JP2013182871A - 透明導電膜付き基材及びその製造方法 - Google Patents

透明導電膜付き基材及びその製造方法 Download PDF

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明彦 忠政
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光 辻本
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太佑 松井
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Abstract

【課題】リーク電流やショートの発生を抑制することができ、非導電部分の表面抵抗を高く、導電部分の表面抵抗を低くすることができる透明導電膜付き基材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材2に透明導電膜3を設けて形成されている。前記透明導電膜3が、導電性ナノ材料4を含有する導電部分5と、非導電部分6とからなる。前記非導電部分6の膜厚が前記導電部分5の膜厚に比べて厚い。
【選択図】図1

Description

本発明は、各種デバイスに用いられる透明導電膜付き基材及びその製造方法に関するものである。
近年、薄型TV等の需要の高まりに伴い、液晶、プラズマ、有機EL、フィールドエミッションなど、各種方式のディスプレイ技術の開発が盛んに行われている。これらの表示方式についてはそれぞれ異なる各種ディスプレイにおいても、透明電極は必須の構成技術となっている。また、TV以外でもタッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子においても、透明電極は欠くことのできない技術要素となっている。特に、有機ELや有機薄膜太陽電池といった用途では、透明電極の表面の凹凸による電流のリークや層形成の歪みにより、発光不良、発電不良等が発生しやすい。このように、透明電極の表面に対しては高度な平滑性が要求されるので、有機ELや有機薄膜太陽電池に用いられる透明電極としては、ガラスや透明なプラスチックフィルム等の透明基材上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を真空蒸着法やスパッタリング法で製膜したITO透明電極が主に使用されてきた。
しかし、真空蒸着法やスパッタリング法を用いて透明電極を形成する方法では、生産性が悪く製造コストが高いことや、得られる透明電極が可撓性に劣るため、フレキシブル性が求められるデバイス用途には適用できないことが問題であった。
このような問題を解決する方法として、近年、銀等の金属ナノワイヤ分散液を塗布することで透明電極を形成する方法や、金属ナノワイヤと樹脂成分を含む透明導電層を離型フィルム上に形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−258578号公報
上記のように、金属ナノワイヤ41及び樹脂成分8を含有する透明導電膜3を基材2に設けることによって、従来の透明導電膜付き基材1が形成されている(図3(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)参照)。
このように、透明導電膜3は基材2に設けた直後は導電部分5からなるが、この透明導電膜3に非導電部分6を形成するにあたっては、非導電部分6の形成予定箇所に光7を照射して、この箇所の金属ナノワイヤ41及び樹脂成分8を消失させることが行われている(図3(b)及び図4(b)参照)。しかし、この場合、導電部分5の膜厚T1が厚く、非導電部分6の膜厚T2が薄くなる。この後、例えば有機EL素子を製造しようとして、図4(c)に示すように導電部分5及び非導電部分6の全体に発光層等の機能層9を形成すると、導電部分5と非導電部分6との境界付近において機能層9の膜厚が極端に薄くなる(図4(c)の実線で囲まれたB部分参照)。このように、導電部分5の端縁と機能層9の表面との距離が極端に短くなると、局所的に電流が流れやすくなり、これによりリーク電流やショートが発生すると考えられ、特に非導電部分6の表面抵抗が低くなってしまう。なお、透明導電膜3(特に導電部分5)に対向する電極は、通常、機能層9の表面に形成されるが図示省略している。以下も同様である。
また、透明導電膜3に非導電部分6を形成するにあたっては、非導電部分6の形成予定箇所の樹脂成分8は消失させないように、照射する光の強度を調節して、金属ナノワイヤ41のみを消失させることも行われている(図5(b)及び図6(b)参照)。しかし、この場合、導電部分5及び非導電部分6の膜厚はほぼ等しくなるが、金属ナノワイヤ41の消失痕10として溝や空洞が残存する。この後、上記と同様に有機EL素子を製造しようとして、図6(c)に示すように導電部分5及び非導電部分6の全体に発光層等の機能層9を形成すると、機能層9の材料の一部が上記の消失痕10内に浸入するおそれがある。これもリーク電流やショートが発生する要因と考えられ、特に非導電部分6の表面抵抗が低くなってしまう。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、リーク電流やショートの発生を抑制することができ、非導電部分の表面抵抗を高く、導電部分の表面抵抗を低くすることができる透明導電膜付き基材及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る透明導電膜付き基材は、基材に透明導電膜を設けて形成され、前記透明導電膜が、導電性ナノ材料を含有する導電部分と、非導電部分とからなり、前記非導電部分の膜厚が前記導電部分の膜厚に比べて厚いことを特徴とするものである。
前記透明導電膜付き基材において、前記非導電部分の膜厚が、前記導電部分の膜厚に比べて10nm以上厚く、前記導電部分の膜厚の5倍以下の膜厚であることが好ましい。
前記透明導電膜付き基材において、前記導電性ナノ材料が金属ナノワイヤであることが好ましい。
本発明に係る透明導電膜付き基材の製造方法は、前記透明導電膜付き基材を製造する方法であって、前記導電性ナノ材料を含有する前記導電部分からなる前記透明導電膜を前記基材に設け、前記非導電部分の形成予定箇所に光を照射して、前記導電性ナノ材料を昇華させることによって、前記導電部分の膜厚に比べて膜厚の厚い前記非導電部分を形成することを特徴とするものである。
本発明によれば、リーク電流やショートの発生を抑制することができ、非導電部分の表面抵抗を高く、導電部分の表面抵抗を低くすることができるものである。
本発明に係る透明導電膜付き基材の一例を示すものであり、(a)は光照射前の斜視図、(b)は光照射後の斜視図である。 本発明に係る透明導電膜付き基材の一例を示すものであり、(a)は光照射前の断面図、(b)は光照射後の断面図、(c)は機能層形成後の断面図である。 従来の透明導電膜付き基材の一例を示すものであり、(a)は光照射前の斜視図、(b)は光照射後の斜視図である。 従来の透明導電膜付き基材の一例を示すものであり、(a)は光照射前の断面図、(b)は光照射後の断面図、(c)は機能層形成後の断面図である。 従来の透明導電膜付き基材の他の一例を示すものであり、(a)は光照射前の斜視図、(b)は光照射後の斜視図である。 従来の透明導電膜付き基材の他の一例を示すものであり、(a)は光照射前の断面図、(b)は光照射後の断面図、(c)は機能層形成後の断面図である。 実施例1の段差測定の結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る透明導電膜付き基材1は、図1(b)や図2(b)に示すように、基材2の表面に透明導電膜3を設けて形成されている。透明導電膜3は、導電性ナノ材料4を含有する導電部分5と、非導電部分6(絶縁部分)とからなる。導電部分5及び非導電部分6の形状は任意であるが、非導電部分6の膜厚T2は導電部分5の膜厚T1に比べて厚い。
透明導電膜3は、基材2の表面に透明導電材料を塗布し、これを加熱乾燥させることによって形成することができる。透明導電材料は、導電性ナノ材料4及びバインダ材料を含有し、さらにバインダ材料は、樹脂成分8、必要に応じてその他の添加成分及び溶媒を含有する。
以下では、まず透明導電膜3を形成する材料及び基材2について説明する。
導電性ナノ材料4としては、例えば、金属ナノワイヤ41や金属ナノ粒子等を用いることができるが、金属ナノワイヤ41の方が相互の接点が多いことによって導電性を高く得ることができるので好ましい。
金属ナノワイヤ41としては任意のものを用いることができるものであり、また金属ナノワイヤ41の製造手段には特に制限は無く、例えば、液相法や気相法などの公知の手段を用いることができる。具体的な製造方法にも特に制限は無く、公知の製造方法を用いることができる。例えば、Agナノワイヤ(銀ナノワイヤ)の製造方法として、Adv.Mater.2002,14,P833〜837や、Chem.Mater.2002,14,P4736〜4745や、Materials Chemistry and Physics vol.114 p333−338“Preparation of Ag nanorods with high yield by polyol process”や、特表2009−505358号公報等を、Auナノワイヤ(金ナノワイヤ)の製造方法として、特開2006−233252号公報等を、Cuナノワイヤ(銅ナノワイヤ)の製造方法として、特開2002−266007号公報等を、Coナノワイヤ(コバルトナノワイヤ)の製造方法として、特開2004−149871号公報等を挙げることができる。特に、上記のAdv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にかつ大量にAgナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明で用いる金属ナノワイヤ41の製造方法として好ましく適用することができる。このように、金属ナノワイヤ41は、Agナノワイヤであることが好ましい。これにより、他の金属ナノワイヤ41を用いる場合に比べて、透明導電膜3の透明性及び導電性を高く得ることができるものである。
金属ナノワイヤ41の平均直径は、透明性の観点から200nm以下であることが好ましく、導電性の観点から10nm以上であることが好ましい。平均直径が200nm以下であれば光透過率の低下を抑えることができるため好ましい。平均直径が10nm以上であれば導電体としての機能を有意に発現でき、平均直径がより大きい方が導電性が向上するため好ましい。よって、平均直径は、より好ましくは20〜150nmであり、40〜150nmであることが最も好ましい。また金属ナノワイヤ41の平均長さは、導電性の観点から1μm以上であることが好ましく、凝集による透明性への影響から100μm以下であることが好ましい。より好ましくは1〜50μmであり、3〜50μmであることが最も好ましい。金属ナノワイヤ41の平均直径及び平均長さは、SEMやTEMを用いて十分な数の金属ナノワイヤ41について電子顕微鏡写真を撮影し、個々の金属ナノワイヤ41の像の計測値の算術平均から求めることができる。金属ナノワイヤ41の長さは、本来直線状に伸ばした状態で求めるべきであるが、現実には屈曲している場合が多いため、電子顕微鏡写真から画像解析装置を用いて金属ナノワイヤ41の投影径及び投影面積を算出し、円柱体を仮定して算出する(長さ=投影面積/投影径)ものとする。計測対象の金属ナノワイヤ41の数は、少なくとも100個以上が好ましく、300個以上の金属ナノワイヤ41を計測するのがより好ましい。
また樹脂成分8としては、導電性ナノ材料4よりも光吸収が小さい波長領域を有するものを用いることが好ましく、例えば、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ジアクリルフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、その他の熱可塑性樹脂や、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体等を挙げることができる。
また添加成分としては、導電性ナノ材料4よりも光吸収性が高いナノ粒子を用いることが好ましい。このようなナノ粒子としては、例えば、カーボン、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、アルミナ(Al)、Ag、Cu、Fe、Sn、Ni、Zr等のナノ粒子を挙げることができる。このようなナノ粒子の平均粒子径は3〜200nmであることが好ましく、5〜100nmであることがより好ましい。平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって測定することができる。このようなナノ粒子が添加成分として透明導電膜3に含有されていると、後述のように光照射する場合に優先的に光を吸収して、導電性ナノ材料4を昇華して消失させることができるものである。
また添加成分は、光酸発生剤又は熱酸発生剤であることも好ましい。光酸発生剤は、光照射されて酸を発生させるものであり、また熱酸発生剤は、加熱されて酸を発生させるものである。このような光酸発生剤及び熱酸発生剤としては、例えば、芳香族スルホニウム塩、ジアゾジスルホン化合物、フェニルヨードニウム塩等を用いることができる。特に光酸発生剤としては、例えば、ベンゾイン誘導体等を用いることができる。このような光酸発生剤又は熱酸発生剤が添加成分として透明導電膜3に含有されていると、後述のように光照射されて加熱されることによって酸が発生し、この酸が導電性ナノ材料4を溶かして消失させることができるものである。
また添加成分は、高屈折率粒子又は低屈折率粒子であることも好ましい。高屈折率粒子としては、例えば、インジウム−錫酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、錫酸化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、アルミナ(Al)等のナノ粒子を挙げることができる。低屈折率粒子としては、例えば、二酸化珪素(SiO)等のナノ粒子を挙げることができる。高屈折率粒子及び低屈折率粒子は、中実粒子、中空粒子、多孔質粒子のいずれでもよく、球状でもその他の形状でもよい。このような添加成分によって、透明導電膜3の光取り出し効率を向上させるなど容易に屈折率を調整することができるものである。
また溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、あるいはこれらの混合物を用いることができる。さらに溶媒としては、上記の有機溶剤の他に、水を用いる場合もあり、有機溶剤と水を組み合わせて用いる場合もある。溶媒の量は、固形分を均一に溶解又は分散させることができ、バインダ材料又は透明導電材料を調製した後の保存時に凝集しにくく、かつ、基材2への塗布時に希薄すぎない濃度となるように適宜調節するものである。この条件が満たされる範囲内で溶媒の使用量を少なくして高濃度のバインダ材料又は透明導電材料を調製し、容量をとらない状態で保存し、使用時に必要分を取り出して塗布作業に適した濃度に溶媒で希釈するのが好ましい。固形分と溶媒の合計量を100質量部としたとき、全固形分0.1〜50質量部に対して、溶媒の量を50〜99.9質量部に設定することが好ましく、より好ましくは、全固形分0.5〜30重量部に対して、溶媒を70〜99.5質量部の割合で用いることにより、特に分散安定性に優れ、長期保存に適したバインダ材料又は透明導電材料を得ることができる。
そして、上記の樹脂成分8、添加成分及び溶媒を配合することによって、バインダ材料を調製することができる。次に、導電性ナノ材料4及びバインダ材料を配合することによって、透明導電材料を調製することができる。透明導電材料における導電性ナノ材料4の配合量は、透明導電膜3の形成後にこの透明導電膜3中に導電性ナノ材料4が0.01〜90質量%含有されるように調整しておくことが好ましい。導電性ナノ材料4の含有量は0.1〜30質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることが最も好ましい。
また基材2としては、透明基材を用いることが好ましく、例えば、無アルカリガラスやソーダガラス等のリジッドな透明ガラス板、ポリカーボネート樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のフレキシブルな透明プラスチック板など任意のものを用いることができる。基材2の形状としては、例えば、平板状、シート状、フィルム状等を挙げることができる。基材2の材料としては、上記以外の無機材料として、例えば、石英、シリコン等を挙げることができ、上記以外の有機材料として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート系樹脂;ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂等を挙げることができる。
次に、本発明に係る透明導電膜付き基材1の製造方法について説明する。
まず、図1(a)や図2(a)に示すように、透明導電材料を基材2の表面に塗布し、これを例えば20〜150℃、0.5〜60分間の条件で加熱して乾燥硬化させることによって、透明導電膜3を設けることができる。透明導電材料の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ダイコート法、キャスト法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、スライドコート法、流延成膜法、バーコート法、メニスカスコーター法、ビードコーター法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等を使用することができる。上記のようにして形成された透明導電膜3には導電性ナノ材料4が均一に分散した状態で含有されている。つまり、この透明導電膜3は、導電性ナノ材料4を含有する導電部分5からなり、まだ非導電部分6は形成されていない。透明導電膜3の膜厚は、30〜300nmであることが好ましく、60〜150nmであることがより好ましい。なお、透明導電膜3の形成後に表面の平滑化や抵抗値の安定化のため、プレス、ロールプレス、ローラー等により透明導電膜3の表面を加圧するようにしてもよい。
次に、透明導電膜3のうち、非導電部分6を形成する予定の箇所(図1及び図2では右半分)のみに光7(パターン光)を照射してパターニングを行う。非導電部分6を形成せずに導電部分5としてそのまま残存させる箇所(図1及び図2では左半分)にはマスク(図示省略)をして光7を照射しないようにする。この場合の光7としては、例えば、CO、アルゴン、キセノン等の気体レーザー、UV−YAG、Green−YAG、SHG(Second Harmonic Generation)−YAG、ファイバーレーザー等の固体レーザー、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、エキシマランプ、重水素ランプ等の紫外線ランプを用いることができるが、導電性ナノ材料4が吸収する波長の光7を照射できる光源であれば、上記のものに限定されるものではない。照射する光7の波長は500〜1500nmであることが好ましい。また平均エネルギー密度は1.0〜100.0J/cmであることが好ましい。特に光7の照射は、パルス照射により、パルスエネルギー強度を1.0〜100.0J/cmに設定して行うことが好ましい。
上記のような光7が非導電部分6の形成予定箇所に照射されると、導電性ナノ材料4は昇華して消失する。このとき導電性ナノ材料4の全部が消失しなくても一部が消失すれば、導電性ナノ材料4同士の接点が減少するので、光照射前の導電部分5を光照射後においては非導電部分6にすることができる。さらに光7が照射された箇所の樹脂成分8は、消失しにくく、むしろ膨張しようとするので、導電部分5の膜厚T1に比べて膜厚の厚い非導電部分6を形成することができる。しかも樹脂部分8が膨張することによって、導電性ナノ材料4の消失痕10として溝や空洞は残存しにくくなる。
この後、例えば有機EL素子を製造しようとして、図2(c)に示すように導電部分5及び非導電部分6の全体に発光層等の機能層9を形成すると、導電部分5と非導電部分6との境界付近において、非導電部分6が機能層9を持ち上げていることによって、導電部分5の表面と機能層9の表面との距離が長くなる(図2(c)の実線で囲まれたA部分参照)。しかも非導電部分6の樹脂成分8は、導電性ナノ材料4の昇華による消失とほぼ同時に膨張しているので、機能層9の材料の一部が浸入できそうな消失痕10はほとんど存在しない。これにより、本発明に係る透明導電膜付き基材1は、図3〜図6に示すような従来のものに比べて、リーク電流やショートの発生を抑制することができ、非導電部分6の表面抵抗を高く、導電部分5の表面抵抗を低くすることができるものである。また、導電部分5と非導電部分6との境界における非導電部分6の端面は、導電部分5から非導電部分6にかけて上り斜面であることが好ましい(図2(c)のA部分等参照)。これにより、導電部分5と非導電部分6との境界付近において、発光層等の機能層9が断裂することを抑制することができる。
上記のような透明導電膜付き基材1において、特に非導電部分6の膜厚T2は、導電部分5の膜厚T1に比べて10nm以上厚く、導電部分5の膜厚T1の5倍以下の膜厚であることが好ましい。非導電部分6の膜厚T2が導電部分5の膜厚T1に比べて10nm以上厚いと、非導電部分6の樹脂成分8が十分に膨張しているので、導電性ナノ材料4の消失痕10をさらに低減することができる。逆に、非導電部分6の膜厚T2が導電部分5の膜厚T1の5倍以下の膜厚であると、導電部分5と非導電部分6との境界付近において、発光層等の機能層9が断裂することを抑制することができる。なお、導電部分5の膜厚T1は、30〜300nmであることが好ましく、60〜150nmであることがより好ましい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(金属ナノワイヤ)
導電性ナノ材料として、公知論文「Materials Chemistry andPhysics vol.114 p333-338“Preparation of Ag nanorodswith high yield by polyol process”」に基づいてAgナノワイヤ(平均直径50nm、平均長さ5μm)を製造した。
(透明導電材料A)
上記の金属ナノワイヤ(3質量部)と、セルロース樹脂(信越化学工業(株)製「SM」)(1質量部)と水とを配合することによって、固形分4.0質量%の透明導電材料Aを調製した。
(透明導電材料B)
上記の金属ナノワイヤ(3質量部)と、セルロース樹脂(信越化学工業(株)製「SM」)(2質量部)と水とを配合することによって、固形分4.0質量%の透明導電材料Bを調製した。
(実施例1)
透明基材として無アルカリガラス板(コーニング社製「No.1737」、波長500nmにおける屈折率1.50〜1.53)を用いた。この透明基材の表面に透明導電材料Aをスピンコート法により塗布し、100℃、5分間の条件で加熱して乾燥硬化させることによって、膜厚100nmの透明導電膜を形成した。次に、波長1050nmのファイバーレーザーを用いて透明導電膜の右半分にパルスエネルギー強度が2.0J/cmの光をパルス照射により走査することによって、非導電部分を形成した。このようにして透明導電膜の左半分に導電部分、右半分に非導電部分を設けて形成された透明導電膜付き基材を製造した。
(実施例2)
透明導電材料Aの代わりに透明導電材料Bを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして透明導電膜付き基材を製造した。
(実施例3)
実施例1と同様に透明導電膜を形成した。
次に、波長530nmのSHG−YAGレーザーを用いて透明導電膜の右半分にパルスエネルギー強度が2.0J/cmの光をパルス照射により走査することによって、非導電部分を形成した。このようにして透明導電膜の左半分に導電部分、右半分に非導電部分を設けて形成された透明導電膜付き基材を製造した。
(実施例4)
透明導電材料Aの代わりに透明導電材料Bを用いるようにした以外は、実施例3と同様にして透明導電膜付き基材を製造した。
(比較例1)
実施例1と同様に透明導電膜を形成した。
次に、波長350nmのTHG−YAGレーザーを用いて透明導電膜の右半分にパルスエネルギー強度が2.0J/cmの光をパルス照射により走査することによって、非導電部分を形成した。このようにして透明導電膜の左半分に導電部分、右半分に非導電部分を設けて形成された透明導電膜付き基材を製造した。
(比較例2)
透明導電材料Aの代わりに透明導電材料Bを用いるようにした以外は、比較例1と同様にして透明導電膜付き基材を製造した。
(比較例3)
パルスエネルギー強度を0.5J/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電膜付き基材を製造した。
(比較例4)
パルスエネルギー強度を0.5J/cmに変更した以外は、実施例2と同様にして透明導電膜付き基材を製造した。
(比較例5)
パルスエネルギー強度を0.5J/cmに変更した以外は、実施例3と同様にして透明導電膜付き基材を製造した。
(比較例6)
パルスエネルギー強度を0.5J/cmに変更した以外は、実施例4と同様にして透明導電膜付き基材を製造した。
(表面抵抗)
各透明導電膜付き基材の透明導電膜について、(株)三菱化学アナリテック「抵抗率計・ロレスタEP MCP−T360型」を用いて、導電部分及び非導電部分の表面抵抗を測定した。その結果を表1及び表2に示す。
Figure 2013182871
Figure 2013182871
表1から明らかなように、実施例1〜4はいずれも、非導電部分の表面抵抗が非常に高く、導電部分の表面抵抗が低いので、リーク電流やショートの発生を抑制することができると考えられる。
また表2によれば、比較例1及び2も、非導電部分の表面抵抗が非常に高く、導電部分の表面抵抗が低いが、そもそも非導電部分の膜厚が導電部分の膜厚に比べて非常に薄いので(図3(b)、図4(b)(c)参照)、リーク電流やショートが発生しやすいと考えられる。
また表2から明らかなように、比較例3〜6はいずれも、導電部分の表面抵抗のみならず、非導電部分の表面抵抗も低いので、リーク電流やショートが発生しやすいと考えられる。
なお、図7は実施例1の段差測定の結果を示すグラフである。この段差は、アルバックイーエス(株)製触針式表面形状測定器「Dektak8」を用いて測定した。図7中の非照射部が導電部分であり、照射部が非導電部分である。
1 透明導電膜付き基材
2 基材
3 透明導電膜
4 導電性ナノ材料
5 導電部分
6 非導電部分
7 光
41 金属ナノワイヤ

Claims (4)

  1. 基材に透明導電膜を設けて形成され、前記透明導電膜が、導電性ナノ材料を含有する導電部分と、非導電部分とからなり、前記非導電部分の膜厚が前記導電部分の膜厚に比べて厚いことを特徴とする透明導電膜付き基材。
  2. 前記非導電部分の膜厚が、前記導電部分の膜厚に比べて10nm以上厚く、前記導電部分の膜厚の5倍以下の膜厚であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜付き基材。
  3. 前記導電性ナノ材料が金属ナノワイヤであることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電膜付き基材。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の透明導電膜付き基材を製造する方法であって、前記導電性ナノ材料を含有する前記導電部分からなる前記透明導電膜を前記基材に設け、前記非導電部分の形成予定箇所に光を照射して、前記導電性ナノ材料を昇華させることによって、前記導電部分の膜厚に比べて膜厚の厚い前記非導電部分を形成することを特徴とする透明導電膜付き基材の製造方法。
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