JP2012237301A - 吸引揚水自由落下による循環式水力発電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 現行発電法の問題点を解決するため、無公害で、どこにでも設置できて、常時安定した電力が安価に得られる方法を提供する。
【手段】 揚水発電の方式をとりながら、揚水には大気圧を利用し、水は循環利用する方法で検討した。水を落下させる落水管の途中にアスピレーターを用いた吸引装置もうけ、これにより減圧状態をつくり、落下した水を高所に吸い上げ、この水には空気をマイクロバブルにして落水方向に吹き込むことにより、現行の水力発電のように水を自由落下させることができるようになり、上記課題を達成することができた。
【選択図】図2

Description

本発明は揚水発電の方式をとりながら、水は循環使用することもでき、地球上あらゆるところに設置できる発電装置に関するものである。また水を高所に揚げるのに電動ポンプなどの人工エネルギーを使用せず大気圧の自然力を利用している。この装置を海、池、湖沼、河川の上にとりつければ、もともと有効落差のある場所を選んで設置でき、また下部水槽から給排水する水量の調節が容易となり、効率よく発電することができる。更にこの装置を船舶、車両などに積載することができ、そのエンジンは電気力で動くことになるので、現行の石油、石炭、原子力などに代わるクリーンなエネルギーで動かすことができる移動物体を提供する方法に関するものである。
現行発電法の問題点としては、地球温暖化ガス、放射能汚染、低周波、騒音などの公害発生、あるいは天候など自然環境の変化に左右されて常時安定した電力が得られない。また設置する場所が限られ、離れた消費地への送電に経費がかかり問題がある。このような理由から無公害で、どこにでも設置でき、常時安定した電力が得られる発電方法が求められている。
例えば特許文献1においては、使用済みの水を再利用する循環式の発電装置が提案されている。これは揚水ポンプにより使用済みの水を上部貯水槽に揚水するもので、揚水にポンプの電気エネルギーを使用しており、発電エネルギーのかなりの部分がこの揚水に消費されると考えられる。
特開2006−170179(循環式自家用水力発電装置) 例えば特許文献2においては、パスカルの原理を応用して揚水し、水は循環使用するので、設置場所は特定せず何処でも水力発電ができるシステムが提案されている。但しここでも揚水するのに電力による空気圧縮機を使用しており、かなりの部分が消費されて、とりだせる電力は余剰電力と記載されている。
特開2007−64192(揚水式循環水力発電システムと揚水機) また特許文献3においては、水車を回転させる水流をつくるのに大気圧を利用した方法が提案されている。但しこの方法では設置する場所が地下空間を必要とし、大気圧利用するために空気圧送ポンプを必要とし、実施例によればポンプを動かすための電力は発電電力の57.1%と実に大半以上の電力が消費されると説明されている。
特開2006−77719
ここでは無公害な水力発電において、揚水発電方式をとりながら、水は循環使用できるようにし、かつ揚水のために人工ではなく自然力を利用する方法を見出すことを重点的課題とした。
本発明においては自然力として大気圧を利用することを考えた。真空状態をつくれば、水では10.13mの水柱をつくることができる。即ち水は大気圧の力でこの高さまでもち揚げることができる。真空状態をつくるには、水を落下させて発電する場合にこの落下する水の流れの途中にアスピレーターをとりつければよいと考えた。液体の流れの途中に流路を絞って流速の速い部分をつくると、ベルヌーイの定理により、流速の遅い部分との間に圧力差を生じ、これは一般にアスピレーターとして真空状態をつくる吸引装置として用いられているものである。液体を用いたアスピレーターにおいては、一定温度において液体の蒸気圧があるので完全な真空をうることはできない。例えば水であれば25℃で3.17kPaで、これはほぼ0.03気圧に相当する。本発明においては0.1気圧程度の減圧状態、即ち水柱約9m位ならば容易に実現可能と考え装置を設計した。
このようにして得られた減圧を利用すれば、一度落下した水を9m程度の高さまでは吸い上げることはできる。しかしせっかく高い所に吸い上げた水もそのままの状態、即ち減圧下にある状態であれば、大気圧に邪魔されて下方に自由落下させることはできない。図1に示すようにサイホンの原理を利用して水を高所に引き揚げた後下方に移動させ大気中に開放することはできるが、水が落下して大気中に開放される先端1は水の吸い揚げ口先端2より下方でなければならない。もし先端1が先端2より上方にあれば水は大気中に落下しない、即ちサイホン管内の水は移動しないことになる。先端1を先端2より下方におけば、有効落差(2の高さ−1の高さ)のエネルギーで水は流れることになるが、落差(サイホン管最上部の高さ−2の高さ)のエネルギーは全く有効に働かない。
このような点を考慮して、高所に吸い上げた水に高所での位置エネルギーを与えるために、高所に電磁ないし電動開閉弁をつけた水槽タンクを設置し、タンク内を減圧にして上記の水を一時的に溜めおくよう導入した後、タンク内に空気を入れて内部の水を大気中に開放し、高所の位置エネルギーをもたせて自由落下させれば水車をまわして発電することができることがわかった。空にしたタンクには再度水を導入し、空気を入れて自由落下させ同様に発電する。この時開閉弁にはプログラムタイマーを取り付けて作動させれば計画どおりの発電を行うことができる。上記水槽タンクを複数個設置して、夫々時間をおいて上記と同じ動作を行なわせるようにすれば水はほぼ滞りなく流れて経時変化の少ない電力をうることができる。
しかしこの方法は水の流れが連続的でなく、開閉弁を作動させるタイムスケジュールが複雑で、数多くの高価な水槽タンクを使用する点まだ改良の余地があると考えた。
高所に吸い上げられて減圧状態で落水管内にある水に通常の方法で空気を吹き込むと、水は大気中に開放されて落水管内を自由落下できるようになる。しかしこの時多くの気泡が発生して落水管内を逆流方向に上昇し、気泡が消えると空気となって減圧タンク、アスピレーターの吸引装置に入り込んで内部の圧力を上昇させ、吸引の働きをしなくなる。その結果揚水することができなくなってしまうので好ましくない。
空気を吹き込んで気泡が発生しても、これが見かけ上落水管の落下方向に下降させればよいのではないかと考え検討を行った。ひとつの考え方は水流ポンプを用いて落水管内に気泡の上昇速度より大きい下降速度の流れをつくればよいと考えられる。但し通常の方法で空気を吹き込むとかなり大きさの異なる気泡が発生し、大きい気泡ほど上昇速度が速く、また合体して大きくなるので、気泡の逆流をふせぐには大きな能力のポンプが必要となる。
これに対して空気をマイクロバブルにして吹き込むことを考えた。マイクロバルブは直径が50μ以下の気泡であり、上昇速度が遅く長い間水中に滞在し続ける。直径50μの気泡の上昇速度は1分間約6cm、10μの気泡では約3mmである。また滞在時間は50μの気泡で2〜3分、10μの気泡で数秒であり、気泡は負に帯電しているので気泡同志反発しあうので合体して大きくなることはないとされている。マイクロバブルを発生させるには、高速(400〜600回転/秒)の渦流の中に空気を巻き込ませればよい。いろいろな装置が考案されているが、本発明で用いるアスピレーターも使用することができる。アスピレーターを使用する場合、落水管の途中に本発明の吸引装置と同様の形で設置するが、場所は吸引装置より上方部分にし、またアスピレーターの吸引口は減圧タンクに繋がず、空気導入口として使用する。この場所はできるだけ上方にあることが好ましい。できれば落水管の最上部付近であるが、この部分では水の流れが弱いため水流ポンプをアスピレーターに繋いで高速の渦流をつくることが必要である。高速の渦流をつくるのに一般のマイクロバブル発生装置に用いられるポンプは数十W程度の小型のものである。一般のマイクロバルブ発生装置もアスピレーター同様、水の流路を絞って流れを高速化する部分と空気を吸引する部分があり同じような構造となっている。
このようにして小型水流ポンプを用いたマイクロバルブ発生装置を落水管最上部付近に設置して空気を吹き込み作動させれば、気泡は上昇することなく、水は自由落下して期待した効果がえられることがわかった。
これまでの方法で揚水できるのは約9m程であるが、これ以上高く揚水するには、上記の方法で揚水し大気中に開放した水は、そのまま自由落下させずに、これに上記と同様な装置を上載せして、更に場合により同じ装置を何段にも積み重ねたものを用いて所定の高さまで揚水した後自由落下させれば、有効落差の大きい効率のよい発電装置とすることがわかった。このようにして高さ数十m〜数百mの高層建築物にこの装置をとりつけることができる。但し高さ数千m以上大気圧が小さくなる高地においては、気圧低下により水柱の高さが減少するので、設備費がかさむ割に発電効率は低下する。
一方装置の高さを低くせざるをえない場合は、理論的には発電機を回す水車にあたる水の流速は小さくなり、したがって発電機の回転速度が下がって発電効率は減少する。このためVベルト、歯車などを利用した増速機をとりつけて発電機の回転速度を増加させ効率を上げる工夫が必要である。また発電によりえられる電力は、重力の加速度×流量×有効落差×効率(流量=落水管路の断面積×水車直上の落水速度)で表わされるので、使用する水の量を増やして落水管の断面積を大きくするなどの工夫も必要となる
本発明において使用する水は循環使用することができるので、移動する物体にもとりつけることができる。特に大型船舶では大量の水を使用し、有効落差が数m〜数十mとれる発電装置が設置できるので、効率よく大きな電力を得ることができる。発電量は通常船を動かすに必要な電力量を上回るので、余剰分は蓄電池に蓄えるとか、水電解装置をとりつけて水素を発生させて貯蔵するかなどの工夫がいる。また有効落差が3m〜数mとれ、水量も発電用に1t以上積載できる船舶、鉄道車両(特に機関車)、バス、トラック等にも適用可能である。一例をあげると、有効落差3m、落水管の断面積0.04平方メートルの発電装置を設置した場合、発電機直上の落水速度は7.7メートル/秒となり、発電力は9.8×7.7×0.04×3×発電効率=9.2×発電効率kw発電効率は現行の水力発電では約0.85であるが、小規模発電では一般的には0.6〜0.4であり、これから5.5〜3.7kw程度の発電が期待できる。実用的には蓄電池を積載して電力の過不足分を補う。また船、車両が停止している時は常時発電力を蓄電池に回して蓄電する。有効落差を3m以下しかとれないボートなどの小型船舶、一般乗用車等は、落差が小さいとともに流水量も大きくとれないので、えられる発電力はせいぜい1kw程度で、乗り物を動かすことはできても現行のようなスピードで走らせることはできない。蓄電池は積載できるので、乗り物が停止している間は充電でき、他の動力エンジンを併用すれば、使用に耐えられる乗り物にすることは可能である。
一方本発明の装置を水上にとりつけることもできる。この場合水循環にはならないが(1)装置下の水を使用できるので、水量の調節が容易になる。水量はたりなくなっても、余っても、下方から容易に補給、排出することができる。取り付ける位置を選べば(2)有効落差を増加させることができる。海上においては波が押し寄せる部分に可動堰を設けて、波を集めて高くもちあげ、最も高い部分に揚水管の取水口を、波の最も低い部分の直上に発電機を設置すれば、波の高さ分だけ有効落差を稼ぐことができる。波の高さはかなり変動するので、特に揚水管の取水口には空気が入らぬよう水面より余裕をもって深めに設置することが必要である。高潮、津波などにたいしては、装置が固定されていると、破壊されるおそれがあるので、この場合装置を艀などの船に設置して沖合に移動できるような対策が必要である。湖沼、池、河川などにおいては、近くに水の流れの急な所を選んで、揚水管の取水口は水の流れの静止ないし緩やかな所、発電機は急な流れの終点近くに設置すれば、同様に有効落差を稼ぐことができる。
本発明は下記の点で現行発電法の問題点を解決している。
(1)全くクリーンな自然エネルギー、大気圧と重力を利用しており、装置には遮音壁が取り付けられるので、公害の心配がない。
(2)天候など自然環境の変化に影響されることなく、常時一定の安定した電力を得ることができる。
(3)発電には水を循環使用でき、自然エネルギーのみを利用しているので、運転経費がかからない。
(4)装置はどこにでも設置できるので、送電の費用をかけないで済む。
本発明の実施の形態を図面に基ずいて詳述する。図2は本発明を実施する装置の作用機構の概要断面図である。図においてBは下部水槽、U1,U2は揚水管、Tは上部水槽タンク、Pは落水管、Aはアスピレーターを用いた吸引装置、M1、M2は水流ポンプを用いたマイクロバブル発生装置、V1、V2は減圧タンク、Dは水車発電機、W1、W2は水道水よりの給水管、W3は排水管、C1、C2、C3、C4、C5は開閉弁である。なおV1、V2の減圧タンクはAの吸引装置と共に、外部電源で動く真空ポンプにも接続されている。またM1、M2の水流ポンプは始動時点では外部電源を使用するが、定常運転時はほ発明の発電機より発生する電力の一部を使用することができる。
本発明の装置の運転は次の手順で行う。
(1)図2における全てのコックC1〜C5は閉の状態にしておく。
(2)下部水槽BへはW2を通してC5のコックを開いて水道水を排水管W3に達するまで注入する。
(3)上部のW1を通してC2のコックを開き水道水を上部から注入する。この時水は下方はC4のコックの位置から、上方は揚水管の連絡口まで到達させる。
(4)真空ポンプを運転してタンクV1、V2を減圧状態にし、次に上部水槽タンクのコックC1、C3を開くと、揚水管を通して水が上昇し始める。下部水槽の水位が下がるので、W2のコックC5を開き水を排水管W3の位置に達するまで補給する。
(5)揚水管中を水が上昇して上部水槽タンクが水で満杯になった時、落水管ノコックC4を開く。この時点では水は下方に落下しない。
(6)W2のコックC5を閉じる。吸引装置Aのコックを開き真空ポンプの運転を止める。
(7)マイクロバルブ発生装置を運転すると、落水管内部に空気が入り込み下方向の流れと共に水が落下し始める。初めは落下する水の速度が小さいので、しばらくの間上部W1のコックC2を開いて水道水を注入し、水の流れに勢いをつけることが好まし。水量が多すぎても水は排水口より流れ出て問題はない。この時点でアスピレーターの能力が増して、真空ポンプに代わり吸収揚水の作用を本格的に作動し始めるようになる。
(8)しばらく運転したら、上部W1のコックC2を閉じて水道水の注入を停止する。この時落下する水量が多すぎて排水口より水が出始めたら、落水管のコックC4を絞って水量を調節する。逆に流れる水量が少ない場合は、マイクロバルブ発生器の能力を上げて水の流速を増加させ空気の流入量を増やすか、下部アスピレーターのコックの一部を減圧タンク側から空気側に切り替えて落水管内部に空気が入り込むようにする。この場合も入り込んだ空気はマイクロバルブとなって落水管中を落下し大気圧と落水管内の圧力のバランスをとることができる。
(9)上記(8)のようにして常に一定の水量が装置内を循環して流れることにより、安定した発電出力が得られるようになる。
図3においては、図2と同様作用機構の概要図であるが、水をより高い位置に吸い上げて発電効率を上げる装置の図面である。この場合図1と同様の方式で下部水槽Bの水をU1を通してT1の水槽タンクに吸い上げた後、マイクロバルブ発生装置M1を働かせて水を上部水槽B1に落下させる。B1の水は下方に落下させず、そのままU2を通してT2に吸い上げ、上部水槽B2に落とした後、更にU3を通してT3に吸い上げ、B3に落下させる。B3の水は落水管Pを通して自由落下させ水車発電機を稼働させて発電する。この時Pにとりつけた吸引装置A1、A2、A3は減圧タンクV1、V2、V3を通して下部水槽B0の水を上部水槽タンクT3にまで吸い上げる作用をなす。またマイクロバルブ発生装置M1、M2、M3は水槽タンクT1、T2、T3の水に空気を入れて自由落下させる働きをなす。このような方式を更に数多く積み重ねれば、有効落差のより大きい発電装置にすることができる。
産業上の利用分野
本発明の発電装置を用いれば、どこにでも設置できて、公害を発生せず、常時安定した電力を安価に得ることができるので、自家用発電機として一般住宅、高層建築物、工場などに設置利用でき、船舶、車両などに積載すれば、外部からエネルギー源を補給しなくとも動く電動式乗り物とすることができる。
サイホンの作用機構図 本発明の作用機構の概要断面図 本発明図2の装置を3段積み重ねた概要断面図
図1: 1:水の落下口 2:水の吸い上げくち
図2: B:下部水槽 U:揚水管 T:上部水槽タンク P:落水管
A:吸引装置 M:マイクロバルブ発生装置 V:減圧タンク
D:水車発電機 W:水道管 C:開閉弁
図3: B:下部水槽 U:揚水管 T:水槽タンク P:落水管
A:吸引装置 M:マイクロバルブ発生装置 V:減圧タンク

Claims (4)

  1. 上部水槽タンク、落水管、下部水槽、揚水管を備えつけた揚水式水力発電装置において、落水管の下方部分にアスピレータータイプの吸引装置をもうけ、この装置は別途に設置した減圧タンクを通じて揚水管の最上部及び上部水槽タンクに連結し,更に落水管最上部近辺にマイクロバルブ発生装置をとりつけたことを特徴とする吸引揚水自由落下による循環式水力発電装置。
  2. 請求項1の装置を2段乃至それ以上積み重ねたもので、この場合下部水槽と発電機は段数にかかわらず一つのみを設置し、また落水管は最上部の上部水槽タンクにつながり、この管の最下部は水車型発電機直上に、更にこの管には夫々の段において吸引装置及びマイクロバルブ発生装置をとりつけたことを特徴とする吸引揚水自由落下による循環式水力発電装置。
  3. 上記請求項1,2の装置を設置した移動物体(船舶、車両)。
  4. 上記請求項1,2の装置において、下部水槽は海、池、湖沼、河川であることを特徴とする吸引揚水自由落下による水力発電装置。
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