JP2012150400A - 電子写真感光体、及びそれを用いた画像形成方法、画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、及びそれを用いた画像形成方法、画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジ Download PDF

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Abstract

【課題】繰返し使用時の耐摩耗性が極めて高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れる高耐久な電子写真感光体、並びに画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジの提供。
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物が、該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、且つ、該3次元架橋膜中の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の残量を表す指数が特定の条件式を満足することを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】なし

Description

本発明は、繰返し使用時の耐摩耗性が極めて高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができる高耐久な電子写真感光体(以下、「感光体」、「静電潜像担持体」、「像担持体」と称することもある)、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関する。
近年、有機感光体(OPC:Organic Photo Conductor)は良好な性能を有し、様々な利点から、無機感光体に代わって複写機、ファクシミリ、レーザープリンター及びこれらの複合機に多く用いられている。その理由としては、例えば、(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、等が挙げられる。
また最近、画像形成装置の小型化を図るため、感光体の小径化が進み、更に、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わって、感光体の高耐久化が切望されるようになってきている。この観点からみると、有機感光体は、電荷輸送層が低分子電荷輸送物質と不活性高分子を主成分としているため、一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的負荷により、摩耗が発生しやすいという欠点がある。
加えて、高画質化の要求から、トナー粒子の小粒径化が進められ、これに伴ってクリーニング性の向上を図るため、クリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇とが余儀なくされる。このことも、感光体の摩耗を促進する要因の一つとなっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また、摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。
そこで、有機感光体の耐摩耗性の改良を図ることを目的として、種々の改良が行われてきた。例えば、電荷輸送層に硬化性バインダーを用いたもの(特許文献1参照)、高分子型電荷輸送物質を用いたもの(特許文献2参照)、電荷輸送層に無機フィラーを分散させたもの(特許文献3参照)、多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させたもの(特許文献4参照)、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送材及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けたもの(特許文献5参照)、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有させたもの(特許文献6参照)、コロイダルシリカ含有硬化性シリコーン樹脂を用いたもの(特許文献7参照)、有機珪素変性正孔輸送性化合物を硬化性有機珪素系高分子中に結合させた樹脂層を設けたもの(特許文献8、9参照)、電荷輸送性付与基を有する硬化性シロキサン樹脂を三次元網目構造状に硬化させたもの(特許文献10参照)、水酸基を少なくとも1つ有する電荷輸送性物質と三次元に架橋された樹脂及び導電性微粒子を含有させたもの(特許文献11参照)、反応性電荷輸送性物質を少なくとも2つ以上の水酸基を有するポリオールと芳香族系イソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有させたもの(特許文献12参照)、水酸基を少なくとも1つ有する電荷輸送性物質と三次元に架橋されたメラミンホルムアルデヒド樹脂を含有させたもの(特許文献13参照)、水酸基を有する電荷輸送性物質と三次元に架橋されたレゾール型フェノール樹脂を含有させたもの(特許文献14参照)などが挙げられる。
更に、硬化膜を形成し得る光機能性有機化合物と、スルホン酸及び/又はその誘導体と、沸点250℃以下のアミンとを含有させたもの(特許文献15参照)、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と−OH、−OCH3、−NH2、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを含む塗布液を用いた架橋物を含んで構成され、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種の前記塗布液における固形分濃度が0.1質量%以上5質量%以下であり、且つ電荷輸送性材料の少なくとも1種の前記塗布液における固形分濃度が90質量%以上のもの(特許文献16参照)などが挙げられる。
これら従来技術の中で3次元架橋された表面層を形成したものが、機械的耐久性に最も優れており、感光体の長寿命化に有利である。例えば、特許文献6に記載のものは紫外線又は電子線によりラジカル重合させた3次元架橋膜を形成することができ優れた耐摩耗性を示す。しかしながら、紫外線照射や電子線照射が必要なことから大掛かりな装置が必要になり生産性の点で問題が生じたり、それらの照射により電荷輸送性化合物が劣化し、感光体の電位特性を悪くするといった問題がある。一方、熱硬化により3次元架橋膜を形成できる特許文献12〜16は、生産性の点で有利であり、耐摩耗性にも優れた感光体の提供が可能になる。しかしながら、特許文献12ではウレタン結合による硬化物となり、電荷輸送性が悪く、電気的特性の点で使用が困難である。特許文献13〜16では、水酸基等の極性基を有する電荷輸送性化合物とメラミン等の反応性活性種との間で3次元架橋させた表面層を有し、電気特性でも比較的優れている。特に特許文献16のものは、電荷輸送性化合物を90%以上という高濃度で用いることができるために電荷輸送性に優れており、良好な感度特性を示す。しかしながら、電荷輸送性化合物の有するOH基等の極性基が3次元架橋膜中にどうしても残留するために帯電低下しやすかったり、高温高湿環境下での画像濃度が低下しやすかったり、帯電器で生じるNOxガス等の暴露により画像濃度が低下しやすくなったりという欠点を有している。
一方、電荷輸送性化合物のOH基等をブロックした化合物を用いてメラミンのような反応活性種と硬化させて使用する提案もある(特許文献17)。この場合は、極性基の残留を防ぐことができるが、ブロックされたOH基と反応活性種との反応がしにくくなるために機械的特性に優れた3次元架橋膜の形成が困難であった。
以上のように機械的強度に優れ、電気的特性(帯電性、電荷輸送性、残留電位特性)にも優れ、環境依存性も少なく、耐ガス性にも優れて、真に高寿命で安定した画像出力が可能で生産性にも優れる高耐久感光体の提供ができていなかった。
高画質な画像を長期間にわたって安定して出力できる電子写真感光体としては、優れた機械的特性(耐摩耗性、耐傷性等)、優れた電気的特性(帯電安定性、感度安定性、残留電位特性等)、優れた環境安定性(特に高温高湿下)、優れた耐ガス性(耐NOxガス等)の全てを経時で満足する必要がある。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、繰返し使用時の耐摩耗性が極めて高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れる高耐久な電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
発明者等は、特定の電荷輸送性化合物を用いて重合反応させ、且つ、電荷輸送性化合物の反応基を残した状態で形成された3次元架橋膜を感光層の最表面層に用いることで、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は以下の構成よりなる。
(1)導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、
該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物が、該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、且つ、該3次元架橋膜中の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の残量を表す指数(C/D)/(A/B)が下記(I)の条件を満足することを特徴とする電子写真感光体。
(C/D)/(A/B)=0.35〜0.60 (I)
但し、条件(I)においてA〜Dは以下の通りである。
A=反応前の電荷輸送性化合物の脂肪族C−H伸縮振動ピーク(2940±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
B=反応前の電荷輸送性化合物の芳香族C−H伸縮振動ピーク(3028±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
C=3次元架橋膜の脂肪族C−H伸縮振動ピーク(2940±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
D=3次元架橋膜の芳香族C−H伸縮振動ピーク(3028±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
(2)前記3次元架橋膜がテトラヒドロフランに不溶であることを特徴とする上記(1)に記載の電子写真感光体。
(3)導電性支持体上の感光層が少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層をこの順に有してなり、該架橋型電荷輸送層が、前記3次元架橋膜である事を特徴とする上記(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
(4)前記3次元架橋膜が電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物に硬化触媒を添加し加熱することで、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部を脱離させる反応により得られたものであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(5)前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(1)で表されることを特徴する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体。
Figure 2012150400
(式中、Ar1,Ar2,Ar3は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数が6から18の芳香族炭化水素の2価基を表す)
(6)前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(2)で表されることを特徴する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体。
Figure 2012150400
(式中、X1は炭素数が1から4のアルキレン基、炭素数が2から6のアルキリデン基、フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基、酸素原子を表す。Ar4,Ar5,Ar6,Ar7,Ar8,Ar9は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数が6から18の芳香族炭化水素の2価基を表す。)
(7)前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(3)で表されることを特徴する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体。
Figure 2012150400
(式中、Y1は、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、ジスチリルベンゼン、縮合多環芳香族炭化水素の2価基を表す。Ar10,Ar11,Ar12,Ar13は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数が6から18の芳香族炭化水素の2価基を表す。)
(8)前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(4)で表されることを特徴する上記(5)に記載の電子写真感光体。
Figure 2012150400
(式中、R1,R2,R3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基を表わし、l、n、mは1〜4の整数を表わす。)
(9)前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(5)で表されることを特徴する上記(6)に記載の電子写真感光体。
Figure 2012150400
(式中、X2は−CH2−、−CH2CH2−、−C(CH32−Ph−C(CH32−、−C(CH25−、−O−を表わす。R4,R5,R6,R7,R8,R9は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基を表わし、o、p、q、r、s、tは1〜4の整数を表わす。)
(10)前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(6)で表されることを特徴する上記(7)に記載の電子写真感光体。
Figure 2012150400
(式中、Y2はベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、ナフタレンの2価基を表す。R10,R11,R12,R13は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基を表わし、u、v、w、zは1〜4の整数を表わす。)
(11)電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、前記電子写真感光体が、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
(12)前記露光工程における感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式により行われることを特徴とする上記(11)に記載の画像形成方法。
(13)電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記電子写真感光体が、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
(14)前記露光手段による電子写真感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式であることを特徴とする上記(13)に記載の画像形成装置。
(15)電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、前記電子写真感光体が、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
本発明により、繰返し使用時の耐摩耗性が極めて高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れる高耐久な電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジが提供される。
本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す概略図である。 本発明の電位写真感光体の層構成の別の一例を示す概略図である。 本発明の電子写真感光体の層構成の更に別の一例を示す概略図である。 本発明の電子写真感光体の層構成の更に別の一例を示す概略図である。 本発明の電子写真感光体の層構成の更に別の一例を示す概略図である。 本発明の画像形成装置及び電子写真プロセスを説明する概略図である。 本発明のタンデム方式のフルカラー画像形成装置を説明する概略図である。 本発明のプロセスカートリッジの一例を説明する概略図である。 実施例で作製したチタニルフタロシアニン粉末のX線回折スペクトルの結果を表す図である。 実施例で使用した具体例No.12の化合物の反応前の赤外線吸収スペクトルを示す図である。 実施例で使用した具体例No.12の化合物による架橋型電荷輸送層(3次元架橋膜)の赤外線吸収スペクトルを示す図である。 合成例3で得られたメチロール中間体の赤外線吸収スペクトルを示す図である。 実施例で使用した具体例No.32の化合物の反応前の赤外線吸収スペクトルを示す図である。 実施例で使用した具体例No.32の化合物による架橋型電荷輸送層(3次元架橋膜)の赤外線吸収スペクトルを示す図である。 合成例1において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例2において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例3において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例4において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例5において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例6において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例7において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例8において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例9において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例10において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例11において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例12において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例13において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 合成例14において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物が、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、且つ、該3次元架橋膜中に特定の割合で[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が脱離反応せずに残っていることを特徴とするものであり、その残量を表す指標として[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基により大きな吸収を示す赤外吸収スペクトルの脂肪族C−H伸縮振動ピーク(2940±10cm-1)の反応前後の強度比を規定したものである。この時、膜厚や濃度により赤外吸収スペクトル強度は変化し、絶対値で規定することが困難なため、反応前後で変化のない芳香族C−H伸縮振動ピークとの強度比により反応前後の脂肪族C−H伸縮振動ピーク(2940±10cm-1)の残量を規定した。すなわち以下のようである。
(C/D)/(A/B)=0.35〜0.60 (I)
但し、条件(I)においてA〜Dは以下の通りである。
A=反応前の電荷輸送性化合物の脂肪族C−H伸縮振動ピーク(2940±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
B=反応前の電荷輸送性化合物の芳香族C−H伸縮振動ピーク(3028±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
C=3次元架橋膜の脂肪族C−H伸縮振動ピーク(2940±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
D=3次元架橋膜の芳香族C−H伸縮振動ピーク(3028±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
ここで、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物が適当な触媒を用いることで有機溶媒等に不溶で架橋密度の高い3次元架橋膜を形成できることを見出したのが本発明の基礎となっている。この反応は、反応前後の赤外吸収スペクトルや重量減少から[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応であることが分かった。
(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)基がOH基の保護基として使用されることは従来から知られており、例えば前記特許文献17にも広く記載されているが、この様な保護基を有する化合物とメラミンの様な反応活性種との反応による硬化物は検討されているが、保護基単独での架橋膜形成の例は無い。また、保護基という考え方からは保護基が外れて反応することを想起させ、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基がメチロール基に変化して反応すると考えると、得られた3次元架橋膜はメチロール体の架橋膜と同じになるが、検討の結果、メチロール基を経由することなく反応することがわかり、従って、未反応部には[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基がそのまま残る。この様に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が架橋膜構造中に存在することは膜物性にも影響しており、耐ガス性に影響するガス透過性においてメチロール体の架橋硬化物に比べて小さいというメリットがある。
この様に電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜からなり、該3次元架橋膜の赤外吸収スペクトルが[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基に由来する脂肪族C−H伸縮振動ピークを特定量有することを特徴とする電子写真感光体は、架橋密度が高いために良好な機械的特性を示し、電荷輸送性化合物のみの硬化物であるから良好な電荷輸送性を示し、それでいて電荷輸送に直接寄与しない[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基のような電気的不活性部も適当に内在していることで帯電安定性にも優れており、OH基の様な極性基を含まないことから環境安定性や耐ガス性にも優れており、狙いの感光体の提供が可能になる。
前記のように[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基同士の重合反応によりテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基は脱離して架橋膜中から減少する。一方、架橋反応の進行に伴い膜のガラス転移温度は上昇し、反応のための分子衝突が不可能になったところで一部の反応基を残したまま反応は停止する。従って、膜中の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の残量は、反応の進行度や膜の状態を示している。テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基は脂肪族C−H結合を多数有しており、それが分子中に3個以上存在するためにIRスペクトルを観察すると[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基に由来する脂肪族C−H伸縮振動ピークが顕著に表れる。このピーク強度を反応前後で比較する場合に反応前後で変化しない芳香族C−H伸縮振動ピークに対する強度比で観察することができる。これを種々の架橋膜で観察したところ、上記の様な特定の範囲にある場合に機械的特性と電気特性と耐ガス性により優れることがわかり、本発明のより良い感光体が提供できた。
上記(C/D)/(A/B)が0.35より小さい場合は、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の残量が少なく、より架橋密度が上がった状態であるが、この場合は、膜の硬度が上がりすぎ、衝撃に対し脆い膜となってしまうと共に架橋反応時の温度の影響で感光体の構成材料への影響が強くなり感度が低下したり残留電位が大きくなるなどの副作用がでてしまう。一方、0.60より大きい場合は、架橋密度が小さくなりすぎ、機械的特性が弱く、摩耗しやすくなったり、傷つきやすくなる。
上記3次元架橋膜は溶媒に不溶である時にとりわけ優れた機械的特性を示す。電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物はテトラヒドロフランに良く溶解する。この化合物が反応して3次元の網目状に結合を形成するともはやテトラヒドロフラン及びその他の溶媒に溶解しなくなる。
従って、上記3次元架橋膜がテトラヒドロフランに不溶である事は、感光体の表面が巨大分子化されて一体となった構造になっていることを表し、高い機械的特性を発揮する。
ここで、不溶とはテトラヒドロフランに浸漬しても膜が消失しない状態を言う。
更に好ましくは、テトラヒドロフランで濡らした綿棒等で擦っても、その痕跡が残らない状態が好ましい。
この様に溶媒不溶とすることで感光体への異物付着を防止できたり、異物付着を起源とした感光体表面の傷の発生等を防止することができる。
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体上の感光層が少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層をこの順に有してなり、該架橋型電荷輸送層が、最表面層である事が好ましい。
本発明の電子写真感光体における上記3次元架橋膜の電荷輸送性は、従来の架橋膜に比べて最高レベルの特性を有しているが、通常の分子分散型電荷輸送層に比べるとまだ低い。従って、電荷輸送層は従来型の分子分散型電荷輸送層を用い、その表面の保護層として3次元架橋膜を使用する場合に、最高のパフォーマンスを発揮する。
すなわち比較的厚膜の通常の分子分散型電荷輸送層上に薄膜の架橋型電荷輸送層を形成することで、感度特性を低下させることなく上記の特徴を有する電子写真感光体の提供が可能になる。その為に架橋型電荷輸送層の膜厚は1〜10μmが好ましい。
前記3次元架橋膜は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物に硬化触媒を添加し加熱することで重合反応させて得られたものであることが好ましい。
硬化触媒を用いて加熱することで重合反応を実用的な速度で進行させることが可能にあり、表面平滑性に優れた最表面層の形成が可能になる。表面平滑性が極端に悪くなるとトナーのクリーニング性が悪くなり、異常画像の原因となって高画質な印刷ができなくなる。したがって適当な硬化触媒を用いて適当な温度で加熱することにより表面平滑性に優れる上記の本発明の電子写真感光体の形成が可能になり、より高画質な画像を長期に渡って印刷できるようになる。
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物は、前記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物であれば、重合反応により3次元架橋膜を形成させることが可能であるが、一般式(1)で表される化合物は、分子量当たりの[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の割合が多く、したがって架橋密度の高い3次元架橋膜の形成が可能になることから硬度の高い耐傷性の高い感光体の提供が可能になる。
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物は、前記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(2)ので表される化合物は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有しており、且つ、非共役連結基のXを有することで適度な分子運動性をも有しており、重合反応による一部の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を残した3次元架橋膜を形成しやすく、出来上がった3次元架橋膜の硬度特性や弾性特性のバランスが良く、強靱で耐傷性、耐摩耗性の両方に優れた表面保護層の形成が可能になる。さらに、Xの構造性から分子の酸化電位が比較的大きく、酸化しにくい特性を有しており、オゾンガスやNOxガスのような酸化性ガスの暴露時にも比較的安定であり、耐ガス性にも強い感光体の提供が可能になる。
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物は、前記一般式(3)で表される化合物であるが好ましい。
一般式(3)で表される化合物は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有しており、重合反応による一部の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を残した3次元架橋膜を形成しやすい。且つ、Yで表される特定の芳香族炭化水素構造を介したジアミン構造となっており、分子内電荷移動が可能であり、ホール移動度の速い架橋保護層の形成が可能になる。従って、高速印刷や小径ドラムによる印刷のように感光体への光書き込みから現像までの時間が短くなる様な場合でも、高画質な画像を安定して印刷できるようになる。
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物は、前記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(4)で表される化合物は、一般式(1)で表される化合物の中で特に優れるもので、お互いの重合反応性が特によい。[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基同士の重合反応については不明な部分も残っているが、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の存在する芳香環が3級アミノ基を有するベンゼン環の場合に最も進行が速く、より架橋密度が高い架橋保護層の形成が可能になる。
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物は、前記一般式(5)で表される化合物であるが好ましい。
一般式(5)で表される化合物は、一般式(4)で表される化合物を使用した場合と同様の理由で重合反応性に優れ、且つ、一般式(2)と同様の特徴を有しており、架橋密度の高い架橋保護層の形成が可能になる。
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物は、前記一般式(6)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(6)で表される化合物は、一般式(4)で表される化合物を使用した場合と同様の理由で重合反応性に優れ、且つ、一般式(3)と同様の特徴を有しており、架橋密度の高い架橋保護層の形成が可能になる。
本発明に係る画像形成方法は、電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、前記電子写真感光体が上記の本発明の電子写真感光体であることを特徴とする。これにより繰返し使用時の画像安定性が高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れる画像形成方法が提供できる。
また、本発明の画像形成方法において、前記露光工程における感光体上への静電潜像書き込みは、デジタル方式であることが好ましい。これによりPCでの文書及び画像作製出力に効率よく対応でき、かつ、上記の画像形成方法と同様の特徴を持った画像形成方法が提供できる。
本発明に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記電子写真感光体が、上記の本発明の電子写真感光体であることを特徴とする。これにより繰返し使用時の画像安定性が高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れる画像形成装置が提供できる。
また、本発明の画像形成装置において、前記露光手段における感光体上への静電潜像書き込みは、デジタル方式であることが好ましい。これによりPCでの文書及び画像作製出力に効率よく対応でき、かつ上記の画像形成装置と同様の特徴を持った画像形成装置が提供できる。
本発明のプロセスカートリッジは、電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び徐電手段から選択される少なくとも1つの手段を有し、画像形成装置に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、前記電子写真感光体が、上記の本発明の電子写真感光体であることを特徴とする。これにより繰返し使用時の画像安定性が高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れるプロセスカートリッジの提供が可能になる。
以下、本発明の電子写真感光体、及びそれを用いた画像形成方法、画像形成装置、ならびに画像形成装置用プロセスカートリッジの詳細を説明する。
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有し、該感光層の最表面が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、且つ、該3次元架橋膜中の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の残量を表す指数(C/D)/(A/B)が下記(I)の条件を満足することを特徴とするものである。
ここで言う3次元架橋膜は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物同士が[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応を起こしてそれぞれ結合し、3次元の網目状に巨大分子化すると共に、一部の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基は未反応のまま残留させた構造体を表す。
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応については解明できていないが、単一の反応ではなく、以下に示すような複数の反応が競争的に生じて前記化合物同士が連結する反応である。
以下に反応様式を示す。
反応様式1
Figure 2012150400
ここで、Arは本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を示す。
この反応は、片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基のテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基部分が切れて脱離し、もう片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、ジメチレンエーテル結合を形成する反応である。
反応様式2
Figure 2012150400
ここで、Arは本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を示す。
この反応は、両方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、エチレン結合を形成する反応である。
反応様式3
Figure 2012150400
ここで、Arは本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を示す。
この反応は、片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、もう片方の芳香環に結合してメチレン結合を形成する反応である。
少なくともこれらの反応が組み合わされて複雑な結合様式を取りながら、3次元の網目状に重合し巨大分子化する。
一方、膜中に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が一部残留していることが重要である。これは、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が加水分解してメチロール基に変化していないことを示す。この[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が残留している構造を本発明では架橋膜の赤外吸収スペクトルで示す。すなわち、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基に由来する脂肪族のC−H伸縮振動ピークが残留していることで示している。
この[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の残留している構造には以下の意味がある。
メチロール基の残留が無い。本発明の重合反応がメチロール基を経由して進行する場合は、メチロール基の残留が発生する。この場合は、極性の高いOH基のために高湿環境下での帯電低下やNOxガス透過性上昇による帯電低下等の問題を引き起こし、本発明の特徴である高い環境安定性や耐ガス性を発揮することができない。
重合反応は、歪みの大きな膜を形成しやすいが、比較的大きな[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が残留することで、歪みを和らげる効果があり、また、歪みによって生じる分子空間を埋める効果が期待でき、ガス透過性の小さい、脆さを抑えた強靱な膜の形成が可能になる。
分子中の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の反応割合や残留割合は、電荷輸送性化合物の構造や狙いの膜物性の調整のために任意に変化させることが可能であるが、あまりに残留が少なくなると上記の効果が発揮できなくなり歪みの大きな脆い膜となってしまい長寿命感光体には適さなくなる。また、反応割合を上げるためには高温とする必要があり、その熱の影響による感光劣化の問題もあり、感度低下や残留電位上昇を伴うなどの弊害が生じる。
あまりに残留が多くなると架橋密度の低下を示しており、場合によっては有機溶剤に溶けてしまう様な架橋不良状態になり、3次元架橋膜に由来する強靱な機械的特性を示さなくなってしまう。従って、適度な残留量が存在する。
本発明では、より好適な残留量を表すために赤外吸収スペクトル強度で規定している。
すなわち
A=反応前の電荷輸送性化合物の脂肪族C−H伸縮振動ピーク(2940±10cm-1)の強度
B=反応前の電荷輸送性化合物の芳香族C−H伸縮振動ピーク(3028±10cm-1)の強度
C=3次元架橋膜の脂肪族C−H伸縮振動ピーク(2940±10cm-1)の強度
D=3次元架橋膜の芳香族C−H伸縮振動ピーク(3028±10cm-1)の強度
と定義したときに
(C/D)/(A/B)=0.35〜0.60
を満足するようにすることを特徴とする。
Aは電荷輸送性化合物の赤外吸収スペクトルの脂肪族C−H伸縮振動ピーク(2940±10cm-1)の強度を表すが、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有するゆえにテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基由来のC−H伸縮振動ピークが明瞭に現れる。ピーク強度は、ベースラインからピークトップまでの高さで計算する。
Bは電荷輸送性化合物の赤外吸収スペクトルの芳香族C−H伸縮振動ピーク(3028±10cm-1)の強度を表す。電荷輸送性化合物は芳香族炭化水素基を必ず含むためにこのピークも必ず存在する。ピーク強度は、Aと同様にベースラインからピークトップまでの高さで計算する。
C,Dは共に架橋膜の脂肪族C−H伸縮振動ピークと芳香族C−H伸縮振動ピークの強度でありA,Bと同様に計算する。ここで、架橋膜の赤外吸収スペクトルの測定としては、形成された電子写真感光体表面を剥がしとって測定する方法と電子写真感光体の表面層を形成する方法と同様にして適当な支持体上に形成した膜を剥がしとるかそのままで測定する方法と電子写真感光体表面を反射法(例えば、FT/IR−6100日本分光製によるATR測定)で測定する方法とあるが、いずれでも良い。本発明の3次元架橋膜は有機溶剤に不溶であり、電荷輸送層を溶解できる有機溶剤を使用することで容易に剥がしとることが可能であり、それにより剥がしとった膜をKBr板等に挟んで透過法で測定することが容易である。
以上のようにして架橋膜の芳香族C−H伸縮振動ピーク強度を基準とした脂肪族C−H伸縮振動のピーク強度比を未反応の電荷輸送性化合物のピーク強度比で割った値が0.35〜0.60の間に入ることを特徴とする。この範囲から外れた場合の問題は前記に記載したとおりである。
次に電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物について説明する。
電荷輸送性化合物としては従来から多くの材料が知られている。これら材料のほとんどには芳香環が存在している。例えばトリアリールアミン構造やアミノビフェニル構造やベンジジン構造やアミノスチルベン構造やナフタレンテトラカルボン酸ジイミド構造やベンズヒドラジン構造等においてはいずれも芳香環が存在している。これらのような芳香環に、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が3個以上置換した化合物であればいずれも使用することができる。
特に、前記一般式(1)〜(6)で表される化合物は前記の特徴を持ち、好ましく使用することができ、中でも前記一般式(4)〜(6)で表される化合物は架橋反応が速くより好ましい。
前記一般式(1)において、式中のAr1、Ar2、Ar3は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数6〜18の芳香族炭化水素の2価基を表す。ここで炭素数6〜18の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン等を挙げることができる。また、これらに置換しても良いアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖状又は分岐状脂肪族アルキル基等を挙げることができる。
前記一般式(2)において、式中のAr4、Ar5、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9は、一般式(1)におけるAr1、Ar2、Ar3と同じものを使用できる。
1は、炭素数が1から4のアルキレン基、炭素数が2から6のアルキリデン基、フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基、酸素原子を表す。ここで、炭素数が1から4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖状及び分岐状アルキレン基を挙げることができ、炭素数が2から6のアルキリデン基としては、1,1−エチリデン基、1,1−プロピリデン基、2,2−プロピリデン基、1,1−ブチリデン基、2,2−ブチリデン基、3,3−ペンタニリデン、3,3−ヘキサニリデン等を挙げることができる。フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基としては、以下の構造の物が挙げられる。
Figure 2012150400
前記一般式(3)において、式中のAr10、Ar11、Ar12、Ar13は、前記一般式(1)におけるAr1、Ar2、Ar3と同じものを使用できる。
1は、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、ジスチリルベンゼン、縮合多環芳香族炭化水素の2価基を表す。ここで、縮合多環芳香族炭化水素としては、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン等を挙げることができる。
以下に具体例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例示化合物に限定されるものではない。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例は次の通りである。
Figure 2012150400
Figure 2012150400
前記の一般式(1)で表される化合物の具体例中、No.4〜8は、前記一般式(4)の具体例でもある。
前記一般式(2)で表される化合物の具体例は次の通りである。
Figure 2012150400
Figure 2012150400
Figure 2012150400
Figure 2012150400
Figure 2012150400
前記一般式(2)で表される化合物の具体例中、No.12〜35は、前記一般式(5)の具体例でもある。
前記一般式(3)で表される化合物の具体例は次の通りである。
Figure 2012150400
Figure 2012150400
Figure 2012150400
Figure 2012150400
Figure 2012150400
前記一般式(3)で表される化合物の具体例中、No.43〜45、52〜54、57〜64は、前記一般式(6)の具体例でもある。
上記、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物は新規化合物であり、例えば下記の方法によって製造することができる。
第一の方法は、電荷輸送性化合物の芳香環を3箇所以上ホルミル化し、次いでホルミル基を還元してメチロール化し、次いで3,4−ジヒドロ−2H−ピランをメチロール基と反応させて[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を電荷輸送性化合物に付ける方法である。
例えば、以下の手順でアルデヒド化合物を合成し、得られたアルデヒド化合物と水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤により反応させてメチロール化合物を合成し、得られたメチロール化合物と3,4−ジヒドロ−2H−ピランとを反応させて[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有化合物を容易に合成することができる。
<電荷輸送性化合物のアルデヒド体の合成>
下記反応式に示すように電荷輸送性化合物を原料とし、これを従来知られている方法(例えばビルスマイヤー反応)を用いてホルミル化し、アルデヒド化合物を合成することができる。詳細は特許第3943522号記載のホルミル化等に記載されており、それらの方法が利用できる。
Figure 2012150400
すなわち、上記の具体的なホルミル化の方法としては、塩化亜鉛/オキシ塩化リン/ジメチルホルムアルデヒドを用いた方法が有効であるが、本発明の中間体であるアルデヒド化合物を得るための合成方法は、これらに限定されるものではない。
<電荷輸送性化合物のメチロール体の合成>
下記反応式に示すようにアルデヒド化合物を製造中間体とし、これを従来知られている還元方法を用いてメチロール化合物を合成することができる。
Figure 2012150400
すなわち、上記の具体的な還元方法としては、水素化ホウ素ナトリムを用いた方法が有効であるが、本発明のメチロール化合物を得るための合成方法は、これらに限定されるものではない。具体的には後述の合成例にて示す。
<[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の合成>
下記反応式に示すようにメチロール化合物を製造中間体とし、これに3,4−ジヒドロ−2H−ピランを酸触媒下で付加反応させることで[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル化合物を合成することができる。
Figure 2012150400
具体的には後述の合成例にて示す。
第二の方法は、芳香環にハロゲンとメチロール基を有する化合物を原料とし、そのメチロール基を3,4−ジヒドロ−2H−ピランと酸触媒下で反応させてハロゲンと[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する芳香族化合物を合成し、これを用いてアミン化合物とカップリング反応させて電荷輸送性化合物を合成する方法である。
アミンの級数や個数によって、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を一度に多数導入することが可能である。ハロゲンがヨード体の場合は、ウルマン反応によりカップリングすることができ、クロロ体、ブロモ体の場合はパラジウム触媒を用いた鈴木−宮浦反応等によりカップリングすることができる。例えば、以下の手順のようである。
<[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する中間体化合物の合成>
Figure 2012150400
式中、Xはハロゲンを示す。
<[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の合成>
Figure 2012150400
具体的には後述の合成例にて示す。
[合成例]
以下、合成例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[合成例1]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する中間体化合物の4−[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチルブロモベンゼンの合成
Figure 2012150400
4−ブロモベンジルアルコール:50.43g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:45.35g、テトラヒドロフラン:150mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:0.512gを投下。室温下にて、2時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、目的物を得た(収量72.50g、無色オイル状物)。
図15に、合成例1で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例2]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する中間体化合物の3−[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチルブロモベンゼンの合成
Figure 2012150400
3−ブロモベンジルアルコール:25.21g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:22.50g、テトラヒドロフラン:50mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:0.259gを投下。室温下にて、1時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、目的物を得た(収量36.84g、無色オイル状物)。
図16に、合成例2で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例3]
メチロール中間体の4,4’−ビス[ジ(4−ヒドロキシメチルフェニル)アミノ]ジフェニルメタンの合成
Figure 2012150400
中間体アルデヒド化合物:12.30g、エタノール:150mlを四つ口フラスコに入れる。室温下にて撹拌し、水素化ホウ素ナトリウム:3.63gを投下。そのまま4時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行った。濾過、洗浄、濃縮により、アモルファス状物質が得られた。n−ヘキサンにて分散し、濾過、洗浄、乾燥にて取り出し、目的物を得た(収量12.0g、薄黄白色アモルファス)。
図17に、合成例3で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例4]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の具体例No.4の合成
Figure 2012150400
中間体メチロール化合物:3.4g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:4.65g、テトラヒドロフラン:100mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:58mgを投下。室温下にて、5時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、黄色オイル状物質が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量2.7g、無色オイル状物)。
図18に、合成例4で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例5]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の具体例No.12の合成
Figure 2012150400
4,4’−ジアミノジフェニルメタン:2.99g、合成例1化合物:17.896g、酢酸パラジウム:0.336g、ターシャルブトキシナトリウム:13.83g、o−キシレン:100mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:1.214gを滴下。80℃にて1時間、還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色アモルファス状物)。
図19に、合成例5で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
本化合物は、合成例3で得られたメチロール中間体を用い、合成例4と同様に3,4−ジヒドロ−2H−ピランと反応させることによっても合成できた。
[合成例6]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の具体例No.19の合成
Figure 2012150400
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル:3.0g、合成例1化合物:17.896g、酢酸パラジウム:0.336g、ターシャルブトキシナトリウム:13.83g、o−キシレン:100mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:1.214gを滴下。80℃にて1時間、還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色オイル状物)。
図20に、合成例6で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例7]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の具体例No.24の合成
Figure 2012150400
4,4’−エチレンジアニリン:3.18g、合成例1化合物:17.896g、酢酸パラジウム:0.336g、ターシャルブトキシナトリウム:13.83g、o−キシレン:100mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:1.214gを滴下。80℃にて1時間、還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色オイル状物)。
図21に、合成例7で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例8]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の具体例No.29の合成
Figure 2012150400
1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキセン:9.323g、合成例1化合物:45.55g、酢酸パラジウム:0.785g、ターシャルブトキシナトリウム:32.289g、o−キシレン:300mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:2.43gを滴下。80℃にて1時間、還流にて2時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量11.42g、黄色アモルファス状物)。
図22に、合成例8で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例9]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の具体例No.32の合成
Figure 2012150400
α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン:10.335g、合成例1化合物:39.05g、酢酸パラジウム:0.673g、ターシャルブトキシナトリウム:27.677g、o−キシレン:200mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。トリターシャルブチルホスフィン:2.43gを滴下。80℃にて1時間、還流にて2時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量23.5g、薄黄色アモルファス状物)。
図23に、合成例9で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例10]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の具体例No.43の合成
Figure 2012150400
4,4’−ジアミノ−p−ターフェニル:1.30g、合成例1化合物:6.508g、ターシャルブトキシナトリウム:3.844g、ビス(トリ−t−ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:50mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量1.95g、薄黄色アモルファス状物)。
図24に、合成例10で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例11]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の具体例No.45の合成
Figure 2012150400
1,3−フェニレンジアミン:0.541g、合成例1化合物:6.508g、ターシャルブトキシナトリウム:3.844g、ビス(トリ-t-ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:20mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量3.02g、薄黄色アモルファス状物)。
図25に、合成例11で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例12]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の具体例No.52の合成
Figure 2012150400
4,4’−ジアミノスチルベン・ジヒドロクロリド:1.42g、合成例1化合物:6.51g、ターシャルブトキシナトリウム:9.61g、ビス(トリ-t-ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:50mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量1.6g、薄黄色アモルファス状物)。
図26に、合成例12で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例13]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の具体例No.57の合成
Figure 2012150400
中間体メチロール化合物:1.274g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン:1.346g、テトラヒドロフラン:20mlを四つ口フラスコに入れる。5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸:14mgを投下。室温下にて、4時間撹拌継続。酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土&シリカゲルにて吸着処理を行なった。濾過、洗浄、濃縮により、黄色オイル状物質が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量1.48g、黄色オイル状物)。
図27に、合成例13で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
[合成例14]
[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基含有電荷輸送性化合物の具体例No.64の合成
Figure 2012150400
1,5−ジアミノナフタレン:0.791g、合成例1化合物:6.508g、ターシャルブトキシナトリウム:3.844g、ビス(トリ-t-ブトキシホスフィン)パラジウム:52mg、o−キシレン:20mlを四つ口フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気下、室温にて撹拌。還流にて1時間撹拌継続。トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウム、活性白土、シリカゲルを入れ、撹拌。濾過、洗浄、濃縮を行ない、黄色オイル状物が得られた。シリカゲルカラム精製(トルエン/酢酸エチル=9/1)を行ない、単離し、目的物を得た(収量2.56g、薄黄色アモルファス状物)。
図28に、合成例14で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
以上のように、電荷輸送性化合物を直接ホルミル化して導く方法と[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル化したハロゲン化芳香族中間体化合物とアミン化合物とのカップリング反応を選択または組み合わせることで種々の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する電荷輸送性化合物を合成することができる。
例えば、合成例5において合成例1で得られた中間体の代わりに合成例2で得られた中間体を用いて同様に反応させれば、具体例No.37の化合物が得られる。
次に、3次元架橋膜の形成方法について詳細に説明する。
本発明の感光層最表面層に用いられる3次元架橋膜は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物と硬化触媒を含有する塗工液を必要に応じて溶媒等で希釈調整し、該塗工液を感光体表面に塗工した後、加熱乾燥を行い、重合させることで形成することができる。また、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物を2種以上混合して同様に形成させることもできる。
加熱温度としては80℃〜180℃の範囲が好ましく、さらに100℃〜160℃の範囲がより好ましい。触媒の種類や添加量によっても反応速度が変わるために処方条件によって任意に選択すれば良いが、通常は135℃〜150℃で20min〜60minの加熱乾燥で本発明の条件に当てはまる3次元架橋膜が形成できる。加熱温度が高いほど反応は速くなるが、架橋密度が上がりすぎると電荷輸送性の低下を引き起こして感光体の明部電位が上昇したり、感度低下したりという問題が生じてくる。また、感光体の他の層構成材料への加熱の影響が大きくなり、そこでも感光体特性を劣化させやすくなる。加熱温度が低すぎると反応速度が遅くなると共に長時間かけても十分な架橋密度まで到達できなくなる問題が生じる。
前記硬化触媒としては、酸性化合物が好ましく、更に好ましくは有機スルホン酸や有機スルホン酸誘導体である。例えば、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、有機スルホン酸塩等も挙げられ、更に、一定以上の温度をかけることで酸性度が発現する所謂熱潜在性化合物も挙げられる。例えば、キングインダストリー社製のNACURE2500、NACURE5225、NACURE5543、NACURE5925等のアミンによりブロックさせた熱潜在性プロトン酸触媒や、三進化学社製のSI−60、旭電化社製のアデカオプトマーSP−300等が挙げられる。
これらの触媒は、塗工液の固形分濃度として0.02質量%〜5質量%程度添加される。パラトルエンスルホン酸等の酸単独の場合は0.02質量%〜0.4質量%程度で十分であり、多すぎる場合は塗工液の酸性度が上がり、塗工設備等の腐蝕を引き起こしたりするので好ましくない。逆に上記熱潜在性化合物の場合は、塗工液段階での腐蝕の問題は発生せず、添加量を上げることが可能であるが、ブロック剤としてのアミン化合物が残留すると残留電位等の感光体特性に悪影響するためあまり多量に添加するのは好ましくない。酸単独に比べると酸の含有量が少ないため触媒添加量としては0.2質量%〜2質量%が適量である。
前記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール 1−モノメチルエーテル 2−アセテートなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする厚みにより変わり、任意である。塗工は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
ここで、塗工液中の含水率に注意が必要である。本発明の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物同士の重合反応は、水の存在に極めて敏感で、含水率が高いときには反応が抑制されるか、進行しなくなってしまう。従って、使用する溶媒の含水率が重要である。特に親水性の溶媒を使用するときは経時での吸水にも注意する必要がある。好ましい塗工液中の含水率は0.1%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。0.2%以上ではもはや有機溶剤に不溶な架橋密度の高い3次元架橋膜が形成できなくなる。
この様に本発明の重合反応は水の存在に鋭敏であるが、もしも[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が酸と水の存在によってメチロール基に変化し、そのメチロール基が脱水を伴う縮合反応を起こすならば、水の存在はむしろ反応を加速させると考えられる。このように本発明の重合反応が水の存在下で反応抑制される事実は、メチロール体を経由した反応ではないことを示すものである。
一方でこの水の影響を利用して架橋密度を調整することが可能である。
以上のように、触媒の種類と添加量、塗工液中の含水率を加味しながら加熱乾燥温度と時間を任意に選択することで種々の架橋密度を持った本発明の3次元架橋膜の形成が可能になる。
更に、前記塗工液には、必要に応じてレベリング剤や酸化防止剤などの添加剤が含有できる。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、オリゴマー等が使用され、その使用量は全固形量に対して1質量%以下が好ましい。また、酸化防止剤も有効に使用することができる。例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、ヒンダードアミン類等の従来公知の材料が使用でき、繰り返し使用に対する静電特性の安定化に有効である。添加量としては、全固形量に対して1質量%以下が好ましい。
更に、前記塗工液には、更なる耐摩耗性を向上させる目的で、フィラーを添加することができる。上記フィラーには、有機性フィラー材料と無機性フィラー材料がある。有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。これらのフィラーの中で、フィラーの硬度の点から無機材料を用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。また、これらのフィラーの中でも高い絶縁性を有し、熱安定性が高い上に、耐摩耗性が高い六方細密構造であるα型アルミナは、耐摩耗性の向上の点から特に有用である。
さらに、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理することが可能であり、そうすることがフィラーの分散性が向上するので好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤すべてを使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al23、TiO2、ZrO2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点からより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。
表面処理剤の量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、3〜30wt%が好ましく、5〜20wt%がより好ましい。表面処理剤の量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。また、フィラーの平均一次粒径は、0.01〜0.5μmであることが光透過率や耐摩耗性の点から好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm未満の場合は、耐摩耗性の低下、分散性の低下等を引き起こし、0.5μm超の場合には、フィラーの沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生したりする可能性がある。また、フィラーの含有量としては、5〜50wt%が好ましく、より好ましくは10〜40wt%である。5wt%未満であると耐摩耗性はあるものの十分ではなく、50wt%を越えると、透明性が損なわれる。
次に、本発明の電子写真感光体の層構成について、図1〜図5に基づいて説明する。尚、図1〜図5は、電子写真感光体の断面図である。
図1は、最も基本的な積層感光体の構成例であり、導電性支持体(1)上に電荷発生層(2)、電荷輸送層(3)を順次積層したものである。負帯電で使用する場合は電荷輸送層にホール輸送性電荷輸送物質が使用され、正帯電で使用される場合は電荷輸送層に電子輸送性電荷輸送物質が使用される。
これらの場合、最表面層は電荷輸送層(3)であり、従って、本発明の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、この電荷輸送層に適用される。
図2は、基本構成の積層感光体に下引き層(4)を形成した構成であり、最も実用化されている構成である。この場合も、最表面層は電荷輸送層(3)であり、従って、本発明の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、この電荷輸送層に適用される。
図3は、さらに保護層として架橋型電荷輸送層(5)を最表面に設けた構成であり、従って、本発明の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、この架橋型電荷輸送層に適用される。
ここで下引き層は必須ではないが、電荷リークの防止等に重要な機能を果たしており、通常は使用される。
この感光体構成の場合、電荷発生層から感光体表面までの電荷移動を電荷輸送層(3)と架橋型電荷輸送層(5)の二層で分担しており、主機能を分離することができる。例えば、電荷輸送性に優れる電荷輸送層と機械的強度に優れる架橋型電荷輸送層を組み合わせることで電荷輸送性にも優れ機械的強度にも優れた感光体の提供が可能になる。
本発明の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜は、架橋膜の中では電荷輸送性に優れた膜であり、電荷輸送層(3)としての適用性も高いが、従来の分子分散型電荷輸送層に比べると電荷輸送性は劣る。従って、比較的薄膜で使用することが好ましく、この様な構成で使用するときが最も特性に優れた感光体を提供できる。
架橋型電荷輸送層に本発明の3次元架橋膜を適用する場合の好ましい膜厚は、前述のように1〜10μmであり、より好ましくは、3〜8μmである。薄すぎると十分な高寿命化が図れず、厚すぎると感度低下や明部電位が上昇し易くなり安定した画像出力がしにくくなる。
図4は、導電性支持体(1)上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層(6)が設けられている。感光層(6)に本発明の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜を使用することができる。この場合には、架橋膜中に電荷発生物質を含有させることが必要であり、前記塗工液中に電荷発生物質を混合分散した塗工液を作製して、塗工後、加熱乾燥により重合反応させて3次元架橋膜を作製する。
図5は、単層感光層(6)上に保護層(7)を設けた構成であり、この保護層(7)に本発明の、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜が使用される。
これら各層の構成要素は、本発明の3次元架橋膜を適用しない箇所において、全て従来公知のものを使用することができる。
以下、その他の構成要素について詳細に説明する。
<導電性支持体>
前記導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
その他、前記導電性支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工した導電性層を設けたものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
前記導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。
前記導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の支持体として良好に用いることができる。
<下引き層>
本発明の電子写真感光体においては、支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。該下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。該樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、前記下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等を図るため、例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を添加することができる。
前記下引き層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。
前記下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。 前記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜5μmが好ましい。
また、下引き層は上記種類の組合せで2層以上の積層としても良い。
<電荷発生層>
前記電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含んでおり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。 前記電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料としては、例えば、結晶セレン、アモルファス−セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、アモルファス−シリコン等が挙げられる。アモルファス−シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系 顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、電荷発生層のバインダー樹脂としては、上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、(1)アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂などの高分子材料、(2)ポリシラン骨格を有する高分子材料などを用いることができる。
前記(1)の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
また、前記(2)の具体例としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
また、前記電荷発生層には、低分子電荷輸送物質を含有させることができる。前記低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
前記電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正孔輸送物質としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前記真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられる。
前記キャスティング法としては、前記無機系もしくは有機系電荷発生物質、必要に応じてバインダー樹脂を、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
前記電荷発生層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
<電荷輸送層>
前記電荷輸送層は、帯電電荷を保持させ、かつ、露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的を達成するためには、電気抵抗が高いことが要求される。また、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さく、かつ、電荷移動性がよいことが要求される。
前記電荷輸送層は、少なくとも電荷輸送物質を含んでなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記電荷輸送物質としては、正孔輸送物質、電子輸送物質、高分子電荷輸送物質、などが挙げられる。
前記電子輸送物質(電子受容性物質)としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正孔輸送物質(電子供与性物質)としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プ パン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記高分子電荷輸送物質としては、以下のような構造を有するものが挙げられる。
(a)カルバゾール環を有する重合体としては、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報、特開平6−234841号公報に記載の化合物等が例示される。
(b)ヒドラゾン構造を有する重合体としては、例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報、特開平6−234840号公報に記載の化合物等が例示される。
(c)ポリシリレン重合体としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461号公報、特開平4−264130号公報、特開平4−264131号公報、特開平4−264132号公報、特開平4−264133号公報、特開平4−289867号公報に記載の化合物等が例示される。
(d)トリアリールアミン構造を有する重合体としては、例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報、特開平5−202135号公報に記載の化合物等が例示される。
(e)その他の重合体としては、例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報、特開平6−234837号公報に記載の化合物等が例示される。
また、前記高分子電荷輸送物質としては、上記以外にも、例えば、トリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリウレタン樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエステル樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエーテル樹脂、などが挙げられる。前記高分子電荷輸送物質としては、例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−304956号公報、などに記載の化合物が挙げられる。
また、電子供与性基を有する重合体としては、上記重合体だけでなく、公知の単量体との共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマー、更には、例えば、特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることもできる。
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらは、1種単独で使用してもよい
し、2種以上を併用してもよい。
なお、前記電荷輸送層は、架橋性のバインダー樹脂と架橋性の電荷輸送物質との共重合体を含むこともできる。
前記電荷輸送層は、これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。前記電荷輸送層には、更に必要に応じて、前記電荷輸送物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等などの添加剤を適量添加することもできる。
前記電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、電荷輸送層の形成は同様な塗工法が可能である。 また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、前記結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
前記レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜1質量部程度が適当である。
前記電荷輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
本発明の電子写真感光体においては、電荷輸送層と架橋型電荷輸送層の間に、架橋型電荷輸送層への電荷輸送層成分の混入を抑える又は両層間の接着性を改善する目的で中間層を設けることが可能である。
このため、前記中間層としては、架橋型電荷輸送層塗工液に対し不溶性又は難溶性であるものが適しており、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成方法としては、前記塗工法が採用される。なお、前記中間層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.05〜2μmが好適である。
<各層への酸化防止剤の添加について>
本発明の電子写真感光体においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、前記架橋型電荷輸送層、前記電荷輸送層、前記電荷発生層、前記下引き層、前記中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3 −メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類、などが挙げられる。
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン、などが挙げられる。
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン、などが挙げられる。
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、などが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン、などが挙げられる。
なお、これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、添加する層の総質量に対し0.01〜10質量%が好ましい。
<画像形成方法及び装置について>
次に、図面を用いて本発明の画像形成方法、並びに、画像形成装置を詳しく説明する。
図6は、本発明の電子写真プロセス、及び画像形成装置を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
感光体(10)は図6中の矢印の方向に回転し、感光体(10)の周りには、帯電部材(11)、画像露光部材(12)、現像部材(13)、転写部材(16)、クリーニング部材(17)、除電部材(18)等が配置される。クリーニング部材(17)や除電部材(18)が省略されることもある。
画像形成装置の動作は基本的に以下のようになる。帯電部材(11)により、感光体(10)表面に対してほぼ均一に帯電が施される。続いて、画像露光部材(12)により、入力信号に対応した画像光書き込みが行われ、静電潜像が形成される。次に、現像部材(13)により、この静電潜像に現像が行われ、感光体表面にトナー像が形成される。形成されたトナー像は、搬送ローラ(14)により転写部位に送られた転写紙(15)に、転写部材により、トナー像が転写される。このトナー像は、図示しない定着装置により転写紙上に定着される。転写紙に転写されなかった一部のトナーは、クリーニング部材(17)によりクリーニングされる。ついで、感光体上に残存する電荷は、除電部材(18)により除電が行われ、次のサイクルに移行する。
図6に示すように、感光体(10)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。帯電部材(11)、転写部材(16)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)のほか、ローラ状の帯電部材あるいはブラシ状の帯電部材等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
一方、画像露光部材(12)、除電部材(18)等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。これらの中でも半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が主に用いられる。
所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
光源等は、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体(10)に光が照射される。但し、除電工程における感光体(10)への露光は、感光体(10)に与える疲労の影響が大きく、特に帯電低下や残留電位の上昇を引き起こす場合がある。
したがって、露光による除電ではなく、帯電工程やクリーニング工程において逆バイアスを印加することによっても除電することが可能な場合もあり、感光体の高耐久化の面から有効な場合がある。
電子写真感光体(10)に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
感光体表面に付着する汚染物質の中でも帯電によって生成する放電物質やトナー中に含まれる外添剤等は、湿度の影響を拾いやすく異常画像の原因となっているが、このような異常画像の原因物質には、紙粉もその一つであり、それらが感光体に付着することによって、異常画像が発生しやすくなるだけでなく、耐摩耗性を低下させたり、偏摩耗を引き起こしたりする傾向が見られる。したがって、上記の理由により感光体と紙とが直接接触しない構成であることが高画質化の点からより好ましい。
現像部材(13)により、感光体(10)上に現像されたトナーは、転写紙(15)に転写されるが、すべてが転写されるわけではなく、感光体(10)上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング部材(17)により、感光体(10)から除去される。
このクリーニング部材は、クリーニングブレードあるいはクリーニングブラシ等公知のものが用いられる。また、両者が併用されることもある。
本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化を実現したことから小径感光体に適用できる。したがって、上記の感光体がより有効に用いられる画像形成装置あるいはその方式としては、複数色のトナーに対応した各々の現像部に対して、対応した複数の感光体を具備し、それによって並列処理を行なう、いわゆるタンデム方式の画像形成装置に極めて有効に使用される。上記タンデム方式の画像形成装置は、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(C)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色のトナー及びそれらを保持する現像部を配置し、更にそれらに対応した少なくとも4本の感光体を具備することによって、従来のフルカラー印刷が可能な画像形成装置に比べ極めて高速なフルカラー印刷を可能としている。
図7は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図7において、感光体(10C(シアン)),(10M(マゼンタ)),(10Y(イエロー)),(10K(ブラック))は、ドラム状の感光体(10)であり、これらの感光体(10C,10M,10Y,10K)は、図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材(11C,11M,11Y,11K)、現像部材(13C,13M,13Y,13K)、クリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)が配置されている。
この帯電部材(11C,11M,11Y,11K)と、現像部材(13C,13M,13Y,13K)との間の感光体(10)の外側より、図示しない露光部材からのレーザー光(12C,12M,12Y,12K)が照射され、感光体(10C,10M,10Y,10K)に静電潜像が形成されるようになっている。
そして、このような感光体(10C,10M,10Y,10K)を中心とした4つの画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(19)に沿って並置されている。
転写搬送ベルト(19)は、各画像形成ユニット(20C、20M、20Y、20K)の現像部材(13C,13M,13Y,13K)と、クリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)との間で感光体(10C,10M,10Y,10K)に当接しており、転写搬送ベルト(19)の感光体(10)側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写部材(16C,16M,16Y,16K)が配置されている。各画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
図7に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)において、感光体(10C,10M,10Y,10K)が、感光体10と連れ周り方向に回転する帯電部材(11C,11M,11Y,11K)により帯電され、次に、感光体(10)の外側に配置された露光部(図示せず)でレーザー光(12C,12M,12Y,12K)により、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
次に現像部材(13C,13M,13Y,13K)により潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材(13C,13M,13Y,13K)は、それぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のトナーで現像を行なう現像部材で、4つの感光体(10C,10M,10Y,10K)上で作られた各色のトナー像は転写ベルト(19)上で重ねられる。
転写紙(15)は給紙コロ(21)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ(22)で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写部材(23)に送られる。転写ベルト(19)上に保持されたトナー像は転写部材(23)に印加された転写バイアスと転写ベルト(19)との電位差から形成される電界により、転写紙(15)上に転写される。転写紙上に転写されたトナー像は、搬送されて、定着部材(24)により転写紙上にトナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各感光体(10C,10M,10Y,10K)上に残った残留トナーは、それぞれのユニットに設けられたクリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)で回収される。
図7に示したような、中間転写方式は、フルカラー印刷が可能な画像形成装置に特に有効であり、複数のトナー像を一度中間転写体上に形成した後に紙に一度に転写することによって、色ズレの防止の制御もしやすく高画質化に対しても有効である。
中間転写体には、ドラム状やベルト状など種々の材質あるいは形状のものがあるが、本発明においては従来公知である中間転写体のいずれも使用することが可能であり、感光体の高耐久化あるいは高画質化に対し有効かつ有用である。
なお、図7の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(20C,20M,20Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
上記のタンデム方式による画像形成装置は、複数のトナー像を一度に転写できるため高速フルカラー印刷が実現される。
しかし、感光体が少なくとも4本を必要とすることから、装置の大型化が避けられず、また使用されるトナー量によっては、各々の感光体の摩耗量に差が生じ、それによって色の再現性が低下したり、異常画像が発生したりするなど多くの課題を有していた。
それに対し、本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化が実現されたことにより小径感光体でも適用可能であり、かつ残留電位上昇や感度劣化等の影響が低減されたことから、4本の感光体の使用量が異なっていても、残留電位や感度の繰り返し使用経時における差が小さく、長期繰り返し使用しても色再現性に優れたフルカラー画像を得ることが可能となる。
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
前記プロセスカートリッジとは、図8に示すように、感光体(10)を内蔵し、他に帯電部材(11)、画像露光部材(12)、現像部材(13)、転写部材(16)、クリーニング部材(17)、及び除電部材を含んだ1つの装置(部品)である。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて質量部を表す。
(実施例1)
直径60mmの表面研磨したアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層塗工液、下記組成の電荷発生層塗工液、及び下記組成の電荷輸送層塗工液を順次、浸漬塗布し、乾燥することにより、厚み3.5μmの下引き層、厚み0.2μmの電荷発生層、及び厚み22μmの電荷輸送層を形成した。
得られた電荷輸送層上に、下記組成の架橋型電荷輸送層塗工液をスプレー塗工し、150℃で40分間加熱乾燥を行い、厚み6.0μmの架橋型電荷輸送層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
また、架橋型電荷輸送層塗工液を前記アルミニウムシリンダー上へ直接同様に塗工し、同時に加熱乾燥することで赤外吸収スペクトル測定用サンプル膜を作製し、剥がしてKBr板に挟み、赤外吸収スペクトルを測定した。
また、架橋型電荷輸送層に3次元架橋膜が形成されたかどうか調べるためにテトラヒドロフランで溶解性試験を行った。溶解性試験はテトラヒドロフランを浸した綿棒で感光体表面を擦り、変形の有無を目視で観察した。擦った後の痕跡が全く見られない場合を「不溶」、膜は残っているが痕跡の残る場合を「一部溶解」、膜が溶けてしまう場合を「溶解」として評価した。
また、感光体の表面平滑性を表面粗さ計(サーフコム)でRz値を求め、1μm以下を「良好」1μmを超える場合を「不良」と判定した。
〔下引き層塗工液の組成〕
・アルキッド樹脂
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6部
・メラミン樹脂
(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4部
・酸化チタン
(CREL、石原産業株式会社製) ・・・50部
・メチルエチルケトン ・・・50部
〔電荷発生層塗工液の組成〕
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) ・・・0.5部
・シクロヘキサノン ・・・200部
・メチルエチルケトン ・・・ 80部
・下記合成のチタニルフタロシアニン ・・・1.5部
(チタニルフタロシアニン結晶の合成)
合成は、特開2004−83859号公報に準じた。即ち、1、3−ジイミノイソインドリン292部とスルホラン1800部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204部を滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後、析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、次にメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過し、次いで、洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。
得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40部をテトラヒドロフラン200部に投入し、室温下でホモミキサー(ケニス、MARKIIfモデル)により強烈に撹拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(撹拌開始後20分)、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行った。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキを得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶8.5部を得た。前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で33倍の量を用いた。得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、CuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、更に9.4±0.2°、9.6±0.2°、24.0±0.2°に主要なピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末であった。その結果を図9に示す。
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
〔電荷輸送層塗工液の組成〕
・ビスフェノールZポリカーボネート
(パンライトTS−2050、帝人化成株式会社製) ・・・ 10部
・テトラヒドロフラン ・・・100部
・1質量%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液
(KF50−100CS、信越化学工業株式会社製) ・・・0.2部
・下記構造式で表される低分子電荷輸送物質 ・・・ 10部
Figure 2012150400
〔架橋型電荷輸送層塗工液の組成〕
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有する化合物
具体例No.12 ・・・ 10部
・酸触媒 Nacure2500(楠本化成社製) ・・・0.1部
・テトラヒドロフラン(脱水) ・・・ 90部
〔赤外吸収スペクトル測定結果〕
装置は堀場製作所社製フーリエ変換赤外分光光度計(HORIBA FT720)を使用した。
反応前の赤外吸収スペクトル測定は、種々の方法があるが、代表的な測定方法を以下に示す。
(方法I)
電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物単体として測定する方法であり、該化合物をKBr粉と混ぜ、メノー乳鉢等ですりつぶして混合した後、KBr錠剤形成装置にて一体成形した錠剤にして測定する方法である。
(方法II)
前記化合物を揮発性の高い適当な非水系溶媒(例えば、塩化メチレン等)に溶解させ、その液をKBr板又はNaCl板等の赤外吸収領域に透明な板上に塗布し乾燥させて、該透明板上に化合物の薄膜(数μm程度)を形成し、それを用いて測定する方法である。
(方法III)
反応前の塗工液(例えば、前記架橋型電荷輸送層塗工液)を直接KBr板又はNaCl板等の赤外吸収領域に透明な板上に塗布し室温で風乾させた後、そのまま又は該透明板で挟み込んで測定する方法である。
反応により形成された3次元架橋膜の赤外吸収スペクトル測定についてもいくつかの方法があるが、代表的な測定方法を以下に示す。
(方法A)
形成された電子写真感光体の表面を直接測定する方法。この場合、反射型赤外分光光度計での測定となる。
(方法B)
形成された電子写真感光体の表面層(3次元架橋膜)を剥がし取り、フィルムとしてそのまま透過法で測定するか、KBr板又はNaCl板等の赤外吸収領域に透明な板に該フィルムを挟み込んで測定する方法である。剥がし取る方法としてはいずれの方法でも良いが、有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン等)中に浸漬しておくことで、表面層を容易に剥がしとることができる。
(方法C)
電子写真感光体の表面層を形成するのと同じ条件で赤外吸収スペクトル測定用サンプルを作製し、測定する方法である。この場合、サンプルが剥がしやすく、電子写真感光体表面層と同じ作製条件が取りやすいことが必要であり、その点で感光体の導電性支持体として多用されるアルミシリンダー上へ直接架橋型電荷輸送層塗工液を塗工して感光体と同様の条件で重合反応させて3次元架橋膜を形成するのが好ましい。カッターナイフ等で適当な大きさに膜を剥がし取り、フィルムとしてそのまま透過法で測定するか、KBr板又はNaCl板等の赤外吸収領域に透明な板に該フィルムを挟み込んで測定する。
図10に具体例No.12の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物の反応前の方法IIで測定した赤外吸収スペクトルを示す。KBr板は、日本分光社製の35mm×35mmで厚さ5mmのものを用いた。
これからA/Bは2.95と求められた。
図11に実施例1で形成された架橋型電荷輸送層の方法Cで測定した赤外吸収スペクトルを示す。
これからC/Dは1.52と求められた。
これらより(C/D)/(A/B)=0.52であった。
図12に具体例No.12と同じ電荷輸送性化合物構造を有し、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有さない合成例3で得られたメチロール中間体の方法Iで測定した赤外吸収スペクトルを示す。
図12と図10及び図11とを比較すると2940cm-1の脂肪族C−H伸縮振動のピークは、大部分が[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基に由来するピークであり、3次元架橋膜となった後も[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が適当量残存していることが明瞭であった。
〔溶解性試験結果〕
得られた電子写真感光体の表面について溶解性試験を行ったところ「不溶」であった。
〔感光体表面平滑性評価結果〕
Rzが1μm以下であり「良好」であった。
(実施例2)
実施例1において架橋型電荷輸送層塗工液の組成を以下のように変え、150℃で60分間加熱乾燥したほかは同様にして電子写真感光体を作製した。
〔架橋型電荷輸送層塗工液の組成〕
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物
具体例No.32 ・・・ 10部
・酸触媒 パラトルエンスルホン酸一水和物 ・・・0.02部
・テトラヒドロフラン(脱水) ・・・ 90部
〔赤外吸収スペクトル測定結果〕
図13、図14に反応前の具体例No.32の方法IIで測定した赤外吸収スペクトルと加熱乾燥で作製された架橋型電荷輸送層の3次元架橋膜の方法Cで測定した赤外吸収スペクトル測定結果を示す。
これらから実施例1と同様にして(C/D)/(A/B)を求めると0.44であり、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基に由来する脂肪族C−H伸縮振動ピークを適当量有していることが確認された。
〔溶解性試験結果〕
得られた電子写真感光体の表面について溶解性試験を行ったところ「不溶」であった。
〔感光体表面平滑性評価結果〕
Rzが1μm以下であり「良好」であった。
(実施例3〜11)
実施例2において電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物を下記表の様に変えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。得られた架橋型電荷輸送層の(C/D)/(A/B)の値と電子写真感光体表面の溶解性試験結果及び表面平滑性評価結果を表4に示す。
(実施例12)
実施例1において架橋型保護層の加熱乾燥温度を170℃として60分間行う以外は同様にして電子写真感光体を作製した。得られた架橋型電荷輸送層の(C/D)/(A/B)の値と電子写真感光体表面の溶解性試験結果及び表面平滑性評価結果を表4に示す。
Figure 2012150400
表4に示すようにいずれも溶剤に不溶な3次元架橋膜を形成できており、(C/D)/(A/B)の値から[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基に由来の脂肪族C−H伸縮振動ピークを適当量有していることがわかる。
また、これら実施例1〜12は酸触媒を用いて加熱乾燥することで形成されており、いずれも表面平滑性の良好な表面層を形成できていることがわかる。
(比較例1)
実施例2において架橋型電荷輸送層塗工液の組成を以下のように変えて実施したほかは同様にして電子写真感光体を作製した。
〔架橋型電荷輸送層塗工液の組成〕
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物
具体例No.32 ・・・ 10部
・酸触媒 パラトルエンスルホン酸一水和物 ・・・0.02部
・テトラヒドロフラン(脱水) ・・・ 90部
・水 ・・・0.35部
この様にして作製した電子写真感光体の溶解性試験を行ったところ完全に溶解してしまった。赤外吸収スペクトルは、溶媒を使用せずにKBr板に直接転写させて測定した。それらの結果を表5に示す。
(比較例2)
実施例2において架橋型電荷輸送層塗工液の組成を以下のように変えて実施したほかは同様にして電子写真感光体を作製した。
〔架橋型電荷輸送層塗工液の組成〕
・電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物
具体例No.32 ・・・ 10部
・酸触媒 パラトルエンスルホン酸一水和物 ・・・0.02部
・テトラヒドロフラン(脱水) ・・・ 90部
・水 ・・・ 1.7部
この様にして作製した電子写真感光体を比較例1と同様にして評価した。その結果を表5に示す。
Figure 2012150400
この様に重合反応条件が悪い場合は、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の残留が多すぎて十分な架橋ができず、本発明の必要要件の一つである3次元架橋膜の形成が達成できておらず、目的を達成することはできない。
(比較例3)
実施例1において架橋保護層を設けない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
(比較例4)
実施例1において電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の代わりに、下記構造の電荷輸送性化合物を用いる他は同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 2012150400
得られた電子写真感光体表面の溶解性試験を行ったところ、完全に溶解してしまった。また、表面が液状であり、感光体としての評価はできなかった。
(比較例5)
実施例1において電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の代わりに、下記構造の電荷輸送性化合物を用いる他は同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 2012150400
得られた電子写真感光体表面の溶解性試験を行ったところ、完全に溶解してしまった。また、表面が液状であり、感光体としての評価はできなかった。
(比較例6)
実施例1において電荷輸送性化合部の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の代わりに、下記構造の電荷輸送性化合物を用いる他は同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 2012150400
得られた電子写真感光体表面の溶解性試験を行ったところ、完全に溶解してしまった。また、表面が液状であり、感光体としての評価はできなかった。
(比較例7)
実施例1において電荷輸送性化合部の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の代わりに、合成例3で得たメチロール中間体を用いる他は同様にして電子写真感光体を作製した。
(比較例8)
実施例1において架橋型電荷輸送層塗工液の組成を以下のように変えて実施したほかは同様にして電子写真感光体を作製した。
〔架橋型電荷輸送層塗工液の組成〕
・電荷輸送性化合物
比較例6で用いた電荷輸送性化合物 ・・・5.5部
・レゾール型フェノール樹脂PL−2211(群栄化学社製) ・・・ 7部
・酸触媒 Nacure2500(楠本化成社製) ・・・0.2部
・イソプロパノール ・・・ 15部
・メチルエチルケトン ・・・ 5部
(比較例9)
実施例1において架橋型保護層の加熱乾燥温度を200℃として60分間行う以外は同様にして電子写真感光体を作製した。得られた架橋型電荷輸送層の(C/D)/(A/B)の値と電子写真感光体表面の溶解性試験結果及び表面平滑性評価結果を前記表5に示す。
表に示すように、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の残量が規定量より少なくなっており、膜の硬化収縮が大きい影響で膜の平滑性が悪くなっていることがわかる。
<画像出力評価>
実施例1〜12及び比較例3、7、8、9で作製した電子写真感光体の機械的特性、電気的特性、環境特性、耐ガス性を評価した。機械的特性はリコー製デジタルフルカラー複合機MP C7500 SPのプロセスカートリッジに得られた電子写真感光体を着装し、本体に取り付けて600×600dpiの解像度でリコーマイリサイクルペーパーGPのA4用紙を用い、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各中間調帯模様のテストパターンの連続500枚の画像出力を毎分60枚の印刷速度で繰り返し行い、トータル5万枚の印刷を行った後の感光体摩耗量を測定することで評価した。
電気的特性は感度特性、残留電位特性の反映される機内明部電位(VL電位)を初期と5万枚印刷後に測定することで評価した。環境特性は、上記画像出力装置を30℃、90RH%の高温高湿ルームに入れ、連続50枚の画像出力を行い、50枚目の中間調帯模様部(1by1ドットブラック画像部)の画像濃度をマクベス濃度計により測定し、ドット再現性を評価することで行った。
また、耐ガス性は、作製した電子写真感光体をNOxガス暴露器にNOガス5ppm/NO2ガス20ppmの条件で2日間暴露し、その後、連続50枚の画像出力を行い、50枚目の中間調帯模様部(1by1ドットブラック画像部)の画像濃度をマクベス濃度計により測定し、ドット再現性を評価することで行った。環境特性及び耐ガス性評価とも下記指標に従い、判定した。
良好:濃度0.45〜0.35、 若干低下:濃度0.35〜0.25、
低下:濃度0.25〜0.15、 大きく低下:濃度0.15〜0
その結果を表6に示す。
Figure 2012150400
表6の結果から、実施例1〜12の最表面層が電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋膜からなり、該3次元架橋膜の赤外吸収スペクトルが[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基に由来する脂肪族C-H伸縮振動ピークを適当量有することを特徴とする電子写真感光体は、いずれも耐摩耗性が高く、電気特性に優れ、環境特性及び耐ガス性にも強い高寿命な電子写真感光体であることがわかる。
架橋型電荷輸送層の無い比較例3と比べるとその耐摩耗性の高さは際だっており、摩耗による電荷輸送層の薄膜化で生じる電荷リークによる黒斑点等の異常画像を経時で生じることが無く、高画質を維持することができている。また、メチロール基を有する電荷輸送性化合物の架橋膜やフェノール樹脂を用いた架橋膜のような従来の熱架橋膜を用いた比較例7、比較例8と比べると環境特性や耐ガス性に優れており、且つ、多数枚を印刷した後でも異常画像等の発生が無く、高画質を維持できていることがわかる。
また、溶解性試験結果と表6の比較例9から(C/D)/(A/B)の値が0.35未満になると明部電位が高くなり過ぎる傾向があり、これは残留電位上昇や感度低下等の電気特性低下を示している。その為に印刷経時での異常画像が発生してしまう。一方、表5の比較例1や2のように0.60を超えると溶媒不溶な3次元架橋膜が形成できなくなり、保護層としての機能が発現できなくなることから(C/D)/(A/B)の値が0.35〜0.60の間であることが必要であることがわかる。
また、一般式(1)及び一般式(4)で表される電荷輸送性化合物を用いた実施例3や一般式(2)及び一般式(5)で表される電荷輸送性化合物を用いた実施例1〜2、実施例4〜6は、各特性において優れた特性をバランス良く有していることがわかる。
また、一般式(3)及び一般式(6)で表される電荷輸送性化合物を用いた実施例7〜11では、耐ガス性でやや弱いものの明部電位はより小さくなっており電荷輸送性に特に優れていることがわかる。
実施例に示したように本発明の電子写真感光体を用いた画像形成方法及び画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジは、高画質な画像出力を長期に渡って出力し続けることが可能であり、環境変動や酸化性ガスの等の発生する環境下においても安定して高画質な画像を出力し続けることができるものである。
1:導電性支持体
2:電荷発生層
3:電荷輸送層
4:下引き層
5:架橋型電荷輸送層
6:電荷発生物質と電荷輸送物質を両方含有する単層感光層
7:単層感光層用保護層
10、10Y、10M、10C、10K:感光体
11、11Y、11M、11C、11K:帯電部材
12、12Y、12M、12C、13K:画像露光部材
13、13Y、13M、13C、13K:現像部材
14:搬送ローラ
15:転写紙
16、16Y、16M、16C、16K:転写部材
17、17Y、17M、17C、17K:クリーニング部材
18:除電部材
20Y、20M、20C、20K:画像形成要素
21:給紙コロ
22:レジストローラ
23:転写部材(二次転写部材)
24:定着部材
特開昭56−048637号公報 特開昭64−001728号公報 特開平04−281461号公報 特許第3262488号公報 特許第3194392号公報 特開2000−66425号公報 特開平06−118681号公報 特開平09−124943号公報 特開平09−190004号公報 特開2000−171990号公報 特開2003−186223号公報 特開2007−293197号公報 特開2008−299327号公報 特許第4262061号公報 特開2006−251771号公報 特開2009−229549号公報 特開2006−84711号公報

Claims (15)

  1. 導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、
    該感光層の最表面層が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物が、該[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合した3次元架橋膜からなり、且つ、該3次元架橋膜中の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の残量を表す指数(C/D)/(A/B)が下記(I)の条件を満足することを特徴とする電子写真感光体。
    (C/D)/(A/B)=0.35〜0.60 (I)
    但し、条件(I)においてA〜Dは以下の通りである。
    A=反応前の電荷輸送性化合物の脂肪族C−H伸縮振動ピーク(2940±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
    B=反応前の電荷輸送性化合物の芳香族C−H伸縮振動ピーク(3028±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
    C=3次元架橋膜の脂肪族C−H伸縮振動ピーク(2940±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
    D=3次元架橋膜の芳香族C−H伸縮振動ピーク(3028±10cm-1)の赤外吸収スペクトル強度
  2. 前記3次元架橋膜がテトラヒドロフランに不溶であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 導電性支持体上の感光層が少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層をこの順に有してなり、該架橋型電荷輸送層が、前記3次元架橋膜である事を特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記3次元架橋膜が、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物に硬化触媒を添加し加熱することで、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部を脱離させる反応により得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体。
  5. 前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(1)で表されることを特徴する請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。
    Figure 2012150400
    (式中、Ar1,Ar2,Ar3は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数が6から18の芳香族炭化水素の2価基を表す)
  6. 前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(2)で表されることを特徴する請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。
    Figure 2012150400
    (式中、X1は炭素数が1から4のアルキレン基、炭素数が2から6のアルキリデン基、フェニレン基を介して炭素数が2から6のアルキリデン基が2個結合した2価基、酸素原子を表す。Ar4,Ar5,Ar6,Ar7,Ar8,Ar9は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数が6から18の芳香族炭化水素の2価基を表す。)
  7. 前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(3)で表されることを特徴する請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。
    Figure 2012150400
    (式中、Y1は、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、ジスチリルベンゼン、縮合多環芳香族炭化水素の2価基を表す。Ar10,Ar11,Ar12,Ar13は、アルキル基を置換基として有しても良い炭素数が6から18の芳香族炭化水素の2価基を表す。)
  8. 前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(4)で表されることを特徴する請求項5に記載の電子写真感光体。
    Figure 2012150400
    (式中、R1,R2,R3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基を表わし、l、n、mは1〜4の整数を表わす。)
  9. 前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(5)で表されることを特徴する請求項6に記載の電子写真感光体。
    Figure 2012150400
    (式中、X2は−CH2−、−CH2CH2−、−C(CH32−Ph−C(CH32−、−C(CH25−、−O−を表わす。R4,R5,R6,R7,R8,R9は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基を表わし、o、p、q、r、s、tは1〜4の整数を表わす。)
  10. 前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が下記一般式(6)で表されることを特徴する請求項7に記載の電子写真感光体。
    Figure 2012150400
    (式中、Y2はベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、ナフタレンの2価基を表す。R10,R11,R12,R13は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基を表わし、u、v、w、zは1〜4の整数を表わす。)
  11. 電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、前記電子写真感光体が、請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
  12. 前記露光工程における感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式により行われることを特徴とする請求項11に記載の画像形成方法。
  13. 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記電子写真感光体が、請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
  14. 前記露光手段による電子写真感光体上への静電潜像書き込みがデジタル方式であることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
  15. 電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、前記電子写真感光体が、請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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