JP2013182161A - 音響処理装置およびプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】条件設定の適否に対して頑健に原音成分や残響成分を解析する。
【解決手段】残響解析部34は、音響信号SAの各音響成分を原音-残響分配係数β(f)に応じて原音成分X(f,t)と残響成分W(f,t)とに分配するとともに残響成分W(f,t)を時間軸上の単位期間毎の単位分配係数gi(f)に応じて過去の複数の単位期間にわたる音響成分Y(f,t-i)に分配する確率モデルについて、原音成分X(f,t)と原音-残響分配係数β(f)と各単位分配係数gi(f)との各々の事後分布(q(X(f,t)),q(β(f)),q(gi(f)))を算定する。確率モデルでは、各音響成分Y(f,t-i)の単位分配係数gi(f)が密に分布する事前分布が各単位分配係数gi(f)に付与され、原音成分X(f,t)と原音-残響分配係数β(f)とに無情報事前分布が付与される。
【選択図】図1

Description

本発明は、音響信号に含まれる残響成分を解析する技術に関する。
音響信号に含まれる残響成分を抑圧する技術が従来から提案されている。例えば非特許文献1には、残響付与前の原音成分が残響成分と比較して時間周波数領域内で疎らに分布するという性質(スパース性)を前提として、室内インパルス応答と原音成分との畳込みで近似される残響音声から、原音成分のスパース性が最大化するように原音成分と室内インパルス応答とを特定する技術が開示されている。原音成分の事前分布は、分布形状を規定する各変数が所定値に設定された一般化正規分布で表現される。
亀岡ほか2名,"音声のスパース性と非負制約つき畳み込みモデルに基づくパワースペクトル領域残響除去",日本音響学会講演論文集,p.705〜p.708,2008年9月
音源から発生する音響の特性は実際には多様である。しかし、非特許文献1の技術では、原音成分のスパース性が前提とされ、かつ、原音成分の事前確率が所定形状の一般化正規分布で表現される。したがって、原音成分のスパース性が低い場合や、一般化正規分布の形状を規定する各変数の設定が適切でない場合に、残響抑圧の精度が低下するという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、条件設定の適否に対して頑健な原音成分や残響成分の解析を目的とする。
以上の課題を解決するために本発明が採用する手段を説明する。なお、本発明の理解を容易にするために、以下の説明では、本発明の要素と後述の実施形態の要素との対応を括弧書で付記するが、本発明の範囲を実施形態の例示に限定する趣旨ではない。
本発明の音響処理装置は、観測信号の各音響成分(例えば音響成分Y(f,t))を原音-残響分配係数(例えば原音-残響分配係数β(f))に応じて原音成分(例えば原音成分X(f,t))と残響成分(例えば残響成分W(f,t))とに分配するとともに残響成分を時間軸上の単位期間毎の単位分配係数(例えば単位分配係数gi(f,t))に応じて過去の複数の単位期間にわたる音響成分(例えば音響成分Y(f,t-i))に分配する確率モデル(例えば数式(7))であって、原音-残響分配係数と各単位分配係数とに事前分布を付与した確率モデルについて、原音成分と原音-残響分配係数と各単位分配係数と少なくともひとつの事後分布(例えば事後分布q(X(f,t)),q(β(f)),q(gi(f)))を算定する残響解析部(例えば残響解析部34)を具備する。以上の構成では、原音-残響分配係数と各単位分配係数とに事前分布を付与した確率モデルが観測信号に適用されるから、原音成分の特性を事前に仮定する非特許文献1の技術と比較して、条件設定の適否に対して頑健に原音成分や残響成分を推定できるという利点がある。なお、残響解析部による事後分布の算定は、厳密な意味での事後分布の算定のほか、事後分布の近似的な算定も包含する。また、残響解析部は、原音成分と原音-残響分配係数と各単位分配係数との各々に個別に対応する事後分布の少なくともひとつを算定する要素や、原音成分と原音-残響分配係数と各単位分配係数とうちの少なくとも2以上の変数に対応する統合的な事後分布を算定する要素を包含する。
本発明の好適な態様の音響処理装置は、残響解析部が算定した事後分布から原音成分および残響成分の少なくとも一方を推定する音響推定部を具備する。以上の態様によれば、観測信号の原音成分または残響成分を高精度に推定することが可能である。
本発明の好適な態様に係る音響処理装置では、原音-残響分配係数に無情報事前分布を付与した確率モデルが利用される。以上の態様では、原音-残響分配係数の事前分布が無情報事前分布に設定されるから、原音成分の特性を事前に選定する非特許文献1の技術と比較して、条件設定の適否に対して頑健に原音成分や残響成分を推定できるという効果は格別に顕著である。また、残響成分のエネルギが時間軸上で密に分布するという傾向を前提として、過去の音響成分の各単位分配係数が密に分布する事前分布を各単位分配係数に付与した確率モデルを利用する構成も好適である。以上の態様でも、原音成分の特性を事前に選定する非特許文献1の技術と比較して、条件設定の適否に対して頑健に原音成分や残響成分を推定できるという利点がある。
過去の音響成分の各単位分配係数が密に分布する事前分布とは、時間軸上における実際の残響成分のエネルギの分布特性に整合するように過去の音響成分を略均等に寄与させ得る確率分布を意味し、例えば分布形状を規定する変数が1よりも充分に大きい数値に設定されたディリクレ分布や、確率変数の分布形状を規定する変数(例えばベータ分布の変数α)が1よりも充分に大きい数値に設定されたGEM分布が好適に採用される。
本発明の好適な態様において、確率モデルは、現在の音響成分(例えば音響成分Y(f,t))と、原音成分および過去の各音響成分の各々について現在の音響成分に対する寄与の有無を指定する潜在変数(例えば潜在変数Zi(f,t))との同時分布を表現し、残響解析部は、確率モデルの同時分布の下限が最大化されるように、原音成分と原音-残響分配係数と各単位分配係数との各々の確率分布を逐次的に更新することで各々の事後分布を算定する。ただし、同時分布の下限を解析的に最適化するためには、同時分布の下限が各確率変数の充分統計量のみで記述される必要がある。そこで、原音成分と原音-残響分配係数と各単位分配係数との各々がその超変数の充分統計量のみで記述された補助関数を確率モデルに適用したときの同時分布の下限が最大化されるように、原音成分と原音-残響分配係数と各単位分配係数との各々の確率分布を逐次的に更新することで各々の事後分布を算定する構成が好適である。
なお、過去の音響成分の有限混合で残響成分を表現した確率モデルを採用することも可能であるが(例えば後述の第1実施形態)、過去の音響成分の無限混合で残響成分を表現した確率モデルを利用した構成が格別に好適である。有限混合の確率モデルでは条件設定(過去の音響成分の混合数)に応じて推定精度が変動し得るのに対し、無限混合の確率モデルでは、条件設定(有限近似の打切係数)の適否に対して充分に頑健な推定を実現することが可能である。なお、無限混合の確率モデルを利用した構成の具体例は、例えば第2実施形態として後述される。
本発明の好適な態様では、観測信号の各音響成分を原音-残響分配係数に応じて原音成分と残響成分とに分配する確率モデルを利用して観測信号の各音響成分を原音成分と残響成分とに分配し、分配後の原音成分に所定の信号モデルを適用することで、原音を分離(音源分離)した音響信号を推定する一方、残響成分を過去の複数の単位期間の音響成分に分配する残響モデルを利用して残響成分を過去の複数の音響成分(各単位期間)に分配し、残響モデルによる分配後の過去の各音響成分に対応する単位分配係数に応じて、残響を分離した音響信号を推定する。
以上の各態様に係る音響処理装置は、原音成分や残響成分の解析に専用されるDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェア(電子回路)によって実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)等の汎用の演算処理装置とプログラムとの協働によっても実現される。本発明のプログラムは、観測信号の各音響成分(例えば音響成分Y(f,t))を原音-残響分配係数(例えば原音-残響分配係数β(f))に応じて原音成分(例えば原音成分X(f,t))と残響成分(例えば残響成分W(f,t))とに分配するとともに残響成分を時間軸上の単位期間毎の単位分配係数(例えば単位分配係数gi(f,t))に応じて過去の複数の単位期間にわたる音響成分(例えば音響成分Y(f,t-i))に分配する確率モデル(例えば数式(7))であって、原音-残響分配係数と各単位分配係数とに事前分布を付与した確率モデルについて、原音成分と原音-残響分配係数と各単位分配係数との少なくともひとつの事後分布(例えば事後分布q(X(f,t)),q(β(f)),q(gi(f)))を算定する残響解析処理(例えば残響解析部34)をコンピュータ(例えば演算処理装置22)に実行させる。以上のプログラムによれば、本発明の音響処理装置と同様の作用および効果が奏される。本発明のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされるほか、通信網を介した配信の形態で提供されてコンピュータにインストールされる。
本発明の第1実施形態に係る音響処理装置のブロック図である。 原音成分および残響成分の説明図である。 補助関数の導出に利用される定理1の説明図である。 残響解析部による処理の説明図である。 第1実施形態および第2実施形態の効果の説明図である。 第2実施形態の効果の説明図である。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る音響処理装置100のブロック図である。図1に示すように、音響処理装置100には信号供給装置12と放音装置14とが接続される。信号供給装置12は、音響信号(観測信号)SAを音響処理装置100に供給する。音響信号SAは、音源が発生した音響(以下「原音成分」という)に対して、音響空間内で反射および散乱された残響成分(初期反射音および後部残響音)を付加した音響の波形を示す時間領域の信号である。例えば、収録音や合成音等の既存の音響に対して事後的に残響効果を付与した音響の音響信号SAや、残響効果がある音響空間(例えば音響ホール等)内で実際に収録された音響の音響信号SAが好適に利用される。周囲の音響を収音して音響信号SAを生成する収音機器や、可搬型または内蔵型の記録媒体から音響信号SAを取得して音響処理装置100に供給する再生装置や、通信網から音響信号SAを受信して音響処理装置100に供給する通信装置が信号供給装置12として採用され得る。
第1実施形態の音響処理装置100は、音響信号SAの残響成分を抑圧した音響信号SBを生成する残響抑圧装置である。放音装置14(例えばスピーカやヘッドホン)は、音響処理装置100が生成した音響信号SBに応じた音波を再生する。なお、音響信号SBをデジタルからアナログに変換するD/A変換器の図示は便宜的に省略されている。
図1に示すように、音響処理装置100は、演算処理装置22と記憶装置24とを具備するコンピュータシステムで実現される。記憶装置24は、演算処理装置22が実行するプログラムPGMや演算処理装置22が使用する各種のデータを記憶する。半導体記録媒体や磁気記録媒体などの公知の記録媒体や複数種の記録媒体の組合せが記憶装置24として任意に採用され得る。音響信号SAを記憶装置24に記憶した構成(したがって信号供給装置12は省略される)も好適である。
演算処理装置22は、記憶装置24に格納されたプログラムPGMを実行することで、音響信号SAから音響信号SBを生成するための複数の機能(周波数分析部32,残響解析部34,音響推定部36)を実現する。なお、演算処理装置22の各機能を複数の装置に分散した構成や、専用の電子回路(DSP)が一部の機能を実現する構成も採用され得る。
周波数分析部32は、音響信号SAを時間軸上で区分した単位期間(フレーム)毎に各周波数の音響成分(スペクトル)Y(f,t)を算定する。記号fは周波数軸上の任意の1個の周波数(周波数帯域)を意味し、記号tは時間軸上の任意の1個の時点(単位期間)を意味する。音響成分Y(f,t)は、時間-周波数領域内での音響信号SAの強度(例えば振幅やパワー)に相当する。各音響成分Y(f,t)の算定には、例えば短時間フーリエ変換等の公知の周波数分析が任意に採用される。通過帯域が相違する複数の帯域通過フィルタで構成されるフィルタバンクを周波数分析部32として採用することも可能である。
第1実施形態では、図2および数式(1)に示すように、音響信号SAの各音響成分Y(f,t)を、原音-残響分配係数β(f)に応じて、音源が発生した原音成分X(f,t)と音響空間内の反射や散乱で発生した残響成分W(f,t)とに分配(具体的にはβ:(1−β)に分配)することを想定する。原音成分X(f,t)および残響成分W(f,t)は、時間-周波数領域内での強度(例えば振幅やパワー)として表現される。また、原音-残響分配係数β(f)は、音響成分Y(f,t)に対する原音成分X(f,t)または残響成分W(f,t)の比率(寄与度)に応じた1以下の非負値(0≦β(f)≦1)である。
Figure 2013182161
図2および数式(1)から理解されるように、任意の1個の単位期間の残響成分W(f,t)は、その単位期間からみて過去に位置する複数(I個)の単位期間にわたる音響成分Y(f,t-1)〜Y(f,t-I)に近似的に分配される。音響成分Y(f,t-i)(i=1〜I)に対応する単位分配係数gi(f)は、I次元の単体上で定義される1以下の非負値であり、I個の単位期間にわたる合計値(g1(f)+g2(f)+……+gI(f))は1である。以上の説明から理解されるように、現在の音響成分Y(f,t)に反映される過去の音響成分Y(f,t-i)の単位期間の個数(単位分配係数gi(f)の個数)Iは、残響付与に使用される残響フィルタの次数(例えばFIRフィルタのタップ長)に相当する。
図1の残響解析部34は、原音成分X(f,t)の確率分布(事後分布)q(X(f,t))と原音-残響分配係数β(f)の確率分布q(β(f))と単位分配係数gi(f)の確率分布q(gi(f))とをベイズ推論により音響成分Y(f,t)から近似的に算定する。残響解析部34の処理の原理を以下に詳述する。
音響成分Y(f,t)を周波数軸上でK個(Kは2以上の自然数)の要素y1(f,t)〜yK(f,t)に区分し、任意の1個の要素yk(f,t)(k=1〜K)が原音成分X(f,t)または過去の1個の音響成分Y(f,t-i)から生成されたと仮定する。また、各要素yk(f,t)が原音成分X(f,t)または音響成分Y(f,t-i)から生成される確率は、各成分の単位分配係数(β(f),(1−β)gi(f))と当該成分との積に比例すると仮定する。例えば、音響成分Y(f,t)のうち要素yk(f,t)が原音成分X(f,t)から生成された確率は、{β(f)X(f,t)/(β(f)X(f,t)+(1−β(f))W(f,t))}で表現される。
いま、音響成分Y(f,t)の各要素yk(f,t)が原音成分X(f,t)および過去の音響成分Y(f,t-i)の何れから生成されたかを示す未知の潜在変数(二値行列)Zi(k,f,t)を導入する。要素yk(f,t)が原音成分X(f,t)(i=0に相当)から生成された場合には、潜在変数Z0(k,f,t)の数値が1で残余の数値は0となり、要素yk(f,t)がi個前の単位期間の音響成分Y(f,t-i)から生成された場合には、潜在変数Zi(k,f,t)の数値が1で残余の数値は0となる。すなわち、潜在変数Zi(k,f,t)は、原音成分X(f,t)および過去の各音響成分Y(f,t-i)の各々の寄与の有無(有効/無効)を指定する変数と表現され得る。
以上の関係を考慮すると、音響信号SAの任意の1個の音響成分Y(f,t)と潜在変数Zi(k,f,t)との同時分布p(Y(f,t),Zi(k,f,t)|X(f,t),β(f),gi(f))を表現する確率モデルは以下の数式(2)で表現される。すなわち、第1実施形態の確率モデルは、混合数Iの有限混合モデルである。
Figure 2013182161
数式(2)の記号D(f,t)は、以下の数式(3)で表現される正規化項である。
Figure 2013182161
以下の数式(4)から数式(6)で表現されるように、数式(2)の原音成分X(f,t)と原音-残響分配係数β(f)と過去の音響成分Y(f,t-i)の単位分配係数gi(f)とに対して適切な事前分布(確率密度)が付与される。第1実施形態では、原音成分X(f,t)の事前分布をガンマ分布(Gamma)と仮定し、原音-残響分配係数β(f)の事前分布をベータ分布(Beta)と仮定し、各単位分配係数gi(f)の事前分布をディリクレ分布(Dir)と仮定した場合を例示する。
Figure 2013182161
原音成分X(f,t)の事前分布が無情報事前分布となるように、数式(4)のガンマ分布の形状を規定する変数(形状母数)U0(f,t)および変数(尺度母数)V0(f,t)は選定される。例えば、変数U0(f,t)および変数V0(f,t)の双方が1に設定される。同様に、原音-残響分配係数β(f)の事前分布が無情報事前分布となるように、数式(5)のベータ分布の形状を規定する変数a0(f)および変数b0(f)は選定される。例えば、変数a0(f)および変数b0(f)の双方が1に設定される。
残響成分W(f,t)は、音源から多様な経路で収音点に到来する多数の音響の混合音であるから、時間軸上でエネルギが密に分布する(スパース性が低い)という傾向がある。以上の傾向を確率モデルに反映させるために、第1実施形態では、過去の各音響成分Y(f,t-i)の単位分配係数gi(f)が密に分布する(すなわち、過去の各音響成分Y(f,t-i)が現在の音響成分Y(f,t)に対して略均等に寄与する)ように、数式(6)のディリクレ分布の変数g0(f)が選定される。具体的には、変数g0(f)は1と比較して充分に大きい数値(g0(f)≫1)に設定される。以上に説明した通り、原音成分の条件(原音成分のスパース性や原音成分の事前分布を表現する一般化正規分布の各変数)を事前に固定する非特許文献1の技術とは対照的に、第1実施形態では、原音成分X(f,t)や原音-残響分配係数β(f)の条件を事前に固定することなく、残響成分W(f,t)のエネルギが時間軸上で密に分布するという傾向を利用する。
いま、演算を簡素化する観点から、数式(2)の潜在変数Zi(k,f,t)を潜在変数Zi(f,t)と簡略化する。すなわち、音響成分Y(f,t)内のK個の要素y1(f,t)〜yK(f,t)の区別を省略し、1個の音響成分Y(f,t)が原音成分X(f,t)および過去の各音響成分Y(f,t-i)の何れかひとつから生成されると仮定的に近似する。以上に説明した事前分布の付与と潜在変数Zi(f,t)の近似とを数式(2)に適用して対数形式に変形することで、音響成分Y(f,t)と潜在変数Zi(f,t)との対数同時分布p(Y(f,t),Zi(f,t)|X(f,t),β(f),gi(f))を表現する以下の数式(7)の確率モデルが導出される。
Figure 2013182161
第1実施形態では、音響成分Y(f,t)が観測されたときの各事後分布(q(X(f,t)),q(β(f)),q(gi(f)))を、数式(7)の確率モデルを対象とした変分ベイズ法で推定する。変分ベイズ法は、確率変数の集合Θmで規定される確率モデルmのもとで観測値xが付与された場合の周辺尤度を、以下の数式(8)で表現される下限を最適化(最大化)する問題として定式化するベイズ推論の方法論である。変分ベイズ法によれば、例えばギブス(Gibbs)サンプリング等の方法と比較して、収束性が保証されるという利点や収束判定が容易であるという利点がある。ただし、変分ベイズ法の代わりにギブスサンプリングを採用することも可能である。
Figure 2013182161
数式(7)の確率モデルのもとで数式(8)の下限に相当する関数(以下「評価関数」という)Jは、以下の数式(9)で表現される。なお、数式(9)では、各変数(X(f,t),Y(f,t),Zi(f,t),β(f),gi(f))の添字や括弧を便宜的に省略した。また、確率分布q(X,Z,β,g)(数式(8)の確率分布q(Θm|m)に相当)を各確率変数の確率分布の総乗(q(X,Z,β,g)≒q(X)q(Z)q(β)q(g))として近似した。
Figure 2013182161
集合Θm内の各確率変数θの確率分布(事後分布の近似)q(θ)を、以下の数式(10)が成立するように逐次的に更新する(確率分布q(θ)をKL情報量の意味で事後分布に近付ける)ことで、数式(8)の下限(数式(9)の評価関数J)を最適化することが可能である。数式(10)の記号〈f(x)〉wは変数wのもとでの期待値を意味する。また、記号¬θは、集合Θmのうち特定の確率変数θ以外の要素を意味する。
Figure 2013182161
以上の検討を考慮して、まず、数式(9)の評価関数Jを潜在変数Zi(f,t)について最適化することを検討する。数式(7)の確率モデルのうち潜在変数Zi(f,t)に関連する要素のみを抽出して数式(10)を適用すると、以下の数式(11)が導出される。
Figure 2013182161
したがって、確率分布q(Z)を更新するための以下の数式(12)が導出される。数式(12)の演算を反復することで、潜在変数Zi(f,t)の事後分布q(Z)を解析的に算定することが可能である。
Figure 2013182161
ところで、数式(9)の評価関数Jを各確率変数に対して解析的に最適化するためには、数式(10)の関数logp(x,Θm|m)が集合Θmの充分統計量のみで記述されることが必要である。数式(7)に着目すると、対数同時分布p(Y,Z|X,β,g)が共役系である(すなわち、各確率変数が充分統計量の形式のみで対数同時分布p(Y,Z|X,β,g)内に記述される)必要がある。しかし、数式(7)の確率モデルのうち潜在変数Zi(f,t)以外の各確率変数(X(f,t),β(f),gi(f))に関連する要素に含まれる−logD(f,t)の項(−Y(f,t)logD(f,t))については以上の条件が成立しない。したがって、潜在変数Zi(f,t)の事後分布q(Z)は前述の通り解析的に算定できるのに対し、潜在変数Zi(f,t)以外の各確率変数の事後分布(q(X(f,t)),q(β(f)),q(gi(f)))は解析的に算定できない。
以上の事情を考慮して、第1実施形態では、各確率変数の充分統計量のみで記述される適切な関数(以下「補助関数」という)を設定する補助関数法を利用する。具体的には、各単位分配係数gi(f)の事後分布q(gi(f))を解析的に算定するために、各単位分配係数gi(f)に関連する要素がloggi(f)の形式のみで記述される補助関数を設定し、原音-残響分配係数β(f)の事後分布q(β(f))を解析的に算定するために、原音-残響分配係数β(f)に関連する要素がlogβ(f)またはlog(1−β(f))の形式のみで記述される補助関数を設定する。また、原音成分X(f,t)の事後分布q(X(f,t))を解析的に算定するために、原音成分X(f,t)に関連する要素がlogX(f,t)またはX(f,t)の形式のみで記述される補助関数を設定する。そして、以上の条件のもとで選定された各補助関数を数式(7)の確率モデルに適用したうえで数式(9)の評価関数Jが最適化(最大化)されるように各確率変数の事後分布(q(X(f,t)),q(β(f)),q(gi(f)))を解析的に算定する。
補助関数を設定するために以下の定理1から定理3を利用する。
(1)定理1
所定の定数Mを下回る正数の範囲内の変数x(0<x<M)に対して関数−logxは以下の数式(13)の関係を満たす。数式(13)の右辺は、図3に示すように、変数xが数値u(0<u<M)となる位置で関数−logxに接する対数関数である。
Figure 2013182161
(2)定理2(イェンゼン(Jensen)の不等式)
変数ai(Σai=1)と凸関数f(x)とについて以下の数式(14)の関係が成立する。
Figure 2013182161
(3)定理3
変数xと変数Rとが正数であるとき、以下の数式(15)の関係が成立する。数式(15)の右辺は、変数xが数値Rとなる位置での関数−logxの接線に相当する。
Figure 2013182161
数式(7)のうち事後分布の解析的な算定を阻害する関数−logD(f,t)に定理1を適用すると、関数−logD(f,t)の下限を所定の定数M(f,t)と補助変数u(f,t)とで表現する以下の数式(16)の補助関数J1(f,t)が導出される。
Figure 2013182161
なお、数式(16)の定数M(f,t)は、正規化項D(f,t)がとり得る総ての数値を上回る範囲内(M(f,t)>D(f,t))で事前に選定される。したがって、定数M(f,t)を充分に大きい数値に設定することも可能であるが、定数M(f,t)が過度に大きい場合には、逐次的な更新で事後分布を算定する段階で演算値の収束に長時間が必要となる。そこで、正規化項D(f,t)の数値と演算時間とを考慮して定数M(f,t)は適切に選定される必要がある。なお、各周波数と各単位期間との全部の組合せについて定数M(f,t)を単一の数値に設定することも可能であるが、周波数と単位期間との組合せ毎に定数M(f,t)を個別に設定した構成が格別に好適である。例えば以下の数式(17)の演算で定数M(f,t)を算定する構成によれば、例えば各周波数および各単位期間の正規化項D(f,t)を上回る数値となるように定数M(f,t)が正規化項D(f,t)に応じて可変に制御される。
Figure 2013182161
数式(16)の補助関数J1(f,t)のうち第2項の対数部分(log[{M(f,t)−D(f,t)}/{M(f,t)−u(f,t)}])は、充分統計量のみで記述されるという前述の条件を依然として充足しない。そこで、数式(16)の補助関数J1(f,t)に対して前掲の定理2を適用する。なお、以下の説明では、時間および周波数を表現する記号(f,t)を便宜的に省略し、過去の音響成分Y(f,t-i)を便宜的に記号Y(i)で表記する。
まず、数式(16)の補助関数J1(f,t)のうち各単位分配係数gi(f)に依存する要素に前掲の定理2(イェンゼンの不等式)を適用すると、補助関数J1(f,t)の下限を表現する数式(18)の補助関数J2(f,t)が導出される。なお、記号cは定数である。
Figure 2013182161
数式(18)の補助関数J2(f,t)では、各単位分配係数gi(f)に依存する要素が単位分配係数gi(f)の充分統計量(+loggi(f))のみで記述される。したがって、補助関数J2(f,t)を数式(7)の確率モデルの関数−logD(f,t)に適用することで、数式(9)の評価関数Jが最大化されるように各単位分配係数gi(f)の確率分布(変数gi~(f)で形状が規定されるディリクレ分布)q(gi(f))を逐次的に更新する更新式(数式(19)および数式(20))が導出される。すなわち、数式(19)および数式(20)の演算を反復することで、各単位分配係数gi(f)の事後分布q(gi(f))を解析的に推定することが可能である。
Figure 2013182161
また、数式(16)の補助関数J1(f,t)のうち原音-残響分配係数β(f)に依存する要素に前掲の定理2を適用すると、補助関数J1(f,t)の下限を補助変数u(f,t)と補助変数h(f,t)とで表現する数式(21)の補助関数J3(f,t)が導出される。
Figure 2013182161
数式(21)の補助関数J3(f,t)では、原音-残響分配係数β(f)に依存する要素が原音-残響分配係数β(f)の充分統計量(+logβ(f),+log(1−β(f))のみで記述される。したがって、補助関数J3(f,t)を数式(7)の確率モデルの関数−logD(f,t)に適用することで、数式(9)の評価関数Jが最大化されるように原音-残響分配係数β(f)の確率分布(変数a(f)と変数b(f)とで形状が規定されるベータ分布)q(β(f))を逐次的に更新する更新式(数式(22)から数式(24))が導出される。すなわち、数式(22)から数式(24)の演算を反復することで、原音-残響分配係数β(f)の事後分布q(β(f))を解析的に推定することが可能である。
Figure 2013182161
次に、数式(7)のうち事後分布の解析的な算定を阻害する関数−logD(f,t)に定理3を適用すると、関数−logD(f,t)の下限を補助変数R(f,t)で表現する以下の数式(25)の補助関数J4(f,t)が導出される。
Figure 2013182161
数式(25)の補助関数J4(f,t)では、原音成分X(f,t)に依存する要素が原音成分X(f,t)の充分統計量(X,+logX(f,t))のみで記述される。したがって、補助関数J4(f,t)を数式(7)の確率モデルの関数−logD(f,t)に適用することで、数式(9)の評価関数Jが最大化されるように原音成分X(f,t)の確率分布(変数U(f,t)と変数V(f,t)とで形状が規定されるガンマ分布)q(X(f,t))を逐次的に更新する更新式(数式(26)から数式(28))が導出される。すなわち、数式(26)から数式(28)の演算を反復することで、原音成分X(f,t)の事後分布q(X(f,t))を解析的に推定することが可能である。
Figure 2013182161
以上の各更新式に適用される補助変数(si(f,t),R(f,t),h(f,t),u(f,t))は、以下の数式(29)で逐次的に更新される。
Figure 2013182161
また、各確率分布の更新や各補助変数の更新に必要な充分統計量は以下の数式(30)で解析的に算定される。なお、記号ψ(x)は、ディガンマ(digamma)関数を意味する。
Figure 2013182161
残響解析部34は、以上に説明した演算を音響成分Y(f,t)について実行することで、原音成分X(f,t)の確率分布q(X(f,t))と原音-残響分配係数β(f)の事後分布q(β(f))と各単位分配係数gi(f)の事後分布q(gi(f))とを算定する。具体的には、残響解析部34は、図4の解析処理を各周波数について単位期間毎に実行する。図4に示すように、残響解析部34は、音響成分Y(f,t)を適用した数式(19)および数式(20)の演算で各単位分配係数gi(f)の確率分布q(gi(f))を更新し、音響成分Y(f,t)を適用した数式(22)から数式(24)の演算で原音-残響分配係数β(f)の確率分布q(β(f))を更新し、音響成分Y(f,t)を適用した数式(26)から数式(28)の演算で原音成分X(f,t)の確率分布q(X(f,t))を更新する(S1)。また、残響解析部34は、数式(29)の演算で各補助変数(si(f,t),R(f,t),h(f,t),u(f,t))を更新する(S2)。
残響解析部34は、各確率分布(q(X(f,t)),q(β(f)),q(gi(f)))の収束を判定する(S3)。収束判定には公知の技術が任意に採用される。各確率分布の収束が否定された場合(S3:NO)、残響解析部34は、処理をステップS1に移行して各確率分布の更新(S1)と各補助変数の更新(S2)とを反復する。他方、各確率分布の収束が肯定された場合(S3:YES)、残響解析部34は、直前のステップS1で算定された各確率分布を事後分布(q(X(f,t)),q(β(f)),q(gi(f)))として確定する。
図1の音響推定部36は、残響解析部34が確定した各確率変数の事後分布(q(X(f,t)),q(β(f)),q(gi(f)))から音響信号SBを生成する。具体的には、音響推定部36は、各周波数の原音成分X(f,t)の事後分布q(X(f,t))の期待値E(f,t)を単位期間毎に順次に算定し、各周波数の期待値E(f,t)を各周波数成分の強度(パワースペクトル)として前後の単位期間で相互に連結することで音響信号SBを生成する。したがって、音響信号SAから残響成分W(f,t)を抑圧した再生音が放音装置14から再生される。
図5は、第1実施形態の効果の説明図である。図5の横軸は、残響解析部34の処理に加味される過去の音響成分Y(f,t-i)の個数I(残響フィルタの次数)を意味する。また、図5の縦軸は、実際の原音成分X(f,t)のパワー|X(f,t)|2と音響信号SAから推定された原音成分X(f,t)のパワー(音響信号SBのパワー)|〈X(f,t)〉|2との対数スペクトル距離(時間平均)を意味する。対数スペクトル距離(LSD)は、例えば以下の数式(31)で算定される。したがって、対数スペクトル距離が小さいほど原音成分X(f,t)の推定が高精度であると評価できる。
Figure 2013182161
図5には、第1実施形態による推定結果と非特許文献1の技術(対比例)による推定結果とが併記されている。図5から理解されるように、第1実施形態によれば、非特許文献1の技術と比較して高精度に原音成分X(f,t)を推定することが可能である。
以上に説明したように、第1実施形態では、原音-残響分配係数β(f)および各単位分配係数gi(f)の各々に事前分布を適用した確率モデルで音響成分Y(f,t)から原音成分X(f,t)の事後分布q(X(f,t))が推定される。したがって、原音成分の事前分布を仮定する非特許文献1の技術と比較して、条件設定の適否に対して頑健に原音成分X(f,t)を推定できるという利点がある。すなわち、第1実施形態でも、原音-残響分配係数β(f)および各単位分配係数gi(f)については事前分布の仮定が必要であるが、残響成分W(f,t)は原音成分X(f,t)と比して特性変動が少ないから、実際には多様に変動し得る原音成分X(f,t)の特性を事前に固定する非特許文献1の技術と比較すれば、原音成分X(f,t)の頑健な推定が可能である。
特に第1実施形態では、原音成分X(f,t)の事前分布と原音-残響分配係数β(f)の事前分布とが無情報事前分布に設定され、残響成分W(f,t)のエネルギが時間軸上で密に分布するという傾向を前提として、音響成分Y(f,t)から原音成分X(f,t)の事後分布q(X(f,t))が推定される。したがって、原音成分の特性(原音成分のスパース性や原音成分の事前分布を表現する一般化正規分布の各変数)を事前に固定する非特許文献1の技術と比較して、条件設定の適否に対して頑健に原音成分X(f,t)を推定できるという効果は格別に顕著である。なお、残響成分W(f,t)のエネルギの分布が密であるという傾向は殆どの場合に妥当する(残響成分W(f,t)のエネルギの分布が疎である可能性は現実的には殆どない)から、多様に変動し得る原音成分の特性を事前に固定する非特許文献1の技術と比較して原音成分X(f,t)を頑健な推定できるという効果を有効に実現することが可能である。
以上の説明から理解されるように、第1実施形態の残響解析部34に適用される確率モデルは、音響信号SAの各音響成分Y(f,t)を原音成分X(f,t)と残響成分W(f,t)とに分配するモデルに相当し、残響成分W(f,t)を過去の各音響成分Y(f,t-i)に分配(過去の各単位期間に分配)する残響モデルを包含する。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。第1実施形態では、混合数Iの有限混合モデルを確率モデルとして想定した。第2実施形態は、確率モデルを無限混合モデルに拡張した形態(残響フィルタを無限次数に拡張した形態)である。なお、以下に例示する各構成において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、第1実施形態の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
第2実施形態では、過去の音響成分Y(f,t-i)に対応する各単位分配係数gi(f)の事前分布をGEM(Griffiths-Engen-McCloskey)分布と仮定する(gi(f)〜GEM(α))。すなわち、各単位分配係数gi(f)は、棒折過程を適用した以下の数式(32)で表現される。数式(32)においてGEM分布の形状を規定する変数ωiの事前分布は、変数αに応じた形状のベータ分布に設定される(ωi〜Beta(1,α))。以上に説明したように、混合数Iの有限混合モデルを確率モデルとして想定した第1実施形態とは対照的に、第2実施形態における音響成分Y(f,t)の確率モデル(数式(7)の対数同時分布)は無限混合モデルである。
Figure 2013182161
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、残響成分W(f,t)のエネルギが時間軸上で密に分布するように各単位分配係数gi(f)の事前分布が選定される。具体的には、変数ωiの事前分布の形状を規定する変数αが1と比較して充分に大きい数値に設定される。なお、原音成分X(f,t)の事前分布と原音-残響分配係数β(f)の事前分布とが無情報事前分布に設定される点は第1実施形態と同様である。
以上に説明した無限混合モデルを前提として、単位分配係数gi(f)を個数I(有限個)まで考慮する打切係数Iの棒折り近似を変分近似として適用する。なお、無限混合モデルの有限近似は、第1実施形態で例示した有限混合モデルとは相違する。
数式(7)の対数同時分布p(Y,Z|X,β,g)の下限(数式(9)の評価関数J)から、単位分配係数gi(f)に依存する要素のみを抽出すると、以下の数式(33)が導出される。
Figure 2013182161
変数ωiの変分事後分布をベータ分布(Beta(ai,bi))と仮定し、数式(33)に対して関数oi(f,t)と前掲の数式(32)とを適用して変形すると、以下の数式(34)が導出される。
Figure 2013182161
そして、以下の数式(35)の関係を数式(34)に適用すると、各単位分配係数gi(f)の確率分布q(gi(f))(GEM分布)を規定する変数ωiの確率分布(ベータ分布)を逐次的に更新する以下の数式(36)が導出される。第1実施形態の残響解析部34は、数式(36)の演算を反復することで(図4のステップS1)各単位分配係数gi(f)の事後分布q(gi(f))を推定する。
Figure 2013182161
Figure 2013182161
なお、各確率分布の更新や各補助変数の更新に必要な充分統計量は以下の数式(37)で算定される。なお、原音成分X(f,t)の事後分布q(X(f,t))や原音-残響分配係数β(f)の事後分布q(β(f))の算定方法は第1実施形態と同様である。
Figure 2013182161
図5には、第2実施形態における推定結果が併記されている。図5から理解されるように、第2実施形態においても、非特許文献1の技術と比較して高精度に原音成分X(f,t)を推定できる。また、第2実施形態でも原音成分X(f,t)および原音-残響分配係数β(f)の事前分布は無情報事前分布に設定されるから、第1実施形態と同様に、条件設定の適否に対して頑健に原音成分X(f,t)を推定できるという利点がある。
図6は、第1実施形態の有限混合モデルの混合数Iと第2実施形態の棒折り近似の打切係数Iとを変化させた場合(I=5,10,20,50)の対数スペクトル距離(LSD)の標準偏差を図示したグラフである。なお、第2実施形態において変数ωiの事前分布(ベータ分布)の形状を規定する変数αは0.1に設定した。
図6から把握されるように、第2実施形態における標準偏差の平均(0.04)は第1実施形態における標準偏差の平均(0.31)を下回る。したがって、第2実施形態では、変数Iの変化に対する推定精度のばらつきが第1実施形態と比較して抑制されると評価できる。すなわち、第2実施形態によれば、棒折り近似の打切係数Iの選定の適否に対して頑健に原音成分X(f,t)を推定できるという利点がある。
<変形例>
以上に例示した各形態には様々な変形が加えられる。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は併合され得る。
(1)原音成分X(f,t)や原音-残響分配係数β(f)や各単位分配係数gi(f)の事前分布として仮定される確率分布の種類は適宜に変更される。例えば、各単位分配係数gi(f)の事前分布は、多項分布(ディリクレ分布,GEM分布)に限定されない。具体的には、音響の統計的な性質に合致する公知の確率分布(例えばポアッソン分布や平均0の正規分布)を単位分配係数gi(f)の事前分布として採用することも可能である。
(2)前述の各形態では、原音成分X(f,t)と原音-残響分配係数β(f)と各単位分配係数gi(f)との各々に事前分布を付与したが、原音成分X(f,t)に対する事前分布の付与は省略され得る。すなわち、原音-残響分配係数β(f)および各単位分配係数gi(f)のみについて事前分布を付与することも可能である。また、前述の各形態では、原音-残響分布係数β(f)に無情報事前分布を付与し、各単位分配係数gi(f)が密に分布する事前分布を各単位分配係数gi(f)に付与したが、原音-残響分布係数β(f)および各単位分配係数gi(f)の各々に付与される事前分布は、例えば残響成分W(f,t)や過去の音響成分Y(f,t-i)に想定する特性(典型的には前述のように残響成分W(f,t)のエネルギが時間軸上で密に分布するという特性)に応じて適宜に変更される。
(3)前述の各形態では、残響成分W(f,t)を抑圧した音響信号SBを生成したが、残響成分W(f,t)を強調(理想的には抽出)した音響信号SBを生成することも可能である。例えば、音響推定部36が、各単位分配係数g1(f)〜gI(f)の各々の事後分布q(gi(f))の期待値を各音響成分Y(f,t-i)の単位分配係数とした音響成分Y(f,t-1)〜Y(f,t-I)の加重和を残響成分W(f,t)として算定し、各周波数の残響成分W(f,t)を前後の単位期間で相互に連結することで、残響成分W(f,t)を強調した音響信号SBを生成することが可能である。
また、原音成分X(f,t)と残響成分W(f,t)の双方を生成することも可能である。例えば、原音成分X(f,t)と残響成分W(f,t)の各々を生成して個別に音響処理(例えば効果付与処理)を実行したうえで混合する。以上の説明から理解されるように、前述の各形態の音響推定部36は、原音成分X(f,t)および残響成分W(f,t)の少なくとも一方を推定する要素として包括される。
(4)前述の各形態では、残響成分W(f,t)を抑圧または強調した音響信号SBの生成に確率モデルを適用したが、前述の各形態に例示した確率モデルの用途は音響信号SBの生成に限定されない。したがって、前述の各形態における音響推定部36は省略され得る。以上の説明から理解されるように、本発明の音響処理装置は、音響成分Y(f,t)を原音成分X(f,t)と残響成分W(f,t)とに分配する確率モデルを構築するための装置(音響解析装置)としても実現され得る。
(5)前述の各形態では、原音成分X(f,t)と原音-残響分配係数β(f)と各単位分配係数gi(f)とが相互に独立であるとの仮定のもとで、原音成分X(f,t)の事後分布q(X(f,t))と原音-残響分配係数β(f)と各単位分配係数gi(f)の事後分布q(gi(f))との各々を個別に算定したが、各変数が相互に依存することを考慮した場合には、原音成分X(f,t)と原音-残響分配係数β(f)と各単位分配係数gi(f)との統合的な事後分布(q(X(f,t),β(f),gi(f)))が算定される。すなわち、残響解析部34は、原音成分X(f,t)と原音-残響分配係数β(f)と各単位分配係数gi(f)とから選択された2以上の変数の統合的な事後分布を算定する要素としても機能し得る。
また、例えば特定の音響空間内で収録された音響信号SA1から各変数の事後分布(q(X(f,t),q(β(f)),q(gi(f)))を事前に算定し、残響成分について算定された事後分布q(β(f))および事後分布q(gi(f))を適用した確率モデルを、その音響空間内で音響信号SA1とは別個に収録された音響信号SA2の解析に利用することで、音響信号SA2の原音成分X(f,t)の事後分布q(X(f,t))を算定することも可能である。音響信号SA2の事後分布q(X(f,t))の算定時には、残響成分の事後分布(q(β(f)),q(gi(f)))を算定する必要はない。
以上の説明から理解されるように、残響解析部34は、原音成分X(f,t)と原音-残響分配係数β(f)と各単位分配係数gi(f)との少なくともひとつの事後分布を算定する要素として包括される。
(6)音響推定部36が音響信号SBを生成する方法は適宜に変更される。例えば、前述の各形態では、原音成分X(f,t)の事後分布q(X(f,t))の期待値E(f,t)を音響信号SBの各周波数成分の強度として音響信号SBを生成したが、例えば、期待値E(f,t)をゲイン(スペクトルゲイン)として各音響成分Y(f,t)に乗算することで音響信号SBを生成することも可能である。また、残響解析部34が算定した各事後分布(q(X(f,t)),q(β(f)),q(gi(f)))を反映させた確率モデルを音響信号SAに適用することで音響信号SBを生成することも可能である。以上の説明から理解されるように、音響推定部36は、残響解析部34が算定した事後分布から音響信号SB(典型的には原音成分および残響成分の少なくとも一方)を推定する要素として包括される。
100……音響処理装置、12……信号供給装置、14……放音装置、22……演算処理装置、24……記憶装置、32……周波数分析部、34……残響解析部、36……音響推定部。

Claims (2)

  1. 観測信号の各音響成分を原音-残響分配係数に応じて原音成分と残響成分とに分配するとともに前記残響成分を時間軸上の単位期間毎の単位分配係数に応じて過去の複数の単位期間にわたる音響成分に分配する確率モデルであって、前記原音-残響分配係数と前記各単位分配係数とに事前分布を付与した確率モデルについて、原音成分と原音-残響分配係数と各単位分配係数と少なくともひとつの事後分布を算定する残響解析部
    を具備する音響処理装置。
  2. 観測信号の各音響成分を原音-残響分配係数に応じて原音成分と残響成分とに分配するとともに前記残響成分を時間軸上の単位期間毎の単位分配係数に応じて過去の複数の単位期間にわたる音響成分に分配する確率モデルであって、前記原音-残響分配係数と前記各単位分配係数とに事前分布を付与した確率モデルについて、原音成分と原音-残響分配係数と各単位分配係数との少なくともひとつの事後分布を算定する残響解析処理
    をコンピュータに実行させるプログラム。
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