以下、本発明を適用した振動電流変換装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態として図1に示す振動電流変換装置1について説明する。
この振動電流変換装置1は、図1に示すように、半導体製造技術やレーザー加工技術をベースにしたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術と呼ばれる高精度三次元加工技術を用いてμサイズで作製される超小型発電モジュールである。なお、MEMSとは、1つのチップ上に機械部品と電子回路とを融合させた微小な電気機械システムのことを言う。
具体的に、この振動電流変換装置1は、ベース2と、このベース2の一端から立ち上がり形成された支持部3と、この支持部3に片持ち支持されたカンチレバー4とを備えている。
このうち、ベース2は、例えば矩形平板状のシリコンからなる。支持部3は、ベース2と一体に形成されると共に、ベース2の主面に対してほぼ直角に立ち上がり形成されている。カンチレバー4は、長尺状の弾性支持片からなり、ベース2の主面に対向して配置されると共に、支持部3と一体に形成されている。また、カンチレバー4は、その基端側が支持部3の上端に片持ち支持されることによって、その先端側がベース2の主面に対して近接又は離間する方向に振動可能となっている。
カンチレバー4の先端側には、開口部5が設けられている。この開口部5は、後述するマグネット8を内側に進入可能とするものであり、カンチレバー4を貫通する孔部によって形成されている。なお、開口部5は、図1において円形状を為しているが、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば楕円状や矩形状などであってもよい。
カンチレバー4の上面には、開口部5の周囲に巻回されたコイル6が設けられている。このコイル6は、例えばニッケルや銅、金など導電性の金属薄膜からなり、フォトリソグラフィ技術などを用いてカンチレバー4上にパターン形成されている。具体的に、このコイル6は、開口部5を中心にスパイラル状に巻回されてなるコイルパターン6aと、コイルパターン6aの内周側の端部から当該コイルパターン6aとは絶縁された状態でカンチレバー4の基端側へと引き延ばされた引出し配線6bと、コイルパターン6aの外周側の端部からカンチレバー4の基端側へと引き延ばされた引出し配線6cとを有している。また、内側及び外側の引出し配線6b,6cは、それぞれ支持部3の上面に設けられた電源回路7と電気的に接続されている。そして、この電源回路7は、コイル6に流れる電流を整流・平滑し、交流から直流へと変換して出力する。
一方、ベース2の主面上には、マグネット8が設けられている。このマグネット8は、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)中にサマリウムコバルトの磁性粉末を分散させたものからなる。また、このマグネット8は、カンチレバー4の開口部5の内側に進入可能に、ベース2の主面から上方に向かって円柱状に突出して設けられると共に、その上下方向においてN極とS極とが着磁されている。なお、マグネット8は、図1において円柱状を為しているが、開口部5の内側に進入可能であれば、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば角柱状などであってもよい。
以上のような構造を有する振動電流変換装置1では、カンチレバー4が振動することにより、コイル6に誘導起電力を発生させることが可能である。すなわち、この振動電流変換装置1では、カンチレバー4が振動することによって、コイル6の内側に進入可能なマグネット8がコイル6の軸心方向に相対移動することになる。この場合、コイル6を貫くマグネット8の磁束を大きく変化させることができるため、このコイル6に大きな誘導起電力を発生させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置1では、カンチレバー4に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。さらに、カンチレバー4の開口部5の内側にマグネット8を進入可能に配置することで、装置の小型化を図ることが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置1において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として図2に示す振動電流変換装置20について説明する。
この振動電流変換装置20は、上記振動電流変換装置1と同様に、半導体製造技術やレーザー加工技術をベースにしたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術と呼ばれる高精度三次元加工技術を用いてμサイズで作製される超小型発電モジュールであり、上記振動電流変換装置1を1つの変換セル(発電セル)21とし、この変換セル21を複数備えた構造を有している。
具体的に、この振動電流変換装置20は、ベース22と、このベース22の一端から立ち上がり形成された支持部23と、この支持部23に片持ち支持された複数のカンチレバー24とを備えている。
このうち、ベース22は、例えば矩形平板状のシリコンからなる。支持部23は、ベース22と一体に形成されると共に、ベース22の主面に対してほぼ直角に立ち上がり形成されている。複数のカンチレバー24は、長尺状の弾性支持片からなり、互いに同じ向きにベース2の主面に対向して配置されると共に、支持部23と一体に形成されている。また、複数のカンチレバー24は、それぞれの基端側が支持部23の上端に片持ち支持されることによって、それぞれの先端側がベース22の主面に対して近接又は離間する方向に振動可能となっている。さらに、複数のカンチレバー24は、当該カンチレバー24と直交する方向に所定の間隔で平行に並んで配置されると共に、固有振動数を異ならせるために、それぞれの長さを順次異ならせている。
各カンチレバー24の先端側には、それぞれ開口部25が設けられている。この開口部25は、後述するマグネット28を内側に進入可能とするものであり、カンチレバー24を貫通する孔部によって形成されている。なお、開口部25は、図2において円形状を為しているが、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば楕円状や矩形状などであってもよい。
各カンチレバー24の上面には、開口部25の周囲に巻回されたコイル26が設けられている。このコイル26は、例えばニッケルや銅、金など導電性の金属薄膜からなり、フォトリソグラフィ技術などを用いてカンチレバー24上にパターン形成されている。具体的に、このコイル26は、開口部25を中心にスパイラル状に巻回されてなるコイルパターン26aと、コイルパターン26aの内周側の端部から当該コイルパターン26aとは絶縁された状態でカンチレバー24の基端側へと引き延ばされた引出し配線26bと、コイルパターン26aの外周側の端部からカンチレバー24の基端側へと引き延ばされた引出し配線26cとを有している。
また、各カンチレバー24の上面に設けられたコイル26は、互いに隣り合う内側の引出し配線6bと外側の引出し配線6cとが、それぞれ支持部3の上面に設けられた電源回路27と電気的に接続された構造を有している。そして、この電源回路27は、各コイル26に流れる電流を整流・平滑し、交流から直流へと変換して出力する。
一方、ベース2の主面上には、複数のマグネット28が並んで設けられている。これらマグネット8は、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)中にサマリウムコバルトの磁性粉末を分散させたものからなる。また、これらマグネット28は、各カンチレバー4の開口部5の内側に進入可能に、ベース2の主面から上方に向かって円柱状に突出して設けられると共に、その上下方向においてN極とS極とが着磁されている。なお、マグネット8は、図2において円柱状を為しているが、開口部5の内側に進入可能であれば、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば角柱状などであってもよい。
この振動電流変換装置20では、上記振動電流変換装置1と同様の構成、すなわち、先端側に開口部25が設けられて、基端側が片持ち支持されたカンチレバー24と、カンチレバー24の開口部25の周囲に巻回されたコイル26と、カンチレバー24の開口部25の内側に進入可能に配置されたマグネット28とから1つの変換セル21が構成されている。そして、振動電流変換装置20では、このような変換セル21が複数並んだ構造を有することによって集積化が図られている。
以上のような構造を有する振動電流変換装置20では、各変換セル21のカンチレバー4が振動することにより、コイル26に誘導起電力を発生させることが可能である。すなわち、この振動電流変換装置20では、各変換セル21のカンチレバー24が振動することによって、コイル26の内側に進入可能なマグネット28がコイル26の軸心方向に相対移動することになる。この場合、各変換セル21のコイル26を貫くマグネット28の磁束を大きく変化させることができるため、これらコイル26に大きな誘導起電力を発生させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置20では、各変換セル21のカンチレバー24に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。さらに、カンチレバー24の開口部25の内側にマグネット28を進入可能に配置することで、装置の小型化を図ることが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置20において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
さらに、この振動電流変換装置20では、固有振動数を異ならせた複数の変換セル21を備え、これら変換セル21の何れかのカンチレバー24を共振させることによって、幅広い振動の周波数に対応しながら、これらカンチレバー24を効率良く振動させることができ、これらの振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。したがって、この振動電流変換装置20では、上述した変換セル21を複数備えることによって、大きな起電力を得ることが可能である。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態として図3に示す振動電流変換装置30について説明する。
この振動電流変換装置30は、上記振動電流変換装置1と同様に、半導体製造技術やレーザー加工技術をベースにしたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術と呼ばれる高精度三次元加工技術を用いてμサイズで作製される超小型発電モジュールである。
具体的に、この振動電流変換装置30は、支持部31と、この支持部31に片持ち支持された第1のカンチレバー32と、この第1のカンチレバー32と対向配置されると共に、支持部31に片持ち支持された第2のカンチレバー33とを備えている。
このうち、支持部31は、例えば直方体状のシリコンからなる。第1のカンチレバー32及び第2のカンチレバー33は、長尺状の弾性支持片からなり、互いに同じ向きに平行に並んで対向配置されると共に、支持部31と一体に形成されている。また、第1のカンチレバー32と第2のカンチレバー33とは、その基端側が支持部31に片持ち支持されることによって、その先端側が互いに近接又は離間する方向に振動可能となっている。
第1のカンチレバー32の先端側には、開口部34が設けられている。この開口部34は、後述するマグネット37を内側に進入可能とするものであり、第1のカンチレバー32を貫通する孔部によって形成されている。なお、開口部34は、図3において円形状を為しているが、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば楕円状や矩形状などであってもよい。
第1のカンチレバー32の上面には、開口部34の周囲に巻回されたコイル35が設けられている。このコイル35は、例えばニッケルや銅、金など導電性の金属薄膜からなり、フォトリソグラフィ技術などを用いて第1のカンチレバー32上にパターン形成されている。具体的に、このコイル35は、開口部34を中心にスパイラル状に巻回されてなるコイルパターン35aと、コイルパターン35aの内周側の端部から当該コイルパターン35aとは絶縁された状態で第1のカンチレバー32の基端側へと引き延ばされた引出し配線35bと、コイルパターン35aの外周側の端部から第1のカンチレバー32の基端側へと引き延ばされた引出し配線35cとを有している。また、内側及び外側の引出し配線35b,35cは、それぞれ支持部31の上面に設けられた電源回路36と電気的に接続されている。そして、この電源回路36は、コイル35に流れる電流を整流・平滑し、交流から直流へと変換して出力する。
一方、第2のカンチレバー33の第1のカンチレバー32と対向する面上には、マグネット37が設けられている。このマグネット37は、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)中にサマリウムコバルトの磁性粉末を分散させたものからなる。また、このマグネット37は、第1のカンチレバー32の開口部34の内側に進入可能に、第2のカンチレバー33の主面から上方に向かって円柱状に突出して設けられると共に、その上下方向においてN極とS極とが着磁されている。なお、マグネット37は、図3において円柱状を為しているが、開口部34の内側に進入可能な形状であれば、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば角柱状などであってもよい。
以上のような構造を有する振動電流変換装置30では、第1のカンチレバー32と第2のカンチレバー33との少なくとも一方又は両方が振動することにより、コイル6に誘導起電力を発生させることが可能である。すなわち、この振動電流変換装置30では、第1のカンチレバー32又は第2のカンチレバー33が振動することによって、コイル35の内側に進入可能なマグネット37がコイル35の軸心方向に相対移動することになる。この場合、コイル35を貫くマグネット37の磁束を大きく変化させることができるため、このコイル35に大きな誘導起電力を発生させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置30では、第1のカンチレバー32及び第2のカンチレバー33に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。さらに、第2のカンチレバー33に先端側に設けられたマグネット37を第1のカンチレバー32の開口部34の内側に進入可能に配置することで、装置の小型化を図ることが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置30において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態として図4に示す振動電流変換装置40について説明する。
この振動電流変換装置40は、上記振動電流変換装置30と同様に、半導体製造技術やレーザー加工技術をベースにしたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術と呼ばれる高精度三次元加工技術を用いてμサイズで作製される超小型発電モジュールであり、上記振動電流変換装置30を1つの変換セル(発電セル)41とし、この変換セル41を複数備えた構造を有している。
具体的に、この振動電流変換装置40は、支持部42と、この支持部42に片持ち支持された複数の第1のカンチレバー43と、これら第1のカンチレバー43と対向配置されると共に、支持部42に片持ち支持された複数の第2のカンチレバー44とを備えている。
このうち、支持部42は、例えば直方体状のシリコンからなる。第1のカンチレバー43及び第2のカンチレバー44は、長尺状の弾性支持片からなり、互いに同じ向きに平行に並んで対向配置されると共に、支持部42と一体に形成されている。また、第1のカンチレバー43と第2のカンチレバー44とは、それぞれの基端側が支持部42に片持ち支持されることによって、それぞれの先端側が互いに近接又は離間する方向に振動可能となっている。さらに、複数の第1及び第2のカンチレバー43,44は、当該カンチレバー43,44と直交する方向に所定の間隔で平行に並んで配置されると共に、固有振動数を異ならせるために、それぞれの長さを順次異ならせている。
各第1のカンチレバー43の先端側には、それぞれ開口部45が設けられている。この開口部45は、後述するマグネット48を内側に進入可能とするものであり、第1のカンチレバー43を貫通する孔部によって形成されている。なお、開口部45は、図4において円形状を為しているが、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば楕円状や矩形状などであってもよい。
各第1のカンチレバー43の上面には、開口部45の周囲に巻回されたコイル46が設けられている。このコイル46は、例えばニッケルや銅、金など導電性の金属薄膜からなり、フォトリソグラフィ技術などを用いて第1のカンチレバー43上にパターン形成されている。具体的に、このコイル46は、開口部45を中心にスパイラル状に巻回されてなるコイルパターン46aと、コイルパターン46aの内周側の端部から当該コイルパターン46aとは絶縁された状態で第1のカンチレバー43の基端側へと引き延ばされた引出し配線46bと、コイルパターン46aの外周側の端部から第1のカンチレバー43の基端側へと引き延ばされた引出し配線46cとを有している。
また、各第1のカンチレバー43の上面に設けられたコイル46は、互いに隣り合う内側の引出し配線46bと外側の引出し配線46cとが、それぞれ支持部42の上面に設けられた電源回路47と電気的に接続された構造を有している。そして、この電源回路47は、各コイル46に流れる電流を整流・平滑し、交流から直流へと変換して出力する。
一方、各第2のカンチレバー44の第1のカンチレバー43と対向する面上には、それぞれマグネット48が設けられている。このマグネット48は、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)中にサマリウムコバルトの磁性粉末を分散させたものからなる。また、このマグネット48は、第1のカンチレバー43の開口部45の内側に進入可能に、第2のカンチレバー44の主面から上方に向かって円柱状に突出して設けられると共に、その上下方向においてN極とS極とが着磁されている。なお、マグネット48は、図4において円柱状を為しているが、開口部45の内側に進入可能な形状であれば、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば角柱状などであってもよい。
この振動電流変換装置40では、上記振動電流変換装置30と同様の構成、すなわち、先端側に開口部45が設けられて、基端側が片持ち支持された第1のカンチレバー43と、第1のカンチレバー43と対向配置されると共に、基端側が片持ち支持された第2のカンチレバー44と、第1のカンチレバー43の開口部45の周囲に巻回されたコイル46と、第1のカンチレバー43の開口部45の内側に進入可能に第2のカンチレバー44の先端側に設けられたマグネット48とから1つの変換セル41が構成されている。そして、振動電流変換装置40では、このような変換セル41が複数並んだ構造を有することによって集積化が図られている。
以上のような構造を有する振動電流変換装置40では、各変換セル41の第1のカンチレバー43と第2のカンチレバー44との少なくとも一方又は両方が振動することにより、コイル46に誘導起電力を発生させることが可能である。すなわち、この振動電流変換装置40では、各変換セル41の第1のカンチレバー43又は第2のカンチレバー44が振動することによって、コイル46の内側に進入可能なマグネット48がコイル46の軸心方向に相対移動することになる。この場合、各変換セル41のコイル46を貫くマグネット48の磁束を大きく変化させることができるため、これらコイル46に大きな誘導起電力を発生させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置40では、各変換セル41の第1のカンチレバー43及び第2のカンチレバー44に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。さらに、各変換セル41の第2のカンチレバー44に先端側に設けられたマグネット48を第1のカンチレバー43の開口部45の内側に進入可能に配置することで、装置の小型化を図ることが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置40において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
さらに、この振動電流変換装置40では、固有振動数を異ならせた複数の変換セル41を備え、これら変換セル41の何れかのカンチレバー43,44を共振させることによって、幅広い振動の周波数に対応しながら、これらカンチレバー43,44を効率良く振動させることができ、これらの振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。したがって、この振動電流変換装置40では、上述した変換セル41を複数備えることによって、大きな起電力を得ることが可能である。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態として図5に示す振動電流変換装置50について説明する。
この振動電流変換装置50は、上記振動電流変換装置1と同様に、半導体製造技術やレーザー加工技術をベースにしたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術と呼ばれる高精度三次元加工技術を用いてμサイズで作製される超小型発電モジュールである。
具体的に、この振動電流変換装置50は、ベース51と、このベース51の一端から立ち上がり形成された支持部52と、この支持部52に片持ち支持された第1のカンチレバー53と、この第1のカンチレバー53と対向配置されると共に、支持部52に片持ち支持された第2のカンチレバー54とを備えている。
このうち、ベース51は、例えば矩形平板状のシリコンからなる。支持部52は、ベース51と一体に形成されると共に、ベース51の主面に対してほぼ直角に立ち上がり形成されている。第1のカンチレバー53及び第2のカンチレバー54は、長尺状の弾性支持片からなり、互いに同じ向きに平行に並んで対向配置されると共に、支持部52と一体に形成されている。また、第1のカンチレバー53と第2のカンチレバー54とは、その基端側が支持部52に片持ち支持されることによって、その先端側が互いに近接又は離間する方向に振動可能となっている。
第1のカンチレバー53及び第2のカンチレバー54の先端側には、それぞれ開口部55,56が設けられている。これら開口部55,56は、後述するマグネット59を内側に進入可能とするものであり、第1及び第2のカンチレバー53,54を貫通する孔部によって形成されている。なお、開口部55,56は、図5において円形状を為しているが、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば楕円状や矩形状などであってもよい。
第1のカンチレバー53及び第2のカンチレバー54の上面には、それぞれの開口部55,56の周囲に巻回された第1のコイル57A及び第2のコイル57Bが設けられている。これら第1及び第2のコイル57A,57Bは、例えばニッケルや銅、金など導電性の金属薄膜からなり、フォトリソグラフィ技術などを用いて第1及び第2のカンチレバー53,54上にそれぞれパターン形成されている。
具体的に、第1のコイル57Aは、開口部55を中心にスパイラル状に巻回されてなるコイルパターン57aと、コイルパターン57aの内周側の端部から当該コイルパターン57aとは絶縁された状態で第1のカンチレバー53の基端側へと引き延ばされた引出し配線57bと、コイルパターン57aの外周側の端部から第1のカンチレバー53の基端側へと引き延ばされた引出し配線57cとを有している。また、第1のカンチレバー53の内側及び外側の引出し配線57b,57cは、それぞれ支持部52の上面に設けられた電源回路58と電気的に接続されている。
一方、第2のコイル57Bも、第1のコイル57Aと同様に、開口部56を中心にスパイラル状に巻回されてなるコイルパターンと、コイルパターンの内周側の端部から当該コイルパターンとは絶縁された状態で第2のカンチレバー54の基端側へと引き延ばされた引出し配線と、コイルパターンの外周側の端部から第2のカンチレバー54の基端側へと引き延ばされた引出し配線とを有している。
また、第2のカンチレバー54の内側及び外側の引出し配線は、それぞれ支持部52内に形成された埋込み配線(図示せず。)と接続されると共に、これら埋込み配線を介して支持部52の上面に設けられた電源回路58と電気的に接続されている。そして、電源回路58は、これら第1のコイル57A及び第2のコイル57Bに流れる電流を整流・平滑し、交流から直流へと変換して出力する。
ベース51の主面上には、マグネット59が設けられている。このマグネット59は、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)中にサマリウムコバルトの磁性粉末を分散させたものからなる。また、このマグネット59は、第1及び第2のカンチレバー53,54の開口部55,56の内側に進入可能に、ベース51の主面から上方に向かって円柱状に突出して設けられると共に、その上下方向においてN極とS極とが着磁されている。なお、マグネット59は、図5において円柱状を為しているが、開口部55,56の内側に進入可能であれば、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば角柱状などであってもよい。
以上のような構造を有する振動電流変換装置50では、第1のカンチレバー53及び第2のカンチレバー54が振動することにより、第1のコイル57A及び第2のコイル57Bに誘導起電力を発生させることが可能である。すなわち、この振動電流変換装置50では、第1及び第2のカンチレバー53,54が振動することによって、第1及び第2のコイル57A,57Bの内側に進入可能なマグネット59が、これら第1及び第2のコイル57A,57Bの軸心方向に相対移動することになる。この場合、第1及び第2のコイル57A,57Bを貫くマグネット59の磁束を大きく変化させることができるため、これら第1及び第2のコイル57A,57Bに大きな誘導起電力を発生させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置50では、第1のカンチレバー53及び第2のカンチレバー54に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。さらに、第1及び第2のカンチレバー53,54の開口部55,56の内側にマグネット59を進入可能に配置することで、装置の小型化を図ることが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置50において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態として図6に示す振動電流変換装置60について説明する。
この振動電流変換装置60は、上記振動電流変換装置50と同様に、半導体製造技術やレーザー加工技術をベースにしたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術と呼ばれる高精度三次元加工技術を用いてμサイズで作製される超小型発電モジュールであり、上記振動電流変換装置50を1つの変換セル(発電セル)61とし、この変換セル61を複数備えた構造を有している。
具体的に、この振動電流変換装置60は、ベース62と、このベース62の一端から立ち上がり形成された支持部63と、この支持部63に片持ち支持された複数の第1のカンチレバー64と、これら第1のカンチレバー64と対向配置されると共に、支持部63に片持ち支持された複数の第2のカンチレバー65とを備えている。
このうち、ベース62は、例えば矩形平板状のシリコンからなる。支持部63は、ベース62と一体に形成されると共に、ベース62の主面に対してほぼ直角に立ち上がり形成されている。第1のカンチレバー64及び第2のカンチレバー65は、長尺状の弾性支持片からなり、互いに同じ向きに平行に並んで対向配置されると共に、支持部63と一体に形成されている。また、第1のカンチレバー64と第2のカンチレバー65とは、それぞれの基端側が支持部63に片持ち支持されることによって、それぞれの先端側が互いに近接又は離間する方向に振動可能となっている。さらに、複数の第1及び第2のカンチレバー64,65は、当該カンチレバー64,65と直交する方向に所定の間隔で平行に並んで配置されると共に、固有振動数を異ならせるために、それぞれの長さを順次異ならせている。
各第1のカンチレバー64及び第2のカンチレバー65の先端側には、それぞれ開口部66,67が設けられている。これら開口部66A,66Bは、後述するマグネット69を内側に進入可能とするものであり、第1及び第2のカンチレバー64,65を貫通する孔部によって形成されている。なお、開口部66A,66Bは、図6において円形状を為しているが、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば楕円状や矩形状などであってもよい。
各第1のカンチレバー64及び第2のカンチレバー65の上面には、それぞれの開口部66A,66Bの周囲に巻回された第1のコイル67A及び第2のコイル67Bが設けられている。これら第1及び第2のコイル67A,67Bは、例えばニッケルや銅、金など導電性の金属薄膜からなり、フォトリソグラフィ技術などを用いて第1及び第2のカンチレバー64,65上にそれぞれパターン形成されている。
具体的に、第1のコイル67Aは、開口部66Aを中心にスパイラル状に巻回されてなるコイルパターン67aと、コイルパターン67aの内周側の端部から当該コイルパターン67aとは絶縁された状態で第1のカンチレバー64の基端側へと引き延ばされた引出し配線67bと、コイルパターン67aの外周側の端部から第1のカンチレバー64の基端側へと引き延ばされた引出し配線67cとを有している。
また、各第1のカンチレバー64の上面に設けられた第1のコイル67Aは、互いに隣り合う内側の引出し配線67bと外側の引出し配線67cとが、それぞれ支持部63の上面に設けられた電源回路68と電気的に接続された構造を有している。
一方、第2のコイル67Bも、第1のコイル67Aと同様に、開口部66Bを中心にスパイラル状に巻回されてなるコイルパターン67aと、コイルパターン67aの内周側の端部から当該コイルパターン67aとは絶縁された状態で第2のカンチレバー65の基端側へと引き延ばされた引出し配線67bと、コイルパターン67aの外周側の端部から第2のカンチレバー65の基端側へと引き延ばされた引出し配線67cとを有している。
また、第2のカンチレバー65の内側及び外側の引出し配線67b,67cは、それぞれ支持部63内に形成された埋込み配線(図示せず。)と接続されると共に、これら埋込み配線を介して支持部63の上面に設けられた電源回路68と電気的に接続されている。そして、電源回路68は、これら各第1のコイル67A及び第2のコイル67Bに流れる電流を整流・平滑し、交流から直流へと変換して出力する。
ベース62の主面上には、複数のマグネット69が並んで設けられている。これらマグネット69は、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)中にサマリウムコバルトの磁性粉末を分散させたものからなる。また、これらマグネット69は、各第1及び第2のカンチレバー64,65の開口部66A,66Bの内側に進入可能に、ベース62の主面から上方に向かって円柱状に突出して設けられると共に、その上下方向においてN極とS極とが着磁されている。なお、マグネット69は、図6において円柱状を為しているが、開口部66A,66Bの内側に進入可能であれば、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば角柱状などであってもよい。
この振動電流変換装置60では、上記振動電流変換装置50と同様の構成、すなわち、先端側に開口部66Aが設けられて、基端側が片持ち支持された第1のカンチレバー64と、第1のカンチレバー64と対向配置されると共に、先端側に開口部66Bが設けられて、基端側が片持ち支持された第2のカンチレバー65と、第1のカンチレバー64の開口部66Aの周囲に巻回された第1のコイル67Aと、第2のカンチレバー65の開口部66Bの周囲に巻回された第2のコイル67Bと、第1及び第2のカンチレバー64,65の開口部66A,66Bの内側に進入可能に配置されたマグネット69とから1つの変換セル61が構成されている。そして、振動電流変換装置60では、このような変換セル61が複数並んだ構造を有することによって集積化が図られている。
以上のような構造を有する振動電流変換装置60では、各変換セル61の第1のカンチレバー64及び第2のカンチレバー65が振動することにより、第1のコイル67A及び第2のコイル67Bに誘導起電力を発生させることが可能である。すなわち、この振動電流変換装置60では、各変換セル61の第1及び第2のカンチレバー64,65が振動することによって、第1及び第2のコイル67A,67Bの内側に進入可能なマグネット69が、これら第1及び第2のコイル67A,67Bの軸心方向に相対移動することになる。この場合、第1及び第2のコイル67A,67Bを貫くマグネット69の磁束を大きく変化させることができるため、これら第1及び第2のコイル67A,67Bに大きな誘導起電力を発生させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置60では、各変換セル61の第1のカンチレバー64及び第2のカンチレバー65に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。さらに、各変換セル61の第1及び第2のカンチレバー64,65の開口部66A,66Bの内側にマグネット69を進入可能に配置することで、装置の小型化を図ることが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置60において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
さらに、この振動電流変換装置60では、固有振動数を異ならせた複数の変換セル61を備え、これら変換セル61の何れかの第1及び第2のカンチレバー64,65を共振させることによって、幅広い振動の周波数に対応しながら、これらカンチレバー64,65を効率良く振動させることができ、これらの振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。したがって、この振動電流変換装置60では、上述した変換セル61を複数備えることによって、大きな起電力を得ることが可能である。
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上記第1〜6の実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記振動電流変換装置20,40,60を構成する変換セル21,41,61の数については特に限定されるものではなく、任意に調整することが可能である。
また、上記振動電流変換装置20,40,60は、上記支持部23,42,52を挟んだ一方の側に上記複数の変換セル21,41,61が互いに同じ向きに並んで配置された構成に限らず、上記支持部23,42,52を挟んだ両側に上記複数の変換セル21,41,61が互いに逆向きに並んで配置された構成や、互いに対向する支持部23,42,52の両側に上記複数の変換セル21,41,61が互いに逆向きに並んで配置された構成とすることも可能である。
さらに、上記振動電流変換装置50,60を構成する第1のカンチレバー53,64及び第2のカンチレバー54,65については、これら一対のものに限らず、先端側の開口部の周囲にコイルが巻回されたカンチレバーを積層方向に複数(2つ以上)並べて配置した構成とすることも可能である。
また、上記振動電流変換装置30,40,50,60を構成する第1のカンチレバー32,43,53,64と第2のカンチレバー33,44,54,65とは、互いに同じ向きに平行に並んで対向配置されると共に、それぞれの基端側を連結する連結部を介して支持部31,42,52,63と一体に形成されている構成としてもよい。
この場合、第1のカンチレバー32,43,53,64と第2のカンチレバー33,44,54,65とが連結部を介して連結されることにより、いわゆる音叉型となり、これら第1のカンチレバー32,43,53,64と第2のカンチレバー33,44,54,65とが互いに共鳴しながら大きく振動することになる。したがって、このような構成とした場合、大きな起電力を得ることが可能である。
例えば図7に示す振動電流変換装置50Aは、上記振動電流変換装置50を音叉型に変更した場合を例示したものである。なお、この振動電流変換装置50Aでは、上記振動電流変換装置50と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
この振動電流変換装置50Aでは、図7に示すように、第1のカンチレバー53及び第2のカンチレバー54が、互いに同じ向きに平行に並んで対向配置されると共に、それぞれの基端側を連結する連結部50aを介して支持部52と一体に形成されている。また、第1のカンチレバー53と第2のカンチレバー54とは、その基端側が連結部50aを介して連結されることにより、いわゆる音叉型となっている。これにより、第1のカンチレバー53と第2のカンチレバー54とは、その先端側が互いに近接又は離間する方向に共鳴しながら振動可能となっている。それ以外は、上記振動電流変換装置50とほぼ同様の構造を有している。
以上のような構造を有する振動電流変換装置50Aでは、第1のカンチレバー53及び第2のカンチレバー54が振動することにより、第1のコイル57A及び第2のコイル57Bに誘導起電力を発生させることが可能である。すなわち、この振動電流変換装置50Aでは、第1及び第2のカンチレバー53,54が振動することによって、第1及び第2のコイル57A,57Bの内側に進入可能なマグネット59が、これら第1及び第2のコイル57A,57Bの軸心方向に相対移動することになる。この場合、第1及び第2のコイル57A,57Bを貫くマグネット59の磁束を大きく変化させることができるため、これら第1及び第2のコイル57A,57Bに大きな誘導起電力を発生させることが可能である。
さらに、この振動電流変換装置50Aでは、第1のカンチレバー53と第2のカンチレバー54とが連結部50aを介して連結されることにより、いわゆる音叉型となっており、これら第1のカンチレバー53と第2のカンチレバー54とが互いに共鳴しながら大きく振動するため、大きな起電力を得ることが可能である。
以上のように、この振動電流変換装置50Aでは、第1のカンチレバー53及び第2のカンチレバー54に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。さらに、第1及び第2のカンチレバー53,54の開口部55,56の内側にマグネット59を進入可能に配置することで、装置の小型化を図ることが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置50Aにおいて、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
また、上記第1〜6の実施形態では、カンチレバーの片面にコイルが配置された構成となっているが、カンチレバーの両面にコイルが配置された構成としてもよい。
例えば図8に示す振動電流変換装置1Aは、上記振動電流変換装置1を構成するカンチレバー4の両面にコイル6A,6Bを配置した場合を例示したものである。この場合、カンチレバー4の両面に配置されたコイル6A,6Bに大きな誘導起電力を発生させることが可能である。なお、この図8に示す振動電流変換装置1Aにおいて、上記振動電流変換装置1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
また、上記第1〜6の実施形態では、カンチレバーの先端側にオモリが配置された構成としてもよい。また、オモリについては、カンチレバーと一体に形成されたものでも、カンチレバーの先端に別体に取り付けられたものであってもよい。
例えば図9に示す振動電流変換装置1Bは、上記振動電流変換装置1を構成するカンチレバー4の先端にオモリ9を配置した場合を例示したものである。この場合、カンチレバー4の振幅を増加させることによって、大きな起電力を得ることが可能である。また、オモリ9の重量を変更することで、幅広い振動の周波数に対応させることが可能である。なお、この図9に示す振動電流変換装置1Bにおいて、上記振動電流変換装置1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
(振動電流変換装置の製造方法)
次に、本発明を適用した振動電流変換装置の製造方法として、上記振動電流変換装置1を製造する場合を例に挙げて説明する。
上記振動電流変換装置1は、図10に示すように、ベース2と、このベース2の一端から立ち上がり形成された下側支持部3aと、ベース2の面上に形成されたマグネット8とを含む下側基板11と、先端側に開口部5が形成されたカンチレバー4と、このカンチレバー4の基端側に形成された上側支持部3bと、この上側支持部3bの面上に形成されたコイル6及び電源回路7とを含む上側基板12とを用意し、カンチレバー4の開口部5からマグネット8が臨むように下側支持部3aと上側支持部3bとの位置を合わせて接合し、これら下側基板11と上側基板12とを一体化することで作製される。
また、上記振動電流変換装置1を製造する際は、図11(a),(b)に示すように、上記下側基板11となる部分が同一面上に複数形成された1枚の下側母基板11Aと、図12(a),(b)に示すように、上記上側基板12となる部分が同一面上に複数形成された1枚の上側母基板12Aとを用意した後に、図13(a),(b)に示すように、これら下側母基板11Aと上側母基板12Aとを接合した接合ブロック13を個々のチップとして切り出すことによって、複数の振動電流変換装置1を一括して作製することが可能である。
なお、上記下側母基板11Aにはガラス基板を用い、上記上側母基板12Aにはシリコン基板を用いることができ、これら下側母基板11Aと上側母基板12Aとの接合には陽極接合を用いることができる。また、下側母基板11A及び上側母基板12Aには、個々のチップに分割し易くするため、各チップの分割線に沿った溝部14,15を形成してもよい。また、上記下側基板11のうちベース2と下側支持部3aとの間の段差は、例えばダイシングやエッチング、レーザー加工などを用いて形成することができる。また、上記マグネット8をベース2に取り付ける際は、例えばマイクロマニピュレータなどを用いることができる。なお、作製された振動電流変換装置1の大きさは、例えば最大長さが100〜1000μm程度、最大厚みが0.5〜10μm程度である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置1の製造方法では、上述したMEMS技術を用いて、複雑な工程を経ることなく、大幅に小型化された振動電流変換装置1を精度良く一括して作製することが可能である。
なお、本例では、上記振動電流変換装置1を製造する場合を例に挙げて説明したが、その他の振動電流変換装置についても、同様に一括作製することが可能である。具体的に、上記振動電流変換装置30,50(50A)については、下側(母)基板11(11A)の上に、上記第1のカンチレバー32,53側の構成を含む第1の(母)基板と、上記第2のカンチレバー33,54側の構成を含む第2の(母)基板とを順次積層した接合ブロックを作製し、この接合ブロックを個々のチップとして切り出すことで、一括して作製することが可能である。また、上記振動電流変換装置20,40,60については、上述した接合ブロックを複数の変換セル21,41,61を備えたチップ毎に切断することで、一括して作製することが可能である。
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態として図14に示す振動電流変換装置70について説明する。
この振動電流変換装置70は、図14に示すように、半導体製造技術やレーザー加工技術をベースにしたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術と呼ばれる高精度三次元加工技術を用いてμサイズで作製される超小型発電モジュールである。
具体的に、この振動電流変換装置70は、ベース71と、このベース71の面上にバネ72を介して取り付けられた振動子73と、振動子73の面上に配置されたコイル74と、ベース71の面上に配置されたマグネット75とを備えている。
このうち、ベース71は、例えば矩形平板状のシリコンからなる。バネ72は、数十μm程度の長さで軸心方向に螺旋状に巻回されたコイルバネからなる。振動子73は、例えば長尺状のシリコン基板からなる。この振動子73は、ベース2の主面に対向して配置されると共に、その一端側がバネ72を介して片持ちの状態で支持されている。これにより、振動子73の他端側は、ベース71の主面に対して近接又は離間する方向に振動可能となっている。
コイル74は、例えばニッケルや銅、金など導電性の金属薄膜からなり、フォトリソグラフィ技術などを用いて振動子73上にパターン形成されている。具体的に、このコイル74は、スパイラル状に巻回されてなるコイルパターン74aと、コイルパターン74aの内周側の端部から当該コイルパターン74aとは絶縁された状態で振動子73の一端側へと引き延ばされた引出し配線74bと、コイルパターン74aの外周側の端部から振動子73の一端側へと引き延ばされた引出し配線74cとを有している。また、内側及び外側の引出し配線74b,74cは、図示を省略するものの、ワイヤーボンディング等によりベース71の上面に設けられた電源回路と電気的に接続されている。そして、この電源回路は、コイル74に流れる電流を整流・平滑し、交流から直流へと変換して出力する。
マグネット75は、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)中にサマリウムコバルトの磁性粉末を分散させたものからなる。また、このマグネット75は、直方体状に形成されて、その長手方向が振動子73の長手方向と直交するように振動子73の他端側近傍に配置されると共に、その短手方向においてN極とS極とが着磁されている。なお、マグネット8は、図14において直方体状を為しているが、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能である。また、着磁方向についても変更することが可能である。さらに、マグネット75の配置についても、適宜変更して実施することが可能である。
以上のような構造を有する振動電流変換装置70では、振動子73が振動することにより、コイル74に誘導起電力を発生させることが可能である。具体的に、この振動電流変換装置70では、ベース71の面上にバネ72を介して取り付けられた振動子73が振動する構成のため、この振動子73が振動するときの振幅を大きく確保することができ、また、振動の減衰が遅いために振動子73が長期間に亘って振動することになる。
これにより、マグネット75がコイル74の軸心方向に相対移動する距離が大きく変化することになり、コイル74を貫くマグネット75の磁束も大きく変化させることができるため、コイル74に大きな誘導起電力を発生させると共に、このような誘導起電力を長時間に亘って発生させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置70では、振動子73に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置70において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態として図15に示す振動電流変換装置80について説明する。
なお、この振動電流変換装置80では、上記振動電流変換装置70と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
この振動電流変換装置80では、図15に示すように、振動子73の両端側が一対のバネ72を介して両持ちの状態で支持されている。また、マグネット75は、その長手方向が振動子73の長手方向と平行となるように振動子73の近傍に配置されている。それ以外は、上記振動電流変換装置70とほぼ同様の構造を有している。
以上のような構造を有する振動電流変換装置80では、振動子73が振動することにより、コイル74に誘導起電力を発生させることが可能である。具体的に、この振動電流変換装置70では、ベース71の面上に一対のバネ72を介して取り付けられた振動子73が振動する構成のため、この振動子73が振動するときの振幅を大きく確保することができ、また、振動の減衰が遅いために振動子73が長期間に亘って振動することになる。
これにより、マグネット75がコイル74の軸心方向に相対移動する距離が大きく変化することになり、コイル74を貫くマグネット75の磁束も大きく変化させることができるため、コイル74に大きな誘導起電力を発生させると共に、このような誘導起電力を長時間に亘って発生させることが可能である。特に、ベース71の面上に一対のバネ72を介して両持ちの状態で支持される振動子73は、片持ちの状態で支持された場合に比べて安定した振動特性を得ると共に、その振動数を向上させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置80では、振動子73に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置80において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
なお、本発明を適用した振動電流変換装置では、上記振動電流変換装置70,80を1つの変換セル(発電セル)とし、この変換セルをベース上に複数備えた構造としてもよい。これにより、振動電流変換装置の集積化を図ることが可能である。さらに、これら複数の変換セルは、固有振動数を異ならせるために、それぞれの振動子73の長さを順次異ならせてもよい。これにより、複数の変換セルの何れかの振動子73を共振させることによって、幅広い振動の周波数に対応しながら、これら振動子73を効率良く振動させることができ、これらの振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。したがって、この振動電流変換装置では、上述した変換セルを複数備えることによって、大きな起電力を得ることが可能である。
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態として図16に示す振動電流変換装置90について説明する。
なお、この振動電流変換装置90では、上記振動電流変換装置80と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
この振動電流変換装置90では、図16に示すように、振動子73に開口部76が形成されると共に、上記コイル74の代わりに、この開口部76の周囲に巻回されたコイル77が配置されている。また、ベース71の主面上には、上記マグネット75の代わりに、上記振動子73の開口部76の内側に進入可能なマグネット78が配置されている。それ以外は、上記振動電流変換装置80とほぼ同様の構造を有している。
具体的に、開口部76は、マグネット78を内側に進入可能とするものであり、振動子73の略中央部を貫通する孔部によって形成されている。なお、開口部76は、図16において円形状を為しているが、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば楕円状や矩形状などであってもよい。
コイル77は、例えばニッケルや銅、金など導電性の金属薄膜からなり、フォトリソグラフィ技術などを用いてカンチレバー4上にパターン形成されている。具体的に、このコイル77は、開口部76を中心にスパイラル状に巻回されてなるコイルパターン77aと、コイルパターン77aの内周側の端部から当該コイルパターン77aとは絶縁された状態で振動子73の一端側へと引き延ばされた引出し配線77bと、コイルパターン77aの外周側の端部から振動子73の一端側へと引き延ばされた引出し配線77cとを有している。また、内側及び外側の引出し配線77b,77cは、図示を省略するものの、ワイヤーボンディング等によりベース71の上面に設けられた電源回路と電気的に接続されている。そして、この電源回路は、コイル74に流れる電流を整流・平滑し、交流から直流へと変換して出力する。
マグネット78は、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)中にサマリウムコバルトの磁性粉末を分散させたものからなる。また、このマグネット78は、振動子73の開口部76の内側に進入可能に、ベース71の主面から上方に向かって円柱状に突出して設けられると共に、その上下方向においてN極とS極とが着磁されている。なお、マグネット78は、図16において円柱状を為しているが、開口部76の内側に進入可能であれば、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば角柱状などであってもよい。
以上のような構造を有する振動電流変換装置90では、振動子73が振動することにより、コイル74に誘導起電力を発生させることが可能である。具体的に、この振動電流変換装置90では、ベース71の面上に一対のバネ72を介して取り付けられた振動子73が振動する構成のため、この振動子73が振動するときの振幅を大きく確保することができ、また、振動の減衰が遅いために振動子73が長期間に亘って振動することになる。
これにより、マグネット75がコイル74の軸心方向に相対移動する距離が大きく変化することになり、コイル74を貫くマグネット75の磁束も大きく変化させることができるため、コイル74に大きな誘導起電力を発生させると共に、このような誘導起電力を長時間に亘って発生させることが可能である。特に、ベース71の面上に一対のバネ72を介して両持ちの状態で支持される振動子73は、片持ちの状態で支持された場合に比べて安定した振動特性を得ると共に、その振動数を向上させることが可能である。
さらに、この振動電流変換装置90では、コイル77の内側に進入可能なマグネット78がコイル77の軸心方向に相対移動することになる。この場合、コイル77を貫くマグネット78の磁束を大きく変化させることができるため、このコイル77に大きな誘導起電力を発生させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置80では、振動子73に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。さらに、振動子73の開口部76の内側にマグネット78を進入可能に配置することで、装置の小型化を図ることが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置80において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
(第10の実施形態)
次に、第10の実施形態として図17に示す振動電流変換装置100について説明する。
なお、この振動電流変換装置100では、上記振動電流変換装置90と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
この振動電流変換装置100は、上記振動電流変換装置90を1つの変換セル(発電セル)101とし、この変換セル101をベース71A上に複数備えた構造を有している。さらに、これら複数の変換セル101は、所定の間隔で平行に並んで配置されると共に、固有振動数を異ならせるために、それぞれの振動子73の長さを順次異ならせている。それ以外は、上記振動電流変換装置90とほぼ同様の構造を有している。
以上のような構造を有する振動電流変換装置100では、このような変換セル101が複数並んだ構造を有することによって集積化が図られている。そして、この振動電流変換装置100では、各変換セル101の振動子73が振動することにより、コイル74に誘導起電力を発生させることが可能である。具体的に、この振動電流変換装置100では、各変換セル21のベース71Aの面上に一対のバネ72を介して取り付けられた振動子73が振動する構成のため、これら振動子73が振動するときの振幅を大きく確保することができ、また、振動の減衰が遅いために振動子73が長期間に亘って振動することになる。
これにより、各変換セル101のマグネット75がコイル74の軸心方向に相対移動する距離が大きく変化することになり、コイル74を貫くマグネット75の磁束も大きく変化させることができるため、コイル74に大きな誘導起電力を発生させると共に、このような誘導起電力を長時間に亘って発生させることが可能である。特に、各変換セル101のベース71の面上に一対のバネ72を介して両持ちの状態で支持される振動子73は、片持ちの状態で支持された場合に比べて安定した振動特性を得ると共に、その振動数を向上させることが可能である。
さらに、この振動電流変換装置100では、各変換セル101のコイル77の内側に進入可能なマグネット78がコイル77の軸心方向に相対移動することになる。この場合、各変換セル101のコイル77を貫くマグネット78の磁束を大きく変化させることができるため、これらコイル77に大きな誘導起電力を発生させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置100では、各変換セル101の振動子73に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。さらに、振動子73の開口部76の内側にマグネット78を進入可能に配置することで、装置の小型化を図ることが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置100において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
さらに、この振動電流変換装置100では、固有振動数を異ならせた複数の変換セル101を備え、これら変換セル101の何れかの振動子73を共振させることによって、幅広い振動の周波数に対応しながら、これら振動子73を効率良く振動させることができ、これらの振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。したがって、この振動電流変換装置100では、上述した変換セル101を複数備えることによって、大きな起電力を得ることが可能である。
(第11の実施形態)
次に、第11の実施形態として図18に示す振動電流変換装置110について説明する。
この振動電流変換装置110は、図18に示すように、半導体製造技術やレーザー加工技術をベースにしたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術と呼ばれる高精度三次元加工技術を用いてμサイズで作製される超小型発電モジュールである。
具体的に、この振動電流変換装置110は、ベース111と、ベース111の面上にバネ112Aを介して取り付けられた第1の振動子113Aと、第1の振動子113Aと対向配置されると共に、ベース111の面上にバネ112Bを介して取り付けられた第2の振動子113Bと、第1の振動子113Aの面上に配置された第1のコイル114Aと、第2の振動子113Bの面上に配置された第2のコイル114Bと、ベース111の面上に配置されたマグネット115とを備えている。
このうち、ベース111は、例えば矩形平板状のシリコンからなる。バネ112A,112Bは、数十μm程度の長さで軸心方向に螺旋状に巻回されたコイルバネからなり、第1の振動子113A側のバネ112Aよりも第2の振動子113B側のバネ112Bが長尺に形成されている。
第1及び第2の振動子113A,113Bは、例えば長尺状のシリコン基板からなり、第1の振動子113Aよりも第2の振動子113Bが長尺に形成されている。第1の振動子113Aは、ベース111の主面に対向して配置されると共に、その両端側が一対のバネ112Aを介して両持ちの状態で支持されている。一方、第2の振動子113Bは、第1の振動子113Aの上方に位置して第1の振動子113Aと平行に並んで配置されると共に、第1の振動子113Aの外側に位置して、その両端側が一対のバネ112Bを介して両持ちの状態で支持されている。これにより、第2の振動子113Bの下方に第1の振動子113Aが位置すると共に、第1の振動子113Aと第2の振動子113Bとが積層された状態となっている。
また、第1及び第2の振動子113A,113Bの略中央部には、開口部116A,116Bが設けられている。これら開口部116A,116Bは、後述するマグネット115を内側に進入可能とするものであり、第1及び第2の振動子113A,113Bを貫通する孔部によって形成されている。なお、開口部116A,116Bは、図18において円形状を為しているが、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば楕円状や矩形状などであってもよい。
第1及び第2のコイル114A,114Bは、例えばニッケルや銅、金など導電性の金属薄膜からなり、フォトリソグラフィ技術などを用いて第1及び第2の振動子113A,113B上にパターン形成されている。具体的に、第1及び第2のコイル114A,114Bは、スパイラル状に巻回されてなるコイルパターン114aと、コイルパターン114aの内周側の端部から当該コイルパターン114aとは絶縁された状態で第1及び第2の振動子113A,113Bの一端側へと引き延ばされた引出し配線114bと、コイルパターン114aの外周側の端部から第1及び第2の振動子113A,113Bの一端側へと引き延ばされた引出し配線114cとを有している。また、内側及び外側の引出し配線114b,114cは、図示を省略するものの、ワイヤーボンディング等によりベース111の上面に設けられた電源回路と電気的に接続されている。そして、この電源回路は、第1及び第2のコイル114A,114Bに流れる電流を整流・平滑し、交流から直流へと変換して出力する。
マグネット115は、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)中にサマリウムコバルトの磁性粉末を分散させたものからなる。また、このマグネット115は、第1及び第2の振動子113A,113Bの開口部116A,116Bの内側に進入可能に、ベース111の主面から上方に向かって円柱状に突出して設けられると共に、その上下方向においてN極とS極とが着磁されている。なお、マグネット115は、図18において円柱状を為しているが、開口部116A,116Bの内側に進入可能であれば、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば角柱状などであってもよい。
以上のような構造を有する振動電流変換装置110では、第1及び第2の振動子113A,113Bが振動することにより、第1及び第2のコイル114A,114Bに誘導起電力を発生させることが可能である。具体的に、この振動電流変換装置110では、ベース111の面上にバネ112Aを介して取り付けられた第1の振動子113Aと、第1の振動子113Aと対向配置されると共に、ベース111の面上にバネ112Bを介して取り付けられた第2の振動子113Bとが振動する構成のため、これら第1及び第2の振動子113A,113Bが振動するときの振幅を大きく確保することができ、また、振動の減衰が遅いために第1及び第2の振動子113A,113Bが長期間に亘って振動することになる。
これにより、マグネット115が第1及び第2のコイル114A,114Bの軸心方向に相対移動する距離が大きく変化することになり、第1及び第2のコイル114A,114Bを貫くマグネット115の磁束も大きく変化させることができるため、第1及び第2のコイル114A,114Bに大きな誘導起電力を発生させると共に、このような誘導起電力を長時間に亘って発生させることが可能である。特に、ベース111の面上に一対のバネ112A,112Bを介して両持ちの状態で支持される第1及び第2の振動子113A,113Bは、片持ちの状態で支持された場合に比べて安定した振動特性を得ると共に、その振動数を向上させることが可能である。
さらに、この振動電流変換装置110では、第1及び第2のコイル114A,114Bの内側に進入可能なマグネット115が第1及び第2のコイル114A,114Bの軸心方向に相対移動することになる。この場合、第1及び第2のコイル114A,114Bを貫くマグネット115の磁束を大きく変化させることができるため、これら第1及び第2のコイル114A,114Bに大きな誘導起電力を発生させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置110では、第1及び第2の振動子113A,113Bに生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。さらに、第1及び第2の振動子113A,113Bの開口部116A,116Bの内側にマグネット115を進入可能に配置することで、装置の小型化を図ることが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置110において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
さらに、この振動電流変換装置110では、第1の振動子113Aと第2の振動子113Bとの長さが異なるため、その固有振動数も異なっている。この場合、何れかの振動子113A,113Bを共振させることによって、幅広い振動の周波数に対応しながら、これら振動子113A,113Bを効率良く振動させることができ、これらの振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。したがって、この振動電流変換装置110では、上述した長さの異なる第1及び第2の振動子113A,113Bを備えることによって、大きな起電力を得ることが可能である。
なお、本発明を適用した振動電流変換装置では、上記振動電流変換装置110を1つの変換セル(発電セル)とし、この変換セルをベース上に複数備えた構造としてもよい。これにより、振動電流変換装置の集積化を図ることが可能である。さらに、これら複数の変換セルは、固有振動数を異ならせるために、それぞれ第1及び第2の振動子113A,113Bの長さを順次異ならせてもよい。これにより、複数の変換セルの何れかの第1及び第2の振動子113A,113Bを共振させることによって、幅広い振動の周波数に対応しながら、これら第1及び第2の振動子113A,113Bを効率良く振動させることができ、これらの振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。したがって、この振動電流変換装置では、上述した変換セルを複数備えることによって、大きな起電力を得ることが可能である。
(第12の実施形態)
次に、第12の実施形態として図19に示す振動電流変換装置120について説明する。
この振動電流変換装置120は、図19に示すように、ベース121と、ベース121の面上にバネ122を介して取り付けられると共に、開口部123が設けられた振動子124と、振動子124の開口部123の内側に進入可能にベース121の面上に配置されたコア125と、コア125の周囲に巻回されたコイル126とを備えている。
このうち、ベース121は、例えば矩形平板状のシリコンからなる。バネ122は、数十μm程度の長さで軸心方向に螺旋状に巻回されたコイルバネからなる。開口部123は、振動子124の略中央部を貫通する孔部によって形成されている。なお、開口部123は、図19において円形状を為しているが、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば楕円状や矩形状などであってもよい。
振動子124は、マグネットを含むものであり、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)中にサマリウムコバルトの磁性粉末を分散させたものを長尺状に形成したものからなり、その厚み方向においてN極とS極とが着磁されている。そして、この振動子124は、ベース121の主面に対向して配置されると共に、その両端側が一対のバネ122を介して両持ちの状態で支持されている。
コア125は、例えば鉄粉等を固めたものや鉄心などの強磁性体からなり、振動子124の開口部123の内側に進入可能に、ベース121の主面から上方に向かって円柱状に突出して設けられている。なお、コア125は、図19において円柱状を為しているが、開口部123の内側に進入可能であれば、このような形状に必ずしも限定されるものではなく、例えば角柱状などであってもよい。
コイル126は、銅等の線材からなり、コア125の外周面に螺旋状に巻回されてなる。また、このコイルの両端は、図示を省略するものの、ベース121の上面に設けられた電源回路と電気的に接続されている。そして、この電源回路は、コイル126に流れる電流を整流・平滑し、交流から直流へと変換して出力する。
以上のような構造を有する振動電流変換装置120では、マグネットを含む振動子124が振動することにより、コア125の周囲に巻回されたコイル126に誘導起電力を発生させることが可能である。具体的に、この振動電流変換装置120では、ベース121の面上にバネ122を介して取り付けられた振動子124がマグネットを含み、この振動子124の開口部123の内側に進入可能にコア125の周囲に巻回されたコイル126が配置された構成のため、この振動子124が振動するときの振幅を大きく確保することができ、また、振動の減衰が遅いために振動子124が長期間に亘って振動することになる。
これにより、振動子124の開口部123の内側に進入可能なコア125が軸心方向に相対移動する距離が大きく変化することになり、コア125の周囲に巻回されたコイル126を貫くマグネットの磁束も大きく変化させることができるため、コイル126に大きな誘導起電力を発生させると共に、このような誘導起電力を長時間に亘って発生させることが可能である。特に、ベース121の面上に一対のバネ122を介して両持ちの状態で支持される振動子124は、片持ちの状態で支持された場合に比べて安定した振動特性を得ると共に、その振動数を向上させることが可能である。
以上のように、本発明を適用した振動電流変換装置120では、振動子124に生じる振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。さらに、振動子124の開口部123の内側にコア125の周囲に巻回されたコイル126を進入可能に配置することで、装置の小型化を図ることが可能である。したがって、本発明によれば、このようなMEMS技術を用いて作製される振動電流変換装置120において、更なる小型化及び変換効率(発電効率)の向上を図ることが可能である。
なお、本発明を適用した振動電流変換装置では、上記振動電流変換装置120を1つの変換セル(発電セル)とし、この変換セルをベース上に複数備えた構造としてもよい。これにより、振動電流変換装置の集積化を図ることが可能である。さらに、これら複数の変換セルは、固有振動数を異ならせるために、それぞれの振動子124の長さを順次異ならせてもよい。これにより、複数の変換セルの何れかの振動子124を共振させることによって、幅広い振動の周波数に対応しながら、これら振動子124を効率良く振動させることができ、これらの振動を電流(電力)へと効率良く変換することが可能である。したがって、この振動電流変換装置では、上述した変換セルを複数備えることによって、大きな起電力を得ることが可能である。
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上記第7〜12の実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記第7〜12の実施形態では、上記バネ72,112A,112B,122として、コイルバネを用いた構成となっているが、振動子73,113A,113B,124を振動可能に支持するものであれば、このようなコイルバネを用いた構成に必ずしも限定されるものではない。
例えば図20に示す振動電流変換装置120Aは、上記振動電流変換装置120を構成するバネ122の代わりに、金属等からなる線材を折り曲げることにより形成されたバネ127を配置した場合を例示したものである。この場合も、バネ127を介して振動子124を振動可能に支持することが可能である。
また、上記第7〜12の実施形態では、振動子73,113A,113B,124の一端又は両端側がバネ72,112A,112B,122を介して振動可能に支持された構成となっているが、例えば振動子73,113A,113B,124の中央部分をバネを介して振動可能に支持する構成としてもよく、バネの配置や数についても適宜変更して実施することが可能である。
また、本発明では、カンチレバー又は振動子の固有振動数を異ならせるため、これらカンチレバー又は振動子の長さを調整したものに必ずしも限定されるものではなく、例えばカンチレバー又は振動子を同一形状としながら、これらカンチレバー又は振動子の材質や重量等を変更することで、互いの固有振動数を異ならせて幅広い振動の周波数に対応させることが可能である。
また、本発明では、上記何れかの実施形態により開示された構成を適宜組み合わせたものを採用することが可能である。