JP2012149649A - 軸流ポンプ又は斜流ポンプ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】羽根の失速を原因として発生する不安定領域での運転を避けるためのポンプである。不安定領域を高揚程で小流量側に移動させて、ポンプの軸動力が予め設定された一定の設定値に出力を制御するために、前置案内羽根6付のポンプ1の実揚程を検知し、この実揚程の検知に基づき、羽根車2の回転速度を制御する。不安定領域の移動のために、前置案内羽根6は、羽根車2の回転方向とは逆向きで、羽根車2の半径方向の外周より中心部がより大きな旋回流を与えて、耐失速特性を向上させたものである。
【選択図】 図1
Description
斜流ポンプの揚程曲線は全流量範囲にわたり、緩やかな右下がり曲線となることが多いが、高比速度で設計された斜流ポンプの中には最高効率点流量の50〜70%付近で軸流ポンプと同様な右上がりの不安定領域が現れることが知られている。軸動力曲線については両者とも右下がり曲線を示し、高揚程小流量側で軸動力は増大し、逆に低揚程大流量側では軸動力は減少する。
一般的な軸流ポンプを一定の回転速度で運転した場合の揚程曲線と、実揚程が変化した場合の抵抗曲線を図22に示す。抵抗曲線1〜3は揚程曲線との交点はただ一つに定まり、ポンプはこの交点で示される吐出し量、全揚程で安定して運転される。しかし、抵抗曲線4は揚程曲線との交点が明確に定まらず、吐出し量、揚程はa〜cの範囲で周期的に変動し、振動や騒音を伴う不安定な運転となる。一般的な軸流ポンプではこのような不安定領域での運転を避けるため、運転可能流量範囲を最高効率点流量の70%以上に限定する場合が多い。
更に、回転数制御において、振動量から不安定領域かどうかの判定を行い、不安定領域であれば回転速度を増速あるいは減速して、不安定領域での連続運転を回避する制御が提案されている(特許文献2)。これは不安定領域での運転を回避しているに過ぎない。一般に不安定領域での運転を避けるため回転速度を減速した場合、全揚程は回転速度比の二乗に比例して減少するため、揚程が高い場合には排水不能となる。また、連続流量制御が出来ないため、連続流量を確保するためにはポンプ台数を増やし対応する必要がある。
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記目的を達成する。
本発明の更に他の目的は、軸動力一定と回転速度制御とを組み合わせて、低揚程大流量から高揚程小流量まで更に広い運転範囲において安定した運転が可能となる軸流ポンプ又は斜流ポンプを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、ポンプの動力を供給する受電設備の容量を小さくできる軸流ポンプ又は斜流ポンプを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、羽根の失速を原因とする不安定領域を、高揚程で小流量側に移動させることができる軸流ポンプ又は斜流ポンプを提供することにある。
本発明1の軸流ポンプ又は斜流ポンプは、 回転駆動される羽根車の失速を原因として発生する不安定領域での運転を避けるための軸流ポンプ又は斜流ポンプであって、前記不安定領域を移動させるために、翼幅に対して翼弦長さを増大させて翼表面上で単位長さあたりに行われるエネルギーの供与を小さくしたことで、前記ポンプの揚力係数CLは、前記ポンプのチップ側で0.2〜0.3未満、ハブ側で0.6〜0.8未満としたものであることを特徴とする。
また、軸動力を一定でポンプを制御するために、ポンプ設備のための受電設備に余力が必要なく、結果として、小さい受電設備で対応できるので、設備コストの削減、及び電気料金を抑えることができる。
次に、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明を前置案内羽根付き軸流ポンプに適用したときの実施の形態1を示す図である。図1(a)は、前置案内羽根付き軸流ポンプの羽根車の正面図、図1(b)は前置案内羽根付き軸流ポンプの側面図である。図2は、羽根車チップ側における速度ベクトルを示す説明図である。図3は、羽根車ハブ側における速度ベクトルを示す説明図である。図4は、羽根車チップ側における羽根の断面を示す断面図である。図5は、羽根車ハブ側における羽根の断面を示す断面図である。
即ち、羽根車2への揚液の相対的な流入速度を増加させるためのものである。この予旋回は前置案内羽根6の設計により羽根車2の各半径位置で任意にその大きさを変えることができるが、羽根車2の回転による揚液との相対速度の小さいハブ3側において、より大きな予旋回を与えることで、予旋回の周速と羽根車2の回転速度の合計で表される翼4と揚液との周方向相対速度をチップ(外周)側、ハブ3側で均一化又は略均一化にすることができる。
羽根車入口側に設けられた前置案内羽根6が発生する予旋回の周方向成分は吐出量、即ち、流入量の増減に比例して増減するため、予旋回の周成分と羽根車2の回転速度の合計で表される揚液と翼4との周方向の相対速度も略比例的に増減する。その結果、吐出量が増減した場合の羽根車の相対流入ベクトルの方向変化は従来のポンプと比べ半分程度まで小さくなる。
更に、これらの前置案内羽根付き軸流ポンプ1と回転速度(回転数/単位時間)制御を組み合わせることで、従来の軸流ポンプと回転速度を組み合わせた場合と比較して、低揚程大流量側から高揚程小流量側まで、更に広い範囲で安定した運転が可能となる。図6は、本実施の形態1の前置案内羽根付き軸流ポンプ1と従来の軸流ポンプとの回転速度制御と組み合わせた場合の運転範囲を示している。
このように、本実施の形態1の前置案内羽根付き軸流ポンプ1は、図6に示す揚程曲線の例では、各回転数での運転における最高効率点流量の約50%、最高効率点揚程の約180%付近まで不安定領域が発生しないため、より低い回転数まで安定した運転が可能であり、その運転可能な最低吐出し量は一般的な軸流ポンプを回転速度制御した場合に比べ大幅に減少させることができる。
運転条件を満たしていなければ、ポンプを運転する必要がないので、ポンプは運転中であれば運転を休止し、休止中であればそれを継続する(S4)。ポンプ運転の休止が一定時間経過すると(S6)、再び水位情報をそれぞれ検知する(S1)。ポンプ運転条件を満たしていれば(S3)、前回の水位計測から予め決めておいた設定水位以上の変動があるか否かを判断する(S5)。流入水の増加又は減少、外水位の上昇又は下降等により、実揚程Hが変動したものであるから、運転条件を変える必要があると判断する。
この回転数が決まれば、インバータへポンプの回転速度を指示して、所定の回転速度になるように周波数を制御する指令をする(S8)。この後、ポンプは設定された回転速度で運転が行われる(S9)。このように、本実施の形態1の運転制御装置10は、軸動力一定で運転し、かつ失速範囲を移動させて、運転可能な範囲を広くしたので、受電設備への負荷の変動が少なく、無駄な設備が必要がない効果がある。なお、上記説明は、1台の前置案内羽根付き軸流ポンプで説明したが複数台を運転するものであっても同様の運転で行う。
前述した実施の形態1は、羽根の失速を原因として発生する不安定領域での運転を避けるために前置案内羽根を配置するものであった。実施の形態2の軸流ポンプは、耐失速性を向上させるためにハブ比(ハブ直径/羽根車外径)を従来の数値範囲から変更したものである。図9(a)は、本発明の羽根車外径とハブ径を拡大させた場合の軸流ポンプの羽根車の正面図、図9(b)は、軸流ポンプの側面図である。
図10は、本発明の羽根車外径とハブ径を拡大させたとき、軸流ポンプの羽根車チップ側における速度ベクトルを示す説明図である。図11は、本発明の羽根車外径とハブ径を拡大させたとき、羽根車のハブ側における速度ベクトルを示す説明図である。図12は、図9の羽根車のチップ側における翼形状を示す断面図である。図13は、図9の羽根車のハブ側における翼形状を示す断面図である。図12及び図13から明らかなように、チップ側の翼弦長が長く、ハブ側の翼弦長が短くなっている。
羽根車16への軸流方向の流速は、ポンプ効率、流速増加による管損失、重量等の観点から3.0〜4.0m/secが選択される。本実施の形態2は、前述した不安定領域の移動のために、本実施の形態2の軸流ポンプのハブ比β’は次の式(1)で表される範囲にある。
D’=前記軸流ポンプの口径(前記羽根車の外径の近似値)、
d’=前記軸流ポンプのハブ径、
α=1.1〜1.8、
β=0.3〜0.7、
である。
このαは、D’/Dで算出される数値である。αが大きいほど耐失速性は向上するが、効率や経済性が犠牲となるので上記数値範囲が適当である。βは、d/Dで算出される数値である。このDは、3.0〜4.0m/secによって選択される一般的な軸流ポンプ口径(前記羽根車の外径の近似値)であり、dは、3.0〜4.0m/secによって選択される従来のハブ径である。
これらの数値範囲を採用することは、羽根外径、及びハブ17の直径を増加させることを意味する。羽根外径、及びハブ径を増加させることにより、羽根車16への流入ベクトルを半径方向のどの位置でも均一化又は略均一化する設計が容易となる。羽根部分での軸線方向の流速は、従来と同様の流速(3.0〜4.0m/sec)となる。即ち、羽根外径とハブ径を共に増加させることにより、羽根車16の翼18と揚液との周方向相対速度をチップ(羽根先端部)側、ハブ側で均一化又は略均一化することができるため、ハブ17側において揚液が要求するエネルギーを与えるために必要な翼のそりは従来と比べ大幅に減少し、翼の取付角が回転軸線と直交する面とのなす角も小さくなる。
本実施の形態3は、耐失速性を向上させるために羽根車の揚力係数CLを通常採用される数値範囲からシフトさせたものである。即ち、羽根車の翼弦長を増加させた軸流ポンプの翼形状である。図14(a)は、本発明の羽根車の翼弦長を延長させた場合の軸流ポンプの羽根車の正面図、図14(b)は、軸流ポンプの側面図である。図15は、図14の軸流ポンプの羽根車のチップ側の速度ベクトルを示す説明図である。図16は、図14の軸流ポンプの羽根車のハブ側の速度ベクトルを示す説明図である。
図17は、図14の軸流ポンプの羽根車のチップ側の翼形状を示す断面図である。図18は、図14の軸流ポンプの羽根車のハブ側の翼形状を示す断側面図である。この軸流ポンプ21は、実施の形態2の軸流ポンプ15と実質的に配置は同一である。即ち、この軸流ポンプ21は、後置案内羽根26、羽根車22、ハブ23、翼24、固定ハブ25等は、実施の形態2と配置は同一である。
羽根の長さが長くなっているために単位長さ当たりに行われるエネルギーの供与は小さくなり、翼表面からの流れている揚液の剥離がおきにくくなるため、翼の失速を原因として発生する不安定領域もより小流量側まで発生しにくくなる。
図17と図18に示した翼断面を備えた羽根車2は、一般の軸流ポンプの揚力係数CLを採用した軸流ポンプと最高効率点流量において同一の性能を発揮するものであるが、前述したように翼の弦長は大きく異なる。図19は、従来の揚力係数CLを採用したときの軸流ポンプの羽根車のハブ側の翼形状を示す断面図である。図20は、本実施の形態3の揚力係数CLを採用したときの軸流ポンプの羽根車のハブ側の翼形状を示す断面図である。
このポンプ設備と同様の最高効率点流量および最高効率点揚程を満たし、かつ同様の最高実揚程まで運転可能な設備を、固定速の一般的な軸流ポンプで実現しようとした場合、電動機および受電設備は前置案内羽根付き軸流ポンプに対し軸動力一定制御を行った場合と比べて20〜30%増の30kWが必要となる(図21参照)。ポンプが二台設置されていた場合、30kW×2台では受電設備は受電契約で言うところの高圧受電範囲が必要となるが、22kW×2台では低圧受電でまかなうことができるため、設備のイニシャルコスト、ランニングコスト共に、大幅に縮減することが可能となった。
2…羽根車
3…ハブ
5…固定ハブ
6…前置案内羽根
10…運転制御装置
11…吸込み側水位センサ
12…吐出し側水位センサ
15…軸流ポンプ
Claims (2)
- 回転駆動される羽根車の失速を原因として発生する不安定領域での運転を避けるための軸流ポンプ又は斜流ポンプであって、
前記不安定領域を移動させるために、翼幅に対して翼弦長さを増大させて翼表面上で単位長さあたりに行われるエネルギーの供与を小さくしたことで、前記ポンプの揚力係数CLは、
前記ポンプのチップ側で0.2〜0.3未満、ハブ側で0.6〜0.8未満としたものである
ことを特徴とする軸流ポンプ又は斜流ポンプ。 - 請求項1に記載の軸流ポンプ又は斜流ポンプにおいて、
羽根の失速を原因として発生する不安定領域での運転を避けるための軸流ポンプ又は斜流ポンプであって、前記不安定領域を高揚程で小流量側に移動させて、前記ポンプは、回転駆動される羽根車と、前記羽根車に流入する揚液の流れの前に配置された前置案内羽根とを有するものであり、
前記不安定領域の移動のために、前記羽根車の回転方向とは逆向きで、前記羽根車の半径方向の外周より中心部側がより大きな旋回流を与えて、耐失速特性を向上させたものである
ことを特徴とする軸流ポンプ又は斜流ポンプ。
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