以下、本発明の実施形態に係る放射線測定装置および放射線測定方法について、添付の図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第1の放射線測定装置10Aの構成を示す概略図である。
第1の放射線測定装置10Aは、測定対象物15から放射される放射線の一種であるα線によって電離(イオン化)された気体(イオン)16を含む測定対象物15の周辺の気体を送風する送風手段17と、送風手段17によって移送された気体(電離気体)に含まれるイオン16によって生じる電離電流を検出するイオン検出手段18と、イオン検出手段18によって検出されたイオン16に基づく電離電流と電離気体の速度(風速)に基づいて放射線量を演算する演算手段19と、送風手段17が送風する気体の風速を可変する風速変化手段20と、を具備する。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
送風手段17は、例えば、送風機等で構成され、測定対象物15周辺の気体を送風する。送風手段17は、測定対象物15から放射されるα線によってイオン化した気体(イオン)16を風下(図1に示される三次元(X,Y,Z)の直交座標系では、X座標が大きくなる方向)に位置するイオン検出手段18へ移送する。
イオン検出手段18は、例えば、電圧が印加された電極を有し、イオン16が電極に収集されることでイオン量に応じた電流が発生するイオン検出部を備えて構成されており、発生した電流(電離電流)を検出する。また、イオン検出手段18は、例えば、ケーブル22等の信号伝送手段によって演算手段19と信号伝送可能に接続される。イオン検出手段18はケーブル22を介して検出した電離電流の測定値(検出結果)を演算手段19へ送る。
演算手段19は、測定対象物15から放射されるα線の放射線量を算出するための数式または換算表等で規定した情報(以下、「線量算出情報」と称する。)を有しており、この線量算出情報と、イオン検出手段18が検出した電離電流と、送風手段17が送風する気体の風速、すなわち、電離気体の風速とを用いて、α線の放射線量を演算する。
演算手段19が有する線量算出情報の一つとしては、例えば、測定対象物15の形状と、電流から放射線量へ換算する換算係数Sとの関係を規定した対応表がある。なお、測定対象物15の形状と換算係数Sとの関係は、予め校正試験で測定対象物15の形状毎の換算係数Sを求めることで予め用意することができる。このような対応表を用意しておけば、演算手段19は、測定対象物15の形状に応じた当該測定対象物15の換算係数Sを特定することができる。
また、電流から放射線量へ換算する換算係数Sは、α線の電離作用で発生したイオン16がイオン検出手段18の電極に到達するまでにイオン16の再結合により減少するため、イオン16の発生位置から電極までのイオン16の移動時間に依存する。イオン16の再結合とイオン数との関係は、例えば、特開2007−263804号公報に記載されるように、モデル化されている。
概説すると、イオン(数密度φ)16は、測定対象物15の放射線発生源における生成直後は、荷電粒子の軌跡に沿って円柱状の柱状イオンとして分布している。そのイオン16が自己再結合反応したり、バックグラウンドイオン(数密度N)と再結合反応したりする場合、イオン数およびバックグラウンドイオン数は、次式(2),(3)によって規定される。ここで、バックグラウンドイオンとは、過去に放射線源で発生したイオン16が十分に拡散し定常状態になったものである(N<<φ)。
上記式(2),(3)の右辺の第1,2項は、イオン16の再結合反応によるイオン16の消滅、同じく第3項はエアロゾルへの付着によるイオン16の消滅、同じく第4項は気体の流れ(気流)Fによるイオン16の輸送を表す。また、上記式(2)の右辺の第5項はイオン16の拡散による密度低下を、上記式(3)の右辺の第5項はバックグラウンドイオンの発生をそれぞれ表す。
通常、測定対象物15上のα線の発生位置は不明であるため、放射線管理区域からの搬出検査などで安全側に放射線量を評価する場合、最も感度が低くなると予測される位置での換算係数Sを用いて放射線量を算出する。
ここで、測定対象物15をn個に分割した各メッシュの放射線量を求めることによって、測定対象物15の放射線分布を測定する場合を考える。
上述の式(2)によれば、換算係数Sは、放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動する時間(経過時間)tに依存した関数となる。i(1≦i≦n)番目のメッシュの放射線量をR
iとすると、測定された信号I(ν)は、以下の式(1)で表される。演算手段19は、この式(1)の情報を線量算出情報の一つとして有する。
風速変化手段20は、送風手段17が送風する気体の風速を可変するための構成要素であり、例えば、送風手段17とイオン検出手段18との間に設けられる気体の移動経路上に置いた開口要素(アパーチャー)、フィルタ、または、出力(風速)を制御する回路等で構成される。また、風速変化手段20は、例えば、ケーブル22等の信号伝送手段によって演算手段19と信号伝送可能に接続されており、現在の出力(風速)の情報を演算手段19へ送る。
続いて、第1の放射線測定装置10Aによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第1の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第1の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共にイオン検出手段18まで移送する。イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
また、イオン検出手段18が電流値を計測するに当たっては、風速変化手段20を用いて風速νをn段階に変化させる。上述した式(2)より換算係数Sは、放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動するまでの経過時間(イオン移動時間)tは、風速νに依存して変化するため、風速νをn段階に変化させると、上述した式(1)に基づいて、イオン検出手段18が検出した測定信号(電流値)Iと、送風手段17が送風する気体の風速νk(1≦k≦n)を用いて、以下の式(4)に示されるn個の式からなる連立方程式を作ることができる。
演算手段19は、以下の式(4)に示される連立方程式を解くことで、測定対象物15上のα線の発生位置が不明であっても、i(1≦i≦n)番目のメッシュの放射線量R
iを演算することができ、測定対象物15のα線の放射線量を求めることができる。
第1の放射線測定装置10Aおよび第1の放射線測定方法によれば、上記式(4)で与えられる連立方程式を解くことによって、測定対象物15をn個に分割した各メッシュの放射線量Ri(1≦i≦n)を求めることができる。すなわち、第1の放射線測定装置10Aおよび第1の放射線測定方法によれば、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。
なお、第1の放射線測定装置10Aは、通常、測定対象物15上のα線の発生位置は不明であることを考慮し、上述した式(4)で与えられるようなn個の式からなる連立方程式を作っているが、もし、測定対象物15上のα線の発生位置がわかっている場合には、上述した式(1)を演算することで測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。すなわち、測定対象物15上のα線の発生位置がわかっている場合、送風手段17と、イオン検出手段18と、演算手段19とを具備する放射線測定装置を構成してもよい。この点は、後述する他の実施形態に係る放射線測定装置についても同様である。
[第2の実施形態]
図2は本発明の第2の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第2の放射線測定装置10Bの構成を示す概略図である。
なお、図2においては、図1に示した三次元(X,Y,Z)の直交座標系を省略している(図示していない)が、図1と同様である。また、後述する他の図(図3乃至図16)についても図2と同様に図1に示した三次元(X,Y,Z)の直交座標系を省略している(図示していない)。
第2の放射線測定装置10Bは、第1の放射線測定装置10Aに対して、風速変化手段20の代わりに検出部移動手段23を具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第2の放射線測定装置10Bは、送風手段17と、イオン検出手段18と、演算手段19と、イオン検出手段18を気流Fの方向と平行な方向(X軸方向)に移動させる検出部移動手段23と、を具備する。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
演算手段19は、線量算出情報と、イオン検出手段18が検出した電離電流Iと、送風手段17が送風する気体(電離気体)の風速νと、検出部移動手段23によって気体の流れFと平行な方向(X軸方向)に移動可能なイオン検出手段18の位置(X座標)とを用いて、α線の放射線量を演算する。
検出部移動手段23は、イオン検出手段18を保持しつつ、気流Fに沿う方向、すなわち、X軸方向に移動させて、イオン検出手段18のイオン検出部を移動させる手段である。検出部移動手段23は、例えば、イオン検出手段18と測定対象物15を結ぶ軸方向(X軸方向)に敷設したレールや、このレールにイオン検出手段18と測定対象物15を結ぶ軸方向へ手動または自動でスライド移動可能な台座(スライダ)をさらに取り付けたスライダ付レールで構成することができる。また、検出部移動手段23は、イオン検出手段18の位置(X座標)の情報を有しており、イオン検出手段18の位置(X座標)の情報を演算手段19へ伝送する。
続いて、第2の放射線測定装置10Bによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第2の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第2の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共にイオン検出手段18まで移送する。イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
また、イオン検出手段18が電流値を計測するに当たっては、検出部移動手段23を用いてイオン検出手段18と測定対象物15(放射線発生位置)との距離をn段階変化させる。上述した式(2)より換算係数Sは、放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動するまでの経過時間(イオン移動時間)tに依存した関数であり、このイオン移動時間tはイオン検出手段18と放射線発生位置までの距離lに依存した関数であるので、イオン検出手段18と測定対象物15の距離lをn段階変化させると、上述した式(1)に基づいて、k(1≦k≦n)番目のイオン検出手段18が検出した測定信号(電流値)Ikと、イオン検出手段18と放射線発生位置との距離lとを用いて、以下の式(5)のn個の式からなる連立方程式を作ることができる。
演算手段19は、以下の式(5)に示される連立方程式を解くことで、測定対象物15上のα線の発生位置が不明であっても、i(1≦i≦n)番目のメッシュの放射線量R
iを演算することができ、測定対象物15のα線の放射線量を求めることができる。
第2の放射線測定装置10Bおよび第2の放射線測定方法によれば、上記式(5)で与えられる連立方程式を解くことによって、測定対象物15をn個に分割した各メッシュの放射線量Ri(1≦i≦n)を求めることができる。すなわち、第2の放射線測定装置10Bおよび第2の放射線測定方法によれば、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。
[第3の実施形態]
図3は本発明の第3の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第3の放射線測定装置10Cの構成を示す概略図である。
第3の放射線測定装置10Cは、第1の放射線測定装置10Aに対して、風速変化手段20の代わりに、測定対象物移動手段24を具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第3の放射線測定装置10Cは、送風手段17と、イオン検出手段18と、演算手段19と、イオン検出手段18を気流Fの方向と平行な方向(X軸方向)に移動させる測定対象物移動手段24とを具備する。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
演算手段19は、線量算出情報と、イオン検出手段18が検出した電離電流Iと、送風手段17が送風する気体(電離気体)の風速νと、測定対象物移動手段24によって気流Fと平行な方向(X軸方向)に移動可能なイオン検出手段18の位置(X座標)とを用いて、α線の放射線量を演算する。
測定対象物移動手段24は、測定対象物15を載置しつつ、気流Fに沿う方向、すなわち、X軸方向に移動させる手段である。測定対象物移動手段24は、例えば、イオン検出手段18と測定対象物15を結ぶ軸方向(X軸方向)に敷設したレールや、このレールに測定対象物15を載置したままX軸方向へ手動または自動でスライド移動可能な台座(スライダ)をさらに取り付けたスライダ付レールで構成することができる。また、測定対象物移動手段24は、測定対象物15の位置(X座標)の情報を演算手段19へ伝送する。
続いて、第3の放射線測定装置10Cによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第3の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第3の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共にイオン検出手段18まで移送する。イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
また、イオン検出手段18が電流値を計測するに当たっては、測定対象物移動手段24を用いてイオン検出手段18と測定対象物15(放射線発生位置)の距離をn段階変化させる。上述した式(2)より換算係数Sは、放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動するまでの経過時間(イオン移動時間)tに依存した関数であり、このイオン移動時間tはイオン検出手段18と放射線発生位置との距離lに依存した関数である。
従って、イオン検出手段18と測定対象物15の距離lをn段階変化させると、上述した式(1)に基づいて、k(1≦k≦n)番目の位置にある測定対象物15からイオン検出手段18が検出した測定信号(電流値)Ikと、イオン検出手段18と放射線発生位置との距離lとを用いて、以下の式(6)のn個の式からなる連立方程式を作ることができる。
演算手段19は、以下の式(6)に示される連立方程式を解くことで、測定対象物15上のα線の発生位置が不明であっても、i(1≦i≦n)番目のメッシュの放射線量R
iを演算することができ、測定対象物15のα線の放射線量を求めることができる。
第3の放射線測定装置10Cおよび第3の放射線測定方法によれば、上記式(6)で与えられる連立方程式を解くことによって、測定対象物15をn個に分割した各メッシュの放射線量Ri(1≦i≦n)を求めることができる。すなわち、第3の放射線測定装置10Cおよび第3の放射線測定方法によれば、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。
[第4の実施形態]
図4は本発明の第4の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第4の放射線測定装置10Dの構成を示す概略図である。
第4の放射線測定装置10Dは、第1の放射線測定装置10Aに対して、風速変化手段20の代わりに流路長変化手段25(25a,25b)を具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第4の放射線測定装置10Dは、送風手段17と、イオン検出手段18と、演算手段19と、イオン16が移動する移動距離lを変化させる流路長変化手段25と、を具備する。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
演算手段19は、線量算出情報と、イオン検出手段18が検出した電離電流Iと、送風手段17が送風する気体(電離気体)の風速νと、放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動する移動距離lとを用いて、α線の放射線量を演算する。
流路長変化手段25は、放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動する移動距離、気体の流路長を可変させる手段である。流路長変化手段25は、例えば、図4に示されるように、略U字状またはコの字状の配管(以下、「U字管」と称する。)251で構成される内筒を、二つの略L字状の配管(以下、「L字管」と称する。)252で構成される外筒に、スライド可能に挿入し、全体として管路長を変化可能な二重配管である伸縮管25aで構成される。なお、両配管251,252の接合個所は気体漏れを防止するため、例えば、シールリング等の封止部材253で封止される。
また、流路長変化手段25は、流路長変化手段25の流路長を算出可能な情報を演算手段19へ伝送する。例えば、流路長変化手段25の一例である伸縮管25aの場合、U字管251のスライド量の情報を演算手段19へ伝送し、演算手段19は予め与えられている伸縮管25aの基準位置における流路長から取得したU字管251のスライド量、すなわち、U字管251の位置情報を考慮して、現在の伸縮管25aの流路長を算出する。
伸縮管25aの流路長は、U字管251およびL字管252が所要の管路長で作成されているため、例えば、U字管251を最も奥まで嵌め込んだ位置(流路長変化手段25での流路長が最小となる位置)等の基準位置における伸縮管25aの流路長は予め算出することができ、基準位置からのスライド量が一義に決まれば、伸縮管25aでの流路長を一義に決定することができる。
続いて、第4の放射線測定装置10Dによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第4の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第4の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共にイオン検出手段18まで移送する。イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
また、イオン検出手段18が電流値を計測するに当たっては、流路長変化手段25を用いてイオン検出手段18と測定対象物15(放射線発生位置)との距離、すなわち、気体の流路長をn段階変化させる。上述した式(2)より換算係数Sは、放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動するまでの経過時間(イオン移動時間)tに依存した関数であり、このイオン移動時間tはイオン検出手段18と放射線発生位置までの距離lに依存した関数であるので、イオン検出手段18と放射線発生位置との距離lをn段階変化させると、上述した式(1)に基づいて、k(1≦k≦n)番目の流路長の場合にイオン検出手段18が検出した測定信号(電流値)Ikと、イオン移動時間tとを用いて、以下の式(7)のn個の式からなる連立方程式を作ることができる。
演算手段19は、以下の式(7)に示される連立方程式を解くことで、測定対象物15上のα線の発生位置が不明であっても、i(1≦i≦n)番目のメッシュの放射線量R
iを演算することができ、測定対象物15のα線の放射線量を求めることができる。
第4の放射線測定装置10Dおよび第4の放射線測定方法によれば、上記式(7)で与えられる連立方程式を解くことによって、測定対象物15をn個に分割した各メッシュの放射線量Ri(1≦i≦n)を求めることができる。すなわち、第4の放射線測定装置10Dおよび第4の放射線測定方法によれば、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。
なお、図4に示される第4の放射線測定装置10Dでは、流路長変化手段25の一例として、伸縮管25aを説明したが、気体が流動する流路長を所定の流路長に変化可能な構成であれば、どのような構成であっても構わない。
図5は、第4の放射線測定装置10Dが具備する流路長変化手段25の他の構成例(流路長可変管25b)を示す概略図である。
流路長変化手段25の伸縮管25a以外の構成例としては、例えば、図5に示されるように、流路を開閉する開閉弁255を、主流路および主流路を迂回するバイパス流路を有するバイパス管256の主流路およびバイパス流路上に設け、開閉弁255の開閉状態を切り替えることで、複数段階で流路長を変化させる機能を有するバイパス管(以下、「流路長可変管」と称する。)25bがある。
[第5の実施形態]
図6は本発明の第5の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第5の放射線測定装置10Eの構成を示す概略図である。
第5の放射線測定装置10Eは、第1の放射線測定装置10Aに対して、風速変化手段20を具備しない一方、イオン検出手段18が複数となる点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第5の放射線測定装置10Eは、送風手段17と、複数のイオン検出手段18と、演算手段19とを具備し、イオン検出手段18は気体の流れ方向Fと平行な方向(X軸方向)に直列に配置される。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
演算手段19は、線量算出情報と、各イオン検出手段18が検出した電離電流Iと、送風手段17が送風する気体(電離気体)の風速νと、各イオン検出手段18と放射線発生位置までのイオン16の移動距離lとを用いて、α線の放射線量を演算する。
続いて、第5の放射線測定装置10Eによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第5の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第5の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共に各イオン検出手段18まで移送する。各イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
イオン検出手段18が、例えばn個直列に存在する場合、各イオン検出手段18と測定対象物15(放射線発生位置)との距離lは、異なるn個の値をとる。また、上述した式(2)より換算係数Sが、放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動するまでの経過時間(イオン移動時間)tに依存した関数であり、このイオン移動時間tがイオン検出手段18と放射線発生位置までの距離lに依存した関数である。そこで、上述した式(1)に基づいて、k(1≦k≦n)番目のイオン検出手段18が検出した測定信号(電流値)Ikと、放射線発生位置から各イオン検出手段18までのイオン移動時間tとを用いて、以下の式(8)に示されるようなn個の式からなる連立方程式を作ることができる。
演算手段19は、以下の式(8)に示される連立方程式を解くことで、測定対象物15上のα線の発生位置が不明であっても、i(1≦i≦n)番目のメッシュの放射線量R
iを演算することができ、測定対象物15のα線の放射線量を求めることができる。
以上、第5の放射線測定装置10Eおよび第5の放射線測定方法によれば、上記式(8)で与えられる連立方程式を解くことによって、測定対象物15をn個に分割した各メッシュの放射線量Ri(1≦i≦n)を求めることができる。すなわち、第5の放射線測定装置10Eおよび第5の放射線測定方法によれば、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。
なお、イオン検出手段18はn個が直列に接続されているとしたが、少なくともn個の異なるイオン検出手段18から測定電流を取得できるように構成されていれば良い。すなわち、イオン検出手段18はn個以上であれば任意である。
[第6の実施形態]
図7は本発明の第6の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第6の放射線測定装置10Fの構成を示す概略図である。
第6の放射線測定装置10Fは、第1の放射線測定装置10Aに対して、風速変化手段20を具備しない一方、イオン検出手段18が複数のイオン検出器181,…,18nを有する点と、イオン検出手段18の有効長を変化させる有効長変化手段29を具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第6の放射線測定装置10Fは、送風手段17と、例えばn(nは2以上の整数)個等の複数のイオン検出器181,…,18nを有するイオン検出手段18と、演算手段19と、直列接続するイオン検出器181,…,18nの個数を変化させることで、イオン検出手段18の有効長Lを変化させる有効長変化手段29と、を具備する。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
イオン検出手段18は気体の流れ方向Fと平行な方向(X軸方向)に複数個が直列に配置されており、有効長変化手段29によって、直列接続するイオン検出手段18の個数を変化させることで、イオン検出手段18の有効長Lを変化させる。演算手段19は、線量算出情報と、各イオン検出手段18が検出した電離電流と、送風手段17が送風する気体(電離気体)の風速νと、イオン検出手段18の有効長Lとを用いて、α線の放射線量を演算する。
有効長変化手段29は、例えば、イオン検出器181,…,18nを直列接続する個数、すなわち、イオン検出手段18を一定間隔毎に接離するスイッチ等で構成され、イオン検出器181,…,18nを直列接続する個数を変化させることによって、イオン検出手段18の有効長Lを変化させることができる。また、有効長変化手段29は、スイッチの接続状態等のイオン検出器181,…,18nを直列接続する個数を特定する情報を演算手段19へ送る。
続いて、第6の放射線測定装置10Fによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第6の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第6の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共にイオン検出手段18まで移送する。イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
また、イオン検出手段18が電流値を計測するに当たっては、有効長変化手段29によって、イオン検出手段18の有効長Lをn段階に変化させる。上述した式(2)より換算係数Sは、放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動するまでの経過時間(イオン移動時間)tに依存した関数である。ここで、イオン検出手段18の有効長Lを変化させると、イオン検出手段18と放射線発生位置までのイオン16の移動距離lが変化し、イオン移動時間tはイオン検出手段18と放射線発生位置までの距離lに依存した関数となっている。また、換算係数Sはイオン検出手段18の有効長Lの関数となっている。
そこで、有効長変化手段29を用いてイオン検出手段18の有効長Lをn段階に変化させると、上述した式(1)に基づいて、イオン検出手段18の有効長L
k(1≦k≦n)と、有効長L
kの場合にイオン検出手段18が検出した測定信号(電流値)I
kと、イオン移動時間tとを用いて、以下の式(9)に示されるようにn個の式からなる連立方程式を作ることができる。演算手段19は、以下の式(9)に示される連立方程式を解くことで、測定対象物15上のα線の発生位置が不明であっても、i(1≦i≦n)番目のメッシュの放射線量R
iを演算することができ、測定対象物15のα線の放射線量を求めることができる。
第6の放射線測定装置10Fおよび第6の放射線測定方法によれば、上記式(9)で与えられる連立方程式を解くことによって、測定対象物15をn個に分割した各メッシュの放射線量Ri(1≦i≦n)を求めることができる。すなわち、第6の放射線測定装置10Fおよび第6の放射線測定方法によれば、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。
[第7の実施形態]
図8は本発明の第7の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第7の放射線測定装置10Gの構成を示す概略図である。
第7の放射線測定装置10Gは、第1の放射線測定装置10Aに対して、風速変化手段20に代わりイオン吸着手段30を具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第7の放射線測定装置10Gは、送風手段17と、イオン検出手段18と、演算手段19と、測定対象物15から放出されたイオン16を吸着するイオン吸着手段30と、を具備する。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
演算手段19は、線量算出情報、イオン吸着手段30の位置情報(X座標)、イオン検出手段18が検出した電離電流の測定信号(電流値)Iおよび送風手段17が送風する電離気体の風速νを用いて、α線の放射線量を演算する。イオン吸着手段30の位置情報は、例えば、ユーザ(測定者)の入力操作によって予め与えられる。
イオン吸着手段30は、入切(ON/OFF)自在に構成されており、入(ON)状態にすると測定対象物15から放出されたイオン16を引き寄せて吸着することができる手段である。
第7の放射線測定装置10Gでは、一個または複数個のイオン吸着手段30がイオン16の移動経路近傍に配置されており、イオン吸着手段30の上流で放出されたイオン16が吸着する。イオン吸着手段30は、例えばイオン16と逆符号に帯電した電極やイオン吸着体等で構成される。
続いて、第7の放射線測定装置10Gによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第7の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第7の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共にイオン検出手段18まで移送する。イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
第7の放射線測定装置10Gでは、イオン吸着手段30の作用によって、イオン吸着手段30よりも上流で発生したイオン16は吸着されてイオン検出手段18に届かなくなるため、測定対象物15上のα線の発生位置を特定することができる。そこで、入状態にあるイオン吸着手段30の位置を順次移動させて、イオン検出手段18の信号を測定する。
演算手段19は、取得した線量算出情報、イオン吸着手段30の位置情報(X座標)、イオン検出手段18が検出した電離電流の測定信号(電流値)Iおよび送風手段17が送風する電離気体の風速νを用いて、イオン移動時間tを算出し、上述した式(1)に、測定信号I、風速ν、イオン移動時間tおよび測定対象物15の形状に基づく換算係数Sを代入して計算することで、測定対象物15の放射線量の分布を求めることができる。
第7の放射線測定装置10Gおよび第7の放射線測定方法によれば、上述した式(1)を演算することによって、測定対象物15をn個に分割したメッシュのi(1≦i≦n)番目のメッシュにおける放射線量Riを演算することができ、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。
[第8の実施形態]
図9は本発明の第8の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第8の放射線測定装置10Hの構成を示す概略図である。
第8の放射線測定装置10Hは、第7の放射線測定装置10Gに対して、吸着部移動手段31をさらに具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第8の放射線測定装置10Hは、送風手段17と、イオン検出手段18と、演算手段19と、イオン吸着手段30と、イオン吸着手段30を気体の流れ方向Fと平行な方向(X軸方向)に移動させる吸着部移動手段31と、を具備する。
演算手段19は、線量算出情報、イオン吸着手段30の位置情報(X座標)、イオン検出手段18が検出した電離電流の測定信号(電流値)Iおよび送風手段17が送風する電離気体の風速νを用いて、α線の放射線量を演算する。
吸着部移動手段31は、イオン吸着手段30を保持しつつ、気流Fに沿う方向、すなわち、X軸方向に移動させて、イオン吸着手段30のイオン吸着部を移動させる手段である。吸着部移動手段31は、例えば、イオン検出手段18と測定対象物15を結ぶ軸方向(X軸方向)に敷設したレールや、このレールにイオン検出手段18と測定対象物15を結ぶ軸方向へ手動または自動でスライド移動可能な台座(スライダ)をさらに取り付けたスライダ付レールで構成することができる。また、吸着部移動手段31は、イオン吸着手段30の位置情報(X座標)を有しており、イオン吸着手段30の位置情報(X座標)を演算手段19へ送る。
続いて、第8の放射線測定装置10Hによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第8の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第8の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共にイオン検出手段18まで移送する。イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
第8の放射線測定装置10Hでは、イオン吸着手段30の作用によって、イオン吸着手段30よりも上流で発生したイオン16は吸着されてイオン検出手段18に届かなくなるため、測定対象物15上のα線の発生位置を特定することができる。そこで、吸着部移動手段31がイオン吸着手段30の位置を順次移動させて、イオン検出手段18の信号を測定する。
演算手段19は、取得した線量算出情報、イオン吸着手段30の位置情報(X座標)、イオン検出手段18が検出した電離電流の測定信号(電流値)Iおよび送風手段17が送風する電離気体の風速νを用いて、イオン移動時間tを算出し、上述した式(1)に、測定信号I、風速ν、イオン移動時間tおよび測定対象物15の形状に基づく換算係数Sを代入して計算することで、測定対象物15の放射線量の分布を求めることができる。
第8の放射線測定装置10Hおよび第8の放射線測定方法によれば、上述した式(1)を演算することによって、測定対象物15をn個に分割したメッシュのi(1≦i≦n)番目のメッシュにおける放射線量Riを演算することができ、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。
[第9の実施形態]
図10は本発明の第9の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第9の放射線測定装置10Iの構成を示す概略図である。
第9の放射線測定装置10Iは、第1の放射線測定装置10Aに対して、風速変化手段20に代わり、エアロゾル濃度変化手段35を具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第9の放射線測定装置10Iは、送風手段17と、イオン検出手段18と、演算手段19と、送風手段17が送風する気体中のエアロゾル濃度を変化させるエアロゾル濃度変化手段35と、を具備する。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
演算手段19は、線量算出情報と、イオン検出手段18が検出した電離電流Iと、送風手段17が送風する気体(電離気体)の風速νと、エアロゾル濃度Nとを用いて、α線の放射線量を演算する。
エアロゾル濃度変化手段35は、送風手段17によって送風される気体中のエアロゾル濃度を変化させる手段である。エアロゾル濃度変化手段35は、例えば、エアロゾル発生器やエアロゾルフィルタを採用することで、気体中のエアロゾル濃度を変化させることができる。また、エアロゾル濃度変化手段35は、エアロゾル濃度Nまたはエアロゾル濃度Nを算出するために必要なエアロゾル発生量等の情報を演算手段19へ送る。
なお、イオン16を移送する気体の種類によってもエアロゾル濃度は変化するので、イオン16を移送する気体の種類を切り替えて供給可能な構成要素によってエアロゾル濃度変化手段35を実現することもできる。
続いて、第9の放射線測定装置10Iによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第9の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第9の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共にイオン検出手段18まで移送する。イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
また、イオン検出手段18が電流値を計測するに当たっては、エアロゾル濃度変化手段35を用いて、エアロゾル濃度Nをn段階に変化させる。上述した式(2)より換算係数Sは、エアロゾル濃度Nおよび放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動するまでの経過時間(イオン移動時間)tに依存した関数となるため、エアロゾル濃度Nをn段階に変化させると、上述した式(1)に基づいて、エアロゾル濃度Nk(1≦k≦n)と、エアロゾル濃度Nkの場合にイオン検出手段18が検出した測定信号(電流値)Ikと、イオン移動時間tとを用いて、以下の式(10)に示されるn個の式からなる連立方程式を作ることができる。
演算手段19は、以下の式(10)に示される連立方程式を解くことで、測定対象物15上のα線の発生位置が不明であっても、i(1≦i≦n)番目のメッシュの放射線量R
iを演算することができ、測定対象物15のα線の放射線量を求めることができる。
第9の放射線測定装置10Iおよび第9の放射線測定方法によれば、上記式(10)で与えられる連立方程式を解くことによって、測定対象物15をn個に分割した各メッシュの放射線量Ri(1≦i≦n)を求めることができる。すなわち、第9の放射線測定装置10Iおよび第9の放射線測定方法によれば、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。
[第10の実施形態]
図11は本発明の第10の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第10の放射線測定装置10Jの構成を示す概略図である。
第10の放射線測定装置10Jは、第1の放射線測定装置10Aに対して、風速変化手段20に代わり、付着係数変化手段36を具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第10の放射線測定装置10Jは、送風手段17と、イオン検出手段18と、演算手段19と、送風手段17が送風する気体中のイオン16のエアロゾルへの付着係数を変化させる付着係数変化手段36と、を具備する。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
演算手段19は、線量算出情報と、イオン検出手段18が検出した電離電流Iと、送風手段17が送風する気体(電離気体)の風速νと、イオン16のエアロゾルへの付着係数βとを用いて、α線の放射線量を演算する。
付着係数変化手段36は、送風手段17が送風する気体中のイオン16のエアロゾルへの付着係数βを変化させる手段である。付着係数を制御するには、例えば、温度や、エアロゾルの種類を変化させればよいことから、例えば、エアロゾルフィルタ、エアロゾル発生器、温度制御可能なヒータ等を付着係数変化手段36として採用することができる。また、付着係数変化手段36は、付着係数βまたは付着係数βを算出するために必要なエアロゾル発生量等の情報を演算手段19へ送る。
続いて、第10の放射線測定装置10Jによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第10の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第10の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共にイオン検出手段18まで移送する。イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
また、イオン検出手段18が電流値を計測するに当たっては、付着係数変化手段36を用いて、イオン16のエアロゾルへの付着係数βをn段階に変化させる。上述した式(2)より換算係数Sは、付着係数βおよび放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動するまでの経過時間(イオン移動時間)tに依存した関数となるため、エアロゾルへの付着係数βをn段階に変化させると、上述した式(1)に基づいて、付着係数βk(1≦k≦n)と、付着係数βkの場合にイオン検出手段18が検出した測定信号(電流値)Ikと、イオン移動時間tとを用いて、以下の式(11)に示されるn個の式からなる連立方程式を作ることができる。
演算手段19は、以下の式(11)に示される連立方程式を解くことで、測定対象物15上のα線の発生位置が不明であっても、i(1≦i≦n)番目のメッシュの放射線量R
iを演算することができ、測定対象物15のα線の放射線量を求めることができる。
第10の放射線測定装置10Jおよび第10の放射線測定方法によれば、上記式(11)で与えられる連立方程式を解くことによって、測定対象物15をn個に分割した各メッシュの放射線量Ri(1≦i≦n)を求めることができる。すなわち、第10の放射線測定装置10Jおよび第10の放射線測定方法によれば、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。
[第11の実施形態]
図12は本発明の第11の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第11の放射線測定装置10Kの構成を示す概略図である。
第12の放射線測定装置10Kは、第1の放射線測定装置10Aに対して、風速変化手段20に代わり、再結合定数変化手段37を具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第11の放射線測定装置10Kは、送風手段17と、イオン検出手段18と、演算手段19と、イオン16の再結合定数を変化させる再結合定数変化手段37と、を具備する。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
演算手段19は、線量算出情報と、イオン検出手段18が検出した電離電流Iと、送風手段17が送風する気体(電離気体)の風速νと、イオン16の再結合定数αとを用いて、α線の放射線量を演算する。
再結合定数変化手段37は、イオン16の再結合定数を変化させる手段である。再結合定数を制御するには、気体の成分構成、温度を変化させればよいことから、例えば、測定対象物15周辺の気体とは成分の違うガスを気体中に注入するガス供給装置や、温度制御可能なヒータ等を再結合定数変化手段37として採用することができる。また、再結合定数変化手段17は、再結合定数αまたは、再結合定数αを算出するために必要なヒータ温度等の情報を演算手段19へ送る。
続いて、第11の放射線測定装置10Kによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第11の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第11の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共にイオン検出手段18まで移送する。イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
また、イオン検出手段18が電流値を計測するに当たっては、再結合定数変化手段37を用いて、再結合定数αをn段階に変化させる。上述した式(2)より換算係数Sは、再結合定数αおよび放射線発生位置からイオン検出手段18までイオン16が移動するまでの経過時間(イオン移動時間)tに依存した関数となるため、再結合定数αをn段階に変化させると、上述した式(1)に基づいて、再結合定数αk(1≦k≦n)と、再結合定数αkの場合にイオン検出手段18が検出した測定信号(電流値)Ikと、イオン移動時間tとを用いて、以下の式(12)に示されるn個の式からなる連立方程式を作ることができる。
演算手段19は、以下の式(12)に示される連立方程式を解くことで、測定対象物15上のα線の発生位置が不明であっても、i(1≦i≦n)番目のメッシュの放射線量R
iを演算することができ、測定対象物15のα線の放射線量を求めることができる。
第11の放射線測定装置10Kおよび第11の放射線測定方法によれば、上記式(12)で与えられる連立方程式を解くことによって、測定対象物15をn個に分割した各メッシュの放射線量Ri(1≦i≦n)を求めることができる。すなわち、第11の放射線測定装置10Kおよび第11の放射線測定方法によれば、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。
[第12の実施形態]
図13は本発明の第12の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第12の放射線測定装置10Lの構成を示す概略図である。
第12の放射線測定装置10Lは、第1の放射線測定装置10Aに対して、回転手段38をさらに具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第12の放射線測定装置10Lは、送風手段17と、イオン検出手段18と、演算手段19と、測定対象物15を保持しつつ回転させる回転手段38と、を具備する。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
回転手段38は、測定対象物15を保持しつつ、測定対象物15を1軸または複数の軸で回転させる手段である。回転手段38は、例えば、回転ステージ等で構成される。また、回転手段38は、例えば、図13に示されるように、Z軸を回転軸としてX−Y平面上で測定対象物15の角度を変えることができる。
第12の放射線測定装置10Lおよび第12の放射線測定装置10Lによって行われる放射線量の測定方法(第12の放射線測定方法)によれば、第12の放射線測定装置10Lが回転手段38を具備するので、測定対象物15を回転させて複数の角度で放射線量の分布を測定することができる。すなわち、測定対象物15の二次元的または三次元的な放射線量の分布を測定することができる。
なお、図13に示される第12の放射線測定装置10Lは、第1の放射線測定装置10Aにさらに回転手段38を具備する構成としているが、これは一例であって、第1の放射線測定装置10Aに限らず、他の放射線測定装置(例えば、第2の放射線測定装置10B等)にさらに回転手段38を具備する構成としてもよい。また、回転手段38の回転軸は、図13等に示されるX軸、Y軸またはZ軸に限定されるものではなく、任意の回転軸を設定できる。
[第13の実施形態]
図14は本発明の第13の実施形態に係る放射線測定装置の一例である第13の放射線測定装置10Mの構成を示す概略図である。
第13の放射線測定装置10Mは、第1の放射線測定装置10Aに対して、風速変化手段20に代わり、遮蔽手段39(39a,39b,39c)を具備する点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第13の放射線測定装置10Mは、送風手段17と、イオン検出手段18と、演算手段19と、測定対象物15の表面を覆う面積(遮蔽範囲)を変化させる遮蔽手段39と、を具備する。なお、符号Fは送風手段17によって生じた気体の流れを示す。
演算手段19は、線量算出情報と、イオン検出手段18が検出した電離電流Iと、送風手段17が送風する気体(電離気体)の風速νと、遮蔽手段39(39a,39b,39c)による測定対象物15の遮蔽範囲とを用いて、イオン移動時間tを算出し、上述した式(1)に、測定信号I、風速ν、イオン移動時間tおよび測定対象物15の形状に基づく換算係数Sを代入して計算することで、測定対象物15のα線の放射線量を演算する。
遮蔽手段39は、測定対象物15の遮蔽範囲を変化させる手段である。遮蔽手段39は、測定対象物15から放射される放射線の飛程よりも表面に近い位置に設けられ、測定対象物15から放射される放射線を遮蔽することで、遮蔽範囲から放射した放射線によって測定対象物15の周辺の気体がイオン化するのを妨げる。
遮蔽手段39は、例えば、図14に示されるように、測定対象物15を内包できる太さを持ち測定対象物15に沿って移動する筒状体39a等で構成することができる。また、遮蔽手段39は、手段全体として放射線を遮蔽できるものであればよく、放射線がα線の場合には、例えば、薄い金属箔、プラスチックまたは紙等の素材を用いて構成することができる。
続いて、第13の放射線測定装置10Mによって行われる放射線量の測定方法(以下、「第13の放射線測定方法」と称する。)について説明する。
第13の放射線測定方法では、まず、測定対象物15の表面に付着したウランなどのα放射性核種から放出されたα線の飛程内で気体が電離されて発生したイオン16を送風手段17で送風される気体と共にイオン検出手段18まで移送する。イオン検出手段18では、移送されたイオン16の量に応じて電流(電離電流)が発生するので、この電流値を計測し、計測結果を演算手段19へ送る。
第13の放射線測定装置10Mでは、遮蔽手段39の測定対象物15から放射される放射線を遮蔽する作用によって、遮蔽手段39に測定対象物15の表面が覆われている範囲は、遮蔽手段39に放射線が遮蔽されてイオン検出手段18に届かなくなるため、測定対象物15上のα線の発生位置を特定することができる。そこで、遮蔽手段39による遮蔽範囲を変化させて、イオン検出手段18の信号を測定する。
演算手段19は、取得した線量算出情報、遮蔽手段39による遮蔽範囲の情報、イオン検出手段18が検出した電離電流の測定信号(電流値)Iおよび送風手段17が送風する電離気体の風速νを用いて、イオン移動時間tを算出し、上述した式(1)に、測定信号I、風速ν、イオン移動時間tおよび測定対象物15の形状に基づく換算係数Sを代入して計算することで、測定対象物15の放射線量の分布を求めることができる。
第13の放射線測定装置10Mおよび第13の放射線測定方法によれば、上述した式(1)を演算することによって、測定対象物15の放射線量の分布を測定することができる。なお、遮蔽手段39は、測定対象物15の遮蔽範囲を適宜変化させることのできる手段であれば、具体的な構成は任意である。すなわち、遮蔽手段39は、図14に示される筒状体39aに限定されない。
図15および図16は、第13の放射線測定装置10Mが具備する遮蔽手段39の構成例であり、筒状体39a以外の構成例を示す概略図である。
図15に示される遮蔽手段39(39b)は、例えば、測定対象物15を内包できる太さを持ち、図15(a)および(b)に示されるように、伸縮することで測定対象物15の遮蔽範囲を変化させる蛇腹39bである。また、図16に示される遮蔽手段39(39c)は、例えば、遮蔽体を複数に分割した小片(遮蔽片)40を少なくとも一つ以上配列して一つの遮蔽体となる組立式遮蔽体39cである。第13の放射線測定装置10Mでは、遮蔽手段39の一例として、筒状体39aの代わりに、蛇腹39bや組立式遮蔽体39cを遮蔽手段39として採用することもできる。
以上、第1〜第13の放射線測定装置10A〜10Mおよび第1〜第13の放射線測定方法によれば、測定対象物15をn個に分割したメッシュのi(1≦i≦n)番目のメッシュにおける放射線量Riを演算することができ、測定対象物15から放射される放射線量の空間的な分布を測定することができる。
なお、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、第1の放射線測定装置10A〜10Mにおける演算手段19へのデータ伝送は、図1等に示されるケーブル22を介した有線伝送に限らず無線伝送により行っても良い。また、第1の放射線測定装置10Aおよび第2の放射線測定装置10B等の複数の実施例に係る放射線測定装置を適宜組み合わせた放射線測定装置等を構成しても良い。
これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。