JP2013122000A - 色素及び半導体電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた光電変換効率を有し、かつ、耐久性に優れた色素と、この色素により増感された半導体電極の提供。
【解決手段】式[I]で示される色素及びこの色素により増感された半導体電極。
Figure 2013122000

(一般式[I]において、Rは、炭素数が4以上22以下のアルキル基、炭素数が4以上12以下のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基の何れかを置換基として有するアリール基を示す。RとRは、水素原子、アルキル基を示し、RとRで結合して環状構造を形成しても良い。Rは、芳香環上の置換基であって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環置換基を示す。Lは二価の連結基を示し、nは0又は1を示す。Rは、水素原子、アルキル基を示す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、色素及びこの色素により増感された半導体電極に関するものである。
大量の化石燃料の使用で引き起こされる二酸化炭素濃度増加による地球温暖化、さらに、人口増加に伴うエネルギー需要の増大は、人類の存亡にまで関わる問題と認識されている。そのため、近年、無限で有害物質を発生しない太陽光の利用が精力的に検討されている。このクリーンエネルギー源である太陽光利用として現在実用化されているものは、住宅用の単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン及びテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の無機系太陽電池が挙げられる。
しかしながら、これらの無機系太陽電池にも欠点がある。例えばシリコン系では、非常に純度の高いものが要求され、当然精製の工程は複雑でプロセス数が多く、製造コストが高い。それ以外にも軽量化への要求もあり、特に、ユーザーへのペイバックが長い点でも不利であり、普及には問題があった。
その一方で、有機材料を使う太陽電池も多く提案されている。有機太陽電池としては、p型有機半導体と仕事関数の小さい金属を接合させるショットキー型光電変換素子、p型有機半導体とn型無機半導体、あるいはp型有機半導体と電子受容性有機化合物を接合させるヘテロ接合型光電変換素子等があり、利用される有機半導体は、クロロフィル、ペリレン等の合成色素や顔料、ポリアセチレン等の導電性高分子材料、又は、これらの複合材料等である。真空蒸着法、キャスト法、ディッピング法等により、これらを薄膜化して電池材料が構成されている。有機材料は、低コスト、大面積化が容易等の長所もあるが、光電変換効率は1%以下と低いものが多く、また、耐久性も悪いという問題もあった。
こうした状況の中で、良好な特性を示す太陽電池がスイスのグレッツェル博士らによって報告された(例えば、非特許文献1参照)。この文献には、電池作製に必要な材料及び製造技術も開示されている。この太陽電池は色素増感型太陽電池又はグレッツェル型太陽電池と呼ばれ、ルテニウム(Ru)錯体で分光増感された酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式太陽電池である。この方式の利点は、酸化チタン等の安価な半導体を高純度まで精製する必要がないために、前述の無機系太陽電池と比較して製造コストが低減できること、また、利用できる光は可視光領域に幅広くいきわたっているため、可視光領域のエネルギー強度が高いとされる太陽光を有効に電気へ変換できることである。
しかしながら、資源的制約がある貴金属のRuが使われているため、色素増感型太陽電池が実用化された場合には、Ru錯体の安定供給に問題が生じる可能性がある。また、この資源的な制約から、Ru錯体自体が高価であり、大量製造の際にコスト面での問題も生じる可能性がある。このような問題を解決するため、Ru錯体の少なくとも一部をより安価な有機色素へ変更することを目的として、様々な提案がなされてきた。その例として、種々のメロシアニン色素、シアニン色素、9−フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素等が開示されているが、これらは、光電変換効率において、Ru錯体よりもかなり劣っている(例えば、特許文献1〜4参照)。
光電変換効率の優れた有機色素を見出すことは、有機色素を単独で使用するか、Ru錯体と有機色素を併用して使用することで、トータルのRu錯体の使用量を軽減する目的から非常に重要である。特にRu錯体は450nmから650nmまで幅広い吸収スペクトルを有するが、450nmより短波長側の吸光度は小さいため、300nmから450nmまでの範囲を光吸収してRu錯体を補完する高性能な有機色素が求められている。
一方、光吸収が450nmより短波長側にある色素と透明電極を組み合わせることにより、黄色を帯びた半透明な色素増感型太陽電池が製造できるが、Ru錯体は400nmから650nmまで幅広い吸収スペクトルを有するため、Ru錯体を使用する場合には変換効率に優れた半透明な色素増感型太陽電池を製造することはできない。性能の良好な黄色の有機色素としては、スチリル色素が知られている(例えば、特許文献5〜7参照)。しかし、これらの色素はRu錯体に比べて変換効率が低く、さらなる改良が求められている。
特開平11−238905号公報 特開2001−76773号公報 特開平10−92477号公報 国際公開第2002/045199号パンフレット 国際公開第2002/011213号パンフレット 特許第4187476号公報 特開2004−200068号公報
Brian O’Regan & Michael Gratzel、"A low−cost, high−efficiency solar cell based on dye−sensitized colloidal TiO2 films"、Nature、1991年、353、p.737−740
本発明の課題は、優れた光電変換効率及び耐久性を有する黄色の色素を提供することである。
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、一般式[I]で示される色素と、この色素により増感された半導体電極によって、目標を達成することができた。
Figure 2013122000
一般式[I]において、Rは、炭素数が4以上22以下のアルキル基、炭素数が4以上12以下のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基の何れかを置換基として有するアリール基を示す。RとRは、水素原子、アルキル基を示し、RとRで結合して環状構造を形成しても良い。Rは、芳香環上の置換基であって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環置換基を示す。Lは二価の連結基を示し、nは0又は1を示す。Rは、水素原子、アルキル基を示す。
一般式[I]で示される色素によって、優れた光電変換効率及び耐久性を達成することができる。
一般式[I]で示される色素について説明する。
は、炭素数が4以上22以下のアルキル基、炭素数が4以上12以下のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基の何れかを置換基として有するアリール基を示す。炭素数が4以上22以下のアルキル基の具体例として、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−ドコシル基、2−エチルブチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられるが、直鎖構造で炭素数が12以下のアルキル基が特に好ましい。
炭素数が4以上12以下のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基を置換基として有するアリール基としては、次に示されるようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2013122000
Figure 2013122000
Figure 2013122000
とRは、水素原子、アルキル基を示し、RとRで結合して環状構造を形成しても良い。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、シキロヘキシル基等が挙げられる。特に好ましいものは、RとRの間で結合してシクロペンタン環あるいはシクロヘキサン環を形成するアルキレン残基である。
は、芳香環上の置換基であって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環置換基を示す。ハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基等が挙げられる。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、2−ブトキシ基等が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。ヘテロ環置換基の具体例としては、インドリル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。
Lは二価の連結基を示し、nは0又は1を示す。Lの具体例としては、以下に示すアルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2013122000
は、水素原子、アルキル基を示す。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
また、nが1で、Lがビニレン基又はプロピレン基の場合には、その共役炭素二重結合の幾何構造の違いによって、以下に示すように、2種の幾何異性体(cis型、trans型)が存在する。
Figure 2013122000
また、nが1で、Lが1,4−ジビニルフェニレン基の場合には、二つある共役炭素二重結合の幾何構造の組み合わせによって、以下に示すように、四種の幾何異性体が存在する。
Figure 2013122000
さらに、一般式[I]のRの結合した炭素原子と、シアノ基が結合した炭素原子の間にある共役二重結合の幾何構造の違いによって、以下に示すように2種の幾何異性体が存在する。
Figure 2013122000
本発明の色素は、合成した場合に、通常、これらの幾何異性体の混合物として単離される。本発明においては、これらの中、何れの幾何異性体であっても良く、それらの混合物でも構わない。
本発明の色素が高い光電変換効率であることについて詳細なことは不明であるが、本発明の色素が半導体上に吸着する場合、複数の色素分子内に有する長鎖アルキル基の疎水性相互作用によって色素が配列し、高い光電変換効率を発現する凝集体を優先的に形成して半導体に吸着するためであると推測される。
次に、本発明の一般式[I]の色素の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2013122000
Figure 2013122000
Figure 2013122000
Figure 2013122000
Figure 2013122000
半導体電極とは、色素によって増感された半導体層を有する電極であり、通常、導電性支持体表面上に半導体層が設けられてなる。
導電性支持体は、金属のように支持体そのものに導電性があるもの、表面に導電剤を含む導電層を有するガラス又はプラスチックの支持体等を用いることができる。後者の場合、導電剤としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、炭素、あるいはインジウム−スズ複合酸化物(以降「ITO」と略記する)、フッ素をドーピングした酸化スズ等の金属酸化物(以降「FTO」と略記する)等が挙げられる。導電性支持体は、光を10%以上透過する透明性を有していることが好ましく、50%以上透過することがより好ましい。この中でも、ITOやFTOからなる導電層をガラス上に堆積した導電性ガラスが特に好ましい。
透明な導電性支持体の抵抗を下げる目的で、金属リード線を用いてもよい。金属リード線の材質としては、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が挙げられる。金属リード線を使用する方法としては、透明導電性支持体に蒸着、スパッタリング、圧着等で金属リード線を設置し、その上にITOやFTOを設ける方法、表面に導電性を有する透明基板上に金属リード線を設置する方法等が挙げられる。
半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物等がある。金属のカルコゲニドとしては、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ又はタンタルの酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン又はビスマスの硫化物;カドミウム又は鉛のセレン化物;カドミウムのテルル化物等が好ましいものとして挙げられる。その他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物;ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物等が好ましい。また、ペロブスカイト構造を有する化合物としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が好ましい。
本発明に用いられる半導体は、単結晶でも多結晶でもよい。光電変換効率から見ると、単結晶が好ましいが、製造コスト、原材料確保等から見ると、多結晶が好ましい。半導体の粒径は2nm以上1μm以下であることが好ましい。粒径の測定に関しては、透過電子顕微鏡観察による方法が好ましい。
導電性支持体上に半導体層を形成する方法としては、半導体微粒子の分散液又はコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法、ゾル−ゲル法等がある。分散液の作製方法としては、ゾル−ゲル法、乳鉢等で機械的に粉砕する方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させ、そのまま使用する方法等が挙げられる。
機械的粉砕、又は、ミルを使用して粉砕して作製する分散液の場合、少なくとも半導体微粒子単独又は半導体微粒子と樹脂の混合物を、水又は有機溶剤に分散して作製される。使用される樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等によるビニル化合物の重合体や共重合体、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
半導体微粒子を分散する媒体としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系媒体;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系媒体;ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系媒体;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン等のエーテル系媒体;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系媒体;ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系媒体;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン等の炭化水素系媒体を挙げることができる。これらは、単独又は2種以上の混合媒体として用いることができる。
分散液の塗布方法としては、ローラ法、ディップ法、エアーナイフ法、ブレード法、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法、各種印刷法等を挙げることができる。
半導体層は単層であっても多層であってもよく、目的に応じて設計される。多層の場合、粒径の異なる半導体微粒子の分散液を多層塗布することもできる。また、種類の異なる半導体や、樹脂、添加剤の組成が異なる塗布層を多層塗布することもできる。一度の塗布で膜厚が不足する場合には、多層塗布は有効な手段である。
一般的に、半導体層の膜厚が増大するほど、単位投影面積当たりの担持色素量も増えるため、光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離も増えるために、電荷の再結合も多くなってしまう。従って、半導体層の膜厚は0.1〜100μmが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
半導体微粒子は導電性支持体上に塗布した後、加熱処理してもよいし、しなくともよい。しかし、半導体微粒子同士の電子的コンタクト及び塗膜強度の向上や支持体との密着性向上の点から、加熱処理をした方が好ましい。さらに、マイクロ波照射、プレス処理、電子線照射等を行ってもよい。これらの処理は、単独で行っても構わないし、二種類以上行っても構わない。加熱処理の際、加熱温度は40〜700℃が好ましく、80〜600℃がより好ましい。また、加熱時間は5分〜50時間が好ましく、10分〜20時間がより好ましい。マイクロ波照射は、半導体電極の半導体層形成側から照射しても構わないし、裏側から照射しても構わない。照射時間には特に制限がないが、1時間以内で行うことが好ましい。プレス処理は、9.8×10N/m以上で行うことが好ましく、9.8×10N/m以上で行うことがさらに好ましい。プレスする時間は、特に制限がないが、1時間以内で行うことが好ましい。
半導体微粒子は多くの色素を吸着できるように表面積の大きなものが好ましい。このため半導体層を導電性支持体上に塗設した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。
本発明の一般式[I]で示される色素は、単独で使用しても良く、2種以上を併用しても構わない。Ru錯体、他のメロシアニン色素、シアニン色素、9−フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素等と本発明の色素を併用しても構わない。
半導体層に色素を吸着させる方法としては、色素溶液中あるいは色素分散液中に半導体層を浸漬する方法、色素溶液あるいは分散液を半導体層に塗布して吸着させる方法を用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等を用いることができ、後者の場合は、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法、各種印刷法等を用いることができる。
色素を吸着する際に、縮合剤を併用してもよい。縮合剤は、無機物表面に物理的若しくは化学的に色素を結合すると思われる触媒的作用をするもの、又は、化学量論的に作用し、化学平衡を有利に移動させるものの何れであってもよい。さらに、縮合助剤としてチオール又はヒドロキシ化合物を添加してもよい。
色素を溶解あるいは分散する媒体は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系媒体;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系媒体;ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系媒体;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン等のエーテル系媒体;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系媒体;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系媒体;ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系媒体;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン等の炭化水素系媒体を挙げることができる。これらは、単独又は2種以上混合して用いることができる。
色素を吸着する際の温度としては、−50℃以上200℃以下が好ましい。また、吸着は攪拌しながら行っても構わない。攪拌する場合の方法としては、スターラー、ボールミル、ペイントコンディショナー、サンドミル、アトライター、ディスパーザー、超音波分散等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。吸着に要する時間は、5秒以上1000時間以下が好ましく、10秒以上500時間以下がより好ましく、1分以上150時間以下がさらに好ましい。
本発明では、色素を半導体層に吸着させる際に、ステロイド系化合物を併用して、共吸着させても構わない。
そのステロイド系化合物の具体例としては、B−1〜B−10に示すものが挙げられる。ステロイド系化合物の量は、色素1質量部に対して0.01〜1000質量部が好ましく、0.1〜100質量部がより好ましい。
Figure 2013122000
Figure 2013122000
色素を吸着した後、又は、色素と上記ステロイド系化合物を共吸着した後、t−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物、又は、リン酸、リン酸エステル、アルキルリン酸、酢酸、プロピオン酸等の酸性化合物を含有する有機溶媒に浸漬処理しても構わない。
本発明の色素及び半導体電極の用途として、色素増感型太陽電池、光センサー等が挙げられる。以下、色素増感型太陽電池を詳説する。色素増感型太陽電池は、導電性支持体、導電性支持体表面上に設けられた色素によって増感された半導体層(半導体電極)、電荷移動層及び対極からなる。また、導電性支持体の導電層と半導体層の境界、半導体層と移動層の境界等、この素子における境界においては、各層の構成成分は相互に拡散又は混合していてもよい。
電荷移動層としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した電解液、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリックスに含浸したゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩、固体電解質、無機正孔輸送物質、有機正孔輸送物質等を用いることができる。
電解液は、電解質、溶媒、及び添加物から構成されることが好ましい。好ましい電解質はヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム等の金属ヨウ化物−ヨウ素の組み合わせ;テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物のヨウ素塩−ヨウ素の組み合わせ;臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化カルシウム等の金属臭化物−臭素の組み合わせ;テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物の臭素塩−臭素の組み合わせ;フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体;ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物;ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等が挙げられる。上述の電解質は単独の組み合わせであっても混合であってもよい。また、電解質として、室温で溶融状態の溶融塩を用いることもできる。この溶融塩を用いた場合は、特に溶媒を用いなくても構わない。
電解液における電解質濃度は、0.05〜20Mが好ましく、0.1〜15Mがさらに好ましい。電解液に用いる溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物;ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が好ましい。また、t−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を併用しても構わない。
電解質は、ポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法により、ゲル化させることもできる。ポリマー添加によりゲル化させる場合の好ましいポリマーとしては、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等を挙げることができる。オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合の好ましいゲル化剤としては、ジベンジリデン−D−ソルビトール、コレステロール誘導体、アミノ酸誘導体、トランス−(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジアミンのアルキルアミド誘導体、アルキル尿素誘導体、N−オクチル−D−グルコンアミドベンゾエート、双頭型アミノ酸誘導体、4級アンモニウム誘導体等を挙げることができる。
多官能モノマーによって重合する場合の好ましいモノマーとしては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができる。さらに、アクリルアミド、メチルアクリレート等のアクリル酸やα−アルキルアクリル酸から誘導されるエステル類やアミド類、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル等のマレイン酸やフマル酸から誘導されるエステル類、ブタジエン、シクロペンタジエン等のジエン類、スチレン、p−クロロスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等の芳香族ビニル化合物、ビニルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、含窒素複素環を有するビニル化合物、4級アンモニウム塩を有するビニル化合物、N−ビニルホルムアミド、ビニルスルホン酸、ビニリデンフルオライド、ビニルアルキルエーテル類、N−フェニルマレイミド等の単官能モノマーを含有してもよい。モノマー全量に占める多官能性モノマーは0.5〜70質量%が好ましく、1.0〜50質量%がより好ましい。
上述のモノマーは、ラジカル重合によって重合することができる。本発明で使用できるゲル電解質用モノマーは、加熱、光、電子線あるいは電気化学的にラジカル重合することができる。架橋高分子が加熱によって形成される場合に使用される重合開始剤は、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物系開始剤等が好ましい。これらの重合開始剤の添加量は、モノマー総量に対して0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
ポリマーの架橋反応により電解質をゲル化させる場合、架橋反応に必要な反応性基を含有するポリマー及び架橋剤を併用することが望ましい。架橋反応に必要な反応性基の好ましい例としては、ピリジン、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、トリアゾール、モルフォリン、ピペリジン、ピペラジン等の含窒素複素環を挙げることができる。好ましい架橋剤は、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロリド、イソシアネート等の窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬を挙げることができる。
無機正孔輸送物質を電解質の代わりに用いる場合、ヨウ化銅、チオシアン化銅等をキャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解メッキ等の手法により電極内部に導入することができる。
また、電解質の代わりに有機電荷輸送物質を用いることも可能である。電荷輸送物質には正孔輸送物質と電子輸送物質がある。前者の例としては、例えば特公昭34−5466号公報等に示されているオキサジアゾール類、特公昭45−555号公報等に示されているトリフェニルメタン類、特公昭52−4188号公報等に示されているピラゾリン類、特公昭55−42380号公報等に示されているヒドラゾン類、特開昭56−123544号公報等に示されているオキサジアゾール類、特開昭54−58445号公報に示されているテトラアリールベンジジン類、特開昭58−65440号公報、あるいは特開昭60−98437号公報に示されているスチルベン類等を挙げることができる。その中でも、本発明に使用される電荷輸送物質としては、特開昭60−24553号公報、特開平2−96767号公報、特開平2−183260号公報、並びに特開平2−226160号公報に示されているヒドラゾン類、特開平2−51162号公報、並びに特開平3−75660号公報に示されているスチルベン類が特に好ましい。また、これらは単独、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
一方、電子輸送物質としては、例えばクロラニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン、あるいは1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド等がある。これらの電子輸送物質は単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
さらに、電荷移動層中の電荷移動効率を向上させる目的として、ある種の電子吸引性化合物を電荷移動層中に添加することもできる。この電子吸引性化合物としては例えば、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、1−クロロ−5−ニトロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類;4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類;9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5−ジニトロベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラニトロベンゾフェノン等のケトン類;無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物等の酸無水物;テレフタラルマロノニトリル、9−アントリルメチリデンマロノニトリル、4−ニトロベンザルマロノニトリル、4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物;3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)フタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類等を挙げることができる。
電荷輸送材料を用いて電荷移動層を形成する場合、樹脂を併用しても構わない。樹脂を併用する場合には、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独又は共重合体として2種以上を混合しても構わない。
電荷移動層の形成方法は大きく2通りの方法が挙げられる。1つは、色素を吸着した半導体層の上に、先に対極を貼り合わせ、その隙間に液状の電荷移動層を挟み込む方法である。もう一つは、色素を吸着した半導体層の上に直接電荷移動層を付与する方法である。後者の場合、電荷移動層の上に対極を新たに付与することになる。
前者の場合、電荷移動層の挟み込み方法として、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセスと常圧より低い圧力にして気相を液相に置換する真空プロセスが挙げられる。後者の場合、湿式の電荷移動層においては、未乾燥のまま対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止を施す必要がある。また、ゲル電解液の場合においては、湿式で塗布して重合等の方法により固体化する方法もある。その場合、乾燥、固定化した後に対極を付与してもよい。電解液の他、有機電荷輸送材料の溶解液やゲル電解質を付与する方法としては、半導体層や色素の付与と同様に、浸漬法、ローラ法、ディップ法、エアーナイフ法、エクストルージョン法、スライドホッパー法、ワイヤーバー法、スピン法、スプレー法、キャスト法、各種印刷法等が挙げられる。
対極としては、各種の導電剤を用いることができ、例えば、前述の導電性支持体が挙げられる。導電剤を含む導電層自体が強度や密封性を十分有する場合は、ガラス、プラスチック等の支持体は必ずしも必要ではない。対極に用いる導電剤の具体例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属、炭素系化合物、ITO、FTO等の導電性金属酸化物、導電性高分子等が挙げられる。対極の厚さには特に制限はない。
半導体層に光が到達するためには、半導体層が設けられている導電性支持体か対極の少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。色素増感型太陽電池においては、半導体層が設けられている導電性支持体が透明であり、この導電性支持体側から太陽光を入射させる方法が好ましい。この場合、対極には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物等を蒸着したガラス若しくはプラスチック又は金属薄膜が好ましい。
対極の塗設については、前述の通り、電荷移動層の上に付与する場合と半導体層上に付与する場合の2通りがある。何れの場合も、対極材料の種類や電荷移動層の種類により、適宜、電荷移動層上又は半導体層上に対極材料を塗布、ラミネート、蒸着、貼り合わせ等の手法により形成可能である。また、電荷移動層が固体の場合には、その上に直接、前述の導電剤を塗布、蒸着、化学気相蒸着(CVD)等の手法で対極を形成することができる。
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(実施例1〜19、比較例1〜2)
<半導体電極の作製>
酸化チタン(日本アエロジル社製、商品名:P−25)2g、アセチルアセトン0.2g、界面活性剤(アルドリッチ社製、商品名:Triton X−100)0.3gを水6.5gと共にペイントコンディショナー(レッドデビル社製)で6時間分散処理を施した。さらに、この分散液4.0gに対して濃硝酸0.2ml、エタノール0.4ml、ポリエチレングリコール(#20,000)1.2gを加えてペーストを作製した。このペーストをFTOガラス基板上に膜厚10μmになるように塗布し、室温で乾燥後、100℃で1時間、さらに、550℃で1時間焼成し、半導体電極を得た。
<色素により増感された半導体電極の作製>
表1に示した色素をテトラヒドロフランに溶解し、0.3mMの濃度の色素溶液を作製した。この色素溶液に、先に作製した半導体電極を室温で5時間浸漬して吸着処理を施し、色素により増感された半導体電極を作製した。
<色素増感型太陽電池の作製>
対極にチタニウム板上に白金をスパッタリングしたものを使用し、色素により増感された半導体電極と対極とを互いに向かい合うように配置し、それらの間に電解液を注入して色素増感型太陽電池を作製した。電解液はヨウ化リチウム0.1M、ヨウ素0.05M、ヨウ化1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウム0.5M、4−t−ブチルピリジン0.05Mの3−メトキシプロピオニトリル溶液を使用した。
<評価1:光電変換効率>
色素増感型太陽電池の作用電極側から、光源としてソーラーシミュレーター(山下電装(株)製、装置名:YSS−40S)から発生した擬似太陽光(AM1.5G、照射強度100mW/cm)を照射し、電気化学測定装置(ソーラートロン社製、装置名:SI−1280B)を用いて、開放電圧、短絡電流密度、形状因子、光電変換効率を評価した。結果を表1に示す。
<評価2:耐久性>
色素増感型太陽電池を65℃環境下で14日間保存した後、開放電圧、短絡電流密度、形状因子、光電変換効率を評価した。また、光電変換効率の維持率を求めた。光電変換効率の維持率は、保存前の光電変換効率に対する、保存後の光電変換効率の百分率として算出した。結果を表2に示す。
Figure 2013122000
Figure 2013122000
Figure 2013122000
表1及び2から、本発明の色素が比較例の色素に比べて、光電変換効率、耐久性の両面において優れていることがわかる。
本発明の色素及び半導体電極は、色素増感型太陽電池に加えて、特定波長の光に感応する光センサー等に活用することができる。

Claims (2)

  1. 下記一般式[I]で示される色素。
    Figure 2013122000
    (一般式[I]において、Rは、炭素数が4以上22以下のアルキル基、炭素数が4以上12以下のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基の何れかを置換基として有するアリール基を示す。RとRは、水素原子、アルキル基を示し、RとRで結合して環状構造を形成しても良い。Rは、芳香環上の置換基であって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環置換基を示す。Lは二価の連結基を示し、nは0又は1を示す。Rは、水素原子、アルキル基を示す。)
  2. 請求項1記載の色素により増感された半導体電極。
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