修飾することによって得ることができる。このような修飾方法は、当技術分野において通常である。
または、本発明のために使用される抗体は、C12orf32ポリペプチドに対する非ヒト抗体由来の可変領域およびヒト抗体由来の定常領域を有するキメラ抗体、または非ヒト抗体由来の相補性決定領域(CDR)、ヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR)および定常領域を含むヒト化抗体であってもよい。このような抗体は、公知の技術を用いて調製することができる。ヒト化は、齧歯動物のCDRまたはCDR配列で、ヒト抗体の対応する配列を置換することによって実施することができる(例えば、Verhoeyen et al., Science 1988, 239:1534-6を参照されたい)。したがって、このようなヒト化抗体は、実質的に完全ではないヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている、キメラ抗体である。
ヒトのフレームワーク領域および定常領域に加えてヒト可変領域を含む完全ヒト抗体もまた、使用することができる。このような抗体は、当技術分野において公知の様々な技術を用いて作製することができる。例えば、インビトロの方法は、バクテリオファージ上に提示されたヒト抗体断片の組換えライブラリの使用を含む(例えば、Hoogenboom et al., J Mol Biol 1992, 227:381-8)。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたマウスに導入することによって、作製することもできる。このアプローチは、例えば米国特許第6,150,584号、第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、および第5,661,016号において説明されている。
得られた抗体がヒトの身体に投与される場合(抗体治療)、免疫原性を減少させるために、ヒト抗体またはヒト化抗体が好ましい。
前述のようにして得られた抗体を、均質になるまで精製してもよい。例えば、抗体の分離および精製は、一般のタンパク質に対して使用される分離および精製方法に従って実施することができる。例えば、抗体は、限定されないが、アフィニティークロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィー、ろ過、限外ろ過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動などを適切に選択し併用することによって、分離および単離することができる(Antibodies:A Laboratory Manual. Ed HarlowおよびDavid Lane, Cold Spring Harbor Laboratory(1988))。プロテインAカラムおよびプロテインGカラムをアフィニティーカラムとして使用することができる。使用される例示的なプロテインAカラムには、例えばHyper D、POROS、およびセファロースF.F(Pharmacia)が含まれる。
例示的なクロマトグラフィーには、アフィニティークロマトグラフィー以外に、例えばイオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲルろ過、逆相クロマトグラフィー、および吸着クロマトグラフィーなどが含まれる(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R.Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996))。クロマトグラフィーの手法は、HPLCおよびFPLCなどの液相クロマトグラフィーによって実施することができる。
V.癌を治療または予防するための方法
癌細胞において生じる特異的な分子変化を対象とする癌治療は、進行癌の治療用のトラスツズマブ(ハーセプチン)、慢性骨髄性白血病用のメシル酸イマチニブ(グリベック)、非小細胞肺癌(NSCLC)用のゲフィチニブ(イレッサ)、ならびにB細胞リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫用のリツキシマブ(抗CD20mAb)などの抗腫瘍薬の臨床開発および規制認可を通して実証されている(Ciardiello F et al., Clin Cancer Res 2001, 7:2958-70, Review;Slamon DJ et al., N Engl J Med 2001, 344:783-92;Rehwald U et al., Blood 2003, 101:420-4;Fang G et al., Blood 2000, 96:2246-53)。これらの薬物は、臨床的に有効であり、かつ形質転換細胞のみを標的とするため、従来の抗腫瘍剤より耐容性が良好である。したがって、このような薬物により、癌患者の生存および生活の質が改善されるだけでなく、分子標的癌治療の概念が実証される。さらに、標的化薬物は、標準的な化学療法と組み合わせて使用された場合に、その有効性を高めることができる(Gianni L, Oncology 2002, 63 Suppl 1:47-56;Klejman A et al., Oncogene 2002, 21:5868-76)。したがって、将来の癌治療は、おそらく、血管形成および侵襲性など腫瘍細胞の様々な特徴を対象とする標的特異的な剤と従来の薬物とを組み合わせることを伴うと考えられる。
これらの調節的な方法は、(例えば、細胞を剤と共に培養することにより)エクスビボもしくはインビトロで、または別の方法として、(剤を対象に投与することにより)インビボで実施することができる。これらの方法は、差次的に発現される遺伝子の異常な発現またはそれらの遺伝子産物の異常な活性を打ち消すための治療法として、タンパク質もしくはタンパク質の組み合わせ、または核酸分子もしくは核酸分子の組み合わせを投与することを含む。
遺伝子および遺伝子産物の発現レベルまたは生物学的活性が、(その疾患または障害に罹患していない対象と比較して)それぞれ上昇していることを特徴とする疾患および障害は、過剰発現された遺伝子の活性に拮抗する(すなわち、低下させるか、または阻害する)治療物質で治療することができる。活性に拮抗する治療物質は、治療的または予防的に投与することができる。
したがって、本発明の文脈において使用され得る治療物質には、例えば(i)過剰発現されたC12orf32遺伝子のポリペプチド、またはその類似体、誘導体、断片、もしくは相同体;(ii)前記過剰発現された遺伝子もしくは遺伝子産物に対する抗体;(iii)前記過剰発現された遺伝子をコードする核酸;(iv)アンチセンス核酸もしくは「機能障害性」である核酸(すなわち、前記過剰発現された遺伝子の核酸内への異種挿入に起因する);(v)二本鎖分子(例えば、siRNA);または(vi)調節物質(すなわち、前記過剰発現されたポリペプチドとその結合相手との相互作用を変更する阻害物質、アンタゴニスト)が含まれる。機能障害性のアンチセンス分子は、相同組換えによってポリペプチドの内因性機能を「ノックアウト」するのに使用される(例えば、Capecchi, Science 1989, 244:1288-92を参照されたい)。
レベルの上昇は、(例えば生検組織から)患者の組織試料を採取して、RNAまたはペプチドのレベル、発現されたペプチド(または発現が変更された遺伝子のmRNA)の構造および/または活性についてインビトロでそれを分析することにより、ペプチドおよび/またはRNAを定量することによって、容易に検出することができる。当技術分野内で周知である方法には、イムノアッセイ(例えば、ウェスタンブロット解析、免疫沈降法とそれに続くドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細胞化学などによる)、および/またはmRNAの発現を検出するハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット法、インサイチューハイブリダイゼーションなど)が含まれるが、これらに限定されない。
複数種類の二本鎖分子(またはそれを発現するベクターもしくはそれを含む組成物)の投与を通じて、細胞増殖を阻害し、それにより癌を治療する本方法によれば、各々の分子は異なる構造を持ち得るが、C12orf32の同じ標的配列にマッチするmRNAに作用し得る。あるいは、複数種類の二本鎖分子が、同じ遺伝子の異なる標的配列にマッチするmRNAに作用してもよい。あるいは、例えば、本方法ではC12orf32の一つ、二つ、または複数の標的配列に向けられた二本鎖分子を利用してもよい。
本発明の治療方法は、C12orf32遺伝子産物の1つまたは複数の活性を調節する剤に細胞を接触させる段階を含み得る。タンパク質の活性を調節する剤の例には、核酸、タンパク質、このようなタンパク質の天然の同系リガンド、ペプチド、ペプチド模倣体、および他の小分子が含まれるが、これらに限定されない。
したがって、本発明は、C12orf32遺伝子の発現またはその遺伝子産物の活性を低減させることによって、対象において癌の症状を治療もしくは緩和するか、または癌を予防するための方法を提供する。本方法は、乳癌の治療または予防に特に適している。
適切な治療物質を、癌に罹患しているか、または癌を発症するリスクを有する(もしくは発症しやすい)対象に予防的または治療的に投与することができる。このような対象は、標準の臨床的方法を用いることによって、またはC12orf32遺伝子の異常な発現レベル(「上方制御」もしくは「過剰発現」)もしくはその遺伝子産物の異常な活性を検出することによって、同定することができる。
本発明の一局面によれば、本発明の方法によってスクリーニングされた物質を、癌を治療または予防するために使用してもよい。当業者に周知の方法を使用して、例えば動脈内注射、静脈内注射、もしくは皮内注射として、または鼻腔内投与、経気管支投与、筋肉内投与、もしくは経口投与として、患者に該物質を投与してもよい。該物質がDNAによってコード可能である場合、そのDNAを遺伝子療法用のベクターに挿入し、患者にそのベクターを投与して、療法を実施することができる。
投薬量および投与方法は、治療しようとする患者の体重、年齢、性別、症状、状態、および投与方法によって異なる。しかしながら、当業者は、適切な投薬量および投与方法を常法にしたがって選択することができる。
例えば、C12orf32ポリペプチドに結合し、そのポリペプチドの活性を調節する物質の用量は、前述した様々な要因に依存するが、用量は一般に、正常なヒト成人(体重60kg)に経口投与される場合、1日当たり約0.1mg〜約100mg、好ましくは1日当たり約1.0mg〜約50mg、およびより好ましくは1日当たり約1.0mg〜約20mgである。
正常なヒト成人(体重60kg)への注射の形態で物質を非経口的に投与する場合、患者、標的器官、症状、および投与方法によっていくらかの違いはあるものの、1日当たり約0.01mg〜約30mg、好ましくは1日当たり約0.1mg〜約20mg、およびより好ましくは1日当たり約0.1mg〜約10mgの用量を静脈内注射することが好都合である。他の動物の場合、適切な投薬量は、体重60kgに変換することによって、常法にしたがって算出してもよい。
同様に、本発明の医薬組成物は、癌を治療または予防するために使用され得る。当業者に周知の方法を使用して、例えば動脈内注射、静脈内注射、もしくは皮内注射として、または鼻腔内投与、経気管支投与、筋肉内投与、もしくは経口投与として、患者に組成物を投与してもよい。
前述した各状態に対して、組成物、例えばポリペプチドおよび有機化合物は、1日当たり約0.1mg/kg〜約250mg/kgの範囲の用量で経口的に、または注射によって投与され得る。ヒト成人に対する用量範囲は、一般に約5mg/日〜約17.5g/日、好ましくは約5mg/日〜約10g/日、および最も好ましくは約100mg/日〜約3g/日である。錠剤、または個別の単位で提供される形態の他の単位剤形は、便宜的に、そのような投薬量で、またはその倍数量として効果的である量を含んでもよく、例えば各単位は、約5mg〜約500mg、通常、約100mg〜約500mgを含む。
使用される用量は、対象の年齢、体重、および性別、治療される厳密な疾患およびその重症度を含む、いくつかの要因に依存すると考えられる。同様に、投与経路も、状態およびその重症度に応じて異なってよい。任意の事象において、適切な投薬量および最適投薬量は、前述の要因を考慮して、当業者が常法にしたがって算出してもよい。
具体的には、C12orf32遺伝子に対するアンチセンスヌクレオチドは、患部に直接適用することによって、または疾患部位に到達するように血管中に注入することによって、患者に投与することができる。
本発明のアンチセンスヌクレオチド誘導体の投薬量は、患者の状態に応じて適宜調整して、所望の量で使用することができる。例えば、0.1mg/kg〜100mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜50mg/kgの用量範囲を投与することができる。
本発明では、阻害性ヌクレオチドは、送達試薬と共に裸の核酸として、または該阻害性ヌクレオチドを発現する組換えプラスミドもしくはウイルスベクターとして対象に投与することができる。本阻害性ヌクレオチドと共に投与するのに適した送達試薬は、Mirus Transit TKO親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクトアミン;セルフェクチン;またはポリカチオン(例えばポリリシン)もしくはリポソームを含む。好ましい送達試薬はリポソームである。
リポソームは、網膜組織または腫瘍組織などの特定の組織への阻害性ヌクレオチドの送達を補助することができ、阻害性核酸の血中半減期を増大させることもできる。本発明に関連して用いるのに適したリポソームは、標準的な小胞形成脂質から形成されてもよく、これには一般的に、中性または陰性電荷のリン脂質およびコレステロールなどのステロールが含まれる。一般的には、所望のリポソームサイズおよび血流中におけるリポソームの半減期などの要因を考慮することにより、脂質の選択が左右される。例えばSzoka et al., Ann Rev Biophys Bioeng 1980, 9: 467;ならびに米国特許第4,235,871号;同第4,501,728号;同第4,837,028号;および同第5,019,369号に記述されているように、リポソームを調製するのに種々の方法が知られており、それらの開示全体が参照により本明細書に組み入れられる。
好ましくは、本阻害性ヌクレオチドを封入するリポソームは、リポソームを癌部位に送達できるリガンド分子を含む。腫瘍抗原に結合するモノクローナル抗体などの、腫瘍細胞に多く見られる受容体に結合するリガンドが好ましい。
特に好ましくは、本阻害性ヌクレオチドを封入するリポソームは、単核マクロファージおよび細網内皮系によるクリアランスを回避するように、例えば、構造表面に結合したオプソニン化阻害部分を有することにより修飾される。一態様において、本発明のリポソームは、オプソニン化阻害部分とリガンドの両方を含むことができる。
本発明のリポソームの調製で用いるオプソニン化阻害部分は、典型的には、リポソーム膜に結合する大きな親水性重合体である。本明細書において使用される場合、オプソニン化阻害部分は、例えば、脂質−可溶性アンカーの膜自体へのインターカレーションによって、または膜脂質の活性基への直接結合によって、膜に化学的または物理的に付着される場合、リポソーム膜に「結合」する。これらのオプソニン化阻害親水性重合体は、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,920,016号に記述されているように、マクロファージ−単球系(「MMS」)および細網内皮系(「RES」)によるリポソームの取り込みを有意に低減する保護表面層を形成する。したがって、オプソニン化阻害部分で修飾されたリポソームは非修飾リポソームよりもはるかに長く循環血液中に留まる。このため、そのようなリポソームは「ステルス」リポソームと称されることもある。
ステルスリポソームは、多孔性または「漏出性」微小血管系によって送り込まれる組織中で集積することが知られている。したがって、そのような微小血管系の欠陥によって特徴付けられる標的組織、例えば、固形腫瘍は、これらのリポソームを効率的に集積すると考えられる。Gabizon et al., Proc Natl Acad Sci USA 1988, 18: 6949-53を参照されたい。さらに、RESによる取り込みの低減が、肝臓および脾臓における有意な集積を防ぐことによって、ステルスリポソームの毒性を低下させる。したがって、オプソニン化阻害部分で修飾された本発明のリポソームは、本阻害性核酸を腫瘍細胞に送達することができる。
リポソームを修飾するのに適したオプソニン化阻害部分は、約500〜約40,000ダルトン、より好ましくは約2,000〜約20,000ダルトンの分子量を有する水溶性重合体であることが好ましい。そのような重合体はポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体;例えば、メトキシPEGまたはPPG、およびステアリン酸PEGまたはPPG;ポリアクリルアミドまたはポリN−ビニルピロリドンなどの合成重合体;直鎖状、分枝状、または樹状ポリアミドアミン;ポリアクリル酸;多価アルコール、例えば、カルボン酸基またはアミノ基が化学結合したポリビニルアルコールおよびポリキシリトール、ならびにガングリオシドGM1などのガングリオシドを含む。PEG、メトキシPEGもしくはメトキシPPGの共重合体、またはそれらの誘導体も好適である。さらに、オプソニン化阻害重合体は、PEGと、ポリアミノ酸、多糖、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン、またはポリヌクレオチドのいずれかとのブロック共重合体であり得る。オプソニン化阻害重合体はまた、アミノ酸もしくはカルボン酸、例えば、ガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラギナンを含有する天然多糖;アミノ化多糖もしくはオリゴ糖(直鎖状もしくは分枝状);または、例えば、カルボン酸基の連結を結果的に有するカルボン酸の誘導体と反応した、カルボキシル化多糖もしくはオリゴ糖でもあり得る。
好ましくは、オプソニン化阻害部分はPEG、PPG、またはその誘導体である。PEGまたはPEG誘導体で修飾されたリポソームは「PEG化リポソーム」と称されることもある。
オプソニン化阻害部分は、多くの周知の技術のいずれか一つによってリポソーム膜に結合され得る。例えば、PEGのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、ホスファチジル−エタノールアミン脂質可溶性アンカーに結合され、次いで膜に結合され得る。同様に、デキストラン重合体は、Na(CN)BH3、ならびに、例えば比30:12のテトラヒドロフランと水との溶媒混合物を60℃で用いて還元的アミノ化によりステアリルアミン脂質可溶性アンカーで誘導体化することもできる。
本発明の阻害性核酸を発現するベクターが下記で論じられている。本発明の少なくとも一つの阻害性核酸を発現するベクターを、直接的にまたはMirus Transit LT1親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクトアミン;セルフェクチン;ポリカチオン(例えば、ポリリシン)もしくはリポソームを含む好適な送達試薬と共に投与することもできる。本発明の阻害性核酸を発現する組換えウイルスベクターを患者の癌領域に送達するための方法は、当技術分野の技術の範囲内である。
本発明の阻害性ヌクレオチドは、阻害性ヌクレオチドを癌部位に送達するのに適した任意の手段によって、対象に投与することができる。例えば、阻害性ヌクレオチドは遺伝子銃、電気穿孔法により、または他の好適な非経口投与経路もしくは腸内投与経路により投与することができる。
好適な腸内投与経路は経口、直腸、または鼻腔送達を含む。
好適な非経口投与経路は、小胞内および血管内投与(例えば、静脈内ボーラス注射、静脈内注入、動脈内ボーラス注射、動脈内注入、および血管系へのカテーテル点滴);傍組織および組織内注射(例えば、傍腫瘍および腫瘍内注射、網膜内注射、または網膜下注射);皮下注入を含む皮下注射または皮下沈着(例えば、浸透圧ポンプによって);例えばカテーテルまたは他の留置装置(例えば、多孔性、非孔性、またはゼラチン様材料を含む、網膜ペレットまたは坐剤またはインプラント)による癌部位の領域またはその近傍の領域への直接適用;ならびに吸入を含む。阻害性ヌクレオチドまたはベクターの注射または注入は、癌の部位またはその近傍で行われることが好ましい。
本発明の阻害性核酸は、単回用量または複数回用量で投与することができる。本発明の阻害性核酸の投与が注入によるものである場合、注入は、単回の持続用量であってもよく、または複数回の注入によって送達されてもよい。組織中へ直接的に剤を注射するのは、選択された癌の部位またはその近傍である。癌の部位またはその近傍の組織中へ剤を複数回注射することが、特に好ましい。
当業者はまた、本発明の阻害性核酸を所与の対象に投与するのに適した投薬計画を容易に決定することができる。例えば、阻害性核酸は、例えば癌部位またはその近傍での単回注射または沈着として、対象に一回で投与することができる。あるいは、阻害性核酸は、約3日〜約28日、より好ましくは約7日〜約10日の間、対象に1日1回または2回投与することができる。好ましい投薬計画では、阻害性核酸は7日間、癌の部位またはその近傍に1日1回注射される。投薬計画に複数回の投与が含まれる場合、対象に投与される阻害性核酸の有効量は、投薬計画全体を通して投与される阻害性核酸の全量を含み得ることが理解される。
本発明において、C12orf32を過剰発現する癌は、以下からなる群より選択される少なくとも一つの活性成分により治療することができる:
(a)本発明の二本鎖分子、
(b)それをコードするDNA、および
(c)それをコードするベクター。
癌には乳癌が含まれるが、これに限定されることはない。したがって、活性成分としての本発明の二本鎖分子の投与の前に、治療される癌細胞または組織におけるC12orf32の発現レベルが同じ臓器の正常細胞と比べて増強されているかどうかを確認することが好ましい。したがって、一態様において、本発明は、以下の段階を含み得る、C12orf32を(過剰)発現する癌を治療するための方法を提供する:
i)治療される癌を有する対象から得られた癌細胞または組織におけるC12orf32の発現レベルを決定する段階;
ii)C12orf32の発現レベルを正常対照と比較する段階;ならびに
iii)正常対照と比べてC12orf32を過剰発現する癌を有する対象に
(a)本発明の二本鎖分子、
(b)それをコードするDNA、および
(c)それをコードするベクター
からなる群より選択される少なくとも一つの成分を投与する段階。
あるいは、本発明は、C12orf32を過剰発現する癌を有する対象への投与において用いるための、
(a)本発明の二本鎖分子、
(b)それをコードするDNA、および
(c)それをコードするベクター
からなる群より選択される少なくとも一つの成分を含む医薬組成物も提供する。換言すれば、本発明はさらに、
(a)本発明の二本鎖分子、
(b)それをコードするDNA、または
(c)それをコードするベクター
により治療される対象を同定するための方法であって、対象由来の癌細胞または組織におけるC12orf32の発現レベルを決定する段階を含んでもよく、該遺伝子の正常対照レベルと比較したレベルの増大から、対象が、治療され得る癌を有することが示唆される方法を提供する。
本発明の癌を治療する方法は、以下でさらに詳細に記述される。
本方法によって治療される対象は、好ましくは哺乳類である。例示的な哺乳類としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマおよびウシが挙げられるが、これらに限定されることはない。
本発明によれば、対象から得られた癌細胞または組織におけるC12orf32の発現レベルが決定される。発現レベルは、当技術分野において公知の方法を用いて、転写(核酸)産物レベルで決定することができる。例えば、ハイブリダイゼーション方法(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション)、チップまたはアレイ、プローブ、RT−PCRを用いて、C12orf32の転写物レベルを決定することができる。
あるいは、本発明の治療のために翻訳産物を検出することもできる。例えば、観察されたタンパク質(SEQ ID NO:2)の量を決定することができる。
C12orf32遺伝子の発現レベルをその翻訳産物に基づいて検出する別の方法として、C12orf32タンパク質に対する抗体を用いた免疫組織化学的分析により染色の強度を測定することができる。すなわち、この測定において、強い染色から、該タンパク質の存在/レベルの増大、および同時に、C12orf32遺伝子の高い発現レベルが示唆される。
C12orf32ポリペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを検出または測定するための方法は上記(I.癌の診断)のように例示することができる。
VI.二本鎖分子およびそれをコードするベクター
本明細書において、SEQ ID NO:8、9または14の配列のいずれかを含むsiRNAは、C12orf32遺伝子を発現する細胞の細胞増殖または生存を抑制することが実証された。それゆえ、これらの配列のいずれかを含む二本鎖分子および該分子を発現するベクターは、C12orf32遺伝子を発現する細胞、例えば、乳癌の増殖を伴う疾患を治療または予防するために好ましい医薬となると考えられる。したがって、一局面によれば、本発明は、SEQ ID NO:8、9および14からなる群より選択される標的配列を含む二本鎖分子ならびに該分子を発現するベクターを提供する。より具体的には、本発明は、C12orf32遺伝子を発現している細胞に導入された場合に該遺伝子の発現を阻害する二本鎖分子であって、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖が標的配列としてSEQ ID NO:8、9および14からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含み、かつセンス鎖およびアンチセンス鎖が互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成するようにアンチセンス鎖がセンス鎖の標的配列に相補的なヌクレオチド配列を含む、分子を提供する。好ましい態様において、センス鎖が標的配列の位置でアンチセンス鎖とハイブリダイズして、長さが19〜25ヌクレオチド対である二本鎖分子を形成する。
センス鎖に含まれるC12orf32遺伝子に対する標的配列は、約500、400、300、200、100、75、50または25個未満の連続ヌクレオチドであるSEQ ID NO:1の一部分の配列からなり得る。例えば、標的配列はSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列由来の約19〜約25個の連続ヌクレオチドであり得る。本発明はこれに限定されず、適切な標的配列にはSEQ ID NO:8、9および14からなる群より選択されるヌクレオチド配列が含まれる。
本発明の二本鎖分子は、2つのポリヌクレオチド構築物、すなわち、センス鎖を含むポリヌクレオチドおよびアンチセンス鎖を含むポリヌクレオチドから構成されてよい。あるいは、この分子は、1つのポリヌクレオチド構築物、すなわち、センス鎖とアンチセンス鎖の両方を含むポリヌクレオチドから構成されてもよく、その場合、センス鎖およびアンチセンス鎖は、ヘアピン構造を形成することによってセンス鎖およびアンチセンス鎖内の標的配列のハイブリダイゼーションを可能にする一本鎖ポリヌクレオチドを介して連結されている。本明細書において、一本鎖ポリヌクレオチドは「ループ配列」または「一本鎖」と称されることもある。センス鎖とアンチセンス鎖とを連結する一本鎖ポリヌクレオチドは、3〜23個のヌクレオチドからなってよい。本発明の二本鎖分子に関するより詳細な内容については、「IV−2.二本鎖分子を含む医薬組成物」の項目を参照されたい。
本発明の二本鎖分子は、一つまたは複数の修飾ヌクレオチドおよび/または非リン酸ジエステル結合を含んでもよい。当技術分野において周知の化学的修飾は、二本鎖分子の安定性、利用可能性、および/または細胞取り込みを増大させることができる。当業者は、本分子に組み入れ可能な他の種類の化学的修飾について承知しているであろう(WO03/070744;WO2005/045037)。一態様において、修飾は、分解耐性の改善または取り込みの改善を提供するために用いることができる。このような修飾の例としては、ホスホロチオエート結合、(特に二本鎖分子のセンス鎖上の)2'−O−メチルリボヌクレオチド、2'−デオキシ−フルオロリボヌクレオチド、2'−デオキシリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5'−C−メチルヌクレオチド、および逆方向デオキシ塩基残基の組み込みが挙げられる(US20060122137)。
別の態様において、修飾は、二本鎖分子の安定性を増強するために、または二本鎖分子の標的化効率を増大するために用いることができる。修飾には、二本鎖分子の2つの相補鎖の間の化学的架橋、二本鎖分子の鎖の3'末端もしくは5'末端の化学的修飾、糖修飾、核酸塩基修飾および/または主鎖修飾、2−フルオロ修飾リボヌクレオチドならびに2'−デオキシリボヌクレオチドが含まれる(WO2004/029212)。別の態様において、修飾は、標的mRNA中および/または相補的な二本鎖分子鎖中の相補的ヌクレオチドに対する親和性を増大または低減するために用いることができる(WO2005/044976)。例えば、未修飾のピリミジンヌクレオチドを2−チオピリミジン、5−アルキニルピリミジン、5−メチルピリミジン、または5−プロピニルピリミジンに置き換えることができる。さらに、未修飾のプリンを7−デアザプリン、7−アルキルプリン、または7−アルケニルプリンで置換することもできる。別の態様において、二本鎖分子が3'オーバーハングを有する二本鎖分子である場合、3'末端のヌクレオチドがオーバーハングしているヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドによって置き換えられてもよい(Elbashir SM et al., Genes Dev 2001 Jan 15, 15(2): 188-200)。さらなる詳細については、US20060234970などの公開された文献が利用可能である。本発明はこれらの例に限定されず、かつ結果として生じる分子が標的遺伝子の発現を阻害する能力を保持している限り、任意の公知の化学的修飾を本発明の二本鎖分子に対して利用してもよい。
さらに、本発明の二本鎖分子は、DNAおよびRNAの両方を含んでもよく、例えば、dsD/R−NAまたはshD/R−NAである。具体的には、DNA鎖およびRNA鎖のハイブリッドポリヌクレオチドまたはDNA−RNAキメラポリヌクレオチドは、さらに高い安定性を示す。DNAとRNAとの混合、すなわち、DNA鎖(ポリヌクレオチド)とRNA鎖(ポリヌクレオチド)とからなるハイブリッド型の二本鎖分子、一本鎖(ポリヌクレオチド)のいずれかまたは両方にDNAおよびRNAの両方を含むキメラ型の二本鎖分子などは、二本鎖分子の安定性を増強させるために形成させることができる。DNA鎖とRNA鎖とのハイブリッドは、標的遺伝子を発現している細胞に導入された場合にその遺伝子の発現を阻害する活性を有している限り、センス鎖がDNAでありかつアンチセンス鎖がRNAであるか、またはその反対であるかのいずれかのハイブリッドであってよい。好ましくは、センス鎖ポリヌクレオチドがDNAであり、アンチセンス鎖ポリヌクレオチドがRNAである。同様に、キメラ型の二本鎖分子も、標的遺伝子を発現している細胞に導入された場合にその遺伝子の発現を阻害する活性を有している限り、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方がDNAおよびRNAから構成されている分子、またはセンス鎖およびアンチセンス鎖のいずれか一方がDNAおよびRNAから構成されている分子のいずれかであってよい。
二本鎖分子の安定性を増強するためには、該分子は好ましくはできるだけ多くのDNAを含み、一方、標的遺伝子の発現の阻害を誘導するためには、該分子は、十分な発現阻害を誘導する範囲内でRNAであることが必要とされる。キメラ型の二本鎖分子の好ましい例として、二本鎖分子の上流の部分的な領域(すなわち、センス鎖またはアンチセンス鎖内の標的配列またはその相補的配列に隣接している領域)はRNAである。好ましくは、上流の部分的な領域は、センス鎖の5'側(5'末端)およびアンチセンス鎖の3'側(3'末端)を示す。すなわち、好ましい態様において、アンチセンス鎖の3'末端に隣接する領域、またはセンス鎖の5'末端に隣接する領域とアンチセンス鎖の3'末端に隣接する領域の両方は、RNAからなる。例えば、本発明のキメラ型またはハイブリッド型の二本鎖分子は以下の組み合わせを含む。
センス鎖:
5'−[−−−DNA−−−]−3' 3'−(RNA)−[DNA]−5'
:アンチセンス鎖、 センス鎖:
5'−(RNA)−[DNA]−3' 3'−(RNA)−[DNA]−5'
:アンチセンス鎖、および センス鎖:
5'−(RNA)−[DNA]−3' 3'−(−−−RNA−−−)−5'
:アンチセンス鎖。
上流の部分的な領域は、好ましくは、二本鎖分子のセンス鎖またはアンチセンス鎖内の標的配列またはそれに相補的な配列の末端から数えて9〜13個のヌクレオチドからなるドメインである。さらに、このようなキメラ型の二本鎖分子の好ましい例には、ポリヌクレオチドの少なくとも上流の半分の領域(センス鎖の5'側領域およびアンチセンス鎖の3'側領域)がRNAであり、かつ残り半分がDNAである、19〜21ヌクレオチドの鎖長を有するものが含まれる。このようなキメラ型の二本鎖分子において、標的遺伝子の発現を阻害する効果は、アンチセンス鎖全体がRNAである場合にはるかに高い(US20050004064)。
本発明の文脈において、二本鎖分子は、短ヘアピンRNA(shRNA)ならびにDNAおよびRNAからなる短ヘアピン(shD/R−NA)などの、ヘアピンを形成してもよい。shRNAまたはshD/R−NAは、RNA干渉を介して遺伝子発現をサイレンシングするのに使用され得る密なヘアピンターンを作り出す、一続きのRNAまたはRNAとDNAとの混合物である。shRNAまたはshD/R−NAは、一本鎖上にセンス標的配列およびアンチセンス標的配列を含み、これらの配列はループ配列によって隔てられている。一般に、ヘアピン構造は細胞機構により切断されてdsRNAまたはdsD/R−NAになり、次いでこれらは、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に結合される。この複合体は、dsRNAまたはdsD/R−NAの標的配列とマッチするmRNAに結合し、かつ切断する。
あるいは、本発明は、センス鎖核酸およびアンチセンス鎖核酸を有するポリヌクレオチドの組み合わせのそれぞれを含むベクターであって、センス鎖核酸がSEQ ID NO:8、9または14のヌクレオチド配列を含み、かつアンチセンス鎖核酸がセンス鎖に相補的な配列からなり、センス鎖およびアンチセンス鎖の転写物が互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成し、ならびに該ベクターがC12orf32を発現している細胞に導入された場合に、該遺伝子の発現を阻害する、ベクターを提供する。好ましくは、ポリヌクレオチドのセンス鎖は約19〜25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド(例えば、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列由来の連続ヌクレオチド)である。より好ましくは、ポリヌクレオチドの組み合わせには、一本鎖ヌクレオチド配列を介して連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖を有する単一のヌクレオチド転写物が含まれる。より好ましくは、ポリヌクレオチドの組み合わせは、一般式5'−[A]−[B]−[A']−3'を有し、式中、[A]は、SEQ ID NO:8、9または14を含むヌクレオチド配列であり;[B]は、約3〜約23個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;[A']は、[A]に相補的なヌクレオチド配列である。
本発明のベクターは、例えば、両鎖の(DNA分子の転写による)発現を可能にするような形で調節配列がC12orf32配列に機能的に連結されるようにC12orf32配列を発現ベクターにクローニングすることによって産生することができる(Lee NS et al., Nat Biotechnol 2002 May, 20(5): 500-5)。例えば、mRNAに対してアンチセンスであるRNA分子が第一のプロモーター(例えば、クローン化DNAの3'末端に隣接するプロモーター配列)により転写され、mRNAに対するセンス鎖であるRNA分子が第二のプロモーター(例えば、クローン化DNAの5'末端に隣接するプロモーター配列)により転写される。センス鎖およびアンチセンス鎖はインビボでハイブリダイズして、遺伝子のサイレンシングのための二本鎖分子構築物を作出する。あるいは、二本鎖分子のセンス鎖およびアンチセンス鎖をそれぞれコードする2つのベクター構築物を利用して、センス鎖およびアンチセンス鎖をそれぞれ発現させ、それから二本鎖分子構築物を形成させる。さらに、クローン化配列は二次構造(例えば、ヘアピン)を有する構築物;すなわち、標的遺伝子のセンス配列および相補的なアンチセンス配列の両方を含むベクターの単一転写物をコードすることができる。
本発明のベクターは、標的細胞のゲノムへの安定的な挿入を達成するためのものを具備することもできる(例えば、相同組換えカセットベクターの説明に関しては、Thomas KR & Capecchi MR, Cell 1987, 51: 503-12を参照のこと)。例えば、Wolff et al., Science 1990, 247: 1465-8;米国特許第5,580,859号;同第5,589,466号;同第5,804,566号;同第5,739,118号;同第5,736,524号;同第5,679,647号;および国際公開公報第98/04720号を参照されたい。DNAに基づく送達技法の例としては、「裸のDNA」、促進性(ブピバカイン、重合体、ペプチド媒介性)送達、カチオン性脂質複合体、および粒子媒介性(「遺伝子銃」)または圧力媒介性の送達が挙げられる(例えば、米国特許第5,922,687号を参照のこと)。
本発明のベクターは、例えば、ウイルスベクターまたは細菌ベクターを含む。発現ベクターの例としては、ワクシニアまたは鶏痘などの弱毒化ウイルス宿主が挙げられる(例えば、米国特許第4,722,848号を参照のこと)。この手法は、例えば二本鎖分子をコードするヌクレオチド配列を発現するためのベクターとしての、ワクシニアウイルスの使用を伴う。標的遺伝子を発現している細胞への導入により、組換えワクシニアウイルスは該分子を発現し、それによって細胞の増殖を抑制する。使用可能なベクターの別の例としては、カルメットゲラン桿菌(Bacille Calmette Guerin;BCG)が挙げられる。BCGベクターはStover et al., Nature 1991, 351: 456-60に記述されている。多種多様の他のベクターが二本鎖分子の治療的投与および産生に有用である。例としては、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、無毒化炭疽毒素ベクターなどが挙げられる。例えば、Shata et al., Mol Med Today 2000, 6: 66-71; Shedlock et al., J Leukoc Biol 2000, 68: 793-806; およびHipp et al., In Vivo 2000, 14: 571-85を参照されたい。
以下において、実施例を参照して、本発明をより詳細に記述する。しかしながら、以下の材料、方法および実施例は本発明の局面を例示しているにすぎず、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。したがって、本明細書において記述されるものと同様または同等の方法および材料を、本発明の実践または試験に用いることができる。
本発明を以下の実施例においてさらに記述するが、それらは、特許請求の範囲に記述される本発明の範囲を限定するものではない。
材料および方法
1.乳癌細胞株
ヒト乳癌細胞株BT−549、HCC1937、MCF−7、MDA−MB−231、MDA−MB−435S、SK−BR−3、T47D、YMB−1、ZR−75−1およびBSY−1はアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection;ATCC,Rockville,MD)から購入し、その各寄託者らの推奨の下で培養した。HBC4およびHBC5は財団法人癌研究会・癌化学療法センター・分子薬理学分野の矢守隆夫博士からの寄贈である。HBC4、HBC5、BT−549、HCC1937、T47D、YBM−1、ZR−75−1およびBSY−1細胞株は、(2mM L−グルタミンを含む)RPMI−1640(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)中で培養した。MDA−MB−231およびMDA−MB−435S細胞株はL−15(Roche,Basel,Switzerland)中で培養した。SK−BR−3細胞株は(1.5mM L−グルタミンを含む)McCoy(Sigma−Aldrich)中で培養した。MCF−7細胞株は(10マイクログラム/mlのインスリンを含む)EMEM(Sigma−Aldrich)中で培養した。各培地に10%ウシ胎仔血清(FBS;Cansera International,Ontario,Canada)および1%抗生物質/抗真菌物質の溶液(Sigma−Aldrich)を補充した。MDA−MB−231およびMDA−MB−435S細胞株はCO2なしの加湿空気雰囲気中37℃で維持し、他の細胞株は5% CO2ありの加湿空気雰囲気中37℃で維持した。
2.半定量的RT−PCR
乳癌細胞の顕微解剖を既述(Nishidate et al, Int J oncol, 2004)のように行った。RNeasy Micro Kits(Qiagen,Valencia,CA,USA)ならびにTakara Clontech(Kyoto,Japan)から購入した、乳腺、心臓、肺、肝臓、腎臓および骨髄から単離されたポリA(+)RNAを用いて、総RNAを顕微解剖乳癌臨床試料、顕微解剖正常乳管細胞、および乳癌細胞株の各々から抽出した。その後、T7に基づく増幅およびRTを既述(Nishidate et al, Int J oncol, 2004)のように行った。定量対照としてβ−アクチンをモニタリングすることによって、各一本鎖cDNAの適正希釈液を、その後のPCRのために調製した。各プライマーセットの配列は以下の通りであった;
C12orf32(GenBankアクセッション番号NM_031465、SEQ ID NO:1)の場合
5'−TTTTAGAGAATCCTGCTTCCATCAG−3'(SEQ ID NO:3)
および
5'−TTTGACTGGGGAAGTCCTTCTG−3'(SEQ ID NO:4)
ならびに
β−アクチンの場合
5'−GAACGGTGAAGGTGACAGCA−3'(SEQ ID NO:5)
および
5'−ACCTCCCCTGTGTGGACTTG−3'(SEQ ID NO:6)。
3.ノーザンブロッティング分析
乳癌ノーザンブロットメンブレンを既述(Park et al, Cancer Res, 2006)のように調製した。ヒトマルチティッシュノーザンブロット(Takara Clontech,Kyoto,Japan)をRT−PCR(下記参照)によって調製されたC12orf32の[α32P]−dCTP標識PCR産物とハイブリダイズさせた。供給元の推奨にしたがいプレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションおよび洗浄を行った。ブロットを14日間−80℃で増感スクリーンを用いたオートラジオグラフィーにかけた。以下のプライマーセットを用いてRT−PCRにより、C12orf32に特異的なプローブ(343 bp)を調製した;
5'−TTTTAGAGAATCCTGCTTCCATCAG−3'(SEQ ID NO:3)
および
5'−CAATCCTAAAGAACTCATCTATGTC−3'(SEQ ID NO:7)。
これをメガプライムDNA標識システム(GE Healthcare,Buckinghamshire,UK)で放射能標識した。
4.C12orf32に特異的な低分子干渉RNA(siRNA)発現ベクター
既述(Shimokawa et al., Cancer Res, 2003)のようにpsiU6BX3.0 siRNA発現ベクターを用いて、ベクターに基づくRNAi(RNA干渉)発現系を樹立した。C12orf32に対するsiRNA発現ベクター(psiU6BX3.0−C12orf32)をpsiU6BX3.0ベクター中のBbsI部位への二本鎖オリゴヌクレオチドのクローニングにより調製した。siRNAに対する合成オリゴヌクレオチドの標的配列は、以下の通りであった;
si−#2の場合
5'−AAGCTGACTGCCATCAGTAAT−3'(SEQ ID NO:8)、
si−#3の場合
5'−AACAGTTCAGTTTAGTGTCAT−3'(SEQ ID NO:9)、
si−misの場合(下線の文字はsi−mis中のミスマッチ配列を示す)
5'−AACCTGACTGCGATCTGTAAA−3'(SEQ ID NO:10)。
構築物の全てをDNA配列決定(ABI3700;PE Applied Biosystems)によって確認した。ヒト乳癌細胞株HBC4およびT47Dを10cmディッシュ上にプレーティングし(細胞1×10個/ディッシュ)、FuGENE6トランスフェクション試薬(Roche)を製造元の指示にしたがって用いてpsiU6BX3.0−Mock(挿入なし)およびpsiU6BX3.0−C12orf32(#2において4塩基の置換を含むsi−#2、si−#3およびsi−mis)各8マイクログラムでトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、コロニー形成アッセイ法(細胞1×10個/10cmディッシュ)、RT−PCR(細胞1×10個/10cmディッシュ)および3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイ法(細胞2×10個/ウェル)のために細胞を再播種した。psiU6BX3.0が導入されたHBC4細胞またはT47D細胞を、それぞれ0.4mg/mlまたは0.8mg/mlのネオマイシン(Geneticin;Invitrogen)を含有する培地により選択した。培地を週2回変えた。ネオマイシンとの5日間のインキュベーションの後に細胞から総RNAを抽出し、その後、以下の特異的なプライマーセットを用いた半定量的RT−PCRによりsiRNAのノックダウン効果について調べた:
C12orf32の場合
5'−CTCATTCACCGGTTGATGCC−3'(SEQ ID NO:11)
および
5'−GCTTTTCACAAGGAATTGGCT−3'(SEQ ID NO:12)
内部対照としてのβ−アクチンの場合
5'−GGAACGGTGAAGGTGACAGC−3'(SEQ ID NO:13)
および
5'−ACCTCCCCTGTGTGGACTTG−3'(SEQ ID NO:6)。
siRNAを発現するHBC4細胞またはT47D細胞を、0.4mg/mlまたは0.8mg/mlのネオマイシンを含有する選択培地中で4週間増殖させ、次に、4℃で30分間4%パラホルムアルデヒドにより固定した後に、ギムザ溶液(Merck,Whitehouse Station,NJ)により染色してコロニー数を評価した。細胞生存率を定量化するため、MTTアッセイ法を製造元の推奨にしたがいcell counting kit−8(Wako,Osaka,Japan)を用いて行った。波長570nmでの吸光度をMicroplate Reader 550(Bio−Rad)で測定した。これらの実験は三連で行った。
siRNAオリゴヌクレオチド(Sigma Aldrich Japan KK,Tokyo,Japan)を、その高いトランスフェクション効率のゆえに使用して、C12orf32のノックダウン効果を観察した。C12orf32を標的化する配列(si−C12orf32)またはEGFPを標的化する配列(siEGFP)は、以下の通りであった:
si−C12orf32;
5'−GCUGACUGCCAUCAGUAAU−3'(SEQ ID NO:14)
siEGFP(対照);
5'−GCAGCACGACUUCUUCAAG−3'(SEQ ID NO:15)。
上記のオリゴヌクレオチドのセンス鎖にTTなどのいくつかのヌクレオチド配列を付加することができる。OptiMEM(Invitrogen)培地中でリポフェクトアミンRNAiMAX(Invitrogen,Carlsbad,CA)を製造元の指示にしたがって用い、それらのsiRNAをT47D細胞(FACS分析の場合、10cmディッシュ中1×10個の細胞)にトランスフェクトした。
5.蛍光活性化細胞選別(FACS)分析
上記のようにsiRNA実験に用いたT47D乳癌細胞を、siRNA−オリゴヌクレオチドによるトランスフェクションから48時間後に収集した。細胞を回収し、70%エタノールで固定し、使用前には4℃で維持した。細胞を37℃で30分間PBS(−)中10mg/mlのRNase Iと共にインキュベートし、室温で30分間50マイクログラムのヨウ化プロピジウム(PI)により染色した。フローサイトメーター(FACS calibur;Becton Dickinson,San Diego,CA)によりDNA含量について細胞懸濁液を分析した。CELLQuestソフトウェア(BD Biosciences,Sparks,Md.)によりデータを分析した。アッセイ法は個別に二連で行った。
6.C12orf32発現ベクターの構築
C12orf32発現ベクターを構築するため、コード配列全体を、KOD−Plus DNAポリメラーゼ(TOYOBO,Osaka,Japan)を用いたPCRによって増幅した。プライマーセットは 5'−CCGGAATTCCTCATTCACCGGTTGATGCC−3'(SEQ ID NO:16)
および
5'−CCGCTCGAGGCTTTTCACAAGGAATTGGCT−3'(SEQ ID NO:17)
(下線は制限酵素の認識部位を示す)であった。PCR産物をC末端のヘマグルチニン(HA)タグとインフレームでpCAGGSnHC発現ベクターのEcoRIおよびXhoI部位に挿入した。構築物のDNA配列をDNA配列決定(ABI3700;PE Applied Biosystems)によって確認した。
7.抗C12orf32特異的ポリクローナル抗体の作出
pET21a(+)ベクター(Novagen,Madison,WI)を用いN末端のT7タグおよびC末端のヒスチジン(His)タグとインフレームでC12orf32(コドン1〜208)の断片を発現するようにプラスミドをデザインした。大腸菌(Escherichia coli)、BL21 codon−plus株(Stratagene,La Jolla,CA)中で組換えペプチドを発現させ、これを、供給元のプロトコルにしたがいNi−NTA樹脂アガロース(QIAGEN)を用いて精製した。精製された組換えタンパク質を共に混合し、次いで、ウサギの免疫に用いた(Medical and Biological Laboratories,Nagoya,Japan)。免疫血清をその後、Affigel 15 gel(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)を供給元の指示にしたがって用いて抗原親和性カラムにて精製した。C12orf32のsiRNA−オリゴヌクレオチドを用いて、乳癌細胞株T47DおよびHBC4にて、この抗体が内因性C12orf32タンパク質を特異的に認識できたことが確認された。
8.ウエスタンブロット分析
乳癌細胞株(HBC4、MDA−MB−231、BT−549、T47D、SK−BR−3、ZR−75−1、BSY−1およびMCF−7)における内因性C12orf32タンパク質の発現を調べるために、0.1%プロテアーゼ阻害剤カクテルIII(Calbiochem,San Diego,CA)を含む溶解用緩衝液(50mM Tris−HCl、pH 8.0、150mM NaCl、0.5% NP−40)で細胞を溶解した。ホモジナイゼーションの後、細胞溶解物を30分間氷上でインキュベートし、14,000rpmで5分間遠心分離して細胞残屑から上清だけを分離した。総タンパク質の量をプロテインアッセイキット(Bio−Rad)によって測定し、その後、タンパク質をSDS−試料用緩衝液と混合し、12% SDS−PAGEゲルに負荷する前に5分間煮沸した。電気泳動の後、タンパク質をニトロセルロースメンブレン(GE Healthcare)上にブロットした。このメンブレンを終夜ブロッキング溶液によってブロッキングし、精製抗C12orf32ポリクローナル抗体と共にさらに1時間インキュベートして内因性C12orf32タンパク質を検出した。最後に、メンブレンを、HRP結合二次抗体と共に1時間インキュベートし、タンパク質のバンドをECL検出試薬(GE Healthcare)によって可視化した。
9.免疫細胞化学染色
乳癌細胞における内因性C12orf32タンパク質の細胞内局在性を調べるために、T47D細胞を細胞1×10個/ウェル(Lab−Tek II Chamber Slide System;Nalgen Nunc International,Naperville,IL)で播種した。24時間のインキュベーションの後、細胞を、4℃で30分間4%パラホルムアルデヒドを含有するPBS(−)により固定し、4℃で2分間0.1% Triton X−100を含有するPBS(−)により透過性とした。その後、細胞をPBS(−)中3%のBSAで1時間覆って非特異的なハイブリダイゼーションをブロッキングし、その後、100分の1に希釈した抗C12orf32ポリクローナル抗体とのインキュベーションをさらに1時間行った。PBS(−)で洗浄した後に、細胞を、1,000分の1に希釈したAlexa 488結合抗ウサギ二次抗体(Molecular Probe,Eugene,OR)によって1時間染色した。核を4',6−ジアミジノ−2−フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)で対比染色した。TCS SP2 AOBS顕微鏡(Leica,Tokyo,Japan)の下で蛍光像を得た。
結果
1.乳癌細胞におけるC12orf32の過剰発現
乳癌発症の機構を解明するため、および新規治療薬の開発のための標的として適用可能であり得る分子を同定するため、乳癌81例の、ゲノム規模での遺伝子発現プロファイル分析を、27,648個のcDNAに相当するcDNAマイクロアレイを用いることで行った。転写活性化遺伝子のうち、本明細書では第12染色体のオープンリーディングフレーム32(C12orf32)に注目した。半定量的RT−PCRにより、正常乳管細胞および全乳腺と比べて乳癌標本11例中の5例で、その上方制御が確認された(図1A)。その後、プローブとしてC12orf32 cDNA断片を用いたノーザンブロット分析から、乳癌細胞株におけるC12orf32のおよそ1.8kbおよび1.5kbの転写物の過剰発現が確認された(図1B)。一方、C12orf32の発現はcDNAマイクロアレイ分析の結果と一致して、精巣、前立腺、卵巣、胸腺および小腸を除く正常ヒト臓器のいずれにおいてもほとんど検出できなかった(図1C)。ノーザン分析の結果から2本のバンドが観察された(図1B)。NCBIデータベースから予想されたC12orf32 mRNA転写物のサイズは1.8kbであった。C12orf32の他の転写変異体(およそ1.5kb)が存在しているかどうかを調べるために、C12orf32のオープンリーディングフレーム(ORF)領域に対応する領域をRT−PCR分析によって増幅した(図1D)。図1Dに示されるように、予想サイズの唯一本のバンドがC12orf32のORF領域において観察され、このことにより、C12orf32は、233アミノ酸のタンパク質をコードする同じオープンリーディングフレームを共有する少なくとも二つの転写物を持つ可能性があることが示唆された。
2.ヒト乳癌細胞におけるC12orf32タンパク質の切断型
pCAGGSHCを用いてC12orf32発現ベクターを構築し、全長C12orf32タンパク質の発現を観察した(材料および方法を参照のこと)。これは、pCAGGSHC−C12orf32でトランスフェクトされたCOS−7細胞の溶解物を用いたウエスタン分析によって、別の三本の小サイズのバンド(およそ27kDa、23kDa、および16kDa)と共におよそ34kDaの位置に検出された(図2A)。予想外にも、外因的に発現されたC12orf32タンパク質の16kDaおよび23kDaのバンドは、調べた乳癌細胞株のほとんどで検出されたが、予想された全長C12orf32タンパク質のサイズ(およそ34kDa)は検出できなかった。乳癌細胞における内因性C12orf32タンパク質を検出するため、乳癌細胞株を用いたウエスタンブロット分析用にポリクローナル抗C12orf32抗体を作出した。結果として、23kDaのタンパク質ではなく16kDaの内因性C12orf32が観察された(図2Aおよび2B)。図1Dに示されるように、C12orf32転写物の他のいずれかの選択的スプライシング型が認められたので、これらの小さなサイズのタンパク質は分解される可能性があるものと推測された。この問題を明らかにするために、乳癌細胞株を用いたsiRNA実験を行った。抗C12orf32抗体で検出されたこれらの2つのタンパク質の発現レベルは、C12orf32のsiRNA−オリゴヌクレオチドにより低減され、このことにより、これらの2本のバンドが内因性C12orf32タンパク質に相当することが示唆された(図2Aおよび4E)。さらに、pCAGGSHC−C12orf32でトランスフェクトされたCOS−7細胞の溶解物を用い、抗C12orf32抗体または抗HA抗体を用いたウエスタン分析から、異なる結果が示された(図2B)。予想された全長(34kDa)のC12orf32タンパク質はどちらの結果でも示されたが、異なる小サイズのバンドが観察され、このことにより、C12orf32タンパク質は切断型を有する可能性があることが示唆された。
3.C12orf32の細胞周期依存的な発現
アフィジコリン処理による細胞周期の同調後に、T47D細胞を用いたFACSおよびウエスタンブロット分析を行った。細胞の大部分が(細胞周期停止からの解放後9時間の時点で)G2/M期にあるものと考えられた場合に(図3A〜3C)、ウエスタンブロットおよびRT−PCR分析では、C12orf32発現の増加が検出され、このことにより、有糸分裂におけるC12orf32の重要な役割が示唆された。抗C12orf32抗体を用いた免疫細胞化学染色から、C12orf32タンパク質が、間期にあるT47D細胞の核に局在することが明らかにされた(図3D)。前期から後期まで、C12orf32は細胞中に広範に局在していた。最後に、このタンパク質は、終期にある細胞の中心体の位置に濃縮されていた。
4.乳癌細胞株の増殖に対するsiRNAを用いたC12orf32のノックダウン効果
乳癌細胞におけるC12orf32の増殖促進に対する役割を評価するため、哺乳類ベクターに基づくRNA干渉(RNAi)技法(材料および方法を参照のこと)を用い、高レベルのC12orf32を発現していた乳癌細胞株HBC4およびT47Dにおいて内因性C12orf32の発現をノックダウンした。C12orf32の発現レベルを半定量的RT−PCR分析によって調べた。二つのsiRNA(si−#2およびsi−#3)は対照siRNA構築物psiU6BX−Mock(si−対照)と比べて、C12orf32の発現を有意に抑制した(図4Aおよび4B;上パネル)。ノックダウン効果と一致して、MTT(図4Aおよび4B;中央のパネル)およびコロニー形成アッセイ法(図4Aおよび4B;下パネル)から、si−#2およびsi−#3による有意な増殖抑制効果が明らかにされた(MTTアッセイ法:HBC4;**P<0.0001,T47D;**P<0.0001;対応のないt検定)。si−#2配列において4塩基の置換を含むsiRNA(si−C12orf32−ミスマッチ(si−mis)、材料および方法を参照のこと)も作出し、C12orf32の発現に対するまたはT47D細胞の細胞増殖に対する抑制効果がないことが見出された(図4C)。これらの知見は、乳癌細胞の増殖においてC12orf32が重要な機能を有することを示唆している。さらに、C12orf32の枯渇がコロニー数および細胞生存率の有意な減少を引き起こしたので、siRNA−オリゴヌクレオチドを用いた蛍光活性化細胞選別(FACS)分析を行って、アポトーシス細胞集団の割合を測定した。この結果は、si−EGFPと比べてC12orf32のsiRNA−オリゴヌクレオチド(si−C12orf32)によるアポトーシス細胞集団(Sub−G1)の有意に高い割合を示し(P=0.0245,**P=0.009;対応のないt検定)(図4D)、このことにより、C12orf32発現の阻害はアポトーシスを誘導する可能性があることが示唆された。抗C12orf32抗体を用いてウエスタン分析によりC12orf32タンパク質のノックダウンが確認された(図4E)。
産業上の利用可能性
ゲノム全域のcDNAマイクロアレイの組み合わせを用いた、本明細書に記載の癌の遺伝子発現解析により、癌の予防および治療法に対する標的として、特定の遺伝子が同定された。これらの差次的に発現された遺伝子、すなわちC12orf32の発現に基づいて、本発明は癌、特に乳癌を同定および検出するための分子診断マーカーを提供する。
本明細書において提供されるデータは、癌の包括的な理解の一助となり、新規な診断戦略の開発を促進し、かつ治療的薬物および予防的物質に対する分子標的の同定の糸口を提供する。このような情報は、腫瘍形成のより深い理解に寄与し、かつ癌を診断し、治療し、かつ最終的には予防するための新規な戦略を開発するための指標を提供する。

Claims (22)

  1. 対象由来の生体試料におけるC12orf32遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む、対象における癌または癌発症の素因を診断するための方法であって、該遺伝子の正常対照レベルと比較した該発現レベルの増大が、該対象が癌に罹患しているまたは癌を発症するリスクがあることを示し、該発現レベルが、以下からなる群より選択される方法によって決定される、方法:
    (a)C12orf32遺伝子のmRNAを検出する方法;
    (b)C12orf32遺伝子によってコードされるタンパク質を検出する方法;および
    (c)C12orf32遺伝子によってコードされるタンパク質の生物学的活性を検出する方法。
  2. 前記発現レベルが正常対照レベルよりも少なくとも10%高い、請求項1記載の方法。
  3. 癌が乳癌である、請求項1記載の方法。
  4. C12orf32遺伝子の転写産物または翻訳産物に結合する検出試薬を含む、癌を検出するためのキット。
  5. 以下の段階を含む、癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法:
    (a)C12orf32ポリペプチドまたはその断片と試験物質とを接触させる段階;
    (b)前記ポリペプチドまたは断片と試験物質との間の結合を検出する段階;および
    (c)前記ポリペプチドまたは断片に結合する試験物質を、癌を治療または予防するための候補物質として、選択する段階。
  6. 以下の段階を含む、癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法:
    (a)C12orf32ポリペプチドまたはその断片と試験物質とを接触させる段階;
    (b)前記ポリペプチドまたは断片の生物学的活性を検出する段階;
    (c)前記ポリペプチドまたは断片の生物学的活性を、試験物質の非存在下で検出された生物学的活性と比較する段階;および
    (d)前記ポリペプチドの生物学的活性を抑制する試験物質を、癌を治療または予防するための候補物質として選択する段階。
  7. 生物学的活性が細胞増殖活性である、請求項6記載の方法。
  8. 以下の段階を含む、癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法:
    (a)C12orf32遺伝子を発現する細胞と試験物質とを接触させる段階;
    (b)C12orf32遺伝子の発現レベルを検出する段階;
    (c)前記発現レベルを、試験物質の非存在下で検出された発現レベルと比較する段階;および
    (d)前記発現レベルを低減する試験物質を、癌を治療または予防するための候補物質として選択する段階。
  9. 以下の段階を含む、癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法:
    (a)C12orf32遺伝子の転写調節領域および該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターを導入した細胞と試験物質とを接触させる段階; (b)前記レポーター遺伝子の発現レベルまたは活性を測定する段階;
    (c)前記発現レベルまたは活性を、試験物質の非存在下で検出された発現レベルまたは活性と比較する段階;ならびに
    (d)前記発現レベルまたは活性を低減する試験物質を、癌を治療または予防するための候補物質として選択する段階。
  10. センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖分子であって、センス鎖が、SEQ ID NO:8、9または14からなる標的配列に対応するヌクレオチド配列を含み、かつアンチセンス鎖が前記標的配列に相補的なヌクレオチド配列を含み、センス分子、および該二本鎖分子が、C12orf32遺伝子を発現している細胞に導入された場合に、前記遺伝子の発現を阻害する、二本鎖分子。
  11. センス鎖が標的配列の位置でアンチセンス鎖とハイブリダイズして、長さが19〜25ヌクレオチド対である二本鎖分子を形成する、請求項10記載の二本鎖分子。
  12. 一本鎖ヌクレオチド配列によって連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む単一のポリヌクレオチド構築物である、請求項10または11記載の二本鎖分子。
  13. 一般式5'−[A]−[B]−[A']−3'を有する二本鎖分子であって、式中、[A]は、SEQ ID NO:8、9および14からなる群より選択される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖であり、[B]は、3〜23個のヌクレオチドからなる一本鎖であり、かつ[A']は、前記標的配列に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖である、請求項12記載の二本鎖分子。
  14. 請求項10〜13のいずれか一項記載の二本鎖分子をコードするベクター。
  15. センス鎖核酸およびアンチセンス鎖核酸を含むポリヌクレオチドの組み合わせのそれぞれを含むベクターであって、センス鎖核酸が、SEQ ID NO:8、9または14に対応するヌクレオチド配列を含み、かつアンチセンス鎖核酸が、センス鎖に相補的な配列を含み、センス鎖およびアンチセンス鎖の転写物が互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成し、かつ該ベクターが、C12orf32遺伝子を発現している細胞に導入された場合に、細胞増殖を阻害する、ベクター。
  16. C12orf32遺伝子に対する二本鎖分子または該二本鎖分子をコードするベクターの薬学的有効量を対象に投与する段階を含む、対象において癌を治療または予防する方法であって、該二本鎖分子が、C12orf32遺伝子を発現している細胞に導入された場合に、C12orf32遺伝子の発現を阻害する、方法。
  17. 二本鎖分子が請求項10〜13のいずれか一項記載のものであり、ベクターが請求項14または15記載のものである、請求項16記載の方法。
  18. 癌が乳癌である、請求項16または17記載の方法。
  19. 二本鎖分子が、C12orf32遺伝子を発現している細胞に導入された場合に、C12orf32遺伝子の発現を阻害する、C12orf32遺伝子に対する二本鎖分子または該二本鎖分子をコードするベクターの薬学的有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、癌を治療または予防するための組成物。
  20. 二本鎖分子が請求項10〜13のいずれか一項記載のものであり、ベクターが請求項14または15記載のものである、請求項19記載の組成物。
  21. 癌が乳癌である、請求項19または20記載の組成物。
  22. 以下の段階によって得られるC12orf32タンパク質の断片:
    (a)C12orf32タンパク質を発現するベクターを、乳癌細胞株またはCOS−7細胞にトランスフェクトする段階、および
    (b)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定された翻訳産物の分子量が、約27kDa、23kDa、および16kDaからなる群より選択される、翻訳産物を前記細胞から回収する段階。
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