JP2012239432A - 動物細胞培養用培地および該培地を用いた物質の製造方法 - Google Patents

動物細胞培養用培地および該培地を用いた物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】チロシンおよび/またはシステインを動物細胞の増殖又は目的物質生産性が向上するように供給することができる動物細胞培養用の培地を提供する。
【解決手段】下記のペプチドから選ばれる1又はそれ以上のペプチドを添加する動物細胞培養用培地。(A)L−システインを含むジペプチド、及び、L−システインを含むジペプチドがジスルフィド結合で結合したジペプチド二量体、並びに(B)L−チロシンを含むジペプチド(但し、アラニルチロシンを除く)。
【選択図】図1

Description

本発明は、動物細胞培養用培地、該培地を用いた細胞培養方法、及び物質を生産する能力を有する動物細胞を前記培地で培養して物質を製造する方法に関する。
近年、医薬品生産や医療用細胞の生産に動物細胞が多く用いられており、それらの細胞の培養用の培地としてアミノ酸、ビタミン、ミネラル等の各種栄養成分が配合された組成物が利用されている。
細胞の増殖や、細胞培養による目的物質の生産性に、培地成分が大きく関与する事が一般的に知られており、特にアミノ酸組成の変化の影響は大きい事が知られている(特許文献1)。例えば、グルタミン合成酵素を発現したCHO細胞という限られた条件ではあるが、流加培養でグルタミン酸を増量することにより、アンチトロンビン生産量が増加することが知られている(非特許文献1)。また、無血清培地を用いた流加培養で枯渇しがちなアミノ酸として、セリン、又は、セリンとチロシン又はシステインを高濃度に維持することにより、細胞にタンパク質を高生産させることができることが報告されている(特許文献1)。
しかしながら、チロシンは難溶性アミノ酸として知られており、培地への添加量を増大することは物理的に困難であった。特にろ過滅菌を行う際に溶解度を超えた量のチロシン、シスチンはろ別されてしまい、それぞれの溶解度以上に培地中へ添加する事は困難であった。
また、システインは、培地中で容易に空気酸化され、二量体シスチンとなる。シスチンはチロシンと同じく難溶性アミノ酸であるため、必要十分な濃度を確保し難いという問題が生じる。チロシン及びシスチンのように溶解度が低いアミノ酸を培地に安定に含ませるために、ピルビン酸を培地で含ませる技術が報告されている(特許文献2)。また、シスチンに比べてシステインの溶解度は高く、システインがシスチンに酸化重合するのを防ぐために2−メルカプトエタノール等の還元剤を添加する方法も知られているが(非特許文献2)、例えば2−メルカプトエタノールは毒性を有するという問題を有している。
アミノ酸のジペプチドを含む培地も知られている。具体的には、培地の加熱殺菌によるグルタミンの分解を防止するためにL−アミノ酸−L−グルタミンを添加した基礎培地が知られている(特許文献3)。また、L−アラニル−L−グルタミンが添加された基礎培地を用いたHeLa細胞などの培養方法(特許文献4)、及び、L−アラニル−L−グルタミンを含有する細胞凍結用培地(非特許文献3)が報告されている。また、L−アラニル−L−グルタミンを基本培地に添加することにより、アンモニアの発生を抑えることができることが報告されている(非特許文献4)。さらに、L−グルタミンを含むジペプチド又はL−チロシンを含むジペプチド、具体的にはL−アラニル−L−グルタミン、及びL−アラニル−L−チロシンを培地に添加することにより、細胞の生存率、及び、細胞により生産される物質の生産性を向上させ、又はアポトーシスを抑制させる方法が開示されている(特許文献5)。
一方、アミノ酸のジペプチドはアミノ酸の物性改善に有用であることが知られている。例えばグルタミンは水溶液中で不安定であるが、アラニルグルタミン等のジペプチドとする事により安定性が顕著に改善されることが知られている(特許文献3)。
チロシンに関しても例えばグリシルチロシンとすることで、水溶液中の溶解度が著しく向上することが知られている(非特許文献5)。システインの二量体シスチンも同様であり、グリシルシステインの二量体ビスグリシルシスチンの溶解度も非常に高いことが知られている(非特許文献2)。
しかし、チロシンを含むジペプチドおよび/またはシステインを含むジペプチドを含有する培地、該培地を用いた動物細胞の培養方法、および、物質の製造方法については、L−アラニル−L−チロシンを除いては知られていなかった。
WO2008/136398 WO2008/141207 特開昭61−271985号 米国特許第5328844号 WO2008/035631
J. Biosci. Bioeng. 2005, 100(5):502-510 Human cell 1992, 5(3):292-297 Biotechnology Prog. 2004, 20:1113 Quest 2004, 1:74 J. Neut. 2001, 131:2562S-2568S
本発明は、チロシンおよび/またはシステインを動物細胞の増殖又は目的物質生産性が向上するように供給することができる動物細胞培養用の培地の提供を目的とする。
本発明者らは、上記のような課題を達成すべく鋭意検討を行った結果、L−システイン又はL−チロシンを含む特定のペプチドを培地に添加することによって動物細胞の生育が向上することを見出し、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)下記のペプチドから選ばれる1又はそれ以上のペプチドを含有する動物細胞培養用培地:
(A)L−システインを含むジペプチド、及び、L−システインを含むジペプチドがジスルフィド結合で結合したジペプチド二量体、並びに
(B)L−チロシンを含むジペプチド(但し、アラニルチロシンを除く)。
(2)前記ペプチドが、X−Cys(XはL−アミノ酸又はL−アミノ酸誘導体、CysはL−システインを表す)、(X−Cys)2(CysはL−システインを表す)、又はX‐Tyr(TyrはL−チロシンを表す)から選ばれる、前記培地。
(3)前記ペプチドが、Gly−Cys、及び(Gly−Cys)2から選ばれる、前記培地。
(4)前記培地が基本培地であり、培地中のペプチドの濃度が0.01〜100mMである、前記培地。
(5)前記培地がフィード用である、前記培地。
(6)前記ジペプチドの濃度が0.01〜1000mMである、前記フィード培地。
(7)前記培地で動物細胞を培養することを特徴とする、動物細胞の培養方法。
(8)培養中に、前記フィード培地を培養液に添加することを特徴とする、前記方法。
(9)目的物質生産能を有する動物細胞を前記培地で培養し、該培地又は細胞から目的物質を回収することを特徴とする、目的物質の製造方法。
(10)培養中に、前記フィード培地を培養液に添加することを特徴とする、前記方法。
本発明の培地は、動物細胞の培養及び細胞培養を用いた物質生産に好適に利用できる。チロシンまたはシステインをジペプチドの形態とする事で水溶液中の物性が改善され、効率的に培地中に供給する事が可能となり、細胞の増殖性を向上させる事が出来ると推定される。更には増殖した細胞により生産される目的物質の生産性も向上する事が出来ると考えられる。
システイン、グリシル−L-システイン、又はビス−グリシル−L−システインを添加したCD OptiCHO培地(L-グルタミン8mM添加)におけるCHO細胞の増殖を示す図。 システイン、又はビス−グリシル−L−システインを添加した各種培地におけるCHO細胞の増殖を示す図。
本発明の培地は、下記のペプチドを含む。
(A)L−システインを含むジペプチド、及び、L−システインを含むジペプチドがジスルフィド結合で結合したジペプチド二量体、並びに
(B)L−チロシンを含むジペプチド(但し、アラニルチロシンを除く)。
ペプチドを構成するL−システイン及びL−チロシン以外のアミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどの中性アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジンなどの塩基性アミノ酸、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどの芳香族アミノ酸や、ホモセリン、シトリルリン、オルニチン、ホモセリン、シトルリン、オルニチン、α-アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、タウリンなどが挙げられる。また、各ペプチドを構成するアミノ酸は、tert−ロイシン、シクロロイシン、α−アミノイソブチル酸、L−ペニシラミンなどの非天然(非タンパク質構成)アミノ酸であってもよい。尚、いずれもL−体であることが好ましい。
前記ジペプチドとして具体的には、X-Cys、及びCys-X(XはL−アミノ酸又はL−アミノ酸誘導体、CysはL−システインを表す)、並びにX-Tyr、及びTyr-X(TyrはL−チロシンを表す)が挙げられる。また、前記ジペプチド二量体としては、(X-Cys)2、及び(Cys-X)2(CysはL−システインを表す)が挙げられる。X-CysとしてはGly-Cys(グリシル−L−システイン)が、Cys-XとしてはCys-Gly(L−システイニル−グリシン)が、(X-Cys)2としては(Gly-Cys)2(ビス−グリシル−L−システイン)が、(Cys-X)2としては(Cys-Gly)2(ビス−L−システイニル−グリシン)が挙げられる。X-Tyrとしてはグルシル−L−チロシンが、Tyr-XとしてはL−チロシル−グリシンが挙げられる。 X-Cys、Cys-X、(X-Cys)2、及び(Cys-X)2中のXは特に制限されないが、L−システイン以外のアミノ酸又はアミノ酸誘導体であることが好ましい。また、X-Tyr、及びTyr-X中のXは、特に制限されないが、L−チロシン以外のアミノ酸又はアミノ酸誘導体であることが好ましい。
好ましいペプチドとしては、Gly-Cys、(Gly-Cys)2、及びGly-Tyrが挙げられる。
Gly-Cys、及び、(Gly-Cys)2は市販されており、例えば、各々Cat. No. G-4440 H-Gly-Cys-OH、及び、Cat. No. G-1845 (H-Gly-Cys-OH)2)としてBachem社から購入することがで
きる。
前記ジペプチドは公知の合成法、酵素法、又は発酵法により製造することができる。例えば、Z-アラニンエステルと無保護グルタミン酸を用いる方法(例えば特開平1-96194号)、Z-アスパラギン酸とフェニルアラニンのメチルエステルからのZ-アスパラチルフェニルアラニンメチルエステルの製造方法(例えば特開昭53-92729号)等があげられる。また、ジペプチド二量体は、ジペプチド中のL−システインを酸化してジスルフィド結合を形成させることにより製造することができる。X-Cysは自然酸化により(X-Cys)2に変換することがあるが、X-Cysは一部又は全部が(X-Cys)2に変換されたものであってもよい。
以下の記載において、特記しない限り、「ペプチド」は上記ジペプチド及びジペプチド二量体を指す。
ペプチドを含む培地は、特に制限はないが、公知の動物培養用の培地にペプチドを添加することにより調製することができる。尚、本明細書において、ペプチドを添加していない培地を基礎培地と記載することがある。本発明の培地を用いる培養方法は特に制限されず、バッチ培養、リピートバッチ培養、フェドバッチ培養、連続培養(例えばパーフュージョン培養)等が挙げられる。培地は、基本培地であってもフィード培地であってもよい。本明細書において「基本培地」とは、培養開始時の培地をいい、バッチカルチャーではそれに用いる培地を、フェドバッチ培養ではフィード培地を添加する前の初発培地をいう。フィード培地とは、培養開始後、培養中に、基本培地に連続的又は間歇的に添加される培地をいう。
基本培地及びフィード培地としては、動物細胞の培養に適しているものであれば特に制限されず、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、D-MEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)、RPM11640、CHO-S-SFMII(Life Technologies社製)、CHO-SF、EX-CELL CD CHO、EX-CELLTM302培地(以上、Sigma-Aldrich社製)、IS CHO-CD、IS CHO-CD XP(以上、Irvine Scientific 社)をあげることができる。調製した培地の滅菌方法は特に制限されないが、濾過滅菌を用いることができる。また、滅菌された培地に滅菌されたペプチドを添加してもよい。
基本培地に添加するペプチドの濃度は適宜選択されるものであるが、例えば、0.01〜100mM、又は0.01〜50mMが好ましく、0.1〜20mM、又は1〜5mMがより好ましい。
フィード培地にペプチドを添加する場合、ペプチドの濃度としては、例えば、0.01〜1000mM、又は0.01〜100mMが好ましく、0.1〜20mM、又は1〜5mMがより好ましい。フィード培地には、ペプチドに加えて、他の栄養成分を添加してもよい。
培地に添加するペプチドは、1種でもよく、任意の2種以上の組合わせであってもよい。培地が複数種のペプチドを含む場合は、前記濃度はペプチドのそれぞれの濃度であってもよく、合計量の濃度であってもよい。また、ジペプチド二量体の場合は、前記濃度は単量体に換算した濃度である。
尚、本発明の培地は、上記ジペプチド又はジペプチド二量体を含む限り、他のペプチドを含んでいてもよい。
フェドバッチ培養においては、ペプチドは基本培地又はフィード培地の一方のみに添加してもよく、両方に添加してもよい。また、フィード培地を複数回フィードする場合は、ペプチドは任意のフィード培地に添加してもよく、すべてのフィード培地に添加しても良い。連続培養においては、還流させる培地にペプチドを添加することができる。また、いずれの場合も、殺菌したペプチドの粉体又は溶液を培養液に添加してもよい。
フィード培地をフィードするタイミングは適宜選択すればよいが連続的に行っても良く、間欠的に行っても良い。フィードの開始は培養初期からでも良く、培養途中から開始しても良い。フィードの回数は一回でもよく、複数回でもよい。
本発明の方法による動物細胞の培養は、培地が特定のペプチドを含む以外は、通常の動物培養の培養と同様にして行うことができる。培地の種類、及び培養条件、例えばpH、温度、通気、培養時間等は、動物細胞に応じて適宜選択することができる。本発明の培地での培養に先立って、必要な細胞数を得るためにシード培養を行ってもよい。
動物細胞は、いずれの動物細胞を用いてもよいが、好ましくは哺乳類の動物細胞、より好ましくはヒト、サル等霊長類に由来する動物細胞、またはマウス、ラット、ハムスター等のげっ歯類に由来する細胞を用いることができる。
動物細胞が目的物質を生産する能力を有する場合は、該細胞をペプチドの含む培地で培養し、該培地又は細胞から目的物質を回収することにより、目的物質を製造することができる。
本発明により製造される物質としては、動物細胞が生産できる物質であればいずれでもよいが、哺乳類に属する動物細胞が生産できる物質であればより好ましく、ペプチド、タンパク質、抗生物質等をあげることができる。
培養方法には、バッチ培養、リピートバッチ培養、フェドバッチ培養、パーフュージョン培養等などがあげられる。
培養液からの目的物質の採取の方法は特に制限されず、目的物質に応じて公知の方法、例えばイオン交換等の各種クロマトグラフィー、溶媒沈殿法、膜分離法、晶析法等を組み合わせることにより、目的物質を回収することができる。なお、細胞内に目的物質が蓄積する場合には、例えば細胞を超音波などにより破砕し、遠心分離によって細胞残渣を除去して得られる上清から上記方法によって目的物質を回収することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。
〔実施例1〕
マイクロプレートを用いたCHO細胞の培養における、L-システイン、グリシル-L-システイン、又はビス−グリシル−L−システインを添加した培地の比較
CHO細胞(ATCC CRL-12445)を用いて、マイクロプレートでのバッチ培養を行い、L-システイン、グリシル−L−システイン、及びビスーグリシル−L−システインの培地への添加による効果を比較した。
培養の基礎培地としては、CD OptiCHO (Life Technologies社)にL-グルタミン8mMを添加した培地を用いた。この培地に、それぞれL-システイン塩酸塩一水和物、グリシル-L-システイン4 mM、又はビス−グリシル−L−システイン2 mMを添加した培地、及び無添加の培地をCHO細胞の培養に用いた。
シード培養を行う培地としては、CD OptiCHO (Life Technologies社)にL-グルタミン8mMを添加した培地を用いた。
125 mLの三角フラスコ(コーニング社製)に25 mLの培地を張り込み、2×105 cells/mlになるよう細胞懸濁液を播種した。その後、37 ℃で、3〜4日間培養し、本培養の播種に必要な細胞数を得られるまで、継代培養を継続した。
十分な細胞数を獲得したところで、L-システイン含有培地、グリシル−L−システイン、又はビスーグリシル−L−システインを含有する培地、及び、無添加培地に、37 ℃、170 rpm、5 % CO2雰囲気下で、5×105 cells/mlになるように細胞懸濁液を播種し、培養試験を行った。
培養開始後、7日目に培養液を採取し、細胞密度を測定した。細胞数の測定には、生死細胞オートアナライザーVi-CELL XR (ベックマンコールター社製)を用いた。
実験の結果、CHO細胞(ATCC CRL-12445)の培養開始時に、グリシル−L-システイン、又はビス−グリシル−L−システインを培地に添加した場合は、無添加の培地、及びL-システイン塩酸塩一水和物を添加した培地を用いた場合に比べ、共に生細胞数が増加することが確認された。無添加の培地での細胞数を100%とすると、グリシル−L-システイン、ビス−グリシル−L−システインを培地に添加した培地では、それぞれ109%、125%であった(図1)。
〔実施例2〕
マイクロプレートを用いた各種培地でのCHO細胞の培養における、L-システイン、及びビス−グリシル−L−システインの添加効果の比較
CHO細胞(ATCC CRL-12445)を用いて、マイクロプレートでのバッチ培養を行い、L-システイン、ビス−グリシル−L−システインの培地への添加による効果を比較した。
培養の基礎培地としては、CD OptiCHO (Life Technologies社)、EX-CELL CD CHO(Sigma-Aldrich社)、IS CHO-CD XP(Irvine Scientific 社)にそれぞれL-グルタミン8mMを添加した培地を用いた。この培地に、それぞれL-システイン塩酸塩一水和物4 mM、又はビス−グリシル−L−システイン2 mMを添加した培地、及び無添加の培地を用いた。
シード培養を行う培地としては、CD OptiCHO (Life Technologies社)にL-グルタミン8mMを添加した培地を用いた。
125mLの三角フラスコ(コーニング社製)に25 mLの培地を張り込み、2×105 cells/mlになるよう細胞ケンダク液を播種する。その後、37℃で、3〜4日間培養し、本培養の播種に必要な細胞数を得られるまで、継代培養を継続した。
十分な細胞数を獲得したところで、L-システイン含有培地、又はビス−グリシル−L−システインを含有する培地、及び無添加培地に、37℃、170 rpm、5 % CO2雰囲気下で、5×105 cells/mlになるように細胞懸濁液を播種し、培養試験を行った。
培養開始後、7日目に培養液を採取し、細胞密度を測定した。細胞数の測定には、生死細胞オートアナライザーVi-CELL XR (ベックマンコールター社製)を用いた。
実験の結果、CHO細胞(ATCC CRL-12445)の培養開始時に、ビス−グリシル−L−システインを培地に添加した場合は、無添加の培地を用いた場合に比べ、細胞数が増加することが確認された。
また、CD OptiCHO培地に代えて、EX-CELL CD CHO、及びIS CHO-CD XP(各々L-グルタミン8mM添加)を基礎培地として用いた場合、L-システイン塩酸塩一水和物を培地に添加した培地を用いた場合では無添加の培地を用いた場合と比較して、細胞数が減少することが確認された。無添加の培地での細胞数を100%とすると、ビス−グリシル−L−システイン
を培地に添加した場合は、基礎培地としてCD OptiCHOを用いた場合では118%、EX-CELL CD CHOを用いた場合では115%、IS CHO-CD XPを用いた場合では106%であった(図2)。
〔実施例3〕
マイクロプレートを用いたCHO細胞の培養における、L-チロシン、又はグリシル−L−チロシンを添加した培地の比較
CHO細胞(ATCC CRL-12445)を用いて、マイクロプレートでのバッチ培養を行い、L-チロシン、及びグリシル−L−チロシンの培地への添加による効果を比較する。
培養の基礎培地としては、CD OptiCHO (Life Technologies社)を用いることができる。基礎培地に、L-グルタミン8mMを添加し、さらに、それぞれL-チロシン 0.5〜4mM、グリシルーL−チロシン0.5〜4mMを添加した培地を用いる。
シード培養を行う培地としては、CD OptiCHO (Life Technologies社)にL-グルタミン8mMを添加した培地を用いることができる。
125mLの三角フラスコを(コーニング社製)に25 mLの培地を張り込み、2×105 cells/mlになるよう細胞懸濁液を播種する。その後、37℃で、3〜4日間培養し、本培養の播種に必要な細胞数を得られるまで、継代培養を継続する。
十分な細胞数を獲得したところで、L-チロシン、又はグリシル−L−チロシンを添加した培地を用いて、37℃、170 rpm、5 % CO2雰囲気下で、培養試験を行う。
培養開始後、4日目に培養液を採取し、生細胞密度、抗体生産量を測定する。生細胞数の測定には、生死細胞オートアナライザーVi-CELL XR (ベックマンコールター社製)を用いた。抗体生産量の測定には、ELISA法(Bethyl社製キット)を用いることができる。
実験の結果、CHO細胞(ATCC CRL-12445)の培養開始時に、グリシル−L−チロシンを培地に添加した場合は、無添加、及びL-チロシンを培地に添加した場合に比べ、生細胞数及び/又は抗体生産量が増加することが確認されると考えられる。
〔実施例4〕
125mLフラスコを用いたCHO細胞の培養における、L-システイン添加フィード培地及びビス−グリシル−L−システイン添加フィード培地の比較
CHO細胞(ATCC CRL-12445)を用いて、125mLフラスコのバッチ培養を行い、L-システイン、及びビス−グリシル−L−システインのフィード培地への添加による効果を比較する。
培養の基礎培地としては、CD OptiCHO (Life Technologies社)に、L-グルタミン8mMを添加した培地を用いることができる。
シード培養を行う培地としては、CD OptiCHO (Life Technologies社)にL-グルタミン8mMを添加した培地を用いることができる。
125mLの三角フラスコを(コーニング社製)に25 mLの基礎培地を張り込み、2×105 cells/mlになるよう細胞懸濁液を播種する。その後、37℃で、3〜4日間培養し、本培養の播種に必要な細胞数を得られるまで、継代培養を継続する。
十分な細胞数を獲得したところで、基礎培地を用いて、37℃、170 rpm、5 % CO2雰囲気下で、培養試験を開始する。フィード培地には、CHO CD EfficientFeed B(Life Technologies社)を用い、0.4〜1.6 mMのL-システイン塩酸塩一水和物、もしくはグリシルーL−システインを添加した培地、及び無添加の培地を用いる。それぞれ準備されたフィード培地を培養3日目、4日目に1.5mLずつ添加する。
培養開始後、10日目に培養液を採取し、生細胞密度、抗体生産量を測定する。生細胞数の測定には、生死細胞オートアナライザーVi-CELL XR (ベックマンコールター社製)を用いる。抗体生産量の測定には、ELISA法(Bethyl社製キット)を用いることができる。
実験の結果、ビス−グリシル−L−システインを培地に添加した場合は、無添加、及びL-システインを添加した場合に比べ、生細胞数及び/又は抗体生産量が増加することが確認されると考えられる。
〔実施例5〕
125mLフラスコを用いたCHO細胞の培養における、L-チロシン添加フィード培地及びグリシル−L−チロシン添加フィード培地の比較
CHO細胞(ATCC CRL-12445)を用いて、125mLフラスコのバッチ培養を行い、L-チロシン、及びグリシル−L−チロシンのフィード培地への添加による効果を比較する。
培養の基礎培地としては、CD OptiCHO (Life Technologies社)に、L-グルタミン8mMを添加した培地を用いることができる。
シード培養を行う培地としては、CD OptiCHO (Life Technologies社)にL-グルタミン8mMを添加した培地を用いることができる。
125mLの三角フラスコを(コーニング社製)に25 mLの基礎培地を張り込み、2×10^5 cells/mlになるよう細胞懸濁液を播種する。その後、37℃で、3〜4日間培養し、本培養の播種に必要な細胞数を得られるまで、継代培養を継続する。
十分な細胞数を獲得したところで、基礎培地を用いて、37℃、170 rpm、5 % CO2雰囲気下で、培養試験を開始する。フィード培地には、CHO CD EfficientFeed B(Life Technologies社)を用い、0.5〜4mMのL-チロシン、もしくは0.5〜4mMのグリシル−L−チロシンを添加した培地と、及び無添加の培地を用いる。それぞれ準備されたフィード培地を培養3日目、4日目に1.5mLずつ添加する。
培養開始後、10日目に培養液を採取し、生細胞密度、抗体生産量を測定する。生細胞数の測定には、生死細胞オートアナライザーVi-CELL XR (ベックマンコールター社製)を用いる。抗体生産量の測定には、ELISA法(Bethyl社製キット)を用いることができる。
実験の結果、グリシル−L−チロシンをフィード培地に添加した場合は、無添加、及びL-チロシンをフィード培地に添加した場合に比べ、生細胞数及び/又は抗体生産量が増加することが確認されると考えられる。

Claims (10)

  1. 下記のペプチドから選ばれる1又はそれ以上のペプチドを含有する動物細胞培養用培地:
    (A)L−システインを含むジペプチド、及び、L−システインを含むジペプチドがジスルフィド結合で結合したジペプチド二量体、並びに
    (B)L−チロシンを含むジペプチド(但し、アラニルチロシンを除く)。
  2. 前記ペプチドが、X−Cys(XはL−アミノ酸又はL−アミノ酸誘導体、CysはL−システインを表す)、(X−Cys)2(CysはL−システインを表す)、又はX‐Tyr(TyrはL−チロシンを表す)から選ばれる、請求項1に記載の培地。
  3. 前記ペプチドが、Gly−Cys(Glyはグリシンを表す)、及び(Gly−Cys)2から選ばれる、請求項2に記載の培地。
  4. 前記培地が基本培地であり、培地中のペプチドの濃度が0.01〜100mMである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の培地。
  5. 前記培地がフィード用である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の培地。
  6. 前記ジペプチドの濃度が0.01〜1000mMである、請求項5に記載の培地。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の培地で動物細胞を培養することを特徴とする、動物細胞の培養方法。
  8. 培養中に、請求項5又は6に記載の培地を培養液に添加することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
  9. 目的物質生産能を有する動物細胞を請求項1〜6のいずれか一項に記載の培地で培養し、該培地又は細胞から目的物質を回収することを特徴とする、目的物質の製造方法。
  10. 培養中に、請求項5又は6に記載の培地を培養液に添加することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
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