JP2012233002A - 認知の改善における使用のためのアミロイドβ抗体 - Google Patents

認知の改善における使用のためのアミロイドβ抗体 Download PDF

Info

Publication number
JP2012233002A
JP2012233002A JP2012172572A JP2012172572A JP2012233002A JP 2012233002 A JP2012233002 A JP 2012233002A JP 2012172572 A JP2012172572 A JP 2012172572A JP 2012172572 A JP2012172572 A JP 2012172572A JP 2012233002 A JP2012233002 A JP 2012233002A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibody
cognition
residues
antibodies
subject
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012172572A
Other languages
English (en)
Inventor
Jack Steven Jacobson
ジヤコブセン,ジヤツク・スチーブン
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Janssen Sciences Ireland UC
Wyeth LLC
Original Assignee
Janssen Alzheimer Immunotherapy
Wyeth LLC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Janssen Alzheimer Immunotherapy, Wyeth LLC filed Critical Janssen Alzheimer Immunotherapy
Priority to JP2012172572A priority Critical patent/JP2012233002A/ja
Publication of JP2012233002A publication Critical patent/JP2012233002A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、βアミロイド(Aβ)と関連する疾患の処置のための改良された剤および方法を提供する。
【解決手段】本発明は、特定の活性、とりわけ、可溶性オリゴマーAβに優先的に結合する能力、および/若しくはAβ関連の認知障害の適切な動物において測定されるところの認知を迅速に改善する能力を有するAβ抗体の選択を特徴とする。好ましい剤は抗体、例えばAβに特異的なヒト化抗体を包含する。
【選択図】なし

Description

関連出願
本出願は、全部“Aβ Antibodies for Use in Improv
ing Cognition(認知の改善における使用のためのAβ抗体)”と題された
、第60/636,810号(2004年12月15日出願)、同第60/637,13
8号(2004年12月16日出願)および同第60/735,687号(2005年1
1月10日出願)をもつ米国仮出願に対する優先権の利益を主張する。上で参照された仮
出願のそれぞれの内容全体は、引用することにより本明細書に組み込まれる。
記憶は、過去の経験から受領した情報の脳による保存および/若しくは想起を必要とす
る重要な認知機能である。条件付けともまた称される学習は、新たな情報が神経系により
取得かつ保存されて記憶を形成する過程である。痴呆を伴う患者では、学習および/若し
くは記憶のための認知経路が損なわれており、その結果、該患者は学習または新たな記憶
を効果的に形成若しくは古い記憶を想起することに失敗する。痴呆を表す個体の数は急速
に上昇しており、そして、該上昇速度は、一般大衆が加齢し続けかつ平均余命が延長し続
ける際に増大することが期待される。痴呆を伴う患者は、彼らの症状が悪化する際にます
ます高価かつ集中的介護を必要とする。であるから、施設収容を遅らせる医学的介入が、
痴呆を伴う被験体の苦難を軽減することに加え、医療制度に対する要求を低減させるのに
役立つとみられる。
重度の痴呆の発症は、ダウン症候群、脳アミロイド血管症、血管性痴呆およびアルツハ
イマー病(AD)を包含する、冒された被験体の脳組織中のアミロイドタンパク質沈着物
の蓄積で知られる数種のアミロイド形成障害の特徴である。ADは老人性痴呆をもたらす
進行性疾患である。大まかに言って、該疾患は2つの範疇、すなわち老齢(65歳超)で
発症する晩発型および老年期の十分に前すなわち35と60歳の間で発症する早発型に分
けられる。
神経変性は、認知症状が加齢とともに進行性に悪化するようなアミロイド形成障害およ
び他の痴呆障害と関連する。アミロイド形成障害の診断は、通常、脳の剖検で明らかであ
る特徴的な細胞病理学によってのみ確認し得る。組織病理学は、神経原線維変化(NT)
の存在、中枢神経系組織のシナプスおよびニューロンのびまん性喪失、ならびにアミロイ
ド斑(老人斑ともまた呼ばれる)の存在を包含する3つの主要な特徴の最低1つよりなる
。全般として、非特許文献1;特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4
を参照されたい。
斑の主構成要素はAβすなわちβ−アミロイドペプチドと命名されるペプチドである。
Aβペプチドは、より大きな膜貫通糖タンパク質(アミロイド前駆体タンパク質(APP
)と命名された著名なタンパク質)の39〜43アミノ酸のおよそ4kDaの内的フラグ
メントである。多様な分泌酵素によるAPPのタンパク質分解性プロセシングの結果とし
て、Aβは主として短い形態(長さ40アミノ酸)および長い形態(長さ42〜43アミ
ノ酸からの範囲にわたる)の双方で見出される。APPの疎水性膜貫通ドメインの一部は
Aβのカルボキシ端で見出され、そしてとりわけ長い形態の場合には斑に凝集するAβの
能力の原因でありうる。脳中のアミロイド斑の蓄積はついには神経細胞死に至る。この型
の神経劣化と関連する身体症状がADを特徴づける。
APPタンパク質内の数種の突然変異がADの存在と相互に関連づけられている。例え
ば、非特許文献5(バリン717からイソロイシン);非特許文献6(バリン717から
グリシン);非特許文献7(バリン717からフェニルアラニン);非特許文献8(リシ
595−メチオニン596からアスパラギン595−ロイシン596に変化する二重突
然変異)を参照されたい。こうした突然変異は、APPのAβへの増大された若しくは変
えられたプロセシング、とりわけ増大された量の長い形態のAβ(すなわちAβ1−42
およびAβ1−43)へのAPPのプロセシングによりADを引き起こすと考えられてい
る。プレセニリン遺伝子PS1およびPS2のような他の遺伝子中の突然変異は、増大さ
れた量の長い形態のAβを生成させるAPPのプロセシングに間接的に影響を及ぼすと考
えられている(非特許文献9を参照されたい)。
マウスモデルがADにおけるアミロイド斑の意義を決定するのに成功裏に使用された(
非特許文献4、非特許文献10)。とりわけ、PDAPPトランスジェニックマウス(変
異体の形態のヒトAPPを発現しかつ若齢でADの病状を発症する)に長い形態のAβを
注入した場合、それらはADの病状の進行の低下およびAβペプチドに対する抗体力価の
増大の双方を表す(非特許文献11)。上の知見は、とりわけその長い形態のAβをAD
における原因要素として関与させる。
Aβペプチドは溶液中に存在し得、そして中枢神経系(CNS)(例えば脳脊髄液(C
SF))および血漿中で検出し得る。ある条件下では、可溶性Aβは、ADを伴う患者の
老人斑および脳血管で見出される線維状の毒性のβ−シートの形態に変換される。Aβペ
プチドの形成を予防することを試みる数種の処置、例えばAPPの切断を予防するための
化学的阻害剤の使用が開発された。免疫療法処置もまた、既存の斑の密度および大きさを
低下させるための手段として検討されている。これらの戦略は、アミロイド沈着物の消失
を誘導する多様な抗Aβ抗体での受動免疫、ならびに抗Aβ抗体の生成および沈着物の細
胞消失を包含する体液性応答を促進するための可溶性の形態のAβペプチドでの能動免疫
を包含する。能動および受動免疫双方がADのマウスモデルで試験されている。PDAP
Pマウスにおいて、Aβでの免疫化は、斑形成、神経炎性ジストロフィーおよびアストロ
グリオーシスの発症を予防することが示された。より高齢の動物の処置もまた、これらの
AD様神経病変の程度および進行を顕著に低下させた。非特許文献11。Aβ免疫化は、
ADのTgCRND8マウスモデルにおいて斑および行動障害を低下させることもまた示
された。非特許文献12。Aβ免疫化はまたTg 2576 APP/PS1変異体マウ
スで認知能力を改善しかつアミロイド負荷量を低下させた。非特許文献13。PDAPP
トランスジェニックマウスの受動免疫もまた検討されている。例えば、末梢で投与した抗
体がin vivoで中枢神経系(CNS)に進入しかつ斑消失を誘導したことが見出さ
れた。非特許文献14。該抗体はex vivoアッセイでFc受容体媒介性食作用を誘
導することがさらに示された。Aβ42のN末端に特異的な抗体は、ex vivoおよ
びin vivo双方で斑の低下においてとりわけ有効であることが示された。特許文献
2および非特許文献15を参照されたい。Aβ42の中央領域に特異的な抗体もまた有効
性を示した。特許文献2。
2つの機構すなわち中枢性分解および末梢性分解が、免疫療法による効果的な斑消失に
提案されている。中枢性分解の機構は、血液脳関門を横断し、斑に結合しかつ既存の斑の
消失を誘導することが可能である抗体に頼る。消失はFc受容体媒介性食作用により促進
されることが示されている(非特許文献14)。Aβ消失の末梢性分解の機構は、一区画
から別のものへのAβの輸送に至る、抗Aβ抗体による脳、CSFおよび血漿間のAβの
動的平衡の破壊に頼る。中枢で派生するAβはCSFおよび血漿に輸送され、そこでそれ
は分解される。最近の研究は、可溶性かつ未結合のAβが、脳中のアミロイド沈着の低下
を伴わなくとも、ADと関連する記憶障害に関与していることを結論づけた。さらなる研
究が、Aβ消失のためのこれらの経路の作用および/若しくは相互作用を決定するのに必
要とされる(非特許文献16)。
今日までの処置の大多数はアミロイド斑形成を低下させることを目標としていた一方、
アミロイド形成障害と関連するある種の認知障害(例えば海馬依存的な条件付けの欠陥)
がアミロイド沈着物の前に出現し始め、かつ、全体的な神経病理学が明らかであることが
最近示された(非特許文献17)。さらに、斑に凝集したアミロイドペプチドの病原性の
役割は長年知られている一方、痴呆若しくは認知障害の重症度は、斑の密度といくぶん相
関するのみである一方で可溶性Aβの濃度との有意の相関が存在する(例えば非特許文献
18を参照されたい)。いくつかの研究は、可溶性Aβオリゴマーが、増大した酸化的ス
トレスおよびプログラムされた細胞死の誘導を包含する機構により、APPトランスジェ
ニックマウスにおいてシナプス毒性および記憶障害に関与していることを示したか若しく
は示唆した(例えば、非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献2
2;非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25を参照されたい)。これらの結果
は、神経変性がアミロイド沈着前に開始することができかつ単にその結果でないことを示
す。従って、ADの処置のための新たな治療法および試薬、とりわけAβ誘発性の神経毒
性の多様な機構での介入を介して治療的利益を遂げることが可能な治療法および試薬に対
する必要性が存在する。
[特許文献1]Hardyら、第WO 92/13069号
[特許文献2]米国特許第6,761,888号
[非特許文献1]Selkoe、TINS 16:403(1993)
[非特許文献2]Selkoe、J.Neuropathol.Exp.Neurol.53:438(1994)
[非特許文献3]Duffら、Nature 373:476(1995)
[非特許文献4]Gamesら、Nature 373:523(1995)
[非特許文献5]Goateら、Nature 349:704(1991)
[非特許文献6]Chartier Harlanら、Nature 353:844(1991)
[非特許文献7]Murrellら、Science 254:97(1991)
[非特許文献8]Mullanら、Nature Genet.1:345(1992)
[非特許文献9]Hardy、TINS 20:154(1997)
[非特許文献10]Johnson-Woodら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:1550(1997)
[非特許文献11]Schenkら、Nature 400、173(1999)
[非特許文献12]Janusら(2000)Nature 408:979-982
[非特許文献13]Morganら(2000)Nature 408:982-985
[非特許文献14]Bardら(2000)Nat.Med.6:916-919
[非特許文献15]Bardら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1000:2023-2028
[非特許文献16]Dodelら、The Lancet、2003、2:215
[非特許文献17]Dineleyら、J.Biol.Chem.、2002、227:22768
[非特許文献18]McLeanら、Ann Neurol、46:860-866(1999)
[非特許文献19]Lambertら、(1998)、PNAS、95:6448-53
[非特許文献20]Naslundら、(2000)、JAMA、283:1571
[非特許文献21]Muckeら、J Neurosci、20:4050-4058(2000)
[非特許文献22]Morganら、Nature、408:982-985(2000)
[非特許文献23]Dodartら、Nat Neurosci、5:452-457(2002)
[非特許文献24]Salkoeら、(2002)、Science、298:789-91
[非特許文献25]Walshら、Nature、416:535-539(2002)
[発明の要約]
本発明は、Aβ関連疾患若しくは障害の予防および処置のための、とりわけAβ関連疾
患若しくは障害を有するか若しくはその危険性がある患者での認知の改善(例えば認知の
迅速な改善)を治療上遂げるための免疫学的試薬、とりわけ治療的抗体試薬を特徴とする
。本発明は、少なくとも部分的に、Aβペプチド内のエピトープに特異的に結合する数種
のモノクローナル抗体の同定および特徴付けに基づく。本発明は、特定の活性、とりわけ
、可溶性オリゴマーAβに優先的に結合する能力、および/若しくはAβ関連の認知障害
の適切な動物において測定されるところの認知を迅速に改善する能力を有するAβ抗体の
選択を特徴とする。
これらの抗体の構造および機能分析は、予防的および/若しくは治療的使用のための多
様なヒト化抗体の設計に至る。とりわけ、本発明は、この抗体の可変領域のヒト化を特徴
とし、そして、従って、特徴とする抗体のヒト化免疫グロブリンすなわち抗体鎖、無傷の
ヒト化免疫グロブリンすなわち抗体、および機能的免疫グロブリンすなわち抗体フラグメ
ント、とりわけ抗原結合フラグメントを提供する。
本明細書に記述される免疫グロブリンは、Aβ関連疾患若しくは障害またはそれに関す
る症状若しくは適応症の予防若しくは処置を目的とする治療方法における使用にとりわけ
適する。ある態様において、本発明は、Aβ関連疾患若しくは障害を有するか若しくはそ
の危険性がある患者で観察される痴呆および/若しくは認知障害の予防若しくは改善にお
いて有効な治療および/若しくは予防方法を特徴とする。とりわけ、本発明は、該疾患若
しくは障害の発病の早期段階で妨害しかつ不可逆的な神経損傷および/若しくは痴呆を予
防する治療薬の投与を含んでなる、改良された治療および/若しくは予防方法を提供する
。本発明の特徴とする局面は、本発明の免疫学的試薬若しくは前記免疫学的試薬を含んで
なる製薬学的組成物の投与を伴う、被験体における認知の迅速な改善方法を提供する。好
ましい免疫学的試薬は、限定されるものでないが、抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本
鎖抗体、二特異性抗体、抗体フラグメント、抗体鎖、それらの抗体若しくは抗体鎖バリア
ント(例えばFc抗体バリアント)またはそれらの組合せを挙げることができる。
本発明の他の局面において、免疫学的試薬若しくは前記試薬を含んでなる製薬学的組成
物の投与を伴う、被験体における認知の長期改善を遂げる方法を特徴とする。
例示的態様において、本発明の方法は、Aβ関連疾患若しくは障害を有するか若しくは
その危険性がある被験体におけるAβ、とりわけAβオリゴマーの結合および/若しくは
認知の迅速な改善で有効である免疫学的試薬の投与を伴う。
いくつかの態様において、本発明の免疫グロブリンは、ヒンジ領域、例えばEU位置2
34、235、236および/若しくは237に1個若しくはそれ以上の変化を含んでな
る。特定の一態様において、本発明の免疫グロブリンは、ヒンジ領域の位置234および
237のアミノ酸変化(すなわちL234AおよびG237A)を包含するヒト化12A
11抗体である。
さらなる態様において、本発明の免疫グロブリンはペグ化抗体フラグメント、例えばF
abおよびFab’を含んでなる。なお他の態様において、本発明の免疫グロブリンはア
グリコシル化された定常領域を含んでなる。例示的一態様において、免疫グロブリンは位
置297のアスパラギンのアラニンへのアミノ酸置換を包含し、それにより該免疫グロブ
リンのグリコシル化を予防する。
いくつかの態様において、本発明のヒト化免疫グロブリンは、それぞれATCC受託番
号_______、_______、_______若しくは_______を有する細
胞株により産生される6C6、2B1、1C2若しくは9G8抗体の相補性決定領域を含
んでなる。いくつかの態様において、ヒト化免疫グロブリンは、それぞれATCC受託番
号_______、_______、_______若しくは_______を有する細
胞株により産生されるモノクローナル抗体6C6、2B1、1C2若しくは9G8のヒト
化バージョンである。
免疫グロブリンのH鎖をコードする遺伝子中の1個若しくはそれ以上のイントロンを欠
失することによる免疫グロブリンの発現の増大方法もまた本明細書で特徴とする。
加えて、本発明は、本発明の1種若しくはそれ以上の免疫グロブリンを使用する、本明
細書に記述されるところの処置方法に関する。
マウス3D6(配列番号2)、ヒト化3D6バージョン1(配列番号6)、Kabat ID 109230(配列番号60)および生殖系列A19(配列番号61)抗体のL鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。CDR領域は矢印により示す。太字斜体はまれなマウス残基を示す。太字は充填(VH+VL)残基を示す。黒地白抜きは正準/CDR相互作用残基を示す。*印はヒト化3D6、バージョン1中の戻し突然変異に選択した残基を示す。 マウス3D6(配列番号4)、ヒト化3D6バージョン1(配列番号8)、Kabat ID 045919(配列番号62)および生殖系列VH3−23(配列番号63)抗体のH鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。注釈は図1についてと同一である。 マウス10D5 VL(配列番号14)および3D6 VL(配列番号2)のアミノ酸配列のアライメントを描く。太字斜体は10D5に正確に一致する残基を示す。CDRは囲まれている。番号付けはKabatに従う。 マウス10D5 VH(配列番号16)および3D6 VH(配列番号4)アミノ酸配列のアライメントを描く。注釈は図3についてと同一である。 マウス12B4(成熟ペプチド、配列番号18)、ヒト化12B4バージョン1(成熟ペプチド、配列番号22)、Kabat ID 005036(成熟ペプチド、配列番号64)および生殖系列A19(X63397、成熟ペプチド、配列番号61)抗体のL鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。CDR領域は点描かつ上線を付ける。ヒト→マウス残基の単一戻し突然変異を*印により示す。陰を付けた残基の重要性を説明に示す。番号付けはKabatに従う。 マウス12B4(成熟ペプチド、配列番号18)、ヒト化12B4バージョン1(成熟ペプチド、配列番号22)、Kabat ID 005036(成熟ペプチド、配列番号64)および生殖系列A19(X63397、成熟ペプチド、配列番号61)抗体のL鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。CDR領域は点描かつ上線を付ける。ヒト→マウス残基の単一戻し突然変異を*印により示す。陰を付けた残基の重要性を説明に示す。番号付けはKabatに従う。 マウス12B4(成熟ペプチド、配列番号20)、ヒト化12B4(バージョン1)(成熟ペプチド、配列番号24)、Kabat ID 000333(成熟ペプチド、配列番号65)ならびに生殖系列VH4−39およびVH4−61抗体(成熟ペプチド、それぞれ配列番号66および67)のH鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。注釈は図5についてと同一である。 マウス12B4(成熟ペプチド、配列番号20)、ヒト化12B4(バージョン1)(成熟ペプチド、配列番号24)、Kabat ID 000333(成熟ペプチド、配列番号65)ならびに生殖系列VH4−39およびVH4−61抗体(成熟ペプチド、それぞれ配列番号66および67)のH鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。注釈は図5についてと同一である。 多様なAβ抗体(3D6、6C6、12A11、12B4、3A3、266、9G8、15C11および6H9)とともに沈殿させかつ3D6とともに画像化した、ペルオキシ亜硝酸塩処理したオリゴマーAβ1−42調製物の免疫沈降物のウエスタンブロットを描く。Aβ1−42単量体、二量体、三量体および四量体バンドのおおよその位置を図の左側に示す。抗体により認識されるAβエピトープ、および該抗体についてのコンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイの結果を各Aβ抗体の下に示し、「+」表記は該抗体での処置に際しての増大した認知の観察結果を示し、「−」表記は該抗体での処置に際して認知の変化なしという観察結果を示し、そして「+/−」表記は、該抗体での処置に際しての増大した認知の傾向の観察結果を示すが、しかし該観察された傾向が増大した認知の観察結果として示されるのに十分統計学的に有意でなかった。 多様なAβ抗体(3D6、6C6、12A11、12B4、10D5、3A3、266および6H9)とともに沈殿させかつ3D6とともに画像化した、ペルオキシ亜硝酸塩処理したオリゴマーAβ1−42調製物の免疫沈降物のウエスタンブロットを描く。注釈は図7についてと同一である。 Tg2576マウスへの単一用量のマウス12A11(1、10および30mg/kg)の投与後に認知の迅速な改善が観察されるCFCアッセイの結果を描く。 Tg2576マウスへの単一の低用量のマウス12A11(0.3および1mg/kg)の投与後に認知の迅速な改善が観察されるCFCアッセイの結果を描く。 コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイにより測定されるところの、野性型およびTg2576マウスにおける文脈依存的記憶に対する3種のN末端抗Aβ抗体(3D6、12A11および266)の効果を描く。 単一用量のマウス12A11(1mg/kg)の投与後の改善された認知の持続期間を、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイで投与後1、10および17日に評価する試験の結果を描く。 単一用量のマウス266(3mg/kg)の投与後の改善された認知の持続期間を、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイで投与後1、5、10および17日に評価する試験の結果を描く。 コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイにより測定されるところの、野性型および二重トランスジェニックADマウスモデルでの文脈依存的記憶に対する抗Aβ抗体(12A11および266)の効果を描く。 マウス(若しくはキメラ)12A11(配列番号28)、ヒト化12A11バージョン1(成熟ペプチド、配列番号32)、GenBank BAC01733(配列番号68)および生殖系列A19(X63397、配列番号61)抗体のL鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。CDR領域が囲まれている。充填残基に下線を付ける。番号付けはKabatに従う。 マウス(若しくはキメラ)12A11(配列番号30)、ヒト化12A11(バージョン1)(成熟ペプチド、配列番号34)、GenBank AAA69734(配列番号69)および生殖系列GenBank 567123抗体(配列番号70)のH鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。充填残基に下線を付け、正準残基は黒地白抜きであり、バーニア残基は点線で囲まれている。番号付けはKabatに従う。 ヒト化12A11 v1(配列番号34)、v2(配列番号35)、v2.1(配列番号36)、v3(配列番号37)、v3.1(配列番号39)、v4.1(配列番号40)、v4.2(配列番号41)、v4.3(配列番号42)、v4.4(配列番号43)、v5.1(配列番号44)、v5.2(配列番号45)、v5.3(配列番号46)、v5.4(配列番号47)、v5.5(配列番号48)、v5.6(配列番号49)、v6.1(配列番号50)、v6.2(配列番号51)、v6.3(配列番号52)、v6.4(配列番号53)、v7(配列番号54)およびv8(配列番号55)のH鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。 ヒト化12A11 v1(配列番号34)、v2(配列番号35)、v2.1(配列番号36)、v3(配列番号37)、v3.1(配列番号39)、v4.1(配列番号40)、v4.2(配列番号41)、v4.3(配列番号42)、v4.4(配列番号43)、v5.1(配列番号44)、v5.2(配列番号45)、v5.3(配列番号46)、v5.4(配列番号47)、v5.5(配列番号48)、v5.6(配列番号49)、v6.1(配列番号50)、v6.2(配列番号51)、v6.3(配列番号52)、v6.4(配列番号53)、v7(配列番号54)およびv8(配列番号55)のH鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。 ヒト化12A11 v1ないしv8で行われた戻し突然変異を示す。 単一用量のヒト化12A11抗体v3.1 h12A11(1、10および30mg/kg)のTg2576マウスへの投与後に認知の迅速な改善が観察されるCFCアッセイの結果を描く。 15C11、9G8、266および6H9抗Aβ抗体のH鎖可変ドメインのアライメントである。15C11のアミノ酸のKabatの番号付けを配列の上に示す。リーダー配列は小文字で示し、また、CDRは太字である。 15C11、9G8および266抗Aβ抗体のL鎖可変ドメインのアライメントである。15C11のアミノ酸のKabatの番号付けを配列の上に示す。リーダー配列は小文字で示し、また、CDRは太字である。
[発明の詳細な記述]
本発明を記述する前に、下で使用されるべきある用語の定義を示すことがその理解に有
用でありうる。
1)定義
本明細書で使用されるところの「Aβ関連疾患若しくは障害」という用語は、Aβペプ
チドの発生若しくは存在と関連するか若しくはそれらを特徴とする疾患若しくは障害を指
す。一態様において、Aβ関連疾患若しくは障害は可溶性Aβの存在と関連するか若しく
はそれを特徴とする。別の態様において、Aβ関連疾患若しくは障害は、不溶性Aβの存
在と関連するか若しくはそれを特徴とする。別の態様において、Aβ関連疾患若しくは障
害は、向神経活性Aβ種(NAβ)の存在と関連するか若しくはそれを特徴とする。別の
態様において、Aβ関連疾患若しくは障害はまたアミロイド形成障害でもある。別の態様
において、Aβ関連疾患若しくは障害は、Aβ関連の認知障害(deficit)若しく
は障害(disorder)、例えばAβ関連痴呆障害を特徴とする。例示的Aβ関連疾
患若しくは障害は、アルツハイマー病(AD)、ダウン症候群、脳アミロイド血管症、あ
る種の血管性痴呆および軽度認知障害(MCI)を包含する。
「βアミロイドタンパク質」、「βアミロイドペプチド」、「βアミロイド」、「Aβ
」および「Aβペプチド」という用語は本明細書で互換性に使用される。Aβペプチド(
例えばAβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42およびAβ43)は、アミロイド前駆体
タンパク質(APP)と命名されたより大きな膜貫通糖タンパク質の39〜43アミノ酸
の約4kDaの内的フラグメントである。APPの複数のアイソフォーム、例えばAPP
695、APP751およびAPP770が存在する。APP内のアミノ酸はAPP77
アイソフォームの配列(例えばGenBank受託番号P05067を参照されたい)
に従って割り当てられた番号である。ヒトで存在することが現在既知であるAPPの特定
のアイソタイプの例は、「正常」APPと呼称されるKangら(1987)Natur
325:733−736により記述される695アミノ酸のポリペプチド;Pont
eら(1988)Nature 331:525−527(1988)およびTanzi
ら(1988)Nature 331:528−530により記述される751アミノ酸
のポリペプチド;ならびにKitaguchiら(1988)Nature 331:5
30−532により記述される770アミノ酸のポリペプチドである。in vivo若
しくはin situでの多様な分泌酵素によるAPPのタンパク質分解性プロセシング
の結果として、Aβは「短い形態」(長さ40アミノ酸)および「長い形態」(長さ32
〜43アミノ酸からの範囲にわたる)双方で見出される。短い形態Aβ40はAPPの残
基672−711よりなる。長い形態、例えばAβ42若しくはAβ43はそれぞれ残基
672−713若しくは672−714よりなる。APPの疎水性ドメインの一部はAβ
のカルボキシ端で見出され、そしてとりわけ長い形態の場合にAβの凝集する能力の原因
でありうる。Aβペプチドは、例えば正常個体およびアミロイド形成障害に罹患している
個体双方を包含する、ヒトおよび他の哺乳動物の体液、例えば脳脊髄液中に見出し得るか
、若しくはそれから精製し得る。
「βアミロイドタンパク質」、「βアミロイドペプチド」、「βアミロイド」、「Aβ
」および「Aβペプチド」という用語は、APPの分泌酵素切断から生じるペプチド、お
よび切断生成物と同一若しくは本質的に同一の配列を有する合成ペプチドを包含する。本
発明のAβペプチドは多様な供給源、例えば組織、細胞株または体液(例えば血清若しく
は脳脊髄液)に由来し得る。例えば、Aβは、例えばWalshら、(2002)、Na
ture、416、pp535−539に記述されるところのAPP717V→Fで安定
にトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のようなAPP発現
細胞に由来し得る。Aβ調製物は前述された方法(例えばJohnson−Woodら、
(1997)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:1550を参照
されたい)を使用して組織供給源に由来し得る。あるいは、Aβペプチドは当業者に公知
である方法を使用して合成し得る。例えば、Fieldsら、Synthetic Pe
ptides:A User’s Guide、Grant編、W.H.Freeman
&Co.、ニューヨーク州ニューヨーク、1992、p77を参照されたい)。これ故に
、ペプチドは、例えばApplied Biosystemsペプチド合成機型式430
A若しくは431で側鎖を保護したアミノ酸を使用するt−Boc若しくはF−mocい
ずれかの化学により保護したαアミノ基を用いる固相合成の自動化Merrifield
技術を使用して合成し得る。より長いペプチド抗原は公知の組換えDNA技術を使用して
合成し得る。例えば、ペプチド若しくは融合ペプチドをコードするポリヌクレオチドを合
成し得るか若しくは分子的にクローン化し得、そしてトランスフェクションおよび適する
宿主細胞による異種発現のため適する発現ベクターに挿入し得る。Aβペプチドはまた、
正常遺伝子のAβ領域の突然変異から生じる関連Aβ配列も指す。
「可溶性Aβ」若しくは「解離型Aβ」という用語は、単量体の可溶性ならびにオリゴ
マーの可溶性のAβポリペプチド(例えば可溶性Aβ二量体、三量体など)を包含する凝
集していないすなわちばらばらのAβポリペプチドを指す。可溶性Aβはin vivo
で脳脊髄液および/若しくは血清のような生物学的体液中で見出し得る。可溶性Aβは、
例えばAβペプチドを適切な溶媒および/若しくは溶液中で可溶化することによりin
vitroでもまた調製し得る。例えば、可溶性Aβは、凍結乾燥したペプチドをアルコ
ール、例えばHFIPに溶解すること、次いで冷水性溶液での希釈により調製し得る。あ
るいは、可溶性Aβは、凍結乾燥したペプチドを希釈していないDMSOに超音波処理を
用いて溶解することにより調製し得る。生じる溶液を遠心分離(例えば14,000×g
、4℃で10分)していかなる不溶性の微粒子も除去し得る。
「不溶性Aβ」若しくは「凝集型Aβ」という用語は、凝集したAβペプチド、例えば
非共有結合により一緒に保持され、かつ、ADを伴う患者の老人斑および脳血管中で見出
される線維状の毒性のβ−シートの形態のAβペプチド中に存在し得るAβを指す。Aβ
(例えばAβ42)は、少なくとも部分的に、該ペプチドのA末端の疎水性残基(APP
の膜貫通ドメインの一部)の存在により凝集すると考えられる。
本明細書で使用されるところの「向神経活性Aβ種」という句は、神経細胞の最低1種
の活性若しくは物理的特徴を遂げるAβ種(例えばAβペプチド若しくはAβペプチドの
1形態)を指す。向神経活性Aβ種は、例えば、神経細胞の機能、生物学的活性、生存能
力、形態学および/若しくは構造を遂げる。神経細胞に対する影響は細胞性であり得る(
例えば神経細胞の長期の強化(LPT)若しくは神経細胞の生存能力(神経毒性)を遂げ
ること)。あるいは、該影響はin vivoの神経系に対してであり得る(例えば適切
な動物試験(例えば認知試験)で行動の結果を遂げること)。本明細書で使用されるとこ
ろの「中和する」という用語は、活性若しくは効果を中立にするか、打ち消すか若しくは
無効にすることを意味している。
本明細書で使用されるところの「神経変性疾患」という用語は、ニューロンおよび/若
しくは神経組織の変性を伴うか若しくはそれを特徴とする障害若しくは疾患、例えばアミ
ロイド形成疾患を広範に指す。
「アミロイド形成疾患」若しくは「アミロイド形成障害」という用語は、不溶性アミロ
イド原線維の形成若しくは沈着と関連する(若しくはそれにより引き起こされる)いかな
る疾患も包含する。例示的アミロイド形成疾患は、限定されるものでないが全身性アミロ
イドーシス、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)、成人発症型糖
尿病、パーキンソン病、ハンチントン描、前頭側頭型痴呆、ならびにプリオン関連の伝染
性海綿状脳症(ヒトにおけるクールーおよびクロイツフェルト・ヤコブ病、ならびに、ヒ
ツジおよび畜牛におけるそれぞれスクレイピーおよびBSE)を挙げることができる。多
様なアミロイド形成疾患が、沈着される原線維のポリペプチド成分の性質により定義若し
くは特徴付けられる。例えば、アルツハイマー病を有する被験体若しくは患者において、
βアミロイドタンパク質(例えば野性型、バリアント若しくは切断型βアミロイドタンパ
ク質)がアミロイド沈着物の主ポリペプチド成分である。従って、アルツハイマー病は、
例えば被験体若しくは患者の脳中の「Aβの沈着物を特徴とする疾患」若しくは「Aβの
沈着物を伴う疾患」の一例である。Aβの沈着物を特徴とする他の疾患は、アミロイド形
成性沈着物が、学習および/若しくは記憶と関連する脳の1個若しくはそれ以上の領域、
例えば海馬、扁桃体、鉤状回、帯状皮質、前頭葉前皮質、鼻周囲皮質、感覚皮質および側
頭葉内側部に見出される、特徴づけられていない疾患を包含し得る。
「認知」という用語は、限定されるものでないが、学習若しくは記憶(例えば短期若し
くは長期の学習若しくは記憶)、知識、覚醒、注意および集中、判断、視覚的認知、抽象
的思考、実行機能、言語、視覚−空間(visual−spatial)(すなわち視覚
空間(visuo−spatial)見当識)技能、視覚的認知、平衡/敏捷性ならびに
感覚運動活動を挙げることができる、被験体により実施される認知に関する精神過程を指
す。例示的認知過程は学習および記憶を包含する。
「認知障害(disorder)」、「認知障害(deficit)」若しくは「認知
障害(impairment)」という用語は本明細書で互換性に使用され、そして被験
体の1種若しくはそれ以上の認知に関する精神過程の欠陥若しくは障害を指す。認知障害
は多数の起源、すなわち機能的機序(不安、抑うつ)、生理学的加齢(加齢関連の記憶障
害)、脳損傷、精神障害(例えば統合失調症)、薬物、感染症、毒物若しくは解剖学的病
変を有しうる。例示的認知障害は、学習若しくは記憶の欠陥若しくは障害(例えば、知的
能力、判断、言語、運動技能および/若しくは抽象的思考の短期若しくは長期の学習およ
び/若しくは記憶の喪失における)を包含する。
本明細書で使用されるところの「Aβ関連認知障害(disorder)」(または「
障害(deficit)」若しくは「障害(impairment)」)という用語は、
Aβペプチドの発生若しくは存在と関連するか若しくはそれを特徴とする認知障害を指す
。一態様において、Aβ関連疾患若しくは障害は可溶性Aβの存在を伴うか若しくはそれ
を特徴とする。別の態様において、Aβ関連疾患若しくは障害は不溶性Aβの存在を伴う
か若しくはそれを特徴とする。別の態様において、Aβ関連疾患若しくは障害は向神経活
性Aβ種(NAβ)の存在を伴うか若しくはそれを特徴とする。
本明細書で使用されるところの「痴呆障害」という用語は、痴呆(すなわち認知能力の
全般的劣化若しくは進行性減退または痴呆様症状)を特徴とする障害を指す。痴呆障害は
、しばしば、脳若しくは中枢神経系の1種若しくはそれ以上の異常な過程(例えば神経変
性)を伴うか若しくはそれにより引き起こされる。痴呆障害は、一般に、軽度から重篤な
段階まで進行し、そして日常生活で独立して機能する被験体の能力を妨害する。痴呆は、
冒された脳の領域に依存して皮質若しくは皮質下に分類されうる。痴呆障害は、意識の喪
失(錯乱におけるような)若しくは抑うつ、または他の機能的精神障害(偽痴呆)を特徴
とする障害を包含しない。痴呆障害は、アルツハイマー病、血管性痴呆、レヴィー小体痴
呆、ヤコブ・クロイツフェルト病、ピック病、進行性核上性麻痺、前頭葉痴呆、特発性大
脳基底核石灰化、ハンチントン病、多発性硬化症、およびパーキンソン病のような不可逆
性痴呆、ならびに外傷(外傷後脳症)、頭蓋内腫瘍(原発性若しくは転移性)、硬膜下血
腫、代謝および内分泌学的状態(甲状腺機能低下症および甲状腺機能亢進症、ウィルソン
病、尿毒症性脳症、透析脳症症候群、低酸素性および低酸素後痴呆、ならびに慢性の電解
質異常)、欠乏状態(ビタミンB12欠乏症およびペラグラ(ビタミンB6))、感染症
(AIDS、梅毒性髄膜脳炎、辺縁系脳炎、進行性多病巣性白質脳症、真菌感染症、結核
)、ならびにアルコール、アルミニウム、重金属(ヒ素、鉛、水銀、マンガン)若しくは
処方薬(抗コリン作動薬、鎮静剤、バルビツレートなど)への慢性曝露による可逆性痴呆
を包含する。
本明細書で使用されるところの「Aβ関連痴呆障害」という用語は、Aβペプチドの発
生若しくは存在を伴うか若しくはそれを特徴とする痴呆障害を指す。
本明細書で使用されるところの「認知の改善」という句は、認知技能若しくは機能の増
強若しくは増大を指す。同様に、「認知を改善すること」という句は、認知技能若しくは
機能の増強若しくは増大を指す。認知の改善は、例えば本発明の処置前の被験体での認知
に関する。好ましくは、認知の改善は、正常被験体のもの、または標準的若しくは期待さ
れるレベルに向く。
例えば「認知の迅速な改善」(若しくは「認知を迅速に改善すること」)という句で使
用されるところの「迅速な」という用語は、相対的若しくは比較的短い時間がかかること
、または比較的短い時間間隔内に発生すること;すなわちある効果(例えば改善)が臨床
での適切さに関して比較的急速に遂行、観察若しくは達成されることを意味している。
例示的一「認知の迅速な改善」は1日以内(すなわち24時間以内)に遂行、観察若し
くは達成される。「認知の迅速な改善」は、1日未満(すなわち24時間未満)で、例え
ば23、22、21、20、29、18、17、16、15、14、13、12、11、
10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1時間以内に遂行、観察若しくは達成さ
れうる。「認知の迅速な改善」は、あるいは、1日以上、しかし好ましくは1か月以内、
例えば31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、1
9、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4
、3若しくは2日以内に遂行、観察若しくは達成されうる。認知の迅速な改善を遂行、観
察若しくは達成するための例示的時間間隔は、数週以内、例えば3週以内、2週以内若し
くは1週以内、または例えば120時間、96時間、72時間、48時間、24時間、1
8時間、12時間および/若しくは6時間以内である。
例えば「認知の長期改善」という句で使用されるところの「長期」という用語は、適す
る対照より比較的若しくは相対的により長い時間間隔にわたって発生すること;すなわち
、所望の効果(例えば改善)が、臨床での適切さに関して延長された若しくは長期化され
た時間、中断を伴わず持続されることが発生するか若しくは観察されることを意味してい
る。
例示的一「認知の長期改善」は最低1週間遂行、観察若しくは達成される。「認知の長
期改善」は、1日以上(すなわち24時間以上)、例えば36時間、48時間(すなわち
2日)、72時間(すなわち3日)、96時間(すなわち4日)108時間(すなわち5
日)若しくは132時間(すなわち6日)以上、遂行、観察若しくは達成されうる。「認
知の長期改善」は、あるいは、1週間以上、例えば8、9、10、11、12、13若し
くは14日(すなわち2週間)、3週間、4週間、5週間、6週間若しくはそれ以上、遂
行、観察若しくは達成されうる。認知の長期改善が遂行、観察若しくは達成される例示的
時間間隔は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、
18、19若しくは20日を包含する。
本明細書で使用されるところの「調節」という用語は、応答の上方制御すなわち刺激お
よび下方制御すなわち抑制双方を指す。
本明細書で使用されるところの「処置」という用語は、疾患、疾患の症状若しくは疾患
に対する素因を治癒、回復、軽減、解放、変化、治療、緩和、改善若しくは影響する目的
を伴い、疾患、疾患の症状若しくは疾患に対する素因を有する患者への治療的試薬の適用
若しくは投与、または患者からの単離した組織若しくは細胞株への治療的試薬の適用若し
くは投与と定義する。
「有効用量」若しくは「有効投薬量」という用語は、所望の効果を達成若しくは少なく
とも部分的に達成するのに十分な量と定義する。「治療上有効な用量」という用語は、該
疾患に既に罹患している患者で該疾患およびその合併症を治癒若しくは少なくとも部分的
に抑止するのに十分な量と定義する。この使用に有効な量は、疾患の重症度、患者の全般
的な生理機能、例えば患者の体重、齢、性、投与経路、ならびに医師および/若しくは薬
理学者に公知の他の因子に依存することができる。有効用量は、例えば、抗体の総量(例
えばグラム、ミリグラム若しくはマイクログラムで)として、または体重に対する抗体の
量の比として(例えば、キログラムあたりグラム(g/kg)、キログラムあたりミリグ
ラム(mg/kg)若しくはキログラムあたりマイクログラム(μg/kg)として)表
しうる。本方法で使用される抗体の有効用量は、例えば1μg/kgと500mg/kg
の間の範囲にわたることができる。本発明の方法で使用される抗体の有効用量の例示的一
範囲は0.1mg/kgと100mg/kgの間である。例示的有効用量は、限定される
ものでないが10μg/kg、30μg/kg、100μg/kg、300μg/kg、
1mg/kg、30mg/kgおよび100mg/kgを挙げることができる。
本明細書で使用されるところの「投与すること」という用語は、製薬学的剤を被験体の
身体に導入する行動を指す。非経口経路での投与、例えば皮下、静脈内若しくは腹腔内投
与の例示的一経路。
「患者」という用語は、本発明の1種若しくはそれ以上の剤(例えば免疫治療薬)での
予防的若しくは治療的いずれかの処置を受領するヒトおよび他の哺乳動物被験体を包含す
る。例示的患者は、本発明の免疫治療薬での予防的若しくは治療的いずれかの処置を受領
する。
本明細書で使用されるところの「動物モデル」若しくは「モデル動物」という用語は、
疾患若しくは障害のある系、例えばヒトの系、疾患若しくは状態の特徴(feature
)若しくは特徴(characteristic)を表す、げっ歯類、ヒト以外の霊長類
、ヒツジ、イヌおよびウシのような哺乳動物種の1メンバーを包含する。げっ歯類の族か
ら選択される例示的なヒト以外の動物は、ウサギ、モルモット、ラットおよびマウス、最
も好ましくはマウスを包含する。痴呆障害の「動物モデル」若しくはそれを有する「モデ
ル動物」は、例えば痴呆関連障害(例えばAD)と関連する顕著な認知障害を表す。好ま
しくは、モデル動物は、増大する齢とともに認知障害の進行的悪化を表し、その結果、モ
デル動物における該疾患の進行は、痴呆障害に罹患している被験体における疾患の進行と
同等である。
「免疫学的試薬」という用語は、本明細書で定義されるところの1種若しくはそれ以上
の免疫グロブリン、抗体、抗体フラグメント若しくは抗体鎖、またはそれらの組合せを含
んでなるか若しくはそれらよりなる剤を指す。「免疫学的試薬」という用語は、免疫グロ
ブリン、抗体、抗体フラグメント若しくは抗体鎖をコードする核酸もまた包含する。こう
した核酸はDNA若しくはRNAであり得る。免疫グロブリンをコードする核酸は、典型
的には、適切な細胞若しくは組織中での該核酸の発現を可能にするプロモーターおよびエ
ンハンサーのような調節エレメントに連結される。
特定の1モノクローナルAβ抗体の名称を参照する(例えばそれにより先行される)場
合、「免疫学的試薬」という用語は、参照されるモノクローナル抗体の1種若しくはそれ
以上の特徴を有する免疫学的試薬を指す。Aβモノクローナル抗体の特徴は、例えば、A
βペプチドへの特異的結合、可溶性オリゴマーAβに対する優先的結合、被験体における
アミロイド形成障害と関連する斑負荷量を減少させるおよびADの動物モデルでの認知を
改善する能力を包含し得る。ある局面において、免疫学的試薬は、参照されるモノクロー
ナル抗体と保存された構造上の特徴、例えば保存された抗原結合ドメイン若しくは領域(
例えば参照されるモノクローナル抗体の1個若しくはそれ以上のCDR)を有する。例示
的免疫学的試薬は、モノクローナル抗体、前記抗体のヒト化バージョン、前記抗体のキメ
ラバージョン、前記抗体の一本鎖、前記抗体の二特異性バージョン、前記抗体のフラグメ
ント、バリアント(例えば親和性成熟させた抗体バリアントおよびFc抗体バリアント)
、またはそれらの組合せを包含する。特定の1モノクローナルAβ抗体の名称を参照する
(例えばそれにより先行される)場合、「免疫学的試薬」という用語は、いかなる抗体(
例えばヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、二特異性抗体)、抗体フラグメント、また
は参照される抗体由来の最低1ドメイン、領域若しくはフラグメントを含んでなる抗体鎖
、前記抗体のフラグメント若しくは前記抗体の鎖もまた包含する。
「免疫治療試薬」という用語は、治療的使用に適する免疫学的試薬を指す。
「免疫グロブリン」若しくは「抗体」(本明細書で互換性に使用される)という用語は
、抗原を特異的に結合する能力を有する、2本のHおよび2本のL鎖よりなる基本的4ポ
リペプチド鎖構造を有するタンパク質を指し、前記鎖は例えば鎖間ジスルフィド結合によ
り安定化される。「抗体」という用語はいかなる供給源(例えば、例示的態様において、
ヒトおよびヒト以外の霊長類、ならびに付加的な態様においてげっ歯類、ウサギ目、ヤギ
、ウシ、ウマ、ヒツジなど)から得られるいかなるIgクラス若しくはいかなるIgサブ
クラス(例えばIgGのIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4サブクラス)も包
含することを意図している。
本明細書で使用されるところの「Igクラス」若しくは「免疫グロブリンクラス」とい
う用語は、ヒトおよび高等哺乳動物で同定された免疫グロブリンの5クラス、すなわちI
gG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを指す。「Igサブクラス」という用語は、
ヒトおよび高等哺乳動物で同定されたIgMの2サブクラス(HおよびL)、IgAの3
サブクラス(IgA1、IgA2および分泌型IgA)、ならびにIgGの4サブクラス
(IgG、IgG、IgGおよびIgG)を指す。
「IgGサブクラス」という用語は、免疫グロブリンのγ H鎖(それぞれγ〜γ
)によりヒトおよび高等哺乳動物で同定された、免疫グロブリンクラスIgGの4サブク
ラスすなわちIgG、IgG、IgGおよびIgGを指す。
「一本鎖免疫グロブリン」若しくは「一本鎖抗体」(本明細書で互換性に使用される)
という用語は、抗原を特異的に結合する能力を有する、1本のHおよび1本のL鎖よりな
る2ポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指し、前記鎖は例えば鎖間ペプチドリンカ
ーにより安定化される。
「ドメイン」という用語は、例えばβ−プリーツシートおよび/若しくは鎖内ジスルフ
ィド結合により安定化されたペプチドループを含んでなる(例えば3ないし4個のペプチ
ドループを含んでなる)H若しくはL鎖ポリペプチドの球状領域を指す。ドメインは、「
定常」ドメインの場合には多様なクラスのメンバーのドメイン内の配列変動の相対的欠如
、若しくは「可変」ドメインの場合は多様なクラスのメンバーのドメイン内の有意の変動
に基づき「定常」若しくは「可変」と本明細書でさらに称される。抗体若しくはポリペプ
チド「ドメイン」は、しばしば、抗体若しくはポリペプチドの「領域」と当該技術分野で
互換性に称される。抗体L鎖の「定常」ドメインは、「L鎖定常領域」、「L鎖定常ドメ
イン」、「CL」領域若しくは「CL」ドメインと互換性に称される。抗体H鎖の「定常
」ドメインは、「H鎖定常領域」、「H鎖定常ドメイン」、「CH」領域若しくは「CH
」ドメインと互換性に称される)。抗体L鎖の「可変」ドメインは、「L鎖可変領域」、
「L鎖可変ドメイン」、「VL」領域若しくは「VL」ドメインと互換性に称される)。
抗体H鎖の「可変」ドメインは、「H鎖定常領域」、「H鎖定常ドメイン」、「VH」領
域若しくは「VH」ドメインと互換性に称される)。
「領域」という用語は、抗体鎖若しくは抗体ドメインの一部若しくは一部分(例えば本
明細書で定義されるところのH若しくはL鎖の一部若しくは一部分、または定常若しくは
可変ドメインの一部若しくは一部分)、ならびに前記鎖若しくはドメインのより離れた一
部若しくは一部分もまた指すことができる。例えば、LおよびH鎖若しくはLおよびH鎖
可変ドメインは、本明細書で定義されるところの「フレームワーク領域」すなわち「FR
」の間に散在された「相補性決定領域」すなわち「CDR」を包含する。
本明細書で使用されるところの「抗原結合部位」という用語は、抗原(例えば細胞表面
若しくは可溶性抗原)を特異的に結合する(それと免疫反応する)部位を指す。本発明の
抗体は、好ましくは最低2個の抗原結合部位を含んでなる。抗原結合部位は、一般に、免
疫グロブリンH鎖およびL鎖CDRを包含し、そしてこれらのCDRにより形成される結
合部位が該抗体の特異性を決定する。「抗原結合領域」若しくは「抗原結合ドメイン」は
、上で定義されたところの抗体結合部位を包含する領域若しくはドメイン(例えば抗体領
域若しくはドメインである。
免疫グロブリンすなわち抗体は単量体若しくは多量体の形態で存在し得る(例えば、五
量体の形態で存在するIgM抗体および/または単量体、二量体若しくは多量体の形態で
存在するIgA抗体)。「フラグメント」という用語は、無傷のすなわち完全な抗体若し
くは抗体鎖より少ないアミノ酸残基を含んでなる抗体若しくは抗体鎖の一部若しくは一部
分を指す。フラグメントは、無傷のすなわち完全な抗体若しくは抗体鎖の化学的若しくは
酵素的処理を介して得ることができる。フラグメントは組換え手段によってもまた得るこ
とができる。例示的フラグメントはFab、Fab’、F(ab’)2、Fabcおよび
/若しくはFvフラグメントを包含する。「抗原結合フラグメント」という用語は、抗原
を結合するすなわち抗原結合(すなわち特異的結合)について無傷の抗体と(すなわちそ
れらが由来した無傷の抗体と)競合する免疫グロブリンすなわち抗体のポリペプチドフラ
グメントを指す。結合フラグメントは、組換えDNA技術により、または無傷の免疫グロ
ブリンの酵素的若しくは化学的切断により製造される。結合フラグメントは、Fab、F
ab’、F(ab’)、Fabc、Fv、一本鎖および一本鎖抗体を包含する。「二特
異性」若しくは「二官能性」免疫グロブリンすなわち抗体以の免疫グロブリンすなわち抗
体は、同一のその抗原結合部位のそれぞれを有すると理解される。「二特異性」若しくは
「二官能性抗体」は、2種の異なるH/L鎖対および2個の異なる抗原結合部位を有する
人工的ハイブリッド抗体である。二特異性抗体は、ハイブリドーマの融合若しくはFab
’フラグメントの連結を包含する多様な方法により製造し得る。例えば、Songsiv
ilaiとLachmann、Clin.Exp.Immunol.79:315−32
1(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148、1547−155
3(1992)を参照されたい。
本明細書で使用されるところの「モノクローナル抗体」という用語は、構造および抗原
特異性が均一である、抗体産生細胞(例えばBリンパ球すなわちB細胞)の1クローン集
団由来の抗体を指す。「ポリクローナル抗体」という用語は、それらの構造およびエピト
ープ特異性が不均一であるがしかし共通抗原を認識する、抗体産生細胞の多様なクローン
集団に由来する複数の抗体を指す。モノクローナルおよびポリクローナル抗体は、体液内
に粗生成物として存在しうるか、若しくは本明細書に記述されるとおり精製しうる。
「ヒト化免疫グロブリン」若しくは「ヒト化抗体」という用語は、最低1本のヒト化免
疫グロブリンすなわち抗体鎖(すなわち、最低1本のヒト化L若しくはH鎖)を包含する
免疫グロブリンすなわち抗体を指す。「ヒト化免疫グロブリン鎖」若しくは「ヒト化抗体
鎖」(すなわち、「ヒト化免疫グロブリンL鎖」若しくは「ヒト化免疫グロブリンH鎖」
)という用語は、実質的にヒト免疫グロブリンすなわち抗体からの可変フレームワーク領
域および実質的にヒト以外の免疫グロブリンすなわち抗体からの相補性決定領域(CDR
)(例えば最低1個のCDR、好ましくは2個のCDR、より好ましくは3個のCDR)
を包含する可変領域を有し、かつ、定常領域(例えばL鎖の場合は最低1個の定常領域若
しくはその一部分、およびH鎖の場合は好ましくは3個の定常領域)をさらに包含する免
疫グロブリンすなわち抗体鎖(すなわちそれぞれ1本のL若しくはH鎖)を指す。「ヒト
化可変領域」(例えば「ヒト化L鎖可変領域」若しくは「ヒト化H鎖可変領域」)という
用語は、本質的にヒト免疫グロブリンすなわち抗体からの可変フレームワーク領域および
本質的にヒト以外の免疫グロブリンすなわち抗体からの相補性決定領域(CDR)を包含
する可変領域を指す。例えば、Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.
USA 86:10029−10033(1989)、米国特許第5,530,101号
、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号明
細書、Selickら、第WO 90/07861号、およびWinter、米国特許第
5,225,539号明細書(全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込
まれる)を参照されたい。
本発明の「ヒト化免疫グロブリン」若しくは「ヒト化抗体」は、本明細書に記述される
方法若しくは当該技術分野で公知であるもののいずれを使用しても作成し得る。
「実質的にヒト免疫グロブリンすなわち抗体から」若しくは「実質的にヒト」という句
は、ヒト免疫グロブリンすなわち抗体のアミノ酸配列と比較の目的上整列する場合に、該
領域が例えば保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖系列置換、戻し突然変異などを見
込んで、ヒトフレームワーク若しくは定常領域配列と最低80〜90%、90〜95%、
若しくは95〜99%の同一性(すなわち局所配列同一性)を共有することを意味してい
る。保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖系列置換、戻し突然変異などの導入はしば
しばヒト化抗体若しくは鎖の「至適化」と称される。「実質的にヒト以外の免疫グロブリ
ンすなわち抗体から」若しくは「実質的にヒト以外」という句は、ヒト以外の生物体、例
えばヒト以外の哺乳動物のものに最低80〜95%、好ましくは最低90〜95%、より
好ましくは96%、97%、98%若しくは99%同一の免疫グロブリンすなわち抗体配
列を有することを意味している。
従って、ヒト化免疫グロブリンすなわち抗体、若しくはヒト化免疫グロブリンすなわち
抗体鎖の全領域若しくは残基は、おそらくCDRを除き、1種若しくはそれ以上の天然の
ヒト免疫グロブリン配列の対応する領域若しくは残基に実質的に同一である。「対応する
領域」若しくは「対応する残基」という用語は、第一および第二の配列を比較の目的上至
適に整列する場合に、第一のアミノ酸若しくはヌクレオチド配列上の1領域若しくは残基
と同一の(すなわち同等の)位置を占有する第二のアミノ酸若しくはヌクレオチド配列上
の領域若しくは残基を指す。
アミノ酸の各ドメインへの割り当ては、Kabat、Sequences of Pr
oteins of Immunological Interest(国立保健研究所
(National Institutes of Health)、メリーランド州ベ
セスダ、1987および1991)の定義に従う。代替の構造の定義は、Chothia
ら、J.Mol.Biol.196:901(1987);Nature 342:87
8(1989);およびJ.Mol.Biol.186:651(1989)(下で「C
hothiaら」と集合的に称され、かつ、全部の目的上そっくりそのまま引用すること
により組み込まれる)により提案された。
「有意の同一性」という用語は、2ポリペプチド配列を、デフォルトのギャップ重み(
gap weight)を使用するプログラムGAP若しくはBESTFITによるよう
に至適に整列する場合に、最低50〜60%の配列同一性、好ましくは最低60〜70%
の配列同一性、より好ましくは最低70〜80%の配列同一性、より好ましくは最低80
〜90%の同一性、なおより好ましくは最低90〜95%の同一性、およびなおより好ま
しくは最低95%の配列同一性若しくはそれ以上(例えば99%の配列同一性若しくはそ
れ以上)を共有することを意味している。「実質的同一性」という用語は、2ポリペプチ
ド配列を、デフォルトのギャップ重みを使用するプログラムGAP若しくはBESTFI
Tによるように至適に整列する場合に、最低80〜90%の配列同一性、好ましくは最低
90〜95%の配列同一性、およびより好ましくは最低95%の配列同一性若しくはそれ
以上(例えば99%の配列同一性若しくはそれ以上)を共有することを意味している。配
列の比較のため、典型的には1配列がそれと試験配列を比較する参照配列として作用する
。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、
必要な場合は下位配列座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメータを
指定する。配列比較アルゴリズムがその後、指定されたプログラムパラメータに基づき、
参照配列に関しての試験配列(1種若しくは複数)の配列同一性パーセントを計算する。
比較のための配列の至適のアルゴリズムは、例えば、SmithとWaterman、
Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより
、NeedlemanとWunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970
)の相同性アライメントアルゴリズムにより、PearsonとLipman、Proc
.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索方
法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(Wisconsin Gene
ticsソフトウェアパッケージ、Genetics Computer Group、
575 Science Dr.、ウィスコンシン州マディソン中のGAP、BESTF
IT、FASTAおよびTFASTA)により、若しくは目視により実施し得る(全般と
して、Ausubelら、Current Protocols in Molecul
ar Biologyを参照されたい)。配列同一性および配列類似性パーセントを決定
するのに適するアルゴリズムの一例は、Altschulら、J.Mol.Biol.
15:403(1990)に記述されているBLASTアルゴリズムである。BLAST
解析を実行するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(Nati
onal Center for Biotechnology Informatio
n)(国立保健研究所(National Institutes of Health
)のNCBIインターネットサーバを通じて公的にアクセス可能)を通じて公的に入手可
能である。典型的には、デフォルトのプログラムパラメータを使用して配列比較を実施し
得るとは言え、カスタマイズしたパラメータもまた使用し得る。アミノ酸配列については
、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3の語長(wordlength)(W
)、10の期待値(expectation)(E)およびBLOSUM62スコアリン
グマトリックスを使用する(HenikoffとHenikoff、Proc.Natl
.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照されたい)。
好ましくは、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換により異なる。アミノ酸置換を
保存的若しくは非保存的と分類する目的上、アミノ酸を後に続くとおりグループ分けする
。すなわち、グループI(疎水性側鎖):leu、met、ala、val、leu、i
le;グループII(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;グループIII(酸
性側鎖):asp、glu;グループIV(塩基性側鎖):asn、gln、his、l
ys、arg;グループV(鎖の向きに影響する残基):gly、pro;およびグルー
プVI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換は同一分類中のアミノ鎖間
の置換を伴う。非保存的置換は、これらの分類の1つの1メンバーについて別のもののメ
ンバーと交換することを構成する。
好ましくは、ヒト化免疫グロブリンすなわち抗体は、対応するヒト化されていない抗体
の親和性の3、4若しくは5の係数内である親和性で抗原を結合する。例えば、ヒト化さ
れていない抗体が10−1の結合親和性を有する場合、ヒト化抗体は最低3×10
−1、4×10−1若しくは5×10−1の結合親和性を有することができる
。免疫グロブリンすなわち抗体鎖の結合特性を記述する場合、該鎖は「抗原(例えばAβ
)結合を指図する」その能力に基づき記述し得る。鎖は、それが特異的結合特性若しくは
結合親和性を無傷の免疫グロブリンすなわち抗体(若しくはそれらの抗原結合フラグメン
ト)に賦与する場合に「抗原結合を指図する」と言われる。突然変異(例えば戻し突然変
異)は、それが、前記鎖を含んでなる無傷の免疫グロブリンすなわち抗体(若しくはそれ
らの抗原結合フラグメント)の結合親和性に、前記突然変異を欠く同等の鎖を含んでなる
抗体(若しくはその抗原結合フラグメント)のものに比較して最低1桁だけ影響を及ぼす
(例えば低下させる)場合に、結合結合を指図するH若しくはL鎖の能力に実質的に影響
を及ぼすと言われる。突然変異は、それが前記鎖を含んでなる無傷の免疫グロブリンすな
わち抗体(若しくはそれらの抗原結合フラグメント)の結合親和性に、前記突然変異を欠
く同等の鎖を含んでなる該抗体(若しくはその抗原結合フラグメント)のものの2、3若
しくは4の係数のみ影響を及ぼす(例えば低下させる)場合に、「抗原結合を指図する鎖
の能力に実質的に影響を及ぼさ(例えば低下させ)ない」。
「キメラ免疫グロブリン」すなわち抗体という用語は、可変領域が第一の種に由来しか
つ定常領域が第二の種に由来する免疫グロブリンすなわち抗体を指す。キメラ免疫グロブ
リンすなわち抗体は、例えば、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから遺
伝子工学により構築し得る。「ヒト化免疫グロブリン」若しくは「ヒト化抗体」という用
語は、下で定義されるところのキメラ免疫グロブリンすなわち抗体を包含することを意図
していない。ヒト化免疫グロブリンすなわち抗体はそれらの構築がキメラである(すなわ
ちタンパク質の1以上の種からの領域を含んでなる)とは言え、それらは、本明細書で定
義されるところのキメラ免疫グロブリンすなわち抗体中で見出されない付加的な特徴(す
なわちドナーCDR残基およびアクセプターフレームワーク残基を含んでなる可変領域)
を包含する。
「コンホメーション」という用語は、タンパク質若しくはポリペプチド(例えば抗体、
抗体鎖、それらのドメイン若しくは領域)の三次構造を指す。例えば、「L(若しくはH
)鎖のコンホメーション」という句はL(若しくはH)鎖可変領域の三次構造を指し、ま
た、「抗体のコンホメーション」若しくは「抗体フラグメントのコンホメーション」とい
う句は抗体若しくはそのフラグメントの三次構造を指す。
抗体の「特異的結合」は、抗体が特定の1抗原若しくはエピトープに対する認識可能な
親和性を表し、かつ、一般的には有意の交差反応性を表さないことを意味している。例示
的態様において、抗体は交差反応性を表さない(例えば、Aβ以外のペプチド若しくはA
β上の離れたエピトープと交差反応しない)。「認識可能な」すなわち好ましい結合は、
最低10、10、10、10−1若しくは1010−1の親和性もつ結合を
包含する。10−1以上、好ましくは10−1以上の親和性がより好ましい。本
明細書に示されるものの中間の値もまた本発明の範囲内にあることを意図しており、そし
て、好ましい結合親和性は、親和性のある範囲、例えば10ないし1010−1、好
ましくは10ないし1010−1、より好ましくは10ないし1010−1とし
て示し得る。「有意の交差反応性を表さない」抗体は、望ましくない実体(例えば望まし
くないタンパク質性の実体)に認識可能に結合することができないものである。例えば、
Aβに特異的に結合する抗体はAβを認識可能に結合することができるが、しかし、Aβ
以外のタンパク質若しくはペプチド(例えば斑中に包含されるAβ以外のタンパク質若し
くはペプチド)と有意に反応することができない。特定の1エピトープに特異的な抗体は
、例えば同一タンパク質若しくはペプチド上の離れたエピトープと有意に交差反応するこ
とができない。特異的結合は、こうした結合を測定するためのいずれかの技術に認識され
た手段に従って測定し得る。好ましくは、特異的結合はスキャッチャード分析および/若
しくは競合結合アッセイに従って測定する。
本明細書で使用されるところの「親和性」という用語は、単一の抗原を結合する部位の
抗原決定基との結合の強さを指す。親和性は、抗体結合部位と抗原決定基の間の立体化学
的適合の近接度、それらの間の接触の面積の大きさ、荷電したおよび疎水性の基の分布な
どに依存する。抗体親和性は平衡透析若しくは速度論的BIACORETM法により測定
し得る。BIACORETM法は、表面プラスモン波が金属/液体界面で励起される場合
に発生する表面プラスモン共鳴(SPR)の現象に頼る。サンプルと接触していない表面
の側面に光を向け、そして光はそれから反射され、そしてSPRは角度および波長の特定
の組合せで反射光強度の低下を引き起こす。生体分子結合事象は表面層で屈折率の変化を
引き起こし、それがSPRシグナルの変化として検出される。
解離定数KDおよび会合定数KAは親和性の量的尺度である。平衡では、遊離抗原(A
g)および遊離抗体(Ab)は抗原−抗体複合体(Ag−Ab)と平衡状態にあり、そし
て速度定数kaおよびkdは個々の反応の速度を定量する。
平衡では、ka=[Ab][Ag]=kd[Ag−Ab]。解離定数KDは:KD=k
d/ka=[Ag][Ab]/[Ag−Ab]により与えられる。KDは濃度の単位、最
も典型的にはM、mM、μM、nM、pMなどを有する。KDとして表される抗体親和性
を比較する場合、Aβに対するより大きい親和性を有することはより小さい値により示さ
れる。会合定数KAは:KA=KA/KD=[Ag−Ab]/[Ag][Ab]により与
えられる。KAは濃度の逆数の単位、最も典型的にはM−1、mM−1、μM−1、nM
−1、pM−1などを有する。本明細書で使用されるところの「親和性(avidity
)」という用語は、可逆性複合体の形成後の抗原−抗体結合の強さを指す。
「Fc免疫グロブリンバリアント」若しくは「Fc抗体バリアント」という用語は、変
えられたFc領域を有する免疫グロブリンすなわち抗体(例えばヒト化免疫グロブリン、
キメラ免疫グロブリン、一本鎖抗体、抗体フラグメントなど)を包含する。例えば、免疫
グロブリンが変えられたエフェクター機能を有するようなFc領域が変えられることがで
きる。アミノ酸変化は、免疫グロブリンの、例えば免疫グロブリンのFc領域の1個若し
くはそれ以上のアミノ酸のアミノ酸置換、付加、欠失および/若しくは修飾を包含する。
いくつかの態様において、本発明の免疫グロブリンはFc領域の1個若しくはそれ以上の
突然変異を包含する。いくつかの態様において、Fc領域は、ヒンジ領域、例えばEU番
号付けの位置234、235、236および/若しくは237に1個若しくはそれ以上の
アミノ酸変化を包含する。アミノ酸位置234、235、236および/若しくは237
の1個若しくはそれ以上にヒンジ突然変異を包含する抗体は、例えば米国特許第5,62
4,821号および米国特許第5,648,260号明細書(引用することにより本明細
書に組み込まれる)に記述されるとおり作成し得る。
「エフェクター機能」という用語は、抗体(例えばIgG抗体)のFc領域に存する活
性を指し、そして、例えば、エフェクター細胞活性、溶解、補体媒介性の活性、抗体消失
および抗体半減期のような抗体の数種の免疫機能を制御し得る、補体および/若しくはF
c受容体のようなエフェクター分子を結合する該抗体の能力を包含する。
「エフェクター分子」という用語は、限定されるものでないが補体タンパク質若しくは
Fc受容体を挙げることができる、抗体(例えばIgG抗体)のFc領域に結合すること
が可能である分子を指す。
「エフェクター細胞」という用語は、限定されるものでないがリンパ球、例えば抗原提
示細胞およびT細胞を挙げることができるエフェクター細胞の表面上で発現されるFc受
容体を典型的に介して抗体(例えばIgG抗体)のFc部分に結合することが可能な細胞
を指す。
「Fc領域」という用語は、IgG抗体のC末端領域、とりわけ前記IgG抗体のH鎖
(1本若しくは複数)のC末端領域を指す。IgG H鎖のFc領域の境界はわずかに変
動し得るとは言え、Fc領域は、典型的にはヒトIgG H鎖(1本若しくは複数)のほ
ぼアミノ酸残基Cys226からカルボキシル末端までにわたると定義される。
「アグリコシル化」抗体という用語は、化学的若しくは酵素的過程、1個若しくはそれ
以上のグリコシル化部位の突然変異、細菌中での発現などによって1個若しくはそれ以上
の炭水化物を欠く抗体を指す。アグリコシル化抗体は、Fcの炭水化物が例えば化学的若
しくは酵素的に除去された抗体である脱グリコシル化抗体でありうる。あるいは、アグリ
コシル化抗体は、例えば、グリコシル化パターンをコードする1個若しくはそれ以上の残
基の突然変異、またはタンパク質に炭水化物を結合しない生物体、例えば細菌中での発現
によりFc炭水化物を伴わず発現された抗体である、非グリコシル化若しくは未グリコシ
ル化抗体でありうる。
別の方法で述べられない限り、「Kabatの番号付け」は、Kabatら(Sequ
ences of Proteins of Immunological Inter
est、第5版 国立保健研究所公衆衛生局(Publick Health Serv
ice、National Institutes of Health)、メリーラン
ド州ベセスダ(1991))(引用することによりに本明細書に明らかに組み込まれる)
に教示されるとおりである。別の方法で述べられない限り、「EU番号付け」もまた、K
abatら(Sequences of Proteins of Immunolog
ical Interest、第5版 国立保健研究所公衆衛生局(Publick H
ealth Service、National Institutes of Hea
lth)、メリーランド州ベセスダ(1991))に教示され、そして、例えば、本明細
書に記述されるところのEU指標(EU index)を使用するH鎖抗体配列中の残基
の番号付けを指す。この番号付け体系はEdelmanら、63(1):78−85(1
969)に記述されるEu抗体の配列に基づく。
「Fc受容体」若しくは「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を
指す。抗体(例えばIgG抗体)のFc領域に結合する典型的なFc受容体は、限定され
るものでないが、これらの受容体のアレルバリアントおよび選択的にスプライスされた形
態を包含する、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体を挙
げることができる。他のFc受容体は、抗体の半減期を調節する新生児Fc受容体(Fc
Rn)を包含する。Fc受容体は、RavetchとKinet、Annu.Rev.I
mmunol 9:457−92(1991);Capelら、Immunometho
ds 4:25−34(1994);およびde Haasら、J.Lab.Clin.
Med.126:330−41(1995)に総説されている。
「抗原」は、免疫グロブリンすなわち抗体(若しくはそれらの抗原結合フラグメント)
が特異的に結合する実体(例えばタンパク質性の実体若しくはペプチド)である。
「エピトープ」若しくは「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリンすなわち抗体(
若しくはそれらの抗原結合フラグメント)が特異的に結合する抗原上の1部位を指す。エ
ピトープは、連続するアミノ酸、若しくはタンパク質の三次フォールディングにより並置
される連続しないアミノ酸双方から形成され得る。連続するアミノ酸から形成されるエピ
トープは典型的に変性溶媒への曝露に際して保持される一方、三次フォールディングによ
り形成されるエピトープは変性溶媒での処理に際して典型的に喪失される。エピトープは
、典型的には独特な空間的コンホメーションに最低3、4、5、6、7、8、9、10、
11、12、13、14若しくは15アミノ酸を包含する。エピトープの空間的コンホメ
ーションの決定方法は、例えばx線結晶学および二次元核磁気共鳴を包含する。例えば、
Epitope Mapping Protocols in Methods in
Molecular Biology、Vol.66、G.E.Morris編(199
6)を参照されたい。
同一エピトープを認識する抗体は、標的抗原への別の抗体の結合を阻害する一抗体の能
力を示す単純なイムノアッセイ、すなわち競合結合アッセイで同定し得る。競合結合は、
Aβのような共通の抗原への参照抗体の特異的結合を試験中の免疫グロブリンが阻害する
アッセイで測定する。多数の型の競合結合アッセイ、例えば固相直接若しくは間接ラジオ
イムノアッセイ(RIA)、固相直接若しくは間接エンザイムイムノアッセイ(EIA)
、サンドイッチ競合アッセイ(Stahliら、Methods in Enzymol
ogy 9:242(1983)を参照されたい);固相直接ビオチン−アビジンEIA
(Kirklandら、J.Immunol.137:3614(1986)を参照され
たい):固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(HarlowとL
ane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold
Spring Harbor Press(1988)を参照されたい);I−125標
識を使用する固相直接標識RIA(Morelら、Mol.Immunol.25(1)
:7(1988)を参照されたい);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung
ら、Virology 176:546(1990));および直接標識RIA(Mol
denhauerら、Scand.J.Immunol.32:77(1990))が既
知である。典型的には、こうしたアッセイはこれらすなわち未標識の試験免疫グロブリン
および標識した参照免疫グロブリンのいずれかを担持する固体表面若しくは細胞に結合し
た精製抗原の使用を必要とする。競合阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固体表面若
しくは細胞に結合した標識の量を測定することにより測定する。通常、試験免疫グロブリ
ンは過剰で存在する。通常は、競合する抗体が過剰に存在する場合、それは共通の抗原へ
の参照抗体の特異的結合を最低50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70
%、70〜75%若しくはそれ以上阻害することができる。
エピトープは免疫学的細胞、例えばB細胞および/若しくはT細胞によってもまた認識
される。エピトープの細胞認識は、H−チミジン取り込み、サイトカイン分泌、抗体分
泌若しくは抗原依存性の死滅(細胞傷害性Tリンパ球アッセイ)により測定されるような
抗原依存性の増殖を測定するin vitroアッセイにより測定し得る。
本発明の抗体が結合する例示的エピトープすなわち抗原決定基は、ヒトアミロイド前駆
体タンパク質(APP)内に見出し得るが、しかし好ましくはAPPのAβペプチド内に
見出される。本明細書に記述されるところのAβ内の例示的エピトープすなわち抗原決定
基は、AβのN末端、中央領域若しくはC末端内に位置する。
「N末端エピトープ」は、AβペプチドのN末端内に位置する残基を含んでなるエピト
ープすなわち抗原決定基である。例示的N末端エピトープは、Aβのアミノ酸1−10若
しくは1−12内、好ましくはAβ42の残基1−3、1−4、1−5、1−6、1−7
、2−6、3−6若しくは3−7からの残基を包含する。他の例示的N末端エピトープは
Aβの残基1−3で開始しかつ7−11で終了する。付加的な例示的N末端エピトープは
、Aβの残基2−4、5、6、7若しくは8、Aβの残基3−5、6、7、8若しくは9
、またはAβ42の残基4−7、8、9若しくは10を包含する。
「中央エピトープ」は、Aβペプチドの中央(central)すなわち中央(mid
)部分内に位置する残基を含んでなるエピトープすなわち抗原決定基である。例示的中央
エピトープは、Aβのアミノ酸13−28、好ましくは16−21、16−22、16−
23、16−24、18−21、19−21、19−22、19−23若しくは19−2
4内の残基を包含する。
「C末端エピトープ」は、AβペプチドのC末端内(例えばAβのほぼアミノ酸30−
40若しくは30−42内)に位置する残基を含んでなるエピトープすなわち抗原決定基
である。付加的な例示的エピトープすなわち抗原決定基はAβの残基33−40若しくは
33−42を包含する。こうしたエピトープを「C末端エピトープ」と称し得る。
抗体が、Aβ3−7のような指定された残基内の1エピトープに結合すると言われる場
合、意味しているものは、該抗体が指定された残基(すなわちこの一例ではAβ3−7)
を含有するポリペプチドに特異的に結合することである。こうした抗体はAβ3−7内の
すべての残基と必ずしも接触しない。また、Aβ3−7内のすべての単一アミノ酸置換若
しくは欠失は、結合親和性に必ずしも有意に影響を及ぼさない。
「Aβ抗体」および「抗Aβ」という用語は、Aβタンパク質内の1個若しくはそれ以
上のエピトープすなわち抗原決定基に結合する抗体を指すのに本明細書で互換性に使用す
る。例示的Aβ抗体は、N末端Aβ抗体、中央Aβ抗体およびC末端Aβ抗体を包含する
。本明細書で使用されるところの「N末端Aβ抗体」という用語は、最低1個のN末端エ
ピトープすなわち抗原決定基を認識するAβ抗体を指す。本明細書で使用されるところの
「中央Aβ抗体」という用語は、最低1個の中央のエピトープすなわち抗原決定基を認識
するAβ抗体を指す。本明細書で使用されるところの「C末端Aβ抗体」という用語は、
最低1個のC末端エピトープすなわち抗原決定基を認識するAβ抗体を指す。
「免疫学的」若しくは「免疫」応答という用語は、被験体において抗原に向けられた体
液性(抗体媒介性)および/または細胞性(抗原特異的T細胞若しくはそれらの分泌生成
物により媒介される)の発生である。こうした応答は免疫原の投与により誘導される能動
的応答、または抗体若しくは予め刺激されたT細胞の投与により誘導される受動的応答で
あり得る。細胞性免疫応答は、クラスI若しくはクラスII MHC分子とともにのポリ
ペプチドエピトープの提示により導き出されて抗原特異的CD4 Tヘルパー細胞およ
び/若しくはCD8 細胞傷害性T細胞を活性化する。該応答は、単球、マクロファー
ジ、ナチュラルキラー(「NK」)細胞、好塩基球、樹状細胞、星状細胞、小膠細胞、抗
酸球若しくは自然免疫の他の成分の活性化もまた伴いうる。細胞媒介性の免疫学的応答の
存在は、増殖アッセイ(CD4 T細胞)若しくはCTL(細胞傷害性Tリンパ球)ア
ッセイにより測定し得る(Burke、REF;Tigges、REFを参照されたい)
。免疫原の保護すなわち治療効果への体液性および細胞性応答の相対的寄与は、免疫した
動物若しくは個体から抗体およびT細胞を別個に単離すること、ならびに保護若しくは治
療効果を第二の被験体で測定することにより識別し得る。
本明細書で使用されるところの「免疫療法」という用語は、免疫応答(例えば能動若し
くは受動免疫応答)を意図しておりかつ/若しくはそれを生じる、疾患若しくは障害の処
置、例えば治療的若しくは予防的処置を指す。
「免疫原剤」若しくは「免疫原」は、場合によってはアジュバントとともにの患者への
投与に際してそれ自身に対する免疫学的応答を誘導することが可能である。「免疫原組成
物」は免疫原剤を含んでなるものである。
「アジュバント」という用語は、抗原とともに投与される場合に該抗原に対する免疫応
答を増強するがしかし単独で投与される場合に該抗原に対する免疫応答を生成しない化合
物を指す。アジュバントは、リンパ球動員、Bおよび/若しくはT細胞の刺激ならびにマ
クロファージの刺激を包含するいくつかの機構により免疫応答を増強し得る。
本明細書で使用されるところの「キット」という用語は、サンプルの分析を容易にする
試薬および他の物質の組合せに関して使用する。いくつかの態様において、本発明のイム
ノアッセイキットは、適する抗原、検出可能な部分を含んでなる結合剤および検出試薬を
包含する。検出可能な部分により生じられるシグナルを増幅するための系もまたキットに
包含しても若しくはしなくてもよい。さらに、他の態様において、キットは、限定される
ものでないがサンプル収集のための装置、サンプル管、ホルダ、トレイ、ラック、皿、プ
レート、キット使用者への説明書、溶液若しくは他の化学的試薬、ならびに標準化、正規
化に使用すべきサンプル、および/または対照サンプルを包含する。
本発明の多様な方法論は、値、レベル、特徴(feature)、特徴(chract
eristic)、特性などを、「適切な対照」と本明細書で互換性に称される「適する
対照」と比較することを伴う段階を包含する。「適する対照」若しくは「適切な対照」は
、比較の目的上有用な当業者になじみのあるいかなる対照若しくは標準でもある。一態様
において、「適する対照」若しくは「適切な対照」は、本明細書に記述されるところの本
発明の方法論を実施する前に測定される値、レベル、特徴(feature)、特徴(c
haracteristic)、特性などである。別の態様において、「適する対照」若
しくは「適切な対照」は、被験体、例えば、対照若すなわち例えば正常な特質を表す正常
被験体で測定される値、レベル、特徴(feature)、特徴(chracteris
tic)、特性などである。なお別の態様において、「適する対照」若しくは「適切な対
照」は、予め定義された値、レベル、特徴(feature)、特徴(characte
ristic)、特性などである。
II.免疫学的および治療的試薬
本発明の免疫学的および治療的試薬は、本明細書で定義されるところの免疫原若しくは
抗体、またはそれらの機能的若しくは抗原結合フラグメントを含んでなるか若しくはそれ
らよりなる。基本的な抗体構造単位はサブユニットの四量体を含んでなることが既知であ
る。各四量体はポリペプチド鎖の2個の同一の対から構成され、各対は1本の「L」(約
25kDa)および1本の「H」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端
部分は、抗原認識を主として司る約100ないし110若しくはそれ以上のアミノ酸の可
変領域を包含する。各鎖のカルボキシ末端部分はエフェクター機能を主として司る定常領
域を定義する。
L鎖はκ若しくはλいずれかに分類され、そして長さ約230残基である。H鎖はγ、
μ、α、δ若しくはεに分類され、長さ約450〜600残基であり、そして抗体のアイ
ソタイプをそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEと規定する。Hおよび
L鎖双方はドメインにフォールディングされている。「ドメイン」という用語は、タンパ
ク質、例えば免疫グロブリンすなわち抗体の球状領域を指す。免疫グロブリンすなわち抗
体のドメインは、例えばβ−プリーツシートおよび1個の鎖間ジスルフィド結合により安
定化された3若しくは4個のペプチドループを包含する。無傷のL鎖は例えば2ドメイン
(VおよびC)を有し、また、無傷のH鎖は例えば4若しくは5ドメイン(V、C
1、C2およびC3)を有する。
LおよびH鎖内で、可変および定常領域は約12若しくはそれ以上のアミノ酸の「J」
領域により結合され、H鎖は約10より多いアミノ酸の「D」領域もまた包含する(全般
として、Fundamental Immunology(Paul,W.編、第2版
Raven Press、ニューヨーク(1989)、第7章(全部の目的上そっくりそ
のまま引用することにより組み込まれる)を参照されたい)。
各L/H鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。従って無傷の抗体は2個の結合部
位を有する。二官能性若しくは二特異性抗体でを除き、該2結合部位は同一である。該鎖
は全部、相補性決定領域すなわちCDRともまた呼ばれる3個の超可変領域により結合さ
れた、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同一の一般構造を表す。天然に存
在する鎖、若しくは組換えで製造される鎖はリーダー配列とともに発現され得、リーダー
配列は細胞のプロセシングの間に除去されて成熟鎖を生じる。成熟鎖はまた、例えば目的
の特定の鎖の分泌を高めるか若しくはプロセシングを変えるために、天然に存在しないリ
ーダー配列を有して組換えで産生もし得る。
各対の2本の成熟鎖のCDRはフレームワーク領域により整列されて、特定の1エピト
ープに結合することを可能にする。N末端からC末端まで、LおよびH鎖双方はドメイン
FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。「
FR4」は可変H鎖のD/J領域および可変L鎖のJ領域ともまた当該技術分野で称され
る。各ドメインへのアミノ酸の割り当てはKabatの定義に従う。
A.Aβ抗体
本発明の治療薬はAβに特異的に結合する抗体を包含する。好ましい抗体はモノクロー
ナル抗体である。いくつかの態様において、受動免疫療法での使用のための本発明の抗体
は、単量体の可溶性および/若しくはオリゴマーの可溶性Aβポリペプチド(例えば可溶
性Aβ二量体、三量体など)を包含する可溶性Aβペプチドを結合する。他の態様におい
て、該抗体は、単量体の可溶性ならびにオリゴマーの可溶性Aβポリペプチド(例えば可
溶性Aβ二量体、三量体など)を包含する可溶性Aβを捕捉し、かつ、Aβの蓄積を予防
しかつ/若しくはCNSからのAβの除去を促進することが可能である。とりわけ好まし
い一態様において、本発明の抗体は可溶性および不溶性双方のAβペプチド若しくはそれ
らのフラグメントに結合することが可能であり、ならびに、既存のアミロイド斑の大きさ
および密度もまた減少させつつ付加的なアミロイド斑の形成を予防することが可能である
。他の例示的態様において、Aβ関連の認知障害の適切な動物モデルで有効性を示す抗体
を、本発明の治療方法での使用のための試薬として選択する。
上の活性に加え、本発明の方法論での使用に選択される数種の抗体は凝集型Aβに結合
する。数種は可溶性Aβに結合する。数種かは凝集型および可溶性双方の形態に結合する
。数種の抗体は斑中のAβを結合する。数種の抗体は血液脳関門を横断し得る。数種の抗
体は被験体のアミロイド負荷量を低下させ得る。数種の抗体は被験体で神経炎性ジストロ
フィーを低下させ得る。数種の抗体はシナプス構造を維持し得る(例えばシナプトフィジ
ン)。数種の抗体は1種若しくはそれ以上の向神経活性の形態のAβを中和し得る。
本発明のある態様において、抗体は、斑中に沈着した凝集型すなわち不溶性Aβを結合
してアミロイド斑の大きさ若しくは密度を低下させることが可能である。斑消失が望まし
い場合は、無傷の定常領域、若しくはFc受容体と相互作用するのに少なくとも十分な定
常領域を有する抗体を選択し得る。例示的抗体は斑中のAβのFc媒介性の食作用の刺激
で有効なものである。ヒトアイソタイプIgG1は、食細胞上(例えば脳常在性マクロフ
ァージ若しくは小膠細胞上の)FcRI受容体に対するヒトアイソタイプの最高の親和性
を有するそれのため、本発明のヒト化抗体で使用し得る。ヒトIgG1はマウスIgG2
aの同等物であり、後者は従ってアルツハイマー病の動物(例えばマウス)モデルでin
vivo有効性を試験するのに適する。抗体の一方のアームがAβおよび他方がFc受
容体に対する特異性を有する二特異性Fabフラグメントもまた使用し得る。好ましい抗
体は、約10、10、10、10若しくは1010−1(これらの値の中間の
親和性を包含する)以上(若しくはそれらに等しい)結合親和性でAβに結合する。
本発明の抗体は、被験体のCNS若しくは脳中の可溶性Aβを結合かつ/若しくは消失
することが可能である抗体もまた包含する。例示的抗体は、例えば被験体の血流中の可溶
性Aβを捕捉することが可能である抗体もまた包含する。好ましい抗体は、例えば可溶性
Aβの消失および/若しくは捕捉を介して被験体における認知を迅速に改善することが可
能である。
モノクローナル抗体は、コンホメーション若しくは非コンホメーションエピトープであ
り得るAβ内の特定の1エピトープに結合する。抗体の予防的および治療的有効性は、実
施例に記述されるトランスジェニック動物モデル手順を使用して試験し得る。例示的モノ
クローナル抗体は、Aβの残基1−10(天然のAβの最初のN末端残基を1と呼称する
)内の1エピトープ、例えばAβの残基3−7内の1エピトープに結合する。他の例示的
モノクローナル抗体はAβの残基13−28内の1エピトープ、例えばAβの残基16−
24内の1エピトープに結合する。いくつかの方法において、多様なエピトープに対する
結合特異性を有する複数のモノクローナル抗体を使用し、例えば、Aβの残基3−7内の
1エピトープに特異的な抗体を、Aβの残基3−7の外側の1エピトープに特異的な抗体
(例えばAβの残基16−24内の1エピトープに特異的な抗体)と共投与し得る。こう
した抗体は連続して若しくは同時に投与し得る。Aβ以外のアミロイド成分に対する抗体
もまた使用(例えば投与若しくは共投与)し得る。
抗体のエピトープ特異性は、例えば、多様なメンバーがAβの異なる配列を表すファー
ジディスプレイライブラリーを形成することにより決定し得る。該ファージディスプレイ
ライブラリーをその後、試験中の抗体に特異的に結合するメンバーについて選択する。一
群の配列を単離する。典型的には、こうした一群は、共通の中核配列および多様なメンバ
ーでの隣接配列の変動する長さを含有する。抗体に対する特異的結合を示す最短の中核配
列が該抗体により結合されるエピトープを規定する。抗体は、エピトープ特異性が既に決
定された抗体との競合アッセイでもまたエピトープ特異性について試験し得る。
Aβの他領域に結合することなくAβの好ましい1セグメントに特異的に結合する抗体
は、他領域に結合するモノクローナル抗体若しくは無傷のAβに対するポリクローナル血
清に関して多数の利点を有する。第一に、等質量の投薬量について、好ましいセグメント
に特異的に結合する抗体の投薬量は、アミロイド斑の消失において有効な抗体のより高い
モル投薬量を含有する。第二に、好ましいセグメントに特異的に結合する抗体は、無傷の
APPポリペプチドに対する消失応答を誘導することなくアミロイド沈着物に対する消失
応答を誘導して、それにより潜在的副作用を低下させ得る。
1.ヒト以外の抗体の製造
本発明はヒト以外の抗体、例えば本発明の好ましいAβエピトープに対する特異性を有
する抗体を特徴とする。こうした抗体は、本発明の多様な治療的組成物の処方において使
用し得るか、または、好ましくはヒト化若しくはキメラ抗体(詳細に下述される)の製造
のための相補性決定領域を提供し得る。ヒト以外のモノクローナル抗体、例えばマウス、
モルモット、霊長類、ウサギ若しくはラットの製造は、例えばAβで動物を免疫すること
により達成し得る。Aβ若しくはAβの免疫原性フラグメントを含んでなるより長いポリ
ペプチド、またはAβに対する抗体に対する抗イディオタイプ抗体もまた使用し得る。H
arlowとLane、上記(全部の目的上引用することにより組み込まれる)を参照さ
れたい。こうした免疫原は天然の供給源から、ペプチド合成若しくは組換え発現により得
ることができる。場合によっては、免疫原は下述されるとおり担体タンパク質に融合若し
くは別の方法で複合体形成して投与し得る。場合によっては、免疫原はアジュバントとも
に投与し得る。「アジュバント」という用語は、抗原とともに投与される場合に該抗原に
対する免疫応答を増強するが、しかし単独で投与される場合に該抗原に対する免疫応答を
生成しない化合物を指す。アジュバントは、リンパ球動員、Bおよび/若しくはT細胞の
刺激、ならびにマクロファージの刺激を包含する数種の機構により免疫応答を増強し得る
。数種の型のアジュバントを下述されるとおり使用し得る。フロイントの完全アジュバン
ト、次いで不完全アジュバントが実験動物の免疫化に好ましい。
ポリクローナル抗体を作成するためにウサギ若しくはモルモットを典型的に使用する。
例えば受動的保護のためのポリクローナル抗体の例示的調製は後に続くとおり実施し得る
。125匹の非トランスジェニックマウスを100μgのAβ1−42およびCFA/I
FAアジュバントで免疫し、そして4〜5か月で安楽死させる。免疫したマウスから血液
を収集する。IgGを他の血液成分から分離する。免疫原に特異的な抗体をアフィニティ
ークロマトグラフィーにより部分的に精製してもよい。平均約0.5〜1mgの免疫原特
異的抗体がマウスあたりで得られ、合計60〜120mgを生じる。
モノクローナル抗体を作成するのに典型的にマウスを使用する。モノクローナル抗体は
、Aβのフラグメント若しくはより長い形態をマウスに注入すること、ハイブリドーマを
調製すること、およびAβに特異的に結合する抗体についてハイブリドーマをスクリーニ
ングすることにより、あるフラグメントに対し製造し得る。場合によっては、抗体はAβ
の他の重ならないフラグメントへの結合を伴わないAβの特定の1領域若しくは所望のフ
ラグメントへの結合についてスクリーニングする。後者のスクリーニングは、Aβペプチ
ドの欠失変異体の集合物への抗体の結合を測定すること、およびどの欠失変異体が該抗体
に結合するかを決定することにより達成し得る。結合は例えばウエスタンブロット若しく
はELISAにより評価し得る。抗体への特異的結合を示す最小フラグメントが該抗体の
エピトープを規定する。あるいは、エピトープ特異性は、試験および参照抗体がAβへの
結合について競合する競合アッセイにより決定し得る。試験および参照抗体が競合する場
合には、それらは、同一のエピトープ、若しくは一方の抗体の結合が他方の結合を妨害す
るような十分に近位のエピトープに結合する。こうした抗体の好ましいアイソタイプはマ
ウスアイソタイプIgG2a若しくは他の種の同等のアイソタイプである。マウスアイソ
タイプIgG2aはヒトアイソタイプIgG1(例えばヒトIgG1)の同等物である。
2.キメラおよびヒト化抗体
本発明は、βアミロイドペプチドに特異的なキメラおよび/若しくはヒト化抗体(例え
ばキメラおよび/若しくはヒト化免疫グロブリン)もまた特徴とする。キメラおよび/若
しくはヒト化抗体は、キメラ若しくはヒト化抗体の構築のための出発原料を提供するマウ
ス若しくは他のヒト以外の抗体と同一若しくは類似の結合特異性および親和性を有する。
a.キメラ抗体の製造
「キメラ抗体」という用語は、そのLおよびH鎖遺伝子が典型的には遺伝子工学により
、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから構築された抗体を指す。例えば
、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変(V)セグメントを、IgG1およびI
gG4のようなヒト定常(C)セグメントに結合しうる。ヒトアイソタイプIgG1およ
びIgG4が例示的である。典型的なキメラ抗体は、従って、マウス抗体からのVすなわ
ち抗原結合ドメインおよびヒト抗体からのCすなわちエフェクタードメインよりなるハイ
ブリッドタンパク質である。
b.ヒト化抗体の製造
「ヒト化抗体」という用語は、実質的にヒト抗体鎖(アクセプター免疫グロブリンすな
わち抗体と称される)からの可変領域フレームワーク残基、および実質的にマウス抗体(
ドナー免疫グロブリンすなわち抗体と称される)からの最低1個の相補性決定領域を含ん
でなる最低1本の鎖を含んでなる抗体を指す。Queenら、Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)、米国特許第5,5
30,101号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,69
3,762号、Selickら、第WO 90/07861号、およびWinter、米
国特許第5,225,539号明細書(全部の目的上そっくりそのまま引用することによ
り組み込まれる)を参照されたい。定常領域(1個若しくは複数)もまた、存在する場合
、実質的に若しくは完全にヒト免疫グロブリンからである。
マウスCDRのヒト可変ドメインフレームワークへの置換は、該CDRが発したマウス
可変フレームワークに同一若しくは類似のコンホメーションを該ヒト可変ドメインフレー
ムワークが採用する場合に、それらの正しい空間的向きの保持をもたらすことが最もあり
そうである。これは、CDRが由来したマウス可変フレームワークドメインと高程度の配
列同一性をそのフレームワーク配列が表すヒト抗体からのヒト可変ドメインを得ることに
より達成される。HおよびL鎖可変フレームワーク領域は同一若しくは異なるヒト抗体配
列由来であり得る。ヒト抗体配列は天然に存在するヒト抗体の配列であり得るか、若しく
は数種のヒト抗体のコンセンサス配列であり得る。Kettleboroughら、Pr
otein Engineering 4:773(1991);Kolbingerら
Protein Engineering 6:971(1993)およびCarte
rら、第WO 92/22653号明細書を参照されたい。
マウスドナー免疫グロブリンの相補性決定領域および適切なヒトアクセプター免疫グロ
ブリンを同定したら、次の段階は、生じるヒト化抗体の特性を至適化するのにこれらの成
分からのどの残基(あれば)を置換すべきであるかを決定することである。一般に、マウ
スでのヒトアミノ酸残基の置換は最低限にすべきである。マウス残基の導入は、ヒトにお
いてヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を導き出す抗体の危険を増大させるためである。
技術に認識された免疫応答測定方法を実施して、特定の患者での若しくは臨床試験の間の
HAMA応答をモニターし得る。ヒト化抗体を投与した患者に、前記治療の投与の開始時
およびその間、免疫原性評価を与え得る。HAMA応答は、例えば、表面プラスモン共鳴
技術(BIACORE)および/若しくは固相ELISA分析を包含する当業者に既知の
方法を使用して、患者からの血清サンプル中の該ヒト化治療試薬に対する抗体を検出する
ことにより評価する。
ヒト可変領域フレームワーク残基からのある種のアミノ酸を、CDRのコンホメーショ
ンおよび/若しくは抗原への結合に対するそれらの可能な影響に基づき、置換のため選択
する。マウスCDR領域のヒト可変領域フレームワーク領域との非天然の並置は非天然の
コンホメーションの拘束をもたらし得、それはあるアミノ酸残基の置換により補正されな
い限り、結合親和性の喪失につながる。
置換のためのアミノ酸残基の選択は部分的にコンピュータモデル化により決定する。免
疫グロブリン分子の三次元像を生じるためのコンピュータのハードウェアおよびソフトウ
ェアが本明細書に記述される。一般に、分子モデルは、免疫グロブリン鎖若しくはそれら
のドメインの解明された構造から出発して製造する。モデル化されるべき鎖を、解明され
た三次元構造の鎖若しくはドメインとアミノ酸配列の類似性について比較し、そして最大
の配列類似性を示す鎖若しくはドメインを該分子モデルの構築のための出発点として選択
する。最低50%の配列同一性を共有する鎖若しくはドメインをモデル化に選択し、そし
て、好ましくは最低60%、70%、80%、90%の配列同一性若しくはそれ以上を共
有するものをモデル化に選択する。モデル化されている免疫グロブリン鎖若しくはドメイ
ン中の実際のアミノ酸と出発構造中のものの間の差違を見込むように、解明された出発構
造を改変する。改変した構造をその後混成免疫グロブリンに集成する。最後に、エネルギ
ー最小化、ならびに相互からの適切な距離内に全原子があることならびに結合長さおよび
角が化学的に許容できる限界内にあることを確認することにより、該モデルを改良する。
置換のためのアミノ酸残基の選択は、部分的に、特定の位置のアミノ酸の特徴の検査、
または特定のアミノ酸の置換若しくは突然変異誘発の影響の経験的観察によってもまた決
定し得る。例えば、アミノ酸がマウス可変領域フレームワーク残基と選択したヒト可変領
域フレームワーク残基の間で異なる場合、該ヒトフレームワークアミノ酸は、該アミノ酸
が:
(1)抗原を直接非共有結合するか、
(2)CDR領域に隣接するか、
(3)CDR領域と別の方法で相互作用する(例えばコンピュータモデル化により決定さ
れるところのCDR領域の約3〜6Å以内である)か、若しくは
(4)VL−VH界面に参画する
ことが合理的に期待される場合に、マウス抗体からの同等のフレームワークアミノ酸によ
り、通常は置換すべきである。
「抗原を直接非共有結合する」残基は、確立された化学力により、例えば水素結合、フ
ァンデルワールス力、疎水性相互作用などにより抗原上のアミノ酸と直接相互作用する十
分な確率を有するフレームワーク領域中の位置のアミノ酸を包含する。
CDRおよびフレームワーク領域はKabatら若しくはChothiaら、上記によ
り定義されるとおりである。Kabatら、上記により定義されるところのフレームワー
ク領域がChothiaら、上記により定義されるところの構造ループ残基を構成する場
合、マウス抗体に存在するアミノ酸をヒト化抗体中での置換に選択しうる。「CDR領域
に隣接」する残基は、例えば、Kabatにより定義されるところのCDR若しくはCh
othia(例えばChothiaとLesk JMB 196:901(1987)を
参照されたい)により定義されるところのCDRにすぐ隣接する位置のヒト化免疫グロブ
リン鎖の一次配列中のCDRの1個若しくはそれ以上にすぐ隣接する位置のアミノ酸残基
を包含する。これらのアミノ酸は、とりわけ、CDR中のアミノ酸と相互作用し、かつ、
アクセプターから選ばれる場合はドナーCDRを歪ませかつ親和性を低下させることがあ
りそうである。さらに、該隣接アミノ酸は抗原と直接相互作用することができ(Amit
ら、Science、233:747(1986)(引用することにより本明細書に組み
込まれる))、そして、ドナーからこれらのアミノ酸を選択することは、元の抗体中で親
和性を提供する全部の抗原接触を保つのに望ましいことができる。
「CDR領域と別の方法で相互作用する」残基は、CDR領域に影響を及ぼすのに十分
な空間的向きにあることが二次構造分析により決定されるものを包含する。一態様におい
て、「CDR領域と別の方法で相互作用する」残基は、ドナー免疫グロブリンの三次元モ
デル(例えばコンピュータ生成モデル)を解析することにより同定する。典型的には元の
ドナー抗体の三次元モデルは、CDRの外側のあるアミノ酸がCDRに近接し、そして水
素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などによりCDR中のアミノ酸と相互作
用する十分な確率を有することを示す。それらのアミノ酸位置ではアクセプター免疫グロ
ブリンアミノ酸よりむしろドナー免疫グロブリンアミノ酸を選択しうる。この基準による
アミノ酸は、一般に、CDR中の何らかの原子の約3オングストローム単位(Å)以内に
側鎖原子を有することができ、そして、上に列挙されたもののような確立した化学力によ
りCDR原子と相互作用し得る原子を含有しなければならない。
水素結合を形成しうる原子の場合には、3Åがそれらの核間で測定されるが、しかし、
結合を形成しない原子については、3Åはそれらのファンデルワールス表面間で測定され
る。これ故に、後者の場合、核は相互作用することが可能と考えられる原子について約6
Å(3Å+ファンデルワールス半径の総和)以内になければならない。多くの場合、核は
4若しくは5から6Åまで離れていることができる。あるアミノ酸がCDRと相互作用し
得るかどうかの決定において、H鎖CDR2の最後の8アミノ酸をCDRの一部とみなさ
ないことが好ましい。構造の見地からはこれら8アミノ酸はフレームワークの一部として
より多く挙動するためである。
CDR中のアミノ酸と相互作用することが可能であるアミノ酸をなお別の方法で同定し
うる。各フレームワークアミノ酸の溶媒到達可能な表面積は2方法、すなわち(1)無傷
の抗体、および(2)そのCDRを除去した抗体よりなる仮想分子で計算する。約10平
方オングストローム若しくはそれ以上のこれらの数の間の差違は、フレームワークアミノ
酸の溶媒への到達がCDRにより少なくとも部分的に阻害されること、および従って該ア
ミノ酸はCDRと接触していることを示す。アミノ酸の溶媒到達可能な表面積は、当該技
術分野で既知のアルゴリズム(例えばConnolly、J.Apply.Cryst.
16:548(1983)およびLeeとRichards、J.Mol.Biol.5
5:379(1971)(それらの双方は引用することにより本明細書に組み込まれる)
)を使用して、抗体の三次元モデルに基づき計算しうる。フレームワークアミノ酸は、と
きに、別のフレームワークアミノ酸(CDRに順に接触する)のコンホメ―ションに影響
を及ぼすことにより、CDRと間接的にもまた相互作用しうる。
フレームワーク中の数個の位置のアミノ酸は、多くの抗体でCDRコンホメーションを
決定するのに重要(例えばCDRと相互作用することが可能)であることが既知である(
ChothiaとLesk、上記、Chothiaら、上記およびTramontano
ら、J.Mol.Biol.215:175(1990)(それらの全部は引用すること
により本明細書に組み込まれる))。これらの著者らは、数種の既知の抗体の構造の分析
によりCDRコンホメーションに重要な保存されたフレームワーク残基を同定した。分析
した抗体は、CDRのコンホメーションに基づき、制限された数の構造若しくは「正準」
分類に属した。正準分類のメンバー内の保存されたフレームワーク残基は「正準」残基と
称される。正準残基は、L鎖の残基2、25、29、30、33、48、64、71、9
0、94および95、ならびにH鎖の残基24、26、29、34、54、55、71お
よび94を包含する。付加的な残基(例えばCDR構造決定残基)は、MartinとT
horton(1996)J.Mol.Biol.263:800の方法論に従って同定
し得る。注目すべきことに、L鎖の位置2、48、64および71ならびにH鎖の26−
30、71および94のアミノ酸(Kabatによる番号付け)は、多くの抗体中でCD
Rと相互作用することが可能であることが既知である。L鎖の位置35ならびにH鎖の9
3および103のアミノ酸もまたCDRと相互作用することがありそうである。CDRの
コンホメーションを遂げうる付加的な残基は、FooteとWinter(1992)
.Mol.Biol.224:487の方法論に従って同定し得る。こうした残基は「バ
ーニア」残基と命名され、そしてCDRのすぐ下の(すなわちその下の「基盤」を形成す
る)フレームワーク領域中の残基である。全部のこれらの番号付けられた位置で、ヒト化
免疫グロブリン中にあるべきアクセプターアミノ酸よりむしろドナーアミノ酸(それらが
異なる場合)の選択が好ましい。他方、L鎖の最初の5アミノ酸のようなCDR領域と相
互作用することが可能なある残基を、ときに、ヒト化免疫グロブリンでの親和性の喪失を
伴わずにアクセプター免疫グロブリンから選ぶことができる。
「VL−VH界面に参画する」残基若しくは「充填残基」は、例えばNovotnyと
Haber、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:4592−66(
1985)若しくはChothiaら、上記により定義されるところのVLとVHの間の
界面の残基を包含する。一般に、まれな充填残基は、それらがヒトフレームワーク中のも
のと異なる場合はヒト化抗体中で保持されなければならない。
一般に、上の基準を満足するアミノ酸の1個若しくはそれ以上を置換し得る。いくつか
の態様において、上の基準を満足するアミノ酸の全部若しくは大部分を置換する。ときに
、特定の1アミノ酸が上の基準を満足するかどうかについて若干のあいまいさが存在し、
そして、代替のバリアント免疫グロブリンが製造され、その一方はその特定の置換を有し
、その他方は有しない。そのように製造された代替のバリアント免疫グロブリンを、本明
細書に記述されるアッセイのいずれかで所望の活性について試験し得、そして好ましい免
疫グロブリンを選択し得る。
通常、ヒト化抗体中のCDR領域は、ドナー抗体の対応するCDR領域に実質的に同一
、そしてより通常は同一である。しかしながら、ある態様において、抗体の抗原結合特異
性を改変しかつ/若しくは該抗体の免疫原性を低下させるように、1個若しくはそれ以上
のCDR領域を改変することが望ましいことができる。典型的には、理想化された結合定
数が達成されるような、より好都合な結合オン速度(on−rate of bindi
ng)、より好都合な結合オフ速度(off−rate of binding)、若し
くは双方を達成するように結合を改変するようにCDRの1個若しくはそれ以上の残基を
変える。この戦略を使用して、例えば1010−1若しくはそれ以上の超高結合親和性
を有する抗体を達成し得る。簡潔には、ドナーCDR配列は基礎配列と称され、それから
1個若しくはそれ以上の残基をその後変える。本明細書に記述されるところの親和性成熟
技術を使用してCDR領域(1個若しくは複数)を変えることができ、次いで生じる結合
分子を結合の所望の変化についてスクリーニングし得る。該方法は、潜在的なヒト抗マウ
ス抗体(HAMA)応答が最小化若しくは回避されるようなより少なく免疫原性であるよ
うにドナーCDR、典型的にはマウスCDRを変えるのにもまた使用しうる。従って、C
DR(1個若しくは複数)が変えられる際に、最良の組合せられた結合および低免疫原性
について至適化された抗体が達成されるような、結合親和性ならびに免疫原性の変化をモ
ニターかつ評価し得る(例えば、米国特許第6,656,467号および米国特許公開第
US20020164326A1号明細書を参照されたい)。
別のアプローチにおいて、抗体のCDR領域を分析して、ドナーCDRのそれぞれをヒ
ト対照物で系統的に置換することにより、各個々のCDRの抗体結合および/若しくは免
疫原性への寄与を決定する。ヒト化抗体の得られた一団をその後、各CDRの抗原親和性
および潜在的免疫原性について評価する。こうして、候補の結合分子の2種の臨床上重要
な特性すなわち抗原結合および低免疫原性を測定する。対応するマウス若しくはCDRグ
ラフト(ヒト化)形態の抗体に対する患者血清が入手可能である場合には、系統的ヒトC
DR交換を表す抗体の一団全体をスクリーニングして、各ドナーCDRに対する患者の抗
イディオタイプ応答を決定し得る(技術的詳細については、例えばIwashiら、Mo
l.Immunol.36:1079−91(1999)を参照されたい。こうしたアプ
ローチは、必須でないドナーCDRから必須のドナーCDR領域を同定することを見込む
。必須でないドナーCDR領域をその後ヒト対照物CDRと交換しうる。機能の許容でき
ない喪失を伴わずに必須のCDR領域を交換し得ない場合は、CDRの特異性決定残基(
SDR)の同定を、例えば部位特異的突然変異誘発により実施する。こうして、CDRを
その後、SDRのみ保持しかつCDR全体の残存するアミノ酸位置でヒトおよび/若しく
は最小限に免疫原性であるように再工作し得る。ドナーCDRの一部分のみがグラフトさ
れるこうしたアプローチはまた簡略化CDRグラフトとも称される(前述の技術に関する
技術的詳細については、例えばTamuraら、J.of Immunology 16
4(3):1432−41.(2000);Gonzalesら、Mol.Immuno
40:337−349(2003);Kashmiriら、Crit.Rev.On
col.Hematol.38:3−16(2001);およびDe Pascalis
ら、J.of Immunology 169(6):3076−84.(2002)を
参照されたい。
さらに、生じるヒト化免疫グロブリンの結合親和性に認識可能に影響を及ぼすことなく
CDR残基の1個若しくはそれ以上の保存的アミノ酸置換を行うことがときに可能である
。保存的置換により、gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;as
n、gln;ser、thr;lys、arg;およびphe、tyrのような組合せを
意図している。
置換の付加的な候補は、その位置でヒト免疫グロブリンに「まれ」であるアクセプター
ヒトフレームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸は、マウスドナー抗体の同等の位
置、若しくはより典型的なヒト免疫グロブリンの同等の位置からのアミノ酸で置換し得る
。例えば、アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域中のアミノ酸がその位
置にまれでありかつドナー免疫グロブリン中の対応するアミノ酸がヒト免疫グロブリン配
列中のその位置に普遍的である場合;または、アクセプター免疫グロブリン中のアミノ酸
がその位置にまれでありかつドナー免疫グロブリン中の対応するアミノ酸もまた他のヒト
配列に関してまれである場合は、置換が望ましいことがある。残基がアクセプターヒトフ
レームワーク配列にまれであるかどうかは、戻し突然変異のための残基をCDRコンホメ
ーションへの寄与に基づき選択する場合にもまた考慮すべきである。例えば、戻し突然変
異がアクセプターヒトフレームワーク配列にまれである残基の置換をもたらす場合、ヒト
化抗体を活性についてを伴いおよび伴わず試験しうる。戻し突然変異が活性に必要でない
場合は、免疫原性の懸念を低下させるためにそれを除外しうる。例えば、以下の残基での
戻し突然変異は、アクセプターヒトフレームワーク配列中でまれである残基を導入しうる
;vl=V2(2.0%)、L3(0.4%)、T7(1.8%)、Q18(0.2%)
、L83(1.2%)、I85(2.9%)、A100(0.3%)およびL106(1
.1%);ならびにvh=T3(2.0%)、K5(1.8%)、I11(0.2%)、
S23(1.5%)、F24(1.5%)、S41(2.3%)、K71(2.4%)、
R75(1.4%)、I82(1.4%)、D83(2.2%)およびL109(0.8
%)。これらの基準は、ヒトフレームワーク中の異常なアミノ酸が抗体構造を破壊しない
ことを確実にするのに役立つ。さらに、まれなヒトアクセプターアミノ酸をヒト抗体にた
またま典型的であるドナー抗体からのアミノ酸で置換することにより、ヒト化抗体をより
少なく免疫原性にしうる。
本明細書で使用されるところの「まれな」という用語は、配列の代表的なサンプル中の
配列の約20%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、なおより好
ましくは約3%未満、なおより好ましくは約2%未満、およびなおより好ましくは約1%
未満でその位置に存在するアミノ酸を示し、また、本明細書で使用されるところの「普遍
的な」という用語は、代表的サンプル中の配列の約25%以上、しかし通常は約50%以
上に存在するアミノ酸を示す。例えば、ヒトアクセプター配列中のあるアミノ酸が「まれ
」であるか若しくは「普遍的」であるかを決定する場合、ヒト可変領域配列のみを、また
、あるマウスアミノ酸が「まれ」であるか若しくは「普遍的」であるかを決定する場合は
マウス可変領域配列のみを考えることがしばしば好ましいことができる。さらに、全部の
ヒトLおよびH鎖可変領域配列はそれぞれ、相互にとりわけ相同でありかつある決定的な
位置で同一アミノ酸を有する、配列の「サブグループ」にグループ分けされる(Kaba
tら、上記)。ヒトアクセプター配列中のあるアミノ酸がヒト配列のなかで「まれ」であ
るか若しくは「普遍的」であるかを決定する場合、同一サブグループ中のそれらのヒト配
列のみをアクセプター配列とみなすことがしばしば好ましいことができる。
置換の付加的な候補は、Chothiaら、上記により提案された代替の定義のもとで
CDR領域の一部と同定されるとみられるアクセプターヒトフレームワークアミノ酸であ
る。置換の付加的な候補は、AbMおよび/若しくは接触の定義のもとでCDR領域の一
部と同定されるとみられるアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。
置換の付加的な候補は、まれなドナーフレームワーク残基に対応するアクセプターフレ
ームワーク残基である。まれなドナーフレームワーク残基は、その位置でマウス抗体に(
本明細書で定義されるところの)まれであるものである。マウス抗体について、サブグル
ープをKabatに従って決定し得、そしてコンセンサスと異なる残基位置を同定し得る
。これらのドナー特異的な差違は、活性を高めるマウス配列中の体細胞突然変異を指摘し
うる。結合に影響を及ぼすことが予測されるまれな残基(例えば充填正準および/若しく
はバーニア残基)は保持される一方、結合に重要でないことが予測される残基は置換し得
る。
置換の付加的な候補は、アクセプターフレームワーク領域に存在する非生殖系列残基で
ある。例えば、アクセプター抗体鎖(すなわちドナー抗体鎖と有意の配列同一性を共有す
るヒト抗体鎖)を生殖系列抗体鎖(同様にドナー鎖と有意の配列同一性を共有する)と整
列する場合、アクセプター鎖のフレームワークと生殖系列鎖のフレームワークの間で一致
しない残基を、生殖系列配列からの対応する残基で置換し得る。
例示的態様において、本発明のヒト化抗体(例えば下の下位節c〜gを参照されたい)
は、(i)マウスVL CDRおよびヒトアクセプターフレームワーク(該フレームワー
クは最低1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくはそれ以上の残基を戻し突然変異(
すなわち対応するマウス残基で置換)されており、該戻し突然変異(1個若しくは複数)
は正準、充填および/若しくはバーニア残基でである)を含んでなる可変領域を含んでな
るL鎖、ならびに(ii)マウスVH CDRおよびヒトアクセプターフレームワーク(
該フレームワークは最低1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくはそれ以上の残基を
戻し突然変異されており、該戻し突然変異(1個若しくは複数)は正準、充填および/若
しくはバーニア残基でである)を含んでなるH鎖を含有する。ある態様において、戻し突
然変異は充填および/若しくは正準残基でのみであるか、または主として正準および/若
しくは充填残基でである(例えば、ドナーとアクセプター配列間で異なるバーニア残基の
1のみ若しくは2個のバーニア残基が戻し突然変異されている)。
他の態様において、ヒト化抗体は、ドナー抗体(若しくはそのキメラバージョン)の結
合親和性に匹敵する結合親和性を保持しつつ可能な最少数の戻し突然変異を包含する。こ
うしたバージョンに到着するため、戻し突然変異の多様な組合せを除外し得、そして生じ
る抗体を有効性(例えば結合親和性)について試験し得る。例えば、バーニア残基での戻
し突然変異(例えば1、2、3若しくは4個の戻し突然変異)を除外し得るか、または、
バーニアおよび充填、バーニアおよび正準、若しくは充填および正準残基の組合せでの戻
し突然変異を除外し得る。
上で論考された特定のアミノ酸置換以外に、ヒト化免疫グロブリンのフレームワーク領
域は、それらが由来したヒト抗体のフレームワーク領域に通常は実質的に同一、およびよ
り通常は同一である。もちろん、フレームワーク領域中のアミノ酸の多くは、抗体の特異
性若しくは親和性に対する直接の寄与をほとんど若しくはまったくなさない。従って、フ
レームワーク残基の多くの個別の保存的置換は、生じるヒト化免疫グロブリンの特異性若
しくは親和性の認識可能な変化を伴わずに耐えら得る。従って、一態様において、ヒト化
免疫グロブリンの可変フレームワーク領域は、ヒト可変フレームワーク領域配列若しくは
こうした配列のコンセンサスに対する最低85%の配列同一性を共有する。別の態様にお
いて、ヒト化免疫グロブリンの可変フレームワーク領域は、ヒト可変フレームワーク領域
配列若しくはこうした配列のコンセンサスに対する最低90%、好ましくは95%、より
好ましくは96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を共有する。しかしなが
ら一般にこうした置換は望ましくない。
例示的態様において、本発明のヒト化抗体は最低10、10、10若しくは10
10−1の抗原に対する特異的結合親和性を表す。他の態様において、本発明の抗体は
最低1010、1011若しくは1012−1の結合親和性を有し得る。通常、抗原に
対するヒト化抗体の結合親和性の上限は、ドナー免疫グロブリンのものの3、4若しくは
5の係数内である。しばしば、結合親和性の下限もまたドナー免疫グロブリンのものの3
、4若しくは5の係数内にある。あるいは、結合親和性は、置換を有しないヒト化抗体(
例えばドナーCDRおよびアクセプターFRを有するがしかしFR置換を有しない抗体)
のものと比較し得る。こうした場合は、(置換で)至適化された抗体の結合は、好ましく
は未置換の抗体のものより最低2ないし3倍より大きいか、若しくは3ないし4倍より大
きい。比較を行うため、多様な抗体の活性を例えばBIACORE(すなわち未標識試薬
を使用する表面プラスモン共鳴)若しくは競合結合アッセイにより測定し得る。
一態様において、本発明の開示のヒト化抗体は、ヒト化される対応するヒト以外の抗体
(例えばマウス)の正準CDR構造型に同一若しくは類似である1種若しくはそれ以上の
CDR構造型を包含する、ヒト抗体遺伝子(例えば生殖系列抗体遺伝子セグメント)から
選択された可変領域フレームワーク配列を包含する。米国特許第6,881,557号明
細書およびTanら、Journal of Immunol 169:1119−11
25(2002)(全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込まれる)を
参照されたい。
例えば米国特許第6,300,064号明細書(全部の目的上そっくりそのまま引用す
ることにより本明細書に組み込まれる)に記述されるところのコンセンサスアミノ酸配列
を有するフレームワーク領域を含んでなるヒト化抗体もまた特徴とする。以下の表は、本
明細書に記述されるヒト化抗体でフレームワーク領域として使用し得る多様なコンセンサ
ス配列を列挙する。従って、下に示されるコンセンサス配列のいずれか1つを、本明細書
に記述される1個若しくはそれ以上のCDRと組合せでのように使用して、それにより本
発明のヒト化免疫グロブリンすなわちヒト化抗体をもたらし得る。
本発明のヒト化抗体を製造するためのなお別の戦略は、ヒト化されるべきマウス抗体か
らのCDRを受領するフレームワークとして最も近いヒト生殖配列を選択することである
。Merckenら、第US 2005/0129695号明細書(全部の目的上そっく
りそのまま引用することにより組み込まれる)を参照されたい。生殖系列配列は、再配列
されない免疫グロブリン遺伝子から発し、そして従って潜在的に免疫原性である体細胞高
頻度変異を提示しない。このアプローチは最も近いヒト生殖系列配列の検索に基づく。と
りわけ、マウスVLおよびVHフレームワーク領域との高程度の配列同一性を表す生殖系
列配列からの可変ドメインを、V−Baseおよび/若しくはIMGTデータベース(そ
れぞれ、医学研究協議会タンパク質工学センター(Medical Research
Council Center for Protein Engineering)の
インターネットサーバおよび欧州生物情報学研究所(European Bioinfo
rmatics Institute)のインターネットサーバを通じ公的にアクセス可
能)を使用して同定し得る。マウスCDRをその後、選ばれたヒト生殖系列可変領域アク
セプター配列にグラフトする。
本発明の免疫グロブリンをヒト化するのに使用し得る付加的な例示的ヒト化技術は、例
えば、Prestaら、JImmunol.、151:2623−2632(1993)
;Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、89:4285
−4289(1992);Coutoら、Cancer Res.、55:5973s−
77s(1995);O’Connerら、Protein Eng.、11:321−
328(1998);およびLoによるAntibody Engineering−M
ethods and Protocols、Vol.248(2004)に記述されて
いる。
加えて、上述されたところの技術のいずれかを使用してフレームワーク残基を分析して
、生じるヒト化抗体の特性を至適化するためにどの残基(あれば)を置換すべきかを決定
し得る。例えば、コンピュータモデル化を使用して、抗原結合に直接若しくは間接的に影
響する十分な確率を有する残基を同定し得る。
c.ヒト化3D6抗体の製造
本発明の例示的局面において、本明細書に記述される治療および/若しくは診断の方法
論での使用のためのヒト化3D6抗体を特徴とする。3D6はAβのN末端に特異的であ
り、そしてアミロイド斑の食作用を媒介(すなわち食作用を誘導)することが示されてい
る(実施例1〜2を参照されたい)。3D6は可溶性オリゴマーAβを優先的に結合する
こともまた示されており、そして哺乳動物被験体における認知の迅速な改善に有効である
(実施例12および13を参照されたい)。
マウス3D6のヒト化での使用のための適するヒトアクセプター抗体配列は、マウス可
変領域のアミノ酸配列の既知のヒト抗体の配列とのコンピュータ比較により同定する。該
比較はHおよびL鎖について別個に実施するが、しかし原理はそれぞれについて同様であ
る。とりわけ、フレームワーク配列がマウスVLおよびVHフレームワーク領域との高程
度の配列同一性を表すヒト抗体からの可変ドメインを、それぞれのマウスフレームワーク
配列でのNCBI BLAST(国立保健研究所(Natioanl Institut
e of Health)のNCBIインターネットサーバを通じ公的にアクセス可能)
を使用するKabatデータベースのクエリにより同定する。一態様において、マウスド
ナー配列と50%以上の配列同一性を共有するアクセプター配列を選択する。好ましくは
、60%、70%、80%、90%以上若しくはそれ以上の配列同一性を共有するアクセ
プター抗体配列を選択する。
マウス3D6抗体HおよびL鎖可変領域をコードするcDNAのクローニングおよび配
列決定を実施例3に記述する。ヒト可変配列とのマウス3D6のコンピュータ比較は、3
D6 L鎖がサブタイプκIIのヒトL鎖に対し最大の配列同一性を示すこと、および、
3D6 H鎖がKabatら、上記により定義されるところのサブタイプIIIのヒトH
鎖に対し最大の配列同一性を示すことを示した。従って、LおよびHヒトフレームワーク
領域は、好ましくはこれらのサブタイプのヒト抗体、若しくはこうしたサブタイプのコン
センサス配列に由来する。3D6からの対応する領域に対する最大の配列同一性を示す好
ましいL鎖ヒト可変領域は、Kabat ID番号019230、005131、005
058、005057、005059、U21040およびU41645を有する抗体か
らであり、019230がより好ましい。3D6からの対応する領域に対する最大の配列
同一性を示す好ましいH鎖ヒト可変領域は、Kabat ID番号045919、000
459、000553、000386およびM23691を有する抗体からであり、04
5919がより好ましい。
残基を次に、後に続くとおり置換のため選択する。3D6可変フレームワーク領域と同
等のヒト可変フレームワーク領域の間でアミノ酸が異なる場合、ヒトフレームワークアミ
ノ酸は、通常、該アミノ酸が:
(1)抗原を直接非共有結合するか、
(2)CDR領域に隣接するか、Chothiaら、上記により提案された代替の定義の
もとでCDR領域の一部であるか、若しくはCDR領域と別の方法で相互作用する(例え
ば、CDR領域のほぼ3A以内にある)(例えば3D6の位置L2、H49およびH94
のアミノ酸)か、または
(3)VL−VH界面に参画する(例えば3D6の位置L36、L46およびH93のア
ミノ酸)ことが合理的に期待される場合は、同等のマウスアミノ酸により置換すべきであ
る。
3D6抗体のHおよびL鎖可変領域のコンピュータモデル化ならびに3D6抗体のヒト
化を実施例6に記述する。簡潔には、HおよびL鎖について最も近い解明されたマウス抗
体構造に基づき三次元モデルを生成した。この目的上、1CR9と呼称される抗体(タン
パク質データバンク(Protein Data Bank)(PDB)ID:1CR9
、Kanyoら、J.Mol.Biol.293:855(1999))を、3D6 L
鎖をモデル化するための鋳型として選び、また、1OPG(PDB ID:1OPG、K
odandapaniら、J.Biol.Chem.270:2268(1995))を
、H鎖をモデル化するための鋳型として選んだ。該モデルを、不都合な原子接触を軽減し
かつ静電およびファンデルワールス相互作用を至適化するための一連のエネルギー最小化
段階によりさらに改良した。1qkz(PDB ID:1QKZ、Derrickら、
.Mol.Biol.293:81(1999))の解明された構造をH鎖のCDR3を
モデル化するための鋳型として選んだ。3D6および1OPGは、比較の目的上整列した
場合にこの領域で有意の配列相同性を表さなかったためである。
本明細書に記述される抗体の三次元構造情報は、例えば構造バイオインフォマティクス
共同機構(Research Collaboratory for Structur
al Bioinformatics)のタンパク質データバンク(PDB)から公的に
入手可能である。該PDBはワールドワイドウェブのインターネットを介して無料でアク
セス可能であり、そしてBermanら(2000)Nucleic Acids Re
search、28:235により記述される。コンピュータモデル化はCDRと相互作
用する残基の同定を見込む。3D6の構造のコンピュータモデルは、順に、ヒトフレーム
ワーク構造中で置換される3D6の相補性決定領域を含有する抗体の三次元構造を予測す
るための出発点としてはたらき得る。さらなるアミノ酸置換が導入される際の構造を表す
付加的なモデルを構築し得る。
一般に、上の基準を満足するアミノ酸の1個、大部分若しくは全部の置換が望ましい。
従って、本発明のヒト化抗体は、通常、以下の位置すなわちL1、L2、L36およびL
46の最低1、2若しくは3、およびより通常は4個での対応する3D6残基でのヒトL
鎖フレームワーク残基の置換を含有することができる。該ヒト化抗体は通常、以下の位置
すなわちH49、H93およびH94の最低1、2およびときに3個での対応する3D6
残基でのヒトH鎖フレームワーク残基の置換もまた含有する。ヒト化抗体は、以下の位置
すなわちH74、H77およびH89の最低1、2およびときに3個での対応する生殖系
列残基でのH鎖フレームワーク残基の置換もまた含有し得る。
しかしながら、ときに、特定のアミノ酸が上の基準に合致するかどうかについて若干の
あいまいさが存在し、そして代替のバリアント免疫グロブリンが製造され、その一方はそ
の特定の置換を有し、その他方は有しない。マウス残基での置換が、特定の一位置にヒト
免疫グロブリンでまれである残基を導入するとみられる場合は、該抗体を該特定の置換を
伴い若しくは伴わず活性について試験することが望ましいことができる。活性(例えば結
合親和性および/若しくは結合特異性)が置換を伴い若しくは伴わずほぼ同一である場合
は、置換を伴わない抗体が好ましいことができる。本明細書に記述されるとおりより少な
いHAHA応答を導き出すことが期待されるとみられるためである。
置換の他の候補は、その位置でヒト免疫グロブリンにまれであるアクセプターヒトフレ
ームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸を、より典型的なヒト免疫グロブリンの同
等の位置からのアミノ酸で置換し得る。あるいは、マウス3D6中の同等の位置からのア
ミノ酸を、こうしたアミノ酸が該同等の位置でヒト免疫グロブリンに典型的である場合に
、ヒトフレームワーク領域に導入し得る。
付加的な態様において、ヒトL鎖フレームワークアクセプター免疫グロブリンがKab
at ID番号019230である場合、該L鎖は、以下の位置すなわちL7、L10、
L12、L15、L17、L39、L45、L63、L78、L83、L85、L100
若しくはL104の最低1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しく
はより通常は13個に置換を含有する。付加的な態様において、ヒトH鎖フレームワーク
アクセプター免疫グロブリンがKabat ID番号045919である場合、該H鎖は
、以下の位置すなわちH3、H5、H13、H16、H19、H40、H41、H42、
H44、H72、H77、H82A、H83、H84若しくはH108の最低1、2、3
、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14若しくはより通常は15個に
置換を含有する。これらの位置は、より典型的なアミノ酸残基を有するヒト免疫グロブリ
ンの同等の位置からのアミノ酸で置換される。置換するための適切なアミノ酸の例を図1
および2に示す。
置換の他の候補はフレームワーク領域中に存在する非生殖系列残基である。既知の生殖
系列配列との3D6のコンピュータ比較は、最大の程度の配列同一性を示すH鎖が、生殖
系列可変領域配列VH3−48、VH3−23、VH3−7、VH3−21およびVH3
−11を包含し、VH3−23がより好ましいことを示した。Kabat ID 045
919のVH3−23とのアライメントは、残基H74、H77および/若しくはH89
を、対応する生殖系列残基(例えばKabat ID 045919およびVH3−23
を比較する場合に残基H74、H77および/若しくはH89)での置換に選択しうるこ
とを示す。同様に、3D6 L鎖に対する最大の程度の同一性を有する生殖系列配列はA
1、A17、A18、A2およびA19を包含し、A19が最も好ましい。選択したL鎖
アクセプターフレームワークと、これらの生殖系列配列の1種の間で一致しない残基を、
対応する生殖系列残基での置換に選択し得る。
表1は3D6のVHおよびVL領域の配列分析を要約する。3D6抗体および付加的な
ヒト抗体のコンピュータモデル化に使用し得る付加的なマウスおよびヒト構造、ならびに
アミノ酸置換の選択において使用し得る生殖系列配列を示す。まれなマウス残基もまた表
1に示す。まれなマウス残基は、ドナーVLおよび/若しくはVH配列を、該ドナーVL
および/若しくはVH配列が属するサブグループ(Kabatによる)の他メンバーの配
列と比較すること、ならびにコンセンサスと異なる残基位置を同定することにより同定す
る。これらのドナー特異的差違は活性を高める体細胞突然変異を指摘しうる。結合部位に
近接のまれな残基はおそらく抗原を接触することができ、マウス残基を保持することを望
ましくする。しかしながら、該まれなマウス残基が結合に重要でない場合は、該マウス残
基はヒト化抗体中の免疫原性新エピトープ(neoepitope)を創製しうるため、
対応するアクセプター残基の使用が好ましい。ドナー配列中のまれな残基が、対応するア
クセプター配列中で実際には普遍的な残基である状況では、好ましい残基は明らかに該ア
クセプター残基である。
本明細書で参照されるKabat ID配列は、例えば、ノースウェスタン大学生物医
学工学部(Northwestern University Biomedical
Engineering Department)のKabatの免疫学的に興味深いタ
ンパク質配列データベース(Kabat Database of Sequences
of Proteins of Immunological Interest)か
ら公的に入手可能である。本明細書に記述される抗体の三次元構造情報は、例えば構造バ
イオインフォマティクス共同機構(Research Collaboratory f
or Structural Bioinformatics)のタンパク質データバン
ク(PDB)から公的に入手可能である。該PDBはワールドワイドウェブのインターネ
ットを介して無料でアクセス可能であり、そしてBermanら(2000)Nucle
ic Acids Research、p235−242に記述されている。本明細書で
参照される生殖系列遺伝子配列は、例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(Na
tional Center for Biotechnology Informat
ion)(NCBI)のIgh、IgκおよびIgλ生殖系列V遺伝子の集合物中の配列
のデータベース(国立保健研究所(NIH)の国立医学図書館(National Li
brary of Medicine)(NLM)の一部門として)から公的に入手可能
である。NCBIの「Ig生殖系列遺伝子」データベースの相同性検索はIgG BLA
STTMにより提供される。
好ましい一態様において、本発明のヒト化抗体は、(i)マウス3D6 VL CDR
およびヒトアクセプターフレームワーク(該フレームワークはL1、L2、L36および
L46よりなる群から選択される最低1、好ましくは2、3若しくは4残基が対応する3
D6残基で置換されている)を含んでなる可変ドメインを含んでなるL鎖、ならびに(i
i)3D6 VH CDRおよびヒトアクセプターフレームワーク(該フレームワークは
H49、H93およびH94よりなる群から選択される最低1、好ましくは2若しくは3
残基が対応する3D6残基で置換されている)を含んでなるH鎖を含有し、ならびに、場
合によっては、H74、H77およびH89よりなる群から選択される最低1、好ましく
は2若しくは3残基が対応するヒト生殖系列残基で置換されている。
より好ましい一態様において、本発明のヒト化抗体は、(i)マウス3D6 VL C
DRおよびヒトアクセプターフレームワーク(該フレームワークは、残基1がtyr(Y
)で置換され、残基2がval(V)で置換され、残基36がleu(L)で置換され、
かつ/若しくは残基46がarg(R)で置換されている)を含んでなる可変ドメインを
含んでなるL鎖、ならびに(ii)3D6 VH CDRおよびヒトアクセプターフレー
ムワーク(該フレームワークは、残基49がala(A)で置換され、残基93がval
(V)で置換され、かつ/若しくは残基94がarg(R)で置換され、ならびに、場合
によっては、残基74がser(S)で置換され、残基77がthr(T)で置換され、
かつ/若しくは残基89がval(V)で置換されている)を含んでなるH鎖を含有する
とりわけ好ましい一態様において、本発明のヒト化抗体は本明細書に記述されるところ
の構造の特徴を有し、かつ、以下の活性すなわち(1)凝集型Aβ1−42を結合する(
例えばELISAにより測定されるとおり);(2)斑中のAβを結合する(例えばAD
および若しくは/PDAPP斑の染色);(3)キメラ3D6(例えばマウス可変領域配
列およびヒト定常領域配列を有する3D6)に比較して2ないし3倍より高い結合親和性
でAβを結合する;(4)Aβの食作用を媒介する(例えば本明細書に記述されるところ
のex vivo食作用アッセイで);ならびに(5)血液脳関門を横断する(例えば、
例えば本明細書に記述されるところのPDAPP動物モデルで短期の脳局在化を示す)の
最低1つ(好ましくは2、3、4若しくは全部)をさらに有する。
別の態様において、本発明のヒト化抗体は、本明細書に記述されるところの構造の特徴
を有し、かつさらに以下のin vivo効果、すなわち(1)Aβ斑負荷量を低下させ
る;(2)斑形成を予防する;(3)可溶性Aβ(例えば可溶性オリゴマーAβ)の濃度
を低下させる;(4)アミロイド形成障害と関連する神経炎性の病理を低下させる;(5
)アミロイド形成障害と関連する最低1種の生理学的症状を減じる若しくは改善する;な
らびに/または(6)認知機能を改善する(例えば迅速な改善)の最低1種を導き出すの
に十分な様式で若しくは親和性を伴いAβを結合する。
別の態様において、本発明のヒト化抗体は本明細書に記述されるところの構造の特徴を
有し、そしてAβの残基1−5若しくは3−7を含んでなる1エピトープに特異的に結合
する。
d.ヒト化12B4抗体の製造
本発明のさらなる例示的例において、本明細書に記述される治療的および/若しくは診
断の方法論での使用のためのヒト化12B4抗体を特徴とする。12B4はAβのN末端
に特異的でありかつアミロイド斑の食作用を媒介する(例えば食作用を誘導する)ことが
示されている。12B4は可溶性Aβを認識可能に捕捉することもまた示されている。1
2B4抗体HおよびL鎖可変領域をコードするcDNAのクローニングおよび配列決定を
実施例5に記述する。
12B4のヒト化のための適するヒトアクセプター抗体配列の同定は上の下位節cに記
述されると同一である。
12B4のコンピュータ比較は、12B4 L鎖がKabatら、上記により定義され
るところのサブタイプκIIのヒトL鎖に対する最大の配列同一性を示すこと、また、1
2B4 H鎖がサブタイプIIのヒトH鎖に対する最大の配列同一性を示すことを示した
。従って、LおよびHのヒトフレームワーク領域は、好ましくはこれらのサブタイプのヒ
ト抗体、若しくはこうしたサブタイプのコンセンサス配列に由来する。12B4からの対
応する領域に対する最大の配列同一性を示す好ましいL鎖ヒト可変領域は、Kabat
ID番号005036を有する抗体からである。12B4からの対応する領域に対する最
大の配列同一性を示す好ましいH鎖ヒト可変領域は、Kabat ID番号000333
を有する抗体、GenBank受託番号AAB35009を有する抗体、およびGenB
ank受託番号AAD53816を有する抗体からであり、Kabat ID番号000
333を有する抗体がより好ましい。
次に、後に続くとおり残基を置換のため選択する。アミノ酸が12B4可変フレームワ
ーク領域と同等のヒト可変フレームワーク領域の間で異なる場合、ヒトフレームワークア
ミノ酸は通常、該アミノ酸が:
(1)抗原を直接非共有結合するか、
(2)CDR領域に隣接するか、Chothiaら、上記により提案された代替の定義の
もとでCDR領域の一部であるか、若しくはCDR領域と別の方法で相互作用する(例え
ばCDR領域の約3A以内である)か、または
(3)VL−VH界面に参画する
ことが合理的に期待される場合は、同等のマウスアミノ酸により置換すべきである。
12B4抗体HおよびL鎖可変領域のコンピュータモデル化、ならびに12B4抗体の
ヒト化を実施例5に記述する。簡潔には、HおよびL鎖に最も近い解明されたマウス抗体
構造に基づき三次元モデルを生成する。該モデルを、不都合な原子接触を軽減しかつ静電
およびファンデルワールス相互作用を至適化するための一連のエネルギー最小化段階によ
りさらに改良する。
コンピュータモデル化はCDRと相互作用する残基の同定を見込む。12B4の構造の
コンピュータモデル化は、順に、ヒトフレームワーク構造中で置換された12B4の相補
性決定領域を含有する抗体の三次元構造を予測するための出発点としてはたらき得る。さ
らなるアミノ酸置換が導入される際の構造を表す付加的なモデルを構築し得る。
一般に、上の基準を満たすアミノ酸の1個、大部分若しくは全部の置換が望ましい。従
って、本発明のヒト化抗体は、通常、ヒトL鎖フレームワーク残基の選ばれた位置の最低
1、2、3個若しくはそれ以上に、対応する12B4残基での置換を含有することができ
る。ヒト化抗体は、通常、ヒトH鎖フレームワーク残基の選ばれた位置の最低1、2、3
個若しくはそれ以上に、対応する12B4残基での置換もまた含有する。
ときに、特定の1アミノ酸が上の基準に合致するかどうかについてのあいまいさを、上
の下位節cに記述されるとおり扱い得る。
置換の他の候補は、その位置でヒト免疫グロブリンにまれであるアクセプターヒトフレ
ームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸は、より典型的なヒト免疫グロブリンの同
等の位置からのアミノ酸で置換し得る。あるいは、マウス12B4中の同等の位置からの
アミノ酸を、こうしたアミノ酸が該同等の位置でヒト免疫グロブリンに典型的である場合
に、ヒトフレームワーク領域に導入し得る。
置換の他の候補はフレームワーク領域に存在する非生殖系列残基である。既知の生殖系
列配列との12B4のコンピュータ比較を実施することにより、H若しくはL鎖に対する
最大の程度の配列同一性をもつ生殖系列配列を同定し得る。フレームワーク領域および生
殖系列配列のアライメントは、対応する生殖系列残基での置換にどの残基を選択しうるか
を示すことができる。選択したL鎖アクセプターフレームワークとこれらの生殖系列配列
の1種の間で一致しない残基を、対応する生殖系列残基での置換に選択し得る。
表2は12B4のVHおよびVL領域の配列分析を要約する。12B4抗体および付加
的なヒト抗体のコンピュータモデル化に使用し得る付加的なマウスおよびヒト構造、なら
びにアミノ酸置換の選択において使用し得る生殖系列配列を示す。まれなマウス残基もま
た表2に示す。まれなマウス残基は、ドナーVLおよび/若しくはVH配列を、該ドナー
VLおよび/若しくはVH配列が属する(Kabatにより)サブグループの他メンバー
の配列と比較すること、ならびにコンセンサスと異なる残基位置を同定することにより同
定される。これらのドナー特異的差違は、活性を高める体細胞突然変異を指摘しうる。結
合部位に近接のまれな残基はおそらく抗原と接触することができ、マウス残基を保持する
ことを望ましくする。しかしながら、該まれなマウス残基が結合に重要でない場合は、該
マウス残基はヒト化抗体中で免疫原性の新エピトープを創製しうるため、対応するアクセ
プター残基の使用が好ましい。ドナー配列中のまれな残基が対応するアクセプター配列中
で実際には普遍的な残基である状況では、好ましい残基は明らかにアクセプター残基であ
る。
好ましい一態様において、本発明のヒト化抗体は、(i)マウス12B4 VL CD
Rおよびヒトアクセプターフレームワーク(該フレームワークは最低1残基が対応する1
2B4残基で置換されている)を含んでなる可変ドメインを含んでなるL鎖、ならびに(
ii)12B4 VH CDRおよびヒトアクセプターフレームワーク(該フレームワー
クは、最低1、2、3、4、5、6、7、8若しくは9残基が対応する12B4残基で置
換され、かつ、場合によっては最低1、2若しくは3残基が対応するヒト生殖系列残基で
置換されている)を含んでなるH鎖を含有する。
別の好ましい態様において、本発明のヒト化抗体は、本明細書に記述されるところの構
造の特徴を有し、かつ、以下の活性、すなわち(1)可溶性Aβを結合する;(2)凝集
型Aβ1−42を結合する(例えばELISAにより測定されるとおり);(3)斑中の
Aβを結合する(例えばADおよび/若しくはPDAPP斑の染色);(4)キメラ12
B4(例えばマウス可変領域配列およびヒト定常領域配列を有する12B4)に比較して
2ないし3倍より高い結合親和性でAβを結合する;(5)Aβの食作用を媒介する(例
えば本明細書に記述されるところのex vivo食作用アッセイにおいて);ならびに
(6)血液脳関門を横断する(例えば、例えば本明細書に記述されるところのPDAPP
動物モデルにおいて短期の脳局在化を示す)の最低1つ(好ましくは2,3、4若しくは
全部)をさらに有する。
別の好ましい態様において、本発明のヒト化抗体は、本明細書に記述されるところの構
造の特徴を有し、かつ、さらに、以下すなわち(1)Aβ斑負荷量を低下させる;(2)
斑形成を予防する;(3)可溶性Aβのレベルを低下させる;(4)アミロイド形成障害
と関連する神経炎性の病理を低下させる;(5)アミロイド形成障害と関連する最低1種
の生理学的症状を減じる若しくは軽減する;および/または認知機能を改善する、の最低
1種およびさらなるin vivo効果を導き出すのに十分な様式で若しくは親和性を伴
いAβを結合する。
別の好ましい態様において、本発明のヒト化抗体は、本明細書に記述されるところの構
造の特徴を有し、かつ、Aβの残基3−7を含んでなる1エピトープに特異的に結合する
別の好ましい態様において、本発明のヒト化抗体は、本明細書に記述されるところの構
造の特徴を有し、Aβ内のN末端エピトープに結合し(例えばAβのアミノ酸3−7内の
1エピトープに結合し)、そして(1)Aβペプチドレベル;(2)Aβ斑負荷量;およ
び(3)アミロイド形成障害と関連する神経炎性負荷若しくは神経炎性ジストロフィーを
低下させることが可能である。
e.ヒト化12A11抗体の製造
本発明のさらなる例示的局面において、本明細書に記述される治療および/若しくは診
断の方法論での使用のための12A11ヒト化抗体を特徴とする。12A11はAβのN
末端に特異的であり、そして(1)凝集型A1−42に対する高親和性を有する、(2)
可溶性Aβを捕捉する能力を有する、および(3)アミロイド斑の食作用を媒介(例えば
食作用を誘導)することが示された(実施例9および11を参照されたい)。12A11
抗体のin vivo有効性を実施例10に記述する。12A11はまた可溶性オリゴマ
ーAβを優先的に結合することも示され、そして哺乳動物被験体での認知の迅速な改善に
有効である(実施例12、13および14を参照されたい)。12A11抗体HおよびL
鎖可変領域をコードするcDNAのクローン化および配列決定を実施例15に記述する。
適するヒトアクセプター抗体配列の同定は上の下位節cに記述されると同一である。1
2A11のコンピュータ比較は、12A11 L鎖(マウスサブグループII)が、Ka
batら、上記により定義されるところのサブタイプκIIのヒトL鎖に対する最大の配
列同一性を示すこと、および12A11 H鎖(マウスサブグループIb)が、サブタイ
プIIのヒトH鎖に対する最大の配列同一性を示すことを示した。LおよびHヒトフレー
ムワーク領域は、これらのサブタイプのヒト抗体若しくはこうしたサブタイプのコンセン
サス配列に由来し得る。第一のヒト化の試みにおいて、L鎖可変フレームワーク領域はヒ
トサブグループII抗体に由来した。ヒトサブグループII抗体由来のH鎖可変フレーム
ワーク領域を有するヒト化抗体の高レベルの発現を達成するよう設計された以前の実験に
基づき、こうした抗体の発現レベルがときに低かったことが発見された。従って、Sal
danhaら(1999)Mol Immunol.36:709−19に記述される論
法に基づき、ヒトサブグループIIよりむしろヒトサブグループIII抗体由来のフレー
ムワーク領域を選んだ。
ヒトサブグループII抗体K64(AIMS4)(受託番号BAC01733)は、1
2A11のL鎖可変領域内で有意の配列同一性を有するNCBIの非重複性データベース
から同定した。ヒトサブグループIII抗体M72(受託番号AAA69734)は、1
2A11のH鎖可変領域内で有意の配列同一性を有するNCBIの非重複性データベース
から同定した(SchroederとWang(1990)Proc.Natl.Aca
d.Sci.U.S.A.872:6146−6150もまた参照されたい。
代替のL鎖アクセプター配列は、例えば、PDB受託番号1KFA(gi241587
82)、PDB受託番号1KFA(gi24158784)、EMBL受託番号CAE7
5574.1(gi38522587)、EMBL受託番号CAE75575.1(gi
38522590)、EMBL受託番号CAE84952.1(gi39838891)
、DJB受託番号BAC01734.1(gi21669419)、DJB受託番号BA
C01730.1(gi21669411)、PIR受託番号S40312(gi481
978)、EMBL受託番号CAA51090.1(gi3980118)、GenBa
nk受託番号AAH63599.1(gi39794308)、PIR受託番号S229
02(gi106540)、PIR受託番号S42611(gi631215)、EMB
L受託番号CAA38072.1(gi433890)、GenBank受託番号AAD
00856.1(gi4100384)、EMBL受託番号CAA39072.1(gi
34000)、PIR受託番号S23230(gi284256)、DBJ受託番号BA
C01599.1(gi21669149)、DBJ受託番号BAC01729.1(g
i21669409)、DBJ受託番号BAC01562.1(gi21669075)
、EMBL受託番号CAA85590.1(gi587338)、GenBank受託番
号AAQ99243.1(gi37694665)、GenBank受託番号AAK94
811.1(gi18025604)、EMBL受託番号CAB51297.1(gi5
578794)、DBJ受託番号BAC01740.1(gi21669431)および
DBJ受託番号BAC01733.1(gi21669417)を包含する。代替のH鎖
アクセプター配列は、例えば、GenBank受託番号AAB35009.1(gi10
41885)、DBJ受託番号BAC01904.1(gi21669789)、Gen
Bank受託番号AAD53816.1(gi5834100)、GenBank受託番
号AAS86081.1(gi46254223)、DBJ受託番号BAC01462.
1(gi21668870)、GenBank受託番号AAC18191.1(gi31
70773)、DBJ受託番号BAC02266.1(gi21670513)、Gen
Bank受託番号AAD56254.1(gi5921589)、GenBank受託番
号AAD53807.1(gi5834082)、DBJ受託番号BAC02260.1
(gi21670501)、GenBank受託番号AAC18166.1(gi317
0723)、EMBL受託番号CAA49495.1(gi33085)、PIR受託番
号S31513(gi345903)、GenBank受託番号AAS86079.1(
gi46254219)、DBJ受託番号BAC01917.1(gi21669815
)、DBJ受託番号BAC01912.1(gi21669805)、GenBank受
託番号AAC18283.1(gi3170961)、DBJ受託番号BAC01903
(gi21669787)、DBJ受託番号BAC01887.1(gi2166975
5)、DBJ受託番号BAC02259.1(gi21370499)、DBJ受託番号
BAC01913.1(gi21669807)、DBJ受託番号BAC01910.1
(gi21669801)、DJB受託番号BAC02267.1(gi2167051
5)、GenBank受託番号AAC18306.1(gi3171011)、GenB
ank受託番号AAD53817.1(gi5834102)、PIR受託番号E360
05(gi106423)、EMBL CAB37129.1(gi4456494)お
よびGenBank AAA68892.1(gi186190)を包含する。
例示的態様において、12A11 CDRおよび本発明のヒト化抗体は上に列挙される
アクセプター配列からのFRを包含する。本明細書に記述されるところのCDRのコンホ
メーションおよび/若しくは活性に重要なフレームワーク領域内の残基を戻し突然変異に
選択する(ドナー配列とアクセプター配列の間で異なる場合)。
次に、後に続くとおり残基を置換のため選択する。アミノ酸が12A11可変フレーム
ワーク領域と同等のヒト可変フレームワーク領域の間で異なる場合、ヒトフレームワーク
アミノ酸は、通常、該アミノ酸が:
(1)抗原を直接非共有結合するか、
(2)CDR領域に隣接するか、Chothiaら、上記により提案された代替の定義の
もとでCDR領域の一部であるか、若しくはCDR領域と別の方法で相互作用する(例え
ばCDR領域の約3A以内である)か、または
(3)VL−VH界面に参画する
ことが合理的に期待される場合は、同等のマウスアミノ酸により置換すべきである。
12A11抗体HおよびL鎖可変領域の構造解析、ならびに12A11抗体のヒト化を
実施例5に記述する。簡潔には、L鎖について解明されたマウス抗体構造1KTRならび
にH鎖について1JRHおよび1ETZの三次元モデルを研究した。CDRコンホメーシ
ョンに重要な残基(例えばバーニア残基)の同定のため研究し得る代替の三次元モデルは
、L鎖について、PDB受託番号2JEL(gi3212688)、PDB受託番号1T
ET(gi494639)、PDB受託番号IJP5(gi16975307)、PDB
受託番号1CBV(gi493917)、PDB受託番号2PCP(gi4388943
)、PDB受託番号1I9I(gi2050118)、PDB受託番号1CLZ(gi1
827926)、PDB受託番号1FL6(gi17942615)およびPDB受託番
号1KEL(gi1942968)、ならびにH鎖についてPDB 1GGI(gi44
2938)、PDB受託番号1GGB(gi442934)、PDB受託番号1N5Y(
gi28373913)、PDB受託番号2HMI(gi3891821)、PDB受託
番号1FDL(gi229915)、PDB受託番号1KIP(gi1942788)、
PDB受託番号1KIQ(gi1942791)およびPDB受託番号1VFA(gi5
76325)を包含する。
解明された三次元構造の研究は12A11内のCDRと相互作用する残基の同定を見込
む。あるいは、コンピュータモデル化ソフトウェアを使用して、12A11のVHおよび
VL鎖の三次元モデルを生成し得る。簡潔には、HおよびL鎖について最も近い解明され
たマウス抗体構造に基づき三次元モデルを生成する。この目的上、1KTRを12A11
L鎖をモデル化するための鋳型として使用し得、また、1ETZおよび1JRHをH鎖
をモデル化するための鋳型として使用し得る。モデルは、不都合な原子接触を軽減しかつ
静電およびファンデルワールス相互作用を至適化するための一連のエネルギー最小化段階
によりさらに改良し得る。付加的な三次元分析および/若しくはモデル化を、これらの解
明されたマウス構造とそれぞれの12A11鎖の間の類似性に基づき、L鎖について2J
EL(2.5Å)および/若しくは1TET(2.3Å)ならびにH鎖(または上で示さ
れた他の抗体)について1GGI(2.8Å)を使用して実施し得る。
12A11の構造のコンピュータモデルは、さらに、ヒトフレームワーク構造で置換し
た12A11相補性決定領域を含有する抗体の三次元構造を予測するための出発点として
はたらき得る。さらなるアミノ酸置換が導入される際に該構造を表す付加的なモデルを構
築し得る。
一般に、上の基準を満たすアミノ酸の1個、大部分若しくは全部の置換が望ましい。従
って、本発明のヒト化抗体は、通常、選ばれた位置の最低1、2、3個若しくはそれ以上
に、対応する12A11残基でのヒトL鎖フレームワーク残基の置換を含有することがで
きる。ヒト化抗体は、通常、選ばれた位置の最低1、2、3個若しくはそれ以上に、対応
する12A11残基でのヒトH鎖フレームワーク残基の置換もまた含有する。
特定の1アミノ酸が上の基準に合致するかどうかについてのあいまいさは、上の下位節
cで記述されたとおり扱い得る。
置換の他の候補は、その位置でヒト免疫グロブリンにまれであるアクセプターヒトフレ
ームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸は、より典型的なヒト免疫グロブリンの同
等の位置からのアミノ酸で置換し得る。あるいは、マウス12A11中の同等の位置から
のアミノ酸を、こうしたアミノ酸が該同等の位置でヒト免疫グロブリンに典型的である場
合にヒトフレームワーク領域に導入し得る。
置換の他の候補はフレームワーク領域に存在する非生殖系列残基である。既知の生殖系
列配列との12A11のコンピュータ比較を実施することにより、H若しくはL鎖に対す
る最大の程度の配列同一性をもつ生殖系列配列を同定し得る。フレームワーク領域および
生殖系列配列のアライメントは、対応する生殖系列残基での置換にどの残基を選択しうる
かを示すことができる。選択したL鎖アクセプターフレームワークとこれらの生殖系列配
列の1種の間で一致しない残基を、対応する生殖系列残基での置換に選択し得る。
まれなマウス残基は、ドナーVLおよび/若しくはVH配列が属する(Kabatによ
る)サブグループの他メンバーの配列と該ドナーVLおよび/若しくはVH配列を比較す
ること、ならびにコンセンサスと異なる残基位置を同定することにより同定する。これら
のドナー特異的差違が、活性を増強する体細胞突然変異を指摘しうる。結合部位に近接の
まれな残基はおそらく抗原を接触することができ、該マウス残基を保持することを望まし
くする。しかしながら、該まれなマウス残基が結合に重要でない場合、対応するアクセプ
ター残基の使用が好ましい。該マウス残基がヒト化抗体中に免疫原性の新エピトープを創
製しうるためである。ドナー配列中のまれな残基が対応するアクセプター配列中で実際に
は普遍的な残基である状況では、好ましい残基は明らかにアクセプター残基である。
表3は12A11のVHおよびVL領域の配列分析を要約する。
アミノ酸置換の選択において使用し得る生殖系列配列を示す。
例示的一態様において、本発明のヒト化抗体は、(i)マウス12A11 VL CD
Rおよびヒトアクセプターフレームワーク(該フレームワークは、0、1、2、3、4、
5、6、7、8、9若しくはそれ以上の残基が対応する12A11残基で置換されている
)を含んでなる可変ドメインを含んでなるL鎖、ならびに(ii)12A11 VH C
DRおよびヒトアクセプターフレームワーク(該フレームワークは、最低1、2、3、4
、5、6、7、8、9若しくはそれ以上の残基が対応する12A11残基で置換され、ま
た、場合によっては最低1、好ましくは2若しくは3残基が対応するヒト生殖系列残基で
置換されている)を含んでなるH鎖を含有する。
別の態様において、本発明のヒト化抗体は、本明細書に記述されるところの構造の特徴
を有し、かつ、以下の活性、すなわち(1)可溶性Aβを結合する;(2)凝集型Aβ1
−42を結合する(例えばELISAにより測定されるとおり);(3)可溶性Aβを捕
捉する;(4)斑中のAβを結合する(例えばADおよび/若しくはPDAPP斑の染色
);(5)キメラ12A11(例えばマウス可変領域配列およびヒト定常領域配列を有す
る12A11)よりせいぜい2ないし3倍より低い親和性でAβを結合する;(6)Aβ
の食作用を媒介する(例えば、本明細書に記述されるところのex vivo食作用アッ
セイにおける);ならびに(7)血液脳関門を横断する(例えば、例えば本明細書に記述
されるところのPDAPP動物モデルにおいて短期の脳局在化を示す)の最低1つ(好ま
しくは2、3、4若しくは全部)をさらに有する。
別の態様において、本発明のヒト化抗体は、本明細書に記述されるところの構造の特徴
を有し、その結果、それは以下のin vivo効果、すなわち(1)Aβ斑負荷量を低
下させる;(2)斑形成を予防する;(3)可溶性Aβのレベルを低下させる(例えば可
溶性オリゴマーAβ);(4)アミロイド形成障害と関連する神経炎性の病理を低下させ
る;(5)アミロイド形成障害と関連する最低1種の生理学的症状を減じるか若しくは改
善する;および/または(6)認知機能を改善する(例えば迅速な改善)の最低1種を導
き出すのに十分な様式若しくは親和性でAβを結合する。
別の態様において、本発明のヒト化抗体は、本明細書に記述されるところの構造の特徴
を有し、そしてAβの残基3−7を含んでなる1エピトープに特異的に結合する。
なお別の態様において、本発明のヒト化抗体は、本明細書に記述されるところの構造の
特徴を有し、その結果、それはAβ内のN末端エピトープに結合し(例えばAβのアミノ
酸3−7内の1エピトープに結合し)、かつ、(1)Aβペプチドレベル;(2)Aβ斑
負荷量;および(3)アミロイド形成障害と関連する神経炎性負荷若しくは神経炎性ジス
トロフィーを低下させることが可能である。
一態様において、本発明のヒト化抗体は、下に配列番号88に示されるところの、Ig
G1定常領域に連結された12A11v.1 VH領域を包含する。
別の態様において、本発明のヒト化抗体は、下に配列番号89に示されるところの、I
gG4定常領域に連結された12A11v.1 VH領域を包含する。
なお別の態様において、本発明のヒト化抗体は、下にそれぞれ配列番号90および91
で示されるところの、IgG1若しくはIgG4定常領域に連結された12A11v3.
1 VH領域を包含する。
いくつかの態様において、カッコ内に示されるところの末端のリシンは場合によっては
発現される。
f.ヒト化10D5および15C11抗体の製造
本発明のさらなる例示的例において、本明細書に記述される治療および/若しくは診断
の方法論での使用のためのヒト化10D5および15C11抗体を特徴とする。10D5
および15C11はそれぞれAβのN末端および中央領域に特異的である。
10D5および15C11の抗体HおよびL鎖可変領域をコードするcDNAのクロー
ニングおよび配列決定をそれぞれ実施例4および16に記述する。
マウス10D5および15C11のヒト化のための適するヒトアクセプター抗体配列の
同定は、上の下位節cに記述されるとおり実施し得る。簡潔には、配列分析を実施して、
マウスL鎖が最大の配列同一性を表すヒトL鎖を同定し得る。LおよびHヒトフレームワ
ーク領域は、好ましくはこれらのサブタイプのヒト抗体、若しくはこうしたサブタイプの
コンセンサス配列に由来する。
次に、後に続くとおり残基を置換のため選択する。アミノ酸が10D5および15C1
1可変フレームワーク領域と同等のヒト可変フレームワーク領域の間で異なる場合、該ヒ
トフレームワークアミノ酸は、通常、該アミノ酸が:
(1)抗原を直接非共有結合するか、
(2)CDR領域に隣接するか、Chothiaら、上記により提案された代替の定義の
もとでCDR領域の一部であるか、若しくはCDR領域と別の方法で相互作用する(例え
ばCDR領域の約3A以内にある)か、または
(3)VL−VH界面に参画する
ことが合理的に期待される場合は同等のマウスアミノ酸により置換すべきである。
10D5および15C11抗体HおよびL鎖可変領域のコンピュータモデル化、ならび
に110D5および15C11のヒト化は、上の下位節cでと同一の様式で実施し得る。
簡潔には、HおよびL鎖の最も近い解明されたマウス抗体構造に基づき三次元モデルを生
成する。該モデルを、不都合な原子接触を軽減しかつ静電およびファンデルワールス相互
作用を至適化するための一連のエネルギー最小化段階によりさらに改良する。
コンピュータモデル化はCDRと相互作用する残基の同定を見込む。10D5若しくは
15C11の構造のコンピュータモデルは、順に、ヒトフレームワーク構造中で置換され
た10D5若しくは15C11相補性決定領域を含有する抗体の三次元構造を予測するた
めの出発点としてはたらき得る。さらなるアミノ酸置換が導入される際に構造を表す付加
的なモデルを構築し得る。
一般に、上の基準を満たすアミノ酸の1個、大部分若しくは全部の置換が望ましい。従
って、本発明のヒト化抗体は、しばしば、選ばれた位置の最低1、2、3個若しくはそれ
以上に、対応する10D5若しくは15C11残基でのヒトL鎖フレームワーク残基の置
換を含有することができる。該ヒト化抗体は、しばしば、選ばれた位置の最低1、2、3
個若しくはそれ以上に、対応する10D5若しくは15C11残基でのヒトH鎖フレーム
ワーク残基の置換もまた含有する。
ときに、特定の1アミノ酸が上の基準に合致するかどうかについてのあいまいさを、上
の下位節cに記述されるとおり扱い得る。
置換の他の候補は、その位置でヒト免疫グロブリンにまれであるアクセプターヒトフレ
ームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸は、より典型的なヒト免疫グロブリンの同
等の位置からのアミノ酸で置換され得る。あるいは、マウス10D5若しくは15C11
中の同等の位置からのアミノ酸を、こうしたアミノ酸が該同等の位置でヒト免疫グロブリ
ンに典型的である場合はヒトフレームワーク領域に導入し得る。
置換の他の候補はフレームワーク領域中に存在する非生殖系列残基である。10D5若
しくは15C11の既知の生殖系列配列とのコンピュータ比較を実施することにより、H
若しくはL鎖に対する最大の程度の配列同一性をもつ生殖系列配列を同定し得る。フレー
ムワーク領域および生殖系列配列のアライメントは、対応する生殖系列残基での置換にど
の残基を選択しうるかを示すことができる。選択したL鎖アクセプターフレームワークと
これらの生殖系列配列の1種の間で一致しない残基を、対応する生殖系列残基での置換に
選択し得る。
10D5若しくは15C11抗体のコンピュータモデル化に使用し得るマウスおよびヒ
ト構造、ならびにアミノ酸置換の選択において使用し得る生殖系列配列は、上の下位節c
で記述された方法を使用して得ることができる。マウスおよびヒトサブグループ、ならび
にマウス10D5若しくは15C11抗体の緊密に関係したホモログの同定方法もまた上
述されている。まれなマウス残基は、ドナーVLおよび/若しくはVH配列が属する(K
abatによる)サブグループの他メンバーの配列とドナーVLおよび/若しくはVH配
列を比較すること、ならびにコンセンサスと異なる残基位置を同定することにより同定し
うる。これらのドナー特異的差違は活性を高める体細胞突然変異を指摘しうる。結合部位
に近接のまれな残基はおそらく抗原と接触することができ、マウス残基を保持することを
望ましくする。しかしながら、該まれなマウス残基が結合に重要でない場合、対応するア
クセプター残基の使用が好ましい。該マウス残基がヒト化抗体中に免疫原性の新エピトー
プを創製しうるためである。ドナー配列中のまれな残基が対応するアクセプター配列中で
実際には普遍的な残基である状況では、好ましい残基は明らかにアクセプター残基である
好ましい態様において、本発明のヒト化抗体は、(i)マウス10D5若しくは15C
11 VL CDRおよびヒトアクセプターフレームワーク(該フレームワークは、最低
1残基が対応する10D5若しくは15C11残基で置換されている)を含んでなる可変
ドメインを含んでなるL鎖、ならびに(ii)10D5若しくは15C11 VH CD
Rおよびヒトアクセプターフレームワーク(該フレームワークは、最低1、好ましくは2
,3、4、5、6、7、8若しくは9残基が対応する10D5若しくは15C11残基で
置換され、かつ、場合によっては、最低1、好ましくは2若しくは3残基が対応するヒト
生殖系列残基で置換されている)を含んでなるH鎖を含有する。
他の好ましい態様において、本発明の10D5若しくは15C11ヒト化抗体は、本明
細書に記述されるところの構造の特徴を有し、かつ、以下の活性、すなわち(1)可溶性
Aβを結合する;(2)凝集型Aβ1−42を結合する(例えばELISAにより測定さ
れるとおり);(3)斑中のAβを結合する(例えばADおよび/若しくはPDAPP斑
の染色);(4)キメラ10D5若しくは15C11(例えば、マウス可変領域配列およ
びヒト定常領域配列を有する10D5若しくは15C11)と比較して2ないし3倍より
高い結合親和性でAβを結合する;(5)Aβの食作用を媒介する(例えば本明細書に記
述されるところのex vivo食作用アッセイにおいて);ならびに(6)血液脳関門
を横断する(例えば、例えば本明細書に記述されるところPDAPP動物モデルにおいて
短期の脳局在化を示す)の最低1種(好ましくは2、3、4若しくは全部)をさらに有す
る。
別の好ましい態様において、本発明の10D5若しくは15C11ヒト化抗体は、本明
細書に記述されるところの構造の特徴を有し、かつ、さらに、以下のin vivo効果
、すなわち(1)Aβ斑負荷量を低下させる;(2)斑形成を予防する;(3)可溶性A
βのレベルを低下させる;(4)アミロイド形成障害と関連する神経炎性の病理を低下さ
せる;(5)アミロイド形成障害と関連する最低1種の生理学的症状を減じるか若しくは
改善する;および/または(6)認知機能を改善する、の最低1種を導き出すのに十分な
様式若しくは親和性でAβを結合する。
別の好ましい態様において、本発明の10D5ヒト化抗体は本明細書に記述されるとこ
ろの構造の特徴を有し、かつ、Aβの残基3−6を含んでなる1エピトープに特異的に結
合する。別の好ましい態様において、本発明の15C11ヒト化抗体は本明細書に記述さ
れるところの構造の特徴を有し、かつ、Aβの残基19−22を含んでなる1エピトープ
に特異的に結合する。
別の好ましい態様において、本発明の10D5ヒト化抗体は本明細書に記述されるとこ
ろの構造の特徴を有し、かつ、さらに、Aβ内のN末端エピトープに結合し(例えばAβ
のアミノ酸3−6内の1エピトープに結合し)、かつ、(1)Aβペプチドレベル;(2
)Aβ斑負荷量;および(3)アミロイド形成障害と関連する神経炎性負荷若しくは神経
炎性ジストロフィーを低下させることが可能である。
別の好ましい態様において、本発明の15C11ヒト化抗体は本明細書に記述されると
ころの構造の特徴を有し、かつ、さらに、Aβ内の中央のエピトープに結合し(例えばA
βのアミノ酸19−22内のエピトープに結合し)、かつ、(1)Aβペプチドレベル;
(2)Aβ斑負荷量;および(3)アミロイド形成障害と関連する神経炎性負荷若しくは
神経炎性ジストロフィーを低下させることが可能である。
g.例示的ヒト化抗体
本発明は、Aβ関連疾患若しくは障害を処置するための、とりわけ、Aβ関連疾患若し
くは障害を有する若しくはその危険性がある患者で認知の迅速な改善を遂げるための免疫
学的試薬および改良された方法を特徴とする。とりわけ、該試薬および方法は、AD若し
くは他のアミロイド形成疾患を有する若しくはその危険性がある患者の処置において有用
である。本発明は、少なくとも部分的に、とりわけin vitroおよび/若しくはi
n vivo活性アッセイで測定されるところの特徴的な生物学的活性を有する多様なモ
ノクローナル免疫グロブリンの同定および特徴付けに基づく。例示的態様において、単量
体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβを優先的に結合する(若しくはそれに対する増大
された親和性を有する)抗体を、本発明の治療方法での使用のため試薬として選択する。
他の例示的態様において、Aβ関連の認知障害の適切な動物モデルで有効性を示す抗体を
、本発明の治療方法での使用のため試薬として選択する。抗体は、以下の活性、すなわち
、βアミロイドタンパク質(Aβ)の結合(例えば可溶性および/若しくは凝集型Aβの
結合)、(例えば凝集型Aβの)食作用の媒介、斑負荷量の低下、神経炎性ジストロフィ
ーの低下および/または認知の改善(例えば被験体における)で有効の最低1種をさらに
有しうる。
好ましい局面において、本発明は免疫学的試薬、とりわけAβ抗体を包含する組成物を
特徴とする。ある態様において、該組成物は被験体で認知を迅速に改善させるのに有効な
量の抗体を包含し、該抗体はAβ内の1エピトープに特異的であり、かつ、単量体Aβに
比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合する。他の態様において、該組成物は被験
体で認知を迅速に改善させるのに有効な量の抗体を包含し、該抗体はAβ内の1エピトー
プに特異的であり、かつ、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合す
るが、但し該抗体は266抗体でない。他の態様において、該組成物は被験体で認知を迅
速に改善させるのに有効な量の抗体を包含し、該抗体はAβ内の1エピトープに特異的で
あり、かつ、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合するが、但し該
抗体は266抗体若しくは3D6抗体でない。他の態様において、該組成物は被験体で認
知を迅速に改善させるのに有効な量の抗体を包含し、該抗体はAβ内の1エピトープに特
異的であり、かつ、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合し、該抗
体は、6時間未満若しくは3時間未満若しくは1時間未満に認知の改善を遂げることが可
能である(すなわち、極めて迅速な様式で認知の改善を遂げる)。他の態様において、該
組成物は被験体で認知を迅速に改善させるのに有効な量の抗体を包含し、該抗体はAβの
残基1−5、2−7、3−6若しくは3−7、またはAβの16−23、16−24、1
9−22若しくは19−23内の1エピトープに特異的であり、かつ、単量体Aβに比較
して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合する。ある態様において、該抗体は、本明細書
に記述される3D6、6C6、2H3、10D5、12A11、2B1、1C2若しくは
15C11抗体、または被験体で認知の迅速な改善を遂げることが可能である本明細書に
記述されるいずれかの他の抗体と同一エピトープに結合する。目的の他の抗体は、例えば
米国特許出願第10/789,273号、および国際特許出願第WO01/62801A
2号明細書に記述されている。
ある態様において、該組成物は被験体で認知を迅速に改善させるのに有効な量のAβ抗
体を包含し、該抗体はAβの残基1−10内の1エピトープに特異的であり、かつ、単量
体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合する。他の態様において、該組成
物は被験体で認知を迅速に改善させるのに有効な量のAβ抗体を包含し、該抗体はAβの
残基1−10内の1エピトープに特異的であり、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コ
ンディショニング(CFC)アッセイで測定されるところのAβ関連障害の動物モデルで
の認知の迅速な改善を遂げる。付加的な態様において、該組成物は被験体で認知を迅速に
改善させるのに有効な量のAβ抗体を包含し、該抗体はAβの残基1−10内の1エピト
ープに特異的であり、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合し、か
つ、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイで測定される
ところのAβ関連障害の動物モデルでの認知の迅速な改善を遂げる。ある態様において、
Aβ抗体はAβの残基3−7内の1エピトープに結合する。他の態様において、該免疫学
的試薬は、3D6免疫学的試薬、6C6免疫学的試薬、10D5免疫学的試薬および12
A11免疫学的試薬よりなる群から選択される。他の態様において、Aβ抗体は、3D6
抗体、6C6抗体、10D5抗体および12A11抗体よりなる群から選択される。他の
態様において、Aβ抗体は3D6抗体でない。
一態様において、該抗体は3D6抗体若しくはそのバリアント、または10D5抗体若
しくはそのバリアントであることができ、それらの双方は米国特許公開第2003016
5496A1号、米国特許公開第20040087777A1号、国際特許公開第WO0
2/46237A3号明細書に記述されている。3D6および10D5の記述は、例えば
国際特許公開第WO02/088306A2号および国際特許公開第WO02/0883
07A2号明細書にもまた見出し得る。なお別の態様において、該抗体は、米国特許出願
第10/858,855号および国際特許出願第PCT/US04/17514号明細書
に記述されるところの12A11抗体若しくはそのバリアントでありうる。
ある態様において、組成物は被験体で認知を迅速に改善させるのに有効な量のAβ抗体
を包含し、該抗体はAβの残基13−28内の1エピトープに特異的であり、かつ、単量
体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合する。他の態様において、該組成
物は被験体で認知を迅速に改善させるのに有効な量のAβ抗体を包含し、該抗体はAβの
残基13−28内の1エピトープに特異的であり、かつ、コンテクチュアル・フィアー・
コンディショニング(CFC)アッセイで測定されるところのAβ関連障害の動物モデル
での認知の迅速な改善を遂げる。付加的な態様において、該組成物は被験体で認知を迅速
に改善させるのに有効な量のAβ抗体を包含し、該抗体はAβの残基13−28内の1エ
ピトープに特異的であり、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合し
、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイで測定さ
れるところのAβ関連障害の動物モデルでの認知の迅速な改善を遂げる。ある態様におい
て、Aβ抗体はAβの残基16−24内の1エピトープに結合する。他の態様において、
免疫学的試薬は、2B1免疫学的試薬、1C2免疫学的試薬、15C11免疫学的試薬お
よび9G8免疫学的試薬よりなる群から選択される。他の態様において、Aβ抗体は、2
B1抗体、1C2抗体、15C11抗体および9G8抗体よりなる群から選択される。他
の態様において、Aβ抗体は266抗体でない。ある態様において、抗体は、それと同日
付に出願されかつ“Humanized Antibodies that Recog
nize Beta Amyloid Peptide(βアミロイドペプチドを認識す
るヒト化抗体)”と題された代理人整理番号ELN−055−1に対応する米国特許出願
に記述されるところの15C11若しくは9G8抗体またはそれらのバリアントでありう
る。
なお他の態様において、Aβ抗体は1種若しくはそれ以上の向神経活性Aβ種を中和す
る。他の態様において、Aβ抗体は斑を消失する。ある態様において、本発明の組成物は
単一用量投与のため処方される。他の態様において、本発明の組成物は複数用量投与のた
め処方される。
本発明は、前述の免疫学的試薬のいずれかの組合せを包含する組成物、ならびに、有効
量のこうした免疫学的試薬の組合せを投与することによる被験体での認知の迅速な改善を
遂げる方法もまた特徴とする。ある態様において、抗体の組合せを投与し(例えば、抗体
の組合せを包含する組成物、若しくは個別の投与のため処方された各抗体を包含する組成
物)、各抗体はAβ内の1エピトープに特異的であり、かつ、単量体Aβに比較して可溶
性オリゴマーAβに優先的に結合する。他の態様において、各抗体は、6時間未満、3時
間未満若しくは1時間未満で被験体での認知の改善を遂げることが可能である(すなわち
極めて迅速な様式で認知の改善を遂げる)。他の態様は、有効量のAβのN末端エピトー
プに特異的である抗体およびAβの中央エピトープに特異的である抗体の投与を特徴とし
、各抗体は被験体での認知の迅速な改善を遂げることが可能である。なお他の態様は、有
効量のAβの残基1−10、1−5、2−7、3−6若しくは3−7内の1エピトープに
特異的な抗体およびAβの16−23、16−24、19−22若しくは19−23内の
1エピトープに特異的な抗体の投与を特徴とする。本発明の他の態様は、3D6免疫学的
試薬、6C6免疫学的試薬、10D5免疫学的試薬、12A11免疫学的試薬、2B1免
疫学的試薬、1C2免疫学的試薬、15C11免疫学的試薬、9G8免疫学的試薬および
266免疫学的試薬よりなる群から選択される免疫学的試薬の組合せを特徴とする。なお
他の態様は、各抗体が3D6、6C6、2H3、10D5、12A11、2B1、1C2
、15C11若しくは266抗体と同一のエピトープに結合する抗体の組合せを特徴とす
る。ある態様において、各抗体が3D6抗体、6C6抗体、10D5抗体、12A11抗
体、2B1抗体、1C2抗体、15C11抗体、9G8抗体および266抗体よりなる群
から選択される抗体の組合せが投与される。
本発明はさらに、選択された免疫グロブリンの可変LおよびH鎖の一次および二次構造
の決定および構造の特徴付け、ならびに活性および免疫原性に重要な残基の同定に基づく
本明細書に記述されるモノクローナル免疫グロブリンの可変Lおよび/若しくは可変H
鎖を包含する免疫グロブリンを特徴とする。ヒト化可変Lおよび/若しくはヒト化可変H
鎖を包含する好ましい免疫グロブリン、例えば治療的免疫グロブリンを特徴とする。好ま
しい可変Lおよび/若しくは可変H鎖は選択免疫グロブリン(例えばドナー免疫グロブリ
ン)からの相補性決定領域(CDR)およびヒトアクセプター免疫グロブリンから若しく
は実質的にそれからの可変フレームワーク領域を包含する。「実質的にヒトアクセプター
免疫グロブリンから」という句は、大多数の若しくは重要なフレームワーク残基がヒトア
クセプター配列からであるが、しかしながらヒト化免疫グロブリンの活性を向上させる(
例えばそれがドナー免疫グロブリンの活性をより緊密に模倣するような活性を変える)よ
う選択された、若しくはヒト化免疫グロブリンの免疫原性を低下させるよう選択された残
基での、ある位置の残基の置換を見込むことを意味している。
一態様において、本発明は、マウスモノクローナル抗体可変領域の相補性決定領域(C
DR)を包含し(すなわち、それぞれ、配列番号2、14、18、28若しくは57とし
て示されるL鎖可変領域配列からの1、2若しくは3個のCDRを包含し、かつ/または
配列番号4、16、20、30若しくは59として示されるH鎖可変領域配列からの1、
2若しくは3個のCDRを包含する)、ならびに、場合によってはフレームワーク残基の
最低1残基が対応するマウス残基に戻し突然変異されている(前記戻し突然変異はAβ結
合を指図する該鎖の能力に実質的に影響を及ぼさない)、ヒトアクセプター免疫グロブリ
ンL若しくはH鎖配列からの可変フレームワーク領域を包含する、ヒト化免疫グロブリン
L若しくはH鎖を特徴とする。
一態様において、本発明は、マウスモノクローナル抗体可変領域の相補性決定領域(C
DR)を包含し(すなわち、それぞれ、配列番号2、14、18、28若しくは57とし
て示されるL鎖可変領域配列からの1、2若しくは3個のCDRを包含し、かつ/または
配列番号4、16、20、30若しくは59として示されるH鎖可変領域配列からの1、
2若しくは3個のCDRを包含する)、ならびに、場合によってはフレームワーク残基の
最低1残基が対応するマウス残基に戻し突然変異されている(前記戻し突然変異はAβ結
合を指図する該鎖の能力に実質的に影響を及ぼさない)、実質的にヒトアクセプター免疫
グロブリンL若しくはH鎖配列からの可変フレームワーク領域を包含する、ヒト化免疫グ
ロブリンL若しくはH鎖を特徴とする。
別の態様において、本発明は、マウスモノクローナル抗体可変領域の相補性決定領域(
CDR)を包含し(例えば、それぞれ、配列番号2、14、18、28若しくは57とし
て示されるL鎖可変領域配列からの1、2若しくは3個のCDRを包含し、かつ/または
配列番号4、16、20、30若しくは59として示されるH鎖可変領域配列からの1、
2若しくは3個のCDRを包含する)、ならびに、場合によっては最低1個のフレームワ
ーク残基がマウスL若しくはH鎖可変領域配列からの対応するアミノ酸残基で置換されて
いる、実質的にヒトアクセプター免疫グロブリンL若しくはH鎖配列からの可変フレーム
ワーク領域を包含する、ヒト化免疫グロブリンL若しくはH鎖を特徴とし、該フレームワ
ーク残基は、(a)抗原を直接非共有結合する残基;(b)CDRに隣接する残基;(c
)CDRと相互作用する残基(例えば相同な既知の免疫グロブリン鎖の解明された構造で
L若しくはH鎖をモデル化することにより同定される);および(d)VL−VH界面に
参画する残基よりなる群から選択される。
別の態様において、本発明はマウスモノクローナル抗体の可変領域CDR、ならびに場
合によっては最低1個のフレームワーク残基がマウスL若しくはH鎖可変領域配列からの
対応するアミノ酸残基で置換されている、ヒトアクセプター免疫グロブリンL若しくはH
鎖配列からの可変フレームワーク領域を包含する、ヒト化免疫グロブリンL若しくはH鎖
を特徴とし、該フレームワーク残基は、可変領域の三次元モデルの解析により同定される
ところのL鎖可変領域のコンホメーション若しくは機能に影響を及ぼすことが可能な残基
、例えば抗原と相互作用することが可能な残基、抗原結合部位に近接した残基、CDRと
相互作用することが可能な残基、CDRに隣接する残基、CDR残基の6Å以内の残基、
正準残基、バーニア領域(verier zone)残基、鎖間充填残基、まれな残基、
若しくは構造モデルの表面上のグリコシル化部位残基である。
別の態様において、本発明は、上述された置換に加え最低1個のまれなヒトフレームワ
ーク残基の置換を特徴とする。例えば、まれな残基を、その位置でヒト可変鎖配列に共通
であるアミノ酸残基で置換し得る。あるいは、まれな残基は、相同な生殖系列可変鎖配列
からの対応するアミノ酸残基で置換し得る。
他の態様において、本発明の方法は、前記ポリペプチドをコードするのに適するポリヌ
クレオチド試薬、ベクターおよび宿主細胞を包含する、本明細書で特徴とされるモノクロ
ーナル抗体の相補性決定領域(CDR)を含んでなるポリペプチドを特徴とする。
別の態様において、本発明は、本明細書に記述されるところのヒト化免疫グロブリンお
よび製薬学的担体を包含する製薬学的組成物を特徴とする。本明細書に記述される免疫グ
ロブリンまたは免疫グロブリンフラグメント若しくは鎖を製造するための単離された核酸
分子、ベクターおよび宿主細胞、ならびに前記免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメ
ント若しくは免疫グロブリン鎖の製造方法もまた特徴とする。
本発明はさらに、本発明のヒト化免疫グロブリンを製造する場合に置換の影響を受けや
すい残基の同定方法を特徴とする。例えば、置換の影響を受けやすい可変フレームワーク
領域残基の同定方法は、解明された相同な免疫グロブリン構造上で選択されたマウスモノ
クローナル抗体可変領域の三次元構造をモデル化すること、および、置換の影響を受けや
すい残基が同定されるように、免疫グロブリン可変領域のコンホメーション若しくは機能
に影響を及ぼすことが可能な残基について前記モデルを分析することを必要とする。本発
明はさらに、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖若しくはそれらのドメインの三次元像の
作製における、配列番号2、14、18、28若しくは37または配列番号4、16、2
0、30若しくは59として示される可変領域配列、あるいはそれらのいずれかの部分の
使用を特徴とする。
上述された抗体の活性は、本明細書若しくは当該技術分野で記述される多様なアッセイ
のいずれか1種(例えば結合アッセイ、食作用アッセイなど)を利用して測定し得る。活
性は、in vivo(例えば標識したアッセイ成分および/若しくは画像化技術を使用
して)またはin vitro(例えば被験体由来のサンプル若しくは試料を使用して)
のいずれでもアッセイし得る。活性は直接若しくは間接のいずれでもアッセイし得る。あ
る好ましい態様において、神経学的エンドポイント(例えばアミロイド負荷量、神経炎性
負荷など)をアッセイする。こうしたエンドポイントは、非侵襲的検出の方法論を使用し
て生存被験体で(例えばアルツハイマー病の動物モデル若しくは例えば免疫療法を受けて
いるヒト被験体で)アッセイし得る。あるいは、こうしたエンドポイントは死後の被験体
でアッセイし得る。動物モデルおよび/若しくは死後のヒト被験体でこうしたエンドポイ
ントをアッセイすることは、類似の免疫療法の応用で利用されるべき多様な剤(例えばヒ
ト化抗体)の有効性の評価において有用である。他の好ましい態様において、上の神経病
理学的活性若しくはエンドポイントの指標として行動若しくは神経学的パラメータを評価
し得る。
3.可変領域の製造
ヒト化免疫グロブリンのCDRおよびフレームワーク成分を概念的に選択したら、多様
な方法がこうした免疫グロブリンを製造するのに利用可能である。一般に、抗体のHおよ
び/若しくはL鎖のマウスの相補性決定領域(CDR)の1個若しくはそれ以上をヒト化
、例えばプライマーに基づくポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して1種若しくはそ
れ以上のヒトフレームワーク領域の情況に置くことができる。簡潔には、ヒトフレームワ
ーク領域に重なりかつそれとアニーリングし得る配列もまた含有する標的マウスCDR領
域(1個若しくは複数)にアニーリングすることが可能であるプライマーを設計する。従
って、適切な条件下で、プライマーはマウスCDRをマウス抗体鋳型核酸から増幅しかつ
増幅した鋳型にヒトフレームワーク配列の一部分を付加し得る。同様に、これらのプライ
マーを使用するPCR反応が増幅されたヒトフレームワーク領域(1種若しくは複数)を
もたらす標的ヒトフレームワーク領域(1種若しくは複数)にアニーリングすることが可
能であるプライマーを設計し得る。各増幅産物をその後変性し、組合せかつ他の産物にア
ニーリングさせる場合、増幅されたヒトフレームワーク配列と重なるヒトフレームワーク
配列を有するマウスCDR領域を遺伝子的に連結し得る。従って、1種若しくはそれ以上
のこうした反応で、1個若しくはそれ以上のマウスCDR領域を介在するヒトフレームワ
ーク領域に遺伝子的に連結し得る。
いくつかの態様において、プライマーは、結果として生じたPCR増幅配列の、より大
きな遺伝子セグメント、例えば可変L若しくはH鎖セグメント、H鎖またはベクターへの
遺伝子工作を容易にするための所望の制限酵素認識配列もまた含みうる。加えて、マウス
CDR領域若しくはヒトフレームワーク領域いずれかを増幅するのに使用されるプライマ
ーも、異なるコドンがマウスCDR若しくはヒトフレームワーク領域に導入されているよ
うな、所望の不適正を有しうる。典型的な不適正は、本明細書に記述されるとおり、マウ
スCDRの構造の向きおよび従ってその結合親和性を保存若しくは改良する変化をヒトフ
レームワーク領域に導入する。
前述のアプローチを使用して、1、2若しくは全3個のマウスCDR領域を介在するヒ
トフレームワーク領域の情況に導入し得ることが理解されるべきである。プライマーに基
づくPCRを使用する多様な配列の増幅および連結方法は、例えば、Sambrook、
FritschとManiatis、Molecular Cloning:Cold
Spring Harbor Laboratory Press(1989);DNA
Cloning、Vol.1および2、(D.N.Glover編 1985);PC
R Handbook Current Protocols in Nucleic
Acid Chemistry、Beaucage編、John Wiley & So
ns(1999)(編者);Current Protocols in Molecu
lar Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons(
1992)に記述されている。
暗号の縮重により、多様な核酸配列が各免疫グロブリンアミノ酸配列をコードすること
ができる。所望の核酸配列は、所望のポリヌクレオチドの以前に調製されたバリアントの
新規固相DNA合成若しくはPCR突然変異誘発により製造し得る。オリゴヌクレオチド
媒介性の突然変異誘発は、標的ポリペプチドDNAの置換、欠失および挿入バリアントの
好ましい製造方法である。Adelmanら、DNA 2:183(1983)を参照さ
れたい。簡潔には、標的ポリペプチドDNAを、所望の突然変異をコードするオリゴヌク
レオチドを一本鎖DNA鋳型にハイブリダイズさせることにより変える。ハイブリダイゼ
ーション後に、DNAポリメラーゼを使用して、該オリゴヌクレオチドプライマーを組み
込みかつ標的ポリペプチドDNA中で選択された変化をコードする鋳型の完全な第二の相
補鎖を合成する。
4.定常領域の選択
上述されたとおり製造した抗体の可変セグメント(例えばキメラ若しくはヒト化抗体の
HおよびL鎖可変領域)は、典型的には免疫グロブリン定常領域(Fc領域)(典型的に
はヒト免疫グロブリンのもの)の少なくとも一部分に連結する。ヒト定常領域のDNA配
列は多様なヒト細胞、しかし好ましくは不死化B細胞から公知の手順に従って単離し得る
(Kabatら、上記、およびLiuら、第W087/02671号明細書(それらのそ
れぞれは全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込まれる)を参照された
い)。通常、抗体はL鎖およびH鎖双方の定常領域を含有することができる。H鎖定常領
域は通常CH1、ヒンジ、CH2、CH3およびCH4領域を包含する。本明細書に記述
される抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを包含する全部の型の定常
領域、ならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を包含するいかなるアイソ
タイプも有する抗体を包含する。抗体(例えばヒト化抗体)が細胞傷害活性を表すことが
望ましい場合、定常ドメインは通常相補固定定常ドメインであり、かつ、クラスは典型的
にIgG1である。ヒトアイソタイプIgG1およびIgG4が例示的である。L鎖定常
領域はλ若しくはκであり得る。ヒト化抗体は、1種以上のクラス若しくはアイソタイプ
からの配列を含みうる。抗体は、2本のLおよび2本のH鎖を含有する四量体として、別
個のH鎖、L鎖として、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvとして、若しくは
HおよびL鎖可変ドメインがスペーサーにより連結されている一本鎖抗体として発現し得
る。
いくつかの態様において、本明細書に記述されるヒト化抗体は、例えば米国特許第6,
946,292号明細書(その内容全体は本明細書に引用することにより組み込まれる)
に記述されるもののような技術を使用して、それらの抗原依存性細胞傷害(ADCC)活
性を高めるよう改変する。抗体のADCC活性は、一般に、例えばキラー細胞、ナチュラ
ルキラー細胞および活性化型マクロファージのようなエフェクター細胞の表面上に存在す
る抗体受容体への抗体のFc領域の結合を必要とすると考えられる。ヒト化抗体(すなわ
ちFc領域中)の炭水化物構造のフコシル化を変える(例えば減少若しくは除外する)こ
とにより、抗体のADCC活性は、in vitroで、未修飾のヒト化抗体に関して例
えば10倍若しくは20倍若しくは30倍若しくは40倍若しくは50倍若しくは100
倍高め得る。増大されたADCC活性のため、こうした修飾された抗体は、それらの未修
飾の対照物より低投薬量で使用し得、そして一般に患者でより少ない若しくは低下された
副作用を有し得る。
いくつかの態様において、こうした抗体がアグリコシル化された定常領域を包含する、
ヒト化抗体のアグリコシルバージョンを特徴とする。Asn−297のオリゴ糖が正常な
ヒトIgG抗体の特徴的特徴である(Kabatら、1987、Sequence of
Proteins of Immunological Interest、米国保健
福祉省刊行物(U.S.Department of Health Human Se
rvices Publication)を参照されたい)。IgG分子中の2本のH鎖
のそれぞれは、例えば位置297のアスパラギン残基のアミド基に連結されている単一の
分枝状鎖炭水化物基を有する。例えばアスパラギンのアラニンでの置換は、例えば米国特
許第6,706,265号明細書(引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述
されるとおり抗体のグリコシル化を予防する。特定の一態様において、位置297のアミ
ノ酸残基Asnをアラニンに突然変異する。
5.組換え抗体の発現
キメラおよびヒト化抗体は典型的に組換え発現により製造する。場合によっては定常領
域に連結されたLおよびH鎖可変領域をコードする核酸を発現ベクターに挿入する。Lお
よびH鎖は同一若しくは異なる発現ベクターにクローン化し得る。免疫グロブリン鎖をコ
ードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実にする、発現ベ
クター(1種若しくは複数)中の制御配列に作動可能に連結される。発現制御配列は、限
定されるものでないが、プロモーター(例えば天然に関連する若しくは異種のプロモータ
ー)、シグナル配列、エンハンサー要素および転写終止配列を挙げることができる。好ま
しくは、発現制御配列は、真核生物宿主細胞(例えばCOS若しくはCHO細胞)を形質
転換若しくはトランスフェクトすることが可能なベクター中の真核生物プロモーター系で
ある。ベクターが適切な宿主に一旦組み込まれれば、該宿主を、ヌクレオチド配列の高レ
ベル発現、ならびに交差反応性抗体の収集および精製に適する条件下で維持する。
これらの発現ベクターは、典型的に、エピソーム若しくは宿主染色体DNAの一体部分
のいずれかとして宿主生物体中で複製可能である。一般に、発現ベクターは、所望のDN
A配列で形質転換した細胞の検出を可能にするための選択マーカー(例えば、アンピシリ
ン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性若しくはネオ
マイシン耐性)を含有する(例えば、Itakuraら、米国特許第4,704,362
号明細書を参照されたい)。
大腸菌(E.coli)は本発明のポリヌクレオチド(例えばDNA配列)をクローン
化するのにとりわけ有用な1種の原核生物宿主である。使用に適する他の細菌宿主は、枯
草菌(Bacillus subtilis)のような桿菌、ならびにサルモネラ属(
almonella)、セラチア属(Serratia)および多様なシュードモナス属
Pseudomonas)スピーシーズのような他の腸内細菌科を包含する。これらの
原核生物宿主中で、該宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば複製起点)を典型的に含
有することができる発現ベクターもまた作成し得る。加えて、乳糖プロモーター系、トリ
プトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系、若しくはファ
ージλからのプロモーター系のようないずれかの数の多様な公知のプロモーターが存在す
ることができる。プロモーターは、典型的には、場合によってはオペレーター配列を伴い
発現を制御することができ、また、転写および翻訳を開始および終了させるためのリボソ
ーム結合部位配列などを有することができる。
酵母のような他の微生物もまた発現に有用である。サッカロミセス属(Sacchar
omyces)は好ましい酵母宿主であり、適するベクターは発現制御配列(例えばプロ
モーター)、複製起点、終止配列などを所望のとおり有する。典型的なプロモーターは3
−ホスホグリセリン酸キナーゼおよび他の解糖酵素を包含する。誘導可能な酵母プロモー
ターは、とりわけ、アルコール脱水素酵素、イソチトクロームC、ならびに麦芽糖および
ガラクトース利用を司る酵素からのプロモーターを包含する。
微生物に加え、哺乳動物組織細胞培養物もまた本発明のポリペプチドを発現かつ製造す
るのに使用しうる(例えば免疫グロブリン若しくはそれらのフラグメントをコードするポ
リヌクレオチド)。Winnacker、From Genes to Clones、
VCH Publishers、ニューヨーク州ニューヨーク(1987)を参照された
い。真核生物細胞は、異種タンパク質(例えば無傷の免疫グロブリン)を分泌することが
可能な多数の適する宿主細胞株が当該技術分野で開発されているため実際に好ましく、そ
してCHO細胞株、多様なCos細胞株、HeLa細胞、好ましくは骨髄腫細胞株、若し
くは形質転換B細胞またはハイブリドーマを包含する。好ましくは細胞はヒト以外である
。これらの細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーターおよびエンハンサー(
Queenら、Immunol.Rev.89:49(1986))のような発現制御配
列、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転
写終止配列のような必要なプロセシング情報部位を包含し得る。好ましい発現制御配列は
、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイト
メガロウイルスなど由来のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:
1149(1992)を参照されたい。
あるいは、抗体をコードする配列は、トランスジェニック動物のゲノムへの導入および
該トランスジェニック動物の乳中でのその後の発現のため、導入遺伝子に組み込み得る(
例えば、Deboerら、米国特許第5,741,957号、Rosen、米国特許第5
,304,489号、およびMeadeら、米国特許第5,849,992号明細書を参
照されたい)。適する導入遺伝子は、カゼイン若しくはβ−ラクトグロブリンのような乳
腺特異的遺伝子からのプロモーターおよびエンハンサーとの操作可能な連結にあるLおよ
び/若しくはH鎖のコーディング配列を包含する。
あるいは、本発明の抗体(例えばヒト化抗体)はトランスジェニック植物(例えばタバ
コ、トウモロコシ、ダイズおよびアルファルファ)中で製造し得る。改良された「プラン
ティボディ(plantibody)」ベクター(Hendyら(1999)J.Imm
unol.Methods 231:137−146)、および形質転換可能な作物種の
増大と結合された精製戦略が、こうした方法を、ヒトおよび動物の治療のみならずしかし
同様に工業的応用のためにも組換え免疫グロブリンの実際的かつ効率的な製造手段にする
。さらに、植物で産生される抗体は安全かつ有効であることが示されており、また、動物
由来材料の使用、および従って伝染性海綿状脳症(TSE)の病原体での汚染の危険を回
避する。さらに、植物および哺乳動物細胞で産生される抗体のグリコシル化パターンの差
違は抗原結合若しくは特異性にほとんど若しくは全く影響を有しない。加えて、毒性すな
わちHAMAの証拠は、植物由来の分泌型二量体IgA抗体の局所経口適用を受領する患
者で観察されていない(Larrickら(1998)Res.Immunol.149
:603−608を参照されたい)。
トランスジェニック植物で組換え抗体を発現するのに多様な方法を使用しうる。例えば
、抗体HおよびL鎖を発現ベクター(例えばアグロバクテリウム ツメファシエンス(
grobacterium tumefaciens)ベクター)に独立にクローン化し
得、次いで該組換え細菌で植物組織をin vitroで形質転換するか、若しくは例え
ば該ベクターで被覆した粒子(その後例えば遺伝子銃を使用して植物組織に物理的に導入
する)を使用して直接形質転換する。その後、個々の鎖を発現する全植物を再構成し、次
いでそれらを性的交雑し、最終的に完全に集成されかつ機能的な抗体の産生をもたらす。
類似のプロトコルが、タバコ植物で機能的抗体を発現するのに使用されている(Hiat
tら(1989)Nature 342:76−87を参照されたい)。多様な態様にお
いて、シグナル配列を利用して、未集成の抗体鎖を適切な植物環境(例えばアポプラズマ
または根茎、果実若しくは種子を包含する他の特定の植物組織の水性環境)に向けること
により該鎖の発現、結合およびフォールディングを促進しうる(Fiedlerら(19
95)Bio/Technology 13:1090−1093を参照されたい)。植
物バイオリアクターもまた、抗体収量を増大させかつ費用を大きく低減させるのに使用し
得る。
目的のポリヌクレオチド配列(例えばHおよびL鎖をコードする配列および発現制御配
列)を含有するベクターは、細胞宿主の型に依存して変動する公知の方法により宿主細胞
に移入し得る。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは原核生物細胞に一般に利
用される一方、リン酸カルシウム処理、電気穿孔法、リポフェクション、遺伝子銃若しく
はウイルスに基づくトランスフェクションを他の細胞宿主に使用しうる(全般として、S
ambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory
Manual(Cold Spring Harbor Press、第2版、1989
)(全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込まれる)を参照されたい)
。哺乳動物細胞を形質転換するのに使用される他の方法は、ポリブレン、プロトプラスト
融合、リポソーム、電気穿孔法および微小注入法の使用を包含する(全般として、Sam
brookら、上記を参照されたい)。トランスジェニック動物の製造のためには、導入
遺伝子を受精卵母細胞に微小注入し得るか、若しくは胚性幹細胞のゲノムに組み込み得、
そしてこうした細胞の核を除核卵母細胞に移入し得る。
HおよびL鎖を別個の発現ベクターにクローン化する場合、該ベクターをコトランスフ
ェクトして無傷の免疫グロブリンの発現および集成を得る。一旦発現されれば、全抗体、
それらの二量体、個々のLおよびH鎖、若しくは本発明の他の免疫グロブリンの形態を、
硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精
製、ゲル電気泳動などを包含する当該技術分野の標準的手順に従って精製し得る(全般と
して、Scopes、Protein Purification(Springer−
Verlag、ニューヨーク(1982)を参照されたい)。製薬学的使用には、最低約
90ないし95%均一な実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、そして98ないし9
9%若しくはそれ以上の均一性が最も好ましい。
6.抗体フラグメント
抗体フラグメントもまた本発明の範囲内で企図している。一態様において、ヒト以外の
および/若しくはキメラの抗体のフラグメントが提供される。別の態様において、ヒト化
抗体のフラグメントが提供される。典型的には、これらのフラグメントは最低10、お
よびより典型的には10若しくは10−1の親和性での抗原への特異的結合を表す
。ヒト化抗体フラグメントは、別個のH鎖、L鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、
FabcおよびFvを包含する。フラグメントは組換えDNA技術、または無傷の免疫グ
ロブリンの酵素的若しくは化学的分離により製造する。
いくつかの態様において、抗体フラグメント(例えばFab若しくはFab’)の一般
に短い半減期がペグ化により延長される。これは一般に、例えばLeongら Cyto
kine 16、106−119(2001)により記述されるとおりポリエチレングリ
コール(PEG)への融合により達成される。ペグ化は、所望の場合はFc受容体に媒介
される機能を排除しかつ/若しくは免疫原性を低下させるという付加された利点を有する
。例示的態様において、2〜20kDaのPEG分子を、例えば、K−リンカー−Cを介
して抗体H鎖ヒンジ領域に共有結合する(例えば、Choyら、Rheumatol.4
1:1133−1137(2002)を参照されたい)。
7.エピトープマッピング
エピトープマッピングを実施して、Aβのどの抗原決定基すなわちエピトープが該抗体
により認識されるかを決定し得る。一態様において、エピトープマッピングは置換NET
(rNET)分析に従って実施する。rNETエピトープ地図アッセイは、該抗体の全体
的結合活性への該エピトープ内の個々の残基の寄与についての情報を提供する。rNET
分析は合成された体系的単一置換ペプチドアナログを使用する。試験されている抗体の結
合を、天然のペプチド(天然の抗原)および19種の代替の「単一置換」ペプチド(各ペ
プチドは第一の位置でその位置の19種の非天然のアミノ酸の1種で置換されている)に
対し測定する。多様な非天然の残基でのその位置の置換の影響を反映したプロファイルが
生成される。プロファイルは同様に、抗原ペプチドに沿った連続する位置でも生成される
。組み合わせたプロファイル、すなわちエピトープ地図(全19種の非天然のアミノ酸で
の各位置の置換を反映する)をその後、第二の抗体について同様に生成した地図と比較し
得る。実質的に類似若しくは同一の地図は、比較されている抗体が同一若しくは類似のエ
ピトープ特異性を有することを示す。
8.動物モデルでの治療的有効性(例えば斑消失活性)についての抗体の試験
7〜9月齢のPDAPPマウスの群それぞれに、PBS中0.5mgのポリクローナル
抗Aβ若しくは特異的抗Aβモノクローナル、ヒト化またはキメラ抗体を注入する。全抗
体調製物は低エンドトキシンレベルを有するように精製する。モノクローナル抗体は、A
βのフラグメント若しくはより長い形態をマウスに注入すること、ハイブリドーマを調製
すること、およびAβの他の重ならないフラグメントに結合することなくAβの所望の1
フラグメントに特異的に結合する抗体について該ハイブリドーマをスクリーニングするこ
とにより、1フラグメントに対し製造し得る。ヒト化および/若しくはキメラ抗体は本明
細書に記述されるとおり製造する。
Aβ42若しくは他の免疫原に対するELISAにより定義される1/1000以上の
ELISA力価により測定される循環抗体濃度を維持ため、マウスに4か月間にわたり必
要とされるように腹腔内注入する。力価をモニターし、そしてマウスを6か月の注入の終
了時に安楽死させる。組織化学、Aβレベルおよび毒物学を死後に実施する。10匹のマ
ウスを1群あたりに使用する。
9.可溶性オリゴマーAβへの結合についての抗体の試験
本発明はまた、生化学的アッセイでの可溶性のオリゴマーAβに結合する抗体の能力の
試験方法も提供する。該生化学的アッセイは、少なくとも部分的に、単量体Aβへの抗体
の結合に比較した1種若しくはそれ以上の形態の可溶性オリゴマーAβ(例えばAβ二量
体、Aβ三量体、Aβ四量体、Aβ五量体など)への該抗体の結合の比較に基づく。この
比較を使用して、単量体Aβに比較しての可溶性オリゴマーAβへの抗体の相対的結合を
決定し得る。多様な態様において、この相対的結合を、単量体Aβに対する1種若しくは
それ以上の可溶性オリゴマーAβへの対照試薬の対応する相対的結合と比較する。他の局
面において、1種若しくはそれ以上のオリゴマーAβ種に対する抗体の親和性を、Aβ調
製物中の単量体Aβに対する該抗体の親和性と比較する。可溶性オリゴマーAβ種を優先
的に結合するAβ抗体の能力と、詳細に下述されるところの適切なモデル動物でのCFC
アッセイにより評価されるところの認知を迅速に改善する該抗体の能力の間に、強い相関
が存在することが発見された。CFCアッセイでの認知を改善する抗体の能力は、該抗体
の最終的なヒト治療の有効性(とりわけ患者での認知の迅速な改善における有効性)の強
力な指標若しくは予測因子であるとさらに考えられる。従って、Aβ抗体結合の優先性お
よび/若しくは親和性の比較は、本発明の治療法での使用、とりわけ患者で認知の迅速な
改善を遂げる方法での使用のための候補としてのある種の抗体の同定に至る。
候補抗体は、単量体Aβに比較して1種若しくはそれ以上の可溶性オリゴマーAβ種へ
の優先的なすなわちより大きい結合を表す。単量体Aβに比較して例えばAβ二量体、三
量体および四量体に優先的に結合する抗体は、患者で認知の迅速な改善を遂げる方法での
使用のための好ましい候補である。例えば、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβ
種への2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍若しくはそれ以上大きい結合を表す候補
抗体を、治療方法での使用に選択する。
1種若しくはそれ以上の可溶性オリゴマーAβ種または単量体Aβへの抗体の結合は、
定性的、定量的、若しくは双方の組合せで測定し得る。一般に、該種を含んでなるAβ調
製物中の単量体AβとオリゴマーAβ種を識別することが可能ないかなる技術も使用し得
る。例示的態様において、免疫沈降法、電気泳動分離およびクロマトグラフィー分離(例
えば液体クロマトグラフィー)の1種若しくはそれ以上を使用して、該種を含んでなるA
β調製物中の単量体AβとオリゴマーAβ種を識別し得る。
好ましい態様において、1種若しくはそれ以上の可溶性のオリゴマーAβ種または単量
体Aβへの抗体の結合は、Aβ種を調製物から免疫沈降させることにより測定する。免疫
沈降物をその後電気泳動分離(例えばSDS−PAGE)にかけて、オリゴマー種を沈殿
物中の単量体Aβと識別する。電気泳動バンド中に存在するオリゴマーAβ種および単量
体Aβの量は、例えば電気泳動ゲルのイムノブロッティング、若しくは電気泳動ゲルのバ
ンド中のそれぞれの種の直接定量により可視化し得る。1Aβ種の沈殿物の量は、例えば
対応する電気泳動バンド、イムノブロットのバンド若しくは双方の組合せの強度から測定
し得る。強度の測定は定性的、定量的若しくは双方の組み合わせであり得る。
バンド強度の評価は、例えば、走査し得る適切なフィルム露光、およびソフトウェア、
例えばAlphaEaseTMソフトウェア(AlphaInnotechTM)で測定
されるバンドの強度を使用して実施し得る。バンド強度の評価は、例えば抗体、画像化試
薬(例えばイムノブロットで使用される抗体)若しくは双方に取り込まれる多数の標識の
いずれを使用しても実施し得る。適する標識は、限定されるものでないが、蛍光標識、放
射活性標識、常磁性標識、若しくはそれらの組合せを挙げることができる。
多様な態様において、抗体に結合する1種若しくはそれ以上のオリゴマーAβ種および
/若しくは単量体Aβの量は、例えばそれを抗体と接触させた適する時間後のAβ調製物
それ自身、あるいは、Aβ調製物から抽出された抗体に結合した単量体Aβおよび/また
は1種若しくはそれ以上の可溶性オリゴマーAβ種での質量分析を使用して評価し得る。
ある局面において、1種若しくはそれ以上のオリゴマーAβ種に対する抗体の親和性を
単量体Aβに対する該抗体の親和性と比較して、本発明の治療方法での使用、とりわけ患
者での認知の迅速な改善を遂げる方法での使用の候補として該抗体を同定する。単量体A
βに比較してのオリゴマーAβに対する試験抗体(例えばAβ抗体)の親和性を、対照試
薬の結合親和性と比較し得る。標識を使用して単量体Aβ、オリゴマーAβ若しくは双方
に対する抗体の親和性を評価し得る。多様な態様において、Aβに対する親和性をもつ一
次試薬は未標識であり、そして二次標識剤を使用して一次試薬に結合する。適する標識は
、限定されるものでないが蛍光標識、常磁性標識、放射活性標識およびそれらの組合せを
挙げることができる。
ある局面において、本発明の方法は、被験体での免疫治療の有効性を適して予測するア
ッセイの使用において抗Aβ抗体が同定される、被験体での認知を迅速に改善することが
可能である抗Aβ抗体の投与を特徴とする。例示的態様において、該アッセイは、試験免
疫治療薬へのAβ調製物中の1種若しくはそれ以上のAβオリゴマーの結合の、試験免疫
治療薬へのAβ調製物中のAβ単量体の結合との比較に少なくとも部分的に基づく生化学
的アッセイである。1種若しくはそれ以上のAβオリゴマーは、例えばAβ二量体、Aβ
三量体、Aβ四量体およびAβ五量体の1種若しくはそれ以上を包含し得る。多様な態様
において、試験免疫治療薬は、試験免疫治療薬へのAβ調製物中の1種若しくはそれ以上
のAβオリゴマーの結合が試験免疫治療薬へのAβ調製物中Aβ単量体の結合より大きい
場合に同定される。試験免疫学的試薬に結合するAβ調製物中のAβ単量体および1種若
しくはそれ以上のAβオリゴマー種の量は、生化学的方法を使用して、例えば試験免疫学
的試薬に結合されたAβ単量体および1種若しくはそれ以上のAβオリゴマー種をAβ調
製物から沈殿させるための免疫沈降法、次いで免疫沈降物の電気泳動分離を使用して評価
し得る。こうした生化学的アッセイは、本明細書、ならびに双方とも“AN IMMUN
OPRECIPITATION−BASED ASSAY FORPREDICTING
IN VIVO EFFICACY OF BETA−AMYLOID ANTIBO
DIES(βアミロイド抗体のin vivo有効性を予測するための免疫沈降に基づく
アッセイ)”と題された、2004年12月15日出願の米国仮出願第60/636,6
87号および2005年11月10日出願の同第60/736,045号明細書(それぞ
れの内容全体は本明細書に引用することにより組み込まれる)にさらに論考されている。
10.消失活性についての抗体のスクリーニング
本発明は、消失活性が望ましいアミロイド沈着物若しくはいずれかの他の抗原、または
関連する生物学的実体の消失における活性についての抗体のスクリーニング方法もまた提
供する。アミロイド沈着物に対する活性についてスクリーニングするため、アルツハイマ
ー病を伴う患者、若しくは特徴的なアルツハイマーの病理学を有する動物モデルの脳から
の組織サンプルを、小膠細胞のようなFc受容体を担持する食細胞および試験中の抗体と
媒体中でin vitroで接触させる。食細胞は初代培養物若しくは細胞株であり得、
そしてマウス(例えばBV−2若しくはC8−B4細胞)またはヒト起源(例えばTHP
−1細胞)のものであり得る。いくつかの方法において、顕微鏡モニタリングを容易にす
るために成分を顕微鏡用スライドガラス上で組合せる。いくつかの方法において、複数の
反応をマイクロタイター皿のウェル中で同時に実施する。こうした形式では、別個の小型
顕微鏡用スライドガラスを別個のウェルにマウントし得るか、若しくはAβのELISA
検出のような非顕微鏡的検出形式を使用し得る。好ましくは、一連の測定は、反応が進行
する前の基礎値から出発するin vitro反応混合物中のアミロイド沈着物の量、お
よび反応中の1個若しくはそれ以上の試験値から構成される。抗原は、例えばAβ若しく
はアミロイド斑の他成分に対する蛍光標識抗体での染色により検出し得る。染色に使用す
る抗体は、消失活性について試験されている抗体と同一であってももしくはなくてもよい
。アミロイド沈着物の反応中の基礎に関しての低下は、試験中の抗体が消失活性を有する
ことを示す。こうした抗体はアルツハイマー病および他のアミロイド形成疾患の予防若し
くは処置において有用であることがありそうである。アルツハイマー病および他のアミロ
イド形成疾患を予防若しくは処置するためのとりわけ有用な抗体は、稠密および拡散双方
のアミロイド斑を消失させることが可能なもの、例えば本発明の12A11抗体、または
そのキメラ若しくはヒト化バージョンを包含する。
類似の方法を使用して、他の型の生物学的実体の消失における活性について抗体をスク
リーニングし得る。該アッセイを使用して、事実上いかなる種類の生物学的実体に対して
も消失活性を検出し得る。典型的には、生物学的実体はヒト若しくは動物の疾患において
何らかの役割を有する。生物学的実体は組織サンプルとして若しくは単離された形態で提
供し得る。組織サンプルとして提供される場合、該組織サンプルは、好ましくは、該組織
サンプルの成分への容易な到達を可能にしかつ固定に偶発する成分のコンホメーションの
破壊を回避するために固定しない。本アッセイで試験し得る組織サンプルの例は、癌組織
、前癌組織、疣贅若しくは母斑のような良性増殖を含有する組織、病原性微生物に感染し
た組織、炎症細胞に浸潤された組織、細胞間に病理学的マトリックスを担持する組織(例
えば線維素性心外膜炎)、異常な抗原を担持する組織、および瘢痕組織を包含する。使用
し得る単離された生物学的実体の例は、Aβ、ウイルス抗原若しくはウイルス、プロテオ
グリカン、他の病原性微生物の抗原、腫瘍抗原および接着分子を包含する。こうした抗原
は、とりわけ天然の供給源、組換え発現若しくは化学合成から得ることができる。組織サ
ンプル若しくは単離された生物学的実体を、単球若しくは小膠細胞のようなFc受容体を
担持する食細胞、および試験されるべき抗体と媒体中で接触させる。抗体は、試験中の生
物学的実体若しくは該実体と関連する抗原に向けることができる。後者の状況での目的は
生物学的実体が抗原とともに貪食されるかどうかを試験することである。通常、とは言え
必ずではなく、抗体および生物学的実体(ときに関連抗原を伴う)は食細胞を添加する前
に相互と接触させる。生物学的実体および/若しくは媒体中に残存する関連抗原(存在す
る場合)の濃度をその後モニターする。媒体中の抗原若しくは関連する生物学的実体の量
若しくは濃度の低下は、該抗体が食細胞とともに抗原および/若しくは関連する生物学的
実体に対する消失応答を有することを示す。
11.CFCアッセイにおけるに認知の迅速な若しくは長期の改善についての抗体の試験
多様な局面において、本発明の抗体は、認知を改善する能力について適切な動物モデル
で試験し得る。例えば、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)ア
ッセイを介して評価されるところのADの動物モデルで認知を改善する抗体の能力を使用
して、本発明の治療方法、とりわけ患者での認知の迅速な改善を遂げる方法での使用のた
めの候補として該抗体を選択し得る。
コンテクチュアル・フィアー・コンディショニングは、大部分の動物、例えば哺乳動物
で例外的に信頼できかつ迅速に取得される学習の普遍的な一形態である。試験動物は、有
害経験とのその関連により以前は中立の刺激および/若しくは環境を恐れることを学習す
る(例えばFanselow、Anim.Learn.Behav.18:264−27
0(1990);Wehnerら、Nature Genet.17:331−334.
(1997);Caldaroneら、Nature Genet.17:335−33
7(1997)を参照されたい)。
コンテクチュアル・フィアー・コンディショニングは、例えば神経変性疾患若しくは障
害、Aβ関連疾患若しくは障害、アミロイド形成疾患若しくは障害のような疾患若しくは
障害の結果としての認知機能若しくは機能低下、認知機能に影響を及ぼす不都合な遺伝子
変化の存在(例えば遺伝子突然変異、遺伝子破壊若しくは望ましくない遺伝子型)、およ
び/または認知能力に対する剤、例えば免疫学的試薬の有効性を決定するのにとりわけ有
用である。従って、CFCアッセイは、認知疾患若しくは障害、およびとりわけ脳の1種
若しくはそれ以上の領域、例えば海馬、鉤状回、帯状皮質、前頭葉前皮質、鼻周囲皮質、
感覚皮質および側頭葉内側部を冒す疾患若しくは障害を予防若しくは処置するための剤の
治療効果の独立の試験および/若しくは検証方法を提供する。
典型的には、CFCアッセイは、標準的動物室、ならびに聴覚(例えばある期間の85
dbホワイトノイズ)、嗅覚(例えばアーモンド若しくはレモン抽出物)、触覚(例えば
床ケージの質感)および/または視覚刺激(光点滅)と対にした軽度ショック(例えば0
.35mAの足ショック)を含んでなる条件付け訓練の使用を使用して実施する。あるい
は、条件付け訓練は対にした刺激(すなわち文脈を伴うショック)のないショックの投与
を含んでなる。嫌悪経験(ショック)に対する応答は、典型的にはフリージング(呼吸を
除く動きの非存在)の1種であるが、しかし、選択した試験動物に依存して瞬き若しくは
瞬膜反射の変化もまた包含しうる。嫌悪応答は通常、訓練の第一日に特徴付け、コンテク
チュアル・フィアー・コンディショニングとして特徴づけられるその後の試験日の嫌悪応
答結果(例えば、同一情況しかし嫌悪刺激の非存在下でのフリージング、および/若しく
は刺激の存在下しかし嫌悪経験の非存在下でのフリージング)を伴う未条件付け恐怖の基
礎を決定する。向上された信頼性のため、試験動物は、典型的には独立の技術者により長
期にわたり個別に試験しかつ記録する。付加的な実験デザインの詳細は、当該技術分野、
例えばCrawley,JN、What’s Wrong with my Mouse
;Behavioral Phenotyping of Transgenic an
d Knockout Mice、Wiley−Liss、ニューヨーク(2000)に
見出し得る。
例示的試験動物(例えばモデル動物)は、アルツハイマー病のようなアミロイド形成障
害に特徴的である顕著な症状若しくは病理学を表す哺乳動物(例えばげっ歯類若しくはヒ
ト以外の霊長類)を包含する。モデル動物は、所望のについて選択的に同系交配すること
により創製しうるか、または、それらは、痴呆障害と関連づけらている遺伝子中の標的と
された遺伝子変化(例えば遺伝子突然変異、遺伝子破壊)が、標的とされた遺伝子の異常
な発現若しくは機能につながるような、当該技術分野で公知であるトランスジェニック技
術を使用して遺伝子工作しうる。例えば、アルツハイマー病に特徴的であるAPPを過剰
発現しかつアミロイド斑の病理学を発生しかつ/若しくは認知障害を発症する数種のトラ
ンスジェニックマウス系統が入手可能である(例えば、Gamesら、上記、Johns
on−Woodら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:1550(
1997);Masliah EとRockenstein E.(2000)J Ne
ural Transm Suppl.;59:175−83を参照されたい)。
あるいは、モデル動物は、アミロイド形成障害の特徴的な症状若しくは病理学と関連す
る解剖学的脳領域(例えば海馬、扁桃体、鼻周囲皮質、内側中隔核、青斑核、乳頭体(m
ammalary bodies))または特定のニューロン(例えばセロトニン作動性
、コリン作動性若しくはドーパミン作動性ニューロン)の正常機能を除去若しくは別の方
法で妨害する化合物(例えば神経毒、麻酔薬)若しくは外科的手技(例えば定位切除、軸
索切断、切離、吸引)を使用して創製し得る。ある好ましい態様において、動物モデルは
、アミロイド形成障害と関連する神経変性の病理に加え、学習若しくは記憶と関連する顕
著な認知障害を表す。より好ましくは、認知障害は、モデル動物での疾患の進行がアミロ
イド形成障害に罹患している被験体での疾患の進行と平行するような、齢とともに進行的
に悪化する。
本明細書に記述される抗体の機能性を試験するためのコンテクチュアル・フィアー・コ
ンディショニングおよび他のin vivoアッセイは、野性型マウス、または損なわれ
た記憶につながるある種の遺伝子変化を有するマウス、あるいは脳脊髄液(CSF)若し
くは血漿中の可溶性Aβの上昇したレベルを表すマウスモデルを包含する神経変性疾患例
えばアルツハイマー病のマウスモデルを使用して実施しうる。例えば、アルツハイマー病
の動物モデルは、年齢依存性の記憶障害および斑を示すヒトアミロイド前駆体タンパク質
の「スウェーデン型」突然変異(hAPPswe:Tg2576)を過剰発現するトラン
スジェニックマウス(Hsiaoら(1996)Science 274:99−102
)を包含する。本明細書に記述される抗体のin vivo機能性は、若齢で変異体の形
態のヒトAPP(APPV71F)を発現しかつアルツハイマー病を発症するPDAPP
トランスジェニックマウス(Bardら(2000)Nature Medicine
6:916−919;Masliah Eら(1996)J Neurosci.15;
16(18):5795−811)を使用してもまた試験し得る。アルツハイマー病の他
のマウスモデルは、Duffら(1996)Nature 383、710−713に記
述されるPS−1変異体マウス、ならびにHolcombら(1998)Nature
Medicine 4:97−110に記述されるPSAPPマウス、すなわち変異体A
PP(例えばスウェーデン型変異体APP(hAPPswe))およびPS1導入遺伝子
を過剰発現する二重トランスジェニックマウス(PSAPP)を包含する。PSAPPマ
ウスモデルはADで観察されるものに類似であるアミロイド斑の齢に関連した発生を表す
(Kumar−Singhら、Am J Pathol.(2005)、167(2):
527−43)。3月齢くらい早期のPSAPPマウスの前頭皮質および海馬でのAβの
沈着は、12月齢で脳のこれらの領域の大きな部分を覆うように進行する(Takach
iら、Am.J.Pathol.(2000)、157(1):331−9;McGow
anら、Neurobiol Dis.(1999)、6(4):231−44)。PS
APPマウスは、それらが10月齢以上である場合、例えばそれらがおよそ20月齢であ
る場合にCFCで評価し得る。とりわけ、20月齢のPSAPPマウスはとりわけ顕著な
文脈的記憶障害および斑の密な蓄積を有し、そして従って本発明の方法の例示的モデル動
物である。アルツハイマー病の他の遺伝子的に変えられたトランスジェニックモデルがM
asliah EとRockenstein E.(2000)J Neural Tr
ansm Suppl.59:175−83に記述されている。
ある態様において、モデル動物が該疾患の症状(例えば記憶障害)を表すがしかし疾患
の病理学(例えば斑形成)を欠く齢で、本発明の方法を使用してそれらを評価する。例示
的態様において、モデル動物がおよそ10週齢若しくはそれ以上である場合、より好まし
くはそれらがおよそ20週齢若しくはそれ以上である場合に、本発明の方法を使用してそ
れらを評価する。とりわけ、およそ20週齢のトランスジェニックADマウスは、とりわ
け顕著な文脈的記憶障害を有し、そして従って本発明の方法の好ましいモデル動物である
他の態様において、モデル動物が該疾患の症状(例えば記憶障害)および疾患の病理学
の双方を表す齢で、本発明の方法を使用してそれらを評価する。例示的態様において、モ
デル動物は、それらがおよそ10月齢若しくはそれ以上である場合、若しくはそれらが1
5月齢若しくはそれ以上である場合若しくはそれ以上である場合に評価する。好ましい一
態様において、およそ18〜20月齢のトランスジェニックADマウスを本発明の方法を
使用して評価する。18〜20月齢のトランスジェニックADマウスは比較的老齢の動物
であり、そしてそれらの脳中の密な斑形成ならびに顕著な記憶障害を有することがありそ
うである。
多様な局面において、本発明の方法は、被験体で認知を迅速に改善することが可能であ
る抗Aβ抗体の投与を含んでなり、抗Aβ抗体は被験体での免疫療法の有効性を適して予
測するアッセイを使用して同定されている。例示的態様において、該アッセイは、適する
対照と比較して、動物への試験免疫学的試薬の投与後の動物のコンテクチュアル・フィア
ー・コンディショニング研究から決定されるところの認知を比較することに少なくとも部
分的に基づくモデル動物アッセイである。CFCアッセイは、潜在的治療的化合物での処
置に際しての動物(典型的にはマウス若しくはラット)の認知の変化を評価する。ある態
様において、評価される認知の変化は記憶障害状態の改善若しくは記憶障害の逆転である
。従って、CFCアッセイは、認知疾患、およびとりわけ脳の1種若しくはそれ以上の領
域、例えば海馬、鉤状回、帯状皮質、前頭葉前皮質、鼻周囲皮質、感覚皮質および側頭葉
内側部を冒す疾患若しくは障害を予防若しくは処置するための剤の治療効果の直接測定方
法を提供する。こうしたCFCアッセイは、本明細書、ならびに2004年12月15日
出願の米国仮出願第60/636,842号、2004年12月16日出願の同第60/
637,253号、および2005年11月10日出願の同第60/736,119号明
細書(それらのそれぞれの内容全体は本明細書に引用することにより組み込まれる)でさ
らに論考されている。
12.変えられたエフェクター機能を有するキメラ/ヒト化抗体
定常領域(Fc領域)を含んでなる本発明の上述された抗体について、該分子のエフェ
クター機能を変えることもまた望ましいことがある。一般に、抗体のエフェクター機能は
、多様なエフェクター分子、例えば補体タンパク質若しくはFc受容体への結合を媒介し
得る該分子の定常すなわちFc領域に存する。Fc領域への補体の結合は、例えば細胞病
原体の捕食および溶解ならびに炎症応答の活性化で重要である。例えばエフェクター細胞
の表面上のFc受容体への抗体の結合は、例えば抗体で被覆された病原体若しくは粒子の
貪食および破壊、免疫複合体の消失、キラー細胞による抗体で被覆された標的細胞の溶解
(すなわち抗体依存性の細胞媒介性細胞傷害すなわちADCC)、炎症メディエーターの
放出、抗体の胎盤通過、ならびに免疫グロブリン産生の制御を包含する多数の重要かつ多
彩な生物学的応答を誘発し得る。
従って、特定の治療若しくは診断の応用に依存して、上で挙げられた免疫機能、若しく
は選択された免疫機能のみが望ましいことがある。抗体のFc領域を変えることにより、
診断および治療における有益な効果を伴う免疫系の多様な反応を高める若しくは抑制する
ことを包含する該分子のエフェクター機能の多様な局面が達成される。
ある型のFc受容体とのみ反応する本発明の抗体を製造し得、例えば、本発明の抗体は
、該抗体のFc領域に位置するFc受容体結合部位の欠失若しくは変化により、あるFc
受容体のみに結合するか、若しくは所望の場合はFc受容体結合を全く欠くように改変し
得る。本発明の抗体のFc領域の他の所望の変化を下に列記する。典型的には、EU番号
付け体系(すなわちKabatら、上記のEUインデックス)を使用して、エフェクター
機能の所望の変化を達成するためにFc領域(例えばIgG抗体の)のどのアミノ酸残基
(1個若しくは複数)が(例えばアミノ酸置換により)変えられるかを示す。該番号付け
体系は、例えばマウス抗体中で観察される所望のエフェクター機能がその後本発明のヒト
、ヒト化若しくはキメラ抗体に系統的に工作され得るような、種を横断して抗体を比較す
るのにもまた使用される。
例えば、抗体(例えばIgG抗体)を、Fc受容体(例えばヒト単球上のFc受容体(
FcγRI))への強固の、中間の若しくは弱い結合を表すことが見出されるものにグル
ープ分けし得ることが観察された。これらの異なる親和性群のアミノ酸配列の比較により
、ヒンジ結合領域の単球結合部位(EU番号付け体系によりLeu234−Ser239
)が同定された。さらに、ヒトFcγRI受容体は単量体としてのヒトIgG1およびマ
ウスIgG2aを結合するが、しかしマウスIgG2bの結合は100倍より弱い。ヒン
ジ結合領域のこれらのタンパク質の配列の比較は、強結合体のEU番号付けの位置234
ないし238、すなわちLeu−Leu−Gly−Gly−Pro(配列番号71)から
の配列がマウスγ2bすなわち弱結合体でLeu−Glu−Gly−Gly−Pro(配
列番号72)になることを示す。従って、低下されたFcγI受容体結合が望ましい場合
は、ヒト抗体ヒンジ配列中の対応する変化を作成し得る。同一若しくは類似の結果を達成
するために他の変化を作成し得ることが理解される。例えば、FcγRI結合の親和性は
、その側鎖に不適切な官能基を有する残基で指定された残基を置換することにより、ある
いは荷電した官能基(例えばGlu若しくはAsp)または例えば芳香族非極性残基(例
えばPhe、Tyr若しくはTrp)を導入することにより、変えることができる。
これらの変化は、多様な免疫グロブリン間の配列相同性を考えれば、マウス、ヒトおよ
びラットの系に等しく適用し得る。ヒトFcγRI受容体に結合するヒトIgG3につい
て、EU位置235のLeuをGluに変えることは該受容体に対する変異体の相互作用
を破壊することが示された。この受容体の結合部位は、従って、適切な突然変異を作成す
ることによりスイッチを入れ若しくは切ることができる。
ヒンジ結合領域の隣接若しくは近接部位の突然変異(例えば、EU位置234、236
若しくは237の残基をAlaにより置換すること)は、少なくとも残基234、235
、236および237の変化がFcγRI受容体に対する親和性に影響を及ぼすことを示
す。従って、本発明の抗体はまた、改変されない抗体と比較してFcγRIに対する変え
られた結合親和性をもつ変えられたFc領域も有し得る。こうした抗体は、便宜的に、E
Uアミノ酸位置234、235、236若しくは237に改変を有する。いくつかの態様
において、本発明の抗体は、1個若しくはそれ以上のEU位置234、235、236お
よび237にアミノ酸変化を包含するヒト化抗体である。本発明の特定の一態様において
、ヒト化抗体は、IgG1由来のヒンジ結合領域のEU位置234および237にアミノ
酸変化(すなわちL234AおよびG237A)を包含する。
他のFc受容体に対する親和性は、多様な方法で免疫応答を制御するための類似のアプ
ローチにより変えることができる。
さらなる一例として、補体のC1成分の結合後のIgG抗体の溶解特性を変えることが
できる。
補体系の第一の成分C1は、一緒に強固に結合するC1q、C1rおよびC1sとして
既知の3種のタンパク質を含んでなる。C1qが該3タンパク質複合体の抗体への結合の
原因であることが示されている。
従って、抗体のC1q結合活性は、H鎖のEUアミノ酸位置318、320および32
2のアミノ酸残基の最低1個が異なる側鎖を有する残基に変えられている、変えられたC
H 2ドメインをもつ抗体を提供することにより変えることができる。抗体への特異的C
1q結合を変える、例えば低下若しくは廃止するための他の適する変化は、EU位置31
8(Glu)、320(Lys)および322(Lys)の残基のいずれか1個をAla
に変えることを包含する。
さらに、これらの残基で突然変異を行うことにより、残基318が水素結合する側鎖を
有しかつ残基320および322双方が正に荷電した側鎖を有する限りはC1q結合が保
持されることが示された。
C1q結合活性は、該3個の指定された残基のいずれか1個を不適切な官能性をその側
鎖に有する残基で置換することにより廃止し得る。C1q結合を廃止するためにイオン性
残基をAlaでのみ置換することは必要でない。C1q結合を廃止するために、該3残基
のいずれか1個の代わりにGly、Ile、Leu若しくはValのような他のアルキル
置換非イオン性残基、またはPhe、Tyr、TypおよびProのような芳香族非極性
残基を使用することもまた可能である。加えて、C1q結合活性を廃止するために、残基
320および322(しかし318でなく)の代わりにSer、Thr、CysおよびM
etのような極性の非イオン性残基を使用することもまた可能である。
イオン性若しくは非イオン性極性残基上の側鎖は、Glu残基により形成される結合に
類似の様式で水素結合を形成することが可能であろうこともまた注目される。従って、極
性残基による318(Glu)残基の置換はC1q結合活性を改変しうるがしかし廃止し
ないことができる。
残基297(Asn)をAlaで置換することが、C1qに対する親和性をわずかにの
み低下させる(約3倍より弱い)一方で溶解活性の除去をもたらすこともまた既知である
。この変化は、グリコシル化部位および補体活性化に必要とされる炭水化物の存在を破壊
する。この部位のいかなる他の置換もまたグリコシル化部位を破壊することができる。
本発明は、抗体が改変されたヒンジ領域を有する、変えられたエフェクター機能を有す
る抗体もまた提供する。改変されたヒンジ領域は、CH1ドメインのものと異なる抗体ク
ラス若しくはサブクラスの抗体由来の完全なヒンジ領域を含みうる。例えば、クラスIg
G1抗体の定常ドメイン(CH1)をクラスIgG4抗体のヒンジ領域に結合し得る。あ
るいは、新たなヒンジ領域は、天然のヒンジの一部、若しくは反復の各単位が天然のヒン
ジ領域由来である反復単位を含みうる。一例において、天然のヒンジ領域は、1個若しく
はそれ以上のシステイン残基をアラニンのような中性残基に変換すること、若しくは適し
て配置された残基をシステイン残基に変換することにより変えられる。こうした変化は、
技術に認識されたタンパク質化学、および好ましくは本明細書に記述されるところの遺伝
子工学技術を使用して実施する。
本発明の一態様において、抗体のヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば1システ
イン残基まで減少させる。この改変は、抗体、例えば二特異性抗体分子、およびFc部分
がエフェクター若しくはレポーター分子により置換された抗体分子の集成を容易にすると
いう利点を有する。単一のジスルフィド結合を形成することのみが必要であるためである
。この改変は、例えば化学的手段により直接若しくは間接的のいずれかで別のヒンジ領域
またはエフェクター若しくはレポーター分子いずれかにヒンジ領域を結合するための特定
の標的もまた提供する。
逆に、抗体のヒンジ領域のシステイン残基の数を、例えば、天然に存在するシステイン
残基の数より最低1個、増加させる。システイン残基の数を増やすことは、隣接するヒン
ジ間の相互作用を安定化するのに使用し得る。この改変の別の利点は、それが変えられた
抗体にエフェクター若しくはレポーター分子、例えば放射標識を結合するためのシステイ
ンのチオール基の使用を容易にすることである。
従って、本発明は、変えられたエフェクター機能を達成するための、抗体クラス、とり
わけIgGクラス間のヒンジ領域の交換、および/またはヒンジ領域のシステイン残基の
数の増大若しくは減少を提供する(例えば米国特許第5,677,425号明細書(明ら
かに本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。変えられた抗体のエフェクター機能の
決定は、本明細書に記述されるアッセイ若しくは他の技術に認識される技術を使用して行
う。
なお別の局面において、抗体のアイソタイプはIgG4である。別の局面において、本
発明の抗体は、低下されたエフェクター機能(例えば低下されたFc媒介性食作用、斑を
オプソニン化する低下された能力など)を有するアイソタイプを有するように工作する。
特定の一態様において、本発明の抗体はIgG4アイソタイプを有するヒト化12A11
抗体(例えばヒト化12A11 v.1)である。
重要なことには、結果として生じる抗体は、出発抗体に比較しての生物学的活性のいか
なる変化も評価するため1種若しくはそれ以上のアッセイにかけることができる。例えば
、補体若しくはFc受容体を結合する変えられたFc領域をもつ抗体の能力は、本明細書
に開示されるアッセイならびにいずれかの技術に認識されるアッセイを使用して評価し得
る。
本発明の抗体の製造は、本明細書に記述される技術ならびに当業者に既知の技術を包含
するいずれかの適する技術により実施する。例えば、例えば抗体の関連する定常ドメイン
、例えばFc領域の一部若しくは全部、すなわちCH2および/若しくはCH3ドメイン
(1個若しくは複数)を形成しかつ適切に変えられた残基(1個若しくは複数)を包含す
る適切なタンパク質配列を合成し得、そしてその後抗体分子中の適切な場所に化学結合し
得る。
好ましくは、変えられた抗体を製造するために遺伝子工学技術を使用する。好ましい技
術は、例えば、IgG H鎖の少なくとも一部分、例えばFcまたは定常領域(例えばC
H2および/若しくはCH3)をコードするDNA配列が1個若しくはそれ以上の残基で
変えられているような、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)での使用のための適するプライ
マーを調製することを包含する。該セグメントはその後、抗体の残存部分、例えば抗体の
可変領域、および細胞中での発現のための必要とされる調節エレメントに作動可能に連結
し得る。
本発明は、細胞株を形質転換するのに使用されるベクター、形質転換ベクターの製造で
使用されるベクター、形質転換ベクターで形質転換した細胞株、調製ベクターで形質転換
した細胞株、およびそれらの製造方法もまた包含する。
好ましくは、変えられたFc領域をもつ(すなわち変えられたエフェクター機能の)抗
体を製造するため形質転換される細胞株は不死化哺乳動物細胞株(例えばCHO細胞)で
ある。
変えられたFc領域をもつ抗体を製造するのに使用される細胞株は好ましくは哺乳動物
細胞株であるとは言え、細菌細胞株若しくは酵母細胞株のようないずれかの他の適する細
胞株をあるいは使用しうる。
13.親和性成熟
本発明の抗体(例えばヒト化抗体)は、多数の親和性成熟技術のいずれかを使用して、
改良された機能のため改変し得る。典型的には、所定の標的分子に対する結合親和性をも
つ候補分子を同定し、そしてその後、標的分子とのより望ましい結合相互作用を有する1
種若しくはそれ以上の関係する候補をもたらす突然変異誘発技術を使用してさらに改良す
なわち「成熟」させる。典型的には、それは改変される抗体の親和性(affinity
)(若しくは親和性(avidity)、すなわち標的抗原に対する抗体の結合した親和
性)であるが、しかしながら、安定性、エフェクター機能、消失、分泌若しくは輸送機能
のような該分子の他の特性もまた、親和性成熟技術を使用して別個に若しくは親和性と同
時にのいずれかで改変しうる。
例示的態様において、抗体(例えば本発明のヒト化抗体)の親和性が増大される。例え
ば、最低10−1、10−1若しくは10−1の結合親和性を有する抗体を
、それらの親和性が最低10−1、1010−1若しくは1012−1となるよ
うに成熟させ得る。
結合分子を親和性成熟するための1アプローチは、所望の変化(1種若しくは複数)を
コードする、結合分子若しくはその部分をコードする核酸を合成することである。オリゴ
ヌクレオチド合成は当該技術分野で公知であり、そしていかなる所望のコドン変化(1個
若しくは複数)を有する1種若しくはそれ以上の核酸も製造するように容易に自動化され
る。制限部位、サイレント突然変異および好都合なコドン使用頻度もまたこうして導入し
うる。あるいは、1種若しくはそれ以上のコドンを、特定のアミノ酸の1サブセット、例
えばジスルフィド結合を形成し得るシステインを除外しかつ規定された領域、例えばCD
R領域若しくはその一部分に制限されるサブセットを表すように変えることができる。あ
るいは、該領域は部分的に若しくは完全に無作為な一組のアミノ酸により表しうる(付加
的な詳細については、例えば、米国特許第5,830,650号;同第5,798,20
8号;同第5,824,514号;同第5,817,483号;同第5,814,476
号;同第5,723,323号;同第4,528,266号;同第4,359,53号;
同第5,840,479号;および同第5,869,644号明細書を参照されたい)。
上のアプローチは、当該技術分野で公知であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用
して部分的若しくは完全に実施し得、かつ、例えば所望の変化(1個若しくは複数)を有
するオリゴヌクレオチド、例えばプライマー若しくは一本鎖核酸を二本鎖核酸にかつ適切
な発現若しくはクローニングベクターへの遺伝子工作のような他の操作に適する増幅され
た量で組み込むという利点を有することが理解される。こうしたPCRは、増幅されてい
る核酸に付加的な変動性をそれにより導入するためのヌクレオチドの誤取り込みを見込む
条件下でもまた実施し得る。PCRを実施するための実験の詳細ならびに関連するキット
、試薬およびプライマー設計は、例えば米国特許第4,683,202号;同第4,68
3,195号;同第6,040,166号;および同第6,096,551号明細書に見
出し得る。プライマーに基づくPCRを使用する抗体フレームワーク領域へのCDR領域
の導入方法は、例えば米国特許第5,858,725号明細書に記述されている。抗体分
子のより大きくかつ多彩な組を効率的に増幅し得るような、抗体分子のより大きな組との
配列相同性を見出すことが可能な最小のプライマー組を使用する抗体ライブラリー(およ
び方法に従って作成したライブラリー)のプライマーに基づくPCR増幅方法は、例えば
米国特許第5,780,225号;同第6,303,313号;および同第6,479,
243号明細書に記述されている。部位特異的突然変異誘発のPCRに基づかない実施方
法もまた使用し得、そして、一本鎖のウラシル含有鋳型、および、ハイブリダイズしかつ
特定株の大腸菌(E.coli)株を通過する場合に突然変異を導入するプライマーを使
用する「Kunkel」突然変異誘発を包含する(例えば米国特許第4,873,192
号明細書を参照されたい)。
抗体配列若しくはその一部分の付加的な変動方法は、至適でない(すなわち変異性)条
件下での核酸合成若しくは核酸のPCR、こうした核酸の変性および再生(アニーリング
)、エキソヌクレオアーゼおよび/若しくはエンドヌクレアーゼ消化、次いでライゲーシ
ョン若しくはPCRによる再集成(核酸シャッフリング)、または例えば米国特許第6,
440,668号;同第6,238,884号;同第6,171,820号;同第5,9
65,408号;同第6,361,974号;同第6,358,709号;同第6,35
2,842号;同第4,888,286号;同第6,337,186号;同第6,165
,793号;同第6,132,970号;同第6,117,679号;同第5,830,
721号;および同第5,605,793号明細書に記述されるところの前述の技術の1
種若しくはそれ以上の組合せを包含する。
ある態様において、候補抗体分子のある部分、例えば1個若しくはそれ以上のCDR領
域(若しくはその一部分)、1個若しくはそれ以上のフレームワーク領域、および/また
は1個若しくはそれ以上の定常領域(例えばエフェクター機能を有する定常領域)の多様
性を有する候補抗体分子の一群を含んでなる抗体ライブラリー(若しくは親和性成熟ライ
ブラリー)を、技術に認識された技術を使用して発現させ得かつ所望の特性についてスク
リーニングし得る(例えば米国特許第6,291,161号;同第6,291,160号
;同第6,291,159号;および同第6,291,158号明細書を参照されたい)
。例えば、多様なCDR3配列を有する抗体可変ドメインの発現ライブラリー、ならびに
、突然変異誘発により多様なCDR3配列を導入すること、および該ライブラリーを回収
することによる多様なCDR3配列を有するヒト抗体ライブラリーの製造方法を構築し得
る(例えば米国特許第6,248,516号明細書を参照されたい)。
他の抗体工作技術は、Kalobios,Inc.により第WOO 2004/072
266号明細書に記述されるところの連続エピトープガイド相補性置換(serial
epitope guided complementarity replaceme
nt)による抗体親和性工作を包含する。
最後に、親和性成熟させた抗体を発現するために、候補抗体分子をコードする核酸を、
標準的ベクターおよび細胞トランスフェクション/形質転換技術を使用して、適切な発現
形式、例えば完全長の抗体HおよびL鎖(例えばIgG)、抗体Fabフラグメント(例
えばFab、F(ab’))若しくは一本鎖抗体(scFv)として細胞に導入し得る
(例えば米国特許第6,331,415号;同第6,103,889号;同第5,260
,203号;同第5,258,498号;および同第4,946,778号明細書を参照
されたい)。
B.免疫学的剤および治療薬をコードする核酸
アミロイド沈着物に対する免疫応答は、受動免疫に使用される抗体およびそれらの成分
鎖をコードする核酸の投与によってもまた導入し得る。こうした核酸はDNA若しくはR
NAであり得る。免疫原をコードする核酸セグメントは、典型的には、患者の意図される
標的細胞中での該DNAセグメントの発現を可能にするプロモーターおよびエンハンサー
のような調節エレメントに連結する。免疫応答の誘導のため望ましいところの血液細胞中
での発現のためには、例示的プロモーターおよびエンハンサー要素は、L若しくはH鎖免
疫グロブリン遺伝子ならびに/またはCMV主要前初期プロモーターおよびエンハンサー
(Stinski、米国特許第5,168,062号および同第5,385,839号明
細書)からのものを包含する。連結した調節エレメントおよびコーディング配列はしばし
ばベクターにクローン化される。二本鎖抗体の投与のためには、2本の鎖を同一若しくは
別個のベクターにクローン化し得る。
レトロウイルス系(例えばLawrieとTumin、Cur.Opin.Genet
.Develop.3:102−109(1993)を参照されたい);アデノウイルス
ベクター(例えばBettら、J.Virol.67:5911(1993)を参照され
たい);アデノ随伴ウイルスベクター(例えばZhouら、J.Exp.Med.179
:1867(1994)を参照されたい)、ワクシニアウイルスおよび鶏痘ウイルスを包
含するポックス族(pox family)からのウイルスベクター、シンドビスウイル
スおよびセムリキ森林ウイルス由来のもののようなアルファウイルス属からのウイルスベ
クター(例えばDubenskyら、J.Virol.70:508(1996)を参照
されたい)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Johnstonら、米国特許第5,643
,576号明細書を参照されたい)ならびに水疱性口内炎ウイルス(Rose、第6,1
68,943号明細書を参照されたい)のようなラブドウイルス、ならびにパピローマウ
イルス(Oheら、Human Gene Therapy 6:325(1995);
Wooら、第WO 94/12629号明細書およびXiaoとBrandsma、Nu
cleic Acids.Res.24、2630−2622(1996))を包含する
多数のウイルスベクター系が利用可能である。
免疫原をコードするDNA若しくはそれを含有するベクターはリポソームに充填し得る
。適する脂質および関連類似物は、Eppsteinら、米国特許第5,208,036
号、Felgnerら、米国特許第5,264,618号、Rose、米国特許第5,2
79,833号およびEpandら、米国特許第5,283,185号明細書により記述
されている。免疫原をコードするベクターおよびDNAは、微粒子担体に吸着若しくはそ
れらと会合もまたし得、それらの例はポリメチルメタクリレートポリマーならびにポリラ
クチドおよびポリ(ラクチドコグリコリド)を包含する。例えばMacGeeら、J.M
icro Encap.(1996)を参照されたい。
遺伝子治療ベクター若しくは裸のポリペプチド(例えばDNA)は、個々の患者への投
与、典型的には全身投与(例えば静脈内、腹腔内、鼻、胃、皮内、筋肉内、皮下若しくは
頭蓋内注入)または局所適用(例えばAndersonら、米国特許第5,399,34
6号明細書を参照されたい)によりin vivo送達し得る。「裸のポリヌクレオチド
」という用語は、トランスフェクション促進剤とともに送達されないポリヌクレオチドを
指す。裸のポリヌクレオチドはときにプラスミドベクターにクローン化される。こうした
ベクターは、ブピバカイン(Weinerら、米国特許第5,593,972号明細書)
のような促進剤をさらに包含し得る。DNAは遺伝子銃を使用してもまた投与し得る。X
iaoとBrandsma、上記を参照されたい。免疫原をコードするDNAを微細な金
属ビーズの表面上に沈殿させる。微小発射体をショック波若しくは膨張ヘリウムガスで加
速し、そして数細胞層の深さまで組織に浸透する。例えば、Agricetus,Inc
.、ウィスコンシン州ミドルトンにより製造されるAccelTM遺伝子送達装置が適す
る。あるいは、裸のDNAは、単純に該DNAを化学的若しくは機械的刺激を伴い皮膚上
にスポットすることにより血流中まで皮膚を通過させ得る(Howellら、第WO 9
5/05853号明細書を参照されたい)。
さらなる一変形において、免疫原をコードするベクターは、個々の患者から外植した細
胞(例えばリンパ球、骨髄吸引液、組織生検)若しくは普遍的ドナー造血幹細胞のような
細胞にex vivoで送達し得、次いで、通常はベクターを取り込んだ細胞について選
択後に患者に該細胞を再移植し得る。
II.予防および治療方法
本発明は、とりわけ、可溶性Aβを特徴とするアミロイド形成障害および疾患(例えば
アルツハイマー病)を包含するAβ関連疾患若しくは障害の処置に向けられる。本発明は
、Aβ関連疾患若しくは障害またはアミロイド形成疾患若しくは障害の処置若しくは予防
のための医薬品の製造における開示される免疫学的試薬(例えばヒト化免疫グロブリン)
の使用にもまた向けられる。本発明の処置方法は、例えば、Aβ関連疾患若しくは障害ま
たはアミロイド形成疾患若しくは障害の予防若しくは処置のための患者における、患者で
有益な治療応答(例えば認知の迅速な改善、Aβの食作用の誘導、斑負荷量の減少、斑形
成の阻害、神経炎性ジストロフィーの低減、および/または認知低下の逆転、処置若しく
は予防)を生成させる条件下での患者への開示される免疫学的試薬(例えばAβ内の特定
のエピトープに対するヒト化免疫グロブリン)の投与を含んでなる。こうした疾患は、ア
ルツハイマー病、ダウン症候群および軽度認知障害を包含する。後者はアミロイド形成疾
患の他の特徴を伴い若しくは伴わずに発生し得る。
本発明の免疫学的試薬を使用して、前記免疫学的試薬での処置が該障害に罹患している
患者に治療上の利益を提供することが示されているいかなる障害も処置しうることが、当
業者により認識されるであろう。例えば、障害はいかなる認知障害、例えば痴呆障害でも
ありうる。こうした認知障害は、多数の起源、すなわち、機能的機序(不安、うつ)、生
理学的加齢(加齢による記憶障害)、薬物若しくは解剖学的病変を有しうる。本発明の免
疫治療薬が有用であり得る適応症は、毒物曝露による学習障害若しくは記憶障害、健忘に
至る脳傷害、加齢、統合失調症、癲癇、精神遅滞、アルコール性ブラックアウト、コルサ
コフ症候群、薬物誘発性健忘(例えばハルシオン)、脳底動脈偏頭痛、若しくは単純ヘル
ペス脳炎と関連する記憶喪失を包含する。
ある態様において、本発明の方法は、認知の迅速な改善が達成されるような、Aβ抗体
を含んでなる免疫学的試薬の投与を必要とし、該Aβ抗体はAβの残基1−10内の1エ
ピトープに特異的であり、かつ、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に
結合する。例示的態様において、該免疫学的試薬は、Aβの残基1−10内の1エピトー
プに特異的であり、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)
アッセイで測定されるところのAβ関連障害の動物モデルでの認知の迅速な改善を遂げる
Aβ抗体である。他の例示的態様において、該免疫学的試薬は、Aβの残基1−10内の
1エピトープに特異的であり、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結
合し、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイで測
定されるところのAβ関連障害の動物モデルでの認知の迅速な改善を遂げるAβ抗体であ
る。
他の例示的態様において、Aβ抗体はAβの残基3−7内の1エピトープに結合する。
例示的Aβ抗体は、3D6抗体、3A3抗体、6C6抗体、10D5抗体および12A1
1抗体よりなる群から選択される。一態様において、Aβ抗体は3D6抗体でない。
他の例示的態様において、本発明の方法は、認知の迅速な改善が達成されるような、A
β抗体を含んでなる免疫学的試薬の投与を必要とし、該Aβ抗体はAβの残基13−28
内の1エピトープに特異的であり、かつ、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに
優先的に結合する。他の態様において、該免疫学的試薬は認知の迅速な改善が達成される
ようなAβ抗体を含んでなり、該Aβ抗体は、Aβの残基13−28内の1エピトープに
特異的であり、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッ
セイで測定されるところのAβ関連障害の動物モデルでの認知の迅速な改善を遂げる。な
お他の態様において、該免疫学的試薬は認知の迅速な改善が達成されるようなAβ抗体で
あり、該Aβ抗体は、Aβの残基13−28内の1エピトープに特異的であり、単量体A
βに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合し、かつ、コンテクチュアル・フィア
ー・コンディショニング(CFC)アッセイで測定されるところのAβ関連障害の動物モ
デルでの認知の迅速な改善を遂げる。
ある例示的態様において、Aβ抗体はAβの残基16−24内の1エピトープに結合す
る。例示的Aβ抗体は、2B1抗体、1C2抗体、15C11抗体および9G8抗体より
なる群から選択される。好ましい一態様において、Aβ抗体は266抗体でない。
ある態様において、本発明の方法は、Aβ関連疾患若しくは障害を有するか若しくはそ
の危険性がある被験体で認知を迅速に改善するための前記被験体への免疫学的試薬の投与
を含んでなる。他の態様において、本発明の方法は、アミロイド沈着物が実質的にない被
験体への免疫学的試薬の投与を含んでなる。他の態様において、本発明の方法は、被験体
での実質的な斑沈着前の該被験体への免疫学的試薬の投与を含んでなる。一態様において
、Aβ関連疾患若しくは障害は可溶性Aβと関連するか若しくはそれを特徴とする。別の
態様において、Aβ関連疾患若しくは障害は不溶性Aβと関連するか若しくはそれを特徴
とする。別の態様において、Aβ関連疾患若しくは障害はアミロイド形成疾患である。別
の態様において、Aβ関連疾患若しくは障害はアルツハイマー病である。別の態様におい
て、Aβ関連疾患若しくは障害は、例えば軽度認知障害のようなAβ関連認知障害である
ある態様において、本発明の方法は、単一用量としての被験体への免疫学的試薬(例え
ばAβ抗体)の投与を含んでなる。他の態様において、本発明の方法は、複数用量での被
験体への免疫学的試薬(例えばAβ抗体)の投与を含んでなる。一態様において、Aβ抗
体の用量は約100μg/kgから100mg/kg患者体重までである。別の態様にお
いて、Aβ抗体の用量は約300μg/kgから30mg/kg患者体重までである。な
お別の態様において、Aβ抗体の用量は約1mg/kgから10mg/kg患者体重まで
である。
有効用量の免疫学的試薬(例えば抗体若しくはその抗原結合フラグメント)を、ヒト患
者での認知の迅速な改善を遂げるために前記患者に投与する場合、有効用量は、適切な動
物モデルで認知の迅速な改善を達成するのに必要な用量に同等の用量でありうる。例えば
、ヒト患者に、ADの動物モデルでの認知の迅速な改善(本明細書に記述されるところの
CFCアッセイで測定されるところの)を達成するのに必要な用量に同等の用量を投与し
得る。投与される用量はモデル動物に投与されると同一のg/kg体重用量である必要は
ない。むしろ、ヒト投与のための用量は、適切な動物モデルで見られる効果と同等の処置
効果を達成するのに十分なものである。
ある態様において、本発明は、抗体の投与後1か月以内に迅速な改善が達成されるよう
な被験体への免疫学的試薬の投与を含んでなる、被験体での認知の迅速な改善を遂げる方
法を提供する。他の態様において、認知の迅速な改善は抗体の投与後1週以内に達成され
る。他の態様において、認知の迅速な改善は抗体の投与後1日以内に達成される。なお他
の態様において、認知の迅速な改善は抗体の投与後12時間以内に達成される。
ある態様において、被験体で認知の迅速な改善を遂げる方法は、認知の迅速な改善が達
成されるような、有効用量のAβ抗体を被験体に投与することを含んでなり、該抗体はA
βの残基13−28内の1エピトープに特異的であり、かつ、単量体Aβに比較して可溶
性オリゴマーAβに優先的に結合する。他の態様において、被験体で認知の迅速な改善を
遂げる方法は、認知の迅速な改善が達成されるような、有効用量のAβ抗体を被験体に投
与することを含んでなり、該抗体はAβの残基13−28内の1エピトープに特異的であ
り、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイで測定
されるところのAβ関連障害の動物モデルでの認知の迅速な改善を遂げる。なお他の態様
において、被験体での認知の迅速な改善を遂げる方法は、認知の迅速な改善が達成される
ような、有効用量のAβ抗体を被験体に投与することを含んでなり、該抗体はAβの残基
13−28内の1エピトープに特異的であり、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーA
βに優先的に結合し、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC
)アッセイで測定されるところのAβ関連障害の動物モデルでの認知の迅速な改善を遂げ
る。一態様において、Aβ抗体はAβの残基16−24内の1エピトープに結合する。別
の態様において、Aβ抗体は、2B1抗体、1C2抗体、15C11抗体および9G8抗
体よりなる群から選択される。別の態様において、Aβ抗体は266抗体でない。
該方法は、無症状の患者および疾患の症状を現在示している者双方で使用し得る。Aβ
関連疾患若しくは障害またはアミロイド形成疾患若しくは障害を伴うヒト被験体の受動免
疫若しくは免疫療法にで使用される抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ若しくはヒト以外の抗
体またはそれらのフラグメント(例えば抗原結合フラグメント)であり得、かつ、本明細
書に記述されるところのモノクローナル若しくはポリクローナルであり得る。別の局面に
おいて、本発明は、製薬学的担体を伴う抗体を製薬学的組成物として投与することを特徴
とする。あるいは、抗体は最低1本の抗体鎖をコードするポリヌクレオチドを投与するこ
とにより患者に投与し得る。該ポリヌクレオチドが患者中で発現されて抗体鎖を産生する
。場合によっては、該ポリヌクレオチドは抗体のHおよびL鎖をコードする。該ポリヌク
レオチドが患者中で発現されてHおよびL鎖を産生する。例示的態様において、患者の血
中の投与された抗体のレベルについて該患者をモニターする。
別の局面において、本発明は製薬学的担体を伴う抗体を製薬学的組成物として投与する
ことを特徴とする。あるいは、該抗体は最低1本の抗体鎖をコードするポリヌクレオチド
を投与することにより患者に投与し得る。該ポリヌクレオチドが患者中で発現されて抗体
鎖を産生する。場合によっては、該ポリヌクレオチドは抗体のHおよびL鎖をコードする
。該ポリヌクレオチドが患者中で発現されてHおよびL鎖を産生する。例示的態様におい
て、患者の血中の投与された抗体のレベルについて該患者をモニターする。
本発明は、かように、Aβ関連疾患若しくは障害またはアミロイド形成疾患若しくは障
害(例えばAD)と関連する神経病理学、および若干の患者では認知障害を予防若しくは
改善するための治療レジメンに対する長年の必要性を満足する。
A.認知の迅速な改善
本発明は、Aβ関連疾患若しくは障害またはアミロイド形成疾患若しくは障害(例えば
AD)を有するか若しくはその危険性がある患者での認知の迅速な改善を遂げる方法を提
供する。好ましい局面において、該方法は、認知の迅速な改善が達成されるような有効用
量の免疫学的試薬(例えばAβ抗体)を投与することを特徴とする。本発明の例示的局面
において、患者での1種若しくはそれ以上の認知障害(例えば手続き学習および/若しく
は記憶障害)の改善が達成される。認知障害は、意識に利用可能でありかつ従って言語に
より表現され得る特定の情報を保存かつ想起する能力(例えば特定の事実若しくは事象を
思い出す能力)と定義される顕在記憶(「陳述」若しくは「作業」記憶としてもまた知ら
れる)の障害であり得る。あるいは、認知障害は、意識に利用可能でなくかつ表現される
ために技術、連合、習慣若しくは複雑な反射の学習を必要とする、一般情報若しくは知識
を取得、保持および想起する能力、例えば特殊な課題をどのように実行するかを思い出す
能力と定義される手続記憶(「潜在」若しくは「文脈」記憶としてもまた知られる)の障
害であり得る。手続記憶障害に罹患している個体は正常に機能する彼らの能力がはるかに
より損なわれている。であるから、手続記憶の障害の改善において有効である処置が高度
に望ましくかつ有利である。
B.処置に従いやすい患者
処置に従いやすい患者は、Aβ関連疾患若しくは障害またはアミロイド形成疾患若しく
は障害の危険性があるがしかし症状を示していない個体、ならびに現在症状を示している
患者を包含する。アルツハイマー病の場合、事実上誰でも彼若しくは彼女が十分に長く生
きる場合にアルツハイマー病に罹患する危険性がある。従って、本方法は、主題の患者の
危険性のいかなる評価に対する必要性も伴わずに一般集団に予防的に投与し得る。
本方法は、ADの危険性がある個体、例えばADの危険因子を表す者にとりわけ有用で
ある。ADの主な危険因子は増大した年齢である。集団が加齢する際に、ADの頻度は増
大し続ける。現在の推定は、65歳以上の集団の10%まで、および85歳以上の集団の
50%までがADを有することを示す。
まれとは言え、ある種の個体はADを発症する遺伝的傾向があると若齢で同定され得る
。「家族性AD」若しくは「早発型AD」として知られる遺伝可能な形態のADを保有す
る個体は、変異される場合にADを賦与することが既知である遺伝子、例えばAPP若し
くはプレセニリン遺伝子の分析の、ADの十分に報告された家族歴から同定され得る。十
分に特徴づけられたAPP突然変異は、APP770のコドン716および717の「ハ
ーディ型」突然変異(例えば、バリン717からイソロイシン(Goateら、(199
1)、Nature 349:704);バリン717からグリシン(Chartier
ら(1991)Nature 353:844;Murrellら(1991)、Sci
ence 254:97);バリン717からフェニルアラニン(Mullanら(19
92)、Nature Genet.1:345−7))、APP770のコドン670
および671の「スウェーデン型」突然変異、ならびにAPP770のコドン692の「
フランダース型」突然変異を包含する。こうした突然変異は、APPのAβへの増大され
た若しくは変えられたプロセシング、とりわけ増大された量の長い形態のAβ(すなわち
Aβ1−42およびAβ1−43)へのAPPのプロセシングによりアルツハイマー病を
引き起こすと考えられる。プレセニリン遺伝子PS1およびPS2のような他の遺伝子中
の突然変異は、増大された量の長い形態のAβを生成させるAPPのプロセシングに影響
を及ぼすと間接的に考えられる(Hardy、TINS 20:154(1997);K
owalskaら、(2004)、Polish J.Pharmacol.、56:1
71−8を参照されたい)。ADに加えて、APPの770アミノ酸のアイソフォームの
アミノ酸692若しくは683の突然変異は、オランダ型のアミロイドーシスを伴う遺伝
性脳出血(HCHWA−D)と呼ばれる脳のアミロイド形成障害に関与している。
より一般的には、ADは患者により遺伝されないが、しかし多様な遺伝因子の複雑な相
互作用により発症する。これらの個体は、診断することがはるかにより困難である一形態
「散発性AD」(「晩発型AD」としてもまた知られる)を有すると言われる。にもかか
わらず、患者集団は、ADを引き起こさないがしかし一般集団より高頻度でADで分離す
ることが既知である感受性アレル若しくは形質、例えばアポリポタンパク質Eのε2、ε
3およびε4アレル(Corderら(1993)、Science、261:921−
923)の存在についてスクリーニングし得る。とりわけ、好ましくはADの何らかの他
のマーカーに加えてε4アレルを欠く患者はADの「危険性がある」と同定しうる。例え
ば、ADを有するまたは高コレステロール血症若しくはアテローム硬化症に罹患している
親族を有する、ε4アレルを欠く患者は、ADの「危険性がある」と同定しうる。別の潜
在的生体マーカーは、脳脊髄液(CSF)のAβ42およびτのレベルの複合評価である
。低いAβ42および高いτレベルはADの危険性がある患者の同定において予測的値を
有する。
ADの危険性がある患者の他の指標は、in vivoの動的神経病理学的データ、例
えば脳βアミロイドのin vivo検出、脳活性化のパターンなどを包含する。こうし
たデータは、例えば三次元磁気共鳴画像化(MRI)、陽電子断層撮影法(PET)走査
およびシングルフォトンエミッションCT(SPECT)を使用して得ることができる。
可能なADを有する患者の指標は、限定されるものでないが(1)痴呆を有する、(2)
40〜90歳の、(3)例えば2個若しくはそれ以上の認知領域での認知障害、(4)6
か月以上の障害の進行、(5)意識平静、および/若しくは(6)他の合理的診断の非存
在の患者を挙げることができる。
散発性若しくは家族性いずれの形態のADに罹患している個体も、しかしながら、通常
はADの1種若しくはそれ以上の特徴的症状の提示後に診断される。ADの一般的症状は
、慣例の技術若しくは課題の成績に影響を及ぼす認知障害、言語での問題、時間若しくは
場所に対する失見当、不十分若しくは低下した判断、抽象的思考の障害、運動調節の喪失
、気分若しくは行動の変化、人格変化または自発性の喪失を包含する。患者により表され
る数障害若しくは認知障害の程度は通常、疾患が進行した程度を反映する。例えば、患者
は、該患者が記憶(例えば文脈記憶)で問題を表すがしかしそれ以外は十分に機能するこ
とが可能であるような軽度認知障害のみを表しうる。
本方法はAβ関連認知障害、例えばAβ関連痴呆を有する個体にもまた有用である。と
りわけ、本方法は、中枢神経系(CNS)、例えば脳若しくはCSF中の可溶性オリゴマ
ーAβの存在により引き起こされるか若しくはそれに起因する認知障害若しくは異常を有
する個体にとりわけ有用である。Aβにより引き起こされるか若しくはそれに関連する認
知障害は、(1)脳中でのβアミロイド斑の発生;(2)Aβの合成、プロセシング、分
解若しくは消失の異常な速度;(3)(例えば脳中の)可溶性オリゴマーAβ種の形成若
しくは活性;および/または(4)異常な形態のAβの形成により引き起こされるか若し
くはそれらに関連するものもまた包含する。実際の因果関係が特定の患者でAβ異常と認
知障害の間で確立されることは必要でないが、しかしながら、若干の関連が、例えば、A
β免疫治療薬での処置が有効であると期待されないとみられる非Aβ関連認知障害に罹患
している患者を識別するための、ADの上述されたマーカーの1つにより示されるはずで
ある。
ヒト被験体、例えば痴呆障害(例えばAD)の症状若しくは病理学の危険性があるか若
しくはそれらを有する被験体での認知技能若しくは能力を評価するための数種の検査が開
発された。認知障害はこれらの検査の損なわれた成績により同定され得、そして、多くの
処置がこれらの検査での成績を改善させるそれらの能力に基づいて提案されている。いく
つかの課題が被験体の行動若しくは運動機能を評価したとは言え、大部分の課題は学習若
しくは記憶を検査するために設計された。
ヒトでの認知は限定されるものでないが以下の検査を挙げることができる多様な検査を
使用して評価しうる。ADAS−Cog(アルツハイマー病認知評価尺度(Alzhei
mer Disease Assessment Scale−Cognitive)は
終了するのに30分かかる11部分の検査である。ADAS−Cogは言語および記憶技
能の研究のための好ましい簡易検査である。Rosenら(1984)Am J Psy
chiatry.141(11):1356−64;Ihlら(2000)Neurop
sychobiol.41(2):102−7;およびWeyerら(1997)Int
Psychogeriatr.9(2):123−38を参照されたい。
Blessed検査は、日常生活動作および記憶、集中ならびに見当識を評価する認知
の別の短時間(約10分)の検査である。Blessedら(1968)Br J Ps
ychiatry 114(512):797−811を参照されたい。
ケンブリッジ神経心理学自動検査(Cambridge Neuropsycholo
gical Test Automated Battery)(CANTAB)は神経
変性疾患若しくは脳損傷を伴うヒトの認知障害の評価に使用される。それは、記憶、注意
および実行機能の13の相互に関連づけられたコンピュータ化検査よりなり、そしてパー
ソナルコンピュータからタッチスクリーンを介して実施する。この検査は言語およびほと
んど文化によらず、そしてアルツハイマー病の早期検出および慣例のスクリーニングで高
度に感受性であることが示された。Swainsonら(2001)Dement Ge
riatr Cogn Disord.12:265−280;およびFrayとRob
bins(1996)Neurotoxicol Teratol.18(4):499
−504.Robbinsら(1994)Dementia 5(5):266−81を
参照されたい。
アルツハイマー病レジストリ確立協会(The Consortium to Est
ablish a Registry for Alzheimer’s Diseas
e)(CERAD)の臨床および神経心理学検査は、言語の流暢さの検査、ボストン命名
検査(Boston Naming Test)、ミニメンタルステート検査(MMSE
)、10項目語想起、構造練習(constructional praxis)、およ
び練習項目の遅延想起を包含する。該検査は典型的に20〜30分かかり、そして認知低
下の評価および追跡で便宜的かつ有効である。Morrisら(1988)Psycho
pharmacol Bull.24(4):641−52;Morrisら(1989
Neurology 39(9):1159−65;およびWelshら(1991)
Arch Neurol.48(3):278−81を参照されたい。
1975年にFolesteinらにより開発されたミニメンタルステート検査(MM
SE)は精神状態および認知機能の簡易検査である。それは他の精神現象を評価せず、そ
して従って完全な精神状態検査の代用でない。それは痴呆のスクリーニングにおいて有用
であり、また、その評価体系は進行の長期にわたる追跡において有用である。ミニメンタ
ルステート検査MMSEは、年齢および教育について基準を補正して広範に使用されてい
る。それは認知障害をスクリーニングするため、所定の時点の認知障害の重症度を推測す
るため、1個体の認知変化の経過を長期にわたり追跡するため、および処置に対する1個
体の応答を報告するために使用し得る。被験体の認知評価は、9か月若しくはそれ以上(
ヒトにおいて)分離された経過観察検査を伴う、公式の神経心理学検査を必要としうる。
Folsteinら(1975)J Psychiatr Res.12:196−19
8;CockrellとFolstein(1988)Psychopharm Bul
l.24(4):689−692;およびCrumら(1993)J.Am.Med.A
ssociation 18:2386−2391を参照されたい。
Seven−Minute Screenは、アルツハイマー病について評価すべきで
ある患者を同定するのを助けるスクリーニングツールである。該スクリーニングツールは
、多様な型の知的機能性を評価するための一連の質問を使用し、ADの早期徴候に高度に
感受性である。該検査は、見当識、記憶、視覚空間技能および表現言語を焦点とする4組
の質問よりなる。それは正常な加齢過程による認知変化と痴呆による認知障害を識別し得
る。SolomonとPendlebury(1998)Fam Med.30(4):
265−71、Solomonら(1998)Arch Neurol.55(3):3
49−55を参照されたい。
アルツハイマー病に現在罹患している個体は、特徴的な痴呆ならびに上述された危険因
子の存在から認識され得る。加えて、多数の診断検査が、ADを有する個体を同定するた
めに利用可能である。これらはCSFのτおよびAβ42レベルの測定を包含する。上昇
したτおよび低下したAβ42レベルはADの存在を意味する。アルツハイマー病に罹患
している個体は、実施例の節で論考されるところのADRDA基準によってもまた診断し
得る。
C.処置レジメンおよび投薬量
予防的応用において、製薬学的組成物若しくは医薬品を、アルツハイマー病に感受性の
、若しくは別の方法でその危険性がある患者に、該危険を排除もしくは低下、重症度を低
下、または、該疾患の生化学的、組織学的および/若しくは行動的症状、その合併症、な
らびに該疾患の発症の間に現れる中間の病理学的表現型を包含する該疾患の発症を遅らせ
るのに十分な量で投与する。治療的応用においては、組成物若しくは医薬品を、こうした
疾患に感受性の、若しくはすでに罹患している患者に、その合併症および該疾患の発症で
の中間の病理学的表現型を包含する該疾患の症状(生化学的、組織学的および/若しくは
行動的)を治癒若しくは少なくとも部分的に抑止するのに十分な量で投与する。
いくつかの方法において、免疫学的試薬(例えばAβ抗体)の投与は、特徴的なアルツ
ハイマー病の病理を未だ発生していない患者において筋認識(myocognitive
)障害を低下若しくは排除する。治療的若しくは予防的処置を達成するのに十分な量は、
治療的若しくは予防的有効用量と定義する。予防的および治療的双方のレジメンで、試薬
は通常、十分な免疫応答が達成されるまで数投薬量で投与する。「免疫応答」若しくは「
免疫学的応答」という用語は、レシピエント被験体中の抗原に向けられた体液性(抗体媒
介性)および/または細胞性(抗原特異的T細胞若しくはそれらの分泌産物により媒介さ
れる)応答の発生を包含する。こうした応答は、能動的応答(すなわち免疫原の投与によ
り誘導される)または受動的応答(すなわち免疫グロブリン若しくは抗体または予め刺激
されたT細胞の投与により誘導される)であり得る。典型的には、免疫応答をモニターし
、そして免疫応答が弱まり始める場合に反復投薬量を与える。
上述された状態の処置のための本発明の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患
者の生理学的状態、患者がヒトであるか若しくは動物であるか、投与される他の医薬品、
および処置が予防的であるか若しくは治療的であるかを包含する多くの多様な因子に依存
して変動する。通常、患者はヒトであるが、しかしトランスジェニック哺乳動物を包含す
るヒト以外の哺乳動物もまた処置し得る。処置投薬量は安全性および有効性を至適化する
ように滴定される必要がある。
抗体での受動免疫については、投薬量は約0.0001から10mg/kgまで、およ
びより通常は0.01ないし5mg/kg(例えば0.02mg/kg、0.25mg/
kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)宿主
体重の範囲にわたる。例えば、投薬量は1mg/kg体重若しくは10mg/kg体重、
または1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは最低1mg/kgであり得る。別の例に
おいて、投薬量は0.5mg/kg体重若しくは15mg/kg体重、または0.5〜1
5mg/kgの範囲内、好ましくは最低1mg/kgであり得る。別の例において、投薬
量は0.5mg/kg体重若しくは20mg/kg体重、または0.5〜20mg/kg
の範囲内、好ましくは最低1mg/kgであり得る。別の例において、投薬量は0.5m
g/kg体重若しくは30mg/kg体重、または0.5〜30mg/kgの範囲内、好
ましくは最低1mg/kgであり得る。好ましい一例において、投薬量は約30mg/k
gであり得る。とりわけ好ましい一例において、Aβ抗体はおよそ0.3mg/kgから
およそ30mg/kgまでの用量範囲で腹腔内投与される。
上の範囲の中間の用量もまた本発明の範囲内にあることを意図している。被験体は、こ
うした用量を毎日、隔日、週1回、若しくは経験的分析により決定されるいずれかの他の
計画に従って投与され得る。例示的一処置は、例えば最低6か月の長期にわたる複数の投
薬量での投与を必要とする。付加的な例示的処置レジメンは、2週ごとあたり1回若しく
は月1回若しくは3ないし6か月ごとに1回の投与を必要とする。例示的投薬スケジュー
ルは、連日1〜10mg/kg若しくは15mg/kg、隔日30mg/kg、または週
1回60mg/kgを包含する。いくつかの方法において、異なる結合特異性をもつ2種
若しくはそれ以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、この場合、投与される各抗体の
投薬量は示される範囲内にある。
抗体は通常、複数の機会に投与する。単一投薬量の間の間隔は週、月若しくは年であり
得る。間隔は患者のAβに対する抗体の血液濃度を測定することにより示されるとおり不
規則でもまたあり得る。いくつかの方法においては、投薬量を1〜1000μg/mlの
血漿抗体濃度、およびいくつかの方法では25〜300μg/mlを達成するように調節
する。あるいは、抗体は除放製剤として投与し得、この場合より少なく頻繁な投与が必要
とされる。投薬量および頻度は患者での抗体の半減期に依存して変動する。一般に、ヒト
化抗体は最長の半減期を示し、次いでキメラ抗体およびヒト以外の抗体である。
投薬量および投与頻度は、処置が予防的であるか若しくは治療的であるかに依存して変
動し得る。予防的応用において、本抗体若しくはそれらのカクテルを含有する組成物を未
だ疾患状態にない患者に投与して該患者の抵抗性を高める。こうした量は「予防的有効用
量」であると定義する。この使用において、正確な量は、再度、患者の健康状態および全
般的な免疫に依存するが、しかし一般に投与あたり0.1から25mgまで、とりわけ投
与あたり0.5ないし2.5mgの範囲にわたる。比較的低投薬量を長期にわたり比較的
頻繁でない間隔で投与する。若干の患者は彼らの生涯の残りの間処置を受領し続ける。
無症状の患者においては、処置はいずれの齢(例えば10、20、30)でも開始し得
る。通常は、しかしながら、患者が40、50、60若しくは70歳に達するまで処置を
開始することは必要でない。処置は、典型的には長期にわたる複数投薬量を必要とする。
処置は長期にわたり抗体濃度をアッセイすることによりモニターし得る。応答が下落する
場合は追加刺激投薬量が指示される。潜在的ダウン症候群患者の場合、処置は治療試薬を
母親に投与することにより出生前に、若しくは出生直後に開始し得る。
治療的応用においては、疾患の進行を低下若しくは終了させるまで、および好ましくは
患者が疾患の症状の部分的若しくは完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高投
薬量(例えば投与あたり約1から200mgまでの抗体、5から25mgのまで投薬量を
より一般的に使用する)がときに必要とされる。その後、本特許は予防的レジメンを投与
し得る。
抗体をコードする核酸の用量は、患者あたり約10ngから1gまで、100ngない
し100mg、1μgないし10mg、若しくは30〜300μgのDNAの範囲にわた
る。感染性ウイルスベクターの用量は、投与あたり10〜100個若しくはそれ以上のビ
リオンまで変動する。
治療的試薬は、予防的および/若しくは治療的処置のため非経口、局所、静脈内、経口
、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻内若しくは筋肉内手段により投与し得る。免疫原剤
の最も典型的な投与経路は皮下であるとは言え、他の経路が等しく有効であり得る。次の
最も一般的な経路は筋肉内注入である。この型の注入は、最も典型的には腕若しくは脚の
筋肉で実施する。いくつかの方法においては、沈着物が蓄積した特定の組織に試薬を直接
注入する(例えば頭蓋内注入)。筋肉内注入若しくは静脈内注入が抗体の投与に好ましい
。いくつかの方法において、特定の治療的抗体を頭蓋中に直接注入する。いくつかの方法
においては、抗体を徐放性組成物若しくはMedipadTM装置のような装置として投
与する。
本発明の免疫学的試薬は、場合によっては、アミロイド形成疾患の処置で少なくとも部
分的に有効である他の剤とともに投与し得る。ある態様において、本発明のヒト化抗体(
例えばヒト化Aβ抗体)を、第二の免疫原性若しくは免疫学的試薬とともに投与する。例
えば、本発明のヒト化Aβ抗体を別のヒト化Aβ抗体とともに投与し得る。他の態様にお
いて、ヒト化Aβ抗体を、Aβワクチンを受領した若しくは受領している患者に投与する
。アミロイド沈着物が脳に存在するアルツハイマー病およびダウン症候群の場合には、本
発明の剤は、血液脳関門を横断する本発明の剤の通過を増大させる他の剤とともにもまた
投与し得る。本発明の剤は、標的細胞若しくは組織への該治療薬の到達を高める他の剤、
例えばリポソームなどとともにもまた投与し得る。こうした剤を共投与することは、所望
の効果を達成するのに必要とされる治療薬(例えば治療的抗体若しくは抗体鎖)の投薬量
を減少させ得る。
D.製薬学的組成物
本発明の免疫学的試薬はしばしば有効成分、すなわち、および多様な他の製薬学的に許
容できる成分を含んでなる製薬学的組成物として投与される。Remington’s
Pharmaceutical Science(第15版、Mack Publish
ing Company、ペンシルバニア州イーストン(1980))を参照されたい。
好ましい剤形は意図される投与様式および治療的応用に依存する。組成物は、所望の製剤
に依存して、製薬学的に許容できる非毒性の担体若しくは希釈剤(動物若しくはヒト投与
のために製薬学的組成物を処方するのに一般に使用されるベヒクルと定義される)もまた
包含し得る。希釈剤は該組合せの生物学的活性に影響を及ぼさないように選択する。こう
した希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝生理的食塩水、リンゲル液、D−ブドウ
糖溶液およびハンクス液である。加えて、製薬学的組成物若しくは製剤は他の担体、補助
物質、若しくは非毒性の非治療的非免疫原性安定剤などもまた包含しうる。
製薬学的組成物は、タンパク質、キトサンのような多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸
およびコポリマー(ラテックス官能性化セファロース(TM)、アガロ―ス、セルロース
など)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、ならびに脂質凝集物(油滴若しくはリ
ポソームのような)のような大型のゆっくりと代謝される巨大分子もまた包含し得る。加
えて、これらの担体は免疫刺激剤(すなわちアジュバント)としても機能し得る。
非経口投与のためには、本発明の剤は、水、油、生理的食塩水、グリセロール若しくは
エタノールのような無菌の液体であり得る製薬学的担体を含む生理学的に許容できる希釈
在中の該物質の溶液若しくは懸濁液の注入可能な投薬量として投与し得る。加えて、湿潤
剤若しくは乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などのような補助物質が組成物中に存在し
得る。製薬学的組成物の他の成分は、石油、動物、植物若しくは合成起源のもの、例えば
ラッカセイ油、ダイズ油および鉱物油である。一般に、プロピレングリコール若しくはポ
リエチレングリコールのようなグリコールは、とりわけ注入可能な溶液の好ましい液体担
体である。抗体は、有効成分の持続放出を可能にするような様式で処方し得るデポー注射
剤若しくは植込物製剤の形態で投与し得る。例示的組成物は、HClでpH6.0に調節
した50mM L−ヒスチジン、150mM NaClよりなる水性緩衝液中で処方した
5mg/mLのモノクローナル抗体を含んでなる。
典型的には、組成物は液体の溶液若しくは懸濁液いずれかとしての注入可能物として製
造され;注入前の液体ベヒクル中の溶液若しくは懸濁液に適する固体の形態もまた製造し
得る。該製剤は、上で論考されたところの高められたアジュバント効果のためのリポソー
ム、またはポリラクチド、ポリグリコリド若しくはコポリマーのような微粒子中に乳化若
しくは被包化もまたされ得る(Langer、Science 249:1527(19
90)およびHanes、Advanced Drug Delivery Revie
ws 28:97(1997)を参照されたい)。本発明の剤は、有効成分の持続性若し
くはパルス放出を可能にするような様式で処方し得るデポー注射剤若しくは植込物製剤の
形態で投与し得る。
他の投与様式に適する付加的な製剤は、経口、鼻内および肺製剤、坐剤、ならびに経皮
適用を包含する。坐剤については、結合剤および担体は、例えばポリアルキレングリコー
ル若しくはトリグリセリドを包含し;こうした坐剤は0.5%ないし10%、好ましくは
1%〜2%の範囲の有効成分を含有する混合物から成形し得る。経口製剤は、製薬学的等
級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム
、セルロースおよび炭酸マグネシウムのような賦形剤を包含する。これらの組成物は、溶
液、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、除放製剤若しくは散剤の形態を取り、そして10
%〜95%、好ましくは25%〜70%の有効成分を含有する。
局所適用は経皮若しくは皮内送達をもたらし得る。局所投与は、コレラ毒素またはその
無毒化誘導体若しくはサブユニット、あるいは他の類似の細菌毒素との該剤の共投与によ
り助長し得る(Glennら、Nature 391、851(1998)を参照された
い)。共投与は成分を混合物として、または化学的架橋若しくは融合タンパク質としての
発現により得られる結合された分子として使用することにより達成し得る。
あるいは、経皮送達は皮膚貼付剤を使用して、若しくはトランスフェロソーム(Pau
lら、Eur.J.Immunol.25:3521(1995);Cevcら、Bio
chem.Biophys.Acta 1368:201−15(1998))を使用し
て達成し得る。
E.処置の経過のモニタリング
本発明は、アルツハイマー病に罹患しているか若しくはそれに感受性の患者における処
置のモニター方法、すなわち患者に投与されている処置の経過のモニター方法を提供する
。該方法を使用して、症候性患者での治療的処置および無症候性患者での予防的処置の双
方をモニターし得る。とりわけ、該方法は受動免疫をモニターする(例えば投与された抗
体のレベルを測定する)のに有用である。
いくつかの方法は、例えば、1投薬量の剤を投与する前の患者での抗体レベル若しくは
プロファイルの基礎値を測定すること、およびこれを処置後の該プロファイル若しくはレ
ベルの値と比較することを必要とする。レベル若しくはプロファイルの値の有意の増大(
すなわち、こうした測定値の平均からの1標準偏差として表される、同一サンプルの反復
測定での実験誤差の典型的範囲より大きい)は正の処置の結果(すなわち、該剤の投与が
所望の応答を達成したこと)を知らせる。免疫応答の値が有意に変化しないか若しくは減
少する場合は、負の処置結果を示す。
他の方法において、レベル若しくはプロファイルの対照値(すなわち平均および標準偏
差)を対照集団について測定する。典型的には、対照集団の個体は以前の治療を受領して
いない。治療薬を投与した後の患者でのレベル若しくはプロファイルの測定値をその後該
対照値と比較する。対照値に関しての有意の増大(例えば平均から1標準偏差より大きい
)は正のすなわち十分な処置結果を知らせる。有意の増大の欠如若しくは減少は負のすな
わち不十分な処置結果を知らせる。剤の投与は、一般に該レベルが対照値に関して増大し
ている間継続する。前のとおり、対照値に関してのプラトーの到達は、処置の投与が中断
または投薬量および/若しくは頻度を低下され得ることの指標である。
他の方法において、レベル若しくはプロファイルの対照値(例えば平均および標準偏差
)を、治療薬での処置を受けかつそのレベル若しくはプロファイルが処置に応答してプラ
トーに達した個体の対照集団から決定する。患者でのレベル若しくはプロファイルの測定
値を該対照値と比較する。患者での測定レベルが対照値と有意に異ならない(例えば1標
準偏差より大きくない)場合は、処置を中断し得る。患者でのレベルが対照値より有意に
下である場合は、剤の継続投与が保証される。患者でのレベルが対照値より下に存続する
場合には、処置の変更を示しうる。
他の方法において、現在処置を受領していないがしかし以前の1クールの処置を受けた
患者を、抗体レベル若しくはプロファイルについてモニターして、処置の再開が必要とさ
れるかどうかを決定する。該患者での測定されたレベル若しくはプロファイルを、以前の
1クールの処置後に該患者で以前に達成された値と比較し得る。以前の測定値に関しての
有意の減少(すなわち同一サンプルの反復測定での誤差の典型的範囲より大きい)は、処
置を再開し得ることの指示である。あるいは、患者で測定された値を、1クールの処置を
受けた後の患者の集団で測定された対照値(平均および標準偏差)と比較し得る。あるい
は、患者での測定値を、疾患の症状がないままである予防的に処置した患者の集団、若し
くは疾患の特徴の改善を示す治療的に処置した患者の集団での対照値と比較し得る。これ
らの場合の全部において、対照値に関しての有意の減少(すなわち1標準偏差より大きい
)は、処置を患者で再開すべきであることの指標である。
分析のための組織サンプルは、典型的には患者からの血液、血漿、血清、粘液若しくは
脳脊髄液である。サンプルを、例えばAβペプチドに対する抗体のレベル若しくはプロフ
ァイル、例えばヒト化抗体のレベル若しくはプロファイルについて分析する。Aβに特異
的な抗体のELISA検出方法を実施例の節に記述する。いくつかの方法において、投与
された抗体のレベル若しくはプロファイルを、消失アッセイを使用して、例えば本明細書
に記述されるところのin vitro食作用アッセイで測定する。こうした方法におい
て、試験されている患者からの組織サンプルを(例えばPDAPPマウスからの)アミロ
イド沈着物およびFc受容体をもつ食細胞と接触させる。アミロイド沈着物のその後の消
失をその後、モニターする。消失応答の存在および程度は、試験中の患者の組織サンプル
中のAβを消失させるのに有効な抗体の存在およびレベルの指示を提供する。
受動免疫後の抗体プロファイルは、典型的には抗体濃度の即座のピーク、次いで指数的
減衰を示す。さらなる投薬量がなければ、該減衰は、投与された抗体の半減期に依存して
数日ないし数ヶ月の期間内に治療前のレベルに近づく。
いくつかの方法においては、患者中のAβに対する抗体の基礎測定を投与前に行い、第
二の測定をその後まもなく行ってピーク抗体レベルを決定し、そして1回若しくはそれ以
上のさらなる測定をときどき行って抗体レベルの減衰をモニターする。抗体のレベルが基
礎若しくは基礎より低いピークの予め決められたパーセント(例えば50%、25%若し
くは10%)まで減少した場合は、さらなる1投薬量の抗体の投与を投与する。いくつか
の方法においては、ピーク若しくはバックグラウンドより低いその後の測定レベルを、他
の患者での有益な予防的若しくは治療的処置レジメンを構成するために、以前に測定した
参照レベルと比較する。測定した抗体レベルが参照レベルより有意により低い(例えば、
処置の利益を得る患者の集団での参照値の平均−1標準偏差より低い)場合は、付加的な
1投薬量の抗体の投与が指示される。
付加的な方法は、アミロイド形成疾患(例えばアルツハイマー病)を診断若しくはモニ
ターするために研究者若しくは医師により慣例に頼られているいずれかの技術に認識され
た生理学的症状(例えば身体若しくは精神症状)を処置の経過にわたりモニターすること
を包含する。例えば認知障害をモニターし得る。後者はアルツハイマー病およびダウン症
候群の症状であるが、しかしこれらの疾患のいずれの他の特徴を伴わずにもまた発生し得
る。例えば、認知障害は、処置の経過を通じ、規約に従ってミニメンタルステート検査で
患者のスコアを決定することによりモニターし得る。
F.キット
本発明は上述されたモニタリング方法を実施するためのキットをさらに提供する。典型
的には、こうしたキットはAβに対する抗体に特異的に結合する剤を含有する。該キット
は標識もまた包含し得る。Aβに対する抗体の検出のため、標識は典型的には標識された
抗イディオタイプ抗体の形態にある。抗体の検出のため、該剤は、マイクロタイター皿の
ウェルへのような固相に予め結合して供給し得る。キットは、典型的には該キットの使用
のための指示を提供するラベルもまた含有する。該ラベルは、測定された標識のレベルを
Aβに対する抗体のレベルと相関させる図若しくは他の対応する型(regime)もま
た包含しうる。ラベルという用語は、その製造、輸送、販売若しくは使用の間のいずれか
の時点でキットに貼付されるか若しくは別の方法で付随するいかなる文書若しくは記録資
料も指す。例えば、ラベルという用語は、広告用パンフレットおよび小冊子、包装資材、
説明書、音声若しくはビデオカセット、コンピュータディスク、ならびにキットに直接刻
印された文言を包含する。
本発明は、診断キット、例えば研究、検出および/若しくは診断キット(例えばin
vivo画像化を実施するための)もまた提供する。こうしたキットは、典型的に、好ま
しくは残基1−10内のAβの1エピトープに結合するための抗体を含有する。好ましく
は、該抗体は標識されているか、若しくは二次標識試薬がキットに包含される。好ましく
は、キットは意図している応用を実施するため、例えばin vivo画像化アッセイを
実施するための説明書で区別される。例示的抗体は本明細書に記述されるものである。
G.in vivo画像化
本発明は患者中のアミロイド沈着物のin vivo画像化方法を提供する。こうした
方法はアルツハイマー病若しくはそれに対する感受性を診断若しくはその診断を確認する
のに有用である。例えば、該方法を痴呆の症状で診察を受ける患者で使用し得る。患者が
異常なアミロイド沈着物を有する場合には、該患者はアルツハイマー病に罹患しているこ
とがありそうである。該方法は無症状の患者でもまた使用し得る。アミロイドの異常な沈
着物の存在は将来の症候性疾患に対する感受性を示す。該方法は、以前にアルツハイマー
病と診断された患者での疾患の進行および/若しくは処置に対する応答をモニターするの
にもまた有用である。
該方法は、Aβに結合する抗体のような試薬を患者に投与すること、およびその後該剤
が結合した後にそれを検出することにより作用する。好ましい抗体は、完全長のAPPポ
リペプチドに結合することなく患者中のAβ沈着物に結合する。アミノ酸1−10内のA
βの1エピトープに結合する抗体がとりわけ好ましい。いくつかの方法において、抗体は
Aβのアミノ酸7−10内の1エピトープに結合する。こうした抗体は、典型的には実質
的な消失応答を誘導することなく結合する。他の方法において、抗体はAβのアミノ酸1
−7内の1エピトープに結合する。こうした抗体は、典型的にAβに結合しかつそれに対
する消失応答を誘導する。しかしながら、消失応答はFabのような完全長の定常領域を
欠く抗体フラグメントを使用することにより回避し得る。いくつかの方法においては、同
一の抗体が処置および診断双方の試薬としてはたらき得る。一般に、Aβの残基10に対
しC末端のエピトープに結合する抗体は、おそらく該C末端エピトープがアミロイド沈着
物中で到達不可能であるため、残基1−10内のエピトープに結合する抗体ほど強いシグ
ナルを示さない。従ってこうした抗体はより少なく好ましい。
診断試薬は、患者の体内への静脈内注入により、または頭蓋内注入により若しくは頭蓋
を通る孔を開けることにより脳中に直接投与し得る。試薬の投薬量は処置方法についてと
同一範囲内にあるべきである。典型的には試薬は標識されるとは言え、いくつかの方法に
おいては、Aβに対する親和性をもつ一次試薬は未標識であり、そして一次試薬に結合す
るために二次標識剤を使用する。標識の選択は検出手段に依存する。例えば、蛍光標識は
光学的検出に適する。常磁性標識の使用は外科的介入を伴わない断層撮影検出に適する。
放射活性標識はPET若しくはSPECTを使用してもまた検出し得る。
診断は、標識された場所の数、大きさおよび/若しくは強度を対応する基礎値と比較す
ることにより実施する。基礎値は疾患に罹っていない個体の集団での平均レベルを表し得
る。基礎値は同一患者で測定された以前のレベルもまた表し得る。例えば、基礎値をある
患者で処置を開始する前に測定し得、そしてその後測定した値を該基礎値と比較し得る。
基礎に関しての値の減少は処置に対する正の応答を知らせる。
H.臨床試験
単回投与第I相試験をヒトでの安全性を決定するため実施し得る。治療薬(例えば本発
明の抗体)を、想定される有効性のレベルの約0.01から開始しかつ有効なマウス投薬
量の約10倍のレベルに達するまで3の係数により増大させる、増大する投薬量で多様な
患者に投与する。
第II相試験は治療上の有効性を決定するためにさらに実施し得る。可能なADについ
てアルツハイマー病・関連障害協会(Alzheimer’s disease and
Related Disorders Association)(ADRDA)の基
準を使用して定義される早期ないし中期アルツハイマー病を伴う患者を選択する。適する
患者は、ミニメンタルステート検査(MMSE)で12〜26の範囲で得点する。他の選
択基準は、患者が試験の期間中生存しかつ妨害しうる付随する医薬品の使用のような複雑
にする問題を欠くことがありそうであることである。患者機能の基礎評価は、MMSE、
およびADAS(アルツハイマー病の状態および機能を伴う患者を評価するための包括的
尺度である)のような古典的精神測定尺度を使用して行う。これらの精神測定尺度はアル
ツハイマー病の状態の進行の尺度を提供する。適する質的生活尺度もまた処置をモニター
するのに使用し得る。疾患の進行はMRIによってもまたモニターし得る。免疫原特異的
抗体およびT細胞応答のアッセイを包含する患者の血液プロファイルもまたモニターし得
る。
基礎測定後に、患者は処置を受領し始める。彼らを無作為化し、そして盲検化様式で治
療薬若しくはプラセボいずれかで処置する。患者は最低6か月ごとにモニターする。有効
性は、プラセボ群に関する処置群の進行の有意の減少により測定する。
第二の第II相試験は、ときに加齢による記憶障害(AAMI)若しくは軽度認知障害
(MCI)と称されるアルツハイマー病以外の早期記憶障害から、ADRDA基準による
ように定義されるところの可能なアルツハイマー病への患者の転換を評価するために実施
し得る。アルツハイマー病への転換の高危険度を伴う患者は、記憶障害、若しくは前アル
ツハイマー病の症候学に関連した他の困難の早期徴候、アルツハイマー病の家族歴、遺伝
的危険因子、齢、性別、およびアルツハイマー病に対し高危険度と予測することが見出さ
れた他の特徴について参照集団をスクリーニングすることにより、非臨床集団から選択す
る。より正常な集団を評価するよう設計された他の数的指標と一緒の、MMSEおよびA
DASを包含する適する数的指標の基礎スコアを収集する。これらの患者集団を、該剤を
含む投薬代替に対するプラセボ比較を伴う適する群に分割する。これらの患者集団を約6
か月の間隔で追跡し、そして、各患者のエンドポイントは、彼若しくは彼女が観察の終了
時にADRDA基準により定義されるところの可能なアルツハイマー病に転換するかどう
かである。
本発明は以下の制限しない実施例によりより完全に記述されるであろう。
[実施例]
免疫グロブリン鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を指すために、実施例の
節を通じて以下の配列識別子を使用する。
本明細書で使用されるところの、配列番号1〜59のいずれか1つで示されるようなV
Lおよび/もしくはVH配列を含んでなる抗体すなわち免疫グロブリン配列は、完全な配
列を含み(若しくはコードし)得るか、または成熟配列(すなわちシグナル若しくはリー
ダーペプチドを含まない成熟ペプチド)を含み得るかのいずれかである。
抗Aβ抗体mAb 3D6および10D5のin vivoおよびex vivo有効性
3D6および10D5抗体をアミロイドーシスで重要な多様な活性について試験した。
実験の詳細は第WO 02/46237号明細書(その内容全体は引用することにより本
明細書に組み込まれる)に見出し得る。
第一の実験で、10D5がヘテロ接合性PDAPPマウス(8.5ないし10.5月齢
)の脳中のAβ蓄積を阻害することが示された。mAb 266、21F12および2H
3、ならびにAβ1−42に向けられたマウスポリクローナル抗体(pab)を比較の目
的上包含した。試験抗体は腹腔内投与した(週1回約10mg/kgの用量で)。対照マ
ウスは希釈剤単独(PBS)を受領した。抗体力価をモニターし、そして全力価は2H3
を除き有意であり、2H3は試験から除外した。処置を6か月間にわたり継続し、6か月
の時点で生化学的および病理学的研究を実施するためマウスを安楽死させた。
AβおよびAPPレベルを、該動物の脳の海馬、皮質および小脳領域からのグアニジン
抽出物でのELISAによりアッセイした。pAbおよびmAb 10D5は皮質中のA
βを有意に低下させた(それぞれ65%、p<0.05および55%、p=0.0433
)。pAbならびにmAb 10D5および266は海馬のAβもまた低下させた(それ
ぞれ50%、p=0.0055、33%、p=0.0543および21%、p=0.09
90)。小脳では、pAbおよびmAb 266は全Aβのレベルの有意の低下を示し(
それぞれ43%、p=0.0033および46%、p=0.0184)、また、10D5
は有意近くの低下(29%、p=0.0675)を示した。要約すれば、Aβレベルは、
Aβ1−42に対し生じさせたポリクローナル抗体で処置した動物の皮質、海馬および小
脳中で有意に低下した。より少ない程度まで、Aβ1−42のアミノ末端および中央領域
(具体的にはアミノ酸1−16および13−28)に対し生じさせたモノクローナル抗体
もまた、有意の処置効果を示した。APPレベルは対照動物(またELISAにより測定
した)と比較して処置動物の全部で事実上変化しなかったため、該効果はAβに特異的で
あった。
該動物の脳中のAβ免疫反応性斑の程度に対する抗体投与の影響を決定するため、脳切
片(海馬、皮質および小脳領域)の免疫組織化学分析もまた実施した。対照処置動物に関
して、pAbおよびmAb 10D5は斑負荷量をそれぞれ93%および81%(p<0
.005)低下させた。21F12もまた斑負荷量に対する比較的限られた効果を有する
ようであった。
第二の試験で10D5、3D6および16C11での処置を比較した。対照群はPBS
若しくは無関係なアイソタイプを一致させた抗体(TM2a)いずれかを受領した。マウ
スは前の試験より高齢(11.5〜12月齢のヘテロ接合性)であったが、それ以外は実
験デザインは同一であった。mAb 10D5は再度、斑負荷量を対照に比較して80%
以上(p=0.003)低下させた。さらに、mAb 3D6は斑負荷量の86%(p=
0.003)低下を生じた一方、mAb 16C11は斑負荷量に対するいかなる影響を
有することにも失敗した。類似の知見がAβ42のELISA測定で得られた。これらの
結果は、N末端Aβ抗体3D6および10D5の受動的投与が、アルツハイマー病のマウ
スモデルで斑沈着の程度を低下させることを示す。
末梢投与した抗体が、血清中の抗体濃度の0.1%に相当する脳実質中の抗体の濃度を
伴いCNSに進入したことがさらに示され、該抗体が脳に進入し得、そこでそれらはアミ
ロイド消失を直接誘発し得ることを示す。斑消失はFc受容体媒介性の食作用の機構を介
してであることが示された。抗体は第WO 02/46237号明細書(Bardら(2
000)Nat.Med.6:916−919もまた参照されたい)に詳細に記述される
ex vivo食作用アッセイでアッセイした。簡潔には、新生DBA/2Nマウス(1
〜3日)の大脳皮質から得た初代小膠細胞を、ポリリシン被覆した円形ガラス製カバーガ
ラスにマウントしたPDAPPマウス若しくはヒトAD脳(死後間隔<3時間)いずれか
の未固定クライオスタット切片とともに24ウェルプレート中で培養した。抗体は最終5
μg/mlの濃度で細胞の添加前に1時間添加した。24時間のインキュベーション後に
培養物を固定し、浸透化しかつAβペプチドについて免疫染色した。外因性小膠細胞を核
染色(DAPI)により可視化した。Aβ定量のため、培養物を尿素抽出し、そしてAβ
1−42 pAbを使用してタンパク質をイムノブロットした。
ex vivoアッセイからのデータは、Aβの残基1−7内のエピトープに結合する
抗体(例えばmAb 3D6(1−5)、10D5(3−7)および22C8(3−7)
)がアミロイド沈着物を結合かつ消失の双方をする一方で、アミノ酸4−10内のエピト
ープに結合する抗体(例えばmAb 6E10(5−10)および14A8(4−10)
)はアミロイド沈着物を消失することなく結合することを示した。残基10に対しC末端
のエピトープに結合する抗体(例えばmAb 18G11(10−18)、266(16
−24)、22D12(18−21)、2G3(−40)、16C11(−40/−42
)および21F12(−42))はアミロイド沈着物を結合も消失もしない。
ex vivoアッセイで食作用を誘導するAβ抗体の数種の能力を、受動移入(pa
ssive transfer)研究でin vivo斑負荷量を低下させるそれらの能
力とさらに比較した。16C11および21F12は凝集させた合成Aβペプチドに高親
和性で結合したとは言え、これらの抗体は未固定の脳切片中のβアミロイド斑と反応せず
、ex vivoアッセイで食作用を誘発せず、そしてin vivoでの斑消失で有効
でなかった。mAb 10D5および3D6ならびにpAbは全3種の尺度により活性で
あった。これらの結果は、in vivoでの有効性がCNS内の斑の直接の抗体媒介性
の消失に少なくとも部分的によること、およびex vivoアッセイがこのin vi
vo有効性を予測することを示す。
PDAPPマウスにおける多様な神経病理学的エンドポイントに対するmAb 3D6、
10D5および12B4の有効性
PDAPPマウスをmAb 12B4若しくはmAb 3D6(双方ともIgG1アイ
ソタイプのもの)いずれかで受動免疫した。12B4は10mg/kgで試験した。mA
b 3D6は3種の異なる用量すなわち10mg/kg、1mg/kgおよび10mg/
kg月1回(1×4)で試験した。無関係のIgG1抗体(TY 11/15)およびP
BS注入が対照としてはたらいた。Aβペプチドでの能動免疫が比較としてはたらいた。
20と35の間の動物を各群で分析した。アッセイした神経病理学的エンドポイントはア
ミロイド負荷量および神経炎性負荷を包含する。
アミロイド沈着物により占有される前頭皮質の程度を、3D6で免疫染色すること、次
いで定量的画像解析により測定した。免疫療法(すなわち12B4、3D6(試験した全
用量)およびAβペプチドの投与)のそれぞれは、前頭皮質のアミロイド負荷量の有意の
低下に至った(すなわち、対照Abに比較して12%低下を表した)。
以前に、10D5が神経炎性負荷を有意に低下させることが不可能であったことが観察
され、IgG1アイソタイプの抗体はアルツハイマー病の動物モデルで神経炎性負荷を低
下させることが可能であるが、しかし他のアイソタイプは可能でないことを示唆した(デ
ータは示されない)。12B4対3D6(双方ともIgG1アイソタイプのもの)での受
動免疫後の神経炎性負荷を、従って、抗APP抗体8E5での脳切片の免疫染色、次いで
定量的画像解析によりPDAPPマウスで測定した。神経炎性ジストロフィーは、アミロ
イド斑のすぐ近傍に位置するジストロフィー型神経突起(例えば球状の外観をもつ神経突
起)の出現により示される。この分析の結果は、12B4での処置が神経炎性負荷を最も
有意に低下させたことを示した。対照的に3D6は神経炎性負荷を有意に低下させなかっ
た。
12B4および3D6抗体を上述されたex vivo食作用アッセイで試験した場合
、双方の抗体はPDAPP脳切片中のアミロイド沈着物を消失させ、そして小膠細胞はA
βを含有する多数の貪食胞を示した。類似の結果がADの脳切片で得られ;3D6(ヒト
化バージョン)およびキメラ12B4がAD斑の食作用を誘導した一方、対照IgG1は
無効であった。
マウス3D6可変領域配列
ハイブリドーマ細胞からの3D6のVLおよびVH領域を、ハイブリドーマ細胞からの
mRNAおよび標準的なクローニングの方法論を使用してRT−PCRおよび5’RAC
Eによりクローン化した。3D6のVLおよびVH領域をコードするヌクレオチド配列を
それぞれ配列番号1および3として(ならびにそれぞれ表5および7に)示す。3D6の
VLおよびVH領域のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号2および4として(ならびにそれ
ぞれ表6および8ならびにそれぞれ図1および2に)示す。N末端からC末端へ、Lおよ
びH鎖双方はドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびF
R4を含んでなる。各ドメインへのアミノ酸の割り当てはKabatら、上記の番号付け
規約に従う。
キメラ3D6抗体の発現のため、可変HおよびL鎖領域をそれぞれのVDJ若しくはV
J結合部の下流のスプライスドナー配列をコードするように再工作し、そしてH鎖につい
て哺乳動物発現ベクターpCMV−hγ1(配列番号91および92)、ならびにL鎖に
ついてpCMV−hκ1(配列番号93および94)にクローン化した(例えばMaed
aら(1991)Hum.Antibod.Hybridomas.2:124−134
を参照されたい)。これらのベクターは、ヒトγ1およびCk定常領域を、挿入された可
変領域カセットの下流のエキソンフラグメントとしてコードする。配列確認後に、H鎖お
よびL鎖発現ベクターをCOS細胞にコトランスフェクトした。馴化培地をトランスフェ
クション48時間後に収集し、そして抗体産生についてウエスタンブロット分析若しくは
Aβ結合についてELISAによりアッセイした。キメラ3D6は、マウス3D6により
示されたものに類似の高親和性でAβに結合することが見出された。さらに、ELISA
に基づく競合阻害アッセイは、キメラ3D6およびマウス3D6抗体がAβに結合するビ
オチニル化3D6と等しく競合したことを示した。さらに、マウスおよびキメラ双方の3
D6は、上述されたex vivoアッセイにおいてAβ斑の消失で有効であった。
マウス10D5可変領域配列
ハイブリドーマ細胞からの10D5のVLおよびVH領域を、5’RACE手順を使用
するRT−PCRによりクローン化した。10D5のVLおよびVH領域をコードするヌ
クレオチド配列をそれぞれ配列番号13および15として(ならびにそれぞれ表9および
11に)示す。10D5のVLおよびVH領域のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号14お
よび16として(ならびにそれぞれ表10および12ならびにそれぞれ図3および4に)
示す。N末端からC末端へ、LおよびH鎖双方はドメインFR1、CDR1、FR2、C
DR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。各ドメインへのアミノ酸の割り当
てはKabatら、上記の番号付け規約に従う。
キメラ10D5抗体発現ベクターは上で3D6について記述されたとおり工作し得、そ
してCOS細胞にコトランスフェクトし得る。馴化培地を、抗体産生についてウエスタン
ブロット分析、若しくはAβ結合についてELISAによりアッセイする。
マウス12B4可変領域配列
ハイブリドーマ細胞からの12B4のVLおよびVH領域を、ハイブリドーマ細胞から
のmRNAおよび標準的なクローニングの方法論を使用してRT−PCRおよび5’RA
CEによりクローン化した。12B4のVLおよびVH領域をコードするヌクレオチド配
列をそれぞれ配列番号17および19として(ならびにそれぞれ表13および15に)示
す。12B4のVLおよびVH領域のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号18および20と
して(ならびにそれぞれ表14および16ならびにそれぞれ図5および6に)示す。N末
端からC末端へ、LおよびH鎖双方はドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、F
R3、CDR3およびFR4を含んでなる。各ドメインへのアミノ酸の割り当てはKab
atら、上記の番号付け規約に従う。
キメラ12B4抗体発現ベクターは、上で3D6について記述されたとおり工作し、そ
してCOS細胞にコトランスフェクトした。馴化培地を、抗体産生についてウエスタンブ
ロット分析、若しくはAβ結合についてELISAによりアッセイした。キメラ12B4
は、キメラ3D6により示されたものに類似の高親和性でAβに結合することが見出され
た。さらに、ELISAに基づく競合阻害アッセイは、キメラ12B4およびマウス12
B4抗体が、Aβへの結合においてビオチニル化したマウスおよびキメラ3D6ならびに
10D5と等しく競合したことを示した。
3D6ヒト化
マウス3D6抗体中の重要な構造フレームワーク残基を同定するために、HおよびL鎖
について最も近いマウス抗体に基づき三次元モデルを生成した。この目的上、1CR9と
呼称される抗体を3D6 L鎖をモデル化するための鋳型として選び(PDB ID:1
CR9、Kanyoら、上記)、また、1OPGと呼称される抗体をH鎖をモデル化する
ための鋳型として選んだ(PDB ID:1OPG Kodandapaniら、上記)
。これらの抗体のL鎖およびH鎖との3D6のアミノ酸配列アライメントは、H鎖のCD
R3を除き、1CR9および1OPG抗体が3D6と有意の配列相同性を共有することを
示した。加えて、選択した抗体のCDRループは、再度H鎖のCDR3を除き、3D6の
CDRループが属すると同一の正準Chothia構造分類に属する。従って、1CR9
および1OPGを、3D6の相同性モデル化のための解明された構造の抗体として最初に
選択した。
上で示された抗体に基づく3D6可変領域の初回通過相同性モデルを、Look &
SegMod Modules GeneMine(v3.5)ソフトウェアパッケージ
を使用して構築した。このソフトウェアはMolecular Application
s Group(カリフォルニア州パロアルト)から永久ライセンスの下に購入した。M
ichael LevittおよびChris Lee両博士による著作のこのソフトウ
ェアパッケージは、配列相同性に基づき既知の構造の鋳型での一次配列の構造モデル化に
関与する段階を自動化することにより、分子モデル化の過程を容易にする。UNIX(登録商標)環境下でSilicon Graphics IRISワークステーションで作業して、不都合な原子接触を軽減しかつ静電およびファンデルワールス相互作用を至適化するための一連のエネルギー最小化段階により、モデル構造を自動的に改良する。
さらなる改良したモデルを、QUANTA(R)のモデル化機能を使用して構築した。
3D6のH鎖のCDR3でのPDBデータベースのクエリは、3D6に最も相同かつそれ
と同一数の残基を有するとして1qkzを同定した。これ故に、1qkzの結晶構造を鋳
型として使用して3D6のH鎖のCDR3をモデル化した。
適するヒトアクセプター抗体配列は、マウス可変領域のアミノ酸配列の既知のヒト抗体
の配列とのコンピュータ比較により同定した。該比較は3D6 HおよびL鎖について別
個に実施した。とりわけ、そのフレームワーク配列がマウスVLおよびVHフレームワー
ク領域と高程度の配列同一性を表したヒト抗体からの可変ドメインを、それぞれのマウス
フレームワーク配列でのNCBI BLAST(国立保健研究所のNCBIインターネッ
トサーバを通じて公的にアクセス可能)を使用するKabatデータベースのクエリによ
り同定した。
以下の基準、すなわち(1)主題の配列との相同性;(2)ドナー配列と正準CDR構
造を共有すること;および(3)フレームワーク領域中のいかなるまれなアミノ酸残基も
含有しないことに基づき、2種の候補配列をアクセプター配列として選んだ。VLの選択
されたアクセプター配列はKabat ID番号(KABID)019230(Genb
ank受託番号S40342)であり、また、VHについてはKABID 045919
(Genbank受託番号AF115110)である。ヒト化3D6抗体の第一のバージ
ョンはこれらの選択されたアクセプター抗体配列を利用する。
上で示されたとおり、本発明のヒト化抗体は、実質的にヒト免疫グロブリン(アクセプ
ター免疫グロブリン)からの可変フレームワーク領域および実質的に3D6と命名された
マウス免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリン)からの相補性決定領域を含んでなる。3
D6の相補性決定領域および適切なヒトアクセプター免疫グロブリンを同定したら、次の
段階は、生じるヒト化抗体の特性を至適化するためにこれらの成分からのどの残基(あれ
ば)を置換するかを決定することであった。
図1および2は、ヒト化配列、対応するヒトフレームワークアクセプター配列、および
最後にヒトフレームワークアクセプター配列に対する最高の相同性を示すヒト生殖系列V
領域配列のそれぞれのバージョン1とのそれぞれ元のマウス3D6 VLおよびVHのア
ライメントを描く。影を付けた残基は正準(黒地白抜き)、バーニア(点線囲み)、充填
(太字)およびまれなアミノ酸(太字斜体)を示しかつ図上に示す。*印はヒトアクセプ
ターフレームワーク配列中のマウス残基に戻し突然変異された残基を示し、そしてCDR
領域は上線を付けて示す。3D6のVL領域で、以下の残基を戻し突然変異の候補として
選択した。すなわち、残基1−まれなマウス、おそらくCDRに接触する;残基2−正準
/CDR接触残基;ならびに残基36および46−充填残基。3D6 VH領域では、以
下の残基を戻し突然変異若しくは置換の候補として選択した。すなわち、残基40および
42−マウスについてまれ、ヒトで置換する;残基49、CDR接触、バーニア;残基9
3−充填残基;ならびに残基94−正準残基。
図1および2に示す置換のそれぞれを有するヒト化3D6の第一のバージョン(h3D
6 v1)を生成した。PCR媒介性の集成を使用してヒト化VLおよびVH鎖を生成し
た。h3D6 v1 VLおよびVH領域をコードするヌクレオチド配列をそれぞれ配列
番号5および7として示す。h3D6 v1 VLおよびVH領域のアミノ酸配列をそれ
ぞれ配列番号6および8として示す。ヒト化3D6 VHおよびVLのバージョン1に組
み込まれた変化の要約を表17に提示する。
残基1でのD→Y置換を除きバージョン1について示された置換のそれぞれを有するヒ
ト化3D6の第二のバージョンを創製した。この残基はCDRと相互作用する残基と同定
されたため、該残基での置換をバージョン1で実施した。しかしながら、置換はその位置
でヒト免疫グロブリンにまれであった残基を欠失した。これ故に、置換を伴わない1バー
ジョンを創製した。さらに、H鎖フレームワーク領域中の非生殖系列残基を生殖系列残基
で置換した(すなわちH74=S、H77=TおよびH89=V)。h3D6 v2のV
LおよびVH領域をコードするヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号9および11として
示す。h3D6 v2のVLおよびVH領域のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号10およ
び12として示す。
12B4ヒト化
マウス12B4抗体中の重要な構造フレームワーク残基を同定するため、HおよびL鎖
について最も近いマウス抗体に基づき三次元モデルを生成した。この目的上、2PCPと
呼称される抗体を12B4 L鎖をモデル化するための鋳型として選び(PDB ID:
2PCP、Limら(1998)J.Biol.Chem.273:28576)、また
、1ETZと呼称される抗体をH鎖をモデル化するための鋳型として選んだ(PDB I
D:1ETZ、Guddatら(2000)J.Mol.Biol.302:853)。
これらの抗体のL鎖およびH鎖との12B4のアミノ酸配列アライメントは、2PCPお
よび1ETZ抗体が12B4と有意の配列相同性を共有することを示した。加えて、選択
した抗体のCDRループは、12B4のCDRループが属すると同一の正準Chothi
a構造分類に属する。従って、2PCPおよび1ETZを、12B4の相同性モデル化の
ための解明された構造の抗体として最初に選択した。
相同性モデル化およびアクセプター配列の選択は上で3D6について記述されたとおり
実施した。VLの選択されたアクセプター配列はKabat ID番号(KABID)0
05036(Genbank受託番号X67904)であり、また、VHについてはKA
BID 000333(Genbank受託番号X54437)であった。ヒト化12B
4抗体の第一のバージョンはこれらの選択されたアクセプター抗体配列を利用する。
上で示されたとおり、本発明のヒト化抗体は、実質的にヒト免疫グロブリン(アクセプ
ター免疫グロブリン)からの可変フレームワーク領域、および実質的に12B4と命名さ
れたマウス免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリン)からの相補性決定領域を含んでなる
。12B4の相補性決定領域および適切なヒトアクセプター免疫グロブリンを同定したら
、次の段階は、生じるヒト化抗体の特性を至適化するためにこれらの成分からのどの残基
(あれば)を置換するかを決定することであった。
再形成したL鎖V領域のアミノ鎖アライメントを図5A−Bに示す。アクセプターフレ
ームワーク(KABID 005036)の選択は同一のヒトサブグループからである。
マウスV領域に対応するものはまれなフレームワーク残基を有さず、また、該CDRは同
一のChothia正準構造グループに属するからである。単一の戻し突然変異(I2V
)が指図される。この残基が正準分類に属するためである。再形成したVLのバージョン
1は完全に生殖系列である。
再形成したH鎖V領域のアミノ酸アライメントを図6A−Bに示す。アクセプターフレ
ームワーク(KABID 000333)の選択は同一のヒトサブグループからである。
マウスV領域に対応するものはまれなフレームワーク残基を有さず、そして該CDRは同
一のChothia正準グループに属するからである。マウス配列へのKABID 00
0333のアミノ酸アライメントとともにのマウスVH鎖の構造モデル化は、再形成され
たH鎖のバージョン1(v1)中の9個の戻し突然変異、すなわちL2V、V24F、G
27F、I29L、I48L、G49A、V67L、V71KおよびF78V(Kaba
tの番号付け)を指図する。該戻し突然変異は図6A−Bに示されるアミノ酸アライメン
ト中で*印により強調されている。
該9種の戻し突然変異のうち4種が該モデルにより指図される。該残基は正準残基(V
24F、G27F、I29LおよびV71K、黒地白抜きにより示される)、すなわちC
DR残基への近接によって抗原結合に寄与しうるフレームワーク残基であるためである。
残基の次の最も重要な分類、すなわちVH−VL充填相互作用に関与する界面残基(囲み
により示される)に必要な戻し突然変異は存在しない。戻し突然変異の標的とされる残存
する5残基(L2V、I48L、G49A、V67L、F78V、Kabatの番号付け
)は全部バーニア分類(CDRコンホメーションへの間接的寄与、図6A−Bの太点線囲
み)に属する。
バージョン2は最小数の非CDRマウス残基を保持するよう設計した。L2V戻し突然
変異は非生殖系列の変化(VH4−61を生殖系列参照として使用する場合)を導入し、
そしてこの戻し突然変異はH鎖のバージョン2ではそれを生殖系列に復帰させるように除
外されている。残存する4個のバーニア分類の戻し突然変異もまたH鎖のバージョン2で
復帰されている(I48L、G49A、V67L、F78V)。バージョン2は従って合
計5個の非CDRマウス残基(VL中1個およびVH中4個)を含有する。バージョン3
は5個のバーニア残基のうち2個を復帰させるよう設計し(I48LとF78V)、該モ
デルが示すそれはより重要なバーニア残基でありうる。これ故にバージョン3は合計7個
の非CDRマウス残基を含有する。
ヒト化12B4のバージョン1、2および3に組み込まれた変化の要約を表18に提示
する。
12B4 VLおよびVH鎖のKabatの番号付けをそれぞれ図5および6に示す。
ヒト化12B4VL(バージョン1)および12B4VH(バージョン1)をコードする
ヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号21および23として示す。ヒト化12B4VL(
バージョン1)および12B4VH(バージョン1)のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号
22および24として示す。h12B4 v2 VHおよびh12B4 v3 VHのア
ミノ酸配列をそれぞれ配列番号25および26として示す。
ヒト化3D6抗体の機能的活性
ヒト化3D6v1の機能試験を、完全にキメラの抗体で一過性にトランスフェクトした
COS細胞からの馴化培地、キメラH鎖+ヒト化L鎖若しくはキメラL鎖+ヒト化H鎖い
ずれかの混合物、および最後に完全にヒト化した抗体を使用して実施した。馴化培地をE
LISAアッセイにより凝集型Aβ1−42への結合について試験した。ヒト化抗体は実
験誤差内の良好な活性を示し、また、キメラ3D6参照サンプルと識別不可能な結合特性
を表した。ヒト化3D6v2の類似の試験は、該抗体が3D6v1のものにほぼ同一のA
β結合特性を有したことを示した。3D6v2はマウス3D6抗体と比較して事実上同一
のエピトープ地図を有することもまた示された。ヒト化3D6v1抗体はPDAPPマウ
スから調製したクライオスタット脳切片中のAβを認知した(上述されたとおり実施した
免疫組織化学)。同一の実験で、h3D6v2は、3D6v1に類似の様式で(例えば高
度に装飾された斑)PDAPPおよびAD脳切片を染色した。
マウス3D6と競合するh3D6抗体v1およびv2の能力を、ビオチニル化3D6抗
体を使用するELISAにより測定した。競合結合分析は、h3D6v1、h3D6v2
およびキメラ3D6全部がAβに結合するためにm3D6と競合したことを示した。h3
D6v1およびh3D6v2はAβに対し3D6と競合するそれらの能力が同一であった
。10D5抗体は3D6と異なる結合エピトープを有するため、それを陰性対照として使
用した。BIAcore分析もまたAβに対するh3D6v1およびh3D6v2の高親
和性を示した。0.88nMのKdを有する3D6に比較して、h3D6v1およびh3
D6v2双方が、h3D6v1およびh3D6v2についてそれぞれ2.06nMおよび
2.24nMで測定される約2ないし3倍より低い結合親和性を有した。ELISA競合
結合アッセイは、h3D6v1およびh3D6v2についておよそ6倍より低い結合親和
性を示した。典型的に、ヒト化抗体はそれらのマウス対照物に関して結合親和性の約3〜
4倍を喪失する。従って、h3D6v1およびh3D6v2について約3倍(ELISA
およびBIAcoreの結果の平均)の喪失は許容される範囲内である。
小膠細胞を刺激するh3D6v2の能力をex vivo食作用アッセイ(上述される
)で試験した。h3D6v2は、PDAPPマウス脳組織からのAβ凝集物の食作用の誘
導でキメラ3D6と同じくらい有効であった。IgGはAβを結合することが不可能であ
りかつ従って食作用を誘導し得ないため、それを陰性対照として使用した。
125I標識したh3D6v2、m3D6および抗体DAE13を、それぞれ別個の実
験で14匹の個別のPDAPPマウスにIV注入した。マウスを第7日後に殺し、そして
さらなる分析のため灌流した。それらの脳領域を解剖し、そして特定の脳領域の125
活性について測定した。脳中の放射標識活性を血清サンプル中の活性と比較した。該デー
タは、h3D6v2が脳に局在化し、そしてAβが凝集することが既知である海馬領域に
とりわけ濃縮されたことを示した。m3D6およびDAE13についての脳のカウントは
h3D6v2に匹敵した。全3種の抗体は、in vivoでのAβ斑結合により示され
るとおり血液関門を横断することが可能であった。
多様なN末端Aβ抗体の有効性
凝集させた合成Aβ1−42へのモノクローナル抗体6C6、10D5、2C1、12
B4、3A3および12A11の結合を、Schenkら(Nature 400:17
3(1999))に記述されるとおりELISAにより実施した。可溶性Aβ1−42(
本実施例において)はジメチルスルホキシド(DMSO)中で超音波処理した合成Aβ1
−42ペプチドを指す。20μg/mlの抗体の連続希釈を50,000cpmの[12
I]Aβ1−42(190μCi/μmol;IodogenTM試薬、Pierce
で標識)とともに室温で一夜インキュベートした。75mg/mlプロテインAセファロ
ース(Amersham Pharmacia)および200μgのウサギ抗マウスIg
G(H+L)(Jackson ImmunoResearch)を含有する50マイク
ロリットルのスラリーを、希釈した抗体とともに室温で1時間インキュベートし、2回洗
浄し、そしてWallacガンマカウンター(Perkin−Elmer)でカウントし
た。全段階は、10mMトリス、0.5M NaCl、1mg/mlゼラチンおよび0.
5%Nonidet P−40、pH8.0よりなるRIA緩衝液中で実施した。親和性
試験からの結果を下の表19に示す。
試験した抗体の全部が、凝集型Aβ1−42に対する高親和性(<1nM)を表した。
さらに、抗体12B4および12A11は20μg/mlの抗体濃度で可溶性Aβ1−4
2を認識可能に捕捉した。表19に示されるとおり、IgG1抗体12A11はIgG2
a抗体12B4より効率的にAβ1−42を捕捉した一方、IgG1抗体6C6および1
0D5、IgG2a抗体2C1ならびにIgG2b抗体3A3は可溶性Aβを認識可能に
捕捉しなかった。
Fc媒介性の斑消失を誘発するそれらの能力の尺度として、抗体を上述されたところの
PDAPPマウスからの脳組織の切片を使用するex vivo食作用アッセイでもまた
比較した。Aβ若しくは該アッセイの他の成分に対する反応性を有しない無関係のIgG
1およびIgG2a抗体を、アイソタイプを一致させた陰性対照として使用した。2種の
IgG2a抗体12B4および2C1はAβレベルを効率的に(12B4について73%
および2C1について69%;P<0.001)低下させ、12A11および3A3はい
くぶんより小さいがにもかかわらず統計学的に有意の効率(12A11について48%、
P<0.05および3A3について59%、P<0.001)を示した。10D5および
6C6抗体はAβレベルを有意に低下させなかった。ex vivo食作用アッセイでの
12A11の成績は、小膠細胞の食作用に好ましい1アイソタイプであるIgG2aアイ
ソタイプへの転換に際して改善されうる。
多様なN末端抗体のin vivo有効性:ADの神経病理学の低減
多様なN末端Aβ抗体のin vivo有効性を決定するために、12A11、12B
4および10D5を、Bardら(2000)Nat.Med.6:916に記述された
とおり、別個のマウス群に10mg/kgで週1回腹腔内注入により6か月間投与した。
試験の終了時に皮質のAβの総レベルをELISAにより測定した。抗体のそれぞれは総
AβレベルをPBS対照と比較して有意に低下させた(P<0.001)。すなわち、1
2B4は69%の低下を示し、10D5は52%の低下を示し、そして12A11は31
%の低下を示した。
神経炎性ジストロフィーのレベルをその後、上述のマウスからの脳組織の切片で検査し
て、斑消失と神経保護の間の関連を決定した。神経炎性ジストロフィーにより占有される
前頭皮質の比率を検査する脳画像解析を個々の動物について決定し、そして対照の平均(
100%に設定する)に関しての神経炎性ジストロフィーの比率として表した。該データ
は、抗体10D5および12A11が神経炎性ジストロフィーの低減で有効でなかった一
方、12B4は神経炎性ジストロフィーを有意に低下させた(12B4、P<0.05;
ANOVA、次いでpost hoc Dunnett検定)ことを示した。抗体12A
11の結合特性およびin vivo有効性を示す実験はBardら PNAS 100
:2023(2003)(引用することにより本明細書に組み込まれる)にもまた記述さ
れている。
要約すれば、全抗体は凝集型Aβに対する有意の親和性を有し、かつ、ex vivo
アッセイで斑消失を誘発した。IgG2aアイソタイプ(Fc受容体、とりわけFcγR
Iに対する親和性)が、Aβの消失および神経炎性ジストロフィーに対する保護の双方の
ための重要な属性であるようである。抗体12A11(IgG1)は可溶性単量体Aβ1
−42を12B4(IgG2a)若しくは10D5(IgG1)より効率的に捕捉したが
、しかし神経炎性ジストロフィーの低減で同じくらい有効でなかった。斑負荷量の減少お
よび神経炎性ジストロフィーの低減における高められた有効性は、食作用を最大限に支援
するアイソタイプを有するように抗体を工作することにより達成しうる。とりわけ有効な
抗体はAβのN末端内のエピトープに結合する。
さらなる一研究において、12A11 IgG2aアイソタイプ抗体を、PDAPPマ
ウスでAD様神経病理学を低下させる能力について試験した。12〜13月齢のPDAP
Pマウスに3mg/kgの12A11抗体を週1回6か月間注入した。6か月の終了時に
動物を殺し、そして、Aβ負荷量、神経炎性負荷およびシナプトフィジンレベルを包含す
る多様なエンドポイントについて脳サンプルを分析した。12A11抗体の投与はPDA
PPの脳サンプル中のアミロイド負荷量のレベルを有意に低下させた。12A11抗体の
投与は神経炎性ジストロフィー(斑を囲む異常な神経突起)の程度もまた有意に低下させ
た。同様に、12A11投与はシナプトフィジン(シナプスの完全性の尺度)の喪失に対
し有意に保護した。
さらなる実験において、12A11 IgG2aアイソタイプ抗体をアミロイドを消失
させる能力についてex vivo食作用アッセイで試験した。12A11抗体投与は脳
実質の斑沈着の完全消失をもたらし、かつ、血管アミロイドの部分的消失もまたもたらし
た。該結果は用量依存性であった。
多様なAβ抗体の捕捉能力
以前の研究は、ex vivoで(例えばPDAPP若しくはAD脳切片で)斑を結合
するおよび/若しくはex vivo食作用アッセイで斑消失を誘発する抗体の能力によ
り、AD関連の神経病理学(例えば斑負荷量)の低減における多様なAβ抗体のin v
ivo有効性を予測することが可能であることを示した(Bardら(2000)Nat
.Med.6:916−919)。該相関は、小膠細胞および/若しくはマクロファージ
によるFc依存性の食作用がin vivoでの斑消失の過程に重要であるという概念を
裏付ける。しかしながら、抗体の有効性はFc相互作用に依存しない機構によりin v
ivoでもまた得ることができることもまた報告された(Bacskaiら(2002)
J.Neurosci.22:7873−7878)。研究は、アミロイド斑を認識し得
ない、Aβの中央部分に向けられた抗体が、可溶性Aβに結合しかつ斑沈着を低下させる
ようであることを示した(DeMattosら(2001)Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA 98:8850−8855)。
可溶性Aβを捕捉する多様な抗体の能力を後に続くとおりさらにアッセイした。多様な
濃度の抗体(10μg/mlまで)を50,000CPMの125I−Aβ1−42(若
しくは125I−Aβ1−40)とともにインキュベートした。放射活性カウントの25
%を結合するのに十分な抗体の濃度を捕捉ラジオイムノアッセイで測定した。ある種の抗
体は試験した最高濃度(すなわち10μg/ml)でカウントの25%を結合しなかった
。こうした抗体については、10μg/mlで結合されるカウントの比率を決定した。1
2A11は10μg/mlで放射活性カウント(すなわち125I−Aβ)の20%を結
合した。これは試験した2種の他のAβ3−7抗体すなわち12B4および10D5(そ
れぞれ10μg/mlで7%および2%を結合する)により結合される量より大きかった
。従って、試験したN末端(エピトープAβ3−7)のうち、12A11はAβを捕捉す
る最も認識可能な能力を表した。3μg/mlで、15C11は放射活性カウント(すな
わち125I−Aβ)の25%を結合した。この捕捉は、中央Aβフラグメント(例えば
Aβ13−28若しくはAβ17−28)に対し生じさせた他のモノクローナル抗体に比
較して有意であった。こうした抗体についての標識したAβの25%を捕捉するのに必要
な濃度の範囲は約0.1μg/mlから10μg/mlまでであり、数種の抗体は10μ
g/mlでアッセイした場合に25%未満の標識Aβ(例えば10〜20%)を捕捉する
多様なAβ抗体のin vitro有効性:可溶性オリゴマーAβの結合
本実施例では、Aβ調製物は、実質的に後に続くとおり合成Aβオリゴマーに由来した

(1)凍結乾燥したAβ1−42ペプチドを100%ヘキサフルオロイソプロパノール(
HFIP)に1mMまで溶解し(混合し、その後室温で1時間インキュベートし)、そし
て微小遠心管中でアリコートに分離し(各チューブは0.5mgのAβ1−42ペプチド
を含有した);
(2)HFIPを蒸発により除去し、次いで凍結乾燥して残余のHFIPを除去し;
(3)生じるAβペプチド薄膜/残渣を−20℃で乾燥保存し;
(4)Aβペプチド残渣を5mMのペプチドの最終濃度までDMSOに再懸濁し、その後
氷冷ハムF12(フェノールレッド不含)培地に添加して、ペプチドを100μMの最終
濃度にし;
(5)ペプチドを4℃で24時間インキュベートして、およそ100μM濃度の合成Aβ
オリゴマーを生じ;ならびに
(6)合成Aβオリゴマーをペルオキシ亜硝酸で処理した。
Aβ調製物の一部分をその後、それぞれ試験免疫学的試薬(この場合は抗体)およびA
β単量体と接触させ、そして、試験免疫学的試薬に結合した1種若しくはそれ以上のAβ
オリゴマーを免疫沈降によりAβ調製物から抽出した。多様な免疫沈降物をゲル電気泳動
により分離し、そして実質的に後に続くとおり3D6抗体でイムノブロットした。図7〜
8の免疫沈降物サンプルをサンプル緩衝液で希釈し、そして16%トリシンゲル上でのS
DS−PAGEにより分離した。タンパク質をニトロセルロースメンブレンに移し、該メ
ンブレンをPBS中で沸騰させ、そしてその後TBS/Tween/5%カーネーション
粉乳の溶液中4℃で一夜ブロッキングした。メンブレンをその後3D6(残基1−5に対
するマウスモノクローナルAβ抗体)とともにインキュベートした。検出のため、メンブ
レンを抗マウスIg−HRPとともにインキュベートし、ECL Plusを使用して発
色させ、そしてフィルムを使用して可視化した。分子量はSeeBlueTM Plus
2分子量マーカーにより推定した。
図7〜8は、Aβ調製物中のAβ単量体、二量体、三量体、四量体、五量体などへの結
合を測定するための多様なAβ抗体と上のAβ1−42調製物のサンプルを接触した結果
を描く。図7〜8は、多様なAβ抗体と接触させたペルオキシ亜硝酸処理したオリゴマー
Aβ1−42調製物の免疫沈降物のウエスタンブロット(3D6を用いて画像化した)を
描く。Aβ1−42単量体、二量体、三量体および四量体のバンドのおよその位置を各図
の左側に示す。該抗体により認識されるAβエピトープおよび該抗体についてのCFCア
ッセイの結果(実施例13を参照されたい)を各Aβ抗体の下に示す。「+」表記は該抗
体での処置に際しての増大した認知の観察結果を示し、「−」表記は該抗体での処置に際
しての認知の変化なしという観察結果を示し、そして「+/−」表記は、該抗体での処置
に際しての増大した認知の傾向、しかし増大した認知という観察結果として示されるのに
十分に統計学的に有意でない観察結果を示す。
図7〜8で、Aβ調製物中のAβ単量体に対するAβ抗体の結合に関してAβ調製物中
のAβ二量体もしくはより高次のオリゴマーに対するAβ抗体の増大された結合は、該A
β抗体がアルツハイマー病の処置について治療的有効性を有することを予測する。注目す
べきは、Aβ抗体3D6、3A3、15C11、10D5、12A11および266は、
単量体Aβに比較してオリゴマーAβ種に対する優先的結合を表し、12A11がオリゴ
マーAβへの最も有意な優先的結合を表した。従って、これらの抗体は、処置認知障害、
例えばADに関連するものにおいて治療的有効性を有すると予測される。
多様なAβ抗体のin vivo有効性:ADのTg2576マウスモデルにおける認知
の迅速な改善
野性型およびTg2576マウスに、腹腔内注入により単一用量のリン酸緩衝生理的食
塩水(PBS)若しくは処置抗体を投与した。処置抗体はAβペプチドのN末端、中央お
よびC末端部分に対し生じさせた抗体を包含した。認知(すなわち文脈的および手掛かり
依存的記憶)の迅速な改善を評価するため、各マウスにCFC訓練活動を処置直後に、お
よびCFC試験活動を処置24時間以内(すなわち処置後第1日)に実施した。治療的有
効性は、記憶障害の逆転および記憶障害状態双方に関して表した。「記憶障害の逆転」は
、mAb対PBS対照処置Tg2576動物のフリージング行動を比較することにより決
定した。「記憶障害状態」は野性型対Tg2576 mAb処置動物のフリージング行動
を比較することにより決定した。
AβのN末端に対し生じさせた数種のmAbの治療的有効性を表20に表にする。処置
後第1日に実施したCFC試験活動の結果は、mAb 3D6、10D5および12A1
1が対照処置に関してTg2576マウスの文脈的記憶の迅速かつ有意の(**)改善を
引き起こした(p値<0.05)ことを示す。さらに、mAb 3D6、10D5および
12A11で処置したTg2576マウスは、野性型マウスに関して有意の記憶障害(#
#)を表さなかった(p値>0.1)。3A3(表20に列挙されない)と呼称される付
加的なN末端mAbもまた、CFCアッセイでTg2576マウスでの認知記憶障害の逆
転において有効であることが見出された。加えて、抗体6C6、10D5および12B4
は、記憶障害の逆転()若しくは記憶障害なし(#)いずれかへの傾向を表した(0.
1>p値>0.05)。
Tg2576マウスは、12A11と呼称されるN末端のマウスIgG2a mAbを
投与した場合に、文脈的記憶のとりわけ顕著な、有意のかつ迅速な改善を表した。例えば
、12A11は試験したすべての用量(0.3、1、10若しくは30mg/kg)で記
憶障害の逆転をもたらした(図9Aおよび9Bを参照されたい)。対照的に、未処置の(
PBS)Tg2576マウスは、野性型マウスと比較して文脈依存的記憶の有意の障害(
)を表した(図9A)。しかしながら、Tg2576マウスは、1、10若しくは30
mg/kg(i.p.)の12A11を投与した場合に完全なかつ有意の記憶障害の逆転
(#)を表した。認知能力の改善は、より低用量(0.1および1mg/kg i.p.
)の12A11をマウスに投与した場合に持続した(図9B)。
観察された応答がアミロイド結合によったことを確認するため、Tg2576マウスに
、鶏コクシジウム(E.tennela)からの無関係の抗原に対し生じさせたIgG2
aアイソタイプの対照mAb30mg/kgを投与した。期待されたとおり、該対照抗体
で処置したTg2576マウスは、野性型マウスに関して文脈的記憶の顕著な障害を表し
た。
別の実験で、N末端抗体3D6、12A11および12B4の効果をTg2576マウ
スを用いるCFCアッセイで直接比較した(図2を参照されたい)。前の結果に一致して
、12A11は1、10若しくは30mg/kgで顕著なかつ有意の記憶障害の逆転を誘
導した(^)。さらに、3D6は30mg/kgで有意の記憶障害の逆転を誘導した。対
照的に、12B4抗体および無関係のIgG1抗体(TY 11/15)は有意の記憶障
害の逆転を誘導することに失敗した。
Aβの中央のアミノ酸配列に対し生じさせた数種のmAbの治療的有効性を表21に表
にする。処置後第1日に実施したCFC試験活動の結果は、mAb 266および15C
11が、対照処置に関してTg2576マウスの文脈的記憶の有意の改善(**)を引き
起こし(p値<0.05)、かつ、野性型マウスに関して有意の記憶障害を引き起こさな
かった(##)(p値>0.1)ことを示す。さらに、抗体1C2および2B1は記憶障
害の逆転への傾向()を表した(0.1>p値>0.05)。
Aβのカルボキシ末端アミノ酸配列に対し生じさせた数種のmAbの治療的有効性を表
22に表にする。処置後第1日に実施したCFC試験活動の結果は、AβのC末端に対し
生じさせた大部分の抗体が、試験した単一用量(30mg/kg)で認知障害の処置にお
いて比較的無効であったことを示す。試験した4種のモノクローナル抗体のいずれも、対
照処置に関してTg2576マウスの文脈的記憶のいかなる改善も生じなかった(p値>
0.1)とは言え、3種(2G3、14C2および16C11)は野性型マウスに関して
障害なしへの傾向(#)を表した(0.1>p値>0.05)。
上の研究において、記憶障害の逆転を表すマウスは短期間内に表わした。多様な有効な
Aβ抗体を投与したマウスでの認知のこの迅速な改善は、血液中の可溶性Aβの捕捉およ
びCNSから血漿へのAβのその後の除去を伴う作用機序を示唆する。
マウス12A11抗体のin vivo有効性:Tg2576マウスの認知の長期改善
N末端のマウス12A11抗体(「mu12A11」)での処置後24時間以内に観察
された認知改善の持続期間を、第二の長時間CFC試験で評価した。Tg2575および
野性型マウスに、再度、PBS対照若しくは低用量の12A11抗体(1mg/kg i
p)を投与し、そしてそれらの認知状態を、処置後第0〜1、9〜10および16〜17
日のCFCアッセイにより評価した(すなわち、CFC訓練活動を第0、9、16日に実
施しかつCFC試験活動を第1、10および17日に実施した)。
実施例13で観察されたとおり、Tg2576マウスは再度、mu12A11での処置
後第1日に文脈的記憶の顕著な有意のかつ迅速な改善を表した(図11Aを参照されたい
)。例えば、mu12A11で処置したTg2576は、野性型マウスのものと同等に近
づいた有意の記憶障害の逆転(PBS処置したTg2576マウスと比較した場合)およ
び記憶障害状態を表した。文脈的記憶のこれらの改善は持続し、かつ、処置後第10日に
評価した場合になおより顕著であった。さらに、処置後第17日に評価した場合、mu1
2A11は記憶障害なしへの傾向を表し続けた。これらの結果は、単一の低用量のmu1
2A11 N末端抗体が、ADのマウスモデルで認知能力の永続的かつ長期の改善をもた
らし得ることを示した。
マウス266抗体およびマウス12A11抗体のin vivo有効性の比較:Tg25
76マウスの認知の長期改善
N末端のマウス12A11抗体(「mu12A11」)での処置後24時間以内に観察
された認知改善の持続期間を、中央領域のマウス266抗体(「mu266」)を用いる
比較長時間CFC試験で評価した。Tg2575および野性型マウスに、再度、PBS対
照若しくは低用量の12A11抗体(1mg/kg ip)を投与し、そしてそれらの認
知状態を処置後第0〜1、4〜5、9〜10および16〜17日のCFCアッセイにより
評価した(すなわち、CFC訓練活動を第0、4、9、16日に実施しかつCFC試験活
動を第1、5、10および17日に実施した)。
Tg2575および野性型マウスの第二の群にPBS対照若しくは低用量の266抗体
(3mg/kg ip)を投与し、そしてそれらの認知状態を処置後第0〜1、4〜5、
9〜10および16〜17日のCFCアッセイにより評価した(すなわち、CFC訓練活
動を第0、4、9、16日に実施しかつCFC試験活動を第1、5、10および17日に
実施した)。
実施例4に記述されるとおり、mu12A11およびmu266双方で処置したTg2
576マウスは、立派な抗体での処置後第5日に文脈的記憶の顕著な有意のかつ迅速な改
善を表した[図11Bを参照されたい]。例えば、mu12A11およびmu266で処
置したTg2576の双方の群は、有意の記憶障害の逆転(PBS処置したTg2576
マウスと比較した場合)、および野性型マウスのものと同等に近づいた記憶障害状態を表
した。双方の群は文脈的記憶の改善を表し、この改善は持続しかつ処置後第10日に評価
した場合になおより顕著であった。さらに、処置後第17日に評価した場合、mu12A
11およびmu266双方の群は記憶障害なしへの傾向を表し続けた。これらの結果は、
単一の低用量のmu12A11 N末端抗体およびmu266中央末端抗体双方が、別個
に、ADのマウスモデルの認知能力の永続的かつ長期の改善をもたらし得ることを示した
最後の実験で、野性型マウスおよび二重トランスジェニックADマウスに、単一用量の
リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)若しくは処置抗体(C末端266抗体若しくはN末端
12A11抗体)をCFCの訓練期前24時間に腹腔内注入により投与した。該実験で使
用した二重トランスジェニックADマウスはおよそ18〜20月齢であり、そして顕著な
認知障害ならびに斑の密な蓄積を表した。
二重トランスジェニックADマウスは、12A11と呼称されるN末端マウスIgG2
a mAbを投与した場合に文脈的記憶障害の顕著なかつ有意の逆転を表し、そしてこの
mAbは数種の低用量(3および10mg/kg)で有効な処置であった。(図12を参
照されたい)。266と呼称される中央末端抗体での低用量処置もまた、二重トランスジ
ェニックマウスで文脈的記憶障害の有意の逆転をもたらした。対照的に、未処置の(PB
S)二重トランスジェニックマウスは、野性型マウスと比較して文脈依存的記憶の有意の
障害を表した(すなわち有意の記憶障害状態)()。これらの結果は、文脈的記憶障害
の急性の逆転が、顕著なアルツハイマー病の病理学(AD)を表す加齢マウスで維持され
ることを示す。
マウス12A11可変領域配列
ハイブリドーマ細胞からのmu12A11のVLおよびVH領域を、ハイブリドーマ細
胞からのmRNAおよび標準的なクローニングの方法論を使用してRT−PCRおよび5
’RACEによりクローン化した。12A11のVLおよびVH領域をコードするヌクレ
オチド配列をそれぞれ配列番号27および29として(ならびにそれぞれ表23および2
5に)示す。12A11のVLおよびVH領域のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号28お
よび30として(ならびにそれぞれ表24および26ならびにそれぞれ図13および14
に)示す。
12A11のVLおよびVH配列は、それらが開始メチオニンからC領域までの1個の
連続するORFを含有しかつ免疫グロブリンV領域遺伝子の保存された残基の特徴を共有
する限りは、機能的V領域の基準に合致する。N末端からC末端へ、LおよびH鎖双方は
ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んで
なる。
可変HおよびL鎖発現ベクターは3D6および12B4について上述されたとおり工作
し、そしてCOS細胞にコトランスフェクトした。馴化培地を、抗体産生についてウエス
タンブロット分析、若しくはAβ結合についてELISAによりアッセイした。キメラ1
2A11は、キメラおよびヒト化3D6により示されるものに類似の高親和性でAβに結
合することが見出された。結合親和性もまた、キメラおよびヒト化12B4により示され
るものに類似であった。
マウス15C11可変領域配列
ハイブリドーマ細胞からの15C11のVLおよびVH領域は、ハイブリドーマ細胞か
らのmRNAおよび標準的なクローニングの方法論を使用してRT−PCRおよび5’R
ACEによりクローン化した。15C11のVLおよびVH領域をコードするヌクレオチ
ド配列はそれぞれ配列番号39および41として(ならびにそれぞれ表27および29に
)示す。15C11のVLおよびVH領域のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号40および
42として(ならびにそれぞれ表28および30ならびにそれぞれ図15および16に)
示す。N末端からC末端へ、LおよびH鎖双方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、
CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。N末端からC末端へ、Lおよび
H鎖双方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびF
R4を含んでなる。エピトープ地図アッセイを実施し、15C11のエピトープとしてA
βの残基19−22を同定した。
12A11ヒト化
マウス12A11抗体中の重要な構造フレームワーク残基を同定するため、12A11
HおよびL鎖に対する相同性を有する解明されたマウス抗体の三次元モデルを研究した
。12A11 L鎖に対する緊密な相同性を有する1KTRと呼称される抗体を選び、ま
た、12A11 H鎖に対する緊密な相同性を有する1ETZおよび1JRHと呼称され
る2種の抗体を選んだ。これらのマウス抗体は12A11との強い配列保存を示す(Vk
について112アミノ酸で94%の同一性およびVhについてそれぞれ126アミノ酸で
83%の同一性および121アミノ酸で86%の同一性)。1ETZのH鎖構造を1KT
Rのものに重ねた。加えて、Vkについて、選択した抗体のCDRループは、12A11
VLのCDRループが属すると同一の正準Chothia構造分類に属する。これらの
抗体の結晶構造を、抗体の機能に重要であると予測される残基(例えばCDRのコンホメ
ーションに重要なFR残基など)について、および比較して類似の12A11抗体の機能
を検査した。
適するヒトアクセプター抗体配列は上述されたとおり同定した。VLについて選択した
アクセプター配列はNCBI Ig非重複性データベースのBAC01733である。V
Hについて選択したアクセプター配列はNCBI Ig非重複性データベースのAAA6
9734である。AAA69734は(サブグループIIよりむしろ)ヒトサブグループ
III抗体であるが、しかしSaldanhaら(1999)Mol.Immunol.
36:709での論法に少なくとも部分的に基づいて最初のアクセプター抗体として選択
した。ヒト化12A11抗体の第一のバージョンはこれらの選択されたアクセプター抗体
配列を利用する。該抗体はSchroederとWang(1990)Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA 872:6146に記述されている。
上に示されたとおり、本発明のヒト化抗体は、実質的にヒト免疫グロブリン(アクセプ
ター免疫グロブリン)からの可変フレームワーク領域および実質的に12A11と命名さ
れたマウス免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリン)からの相補性決定領域を含んでなる
。12A11の相補性決定領域および適切なヒトアクセプター免疫グロブリンを同定した
ら、次の段階は、生じるヒト化抗体の特性を至適化するためにこれらの成分からのどの残
基(あれば)を置換するかを決定することであった。
再形成したL鎖V領域のアミノ酸アライメントを図13に示す。アクセプターフレーム
ワーク(BAC01733)の選択は同一のヒトサブグループからである。マウスV領域
に対応するものはまれなフレームワーク残基を有さず、また、該CDRは同一のChot
hia正準構造グループに属するからである。戻し突然変異はヒト化12A11のバージ
ョン1で行わなかった。
再形成したH鎖V領域のアミノ鎖アライメントを図14に示す。アクセプターフレーム
ワーク(AAA69734)の選択は(以前に記述されたところの)ヒトサブグループI
IIからであり、そしてまれなフレームワーク残基を有しない。マウス配列へのAAA6
9734のアミノ酸アライメントとともにのマウスVH鎖(1ETZおよび1JRH)の
構造解析は、再形成されたH鎖のバージョン1(v1)中の9個の戻し突然変異、すなわ
ちA24F、T28S、F29L、V37I、V48L、F67L、R71K、N73T
、L78V(Kabatの番号付け)を指図する。該戻し突然変異は図14に示されるア
ミノ酸アライメント中で*印により強調されている。
該9種の戻し突然変異のうち3種が該モデルにより指図される。該残基は正準残基(A
24F、F29LおよびR71K、黒地白抜き)、すなわちCDR領域への近接によって
抗原結合に寄与しうるフレームワーク残基であるためである。残基の次の最も重要な分類
、すなわちVH−VL充填相互作用に関与する界面残基(下線)に1個の戻し突然変異す
なわちV37Iが存在する。N73T突然変異は結合部位の縁のバーニア残基(点線で囲
まれる)であり、おそらくCDR1に隣接するS30と相互作用する。戻し突然変異の標
的とされる残存する4残基(T28S、V48L、F67L、L78V、Kabatの番
号付け)もまたバーニア分類(CDRコンホメーションへの間接的寄与、図14の点線囲
み)に属する。
ヒト化12A11のバージョン1に組み込まれた変化の要約を表31に提示する。
12A11 LおよびH鎖のKabatの番号付けはそれぞれ図13および14に示す
。H鎖アクセプター配列AAA69734および生殖系列配列567123のKabat
の番号付けは、技術に認識された方法(例えばKabat、Sequences of
Proteins of Immunological Interest、上記を参照
されたい)を使用して決定し得る。ヒト化12A11 VH(バージョン1)をコードす
るヌクレオチド配列は配列番号33として示し、また、ヒト化12A11(バージョン1
)のアミノ酸配列は配列番号34として示す。L鎖中の以下の残基を戻し突然変異の候補
として同定した:V2、I48、G64およびF71、正準;M4、P40、L47、Y
49、G66、G68およびT69、バーニア;Y36、Q38、P44、L46、Y8
7およびF98、充填。しかしながら、これらの残基のいずれもドナーとアクセプターの
間で異ならなかったため、戻し突然変異はヒト化12A11の第一のバージョンで行わな
かった。
適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用するPCR媒介性の集成を使用してh12
A11v1を生成した。ヒト化12A11VL(バージョン1)および12A11VH(
バージョン1)のヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号31および32として示す。可変
L鎖にはA19生殖系列配列(受託番号X63397)によりコードされるリーダーペプ
チドを使用した。可変H鎖には、リーダーペプチドはM72アクセプター配列(受託番号
AAA69734)由来であった。
バーニア残基(例えばS28T、V48L、F67L、L78V)はCDRのコンホメ
ーションに間接的に寄与し、そしてコンホメーションの混乱に最小に重要であると仮定し
た。標的とした残基は、部位特異的突然変異誘発、および突然変異誘発鋳型としてのpC
RSプラスミド中のh12A11 VHv1により変異させて、バージョン2に対応する
クローンを生じさせた。バージョン2の配列を確認したV領域挿入物を、H鎖発現ベクタ
ーpCMV−Cγ1(配列番号91および92)のBamHI/HindIII部位にサ
ブクローニングして、組換えh12A11v2抗体を生じさせた。位置T73Nの突然変
異に加えて上のバーニア残基突然変異(すなわち戻し突然変異の除外)のそれぞれを有す
るバージョン2.1抗体を同様に創製した。バージョン3の抗体は、同様に、位置K71
Rの突然変異に加えて上の突然変異すなわちT28S、L48V、L67F、V87Lの
それぞれを有した。
正準および充填残基に戻し突然変異を保持したがしかし1(バージョン4.1ないし4
.4)、2(バージョン5.1ないし5.6)若しくは3(バージョン6.1ないし6.
4)個のバーニア残基の戻し突然変異を除外した付加的なヒト化12A11バージョンを
設計した。部位特異的突然変異誘発およびクローン構築を上の下位区分Cで記述されたと
おり実施した。組換え抗体をCOS細胞中で発現させ、そしてCOS細胞上清から精製し
た。ヒト化12A11抗体のバージョン4.1ないし6.4のアミノ酸配列を配列番号4
0〜53として示す。上の組合せ、例えば、最低1個の充填および/若しくは正準残基(
例えば位置28、37、48、67、71および78のヒト残基、若しくは位置28、3
7、48、67、71、73および78のヒト残基)と組合せで1、2、3、4若しくは
5個のバーニア残基にヒト残基を包含する付加的なバージョンを企図している。例えば、
1個の充填残基および2個の正準残基(すなわち位置28、48、67、71、73およ
び78のヒト残基)と組合せで1個のバーニア残基にヒト残基を有するバージョン3.1
抗体を創製した。21%のマウス可変領域残基(VL+VH)を有するバージョン1に比
較して、バージョン3.1はわずか17%のマウス可変領域残基を有する(すなわちより
低いマウス含量を有する)。ヒト化12A11バージョン3.1のH鎖可変領域のヌクレ
オチドおよびアミノ酸配列をそれぞれ配列番号38および39として示す。
残基28(バーニア)のT→S戻し突然変異、および残基37(充填)のV→I戻し突
然変異を除きバージョン1について示された戻し突然変異のそれぞれを有するヒト化12
A11の第七のバージョンを創製する。残基73(バーニア)のN→T戻し突然変異を除
きバージョン1について示された戻し突然変異のそれぞれを有するヒト化12A11の第
八のバージョンを創製する。ヒト化12A11のバージョン7および8のH鎖のアミノ酸
配列をそれぞれ配列番号54および55として示す。図15A−Cはh12A11 v1
ないしv8のアミノ酸配列を描く。
バージョン1に比較して、バージョン7は7個の戻し突然変異のみ含有する。T28S
戻し突然変異は保存的でありかつH鎖のバージョン7で排除されている。充填残基V37
Iの戻し突然変異もまたバージョン7で排除されている。バージョン1に比較して、バー
ジョン7は8個の戻し突然変異のみ含有する。バージョン8ではN73T(バーニア)戻
し突然変異が排除されている。
付加的なバージョンは、上の組合せ、例えば、場合によっては最低1個の充填残基(例
えば位置37)および/若しくは最低1個の正準残基での戻し突然変異の排除と組合せの
、位置28、48、78および73から選択される1、2、3、4(若しくは5)残基で
のヒト残基(例えば戻し突然変異の排除)を包含しうる。
ヒト化12A11抗体の機能試験
全部のヒト化12A11バージョンを適切な発現ベクターにクローン化した。各抗体の
コーディング配列を生殖系列リーダー配列に作動可能に連結して細胞外分泌を助長した。
抗体を、下述される機能試験で使用される抗体の分析的量の製造のためCOS細胞中で一
過性に発現させた。CHOおよびHEK293細胞株を安定にトランスフェクトしかつ懸
濁液中で培養してin vivo使用のための抗体の産生レベルを提供した。抗体は技術
に認識される方法論に従って精製した。
いくつかの実験で、一過性にトランスフェクトしたCOS細胞中でのh12A11v3
.1の発現をH鎖イントロンの操作により増大させた。他の実験では、安定にトランスフ
ェクトしたプールでのh12A11v3.1の発現を、H鎖イントロン含量(すなわちC
H1とヒンジ領域の間のイントロン、ヒンジ領域とCH2との間のイントロン、およびC
H2とCH3の間のイントロンの欠失)の操作ならびにシグナル配列(すなわち包括的シ
グナル配列MGWSCIILFLVATGAHS(配列番号87)の使用)により増大さ
せた。
ヒト化12A11のバージョン1を、2種の特性すなわち抗原結合(定量的Aβ EL
ISA)および相対親和性について、そのマウスおよびキメラの対照物とさらに比較した
。h12A11v1の結合活性は定量的Aβ ELISAで示され、そしてマウスおよび
キメラの形態の12A11と識別可能であることが見出された。
h12A11v1抗体の親和性もまた、競合的Aβ ELISAによりマウスおよびキ
メラ12A11抗体と比較した。競合結合アッセイのため、ビオチン結合組換えマウス1
2A11Cγ2a(アイソタイプスイッチ12A11)を使用した。凝集物Aβ 1−4
2に対するビオチニル化m12A11 Cγ2aの結合活性は元のCγ1マウス抗体のも
のに匹敵した。ヒト化12A11v1はそのマウスおよびキメラの対照物と2×IC50
値以内で競合した。このデータは、マウスCγ2aおよびh12A11v1についてそれ
ぞれ38nMおよび23nMというKD値を示したBiacore技術を使用する親和性
測定と矛盾しない。要約すれば、該知見は、h12A11v1がその元のマウス対照物の
抗原結合特性および親和性を保持することを示唆する。定量的Aβ ELISAアッセイ
で試験される場合、h12A11v2、v2.1およびv3は抗原結合についてh12A
11v1およびキメラ12A11に匹敵する。さらに、バージョン5.1〜5.6および
6.1〜6.3は、この結合アッセイで試験される場合に類似の結合活性を表す。バージ
ョン6.4は該アッセイで活性の若干の喪失を示したが、しかし活性はv2で顕著に復帰
された。
マウス12A11および多様なヒト化12A11抗体の結合特性もまたBIAcore
技術を使用して比較した。表32は、多様なヒト化12A11抗体のAβ結合の反応速度
解析の要約を包含する。
該データは、ヒト化12A11 v1およびヒト化12A11 v3.1が、親マウス
12A11と比較した場合にAβペプチドに対する類似の親和性を有することを示す(h
12A11v1>m12A11>chi12A11>h12A11v3.1>h12A1
1v2.1>h12A11v2>h12A11v3.1)。注目すべきことに、ヒト化1
2A11 v1およびヒト化12A11 v3.1の親和性は、競合結合および/若しく
はBIAcore分析により測定されるとおり、キメラ12A11抗体のものの2〜3倍
以内である。
類似の結果が、上述されたとおり実施した競合結合研究で見られた。注目すべきことに
、VH中のバーニア残基48の戻し突然変異(V48L)の復帰は、h12A11v3.
1の親和性をh12A11v1のもの近くまで増大させる。
ヒト化12A11 v1およびヒト化12A11v3を、斑を結合しかつ斑を消失させ
る能力についてex vivoアッセイでさらに試験した。免疫組織化学をPDAPPお
よびヒトAD脳からのクライオスタット切片で実施した。ヒト化12A11 v1および
ヒト化12A11v3をキメラ12A11と比較し、そして試験した全濃度(すなわち0
.3μg/ml、1μg/mlおよび3μg/ml)でPDAPPおよびヒトクライオス
タット切片双方で斑を染色することが見出された。Fc媒介性の斑消失を誘発するそれら
の能力の尺度として、ヒト化12A11 v1およびヒト化12A11v3を、斑を消失
させるそれらの能力について、初代マウス小膠細胞およびPDAPPマウスからの脳組織
の切片でのex vivo食作用アッセイでもまた試験した。Aβ若しくはアッセイの他
の成分に対する反応性を有しない無関係のIgG1抗体を陰性対照として使用した。ヒト
化12A11 v1、ヒト化12A11v3およびキメラ12A11抗体のそれぞれが、
0.3μg/mlの濃度で試験した場合にAβレベルを効率的に低下させた。
キメラ12A11、ヒト化12A11 v1およびヒト化12A11v3の結合特異性
を、上述されたところの置換NET(rNET)分析により比較した。注目すべきことに
、ヒト化12A11 v1およびヒト化12A11v3.1の特異性は親マウス12A1
1抗体と同一若しくは同様であった。
12A11抗体のさらなる記述は、米国特許出願第10/858,855号、国際特許
出願第PCT/US04/17514号、“HUMANIZED Aβ ANTIBOD
IES FOR USE IN IMPROVING COGNITION(認知の改善
における使用のためのヒト化Aβ抗体)”と題された2004年12月15日出願(代理
人整理番号ELN−060−1をもつ)の米国特許出願第60/636,776号明細書
に見出し得る。
ヒト化12A11抗体のin vivo有効性:Tg2576マウスにおける認知の迅速
な改善
マウス12A11(mu12A11)、キメラ12A11(chi12A11)および
ヒト化形態の12A11(v3.1 hu12A11)抗体の治療的有効性をCFCアッ
セイで比較した。実施例18でのとおり、野性型およびTg2576双方のマウスに、単
一用量のリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)若しくは処置抗体を腹腔内注入により投与し
た。
認知(すなわち文脈的および手掛かり依存的記憶)のいかなる迅速な改善も評価するた
め、各マウスに、処置直後にCFC訓練活動、および処置の24時間以内(すなわち処置
後第1日)にCFC試験活動を実施した。CDCアッセイの結果を図16に描く。該デー
タは、mu12A11、chi12A11およびv3.1 hu12A11が認知の迅速
な改善において類似の効力を有することを明瞭に示す。例えば、3mg/kg用量若しく
はそれ以上のchi12A11若しくはv3.1 hu12A11いずれも、1mg/k
g用量のmu12A11で得られた結果に大きさが類似であった記憶障害の逆転をもたら
した。ヒト化12A11抗体v1.0からv3.1、とりわけv1.0、v3.0および
v3.1もまたCFCアッセイで有効と判明し、v1.0およびv3.1はマウス12A
11のものに類似の有効性を有し、また、v3.0は有意の有効性をさらに表した。さら
に、h12A11 v1.0は、二重トランスジェニックADマウスを試験した(MED
=3mg/kg)CFCアッセイで有効であり、受動的に投与した抗体の有効性がこれら
のマウスでの斑結合により滴定されなかったことを示した。マウス抗体266(斑結合し
ない)を陽性対照(MED=3mg/kg)として包含した。IgGアイソタイプh12
A11 v1.0抗体の能力もまたCFCで試験し、そしてMED 0.1mg/kgで
有効であることが判明した。アイソタイプスイッチはFc媒介性の活性を大きく低下させ
た(しかし排除しなかった)ことが示され、有効性がFc機能にのみ依存しないことを示
す。
それぞれATCC受託番号PTA−5129およびPTA−5130を有する抗体3D
6および10D5を産生する細胞株は、ブダペスト条約の規約のもとで2003年4月8
日に寄託され、また、それぞれATCC受託番号_______、______、___
___および______を有する抗体1C2、2B1、6C6および9G8を産生する
細胞株は、ブダペスト条約の規約のもとで2005年10月31日に寄託された。また、
ATCC受託番号______、______、______および______を有す
る抗体2H3、12A11、15C11および3A3を産生する細胞株は、ブダペスト条
約の規約のもとで2005年12月12日に寄託された。
前述から、本発明は多数の用途を提供することが明らかであろう。例えば、本発明は、
アミロイド形成疾患の処置、予防若しくは診断、またはそれらでの使用のための医薬品若
しくは診断組成物の製造における上述されたAβに対する抗体のいずれの使用も提供する
。前述の発明は理解の明確さの目的上詳細に記述されたとは言え、付随する請求の範囲の
範囲内である種の改変を実施しうることが明らかであろう。本明細書で引用される全部の
刊行物および特許文書、ならびに図面および配列表中に現れる文章は、これにより、それ
ぞれがそのように個々に示される場合と同一の程度まで、全部の目的上、そっくりそのま
ま引用することにより組み込まれる。

Claims (60)

  1. 認知の迅速な改善が達成されるような、有効用量のAβ抗体を被験体に投与すること(
    該抗体はAβの残基1−10内の1エピトープに特異的であり、かつ、単量体Aβに比較
    して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合する)を含んでなる、被験体における認知の迅
    速な改善を遂げる方法。
  2. 認知の迅速な改善が達成されるような、有効用量のAβ抗体を被験体に投与すること(
    該抗体はAβの残基1−10内の1エピトープに特異的であり、かつ、コンテクチュアル
    ・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイで測定されるところのAβ関連障害
    の動物モデルにおける認知の迅速な改善を遂げる)を含んでなる、被験体における認知の
    迅速な改善を遂げる方法。
  3. 認知の迅速な改善が達成されるような、有効用量のAβ抗体を被験体に投与すること(
    該抗体はAβの残基1−10内の1エピトープに特異的であり、単量体Aβに比較して可
    溶性オリゴマーAβに優先的に結合し、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コンディシ
    ョニング(CFC)アッセイで測定されるところのAβ関連障害の動物モデルにおける認
    知の迅速な改善を遂げる)を含んでなる、被験体における認知の迅速な改善を遂げる方法
  4. Aβ抗体がAβの残基3−7内の1エピトープに結合する、請求項1〜3のいずれか1
    つに記載の方法。
  5. Aβ抗体が、3D6抗体、6C6抗体、10D5抗体および121A11抗体よりなる
    群から選択される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法であるが、但しAβ抗体が3D6抗体でない
    、上記方法。
  7. 認知の迅速な改善が達成されるような、有効用量のAβ抗体を被験体に投与すること(
    該抗体はAβの残基13−28内の1エピトープに特異的であり、かつ、単量体のAβに
    比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合する)を含んでなる、被験体における認知
    の迅速な改善を遂げる方法。
  8. 認知の迅速な改善が達成されるような、有効用量のAβ抗体を被験体に投与すること(
    該抗体はAβの残基13−28内の1エピトープに特異的であり、かつ、コンテクチュア
    ル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイで測定されるところのAβ関連障
    害の動物モデルにおける認知の迅速な改善を遂げる)を含んでなる、被験体における認知
    の迅速な改善を遂げる方法。
  9. 認知の迅速な改善が達成されるような、有効用量のAβ抗体を被験体に投与すること(
    該抗体はAβの残基13−28内の1エピトープに特異的であり、単量体Aβに比較して
    可溶性オリゴマーAβに優先的に結合し、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コンディ
    ショニング(CFC)アッセイで測定されるところのAβ関連障害の動物モデルにおける
    認知の迅速な改善を遂げる)を含んでなる、被験体における認知の迅速な改善を遂げる方
    法。
  10. Aβ抗体がAβの残基16−24内の1エピトープに結合する、請求項7〜9のいずれ
    か1つに記載の方法。
  11. Aβ抗体が、2B1抗体、1C2抗体および15C11抗体よりなる群から選択される
    、請求項7〜9のいずれか1つに記載の方法。
  12. 請求項7〜9のいずれか1つに記載の方法であるが、但しAβ抗体が266抗体でない
    、上記方法。
  13. 動物モデルでの認知の改善が、記憶障害状態の改善若しくは記憶障害の逆転である、先
    行する請求項のいずれか1つに記載の方法。
  14. 被験体がAβ関連疾患若しくは障害を有するか若しくはその危険性がある、先行する請
    求項のいずれか1つに記載の方法。
  15. Aβ関連疾患若しくは障害が可溶性Aβと関連するか若しくはそれを特徴とする、請求
    項14に記載の方法。
  16. Aβ関連疾患若しくは障害が不溶性Aβと関連するか若しくはそれを特徴とする、請求
    項15に記載の方法。
  17. Aβ関連疾患若しくは障害がアミロイド形成疾患である、請求項15に記載の方法。
  18. Aβ関連疾患若しくは障害がアルツハイマー病である、請求項17に記載の方法。
  19. Aβ関連疾患若しくは障害がAβ関連認知障害である、請求項15に記載の方法。
  20. Aβ関連認知障害が軽度認知障害である、請求項19に記載の方法。
  21. 被験体にアミロイド沈着物が実質的にない、先行する請求項のいずれか1つに記載の方
    法。
  22. Aβ抗体が被験体での実質的斑沈着前に該被験体に投与される、先行する請求項のいず
    れか1つに記載の方法。
  23. 被験体がアルツハイマー病を伴うと診断されている、先行する請求項のいずれか1つに
    記載の方法。
  24. Aβ抗体が被験体での実質的斑沈着後に該被験体に投与される、請求項1〜21のいず
    れか1つに記載の方法。
  25. Aβ抗体が単一用量として被験体に投与される、先行する請求項のいずれか1つに記載
    の方法。
  26. Aβ抗体が複数用量で被験体に投与される、請求項1〜24のいずれか1つに記載の方
    法。
  27. Aβ抗体の用量が患者体重1kg当り約100μgから100mgまでである、先行す
    る請求項のいずれか1つに記載の方法。
  28. Aβ抗体の用量が患者体重1kg当り約300μgから30mgまでである、請求項1
    〜26のいずれか1つに記載の方法。
  29. Aβ抗体の用量が患者体重1kg当り約1mgから10mgまでである、請求項1〜2
    6のいずれか1つに記載の方法。
  30. 認知の迅速な改善が抗体の投与後1か月以内に達成される、先行する請求項のいずれか
    1つに記載の方法。
  31. 認知の迅速な改善が抗体の投与後1週以内に達成される、先行する請求項のいずれか1
    つに記載の方法。
  32. 認知の迅速な改善が抗体の投与後1日以内に達成される、請求項1〜30のいずれか1
    つに記載の方法。
  33. 認知の迅速な改善が、抗体の投与後12時間以内に達成される、請求項1〜30のいず
    れか1つに記載の方法。
  34. 被験体がヒトである、先行する請求項のいずれか1つに記載の方法。
  35. 被験体で認知を迅速に改善させるのに有効な量のAβ抗体を含んでなる組成物であって
    、該抗体がAβの残基1−10内の1エピトープに特異的であり、かつ、単量体Aβに比
    較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合する、上記組成物。
  36. 被験体で認知を迅速に改善させるのに有効な量のAβ抗体を含んでなる組成物であって
    、該抗体がAβの残基1−10内の1エピトープに特異的であり、かつ、コンテクチュア
    ル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイで測定されるところのAβ関連障
    害の動物モデルにおける認知の迅速な改善を遂げる、上記組成物。
  37. 被験体で認知を迅速に改善させるのに有効な量のAβ抗体を含んでなる組成物であって
    、該抗体がAβの残基1−10内の1エピトープに特異的であり、単量体Aβに比較して
    可溶性オリゴマーAβに優先的に結合し、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コンディ
    ショニング(CFC)アッセイで測定されるところのAβ関連障害の動物モデルにおける
    認知の迅速な改善を遂げる、上記組成物。
  38. Aβ抗体がAβの残基3−7内の1エピトープに結合する、請求項35〜37のいずれ
    か1つに記載の組成物。
  39. Aβ抗体が、3D6抗体、6C6抗体、10D5抗体および12A11抗体よりなる群
    から選択される、請求項35〜37のいずれか1つに記載の組成物。
  40. 請求項35〜37のいずれか1つに記載の組成物であるが、但しAβ抗体が3D6抗体
    でない、上記組成物。
  41. 認知の迅速な改善が達成されるような、有効用量のAβ抗体を含んでなる、被験体での
    認知の迅速な改善を遂げるための組成物であって、該抗体はAβの残基13−28内の1
    エピトープに特異的であり、かつ、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的
    に結合する、上記組成物。
  42. 認知の迅速な改善が達成されるような、有効用量のAβ抗体を含んでなる、被験体での
    認知の迅速な改善を遂げるための組成物であって、該抗体はAβの残基13−28内の1
    エピトープに特異的であり、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(
    CFC)アッセイで測定されるところのAβ関連障害の動物モデルにおける認知の迅速な
    改善を遂げる、上記組成物。
  43. 認知の迅速な改善が達成されるような、有効用量のAβ抗体を含んでなる、被験体での
    認知の迅速な改善を遂げるための組成物であって、該抗体はAβの残基13−28内の1
    エピトープに特異的であり、単量体Aβに比較して可溶性オリゴマーAβに優先的に結合
    し、かつ、コンテクチュアル・フィアー・コンディショニング(CFC)アッセイで測定
    されるところのAβ関連障害の動物モデルにおける認知の迅速な改善を遂げる、上記組成
    物。
  44. Aβ抗体がAβの残基16−24内の1エピトープに結合する、請求項41〜43のい
    ずれか1つに記載の組成物。
  45. Aβ抗体が、2B1抗体、1C2抗体および15C11抗体よりなる群から選択される
    、請求項41〜43のいずれか1つに記載の組成物。
  46. 請求項41〜43のいずれか1つに記載の組成物であるが、但しAβ抗体が266抗体
    でない、上記組成物。
  47. 動物モデルでの認知の改善が、記憶障害状態の改善若しくは記憶障害の逆転である、請
    求項41〜46のいずれか1つに記載の組成物。
  48. 抗体が1種若しくはそれ以上の向神経活性Aβ種を中和する、請求項41〜47のいず
    れか1つに記載の組成物。
  49. Aβ抗体が斑を消失させる、請求項41〜48のいずれか1つに記載の組成物。
  50. 単一用量投与のため処方された、請求項41〜49のいずれか1つに記載の組成物。
  51. 複数用量投与のため処方された、請求項41〜49のいずれか1つに記載の組成物。
  52. 相補性決定領域(CDR)を含んでなるヒト化免疫グロブリン6C6、すなわちATC
    C受託番号_______を有する細胞株により産生される抗体。
  53. ATCC受託番号_______を有する細胞株により産生されるモノクローナル抗体
    6C6のヒト化バージョン。
  54. 相補性決定領域(CDR)を含んでなるヒト化免疫グロブリン2B1、すなわちATC
    C受託番号_______を有する細胞株により産生される抗体。
  55. ATCC受託番号_______を有する細胞株により産生されるモノクローナル抗体
    2B1のヒト化バージョン。
  56. 相補性決定領域(CDR)を含んでなるヒト化免疫グロブリン1C2、すなわちATC
    C受託番号_______を有する細胞株により産生される抗体。
  57. ATCC受託番号_______を有する細胞株により産生されるモノクローナル抗体
    1C2のヒト化バージョン。
  58. 相補性決定領域(CDR)を含んでなるヒト化免疫グロブリン9G8、すなわちATC
    C受託番号_______を有する細胞株により産生される抗体。
  59. ATCC受託番号_______を有する細胞株により産生されるモノクローナル抗体
    9G8のヒト化バージョン。
  60. 認知の迅速な改善が達成されるような、有効用量の請求項52〜59のいずれか1つに
    記載の抗体を被験体に投与することを含んでなる、被験体における認知の迅速な改善を遂
    げる方法。
JP2012172572A 2012-08-03 2012-08-03 認知の改善における使用のためのアミロイドβ抗体 Pending JP2012233002A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012172572A JP2012233002A (ja) 2012-08-03 2012-08-03 認知の改善における使用のためのアミロイドβ抗体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012172572A JP2012233002A (ja) 2012-08-03 2012-08-03 認知の改善における使用のためのアミロイドβ抗体

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007546988A Division JP2008524247A (ja) 2004-12-15 2005-12-15 認知の改善における使用のためのアミロイドβ抗体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2012233002A true JP2012233002A (ja) 2012-11-29

Family

ID=47433672

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012172572A Pending JP2012233002A (ja) 2012-08-03 2012-08-03 認知の改善における使用のためのアミロイドβ抗体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2012233002A (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005500389A (ja) * 2001-08-17 2005-01-06 イーライ・リリー・アンド・カンパニー Aβに関連する病態および疾患を治療するための、可溶性Aβに高い親和性を有する抗体の使用
JP2005503789A (ja) * 2001-08-17 2005-02-10 イーライ・リリー・アンド・カンパニー 抗Aβ抗体
JP2005504714A (ja) * 2000-09-06 2005-02-17 アベンティス ファルマ ソシエテ アノニム アミロイドーシスと関連する疾患のための方法及び組成物

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005504714A (ja) * 2000-09-06 2005-02-17 アベンティス ファルマ ソシエテ アノニム アミロイドーシスと関連する疾患のための方法及び組成物
JP2005500389A (ja) * 2001-08-17 2005-01-06 イーライ・リリー・アンド・カンパニー Aβに関連する病態および疾患を治療するための、可溶性Aβに高い親和性を有する抗体の使用
JP2005503789A (ja) * 2001-08-17 2005-02-10 イーライ・リリー・アンド・カンパニー 抗Aβ抗体

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6011041692; BARD,F. et al: 'Epitope and isotype specificities of antibodies to beta -amyloid peptide for protection against Alzh' Proc Natl Acad Sci U S A Vol.100, No.4, 2003, p.2023-8 *

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8916165B2 (en) Humanized Aβ antibodies for use in improving cognition
US7625560B2 (en) Humanized antibodies that recognize beta amyloid peptide
JP4908203B2 (ja) ベータアミロイドペプチドを認識するヒト化抗体
JP2008524247A (ja) 認知の改善における使用のためのアミロイドβ抗体
US8128928B2 (en) Humanized antibodies that recognize beta amyloid peptide
JP2012147797A (ja) βアミロイドペプチドを認識するヒト化抗体
JP2012233002A (ja) 認知の改善における使用のためのアミロイドβ抗体
JP2012050437A (ja) ベータアミロイドペプチドを認識するヒト化抗体

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120831

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120831

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131126

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20140226

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20140303

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20140722