JP2013043622A - 波浪推進船 - Google Patents

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裕 寺尾
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Abstract

【課題】翼に発生する揚力を従来よりも大きくし、推進力を大きくすることができる波浪推進船を提供する。
【解決手段】波浪による水流により、翼303、304と前記翼の後端に第一接続部を介して配置されるフラップ305,306とにより発生する揚力により推進力を得る波浪推進船であり、前記翼のピッチ角が正であれば前記フラップのピッチ角は負になり、前記翼の角が負であれば前記フラップのピッチ角は正になることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、波浪の水流によって翼に発生する揚力により推進力を得る波浪推進船に関する。
波浪の水流によって翼に発生する揚力により、波浪に向かう推進力を得る技術が知られている(例えば特許文献1参照。)。また、この技術を用いて推進を行なう波浪推進船が知られている(例えば非特許文献1参照。)。
図1は、波浪推進船の模式図を示す。船体101に翼103が支持機構102を用いて接続されている。支持機構102としては、例えばストラットを用いることができる。翼103の少なくとも一部または全体は水中に位置する。図1においては、船体101の進行方向とは逆向きに進行する波浪104が存在し、船体101の斜め下方から斜め上方へ向かう水流105が発生している。また、翼103は、水流105を翼103の下面で受けるようにピッチ角(迎角)が設定されている。このような場合には、翼103には、水流105による揚力が発生し、この揚力が船体101の進行方向の成分を有するため、船体101を前方に推進させる推進力を得ることができる。
図2は、翼に発生する揚力によって推進力が得られる原理を説明する図である。翼201は、基準線203に対してピッチ角αを有しているとする。基準線203は、例えば船体101における座標系での水平線として定義できる。ここで、ピッチ角は、翼201の前端と後端とを結ぶ直線と基準線203とがなす角として定義できる。この場合、直線202と基準線203とが一致すればピッチ角αは0となる。翼201の前端が後端より上方に位置する場合にピッチ角αは正の値となる。
このとき、直線202に対して斜め下方から斜め上方へ向かう水流105が発生しているとする。水流105と基準線203とのなす角をβとすると、0<α+βであり、α+βはストールが発生する角度より小さいとする。このとき、翼201には揚力205が発生する。揚力205の向きは、水流105と垂直となる。α+β<90°であれば、揚力205が翼201の前方方向の成分206を有することとなる。この成分206が翼201に発生する推進力となり、この推進力により船体101が前方に推進する。
特開2005−34337号公報 "堀江健一オフィシャルサイト"、[online]、[平成23年7月4日検索]、インターネット<URL:http://www1.suntory−mermaid2.com/sm2_image.html>
非特許文献1に開示されている波浪推進船は、7800キロメートルの航海を行なうことができることを実証し、波浪推進船は実用段階にあると言ってよい。また、従来知られているこのような波浪推進船は、波浪による力により翼が揺動するようにも構成されており揚力による推進力に加えて、翼のドルフィンキックのような動きにより、推進力を増大させている。しかしながら、さらなる改良が望まれている。
本発明の一実施形態として、波浪による水流により、翼と前記翼の後端に第一接続部を介して配置されるフラップとにより発生する揚力により推進力を得る波浪推進船であり、前記翼のピッチ角が正であれば前記フラップのピッチ角は負になり、前記翼の角が負であれば前記フラップのピッチ角は正になることを特徴とする波浪推進船を提供する。
本発明により、波浪推進船の翼に発生する揚力を、従来よりも大きくすることが可能となり、従来の波浪推進船よりも推進力を大きくすることができる。これにより、波浪を推進力に変換する効率を向上させることができる。
従来の波浪推進船の模式図 従来の波浪推進船が推進力を得る原理を説明する図 本発明の一実施形態に係る波浪推進船を斜め前方から見た場合の斜視図 本発明の一実施形態に係る波浪推進船のストラットの側面図 本発明の一実施形態に係る波浪推進船の翼の上面図 本発明の一実施形態に係る波浪推進船の翼のピッチ角の制御の一例図 本発明の一実施形態に係る波浪推進船のストラットの側面図 本発明の一実施形態に係る波浪推進船のストラットの側面図
以下、本発明を実施するための形態を実施形態として説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されることはない。本発明は、以下に説明する実施形態を変形して実施することも可能である。
(実施形態1)
図3は、本発明の一実施形態に係る波浪推進船を左斜め前方から見た斜視図である。図3において、波浪推進船は、船体301を有し、その前方の略中央に、略鉛直方向に延びている支持機構としてのストラット302が配置されている。ストラット302の下部の両端には、フラップ305を後端に有する翼303およびフラップ306を後端に有する翼304が装着されている。翼303および304ならびにフラップ305および306は、ストラット302に対して略垂直となっている。翼303および304のそれぞれは、翼の前方に配置された接続部を介してストラット302に装着されている。接続部には、例えば回転軸を用いることができる。また、フラップ305および306のそれぞれは、翼303および304それぞれに、屈曲が可能となるように、接続されている。屈曲が可能となるように接続されていることにより、フラップ305および306のそれぞれの後端が、翼303および304それぞれの後端の上下運動にさらに相対して上下に運動可能となる。
また、図3においては、翼303の後端とフラップ305の前端とは蝶番状に接続されている。いいかえると、翼303の後端の形状に凹部と凸部とを有し、この凹部と凸部とに対応して、フラップ305の前端の形状が凸部と凹部とを有している。「対応して」とは、翼303の後端の凹部とフラップ305の前端の凸部とが嵌合し、翼303の後端の凸部とフラップ305の前端の凹部とが嵌合するようになっていることをいう。凹部と凸部とを横断するように回転軸を通すことにより、翼303とフラップ305とが屈曲可能に接続されている。翼304とフラップ306とについても同様となっている。なお、翼とフラップとの接続は、蝶番状のものに限定されることはなく、フラップの後端が翼の後端の上下運動にさらに相対して上下に運動可能となるものであればよい。
なお、ストラット302の下部に翼303および304ならびにフラップ305および306が装着されることにより、翼303および304ならびにフラップ305および306の一部または全てが船体301の喫水線よりも下に位置することとなる。そして、波浪が波浪推進船の前部に向かって進行すると、303および304ならびにフラップ305および306により、波浪推進船が前進する推進力が発生する。
翼303と翼304とのそれぞれの両端のうち、ストラット302に接続部を介して接続されている端とは異なる端は、船体301の側方に設けられたストラットにより、さらに別の接続部を介して接続されていてもよい。これにより、ストラット302に翼303および304により加わる力を分散させることができる。ただし、ストラット302の強度、接続部、翼303および304ならびにフラップ305および306の強度を十分な大きさにすることができれば、船体301の側方に設けられたストラットは不要とすることができる。
また、ストラット302は、船体301の前方の略中央に位置させる必要はなく、左右に偏った位置に設けられていてもよい。また、船体301の前方に設けられるストラットは一つである必要はなく、複数あってもよい。
なお、以上においては、翼303および304がストラット302に接続されているとして説明を行なった。ただし、ストラット302は必須ではなく、翼303および304は、船体301の左右に取り付けることも可能である。この場合、翼303および304は、船体301に接続部を介して取り付けられることとなる。
図4は、後端にフラップが配置された翼が取り付けられた状態のストラットの側面図である。また、図5は、その上面図である。
図4を参照すると、ストラット401に接続部404を介して翼402が取り付けられている。図4において、接続部404は、翼402の前方に配置されている。接続部404を中心にして翼402が回転可能となり、翼402のピッチ角が変えられるようになっている。また、翼402の後端にはフラップ403が接続部405を介して接続されている。接続部405を中心にしてフラップ403が回転可能となり、フラップ403のピッチ角が変えられるようになっている。
図5を参照すると、翼402が接続部404を介してストラット401に接続されている。図5においては、接続部404は、ストラット401に接続される回転軸となっている。また、翼402の後端は凹凸の形状を有している。そして、フラップ403の前端は、翼402の後端の凹凸に対応した形状を有し、翼402の後端の凹凸の構造と嵌合するようになっている。また、嵌合部分には別の回転軸が配置され、翼402とフラップ403とを接続している。
接続部404は、復元力を持つように翼402とストラット401とを接続する。「復元力を持つ」とは翼402のピッチ角が大きくなると、ピッチ角が小さくなるような力が翼402に加わることをいう。このため、接続部402には、図示していない弦巻バネなどの弾性体などを有し、弾性体の伸縮により復元力が発生する。ここに、翼402のピッチ角とは、翼402の前端から後端の方向と水平線とのなす角であり、図4においてはαである。本明細書においては、角度は反時計回りの回転により大きくなるとする。したがって、図4において、αは正となる。
接続部405は、復元力を持つように、かつ、翼402のピッチ角とは逆符号のピッチ角となるように、フラップ403と翼402とを接続する。ここに「復元力をもつ」とは、接続部404と同様に、フラップ403のピッチ角が大きくなると、ピッチ角が小さくなるような力がフラップ403に加わることをいう。ここにフラップのピッチ角とは、フラップの前端から後端の方向と水平線とのなす角であり、図4においてはβにより示される。上述したように、角度は反時計回りの回転により大きくなるとしたので、図4において、βは負となっている。
図4においては、αが正であり、βが負となるのは、波浪による水流が、翼402とフラップ403との下面に当たる方向に発生しているときに揚力を発生させるためである。すなわち、接続部405が翼402の前端とフラップ403の後端とを結ぶ直線よりも上に位置する。このため、翼402の前端からフラップ403の後端までに移動する距離が、翼402とフラップ403との上面を移動する場合の方が、翼402とフラップ403との下面を移動する場合よりも大きくなり、翼402とフラップ403との上面の水流の速さが、翼402とフラップ403との下面の水流も速さよりも大きくなる。これにより、翼402の斜め上方前方に向かう揚力が発生する。
逆に、波浪による水流が、翼402とフラップ403との上面に当たるときには、αを負とし、βを正とすることにより、接続部405が翼402の前端とフラップ403の後端とを結ぶ直線よりも下に位置し、斜め下方前方に向かう揚力を発生させることができる。
図6は、αとβとの関係をグラフとして表す一例を示す。図6においては、αとβとは原点を通り、αの絶対値が大きくなればβの絶対値も大きくなる直線として示されている。ただし、αとβとの関係は直線の関係に限定されるものではなく、すくなくとも0以外ではαとβとの符号が異なればよい。なお、以下では、0以外ではαとβとの符号が異なることを、単にαとβとの符号が異なるという。
このように翼402とフラップ403とのピッチ角を制御することにより、フラップ403がない場合よりも、翼402とフラップ403とに発生する揚力が大きくなり、波浪推進船の推進力が大きくなる。
図7は、αとβとの符号を異ならせるための機構の一例を示すための、フラップが後端に接続された翼が取り付けられた状態のストラットの側面図である。図7において、ロッド701の一端が接続部703を介して、接続部404と405との間の翼402の箇所に接続されている。またロッドの他端は関節部704を介して別のロッド702の一端に接続されている。別のロッド702の他端は接続部705を介してストラットに接続されている。
翼402のピッチ角が変化すると、ピッチ角の変化が、接続部703を介してロッド701の上下運動に変換される。ロッド701の上下運動は、関節部704を介して、接続部705を中心とするロッド702の回転運動に変換される。そこで、接続部705に弦巻バネなどを設け、ロッド702の回転運動に復元力を持たせることにより、復元力を持つように翼402とストラット401とが接続されることになる。
また、接続部405の後のフラップ403の箇所の接続部713を介してロッド711の一端が接続されている。ロッド711の他端は関節部714を介してロッド712の一端に接続されている。ロッド712の他端は接続部715を介してストラットに接続されている。
フラップ403のピッチ角が変化すると、ピッチ角の変化が、接続部713を介してロッド711の上下運動に変換される。ロッド711の上下運動は、関節部714を介して、接続部715を中心とするロッド712の回転運動に変換される。そこで、接続部715に弦巻バネなどを設け、ロッド712の回転運動に復元力を持たせることにより、復元力を持つようにフラップ403が翼402に接続されることになる。
また、接続部705と接続部715とを歯車などの機構を用いて一方の回転を他方に伝達することにより、αとβとの符号を異ならせることができる。
図8は、αとβとの符号を異ならせるための機構の一例を示すための、フラップが後端に接続された翼が取り付けられた状態のストラットの別の側面図である。図8においては、翼402とフラップ403とのピッチ角をアクティブに制御することが可能となる。
すなわち、図8において、ロッド801の一端が接続部803を介して、接続部404と405との間の翼402の箇所に接続されている。またロッドの他端は、ストラット401に固定されたアクチュエータ802により上下に駆動される。これにより、アクチュエータ802により翼402のピッチ角の制御が可能となる。
また、接続部405の後のフラップ403の箇所の接続部813を介してロッド811の一端が接続されている。ロッド811の他端は関節部814を介してロッド812の一端に接続されている。ロッド812の他端は、ストラット401に固定された回転駆動部815に接続される。回転駆動部815は、サーボモータなどで実現し、回転が制御される。回転駆動部815の回転が制御されることにより、ロッド812の回転が制御され、関節部814を介してロッド811の上下運動が制御され、結果として、接続部813を介してフラップ403のピッチ角が制御されることになる。
アクチュエータ802と回転駆動部815との制御は、例えば、翼402の前方や近傍に配置された流向計により、水平線に対する水流の向きを測定し、測定された水流の向きに応じて行なう。このような制御を行なう部を制御部ということにする。このとき、制御部は、翼402とフラップ403とのピッチ角を制御し、揚力を最大化することができる。
また、流向計に加えて流速計を備え、制御部は、翼とフラップとに対する波浪による水流の流速の大きさを測定して、翼402とフラップ403とのピッチ角を制御してもよい。この場合、ピッチ角の制御パターンを、高速走行時と低速走行時との少なくとも2つ用意し、異なる制御を行なってもよい。すなわち、船体の前進速度が大きくなれば、翼への流水の流入角は小さくなり、ストールを心配する必要がなくなり、最大の揚力を発生するようにピッチ角を制御することができる。一方、前進速度が小さければ、翼への流水の流入角が大きくなる傾向が生じるので、ストールの発生を考慮してピッチ角を制御することができる。
301 船体、302 ストラット、303 翼、304 翼、305 フラップ、306 フラップ

Claims (7)

  1. 波浪による水流により、翼と前記翼の後端に第一接続部を介して配置されるフラップにより発生する揚力により推進力を得る波浪推進船であり、
    前記翼のピッチ角が正であれば前記フラップのピッチ角は負になり、前記翼の角が負であれば前記フラップのピッチ角は正になることを特徴とする波浪推進船。
  2. 前記水流が前記翼と前記フラップとの下面に当たるときには、前記翼の前端と前記フラップの後端とを結ぶ直線よりも前記第一接続部は上に位置し、前記水流が前記翼と前記フラップとの上面に当たるときには、前記翼の前端と前記フラップの後端とを結ぶ直線よりも前記第一接続部は下に位置することを特徴とする請求項1に記載の波浪推進船。
  3. 前記翼と前記フラップのピッチ角の絶対値が大きくなると前記ピッチ角を小さくする復元力が前記翼と前記フラップとに加わることを特徴とする請求項1または2に記載の波浪推進船。
  4. 前記翼は前記波浪推進船の前部に設けられたストラットに第二接続部を介して取り付けられ、
    前記ストラットは、第三接続部を介して前記翼に接続されるロッドを上下させる翼駆動部と第四接続部を介して前記フラップに接続されるロッドを上下させるフラップ駆動部とを有する請求項2に記載の波浪推進船。
  5. 前記翼駆動部と前記フラップ駆動部とは弾性体を有し、前記復元力は前記弾性体により生ずることを特徴とする請求項4に記載の波浪推進船。
  6. 前記水流の流向を測定する流向計と、
    前記翼駆動部と前記フラップ駆動部とを制御する制御部とを有する請求項4に記載の波浪推進船。
  7. 前記水流の流速を測定する流速計を有し、
    前記流速計により測定された流速が大きいときには、前記流速計により測定された流速が小さい場合に比べて、前記翼および前記フラップのピッチ角の絶対値を小さく制御することを特徴とする請求項6に記載の波浪推進船。
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