実施例の詳細な説明
この発明は広い範囲の実施例において具体化される。これら実施例の多くの特色は、複数の横方向に配設した地面接触部材を使用して人間が輸送される表面上で人間を支えることである。地面接触部材はモーターで駆動される。多くの実施例では、移動中、人間を支持する構成は前−後平面における垂直面に関する時間の少なくとも一部については本来の安定性を欠くが、横方向平面の垂直面に関しては比較的安定である。前−後安定性はモーターを含む制御ループを与えることで達成される。これは地面接触部材に関してモーターを作動させるためである。以下に述べるように、対の地面接触部材は、例えば一対の車輪又は一対の車輪集合体であってよい。車輪集合体の場合は、各集合体は複数の車輪を含んでもよい。しかし、各地面接触部材は、複数の(典型的には一対の)、軸方向に近接し、半径方向に支持されかつ回転可能に取り付けた弓状要素で置き換えてもよい。これらの実施例では、地面接触部材は制御ループのモーター付き駆動装置によって駆動される。これは車両に作動する妨害や力に関係なく、車両の質量の中心を地面接触部材の地面に対する接触点に維持するような方法で行われる。
第1図に本発明の簡略化した実施例を示す。ここでは主要な地面接触部材は一対の車輪であり、補助的な地面接触部材が階段を昇降するのに使用される。(以下に示すように階段の登り降り及び平な地形の移動の両方共、単一組の地面接触部材が前述した車輪集合体又は弓状要素である場合、この単一組の地面接触部材により達成される。)
第1図に示す実施例は、支持体12を含む。これはここでは椅子として具現化され、この上に人間が座る。車両は相互に横方向に配設した一対の車輪11を備えている。車輪は垂直軸Z−Z、車輪の軸に平行な横軸Y−Y、及び車輪軸に垂直な前−後軸X−Xを含む1連の軸を画成するのを助ける。垂直軸Z−Z及び横軸Y−Yで画成される平面は「横方向平面」と呼ばれる場合があり、前−後軸X−X及び垂直軸Z−Zで画成される平面は「前−後方向平面」と呼ばれる場合がある。前−後軸X−X及び横軸Y−Yに平行な方向はそれぞれ前後及び横方向と呼ばれる。地面に接触するため対の車輪11依存する場合、車両は前−後方向の垂直面に関して本質的に不安定であるが、横方向の垂直面については比較的安定である。
第2図では、車両は車輪11に加えて制御可能な量だけ垂直方向に延長可能な一対の横方向に配設した足21及び足台22を備えている。脚台は階段のような対象物の高さを決めるためその上に配設したセンサーを備えている。脚21は一対の延長可能な脚23上に配設されている。好ましい実施例では、車両は両方の脚が地面に接触しているとき横方向のみならず前−後方向にも安定であるが、横方向安定性は、1個の脚が地面と接触している場合、犠牲になるかも知れない。第3図に、足21と関連する脚23を含む支持システムに関し椅子12の旋回を可能にする第1図及び第2図の実施例の態様を示す。旋回は概ね水平である平面中で作動する。この旋回の態様は各足を延長させ後退させる能力と協同して階段上の人間の移動に類似した方法で階段を昇降する車両の運動を可能にする。各脚23は、重量支承脚として機能するとき、旋回中に脚の垂直軸を中心とする車両の残部の回転を可能にする。旋回を達成するにあたり脚と脚の中央に配設した垂直軸を中心として旋回して椅子の前方方向向きを維持させる。さらに旋回中、重量を支持しない脚23はその垂直軸を中心として回転して関連する足21を前方向き方向に維持する。
第1図乃至第3図で説明した実施例は相対的な移動を達成するため本来の前−後安定性を犠牲にする。一般的に漸進的な表面の変化のためには、平衡モードが本質的に不安定なシステムに前−後安定性を与える。階段のようなさらに不規則なば表面に対しては、この実施例は階段を昇降するのに使用する別の「ステップモード」を有する。階段の昇降では、例えば手を使用して第4図に示すように普通の手すりをつかむか、或いは階段の近くの利用できる壁に接触して安定性を回復してもよい。
さらに色々な方法を使用して落下による傷害の危険を減少させることができる。一つの態様では、落下が生じるものと決められている場合、車両はうづくまりモードに入る。このモードでは車両と人間の組み合わせた質量の中心に制御可能にかつ素早く低下する。質量の中心の低下は例えば表面からの椅子の高さを減少させる方法により支持システムに蝶番をつけたり分離したりして達成してもよい。又、うづくまりモードはエネルギーを人間に与える前にエネルギーを放散させる有用な効果を有し、人間をその脆弱性が減少するところに位置させ、かつ衝突の場合に人間に伝達されるエネルギーを減少させるよう人間を低いところに位置させる。
第5図のブロックダイヤグラムにおいて、制御システム51が第1図乃至第4図の実施例のモーター駆動装置とアクチュエイターを制御して移動と平衡を達成するために使用されているのが見られる。これらは左右の車輪それぞれのためのモーター駆動装置531と532、左右の脚それぞれのためのアクチュエイター541と542、及び旋回モーター駆動装置55を含む。制御システムはユーザーインターフェイス561、前後勾配を検出する勾配センサー562、車輪回転センサー563、アクチュエイター高さセンサー564、旋回センサー565、及び階段寸法センサー566を含むデータ入力を有する。
移動のため車輪が作動状態になっているとき、第1図による本発明の実施例で平衡を達成するための簡略化した制御の段階的手法が第6図のブロックダイヤグラムに示される。プラント61は制御ループが加えられる前に単一モーターにより駆動される地面接触モジュールを有するシステムの運動の方程式に相当する。Tは車輪トルクを意味する。文字θは前−後傾斜(重力、すなわち垂直線に対する車両の勾配角度)を、Xは基準点に関して表面に沿う前−後の移動を、及び文字上の点は時間に関して微分した変数を、それぞれ意味する。数字の残部は平衡を達成するため使用した対照である。ボックス62と63は微分を意味する。システムの安定性を確保して動的な制御を達成し、表面上の基準点の近くのシステムを維持するために、本実施例における車輪トルクTは以下の式を満たすよう設定される。
利得K1、K2、K3、及びK4はシステムの物理的パラメーター及び重量のような他の影響を受ける。第6図の簡略化した制御の段階的手法は、人間の身体運動又は他の人又は対象物との接触により、表面上の基準点に関する質量のシステムの中心への変化のような変動が存在するとき、表面上の基準点への平衡及び接近を維持する。
第6図に説明した1車輪システムの代わりに2車輪を受け入れるため左モーターから求められるトルク及び右モーターから求められるトルクは第33図を参照しつつ以下に説明される一般的方法で別々に計算することができる。さらに左車輪の運動と右車輪の運動の両方を追跡すると、車両の偶発的回転を防止し、二つの駆動モーター間の性能変動を説明する調整を可能にする。
操縦桿のような手動のインターフエースを使用して各モーターのトルクを調節している。操縦桿は第7図に示すような軸を有する。この実施例の動作では、操縦桿の前進運動は車両の前進運動となり、操縦桿の後退運動は車両の後退運動となる。同様に操縦桿の左方への運動により左への回転となり、操縦桿の右方への運動は右への回転となる。ここで使用した構成は操縦桿が左か右へ運動したとき車両を適切な位置に回転させる。前進又は後退運動については、操縦桿の代替的方法として前又は後ろに傾けてもよい。これは勾配センンサー(θを測定する)が、或る勾配変化を、システムが、結果的には前後の運動になるのであるが、傾きの方向に依存することを補償しようとしていることである、と認めるからである。代替的にはファジー論理に基づく制御方法を実行することができる。
平衡モードにあるときモーターのトルクを調節しようとすると、安定用車輪又は支柱(これは安定性を高めるが)を必要とすることなく前−後安定性が可能となる。換言すれば安定性は力学的に車両の構成部材(この場合全車両を構成する)の地面に対する運動により達成される。
脚による階段登り
第8図は第1図の実施例の階段昇降の1方法を示す。階段の1段に直面すると最初に両脚が後退し(ブロック71に示される)、ついで最初のステップの高さが測定される(ブロック72)。階段の上昇又は下降が起こっている(73)(この時点では人間が手すりをつかむため安定性を達成するのが望ましい)。
この後、階段上昇の第1段階(ブロック74に示される)において、第2脚がステップ(75)をクリアーするまで第1脚が延出する。車両はついで第2脚が、丁度クリアーした(78)ステップを乗り越えるまで旋回する。(この段階を実行する際、ステップの深さに基づき旋回の程度を決定するためセンサーを使用することは可能である。代替的には旋回は90度のような特定の角度を超えることができる)。センサーはついで次のステップ(72)の高さを測定するためチェックされる。もし或るステップが存在(73)であると決定され、前のステップが奇数(76)であった場合、第1脚が次のステップ(79)をクリアーするまで、第2脚を延出させ第1脚を後退させることによってプロセスが継続される。このプロセスはブロック72において繰り返し開始される。もしステップが検出されず、前のステップが奇数であった場合、第2脚を僅かに延出させ、第1脚を完全に後退させ、両脚が前方を向くまで旋回させ、第2脚を後退させて両足(88)上に立たせることによって完成させる。もしステップが検出されず、前のステップが平坦であった場合、第1脚を僅かに延出させ、第2脚を完全に後退させ、両脚が前方を向くまで旋回させ、第1脚を後退させて両足(88)上に立たせることによって完成させる。
以下に階段を降りる類似した方法を説明する。階段降下の第1段階(ブロック81に示される)では、第1脚は僅かに延出され第2脚(ブロック82)をクリアーさせる。この後車両は第2脚が降下(84)しようとするステップを乗り越えるまで旋回し、第2脚がステップ(85)上になるまで第1脚が後退し、第2脚が延出する。センサーはついで次のステップ(72)の高さを測定うするためチェックされる。もし或るステップが存在(73)すると決定され、前のステップが奇数(76)であった場合、第1脚が、そこまで延出(86)しようとするステップを乗り越えるまで、旋回することによりプロセスが継続される。ついで第1脚がステップ(ブロック87)の上になるまで第2脚が後退し第1脚が延出する。センサーは次のステップ(72)の高さを測定するためチェックされる。もしステップが存在(73)であると決定され、前のステップが偶数であった場合、プロセスは継続(84)され、ついでブロック72で繰り返しが開始される。もしステップが検出されない場合は、降下は両脚が前方を向くまで旋回によって完成され、ついで両脚を後退させ両足(88)上に立たせる。
上記の旋回態様の代わりに次の実施例として、各脚を前後方向における概ね水平面で滑動できる方法で取り付けることによって、脚の相対運動を行なわせる。代替的にはこれら脚は人間の膝関節と股関節に類似した接合部を利用してもよい。
集合体による階段登り
第1図の実施例は、階段の登りのためと水平地形の操縦のためには、異なる地面接触部材を必要とするが、第9乃至21図に示した発明の実施例は、階段の登りと水平地形の操縦のために同じ地面接触部材のセットを利用することに成功した。第9乃至18図は第1図の実施例に使用した一対の車輪の代わりに一対の車輪集合体を使用する実施例を説明している。
第9図において2車輪集合体設計を使用する実施例の側面図が示される。人間962はこの実施例のシート95上に支持されている。集合体の回転軸92の周りに一対の車輪931と932が半径方向に対称的に位置する右手集合体91がみられる。同様な左手集合体が使用される。各集合体は回転軸92の周りで駆動するようそれぞれの制御可能なモーターを有している。各対の車輪(ここでは931と9332)はそれぞれ各自の回転軸の周りで別々に制御されるモーターで駆動されるが、一つの集合体の車輪は同期して回転するよう結合されている。
第9図では集合体91は、両車輪931と932が地面に接触するよう位置する。集合体91(左手集合体と共に)がこの位置にあるとき、この実施例の車両は前−後平面において比較的安定であり、これにより人間961(立って見える)は迅速に車両上の快適な座った位置を確保し、又は例えば障害者が他の椅子から乗り換えることを可能にする。
しかし、集合体91を、第10図に示すように各集合体の車輪932だけが地面に接触するまでその回転軸92の周りで回転させてもよい。集合体91(左手集合体と共に)がこの位置にあるとき、車両は、第1図の実施例に関連して上述したものと同じような本来の前−後安定性を有する。上に検討したように車輪を駆動して前−後安定性を動的に得るためにこのシステムを統制する同じ方程式を使用してもよい。第9図と第10図に示すように、椅子95は相互に及びシート95に関して角度を調節される、区分941と942を有し関節で接続された腕、を介して地面接触部材に結合してもよい。調節はハブ945と946に配設されたモーター付き駆動装置によって達成される。(かかる駆動装置は例えば調和駆動装置であってよい)これら調節(集合体を回転させる効果に加えて)の結果として、特にシート95の高さは変更してもよい。人間101は、立っている人間961に匹敵する(又はそれより高い)、車両上に座ったままの高さ、を達成するのを見ることができる。これは望ましいことである。何故なら、例えば車輪椅子に座った人間は普通立っている人間によって矮小になるからである。以下にさらに詳細に検討するように前述の調節も又シートの前−後傾斜の調節を可能にする。
第11乃至18図は、色々なモードと形状の3車輪集合体の設計の使用を示す。3車輪集合体のための第11図(安定休息位置を示す)と第12図(移動のための平衡位置を示す)は2輪集合体のための第9図と第10図に相当する。各3車輪集合体(右手集合体111がここに示される)は軸112の周りに取り付けられそれぞれの制御可能なモーターで駆動される。2車輪集合体設計におけると同様に各集合体の車輪は別々に駆動され制御されるが、各集合体においては同期して駆動される。
ここで説明した実施例の多くは独立して制御されるモーターを使用しているが、多くの機能のために共通のモーターを使用してもよく、それぞれの制御は適当なクラッチ又は差動駆動装置のような他のトランスミッション装置により達成されることに注意すべきである。本文及び請求の範囲で使用する用語「モーター付き駆動装置」は機械的動力を生じる如何なる車両をも意味し、したがって電動の、水力の、空気圧の、又は熱力(後者は内燃又は外部燃焼機関を含む)の発動機、及びかかる機械的動力を伝達可能な適当な装置、又はターボジェットエンジン若しくはモーター駆動プロペラのような推力発生装置を含む。
第13図は第12図に類似するが、ここでは、寄掛かり131とシート132を有する椅子95が見られる。シート132に対する寄掛かり131の角度及び水平面に対するシート132の角度は調節可能であり、寄掛かり131が大体垂直方向に位置するとシート132は垂直面へ傾き使用者は殆ど起立位置をとることになる。
第14図では階段を登る実施例が示される。ここでは関節で接続された腕区分941及び942は延長された位置にあり最大の高さを提供し、人間101の足は階段141を乗り越える。階段の昇りは中央軸112を中心として回転する右集合体111と左集合体(図示せず)の各々の回転及び車輪の調整された回転により達成される。階段昇りを達成するための実際のモードと制御の準備は第27図以下の図面を参照しつつ以下に説明する。
第15図乃至第17図は第11図及び第12図の実施例に類似するが、関節で接続された腕の区分161及び171の一つ、この場合は区分171、がシート151及び囲い152から成る本体支持組合わせのシート151を支える。ここでは囲い152はヘッドレスト155を備えている。区分171が概ね垂直位置をとると、シート151が経路のから外に動き、人間153がシート151、囲い152、及びフットレスト154により支持された起立位置をとることを可能する。
第18図乃至第20図は第11図乃至14図の実施例に類似するが、ここでは人間101の高さは伸縮部材181により調節可能であり、その延出は分離したモーターにより制御される。さらに第19図の軸R−Rを中心とする人間の回転角度は第18図に示すように第19図の独立して制御されるモーターユニット191を介して調節される。さらに第19図及び第20図の二つの異なる位置に示される椅子181の前−後傾斜は、独立して制御されるモーターユニット19を介して調節可能である。回転と傾斜の調節はピボットとモーター付き駆動装置で実行されるが、これら調節の各々も例えば4本−棒又はモーター付き駆動装置に結合した他の結合部材により実行される。
第21図には椅子を設けることなしに本発明にしたがって車両を製造することができることが示される。人間はプラットフォーム211上に立ち、プラットフォーム211に取り付けたハンドル213上のグリップ212を掴み、本実施例の車両をスクーターに類似する方法で操縦する。他の制御方法も使用することができるが、グリップ212に方向制御のため親指−作動操縦桿を備え付けるのが便利である。例えばハンドル213とグリップ212は全く避けてもよいが、プラットフォーム211には人間の傾斜を検出するのためにセンサーを備えてもよい。実際、第5図に関連して説明し、以下に述べるように、車両の勾配は感知され制御ループの中で補償され、若し人間が前方に傾斜すると車両は垂直安定性を維持するため前方に運動する。したがって、前方傾斜は前方運動を促す。後方傾斜は後方運動を引き起こす。適当な力転換器を使用して左方及び右方傾斜を感知させると共に、関連する制御装置を設けてた感知した傾斜の結果として左方及び右方旋回をさせてもよい。傾斜は又近接センサーを使用して検出してもよい。
同様にこの実施例の車両は車両を作動させるために、足−(又は力)作動スイッチを備えてもよい。ここではプラットフォーム211上に人間が立っている際スイッチは閉じられて自動的に車両に動力を供給する方法がとられる。この実施例は第13図乃至第20図の集合体の方法において作動した左及び右車輪集合体214について示されているが、代替的に車両は他の地面接触部材を設けてもよい。これは例えば第1図(しかし脚無しで)の方法におけるように横方向に配設した単一対の車輪を設けるか、或いは以下に説明する第22図乃至24図の方法に類似する方法におけるように、軸方向に近接し回転可能に取り付けた弓状要素対の左及び右対を設けるようにしてもよい。
弓状要素を使用する階段昇り
第22乃至24図は、地面接触部材が複数(ここでは一対)の軸方向に近接し、回転可能に取り付けた弓状要素群として具体化された実施例を示している。たとえば第22図は概ね第15図の集合体による推進の実施例に相当するが、ここでは右手地面接触部材が弓状の対221及び222として具現化されている。各対221と222の弓状要素(参照番号221a−221b及び参照番号222a−222b)はその中間点で回転可能に取り付けられている支持支柱(それぞれ参照番号221c−222c)の対向する端部において横断するよう配設されている。各支持支柱221c及び222cはモーターモターで駆動され相互に独立して制御可能となっている。通常の移動の動作では各対の弓状要素は概ね車輪の作動をする。例えばかかる移動中、弓状要素221aが地面との接触に失敗したとき、要素222aが回転しこれによって弓状要素の形状により発生した回転の継続を可能にする位置に到達する。この方法では弓状要素に沿う車両の実質的な回転運動がある。かくして弓状要素の各々の回転軸を中心とする運動は概ね一定の角速度では行われない。典型的には各弓状要素対は対のいずれの要素もが地面に接触しないとき速い角速度で運動する。しかし対の一つの要素が地面と接触すると、対の角速度(したがって地面接触要素の)は制御され、車両の所定の地面速度に整合し、その結果、必要時には一定の地面速度を達成することができる。
一定の地面速度を可能にする弓状要素の角速度の変化の結果から得られる効果はフレームにかかる反作用トルクの存在である。これは不測の車両の加速の原因となりかねない。一つの解決方法は、モーター駆動装置の反作用トルクが、駆動装置が駆動する弓状要素の反動と等しくかつ対向するように車両を設計することである。これは以下に示される。
ここでIは慣性モーメント、下付きLは弓状要素システム、及び下付きRはローターシステムを表わす。この方程式は下記のように書き直すことができる。
歯数比N
gは以下のように角加速度の比率の代わりとしてもよい。
このN
gのための方程式を、歯数比と慣性の適当な構成により満足させることによって、反応性トルクは平衡し、車両は円滑に進む。
各弓状要素の半径方向の最外側の範囲は、この範囲の距離に等しい長さの半径を有する円の主曲率半径に大体一致する、一定の主曲率半径を有するのが好ましい。各弓状要素は、車両の前進運動の際最初に地面に到達する前縁部、及び車両の前進運動の際最後に地面を離れる後縁部を有する。弓状要素の前縁部、例えば221aはアイテム223と同一であるとみられ、弓状要素の後縁部、221aはアイテム224と同一であるとみられる。前進運動の過程において、弓状要素の地面に対する連続的かつ円滑な接触を可能にするためには、各弓状要素の前縁部の先端近くの曲率半径は、かかる要素の主曲率半径より幾分小さくするのが好ましい。同様に、後退運動の過程において、弓状要素の地面に対する連続的かつ円滑な接触を可能にするためには、各弓状要素の後縁部の先端近くの曲率半径は、かかる要素の主曲率半径より幾分小さくするのが好ましい。代替的、又は追加的には、前縁部及び後縁部の先端近くの曲率半径は、群の一つの弓状部材から次への負荷の伝達を容易にする他の方法で調節してもよい。これは例えば或る実施例中で先端の曲率半径を主曲率半径より大きくすることは望ましい。他の実施例として、先端が偏向するよう取り付けてもよいし、又偏向配置に結合される。この結果作動時に局部の曲率半径を変更してもよい。
必要ならばこの実施例の車両を停止位置に置いてもよい。そのためには支柱221c及び222cをはさみで切って、一つの弓状要素の前縁部が地面に接触し、他の弓状要素の後縁部が地面に接触し、接触点が相互に離隔するような角度(ラジアンへの接近)とすることが必要である。このような位置は車両の全体の高さを減少させ、車両のコンパクトな保管又は輸送を容易にする。
第17図の集合体推進の実施例に概ね相当する第23図では、第22図の車両及び垂直に立っているシート151を有するプラットホーム154が示されている。
第24図では、第22図の実施例が示され階段を昇っている。連続する弓状要素が連続する階段を踏むように支柱が運動する。
集合体による実施の詳細
第25図及び第26図は第18図乃至第20図の実施例のための3車輪集合体の設計の詳細を示す。各集合体251a及び251bは歯車列を介して集合体を駆動する駆動モーター252a及び252bをそれぞれ有している。各集合体の車輪は、集合体251aに対してはモーター253aにより、集合対251bに対してはモーター253bによりそれぞれ独立して動力が供給される。与えられた集合体251a又は251bの中の車輪は半径方向に配設した歯車列を介して集合体のモーター253a又は253bにより同期して駆動される。第26図では集合体251aの側面図が、モーター253aの軸により回転する動力歯車264で順次駆動されるそれぞれの遊び歯車263a、263b、及び263cで駆動される協同する駆動歯車262a、262b、及び262cを有する車輪261a、261b、及び261cを示している。
第27図は第18図乃至20図の実施例による車両で使用される制御組立体の中の連絡を示すブロックダイヤグラムである。ここに記載した他のどの実施例にも同様な組立体のセットが使用される。車両は積重ね電池271から電力が供給される。母線279は色々な組立体中に通信(ここでは直列に実行される)を提供し、電力を提供する。車両の全体システム制御は中央マイクロ制御器盤272により行なわれる。システム制御の基礎を確立する中央マイクロ制御器盤272への、操縦桿及び傾斜計のような出所源から誘導された入力は、第29図に関連して以下に説明される駆動インターフェイス組立体273により提供される。第18図の椅子182の傾斜、高さ、及び横揺れは、それぞれ傾斜モーター制御組立体274、高さモーター制御組立体275、及び横揺れモーター制御組立体276により調節される。右及び左の集合体の回転は、それぞれ右集合体制御組立体278a及び左集合体制御組立体278bにより制御される。右集合体及び左集合体における車輪の回転は、それぞれ右車輪制御組立体277a及び左車輪制御組立体277bにより制御される。
第27図に示され、椅子位置、車輪、及び集合体のために使用された、制御組立体の各々の一般的構造は、第28図に示される。モーター281は電力変換器282から3相電力を受け取る。ホール効果検出器2812からの出力は情報信号を電力変換器282に送り、モーターへの電力の相を制御する。モーターの軸回転、又はモーターにより動力を供給された機械的システムの位置に関する情報信号は、電位差計284、回転速度計2811、又は増分エンコーダ2813の一つ又はそれ以上によって与えられる(代替的に、ホール効果検出器2812それ自体を利用できる)。これらの信号は周辺マイクロ制御器盤283に送られる。さらに、電力変換器282及びモーター281に関連する温度出力は入力信号を周辺マイクロ制御器盤283に送る。周辺マイクロ制御器盤283は母線279を介して中央マイクロ制御器盤272と順次に通信関係になる。
第29図は第27図の駆動インターフェイス組立体273の詳細を示すブロックダイヤグラムである。周辺マイクロコンピュータ盤291は傾斜計293からと同様に操縦桿292からの入力を受け取る。この傾斜計は勾配と勾配率に関する情報信号を提供する(本文及び請求の範囲において使用した用語「傾斜計」は、出力を達成するのに使用される構成に関係なく、勾配又は勾配率を示す出力を提供する如何なる装置をも意味する。もし勾配又は勾配割合変数の一つだけが出力として提供されるならば、他の変数は時間に関する適当な微分又は積分により得ることができる)。車両による回転への制御された傾斜を可能(これにより回転う中の安定性を高める)にするため、第2傾斜計を使用して回転と回転比、代替的にはシステム重量及び遠心力の合力、に関する情報を提供することも可能である。他の入力294も又周辺マイクロコンピュータ盤291への入力として与えられるのが望ましい。このような他の入力は、椅子の調整のためと動作のモードを決定するため、開閉器(ノブ及びボタン)によりゲートで制御した信号を含むことができる。周辺マイクロコンピュータ盤291は又、電池電圧、電池電流、及び電池温度に関して積重ね電池271からの信号を受け取るための入力を有する。周辺マイクロコンピュータ盤291は母線279を介して中央マイクロ制御器盤272と通信関係にある。
第30図は第27図の中央マイクロ制御器盤272が後に続く一つの制御サイクルの過程における論理フローダイヤグラムである。診断目的のため、サイクルはステップ301で開始し、専門技術者からの入力の存在をチェックする。次のステップ、302、は操縦桿、開閉器、ノブ、及びボタンからの操縦者の入力を読みこむ。次に、ステップ303において車両の状態変数が入力として読みこまれる。次にステップ3011において、専門技術者の表示が更新され(診断目的の場合)、ついでステップ304においてプログラム状態がステップ301から303を通して得られた入力変数に基づいて変成される。プログラムから出るかどうか(ステップ3041)の試験が行なわれ、もし回答が、はい、なら全てのモーター増幅器は無能(ステップ3042)とされ、プログラムは終了する。さもなければ適当な変数(温度、電池電圧等)について安全チェックが行なわれ(ステップ3043において)、もし結果が否定的である場合、車輪及び集合体のモーター増幅器は無能とされ(ステップ3044)、プログラム状態はついで変成される(ステップ3055)。しかし数レベルのチェックが適当に使用され、臨界警報コンデショナーが確立された後だけモーター増幅器が無能とされる。もしステップ3043における安全チェックが肯定的であるか、或いはステップ3055でプログラム状態が変成された後であれば、集合体トルク信号(ステップ305)、車輪トルク信号(ステップ306)、傾斜速度信号(ステップ307)、横揺れ速度信号(ステップ308)、及び高さ速度信号(309)のため計算が逐次行なわれる。この計算の結果はついでステップ3010においてそれぞれの車両への出力として与えられる。ステップ3091においてプログラムは制御サイクルを再び開始する次のタイミング信号を待つ。この実施例における制御サイクルの周波数は200から400Hzの範囲であり、これは十分な制御反応性と安定性を与える。
第31図は第11図乃至第26図の集合体設計、及び仮定の階段の寸法を決める変数を説明している。この階段に関しては昇降のための集合体設計を使用することができる。以下の表に記載された変数は第31図に示されたこれら寸法である。「公称大きさ」はこれら内容の典型的な寸法であり、これによって第18図乃至第20図の実施例が実行され機能する。
以下の規定はこれら変数及び以下の説明に関連する以下の表2の変数を使用するのに用いられる。
1.世界座標で規定した変数は大文字の下付き文字を使用して命名した。世界座標は地球(慣性)に固定された座標である。
2.相対的座標で規定した変数は二重下付き文字を使用して命名した。下付き文字は変数の終点である。下付き文字の順序は変数のしるしを示す。例えばθ
PCはポスト(post)と集合体脚との間の角度であり、ここでは集合体ポストからの時計方向回転が正(項目4参照)である。集合体の「脚」は集合体の中心から現在平衡がとれている車輪の中心までのラインセグメントである。集合体の「ポスト」はシステムの質量の中心から集合体の中心までのラインセグメントである。
3.下方ケースの下付き文字は他の属性、すなわち右/左、等を示すのに使用される。すなわち、r=右、l=左、ref=基準、f=終了、s=開始である。4.全角度は時計方向において正であり、ここでは正の移動は正のx方向である。
5.変数上の点は時間における積分、例えば
第32図は車両と世界に関して集合体の方向決定に適切な角度と運動変数を説明している。これら変数は以下の表に記載されるように定義される。
第33図乃至第35図は、移動中及び固定位置の両方において一対の車輪上で平衡に達したとき、第11図乃至21図の実施例による車両の安定性を得るために、第27図の制御組立体に関連して使用するのに適当な、制御の段階的手法を示すブロックダイヤグラムである。
第33図は右及び左車輪(第25図の参照番号(以下同じ)252a及び252bに相当する)のモーターのための制御の態様を示す。この態様は、基準座標系のX及びY軸に沿う操縦桿位置により決められる方向性入力3300に加えて、θ、
(右車輪の線速度)の入力を有している。利得K1、K2、K3、及びK4をそれぞれ受ける入力θ、
(以下に説明する)は加算器3319への入力となり、この加算器は第6図に関連して上述した一般的方法で、車輪に対する基本的な平衡トルクコマンドを発生する。加算器3319の出力は加算器3320の中の偏揺れPIDループ3316(以下に説明する)の出力と組合わせられ、ついで分割器3322で分割され飽和リミッタ3324で制限され、左車輪トルクコマンドを発生する。同様に加算器3319の出力は加算器3321の中のPIDループ3316の出力と組合わせられ、ついで分割器3323で分割され飽和リミッタ3325で制限され、右車輪トルクコマンドを発生する。
第33図においてX軸に沿う方向性入力は、X軸に沿う基準座標系を操縦桿の移動に比例する速度で、世界座標系(移動した表面を表わす)に関して動かす。Y軸に沿う方向性入力は、操縦桿の移動に比例する角速度で基準座標系をそのZ軸の周りで回転させる。ここでは正のX方向における操縦桿の運動は前進運動を意味し、負のXの操縦桿の運動は後進運動を意味すると解される。同様に、正のY方向、すなわち反時計方向、における操縦桿の運動は左方回転を意味し、負のYの操縦桿の運動は右方回転を意味すると解される。したがって方向性入力XとYはそれぞれデッドバンドブロック3301及び3302を介してデッドバンドが与えられ、操縦桿の中立位置を広くし、ついで利得K11及びK10を受け、ついで基準座標系の角度及び線加速度を制限するリミッタ3303及び3304によりそれぞれ割合限定される。加算器3305により達成したこれら出力の合計は基準速度
になり、加算器3306により達成したこれらの出力の差は基準速度
になる。これらの基準速度を、加算器3308及び3307において、左及び右車輪(これら量のための第35図にに関連する以下の説明を参照すること)のために補償した線速度信号
から引いて基準座標系の中の左及び右車輪のための速度エラー信号
を得る。ついで加算器3317及び分割器3318により決定したこれら信号の平均値は、線速度エラー信号
を発生する。変位エラー信号xは積分器3310及び3309により
を積分することにより誘導され、飽和リミッタ3312及び3311における結果を制限し、ついでそれらの出力を加算器3313及び分割器3315によって平均化する。加算器3314により決定したこれらら変位間の差は偏向エラー信号Ψを発生する。
偏向エラー信号Ψは標準比例−プラス−積分−プラス−積分係数(PID)制御ループ3316を介して実行される。制御ループの出力加算器3319の基本的平衡トルクコマンドの出力と組み合わせられ、個々の車輪トルクコマンドを発生する。このコマンドは車輪に前−後安定性を与え、かつ車両自体を方向性入力3300により指示を受けた基準座標系の軸と整合させ、さらに基準座標系の起点に追従させる。
第34図は集合体の制御態様の概略図である。集合体の方向は方向性入力3400により制御することができる。もし所望なら、車輪に対する方向性入力3300を与えるの使用した操縦桿を、分離モードで機能的な分離スイッチに取り替え、集合体の方向を特定する方向性入力3400を設けてもよい。第33図の加算器3306及び3305を通る信号路に概ね類似する方法で、ここではX方向における正の変位から得られる操縦桿の信号が加えられ、Y方向における正の変位から得られる信号は加算器3402及び3401で相互から引かれ、左及び右集合体の回転速度信号を与える。これは積分器3404及び3403それぞれにおける積分の後、左及び右集合体加算器3406及び3405それぞれに所望の集合体角度方向情報を与える。
方向性入力3400のない、望ましい集合体の方向、通常θPC ref=πはラジアン、は実際の集合体方向θPCl及びθPCr(左及び右集合体エンコーダから積分器3412及び3411をそれぞれ介して送られる集合体角速度信号を通過させることで誘導される)を示す信号と共に、第34図のライン3413を介して加算器3406及び3405の各々へ与えられる。したがって加算器3406及び3405の出力はそれぞれ左及び右集合体のための集合体位置エラー信号である。これらの信号はPID制御ループ3408及び3407と飽和リミッタ3410及び3409に送られ左及び右集合体のモーターを駆動する。
第35図は第33図に関する概略図で、車輪の位置、勾配、及び勾配率を示す状態変数が決定され、集合体の回転の効果を補正する態様を示している。表2で述べたように勾配角度θは車両の質量の中心と現在平衡がとれている車両の中心間の実際の角度である。傾斜計で測定したこの角度θIは垂直線に対するポストの角度である。したがって実際の勾配角度θは加算器3518により補正信号θIcorrが差し引かれるθIに基づいている。この補正信号θIcorrは加算器3516中でθPC + π − θcとして計算される。信号θPCは左及び右集合体エンコーダ出力の積分器3509及び3510における積分から得られる左及び右ポスト−から−集合体への角度θPClとθPCrの平均として決定される。この平均は加算器3511及び分割器3512を使用して得られる。車両が平衡に達したと仮定すると、θCは式
を使用してθ
Pcから誘導することができる。この計算はセクション3515に達成することができる。このθ
Icorrは微分器3517により微分されて、加算器3519により供給される勾配率信号
同様に、左及び右の車輪の左及び右の線速度
は微分器3507及び3508による、左及び右の誘導された位置信号
の微分から誘導される。ついで位置信号は左及び右車輪の決定された絶対角度位置θ
Wl及びθ
Wrに掛け算器3595及び3504におけるrの利得を掛けることにより誘導される。角度位置θ
Wl及びθ
Wrは最初に積分器3501及び3502で左及び右車輪エンコーダ信号
を統合してθ
PWl及びθ
PWrを得ることにより決定される。これらの信号はついで加算器3503及び3504に送られ、ここでは加算器3513及び分割器3514から誘導されたθ
C及び量1/2(θ
PC−π)を加えることにより集合体の回転の効果のために補正される。
第36図及び第37図は第27図の制御組立体と協同して使用するのに適当な制御の段階的手法を示すブロックダイヤグラムである。これは第11図乃至21図の実施例による車両の、登りを可能にする第1実施例による階段登りと障害物横断を可能にする。この実施例では集合体は傾斜モードに置かれ、ここでは集合体は第33図で示したように車輪の回転により通常の平衡を保つため使用された方法と同じ一般的方法で平衡を維持するよう回転する。同じ基本方程式が使用される。第36図では加算器3601は左及び右集合体を駆動する訂正信号を発生する。これらは利得K1及びK2を通してそれぞれ勾配信号と勾配率信号θ及び
を出す傾斜計3602から誘導され、他のものの間にある。左及び右集合体からのエンコーダ出力は入力
を提供し、これらはそれぞれ積分器3603及び3604により積分され、それぞれリミッター3605及び3606により飽和制限されてθ
PCl及びθ
PCrを発生する。これらの値は、加算器3608及び3610をとおして平均化されるとき、角変位θ
PCになる。この角変位は利得K3を介して加算器3601への追加入力として与えられる。加算器3617及び分割器3618を介して、
は、利得K4を介するこの時間の、加算器3601への追加入力である。加算器3601の出力は加算器3611及び3612、分割器3613及び3614、及び飽和リミッタ3615及び3616をそれぞれ介する左及び右修合体モーターの一様な駆動を与える。しかしPID制御ループ3609を通るツイスト信号は加算器3611及び3612を介して左及び右集合体モーターに作動駆動を与える。このツイスト信号は加算器3607を使用して信号θ
PClとθ
PCrを相互から差し引くことにより誘導される。
集合体が傾斜モードにあるとき車輪はスレーブモードにあり、ここでは車輪は集合体の回転の機能として駆動される。これは第37図に示され、ここでは分割器3610からの出力として第36図から誘導されたθPCに利得3701が一定な登り比を掛けてθPWref信号を発生させ、これは加算器3703及び3702に送られてPID制御ループ3705及び3704並びに飽和リミッタ3707及び3706をそれぞれ介して左及び右車輪モーターを制御する。第37図と第34図との比較は、集合体が第34図の垂直の(πラジアン)入力3413へ直接反応する方法と同じ方法で、車輪が第37図の集合体に直接反応することを示す。第37図では加算器3703及び3702は二つの他の各入力を有する。一つの入力は操縦桿からの方向性入力3714の結果を追うことである。これは第34図における処理方法に類似する方法で、加算器3709及び3708並びに積分器3711及び3710を介して、入力加算器3703及び3702としてそれぞれ与えられる左及び右制御信号を発生する。他の入力は車輪の回転の効果を追うことであり、積分器3713及び3712を介して左及び右車輪エンコーダ出力を実行することにより得られたθPWl及びθPWrも又加算器37039及び3702により差し引かれる。
傾斜モードを使用すると、障害物を乗り越える力強く安定な方法が提供される。登り比は第37図の利得3701のために選択された乗数により決定される。一度これが決定されると(適当な空間センサを使用する障害物測定の後に手動又は自動的に決定され、又は全体的に若しくは部分的にそれ自体経験的に状態変数に基づいて決定されるアイテム)、人間又は車両を傾斜させることにより所望の方向に車両が傾斜して障害物を乗り越えることができる。集合体は回転すると同時に障害物の上を車輪と共に回転する平衡を維持する。車両が障害物に遭遇しない場合、車両は第33図及び第34図の平衡モードで作動されるのが好ましく、集合体はπラジアンに直接反応し、車輪は平衡を維持して所望の移動を行なう。
車輪平衡モードと集合体傾斜モードの間の移行は注意を要する事項である。第38図は第33図乃至第37図の実施例を使用する、遊び、傾斜、及び平衡のモードの間の車両の状態のブロックダイヤグラムである。キー時間においては、(θPC−π)モードが(2π/3)=0であることが決定されるまでは状態変化はないであろう。これは点であり、ここでは質量中心は地面接触対の概ね上にあり、かかる状態は以下の説明及び請求の範囲において「ゼロ交差」と呼ばれる。ゼロ交差において集合体は、例えば第34図の方法でθPC=π位置に直接反応することができる位置にいる。ブロック3801における開始の後、車両の最初の状態は「遊びへ」3802であり、ここから車両は「遊び」3803に入り、実行/遊びスイッチが実行位置に移動するまでそこに留まる。一度その位置になると、車両は「遊び状態から」3804に入る。どちらの集合体にも絶対的な基準は無いので、車両は絶対的な基準が確立された、「遊び状態から」3804における平坦で一様な地面上にあると仮定する。増分エンコーダにより決定される集合体の全ての運動はこの基準に関係している。この点において、又は如何なる後の点においても、若し実行/遊びスイッチが遊び位置に戻ると、状態は経路3812を通って「遊びへ」3802へに戻る。さもなければ状態は「待て」3805になり、θ=0であることが決定されるまでそこに留まるが、状態は「傾斜へ」3806になる。「傾斜へ」はついで「傾斜」3807へ動き、若しスイッチが運動しなければそこに留まる。若し傾斜/平衡スイッチが平衡位置に置かれ、さらに若し集合体がゼロ交差を経験すると、状態は「傾斜から」3808へ、「平衡へ」3809へ、そしてし最後に「平衡」3810へ連続的に動く。若し傾斜/平衡スイッチが「傾斜」位置に動くと、状態は「平衡から」3811に動き、そして「傾斜へ」に戻る。
「待て」状態は車輪と集合体のモーターが円滑に起動することを可能にする。これがないと、制御ループは直ちに傾斜計からの潜在的な強いエラー信号を補正しようと試みるであろう。これはゼロ交差において出発することにより避けることができる。を監視しこれがゼロ交差における一定の臨界値以下になるよう要求する付加的な技術により円滑で静かな開始を可能にする。
第39A−B図、第40A−B図、第41A−B図、及び第42A−C図は第11図乃至21図の実施例による車両が第2実施例による階段昇りを達成するための制御態様の経過を説明している。この実施例には四つの基本的な動作過程が含まれている。すなわち出発、角度起点の再設定、重量移転、及び昇りである。他の実施例の中でもこの実施例は第7図の制御態様で実行するのが都合がよい。これら四つの過程を達成するための制御の段階的手法を示すブロックダイヤグラムが第43図(出発)、第44図(重量移転)、及び第45図(昇り)に示されている。(角度起点の再設定過程には運動が無く、この過程の制御のための段階的手法は示されていない)第39A図及び39B図は出発過程における集合体の方向を説明している。こ過程では集合体は二つの車輪(第39A図)上の通常の平衡位置から第1対の車輪(各集合体からの一つ)が第1レベル上にあり各集合体からの第2対の車輪が次の階段上にある位置(第39B図に示されている)まで動く。第39A図から第42C図の図面に関連する説明で用いられる角度値は、前掲した第1表に与えられた公称の階段及び集合体車輪の大きさである。第43図に示される出発過程の段階的手法では、時間ニ関数として入力θC refが集合体ブロック4301に与えられる。この関数は出発の値から最終値まで円滑に変化する。代替的には入力θPC refは類似する方法で与えることができる。ここでは入力θC refはプロセッサー4302を通して実行され量
を計算し、集合体ブロック4301へのθ
PC ref入力としてこの量を与える加算器4303への入力として与えられる。集合体ブロック4301は、θ
PC refがπにおいてもはや固定されないが、しかし上述したように変化することを除いては第34図におけると同様な構成である。平衡ブロック4304第33図におけると同様な構成であるが、操縦桿利得K10及びK11は0に設定される。加算器4305は第35図に関連して説明した方法で傾斜計の勾配の読みの補正をし、加算器4305の出力は微分器4306で微分されて第35図に関連して説明した方法で、
は車輪平衡の段階的手法4304に与えられる。平衡ブロックへの入力
も又第35図に関連して説明した方法と同じように誘導される。
第40A図及び第40B図は角度起点の再設定過程における集合体の方向付けを説明している。このステップにおいて、システムは「脚」(第1表の下に説明した第2項の規定において引用)の同一性を、状態変数を測定するために、下方車輪に関連する状態変数から次の階段上の車輪に関連する状態変数まで変化させる。その結果、集合体には三つの車輪があり、集合体の中心の周りの全角度距離は2πラジアンであるから、このステップは2π/3ラジアンをθPCへ加え、2π/3ラジアンをθCから差し引く。このステップに関係する運動は無い。
第41A図及び第41B図は重量移転の過程における集合体の方向付けを説明している。この過程では車両と人間の重量は下方階段上の車輪から上方階段上の車輪へ移される。ここでは階段と集合体の既知の構造に基づく予めプログラムした動作として実行される。この過程において値θCは変化しない。値θPCは変化して車両の質量中心の新しい位置を反映しなければならない。この結果を達成するために時間の関数としての入力θPC refを、第34図に示されたライン3413上で集合体ブロックに、及び第44図の車輪ブロックに与える。この過程はプログラムされているので、第45図の登りブロックと第33図の車輪平衡ブロックは活動状態ではない。第44図において入力θPC refは分割器441を介して実行され、ついで制御信号をPID制御ループ445及び444並びに飽和リミット447及び446を介して左及び右モーター車輪にそれぞれ与える、加算器443及び442に与えられる。加算器443及び442は又、角速度情報を実行して誘導した値であるθPWlとθPWrを、積分器448及び449を介して左及び右車輪エンコダーから差し引く。
第42A図、第42B図、及び第42C図は登り過程における集合体の方向付けを説明している。この過程では車両の車輪は次の階段のけこみ板への前進方向に回転すると共に、集合体を回転させて次の階段の踏み板の上で車輪が平衡するよう位置させる。集合体の回転θCは階段の踏み板の上の車輪が通過した距離に比例する。この過程では基準位置入力は無い。人間は手すりに寄りかかったり引っ張ったりして車両を前方に運動させようとする。集合体は、第45図の経路45を通ってθWからθCへ、フイードバックする結果として自動的に回転する。登り過程の最初において、xを0と設定する。この過程における制御の段階的手法は、この角度がその最後の値に到達するときのθC及びθPCのいづれをも監視し、重量移転の過程に移動することを要求する。最後の階段においては、プロセスは第42C図に示される最終角度における停止の代わりにθC=0又はθPC=πで停止しなければならない。ついで車両は通常の平衡モードに復帰しなければならない。平衡ブロック453及び集合体ブロック452はそれぞれ第33図及び第34図に関して上述したとおりである。平衡ブロック453への入力θ、
の誘導は第43図及び第35図に関連して上述したとおりである。実際のところ、第45図の構成は第43図の構成に実質的に類似しており、θ
C refがもはや独立して変化しないという相違点はあるが、代わりに関数θ
wがつくられる。これは加算器454及び分割器455を介して、θ
Wl及びθ
Wrの平均をとることで誘導される。したがってライン451上のこのθ
W値はプロセッサー456を介して実行され量
を決定する。これは階段の構造に対する車輪の回転に関する正しい量の集合体の回転となり、最初の値θ
C、すなわちθ
C stと共に加算器457への入力として与えられる。加算器457の出力はθ
C refである。
第33図乃至第45図はアナログ制御の段階的手法を示すが、それらはマイクロプロセッサープログラムドデジタル制御を用いる多くの実施例において実行された。しかし直接アナログ制御を使用すると共に混成のアナログ制御とデジタル制御を使用することは全く本発明の範囲内のものである。アナログ制御は例えば第21図の車両において集合体の代わりに一対の横方向に配設した車輪を使用して実行に成功した。
速度制限
本発明による車両のこれから述べる実施例、既述した実施例のどれでも平衡と制御を維持するために速度制限を設けてもよい。さもなければこの平衡と制御は、もし現在そこまで駆動される能力がある車輪(又は弓状要素)が最大速度に到達することが許されるとすると、失われるであろう。
速度制限は車両を現在の移動方向とは逆の方向に傾斜させることにより達成される。これは車両の速度を低下させる。この実施例では傾斜計の勾配値に勾配修正を加えることにより車両が後ろに傾斜する。速度制限は車両の車両速度が車両の決定速度限界である限界値を超えるといつでも生じる。勾配修正は車両速度、決定した速度限界、積分したオーバータイムの間の差を観察することにより決定される。勾配修正経過は車両が所望の退去速度(速度限界より僅かに下回る速度)に速度を落とすまで維持され、ついで勾配角度はその最初の値まで円滑に復帰する。車両の速度制限を決定する一つの方法は電池電圧を監視することである。電池電圧はついで現在維持することができる最大速度を見積もるため使用される。
他の方法は電池とモーターの電圧を測定することであり、この二つの差を監視することである。この差は車両にとって現在利用できる速度限界の量の見積もりを提供する。
階段昇りにおけるセンサーの使用
第37図に関連して上述したように、階段昇りと障害物乗り越えは傾斜モードを用いることで達成することができ、昇り比率は手動的又は自動的に選択することができる。ここでは如何にセンサーを使用して昇り比率を自動的に選択するかを説明する。傾斜モードでは集合体は「主人」であり車輪は「奴隷」である。昇り比率は集合体回転と車輪回転の間の比率を表わす。例えば以下のようである。i) ゼロの昇り比率は集合体が運動するとき車輪が全く運動しないことを意味する。
ii) 0.25の昇り比率は車輪が各集合体の回転のための集合体と同じ方向に1/4だけ回転することを意味する。
iii)−0.5の昇り比率は車輪が各集合体の回転のための集合体と反対の方向に1/2だけ回転することを意味する。
第46図と第47図には、人間を支持するための椅子461のような構成を有する車両が示されている。この椅子461は一対の集合体462の形状の地面接触モジュールと組合わせられる。各集合体はモーターで駆動され、複数(ここでは3個)の車輪463を有する。各集合体の車輪セットもモーターで駆動される。集合体462はこの場合は管で結合され、この中に集合体のモーターを収容してもよい。集合体462は椅子461を含む組立体の一部であり、これは大腿及びふくらはぎの結合466及び464並びにモーター被駆動臀部及び膝の関節467及び465をそれぞれ介して集合体の管に取り付けられる。この臀部、膝、及び集合体駆動装置は共同してシート461の高さの変化に影響するよう機能する。この場合集合体駆動装置は集合体の周りでふくらはぎを回転させるので、足首として作動していることに注意すべきである。集合体の姿勢は平衡の段階的手法により維持される。本実施例の車両はセンサーAを備えておりこれは経路468に沿う前方を監視している。そして集合体の管の丁度上で、登るべき階段460の第2ステップの蹴込みを感知するに十分水平地面より上に取り付けられている。(若しカーブ(curb)を登る場合は蹴込みが感知されないことに注意すべきである)。センサーAは階段を登るときだけ使用される。この実施例の車両は経路469に沿う下向き方向を監視し集合体の管に取り付けられたセンサーBをも備えている。これはその面から下の地面までの距離を感知する。これは管の正面に置かれ、登るべきステップの踏み板を感知するのに十分水平地面より上に取り付けられている。センサーA及びB共に距離を感知する超音波を含むいかなる既知の形式のセンサーでもよい。
第47図に示すように、車両が下降するとき、センサーBは高さの変化を検出することにより装置が現在乗っているステップの端部を感知する。センサーCは椅子461の足台に取り付けられている。そして経路471に沿う下向きの方向を監視する。これはその面から下の地面までの距離を感知する。このセンサーは下降の際のみに使用する。これは地面から十分上でかつ集合体の管の十分前方に置かれ、下降を準備する際、上方着地の縁をみる。
この実施例では階段を登るには、車両の運転者は平衡モードにありつつ運転者のインターフェイスを介して「昇れ」コマンドを出す。シートは自動的に全高まで上昇し運転者の足が運転者の正面のステップをクリアーするのを可能にする。車両はついで階段に向かって駆動される。センサーBはステップ(センサーから地面への距離の変化として)を感知すると、車両は傾斜モードに入り、車両をして第1ステップ(下方着地に2車輪、第1ステップに2車輪)へ「落下」するようにする。一度車両が傾斜モードのなると重力の中心(CG)は自動的に前方に移動する。この移動により運転者が前方に傾斜するのを容易にする。運転者は前方に傾斜し勾配エラーをつくる。その結果集合体平衡の段階的手法はトルクを集合体のモーターに与える。このトルクは集合体を回転させ装置が階段を登るようにする。
段階的手法が使用されて昇り比率が動的に調節されると直ちに2ステップの上の4車輪から1ステップの上の2車輪へ移行する。
この時点はセンサーで決定されるのではなく、以下の情報が真実であるかどうかをみることにより決定される。
i) 車両が上昇するよう告げられ、
ii) 転換が完了し、
iii) 最後の昇り比率の調節後、集合体が2π/3回転し、
iv) 集合体の位置が一定の窓内にあり、
V) 集合体のトルクコマンドが一定の限界値以下で、そのコマンドの誘導値が負(ステップ上車輪を下に設定することに相当する)であり、そして
vi) 集合体トルクコマンドが一定の限界値以上でありそのコマンドの誘導値が正(車輪をステップ上に揚げることに相当する)である。
上記の時点において、段階的手法がセンサーAを使用して次のステップまでの距離、それが次のステップを得るため集合体の2π/3回転をとるであろう事実、及び昇り比率を計算する車輪の半径、を決定する。若しセンサーAが範囲外(着地するに容易な蹴込みが無い)、又は一定の限界値を超える距離を読むと、これは最後のステップであり、最後のステップ処理になる。この手続は最後のステップまで各連続的なステップにおいて繰り返される。
最後のステップでCGは中央へ戻され、高さを下げる。これは最後のステップにたよることをより困難にするが、これは車両の着地を安定にする。高い昇り比率をが選択して車両を着地するよう押して平衡モードに移行させる。運転者は再び前方へかたむく。ゼロ交差(第38図に関連して上記で定義した)が生じたことが決定される際、車両は平衡モードに移行する。車両はその車輪を使用して上方着地で平衡になる。
下降は上昇に類似する方法でおこなわれる。運転者は平衡モードをとりながら運転者のインターフェイスを介して「下がれ」コマンドを出す。座席は自動的に最低の高さ(若しそこまで下がっていなければ)まで下がる。これは主に運転者の安全性を高めるためである。センサーCは車輪の正面からは遠いので、平衡モードにあるとき車両はステップの縁にさほど近接する必要はない。車両は傾斜モードに入ったとき縁から遠いので、昇り比率はかなり高い値に調節される。これは一度傾斜モードに入ると車両がステップの縁に到達するのを可能にする。センサーCがステップ(地面までの距離の変化としての)を感知すると、車両は傾斜モードに入る。一度傾斜モードになると重力の中心(CG)は後方に移動する。この移動により運転者が制御下降まで後方に傾くことを容易にする。下降するためには運転者はまず前方に傾いて勾配エラーをつくり車両が階段を降りるようにする。概ね回転の半分で運転者は僅かに後方に傾き勾配エラーをつくって次の階段への下降を遅くしなければならない。昇り比率は車輪が現在乗っているステップの端を感知する下方監視センサーBを使用して調節する。昇り比率は端が検出されないとき(集合体コマンド信号が正、昇り比率が負又は公称のいずれか、センサーBが一定の限界値以下)高い正の値まで調節される。高い正の昇り比率は比較的速い車輪の揺れを起こし、車両は現在のステップの端に直ちに到達する。この高い正の昇り比率を確立する動作は無視されるが、若し車両をして端にかなり接近させることになると以下のようになる。
i) センサーBが端(特定の限界値より大きい距離及び昇り比率が正)を感知するとき昇り比率は公称の正の値に設定される。
ii) 若し車両が端(集合体の信号が正、昇り比率が負又は公称のいずれか、センサーBが一定の限界値以上)に接近しすぎることが決定されると、昇り比率は低い負の値に調節される。負の昇り比率は、集合体が回転すると車輪を後方に回転させ車両を現在のステップ上に安全に保つ。
下降パターンは各ステップ毎に繰り返される。車両が階段の底で着地すると、センサーB及びCはステップ(一定の限界値以下のセンサーの読み)をもはや感知しない。これが起こると、車両は平衡モードに移行する。
モード移行
第46図及び第47図の車両の傾斜モードと平衡モード間の移行は第38図に関連して説明したように管理されるが、本発明による以下の実施例ではモード間の移行はより活性で連続する基礎により管理してもよい。この実施例は関節465及び467を使用してシート461の高さ及び関節467を制御し、特にシート461の傾きを制御する。傾斜モードでは車両は地面(各集合体から地面上に2個)上に4個の車輪を有するので、階段を昇り障害物上を移動する。集合体のモーターの出力は傾斜計のエンコーダ速度により調節される。傾斜/平衡スイッチが押おされると平衡モードへの移行が生じる。
平衡モードへの移行において重力の中心は各集合体の前部地面−接触車輪の上に移動する。これを達成するには傾斜計の読みに加えたオフセットを徐々に増加させて人工的な勾配エラーをつくる。この人工的な勾配エラーは、集合体の平衡の段階的手法によりトルクが集合体のモーターに与えられ、その結果集合体が回転する原因となる。このトルクは座席を前方に投げ、前方車輪の上に人工的な勾配エラーに比例して座席を動かす。(同時に同じオフセットを使用して、第46図の関節467により決定される、座席の傾斜の新しい所望の位置をコマンドし、座席を水平に維持してもよい)
集合体の位置が指示した集合体移行角度(これはCG転換の量に基づく)より大きいとき、集合体の移行速度は集合体が現在運動している速度に設定され、平衡モードに入る。
平衡モードに入る時点で集合体は部分的に回転するだけであり、後部の対車輪は典型的には地面上約2乃至5cmである。平衡モードに入るとき、集合体の各々はその現在の位置から、その「脚」(第1表の下の項目2に規定したように)及び「ポスト」(これも項目2に規定したように)が第46図におけるように垂直となるまで、回転すべきである。これは集合体の初期設定移行速度から徐々に調節した指示した速度で集合体を回転することで達成される。この方法で集合体の回転は集合体がその目標位置に到達するまで円滑に連続し平衡モードにはいる。この集合体の回転中、人工的な勾配エラーは減少し、傾斜計の読みから全く除去されるまで地面接触要素上のCGを維持する。もしこれが行われなかったならば、人工的な勾配エラーが原因で、装置は移行(平衡モードに)するであろう。
集合体の位置は座席の傾きをコマンドするのに使用することができ、これにより座席のポストが後方に動くと、座席を水平に維持する。一度、集合体の脚とポストが垂直になり(集合体は回転を停止する)座席が水平になると、傾斜モードから平衡モードへの移行は終了する。
車両が平衡モードにあるとき、若し傾斜/平衡スイッチを押すと、傾斜モードへの移行に入る。所望の集合体の位置は最初の位置(集合体の脚とポストが垂直)から最終的な位置(前部車輪対が地面上の指示した距離にある)に徐々に変化する。同時に人工的な勾配エラーが導入されて平衡している車輪上にCGを維持する。また、集合体の位置は座席の傾きをコマンドするのに使用することができ、これにより座席のポストが後方に動くと、座席を水平に維持する。
集合体が一度、第2の車輪対が地面上の指示した距離以内にある位置まで回転すると、傾斜モードに入り、これにより装置は4個の車輪上に落下する。一度車両が傾斜モードにあると、集合体のポストを後方に投げ、座席を前方に傾斜させることを維持した人工的な勾配エラーは迅速に、しかし円滑に除去される。その結果、加えた集合体トルクにより集合体のポストは前方にその垂直位置まで回転する。同時に座席を水平に維持するためトルクが座席傾斜に加えられる。
一度集合体のポストが垂直になり座席が水平になると、平衡モードから傾斜モードへに移行は終了する。
調和的装置を使用する構成
本発明の以下の実施例では、第46図と第47図の実施例は調和的装置を使用する第9図乃至第12図の実施例に類似する機構的構成で具現化している。この構成は第48図乃至第52図に示されている。
第48図はこの実施例の車両の全体的な機械的レイアウトを示す前部からみた一部切欠き垂直断面図である。この図面では他のものの間で、座席フレーム481、腰部組立体482、大腿接合部483、膝組立体484、ふくはらぎ接合部486、及び車輪485を見ることができる。
第49図は第48図の一部の拡大図面であり、車両の集合体の位置の機械的詳細を示している。左及び右側の車輪用モーター4913は左及び右側の車輪485をそれぞれ駆動する。いずれの側の車輪も同期して動力が与えられる。車輪は2段減速を介して駆動される。最初の段階ではモーター4913は車輪駆動プーリー496を回してタイミングベルト495を動かす。第2段階では3組のヘリングボーン歯車4911を使用する。これは各車輪用に1組があてられ車輪駆動軸4912を駆動する。車輪駆動プーリーに結合していないモーター4913の各々の側面は軸エンコーダー4914に結合される。この実施例における2個の集合体は3段減速を介して同じモーター4924により駆動される。最初の段階ではモーター4924が集合体駆動プーリー4921を回す。プーリー4921はタイミンングベルトを動かす。タイミングベルトは集合体駆動の態様の詳細を示している第50図において参照番号501で良く表わされている。
タイミングベルト501は第1歯車502と第2歯車4922を含む第2段階のヘリカル歯車を駆動する。第2歯車4922は各集合体における最終組のヘリカル歯車494を駆動する一対の中間軸493を駆動する。集合体駆動プーリー4921に結合していない集合体のモーター4924の側面は軸エンコーダー4925に結合される。集合体駆動プーリー4921を回している軸の遠い側面は、車両が駐車するか平衡モードにあるとき集合体をロックするのに使用する集合体ブレーキ組立体4926に結合される。2個の車輪用モーター4913のハウジングと集合体用モーター4924はボルトで一緒に締められ管を形成し、集合体組立体を結合する構造を与える。ふくらはぎ486はこの構造に堅く固定される。
第51図は集合体の端部を示す。第49図の単タイミングベルト495は集合体の中心にある車輪駆動プーリー496により駆動される。タイミングベルト495は3個の脚の各々上の大きなプーリー511を駆動する。この大きなプーリー511は、車輪485を駆動するピニオン歯車512と出力歯車513を含む歯車組を駆動する。4個のアイドラープーリー514はベルト495を集合体ハウジング515の干渉から保護し、駆動プーリー周りに最大の巻付き角度を与える。
第52図は腰部接合部及び膝接合部の機械的な詳細を示す。両接合部共機械的には同等である。ステーター5252で作動するモーターマグネットローター5211はベアリング522及び5272に取り付けられた軸5213を回転させる。軸5213はベアリング5272の中で回転している、概ね楕円形の形状をしている揺動ゼネレーター5271を回転させる。揺動ゼネレーター5271は、調和駆動カップ5262の歯の調和駆動スプライン5261との係合及び脱係合を行わせる。このプロセスにより大腿483が非常に高い減少比率でふくらはぎ486又は座席フレーム481に関して運動する。電磁石5281及びブレーキパッド5282を有する電磁動力切断ブレーキを揺動ゼネレーター5271に加えて継ぎ手の回転を防止することができる。これによって継ぎ手が作動していないときモーターの回転を止める。ポテンショメーター524が歯車列5241を介して調和駆動カップ5262に歯車係合し絶対位置フイードバックを与え、エンコーダ(図示せず)は位置523においてモーター軸に固定され増分的な位置情報を与える。
複合プロセッサー
第27図の実施例は単一のマイクロプロセッサー盤272の使用を示すが、実施例の幾つかにおいて複数のマイクロプロセッサーを並列にして使用すると利点を有することが判った。以下の実施例では、例えば第48図乃至第52図に関連して検討した機械的設計に応用可能である。4個の異なるマイクロプロセッサーを並列にして作動させ、その各々はメッセージを通信母線へ供給し、マイクロプロセッサー相互の監視を可能にする。又、専門家のインターフェイス(TI)が設けられ、これは専門家が利得を変化させ、プロセッサーを再プログラムすることを可能にする。この4個の異なるマイクロプロセッサーは以下のようにシステムの異なる構成要素を制御する。マイクロプロセッサー1はボタン、膝と腰部、及び操縦桿(x軸とy軸)を制御し、マイクロプロセッサー2は距離測定、存在確認(人間の)、電池監視、及びユーザーインターフェイス(これにより車両のモードを制御する)を制御し、マイクロプロセッサー3は集合体の平衡の段階的手法を制御し、マイクロプロセッサー4は車両の平衡の段階的手法を制御する。距離測定その他の事項の複雑性により、必要に応じて、マイクロプロセッサーを追加してもよい。これはプロセッサーの数を必ずしも制限するものではない。
このように並列にして処理する実施例の利点は安全性(各マイクロプロセッサーは独立して作動し、一つのマイクロプロセッサーが故障しても全機能が損なわれる事はない)、より容易に余分のシステムを開発する能力、必要動力の低減(低能力マイクロプロセッサーの複合によるPC程の高い機能)、及び高速動作(低速マイクロプロセッサーの複合によるPC程の同じ処理速度)である。
別の実施例
本発明はさらに多くの別の実施例により実施可能である。本発明による車両は病気(パーキンソン病又は聴覚障害のような)又は平衡を維持し又は移動を達成する能力の欠陥に起因する損傷を有する人間のための補綴装置として適切に作動することが判った。車両により達成される補綴装置は、車両が車両に対する人間の運動に帰せられる車両の重力の中心における変化を考慮にいれるフィードバックを有するので、人間自身の平衡システムと移動システムの延長として機能する。車両をかかるハンデイキャップを有する人間に提供することはかくして補綴物を適合させるような方法であり、これは補綴物が入手できないとき移動と平衡の制御を可能にする。我々はパーキンソン病にかかっている人が、本発明の実施例による車両を利用して平衡と移動の制御の劇的な回復を得たことをかん観察した。
本発明の車両の各種の実施例を実施するにあたり、運転者からの多くの貢献が色々な条件の移動を達成するために与えられるので、視覚的な方向付けと移動の情報は、一般的にいってもこれら実施例を実施するに際しても極めて重要であることは不思議なことではない。それもかかわらず、視覚的な情報が損なわれる(無知又は無能に起因する)か或いは不十分である状況もあり得る。本発明の以下の実施例では、車両は一つ又は二つ以上の非視覚的出力を備えて方向付け又は方向及び速度を示す。そのような出力は触覚、例えば又は音波であってよく、それら出力は変調器により車両の速度と方向を反映するよう変調される。例えば第53図はジェネレーター531により発生する音波出力の場合であり、これは方向及び速度入力533及び534を有する有す変調器532で変調される。この場合反復した音を用いてもよい。音の反復の割合は速度を示すのに使用され、音の調子は運動の方向と方向付け(例えば高い調子は前方、低い調子は後方、中間の調子は上方)、及び傾斜の程度を示す勾配の変化の程度、すなわち車両の勾配角度(ここでは音の調子は車両の勾配とみなされる効果)を示すに使用してもよい。