JP2013156098A - 圧縮状態生成用ターゲット及び核融合ターゲット。 - Google Patents

圧縮状態生成用ターゲット及び核融合ターゲット。 Download PDF

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Abstract

【課題】従来より媒体を圧縮可能な技術の要請がある。
【解決手段】一実施形態に係る圧縮状態生成用ターゲット1Aは、所定面10aに加えられた衝撃により生成された衝撃波が伝搬される衝撃波伝搬媒体10と、衝撃波伝搬媒体10が内部に充填される充填領域30を形成する充填領域形成部20と、を備える。充填領域30は、所定面10aへの衝撃の付与方向に向けて先細りした先細り部を有し、先細り部は、内側に向けて湾曲した壁面311を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧縮状態生成用ターゲット及び核融合ターゲットに関する。
高圧・高密度状態は、惑星物理の研究、新物質創成及び新エネルギー生成など物理学分野の種々の研究に資する。高密度状態は、衝撃波によって所定の媒体を圧縮し高圧状態を形成することによって生成され得る。例えば、非特許文献1に記載されているような核融合技術では、核融合燃料にエネルギー線を照射して圧縮して高圧・高密度状態にすることによって核融合反応を引き起こす。
TANAKAKazuo et al., "Fast Ignitor Research with Use of Ultra-Intense LaserSystem", プラズマ・核融合学会誌第75巻第4号, p.452-458 (1999)
近年、基礎物理の解明やエネルギー生成のために、媒体を従来より圧縮する技術が求められていた。
本発明の一側面に係る圧縮状態生成用ターゲットは、所定面に加えられた衝撃により生成された衝撃波が伝搬される衝撃波伝搬媒体と、衝撃波伝搬媒体が内部に充填される充填領域を形成する充填領域形成部と、を備える。上記充填領域は、所定面への衝撃の付与方向に向けて先細りした先細り部を有し、先細り部は、内側に向けて湾曲した壁面を有する。
この構成では、充填領域形成部に充填された衝撃波伝搬媒体の所定面に衝撃が付与されると、衝撃波伝搬媒体内を衝撃波が伝搬する。衝撃波伝搬媒体が充填される充填領域は、先細り部を有しているので、衝撃波は収束する。先細り部は、内側に向けて湾曲した壁面を有することから、衝撃波伝搬媒体中を伝搬する衝撃波が通過する面の面積は急激に減少するので、衝撃波伝搬媒体が衝撃波によってより圧縮される。その結果、高圧・高密度状態が達成され得る。
上記先細り部の断面において、上記壁面は、先細り部における最小幅の位置を基点とし、基点から所定面側に向けて延ばした軸線上における基点からの位置uでの壁面までの距離をvとしたとき、vが、
v=c+c(n−1)/2
(ただし、nは3より大きい数、c及びcは定数)、
を満たす形状であることが好ましい。
このような形状であることによって、より高い圧力・密度状態が達成され得る
媒体充填部の形状の例は、ラッパ状である。
上記充填領域形成部は、第1の壁部と、第1の壁部に対して対向して配置される第2の壁部とを有し得る。この場合、第1の壁部と第2の壁部との間が充填領域であり、第1及び第2の壁部における内壁面は、互いの方向に向けて湾曲しており、充填領域に充填された衝撃波伝搬媒体の側面が所定面であり、充填領域のうち所定面から第1及び第2の壁部の内壁面の最近接部までの領域を規定する領域が先細り部である。
本発明の他の側面は、核融合燃料に対してエネルギー線を照射することによって核融合反応を点火させるために用いられる核融合ターゲットに係る。この核融合ターゲットは、核融合の点火部となる第1の燃料部と、第1の燃料部の外側に離して配置される第2の燃料部と、第2の燃料部の外周上に設けられるアブレータ部と、第1及び第2の燃料部並びにアブレータ部を収容しており、開放端部を有する収容部と、を備える。上記収容部は、開放端部側と反対側に向けて先細りしており、開放端部側からアブレータ部、第2の燃料部及び第1の燃料部が配置されており、第1の燃料部は、収容部において、開放端部と反対側の端部側に充填されており、収容部のうち、第1の燃料部が充填されている領域の壁面は、内側に向けて湾曲している。
上記構成では、アブレータ部にエネルギー線が照射されると、アブレータ部がアブレーションをおこす。それによって、第2の燃料部が、第1の燃料部に向けて加速され、第1の燃料部に衝突する。第1の燃料部内には、第2の燃料部の衝撃によって、衝撃波が生じる。この衝撃波は、収容部の先細した端部に向けて収束しながら伝搬する。収容部のうち、第1の燃料部が充填されている領域の壁面は、内側に向けて湾曲していることから、第1の燃料部を伝搬する衝撃波が通過する面の面積は急激に減少する。その結果、第1の燃料部が衝撃波によってより圧縮される。その結果、高圧・高密度状態が達成され、核融合の点火が生じ得る。
本発明によれば、媒体を従来より圧縮する技術を提供できる。
一実施形態に係る圧縮状態生成用ターゲットの斜視図である。 図1のII−II線に沿った断面図である。 充填領域の断面を模式的に示す図面である。 n=9の場合について、衝撃波の軌跡と、衝撃波による衝撃波伝搬媒体の素片の軌跡を示す図面である。 n=9の場合について、衝撃波伝搬媒体の密度比及び圧力比の変化を示す図面である。 n=1の場合の衝撃波の軌跡と、衝撃波による衝撃波伝搬媒体の素片の軌跡を示す図面である。 n=1の場合の衝撃波伝搬媒体の密度比及び圧力比の変化を示す図面である。 n=3の場合の衝撃波の軌跡と、衝撃波による衝撃波伝搬媒体の素片の軌跡を示す。 n=3の場合の衝撃波伝搬媒体の密度比及び圧力比の変化を示す図面である。 衝撃波による圧縮状態のシミュレーション結果を示す図面である。 核融合ターゲットの一実施形態の概略構成を断面図である。 一実施形態に係る圧縮状態生成用ターゲットによる高圧状態及び高密度状態の観測のための実験系を説明するための図面である。 他の実施形態に係る圧縮状態生成用ターゲットの概略構成を示す斜視図である。 図13のXIV−XIV線に沿った断面図である。 (a)は、図13に示した圧縮状態生成用ターゲットの平面図である。(b)は、図13に示した圧縮状態生成用ターゲットの側面図である。 更に他の実施形態に係る圧縮状態生成用ターゲットの概略構成を示す斜視図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
(第1の実施形態)
図1は、一実施形態に係る圧縮状態生成用ターゲット1Aの斜視図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
図1及び図2に示した圧縮状態生成用ターゲット1A(以下、単にターゲット1Aと称す)は、ターゲット1Aに加えられた衝撃によって生じる衝撃波によって高圧・高密度を生成するための高圧・高密度生成用ターゲットである。特に高圧が期待されるのはレーザにより衝撃波が駆動された場合であり、このときの高圧とは100万気圧以上を意味し、高密度とは、10g/cm以上を意味する。
ターゲット1Aは、衝撃が加えられると共に、その衝撃によって生じた衝撃波を伝搬しながら衝撃波によって圧縮される衝撃波伝搬媒体10を有する。このように衝撃波によって衝撃波伝搬媒体10が圧縮されるので、衝撃波伝搬媒体10は圧縮媒体であって、ターゲット1Aは圧縮状態生成装置である。衝撃波伝搬媒体10は、衝撃波が生じ、その衝撃波が伝搬できれば特に限定されない。衝撃波伝搬媒体10の材料は、ターゲット1Aの使用目的によって決定され得る。例えば、衝撃波伝搬媒体10の例は、ポリスチレン、核融合燃料としての重水素(D)及び三重水素(T)の混合燃料(以下、DT燃料とも称す)、及びクォーツを含む。衝撃波伝搬媒体10は一つの物質から構成されていてもよいし、主媒体の外面に他の物質からなる膜が少なくとも一層積層されていてもよい。
衝撃波伝搬媒体10は、ラッパ状の充填領域形成部20内に充填されている。充填領域形成部20は、開放端である第1の端部20a側から第2の端部20b側に向けて径が縮小している中空の先細り形状を有する。そのため、充填領域形成部20において、衝撃波伝搬媒体10が充填される充填領域30は、周壁部31で構成される先細り部である。この構成では、充填領域形成部20では第1の端部20aは、径が最小(すなわち、幅が最小)である最小径部である。図1に示した形態では、第1の端部20aは閉じているので、充填領域形成部20の最小径部での径は実質的に0である。
充填領域形成部20の材質は、衝撃波及び衝撃波による衝撃波伝搬媒体10に耐えられるように、衝撃波伝搬媒体10より重い物質から構成されていればよい。例えば、充填領域形成部20を構成する物質の例は、金及びアルミニウム等といった比較的重い金属(中〜重金属)である。
充填領域形成部20において、充填領域30を規定する周壁部31は、充填領域形成部20の内側に向けて湾曲している。すなわち、周壁部31の内壁面31aは、図2に例示するように、充填領域形成部20の内側に向けて膨らんだ面である。内壁面31aの形状についてより具体的に説明する。
充填領域形成部20の中心線C1を含む断面、すなわち、例えば、図2に示すような図1のII―II線の断面において、最小径部である第1の端部20aを基点として、充填領域形成部20の中心線C1上の任意の点uでの中心線C1から内壁面31aまでの距離をvとしたとき、内壁面31aは、vが式(1)で表される形状を有する。
v=cu(n−1)/2・・・(1)
式(1)において、cは定数であり、nは3より大きい数である。
図1及び図2に示した形態では、第1の端部20aが閉じているが、第1の端部20aは、ターゲット1Aを製造する観点及びターゲット1Aの使用目的によっては、第1の端部20aは有限の径を有してもよい。このような形態では、式(1)の代わりに、内壁面31aの形状は、式(2)で表される。
v=c+c(n−1)/2・・・(2)
式(2)において、c,cは定数である。nはいわゆる次元数であり、3より大きい数であることは式(1)の場合と同様である。
ここでは、中心線C1からの距離vを利用して内壁面31aの形状を説明したが、図3に示すように、中心線C1をx軸とし、中心線C1上において第1の端部20aの位置を原点として、xy座標系を設定したとき、内壁面31aは、式(3)に示す曲線yで表される。
y=c+c(n−1)/2・・・(3)
図3は、充填領域の断面を模式的に示す図面である。図3では、2次元的に内壁面31aを曲線として示しているが、3次元的な内壁面31aの形状は、曲線yをx軸周りに回転させた面に対応する。そのため、図3におけるxy座標系において、yが負の領域においても内壁面31aを曲線yで便宜的に表している。
充填領域形成部20の大きさの例は、中心線C1方向の長さが100μm〜150μmであり、第1の端部20a近傍の開き角θは、5°〜20°程度である。cは実質的に0が好ましいが、例示したような大きさを充填領域形成部20が有する場合、cは5μm〜20μm程度であってよい。式(1)におけるcと、式(2)及び式(3)におけるcは、充填領域30の径(或いは幅)を規定することになるので、充填領域形成部20の大きさを考慮して適宜設定されていればよい。
図3を利用して、衝撃波伝搬媒体10の好適な充填状態について更に説明する。
上記内壁面31aを有する充填領域形成部20に衝撃波伝搬媒体10を充填する際、衝撃波を第1の端部20a側で収束させる観点から、衝撃波伝搬媒体10のうち衝撃が加えられる衝撃面10aは、外向きに湾曲していることが好ましい。この際、衝撃面10aは、図3に示した断面形状におけるxy座標系を採用して説明すると、下記式(4)で示される形状を有することが好ましい。
+{(n−1)/2}y=r・・・(4)
式(4)において、rは点(x,y)で規定される位置の原点からの距離である。
式(1)〜式(4)において、nは前述したように3より大きい数である。このnによって充填領域形成部20の形状、すなわち、ターゲット1Aの形状が規定される。よって、nは、充填領域形成部20の形状を規定するパラメータでもある。
本実施形態では、nは3より大きい数であるが、参考のためにn=1〜3の場合の充填領域形成部の幾何学的形状について説明する。すなわち、n=1の場合、数学的には、充填領域形成部は一対の平板に対応し、ターゲットは、一対の平板での間に衝撃波伝搬媒体が充填された形態に対応する。n=2の場合、数学的には、充填領域形成部は円筒に対応し、ターゲットは、円筒内に衝撃波伝搬媒体が充填された形態に対応する。n=3の場合、数学的には、充填領域形成部は球に対応し、ターゲットは、球内に衝撃波伝搬媒体が充填された形態に対応する。
上記ターゲット1Aは、例えば、充填領域形成部20を製造した後、充填領域形成部20内に衝撃波伝搬媒体10を充填することで製造され得る。充填領域形成部20は、例えば、レーザ加工などを利用して充填領域形成部20の型(例えば、マスク)を形成し、その型を利用して製造し得る。ここでは、ターゲット1Aの製造方法の一例を示したが、ターゲット1Aの製造方法は、上記方法に限定されない。
ターゲット1Aを利用して高圧及び高密度を生成する場合、図2の白抜き矢印で示すように、衝撃面10aに衝撃を付与する。衝撃を印加するための衝撃源は、レーザ光、電磁波等で加速された電子ビーム、又は、他の飛翔体でもよい。与える衝撃の程度は、ターゲット1Aの使用目的に応じて設定すればよいが、例えば、核融合目的であれば、投入レーザエネルギーは100kJ〜1MJ、衝撃波を駆動するレーザ強度は1014〜1016W/cmであることが予測される。
衝撃面10aに衝撃が加えられることによって生じた衝撃波は、衝撃波伝搬媒体10内を伝搬する。衝撃波伝搬媒体10は、衝撃面10aへ衝撃が加えられる方向(図2の白抜き矢印の方向)に向けて細りした充填領域30内に充填されているので、充填領域30と同様に先細りした形状を呈する。従って、衝撃波伝搬媒体10内を伝搬する衝撃波は、図2の破線で示すように、衝撃面10a側から第1の端部20a側に向けて収束する。第1の端部20aに達した収束衝撃波は、第1の端部20aで反射する。
充填領域30を形成する内壁面31aは式(3)(又は式(1)若しくは式(2))で規定される形状を有することから、充填領域形成部20の径は第1の端部20a側に向けて急速に減少する。従って、第1の端部20aを基点として中心線C1上のある位置での収束衝撃波が通過する面の面積も急激に減少する。その結果、衝撃波は、充填領域形成部20の内壁面が湾曲していない場合(すなわち、充填領域形成部が三角錐状のような場合)に比べて、衝撃波伝搬媒体10を強く圧縮する。そして、収束衝撃波が第1の端部20aに達した後は、前述のように反射した衝撃波も生じるので、収束衝撃波と反射衝撃波とによって衝撃波伝搬媒体10を圧縮する。その結果、ターゲット1Aにおいて、高圧及び高密度が実現され得る。
図4は、n=9の場合について、衝撃波の軌跡と、衝撃波による衝撃波伝搬媒体の素片の軌跡を示す図面である。図4中の実線は、衝撃波の軌跡を示し、破線は、衝撃波伝搬媒体の素片の軌跡を示している。図5は、n=9の場合について、衝撃波伝搬媒体の密度比(ρmax/ρ)及び圧力比(Pmax/P)の変化を示す図面である。図5中の実線は、密度比を示しており、破線は、圧力比を示している。密度比であるρmax/ρにおいて、ρmaxは観測する流体素片における密度(図4における破線部に対応)であり、ρは、規格された時間 t=−1 以前の非圧縮状態における初期密度である。圧力比であるPmax/Pにおいて、Pmaxは観測する流体素片における圧力(図4における破線部に対応)であり、Pは、入射衝撃波による圧力(規格された時間t=−1 における注目する流体素片の圧力)である。図4及び図5に示した結果は、図3に示した形状(ただし、c=0)をモデルとして流体基礎方程式に基づいた理論的な計算結果である。図4の縦軸は、原点(第1の端部の位置)からの距離であり、横軸は、時間である。横軸は、原点に衝撃波が到達した時間を0とし、着目する流体素片(破線部)に衝撃波が入射した時刻を−1とした。距離及び時間は、後述する他の形状の場合と比較するための規格化した値である。
比較のために、図6にn=1の場合の衝撃波の軌跡と、衝撃波による衝撃波伝搬媒体の素片の軌跡を示し、図7にn=1の場合の衝撃波伝搬媒体の密度比(ρmax/ρ)及び圧力比(Pmax/P)の変化を示す。図6及び図7の縦軸及び横軸は図4及び図5の場合と同様である。ただし、n=1の場合、平板形状であるため、図3の原点に対応する位置を衝撃波が入射する面と反対側の面とした。
同様に、比較のために、図8にn=3の場合の衝撃波の軌跡と、衝撃波による衝撃波伝搬媒体の素片の軌跡を示し、図9にn=3の場合の衝撃波伝搬媒体の密度比(ρmax/ρ)及び圧力比(Pmax/P)の変化を示す。図8及び図9の縦軸及び横軸は図4及び図5の場合と同様である。n=3の場合、ターゲットの形状は球であり、衝撃波は球の中心に向かう。この場合、衝撃波の伝搬は、数学的には球の中心を頂点とした三角錐に衝撃波伝搬媒体が充填されている場合に対応するので、計算は、図3に示したモデルにおいて、式(3)においてn=3とした場合を仮定して行った。
図4、図6及び図8に示されるように、衝撃波は、衝撃波が入射される側と反対側にいったときに、前述のように反射する。図4,図6及び図8の比較から理解されるように、nが3より大きいn=9の場合、理論的には、衝撃波の収束点(図3の原点或いは第1の端部20a)に向けて衝撃波は加速される。更に、図5,図7及び図9の比較から理解されるように、nが3より大きいn=9の場合、従来のような平板形状及び球形状のターゲットの場合より、高い密度及び圧力を実現出来うる。
更に、式(1)、式(2)又は式(3)においてnが3より大きい数であることによって、高圧及び高密度が実現できる点についてシミュレーション結果を参照して説明する。
シミュレーションでは、輻射流体コードを用いて行った。輻射流体コードとしては、1次元の流体数値計算コードを用いた。
図10は、シミュレーション結果を示す図面である。図10の横軸は、次元数nであり、式(1)におけるnに対応する。図10の縦軸は、圧力については増幅率に対応し、密度については圧縮率に対応する。図10の横軸及び縦軸は、対数で表示している。
図10に示すように、n=1,3,5,7,8,9の場合についてシミュレーションを行った。図10中の実線は、衝撃波伝搬媒体10の比熱比が5/3の場合のシミュレーション結果であり、図10中の一点鎖線は、衝撃波伝搬媒体10の比熱比が7/5の場合のシミュレーション結果である。図10中の○は、圧力の最大増幅率を示している。圧力の増幅率は、図5、図7、及び図9等に示される時間発展をする流体素片の圧力比の最大値として定義される(例えば、図5(n=9)の破線の最大値としてt=0.4付近で最大値65が達成されており、これが図10のγ=5/3に対応する曲線上のn=9地点に示された白丸値に等しい)。図10中の●は、最大の密度圧縮率を示しており、上記の圧力に対する説明と同様に、図5、図7及ぶ図9等に示される時間発展する流体素片の密度/初期密度の最大値情報を抽出しプロットしたものである。
図10に示すように、比熱比が5/3及び7/5のいずれの場合においても、n=3までの形状に対して、nが3より大きい形状では、圧力及び密度のいずれにおいてもn=1,3の場合より高い増幅率及び圧縮率を実現できている。特に比熱比が7/5の場合については、比熱比が5/3の場合より圧力及び密度のいずれにおいてもより高い増幅率及び圧縮率を実現可能であることが理解され得る。前述したように、n=1は幾何学的に平板状のターゲットに対応し、n=3は球状のターゲットに対応する。従来、高圧及び高密度の実現のために、ターゲットとしては、n=1〜3のものが使用されていた(例えば、核融合では球状のターゲット)。従って、ターゲット1Aでは、従来より高圧及び高密度が実現可能である。
シミュレーションは、衝撃波伝搬媒体10の比熱比が5/3及び7/5である場合について行ったが、比熱比の例は5/3及び7/5に限定されない。また、ターゲット1Aによって従来の平板形状や球形状より高い圧力状態及び高い密度状態が達成されるので、ターゲット1Aは、例えば、物質創成などの産業応用、Warm-dense-matter領域の研究、核融合、及び、天体現象の基礎物理研究、中性子発生源などに利用することができる。
次に、ターゲット1Aを核融合ターゲットに使用する場合の一例について説明する。図11は、図1に示したターゲットを、核融合ターゲットして使用する場合の一例を示す断面図である。核融合ターゲット40は、図11の中心線C2周りに回転対称な形状を有する。
核融合ターゲット40は、核融合の点火部となる第1の燃料部41と、第1の燃料部41の外側に離して配置される第2の燃料部42と、第2の燃料部42の外周上に設けられアブレーションのためのアブレータ部43と、第1及び第2の燃料部42並びにアブレータ部43を収容しており、開放端部44aを有する収容部44と、を備える。核融合ターゲット40は、慣性核融合におけるターゲットとして利用され得る。
収容部44は、開放端部44a側と反対側に向けて先細りしている。収容部44内において、開放端部44a側からアブレータ部43、第2の燃料部42及び第1の燃料部41が順に配置されている。第1の燃料部41は、収容部44において、開放端部44aと反対側の端部44b側に充填されている。
第2の燃料部42は、核融合燃料としてのDT燃料から構成されている。第2の燃料部42は、収容部44の端部44bを中心とした半径Rの球面形状に設けられたシェルである。半径Rは、第1の燃料部41の外面までの距離より長い。従って、第1の燃料部41と第2の燃料部42との間には間隙が生じている。アブレータ層は、第1の燃料部41の外周上に被膜されたシェルである。アブレータ部43は、好ましくは、ポリスチレンなどのプラスチックシェルが用いられる。
収容部44のうち第1の燃料部41が充填されている燃料充填領域441の内壁面441aは、内側に向けて湾曲している。この燃料充填領域441の形状は、式(1)を満たす。従って、収容部44の燃料充填領域441と、燃料充填領域441に充填された第1の燃料部41とがターゲット1Aを構成していることになる。
燃料充填領域441に充填された第1の燃料部41の大きさは、ターゲット1Aとして例示した大きさと同様に、中心線C2方向に対して100μm〜500μmとし得る。そして、核融合ターゲット40の大きさとしては、中心線C2方向に対して1000μm〜3000μmとし得る。
なお、収容部44のうち燃料充填領域441以外の領域、すなわち、燃料充填領域441より開放端部44a側の領域の内壁面の形状は特に限定されないが、例えば、断面において、直線で表される面である。
図11に示した核融合ターゲット40を利用して核融合反応を生じさせる場合、アブレータ部43に、図11に白抜き矢印として例示したエネルギー線としての高出力レーザ光を照射する。この際、レーザ光としては、例えば、nsec(ナノ秒)オーダーのパルスレーザ光が用いられ得る。レーザ光は、アブレータ部43の外面に均一に照射されることが好ましい。レーザ光がアブレータ部43に照射されるとアブレータ部43がアブレーションを起こす。その作用により、第2の燃料部42が第1の燃料部41に向けて加速される。この際、第2の燃料部42は、収容部44に誘導されながら第1の燃料部41に向けて加速される。この点で、収容部44は、第2の燃料部42の誘導部材として機能する。第2の燃料部42が第1の燃料部41に衝突すると、第1の燃料部41に衝撃波が生じ、衝撃波が端部44b側に向けて収束する。第1の燃料部41及び燃料充填領域441とはターゲット1Aに対応するため、前述したように、第1の燃料部41に加えられた衝撃波によって第1の燃料部41が圧縮され高圧及び高密度状態が実現される。これによって、第1の燃料部41が点火スポットとなって核融合反応が点火される。
ここでは、ターゲット40のみで核融合反応を生じせしめる場合を例示したが、ターゲット40とは別に主燃料部を組み合わせて核融合ターゲットとしてもよい。また、ここでは、エネルギー線としてレーザ光を例示したが、例えば、X線又は荷電粒子線であってもよい。
次に、図12を利用してターゲット1Aを基礎物理研究に利用する場合について説明する。ターゲット1Aを物理研究に利用する場合、高圧及び高密度状態を観測することが求められる場合がある。図12は、この観測のための実験系を説明するための図面である。
ターゲット1Aにおいて、高圧及び高密度状態を観測するために、ターゲット1Aの第1の端部20aを有限の大きさとする。第1の端部20aの半径であるcの例は、20〜50μmである。この第1の端部20aに観測窓部50を配置する。観測窓部50の例は、ARコート52が第1の端部20aと反対側の面に形成されたサファイア基板51であり、この観測窓部50は衝撃波の反射部材としても機能する。衝撃波伝搬媒体10の材料の例は、研究内容に応じて設定すればよい。例えば、衝撃波伝搬媒体10は、実際に圧縮される主媒体部11の外面に順に第1被覆膜12及び第2被覆膜13が形成されたもとし得る。第1被腹膜12及び第2被覆膜13は、主媒体部11とは異なる材料とし得る。
図12に示した実験系では、例えば、図12に白抜き矢印で示すようレーザ光といった衝撃源をターゲット1Aに衝突させて、ターゲット1Aで実現される状態を観測窓部50から計測する。観測窓部50を利用した計測としては、X線散乱を利用した密度計測、及び/又は、可視プローブレーザ光を用いた、収束衝撃波の速度計測と温度計測などが挙げられる。
(第2の実施形態)
図13は、他の実施形態に係る圧縮状態生成用ターゲットの概略構成を示す斜視図である。図14は、図13のXIV−XIV線に沿った断面である。
図13及び図14に示すように、圧縮状態生成用ターゲット1Bは、第1の壁部61と、第2の壁部62と、第1及び第2の壁部61,62との間に充填された衝撃波伝搬媒体10とを有する。このように第1の壁部61と第2の壁部62との間に衝撃波伝搬媒体10が充填されるので、第1及び第2の壁部61,62が充填領域形成部60を構成しており、第1及び第2の壁部61,62との間が衝撃波伝搬媒体10の充填領域70である。
第1及び第2の壁部61,62は円板状を呈する。第1及び第2の壁部61,62は、所定軸C3上に対向して配置されている。第1の壁部61は、第2の壁部62側に湾曲しており、第2の壁部62は第1の壁部61側に湾曲している。従って、第1及び第2の壁部61,62の内壁面611,621は湾曲した面であり、その頂部611a,621aは所定軸C3上に位置する。従って、第1及び第2の壁部61,62の間の所定軸C3方向の距離(充填領域の幅)は、頂部611a,621aの位置で最小である。
以下、第1及び第2の壁部61,62の内壁面611,621の形状が満たす条件について説明する。第1の壁部61及び第2の壁部62は、所定軸C3に直交する平面であって、所定軸C3上における頂部611a,621a間の中間点mを通る平面Pに対して鏡面対称である。よって、第1の壁部61の内壁面611が満たす条件を中心に説明する。
所定軸C3を含む圧縮状態生成用ターゲット1Bの断面において、上記中間点mを原点基点)とし、所定軸C3をy軸としてxy座標系を設定した場合、第1の壁部61の内壁面611は、式(4)が満たす曲線yをy軸周りに回転させて形成される面に対応する。
そして、前述したように、第2の壁部62は、第1の壁部61に対して、鏡面対称であるため、第2の壁部62の内壁面621も式(4)を満たす形状になる。
従って、図14に示した断面形状において、所定軸C3の両側の領域をそれぞれ第1の領域A1及び第2の領域A2と称した場合、第1の領域A1において、内壁面611と内壁面621とで挟まれる領域は、所定軸C3側に向けて先細りした先細り部に対応し、先細り部の内壁面は式(4)を満たす湾曲した面である。ここでは、第1の領域A1について説明したが、第2の領域についても同様である。
そのため、図15(a)及び図15(b)に示すように、圧縮状態生成用ターゲット1Bの周面となる衝撃波伝搬媒体10の外面を衝撃面10aとして衝撃を付与すると、第1の実施形態の場合と同様にして、衝撃波が圧縮状態生成用ターゲット1Bの中心に向けて急速に収束する。その結果、圧縮状態生成用ターゲット1Bの中心、すなわち、先細り部の最小径部において、高圧及び高密度状態が達成され得る。図15(a)及び図15(b)においては、他の図と同様に、レーザ光などの衝撃源を白抜き矢印で示している。圧縮状態生成用ターゲット1Bに衝撃を付与する際には、衝撃波伝搬媒体10の衝撃面10aに均一に衝撃を付与することが好ましい。
(第3の実施形態)
図16は、更に他の実施形態に係る圧縮状態生成用ターゲットの斜視図である。図16では、後述する磁場圧縮のための種磁場Bも模式的に示している。
圧縮状態生成用ターゲット1Cでは、衝撃波伝搬媒体10が充填される充填領域形成部80が、一端部側で連結され他端部側で広がった第1の側壁部81と第2の側壁部82とを有する点で、第1の実施形態の充填領域形成部20と主に相違する。
第1の側壁部81と第2の側壁部82との間が、衝撃波伝搬媒体10の充填領域90である。第1の側壁部81と第2の側壁部82とは所定方向C4方向に延在している。 第1の側壁部81と第2の側壁部82の配置状態では、充填領域90は、充填領域形成部80の開口側から一縁部に向けて先細った先細り部を構成している。また、充填領域90を規定する第1の側壁部81と第2の側壁部82の内壁面811,821は内側に湾曲している。所定方向C4に直交する断面において、所定方向C4に直交する軸線を図2に示した中心線C1に対応させ、第1の側壁部81と第2の側壁部82の連結部を基点とした場合、内壁面811,821の形状は、式(1)で表される。すなわち、充填領域90の所定方向C4に直交する断面の形状は、図2と同様である。従って、図16に白抜き矢印で例示するように、第1の側壁部81と第2の側壁部82との幅が広がっている側からレーザ光などによって衝撃を衝撃面10aに付与することで、衝撃面10aで駆動された衝撃波は、第1の実施形態の場合と同様に、第1の側壁部81と第2の側壁部82とが連結された端部側に向かって収束し、その端部で反射する。その結果、高圧及び高密度状態が実現される。
ここで、圧縮状態生成用ターゲット1Cを利用した磁場圧縮について説明する。磁場圧縮する場合、図16に示したように、所定の種磁場B内に圧縮状態生成用ターゲット1Cを配置しておく。種磁場、永久磁石による定常的な磁場でもよいし、コイルを利用して生成されるミリ秒〜マイクロ秒の時間スケールで変動する変動磁場でもよい。この状態で、衝撃面10aに、例えばパルス幅がナノ秒程度のパルスレーザ光を照射することによって、衝撃面10aに衝撃を付与すると、圧縮状態生成用ターゲット1Cにおいて高密度状態が実現される。衝撃波伝搬媒体10が高密度に圧縮されることにより、種磁場Bも圧縮されることになるので、磁場圧縮がなされる。このような磁場圧縮によって、圧縮状態生成用ターゲット1Cを物性研等に使用し得る。
図16では、衝撃波伝搬媒体10の側面は開放されているが、衝撃波伝搬媒体10の側面は、第1の側壁部81と第2の側壁部82と同様の材料で閉じられていてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、衝撃波伝搬媒体10の充填領域のうち先細り部の壁面は、先細り部の断面形状において、式(1)、式(2)又は式(3)で規定される形状を有するとした。しかしながら、上記壁面は、先細り部の内側に湾曲していればよい。例えば、先細り部の壁面は、先細り部の断面形状において、式(1)、式(2)又は式(3)において規定した一つのnで表される形状に限定されない。例えば、ある領域は、n=4で、他の領域は、n=9であるなど、複数の形状が組み合わされていてもよい。
衝撃波伝搬媒体が充填される充填領域の形状として、充填領域の断面において、ある軸線に対して対称な形状を例示したが、充填領域は、対称形状を有さなくてもよい。そして、充填領域を規定する一つの壁面が、内側に湾曲する壁面であればよい。例えば、図16に示した第1の側壁部81の内壁面811が内側に向けて湾曲していれば、第2の側壁部82の内壁面821は平坦面でもよい。
以上、充填領域のうち先細り部を規定する壁面について述べたことは、核融合ターゲット40において、衝撃波伝搬媒体10に対応する第1の燃料部41が充填される燃料充填領域441の内壁面の形状についても同様である。
また、第3の実施形態に示した圧縮状態生成用ターゲット1Cを磁場圧縮に利用する場合を例示したが、他の実施形態に示した圧縮状態生成用ターゲット1Cを磁場圧縮に用いてもよい。すなわち、第1〜第3の実施形態で例示した圧縮状態生成用ターゲットの適用例については、適用するための特定形状の要求がなければ、他の実施形態の圧縮状態生成用ターゲットを使用することも可能である。
1A〜1C…圧縮状態生成用ターゲット、10…衝撃波伝搬媒体、10a…衝撃面(所定面)、20…充填領域形成部、20a…端部、20b…端部、30…充填領域、3…周壁部、31a…内壁面、40…核融合ターゲット、41…第1の燃料部、42…第2の燃料部、43…アブレータ部、44…収容部、44a…開放端部、44b…端部(収容部と反対側の端部)、60…充填領域形成部、61…第1の壁部、62…第2の壁部、70…充填領域、81…第1の側壁部、82…第2の側壁部、90…充填領域、441…燃料充填領域、611,621…内壁面、611a,621a…頂部、811,821…内壁面。

Claims (5)

  1. 所定面に加えられた衝撃により生成された衝撃波が伝搬される衝撃波伝搬媒体と、
    前記衝撃波伝搬媒体が内部に充填される充填領域を形成する充填領域形成部と、
    を備え、
    前記充填領域は、前記所定面への前記衝撃の付与方向に向けて先細りした先細り部を有し、
    前記先細り部は、内側に向けて湾曲した壁面を有する、
    圧縮状態生成用ターゲット。
  2. 前記先細り部の断面において、前記壁面は、
    前記先細り部における最小幅の位置を基点とし、前記基点から前記所定面側に向けて延ばした軸線上における前記基点からの位置uでの前記壁面までの距離をvとしたとき、vが、
    v=c+c(n−1)/2
    (ただし、nは3より大きい数、c及びcは定数)、
    を満たす形状を有する、
    請求項1記載の圧縮状態生成用ターゲット。
  3. 前記媒体充填部は、ラッパ状を呈している、
    請求項1又は2記載の圧縮状態生成用ターゲット。
  4. 前記充填領域形成部は、
    第1の壁部と、
    前記第1の壁部に対して対向して配置される第2の壁部と
    を有し、
    前記第1の壁部と前記第2の壁部との間が前記充填領域であり、
    前記第1及び前記第2の壁部における内壁面は、互いの方向に向けて湾曲しており、
    前記充填領域に充填された前記衝撃波伝搬媒体の側面が前記所定面であり、
    前記充填領域のうち前記所定面から前記第1及び第2の壁部の前記内壁面の最近接部までの領域を規定する領域が前記先細り部である、
    請求項1又は2記載の圧縮状態生成用ターゲット。
  5. 核融合燃料に対してエネルギー線を照射することによって核融合反応を点火させるために用いられる核融合ターゲットであって、
    核融合の点火部となる第1の燃料部と、
    前記第1の燃料部の外側に離して配置される第2の燃料部と、
    前記第2の燃料部の外周上に設けられるアブレータ部と、
    前記第1及び第2の燃料部並びに前記アブレータ部を収容しており、開放端部を有する収容部と、
    を備え、
    前記収容部は、前記開放端部側と反対側に向けて先細りしており、
    前記開放端部側から前記アブレータ部、前記第2の燃料部及び前記第1の燃料部が配置されており、
    前記第1の燃料部は、前記収容部において、前記開放端部と反対側の端部側に充填されており、
    前記収容部のうち、前記第1の燃料部が充填されている領域の壁面は、内側に向けて湾曲している、
    核融合ターゲット。
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