現在、多くのセルラ移動通信ネットワーク(例えば、3GPP、WiMAX、あるいは3GPP2)において、移動端末は、ネットワークにおけるそのモビリティのため、異なるセルを選択する際にネットワークにいつも通知するわけではない。特にアイドルモード(すなわち、移動端末がネットワークとユーザトラフィックを交換していないとき)では、移動端末は、ネットワークが認識しないままに新たなセルにキャンプオンすることがある。例えば、3GPPでは、アイドルモードにある移動端末(一般にUE(user equipment, ユーザ機器)という)は、ネットワークに通知メッセージ(例えば「位置更新(Location Update)」メッセージ)を送信せずに、旧セルと同じ位置登録エリア(Location Area)内でセル再選択手続きを実行する。一般的にこれはモビリティイベント中のシグナリングトラフィックを低減する望ましい挙動であるが、例えばフェムトセルサービスやLIPA(Local IP Access & Internet Offload)のようなセル関連サービスでは、これは重大な制約を課する。
すなわち、3GPPでは、LTE(Long Term Evolution)ネットワークのための家庭内の発展型ノードBを導入する新しい概念を規定している。これは、3GPP UTRAN(UMTS Terrestrial Radio Access Network)アクセスのためのH(e)NBおよび家庭内ノードB(HNBという)と呼ばれる。以下、これらのノードBを両方とも等しくH(e)NBと表すことにする。従来のセルサイトとは異なり、H(e)NBによって提供されるユーザアクセスは、かなり小さい(屋内)エリアのみに広がり、通常は家庭内、さらには個々の部屋に限定される。
H(e)NBだけでなく、LIPA対応の従来型基地局にとっても、これらのセルに実際にキャンプオンしているUEのみに利用可能であるべき新たなサービスが設計される可能性がある。一例として、家族メンバが帰宅したときに、その家族メンバのUEのデータを家庭内のPCと同期するサービスが挙げられる。これは、その家族メンバのUEがその家族の家庭内のH(e)NBのセルに入ったときにトリガされることが考えられる。この種のサービスの場合、特定のUEがどのセルにキャンプオンしているかをネットワークに通知するために、正確で確実な報告メカニズムが必要とされる。もちろん、この情報はUEで利用可能であるが、ネットワーク(およびネットワークベースのサービス)は多くの場合、このような情報を受信しない。
現在、特別な場合には、上記で概観したような問題は特定のネットワーク構成によって(例えば、位置登録エリアの特定の割当によって)回避することができる。しかしこれは、事業者のネットワーク計画に重大な制約を課し、追加的なシグナリング負荷につながる。
したがって、本発明の目的は、移動通信ネットワークで移動端末の特定のセル変更を報告するモビリティ検出・報告システムおよび方法において、ネットワークにおけるサービスアプリケーションが、効率的かつ確実に移動端末のモビリティイベントに関して通知を受けるような改良およびさらなる展開を行うことである。
本発明によれば、上記の目的は、請求項1の構成を備えたモビリティ検出・報告システムによって達成される。この請求項に記載の通り、本システムは、前記移動端末上に存在する端末アプリケーションと、前記ネットワークに設けられたサービス通知システムとを備え、前記端末アプリケーションは、前記サービス通知システムに前記移動端末の特定のセル変更を報告するように構成され、前記サービス通知システムは、前記移動端末の前記セル変更に関してネットワーク内のサービスアプリケーションに通知するように構成されることを特徴とする。
また、上記の目的は、独立請求項10の構成を備えた方法によって達成される。この請求項に記載の通り、本方法は、前記移動端末上に存在する端末アプリケーションを提供し、前記端末アプリケーションは、前記ネットワークに設けられたサービス通知システムに前記移動端末の特定のセル変更を報告するように構成され、前記サービス通知システムは、前記移動端末の前記セル変更に関してサービスアプリケーションに通知することを特徴とする。
本発明によって認識されたこととして、セルに出入りする移動端末のイベントが、ネットワーク内でその移動端末にサービスを提供するサービスアプリケーションに報告されると望ましい場合がある。しかし、現在、このようなイベントは多くの場合、ネットワークによって検出されることができない。このため、本発明は、移動端末の側に実装される専用の端末アプリケーションを導入するとともに、ネットワークに実装されるサービス通知システムを導入することを提案する。本発明によれば、端末アプリケーションは、移動端末がキャンプオンする特定のセルへの出入りをサービス通知システムに報告する。サービス通知システムは、移動端末に存在する端末アプリケーションによって報告されたモビリティイベントを、(移動端末にサービスを提供する)サービスアプリケーションに通知する。
本発明によるシステムおよび方法は、多くの種類のセルラ移動通信ネットワークに適用可能であり、例えば3GPP、WiMAX、および3GPP2に適用可能であるが、これらに限定されない。なお、本発明の解決法は、「旧式」の端末、例えば3GPP Rel−8以前の端末もサポート可能である。本発明の解決法は、特定のネットワーク構成(例えば位置登録エリア割当)や特定のH(e)NB機能に依らない点で特に有利である。さらに、サポートされるセルの種類に関しても、本発明は、ネットワーク固有の制約や構成に依らない。本発明の解決法は、(通常の)マクロセルに関連するモビリティイベントに適用可能であるとともに、フェムトセル等に関連するモビリティイベントにも適用可能である。また、LIPA(Local IP Access & Internet Offload)に関する3GPPにおける現在の議論を考慮すると、本発明による方法は、何ら変更を必要とせずに適用可能であることも言及しておく価値がある。
以下「移動端末」という場合、この用語は、ユーザ機器(UE)、携帯電話、ハンドセット、PDA(携帯情報端末)、コンピュータ、あるいはセルラ移動通信ネットワークで動作可能なその他の任意のユーザ装置を含むが、これらに限定されない。
好ましい実施形態によれば、端末アプリケーションは、移動端末のハードウェア上に、特に、該移動端末の実行可能プログラムとして、存在してもよい。この場合、端末アプリケーションは、移動端末のモビリティ管理関連情報(例えばセル識別子)にアクセス可能であると仮定される。別法として、フレキシビリティを高めるため、端末アプリケーションは、移動端末の着脱可能エンティティ上に存在するようにしてもよい。例えば、3GPPの場合、端末アプリケーションは、UICC(Universal Integrated Circuit Card)上のUSIM(Universal Subscriber Identity Module)アプリケーションツールキット(USIM Application Toolkit, USAT)アプリケーションとして存在してもよい。いずれの場合でも、端末アプリケーションは、移動端末にプリインストールされても、事業者によって移動端末にプッシュ転送されてもよい。
端末アプリケーションに対してそれが存在している移動端末のモビリティイベントを効果的に通知するため、端末アプリケーションは、移動端末のRR(無線リソース(Radio Resource)管理)レイヤを通じて移動端末からそれぞれの情報を受信するようにしてもよい。例えば、移動端末があるセル(旧セル)から別のセル(新セル)に変更した場合、端末アプリケーションには、移動端末のRRレイヤによって、新セルのセル識別子が通知される。このような通知は、移動端末が新セルにキャンプオンするたびに自動的に生成されてもよい。別法として、端末アプリケーションは、新セルのセル識別子を取得するためにRRレイヤに問合せをするように構成されてもよい。より包括的な情報交換のため、端末アプリケーションは、サービス通知システムへ追加的パラメータ(例えばフェムトセルID)を報告するように構成されてもよい。
不要なトラフィックを避けるため、端末アプリケーションは、サービス通知システムへ移動端末の選択されたセル変更のみを報告するように構成されてもよい。これにより、ネットワークにおいてユーザに提供されるサービスアプリケーションによって実行されるサービスに関連するセル変更のみが報告される。
別の実施形態によれば、サービス通知システムはデータベースを有する。データベースは、1つ以上のセルと、移動端末内の端末アプリケーションがそれらのセルに出入りするセル変更を報告した場合に通知を受けるべきサービスアプリケーションのリストとの間のマッピングを含む。サービスアプリケーションの通知は、セル変更を報告した移動端末の識別を含む。上記のマッピングとは別に、データベースは、移動端末のモビリティイベントがサービスアプリケーションに報告されるべきときに満たす必要のあるフィルタリング条件を記述する追加的情報を含んでもよい。この情報としては、例えば、移動端末のモビリティイベントが報告されるべきか否かを記述する移動端末のホワイトリスト/ブラックリスト、特定の移動端末が加入/使用を許可されているセルのリスト(例えば、それらのセルIDによって識別される)、セル属性(例えばフェムトセル)、限定加入者グループ(Closed Subscriber Group)等が挙げられるが、これらに限定されない。サービス通知システムに提供されるモビリティ関連情報は、事業者のコアネットワーク内の他のエンティティによって提供される情報によって補足されてもよい。例えば、アクティブモードでのセル変更のイベント(ハンドオーバ)の場合、ネットワークは、アクティブセッションに関する情報を提供してもよい。
効果的な導入に関して、サービス通知システムは、アプリケーション登録・通知プラットフォームを含んでもよい。このプラットフォームは、サービスアプリケーションがモビリティイベントに関する通知を受信するための登録を行い、満たす必要のある関連するフィルタリング条件を指定することを可能にするアプリケーション登録ポータルを含んでもよい。セキュリティ上の理由から、移動端末のモビリティイベントに関する情報は、権限のあるサービスのみに利用可能とするのが望ましい場合がある。このため、ポータルは、サービスアプリケーションによる通知の受信が、そのサービスアプリケーションの認証および認可の成功を必要とするように構成されてもよい。当技術分野で既知の従来の認証、認可および登録の手続きを実施してもよい。
また、アプリケーション登録・通知プラットフォームは、移動端末のセル変更に関して、登録されたサービスアプリケーションに通知するように構成されたアプリケーション通知プラットフォームを含んでもよい。一実施形態によれば、アプリケーション通知プラットフォームは、例外なしに移動端末のすべてのセル変更を報告するように構成されてもよい。別法として、選択されたセル変更のみが報告されるようにしてもよい。その場合、選択プロセスは、上記データベースのフィルタリング条件によって、アプリケーション通知プラットフォーム自身によって、または他のエンティティによって、制御されてもよい。追加的情報が通知プロセスに含まれてもよい。すなわち、アプリケーション通知プラットフォームは、それぞれの選択ルールに応じて、モビリティイベントに関連する追加的情報を提供するように構成されてもよい。この情報としては、例えば、3GPPの場合には、移動加入者識別(Mobile Subscriber Identity)、セル識別(Cell Identity)、H(e)NB名(H(e)NB Name)、CSG ID等が挙げられるが、これらに限定されない。
高度なユーザエクスペリエンスに関して、サービス通知システムは、ユーザ自己設定ポータルを含んでもよい。ユーザ自己設定ポータルによれば、移動端末のユーザは、どのサービスアプリケーションが当該移動端末のモビリティイベントに関する通知を受信することを許可されるかを登録することが容易になる。その結果、アプリケーション通知プラットフォームが移動端末のセル変更に関してすべての登録されたサービスアプリケーションに通知するように構成されていても、ユーザは、自己の現在の必要および要求に従って、ある特定のサービスアプリケーションへの通知をほぼ遮断することができる。また、ユーザは、ユーザ自己設定ポータルを通じて、特定のサービスアプリケーションのサービス挙動をカスタマイズしてもよい。さらに、端末アプリケーションが移動端末にプリインストールされていない場合、ユーザ自己設定ポータルへの移動端末の最初のアクセスを、移動端末に端末アプリケーションをダウンロードするためのトリガとして用いてもよい。
本発明を好ましい態様で実施するにはいくつもの可能性がある。このためには、一方で請求項1および10に従属する諸請求項を参照しつつ、他方で図面により例示された本発明の好ましい実施形態についての以下の説明を参照されたい。図面を用いて本発明の好ましい実施形態を説明する際には、本発明の教示による好ましい実施形態一般およびその変形例について説明する。
図1に例示した状況において、移動端末100は、ネットワーク内でその位置を変更する。すなわち、移動端末100は、セル301(旧セル301と称する)を稼働させている無線局201のカバレジエリアを徐々に出て、セル300(以下、新セル300と称する)を稼働させている無線局200のカバレジエリアに入る。セル300および301が同じ位置登録エリアに属する場合、ネットワークは、移動端末100が旧セル301を出て新セル300にキャンプオンしていることを通知しない。特に、フェムトセルサービスにおいては、このような挙動は、フェムトセル固有のサービスアプリケーションを動作させるためには重要な場合がある。
本発明によれば、移動端末100に存在する端末アプリケーション101が導入される。図1からは明らかではないが、図示した例では、端末アプリケーション101は、移動端末100のオペレーティングシステムの実行可能プログラムとして実現されるか、あるいは、端末アプリケーション101は、移動端末100の着脱可能エンティティ上に存在すると仮定する。
端末アプリケーション101は、移動端末100が新セルにキャンプオンするたびに、新しいセル識別子に関して、移動端末100(例えば、3GGP 44.018)のRR(Radio Resource Management)レイヤによって通知を受ける。図1に示した例では、移動端末100が無線局200のカバレジエリアに入ると、端末アプリケーション101には、新セル300のセル識別子が通知される。なお、通知は、移動端末100がアイドルモードまたは接続モードのいずれで新セルを選択するかにかかわらず行われる。
端末アプリケーション101は、(例えば移動端末100のRRレイヤを通じて)通知された特定のセル変更を、ネットワーク内のサービス通知システム(Service Notification System, SNS)400に報告するように構成される。端末アプリケーション101は、SNS(400)へ移動端末の選択されたセル変更のみを報告するように構成されてもよい。SNS400は、事業者のコアネットワークに接続され、事業者のOSS/BSS(Operations Support System/Business Support System)システム700によって管理・設定される。SNS400は、移動端末100のセル変更に関して、権限のある登録されたサービスアプリケーション600に通知する。
以下、SNS400についてさらに詳細に説明する。SNS400は、データベース402およびアプリケーション登録・通知プラットフォーム410を有する。データベース402は、登録された移動端末ごとに、セル(セル識別子によって特徴づけられる)のセットと、移動端末内の端末アプリケーションがセルの1つに出入りするセル変更を報告した場合に通知を受けるべきサービスアプリケーション(600)のリストとの間のマッピングを含む。サービスアプリケーションの通知は、セル識別子およびセル変更を報告した移動端末の識別を含む。
上記のマッピングとは別に、データベースは、移動端末のモビリティイベントがサービスアプリケーションに報告されるべきときに満たす必要のあるフィルタリング条件を記述する追加的情報を含んでもよい。
この追加的情報としては、例えば、移動端末のモビリティイベントが報告されるべきか否かを記述する移動端末のホワイトリスト/ブラックリスト、セル属性(例えばフェムトセル)、限定加入者グループ(Closed Subscriber Group)等が挙げられるが、これらに限定されない。
データベースにおいて、移動端末は、例えば移動通信加入者識別(mobile subscriber identity)によって識別されてもよい。サービスアプリケーション600もまた、特定のアプリケーション識別子によって識別されてもよい。
データベース402に含まれるサービスアプリケーション600のリストはさまざまな方法で指定することができる。図1に示した場合、プラットフォーム410は、アプリケーション登録ポータル411を有する。アプリケーション登録ポータル411によれば、サービスアプリケーション600は、認可および認可の成功後、移動端末のモビリティイベントに関して通知を受信するための登録が可能である。その後、アプリケーション登録ポータル411に登録されたサービスアプリケーション600は、データベース402に含まれるサービスアプリケーション600のリストに組み込まれてもよい。認証および認可のプロセスに関しては、従来の方法を使用してもよい。モビリティ関連通知を受信するための登録に加えて、アプリケーション登録ポータル411によれば、サービスアプリケーションは、満たす必要のある関連する条件を指定することが可能である。
プラットフォーム410は、さらに、アプリケーション通知プラットフォーム412を有する。アプリケーション通知プラットフォーム412は、移動端末のモビリティイベントに関して、登録されたアプリケーションに通知する。さらに、アプリケーション通知プラットフォーム412は、これらのモビリティイベントに関連する追加的情報を提供してもよい。例えば、3GPPの場合、追加的情報としては、移動通信加入者識別、セル識別、H(e)NB名、CSG(Closed Subscriber Group)ID等が挙げられる。
図1に例示したモビリティ検出・報告システムのSNS400は、さらに、ユーザ自己設定ポータル401を有する。このポータルを使用することにより、ユーザは、どのサービスアプリケーション600が自己の移動端末のモビリティイベントに関する通知を受信することを許可されるかを登録することができる。さらに、ユーザは、ユーザ自己設定ポータル401を通じて、サービスアプリケーションのサービス挙動をカスタマイズしてもよい。その結果、ユーザは、事業者によって設定された限度内で、システムを十分に制御することができ、どのサービスアプリケーションを通知から除外するかに関して自ら決定することができる。
図2は、図1に関して説明した端末アプリケーション101で動作するアルゴリズムの一例の流れ図である。セルのリストが端末アプリケーション101に保存されていると仮定する。このセルのリストが参照しているセルは、移動端末がこれらの特定のセルに出入りするたびに端末アプリケーション101がSNS400に報告しなければならないセルである。このセルのリストをP_Cell[j]で表す。このリスト内の要素数をNで表す。
最初に、フラグP_Cell_Flag_oldおよびフラグP_Cell_Flagを両方ともFalseにセットする。もう1つの変数として、ルーチンが初めて実行されたか否かを示すFIRST_TIMEという変数をTrueにセットする。端末アプリケーション101は、起動後、RRエンティティから、移動端末が現在キャンプオンしているセルのCell_IDを読み出す。Cell_IDという用語は、一意的なネットワーク固有のセル識別子を指す。
次のステップで、端末アプリケーション101は、現在のセルIDがセルリストP_Cell[j]からのセルの1つと一致するかどうかをチェックする。この比較の結果に基づいて、端末アプリケーション101は、フラグP_Cell_FlagをTrueまたはFalseにセットする。端末アプリケーション101が初めて起動された場合、このテストの結果はSNS400に渡される。すなわち、Cell_IDの値が、アプリケーション登録・通知プラットフォーム410に報告される。その後、端末アプリケーション101は、セル変更に関してRRエンティティから通知を受けるか、または、RRエンティティに周期的に問い合わせる。保存されたセルのリストのセルに出入りするCell_IDの変更のみが、SNS400への報告で返される。
上記の説明および添付図面の記載に基づいて、当業者は本発明の多くの変形例および他の実施形態に想到し得るであろう。したがって、本発明は、開示した具体的実施形態に限定されるものではなく、変形例および他の実施形態も、添付の特許請求の範囲内に含まれるものと解すべきである。本明細書では特定の用語を用いているが、それらは総称的・説明的意味でのみ用いられており、限定を目的としたものではない。