JP2013190227A - 吸収分光分析セル、吸収分光分析装置、および吸収分光分析方法 - Google Patents

吸収分光分析セル、吸収分光分析装置、および吸収分光分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、気体を固体試料に接触させた場合における固体試料上での反応を直接観察できる吸収分光分析装置用のセルである吸収分光分析セル、前記吸収分光分析セルを有する吸収分光分析装置、および吸収分光分析方法の提供を目的とする。
【解決手段】赤外光IRに対して透明であって一の面に排ガス浄化触媒が付着される基板14と、基板14における排ガス浄化触媒が付着される固体試料付着面14Aに沿って形成され、反応ガスが流通される反応ガス流路18と、基板14における固体試料付着面14A以外の面であって、赤外光IRが固体試料付着面14Aに向かって入射される赤外光入射面14Bと、固体試料付着面14A以外の面であって、固体試料付着面14Aから戻ってきた赤外光IRが出射される赤外光出射面14Cと、を備える吸収分光分析セル12、および吸収分光分析セル12を備える吸収分光分析装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、吸収分光分析セル、吸収分光分析装置、および吸収分光分析方法にかかり、特に、気体を固体に接触させたときに固体表面で生起する反応をより正確に分析できる吸収分光分析装置で使用される吸収分光分析セル、前記吸収分光分析セルを有する吸収分光分析装置、および吸収分光分析方法に関する。
内燃機関からの排気ガスに含まれる窒素酸化物を除去する反応系として、所謂プラズマアシスト触媒反応系が注目されている。
プラズマアシスト触媒反応系においては、触媒の存在下でプラズマ放電を行うことにより、反応成分は高エネルギー順位に励起されるから、プラズマ放電を行わない場合と比較して低温で反応を進行させることができる。
しかしながら、プラズマアシスト触媒反応系では、反応成分は、一般には原子間結合が全て切断されるほどには励起されず、触媒反応が促進される程度にしか励起されないから、分子振動をする分子種が存在するとともに、励起による発光も生じる。また、反応成分は、通常は触媒に吸着された状態で反応するから、反応成分の触媒への吸着状態も反応成分の反応に大きく影響する。
このため、プラズマアシスト触媒反応系について技術開発を進めるには、振動分光分析(吸収分光分析)と発光分光分析との双方が有用である。若し、1台の装置で振動分光分析と発光分光分析とが実施できれば、同一のサンプルについて振動分光分析と発光分光分析とが実施されるから、振動分光分析で得られる情報と発光分光分析で得られる情報との整合がとれる故に好ましい。
振動吸光分析と発光分光分析とを1つのサンプルについて同時に実施できる分析装置として以下のものが提案された(特許文献1)。
この分析装置は、サンプルを介在させる電極、サンプルに入射光を照射し、サンプルからの反射光、透過光、または散乱光を分析する振動分光分析器、および前記電極に電圧を印加したときの前記サンプルからの発光を分析する発光分光分析器を備える。
特開2003−075332号公報
しかしながら、前記分析装置においては、反応ガスの流路を通してサンプルに入射光を照射しているため、振動分光分析器において気相のスペクトルが観測されてしまい、それ故にサンプル表面への反応ガス中の反応成分の吸着状態についての情報を得ることが困難であるという問題がある。
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、気体を固体試料に接触させた場合における固体試料上での反応を直接観察できる吸収分光分析装置用のセルである吸収分光分析セル、前記吸収分光分析セルを有する吸収分光分析装置、および吸収分光分析方法の提供を目的とする。
請求項1に記載の発明は、吸収分光分析セルに関し、測定光に対して透明であって一の面に固体試料が付着される固体試料付着面を有する基板と、前記基板における前記固体試料付着面に沿って形成され、前記固体試料と反応させるべき気体である反応ガスが流通される反応ガス流路と、前記基板における前記固体試料付着面以外の面であって、前記測定光が前記固体試料付着面に対して斜めに入射される測定光入射面と、前記基板における前記固体試料付着面以外の面であって、前記基板における前記固体試料付着面から戻ってきた測定光が出射される測定光出射面と、を備えることを特徴とする。
請求項1に記載の吸収分光分析セルにおいては、測定光入射面から基板内部に入射した測定光は、基板における固体試料付着面を通って固体試料に入射する。そして、固体試料で反射された測定光は、固体試料付着面を通って基板内に入射し、測定光出射面から基板外部に出射する。したがって、出射光において観測されるスペクトルは、固体試料付着面上に存在する固体試料の表面に付着した反応成分や中間性生物および反応生成物のスペクトルであって、反応ガス流路を流通する反応ガスの吸収スペクトルが観測されることは殆どない。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吸収分光分析セルにおいて前記基板を加熱する基板加熱手段を有することを特徴とする。
請求項2に記載の吸収分光分析セルにおいては、基板加熱手段によって基板を加熱しつつ、固体試料付着面上の固体試料の吸収スペクトルを観測できるから、種々の温度における反応ガスと固体試料との反応を容易に観測できる。
請求項3に記載の発明は、請求項2の吸収分光分析セルにおいて、前記基板加熱手段が、前記基板における前記固体試料着面、前記測定光入射面、および前記測定光出射面以外の面に設けられたヒータであることを特徴とする。
請求項3に記載の吸収分光分析セルにおいては、ヒータに通電することにより、基板を加熱できる。また、ヒータは、基板の固体試料着面、測定光入射面、および測定光出射面以外の面に設けられているから、ヒータによって固体試料と反応ガスとの反応が影響されたり、ヒータが測定光の入射や出射の妨げになったりすることがない。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収分光分析セルにおいて、前記基板を挟むように設けられ、前記基板における前記固体試料付着面と交差する方向の電場を前記基板に印加する電極を有することを特徴とする。
請求項4に記載の吸収分光分析セルにおいては、電極に高電圧を印加してプラズマ放電を生起させることができるから、固体試料表面における所謂プラズマアシスト触媒反応を観測できる。
請求項5に記載の発明は、吸収分光分析装置に関し、請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収分光分析セルと、前記吸収分光分析セルの測定光入射面に測定光を入射させる測定光入射手段と、前記吸収分光分析セルの測定光出射面から出射した測定光を分析する吸収分光分析手段と、を備えることを特徴とする。
請求項5に記載の吸収分光分析装置においては、測定光入射手段によって基板の測定光入射面から基板内部に入射した測定光は、基板における固体試料付着面を通って固体試料に入射する。そして、固体試料で反射された測定光は、固体試料付着面を通って基板内部に戻り、測定光出射面から基板外部に出射される。したがって、吸収分光分析手段において観測されるスペクトルは、固体試料の表面における反応成分や中間性生物および反応生成物のスペクトルであって、反応ガス流路を流通する反応ガスの気相スペクトルが観測されることは殆どない。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の吸収分光分装置において、前記吸収分光分析セルが請求項4に記載のものであり、前記吸収分光分析セルの電極に接続された電源を備えることを特徴とする。
請求項6に記載の吸収分光分析装置においては、吸収分光分析セルに設けられた電極に高電圧を印加してプラズマ放電を生起させ、吸収分光分析手段によって固体試料付着面上に存在する固体試料の表面に付着した反応成分や中間性生物および反応生成物のスペクトルを観測することにより、固体試料表面における所謂プラズマアシスト触媒反応を観測できる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の吸収分光分析装置において、前記電極によって前記基板に印加された電場により、前記固定試料に生じた発光を分析する発光分光分析手段を備えることを特徴とする。
請求項7に記載の吸収分光分析装置においては、吸収分光分析手段において固体試料の表面における反応成分や中間性生物および反応生成物のスペクトルを観測するだけでなく、発光分光分析手段において、固体試料からの発光スペクトルも観測できるから、1つの試料について吸収分光スペクトルと発光分光スペクトルとを同時に観測できる。
請求項8に記載の発明は、請求項5〜7の何れか1項に記載の吸収分光分析装置において、前記測定光が赤外光であり、前記反応ガスが窒素酸化物と一酸化炭素とを含有する混合ガスであり、前記固体試料が排ガス浄化触媒であることを特徴とする。
請求項8に記載の吸収分光分析装置においては、排ガス浄化触媒の表面で生起する窒素酸化物や一酸化炭素の分解反応を、混合ガス中の窒素酸化物や一酸化炭素の気相スペクトルに妨げられることなく観測できる。
請求項9に記載の発明は、吸収分光分析方法に関し、測定光に対して透明な基板の一の面に固定試料を付着させ、前記基板における前記固体試料を付着させた面である固体試料付着面に沿って、前記固体試料と反応させるべき気体である反応ガスを流通させ、前記基板における前記固体試料付着面以外の面である測定光入射面から前記固定試料付着面に対して斜めに測定光を入射させ、前記固体試料付着面において反射した測定光を分光することを特徴とする。
請求項9に記載の吸収分光分析方法においては、基板の測定光入射面から基板内部に入射した測定光は、基板における固体試料付着面で反射されて測定光出射面から基板外部に出射する。したがって、出射光において観測されるスペクトルは、固体試料付着面上に存在する固体試料の表面に付着した反応成分や中間性生物および反応生成物のスペクトルであって、反応ガスの各成分の気相スペクトルが観測されることは殆どない。
以上説明したように本発明によれば、上記問題を解決すべく成されたものであり、気体を固体試料に接触させた場合における固体試料上での反応を直接観察できる吸収分光分析装置用のセルである吸収分光分析セル、前記吸収分光分析セルを有する吸収分光分析装置、および吸収分光分析方法が提供される。
図1は、実施形態1に係る吸収分光分析装置の備える吸収分光分析セルの構成を示す縦断面図である。 図2は、実施形態1に係る吸収分光分析装置の構成を示すブロック図である。 図3は、図1に示す吸収分光分析セルにおいて基板に形成される赤外光入射面および赤外光出射面の種々の例を示す縦断面図である。 図4は、実施形態2に係る吸収分光分析装置の備える吸収分光分析セルの構成を示す縦断面図である。 図5は、実施形態3に係る吸収分光分析装置の備える吸収分光分析セルの構成を示す縦断面図である。 図6は、実施形態4に係る吸収分光分析装置の備える吸収分光分析セルの構成を示す縦断面図である。 図7は、実施形態4に係る吸収分光分析装置の構成を示すブロック図である。 図8(A)は、比較例1に係る吸収分光分析装置において測定したFTIRスペクトルを示し、図8(B)は、実施例1において実施形態1の吸収分光分析装置を用いて得られたFTIRスペクトルを示す。 図9(A)は、比較例1に係る吸収分光分析装置の構成を示す縦断面図であり、図9(B)は、実施例1において使用した実施形態1の吸収分光分析装置が備える吸収分光分析セルの構成を示す縦断面図である。
(1)実施形態1
以下、本発明に係る吸収分光分析装置の一例について図面を参照して詳細に説明する。
<構成>
実施形態1に係る吸収分光分析装置10は、図1および図2に示すように、固体試料の一例としての排ガス浄化触媒粉末が収容されるとともに、測定光の一例としての赤外光IRが照射される吸収分光分析セル12と、吸収分光分析セル12に赤外光IRを入射させるためのIR光源を備えるとともに、吸収分光分析セル12において反射された赤外光IRのスペクトルを観測するFTIR分析器30と、吸収分光分析セル12に流通させる反応ガスを調製するガス発生器40と、吸収分光分析セル12を通過した反応ガスの組成を分析するガス分析器50と、FTIR分析器30およびガス分析器50からのデータを集積するとともに、集積されたデータを解析し、且つガス発生器40およびFTIR分析器30を制御する制御・データ集積・解析用コンピュータ60と、を備える。吸収分光分析セル12は、恒温槽(図示せず)の内部に設置され、内部が所定の温度に保持されている。なお、図2において「サンプル領域」とあるのは、吸収分光分析セル12を意味する。
なお、FTIR分析器30は本発明の吸収分光分析装置における吸収分光分析手段に相当するとともに、FTIR分析器30が備えるIR光源は本発明の吸収分光分析装置における測定光入射手段に相当する。
図1に示すように、吸収分光分析セル12は、排ガス浄化触媒粉末が付着される基板14と、基板14を収容するとともに、基板14において排ガス浄化触媒粉末が付着される固体試料付着面14Aとの間に反応ガスが流通する反応ガス流路18を形成するセラミックス容器16と、基板14における固体試料付着面14Aとは反対側の面を覆蓋するとともに、セラミックス容器16に気密に固定された真空容器20と、を備える。
真空容器20には、FTIR分析器30におけるIR光源からの赤外光IRが入射する赤外光入射窓20Aと、基板14における固体試料付着面14Aで反射した赤外光が出射される赤外光出射窓20Bと、真空排気装置(図示せず)に接続され、真空容器20と基板14との間の空間を真空に保持する真空排気管路20Cと、が形成されている。
基板14は、赤外光IRに対して透明であって反応ガスと排ガス浄化触媒との反応に影響を及ぼさないような材料、たとえばアルミナ単結晶やチタン酸バリウム単結晶などから形成される。しかしながら、基板14に使用される材料は、赤外光IRに対して透明であって反応ガスと排ガス浄化触媒との反応に影響を及ぼさないような材料であれば、アルミナ単結晶やチタン酸バリウム単結晶には限定されない。
基板14の一方の側には、前述のように固体試料付着面14Aが形成されている。固体試料付着面14Aには排ガス浄化用触媒の粉末が付着されるのであるが、図1に示す例においては、基板14は、固体試料付着面14Aは水平に保持され、且つ上方を向いているために、排ガス浄化触媒粉末は、只単に固体試料付着面14Aに振り掛けるだけで、固体試料付着面14Aに付着、保持される。
但し、固体試料付着面14Aが傾斜している場合や下方を向いている場合においては、赤外光IRに対して透明であって反応に影響を及ぼさないような粘着剤、たとえば流動パラフィンなどを固体試料付着面14Aに塗布し、その上から排ガス浄化触媒を振り掛けたり、排ガス浄化触媒の粉末と粘着材とを混練したものを固体試料付着面14Aに塗布したりすることにより、固体試料である排ガス浄化触媒の粉末を固体試料付着面14Aに付着、保持させることができる。
図1に示すように、基板14における固体試料付着面14Aの反対側の面の中央部は、固体試料付着面14Aに対して平行な面とされている。そして、前記面の一方および他方の端部は、夫々斜めに面取りされて、真空容器20の赤外光入射窓20Aを通して入射した赤外光IRが入射する測定光入射面の一例としての赤外光入射面14Bと、固体試料付着面14Aから戻ってきた赤外光IRが出射する測定光出射面の一例としての赤外光出射面14Cと、が形成されている。赤外光IRは基板14へは固体試料付着面14Aに対して入射角θで斜めに入射されるから、基板14から出射する赤外光の固体試料付着面14Aに対する出射角は−θとなる。そして、図1に示す例においては、赤外光入射面14Bおよび赤外光出射面14Cは、夫々赤外光IRの入射光および出射光の光軸に対して直交するように形成されている。これにより、赤外光入射面14Bにおける赤外光の反射が防止されるから好ましい。
赤外光入射面14Bおよび赤外光出射面14Cの例を図3(A)〜(C)に示す。赤外光入射面14Bおよび赤外光出射面14Cは、図1および図3(A)に示すように、固体試料付着面14Aと相対する側の面を斜めに面取りして形成してもよいが、図3(B)に示すように、基板14の一の側面を赤外光入射面14Bとし、赤外光入射面14Bとされた側面に相対する他の側面を赤外光出射面14Cとしてもよく、また、図3(C)に示すように、基板14における固体試料付着面14Aとは反対側の面を赤外光入射面14Bおよび赤外光出射面14Cとしてもよい。
図1に示すように、セラミックス容器16はアルミナなどのセラミックスから形成され、基板14における固体試料付着面14Aが形成された側が当接するセラミックス容器本体16Aと、基板14における固体試料付着面14Aとは反対側が当接するセラミックス容器本体16Bと、セラミックス容器本体16Aの図1における上面開口部を覆蓋する蓋部16Cと、を備える。反応ガス流路18は、セラミックス容器本体16Aと、蓋部16Cと、基板14における固体試料付着面14Aと、によって形成される。
セラミックス容器本体16Aと基板14との間にはOリング22が、セラミックス容器本体16Bと基板14との間にはOリング24が介装されている。
蓋部16Cには、ガス発生器40からの反応ガスを反応ガス流路18に導入する反応ガス導入管路21と、反応ガス流路18を通過した反応ガスをガス分析器50に導出する反応ガス導出管路23と、が接続されている。
真空容器20は、セラミックス容器本体16Bにおける基板14に当接する側とは反対側の面に気密に固定されている。
ガス発生器40は、酸化窒素NO、一酸化炭素CO,および必要に応じて各種炭化水素HCを空気やアルゴンガスに配合して内燃機関から排出される排ガスを模した反応ガスを調製する装置であって、予め設定された割合で酸化窒素、一酸化炭素,および炭化水素を空気に配合することもでき、酸化窒素、一酸化炭素,および炭化水素の配合量を変化させながら反応ガスを調製することもできる構成とされている。
ガス分析器50としては、ガスの組成分析に通常に使用されている分析器、たとえばガスクロマトグラフィや質量分析計などが使用される。
<作用>
以下、吸収分光分析装置10の作用について説明する。
ガス発生器40で調製された反応ガスは、反応ガス導入管路21によって吸収分光分析セル12における反応ガス流路18に導入される。反応ガス流路18に導入された反応ガスは、固体試料付着面14Aに付着された排ガス浄化触媒と接触した後、反応ガス導出管路23からガス分析器50に向かって導出される。ガス分析器50においては、反応ガス導出管路23から導出された反応ガスの組成分析が行われる。
一方、FTIR分析器30のIR光源から出射された赤外光IRは、赤外光入射窓20Aから真空容器20の内部に入射され、赤外光入射面14Bから基板14の内部に入射する。基板14の内部に入射した赤外光IRは、固体試料付着面14Aに向かって進み、排ガス浄化触媒によって特定の波長が吸収される。そして、特定の波長が吸収された赤外光IRは、固体試料付着面14Aから基板14の内部に入射し、赤外光出射面14Cから真空容器20の内部に出射する。真空容器20の内部に出射した赤外光IRは、赤外光出射窓20Bから真空容器20の外部に出射し、FTIR分析器30に導入され、FTIR分析器30において吸収スペクトルが測定される。
したがって、吸収分光分析装置10においては、基板14に入射された赤外光IRは、排ガス浄化触媒粉末の表面で特定の波長が吸収されるが、反応ガス流路18を流通する反応ガスに含まれる窒素酸化物や一酸化炭素で吸収されること無く、基板14から出射される。
故に、排ガス浄化触媒粉末の表面に吸着した窒素酸化物や一酸化炭素の吸収スペクトルを、反応ガス中の窒素酸化物や一酸化炭素の吸収に妨害されること無く観測できる。
また、排ガス浄化触媒を粉砕して粉末にするだけで固体試料を調製できるから、排ガス浄化触媒粉末を打錠するなどの手間は不要である。
(2)実施形態2
以下、本発明に係る吸収分光分析装置の別の例について図面を参照して詳細に説明する。図4以下の図面において図1〜図3と同一の符号は、とくに断らない限り、図1〜図3においてこれらの符号が示すのと同一の構成要素を示す。
<構成>
図4に示すように、実施形態2の吸収分光分析装置110が有する吸収分光分析セル12においては、基板14の周縁部に、基板14を加熱するためのヒータ26が設けられているとともに、基板14の温度を検出するための熱電対28が設けられている。熱電対28からの温度出力は、制御・データ集積・解析用コンピュータ60に入力され、制御・データ集積・解析用コンピュータ60は、基板14の設定温度と熱電対28からの温度出力とに基づいてヒータ26に流れる電流を制御する。したがって、実施形態2の吸収分光分析装置110は、吸収分光分析セル12を収容するための恒温槽を有しない。
実施形態2の吸収分光分析装置110は、上記の点を除いては実施形態1の吸収分光分析装置10と同一の構成を有している。したがって、基板14、セラミックス容器16、反応ガス流路18、および真空容器20の構成は、実施構成1のところで述べたとおりである。
<作用>
実施形態2の吸収分光分析装置110においては、ヒータ26で基板14を所定温度に加熱することにより、高温下での排ガス浄化触媒と反応ガスとの反応を観測できる。したがって、吸収分光分析セル12を所定温度に保持するための恒温槽は不要である。
(3)実施形態3
以下、本発明に係る吸収分光分析装置の更に別の例について図面を参照して詳細に説明する。
<構成>
図5に示すように、実施形態3の吸収分光分析装置210が有する吸収分光分析セル12においては、セラミックス容器16の蓋部16Cの外側の面に電極25が、基板14における赤外光入射面14Bと赤外光出射面14Cとの間の面に電極27が設けられている。ここで、蓋部16Cの外側と内側の面と、基板14における固体試料付着面14Aと、電極27が設けられている面と、は互いに平行である。したがって、電極25と電極27とも互いに平行である。
電極25と電極27とは高圧電源70に接続されている。高圧電源70からは高圧の交流電流(たとえは1kV〜20kV、50〜500Hz)が印加される。
セラミックス容器16の蓋部16Cには、電極25および電極27に高電圧の交流電流を印加したときに排気ガス浄化触媒粉末から生じる発光を吸収分光分析セル12の外部に導くための受光用ファイバ29が設けられている。受光用ファイバは、発光分析器80に接続されている。
実施形態3の吸収分光分析装置210は、上記の点を除いては実施形態1の吸収分光分析装置10と同一の構成を有している。したがって、基板14、セラミックス容器16、反応ガス流路18、および真空容器20の構成は、上記の点を除いて実施構成1のところで述べたとおりである。
<作用>
実施形態3の吸収分光分析装置210においては、電極25と電極27とに高電圧の交流電流を印加した状態で、反応ガス流路18に反応ガスを流しながら、FTIR分析器30で排ガス浄化触媒表面の赤外吸収スペクトルを観測しつつ、発光分析器80で排ガス浄化触媒粉末からの発光を分析することにより、排ガス浄化触媒粉末の表面で生じるプラズマアシスト触媒反応を観測できる。
(4)実施形態4
以下、本発明に係る吸収分光分析装置の更に別の例について図面を参照して詳細に説明する。
<構成>
図6に示すように、実施形態4の吸収分光分析装置310が有する吸収分光分析セル12においては、基板14の周縁部に、基板14を加熱するためのヒータ26が設けられているとともに、基板14の温度を検出するための熱電対28が設けられている。図7に示すように、ヒータ26は加熱用電源72に接続されている。
図7に示すように、熱電対28からの温度出力は、制御・データ集積・解析用コンピュータ60に入力され、制御・データ集積・解析用コンピュータ60は、基板14の設定温度と熱電対28からの温度出力とに基づいてヒータ26に流れる電流を制御する。したがって、実施形態2の吸収分光分析装置110は、吸収分光分析セル12を収容するための恒温槽を有しない。なお、図7において「サンプル領域」とあるのは、吸収分光分析セル12を意味する。
また、図6に示すように、セラミックス容器16の蓋部16Cの外側の面に電極25が、基板14における赤外光入射面14Bと赤外光出射面14Cとの間の面に電極27が設けられている。ここで、蓋部16Cの外側と内側の面と、基板14における固体試料付着面14Aと、電極27が設けられている面と、は互いに平行である。したがって、電極25と電極27とも互いに平行である。
電極25と電極27とは高圧電源70に接続されている。高圧電源70からは高圧の交流電流(たとえは1kV〜20kV、50〜500Hz)が印加される。
セラミックス容器16の蓋部16Cには、電極25および電極27に高電圧の交流電流を印加したときに排気ガス浄化触媒粉末から生じる発光を吸収分光分析セル12の外部に導くための受光用ファイバ29が設けられている。図7に示すように、受光用ファイバは、発光分析器80に接続されている。
実施形態4の吸収分光分析装置310は、上記の点を除いては実施形態1の吸収分光分析装置10と同一の構成を有している。したがって、基板14、セラミックス容器16、反応ガス流路18、および真空容器20の構成は、上記の点を除いて実施構成1のところで述べたとおりである。
<作用>
実施形態4の吸収分光分析装置310においては、ヒータ26で基板14を所定温度に加熱することにより、高温下での排ガス浄化触媒と反応ガスとの反応を観測できる。したがって、吸収分光分析セル12を所定温度に保持するための恒温槽は不要である。
また、電極25と電極27とに高電圧の交流電流を印加した状態で、反応ガス流路18に反応ガスを流しながら、FTIR分析器30で排ガス浄化触媒表面の赤外吸収スペクトルを観測しつつ、発光分析器80で排ガス浄化触媒粉末からの発光を分析することにより、排ガス浄化触媒粉末の表面で生じるプラズマアシスト触媒反応を観測できる。
以上、固体試料としてアルミナやチタン酸バリウムなどの担体に白金、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属を担持した排ガス浄化触媒を用い、反応ガスとしてガソリン車からの排ガスを模した混合ガスを用いた例について説明した。
しかし、本実施形態の吸収分光分析装置で観測できる反応は上記のものには限定されない。たとえば、固体試料として酸化物担持バリウム触媒やペロブスカイト型酸化物触媒を用い、これらの触媒による窒素酸化物の直接分解反応を観測するのにも使用でき、また、固体試料としてたとえば炭化水素のクラッキング用触媒を用い、反応ガスとして気体状の炭化水素混合物を用いて触媒表面のクラッキング反応を観測するなどの用途にも使用できる。
1.実施例1
図9(B)に示すように、実施形態1の吸収分光分析装置10を用いた。そして、排ガス浄化触媒としてアルミナ担体にルテニウムを0.5重量%担持させたものを用い、反応ガスとしてアルゴンガスに酸化窒素を1500ppm、一酸化炭素を0.65体積%配合したものを用い、室温(300K)において赤外吸収スペクトルを観測した。なお、吸収分光分析装置10が備える吸収分光分析セル12の基板14としてアルミナ単結晶基板(屈折率1.7)を用い、固体試料付着面14Aに対する入射角が45°となるように赤外光入射面14Bから赤外光を入射し、赤外光出射面14Cから出射した赤外光についてFTIR分析器30で赤外スペクトルを観測した。得られた赤外スペクトルを図8(B)に示す。
図8(B)に示すように、実施形態1の吸収分光分析装置10で得られるFTIRスペクトルにおいては、排ガス浄化触媒の表面に吸着した酸化窒素および一酸化炭素のピークが明瞭に認められた一方で、反応ガス中の酸化窒素や一酸化炭素の気相スペクトルに由来するピークは殆ど認められなかった。
2.比較例1
図9(A)に示す吸収分光分析装置1を使用するとともに、実施例1と同様の排ガス浄化触媒および反応ガスを用い、室温(300K)において赤外吸収スペクトルを観測した。なお、排ガス浄化触媒については、一度粉砕して粉末にしたものを卓上打錠器で直径5mmのディスク状としたものを用いた。
比較例1で使用した吸収分光分析装置1は、図9(A)に示すように、固体試料を保持する円筒状のサンプルホルダ2と、サンプルホルダ2の外側に同心状に配設された外壁部3と、外壁部3の頂部に固定され、外部壁3の上側開口部を覆蓋する円錐台状の頂部覆い4と、を備える。外壁部3とサンプルホルダ2との間の空間は反応ガスの流入流路5とされている。反応ガスは、反応ガス流路5の下端から吸収分光分析装置1の内部に流入し、反応ガス流路5を上方に向かって流れ、頂部覆い4の内側の空間において反転してサンプルホルダ2の内部を下方に向かって流れて吸収分光分析装置1の外部に排出される。なお、外壁部3にはヒータが埋設され、反応ガス流路5を流れる反応ガスを必要に応じて加熱できる構成とされている。
頂部覆い4には、赤外光が入射する赤外光入射窓6と、赤外外光入射窓6から入射した赤外光が、サンプルホルダ2に収容された固体試料で反射された反射光が出射する赤外光が出射する赤外光出射窓7と、が設けられている。
図9(A)に示す吸収分光分析装置1のサンプルホルダ2に、ディスク上とした排ガス浄化触媒を充填し、反応ガスを反応ガス流路5から供給しつつ、赤外光入射窓6から赤外光を入射し、赤外光出射窓7から出射する赤外光についてFTIRスペクトルを測定した。測定したFTIRスペクトルを図8(A)に示す。
図8(A)に示すように、図9(A)の吸収分光分析装置1で得られるFTIRスペクトルにおいては、反応ガス中の酸化窒素および一酸化炭素の気相スペクトルが顕著である一方で、排ガス浄化触媒の表面に吸着した酸化窒素および一酸化炭素のピークは、前記気相スペクトルと比較してきわめて微小であることが判る。特に排ガス浄化触媒の表面に吸着した一酸化炭素のピークは反応ガス中の一酸化炭素の気相ピークに埋没して明瞭に認められないことが判る。
10 吸収分光分析装置
12 吸収分光分析セル
14 基板
14A 固体試料付着面
14B 赤外光入射面
14C 赤外光出射面
16 セラミックス容器
16A セラミックス容器本体
16B セラミックス容器本体
16C 蓋部
18 反応ガス流路
20 真空容器
20A 赤外光入射窓
20B 赤外光出射窓
20C 真空排気管路
21 反応ガス導入管路
23 反応ガス導出管路
25 電極
26 ヒータ
27 電極
29 受光用ファイバ
30 FTIR分析器
40 ガス発生器
50 ガス分析器
60 制御・データ集積・解析用コンピュータ
70 高圧電源
80 発光分析器
110 吸収分光分析装置
210 吸収分光分析装置
310 吸収分光分析装置

Claims (9)

  1. 測定光に対して透明であって一の面に固体試料が付着される固体試料付着面を有する基板と、
    前記基板における前記固体試料付着面に沿って形成され、前記固体試料と反応させるべき気体である反応ガスが流通される反応ガス流路と、
    前記基板における前記固体試料付着面以外の面であって、前記測定光が前記固体試料付着面に対して斜めに入射される測定光入射面と、
    前記基板における前記固体試料付着面以外の面であって、前記基板における前記固体試料付着面から戻ってきた測定光が出射される測定光出射面と、
    を備える吸収分光分析セル。
  2. 前記基板を加熱する基板加熱手段を有する請求項1に記載の吸収分光分析セル。
  3. 前記基板加熱手段は、前記基板における前記固体試料着面、前記測定光入射面、および前記測定光出射面以外の面に設けられたヒータである請求項2の吸収分光分析セル
  4. 前記基板を挟むように設けられ、前記基板における前記固体試料付着面と交差する方向の電場を前記基板に印加する電極を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収分光分析セル。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収分光分析セルと、
    前記吸収分光分析セルの測定光入射面に測定光を入射させる測定光入射手段と、
    前記吸収分光分析セルの測定光出射面から出射した測定光を分析する吸収分光分析手段と、
    を備える吸収分光分析装置。
  6. 前記吸収分光分析セルは請求項4に記載のものであり、
    前記吸収分光分析セルの電極に接続された電源を備える請求項5に記載の吸収分光分装置。
  7. 前記電極によって前記基板に印加された電場により、前記固定試料に生じた発光を分析する発光分光分析手段を備える請求項6に記載の吸収分光分析装置。
  8. 前記測定光は赤外光であり、前記反応ガスは窒素酸化物と一酸化炭素とを含有する混合ガスであり、前記固体試料は排ガス浄化触媒の粉末である請求項5〜7の何れか1項に記載の吸収分光分析装置。
  9. 測定光に対して透明な基板の一の面に固定試料を付着させ、
    前記基板における前記固体試料を付着させた面である固体試料付着面に沿って、前記固体試料と反応させるべき気体である反応ガスを流通させ、
    前記基板における前記固体試料付着面以外の面である測定光入射面から前記固定試料付着面に対して斜めに測定光を入射させ、
    前記固体試料付着面において反射した測定光を分光する
    吸収分光分析方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110296939A (zh) * 2019-06-11 2019-10-01 江苏大学 一种能提供等离子体环境的原位漫反射红外光谱反应池

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