JP2013128434A - 消化管間質腫瘍マーカー - Google Patents

消化管間質腫瘍マーカー Download PDF

Info

Publication number
JP2013128434A
JP2013128434A JP2011278953A JP2011278953A JP2013128434A JP 2013128434 A JP2013128434 A JP 2013128434A JP 2011278953 A JP2011278953 A JP 2011278953A JP 2011278953 A JP2011278953 A JP 2011278953A JP 2013128434 A JP2013128434 A JP 2013128434A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
expression
gist
mir
hox
related gene
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2011278953A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Suzuki
拓 鈴木
Takeshi Niinuma
猛 新沼
Yukihisa Shinomura
恭久 篠村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sapporo Medical University
Original Assignee
Sapporo Medical University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sapporo Medical University filed Critical Sapporo Medical University
Priority to JP2011278953A priority Critical patent/JP2013128434A/ja
Publication of JP2013128434A publication Critical patent/JP2013128434A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

【課題】
本発明は、消化管間質腫瘍(GIST)の悪性度を診断するためのマーカーおよび方法、および該診断に用いられる組成物、ならびにGISTの処置に用いられる組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
消化管間質腫瘍(GIST)の悪性度判定の指標を得るための方法であって、試料における1または2以上のHOX関連遺伝子領域の発現を測定するステップを含む、前記方法、該方法に用いられる組成物、HOX関連遺伝子領域の発現を抑制する剤を含む組成物を提供することにより、上記課題が解決された。
【選択図】図3B

Description

本発明は、消化管間質腫瘍(GIST)の悪性度を診断するためのマーカーおよび方法、および該診断に用いられる組成物、ならびにGISTの処置に用いられる組成物に関する。
消化管間質腫瘍(GIST)は、消化管の間葉腫瘍の中でも最も一般的なものである。GISTは主に胃(60%)および小腸(25%)において発生するが、結腸および直腸(5%)、食道(2%)ならびに他の臓器(3%)などでも発生する。免疫組織化学的には、GISTはKITおよびCD34陽性であり、他の神経および平滑筋細胞マーカーに対しては陰性であるか可変的に陽性である。KITおよびCD34の発現は、小腸腸壁に存在し、消化管運動を制御する小腸カハール細胞(ICC)の特性である。したがってGISTはICCまたはICCの前駆細胞由来であると考えられている。
KIT変異の活性化は80%から90%のGISTにおいて同定され、血小板由来増殖因子受容体アルファ(PDGFRA)遺伝子の変異は、約5%のGISTにおいて観察される。そうした中で、メシル酸イマチニブ(かつてのSTI571)がチロシンキナーゼ阻害剤として開発され、これはBCR−ABL、KITおよびPDGFRの活性阻害を示す。メシル酸イマチニブは現在慢性骨髄性白血病および転移性GISTの両方の処置に用いられている。
GISTの生物学的ポテンシャルを予測することは難しく、悪性化能力を有する腫瘍をより正確に特定することができる変数を定義するために、多大な努力が為されてきた。ほとんどの分類体系において、悪性化能力の予測因子は腫瘍サイズおよび分裂速度であり、さらにより可変な度合いとしては、増殖指数または腫瘍部位である。他の潜在的なおよび有望なGIST悪性度のマーカーは分子変化である。上述の通り、多数のGISTは、活性化されたKITまたはPDGFRA変異を呈する。しかしながら、変異ステータス自体だけでは、GISTの多様な生態を完全に説明することはできず、高リスクのGISTの進行には追加の分子変化が必要であると考えられている。例えば、CD26(DPP4によってコードされる)の発現は、胃のGISTを有する患者の低い生存率と強く関連し、疾患の悪性進行に関与していることを示唆している(非特許文献1)。さらに、反復DNA配列(repetitive DNA elements)の低メチル化が、悪性GISTにおいて優位に観察されることおよび網羅的な低メチル化が染色体異常の増加と関与していることが示された(非特許文献2)。
マイクロRNA(miRNA)は、部分的に相補的な部位とのベースペアリングを通じて標的mRNAの翻訳阻害または直接的な分解を誘導することにより、遺伝子発現を制御する低分子非コーディングRNAである。miRNAは生物種間で高度に保存されており、発生、分化、細胞増殖およびアポトーシスなどを含む様々な生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たしている。これらのプロセスにおけるmiRNAの役割と合致して、多くの研究において、癌におけるmiRNA発現の広範な変化が実証されている。網羅的なmiRNA発現プロファイルならびに特異的なmiRNAの発現が、疾患の予後および臨床成績に関係していることもまた示されている。しかしながら今日まで、GISTのmiRNA発現は、少数のグループにしか研究されておらず、予後マーカーとしての役割を果たす特異的miRNAは未だに同定されていない。
Yamaguchi et al., J. Clin Oncol, 26:4100-4106 Igarashi et al., Clin. Cancer Res. 2010;16:5114-23
本発明は、消化管間質腫瘍(GIST)の悪性度を診断するためのマーカーおよび方法、および該診断に用いられる組成物、ならびにGISTの処置に用いられる組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、何がGISTの悪性化能力に寄与しているのかを調査するため、GISTにおける網羅的なmiRNA発現パターン調査を行ったところ、マイクロRNA、hsa−miR−196a(以下、miR−196aとする。)の上方制御が、GIST患者のリスクの高さおよび予後の悪さに関係していることを見出した。そしてmiR−196aの過剰発現がHOX関連遺伝子および転移関連非コードRNAの過剰発現を伴うという新たな知見を得、さらに研究を進めた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下に関する。
[1]消化管間質腫瘍(GIST)の悪性度判定の指標を得るための方法であって、試料における1または2以上のHOX関連遺伝子領域の発現を測定するステップを含む、前記方法。
[2]HOX関連遺伝子領域の発現が、HOXC関連遺伝子領域の発現である、[1]に記載の方法。
[3]HOX関連遺伝子領域の発現が、少なくともmiR−196a(配列番号1)の発現を含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]HOX関連遺伝子領域の発現が、少なくともHOTAIR(配列番号2)の発現を含む、[1]または[2]に記載の方法。
[5]さらにHOXC関連遺伝子領域の発現を測定するステップを含む、[3]に記載の方法。
[6]HOXC関連遺伝子領域の発現が、HOXC遺伝子の発現である、[5]に記載の方法。
[7]HOXC関連遺伝子領域の発現が、HOTAIRの発現である、[5]または[6]に記載の方法。
[8]測定が、マイクロアレイまたはRT−PCRによって行われる、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法。
[9]HOX関連遺伝子領域の発現産物と特異的に結合する成分を含む、GISTの悪性度診断用組成物。
[10]HOX関連遺伝子領域の発現産物と特異的に結合する成分が、該HOX関連遺伝子領域の配列もしくはその一部分を有する核酸、またはHOX関連遺伝子領域の配列もしくはその一部分と相補的な配列を有する核酸である、[9]に記載の組成物。
[11]HOX関連遺伝子領域が、miR−196a(配列番号1)である、[9]または[10]に記載の組成物。
[12]HOX関連遺伝子領域が、HOTAIR(配列番号2)である、[9]または[10]に記載の組成物。
[13]1または2以上の[9]〜[12]のいずれか1つに記載の組成物を含む、GISTの悪性度診断用キット。
[14]HOX関連遺伝子領域の発現を抑制する剤を含む、GIST処置用医薬組成物。
[15]HOX関連遺伝子領域が、HOXC関連遺伝子領域である、[14]に記載の医薬組成物。
[16]HOX関連遺伝子領域が、HOTAIRである、[14]または[15]に記載の医薬組成物。
[17]HOX関連遺伝子領域の発現を抑制する剤が、HOX関連遺伝子領域に対するsiRNAを含む、[14]〜[16]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
本発明により、GISTの悪性度を診断することが可能な分子マーカーを提供することができる。そしてこの分子マーカーを用いた本発明の方法により、従来では侵襲性が高く、確実ではなかったGISTの悪性度の診断を、簡便かつ的確に行うことができる。特に、従来GISTのマーカーとして知られていたCD26は胃のGISTにのみしか用いられなかったが、本発明のマーカーは胃以外のGISTにも適用可能である。さらに、本発明のマーカーとしてmiRNAを用いる場合、パラフィン包埋試料やホルマリン固定した試料から容易に検出することができるため、試料の調製などが非常に簡便となる。
また、本発明らによって見出された新たな事実であるmiR−196aの上方制御に伴い、HOX遺伝子領域の発現もまた上方制御されるため、かかる遺伝子領域にコードされる遺伝子や非コードRNAもまた本発明のマーカーとして用いることができる。HOX関連遺伝子、とくにHOXC遺伝子やHOXC関連遺伝子領域にコードされる非コードRNAであるHOTAIRは、GISTの処置にも用いることができ、GIST処置用の新規組成物を提供することができるものである。
図1Aは、GISTにおけるmiRNAの発現特性を表す。左図は、32個のGIST標本からのmiRNAマイクロアレイ結果の、教師なし階層的クラスタリング分析結果である。行はプローブセットを表し、列は患者を表す。リスク分類および腫瘍部位は下部に記載してあるとおりである。16個のGISTからアレイCGHを通じて得られた染色体14qの状態もまた、下部に示してある。14q32.31に位置するmiRNAは、左側の赤い棒線で示してある。右図は、左図において赤い棒線で示された部分を拡大したものである。左図と同様、リスク分類、腫瘍位置、14q染色体の状態が下に示してある。各図の下部においてカラーバーで示したとおり、正規化データと比較して発現が上昇しているものは赤で示され、発現が低下しているものは青で示され、変化のないものは黄色で示されている。一部の試料において、左図の赤い棒線で示されたマイクロRNAの発現が顕著に上方制御されており、これらのマイクロRNAが発現上昇している試料群は、階層的クラスタリングによって独立したクラスタを形成すると分析された。
図1Bは、分布図分析の結果を表す。上図は低リスク(n=10)対高リスク(n=14)のプロットであり、下図は中リスク(n=8)対高リスク(n=14)のプロットである。これによりmiR−196aが高リスクGISTにおいて過剰発現していることが明らかとなった。マイクロアレイデータは正規化され、対数変換(底は2)されている。miR−196aの発現は円でハイライトされている。 図1Cは、32個のGIST標本のマイクロアレイ分析から得られた、miR−196a発現レベルを表すグラフである。リスク分類は下部に示されている。
図2Aは、マイクロアレイ分析を通じて、およびTaqManRT−PCR(n=32)を通じて検出された、GIST標本におけるmiR−196a発現レベルの間の相関を表すプロットである。マイクロアレイデータは正規化され、対数変換(底は2)されており、RT−PCR結果は内在性U6snRNA発現を用いて正規化されている。ピアソン相関係数およびP値は示されたとおりである。 図2Bは、GISTにおけるmiR−196a発現の上方制御が高リスク度と関連することを示す図である。左は発見コホートにおける低(n=14)、中(n=14)および高(n=23)リスクGISTにおける、TaqManRT−PCRを用いたmiR−196a発現の比較であり、中央は検証コホートにおける非常に低または低(n=46)、中(n=25)および高(n=26)リスクGISTにおける、TaqManRT−PCRを用いたmiR−196a発現の比較であり、右図は全ての試料におけるmiR−196a発現の比較である。結果は内在性U6snRNAで正規化されている。
図2Cは、GISTにおけるmiR−196a発現の上方制御が悪い予後と関連することを示す図である。左から順に発見コホート、検証コホート、全GIST患者における生存率に対するmiR−196a発現の効果を示すカプラン・マイヤー曲線である。図中highはmiR−196a/U6≧1.4であり、lowはmiR−196a/U6<1.4である集団を意味する。 図2Dは、食道、胃、小腸、および直腸結腸に位置するGISTにおけるmiR−196a発現の比較である。
図3Aは、GISTの遺伝子発現特性がmiR−196aとHOXC遺伝子との間に強い相関があることを示す図の1つであり、miR−196a発現と相関する遺伝子発現特性のヒートマップである。行はプローブセットを表し、列は患者を表す。全4947プローブセットのうち、miR−196aが過剰発現している(n=7)およびしていない(n=7)GISTの間で異なって発現している(>2倍の変化)ものを選択した後、階層的クラスタリングを行った。各図の下部においてカラーバーで示したとおり、正規化データと比較して発現が上昇しているものは赤で示され、発現が低下しているものは青で示され、変化のないものは黄色で示されている。miR−196a発現状態は、過剰発現している患者は赤丸で、過剰発現していない患者は青丸で下部に示してある。 図3Bは、HOX遺伝子クラスタ内の、miR−196aファミリーの位置を表す模式図である。
図3Cは、HOXB(左図)およびHOXC(右図)発現データを用いた階層的クラスタリング分析の結果である。各図の下部においてカラーバーで示したとおり、正規化データと比較して発現が上昇しているものは赤で示され、発現が低下しているものは青で示され、変化のないものは黄色で示されている。miR−196a発現状態は、過剰発現している患者は赤丸で、過剰発現していない患者は青丸で下部に示してある。 図3Dは、HOXA(上図)およびHOXD(下図)発現データを用いた階層的クラスタリング分析の結果である。各図の下部においてカラーバーで示したとおり、正規化データと比較して発現が上昇しているものは赤で示され、発現が低下しているものは青で示され、変化のないものは黄色で示されている。miR−196a発現状態は、過剰発現している患者は赤丸で、過剰発現していない患者は青丸で下部に示してある。 図3Eは、miR−196aの発現レベルおよびHOXC遺伝子発現レベルまたはHOTAIR発現レベルの間の相関を示す図である。miR−196aの発現はTaqManRT−PCRを用いて分析され、内在性U6snRNAに対して正規化されている。HOXCおよびHOTAIRについてのマイクロアレイデータは正規化および対数変換(底は2)されている。ピアソン相関係数およびP値は示されたとおりである。
図3Fは、miR−196aの発現レベルおよびHOXB遺伝子発現レベルの間の相関を示す図である。miR−196aの発現はTaqManRT−PCRを用いて分析され、内在性U6snRNAに対して正規化されている。HOXBについてのマイクロアレイデータは正規化および対数変換(底は2)されている。ピアソン相関係数およびP値は示されたとおりである。 図3Gは、GIST標本(n=27)における染色体12および17のアレイCGHの結果を表す。増幅を示した遺伝子座を赤で、欠損を示した遺伝子座を緑で表してあり、miR−196aの発現状態は、過剰発現している患者は赤丸で、過剰発現していない患者は青丸で下部に示してある。いずれのGISTもHOXB(17q21)またはHOXC(12q13)の遺伝子座において増幅を示していないことから、これらのGISTにおけるHOXBおよびHOXCの発現上昇は単なる物理的なコピー数の増大に起因するものではないことが示唆される。
図4Aは、マイクロアレイ分析およびTaqManRT−PCR(n=32)を用いて検出された、GIST標本におけるHOTAIR発現レベルの間の相関を表すプロットである。マイクロアレイデータは正規化され、対数変換(底は2)されており、RT−PCR結果は内在性GAPDH発現を用いて正規化されている。ピアソン相関係数およびP値は示されたとおりである。 図4Bは、悪性GISTにおけるHOTAIRの上方制御の様子を表す図の1つであり、GIST標本パネル(n=52)におけるHOTAIRの上方制御のTaqManRT−PCR分析を表すグラフである。結果は内在性GAPDH発現を用いて正規化され、リスク分類は下部に示されている。
図4Cは、TaqManRT−PCRを用いて検出された、HOTAIRおよびmiR−196a発現のレベルの間の相関を表す図である。ピアソン相関係数およびP値は示されたとおりである。 図4Dは、TaqManRT−PCRを用いて検出された、GIST標本におけるHOTAIR発現と、マイクロアレイ分析を通じて検出されたHOXC発現のレベルとの間の相関を表す図である。ピアソン相関係数およびP値は示されたとおりである。 図4Eは、GIST患者の全生存に対するHOTAIR発現の効果を示すカプラン・マイヤー曲線である。図中highはHOTAIR/GAPDH≧0.0002であり、lowはHOTAIR/GAPDH<0.0002である集団を意味する。
図5Aは、miR−196aとその予測される標的遺伝子との関係を表す図である。左図はmiR−196aを過剰発現するGISTにおいて下方制御されている遺伝子(>2倍の変化)の数および計算上予測されるmiR−196a標的遺伝子の数についてのベン図である。右図は、GIST試料において下方制御されていた95個のmiR−196a標的遺伝子(139個のプローブセット)のヒートマップである。miR−196a発現状態は上部に示され、代表的な標的遺伝子は右部に示されている。正規化データと比較して発現が上昇しているものは赤で示され、発現が低下しているものは青で示され、変化のないものは黄色で示されている。miR−196aが高発現している試料群において、HOXファミリー遺伝子やANXA1といった遺伝子の発現が下方制御されていることがわかる。
図5Bは、HOTAIRとHOTAIR誘導性PRC2の標的遺伝子として従前知られた遺伝子との関係を表す図である。左図はHOTAIRを過剰発現するGISTにおいて下方制御されている遺伝子(>2倍の変化)の数およびHOTAIR誘導性PRC2の標的遺伝子として従前知られた遺伝子の数についてのベン図である。右図は、GIST試料において下方制御されていた144個のHOTAIR誘導性PRC2標的遺伝子(186個のプローブセット)のヒートマップである。HOTAIR発現状態は上部に示され、代表的な標的遺伝子は右部に示されている。正規化データと比較して発現が上昇しているものは赤で示され、発現が低下しているものは青で示され、変化のないものは黄色で示されている。HOTAIRが高発現している試料群において、EPHA7、WNT5A、JAM2などといったタンパク質が下方制御されていることがわかる。
図6Aは、GIST−T1細胞におけるTaqManアッセイの結果である。左図はmiR−196aの結果であり、右図はHOTAIRの結果である。 図6Bは、GIST−T1細胞におけるHOXCクラスター遺伝子のクロマチン特徴を表す。下に示した遺伝子の転写開始領域におけるトリメチル化ヒストンH3リジン4(H3K4me3)修飾はChIP−PCRにより解析された。HOXC13の5kb上流の非遺伝子領域をコントロールとして示している。 図6Cは、GIST−T1細胞におけるmiR−196aの機能解析である。上図は、抗miR−196a阻害分子でトランスフェクトしたGIST−T1細胞またはネガティブコントロールを用いた細胞バイアビリティアッセイを示す。細胞バイアビリティはトランスフェクションの48時間後に決定した。下図は、抗miR−196a阻害分子でトランスフェクトしたGIST−T1細胞またはネガティブコントロールを用いたマトリゲル侵襲アッセイを示す。右に示されているのは、膜毎の3つの無作為な顕微鏡野の平均であり、エラーバーは標準偏差を表す。
図6Dは、コントロールsiRNA(siCONT)またはHOTAIRを標的とするsiRNA(siHOT)でトランスフェクトしたGIST−T1細胞における、HOTAIRについてのTaqManアッセイを示す。 図6Eは、siCONTまたはsiHOTでトランスフェクトしたGIST−T1細胞を用いた細胞バイアビリティアッセイを示す。細胞バイアビリティアッセイは、トランスフェクションの48時間後に決定された。結果は8回の繰り返しの平均を示してあり、エラーバーは標準偏差を表す。 図6Fは、siCONTまたはsiHOTでトランスフェクトしたGIST−T1細胞を用いたマトリゲル浸潤アッセイを示す。右に示されているのは、膜毎の3つの無作為な顕微鏡野の平均であり、エラーバーは標準偏差を表す。
本発明は1つの側面において、消化管間質腫瘍(GIST)の悪性度判定の指標を得るための方法であって、試料における1または2以上のHOX関連遺伝子領域の発現を測定するステップを含む、前記方法に関する。
本発明で用いる場合、消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor、GISTともいう)とは、胃や腸などの消化管の壁に発生する間葉系腫瘍のことをいい、消化管壁の筋肉の層にあるカハール介在細胞が異常増殖して腫瘍となったものであると考えられている。通常の消化器系癌が粘膜上皮から発生するのに対し、GISTは粘膜の下の筋肉層に発生する点で大きく異なり、したがって同じ腫瘍ではあっても、その性質も特徴も癌とは全く異なる。GISTは主に胃および小腸で発生するが、直腸および結腸、食道あるいは他の器官でも発生し得る。本発明において、GISTの発生部位は消化管内であればいかなる部位でもよいが、好ましくは食道、胃、小腸および大腸であり、より好ましくは胃および小腸、最も好ましくは胃である。
GIST治療の第一選択肢は通常外科的切除であり、その後切除したGISTの「リスク」に応じた経過観察が行われる。通常このリスクは、腫瘍径や細胞分裂速度などを基準に分類される。腫瘍径が大きいおよび/または細胞分裂が活発であるほど転移や再発の可能性が高く、高リスクに分類される。本発明において「悪性度」とは、転移や再発のリスクの高さをいい、リスクと同義として扱われる。悪性度の分類としては、従来使用されている分類をそのまま用いてもよいし、用いる指標に依存して適切な分類法で分類されてもよい。
悪性度判定の指標は、何を計測するかに依存して変化し得、これに限定するものではないが、例えば、特定の遺伝子の発現を計測する場合は転写産物であるmiRNAやmRNAの発現量、翻訳産物であるタンパク質の発現量などが指標になり得る。また、直接これらの発現量を測定してもよいし、例えば発現産物を蛍光標識や放射線標識した後、蛍光強度や放射線強度を計測するなど、別の指標に基づいて間接的に測定してもよい。かかる間接的な指標もまた、本発明の指標に包含され得る。当業者であれば、本発明に包含される指標について、直ちに理解することができるだろう。
本発明において、「発現」とは、あるDNA配列が対応する相補的なRNAに転写されること、または対応するコードされたポリペプチドもしくはタンパク質に翻訳されることをいう。また本発明において「遺伝子領域」という語は、コード領域および非コード領域を含む、特定の遺伝子によってコードされるタンパク質を発現するために必要なゲノム上に存在するDNA配列の領域をいう。したがって「遺伝子領域の発現」とは、特定の遺伝子によってコードされるタンパク質を発現するために必要なDNA配列またはその一部が、当該配列またはその一部に相補的なRNAに転写されるか、または特定の遺伝子によってコードされるタンパク質またはその一部に翻訳されることをいう。例えば「HOX関連遺伝子領域の発現」といった場合、コード領域も非コード領域も含め、HOX遺伝子またはそのホモログ遺伝子がコードされているゲノム領域に存在する任意のDNA配列の発現を言う。したがってコード領域にコードされるタンパク質そのものやスプライシング後のmRNAまたはそれらの断片はもちろん、非コード領域に由来するmiRNAなどの非コードRNA(ncRNA)なども含まれる。
「遺伝子領域の発現を測定する」とは、特定の遺伝子領域に該当するDNA配列に由来する任意の発現産物の存在や発現量を測定することをいう。測定の方法は、当該技術分野において知られた任意の方法を用いてよく、これに限定するものではないが例えば、転写産物であるRNAの存在を確認するためのマイクロアレイ、RT−PCR、ノーザンブロッティング、など、発現量を測定するためのリアルタイムPCR、など翻訳産物であるタンパク質の存在を測定するための免疫組織染色、ウェスタンブロッティングなど、発現量を測定するための紫外線吸光法、蛍光染色法などが挙げられる。
一態様において、本発明の方法は、GISTを罹患しているか、または罹患している疑いのある対象において、GISTの悪性度を診断するための指標を得る方法を含む。したがって、HOX関連遺伝子領域の発現を測定される試料は、好ましくは測定の対象に由来する試料である。試料としては、これに限定するものではないが、例えば手術により切除された試料、バイオプシーのために採取された試料、対象から採取された血液試料などが挙げられる。また、パラフィン包埋やホルマリン固定などの処理が行われた試料であっても本発明の方法に用いることが可能であるが、採取後フレッシュな状態の試料でももちろん可能である。
本発明において、「対象」は、GISTに罹患するリスクを有するあらゆる動物を意味し、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくは霊長類であり、最も好ましくはヒトである。
上記態様にかかる本発明の方法により、対象におけるGISTの発症、転移、再発のリスクを診断することも可能である。したがってかかる診断方法も本発明に包含される。
本発明において「HOX関連遺伝子領域」は、ホメオボックス遺伝子またはそのホモログがコードされたゲノム領域のことをいい、これに限定するものではないが、例えば脊椎動物では、HOXA、HOXB、HOXCおよびHOXDの4つのHOXクラスタ領域のことを意味する。本発明の一態様において、HOX関連遺伝子領域は、好ましくはHOXB関連遺伝子領域および/またはHOXC関連遺伝子領域である。特に好ましいのはHOXC関連遺伝子領域である。本明細書中、例えば「HOXC遺伝子」という場合、HOXC関連遺伝子領域(「HOXCクラスタ」と互換的に用いられる)中にコードされた遺伝子を意味する。HOXC遺伝子としては、HOXC4、HOXC5、HOXC6、HOXC8、HOXC9、HOXC10、HOXC11、HOXC12、HOXC13が知られている。
本発明の好ましい態様として、HOXC関連遺伝子領域の発現が、HOTAIRの発現である。HOTAIRはHOX transcript antisense intergenic RNAの略称であり、HOXCクラスタに存在する非コードRNAである。HOTAIRは、ポリコーム抑制性複合体2(polycomb repressive complex 2:PRC2)と相互作用し、HOXDクラスタの遺伝子発現をトランスに制御することで知られている(Rinn et al., Cell 129, 1311-23. (2007))。近年、乳癌においてHOTAIRを過剰発現させると、PRC2が800以上の遺伝子プロモーターとして機能し、ヒストンのH3K27におけるメチル化および標的遺伝子のエピジェネティックなサイレンシングに導くことが示され、本発明者らにより、高リスクのGISTにおいてもHOTAIRが特異的に強発現していることが初めて示された。したがって、試料中のHOXC関連遺伝子領域、特にHOTAIRの発現を測定し、ネガティブコントロール中の発現と比較して発現が有意に高い場合、当該試料中のGISTは高リスクGISTであると判定できる。コントロールとしては、高リスクGISTではないことが既知であるものであればいかなるものも用いることができ、これに限定するものではないが、例えば同一対象の採取部位の正常組織、他の分類方法において高リスクではないと分類されたGISTなどが挙げられる。
HOX関連遺伝子領域は、様々な領域の発現産物が相互に別の領域の発現を制御していると考えられている。例えば、miR−196aは、下流のHOXB8やHOXC8などの発現を制御していることが知られている。したがって、ある好ましい態様において、1つの試料中において、2以上のHOX関連遺伝子領域の発現を測定する。
本発明の別の好ましい態様として、HOX関連遺伝子領域の発現が、miR−196aの発現である。miR−196aは、HOXBおよびHOXCクラスタに存在し、HOX8B、HOX8C、HOX8Dなどの発現を制御するマイクロRNAである。近年、miR−196aは乳癌や食道癌において強発現していること、大腸癌SW480においてmiR−196aを強制発現させると、浸潤性、転移性などが増大することなどが報告されている(例えばLuthra et al., Oncogene., 2008;27:6667-78、Li et al., Cancer Res., 2010;70:7894-904, Schimanski et al., World J. Gastroenterol, 2009 15(17):2089-2096など)。一方で、悪性のメラノーマにおいては発現が低下し、miR−196aを強制発現させることにより、侵襲性が低下することも報告されている(Mueller et al., Int J. Cancer, Volume 129, Issue 5, pages 1064-1074)。本発明者らによって、高リスクのGISTにおいてmiR−196aが特異的に強発現していることが初めて示された。したがって、試料中のmiR−196aの発現を測定し、ネガティブコントロール中の発現と比較して発現が有意に高い場合、当該試料中のGISTは高リスクGISTであると判定できる。コントロールとしては、高リスクGISTではないことが既知であるものであればいかなるものも用いることができ、これに限定するものではないが、例えば同一対象の採取部位の正常組織、他の分類方法において高リスクではないと分類されたGISTなどが挙げられる。
癌においては、miR−196aの発現と悪性化にはある種の相関があると考えられているものの、上記の通り癌種によって悪性度と発現量が異なっていることから、その役割については明確になっておらず、癌種によって異なっていることが予想される。miR−196aは下流のHOXB7およびHOXC8の発現を下方制御することが知られており、これらが同時に強発現している例は知られていなかったが、本発明者らは、高リスクのGISTにおいてはmiR−196aとHOXC関連遺伝子領域が同時に強発現していることを新たに見出した。したがって本発明の一態様において、複数のHOX関連遺伝子領域の発現を測定するステップが含まれる。かかる態様において、好ましくは測定されるHOX関連遺伝子領域の少なくとも1つはmiR−196aである。より好ましい態様においては、少なくともmiR−196aおよびHOXC関連遺伝子領域の発現を測定するステップを含む。さらに好ましい態様において、少なくともmiR−196aおよびHOXC遺伝子の発現を測定するステップを含む。別のさらに好ましい態様においては、少なくともmiR−196aおよびHOTAIRの発現を測定するステップを含む。
本発明の方法は、例えば生検試料などを用いて行うことができる。試料から上記指標を生検試料はしばしばホルマリン固定、パラフィン包埋されるため、これらの処理後も安定的に検出可能である、マイクロRNAの発現を検出することが好ましい。したがって、マイクロRNAを簡便に検出する手段であるマイクロアレイまたはRT−PCRによって行われることが好ましい。
さらに本発明には、上記指標を得るための方法において得られた指標を用いて、GISTの悪性度を診断する方法も包含する。
本発明は、別の側面において、上記側面における診断方法に用いることができる診断用組成物も包含する。診断用の指標は、上述の通り、HOX関連遺伝子領域の発現を測定することで得られるので、本発明の診断用組成物は、遺伝子領域の発現を測定することができる成分を含む。遺伝子領域の発現を測定することができる成分は、測定する発現産物に依存して変化し得、当業者は適宜選択することが可能である。かかる成分としては、発現産物に特異的に結合することができる成分であれば何でもよく、発現産物が転写産物である場合は、これに限定するものではないが例えば、転写産物RNAに相補的な配列を有する核酸、転写産物と特異的に結合するプローブなどが挙げられ、発現産物が翻訳産物である場合は、これに限定するものではないが例えば、翻訳産物タンパク質に特異的に結合する抗体などが挙げられる。本発明の方法において計測される発現産物としては転写産物RNAが好ましいので、診断用組成物に含まれる成分としても好ましくは、HOX関連遺伝子領域の配列もしくはその一部分、またはHOX関連遺伝子領域の配列もしくはその一部分と相補的な配列を有する核酸である。かかる核酸としては、これに限定するものではないが例えば、HOXタンパク質をコードするmRNAに対するsiRNA、HOTAIRやmiR−196aなどのncRNAに対するsiRNAなどが挙げられる。
ある好ましい態様において、本発明の診断用組成物は、miR−196aの発現産物と特異的に結合する成分を含有する。これにより、miR−196aの発現産物の存在を測定することが可能である。miR−196aの発現産物と特異的に結合する成分としては、これに限定するものではないが例えば、miR−196a(配列番号1)またはその一部分と相補的な配列を有する核酸である。
別の好ましい態様において、本発明の診断用組成物は、HOTAIRの発現産物と特異的に結合する成分を含有する。これにより、HOTAIRの発現産物の存在を測定することが可能である。HOTAIRの発現産物と特異的に結合する成分としては、これに限定するものではないが例えば、HOTAIR(配列番号2)またはその一部分と相補的な配列を有する核酸である。
上述の通り、ある好ましい態様においては、2以上のHOX関連遺伝子領域の発現を測定する。したがって、本発明の診断用組成物も、2種以上のHOX関連遺伝子領域の発現産物と特異的に結合する成分を含み得る。特定の好ましい態様において、本発明の診断用組成物は、miR−196aと特異的に結合する成分およびHOTAIRと特異的に結合する成分を含むことができる。
また本発明の一態様において、上記診断用組成物を含む、GISTの悪性度診断用キットも包含される。診断用キットに含まれる他の要素としては、これに限定するものではないが例えば、組成物を梱包する容器、上記診断用組成物の調製方法や使用方法などが記載された説明書等などが含まれてよい。また、本発明のキットは、本発明の組成物を完成するための構成要素の全てを含んでいてもよいが、必ずしも全ての構成要素を含んでいなくてもよい。したがって、本発明のキットは、医療現場や実験施設などで通常入手可能な試薬や溶媒、例えば、無菌水、生理食塩水、緩衝液などを含んでいなくてもよい。
本発明は、高リスクのGISTにおいて、HOX関連遺伝子領域が高発現していることに基づくものであり、HOX関連遺伝子領域の発現を抑制することにより、GISTのリスクを低減させることができると考えられる。したがって、HOX関連遺伝子領域の発現を抑制する剤を含む、GISTのリスクを低減させるための組成物も本発明に包含される。「GISTのリスクを低減させる」とは、GISTの転移や再発の危険性を低減させることをいい、より好ましくは、GISTを処置することをいう。したがって好ましくは、GISTのリスクを低減させるための組成物は、GIST処置用医薬組成物である。
抑制するHOX関連遺伝子領域は、高リスクのGISTに特徴的に発現している遺伝子領域であればいかなるものでもよいが、好ましくはHOXC関連遺伝子発現領域であり、より好ましくはHOTAIRである。
本発明において「遺伝子領域の発現を抑制する」とは、遺伝子領域の発現産物が本来の機能を発揮することを妨げることをいう。したがって、転写や翻訳そのものを妨げることによって発現産物の生成自体を妨げてもよいし、発現産物が有する機能を阻害してもよい。発現そのものを妨げる例としては、これに限定するものではないが、例えば、転写因子の機能を抑制するなどが挙げられる。発現産物の機能を阻害する例としては、これに限定するものではないが、例えば、siRNAなどによって転写産物を分解する、抗体やリガンドなどにより翻訳産物の機能を阻害する、特異的酵素などにより翻訳産物を不活性型に変化させるなどが挙げられる。
「HOX関連遺伝子領域の発現を抑制する剤」は、当該技術分野において遺伝子領域の発現を抑制すると知られたいかなる剤も用いることができる。「遺伝子領域の発現」には転写も翻訳も含まれるため、どちらが抑制されても構わないが、転写産物、すなわちRNAの状態で効果を発揮するncRNAも含まれることから、好ましくは転写を抑制する。中でも特定のRNAを選択的に抑制できることから、siRNAがより好ましい。
本発明の医薬組成物は、HOX関連遺伝子領域の発現を抑制する剤の他に、例えば薬学的に許容可能な担体、溶媒、他のGIST処置用化学治療剤など、当該技術分野において知られた、許容可能な任意の追加の成分を含んでよい。担体としては、これに限定するものではないが、例えばプラスミドベクター、ウイルスベクター、リポソームなどが挙げられる。溶媒としては、これに限定するものではないが、例えばPBS、蒸留水等の希釈剤、生理食塩水などが挙げられる。他のGIST処置用化学治療剤としては、これに限定するものではないが、例えばイマチニブ、スニチニブ、ニロチニブなどが挙げられる。
本発明の医薬組成物は、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、限定することなく、経口、経腸、静脈内、筋肉内、皮下、局所、肝内、胆管内、肺内、気道内、気管内、気管支内、経鼻、直腸内、動脈内、門脈内、心室内、骨髄内、リンパ節内、リンパ管内、脳内、髄液腔内、脳室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内および子宮内等の経路で投与してもよく、各投与経路に適した剤形に製剤してもよい。かかる剤形および製剤方法は任意の公知のものを適宜採用することができる。
例えば、経口投与に適した剤形としては、限定することなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、シロップ剤などが挙げられ、また非経口投与に適した剤形としては、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤などの注射剤が挙げられる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌溶液または懸濁液の形態であることができる。当業者であれば以上の記載から、日常的な実験によって適切な用法、用量および許容可能な追加成分を決定し、剤形化することが可能であろう。
以下の実施例は本発明について、さらに具体的に説明するものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。当業者として通常の知識および技術を有するものは、本発明の精神を逸脱しない範囲で、下記実施例で示された態様に多様な改変を行うことができるが、かかる改変された態様も本発明に含まれる。
実験および結果
以下の実施例において、DNAコピー数は、アレイベース比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)で分析した。アレイCGHは以下の通り行った。すなわち、新鮮な凍結保存GIST標本からの500ngのゲノムDNAおよび性別を合わせた正常対照DNA(Promega, Madison, WI, USA)をGenome DNA Enzymatic Labeling Kit(Agilent Technologies)を用いてそれぞれCy5およびCy3で標識し、その後Human Genome CGH Microarray Kit 105A(G4412A;Agilent Technologies)にハイブリダイズさせた。Agilent Genomic Workbench ソフトウェア(Agilent Technologies)に含まれるADM-2アルゴリズムを、DNAコピー数異常を同定するのに用いた。コピー数欠失はlog2比<−0.5として定義し、コピー数増幅はlog2比>0.5として定義した。
以下の実施例においてトリメチル化ヒストンH3リジン4(H3K4me3)はクロマチン免疫沈降法(ChIP)を用いて分析した。ChIPは以下の通り行った。すなわち、細胞をホルマリンによってクロマチンを固定し、抗H3K4me3抗体で免疫沈降後、HOXC遺伝子領域をPCR増幅することで、HOXC遺伝子領域のH3K4me3状態を定量的に解析した。
以下の実施例において、統計的分析は以下の通り行った。
発現データの分布は対数正規分布に従うと見られているため、全ての遺伝子発現レベルは後続の統計的分析のために対数変換された。幾何平均はしたがって、発現レベルの要約統計量として算出された。連続変数の比較は、tテストまたは事後多重比較(ゲイムス−ハウエルテスト)での一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて行った。ピアソンの相関係数は2つの変数の相関の強さを記述するために計算された。カテゴリー変数の比較はフィッシャーの直接確率検定を用いて行われた。予後因子と遺伝子発現レベルとの間の関連性を査定するため、ロジスティックまたはCox回帰分析を行った。これらの回帰分析のため、最適なカットオフ値を採用して、臨床学的因子について調節したまたは調節していない、オッズ比およびハザード比を計算した。カプラン・マイヤー曲線をプロットし、遺伝子発現ステータスによって層別化した2つのグループを比較した。全ての統計的分析はSPSS Statistics 18(IBM Corporation, Somers, NY, USA)を用いて行った。
例1.腫瘍試料の採取
計56の新鮮な凍結保存したGIST標本を、札幌医科大学病院、恵佑会札幌病院および大阪大学病院から得た。加えて、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片である100個のGIST標本を、新潟大学病院から得た。標本収集の前に、全ての患者からインフォームドコンセントを得、本研究は各々の施設内倫理委員会に承認された。リスク度は、Fletcher et al.(Hum. Pathol. 2002;33:459-65)にて提案されたとおりのリスク決定システムにしたがって査定された。すなわち、径が<2cmであり、かつ400倍の高倍率視野(HPF)での観察において細胞分裂数が<5/50視野(以下<5/50HPFのように記す)であるものを「非常に低リスク」、径が2〜5cmであり、かつ細胞分裂数が<5/50HPFであるものを「低リスク」、径が<5cmであり、かつ細胞分裂数が6〜10/50HPFであるもの、または径が5〜10cmであり、かつ細胞分裂数が<5/50HPFであるものを「中リスク」、径が>5cmであり、かつ細胞分裂数が>5/50HPFであるもの、または径が>10cmであるもの、または細胞分裂数が>10/50HPFであるものを「高リスク」と分類した。Total RNAを、新鮮な凍結保存組織標本から、mirVana miRNA Isolation Kit(Ambion, Austin, TX, USA)を用いて抽出した。Total RNAを、FFPE組織標本から、RecoverAll Total Nucleic Acid Isolation Kit for FFPE(Ambion)を用いて抽出した。腫瘍組織は病理学者によって再調査され、肉眼解剖された(macrodissected);本研究では顕微解剖は行われなかった。新鮮な凍結保存組織標本からは、ゲノムDNAを標準的なフェノール−クロロホルム法を用いて抽出した。FFPE組織標本からは、QIAamp DNA FFPE Tissue Kit(Qiagen, Hilden, Germany)を用いてゲノムDNAを抽出した。
例2.miRNAマイクロアレイ分析
単色マイクロアレイベースのmiRNA発現分析を、取扱説明書(Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)にしたがって行った。簡潔には、新鮮な凍結保存のGIST組織からの100ngのTotal RNAを、miRNA Labeling Reagent(Agilent Technologies)を用いてラベリングし、その後ラベルしたRNAを、859のヒトmiRNAおよび80のウイルスmiRNAをカバーするHuman miRNA Microarray V3(Rel 12.0, G4470C; Agilent Technologies)とハイブリダイズさせた。一度ハイブリダイズさせたら、アレイをAgilent G2565BA Microarray Scanner(Agilent Technologies)を用いてスキャンし、データをFeature Extraction software ver. 10.7(Agilent Technologies)を用いて解析した。次にマイクロアレイデータをGeneSpring GX software ver. 11(Agilent Technologies)にインポートし、変位値正規化(quantile normalization)を行った。試料を、そのリスク度にしたがって3つのグループに分類し、散布図分析を行って、リスク度間で異なって発現しているmiRNAを同定した。その後正規化したマイクロアレイデータをTaqManアッセイ結果と、GraphPad PRISM ver. 5(GraphPad Software Inc., La Jolla, CA, USA)を用いて比較した。このmiRNAマイクロアレイデータのGene Expression Omnibus登録番号はGSE31741である。
上記miRNAマイクロアレイ分析を、32個の新鮮な凍結保存GIST標本(低リスク10個、中リスク8個および高リスク14個)で行った。939個のプローブセットのうち、試験された試料のいずれにも検出可能なシグナルが存在しなかったために470個が除外された。残りの469個のプローブセットを用いた教師なし階層的クラスタリング(unsupervised hierarchical clustering)は、染色体14q32.31上にコードされるmiRNAを豊富に発現するGISTが、分離したクラスタを形成することを明らかにした(図1A)。さらに本発明者らは、miRNA発現プロファイルとアレイCGHの結果とを比較することにより、このクラスタは14q欠失のない腫瘍において豊富であることを見出した。これらの結果は、14q欠失とGISTにおける14q上に位置するmiRNA発現との逆相関を示す最近の報告と整合し、発明者らのマイクロアレイ分析の信頼性を示唆するが、クラスタリング分析はリスク分類に基づいた腫瘍の区別をしなかった。
続いて散布図分析を行い、発明者らは、低または中リスクのGISTと比較して、高リスクのGISTにおいてmiR−196aが顕著に上方制御されていることを見出した(図1B)。図1Cに示すように、miR−196aは、試験された1つを除く全ての低または中リスクGISTにおいて検出されなかった一方で、半分以上の高リスク腫瘍において上方制御されていた。miR−196aの上昇した発現は、胃および小腸のGISTの両方で観察された。
例3.miRNAの定量的RT−PCR
miR−196aの発現を、TaqMan microRNA Assays(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いて分析した。簡潔には、特異的ステムループRTプライマーを用いて5ngのTotal RNAを逆転写し、その後特異的プライマーおよびTaqManプローブでPCRを用いて増幅および検出した。PCRは7500 Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems)を用いて3度行い、比較デルタCt分析にはSDS v1.4ソフトウェア(Applied Biosystems)を用いた。U6 snRNA(RNU6B; Applied Biosystems)が内因性コントロールとしての役割を果たした。
GISTにおけるmiR−196aの上方制御の臨床的意義を査定するため、発明者らは、マイクロアレイで最初に分析された32個の標本を含む56個の新鮮な凍結保存GIST標本(発見コホート)で上記の通りTaqManアッセイを行った。患者の臨床病理学的特徴は、以下の表1にまとめてある。
TaqManアッセイの結果は、マイクロアレイから検出可能なシグナルがなかったものにおいてTaqManアッセイで試料中の低レベルのmiR−196a発現を明らかにしたものの、マイクロアレイのデータと高度に整合していた(図2A)。
miR−196aが、他のグループと比較して、高リスクGISTにおいて顕著に上方制御されている(P=0.004、one-way ANOVA)(図2B、表2)という発見もまた、マイクロアレイの結果と整合する。加えて、ロジスティック回帰分析は、miR−196aの上方制御と高リスク分類との間の関連がmiR−196a/U6≧0.4のカットオフ値を採用した場合に最も高くなることを明らかにした(オッズ比13.7;95%信頼区間3.4〜54.6;P<0.001)(表3)。
生存データを32人の患者から得、Coxハザード分析は、カットオフ値1.4を採用したときの、上昇したmiR−196a発現を有する患者の最高ハザード比を明らかにした(表4)。カプラン・マイヤー分析は、その効果には統計的有意差はなかったが、高レベルのmiR−196aを発現するGISTを有する患者での低い生存率を示した(図2C)。
次に、TaqManアッセイを用いて、100個のFFPE・GIST標本からなる検証コホート(表1)を分析した。上に概説した発見と整合するとおり、miR−196aの上方制御が、高リスクGISTと関連していることが観察された(図2B、表2および3)。さらにカットオフ値(miR−196a/U6≧1.4)を用いることにより、Coxハザード分析は、高レベルのmiR−196a発現を呈する患者についての上昇したハザード比を明らかにし(表4)、カプラン・マイヤー分析は、同一の患者についてのより短い生存時間を示した(図2C)。これらの結果は、新鮮な凍結保存およびFFPE・GIST標本の両方における、miR−196a発現の予後的重要性を確認する。
最後に発見コホートおよび検証コホートにおけるGIST試料を組み合わせ、miR−196aの臨床病理学的意義を検査した。miR−196aの発現は、高リスク度(図2B、表2、表3)、臨床転帰の不良(図2C、表4)、腫瘍サイズ、細胞分裂回数および転移(表5)と正に相関した。興味深いことに、miR−196aの発現は年齢または性別と関連しなかったが、腫瘍位置と強く関連した(表5)。
miR−196a発現の中央値は、食道からのGIST標本において最低であり、GIST部位が消化管の口腔側から肛門側へと動くにつれて増大した(P<0.001)(表5、図2D)。重要なことに、miR−196a発現の平均レベルは小腸においての方が胃においてより高かったが、どちらの組織においても高リスク度と正に相関していた(表6)。
例3.遺伝子発現マイクロアレイ分析
単色マイクロアレイベースの遺伝子発現分析を、取扱説明書(Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)にしたがって行った。簡潔には、700ngのTotal RNAを増幅し、Quick Amp Labeling Kit One-Color(Agilent Technologies)を用いてラベルし、その後合成cDNAを、19416遺伝子をカバーする41000個のプローブセットを含むWhole Human Genome Oligo DNAマイクロアレイ(G4112F; Agilent Technologies)とハイブリダイズさせた。マイクロアレイデータはGeneSpring GX ver.11(Agilent Technologies)にインポートし、75%点シフト正規化を実施した。試料をmiR−196a発現ステータスにしたがって2グループに分類し、グループ間でそれぞれ異なって発現する遺伝子(>2倍の変化)を抽出した。その後、階層的クラスタリング、ジーンオントロジー分析、および遺伝子セット分析(GSA)を行った。このマイクロアレイデータのGene Expression Omnibus登録番号はGSE31802およびGSE32064である。
GISTにおける、miR−196aの上方制御と網羅的な遺伝子発現プロファイルとの間の関係を分析するため、低い(n=7、平均miR−196a/U6=0.1)または高い(n=7、平均miR−196a/U6=15.7)miR−196a発現を示す、年齢、性別、腫瘍位置を併せたGIST標本を選択し、遺伝子発現マイクロアレイ分析にかけた(表7)。
4947個のプローブセット(3206個の固有遺伝子に対応)について、miR−196a過剰発現するGISTとそうでないGISTとの間で、発現が2倍以上異なるものがあった。これらのうち、3536個のプローブセット(2248個の固有遺伝子)が、miR−196aを過剰発現する腫瘍において低減した発現を示した。4947個のプローブセットを用いた階層的クラスタリング分析は、miR−196a発現ステータスを基礎としてはっきりと腫瘍を差別化し(図3A)、ジーンオントロジー分析は、異なって発現している遺伝子のうち、「免疫システム」、「細胞膜」および「細胞間情報伝達」に関する遺伝子が強く過剰発現していることを示唆した(表8)。
異なって発現する遺伝子をさらに特徴づけるため、遺伝子セット分析(GSA)を実施し、HOX遺伝子セットについて最高の濃縮度スコア(enrichment score)を得た(表9)。
miR−196aは、それぞれHOXBおよびHOXCクラスタ内に位置する、miR−196a−1およびmiR−196a−2という2つのパラロガスな遺伝子座にコードされている(図3B)。HOXC遺伝子についての発現データを用いた階層的クラスタリング分析は、GIST試料を2つのグループに区別し、複数のHOXC遺伝子における高い発現とmiR−169aの上方制御との間に完璧な対応関係を観察した(図3C)。他のHOXクラスタは、miR−196aとの相互関係は明確には示さなかったものの、遺伝子発現量とクラスタリング分析による分類にはある程度の相関が見出された(図3C、3D)。
次に、各HOX遺伝子のマイクロアレイシグナルとmiR−196aの発現とを比較し、多数のHOXC遺伝子(HOXC13、HOXC11、HOXC10、HOXC9、HOXC8、HOXC6およびHOXC5)の発現レベルとmiR−196aの発現レベルとの間に強い正の相関があることを見出した(図3E)。殊に、大型遺伝子間非コードRNA(large intergenic non-coding RNA:lincRNA)をコードし、HOXC遺伝子に対してアンチセンス配向に位置する、HOTAIRの発現が、miR−196aと同時に上方制御されていることもまた見出した(図3Cおよび3E)。miR−196a発現のレベルはまた、miR−196a−1の近傍に存在するHOXB遺伝子(HOXB13およびHOXB9)の発現レベルとも、HOXC遺伝子のものほど顕著な相関ではなかったものの、相関していた(図3F)。
HOXC遺伝子の発現パターンと、同じ遺伝子座においてコードされる非コードRNAの発現パターンとの間の類似性は、GISTにおけるこれらの遺伝子の活性化に関与する共通の制御メカニズムを示唆する。しかしながら、27個のGIST標本のアレイCGH分析は、どのHOX遺伝子座における増幅または欠失も検出せず、その過剰発現が、miR−196aまたはHOX遺伝子発現とは無関係であり、遺伝子増幅に起因するということはあり得なそうだということになる(図3G)。
例4.HOTAIRの定量的RT−PCR
一本鎖cDNAはSuperscript III逆転写酵素(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いて調整した。HOTAIRの定量的RT−PCRは、TaqMan Gene Expression Assay(Assay ID, Hs03296631_m1;Applied Biosystems)および7500 Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems)を用いて行った。GAPDH(Assay ID, Hs99999905_m1; Applied Biosystems)が内因性コントロールとしての役割を果たした。
最近の研究は、HOTAIRが原発性乳癌において過剰発現し、転移に関連することを示した。GISTにおけるその臨床的意義を検査するため、発見コホート試料について上記TaqMan分析を行った。HOTAIRについてのマイクロアレイシグナルは、TaqMan分析の結果と高度に整合した(図4A)。HOTAIRは、低または中リスクGISTと比較して、もっぱら高リスクGISTにおいて上方制御されており(P=0.018)(図4B)、その発現はmiR−196aおよびHOXC遺伝子群の発現と正に相関している(図4CおよびD)。加えて、ロジスティック回帰分析は、GISTにおける高レベルのHOTAIR発現(HOTAIR/GAPDH≧0.0002)は転移と強く関連している(年齢および性別調整したオッズ比8.2;95%信頼区間1.4〜48.4;P=0.021)ことを明らかにした。Coxハザード分析は、高HOTAIR発現した患者での上昇したハザード比(表10)を提示し、およびカプラン・マイヤー分析は、その効果は統計的に顕著とはいえないものの、同患者の低い全生存を示した(図4E)。FFPE標本においてもHOTAIR発現を分析しようと試みたものの、これらの試料中ではHOTAIRの発現もGAPDHの発現も検出できず、これはおそらくRNAの質が不十分であることに起因すると考えられる。
例5:miR−196aおよびHOTAIRの機能的役割
GISTにおけるmiR−196aの機能的役割を検査するため、TargetScan ver. 5.1によって計算上予測されるmiR−196aの標的遺伝子について、遺伝子発現マイクロアレイデータを検索した。miR−196aが過剰発現しているGISTにおいて発現が低減している2248個の遺伝子のうち、95個が予測される標的に対応した(図5A、表9)。
この遺伝子リストには、実験的に確認されたmiR−196aの標的遺伝子であるANXA1(アネキシンA1)も含まれていた。加えて、HOXB8を含むいくつかのHOX遺伝子の発現が、miR−196aを過剰発現するGISTにおいて低減しており、このことはmiR−196aがHOXB8のmRNAを開裂するという過去の知見と整合する(図5A)。ジーンオントロジー分析は、GISTにおいて低減した発現を示す予測標的遺伝子のうち、「タンパク質結合」、「コラーゲン」および「細胞外マトリクス」に関係する遺伝子が多く含まれることを提示した(表12)。
正常な線維芽細胞において、HOTAIRは、ポリコーム抑制性複合体2(PRC2)と相互作用してHOXD遺伝子発現を抑制する。乳癌細胞において、HOTAIRの過剰発現により、PRC2が800以上の遺伝子プロモーターとして機能し、ヒストンのH3K27におけるメチル化および標的遺伝子のエピジェネティックなサイレンシングに導くことが示された。そこで得られたマイクロアレイデータを、報告されているHOTAIR誘導性PRC2標的遺伝子について検査した。マイクロアレイについて分析した14のGISTのうち、miR−196aを強発現する腫瘍の7つ全てにおいてHOTAIR発現が上昇しており(平均HOTAIR/GAPDH=0.00254)、一方miR−196aが弱くしか発現していない全ての腫瘍において、HOTAIR発現はほとんどまたは全くなかった(平均HOTAIR/GAPDH=0.00001)。高HOTAIR発現するGISTにおいて下方制御されている遺伝子と、HOTAIR誘導性PRC2標的として以前に報告された遺伝子との間に、統計的に顕著な関連性が見出された(P=1.15×10−14)。HOTAIRを過剰発現するGISTにおいて、144個のHOTAIRの標的遺伝子の発現が低減されていることが見出された(図5B、表13)、ジーンオントロジー分析は、これらの遺伝子のうち「細胞間情報伝達」、「シグナル伝達」および「細胞膜」に関する遺伝子が際だって多いことを明らかにした(表14)。
これらの結果は、miR−196aおよびHOTAIRの過剰発現が、その標的遺伝子の発現を調節することにより、悪性進行に寄与し得ることを示唆する。
例6:miR−196aおよびHOTAIRの阻害
(1)miRNA阻害剤およびsiRNA分子のトランスフェクション
GIST−T1細胞は日本人女性の複数の悪性GISTから確立された細胞株であり、その詳細はTaguchi et al., Lab Invest. 2002 May;82(5):663-5に記載されている。miR−196aの阻害のため、細胞(6ウェルプレート中3×10個)に100pmolのAnti-miR miRNA Inhibitors(Ambion)またはAnti-miR miRNA Inhibitors Negative Control #1(Ambion)を、Lipofectamine2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。HOTAIRのRNAiのため、HOTAIRに対する3つの異なるステルスsiRNA(配列番号3〜5)をInvitrogenで作り、その後該3つの混合物をトランスフェクションに用いた。細胞(6ウェルプレート中3×10個)に100pmolのsiRNAまたはStealth RNAi Negative Control Medium GC(Invitrogen)を、Lipofectamine2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。Total RNA抽出、細胞バイアビリティアッセイ、およびマトリゲル侵襲アッセイをトランスフェクション後48時間で行った。
(2)細胞バイアビリティアッセイ
GIST−T1細胞を上述の通りトランスフェクトした。24時間のインキュベーション後、形質転換細胞を96ウェルプレートに、5×10個/ウェルの密度で播種した。さらに24時間インキュベートした後、Cell Counting kit-8(Dojindo, Tokyo, Japan)を用いて、取扱説明書にしたがって細胞バイアビリティアッセイを行った。
(3)マトリゲル侵襲アッセイ
GIST−T1細胞を上述の通りトランスフェクトした。24時間のインキュベーション後、500μLの無血清DMEMに懸濁した1×10個の形質転換細胞懸濁液をBD BioCoat Matrigel Invasion Chambers(BD Biosciences)の最上部に添加し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を事前添加し、700μLの10%ウシ胎児血清(FBS)入りDMEMをプレートの下層ウェルに添加した。さらに24時間インキュベートした後、侵入した細胞を、1%トルイジンで染色し、膜毎に3つの無作為に選択された顕微鏡視野において直接計数することにより定量した。
(4)結果
上述の通り、培養GISTセルラインを利用して、miR−196aおよびHOTAIRの上方制御がGISTの悪性度に関与するかを決定した。まずmiR−196aおよびHOTAIRの両方がGIST−T1細胞で発現していることを確認した(図6A)。加えて、ChIP−PCRを用いたクロマチンステータスの分析は、活性遺伝子転写のマーカーであるトリメチル化ヒストンH3リジン4(H3K4me3)の、複数のHOXC遺伝子およびHOTAIRの転写開始部位における上昇を明らかにした(図6B)。次に、GIST−T1細胞に抗miR−196a阻害分子をトランスフェクトした後、細胞バイアビリティおよびマトリゲル侵襲アッセイを行った。miR−196aの阻害は、細胞増殖においては効果が観察されなかったものの、細胞侵襲を中程度に抑制した(図6C)。最後に、HOTAIRを標的とするsiRNAでトランスフェクトすることにより、HOTAIR発現を妨げた(図6D)。HOTAIRのノックダウンは、細胞増殖に顕著には影響しなかったものの、GIST−T1細胞の侵襲を抑制した(図6EおよびF)。さらに、遺伝子発現マイクロアレイ分析は、PCDH10、SEMA6AおよびSTK17Bを含む報告されているHOTAIR標的遺伝子の多くが、HOTAIRのノックダウンにより上方制御されていたことを明らかにした(表15)。全部で、1424遺伝子がsiHOTにより上方制御(>2倍)されていることが見出され、ジーンオントロジー分析は「核」、「染色体」および「膜結合オルガネラ」に関連する遺伝子が多く含まれることを明らかにした(表16および17)。これらの結果は、HOTAIRが多数の遺伝子の転写を調節し得、GIST細胞中で以前には同定されていなかった役割を果たし得ることを示す。
考察
近年の研究結果が、GISTの遺伝子発現特性が腫瘍の悪性度および薬物感受性の予測因子となるであろうことを提示していたにもかかわらず、miRNA発現特性の臨床的意義は未だ完全には理解されていなかった。今回、miR−196aの上方制御が高リスク度、転移およびGIST患者の悪い予後に強く関連すること、さらに、miR−196aの過剰発現は、複数のHOXC遺伝子および転移関連lincRNAであるHOTAIRの上方制御を伴うことを見出した。本発明者らの知る限りにおいて、これはヒト悪性腫瘍における直列に並んだHOX遺伝子および非コードRNAの同時的過剰発現を示した最初の報告である。
多くの研究が、miR−196aが悪性化に関係していると考えていたが、その役割は腫瘍型の間で異なり得る。miR−196aの上方制御が、食道腺癌およびその前癌病変、バレット食道および異形成において観察され、miR−196aはバレット食道の悪性進行における潜在的マーカーであると提示されている。miR−196aの強発現はまた、膵臓腺癌およびグリア芽腫患者における悪い予後とも関連している。加えて、機能的分析は、食道癌、乳癌および子宮内膜癌の細胞におけるmiR−196aの発現が、ANXA1の下方制御を通じて増殖を促進し、アポトーシスを抑制することを実証した。これらの結果は、miR−196aが、癌における腫瘍形成に寄与することを提示する。一方で、miR−196aはメラノーマにおいて顕著に下方制御されており、その再発現は、HOXC8を標的とすることによってメラノーマ細胞の浸潤性挙動を阻害する。同様に、miR−196aはHOXC8を抑制し、乳癌細胞の浸潤および転移を阻害する。したがって、miR−196aは、異なる起源の腫瘍において逆の効果を奏するように見受けられる。
HOX遺伝子は、高度に保存されているホメオボックススーパーファミリーのサブグループであり、発生、分化、アポトーシスおよび血管形成を含む様々な生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たす。ヒトにおいては、39個のHOX遺伝子を含む4つのHOXクラスタが同定されており、様々な悪性腫瘍において、これらの発現の調節異常が観察されている。癌におけるHOXの役割は完全にはわかっていないが、その異常発現は腫瘍発生および転移を促進するパスウェイに影響すると考えられている。例えば、HOXC8のmRNAは前立腺癌細胞において過剰発現しており、腫瘍細胞増殖および転移に関連している。加えて、HOXC5およびHOXC8のmRNAは子宮頸癌細胞において上方制御されており、最近の研究は、HOXC10が子宮頸癌の増殖および浸潤において鍵となる役割を果たすことを提示した。
癌におけるmiR−196a発現とHOX発現との間の関連性もまた報告されている。悪性メラノーマ細胞におけるmiR−196aの低減した発現は、HOXB7の上方制御、続いて細胞移動の主要な調節因子であるBMP4の活性化へと繋がる。上述の通り、miR−196aはまた、メラノーマおよび乳癌細胞において、HOXC8を下方制御することにより、浸潤および転移を阻害する。総括すると、これらの結果は、miR−196aがこれらの腫瘍型においてHOX遺伝子を標的とすることにより、腫瘍抑制因子として作用することを提示する。対照的に本開示では、悪性GISTにおいては、miR−196aおよびHOXC遺伝子の両方が同時に上方制御されていることを実証する。
本開示の知見は、HOXクラスタ内に埋め込まれたmiRNAの発現パターンは、哺乳動物の胚発生の間のHOX遺伝子の発現パターンと酷似していることを示す最近の報告を想起させる。今後の実験において、GIST細胞におけるmiR−196aの直接の標的を実験的に確認しなければならないが、網羅的遺伝子発現分析は、miR−196aを過剰発現するGISTにおいて、ANXA1を含む複数のmiR−196a標的の発現が低減していることを明らかにした。加えて、miR−196aを過剰発現するGIST細胞におけるその阻害は、細胞浸潤を適度に抑制する。総合すると、本実施例の結果は、miRNAと同調したHOXC遺伝子の上方制御が、GISTの悪性度に寄与し得ることを示唆し得る。
最近、miR−196a−2における共通の配列変異体(rs11614914、C→T)が、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、胃癌および頭頸部癌の低減したリスクと関連することが示された。加えて、この一塩基多型(SNP)におけるCCホモ接合性は、成熟miR−196aの発現増大およびNSCLC患者における低い生存率に関連する。さらに、他の研究において、C→T変異は、乳癌細胞におけるmiR−196a前駆体の成熟形態へのプロセシングを中断させることができることを示した。これらの結果は、miR−196aが腫瘍形成効果を発揮し、C→T変異がmiR−196a発現を低下させ、癌リスクも低減へと導くという仮説を支持し得る。対照的に、頭頸部癌においては、miR−196a−2遺伝子型およびその発現の間には統計的に顕著な相関は見出されなかった。
miR−196a−2遺伝子は、miR−196aおよびmiR−196aという2つの成熟miRNAをコードし、SNPrs11614914はmiR−196aがコードする配列に位置し、このことは、成熟miR−196aのその標的遺伝子への結合に遺伝子型が影響し得ることを提示する。しかしながら、今回のマイクロアレイ分析では、miR−196a発現は、リスク度に関係なく、どのGIST標本においても検出されなかった。miR−196a−2遺伝子型とGISTリスクとの関係を解明するためには、さらなる研究が必要である。
HOTAIRはHOXCクラスタ内に位置し、ヒストン修飾酵素複合体と直接的に相互作用することによって、その標的遺伝子を抑制することで知られるlincRNAをコードする。エピジェネティックな遺伝子制御は、ヒストンH3リジン4(H3K4me3)のジまたはトリメチル化が活性遺伝子プロモーター内に上昇するヒストン修飾と緊密に関連する。加えて、ヒストンH3リジン27(H3K27)のトリメチル化は遺伝子サイレンシングのマーカーである。正常なアダルトの線維芽細胞において、HOTAIRはヒストンH3K27メチラーゼEZH2、SUZ12およびEEDからなるPRC2複合体によってHOXD遺伝子座を抑制する。HOTAIRは、PRC2およびLSD1/CoREST/RESTを含む複数の抑制因子複合体のスキャフォールドとして働くこともまた、最近示された。LSD1はH3K4の脱メチル化を特異的に媒介し、標的遺伝子の抑制へと導くデメチラーゼである。
HOTAIRはまた、癌転移にも強く関与している。乳癌細胞において、HOTAIRは、全ゲノムに亘るPRC2複合体の再標的化を誘導し、複数の腫瘍抑制因子および転移抑制因子遺伝子のサイレンシングに導く。HOTAIRの過剰発現はまた、肝移植後の肝細胞癌患者における再発の予測因子でもある。本開示において、HOTAIRの上方制御がGISTの攻撃性および転移と緊密に関連することが観察された。加えて、GIST−T1細胞を用いた機能的解析は、RNAi媒介性のHOTAIRのノックダウンが細胞侵襲を抑制したことを示した。これらの結果は、HOTAIRの上方制御がGISTにおける攻撃性を促進するメカニズムの1つであることを強く示している。興味深いことに、HOTAIRの枯渇はGIST細胞における遺伝子発現プロファイルに顕著な変化を誘導し、このことは、HOTAIRが以前に報告された標的遺伝子以外の遺伝子領域も制御し得ることを示している。ゲノム規模でのヒストン修飾分析を含むさらなる研究は、GISTの悪性進行においてHOTAIRが果たす未だ同定されていない役割を明らかにするだろう。
GISTにおけるHOXクラスタ遺伝子および非コードRNAの上方制御の根底にあるメカニズムは依然として未知である。アレイCGH分析ではどのHOX遺伝子座においても染色体異常は検出されず、このことは遺伝子増幅が過剰発現の原因ではなさそうであることを示す。新たな証拠は、DNAメチル化およびヒストン修飾の異常が、癌におけるmiRNA異常調節に緊密に関連していることを示唆し、このことはエピジェネティック変化が遺伝子活性化の原因であり得ることを提示する。はっきりさせねばならないことは多数残っているが、悪性GISTにおいて、HOXCクラスタ内にコードされる非コードRNAが有用な予測マーカーであると同時に新規な治療標的となることができることが実証された。miRNAはFFPE標本中においてもよく保存されているため、miR−196aはリスク査定において信頼できるバイオマーカーたり得る。本発明はまた、高リスクGISTにおいてHOTAIRが顕著に上方制御されている証拠を提供し、このことはこのlincRNAが有用なバイオマーカーであり得るのと同時に、新規な治療標的であり得ることを示唆する。さらに、GISTにおけるHOXC遺伝子座活性化の原因および機能についてのさらなる研究は、GIST患者の治療における新たな戦略を提供し得る。
参考文献
以上述べたとおり、本発明によって、GISTの悪性度を簡便に判定することができるようになるだけでなく、GISTの治療、特に外科的処置を施した後も転移や再発のリスクの高い、高リスクのGISTを処置することができる治療薬が提供できることとなる。

Claims (17)

  1. 消化管間質腫瘍(GIST)の悪性度判定の指標を得るための方法であって、試料における1または2以上のHOX関連遺伝子領域の発現を測定するステップを含む、前記方法。
  2. HOX関連遺伝子領域の発現が、HOXC関連遺伝子領域の発現である、請求項1に記載の方法。
  3. HOX関連遺伝子領域の発現が、少なくともmiR−196a(配列番号1)の発現を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. HOX関連遺伝子領域の発現が、少なくともHOTAIR(配列番号2)の発現を含む、請求項1または2に記載の方法。
  5. さらにHOXC関連遺伝子領域の発現を測定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
  6. HOXC関連遺伝子領域の発現が、HOXC遺伝子の発現である、請求項5に記載の方法。
  7. HOXC関連遺伝子領域の発現が、HOTAIRの発現である、請求項5または6に記載の方法。
  8. 測定が、マイクロアレイまたはRT−PCRによって行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. HOX関連遺伝子領域の発現産物と特異的に結合する成分を含む、GISTの悪性度診断用組成物。
  10. HOX関連遺伝子領域の発現産物と特異的に結合する成分が、該HOX関連遺伝子領域の配列もしくはその一部分を有する核酸、またはHOX関連遺伝子領域の配列もしくはその一部分と相補的な配列を有する核酸である、請求項9に記載の組成物。
  11. HOX関連遺伝子領域が、miR−196a(配列番号1)である、請求項9または10に記載の組成物。
  12. HOX関連遺伝子領域が、HOTAIR(配列番号2)である、請求項9または10に記載の組成物。
  13. 1または2以上の請求項9〜12のいずれか一項に記載の組成物を含む、GISTの悪性度診断用キット。
  14. HOX関連遺伝子領域の発現を抑制する剤を含む、GIST処置用医薬組成物。
  15. HOX関連遺伝子領域が、HOXC関連遺伝子領域である、請求項14に記載の医薬組成物。
  16. HOX関連遺伝子領域が、HOTAIRである、請求項14または15に記載の医薬組成物。
  17. HOX関連遺伝子領域の発現を抑制する剤が、HOX関連遺伝子領域に対するsiRNAを含む、請求項14〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
JP2011278953A 2011-12-20 2011-12-20 消化管間質腫瘍マーカー Pending JP2013128434A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011278953A JP2013128434A (ja) 2011-12-20 2011-12-20 消化管間質腫瘍マーカー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011278953A JP2013128434A (ja) 2011-12-20 2011-12-20 消化管間質腫瘍マーカー

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2013128434A true JP2013128434A (ja) 2013-07-04

Family

ID=48906577

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011278953A Pending JP2013128434A (ja) 2011-12-20 2011-12-20 消化管間質腫瘍マーカー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2013128434A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2021187173A1 (ja) * 2020-03-19 2021-09-23

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2021187173A1 (ja) * 2020-03-19 2021-09-23
WO2021187173A1 (ja) * 2020-03-19 2021-09-23 公益財団法人がん研究会 消化管間質腫瘍を検出する方法および検出試薬
JP7306661B2 (ja) 2020-03-19 2023-07-11 公益財団法人がん研究会 消化管間質腫瘍を検出する方法および検出試薬

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Gu et al. DMDRMR-mediated regulation of m6A-modified CDK4 by m6A reader IGF2BP3 drives ccRCC progression
Niinuma et al. Upregulation of miR-196a and HOTAIR drive malignant character in gastrointestinal stromal tumors
Lv et al. lncRNA H19 regulates epithelial–mesenchymal transition and metastasis of bladder cancer by miR-29b-3p as competing endogenous RNA
Yuwen et al. MiR-146a-5p level in serum exosomes predicts therapeutic effect of cisplatin in non-small cell lung cancer.
CN109415770B (zh) 乳腺癌标志物及应用
Cheng et al. MicroRNA-30a inhibits cell migration and invasion by downregulating vimentin expression and is a potential prognostic marker in breast cancer
Feng et al. miR-126 functions as a tumour suppressor in human gastric cancer
Shen et al. Epigenetic repression of microRNA-129-2 leads to overexpression of SOX4 in gastric cancer
Zhao et al. Downregulation of miR-497 promotes tumor growth and angiogenesis by targeting HDGF in non-small cell lung cancer
Lu et al. HOXA 11 antisense long noncoding RNA (HOXA 11‐AS): a promising lnc RNA in human cancers
Guo et al. The identification of plasma exosomal miR-423-3p as a potential predictive biomarker for prostate cancer castration-resistance development by plasma exosomal miRNA sequencing
Yan et al. LINC00668 promotes tumorigenesis and progression through sponging miR-188–5p and regulating USP47 in colorectal cancer
Yamamoto et al. Fascin-1 overexpression and miR-133b downregulation in the progression of gastrointestinal stromal tumor
Qi et al. CUL4B promotes gastric cancer invasion and metastasis-involvement of upregulation of HER2
Shen et al. Long non-coding RNA FBXL19-AS1 plays oncogenic role in colorectal cancer by sponging miR-203
Li et al. Identification of miRNA signatures in serum exosomes as a potential biomarker after radiotherapy treatment in glioma patients
Li et al. Circular RNA hsa_circRNA_102209 promotes the growth and metastasis of colorectal cancer through miR‐761‐mediated Ras and Rab interactor 1 signaling
JP2012510813A (ja) 卵巣癌の診断および治療のためのマイクロrnaに基づく方法および組成物
Liu et al. MicroRNA 615-3p inhibits the tumor growth and metastasis of NSCLC via inhibiting IGF2
Caruso et al. Claudin-1 expression is elevated in colorectal cancer precursor lesions harboring the BRAF V600E mutation
US20140154303A1 (en) Treating cancer by inhibiting expression of olfm4, sp5, tob1, arid1a, fbn1 or hat1
Zhang et al. LncRNA WDFY3‐AS2 suppresses proliferation and invasion in oesophageal squamous cell carcinoma by regulating miR‐2355‐5p/SOCS2 axis
Foruzandeh et al. CircRNAs as potent biomarkers in ovarian cancer: a systematic scoping review
Mao et al. DDX23-Linc00630-HDAC1 axis activates the Notch pathway to promote metastasis
Zhang et al. Up-regulation of FAM64A promotes epithelial-to-mesenchymal transition and enhances stemness features in breast cancer cells