JP2013029435A - 電子スピン偏極イオンビーム発生方法及びその発生装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】希ガス元素イオンからなるイオンビームを発生させる工程と、前記イオンビームを標的12の一面12aに入射して、散乱イオンビームを出射させる工程と、前記散乱イオンビームを静電アナライザ13内に取り込んで、電界を印加して、電子スピン偏極イオンビームを発生させる工程と、を有する電子スピン偏極イオンビーム発生方法であって、前記イオンビームを標的12の一面12aに入射する際、前記イオンビームの入射方向と前記散乱イオンビームの出射方向の両者を含む散乱面に対して、磁場の方向が80°以上100°以下の方向となるように、磁場を印加する電子スピン偏極イオンビーム発生方法を用いることによって前記課題を解決できる。
【選択図】図2
Description
また、スピン偏極イオン散乱分光法(SP−ISS)は、ISSの入射イオンをスピン偏極することで、固体表面におけるスピンが関与する物性に関する情報を得る分光法である(非特許文献2)。SP−ISSでは、スピン偏極率の高い電子スピン偏極イオンビームを用いることにより、詳細な情報を得ることができる。
非特許文献4、5には、光ポンピング法によるHe+イオンのスピン偏極方法が記載されており、非特許文献6には、光ポンピング法による各種イオンのスピン偏極方法が記載されている。
そこで、光ポンピング法を用いない電子スピン偏極イオンビーム発生方法及び発生装置が求められている。
なお、本技術の基本原理は、弾性散乱におけるスピン軌道相互作用であり、電子スピンを有する全てのイオンのみならず、原子やイオン及びイオンクラスター等の集合体に応用可能である。
また、磁場配置、標的材料、入射エネルギー、散乱角を限定することにより、スピン偏極率が高いイオンビームが得られ、SP−ISS等のスピン偏極イオンビームの応用に好都合である。
本発明は、以下の構成を有する。
(3)前記希ガス元素がHeであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
(4)前記イオンビームの入射エネルギーが1keV以上30MeV以下であり、散乱角が150°であり、入射角が0°であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
(6) 前記標的が、Sn、Au、Pb、Biの群から選択される一の材料を有することを特徴とする(5)に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
(7)前記イオンビームの入射エネルギーが1.57keVであり、散乱角が60°以上90°以下又は110°以上150°以下の範囲内であり、入射角が(180°−散乱角)/2であり、前記標的がAuであることを特徴とする(6)に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
(9)希ガス元素の種類、標的材料の種類、入射エネルギー値、入射角、出射角、散乱角を同一にして、光ポンピング法による電子スピン偏極イオンビームのスピン非対称率を測定する工程を有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
(12)前記イオンビーム発生部が、希ガス元素ガス導入管が接続されたRF放電管であることを特徴とする(10)又は(11)に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生装置。
<電子スピン偏極イオンビーム発生装置>
まず、本発明の実施形態である電子スピン偏極イオンビーム発生装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態である電子スピン偏極イオンビーム発生装置の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施形態である電子スピン偏極イオンビーム発生装置51は、真空槽10と、イオンビーム発生部1と、を備えて概略構成されている。
真空槽10及びイオンビーム発生部1は、3軸コイル11により、取り囲まれている。3軸コイル11は、一辺Lの長さで、立方体状に形成されており、3軸コイル11に流す電流を調整して、例えば、イオンビーム発生部1から真空槽10までの磁場の方向を、図1に示す鉛直方向とし、その大きさは約3×10−5Tとなるようにする。一辺Lの長さは、例えば、2mである。
なお、イオンビーム発生部1はRF放電管に限られるものではなく、希ガス元素をイオン化可能な機器であればよい。
しかし、本発明の実施形態では、真空槽10内のスピン偏極器で希ガス元素イオンのスピン偏極が可能なため、電子スピン偏極イオンビーム発生させる方法、装置には、本構成(イオンビーム発生部1を光透過性の高い材料で形成する構成)は必要ない。本発明の実施形態である電子スピン偏極イオンビーム発生方法、装置により得られたスピン偏極率の値は、別の手段により得たスピン偏極率を元に算出してもよい。
図2に示すように、真空槽10内にはスピン偏極器14が設置されている。スピン偏極器14は、略板状の標的12と静電アナライザ13とからなる。
標的12には、真空槽10を取り囲むように配置した3軸コイル11により、磁場が印加可能とされている。
静電アナライザ13は、移動制御機構(図示略)により標的12の回転軸gを中心として、開口部13c1aが標的12を向いたまま、回転移動可能とされている。つまり、標的12の回転軸gと同軸上で移動可能とされている。
例えば、単結晶金(Au)を用いた場合、その(111)面をイオンビームの照射面とする。
標的12の一面12aで散乱されたイオンビームは、静電アナライザ13の開口部13c1aから内部に取り込まれる。
静電アナライザ13内では、イオンビームが電界印加処理されて、弾性散乱に相当する運動エネルギーを有するイオンビームが取り出されることで電子スピン偏極イオンビームとされてから、開口部13c2bから放出される。
2次電子増倍管15には、プリアンプ(図示略)が接続され、出力信号を増幅できる構成とされている。前記プリアンプには、カウンタボードを介してコンピュータが接続され、前記出力信号をコンピュータで処理できる構成とされている。
なお、2次電子増倍管15は、取り外し可能で、2次電子増倍管15の代わりに試料を配置できる構成とされている。試料を配置することにより、電子スピン偏極イオンビームを試料に照射して、試料の固体表面分析が可能とされている。
図3に示すように、標的12の一面12aの法線方向は、磁場方向と略垂直方向となるように設定されている。イオンビームの入射角α、出射角β、散乱角θが表示されている。入射方向と出射方向の両者を含む面(散乱面)は、法線方向に平行となるように調整されている。
標的12を回転させることにより、入射角αを0°以上90°未満の範囲で設定できる。また、静電アナライザ13を移動させることにより、散乱角θを0°以上180°未満の範囲で設定できる。出射角βは、入射角αと散乱角θを設定することにより、決定される。
具体的には、標的12の一面12aの法線方向に対して、磁場方向を80°以上100°以下の方向とすることが好ましく、磁場方向を85°以上95°以下の方向とすることがより好ましく、90°とすることが更に好ましい。
なお、磁場方向は、散乱面に平行な方向でなければよい。磁場方向と散乱面が平行でない限りスピン軌道相互作用が発生するためである。
図4(a)に示すように、静電アナライザ13は、平面視略矩形状の部材13a、13bが連結されてなる。平面視略矩形状の部材13a、13bには、それぞれ筒部13c1、13c2が設けられている。
部材13aは、電界印加部材13a1、13a2からなり、絶縁部材(図示略)が挟持されている。これにより、電界印加部材13a1、13a2の間で電界を印加可能とされており、電界の方向及び大きさを操作することにより、特定の運動エネルギーを持ったイオンビームが筒部13c1内を通過できる。
次に、本発明の実施形態である電子スピン偏極He+イオンビームの発生方法について説明する。
本発明の実施形態である電子スピン偏極He+イオンビームの発生方法は、イオンビーム発生工程S1と、散乱イオンビーム発生工程S2と、電子スピン偏極イオンビーム発生工程S3と、を有する。
まず、3軸コイルを調整して、He+イオン源から真空槽までの磁場方向が、鉛直方向に平行で、その大きさが1×10−6T以上1×10−4Tの範囲となるように調整する。
例えば、単結晶金(Au)を用い、以下の工程では、その(111)面をイオンビームの照射面とするように、(111)面を標的の回転軸と平行となる様に真空槽内に標的を配置する。この配置では、入射方向と出射方向の両者を含む面(散乱面)が標的表面の法線方向と平行になっている。
これにより、標的の一面の法線方向に対して、磁場方向が80°以上100°以下の方向となるようにし、入射角α、出射角β、散乱角θを所定の値とする。
次に、ビームラインに電界を印加し、無偏極のHe+イオンを加速して真空槽の中に設置したスピン偏極器まで輸送し、He+イオンからなるイオンビームを入射エネルギーEで、真空槽内のスピン偏極器内の標的に照射する。
He+イオンは標的で散乱されて、散乱イオンビームを発生させる。
次に、標的で弾性散乱されたHe+イオンを、開口部から静電アナライザ内に取り込む。
標的で散乱されたHe+イオンは、開口部から静電アナライザ内に取り込まれてから、静電アナライザ内で掃引電圧により、エネルギー分別され、弾性散乱に相当する運動エネルギーを有するイオンビームが取り出されることで、電子スピン偏極イオンビームとされ、他方の開口部から放射される。
希ガス元素イオンとして、He+イオンを用いた場合には、スピン偏極He+イオンビームが他方の開口部から放射される。
静電アナライザ内を通過したスピン偏極He+イオンの出力信号(散乱イオン強度I(積算値))を、静電アナライザの下部に設置した2次電子増倍管で所定時間測定する。前記所定時間は100秒以上10000秒以内とする。前記所定時間が100秒未満では、評価可能な測定データが得られない。一方、10000秒を超える場合には、標的の特性が劣化する恐れが発生する。
散乱イオン強度I(積算値)は、散乱イオン運動エネルギーの関数として得られ、ISSスペクトルを与える。散乱イオンの運動エネルギーは、静電アナライザの掃引電圧の関数として与えられる。
スピン非対称率A(He+、M、E、α、β、θ)は、He+イオンビームを用い、標的として材料Mを用い、入射エネルギーをEとし、入射角α、出射角β、散乱角θとした場合のスピン非対称率である。
次に、He+イオンビームのスピン非対称率A決定方法について説明する。
スピン非対称率A決定方法は、例えば、光ポンピング法を用いる。
例えば、単結晶金(Au)を用い、以下の工程では、その(111)面をイオンビームの照射面とするように、(111)面を標的の回転軸と平行になる様に真空槽内に標的を配置する。この配置では、入射方向と出射方向の両者を含む面(散乱面)が標的表面の法線方向と平行になっている。
これにより、標的の一面の法線方向に対して、磁場方向が80°以上100°以下の方向となるようにし、入射角α、出射角β、散乱角θを所定の値とする。
次に、光ポンピング法により、RF放電管内のHe+イオンをスピン偏極させる。
具体的には、直線偏光の光ポンピング照射光と、円偏光の光ポンピング照射光を同時にHe+イオンに照射し、スピン偏極He+イオンを発生させる。
円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティ(運動方向に対するスピンの向き)を右回りに制御して、スピン偏極He+イオンのスピンの向きを磁場の方向と平行とする。
なお、例えば、これらの光ポンピング照射光の波長は1083nmのD0線に調整し、光密度は約0.1W/cm2となるように調整する。
静電アナライザ内で、標的で散乱されたHe+イオンが電界印加されることにより、ある特定の運動エネルギーを持ったHe+イオンが静電アナライザを通過する。この特定の運動エネルギーを規定するのが、静電アナライザの掃引電圧である。
スピン偏極He+イオンのスピンの向きを磁場の方向と平行とした場合の、静電アナライザ内を通過したスピン偏極He+イオンの出力信号(散乱イオン強度I↑(1回目))を、静電アナライザの下部に設置した2次電子増倍管で所定時間測定する。
所定時間は、例えば、10秒間である。
次に、円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを左回りに制御して、スピン偏極He+イオンのスピンの向きを磁場の方向と反平行とした他は「円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを右回り」とした場合と同様にして、スピン偏極He+イオンのスピンの向きを磁場の方向と反平行とした場合の、スピン偏極He+イオンの出力信号(散乱イオン強度I↓(1回目))を、静電アナライザの下部に設置した2次電子増倍管で所定時間測定する。所定時間は、例えば、10秒間である。
散乱イオン強度I↑(積算値)及び散乱イオン強度I↓(積算値)はそれぞれ、散乱イオン運動エネルギーの関数として得られる。
散乱イオンの運動エネルギーの関数としてスピン非対称率A(He+、M、E、α、β、θ)が得られる。
ここで、σ↑とσ↓はそれぞれ、磁場に平行と反平行の磁気モーメントを持つHe+イオンの散乱断面積(直線状に放出した粒子の軌道が変わる確率)である。
式(5)に示すように、A((M、E、α、β、θ)は、散乱断面積σ↑とσ↓とからなる。
[スピン非対称率A(He+、Au、1.54、0、30、150)決定工程]
(準備工程)
まず、He+イオンビームのスピン非対称率A(He+、Au、1.54、0、30、150)を決定するための実験を行った。
スピン非対称率A(He+、Au、1.54、0、30、150)は、He+イオンビームを用い、標的としてAuを用い、入射エネルギーを1.54eVとし、入射角α=0°、出射角β=30°、散乱角θ=150°とした場合のスピン非対称率である。
標的として、単結晶金(Au)を用い、(111)面をイオンビームの照射面とした。そして(111)面を標的回転軸と平行となる様に標的を設置した。
これにより、標的の一面の法線方向に対して、磁場の方向が80°以上100°以下の方向となるように、磁場を印加した。また、入射角α=0°、出射角β=30°、散乱角θ=150°とした。
次に、光ポンピング法により、RF放電管内のHe+イオンをスピン偏極させた。
具体的には、直線偏光の光ポンピング照射光と、円偏光の光ポンピング照射光を同時にHe+イオンに照射し、スピン偏極He+イオンを発生させた。なお、これらの光ポンピング照射光の波長は1083nmのD0線に調整し、光密度は約0.1W/cm2となるように調整した。
また、円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを右回りに制御して、スピン偏極He+イオンのスピンの向きを磁場の方向と平行とした。
静電アナライザ内を通過したスピン偏極He+イオンの出力信号(散乱イオン強度I↑(1回目))を、静電アナライザの下部に設置した2次電子増倍管で10秒間測定した。
次に、円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを左回りに制御して、スピン偏極He+イオンのスピンの向きを磁場の方向と反平行とした他は「円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを右回り」とした場合と同様にして、スピン偏極He+イオンの出力信号(散乱イオン強度I↓(1回目))を、静電アナライザの下部に設置した2次電子増倍管で10秒間測定した。
図5には、散乱イオンの運動エネルギーの関数として得られたスピン非対称率A(He+、Au、1.54、0、30、150)が示されている。
次に、光ポンピング法を用いず、無偏極のHe+イオンからなるイオンビームを、ビームラインを用いて真空槽の中に設置したスピン偏極器まで輸送し、真空槽内のスピン偏極器内のAu(111)からなる標的に照射した他は「円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを右回り」とした場合と同様にして、スピン偏極He+イオンの出力信号(散乱イオン強度I(積算値))を、静電アナライザの下部に設置した2次電子増倍管で1000秒間測定した。
図5に示すように、50eVピークと、1410eVピークのISSスペクトルが得られた。50eVピークは2次イオンからなるものであり、1410eVピークは金の弾性散乱イオンピークである。
このISSスペクトルは、スピン非対称率A(He+、Au、1.54、0、30、150)と対応するので、1410eVピーク値において、スピン偏極率PHe+(OUTPUT)が9%である散乱He+イオンビームが得られた。
<標的の材料の原子番号依存性について>
標的材料をSi、Cu、Zn、Ag、Sn、Au、Pb、Biのいずれかとし、入射エネルギーを1.4〜1.7keVとした他は実施例1と同様にして、円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを右回りにして出力信号を測定する工程と、円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを左回りにして出力信号を測定する工程とを交互に100回ずつ繰り返して各測定データを得てから、測定データをプリアンプで増幅してから、カウンタボードを用いて計数し、コンピュータで処理して、散乱イオン強度I↑(積算値)及び散乱イオン強度I↓(積算値)を算出した。
散乱イオンの運動エネルギーの関数としてスピン非対称率A(He+、M、1.4〜1.7、0、30、150)を算出した。Mは、Si、Cu、Zn、Ag、Sn、Au、Pb、Biのいずれかの標的材料である。
これにより、各種材料の標的を用いた場合のISSスペクトルを得た。
標的元素の原子番号の増加と共にスピン偏極率の絶対値が増大する傾向が見られた。これにより、より高いスピン偏極率を得るには、より大きな原子番号を持つ元素を標的にすればよいことが示された。Auを標的にしたときに測定した試料中で最大のスピン偏極率(約7%)が得られた。
<入射エネルギー依存性について>
入射エネルギーを450、610、750、950、1050、1250、1550、1670eVとした他は実施例1と同様にして、円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを右回りにして出力信号を測定する工程と、円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを左回りにして出力信号を測定する工程とを交互に100回ずつ繰り返して各測定データを得てから、測定データをプリアンプで増幅してから、カウンタボードを用いて計数し、コンピュータで処理して、散乱イオン強度I↑(積算値)及び散乱イオン強度I↓(積算値)を算出した。
散乱イオンの運動エネルギーの関数としてスピン非対称率A(He+、Au、E、0、30、150)を算出した。入射エネルギー値Eは、450、610、750、950、1050、1250、1550、1670eVのいずれかの値である。
これにより、入射エネルギーEが450、610、750、950、1050、1250、1550、1670eVのいずれかである場合のISSスペクトルを得た。
<散乱角依存性について>
(4−1)
標的として多結晶金の薄板を用い、入射エネルギーが1.57keVで、尚かつ入射角と出射角を等しくし、散乱角θを10°から150°の範囲で変更した他は実施例1と同様にして、円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを右回りにして出力信号を測定する工程と、円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを左回りにして出力信号を測定する工程とを交互に100回ずつ繰り返して各測定データを得てから、測定データをプリアンプで増幅してから、カウンタボードを用いて計数し、コンピュータで処理して、散乱イオン強度I↑(積算値)及び散乱イオン強度I↓(積算値)を算出した。
散乱イオンの運動エネルギーの関数としてスピン非対称率A(He+、Au、1.57、α=β、θ)を算出した。
これにより、標的として多結晶金の薄板を用い、入射エネルギーが1.57keVで、尚かつ入射角と出射角を等しくし、散乱角を変更した場合のISSスペクトルを得た。
標的として多結晶鉛の薄板を用い、入射エネルギーが1.57keVで、尚かつ入射角と出射角を等しくし、散乱角θを10°から150°の範囲で変更した他は実施例1と同様にして、円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを右回りにして出力信号を測定する工程と、円偏光の光ポンピング照射光のヘリシティを左回りにして出力信号を測定する工程とを交互に100回ずつ繰り返して各測定データを得てから、測定データをプリアンプで増幅してから、カウンタボードを用いて計数し、コンピュータで処理して、散乱イオン強度I↑(積算値)及び散乱イオン強度I↓(積算値)を算出した。
散乱イオンの運動エネルギーの関数としてスピン非対称率A(He+、Pb、1.57、α=β、θ)を算出した。
これにより、標的として多結晶鉛の薄板を用い、入射エネルギーが1.57keVで、尚かつ入射角と出射角を等しくし、散乱角を変更した場合のISSスペクトルを得た。
標的が金の場合には、散乱角θ=140°のときに、スピン偏極率PHe+(OUTPUT)の絶対値が最大値8%となった。
一方、標的が鉛の場合には、散乱角θ=70°ときに、スピン偏極率PHe+(OUTPUT)の絶対値が最大値25%となった。
このように、絶対値が最大値となるスピン偏極率PHe+(OUTPUT)が得られる散乱角θは、標的元素の種類に依存して、異なるものであった。しかし、スピン偏極率PHe+(OUTPUT)は、入射角αと出射角βには依存しなかった。また、スピン偏極率PHe+(OUTPUT)は、標的の結晶性にも依存しなかった。
Claims (12)
- 希ガス元素イオンからなるイオンビームを発生させる工程と、
前記イオンビームを標的の一面に入射して、散乱イオンビームを出射させる工程と、
前記散乱イオンビームを静電アナライザ内に取り込んで、電界を印加して、電子スピン偏極イオンビームを発生させる工程と、を有する電子スピン偏極イオンビーム発生方法であって、
前記イオンビームを標的の一面に入射する際、前記イオンビームの入射方向と前記散乱イオンビームの出射方向の両者を含む散乱面に対して、磁場の方向が80°以上100°以下の方向となるように、磁場を印加することを特徴とする電子スピン偏極イオンビーム発生方法。 - プラズマ法により、希ガス元素イオンを発生させることを特徴とする請求項1に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
- 前記希ガス元素がHeであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
- 前記イオンビームの入射エネルギーが1keV以上30MeV以下であり、散乱角が150°であり、入射角が0°であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
- 入射角が0°であり、前記標的が、原子番号50番以上の元素群から選択される一の材料を有することを特徴とする請求項4に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
- 前記標的が、Sn、Au、Pb、Biの群から選択される一の材料を有することを特徴とする請求項5に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
- 前記イオンビームの入射エネルギーが1.57keVであり、散乱角が60°以上90°以下又は110°以上150°以下の範囲内であり、入射角が(180°−散乱角)/2であり、前記標的がAuであることを特徴とする請求項6に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
- 前記イオンビームの入射エネルギーが1.57keVであり、散乱角が25°以上140°以下の範囲内であり、入射角が(180°−散乱角)/2であり、前記標的がPbであることを特徴とする請求項6に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
- 希ガス元素の種類、標的材料の種類、入射エネルギー値、入射角、出射角、散乱角を同一にして、光ポンピング法による電子スピン偏極イオンビームのスピン非対称率を測定する工程を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生方法。
- 真空槽と、イオンビーム発生部と、前記真空槽と前記イオンビーム発生部とを連結するビームラインと、前記真空槽、前記イオンビーム発生部及び前記ビームラインを取り囲むように配置した3軸コイルと、を備えた電子スピン偏極イオンビーム発生装置であって、
前記真空槽内には略板状の標的と静電アナライザが配置されており、
前記標的は、回転制御機構により、標的の一面に平行な回転軸を中心に回転可能とされており、前記静電アナライザは、移動制御機構により前記標的の回転軸を中心として回転移動可能とされており、前記3軸コイルに通電する電流を調整することにより、前記標的に磁場を印加可能とされていることを特徴とする電子スピン偏極イオンビーム発生装置。 - 前記静電アナライザが、筒部と前記筒部を取り囲むように配置された電界印加部材とからなり、前記筒部内でイオンビームに電界印加可能とされていることを特徴とする請求項10に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生装置。
- 前記イオンビーム発生部が、希ガス元素ガス導入管が接続されたRF放電管であることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の電子スピン偏極イオンビーム発生装置。
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