JP2013137223A - Appの局在の検出方法 - Google Patents

Appの局在の検出方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2013137223A
JP2013137223A JP2011287872A JP2011287872A JP2013137223A JP 2013137223 A JP2013137223 A JP 2013137223A JP 2011287872 A JP2011287872 A JP 2011287872A JP 2011287872 A JP2011287872 A JP 2011287872A JP 2013137223 A JP2013137223 A JP 2013137223A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
app
antibody
detecting
cell
complex
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2011287872A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5682795B2 (ja
Inventor
Masaji Okamoto
雅次 岡本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toagosei Co Ltd
Original Assignee
Toagosei Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toagosei Co Ltd filed Critical Toagosei Co Ltd
Priority to JP2011287872A priority Critical patent/JP5682795B2/ja
Publication of JP2013137223A publication Critical patent/JP2013137223A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5682795B2 publication Critical patent/JP5682795B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、APPの機能、役割、代謝調節等の解明にとって有益と思われるAPPの局在情報を得る方法を提供することを目的とする。
【課題解決手段】
本発明は、以下の工程を含むAPPを検出する方法を提供する。
(a)細胞中のAPPと、APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体と反応させる工程;
(b)該抗体とAPPの複合体を形成する工程;
(c)該複合体を検出する工程;および
(d)該複合体の検出部位を特定し、APPの局在情報を得る工程
【選択図】なし

Description

本発明は、特定の抗体を用いてAPPの局在を検出する方法に関する。
アルツハイマー症(アルツハイマー病ともいう。以下単にADと省略することがある)は厚生労働省老険局データと患者調査の結果をもとに推計すると、2010年時点におけるアルツハイマー型認知症患者数は約116万人、2015年には142万人、2025年には220万人に達すると予測される。米国では530万人が罹病しているといわれ、65歳以上では死亡原因の5位、30年以内には世界で患者数が1位になる疾病と予測されている。
ここで、患者数の多い他の疾病である、高血圧、糖尿病、高脂血症は、完全に治癒できないまでもその病状を進行させずにコントロールすることが可能になってきており、ガンも一部についてであるが、治癒またはその病状はコントロール可能になりつつある。しかし、ADは、原因および作用機序が不明であり、その病状の進行ほとんどコントロールできていない。(真の発症は10〜20年依然だが)ADであると診断を受けてから死亡までの(通常5〜12年)家族の精神的・経済的負担は疾病の中でも最も大きく社会問題の1つである。したがって、ADは早期診断、予防、治療の社会的要請が極めて高い疾病である。
ADが進行すると、症状として脳細胞の消失による脳の退縮が起こることが知られており、これに関係している中心分子としてアミロイドβA4プレカーサープロテイン(以下APPと略する)が知られている。ADの発症機序については、APPの機能、役割、代謝調節等すでに30年以上も研究が続けられているが、いまだに解明されていない部分が多く、少なくともAβ42またはAβ43の蓄積とAD発症の相関は極めて高いだろうということまでは分かっているが全てではない(非特許文献1)。これまで、APPの存在部位は完全には把握されておらず、細胞質に存在するものと考えられていた(非特許文献2〜7)。
実験医学 2008年10月号 Vol.26 No.16 異常タンパク質蓄積とアルツハイマー病の治療戦略 Proteolysis機構の解明と,バイオマーカーによる診断法確立への挑戦 岩坪威/企画 T.E. Golde, S. Estus, M. Usiak, L.H. Younkin, S.G. Younkin SG, Expression of beta amyloid protein precursor mRNAs: Recognition of a novel alternatively spliced form and quantitation in Alzheimer's disease using PCR, Neuron. 4 (1990) 253-67. G. Thinakaran, E.H. Koo, Amyloid precursor protein trafficking, processing, and function, J. Biol. Chem. 283 (2008) 29615-2969. W.T. Kimberly, J.B. Zheng, S.Y. Guenette, D.J. Selkoe, The intracellular domain of the beta-amyloid precursor protein is stabilized by Fe65 and translocates to the nucleus in a notch-like manner, J. Biol. Chem. 276 (2001) 40288-40292. R.C. von Rotz, B.M. Kohli, J. Bosset, M. Meier, T. Suzuki, R.M. Nitsch, U. Konietzko, The APP intracellular domain forms nuclear multiprotein complexes and regulates the transcription of its own precursor, J. Cell Sci. 117 (2004) 4435-4448. H. Yamaguchi, T. Yamazaki, K. Ishiguro, M. Shoji, Y. Nakazato, S. Hirai, Ultrastructural localization of Alzheimer amyloid beta/A4 protein precursor in the cytoplasm of neurons and senile plaque-associated astrocytes, Acta Neuropathol. 85 (1992) 15-22. G.L. Caporaso, K. Takei, S.E. Gandy, M. Matteoli, O Mundigl, P. Greengard, P. De Camilli, Morphologic and biochemical analysis of the intracellular trafficking of the Alzheimer beta/A4 amyloid precursor protein, J. Neurosci. 14 (1994) 3122-3138.
本発明は、APPの機能、役割、代謝調節等の解明にとって有益と思われるAPPの局在情報を得る方法を提供することを目的とする。
APPの検出方法について鋭意検討した結果、APPのN末端側を認識する特定の抗体を特定の条件で用いた場合に、神経癌細胞等の細胞質、核または核小体にAPPが存在していることを発見した。長年の膨大な研究の中でもAPPのN末端側が核に局在するという知見は全く知られておらず新規な知見である。また、この知見が意味する内容は、細胞の盛衰を左右する重要な調節への関与である。
具体的には本発明は以下の構成を有する。
〔1〕以下の工程を含むAPPを検出する方法。
(a)細胞中のAPPと、APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体と反応させる工程;
(b)該抗体とAPPの複合体を形成する工程;
(c)該複合体を検出する工程;および
(d)該複合体の検出部位を特定し、APPの局在情報を得る工程
〔2〕該複合体の検出部位の特定が、あらかじめ細胞を前処理して部位を選択し、当該選択部位における検出有無により行う、前記〔1〕に記載のAPPを検出する方法。
〔3〕APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体が、44−63番目の一部を認識する抗体である前記〔1〕または〔2〕に記載のAPPを検出する方法。
〔4〕APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体が、GS4463(Genscript No.A00692、抗APP抗体(44−63))または10D1(IBL社、No.11090、抗ヒトAPP(N)抗体(10D1))(図6)である前記〔1〕−〔3〕のいずれかに記載のAPPを検出する方法。
〔5〕APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体が、GS4463(Genscript No.A00692、抗APP抗体(44−63))と競合する抗体または10D1(IBL社、No.11090、抗ヒトAPP(N)抗体(10D1))と競合する抗体である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のAPPを検出する方法。
〔6〕APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体が、HMP−20を認識する抗体である前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のAPPを検出する方法。
〔7〕検出部位が、細胞質、核または核小体のいずれか1以上である前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のAPPを検出する方法。
〔8〕検出部位が核小体であって、さらに以下の工程を含む前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のAPPを検出する方法。
(e)フィブラリン抗体またはelF6により核小体を検出する工程
〔9〕細胞におけるAPP局在性の異常有無の判定方法であって、
(a)細胞中のAPPと、APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体と接触させる工程;
(b)該抗体とAPPの複合体を形成する工程;
(c)該複合体を検出する工程;および
(d)該複合体の検出部位を特定することによりAPPの局在情報を得て、あらかじめ求めた正常状態との比較から、細胞のAPP局在性の異常有無を判定する工程、
を含む方法。
〔10〕APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体、および当該抗体とAPPとの複合体の局在情報と異常有無との関連付けについて説明された取扱説明書、を含むAPPの局在性の異常有無を判定する検査キット。
本発明によりAPPの新しい局在情報を知ることができる。そして当該情報により、APPの新しい代謝調節経路、機能の情報を得ることにつながり、APPの本来の生理作用とAD発症機構を探る研究にとって極めて有用性が高い。たとえば、APPが核に局在するという情報だけでも、APPの関係する機能が複製、DNA修飾、転写などに絞られる。また、同様に、核小体はrRNA合成工場であり、細胞の休止・生育・消失の制御に関わるため、APPが核小体に局在するという情報だけでも、APPの関連する機能をこれらに絞ることができる。 さらにまた、APPの異常な局在性と疾病との相関性を調べることにより、APPの異常な局在性と相関する疾病の診断をすることも可能になる。
ヒト神経細胞腫SK−N−SH細胞において、各抗体によるAPPの免疫蛍光顕微鏡観察結果を示す図である。(1)抗体10D1(2)抗体GS4463(3)抗体22C11 (1)から(3)の各左列は蛍光標識2次抗体で各1次抗体の結合部位を視覚化したもの、中央列はDAPIにより核のみを視覚化したもの、右列は、それらを重ね合わせた図である。 GS4463により染色した場合(左図)と、抗原ペプチドHMP20を1次反応前に事前にGS4463抗体と反応させた場合(右図)の比較結果である。 SK−N−SH細胞において、抗体GS4463とフィブラリン抗体またはelF6と共に免疫染色したAPPの免疫蛍光顕微鏡観察結果を示す図である。 ヒト正常腎上皮細胞(HREC)において、各抗体によるAPPの免疫蛍光顕微鏡観察結果を示す図である。(1)は抗体10D1(2)は抗体GS4463 ヒト正常脳星状細胞(NHA)において、各抗体によるAPPの免疫蛍光顕微鏡観察結果を示す図である。(1)抗体10D1(2)抗体GS4463 細胞質画分(Cyto)と核画分(NE))をSDS−PAGEにて分離し、抗GAPDH抗体および抗フィブラリン抗体によりウエスタンブロッテイングした結果を示す図である。 細胞質画分(Cyto)と核画分をSDS−PAGEにて分離し、各抗体によりウエスタンブロッテイングした結果を示す図である。(1)抗体10D1(2)抗体22C11(3)抗体GS4463(4)抗体GS4463とペプチドHMP20100μg/mlをプレインキュベーションした場合(5)抗体GS4463の濃度を高め(3)の2倍にして(4μg/ml)、一晩反応させることで検出条件を強くした場合 APPアミノ酸配列において、APPのN末端側を認識する3種の抗体の認識部位を示す模式図である。
本発明は、特定の抗体を用いてAPPの局在性を調べる方法である。APPの局在性とは、細胞のどの部位にどのようにAPPが存在するかを検出することをいう。どの部位にとは、細胞内のうち、細胞質、小胞体、ミトコントドリア、ゴルジ体、中心体、核、核膜、核小体、核スペックルズ、PML体などのどの細胞内小器官や核内構造体をも含む意である。また、どのように存在するかとは、前記部位のみではなく、存在量、存在の範囲、存在の偏移、分子量分布状態、修飾状態、特定のタンパク質との共在性など、あらゆる存在状態をも含める意である。なお、後述する実施例では、ある特定の細胞における、細胞質、核、核小体におけるAPPの存在有無をAPPの局在情報、共在情報として例示した。
(検出)
検出は、細胞中のAPPと抗体とを反応させることにより行われる。細胞中のAPPと抗体との反応は、例えば、細胞と抗体とを特定条件下で接触させることにより、細胞中のAPPと抗体により形成された複合体を可視化して検出することにより行われる。可視化は例えば、1次抗体を蛍光標識、または蛍光標識2次抗体を用いて増感することにより可能である。細胞は、固定化し、抗体とAPPとの複合体を蛍光染色等可視化することにより、蛍光顕微鏡観察することで細胞全体における局在性を直ちに検出することが可能である。また上記以外には例えば、細胞を前処理することにより、細胞質、核、核小体成分に抽出・分離し各器官の試料とし、各器官の試料と抗体を接触することでAPPと抗体の複合体を形成して、該複合体を検出することにより、複合体の検出部位を特定することもできる。さらにまた、各器官を抽出・分離しないまでも各器官を選択的に検出仕分けることで検出部位を特定してもよい。ここで、複合体の定量的な検出だけでなく、定量的に検出(測定)できれば、さらにどの器官にどのくらいの量が存在するのかがわかり、各器官でのAPPの存在比をも明らかにすることができ、より詳細な情報となりうる。また、他の特定の細胞内小器官マーカー抗体を同時に用いて、共在性情報を得ることもできる。
(検出条件)
細胞における検出は、洗浄、固定化、抗体との接触、ブロッキング等の処理により行うことができる。洗浄は、PBSによる洗浄が望ましく、また固定化はパラホルムアルデヒドが望ましい。ブロッキングは、ヤギ血清が望ましく、さらにTriton X−100による処理と併用することが望ましい。
具体的には、後述する実施例に示されるように、PBSよる洗浄、固定:4%パラホルムアルデヒド、0℃20分、(または−20℃〜−30℃メタノール、5分)PBS洗浄、0.25〜0.4% Triton X−100/PBS 0℃ 15分、PBS洗浄 5%ヤギ血清PBSでブロッキング、0℃ 1時間以上、の処理が挙げられる。このような処理により、従来は検出できなかった核や核小体におけるAPPの検出が可能となり、APPの細胞内での局在性を調べることが可能となった。
また、核小体におけるAPPの検出には、核小体の検出に用いられるフィブラリン抗体またはelF6とともに本発明の抗体を使用すれば、より正確な核小体におけるAPP検出情報を得ることができるため望ましい。
(抗体)
本発明に用いる抗体は、APPに対する抗体のなかでも、APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体である必要がある。さらにこのうちでも、44−63番目を認識する抗体が望ましく、具体的にはGS4463(Genscript No.A00692、抗APP抗体(44−63))、10D1(IBL社、No.#11090、抗ヒトAPP(N)(10D1))GS4463と競合する抗体、10D1と競合する抗体、またはペプチドHMP−20を認識する抗体であることが望ましい(図6)。
(判定方法)
本発明の細胞におけるAPP局在性の異常有無の判定方法は、以下の(a)〜(d)の工程を含む方法である。
(a)細胞を、APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体と接触させる工程;
(b)該抗体とAPPの複合体を形成する工程;
(c)該複合体を検出する工程;および
(d)該複合体の検出部位を特定することによりAPPの局在情報を得て、あらかじめ求めた正常状態との比較から、細胞のAPP局在性の異常有無を判定する工程、
(d)の工程は、例えば、細胞質、核、核小体におけるAPPの存在を定量的あるいは定性的に検出し、その情報をもとにAPPの局在性の異常の有無を判定する工程である。あらかじめ求めた正常状態との比較とは、たとえば、正常状態におけるAPP検出部位や各検出部位でのAPP検出量などとの比較をいう。たとえば、ある種の細胞について、APPが核、核小体、細胞質ともに所定量存在するのが通常であるとし、核および核小体に大量に存在し、細胞質にはほとんど存在しない場合またはその逆の場合を異常と判断するなどである。また、細胞の種類、細胞の由来する患者の疾病について調べて統計的なデータを取得してその関連付けをしておくことで、細胞の異常有無の判定、疾病の判定をすることが可能となる。判定は人が行ってもよいし、画像をコンピュータにより、パターン認識ソフトで容易に解析することもできる。パターン認識ソフトはヒトの顔も識別できるまでに進んでいる。例えば、DAPIで染色される核内に別の蛍光がどの程度存在するかは容易に識別できるであろう。正常パターンの形状も記憶させることができるであろう。
APPは、アルツハイマー症の病理に密接に関わるアミロイドβ(Aβ)の前駆体であり、この病気の責任遺伝子産物の一つである(非特許文献1)
APPは、一回膜貫通型タンパク質であり、少なくとも、695アミノ酸、751アミノ酸、770アミノ酸からなる3種類のスプライシング分子種が報告されている(非特許文献2)。APPは内部に、αセクレターゼ、βセクレターゼ、γセクレターゼによるプロセッシング部位を持つ(非特許文献3)。APPはγセクレターゼによる膜内での切断により、溶解型APP(sAPP)が放出される。更に、sAPPは、αセクレターゼにより切断されるアミロイド非発生型経路とβセクレターゼにより切断されて、アミロイドAβができるアミロイド発生型経路で代謝される。細胞内のAPPは、主にゴルジ装置や小胞体の存在するとされている(非特許文献6−12)。細胞内において、APPが小胞体やゴルジに存在することは、sAPPが細胞外に分泌されることと一致している。
AICDと呼ばれるAPPのC末端の50アミノ酸程度の短い断片が核内にあることを示唆する報告がいくつかなされている(非特許文献13)。APP695のC末端59アミノ酸を組換え遺伝子から発現させた場合には、核内に局在し、転写調節因子であるFe65と共在した。AICDと蛍光タンパク質の融合タンパク質を用いた発現実験にでは、Fe65および ヒストンアセチラーゼのサブユニットで転写調節因子であるTip60と複合体形成が示唆された(非特許文献14)。これらの結果は、AICD配列内に核内移行シグナルまたは修飾が含まれていることを示唆している。しかしながら、Gal4−Tip60転写活性化実験では、全長APPプラスミドから発現させたは転写活性化が見られたが、AICDを発現させた場合は見られなかった。NotchおよびNICDの系とは異なることが示唆された。これらの一連のAICD局在に関する実験は、元々細胞内あるAPPの挙動ではなく、外部からの多量な遺伝子によるAICD断片の強制発現による観察結果であり、全長のAPPの核内局在を否定するものではない。AICD配列内に核内移行シグナルが含まれているとしたら、AICDを含む全長APPが核内に移行することも十分あり得る。
APPおよびそのファミリーAPLP1とAPLP2の同時ノックアウトマウスは致死的であった(非特許文献15)。APPノックアウトマウスは運動および記憶障害を示すことから、APPは重要な機能を帯びていると容易に類推できる。このため、Aβ42周辺のみならず、APPのアミノ酸配列の他の重要な部位における変異は疾病となる可能性が考えられる。APPはアルツハイマー発症に関係する重要なタンパク質でありながら、その代謝詳細や機能について、今なお不明な部分が多く残されている。本発明では、APPのアミノ末端付近の抗体を3種類用い、APPの細胞内局在を鋭意検討した結果、APPの一部は核内、更には核小体に局在することを、初めて示した。また核小体に局在する意義と、APP前半部のアミノ酸配列相同性から、機能の一部としてRNA結合活性を有する可能性を示唆した。
今回明らかになったAPPの挙動として、細胞内APPの一部が、核小体内でフィブリラリンおよびeIF6と共局在していることが分かった。フィブリラリンはrRNA 2’−O−methyltransferaseであり、プレリボソームrRNAのプロセッシングの最初のステップに加わる核小体スモールリボヌクレオタンパク質(snRNA)の構成要素である(非特許文献16)。eIF6はプレ60Sリボソーマル粒子と結合してm)核小体から細胞質へリボソームを運ぶ役割を担っている(非特許文献17)。
本発明において、GS4463の免疫染色シグナルは、抗フィブリラリン抗体や抗eIF6抗体のシグナルと共局在しており、このことは、APPがリボソーム生産や細胞増殖に関与している可能性を示唆している。細胞増殖におけるAPPの役割は、以前、複数の報告により示唆されている。1つの報告では、アンチセンスRNA発現プラスミドによりAPP発現が減った繊維芽細胞は、増殖速度が遅くなった(非特許文献18)。この細胞に外部から、培地にAPP695を添加すると増殖速度が回復した(非特許文献18)。この増殖回復に必須な領域は、N末端側の403−407位のアミノ酸であった(非特許文献19)。これらの結果からは、APPの細胞増殖に関わる機能は、成長因子のオートクラインまたはパラクライン様式に似ている。可溶性APPαは、リーリンやインテグリンα3β1を介して、インビトロおよびインビボにおいても、神経軸索の伸長に極めて重要であることが示された(非特許文献20−22)。
核小体と細胞表面を見られるタンパク質としてヌクレオリンがよく知られている。ヌクレオリンは至る所に存在する、核内非ヒストンタンパク質であり、細胞の対数増殖や、リボソームRNAの合成とプロセッシングや細胞死に関与している報告がある(非特許文献23)。ヌクレオリンは、リボソームタンパク質の核から細胞質への移送に関わっていることが知られている(非特許文献24)。また、ヌクレオリンはAPPのmRNAとも相互作用する報告がある(非特許文献25,26)。このような重要な生理的役割を担っているため、ヌクレオリンのノックアウト細胞も致死的であったヌクレオリンは、そのアミノ末端側に、余り保存されていない、多様な配列のネガティブチャージアミノ酸のストレッチを多く含み、この点で、ヒストンの酸性アミノ酸部分で静電相互作用して、クロマチンを緩めるHMGタンパク質と類似している。APPも、190−260アミノ酸領域に、グルタミン酸とアスパラギン酸から成る、保存性の低いネガティブチャージアミノ酸ストレッチが密集しており、細胞内挙動に加えて、この点でもヌクレオリンと類似している。
本発明でOLIGOBLASTと名付けた方法で、APPアミノ酸配列相同性を解析した結果、APPの前半部1−500番目には、種々の生物のtRNA合成酵素、リボソームタンパク質、RNA分解酵素、転写因子などRNAと相互作用し得るタンパク質と部分的な相同性が見つかったことから、APPのrRNAとの相互作用機能が示唆された(表1)。また、ヌクレオリンとのネガティブチャージアミノ酸ストレッチで部分相同性もあることがわかった(表1)。マウスで同定されたDNA結合タンパク質であるCDEBPは、全長において、APPとの配列相同性およびドメイン構成の相同性が見られ、細胞分裂のインタフェースでは核内に検出された(非特許文献27)。
APPの核小体における局在情報の知見が得られる場合を考えてみる。
核小体は、細胞のタンパク質製造工場であるrRNAとリボソーム構築を活発に行う構造体であり、細胞の生命活動、生育、休止の制御に直接的に関わっている細胞内小器官である。ADは脳神経の神経細胞数減少、消失が最終的な表現型であるため、核小体の関与の可能性も考えられる。
APPがある状態の細胞で、一部が核小体に細胞内輸送され、例えばリボソームrRNA合成の制御に関わっているとしたら、APPの移動制御や核小体での働きに影響を与えるような変異は、AD発症となる可能性がある。従って、このようなAPPの核小体における存否や濃度等の局在情報と細胞の状態(生育、分化、休止、アポトーシス)や認知症発症との相関性を調べていくことはAD発症のメカニズムを調べることにつながる可能性がある。したがって、本発明の検出方法はADの原因または作用機序を明らかにする上で極めて重要な技術である。
(キット)
本発明の検査キットは、少なくとも以下の(A)および(B)を含むキットである。
(A)APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体
(B)当該抗体とAPPとの複合体の局在情報と異常有無との関連付けについて説明された取扱説明書
ここで、
(B)の取り扱い説明書は、例えば、細胞質、核、核小体において調べられたAPPの存在、すなわちAPPの局在性と異常有無の関係について記載された説明書をいう。さらに具体的には、ある種の細胞について、APPが核、核小体、細胞質ともに所定量存在するのが通常であるとし、核および核小体にはほとんど存在しない場合を異常である、またはその逆の場合に異常と説明された説明書が挙げられる。また、細胞の種類、細胞の由来する患者の疾病について調べて統計的なデータを取得してその関連付けをしておくことで、細胞の異常有無の判定、疾病の判定をすることが可能となる。
(対象細胞)
本発明の検出方法が適用できる細胞は、特に種類は問わず、いかなる細胞も検出対象とすることができる。
I 材料
(1)1次抗体
(i)GS4463(本明細書でGS4463と命名)(図6)
Genscript No.A00692、抗APP抗体(44−63)
免疫原がヒトAPPの44−63アミノ酸残基であるアフィニティー精製ウサギポリクローナル抗ペプチド抗体である。2μg/mlで使用。
(ii)10D1(図6)
IBL社、No.11090、抗ヒトAPP(N)抗体(10D1)
ヒトAPPのN末端の1−210アミノ酸残基のGST融合を免疫することによって得られたものであるため、エピトープは、APPのN末端の1−210アミノ酸に位置する。マウスモノクローナル抗体。5μg/mlで使用。
(iii)22C11(図6)
ミリポア社 No.MAB348、抗APP抗体
免疫原はAPPの66−81アミノ酸残基のペプチドである。マウスモノクローナル抗体。1μg/mlで使用。上記(i)から(iii)の抗体のAPPアミノ酸配列における認識部位を示す模式図を図6に示す。
(iv)フィブリラリン抗体
Abcam No.ab4566、フィブリラリン抗体[38F3]マウスIgGモノクローナル抗体。1000倍希釈で使用。
(v)抗eIF6抗体
Cell Signaling Technology 抗eIF6抗体(D16E9) No.3833、ウサギモノクローナル抗体。1000倍希釈で使用。
(vi)抗GAPDH抗体
Cell Signaling Technology、No.2118、抗GAPDH抗体(14C10)、ウサギモノクローナル抗体。1000倍希釈で使用。
(2)2次抗体
(2−1)蛍光染色用
いずれも、1000倍希釈で使用した。
(i)Alexa Fluor(登録商標)488(No.A11001)ヤギ抗マウスIgG
(ii)Alexa Fluor(登録商標)488(No.A11008)ヤギ抗ウサギIgG(H+L)
(iii)Alexa Fluor(登録商標)555(No.A21422)ヤギ抗マウスIgG(H+L)
(2−2)ウエスタンブロット分析用
いずれも5000倍希釈で使用した。
(i)ウサギポリクローナル抗マウス免疫グロブリンアルカリホスファターゼコンジュゲート(DAKO No.D0314)
(ii)ヤギポリクローナル抗ウサギ免疫グロブリンアルカリホスファターゼコンジュゲート(DAKO No.D0487)
(3)ヒトAPP合成ペプチド(HMP20)
ヒトAPPのN末端の44−63番目のアミノ酸配列(Ac−HMNVQNGKWDSDPSGTKTCI−CONH2(純度:92%))からなるペプチド(HMP20)
BLAST検索によれば、ヒトにおいてこの配列と70%以上の相同性のあるタンパク質は、APP以外にはない。オペロン・バイオテクノロジー株式会社(Operon Biotechnologies)(東京)から入手した。
(4)細胞株及び細胞培養条件
(i)ヒト神経芽SK−N−SH
DS Pharma Biomedical Co.,Ltd.製
No.EC86012802
MEM−α内で培養
(ii)正常ヒト星状細胞
No.CC−2565
Lonzaから入手
AGM BulletKit及びREGM(商標)BulletKit)内で培養
(iii)ヒト腎臓上皮細胞
No.CC−2554
同上
(5)細胞抽出物
(i)ウエスタンブロット用タンパク質
90mmディッシュで培養した細胞をPBSで2回洗浄し、細胞剥離溶液(Sigma Aldrich No.C5914)で剥離させた。4℃において1000rpmで5分間遠心分離を行って沈殿させた細胞を、プロテアーゼ阻害剤(Roche No.697 498 001 11)を含む400μLの氷冷PBSに再懸濁させた。5μLのBenzonase核酸分解酵素(Merck No.70644−3)及び100μLの5×SDS試料バッファーを素早く混合しながら添加し、ウェスタンブロット用のタンパク質として使用した。
(ii)細胞質画分
90mmディッシュから洗浄剥離し、遠心回収した細胞を、300μLのバッファーA(10mM HEPES(pH7.9)、10mM KCl、0.1mM EGTA、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.1mM APMSF、プロテアーゼ阻害剤(Roche No.11 697 498 001))内に再懸濁させ、氷上で15分間放置した。次に、18.8μLの10% Nonidet P−40をボルテックスしながら添加し、2500rpm(500×g)で3分間遠心分離した。上澄液を細胞質画分として使用した。
(iii)核画分
上記(ii)の沈殿物をピペットによって300μLのバッファーAに再懸濁させ、2500rpmで1分間遠心分離した。ペレットを300μLのバッファーB(20mM HEPES(pH7.9)、400mM NaCl、1mM EGTA、1mM EDTA、1mM DTT、1mM APMSF、プロテアーゼ阻害剤(Roche))内に再懸濁させ、氷上で15分間培養し、15,000rpmで遠心分離した。上澄液を核画分として使用した。
II 免疫染色および免疫蛍光顕微鏡法
全ての実験では、8354688 BD BioCoat PDL/Laminin8ウェル培養スライド内において、図に示す0.3mLの培地内で細胞(3×105)を37℃、5%CO2で24時間培養した。免疫染色処理は氷上において0℃で行った。細胞をPBSで2回洗浄(各5分間)し、PBSで希釈した4%パラホルムアルデヒドで20分間固定し、2回洗浄(各5分間)し、PBSで希釈した5%ヤギ血清で1時間にわたってブロックした。固定した細胞を、第1の抗体を含む250μLのブロッキングバッファー内で4℃で一晩培養した。第1の抗体の濃度は、2μg/mL(GS4463)、5μg/mL(10D1)、1μg/mL(22C11)とした。第1の抗体と共に培養した後、細胞をPBSで3回洗浄(各5分間)し、PBSで希釈した5%ヤギ血清で30分間にわたってブロックした。ブロッキングバッファーを第2の抗体を含む同一のバッファーと交換し、Alexa488又はAlexa555(Invitrogen)のコンジュゲートを1000倍の希釈率で添加し、1時間にわたって培養を行った。3回洗浄(各5分間)した後、DAPI(Invitrogen)を含むProlong Goldを細胞に添加した。免疫染色スライドはCarl Zeiss LSM510 META Confocalによって分析した。GS4463、HMP20、ヒトAPP合成ペプチド(44−63)(Ac−HMNVQNGKWDSDPSGTKTCI−CONH2)を使用した競合実験では、染色反応を行う前に、GS4463を5%ヤギ血清及び100μg/mLの当該ペプチドを含むPBS内で室温で1時間にプレインキュベーションを行った。
III ウエスタンブロット分析
SDS−PAGE用試料のタンパク質濃度を、純水(DW)で10倍に希釈した後にBIORADタンパク質検定法で測定した。10μgのSDS−PAGE用細胞抽出物タンパク質試料又は6μLの分子量マーカー(BIORAD Precision Plus Dual Color)を4〜20% SDS−ポリアクリルアミドゲル(Cosmobio Co. Ltd.、No.414879)(20mA)に添加し、iBlotシステム(Invitrogen No.IB1001)によってニトロセルロース膜(No.IB3010−02)にブロットした。膜をPBST(0.1% Tween−20を含むTBS)で希釈した3%スキムミルクによって室温で1時間又は4℃で一晩ブロックし、0.3%スキムミルク/PBST中で上記で示した濃度で1次抗体と共にインキュベートした。次に、膜を0.3%スキムミルク/PBSTで3回洗浄(各5分間)し、2次抗体(アルカリホスファターゼコンジュゲート)(希釈率:5000倍)と共に1時間インキュベートした。3回洗浄した後、免疫反応バンドをアルカリホスファターゼ基質溶液(1−step NBT/BCIP基質、Thermo Scientific No.PI34042)と30分間反応させて検出した。
〔実施例1〕 ヒト神経芽腫細胞株SK−N−SHにおけるAPPの検出(1)
1.試験方法
ヒト神経芽腫細胞株SK−N−SHについて、抗体、10D1、GS4463、22C11を使用して細胞を免疫染色して免疫蛍光顕微鏡により観察した。
2.試験結果
染色の結果を図1に示す。
10D1は細胞の細胞質及び核全体を染色した。GS4463も細胞質及び核を染色した。GS4463による核内からの点状染色シグナルは、明らかに核小体又は小斑点様構造を示した。一方、22C11による染色パターンは上記2つの抗体とは異なり、ほとんどが細胞質及びチューブリン様網目構造に存在していた。GS4463及び100μg/mLのヒトAPP合成ペプチド(44−63)とのプレインキュベーションにより、細胞質及び核染色シグナルはなくなった。これらの結果は、GS4463からの免疫染色シグナルは、APPの44−63アミノ酸残基の配列を認識する抗体から現れることを示している。
〔実施例2〕 ヒト神経芽腫細胞株SK−N−SHにおけるAPPの検出(2)
1.試験方法
上記実施例1によりGS4463により細胞質および核にAPPが存在することがわかったが、さらに核のうちでもAPPの存在部位が核小体かどうかについて調べた。SK−N−SH細胞を核小体マーカーであるフィブリラリン及びeIF6に対する抗体およびGS4463によって染色した。
2.試験結果
結果を図2に示す。
核におけるGS4463からのシグナルは、フィブリラリン及びeIF6抗体からのシグナルと完全に一致しており、APPと核小体マーカーの共局在化が確認された。一方、GS4463からのシグナルは、小斑点マーカーSC35抗体(ab11826)(データは示さず)の抗体と共局在化しなかった。これらの結果は、APPの一部の画分が核小体(少なくとも培養神経芽細胞株SK−N−SH)に位置することを示している。
〔実施例3〕 ヒト正常組織、脳及び腎臓から採取した初代培養細胞におけるAPPの検出
1.ヒト正常組織、脳及び腎臓から採取した初代培養細胞について、抗体、10D1、GS4463を使用して細胞を免疫染色して免疫蛍光顕微鏡により観察した。
2.試験結果
結果を図3及び図4に示す。
10D1は、SK−N−SH細胞と同様にヒト腎臓上皮細胞(HREC)の核を染色したが、正常ヒト星状細胞(NHA)においては、細胞質を染色した。GS4463は、NHA及びHRECの両方において、SK−N−SH細胞と同様に核小体様染色を示した。これらの10D1、GS4463からのシグナルは、ヒトAPP合成ペプチド(44−63)との予備培養によって観察されなくなった。したがって、APPの画分の一部は脳及び腎臓から採取した正常細胞においても核小体に局在することを示している。
〔実施例4〕 細胞質抽出物および核抽出物におけるAPPの検出
1.試験方法
細胞質画分(細胞質抽出物)および核画分(核抽出物)におけるAPPプロセッシング産物の分布及び分子量を調べるために、MEM−α内で培養したSK−N−SH細胞の細胞質画分及び核画分について抗体GS4463を使用してウエスタンブロットによって分析した。各画分からの抽出物の濃縮はGAPDH及びフィブリラリンに対する抗体によって確認した(図5−1)。
2.試験結果
結果を図5−2に示す。
完全長のAPPと思われる110〜120Kdのバンドが全ての抗体によって細胞質画分において観察された(図5−2(1)−(3))。グリコシド化反応のようなより高分子量スメアバンドが10D1又は22C11を使用することによって観察された。核画分に特異的な30Kdのバンドが10D1によって観察された。核画分における主要な免疫学的染色バンドは22C11によって観察されなかった。120Kdの産物に加えて、GS4463によって50kdの産物が細胞質画分(主要バンド)及び核画分において観察されたが、細胞質画分で観察された110kdのバンドは核画分において検出されなかった。上述したプロトコルによって調製したタンパク質の量が同じ場合、50Kdの産物に対する120kdの産物のモル比は核画分においてより高いように思われる。120kd及び50Kdの産物はヒトAPP合成ペプチド(44−63)とのプレインキュベーションによって消失し、これらのシグナルはAPPの44−63アミノ酸配列を認識する抗体に由来することを示している。また、70Kdの産物が両方の画分で検出され、60Kdの産物は強い染色条件においては核画分のみにおいて観察された(図5−2(5))。
〔実施例5〕 APPアミノ酸配列とDNAまたRNA結合タンパク質アミノ酸配列相同性
機能タンパク質は、そもそもポリペプチドの最少機能単位であるモチーフと呼ばれる15アミノ酸程度の配列の組み合わせであるとされている。これに基づいて、ヒトAPPのアミノ酸配列1−770を、30〜50アミノ酸ごとに区切り、相同性検索アルゴリズムBLAST(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)で検索した。通常、BLASTでは、相同性領域が長いほど良いスコアとなり、相同性の高いスコアから、ヒット対象がリストアップされる。このため、そのまま長い配列をBLAST検索にかけても、相同性は高くとも短い配列のヒット対象は、非常に低いスコアとなり、リスト上位250位では見えない。しかしながら、短い配列をBLASTにかけることで、短いが相同性の高いヒット対象が見えるようになる。このようなヒットはE値が高くなり、一つ一つの信頼性は低くなるが、同様の機能の種々のタンパク質がヒットしたり、ヒットする位置が集中したりすることで、その領域の機能の類推が可能となる。このような方法を本明細書でOLIGOBLASTとした。その結果、表1に示すように、APPの1〜500に、種々の微生物のtRNA 合成酵素、リボソームタンパク質、RNA分解酵素、転写因子、DNA結合タンパク質などと短いが60−100%の相同性のあることが分かり、特に400〜500番目に集中していた。また、rRNAに結合してリボソーム構築に関わり、細胞表面と核小体を行き来するヌクレオリンとの相同性も見つかった。通常のモチーフ検索アルゴリズムでは、これらのヒットは見られないことから、本検索方法は有用である。
本発明によりAPPの新しい局在情報を知ることができる。そして当該情報により、APPの新しい代謝調節経路、機能の情報を得ることにつながり、APPの本来の生理作用とAD発症機構を探る研究にとって極めて有用性が高い。たとえば、APPが核に局在するという情報だけでも、APPの関係する機能が複製、DNA修飾、転写などに絞られる。また、同様に、核小体はrRNA合成工場であり、細胞の休止・生育・消失の制御に関わるため、APPが核小体に局在するという情報だけでも、APPの関連する機能をこれらに絞ることができる。
さらにまた、APPの異常な局在性と疾病との相関性を調べることにより、APPの異常な局在性と相関する疾病の診断をすることも可能になる。
〔非特許文献〕
H.K. Anandatheerthavarada, G. Biswas, M.A. Robin, N.G. Avadhani, Mitochondrial targeting and a novel transmembrane arrest of Alzheimer's amyloid precursor proteinimpairs mitochondrial function in neuronal cells, J. Cell Bio. 161 (2003) 41-54. M. Arbel, I. Yacoby, B. Solomon, Inhibition of amyloid precursor protein processing by beta-secretase through site-directed antibodies, Proc. Natl. Acad. Sci. 102 (2005) 7718-7723. R. Palmisano, P. Golfi, P. Heimann, C. Shaw, C. Troakes, T. Schmitt-John, J.W. Bartsch, Endosomal accumulation of APP in wobbler motor neurons reflects impaired vesicle trafficking: Implications for human motor neuron disease, BMC Neurosci. 12 (2011) 24. R. Cappa, F. Cheng, G.D Ciccotosto, B. E. Needham, C.L. Masters, G.M., L.K. Fransson, K. Mani, The amyloid precursor protein (APP) of Alzheimer disease and its paralog, APLP2, modulate the Cu/Zn-Nitric oxide-catalyzed degradation of glypican-1 heparan sulfate in vivo, J. Biol. Chem. 280 (2005) 13913-13920. P. Seubert, T. Oltersdorf, M.G. Lee, R. Barbour, C. Blomquist, D.L. Davis, K. Bryant, L.C. Fritz, D. Galasko, L.J. Thal, I. Lieberburg, D.B. Schenk, Secretion of beta-amyloid precursor protein cleaved at the amino terminus of the beta-amyloid peptide, Nature. 361 (1993) 260-263. M. Citron, D.B. Teplow, D.J. Selkoe, Generation of amyloid β protein from its precursor is sequence specific, Neuron. 14 (1995) 661-670. X. Cao, T.C. Sudhof, Dissection of amyloid-beta precursor protein-dependent transcriptional transactivation, J. Biol. Chem. 279 (2004) 24601-24611. Heber S, Herms J, Gajic V, Hainfellner J, Aguzzi A, Rulicke T, Kretzschmar H, von Koch C, Sisodia S, Tremml P, Lipp H-P, Wolfer DP, Muller U (2000) Mice with combined gene knock-outs reveal essential and partially redundant functions of amyloid precursor protein family members. J Neurosci 20: 7951-7963. M. Aittaleb, T. Visone, M.O. Fenley, H. Li, Structural and Thermodynamic Evidence for a Stabilizing Role of Nop5p in S-Adenosyl-L-methionine Binding to Fibrillarin, J. Biol. Chem. 279 (2004) 41822-41829. F. Sanvito, S. Piatti, A. Villa, M. Bossi, G. Lucchini, P.C. Marchisio, S. Biffo, The beta4 integrin interactor p27(BBP/eIF6) is an essential nuclear matrix protein involved in 60S ribosomal subunit assembly, J. Cell Biol. 144 (1999) 823-837. T. Saitoh, M. Sundsmo, J.M. Roch, N. Kimura, G. Cole, D. Schubert, T. Oltersdorf, D.B. Schenk, Secreted form of amyloid beta protein precursor is involved in the growth regulation of fibroblasts, Cell. 58(1989) 615-622. H, Ninomiya, J.M. Roch, M.P. Sundsmo, D.A. Otero, T. Saitoh, Amino acid sequence RERMS represents the active domain of amyloid beta/A4 protein precursor that promotes fibroblast growth, J. Cell Biol. 121 (1993) 879-886. R.G. Perez, H. Zheng, L.H. Van der Ploeg, E.H. Koo, The β-Amyloid Precursor Protein of Alzheimer's Disease Enhances Neuron Viability and Modulates Neuronal Polarity, J. Neurosci. 17 (1997) 9407-9414. T.L Young-Pearse, A.C Chen, R. Chang, C. Marquez, D.J. Selkoe, Secreted APP regulates the function of full-length APP in neurite outgrowth through interaction with integrin beta1, Neural Develop. 3 (2008) 15. H.-S. Hoe, K.J. Lee, R. S. E. Carney, J. Lee, A. Markova, J.-Y. Lee, B.W. Howell, B.T. Hyman, D.T.S. Pak, G. Bu, G.W. Rebeck, Interaction of reelin with amyloid precursor protein promotes neurite outgrowth, J. Neurosci. 29 (2009) 7459-7473. M. Srivastava, H.B. Pollard, Molecular dissection of nucleolin's role in growth and cell proliferation: New insights, FASEB J. 13 (1999) 1911-1922. E.A. Nigg, Nucleocytoplasmic transport: signals, mechanisms and regulation. Nature 386 (1997) 779-787. S.H. Zaidi, J.S. Malter, Nucleolin and heterogeneous nuclear ribonucleoprotein C proteins specifically interact with the 3'-untranslated region of amyloid protein precursor mRNA, J. Biol. Chem. 270 (1995) 17292-17298. M. Erard, F. Lakhadar, F. Amalric, Repeat peptide motifs which contain β-turns and modulate DNA condensation in chromatin, Eur. J. Biochem. 191 (1990) 19-26. A. Blangy, F. Vidal, F. Cuzin, Y.H. Yang, K. Boulukos and M. Rassoulzadegan,CDEBP, a site-specific DNA-binding protein of the 'APP-like' family, is required during the early development of the mouse, 1995 J Cell Sci 108, 675-683.

Claims (10)

  1. 以下の工程を含むAPPを検出する方法。
    (a)細胞中のAPPと、APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体と反応させる工程;
    (b)該抗体とAPPの複合体を形成する工程;
    (c)該複合体を検出する工程;および
    (d)該複合体の検出部位を特定し、APPの局在情報を得る工程
  2. 該複合体の検出部位の特定が、あらかじめ細胞を前処理して部位を選択し、当該選択部位における検出有無により行う、請求項1に記載のAPPを検出する方法。
  3. APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体が、44−63番目の一部を認識する抗体である請求項1または2に記載のAPPを検出する方法。
  4. APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体が、GS4463(Genscript No.A00692、抗APP抗体(44−63))または10D1(IBL社、No.11090、抗ヒトAPP(N)抗体(10D1))である請求項1〜3のいずれかに記載のAPPを検出する方法。
  5. APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体が、GS4463(Genscript No.A00692、抗APP抗体(44−63))とAPP結合において競合する抗体または10D1(IBL社、No.11090、抗ヒトAPP(N)抗体(10D1))とAPP結合において競合する抗体である請求項1〜4のいずれかに記載のAPPを検出する方法。
  6. APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体が、HMP−20を認識する抗体である請求項1〜5のいずれかに記載のAPPを検出する方法。
  7. 検出部位が、細胞質、核または核小体のいずれか1以上である請求項1〜6のいずれかに記載のAPPを検出する方法。
  8. 検出部位が核小体であって、さらに以下の工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載のAPPを検出する方法。
    (e)フィブラリン抗体またはelF6により核小体を検出する工程
  9. 細胞におけるAPP局在性の異常有無の判定方法であって、
    (a)細胞中のAPPと、APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体と接触させる工程;
    (b)該抗体とAPPの複合体を形成する工程;
    (c)該複合体を検出する工程;および
    (d)該複合体の検出部位を特定することによりAPPの局在情報を得て、あらかじめ求めた正常状態との比較から、細胞のAPP局在性の異常有無を判定する工程、
    を含む方法。
  10. APPのアミノ酸配列の1−210番目(ただし、66−81番目を除く)のいずれか一部を認識する抗体、および当該抗体とAPPとの複合体の局在情報と異常有無との関連付けについて説明された取扱説明書、
    を含むAPPの局在性の異常有無を判定する検査キット。
JP2011287872A 2011-12-28 2011-12-28 Appの局在の検出方法 Active JP5682795B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011287872A JP5682795B2 (ja) 2011-12-28 2011-12-28 Appの局在の検出方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011287872A JP5682795B2 (ja) 2011-12-28 2011-12-28 Appの局在の検出方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013137223A true JP2013137223A (ja) 2013-07-11
JP5682795B2 JP5682795B2 (ja) 2015-03-11

Family

ID=48913063

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011287872A Active JP5682795B2 (ja) 2011-12-28 2011-12-28 Appの局在の検出方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5682795B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109959780A (zh) * 2019-04-28 2019-07-02 深圳市赛泰诺生物技术有限公司 一种微量物质检测装置、方法及智能手机

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011524523A (ja) * 2008-06-12 2011-09-01 ジェネンテック, インコーポレイテッド 神経変性を抑制する化合物のスクリーニング方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011524523A (ja) * 2008-06-12 2011-09-01 ジェネンテック, インコーポレイテッド 神経変性を抑制する化合物のスクリーニング方法

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6014040911; Molecular Brain Research vol.15, 1992, p.195-206 *
JPN6014040912; THE JOURNAL OF COMPARATIVE NEUROLOGY vol.348, 1994, p.244-260 *
JPN7014002804; Human Molecular Genetics Vol. 13, 2004, p.475-488 *

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109959780A (zh) * 2019-04-28 2019-07-02 深圳市赛泰诺生物技术有限公司 一种微量物质检测装置、方法及智能手机

Also Published As

Publication number Publication date
JP5682795B2 (ja) 2015-03-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Lim et al. Ubiquilin and p97/VCP bind erasin, forming a complex involved in ERAD
Pu et al. BORC, a multisubunit complex that regulates lysosome positioning
Viola et al. Amyloid β oligomers in Alzheimer’s disease pathogenesis, treatment, and diagnosis
Um et al. Calsyntenins function as synaptogenic adhesion molecules in concert with neurexins
JP2020125310A (ja) タウに対する抗体
Toh et al. GGA1 regulates signal-dependent sorting of BACE1 to recycling endosomes, which moderates Aβ production
Wilhelmus et al. Presence of tissue transglutaminase in granular endoplasmic reticulum is characteristic of melanized neurons in Parkinson's disease brain
US20100136573A1 (en) Diagnosing neurodegenerative diseases
JP2006508072A (ja) アミロイドベータ由来拡散性リガンド(ADDLs)、ADDL代替物、ADDL結合性分子、およびそれらの使用
WO2011005628A1 (en) Detection of neurodegenerative disease
US7807777B2 (en) Marker peptide for alzheimer's disease
Cui et al. Diverse CMT2 neuropathies are linked to aberrant G3BP interactions in stress granules
US9616101B2 (en) Differentiation marker and differentiation control of eye cell
Vadukul et al. α-Synuclein Aggregation Is Triggered by Oligomeric Amyloid-β 42 via Heterogeneous Primary Nucleation
TW202035438A (zh) 阿茲海默症之判定藥及判定方法
Ramos-Miguel et al. The SNAP25 interactome in ventromedial caudate in schizophrenia includes the mitochondrial protein ARF1
Esposto et al. Phosphorylated TAR DNA-binding protein-43: aggregation and antibody-based inhibition
WO2008042190A2 (en) Detection of neurodegenerative disease
JP5682795B2 (ja) Appの局在の検出方法
JP5997394B2 (ja) パーキンソン病のバイオマーカーおよびその利用
Schwarz et al. The small heat shock protein HSP25/27 (HspB1) is abundant in cultured astrocytes and associated with astrocytic pathology in progressive supranuclear palsy and corticobasal degeneration
US20090280110A1 (en) Cell Model for Alzheimer's Disease Pathology
TW202136297A (zh) Tau蛋白病變及失智症相關疾病之判定藥及判定方法
US10829528B2 (en) Therapeutic agents for neurological and psychiatric disorders
US20240069039A1 (en) Ran proteins as biomarkers in cag/ctg expansion disorders

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140129

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140825

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20141001

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20141119

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20141218

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141231

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5682795

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250