以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図86は、この発明の実施形態が適用される追記形情報記憶媒体の一例を示し、図87は、図86の追記形情報記憶媒体の製造工程を示し、図88は、本発明の有機色素材料の吸光度特性を示す。
情報記憶媒体(光ディスク)には、製造時に情報記憶媒体固有の情報をあらかじめ記録しておくことが望ましい。このとき記録される情報記憶媒体固有の情報は、例えばコピープロテクション等で、個々の光ディスク(情報記憶媒体)を識別する必要のあるとき等に使用される。
CD,DVD,Bフォーマット,Hフォーマット等の情報記憶媒体において、このような情報記憶媒体固有の情報は、バーストカッティング領域BCA(Burst Cutting Area)と呼ばれるバーコード状のパターンとして、図86または図90に示すように予め情報記憶媒体の内周部に刻まれる。
バーストカッティング領域BCAを情報記憶媒体に設けるには、情報記憶媒体成形時の型となるスタンパに、BCAのパターンを刻んでおくという方法がある。しかし、情報記憶媒体一枚一枚に別個の固有の情報を記録するためには、製盤後の情報記憶媒体に、例えばレーザ光等により、BCAパターンを刻む必要がある。
通常、再生専用または追記型情報記憶媒体にBCAパターンを記録する場合は、レーザ光等により、アルミ(Al)反射膜を焼ききる方法が用いられる。一方、相変化記録形情報記憶媒体にBCAパターンを記録する場合は、レーザ光で記録膜を相変化させて反射率を変えることでパターンを作製する。
しかし、追記型の情報記憶媒体のうちで、有機色素材料を用いた記憶媒体の場合には、BCA記録装置によりレーザ光を照射してもBCAパターンが刻めない(追記できない)問題がある。
この原因としては、有機色素材料の波長依存性がある。すなわち、有機色素材料は波長依存性が高いため、次世代の短波長(例えば405nm)対応の情報記憶媒体に、現行のDVD規格向けの長波長(例えば650nm)のレーザ光を用いたBCA記録装置を適用してもパターンを記録できないということが挙げられる。
そこで、本実施形態では、波長405nmに対応した有機色素系記録材料に、波長600〜700nmで吸収を持つような有機色素系記録材料を混合し、現在BCA記録装置のレーザ光源として使用されているレーザ光の波長にも記録感度を持つよう調整した色素を用いる。
本実施形態では、情報記憶媒体は、直径120mmで厚さが1.2mm(0.6mmのポリカーボネート成形基板2枚の貼り合せ)であり、かつ有機色素系記録材料を記録層に用いた追記形の情報記憶媒体であるとする。
記録再生光については、波長405nmで開口数NA(Numerical Apperture)が、0.65の対物レンズを用いた光学系を用いることとする。データ記録領域のグルーブ間トラックピッチは、400nm(0.4μm)であり、バーストカッティング領域BCAは、半径22.2〜23.1mmまたは、半径22.3〜23.15mmとする。
なお、図86において、BCAパターン1012は、幅(接線方向)が数十μm、長さ(径方向)が数百μm程度のバーコード状のパターンである。しかし、BCAパターンの実施形態としては、これに限られるわけではない。
情報記憶媒体の具体的な材料例としては、成形基板がポリカーボネート、成形に用いるスタンパがニッケル(Ni)、記録層(有機色素膜)がアゾ系、ジアゾ系、シアニン系、フタロシアニン系、スチリル系、もしくはこれらの混合物からなる有機色素材料、反射膜が銀(Ag)、アルミ(Al)、金(Au)、またはこれらをベースとする金属化合物、接着剤はアクリル系またはエポキシ系の紫外線硬化樹脂、とする。但し、これらについても、この実施形態に限られるわけではない。
追記形情報記憶媒体の作製方法を、図87を参照して以下に説明する。
図87において、原盤として、表面を研磨洗浄したガラスを用いる(1021)。
次に、原盤表面に、フォトレジストを塗布し(1022)、その表面を、レーザ光等で露光することで情報を記録する(1023)。
続いて、露光した原盤を現像し、ピットやグルーブ溝の凹凸を形成する(1024)。
その後、その原盤をメッキ処理することで、スタンパ(材料は一般にニッケル)を作成する(1025)。
スタンパを型として、射出成形により樹脂(材料は一般にポリカーボネート)成形板を作成する(1026)。
このようにして得られた成形基板に、記録層として、有機色素を、例えばスピンコートにより塗布する(1027)。
塗布された色素層(有機色素)の上に反射層を形成した後、予め形成されたもう一枚の成形基板と、接着層を介して貼り合せる(1028)。
貼り合せられた情報記憶媒体に、図示しないBCA記録装置を用いて、バーストカッティング領域BCAに、情報記憶媒体固有のバーコード状BCAパターン1012(図86参照)を記録することで(有機色素を記録層に用いた)追記形情報記憶媒体が得られる。
本発明においては、波長405nmに対応した次世代情報記憶媒体用の色素材料に、波長600〜700nmで吸収を持つような材料を混合し、現在広く利用されている波長が650〜690nmのレーザ光によるBCA記録装置のレーザ光源により、BCA情報を記録可能としている。なお、有機色素の吸収特性としては、図88(c)を用いて後段に示すような特性が好ましい。このような吸光特性を持つ有機色素系記録材料を用いれば、現行規格のDVD向けのBCA記録装置が、そのまま流用できる。この場合、現行規格のDVDと次世代規格のDVDの製造ラインが併設されているような生産システムの場合において、新たに、高価な短波長のBCA記録装置を導入する必要がない、等のメリットも生じる。
図91〜図96に、本実施形態の射出成形法による透明基板の製造工程を説明する。
図91に示すように、ペレットの溶解工程においては、透明基板の材料として透明樹脂のペレットがペレット貯蔵部35の中に保持されている。
ペレット貯蔵部35では、所定温度まで加熱されることで、豆粒状のペレットが溶けて溶解される(流動性のある液状となる)。
射出成形法により透明基板を作成する際に、射出成形機においては、図91に示すように、金型32と金型33の間に隙間部34が作られ、金型33側に、エンボス領域のプリピットやデータ領域のプリグルーブ形状が作られたスタンパ31が取り付けられている。また、スタンパ31は、可動部41に固定されている。なお、金型33は、ペレット貯蔵部35とともに、可動部41の(図面の)左右方向への移動に伴って往復動可能である。一方、金型32は、固定部40側に配置されている。
射出工程においては、図92に示すように、ペレット貯蔵部35内で溶解されたペレット36が、金型32と金型33との間の隙間部34に、所定圧力で射出され、所定の冷却時間冷やされて、図93に示すように、透明基板2−2として固体化される。
次に、図93に示す離型工程において、可動部41内の金型33が(図において)右側に移動されることで、透明基板2−2が露出する。
続いて、図94に示す透明基板の中心穴切断工程において、透明基板2−2の中心部が切断され。中央に中心穴42が形成される。
次に、図95の透明基板の離型工程において、透明基板の離型部材50により、固定部40から透明基板2−2が剥離される。透明基板の剥離部材50は、例えば、アーム51と吸盤52〜55(図においては中心軸に沿った52と53の2つが示されているが合計で4個)と、エアーガイド56と、吸引機57を含む。エアーガイド56は、吸盤の内部に存在し、ここから空気を抜くことで、吸盤を透明基板2−2に吸引している。
透明基板2−2を固定部40から剥離する場合は、吸盤52〜55が透明基盤2−2に密着され、吸引機57によりエアー58が抜かれることで、アーム51内のエアーガイド56が真空状態(または所定の減圧状態)となり、吸盤52〜55が、透明基板2−2と密着する。
吸盤52〜55が透明基板2−2に密着された(すなわち透明基板2−2が吸盤52〜55に吸引された)段階でアーム51が後ろ側(所定の退避位置)に後退されることで、透明基板2−2が固定部40から剥離される。
このように、射出成形法により作成された透明基板上に、後段の工程において、記録層3−2を形成するため荷、例えばスピナによるスピンコーティング法により記録層3−2の原材料である有機色素が塗布される。
なお、図95で、透明基板2−2に吸着した吸盤52〜55から透明基板2−2に作用する吸引力は、比較的大きく、その(吸盤の)跡が、図96に示すように、吸盤跡61〜64として残ることが知られている。吸盤跡61〜64は、透明基板2−2を洗浄した後でも残り、吸盤跡61〜64を含めた透明基板2−2の記録面(色素塗布面)全域に記録層(有機色素)3−2を塗布すると、記録層(有機色素)3−2に、塗布ムラが発生することがある。
図96に示した吸盤跡61、〜64により生じる記録層3−2の塗布ムラ65は、上述したBCAパターンの記録(BCA情報のレーザ光による書き込み)を不均一とする問題がある。
このため、吸盤52〜55の形状や吸引位置あるいは吸引圧力等に関して、さまざまな確認試験を実施し、成形機からの確実な透明基板2−2の分離(剥離)が可能で、しかも有機色素を塗布した際に、その塗布ムラが生じにくいか、生じたとしても、BCA情報の記録に影響を与えることのない吸盤の形状を得た。なお、吸盤の形状(吸盤跡)が、要求される記録層(有機色素膜)3−2の最大内径よりも小さければ、吸盤跡が記録層に影響を及ぼさないことはいうまでもない。
なお、吸盤跡の影響により、有機色素膜を塗布して硬化させた記録層3−2において、その反射率が変化することが知られている。このため、再生信号に影響を及ぼす反射率の変動を、ディスク1周あたりの反射率の変動の大きさとして計測したところ、吸盤跡がないディスクにおいては、その変動の大きさは。最大でも10%(0.1)未満であること(10%を超えることがない)が認められる。
これに対して、吸盤跡がある光ディスクでは、必然的に反射率の変動の大きさが10%前後で推移することが確認されている。ここで、反射率の変動が10%を超えるディスクを用意して、特性を確認したところ、15%(0.15)を超える場合には、再生信号に影響が出ることが確認された。従って、反射率の変動は、15%以下に抑えることが好ましい。もちろん、10%を下回るディスクでは、一層、再生信号が安定することは、いうまでもない。
このような背景から、吸盤の形状を最適化して吸盤跡の最外周直径値を小さくするとともに、吸盤跡の最外周直径値よりも外側から記録層3−2を形成することを、本実施形態の特徴とする。
図95に示した吸盤52〜55は、平面方向から見た状態で図96に示した吸盤跡61〜64と同心円状であり、それらを結ぶ外径は、図96に仮想線(円)66(最外周直径値Φa)で示すように透明基板2−2の中心穴42の直径と比較してかなり大きい。
このため、図89に示すように、吸盤の形状を、互いに隣接する2つを一体化するように、例えばバナナ状(円弧状)とした2つの吸盤71、72とすることにより、吸盤跡の最外周直径値Φbの値をΦaの値よりも小さくできる。
吸盤跡の最外周直径値Φbを小さくすることにより、透明基盤2−2への吸着力が低下するが、図89に示したように、吸着面積を(従来タイプの)円形吸盤よりも広げることにより、吸引力の低下を防止している。
図90に、本実施形態における記憶媒体の記録層の形成範囲を説明する。
吸盤跡71,72の外径部を結んだ最外周直径値Φbに対し、記録層形成領域の最内周直径値Φmを大きく設定することにより、記録層形成時の吸盤跡に起因して記録層の塗布ムラが発生することを除去している。
記録層形成領域の最内周直径値Φbは、バーストカッティング領域BCAの最内周直径ΦBCAinよりも小さく(ΦBCAin > Φm)している。換言すると、バーストカッティング領域BCAの最内周直径は、 ΦBCAin = Φm + α で表すことができる。
図90に示すように、バーストカッティング領域BCAの最内周直径値BCAinの値は、Φ44.6+0.0 −0.8mmの範囲となり、マイナスの最大公差を考えると、BCA領域の最内周直径値は、44.6−0.8=43.8mmとなる。
これに対してαは、0.2mm以上取る必要がある。そのため、Φmの値としては43.8−0.2=Φ43.6mmとなる。従って、記録層形成領域の最内周直径値Φmの値は43.6mm以下であることが望ましい。
なお、余裕を持って、図97を用いて以下に説明するように、記録層(色素膜)3−2の厚み変動が生じる領域の幅βを、200μ(0.2mm)とすると、αの値を0.4mmとすることが好ましい。その結果、記録層形成領域の最内周直径値Φmの値は、43.8−0.4=43.4mm以下にする必要がある。
図97に、追記形情報記憶媒体の半径方向位置と記録層の厚み分布の関係を示す。
追記形情報記憶媒体の半径方向位置に対し、記録層形成領域の最内周直径値Φmの近傍では、記録層(色素膜)3−2の厚み変動が生じる領域が発生する。
後述するように、バーストカッティング領域BCAにおけるバーストカッティング信号は、記録層3−2への記録処理により作成する。従って、図97に示したような、記録層(色素膜)3−2の厚み変動が生じると、バーストカッティング領域BCA内の記録特性が変化し、そこからの再生信号に変動が起きる。
そのため、バーストカッティング領域では、記録層3−2の厚みムラがない均一な厚みを要求される。
なお、図97に示す厚み変動が生じる領域の幅をβとすると、前述したαの値として、[α/2 ≧ β]の関係が要求される。一般的に厚み変動が生じる領域の幅は、100μm以下となっている。
図98(a)〜(d)に、他の実施例に利用可能なバーストカッティング領域位置と、記録層形成領域の最内周の関係を示す。
図98(a)は、図90に示した例と同様に、バーストカッティング領域BCAの最内周直径値ΦBCAinよりも記録層形成領域の最内周直径値Φmをαだけ小さくした例である。
これに対し、図98(b)に示すように、例えば、バーストカッティング領域BCAを再生して得られるバーストカッティング信号は、一部でも信号が取れればよいと考えるならば、本実施形態の応用例として記録層形成領域の最内周直径値Φmの値を、バーストカッティング領域BCAの中すなわち、[ΦBCAin < Φm < ΦBCAout]の条件を満たせばよい。
また、バーストカッティング領域BCA内で記録層3−2がγ/2の幅だけ存在すればよく、BCA信号が幅γ/2だけ形成されることを許容した場合には、図98(c)に示すように[BCAout = Φm + γ]を満足すればよい。
図90により既に説明したように、バーストカッティング領域BCAの最内周直径値はΦ44.6+0.0 −0.8mmであるに対し、バーストカッティング領域BCAの最外周直径値は、Φ46.3±0.1である。従って、両者の差分値は、1.7mmとなり、バーストカッティング領域の幅としては、(その1/2で)0.85mmとなる。
このバーストカッティング領域の幅0.85mmの半分以上を、バーストカッティング信号を得ることを許容するとすれば、γ/2の値は、0.85/2となりγは、0.85mm以上あればよいことになる。
他の応用例として、図98(d)に示すように、システムリードイン領域SYLDIの最外周直径ΦSYLDIinの値と、記録層形成領域の最内周直径値Φmとの関係が[ΦSYLDIin ≧ Φm + δ]の関係を満たすことを要求する場合には、システムリードイン領域SYLDI内において、記録層3−2の厚みが、実質的に全域で(至るところで)均一であることが望まれる。従って、δと図97に示したβの関係として、δ/2の値がβより大きいことが必要とされる。
この場合、システムリードイン領域の最内周の直径は46.6mmであり、βとしては100μ以上望ましくは200μ以上であるから、図98(d)の条件を満足するΦmの値としては、Φ46.6 − 0.2 = Φ46.4、望ましくは
Φ46.6 − 0.4 = Φ46.2mm
である。
このようにして規定された領域に、有機色素のより形成されたBCA領域およびBCA領域を有する光ディスクすなわち情報記憶媒体としては、さらに以下に説明するような、さまざまなデータ領域およびデータ構造、ならびに記録特性を有する。なお、データ領域およびデータ構造、ならびに記録特性は、その情報記憶媒体に情報を記録し、あるいは既に記録されている情報を再生し、もしくは情報を消去するための記録再生装置およびその記録再生装置に適用される規格(規格書)のいずれか、または任意の組み合わせに、強く依存する。このような背景から、以下に、光ディスク(情報記憶媒体)のデータ領域およびデータ構造、ならびに記録特性や、記録再生装置に関する詳細な説明を付加する。
有機色素材料を記録材料に用いた追記形情報記憶媒体として、記録/再生用レーザ光源波長780nmを用いたCD−Rディスクと、記録/再生用レーザ光源波長650nmを用いたDVD−Rディスクが既に市販されている。
さらに、高密度化した次世代の追記形情報記憶媒体では、表1に示すように、Hフォーマット(D1)またはBフォーマット(D2)のいずれのフォーマットでも記録または再生用のレーザ光光源波長は405nm近傍(つまり355nmから455nmの範囲)が使われることを想定している。
有機色素材料を用いた追記形情報記憶媒体では、使用光源波長がわずかに変化するだけで記録/再生特性が敏感に変化する。
原理的には記録/再生用レーザ光源波長の二乗に反比例して密度が上げられるので、記録/再生用に用いられるレーザ光源波長は短い方が望ましいが、上記の理由からCD−RディスクやDVD−Rディスクに利用される有機色素材料を405nm用の追記形情報記憶媒体として使うことができない。
しかも、405nmは紫外線波長に近いので、“405nm光で容易に記録可能”な記録材料は紫外線照射により特性変化し易く、長期安定性に欠ける欠点が生じやすい。利用される有機色素材料により特性が大幅に異なるので一般論として断定し辛いが、一例として具体的な波長で上記の特徴を説明する。
650nm光で最適化された有機色素記録材料は使用する光が620nmより短くなると、記録/再生特性が歴然と変化する。
従って、620nmよりも短い光で記録/再生を行う場合には、記録光または再生光の光源波長に最適な有機色素材料の新規開発が必要となる。530nmより短い光で記録が容易な有機色素材料は紫外線照射による特性劣化を起こし易く、長期安定性に欠ける。
本実施形態では、405nm近傍での使用に適した有機記録材料に付いての実施形態について説明を行うが、半導体レーザ光源のメーカによる発光波長の変動も考慮に入れた355〜455nmの範囲で安定に使用可能な有機記録材料に関する実施形態を説明する。すなわち、本実施形態の適応範囲は、620nm以下の光源に適合したもの、望ましくは530nmより短い光(最も狭い範囲の定義では355〜455nmの範囲)に対応している。
また、有機色素材料の光吸収スペクトルによる光記録感度も記録波長の影響を大きく受ける。長期安定性に適した有機色素材料は一般的に波長が短い光に対する吸光度が小さくなる傾向がある。特に、620nmより短い光に対して吸光度が大幅に低下し、530nmより短い光では特に激減する。従って、最も厳しい条件として355〜455nmの範囲のレーザ光で記録する場合には、吸光度が低いために記録感度が悪く、本実施形態に示すような新たな記録原理を採用すると言う新規考案が必要となる。
記録または再生に用いられる集光スポットのサイズは使用される光の波長に比例して小さくなる。従って、集光スポットサイズの観点のみから考えると、波長を上述した値まで短くすると、従来技術である現行DVD−Rディスク(使用波長:650nm)に対して波長分だけトラックピッチやチャネルビット長を短くしたい。
しかし“3−2−A〕本実施形態の技術の適用を必要とする範囲”で後述するように、DVD−Rディスク等従来の追記形情報記憶媒体の記録原理を使用している限りトラックピッチやチャネルビット長を短くできないと言う問題がある。
下記に説明する本実施形態で考案した技術を利用することで初めて上述した波長に比例してトラックピッチやチャネルビット長を短くできる。
<1>本実施形態は、620nm以下の光源に適合した有機記録材料(有機色素材料)を考案したことを技術的特徴とするが、その有機記録材料(有機色素材料)は、記録マーク内で光反射率が増加するという、従来のCD−RディスクやDVD−Rディスクには存在しない独自な特徴(Low to High特性)を有している。従って、本実施形態に示す有機記録材料(有機色素材料)の特徴をより効果的に生かす情報記憶媒体の構造、寸法あるいはフォーマット(情報記録形式)を組み合わせたことを特徴とする。本実施形態での新たな技術的特徴と効果を生み出す組み合わせを表1に示す。すなわち、本実施形態における情報記憶媒体では構成要素としては、
A〕有機色素記録膜、
B〕プリフォーマット(プリグルーブ形状/寸法やプリピット形状/寸法等)、
C〕ウォブル条件(ウォブル変調方法やウォブル変化形状、ウォブル振幅、ウォブル配置方法等)、
D〕フォーマット(情報記憶媒体に記録する/予め記録されたデータの記録形式等)、
等が有り、各構成要素毎の具体的な実施形態が表1の各列に記載された内容となっている。
なお、表1に示した各構成要素毎の具体的な実施形態の組み合わせ方に本実施形態の技術的な特徴と独自な効果が発生している。
以下に実施形態を説明する段階で個々の実施形態の組み合わせ状態を記載するが、特に組み合わせを指定しない構成要素に関しては、
A5)任意の塗布記録膜、
B3)任意グルーブ形状と任意ピット形状、
C4)任意変調方式、
C6)任意振幅量と、
D4)任意の追記方法とフォーマット、
を採用していることを意味する。
<2>相変化記録膜と有機色素記録膜との再生信号の違い説明。
2−1)記録原理/記録膜構造の違いと再生信号生成に関する基本的な考え方の違い。
図1(a)に標準的な相変化記録膜構造(主に書替え形情報記憶媒体に使用されている)を示し、図1(b)に標準的な有機色素記録膜構造(主に追記形情報記憶媒体に使用されている)を示す。
本実施形態の説明文内では図1に示した透明基板2−1、2−2を除いた記録膜構造全体を(光反射層4−1、4−2を含めて)“記録膜”と定義し、記録材料が配置されている記録層単体3−1、3−2とは区別する。相変化を用いた記録材料では一般的に既記録領域(記録マーク内)と未記録領域(記録マーク外)での光学的な特性変化量が小さいので、再生信号の相対的な変化率を強調するためのエンハンス構造を採用している。そのため相変化記録膜構造では図1(a)に示すように透明基板2−1と相変化形記録層3−1との間に下地中間層5を配置し、光反射層4−2と相変化形記録層3−1との間に上側中間層6を配置している。本実施形態では透明基板2−1、2−2の材料として透明プラスチック材料であるポリカーボネートPCあるいはアクリルPMMA(ポリ・メチル・メタクリレート)を採用している。本実施形態で使用されるレーザ光7の中心波長は405nmであり、この波長におけるポリカーボネートPCの屈折率n21、n22は1.62近傍になっている。相変化形記録材料として最も一般的に用いられているGeSbTe(ゲルマニウム・アンチモン・テルル)での405nmにおける標準的な屈折率n31と吸収係数k31は結晶領域ではn31≒1.5、k31≒2.5に対して非晶質領域ではn31≒2.5、k31≒1.8となっている。このように相変化形記録材料における(非晶質領域内での)屈折率は透明基板2−1の屈折率と大きく異なり、相変化記録膜構造では各層の界面でのレーザ光7の反射が起こり易くなっている。上記のように(1)相変化記録膜構造がエンハンス(強調)構造を取っている、(2)各層間の屈折率差が大きい等の理由から相変化記録膜に記録された記録マークからの再生時における光反射量変化(記録マークからの光反射量と未記録領域からの光反射量の差分値)は下地中間層5、記録層3−1、上側中間層6、光反射層4−2のそれぞれの界面で発生する多重反射光の干渉結果として得られる。図1(a)ではレーザ光7が下地中間層5と記録層3−1との間の界面、記録層3−1と上側中間層6との間の界面、上側中間層6と光反射層4−2との間の界面のみで反射しているように見えるが、実際には複数回の多重反射光間の干渉結果で光反射光量変化が得られている。
それに対して有機色素記録膜構造は有機色素記録層3−2と光反射層4−2のみの非常に簡素な積層構造を取っている。この有機色素記録膜を使用した情報記憶媒体(光ディスク)は追記形情報記憶媒体と呼ばれ、1回のみの記録が可能であるが、前記相変化記録膜を用いた書替え形情報記憶媒体のように一度記録した情報の消去処理や書き替え処理はできない。
一般的な有機色素記録材料の405nmでの屈折率はn32≒1.4(各種の有機色素記録材料の405nmでの屈折率範囲としてもn32=1.4〜1.9)、吸収係数k32≒0.2(各種の有機色素記録材料の405nmでの吸収係数範囲としてもk32≒0.1〜0.2)近傍が多い。
有機色素記録材料と透明基板2−2間の屈折率差が小さいので記録層3−2と透明基板2−2との間の界面での光反射量はほとんど生じない。従って、有機色素記録膜からの光学的再生原理(反射光量変化を発生する理由)は上述したような相変化記録膜内での“多重干渉”ではなく、“光反射層4−2で反射して戻って来るレーザ光7に対する光路途中での(干渉も含めた)光量損失”が主な要因となっている。光路途中での光量損失を引き起こす具体的な理由は“レーザ光7内で部分的に引き起こされる位相差による干渉現象”や“記録層3−2内での光吸収現象”がある。
プリグルーブやプリピットのない鏡面上での未記録領域における有機色素記録膜の光反射率は光反射層4−2におけるレーザ光7の光反射率から記録層3−2内を通過する時の光吸収量を差し引いた値で単純に求めることができる。上述したように“多重干渉”の計算により光反射率を求める相変化記録膜とは大きな違いがある。
まず始めに、現行DVD−Rディスクで解釈されている記録原理について説明する。
現行のDVD−Rディスクでは、記録膜にレーザ光7を照射すると、記録層3−2が局所的にレーザ光7のエネルギーを吸収して高熱になる。特定温度を越えると、透明基板2−2が局所的に変形する。透明基板2−2の変形を誘発するメカニズムはDVD−Rディスクの製造メーカにより異なるが、
(1)記録層3−2の気化エネルギーによる局所的に透明基板2−2が塑性変形や、
(2)記録層3−2から熱が透明基板2−2に伝わり、その熱により局所的に透明基板2−2が塑性変形等
が原因と言われている。
透明基板2−2が局所的に塑性変形すると、透明基板2−2を通過して光反射層4−2で反射して再度透明基板2−2を通過して戻って来るレーザ光7、に関する光学的距離が変化する。
局所的に塑性変形した透明基板2−2の部分を通過して戻ってくる記録マーク内からのレーザ光7と、変形してない透明基板2−2の部分を通過して戻ってくる記録マーク周辺部からのレーザ光7との間に位相差が生じるので、両社間の干渉により反射光の光量変化が生じる。
また、特に、上記(1)のメカニズムが生じた場合には、記録層3−2の記録マーク内が気化(蒸発)により空洞化して生じる実質的な屈折率n32の変化、あるいは記録マーク内での有機色素記録材料の熱分解により生じる屈折率n32の変化も上記の位相差発生に寄与する。
現行DVD−Rディスクでは、透明基板2−2が局所的に変形するまで記録層3−2が高温(上記(1)のメカニズムでは記録層3−2の気化温度、(2)のメカニズムでは透明基板2−2を塑性変形させるために必要な記録層3−2内温度)になる必要や、記録層3−2の一部を熱分解または気化(蒸発)させるために高温にする必要が有り、記録マークを形成させるためにはレーザ光7の大きなパワーが必要となる。
記録マークを形成するには第1段階として記録層3−2がレーザ光7のエネルギーを吸収できる必要がある。記録層3−2内の光吸収スペクトルが有機色素記録膜の記録感度に大きく影響を及ぼす。記録層3−2を形成する有機色素記録材料内での光の吸収原理を本実施形態の(A3)を用いて説明する。
図1は、表1に示した情報記憶媒体構成要素の具体的内容として、“(A3)アゾ金属錯体+Cu”の具体的な構造式を示している。
図1に示したアゾ金属錯体の中心金属Mを中心とした円形の周辺領域が、発色領域8となる。この発色領域8をレーザ光7が通過すると、この発色領域8内の局在電子がレーザ光7の電場変化に共鳴(共振)してレーザ光7のエネルギーを吸収する。この局在電子が最も共鳴(共振)してエネルギーを吸収し易い電場変化の周波数に対してレーザ光7の波長に換算した値を最大吸収波長と呼び、λmaxで表す。
図1に示すような発色領域8(共鳴範囲)の長さが長くなる程、最大吸収波長λmaxが長波長側にシフトする。また、図1において中心金属Mの原子を代えることで中心金属M周辺の局在電子の局在範囲(中心金属Mが局在電子をどれだけ中心付近に引き寄せられるか)が変化し、最大吸収波長λmaxの値が変化する。
絶対零度でかつ純度が高く発色領域8が一箇所しかない場合の有機色素記録材料の光吸収スペクトルは最大吸収波長λmax近傍で幅の狭い線スペクトルを描くことが予想されるが、常温で不純物を含みさらに、複数の光吸収領域を含んだ一般的な有機色素記録材料の光吸収スペクトルは最大吸収波長λmaxを中心とした光の波長に対する幅の広い吸光特性を示している。
現行DVD−Rディスクに用いられている有機色素記録材料の光吸収スペクトルの一例を図2に示す。
図2において有機色素記録材料を塗布して形成した有機色素記録膜に対して照射する光の波長を横軸に取り、それぞれの波長の光を有機色素記録膜に照射した時の吸光度を縦軸に取ってある。吸光度とは追記形情報記憶媒体として完成した状態(あるいは透明基板2−2上に記録層3−2が形成されたのみの状態(図1(b)の構造に対して光反射層4−2が形成される前の状態))に対して透明基板2−2側から入射強度Ioのレーザ光を入射させ、反射したレーザ光強度Ir(記録層3−2側から透過したレーザ光の光強度It)を測定して得られる値である。
吸光度Ar(At)は、
Ar≡−log10(Ir/Io) (A−1)
At≡−log10(It/Io) (A−2)
で表される。今後特に断らない限り吸光度としては(A−1)式で表させる反射形の吸光度Arのことを示して説明を行うが、本実施形態においてはそれに限らず、(A−2)式で表させる透過形の吸光度Atとして考えることもできる。
図2に示した実施形態では発色領域8を含む光吸収領域が複数存在しているため、吸光度が極大になる位置が複数存在する。この場合には、吸光度が極大値を取る時の最大吸収波長λmaxが複数存在する。現行DVD−Rディスクにおける記録用レーザ光の波長は650nmになっている。本実施形態において最大吸収波長λmaxが複数存在した場合には、記録用レーザ光の波長に最も波長が近い最大吸収波長λmaxの値が重要になって来る。従って、本実施形態説明文中に限り、記録用レーザ光の波長に最も近い位置にある最大吸収波長λmaxの値を“λmax write”と定義し、他のλmax(λmax 0)と区別する。
2−2)プリピット/プリグルーブ領域内での光反射層形状の違い。
プリピット領域またはプリグルーブ領域10での記録膜の形成形状比較を図3に示す。
図3(a)は相変化記録膜に対する形状を示している。下地中間層5、記録層3−1、上側中間層6、光反射層4−1いずれの層を形成する場合にも真空中でスパッタ蒸着、真空蒸着またはイオンプレーティングのいずれかの方法を用いる。その結果、全ての層で透明基板2−1の凹凸形状を比較的忠実に複製する。例えば、透明基板2−1のプリピット領域またはプリグルーブ領域10での断面形状が矩形または台形になっていた場合には、記録層3−1と光反射層4−1の断面形状も概略矩形または台形となる。
図3(b)は有機色素記録膜を用いた場合の記録膜として従来技術である現行DVD−Rディスクの一般的記録膜断面形状を示す。この場合の記録膜3−2の形成方法としては図3(a)とは異なりスピンコーティング(またはスピナーコーディング)と言う全く異なる方法を用いる。スピンコーティングとは記録層3−2を形成する有機色素記録材料を有機溶剤に溶かして透明基板2−2上に塗布した後、透明基板2−2を高速で回転させて遠心力で塗布剤を透明基板2−2の外周側へ広げ、有機溶剤を気化させることで記録層3−2を形成する方法である。
この方法を用いると、有機溶剤の塗布工程を用いるため、記録層3−2表面(光反射層2−2との界面)が平坦になり易い。その結果、光反射層2−2と記録層3−2との間の界面での断面形状は透明基板2−2の表面(透明基板2−2と記録層3−2との界面)形状とは異なった形状となる。例えば、透明基板2−2の表面(透明基板2−2と記録層3−2との界面)の断面形状が矩形または台形となっているプリグルーブ領域では光反射層2−2と記録層3−2との間の界面での断面形状は概略V字形の溝形状に、プリピット領域では概略円錐の側面形状になる。
さらに、スピンコーティング時に有機溶剤が凹部に溜まり易いため、プリピット領域またはプリグルーブ領域10内での記録層3−2の厚みDg(図3(b)に示すようにプリピット領域またはプリグルーブ領域10の底面から光反射層2−2との界面の最も低くなった位置までの距離)がランド領域12内での厚みDlよりも大幅に厚く(Dg>Dlと)なる。その結果、プリピット領域またはプリグルーブ領域10での透明基板2−2と記録層3−2との界面の凹凸量が透明基板2−2と記録層3−2との界面での凹凸量より大幅に少なくなる。
このように、光反射層2−2と記録層3−2との間の界面での凹凸形状が鈍るとともに凹凸量も大幅に小さくなるため、記録膜形成方法の違いにより透明基板2表面(プリピット領域またはプリグルーブ領域10)の凹凸形状と寸法が同じ場合には、レーザ光を照射した時の有機色素記録膜からの反射光の回折強度が相変化記録膜からの反射光の回折強度より大幅に劣化する。その結果、透明基板2表面(プリピット領域またはプリグルーブ領域10)の凹凸形状と寸法が同じ場合には、従来の有機色素記録膜を用いた場合には相変化記録膜を用いた場合に比べて、
(1)プリピット領域からの光再生信号の変調度が小さく、プリピット領域からの信号再生信頼性が悪い、
(2)プリグルーブ領域からのプッシュプル法による充分大きなトラックずれ検出信号が得辛い、
(3)プリグルーブ領域がウォブリング(蛇行)した場合の充分に大きなウォブル検出信号が得辛い、
と言う特徴がある。
また、DVD−Rディスクではアドレス情報等の特定情報がランド領域12に微少な凹凸(ピット)形状で記録されているため、プリピット領域またはプリグルーブ領域10の幅Wgよりもランド領域12の幅Wlが広く(Wg>Wl)なっている。
<3>本実施形態における有機色素記録膜の特徴説明
3−1)従来の有機色素材料を用いた追記記録膜(DVD−R)での高密度化に対する問題点
2−1)記録原理/記録膜構造の違いと再生信号生成に関する基本的な考え方の違い、で既に説明したように、従来の有機色素材料を用いた追記形情報記憶媒体である現行のDVD−RとCD−Rの一般的な記録原理は“透明基板2−2の局所的な塑性変形”あるいは“記録層3−2内の局所的な熱分解や気化”を伴っている。
従来の有機色素材料を用いた追記形情報記憶媒体における記録マーク9位置での具体的な透明基板2−2の塑性変形状況を、図4に示す。
代表的な塑性変形状況は、2種類存在し、図4(a)に示すように記録マーク9位置でのプリグルーブ領域の底面14の深さ(隣接するランド領域12との間の段差量)が未記録領域でのプリグルーブ領域11の底面の深さと異なる場合(図4(a)に示した例では記録マーク9位置でのプリグルーブ領域の底面14の深さが未記録領域よりも浅くなっている)と、図4(b)に示すように記録マーク9位置でのプリグルーブ領域の底面14が歪み微少に湾曲する(底面14の平坦性が崩れる、すなわち、図4(b)に示した例では記録マーク9位置でのプリグルーブ領域の底面14が下側に向かって微少に湾曲している)場合がある。
いずれの場合でも記録マーク9位置での透明基板2−2の塑性変形範囲が広い領域に及ぶ特徴がある。現行のDVD−Rディスクではトラックピッチが0.74μm、チャネルビット長が0.133μmである。この程度の大きな値の場合には記録マーク9位置での透明基板2−2の塑性変形範囲が広い領域に及んでも、比較的安定な記録処理と再生処理が可能となる。
しかし、トラックピッチを上記の0.74μmより狭くしていくと、記録マーク9位置での透明基板2−2の塑性変形範囲が広い領域に及ぶために隣接トラックへの悪影響が現れ、隣接トラックまで記録マーク9が広がる“クロスライト”や多重書きにより既に存在している隣接トラックの記録マーク9を実質的に消してしまう(再生不能にする)“クロスイレーズ”の現象が発生する。また、トラックに沿った方向(円周方向)においてチャネルビット長を0.133μmより狭くすると、符号間干渉が現れ、再生時のエラーレイトが大幅に増加して再生の信頼性が低下するという問題が発生する。
3−2)本実施形態における有機色素記録膜に共通する基本的特徴説明。
3−2−A〕本実施形態の技術の適用を必要とする範囲。
図4に示すように透明基板2−2の塑性変形あるいは記録層3−2内の局所的な熱分解や気化現象を伴う従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)においてどの程度トラックピッチを詰めると悪影響が現れるか、あるいはどの程度チャネルビット長を詰めると悪影響が現れるか、およびその理由について技術的な検討を行った結果を以下に説明する。従来の記録原理を利用した場合に悪影響が出始める範囲が本実施形態に示す新規の記録原理により効果を発揮する(高密度化に適した)範囲を示している。
(1)記録層3−2の厚みDgの条件
許容チャネルビット長の下限値や許容トラックピッチの下限値を理論的に割り出すために熱解析を行おうとすると、実質的に可能な記録層3−2の厚みDgの範囲が重要となる。図4に示すような透明基板2−2の塑性変形を伴う従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)において、情報再生用集光スポットが記録マーク9内にある場合と、記録層3−2の未記録領域内にある場合の光反射量の変化は“記録マーク9内と未記録領域内での光学的距離の違いによる干渉効果”の要因が最も大きい。また、その光学的距離の違いは主に“透明基板2−2の塑性変形による物理的な記録層3−2の厚みDg(透明基板2−2と記録層3−2の界面から記録層3−2と光反射層4−2の界面までの物理的な距離)の変化”と、“記録マーク9内での記録層3−2の屈折率n32の変化”が起因している。
従って、記録マーク9内と未記録領域内との間で充分な再生信号(光反射量の変化)を得るためには、レーザ光の真空中の波長をλとした時、未記録領域での記録層3−2の厚みDgの値がλ/n32と比較してある程度の大きさを持っている必要がある。そうでないと、記録マーク9内と未記録領域内との間での光学的距離の差(位相差)が現れず、光の干渉効果が薄くなる。
実際には最低でも、
Dg≧λ/8n32 (1)
望ましくは、
Dg≧λ/4n32 (2)
の条件が必要となる。
取りあえず、現在の検討の時点ではλ=405nm近傍を仮定する。405nmにおける有機色素記録材料の屈折率n32の値は一般的に1.3〜2.0の範囲にある。従って、記録層3−2の厚みDgの値としては(1)式にn32=2.0を代入する結果、
Dg≧25nm (3)
が必須の条件となる。
なお、ここでは、透明基板2−2の塑性変形を伴うことのある現行の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)の有機色素記録層を405nmの光に対応させた時の条件について検討した結果を示している。
後述するように、本実施形態では透明基板2−2の塑性変形を起こさず、吸収係数k32の変化を記録原理の主要因として説明するが、記録マーク9からDPD(Differential Phase Detection)法を用いてトラックずれ検出をする必要があるので、実際には記録マーク9内で、屈折率n32の変化を起こしている。従って、(3)式の条件は、透明基板2−2の塑性変形を起こさない本実施形態に於いても満たすべき条件である。
別の観点からも記録層3−2の厚みDgの範囲を指定できる。
図3(a)に示した相変化記録膜の場合には透明基板の屈折率をn21とした時、プッシュプル法を用いて最もトラックずれ検出信号が大きく出る時のプリピット領域とランド領域間の段差量はλ/(8n21)となる。
しかし、図3(b)に示した有機色素記録膜の場合には前述したように、記録層3−2と光反射層4−2の界面での形状が鈍り段差量も小さくなるので、透明基板2−2上でのプリピット領域とランド領域間の段差量は、λ/(8n22)より大きくする必要がある。
透明基板2−2の材質として例えば、ポリカーボネートを用いた場合の405nmでの屈折率はn22≒1.62なので、プリピット領域とランド領域間の段差量は31nmより大きくする必要がある。
スピンコーティング法を用いる場合、プリグルーブ領域内の記録層3−2の厚みDgを透明基板2−2上でのプリピット領域とランド領域間の段差量より大きくしないとランド領域12での記録層3−2の厚みDlがなくなる危険性がある。
したがって、上記の検討結果から、
Dg≧31nm (4)
と言う条件も満足する必要がある。(4)式の条件も透明基板2−2の塑性変形を起こさない本実施形態に於いても満たすべき条件となっている。
(3)式、(4)式、で下限値の条件を示したが、熱解析に用いた記録層3−2の厚みDgとしては(2)式の等号部にn32=1.8を代入して得た値Dg≒60nmを利用した。なお、透明基板2−2の材料として標準的に用いられているポリカーボネートを仮定し、透明基板2−2側の熱変形温度の見積もり値としてポリカーボネートのカラス転移温度である150℃を設定した。
熱解析を用いた検討には405nmにおける有機色素記録膜3−2の吸収係数の値としてk32=0.1〜0.2の値を想定した。さらに、集光用対物レンズのNA値および対物レンズ通過時の入射光強度分布を従来のDVD−Rフォーマットでの前提条件であるNA=0.60およびHフォーマット(表1(D1):NA=0.65)とBフォーマット(表1(D2):NA=0.85)の場合を検討した。
(2)チャネルビット長の下限値条件
記録パワーを変化させた時の記録層3−2に接する透明基板2−2側の熱変形温度に達する領域のトラックに沿った方向での長さ変化を調べ、再生時のウィンドマージンも考慮した許容チャネルビット長さの下限値を検討した。
その結果、チャネルビット長を105nmより小さくするとわずかな記録パワーの変化に応じて透明基板2−2側の熱変形温度に達する領域のトラックに沿った方向での長さ変化が発生して充分なウィンドマージンが取れないと考えられる。熱解析の検討上ではNAの値として0.60、0.65、0.85いずれの場合も類似した傾向を示している。
NA値を変えることで集光スポットサイズは変化するが、熱の広がり範囲が広い(記録層3−2に接する透明基板2−2側の温度分布の勾配が比較的なだらか)のが原因と考えられる。上記熱解析では記録層3−2に接する透明基板2−2側の温度分布を検討しているため、記録層3−2の厚みDgの影響は現れない。
図4に示す透明基板2−2の形状変化が生じた場合には基板変形領域の境界位置がぼやけている(曖昧)ため、より一層ウィンドマージンを低下させている。記録マーク9が形成されている領域の断面形状を電子顕微鏡で観察すると、基板変形領域の境界位置のぼけ量は記録層3−2の厚みDgの値が大きくなるほど広がると考えれる。
上記記録パワー変化による熱変形領域長さの影響にこの基板変形領域の境界位置のぼけを考慮すると、充分なウィンドマージンが確保できるための許容されるチャネルビット長の下限値は記録層3−2の厚みDgの2倍程度が必要と考えられ、120nmより大きいことが望ましい。
上記では、透明基板2−2の熱変形が生じる場合の熱解析による検討に付いて主に説明した。従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)での他の記録原理(記録マーク9の形成メカニズム)として透明基板2−2の塑性変形が非常にわずかで記録層3−2内での有機色素記録材料の熱分解や気化(蒸発)が中心の場合も存在するので、その場合についても付加説明する。有機色素記録材料の気化(蒸発)温度は有機色素材料により異なるが、一般的には220℃〜370℃の範囲内に有り、熱分解温度はそれより低い。
上記検討では基板変形時の到達温度としてポリカーボネート樹脂のガラス転移温度150℃を前提としていたが、150℃と220℃との間の温度差は小さく、透明基板2−2が150℃に到達する時には記録層3−2内部では220℃を越えている。従って、有機色素記録材料による例外はあるが、透明基板2−2の塑性変形が非常にわずかで記録層3−2内での有機色素記録材料の熱分解や気化(蒸発)が中心の場合でも上記検討結果とほぼ同じ結果が得られている。
上記チャネルビット長に関する検討結果をまとめると、透明基板2−2の塑性変形を伴う従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)ではチャネルビット長を120nmより狭くして行くとウィンドマージンの低下が発生し、さらに、105nmより小さいと安定な再生が難しくなると考えられる。すなわち、チャネルビットが120nm(105nm)より小さくなる時には本実施形態に示す新規記録原理を用いることの効果が発揮される。
(3)トラックピッチの下限値条件
記録パワーで記録層3−2を露光すると、記録層3−2内でエネルギーを吸収して高温になる。従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)では透明基板2−2側が熱変形温度に達するまで記録層3−2内でエネルギーを吸収させる必要がある。
記録層3−2内で有機色素記録材料の構造変化が起こり屈折率n32や吸収係数k32の値が変化を開始する温度は透明基板2−2が熱変形を開始するための到達温度より遙かに低い。
従って、透明基板2−2側が熱変形している記録マーク9の周辺の記録層3−2内の比較的広い領域で屈折率n32や吸収係数k32の値が変化し、これが隣接トラックへの“クロスライト”や“クロスイレーズ”の原因と思われる。
透明基板2−2側が熱変形温度を超えた時の記録層3−2内での屈折率n32や吸収係数k32を変化させる温度に到達する領域の広さで“クロスライト”や“クロスイレーズ”を起こさないトラックピッチの下限値を設定できる。上記の視点からトラックピッチが500nm以下の所で“クロスライト”や“クロスイレーズ”が生じる考えられる。さらに、情報記憶媒体の反りや傾きの影響や記録パワーの変化(記録パワーマージン)も考慮すると、透明基板2−2側が熱変形温度に達するまで記録層3−2内でエネルギーを吸収させる従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)ではトラックピッチを600nm以下にするのは難しいと結論できる。
上述したようにNA値を0.60、0.65、0.85と変化させても、中心部で透明基板2−2側が熱変形温度に達した時の周囲の記録層3−2内での温度分布の勾配が比較的なだらかで熱の広がり範囲が広いためほぼ同様の傾向を示している。従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)での他の記録原理(記録マーク9の形成メカニズム)として透明基板2−2の塑性変形が非常にわずかで記録層3−2内での有機色素記録材料の熱分解や気化(蒸発)が中心の場合でも、既に“(2)チャネルビット長の下限値条件”の所で説明したように“クロスライト”や“クロスイレーズ”が始まるトラックピッチの値はほぼ類似した結果が得られる。以上の理由からトラックピッチを600nm(500nm)以下にする時に本実施形態に示す新規記録原理を用いることの効果が発揮される。
3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴
上述したように従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)での記録原理(記録マーク9の形成メカニズム)として透明基板2−2の塑性変形を伴う場合や記録層3−2内で局所的に熱分解や気化(蒸発)が発生する場合には、記録マーク9の形成時に記録層3−2内部や透明基板2−2表面が高温に達するためにチャネルビット長やトラックピッチを狭くできないと言う問題が発生する。
上記問題の解決策として本実施形態では基板変形や記録層3−2内での気化(蒸発)を起こすことなく、『比較的低温で発生する記録層3−2内での局所的な光学特性変化を記録原理とする』“有機色素材料の発明”と上記記録原理が生じ易い“環境(記録膜構造や形状)の設定”を行ったことを特徴とする。
本実施形態の具体的な特徴として以下の内容を上げることができる。
α〕記録層3−2内部の光学特性変化方法として、
・発色特性変化
… 発色領域8(図1)の質的変化による光吸収断面積の変化やモル分子吸光係数の変化
発色領域8が部分的に破壊されたり、発色領域8のサイズが変わることにより実質的な光吸収断面積が変化することで光吸収スペクトル(図2)プロファイル(特性)自体は保存されたままλmax write位置での振幅(吸光度)が記録マーク9内で変化する
・発色現象に寄与する電子に対する電子構造(電子軌道)の変化
… 局所的な電子軌道の切断(局所的な分子結合の解離)による脱色作用や発色領域8(図1)の寸法や構造の変化に基付く光吸収スペクトル(図2)変化
・分子内(または分子間)の配向や配列の変化
… 例えば、図1に示したアゾ金属錯体内部の配向変化に基付く光学特性変化
・分子内部での分子構造変化
… 例えば、アニオン部とカチオン部との間の結合解離や、アニオン部またはカチオン部のどちらか一方の熱分解、あるいは分子構造自体が破壊され、炭素原子が析出するタール化(黒色のコールタールに変質する)
のいずれかを起こす有機色素材料を考案する。その結果、記録マーク9内の屈折率n32や吸収係数k32を未記録領域に対して変化させて光学的再生を可能にする。
β〕上記〔α〕の光学特性変化を安定に起こし易い記録膜構造や形状の設定を行う
… この技術に関する具体的内容については“3−2−C〕本実施形態に示した記録原理を発生させ易い理想的な記録膜構造”以降で詳細に説明する。
γ〕記録層内や透明基板表面が比較的低温の状態で記録マークを形成させるために記録パワーを下げる
… 上記〔α〕で示す光学特性変化は透明基板2−2の変形温度や記録層3−2内での気化(蒸発)温度より低い温度で生じる。そのため、記録時の露光量(記録パワー)を低くして透明基板2−2表面で変形温度を越えたり記録層3−2内で気化(蒸発)温度を越えるのを防止する。この内容については“3−3)本実施形態における有機色素記録膜に共通する記録特性”で詳細に後述する。また、逆に記録時の最適パワーの値を調べることで上記〔α〕で示す光学特性変化が起きているかの判定も可能となる。
δ〕発色領域での電子構造を安定化させ、紫外線や再生光照射に対する構造分解が生じ辛くする
… 記録層3−2に対して紫外線を照射したり、再生時に再生光を記録層3−2に照射すると記録層3−2内の温度上昇が起きる。その温度上昇に対する特性劣化を防止するとともに、基板変形温度や記録層3−2内での気化(蒸発)温度より低い温度で記録すると言う温度特性上は一見矛盾する性能が要求される。本実施形態では“発色領域での電子構造を安定化”させることで上記の一見矛盾する性能を確保する。この具体的技術内容については“<4>本実施形態における有機色素記録膜の具体的実施形態説明”で説明する。
ε〕紫外線や再生光照射による再生信号劣化が万一発生した場合に備えて再生情報の信頼性を向上させる
… 本実施形態では“発色領域での電子構造を安定化”させるための技術的工夫を行っているが、透明基板2−2表面の塑性変形や気化(蒸発)により生じた記録層3−2内の局所的な空洞から比べると本実施形態に示した記録原理で形成される記録マーク9の信頼性は原理的に低下すると言わざるを得ない。
その対策として本実施形態では、“<7>Hフォーマットの説明”と“<8>Bフォーマットの説明”で後述するように強力なエラー訂正能力(新規なECCブロック構造)との組み合わせにより高密度化と記録情報の信頼性確保を同時に達成する効果を発揮する。さらに、本実施形態では“4−2)本実施形態での再生回路の説明”で説明するように再生方法としてPRML(Pertial Response Maximum Likelyhood)法を採用し、ML復調時のエラー訂正技術と組み合わせることでより一層の高密度化と記録情報の信頼性確保を同時に達成している。
上記の本実施形態の具体的な特徴の中で〔α〕〜〔γ〕は、“狭トラックピッチ化”と“狭チャネルビット長化”を実現するために本実施形態で新規に考案した技術的工夫内容になっていることは既に説明した。また、“狭チャネルビット長化”は“最小記録マーク長の縮小化”の実現にも繋がる。残りの〔δ〕と〔ε〕に関する本実施形態の意味(目的)について詳細に説明する。本実施形態におけるHフォーマットでの再生時に記録層3−2を通過する集光スポットの通過速度(線速)を6.61m/sに設定し、Bフォーマットでの線速は、5.0〜10.2m/sの範囲で設定する。いずれの場合でも、本実施形態における再生時の線速は、5m/s以上になっている。
図22に示すように、Hフォーマットでのデータリードイン領域DTLDIの開始位置は直径47.6mmであり、Bフォーマットを視野に入れた場合でも直径45mm以上の所でユーザデータが記録される。直径45mmの円周は0.141mなので、この位置を線速5m/sで再生する時の情報記憶媒体の回転数は35.4回転/sとなる。本実施形態の追記形情報記憶媒体の利用方法の一つとしてTV番組等の映像情報録画がある。例えば、ユーザが録画した映像の再生時にユーザが“ポーズ(一時停止)ボタン”を押すと、再生用集光スポットはその一時停止位置のトラック上に留まる。
一時停止位置のトラック上に止まっていればユーザが“再生開始ボタン”を押した直後に一時停止した位置から再生を開始できる。例えば、ユーザが“ポーズ(一時停止)ボタン”を押して用足しに立ち上がった直後に来客が来た場合、接客対応で1時間ポーズボタンを押したままで放置されることもある。
1時間の間で追記形情報記憶媒体は、
35.4×60×60≒13万回転
しており、集光スポットはその間中ずっと同一トラック上をトレース(13万回繰り返し再生)する。
もし、その間に記録層3−2が繰り返し再生により劣化して映像情報の再生が不可能になると、1時間後で戻って来たユーザは一部分の映像が見れないので、最悪の場合には、メーカ責任が問われる(裁判等になる)危険性がある。
従って、1時間程度放置(同一トラック内の連続再生)しても録画した映像情報が破壊されない条件として最低でも10万回繰り返し再生しても再生劣化しないことを保証する必要がある。一般的なユーザ使用状況として同一場所に対して1時間のポーズ放置(繰り返し再生)を10回繰り返すことはほとんどない。
従って、本実施の追記形情報記憶媒体として望ましくは100万回の繰り返し再生が保証されれば、一般的なユーザ利用には問題が生じず、記録層3−2が劣化しない繰り返し再生回数の上限値としては100万回程度に設定すれば充分と考えられる。繰り返し再生回数の上限値を100万回を大幅に越えた値に設定すると、“記録感度が低下する”とか“媒体価格が上昇する”等の不都合が発生する。
上記繰り返し再生回数の上限値を保証する場合に、再生パワー値が重要な要因となる。本実施形態において記録パワーは後述する(8)式〜(13)式で設定する範囲に規定される。半導体レーザの特性として最大使用パワーの80分の1以下の値では連続発光が安定しないと言われている。
最大使用パワーの1/80のパワーではやっと発光を開始する(モードが立ち始める)所のため、モードホップし易い状況にある。従って、この発光パワーでは情報記憶媒体の光反射層4−2で反射した光が半導体レーザ光源に戻ると発光量が常に変動すると言う“戻り光ノイズ”が発生するためである。
本実施形態では再生パワーの値は(12)式または(13)式の右辺に記載されている値の1/80の値を基準として、
[最適な再生パワー]
> 0.19×(0.65/NA)2×(V/6.6) (B−1)
[最適な再生パワー]
>0.19×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (B−2)
に設定している。
また、最適な再生パワーの値としてはパワーモニター用光検出器のダイナミックレンジにより制約される。図9の情報記録再生部141内に図示してないが記録/再生用の光学ヘッドが存在する。この光学ヘッド内には半導体レーザ光源の発光量をモニターする光検出器が内蔵されている。本実施形態では再生時の再生パワーの発光精度を向上させるため、この光検出器で発光量を検出し発光時の半導体レーザ光源に供給する電流量にフィードバックを掛けている。光学ヘッドの価格を下げるためには非常に安価な光検出器を使う必要がある。市販されている安価な光検出器は樹脂でモールドされている(光検出部が囲まれている)場合が多い。
“使用波長と本実施形態との関係説明”で示したように本実施形態での光源波長は530nm以下(特に455nm以下)を使用する。この波長領域の場合、光検出部をモールドしている樹脂(主にエポキシ系)は前記波長光を照射すると紫外線を照射した時に生じるような劣化(黄濁色に変色またはクラック(細かな白い筋)の発生等)が起こり光検出特性を悪化させてしまう。
特に、本実施形態に示す追記形情報記憶媒体の場合には、図6に示すようなプリグルーブ領域11を持つのでモールド樹脂劣化を起こし易い。光学ヘッドの焦点ぼけ検出方式としてこのプリグルーブ領域11からの回折光による悪影響を除去するため情報記憶媒体に対する結像位置(結像倍率Mは3〜10倍程度)に光検出器を配置する“ナイフエッジ法”を採用する場合が最も多い。結像位置に光検出器を配置すると、光検出器上に光が集光するためモールド樹脂上に照射される光密度が高くなり、この光照射による樹脂劣化を起こし易くする。
このモールド樹脂の特性劣化は主にフォトンモード(光学的作用)により生じるが、サーマルモード(熱励起)の光照射量との対比で許容照射量の上限値を予想できる。最悪の状態を想定して光学ヘッドとして結像位置に光検出器を配置する光学系を想定する。
“3−2−A〕本実施形態の技術の適用を必要とする範囲”内の“(1)記録層3−2の厚みDgの条件”に記載した内容から本実施形態における記録時に記録層3−2内で光学特性変化(サーマルモード)が発生している時には記録層3−2内では一時的に80℃〜150℃の範囲に温度上昇していると考えている。室温を15℃前後と考えると、温度差ΔTwriteは65℃〜135℃となる。記録時にはパルス発光しているが再生時には連続発光しているので、再生時にも記録層3−2内で温度上昇し、温度差ΔTreadが発生している。
光学ヘッド内の検出系の結像倍率をMとすると、光検出器上に集光する検出光の光密度は記録層3−2上に照射される収束光の光密度の1/M2になるので、再生時の光検出器上での温度上昇量は粗い見積もりとしてΔTread/M2となる。モールド樹脂劣化がフォトンモードで発生することを考えると、光検出器上で照射可能な光密度の上限値を温度上昇量で換算すると、ΔTread/M2≦1℃程度と考えられる。
光学ヘッド内の検出系の結像倍率をMは一般的に3〜10倍程度なので暫定的にM2≒10と見積もると、
ΔTread/ΔTwrite≦20 (B−3)
になるように再生パワーを設定する必要がある。
記録時の記録パルスのデューティ比を仮に50%と見積もると、
[最適な再生パワー]≦[最適な記録パワー]/10 (B−4)
が要求される。
従って、後述する(8)式〜(13)式と上記(B−4)式を加味すると最適な再生パワーは、
[最適な再生パワー]
<3×(0.65/NA)2×(V/6.6) (B−5)
[最適な再生パワー]
<3×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (B−6)
[最適な再生パワー]
<2×(0.65/NA)2×(V/6.6) (B−7)
[最適な再生パワー]
<2×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (B−8)
[最適な再生パワー]
<1.5×(0.65/NA)2×(V/6.6) (B−9)
[最適な再生パワー]
<1.5×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (B−10)
(各パラメーターの定義は“3−2−E〕本実施形態における記録層の厚み分布に関する基本的特徴”を参照)
で与えられる。
例えば、NA=0.65、V=6.6m/sの時には、
[最適な再生パワー]<3mW、
[最適な再生パワー]<2mW、または
[最適な再生パワー]<1.5mW
となる。
実際には情報記憶媒体は回転して相対的に移動しているのに比べて光検出器は固定されているので、さらに、それを考慮に入れて最適な再生パワーを上記式の1/3程度以下にする必要がある。
以上から、本実施形態における情報記録再生装置では再生パワーの値として0.4mWに設定している。
3−2−C〕本実施形態に示した記録原理を発生させ易い理想的な記録膜構造
本実施形態において上記記録原理が生じ易い“環境(記録膜構造や形状)の設定”方法に付いて説明する。
上記説明した記録層3−2内部の光学特性変化を起こし易い環境として、『記録マーク9形成領域内では光学特性変化が発生する臨界温度を超えるとともに記録マーク9の中心部では気化(蒸発)温度を越えず、記録マーク9の中心部近傍の透明基板2−2表面が熱変形温度を超えない』ように記録膜構造や形状に技術的工夫したことを特徴とする。
上記に関する具体的な内容について図5を用いて説明する。
図5において中抜きの矢印は照射レーザ光7の光路を示し、破線の矢印は熱流を表している。図5(a)に示した記録膜構造が本実施形態に対応した記録層3−2内部の光学特性変化を最も起こし易い環境を示している。すなわち、図5(a)において有機色素記録材料からなる記録層3−2は(2)式、または(4)式に示す範囲の(充分に厚い)至る所均一な厚みを持ち、記録層3−2に対して垂直な方向からレーザ光7の照射を受ける。
“6−1)光反射層(材質と厚み)”で詳しく後述するように、本実施形態では光反射層4−2の材質として銀合金を使用する。銀合金に限らず光反射率の高い金属を含む材質は一般に熱伝導率が高く放熱特性を持つ。従って、照射されたレーザ光7のエネルギーを吸収して記録層3−2の温度は上昇するが、放熱特性を持つ光反射層4−2へ向けて熱が放出される。
図5(a)に示した記録膜は至る所均一な形状をしているため、記録層3−2内部では比較的均一な温度上昇が起き、中心部α点、およびβ点とγ点での温度差は比較的少ない。従って、記録マーク9の形成時にはβ点とγ点で光学特性変化が発生する臨界温度を超える時には中心部α点では気化(蒸発)温度を越えることなく、中心部α点に最も近い位置にある透明基板(図示してない)表面が熱変形温度を超えることもない。
それに比べて、図5(b)に示すように記録膜3−2の一部に段差があると、δ点とε点では記録層3−2が配列されている方向に対して斜め方向からレーザ光7の照射を受けるため、単位面積当たりのレーザ光7の照射量が中心部α点に比べて相対的に低下し、その結果、δ点とε点での記録層3−2内の温度上昇量が低下する。δ点とε点でも光反射層4−2へ向かう熱放出があるので、中心部α点に比べてδ点とε点での到達温度は大幅に低下する。
そのため、β点からδ点へ向けて熱が流れるとともにγ点からε点へ向けて熱が流れるので、中心部α点に対するβ点とγ点での温度差が非常に大きくなる。記録時にβ点とγ点での温度上昇量が低く、β点とγ点でなかなか光学特性変化が発生する臨界温度を超えない。その対策としてβ点とγ点で光学特性変化を起こすため(臨界温度以上にするため)、レーザ光7の露光量(記録パワー)を上げる必要がある。
図5(b)に示す記録膜構造ではβ点とγ点に対する中心部α点での温度差が非常に大きいため、β点とγ点で光学特性変化が起こる温度に上昇した時には中心部α点で気化(蒸発)温度を越えるか、中心部α点近傍の透明基板(図示してない)表面が熱変形温度を越え易くなっている。
また、レーザ光7の照射を受ける側の記録層3−2の表面が至る所レーザ光7の照射方向に対して垂直になっていても、記録層3−2の厚みが場所により変化する場合には本実施形態の記録層3−2内部の光学特性変化を起こし辛い構造となる。
例えば、図5(c)に示すように中心部α点での記録層3−2の厚みDgに対して周辺部の厚みDlが大幅に薄い(例えば、(2)式や(4)式を満足しない)場合を考える。中心部α点でも光反射層4−2へ向けた熱の放出はあるが、記録層3−2の厚みDgが充分に厚いために熱の蓄積が行え高温に達することができる。
それに比べて記録層3−2の厚みがDl大幅に薄いζ点とη点では充分な熱の蓄積を行うことなく、光反射層4−2へ向けて熱が放出されるため、温度上昇量が少ない。
その結果、光反射層4−2へ向けた熱の放出のみでなくβ点→δ点→ζ点へ向かう熱の放出、あるいはγ点→ε点→η点へ向かう熱の放出が起きるため、図5(b)と同様にβ点とγ点に対する中心部α点での温度差が非常に大きくなる。
β点とγ点で光学特性変化を起こすため(臨界温度以上にするため)にレーザ光7の露光量(記録パワー)を上げると、中心部α点で気化(蒸発)温度を越えるか、中心部α点近傍の透明基板(図示してない)表面が熱変形温度を越え易くなる。
上記説明した内容に基づき、本実施形態の記録原理が生じ易い“環境(記録膜構造や形状)の設定”のためのプリグルーブ形状/寸法に関する本実施形態における技術的な工夫の内容と記録層の厚み分布に関する本実施形態における技術的工夫内容について、図6を用いて説明する。
図6(a)は、CD−RやDVD−R等の現行の追記形情報記憶媒体における記録膜の構造を示し、図6(b)、(c)に本実施形態における記録膜構造を示す。
本説明において図6に示すようにプリグルーブ領域11内に記録マーク9を形成する。
3−2−D〕本実施形態におけるプリグルーブ形状/寸法に関する基本的特徴。
図6(a)に示すようにCD−RやDVD−R等の現行の追記形情報記憶媒体ではプリグルーブ領域11が“V溝”形状をしている場合が多い。
この構造の場合には、図5(b)で説明したようにレーザ光7のエネルギー吸収効率が低く、記録層3−2内の温度分布ムラが非常に大きく出る。図5(a)の理想状態に近づけるため、少なくとも“透明基板2−2側にプリグルーブ領域11内に入射レーザ光7の進行方向に直行する平面領域を設ける”ところに、本実施形態の特徴がある。図5(a)を用いて説明したように、この平面領域はなるべく広くすることが望ましい。
従って、プリグルーブ領域11内に平面領域を設けるだけでなく、プリグルーブ領域の幅Wgをランド領域の幅Wlよりも広くする(Wg>Wl)ことを特徴とする。
説明上は、プリグルーブ領域の幅Wgとランド領域の幅Wlをプリグルーブ領域の平面位置での高さとランド領域の最も高くなった位置での高さとの中間高さを持つ平面とプリグルーブ内の斜面とが交差する位置でのそれぞれの幅として定義する。
熱解析による検討と実際に試作した追記形情報記憶媒体にデータを記録し、記録マーク9位置での断面SEM(走査形電子顕微鏡)像による基板変形観察や記録層3−2内の気化(蒸発)により生じた空洞の有無観察を繰り返した結果、プリグルーブ領域の幅Wgをランド領域の幅Wlよりも広くする(Wg>Wl)ことで効果があることが分かった。
さらに、プリグルーブ領域幅Wgとランド領域幅Wlの比率をWg:Wl=6:4、望ましくはWg:Wl=7:3より大きくすることで、記録時により一層安定して記録層3−2内での局所的な光学特性変化が起き易くなると考えられる。
このようにプリグルーブ領域幅Wgとランド領域幅Wlの違いを大きくすると、図6(c)のようにランド領域12上に平坦面がなくなる。従来のDVD−Rディスクではランド領域12にプリピット(ランドプリピット:図示してない)を形成し、ここにアドレス情報等を予め記録するフォーマットになっていた。そのためランド領域12に平坦領域を形成することが必須条件となり、結果的にプリグルーブ領域11で“V溝”形状になる場合が多かった。また、従来のCD−Rディスクでは周波数変調によりプリグルーブ領域11にウォブル信号を入れていた。
従来のCD−Rディスクでの周波数変調方式では、スロット間隔(詳細については、各フォーマット説明の部分に示す)が一定せず、ウォブル信号検波時の位相合わせ(PLL,Phase Lock Loopの同期化)が難しい。そのため、再生用集光スポットの強度が最も高い中心付近にプリグルーブ領域11の壁面を集中させる(V溝に近くさせる)とともにウォブル振幅量を大きくしてウォブル信号検出精度を保証していた。
図6(b)、(c)に示すように本実施形態でのプリグルーブ領域11内の平坦領域を広げ、プリグルーブ領域11の斜面を再生用集光スポットの中心位置より相対的に外側へ移動させるとウォブル検出信号が得辛くなる。本実施形態では上述したプリグルーブ領域の幅Wgを広げるとともにウォブル検出時のスロット間隔が常に固定に保たれる位相変調(PSK:Phase Shift Keying)を利用したHフォーマットまたはFSK(Frequency Shift Keying)やSTW(Saw Tooth Wobble)を利用したBフォーマットを組み合わせることで、低い記録パワーで安定な記録特性を保証(高速記録や多層化に適する)とともに安定なウォブル信号検出特性を保証している。
特に、Hフォーマットでは上記組み合わせに加えて“ウォブル変調領域の比率を無変調領域よりも下げる”ことでウォブル信号検出時の同期合わせをより一層容易にしてさらに、より一層ウォブル信号検出特性を安定化させている。
3−2−E〕本実施形態における記録層の厚み分布に関する基本的特徴
本説明では図6(b)、(c)に示すようにランド領域12内での最も記録層3−2が厚い部分での厚みをランド領域での記録層厚みDlと定義し、プリグルーブ領域11内での最も記録層3−2が厚い部分での厚みをプリグルーブ領域での記録層厚みDgと定義する。既に図5(c)を用いて説明したように、相対的にランド領域での記録層厚みDlを厚くすることで記録時に記録層3−2内で局所的な光学特性変化を安定に起こし易くなる。
上記と同様に熱解析による検討と実際に試作した追記形情報記憶媒体にデータを記録し、記録マーク9位置での断面SEM(走査形電子顕微鏡)像による基板変形観察や記録層3−2内の気化(蒸発)により生じた空洞の有無観察を繰り返した結果、プリグルーブ領域での記録層厚みDgとランド領域での記録層厚みDlとの比率は最大でもDg:Dl=4:1以下にする必要がある。さらに、Dg:Dl=3:1以下、望ましくはDg:Dl=2:1以下にすると本実施形態における記録原理の安定性が保証できる。
3−3)本実施形態における有機色素記録膜に共通する記録特性
“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”の一つとして、〔γ〕で記載したように記録パワー制御がある。
記録層3−2内での局所的な光学特性変化による記録マーク9形成は従来の透明基板2−2の塑性変形温度や記録層3−2内での熱分解温度や気化(蒸発)温度よりも遙かに低い温度で起きるため、記録時に透明基板2−2が局所的に塑性変形温度を越えたり記録層3−2内で局所的に熱分解温度や気化(蒸発)温度を越えないように記録パワーの上限値を制限する。
熱解析による検討と平行して“4−1)本実施形態での再生装置もしくは記録再生装置の構造と特徴説明”で後述する装置を用い、“4−3)本実施形態での記録条件の説明”で後述する記録条件を用いて本実施形態に示した記録原理で記録が行われている場合の最適パワーの値の実証も行った。実証実験に用いた記録再生装置内の対物レンズの開口数NA(Numerical Apperture)は、0.65、記録時の線速は6.61m/sである。
後で“4−3)本実施形態での記録条件の説明”で定義する記録パワー(Peak Power)の値として、 。
◎30mWでほとんどの有機色素記録材料で気化(蒸発)し、記録マーク内に空洞が生じる
… 記録層3−2近傍位置での透明基板2−2温度はガラス転移温度を大幅に超えている
◎20mWで記録層3−2近傍位置での透明基板2−2温度が塑性変形温度(ガラス転移温度)に達する
◎情報記憶媒体の面ブレ・反りや記録パワー変動等のマージンを見越して15mW以下が望ましい
ことが認められる。
上記で説明した“記録パワー”とは記録層3−2に照射される露光量の総和を意味している。集光スポット中心部で有り最も光強度密度の高い部分での光エネルギー密度が本実施形態での検討対象パラメータとなる。集光スポットサイズはNA値に反比例するので、集光スポット中心部での光エネルギー密度はNA値の2乗に比例して増加する。
従って、 。
[異なるNAにも適応可能な記録パワー] 。
=[NA=0.65時の記録パワー]×0.652/NA2 (5)
の関係式を用いて後述するBフォーマットや表1(D3)に示した別のフォーマット(別のNA値)での最適な記録パワーの値に換算できる。
さらに、最適な記録パワーは記録時の線速Vに依存して変化する。一般的に最適な記録パワーは相変化形記録材料では線速Vの1/2乗に比例して変化し、有機色素記録材料では線速Vに比例して変化すると言われている。
従って、線速Vも考慮に入れた最適な記録パワーの換算式は(5)式を拡張させた
[一般的な記録パワー] 。
=[NA=0.65;6.6m/s時の記録パワー]
×(0.65/NA)2×(V/6.6) (6)
または
[一般的な記録パワー]
=[NA=0.65;6.6m/s時の記録パワー]
×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (7)
で得られる。
以上の検討結果をまとめると本実施形態に示した記録原理を保証するための記録パワーとして、
[最適な記録パワー]
<30×(0.65/NA)2×(V/6.6) (8)
[最適な記録パワー]
<30×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (9)
[最適な記録パワー]
<20×(0.65/NA)2×(V/6.6) (10)
[最適な記録パワー]
<20×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (11)
[最適な記録パワー]
<15×(0.65/NA)2×(V/6.6) (12)
[最適な記録パワー]
<15×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (13)
と言う上限値を設定することが望ましい。
上記各式の内、(8)式または(9)式の条件は必須条件となり、(10)式または(11)式が目標条件、(12)式または(13)式が望ましい条件となる。
3−4)本実施形態における“H→L”記録膜に関する特徴説明
記録マーク9内の光反射量が未記録領域での光反射量よりも低くなる特性を有した記録膜を“H→L”記録膜と呼び、逆に高くなる記録膜を“L→H”記録膜と呼ぶ。
この中で“H→L”記録膜は、
(1)光吸収スペクトルのλmax write位置での吸光度に対する再生波長での吸光度の比に上限値を設ける
(2)光吸収スペクトルプロファイルを変化させて記録マークを形成させる
ことを特徴とする。
図7と図8を用いて上記内容に関する詳細な説明する。
本実施形態におけるH→L記録膜では、図7に示すようにλmax writeの波長が記録/再生に利用される使用波長(405nm近傍)よりも短い。図8から分かるように、λmax writeの波長近傍では未記録と既記録間で吸光度の変化が少ない。未記録と既記録間で吸光度の変化が少ないと再生信号振幅が大きく取れない。記録または再生用レーザ光源の波長変動が生じても安定に記録または再生ができることも視野に入れると、本実施形態においては図7に示すようにλmax writeの波長が355nm〜455nmの範囲の外側、すなわち355nmよりも短波長側に来るように記録膜3−2の設計を行っている。
既に“2−1)記録原理/記録膜構造の違いと再生信号生成に関する基本的な考え方の違い”で定義したλmax write位置での吸光度を“1”と規格化した時の“使用波長と本実施形態との関係説明”で説明した355nm、455nm、405nmにおける相対的な吸光度をAh355、Ah455、Ah405と定義する。
Ah405=0.0の場合には未記録状態での記録膜からの光反射率は光反射層4−2での405nmにおける光反射率に一致する。光反射層4−2の光反射率については“6−1)光反射層”の所で詳細に後述するが、ここでは説明の簡素化のために光反射層4−2の光反射率を100%として説明を進める。
本実施形態における“H→L”記録膜を用いた追記形情報記憶媒体では、片側単層膜の場合の再生専用情報記憶媒体(HD DVD−ROMディスク)を用いた場合と再生回路を共通化させている。従って、この場合の光反射率を片側単層膜の再生専用情報記憶媒体(HD DVD−ROMディスク)の光反射率に合わせて40〜85%とする。
そのためには未記録位置での光反射率を40%以上に設定する必要がある。
1−0.4=0.6なので、405nmにおける吸光度Ah405として、
Ah405≦0.6 (14)
とすれば良いことが直感的に理解できる。
上記(14)式を満足する場合には未記録位置での光反射率を40%以上にできることが容易に理解できるので、本実施形態では未記録場所において(14)式を満足する有機色素記録材料を選定している。
上記(14)式は図7においてλmax writeの波長光で記録層3−2越しに光反射層4−2を反射させた時の光反射率が0%になることを仮定している。しかし、実際にはこの時の光反射率は0%にならず、ある程度の光反射率を持つので、厳密には(14)式に対する補正が必要となる。
図7においてλmax writeの波長光で記録層3−2越しに光反射層4−2を反射させた時の光反射率をRλmax writeで定義すると、未記録位置での光反射率を40%以上に設定する厳密な条件式は、
1−Ah405×(1−Rλmax write)≧0.4 (15)
となる。
“H→L”記録膜では多くの場合、Rλmax write≧0.25なので、(15)式は、
Ah405≦0.8 (16)
となる。
本実施形態の“H→L”記録膜では、(16)式を満足することが必須条件となるから、上記(14)式の特性を持たせ、さらに、記録層3−2の膜厚として(3)式または(4)式の条件を満足することを条件として詳細な光学的な膜設計を行った結果、膜厚変動や再生光の波長変動等の各種マージンを考慮に入れると、
Ah405≦0.3 (17)
が望ましい。
(14)式を前提とすると、
Ah455≦0.6 (18)
あるいは
Ah355≦0.6 (19)
に設定すると、一層記録/再生特性が安定する。
なぜなら、(14)式が成り立つ上で少なくとも(18)式と(19)式のいずれかを満足する場合には、355nmから405nmの範囲、または405nmから455nmの範囲に亘り(場合によっては355nmから455nmの範囲で)Ahの値が0.6以下になるので記録用レーザ光源(または再生用レーザ光源)の発光波長にばらつきが生じても吸光度の値が大きく変化しないためである。
本実施形態における“H→L”記録膜の具体的な記録原理としては既に説明した“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”内の〔α〕に列記した記録メカニズムの内“分子間の配列変化”または“分子内部での分子構造変化”の現象を利用する。
その結果、上述した(2)に記載されているように光吸収スペクトルプロファイルを変化させる。
本実施形態における記録マーク内での光吸収スペクトルプロファイルを図8中の実線で示し、未記録場所での光吸収スペクトルプロファイルを破線で重ね合わせることで両者の比較ができるようにした。
本実施形態では、記録マーク内での光吸収スペクトルプロファイルが比較的ブロードに変化しており、分子内部で分子構造が変化して、一部炭素原子の析出(コールタール化)の可能性がある。記録マーク内での吸光度が最大になる波長λlmaxの値を未記録位置での波長λmax writeの値よりも再生波長405nmに近付けることにより“H→L”記録膜での再生信号を発生している。
これにより、吸光度が最も高くなる波長λlmaxでの吸光度が“1”よりも小さく再生波長405nmにおける吸光度Al405の値がAh405の値よりも大きくなる。その結果、記録マーク内でのトータル的な光反射率が低下する。
本実施形態におけるHフォーマットでは変調方式としてETM(Eight to Twelve:8ビットのデータコードを12チャネルビットに変換する)、RLL(1,10)(変調後のコード列の中でチャネルビット長Tに対する最小反転長が2T、最大反転長が11T)を採用している。
“4−2)本実施形態での再生回路の説明”で後述する再生回路の性能評価したところ、前記再生回路で安定に再生するには、〔充分に長い長さ(11T)の未記録領域からの再生信号量I11H〕に対する〔前記I11Hと充分に長い長さ(11T)を持つ記録マークからの再生信号量I11Lとの差分値I11≡I11H−I11L〕の比率が最低でも、
I11/I11H≧0.4 (20)
望ましくは
I11/I11H>0.2 (21)
を満足しなければならない。
本実施形態では、高密度に記録された信号再生時にPRML法を利用し、図13〜図15に示す(詳細説明は後述する)信号処理回路と状態遷移図を使用する。
PRML法で精度良く検出するためには再生信号の線形性(リニアリティー)が要求される。
図15に示した状態遷移図を基に図13、図14に示した信号処理回路特性を解析した結果、上記再生信号の線形性(リニアリティー)を確保するためには3Tの長さを持つ記録マークと未記録スペースの繰り返し信号からの再生信号振幅をI3とした時のこの値の上記I11に対する比率が、
I3/I11≧0.35 (22)
望ましくは
I3/I11>0.2 (23)
を満足する必要がある。
上記(16)式の条件を視野に入れながら(20)式、(21)式を満足するようにAl405の値を設定したことを特徴とする。
(16)式を参照し
1−0.3=0.7 (24)
となる。
(24)式を視野に入れ、(20)式との対応関係から、
(Al405−0.3)/0.7≧0.4 すなわち、
Al405≧0.58 (25)
が導かれる。
(25)式は非常に粗い検討結果から導かれた式で基本的な考え方を示したに過ぎず、Ah405の設定範囲を(16)式で規定しているので、本実施形態では、Al405の条件として少なくとも、
Al405>0.3 (26)
が必須となる。
具体的な“H→L”記録膜に適した有機色素材料の選定方法として本実施形態では光学的な膜設計を元に未記録状態での屈折率範囲がn32=1.3〜2.0、吸収係数範囲がk32=0.1〜0.2、望ましくはn32=1.7〜1.9、吸収係数範囲がk32=0.15〜0.17の有機色素材料を選定し、上記説明した一連の条件を満足させている。
図7または図8に示した“H→L”記録膜では未記録領域での光吸収スペクトルにおいてλmax writeの波長が再生光または記録/再生光の波長(例えば、405nm)よりも短くなっているが、本発明においてそれに限らず例えば、λmax writeの波長が再生光または記録/再生光の波長(例えば、405nm)よりも長くても良い。
上記(22)式または(23)式を満足させるためには記録層3−2の厚みDgが大きく影響する。例えば、記録層3−2の厚みDgが許容値を大幅に越えると、記録マーク9形成後の状態として記録層3−2内での透明基板2−2に接する一部のみの光学特性が変化するだけでその場所に隣接する光反射層4−2に接する部分の光学特性が他の未記録領域と同じ値のままになる。その結果、再生光量変化が低下して、(22)式または(23)式におけるI3の値が小さくなり、(22)式または(23)式の条件が満足できなくなる。
従って、(22)式を満足させるためには、図6(b)、(c)に示すように、記録マーク9内の光反射層4−2に接する部分の光学特性まで変化させる必要がある。
さらに、記録層3−2の厚みDgが許容値を大幅に越えると記録マーク形成時に記録層3−2内の厚み方向で温度勾配が発生し、記録層3−2内の光反射層4−2に接する部分で光学特性変化温度に達する前に透明基板2−2に接する部分の気化(蒸発)温度を越えるか、透明基板2−2内で熱変形温度を超えてしまう。
上記理由から本実施形態では熱解析検討により(22)式を満足させるために記録層3−2の厚みDgを“3T”以下とし、(23)式を満足させる条件として記録層3−2の厚みDgを“3×3T”以下にしている。
基本的には記録層3−2の厚みDgが“3T”以下の場合には(22)式を満足させることができるが、追記形情報記憶媒体の面ブレ・反りによるチルトの影響や焦点ぼけに対するマージンを考慮すると“T”以下にする場合もある。
既に説明した(1)式と(2)式の結果も考慮すると、本実施形態における記録層3−2の厚みDgの範囲は必要最低な条件としては、
9T≧Dg≧λ/8n32 (27)
望ましい条件としては、
3T≧Dg≧λ/4n32 (28)
で与えられる範囲で記録層3−2の厚みDgを設定している。
それに限らず、最も厳しい条件としては、
T≧Dg≧λ/4n32 (29)
とすることも可能である。
後述するようにチャネルビット長Tの値はHフォーマットでは102nm、Bフォーマットでは69nm〜80nmになっているので、3Tの値はHフォーマットでは306nm、Bフォーマットでは207nm〜240nm、9Tの値はHフォーマットでは918nm、Bフォーマットでは621nm〜720nmとなる。ここでは“H→L”記録膜に関して説明しているが、(27)式〜(29)式の条件はそれに限らず、“L→H”記録膜に対しても適用できる。
<4>再生装置または記録再生装置と記録条件/再生回路の説明
4−1)本実施形態での再生装置もしくは記録再生装置の構造と特徴説明
情報記録再生装置の実施形態における構造説明図を図9に示す。図9において制御部143より上側が主に情報記憶媒体への情報記録制御系を表し、情報再生装置の実施形態では図9における前記情報記録制御系を除いた構造が該当する。図9に於いて太い実線矢印が再生信号または記録信号を意味するメイン情報の流れを示し、細い実線矢印が情報の流れ、一点鎖線矢印が基準クロックライン、細い破線矢印がコマンド指示方向を意味する。
図9に示した情報記録再生部141の中に図示してないが光学ヘッドが配置されている。
本実施形態では光学ヘッド内に用いられる光源(半導体レーザ)の波長は405nmであるが、それに限らず本実施形態として前述したように使用波長が620nm以下または530nm以下の光源あるいは355〜455nmの範囲の光源を使用することが可能である。また、光学ヘッド内で上記波長の光を情報記憶媒体上に集光させるために用いられる対物レンズは2個搭載され、Hフォーマットの情報記憶媒体に対して記録/再生する場合はNA値が0.65の対物レンズを使用し、Bフォーマットの情報記憶媒体に記録/再生する場合にはNA=0.85の対物レンズを使用するように対物レンズが切り替えられるような構造になっている。
図示しない対物レンズに入射する直前の入射光の強度分布として、中心強度を“1”とした時の対物レンズ周辺(開口部境界位置)での相対的な強度を、“RIM(RIM Intensity)”と呼ぶ。Hフォーマットにおける前記RIMの値は、55〜70%になるように設定してある。この時の光学ヘッド内での波面収差量は使用波長λに対して最大0.33λ(0.33λ以下)になるように光学設計されている。
本実施形態では、情報再生に、既に説明したPRMLを用い、情報記憶媒体への記録を高密度化している(表1〔A〕)。
種々の実験の結果、使用するPRクラスとしては、PR(1,2,2,2,1)を採用すると線密度が高くできるとともに再生信号の信頼性(例えば、焦点ぼけやトラックずれ等サーボ補正誤差が発生した時の復調信頼性)を高くできるので、本実施形態ではPR(1,2,2,2,1)を採用している(表1(A1))。
また、本実施形態では、(d,k;m,n)変調規則(前述した記載方法では、m/n変調のRLL(d,k)を意味している)に従って変調後のチャネルビット列を情報記憶媒体に記録している。
具体的には、変調方式としては8ビットデータを12チャネルビットに変換(m=8,n=12)するETM(Eight to Twelve Modulation)を採用し、変調後のチャネルビット列の中で“0”が続く長さに制限を掛けるランレングスリミテッドRLL制約として“0”が連続する最小値をd=1とし、最大値をk=10としたRLL(1,10)の条件を課している。
本実施形態では、情報記憶媒体の高密度化を目指して極限近くまでチャネルビット間隔を短くしている。その結果、例えば、d=1のパターンの繰り返しである“101010101010101010101010”のパターンを情報記憶媒体に記録し、そのデータを情報記録再生部141で再生した場合には、再生光学系のMTF特性の遮断周波数に近付いているため、再生生信号の信号振幅は、ほとんどノイズに埋もれた状態になる。
従って、そのように、MTF特性の限界(遮断周波数)近くまで密度を詰めた記録マークまたはピットを再生する方法としてPRMLの技術を使っている。
すなわち、情報記録再生部141から再生された信号は、PR等化回路130により再生波形補正を受ける。
AD変換器169で基準クロック発生回路160から送られてくる基準クロック198のタイミングに合わせてPR等化回路130通過後の信号をサンプリングしてデジタル量に変換し、ビタビ復号器156内でビタビ復号処理を受ける。
ビタビ復号処理後のデータは従来のスライスレベルで2値化されたデータと全く同様なデータとして処理される。
PRMLの技術を採用した場合、AD変換器169でのサンプリングタイミングがずれると、ビタビ復号後のデータのエラー率は増加する。従って、サンプリングタイミングの精度を上げるため、本実施の形態の情報再生装置ないしは情報記録再生装置では特にサンプリングタイミング抽出用回路(シュミットトリガー2値回路155とPLL回路174の組み合わせ)を別に持っている。このシュミットトリガー回路は、2値化するためのスライス基準レベルに特定の幅(実際にはダイオードの順方向電圧値)を持たせ、その特定幅を越えた時のみ2値化される特性を持っている。
従って、例えば、上述したように“101010101010101010101010”のパターンが入力された場合には、信号振幅が非常に小さいので2値化の切り替わりが起こらず、それよりも疎のパターンである例えば、“1001001001001001001001”等が入力された場合に再生生信号の振幅が大きくなるので、シュミットトリガー2値化回路155で“1”のタイミングに合わせて2値化信号の極性切り替えが起きる。
本実施の形態では、NRZI(Non Return to Zero Invert)法を採用しており、上記パターンの“1”の位置と記録マークまたはピットのエッジ部(境界部)が一致している。
PLL回路174ではこのシュミットトリガー2値化回路155の出力である2値化信号と基準クロック発生回路160から送られる基準クロック198信号との間の周波数と位相のずれを検出してPLL回路174の出力クロックの周波数と位相を変化させている。基準クロック発生回路160ではこのPLL回路174の出力信号とビタビ復号器156の復号特性情報(具体的には図示してないが、ビタビ復号器156内のパスメトリックメモリ内の収束長(収束までの距離)の情報)を用いてビタビ復号後のエラーレートが低くなるように基準クロック198(の周波数と位相)にフィードバックを掛ける。この基準クロック発生回路160で発生される基準クロック198は再生信号処理時の基準タイミングとして利用され。
同期コード位置抽出部145はビタビ復号器156の出力データ列の中に混在している同期コード(シンクコード)の存在位置を検出し、上記出力データの開始位置の抽出役目を担っている。この開始位置を基準としてシフトレジスタ回路170に一時保存されたデータに対して復調回路152で復調処理を行う。
本実施形態では12チャネルビット毎に復調用変換テーブル記録部154内に記録された変換テーブルを参照して元のビット列に戻す。その後はECCデコーディング回路162によりエラー訂正処理が施され、デスクランブル回路159によりデスクランブルされる。本実施形態の記録形(書替え形または追記形)情報記憶媒体ではウォブル変調によりアドレス情報が事前に記録されている。ウォブル信号検出部135で、このアドレス情報を再生し(すなわち、ウォブル信号の内容を判別し)希望場所へのアクセスに必要な情報を制御部143に対して供給する。
制御部143より上側にある情報記録制御系について説明する。情報記憶媒体上の記録位置に合わせてデータID発生部165からデータID情報が生成され、CPR_MAIデータ発生部167でコピー制御情報が発生されるとデータID、IED、CPR_MAI、EDC付加部168により記録すべき情報にデータID、IED、CPR_MAI、EDCの各種情報が付加される。その後、デスクランブル回路157でデスクランブルされた後、ECCエンコーディング回路161でECCブロックが構成され、変調回路151でチャネルビット列に変換された後、同期コード生成・付加部146で同期コードが付加されて情報記録再生部141内で情報記憶媒体にデータが記録される。変調時にはDSV(Digital Sum Value)値計算部148で変調後のDSV値が逐次計算され、変調時のコード変換にフィードバックされる。
図9に示した同期コード位置検出部145を含む周辺部の詳細構造を図10に示す。同期コードは固定パターンを持った同期位置検出用コード部と可変コード部から構成されている。ビタビ復号器156から出力されたチャネルビット列の中から同期位置検出用コード検出部182により上記固定パターンを持った同期位置検出用コード部の位置を検出し、その前後に存在する可変コードのデータを可変コード転送部183、184が抽出してシンクフレーム位置識別用コード内容の識別部185により検出された同期コードが後述するセクタ内のどのシンクフレームに位置するかを判定する。情報記憶媒体上に記録されたユーザ情報はシフトレジスタ回路170、復調回路152内の復調処理部188、ECCデコーディング回路162の順に順次転送される。
本実施形態のうち、Hフォーマットではデータ領域、データリードイン領域、データリードアウト領域では再生にPRML方式を使うことで情報記憶媒体の高密度化(特に線密度が向上する)を達成するとともに、システムリードイン領域、システムリードアウト領域では再生にスライスレベル検出方式を使うことで、現行DVDとの互換性を確保するとともに再生の安定化を確保している(詳細は、“Hフォーマットの説明”において後述する)。
4−2)本実施形態での再生回路の説明
図11にシステムリードイン領域、システムリードアウト領域での再生時に使用されるスライスレベル検出方式を用いた信号再生回路の実施形態を示す。
図11における4分割光検出器302は、図9における情報記録再生部141内に存在する光学ヘッド内に固定されている。4分割光検出器302の各光検出セル1a、1b、1c、1dから得られる検出信号の総和を取った信号をここでは“リードチャンネル1信号”と呼ぶ。
図11のプリアンプ304からスライサ310までが図9のスライスレベル検出回路132内の詳細構造に対応し、情報記憶媒体から得られた再生信号は再生信号周波数帯よりも低い周波数成分を遮断するハイパスフィルタ306を通過後にプリイコライザ308により波形等化処理が行われる。
実験によると、このプリイコライザ308は7タップのイコライザを用いると最も回路規模が少なく、かつ精度良く再生信号の検出ができることが分かったので、本実施形態でも7タップのイコライザを使用している。図11のVFO回路・PLL312部分が図9のPLL回路に対応し、図11の復調回路、ECCデコーディング回路314が図9の復調回路152とECCデコーディング回路162に対応する。
図11のスライサ310回路内の詳細構造を図12に示す。
スライス後の2値化信号を比較器316を使って発生させている。本実施形態ではデューティフィードバック法を用い、2値化後のバイナリーデータの反転信号に対してローパスフィルター出力信号を2値化時のスライスレベルに設定している。本実施形態ではこのローパスフィルターの遮断周波数を5KHzに設定している。この遮断周波数が高いとスライスレベル変動が早いためにノイズの影響を受け易く、逆に遮断周波数が低いとスライスレベルの応答が遅いので情報記憶媒体上のゴミや傷の影響を受けやすい。前述したRLL(1,10)とチャネルビットの基準周波数の関係も考慮位して5KHzに設定している。
データ領域、データリードイン領域、データリードアウト領域で信号再生に用いられるPRML検出法を用いた信号処理回路を図13に示す。
図13における4分割光検出器302は図9における情報記録再生部141内に存在する光学ヘッド内に固定されている。4分割光検出器302の各光検出セル1a、1b、1c、1dから得られる検出信号の総和を取った信号をここでは“リードチャンネル1信号”と呼ぶ。図9におけるPR等化回路130内の詳細な構造が図13のプリアンプ回路304からタップ制御器332、イコライザ330、オフセットキャンセラ336までの各回路で構成されている。図13内のPLL回路334は図9のPR等化回路130内の一部であり、図9のシュミットトリガー2値化回路155とは別の物を意味する。
図13におけるハイパスフィルタ回路306の1次の遮断周波数は1KHzに設定している。
プリイコライザ回路308は、図11と同様7タップのイコライザーを用いている(7タップを使用すると最も回路規模が少なく、かつ精度良く再生信号の検出ができるためである)。A/Dコンバータ回路324のサンプルクロック周波数は72MHz、デジタルは8ビット出力になっている。PRML検出法では再生信号全体のレベル変動(DCオフセット)の影響を受けると、ビタビ復調時に誤差が発生し易くなる。その影響を除去するためにイコライザー出力から得た信号を用いてオフセットキャンセラ336によりオフセットを補正する構造になっている。
図13に示した実施形態ではPR等化回路130内で適応等化処理がなされている。そのため、ビタビ復号器156の出力信号を利用してイコライザ330内の各タップ係数を自動修正するためのタップ制御器が利用されている。
図9または図13に示したビタビ復号器156内の構造を図14に示す。
入力信号に対して予想し得る全てのブランチに対するブランチメトリックをブランチメトリック計算部340で計算し、その値をACS342へ送る。ACS342は、Add Compare Selectの略称で、ACS342の中で予想し得る各パスに対応してブランチメトリックを加算して得られるパスメトリックを計算するとともにその計算結果をパスメトリックメモリ350へ転送する。この時、ACS342内ではパスメトリックメモリ350内の情報も参照して計算処理を行う。パスメモリ346内では予想し得る各パス(遷移)状況とその各パスに対応しACS342で計算したパスメトリックの値を一時保存する。出力切替え部348で各パスに対応したパスメトリックを比較し、パスメトリック値が最小となるパスを選択する。
図15に本実施形態におけるPR(1,2,2,2,1)クラスにおける状態遷移を示す。PR(1,2,2,2,1)クラスにおける取り得る状態(ステート)の遷移は図15に示す遷移のみが可能なので、図15の遷移図を元にビタビ復号器156内では復号時の存在し得る(予想し得る)パスを割り出している。
4−3)本実施形態での記録条件の説明
“3−3)本実施形態における有機色素記録膜に共通する記録特性”で本実施形態における最適な記録パワー(ピークパワー)の説明を行ったが、その最適な記録パワーを調べる時に使用した記録波形(記録時の露光条件)に付いて、図16を用いて説明する。
記録時の露光レベルとして記録パワー(ピークパワー:Peak power)、バイアスパワー(Bias power)1、バイアスパワー(Bias power)2、バイアスパワー(Bias power)3の4レベルを持ち、長さの長い(4T以上の)記録マーク9形成時には、記録パワー(ピークパワー:Peak power)とバイアスパワー(Bias power)3の間でマルチパルスの形で変調される。本実施形態では“Hフォーマット”、“Bフォーマット”いずれの方式もチャネルビット長Tに対する最小マーク長は2Tとなっている。この2Tの最小マークを記録する場合には、図16に示すようにバイアスパワー(Bias power)1の後で記録パワー(ピークパワー:Peak power)レベルの1個のライトパルスを使用し、ライトパルスの直後は一度バイアスパワー(Bias power)2になる。3Tの長さの記録マーク9を記録する場合にはバイアスパワー(Bias power)1の後に来る記録パワー(ピークパワー:Bias power)レベルのファーストパルスとラストパルスの2個のライトパルスを露光した後一旦バイアスパワー(Bias power)2になる。4T以上の長さの記録マーク9を記録する場合には、マルチパルスとラストパルスで露光した後、バイアスパワー(Bias power)2になる。
図16における縦の破線はチャネルクロック周期を示す。2Tの最小マークを記録する場合にはクロックエッジからTSFP遅れた位置から立ち上がり、その1クロック後のエッジからTELP後ろの位置で立ち下がる。その直後のバイアスパワー(Bias power)2になる期間をTLCと定義する。TSFPとTELPおよびTLCの値はHフォーマットの場合には後述するように制御データゾーンCDZ内の物理フォーマット情報PFI内に記録されている。
3T以上の長い記録マーク形成時の場合にはクロックエッジからTSFP遅れた位置から立ち上がり、最後にラストパルスで終わる。ラストパルスの直後はTLCの期間バイアスパワー(Bias power)になるが、ラストパルスの立ち上がり/立ち下がりタイミングのクロックエッジからのずれ時間をTSLP,TELPで定義する。また、先頭パルスの立ち下がりタイミングのクロックエッジから図った時間をTEFPで、さらに1個のマルチパルスの間隔をTMPで定義する。
TELP−TSFP、TMP、TELP−TSLP、TLCの各間隔は、図17に示すように最大値に対する半値幅で定義する。
また、本実施形態では上記パラメーターの設定範囲を、
0.25T≦TSFP≦1.50T (30)
0.00T≦TELP≦1.00T (31)
1.00T≦TEFP≦1.75T (32)
−0.10T≦TSLP≦1.00T (33)
0.00T≦TLC ≦1.00T (34)
0.15T≦TMP ≦0.75T (35)
とする。
さらに、本実施形態で、は記録マークの長さ(Mark length)と、その直前または直後のスペース長(Leading space length/Trailing space length)に応じて表2に示すように上記各パラメーターの値を変化できるようにしている。既に“3−3)本実施形態における有機色素記録膜に共通する記録特性”の所で説明した、本実施形態に示した記録原理で記録される追記形情報記憶媒体の最適な記録パワーを調べた時の各パラメーターの値を表3に示す。この時のバイアスパワー(Bias power)1、バイアスパワー(Bias power)2、バイアスパワー(Bias power)3の値は、それぞれ、2.6mW、1.7mW、1.7mWであり、再生パワーは0.4mWだった。
<5>本実施形態における有機色素記録膜の具体的説明
5−1)本実施形態における“L→H”記録膜に関する特徴説明。
未記録領域に比べて記録マーク内で光反射量が低下する特性を有する“L→H”記録膜に関する説明を行う。この記録膜を用いた場合の記録原理としては“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”で説明した記録原理の中で主に、
・発色特性変化
・発色現象に寄与する電子に対する電子構造(電子軌道)の変化〔脱色作用等〕
・分子間の配列変化
のいずれかを利用し、吸光スペクトルの特性を変化させる(ことは既に説明した通りである)。
“L→H”記録膜に関しては、特に未記録場所と既記録場所での反射量範囲を片面2層構造を持った再生専用情報記憶媒体の特性を視野に入れて規定したことを特徴とする。
本実施形態で規定している“H→L”記録膜と“L→H”記録膜の未記録領域(非記録部)における光反射率範囲を図18に示す。
本実施形態では“H→L”記録膜の非記録部での反射率下限値δが“L→H”記録膜の非記録部での上限値γより高くなるように規定している。
情報記録再生装置あるいは情報再生装置に上記情報記憶媒体を装着した時、図9のスライスレベル検出部132またはPR等化回路130で非記録部の光反射率を測定し、瞬時に“H→L”記録膜か“L→H”記録膜の判別ができるので、記録膜の種別判別が非常に容易になる。
多くの製造条件を変えて作成した“H→L”記録膜と“L→H”記録膜を作成して測定した結果、“H→L”記録膜の非記録部での反射率下限値δと“L→H”記録膜の非記録部での上限値γの間の光反射率αを32%〜40%の範囲以内にすると、記録膜の製造性が高く、媒体の低価格化が容易であることが分かった。
“L→H”記録膜非記録部(“L”部)の光反射率範囲801を再生専用形情報記憶媒体における片面2記録層の光反射率範囲803に一致させ、“H→L”記録膜の非記録部(“H”部)の光反射率範囲802を再生専用形情報記憶媒体における片面単層の光反射率範囲804に一致させると、再生専用形情報記憶媒体との互換性が良く情報再生装置の再生回路を兼用化できるので情報再生装置を安価に作ることができる。
多くの製造条件を変えて作成した“H→L”記録膜と“L→H”記録膜を作成して測定した結果、記録膜の製造性を高めて媒体の低価格化を容易にするために本実施形態では“L→H”記録膜の非記録部(“L”部)の光反射率の下限値βを18%、上限値γを32%とし、“H→L”記録膜の非記録部(“H”部)の光反射率下限値δを40%、上限値εを85%にした。
本実施形態における各種記録膜での非記録位置と既記録位置での反射率を図19、表4に示す。
Hフォーマット(“<7>Hフォーマットの説明”を参照)を採用した場合、図18のように非記録部での光反射率範囲を規定することでグルーブレベルを基準として“L→H”記録膜ではエンボス領域(システムリードイン領域SYLDI等)と記録マーク領域(データリードイン領域DTLDI、データリードアウト領域DTLDOやデータ領域DTA)で同じ方向に信号が現れる。同様に“H→L”記録膜ではグルーブレベルを基準としてエンボス領域(システムリードイン領域SYLDI等)と記録マーク領域(データリードイン領域DTLDI、データリードアウト領域DTLDOやデータ領域DTA)で反対方向に信号が現れる。
この現象を利用し、“L→H”記録膜と“H→L”記録膜間での記録膜識別に使えるだけでなく、“L→H”記録膜と“H→L”記録膜に対応した検出回路設計が容易となる。また、本実施形態に示した“L→H”記録膜上に記録した記録マークから得られる再生信号特性を“H→L”記録膜から得られる信号特性に合わせて(20)式〜(23)式を満足させる。これにより、“L→H”記録膜と“H→L”記録膜いずれの記録膜を用いた場合にも同一の信号処理回路が使え、信号処理回路の簡素化と低価格化が図れる。
図18、図19、表4に示した“H→L”記録膜と“L→H”記録膜の光反射率の関係を示す実施例に対する他の実施例について図65から図67を用いて説明する。
本実施形態では、図6に示すように、プリグルーブ領域11の幅Wgがランド領域12の幅Wlよりも広くなるように設定している。それにより図65に示すようにプリグルーブ領域11上(データリードイン領域DTLDIまたはデータ領域DTA、データリードアウト領域DTLDO内)をトラッキングした時のプリグルーブ領域11からの信号レベル(Iot)grooveを高くしたことが特徴となっている。
5−2)本実施形態の“L→H”記録膜に関する光吸収スペクトルの特徴
“3−4)本実施形態における“H→L”記録膜に関する特徴説明”で説明したように“H→L”記録膜では未記録領域での相対的な吸光度が基本的に低いため、再生時に再生光を照射された時にその再生光のエネルギーを吸収して生じる光学特性変化が起こりにくい。仮に吸光度が高い記録マーク内で再生光のエネルギーを吸収して光学特性変化(記録作用の更新)が生じたとしても記録マーク内からの光反射率が下がる一方なので、再生信号の振幅(I11≡I11H−I11L)が増加する方向に働き、再生信号処理への悪影響は少ない。
それに比べて、“L→H”記録膜は“未記録部の光反射率が記録マーク内より低い”と言う光学的特性を持つ。このことは図1(b)を用いて説明した内容から分かるように、記録マーク内より未記録部の吸光度が高いことを意味している。そのため、“L→H”記録膜は“H→L”記録膜に比べると再生時の信号劣化が起こり易い。“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”内で説明したように、“ε〕紫外線や再生光照射による再生信号劣化が万一発生した場合に備えて再生情報の信頼性を向上させる”必要がある。
有機色素記録材料の特性を詳細に調べた結果、再生光のエネルギーを吸収して光学特性変化を起こすメカニズムと紫外線照射による光学特性変化のメカニズムがほぼ類似していることが分かった。その結果、未記録領域での紫外線照射に対する耐久性を向上させる構造を持たせると再生時の信号劣化が起き辛くなる。そのため、“L→H”記録膜ではλmax write(記録光の波長に最も近い極大吸収波長)の値を記録光または再生光の波長(405nm近傍)よりも長くしたことを特徴とする。これにより、紫外線に対する吸収率を低くでき、紫外線照射に対する耐久性を大幅に向上できる。図21から分かるように、λmax write近傍での既記録部と未記録部間での吸光度の違いが小さく、λmax write近傍の波長光で再生した場合の再生信号変調度(信号振幅)が小さくなる。半導体レーザ光源の波長変動も視野に入れると、355nm〜455nmの範囲では充分に大きな再生信号変調度(信号振幅)を取れることが望ましい。従って、本実施形態においてλmax writeの波長は355nm〜455nmの範囲外(すなわち、455nmよりも長波長側)に存在するように記録膜3−2の設計を行っている。
本実施形態での“L→H”記録膜における光吸収スペクトルの一例を図20に示す。“5−1)本実施形態における“L→H”記録膜に関する特徴説明”で説明したように、本実施形態では“L→H”記録膜の非記録部(“L”部)の光反射率の下限値βを18%、上限値γを32%に設定している。
1−0.32=0.68より上記条件を満足するためには405nmにおける未記録領域での吸光度の値Al405として、
Al405≧68% (36)
を満足すべきなのが直感的に理解できる。
図1における光反射層4−2の405nmにおける光反射率は100%より若干低下するが、説明の簡略化のためほぼ100%に近いと仮定する。従って、吸光度Al=0の時の光反射率はほぼ100%になる。
図20においてλmax writeの波長での記録膜全体としての光反射率をRλmax writeで表す。この時の光反射率がゼロ(Rλmax write≒0)と仮定して(36)式を導いているが、実際には“0”とはならないので、より厳密な式を導く必要がある。
“L→H”記録膜の非記録部(“L”部)の光反射率の上限値γを32%に設定する厳密な条件式は、
1−Al405×(1−Rλmax write)≦0.32 (37)
で与えられる。
従来の追記形情報記憶媒体は全て“H→L”記録膜を使用しており、“L→H”記録膜に関する情報の蓄積がないが、“5−3)アニオン部:アゾ金属錯体+カチオン部:色素”で後述する本実施形態を使用した場合には(37)式を満たす最も厳しい条件として、
Al405≧80% (38)
となる。
上記実施形態で後述する有機色素記録材料を使用した場合には、製造時の特性ばらつきや記録層3−2の厚み変化等のマージンも含めて記録膜の光学設計を行うと“5−1)本実施形態における“L→H”記録膜に関する特徴説明”で説明した反射率を満足する最低限の条件としては、
Al405≧40% (39)
を満足すれば良いことが分かった。
さらに、
Al355≧40% (40)
Al455≧40% (41)
のいずれかを満足することで、355nmから405nmの範囲あるいは405nmから455nmの範囲(両方の式が同時に満足する場合には、355nmから455nmの範囲)で光源の波長が変化しても安定な記録特性または再生特性を確保できる。
本実施形態の“L→H”記録膜における記録後の光吸収スペクトル変化状況を図21に示す。記録マーク内での最大吸収波長λlmaxの値がλmax writeの波長からずれており、分子間の配列変化(例えば、アゾ金属錯体同士の配列変化)が生じていると考えられる。さらに、λlmaxの所での吸光度と405nmでの吸光度Al405のいずれもが低下しているとともに光吸収スペクトルの広がり自体が広がっている所から平行して脱色作用(局所的な電子軌道の切断(局所的な分子結合の解離))が起きていると考えられる。
本実施形態の“L→H”記録膜においても(20)、(21)、(22)、(23)の各式を満足させることで“L→H”記録膜と“H→L”記録膜どちらに対しても同一の信号処理回路を使えるようにして信号処理回路の簡素化と低価格化を図っている。
(20)式において、
I11/I11H≡(I11H−I11L)/I11H≧0.4 (42)
を変形すると、
I11H≧/I11L/0.6 (43)
となる。
既に説明したように本実施形態において“L→H”記録膜の未記録部(“L”部)の光反射率の下限値βを18%に設定しており、この値がI11Lに対応する。
さらに、概念的に、
I11H≒1−Ah405×(1−Rλmax write) (44)
と対応するので、(43)式と(44)式から、
1−Ah405×(1−Rλmax write)≧0.18/0.6 (45)
となる。
1−Rλmax write≒0の時、(45)式は、
Ah405≦0.7 (46)
で得られる。
上記(46)式と(36)式を比較すると吸光度の値として68%〜70%近傍を境にAl405とAh405の値を設定すれば良さそうなことが分かる。
さらに、Al405の値として(39)式の範囲になる場合と、信号処理回路の性能安定性を考えると、厳しい条件として、
Ah405≦0.4 (47)
がある。
なお、可能で有れば、
Ah405≦0.3 (48)
を満足することが望ましい。
5−3)アニオン部:アゾ金属錯体+カチオン部:色素
“5−1)本実施形態における“L→H”記録膜に関する特徴説明”で説明した特徴を有し、“5−2)本実施形態の“L→H”記録膜に関する光吸収スペクトルの特徴”で示した条件を満足する本実施形態における具体的に有機色素材料について説明する。
記録層3−2の厚みは、(3)、(4)、(27)、(28)の各式で示した条件を満足し、スピナーコーティング(スピンコーティング)により形成する。
比較のために一例を上げると、“食塩”の結晶はプラスに帯電する“ナトリウムイオン”とマイナスに帯電する“塩素イオン”との間の“イオン結合”で組み立てられている。それと同様、高分子においても“イオン結合”に近い形で異なる複数の高分子が組み合わさり有機色素材料を構成する場合がある。
本実施形態における有機色素記録膜3−2は、プラス側に帯電する“カチオン部”とマイナス側に帯電する“アニオン部”で構成されている。特に、プラス側に帯電する“カチオン部”に発色特性を有する“色素”を利用し、対イオン部を意味し、マイナス側に帯電する“アニオン部”に有機金属錯体を利用することで結合の安定性を高め、“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”の中で示した“δ〕発色領域での電子構造を安定化させ、紫外線や再生光照射に対する構造分解が生じ辛くする”の条件を満足させたことを特徴とする。
具体的な内容として本実施形態では、有機金属錯体として、図1に一般構造式を示した“アゾ金属錯体”を利用している。アニオン部とカチオン部の組み合わせからなる本実施形態において、このアゾ金属錯体の中心金属Mとしてコバルトまたはニッケルを使用して光安定性を高めているが、それに限らずスカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀等を用いても同様の効果が得られる。
本実施形態では、カチオン部に使用する色素として図2に一般構造式を示したシアニン色素、図3に一般構造式を示したスチリル色素、図4に一般構造式を示したモノメチンシアニン色素のいずれかを使用する。
本実施形態では、アニオン部にアゾ金属錯体を使用しているが、それに限らず例えば、図5に一般構造式を示すホルマザン金属錯体を使用しても良い。
上記アニオン部とカチオン部からなる有機色素記録材料は、最初粉末状である。
記録層3−2を形成する場合には、この粉末状の有機色素記録材料を有機溶剤に溶かした後、透明基板2−2上にスピンコーティングを行う。この時に使用する有機溶剤として例えば、フッ素アルコール系のTFP(テトラフルオロプロパノール)やペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル、石油ベンジン等の炭化水素類、アルコール類、フェノール類、エーテル類、ニトリル類、ニトロ化合物や含硫化合物のいずれかかまたはそれらの組み合わせを使用する。
<6>塗布形有機色素記録膜と光反射層界面でのプリグルーブ形状/プリピット形状に関する説明
6−1)光反射層
“使用波長と本実施形態との関係説明”に記載したように本実施形態では405nmを中心とした特に355〜455nmの範囲を考えている。
この波長帯での光反射率の高い金属材料は光反射率の高い順に並べるとAgが96%前後、Alが80数%前後、Rhが80数%前後となっている。
有機色素記録材料を用いた追記形情報記憶媒体では図1(b)に示すように光反射層4−2からの反射光が基本になっているので光反射層4−2では光反射率の高い特性が要求される。
特に本実施形態の“H→L”記録膜の場合には未記録領域での光反射率が低いので、光反射層4−2単体での光反射率が低いと特にプリピット(エンボス)領域からの再生信号C/N比が低く再生時の安定性に欠けてしまうので、特に光反射層4−2単体での光反射率が高いことが必須となる。
従って、本実施形態では上記波長帯において最も反射率の高いAg(銀)を中心とした材料を使用する。光反射層4−2の材料として銀単体では“原子が移動し易い”、“腐食し易い”と言う問題が生じる。
最初の問題点に対し別の原子を添加して一部合金化すると銀原子が移動し辛くなる。別原子を入れる第1の実施形態として光反射層4−2の材質をAgNdCuにする。AgNdCuは固溶状態になるので銀単体の状態よりは若干反射率が下がる。別原子を入れる第2の実施形態では光反射層4−2の材質をAgPdにして電位を変えることで電気化学的に腐食し辛くする。銀の酸化等により光反射層4−2が腐食すると光反射率が低下する。
図1(b)に示す記録膜構造を有する有機色素記録膜で特に“本実施形態における有機色素記録膜の特徴説明”で示す有機色素記録膜の場合には、特に記録層3−2と光反射層4−2との間の界面での光反射率が非常に重要となる。
この界面で腐食が発生すると光反射率が低下し光学的な界面形状がぼやけ、そこでの反射光によるトラックずれ検出信号(プッシュプル信号)やウォブル信号、プリピット(エンボス)領域からの検出信号特性が劣化する。特に、図6(b)、(c)に示すようにプリグルーブ領域11の幅Wgがランド領域幅Wlよりも広い場合には、トラックずれ検出信号(プッシュプル信号)やウォブル信号が出辛いので腐食による記録層3−2と光反射層4−2との間の界面での光反射率の劣化の影響は大きくなる。
この界面での光反射率の劣化を防止するため、第3の実施形態として光反射層4−2にAgBiを使用する。
AgBiは表面(記録層3−2と光反射層4−2との間の界面)に不動態皮膜を形成するため非常に安定相を形成し、上記界面での光反射率の劣化を防止する。
すなわち、AgにBi(ビスマス)をわずかに添加させると、Biが上記界面に浮き上がり、それが酸化して酸化ビスマスと言う非常に緻密な膜(不動態皮膜)を形成し、内部での酸化を食い止める働きがある。
この不動態皮膜は上記界面上に形成されて非常に安定な相を形成するため光反射率の劣化が起きず長期に亘ってトラックずれ検出信号(プッシュプル信号)やウォブル信号、プリピット(エンボス)領域からの検出信号特性の安定性を保証する。
355〜455nm範囲の波長帯において銀単体が最も光反射率が高く、別原子の添加量を上げるに従って光反射率が低下する。
そのため、本実施形態でのAgBi内のBi原子の添加量は、5at%以下が望ましい(at%は、atomic percentを意味し、例えば、AgBiの合計原子数100の中でBi原子が5個存在することを示している)。
実際に作成して特性評価した所、Bi原子の添加量が0.5at%以上有れば不動態皮膜化が可能なことが分かった。
その評価結果に基付き本実施形態での光反射層4−2内のBi原子添加量を1att%としている。この第3の実施形態では添加原子がBiのみなので第1の実施形態AgNdCu(Ag内にNdとCuの2種類の原子を添加する)と比べると添加原子量を少なくでき、AgNdCuよりAgBiの方が光反射率を上げることができる。
その結果、本実施形態の“H→L”記録膜や図6(b)、(c)に示すようにプリグルーブ領域11の幅Wgがランド領域幅Wlよりも広い場合でも、安定して精度の良いトラックずれ検出信号(プッシュプル信号)やウォブル信号、プリピット(エンボス)領域からの検出信号が得られる。
上記実施形態は、AgBiに限らず、他に不動態皮膜を作る銀合金としてAgMg、AgNi、AgGa、AgNx、AgCo、AgAlもしくは前記記載された原子を含む3元系を用いても良い。
この光反射層4−2の厚みとしては5nm〜200nmの範囲に設定している。厚みが5nmより薄いと光反射層4−2が均一にならずランド状に形成されてしまう。そのため光反射層4−2の厚みは5nmにしている。AgBi膜は厚みが80nm以下にすると裏側に透過し出すので、片面1記録層の場合には厚みを80nm〜200nm、好ましくは100nm〜150nmとし、片面2記録層の場合には厚みを5nm〜15nmの範囲に設定する。
6−2)塗布形有機色素記録膜と光反射層界面でのプリピット形状に関する説明
本実施形態のHフォーマットでは図23に示すようにシステムリードイン領域SYLDIを持ち、この中ではエンボスピット領域211になっており、図71に示すようにプリピットの形でこと前に情報が記録されている。この領域での再生信号は再生専用情報記憶媒体からの再生信号特性に合わせ、図9に示す情報再生装置または情報記録再生装置内の信号処理回路を再生専用情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体で兼用させている。この領域から検出される信号に対する定義は“3−4)本実施形態における“H→L”記録膜に関する特徴説明”の定義に合わせる。すなわち、充分に長い長さ(11T)のスペース領域14からの再生信号量をI11Hと定義し、前記I11Hと充分に長い長さ(11T)を持つプリピット(エンボス)領域13からの再生信号をI11Lと定義するとともに両者の差分値をI11≡I11H−I11Lとする。
本実施形態では、この領域での再生信号を再生専用情報記憶媒体からの再生信号特性に合わせて、
I11/I11H≧0.3 (54)
望ましくは
I11/I11H>0.5 (55)
とする。
2T長さのプリピット(エンボス)領域13とのスペース領域14の繰り返し信号振幅をI2とした時、
I2/I11≧0.5 (56)
望ましくは
I2/I11>0.7 (57)
にしている。
上記(54)式または(55)式を満足するための物理的な条件に付いて説明する。
既に、図1(b)により説明したように、プリピットからの信号特性は、主に光反射層4−2での反射光により支配される。従って、光反射層4−2でのスペース領域14とプリピット(エンボス)領域13間の段差量Hprにより再生信号振幅値I11が決まる。
光学的な近似計算を行うとこの段差量Hprは再生光波長λ、記録層3−2内の屈折率n32に対して、
I11∝sin2{(2π×Hpr×n32)/λ} (58)
の関係が有り、(58)式からHpr≒λ/(4×n32)の時にI11が最大となることがわかる。
(54)式または(55)式を満たすには、(58)式から最低でも、
Hpr≧λ/(12×n32) (59)
望ましくは
Hpr>λ/(6×n32) (60)
を満足している必要がある。
“使用波長と本実施形態との関係説明”で説明したように本実施形態では、λ=355nm〜455nmを利用しており、“2−1)記録原理/記録膜構造の違いと再生信号生成に関する基本的な考え方の違い”で説明したように、n32=1.4〜1.9なので、この値を(59)式または(60)式に代入すると、
Hpr≧15.6nm (62)
望ましくは
Hpr>31.1nm (63)
の条件を満たすように段差を作っている。
従来の追記形情報記憶媒体では図71(b)に示すようにスペース領域14で記録層3−2の厚みが薄かったために光反射層4−2と記録層3−2との界面での段差が小さく、(62)式を満足できなかった。
それに対して、本実施形態ではプリピット(エンボス)領域13での記録層3−2の厚みDgとスペース領域14での記録層3−2の厚みDlの関係が“3−2−E〕本実施形態における記録層の厚み分布に関する基本的特徴”に記載した条件に合うように工夫した結果、図71(b)に示すように(62)式または(63)式を満足させる充分に大きな段差Hprを確保することができた。
上記のような光学的近似検討を行い、本実施形態では(56)式または(57)式を満足できるように充分な再生信号の解像度を確保するには、図71(b)に示すようにプリピット(エンボス)領域13の幅Wpをトラックピッチの半分以下とし、プリピット(エンボス)領域13からの再生信号の解像度を大きく取れるように工夫している。
<7>Hフォーマットの説明
以下に、本実施形態におけるHフォーマットについて詳細に説明する。
図22に本実施形態における情報記憶媒体の構造および寸法を示す。
実施形態としては、
・再生専用で記録が不可能な“再生専用形情報記憶媒体”
・1回のみの追記記録が可能な“追記形情報記憶媒体”
・何回でも書き替え記録が可能な“書替え形情報記憶媒体”
の3種類の情報記憶媒体がある。
図22に示すように、上記3種類の情報記憶媒体では、大部分の構造と寸法が共通化されている。3種類の情報記憶媒体いずれも内周側からバーストカッティング領域BCA、システムリードイン領域SYLDI、コネクション領域CNA、データリードイン領域DTLDI、データ領域DTAが配置された構造になっている。OPT形再生専用媒体以外は全て外周部にデータリードアウト領域DTLDOが配置されている。
後述するように、OPT形再生専用媒体では外周部にミドル領域MDAが配置される。
システムリードイン領域SYLDIでは、エンボス(プリピット)として、情報が記録されており、追記形および書替え形のいずれも、この領域内は再生専用(追記不可能)となっている。
再生専用の情報記憶媒体では、データリードイン領域DTLDI内にもエンボス(プリピット)の形で情報が記録されているに対し、追記形および書替え形情報記憶媒体では、データリードイン領域DTLDI内は、記録マーク形成による新規情報の追記(書替え形では書替え)が可能に規定されている。
後述するように、追記形情報記憶媒体および書替え形情報記憶媒体では、データリードアウト領域DTLDO内は、新規情報の追記(書替え形では書替え)が可能な領域とエンボス(プリピット)の形で情報が記録されている再生専用領域の混在になっている。
前述したように、図22に示すデータ領域DTA、データリードイン領域DTLDI、データリードアウト領域DTLDO、ミドル領域MDAでは、そこに記録されている信号の再生に、前に説明したPRML方式を使うことで、情報記憶媒体の高密度化(特に、線密度の向上)が達成でき、システムリードイン領域SYLDIや、システムリードアウト領域SYLDOでは、そこに記録されている信号の再生に、スライスレベル検出方式を用いることで、現行DVDとの互換性を確保するとともに再生の安定化を確保している。
現行DVD規格とは異なり、図22に示す実施形態ではバーストカッティング領域BCAとシステムリードイン領域SYLDIとが重ならずに位置的に分離されている。両者を物理的に分離することで情報再生時のシステムリードイン領域SYLDI内に記録された情報とバーストカッティング領域BCA内に記録された情報との間の干渉を防止し、精度の高い情報再生が確保できる。
以下に図22に示すバーストカッティング領域BCA内の信号特性とデータ構造について説明する。BCA信号の測定時には、光学ヘッドから出射されるレーザ光の集光スポットが、記録層上に集光されている必要がある。下記バーストカッティング領域BCAから得られる再生信号は、遮断周波数が550kHzの2次のローパス・ベッセル・フィルターでフィルタリングされる。
情報記憶媒体内の中心から、半径22.4mmから23.0mmまでの間にバーストカッティング領域BCAの下記の信号特性が規定される。バーストカッティング領域BCAからの再生信号は、図77(a)の波形が得られ、BCAコード、チャネルビットが“0”の時の最大と最小レベルを“IBHmax”と“IBHmin”で定義し、BCAコード、チャンネルビット“1”の最大のボトムレベルを“IBLmax”で定義する。また中間レベルを“(IBHmin+IBLmax)/2”で定義する。
本実施形態では、各検出信号特性を(IBLmax/IBHmin)が0.8以下になる条件と、(IBHmax/IBHmin)が1.4以下になる条件とする。
BCAコード、チャネルビットの周期信号を、図77(b)に示す。IBLとIBHの平均レベルを基準とし、BCA信号がその基準位置をクロスする位置で、エッジ位置とみなす。
BCA信号の周期は、回転速度が2760rpm(46.0Hz)の時に規定される。図77(b)に示すように、先頭エッジ(立ち下がり位置)間の周期を、4.63×n±1.00μs、光量が低下する場所でのパルス位置の幅(立ち下がり位置から次の立ち上がり位置までの間隔)を、1.56±0.75μsとする。
BCAコードは、情報記憶媒体製造終了後に記録される場合が多い。
しかし、BCAコードから再生される信号特性が図77に示される信号特性を満足する場合には、BCAコードがプリピットとしてあらかじめ記録されていてもよい。BCAコードが情報記憶媒体の円周に沿った方向で記録され、パルス幅の狭い方向が光反射率の低い方向に一致されるように記録される。
BCAコードは、RZ変調方法により変調されて記録される。パルス幅が狭い(=反射率の低い)パルスは、この変調されたBCAコードのチャネルクロック幅の半分よりも狭い必要がある。
図78にBCAデータ構造を示す。
BCAデータは、2個のBCAプリアンブル73、74と2個のポストアンブル76、77および2個のBCAデータ領域BCAAを持ち、各BCAデータ領域BCAAには、各BCAエラー検出コードEDCBCAとBCAエラー訂正コードECCBCAが付加され、その間には、BCA連結領域75が配置されている。さらに、各4バイト毎には1バイトずつのシンクバイトSBBCA またはリシンクRSBCA が挿入されている。
BCAプリアンブル73、74は4バイトで構成され、全て“00h”が記録される。また、各BCAプリアンブル73、74の直前には、シンクバイトSBBCAが配置される。
BCAデータ領域BCAA内には、76バイトが設定されている。BCAポストアンブル76、77は4バイトで構成され、全て“55h”の繰り返しパターンが記録されている。BCA連結領域75は、4バイトで構成され、全て“AAh”が繰り返し記録される。
BCAシンクバイトSBBCAと、BCAリシンクRSBCAのビットパターンを図79に示す。
ビットパターンとしては、モードAとモードBの2種類存在し、モードAの場合には固定パターン67となり、モードBの場合には、同期コード68のようになる。
図80に、BCAデータ領域内に記録されたBCA情報内容の例を示す。
BCAデータ領域BCAAは、76バイトの情報が記録可能となっており、データはBCAレコードユニットBCAU単位で記録される。
このBCAレコードユニット(BCAU)内に記録される情報を、BCAレコードと呼ぶ。各BCAレコードのサイズは、4バイトの整数倍になっている。
各BCAレコード内は、図80(c)に示すように2バイトで構成されるBCAレコードID61と、1バイトで構成されるバージョン番号情報62と、1バイトで構成される記録データのデータ長情報63、4mバイトのデータレコード(記録データ64)が順次記録される。
BCAレコードID61に設定されるIDは、0000h〜7FFFFhまでが、公式利用方法に割り当てられ、8000hからFFFFhまでが個別な利用方法に割り当てられる。
1バイトで構成されるバージョン番号情報62は、上位4ビットのメジャー数字71と、下位4ビットのマイナー数字72に分けられる。メジャー数字71は、バージョン番号の整数一桁目が記録され、マイナー数字72には、バージョン番号の小数点以下一桁目の値が記録される。例えばバージョン“2.4”の場合にはメジャー数字71の欄に、“2”が記録されマイナー数字72の欄には“4”の数字が記録される。
本実施形態のHフォーマットにおいては、前記BCAレコード内に図80(e)に示すように、HD_DVD規格書タイプの識別情報80が記録される。
具体的にこの情報の内容は、図80(f)に示すように、BCAレコードID81と、バージョン番号情報82と、記録データのデータ長情報83と、が記録されるとともに、4ビットで構成される規格書タイプ情報84と、4ビットで構成されるディスクタイプ情報85と拡張パートバージョン情報86(1バイト)とリザーブ領域87(2バイト)が記録される。前記ディスクタイプ情報85内の上位1ビットには、記録マークの極性(H→Lか、L→Hかの識別)情報88が配置されている。
図78に示すように、BCAプリアンブル73とBCAポストアンブル76に囲まれたBCAデータ領域BCAAと同じ情報がBCAプリアンブル74とBCAポストアンブル77に囲まれたBCAデータ領域BCAAに記載されている。
このように同じ情報が複数のBCAデータ領域BCAAに多重書きされているため、仮に情報記憶媒体の表面にできたゴミや傷の影響で一方のデータの再生が不可能になっても、他方のBCAデータ領域BCAAからのデータ再生が可能となる。その結果、BCAデータ領域BCAAに記録されたデータの信頼性が大幅に向上する。
さらに図78に示したBCAデータ構造では、従来から存在するBCAエラー検出コードEDCBCAに加えてさらにBCAエラー訂正コードECCBCAが存在するため、BCAデータ領域BCAA内のデータにエラーが発生してもBCAエラー訂正コードECCBCAによりエラーを訂正することができ、さらに信頼性が向上する。
他の実施形態として“L→H形”記録膜を使った場合にバーストカッティング領域BCAの配置場所に予め微細な凹凸形状を形成する方法もある。後で表8における192バイト目に存在する記録マークの極性(“H→L”か“L→H”かの識別)情報に関する説明を行う部分で、本実施形態では従来の“H→L”だけでなく“L→H”記録膜も規格内に組み込み、記録膜の選択範囲を広げ、高速記録可能や低価格媒体を供給可能とすると言う説明を行う。
後述するように、本実施形態では“L→H”記録膜を使う場合も考慮する。バーストカッティング領域BCA内に記録するデータ(バーコードデータ)は記録膜に対して局所的にレーザ露光することで形成する。
図23に示すようにシステムリードイン領域SYLDIはエンボスピット領域211で形成するため、システムリードイン領域SYLDIからの再生信号は鏡面210からの光反射レベルと比べて光反射量が減る方向に現れる。もし、バーストカッティング領域BCAを鏡面210状態にし、“L→H”記録膜を用いた場合にはバーストカッティング領域BCA内に記録されたデータからの再生信号は(未記録状態の)鏡面210からの光反射レベルよりも光反射量が増加する方向に現れる。その結果、バーストカッティング領域BCA内に形成されたデータからの再生信号の最大レベルと最小レベルの位置(振幅レベル)とシステムリードイン領域SYLDIからの再生信号の最大レベルと最小レベルの位置(振幅レベル)との間に大きく段差が生じてしまう。
図23に後述するように、情報再生装置または情報記録再生装置は、
(1)バーストカッティング領域BCA内の情報の再生
→(2)システムリードイン領域SYLDI内の情報データゾーンCDZ内の情報の再生
→(3)データリードイン領域DTLDI内の情報の再生(追記形または書替え形の場合)
→(4)参照コード記録ゾーンRCZ内での再生回路定数の再調整(最適化)
→(5)データ領域DTA内に記録された情報の再生もしくは新たな情報の記録
の順で処理を行うため、バーストカッティング領域BCA内に形成されたデータからの再生信号振幅レベルとシステムリードイン領域SYLDIからの再生信号振幅レベルに大きな段差があると情報再生の信頼性が低下すると言う問題が生じる。
その問題を解決するため、この実施形態としては記録膜に“L→H”記録膜を使用する場合には、このバーストカッティング領域BCAに予め微細な凹凸形状を形成しておくことを特徴とする。
予め微細な凹凸形状を形成しておくと、局所的なレーザ露光によりデータ(バーコードデータ)を記録する前の段階で、光の干渉効果により光反射レベルが鏡面210からの光反射レベルよりも低くなる。すなわち、バーストカッティング領域BCA内に形成されたデータからの再生信号振幅レベル(検出レベル)とシステムリードイン領域SYLDIからの再生信号振幅レベル(検出レベル)の段差が大きく減り、情報再生の信頼性が向上する。これにより、上記(1)から(2)へ移行する際の処理が容易になる。
“L→H”記録膜を使用する場合には、バーストカッティング領域BCAに予め形成する微細な凹凸形状の具体的内容としてシステムリードイン領域SYLDI内と同様にエンボスピット領域211とする方法があるが、他の実施形態としてデータリードイン領域DTLDIやデータ領域DTAと同様にグルーブ領域214あるいはランド領域およびグルーブ領域213にする方法もある。
システムリードイン領域SYLDIとバーストカッティング領域BCAを分離して配置させる実施形態の説明において説明したように、バーストカッティング領域BCA内とエンボスピット領域211が重なると不要な干渉によるバーストカッティング領域BCA内に形成されたデータからの再生信号へのノイズ成分が増加することを既に説明した。
バーストカッティング領域BCA内の微細な凹凸形状の実施形態としてエンボスピット領域211にせずにグルーブ領域214あるいはランド領域およびグルーブ領域213にすると、不要な干渉によるバーストカッティング領域BCA内に形成されたデータからの再生信号へのノイズ成分が減少して再生信号の品質が向上すると言う効果がある。
バーストカッティング領域BCA内に形成するグルーブ領域214あるいはランド領域およびグルーブ領域213のトラックピッチをシステムリードイン領域SYLDIのトラックピッチに合わせると情報記憶媒体の製造性が向上する効果がある。
すなわち、情報記憶媒体の原盤製造時に原盤記録装置の露光部の送りモータ速度を一定にしてシステムリードイン領域内のエンボスピットを作成している。この時、バーストカッティング領域BCA内に形成するグルーブ領域214あるいはランド領域およびグルーブ領域213のトラックピッチをシステムリードイン領域SYLDI内のエンボスピットのトラックピッチに合わせることで、バーストカッティング領域BCAとシステムリードイン領域SYLDIとで引き続き送りモータ速度を一定に保持できる。このことは、例えば、途中で送りモータの速度を変えることを必要としないので、ピッチムラが生じ辛く、情報記憶媒体の製造性が向上する。
表5に再生専用形情報記憶媒体における本実施形態の各パラメータ値を、表6に追記形情報記憶媒体における本実施形態の各パラメータ値、表7に書替え専用形情報記憶媒体における本実施形態の各パラメータ値を示す。
表5または表6と表7を比較(特に(B)の部分を比較)すると分かるように、再生専用形または追記形情報記憶媒体に対して書替え専用形情報記憶媒体の方がトラックピッチおよび線密度(データビット長)を詰めることにより記録容量を高くしている。
後述するように、書替え専用形情報記憶媒体ではランドグルーブ記録を採用することで隣接トラックのクロストークの影響を低減させてトラックピッチを詰めている。または再生専用形情報記憶媒体、追記形情報記憶媒体、書替え形情報記憶媒体のいずれにおいてもシステムリードイン/アウト領域SYLDI/SYLDOのデータビット長とトラックピッチ(記録密度に対応)をデータリードイン/データリードアウト領域DTLDI/DTLDOよりも大きく(記録密度を低く)していることを特徴とする。
システムリードイン/システムリードアウト領域SYLDI/SYLDOのデータビット長とトラックピッチを現行DVDのリードイン領域の値に近付けることで現行DVDとの互換性を確保している。
本実施形態でも現行DVD−Rと同様に追記形情報記憶媒体のシステムリードイン/システムリードアウト領域SYLDI/SYLDOでのエンボスの段差を浅く設定している。これにより、追記形情報記憶媒体のプリグルーブの深さを浅くし、プリグルーブ上に追記により形成する記録マークからの再生信号変調度を高くする効果がある。
逆に、その反作用としてシステムリードイン/システムリードアウト領域SYLDI/SYLDOからの再生信号の変調度が小さくなると言う問題が生じるが、それに対して、システムリードイン領域SYLDI/システムリードアウト領域SYLDOのデータビット長(とトラックピッチ)を粗くすることで、最も詰まった位置でのピットとスペースの繰り返し周波数を、再生用対物レンズのMTF(Modulation Transfer Function)の光学的遮断周波数から離す(大幅に小さくする)ことで、システムリードイン/システムリードアウト領域SYLDI/SYLDOからの再生信号振幅を引き上げ、再生の安定化を図ることができる。
各種情報記憶媒体におけるシステムリードインSYLDIとデータリードインDTLDI内の詳細なデータ構造比較を図23に示す。図23(a)は再生専用形情報記憶媒体のデータ構造、図23(b)は書替え形情報記憶媒体のデータ構造を示し、図23(c)は追記形情報記憶媒体のデータ構造を示す。
図23(a)に示すように、再生専用形情報記憶媒体では、コネクションゾーンCNZのみ鏡面210となっている以外は、システムリードイン領域SYLDIとデータリードイン領域DTLDI、データ領域DTA内は、全てエンボスピットが形成されたエンボスピット領域211となっている。
システムリードイン領域SYLDI内は、エンボスピット領域211となっており、コネクションゾーンCNZが鏡面210になっている部分は共通しているが、図23(b)に示すように書替え形情報記憶媒体ではデータリードイン領域DTLDIとデータ領域DTA内はランド領域とグルーブ領域213が形成されており、追記形情報記憶媒体ではデータリードイン領域DTLDIとデータ領域DTA内はグルーブ領域214が形成されている。このランド領域とグルーブ領域213またはグルーブ領域214内に記録マークを形成することで情報を記録する。
イニシャルゾーンINZは、システムリードインSYLDIの開始位置を示している。イニシャルゾーンINZ内に記録されている意味を持った情報としては、前述した物理セクタ番号または論理セクタ番号の情報を含むデータID(Identification Data)情報が離散的に配置されている。
1個の物理セクタ内には、後述するように、データID、IED(ID Error Detection code)、ユーザ情報を記録するメインデータ、EDC(Error Detection Code)から構成されるデータフレーム構造の情報が記録されるが、イニシャルゾーンINZ内にも上記のデータフレーム構造の情報が記録される。しかしイニシャルゾーンINZ内ではユーザ情報を記録するメインデータの情報を全て“00h”に設定するため、イニシャルゾーンINZ内での意味のある情報は前述したデータID情報のみとなる。この中に記録されている物理セクタ番号または論理セクタ番号の情報から現在位置を知ることができる。
すなわち、図9の情報記録再生部141で情報記憶媒体からの情報再生を開始する時にイニシャルゾーンINZ内の情報から再生開始した場合には、まずデータID情報の中に記録されている物理セクタ番号または論理セクタ番号の情報を抽出して情報記憶媒体内の現在位置を確認しつつ制御データゾーンCDZへ移動する。
バッファゾーン1 BFZ1およびバッファゾーン2 BFZ2はそれぞれ32ECCブロックから構成されている。表5〜表7に示すように、1ECCブロックはそれぞれ32物理セクタから構成されているので、32ECCブロックは1024物理セクタ分に相当する。バッファゾーン1 BFZ1およびバッファゾーン2 BFZ2内もイニシャルゾーンINZと同様にメインデータの情報を全て“00h”に設定している。
コネクション領域(Connection Area)CNA内に存在するコネクションゾーンCNZはシステムリードイン領域SYLDIとデータリードイン領域DTLDIを物理的に分離するための領域で、この領域はいかなるエンボスピットやプリブルーブも存在しないミラー面(鏡面)になっている。
再生専用形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体の参照コード記録ゾーンRCZ(Reference code zone)は、再生装置の再生回路調整用(例えば、図13のタップ制御器332内で行われる適応等化時の各タップ係数値の自動調整用)に用いられる領域で、前述したデータフレーム構造の情報が記録されている。
参照コードの長さは、1ECCブロック(=32セクタ)である。再生専用形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体の参照コード記録ゾーンRCZを、データ領域DTA(Data Area)の隣りに配置する。
現行DVD−ROMディスクおよび現行DVD−Rディスクいずれの構造においても参照コード記録ゾーンRCZとデータ領域DTAとの間に制御データゾーンが配置されており、参照コード記録ゾーンRCZとデータ領域DTAとの間が離れている。
参照コード記録ゾーンRCZとデータ領域DTAとの間が離れていると、情報記憶媒体の傾き量や光反射率あるいは(追記形情報記憶媒体の場合には)記録膜の記録感度が若干変化し、参照コード記録ゾーンの所で再生装置の回路定数を調整してもデータ領域での最適な回路定数がずれてしまうと言う問題が発生する。
上記問題を解決するために、参照コード記録ゾーンRCZを、データ領域DTAに隣接配置すると、参照コード記録ゾーンRCZ内で情報再生装置の回路定数を最適化した場合に、隣接するデータ領域DTA内でも同じ回路定数で最適化状態が保持される。
データ領域(Data Area)DTA内の任意の場所で精度良く信号再生したい場合には、
(1)参照コード記録ゾーンRCZ内で情報再生装置の回路定数を最適化する
→(2)データ領域DTA内の参照コード記録ゾーンRCZに最も近い部分を再生しながら情報再生装置の回路定数を再度最適化する
→(3)データ領域DTA内の目的位置と(2)で最適化した位置との中間位置で情報再生しながら回路定数を再々度最適化する
→(4)目的位置に移動して信号再生する
のステップを経ることで非常に精度良く目的位置での信号再生が可能となる。
追記形情報記憶媒体と書替え形情報記憶媒体内に存在するガードトラックゾーンGTZ(Guard track zone)1,2は、データリードイン領域DTLDIの開始境界位置と、情報記憶媒体の製造メーカが品質テスト(評価)を行うために設けられた領域であるディスクテストゾーンDKTZは、ドライブテストゾーンDRTZの境界位置を規定するための領域で、この領域には記録マーク形成による記録をしてはいけない領域として規定される。
ガードトラックゾーン(Guard track zone)1,2は、それぞれ、データリードイン領域DTLDI内に存在するため、この領域内には追記形情報記憶媒体ではプリグルーブ領域、または書替え形情報記憶媒体では、グルーブ領域とランド領域が事前に形成されている。プリグルーブ領域、あるいはグルーブ領域、ランド領域内は表5〜表7に示すようにウォブルアドレスが予め記録されているので、このウォブルアドレスを用いて情報記憶媒体内の現在位置を判定する。
ドライブテストゾーンDRTZは情報記録再生装置が情報記憶媒体への情報を記録する前に試し書きするための領域として確保されている。情報記録再生装置は予めこの領域内で試し書きを行い、最適な記録条件(ライトストラテジ)を割り出した後、その最適記録条件でデータ領域DTA内に情報を記録することができる。
書替え形情報記憶媒体(図23(b))内にあるディスク識別ゾーンDIZ内の情報はオプショナル情報記録領域で記録再生装置の製造メーカ名情報とそれに関する付加情報およびその製造メーカが独自に記録可能な領域から構成されるドライブ記述子(Drive description)を1組みとして1組み毎に追記可能な領域となっている。
書替え形情報記憶媒体(図23(b))内にある欠陥管理領域(DMA)1、欠陥管理領域(DMA)2は、それぞれ、データ領域DTA内の欠陥管理情報が記録される場所で、例えば、欠陥個所が発生した時の代替え箇所情報等が記録されている。
追記形情報記憶媒体(図23(c))では、RMD(Recording Management Data,詳細は後述)ディプリケーションゾーンRDZと記録位置管理ゾーンRMZ、R物理情報ゾーンR−PFIZが独自に存在する。RMDは、データの追記処理により更新されるデータの記録位置に関する管理情報である記録位置管理データである。従って、記録位置管理ゾーンRMZ内に、RMD(Recording Management Data)が記録される。
図24により後段に説明するが、本実施形態では、各ボーダ内領域BRDA毎に、それぞれ、記録位置管理ゾーンRMZが設けられ、記録位置管理ゾーンRMZの領域の拡張を可能としている。その結果、追記頻度が増加して必要とする記録位置管理データRMD領域が増加しても、逐次記録位置管理ゾーンRMZを拡張することで対応可能なため、追記回数を、任意に、(大幅に)増やすことができる。その場合、本実施形態では、各ボーダ内領域BRDAに対応した(各ボーダ内領域BRDAの直前に配置された)ボーダインBRDI内に記録位置管理ゾーンRMZを配置する。本実施形態では最初のボーダ内領域BRDA#1に対応したボーダインBRDIとデータリードイン領域DTLDIを兼用化し、データ領域DTA内での最初のボーダインBRDIの形成を省略してデータ領域DTAの有効活用している。すなわち、図23(c)に示したデータリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZは、最初のボーダ内領域BRDA#1に対応した記録位置管理データRMDの記録場所として利用されている。
RMDディプリケーションゾーンRDZは、記録位置管理ゾーンRMZ内の下記の条件を満足する記録位置管理データRMDの情報を記録する場所で、本実施形態のように記録位置管理データRMDを重複して持つことで、記録位置管理データRMDの信頼性を高めている。すなわち、追記形情報記憶媒体表面に付いたゴミや傷の影響で記録位置管理ゾーンRMZ内の記録位置管理データRMDが不可能になった場合、このRMDディプリケーションゾーンRDZ内に記録された記録位置管理データRMDを再生し、さらに、残りの必要な情報をトレーシングにより収集することで最新の記録位置管理データRMDの情報を復元できる。
このRMDディプリケーションゾーンRDZ内には、(複数の)ボーダをクローズする時点での記録位置管理データRMDが記録される。後述するように、1個のボーダをクローズし、次の新たなボーダ内領域を設定する毎に新たな記録位置管理ゾーンRMZを定義するので、新たな記録位置管理ゾーンRMZを作成する毎に、その前のボーダ内領域に、関係した最後の記録位置管理データRMDをこのRMDディプリケーションゾーンRDZ内に記録すると言っても良い。追記形情報記憶媒体上に、記録位置管理データRMDを追記する毎に同じ情報をこのRMDディプリケーションゾーンRDZに記録すると、比較的少ない追記回数でRMDディプリケーションゾーンRDZが一杯になってしまうため追記回数の上限値が小さくなってしまう。
それに比べ、本実施形態のようにボーダをクローズした時や、ボーダインBRDI内の記録位置管理ゾーン内が一杯になり、Rゾーンを用いて新たな記録位置管理ゾーンRMZを形成する等新たに記録位置管理ゾーンを作る場合に、今までの記録位置管理ゾーンRMZ内の最後の記録位置管理データRMDのみをRMDディプリケーションゾーンRDZ内に記録することでRMDディプリケーションゾーンRDZ内を有効活用して追記可能回数を向上できる。
例えば、追記途中の(クローズする前の)ボーダ内領域BRDAに対応した記録位置管理ゾーンRMZ内の記録位置管理データRMDが追記形情報記憶媒体表面に付いたゴミや傷の影響で再生不可能になった場合は、このRMDディプリケーションゾーンRDZ内の最後に記録された記録位置管理データRMDを読み取ることで既にクローズされたボーダ内領域BRDAの場所が分かる。従って、情報記憶媒体のデータ領域DTA内のそれ以外の場所をトレースすることで、追記途中の(クローズする前の)ボーダ内領域BRDAの場所とそこに記録された情報内容を収集でき、最新の記録位置管理データRMDの情報を復元できる。
図23(a)〜(c)に共通して存在する制御データゾーンCDZ内の物理フォーマット情報PFI(後で詳細に説明する)に類似した情報がR物理情報ゾーンR−PFIZ内に記録される。
追記形情報記憶媒体(図23(c))内にあるRMDディプリケーションゾーンRDZと記録位置管理ゾーンRMZ内のデータ構造を図24に示す。
図24(a)は、図23(c)と同じであり、図23(c)内のRMDディプリケーションゾーンRDZと記録位置管理ゾーンRMZの拡大図が図24(b)に示されている。上述したように、データリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZには、最初のボーダ内領域BRDA内に対応した記録位置管理に関するデータが1個の記録位置管理データRMDの中に、それぞれまとめて記録され、追記形情報記憶媒体への追記処理があった時に発生する記録位置管理データRMDの中身が更新される毎に新たな記録位置管理データRMDとして、順次、後ろ側に追記される。
すなわち、記録位置管理データRMDは、1物理セグメントブロック(物理セグメントブロックに付いては後述する)のサイズ単位で記録され、データ内容が更新される毎に新たな記録位置管理データRMDとして、順次、後ろに追記されて行く。図24(b)の例では、事前に記録位置管理データRMD#1と#2が記録されていた部分に管理データに変更が生じたので、変更後(アップデート後)のデータを記録位置管理データRMD#3として記録位置管理データRMD#2の直後に記録した例を示している。従って、記録位置管理ゾーンRMZ内ではさらに、追記可能なように予約領域273が規定されている。
図24(b)では、データリードイン領域DTLDI中に存在する記録位置管理ゾーンRMZ内の構造を示しているが、それに限らず後述するボーダインBRDI内またはボーダ内領域BRDA内にある記録位置管理ゾーンRMZ(または拡張記録位置管理ゾーン:拡張RMZと呼ぶ)内の構造も図24(b)に示した構造と同じである。
本実施形態では、最初のボーダ内領域BRDA#1をクローズするか、データ領域DTAの終了処理(ファイナライズ)をする場合には、最後の記録位置管理データRMDで図24(b)に示した予約領域273を全て埋める処理を行う。
これにより、
(1)“未記録状態”の予約領域273がなくなり、DPD(Differential Phase Detection)検出法によるトラッキング補正の安定化を保証する
(2)かつての予約領域273に最後の記録位置管理データRMDを多重書きすることになり、最後の記録位置管理データRMDに関する再生時の信頼性が大幅に向上する
(3)誤って未記録状態の予約領域273に異なった記録位置管理データRMDを記録することを防止できる
が、達成される。
上記処理方法は、データリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZに限らず、本実施形態では後述するボーダインBRDI内またはボーダ内領域BRDA内にある記録位置管理ゾーンRMZ(または拡張記録位置管理ゾーン:拡張RMZと呼ぶ)に対しても対応するボーダ内領域BRDAをクローズするかデータ領域DTAの終了処理(ファイナライズ)をする場合には最後の記録位置管理データRMDで予約領域273を全て埋める処理を行う。
RMDディプリケーションゾーンRDZ内は、RDZリードインRDZLIと対応RMZ最後の記録位置管理データRMDの記録領域271に分かれている。RDZリードインRDZLIの中は図24(b)に示すようにデータサイズが48KBのシステム予約領域SRSFとデータサイズが16KBのユニークID領域UIDFから構成される。システム予約領域SRSF内は全て“00h”にセットされる。
本実施形態では、追記可能なデータリードイン領域DTLDI内にRDZリードインRDZLIを記録することを特徴とする。本実施形態の追記形情報記憶媒体では、製造直後はRDZリードインRDZLIは未記録の状態で出荷される。ユーザサイドの情報記録再生装置内でこの追記形情報記憶媒体を使う段階で初めてRDZリードインRDZLIの情報を記録する。従って、追記形情報記憶媒体を情報記録再生装置に装着直後にこのRDZリードインRDZLIに情報が記録されているか否かを判定することで、対象の追記形情報記憶媒体が製造・出荷直後の状態か少なくとも一回でも使用したかを容易に知ることができる。
なお、図24に示すようにRMDディプリケーションゾーンRDZが、最初のボーダ内領域BRDAに対応した記録位置管理ゾーンRMZより内周側に配置され、RMDディプリケーションゾーンRDZ内にRDZリードインRDZLIが配置されることで、本実施形態の次の特徴が得られる。
追記形情報記憶媒体が、製造・出荷直後の状態か少なくとも一回でも使用したかの情報(RDZリードインRDZLI)を、共通な利用目的(RMDの信頼性向上)に使われるRMDディプリケーションゾーンRDZ内に配置することで、情報収集の利用効率が向上する。また、RDZリードインRDZLIを記録位置管理ゾーンRMZより内周側に配置することで必要情報収集に必要な時間の短縮化が図れる。
情報記憶媒体を情報記録再生装置に装着すると、情報記録再生装置は図22に記載されるように最内周側に配置されたバーストカッティング領域BCAから再生を開始し、順次外側に再生位置を移動させながらシステムリードイン領域SYLSI、データリードイン領域DTLDIへと再生場所を変えて行く。RMDディプリケーションゾーンRDZ内のRDZリードインRDZLIに情報が記録されているかを判別する。出荷直後で一度も記録されてない追記形情報記憶媒体では記録位置管理ゾーンRMZ内には一切の記録位置管理データRMDが記録されてないので、RDZリードインRDZLIに情報が記録されてない場合には“出荷直後で未使用”と判定し、記録位置管理ゾーンRMZの再生を省くことができ、必要情報収集に必要な時間の短縮化が図れる。
ユニークID領域UIDF内は、図24(c)に示すように、初めて(出荷直後の)追記形情報記憶媒体を使用した(記録に用いられた)情報記録再生装置に関する情報が記録される。すなわち、情報記録再生装置のドライブメーカID281や情報記録再生装置のシリアル番号283、モデル番号284が記録される。ユニークID領域UIDF内は図24(c)に示した2KB(厳密には2048バイト)の同じ情報が8回繰り返し記録されている。ユニークディスクID287内情報には図24(d)に示すように初めて使用(記録を開始)した時の年情報293、月情報294、日情報295、時間情報296、分情報297、秒情報298が記録される。それぞれの情報のデータタイプは図24(d)に記載されているように、HEX、BIN、ASCIIで記載され、使用バイト数も2バイトもしくは4バイト使われる。
このRDZリードインRDZLIの領域のサイズと前記1個の記録位置管理データRMDのサイズが64KB、すなわち、1個のECCブロック内のユーザデータサイズの整数倍としたことを特徴とする。追記形情報記憶媒体の場合、1個のECCブロック内のデータの一部を変更後に情報記憶媒体に変更後のECCブロックのデータを書き替えると言う処理ができない。従って、特に追記形情報記憶媒体の場合には後述するように、1個のECCブロックを含むデータセグメントの整数倍で構成されるレコーディングクラスタ単位で記録される。従って、RDZリードインRDZLIの領域のサイズと前記1個の記録位置管理データRMDのサイズがECCブロック内のユーザデータサイズと異なると、レコーディングクラスタ単位に合わせるためのパディング領域またはスタッフィング領域が必要となり、実質的な記録効率が低下する。本実施形態のようにRDZリードインRDZLIの領域のサイズと前記1個の記録位置管理データRMDのサイズが64KBの整数倍に設定することで記録効率の低下を防止できる。
図24(b)における対応RMZ最後の記録位置管理データRMD記録領域271についてを説明する。
登録2621459号に記載されているように、リードイン領域の内側に記録中断時の中間情報を記録する方法がある。この場合には記録を中断する毎あるいは追記処理を行う毎に、この領域に中間情報(本実施形態では記録位置管理データRMD)を逐次追記する必要がある。そのため、頻繁に記録中断または追記処理が繰り返されると、この領域が直ぐに満杯となり更なる追加処理が不可能になると言う問題が発生する。
この問題を解決するために、本実施形態では特定の条件を満たす時にのみ更新された記録位置管理データRMDを記録できる領域としてRMDディプリケーションゾーンRDZを設定し、特定条件の下で間引かれた記録位置管理データRMDを記録することを特徴とする。
このようにRMDディプリケーションゾーンRDZ内に追記される記録位置管理データRMDの頻度を低下させることで、RMDディプリケーションゾーンRDZ内で満杯になることが防止でき、追記形情報記憶媒体に対する追記可能な回数を大幅に向上できる。
これと並行して、追記処理毎に更新される記録位置管理データRMDは、図27(c)に示すボーダインBRDI内(最初のボーダ内領域BRDA#1に関しては図24(a)に示すようにデータリードイン領域DTLDI内)の記録位置管理ゾーンRMZ、あるいは後述するRゾーンを利用した記録位置管理ゾーンRMZ内に逐次追記される。
次のボーダ内領域BRDAを作成(新たなボーダインBRDIを設定)し、あるいはRゾーン内に新たな記録位置管理ゾーンRMZを設定する、等の新たな記録位置管理ゾーンRMZを作る時に、最後の(新たな記録位置管理ゾーンRMZを作る直前の状態での最新の)記録位置管理データRMDをRMDディプリケーションゾーンRDZ(の中の対応RMZ最後の記録位置管理データRMD記録領域271)内に記録する。これにより、追記形情報記憶媒体への追記可能回数が大幅に増大するだけでなく、この領域を利用することで最新のRMD位置検索が容易になる。
図24に示した記録位置管理データRMD内のデータ構造を図26に示す。図26(a)から(c)までは図24(a)から(b)までと同じ内容である。
前述したように、本実施形態では、最初のボーダ内領域BRDA#1に対するボーダインBRDIをデータリードインDTLDIと一部兼用しているため、データリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZには、最初のボーダ内領域に対応する記録位置管理データRMD#1〜#3が記録されている。データ領域DTA内に全くデータが記録されてない場合には、この記録位置管理ゾーンRMZ内は、全てデータが未記録状態である予約領域273になる。
データ領域DTA内にデータが追記される毎に更新された記録位置管理データRMDがこの予約領域273内の最初の場所に記録され、記録位置管理ゾーンRMZ内の最初のボーダ内領域に対応した記録位置管理データRMDが、順次追記されて行く。
記録位置管理ゾーンRMZ内に一回毎に追記される記録位置管理データRMDのサイズは64Kバイトにしている。
本実施形態では、64KBのデータで1ECCブロックを構成するため、この記録位置管理データRMDのデータサイズを1ECCブロックサイズに合わせることで追記処理の簡素化を図っている。
後述するように、本実施形態では、1ECCブロックデータ412の前後にガード領域の一部を付加して1個のデータセグメント490を構成し、1個以上(n個)のデータセグメントに拡張ガードフィールド258、259を付加して追記もしくは書き換え単位のレコーディングクラスタ540、542を構成する。
記録位置管理データRMDを記録する場合は、1個のデータセグメント(1個のECCブロック)のみを含むレコーディングクラスタ540、542としてこの記録位置管理ゾーンRMZ内に、順次追記する。後述するように、1個のデータセグメント531を記録する場所の長さは7個の物理セグメント550〜556から構成される1個の物理セグメントブロックの長さに一致している。
1個の記録位置管理データRMD#1内のデータ構造を図26(c)に示す。
図26(c)ではデータリードイン領域DTLDI内の記録位置管理データRMD#1内のデータ構造を示しているが、これに限らず、RMDディプリケーションゾーンRDZ内に記録する記録位置管理データRMD#A、#B(図24)や後述するボーダインBRDI内に記録される(拡張)記録位置管理データRMDやRゾーン内に記録される(拡張)記録位置管理データRMD内のデータ構造、およびボーダアウトBRDO内に記録するRMDのコピーCRMD(図27(d))も同じ構造を取る。
図26(c)に示すように1個の記録位置管理データRMD内はリザーブ領域と“0”から“21”までのRMDフィールドから構成されている。本実施形態では64KBのユーザデータから構成される1個のECCブロック内に32個の物理セクタが含まれており、1個の物理セクタ内には2KB(厳密には2048バイト)のユーザデータがそれぞれ記録されている。
この1個の物理セクタ内に記録されるユーザデータサイズに合わせて各RMDフィールドはそれぞれ2048バイト毎に割り振られ、相対的な物理セクタ番号が設定されている。この相対的な物理セクタ番号順に追記形情報記憶媒体上にRMDフィールドが記録される。各RMDフィールド内に記録されるデータ内容の概要は、
・RMDフィールド0
… ディスク状態に関する情報とデータエリアアロケーション(データ領域内の各種データの配置場所に関する情報)
・RMDフィールド1
… 使用したテストゾーンに関する情報と推奨の記録波形に関する情報
・RMDフィールド2
… ユーザが使用できるエリア
・RMDフィールド3
… ボーダエリアの開始位置情報と拡張RMZ位置に関する情報
・RMDフィールド4〜21
… Rゾーンの位置に関する情報
となっている。
図23に示すように、再生専用形、追記形、書替え形のいずれの情報記憶媒体においても、システムリードイン領域がデータリードイン領域を挟んでデータ領域の反対側に配置され、さらに、図22に示すようにシステムリードイン領域SYLDIを挟んでバーストカッティング領域BCAとデータリードイン領域DTLDIが互いに反対側に配置されていることを特徴とする。
情報記憶媒体を、図9に示した情報再生装置または情報記録再生装置に挿入すると、情報再生装置または情報記録再生装置は、
(1)バーストカッティング領域BCA内の情報の再生
→(2)システムリードイン領域SYLDI内の情報データゾーンCDZ内の情報の再生
→(3)データリードイン領域DTLDI内の情報の再生(追記形または書替え形の場合)
→(4)参照コード記録ゾーンRCZ内での再生回路定数の再調整(最適化)
→(5)データ領域DTA内に記録された情報の再生もしくは新たな情報の記録
の順で処理を行う。
図23に示すように、上記処理の順に沿って、情報が内周側から順に配置されているため、不要な内周へのアクセス処理が不要となり、アクセス回数を少なくしてデータ領域DTAへ到達できる。このため、データ領域DTA内に記録された情報の再生もしくは新たな情報の記録の開始時間を早めることが可能となる。
また、システムリードイン領域SYLDIでの信号再生にスライスレベル検出方式を利用し、データリードイン領域DTLDIとデータ領域DTAでは信号再生にPRMLを用いるので、データリードイン領域DTLDIとデータ領域DTAを隣接させると、内周側から順に再生した場合、システムリードイン領域SYLDIとデータリードイン領域DTLDIの間で1回だけスライスレベル検出回路からPRML検出回路に切り替えるだけで連続して安定に信号再生が可能となる。そのため、再生手順に沿った再生回路切り替え回数が少ないので処理制御が簡単になりデータ領域内再生開始時間が早くなる。
各種情報記憶媒体におけるデータ領域DTAとデータリードアウト領域DTLDO内のデータ構造の比較を図25に示す。図25(a)が再生専用形情報記憶媒体のデータ構造を表し、図25(b)と(c)が書替え形情報記憶媒体のデータ構造、図25(d)〜(f)が追記形情報記憶媒体のデータ構造を示している。特に図25(b)と(d)が初期時(記録前)の構造を示し、図25(c)と(e)、(f)は記録(追記または書替え)がある程度進んだ状態でのデータ構造を示している。
図25(a)に示すように再生専用形情報記憶媒体においてデータリードアウト領域DTLDOとシステムリードアウト領域SYLDO内に記録されているデータは、図23のバッファゾーン(BFZ)1、バッファゾーン(BFZ)2と同様にデータフレーム構造(データフレーム構造に付いては後述)を持ち、その中のメインデータの値を全て“00h”に設定している。
再生専用形情報記憶媒体では、データ領域DTA内の全領域に亘りユーザデータの事前記録領域201として使用できるが、後述するように追記形情報記憶媒体と書替え形情報記憶媒体のいずれの実施形態でもユーザデータの書替え/追記可能範囲202〜205がデータ領域DTAよりも狭くなっている。
追記形情報記憶媒体あるいは書替え形情報記憶媒体では、データ領域DTAの最内周部に代替え領域SPA(Spare Area)が規定されている。データ領域DTA内に欠陥場所が発生した場合に、前記代替え領域SPAを使って代替え処理を行い、書替え形情報記憶媒体の場合には、その代替え履歴情報(欠陥管理情報)を、図23(b)の欠陥管理領域DMA1、欠陥管理領域DMA2および図25(b)、(c)の欠陥管理領域DMA3、欠陥管理領域4に記録する。
図25(b)、(c)の欠陥管理領域DMA3、欠陥管理領域DMA4に記録される欠陥管理情報は、図23(b)の欠陥管理領域DMA1、欠陥管理領域DMA2に記録される情報と同じ内容が記録される。
追記形情報記憶媒体の場合には、代替え処理を行った場合の代替え履歴情報(欠陥管理情報)は、図23(c)に示したデータリードイン領域DTLDI内および後述するボーダゾーン内に規定されている記録位置管理ゾーンへの記録内容のコピー情報C_RMZ内に記録される。現行のDVD−Rディスクでは、欠陥管理は規定されていない(行わなれていない)が、DVD−Rディスクの製造枚数の増加に連れて一部に欠陥場所を持つDVD−Rディスクが出廻るようになり、追記形情報記憶媒体に記録する情報の信頼性向上を望む声が大きくなっている。
図25に示す実施形態では、追記形情報記憶媒体に対しても、代替え領域SPAを設定し、代替え処理による欠陥管理を可能としている。これにより、一部に欠陥場所を持つ追記形情報記憶媒体に対しても欠陥管理処理を行うことで記録する情報の信頼性を向上させることが可能となる。
書替え形情報記憶媒体あるいは追記形情報記憶媒体では欠陥が多く発生した場合に、ユーザサイドにおいて、情報記録再生装置の判断(制御)のもとで、図25(b)、(d)に示すユーザへの販売直後の状態に対して自動的に拡張代替え領域ASPA(Extended Spare Area),ESPA1,ESPA2を設定し、代替え場所を広げられるようにしている。
このように、拡張代替え領域ESPA、ESPA1、ESPA2を設定可能にすることにより、製造上の都合で欠陥の多い媒体であっても販売(市場への流通)が可能となり、その結果、媒体の(市場への流通が可能な)製造歩留まりが向上して、媒体の低価格化が可能となる。
図25(c)や(e)、(f)に示すように、データ領域DTA内に拡張代替え領域ESPA、ESPA1、ESPA2を増設すると、ユーザデータの書替えあるいは追記可能範囲203、205が減少するので、その位置情報を管理する必要がある。書替え形情報記憶媒体では、その情報は、欠陥管理領域DMA1〜欠陥管理領域DMA4と、後述するように、制御データゾーンCDZ内に記録される。追記形情報記憶媒体の場合には、後述するようにデータリードイン領域DTLDI内およびボーダアウトBRDO内に存在する記録位置管理ゾーンRMZ内に記録される。
記録位置管理データRMDは、管理データ内容が更新される毎に、記録位置管理ゾーンRMZ内でアップデート追記されるので、拡張代替え領域を何度設定し直しても、タイムリーにアップデートして管理することが可能となる(図25(e)の実施形態では、最初に拡張代替え領域EAPA1を設定し、その拡張代替え領域EAPA1を、全て使い果たした後で、欠陥が多くて更なる代替え領域設定が必要となり、後日さらに拡張代替え領域ESPA2を設定した状態を示している)。
図25(b)、(c)に示すガードトラックゾーンGTZ3は、欠陥管理領域DMA4とドライブテストゾーンDRTZ間の分離のために配置され、ガードトラックゾーンGTZ4は、ディスクテストゾーンDKTZとサーボキャリブレーション領域SCZ(Servo Calibration Zone)との間の分離のために配置されている。
ガードトラックゾーンGTZ3、ガードトラックゾーンGTZ4は、図23において既に説明したガードトラックゾーンGTZ1、ガードトラックゾーンGTZ2と同様、記録マーク形成による記録をしてはいけない領域として規定される。
ガードトラックゾーンGTZ3およびガードトラックゾーンGTZ4は、データリードアウト領域DTLDO内に位置されているため、この領域には、追記形情報記憶媒体ではプリグルーブ領域、また、書替え形情報記憶媒体ではグルーブ領域とランド領域が、事前に形成されている。プリグルーブ領域、あるいはグルーブ領域、ランド領域内は、表5〜表7に示すようにウォブルアドレスが予め記録されているので、このウォブルアドレスを用いて、情報記憶媒体内の現在位置を判定することが可能となる。
ドライブテストゾーンDRTZは図23と同様、情報記録再生装置が情報記憶媒体への情報を記録する前に試し書きするための領域として確保されている。情報記録再生装置は予めこの領域内で試し書きを行い、最適な記録条件(ライトストラテジ)を割り出した後、その最適記録条件でデータ領域DTA内に情報を記録することができる。
ディスクテストゾーンDKTZは、図23と同様、情報記憶媒体の製造メーカが品質テスト(評価)に利用可能に規定されている。
サーボキャリブレーション領域SCZ(Servo Calibration Zone)以外のデータリードアウト領域DTLDO内の全領域には、追記形情報記憶媒体ではプリグルーブ領域、書替え形情報記憶媒体ではグルーブ領域とランド領域とが事前に形成され、記録マークの記録(追記または書替え)が可能である。図25(c)および図25(e)に示したように、サーボキャリブレーション領域SCZ内は、プリグルーブ領域214、またはランド領域およびグルーブ領域213の代わりに、システムリードイン領域SYLDIと同じように、エンボスピット領域211が形成されている。
この領域は、データリードアウト領域DTLDOの他の領域に続いて、エンボスピットによる連続したトラックであり、このトラックは、スパイラル状に連続して情報記憶媒体の円周に沿って設けられている。この領域は、DPD(Deferencial Phase Detect)法を用いて情報記憶媒体の傾き量を検出するために利用される。情報記憶媒体が傾くと、DPD法を用いたトラックずれ検出信号振幅にオフセットが生じ、オフセット量で傾き量が、オフセット方向で傾き方向が精度良く検出することが可能となる。
この原理を利用し、情報記憶媒体の最外周部(データリードアウト領域DTLDO内の外周部)にDPD検出ができるエンボスピットを事前に形成しておくことで、図9の情報記録再生部141内に存在する光学ヘッドに(傾き検出用の)特別な部品を付加することなく安価に精度の良い傾き検出が可能となる。
さらに、この外周部の傾き量を検出することでデータ領域DTA内でも(傾き量補正による)サーボの安定化を実現できる。本実施形態ではこのサーボキャリブレーション領域SCZ内のトラックピッチをデータリードアウト領域DTLDO内の他の領域に合わせ、情報記憶媒体の製造性を向上させ、歩留まり向上による媒体の低価格化を可能にする。
すなわち、追記形情報記憶媒体においてデータリードアウト領域DTLDO内の他の領域にはプリグルーブが形成されているが、追記形情報記憶媒体の原盤製造時に原盤記録装置の露光部の送りモータ速度を一定にしてプリグルーブを作成している。この時、サーボキャリブレーション領域SCZ内のトラックピッチをデータリードアウト領域DTLDO内の他の領域に合わせることで、サーボキャリブレーション領域SCZ内も引き続き送りモータ速度を一定に保持できるため、ピッチムラが生じ辛く情報記憶媒体の製造性が向上する。
他の実施形態としてはサーボキャリブレーション領域SCZ内のトラックピッチまたはデータビット長の少なくともいずれかをシステムリードイン領域SYLDIのトラックピッチまたはデータビット長に合わせる方法もある。DPD法を用いてサーボキャリブレーション領域SCZ内の傾き量とその傾き方向を測定し、その結果、をデータ領域DTA内でも利用してデータ領域DTA内でのサーボ安定化を図ることを前述したが、データ領域DTA内の傾き量を予想する方法としてシステムリードイン領域SYLDI内の傾き量とその方向を同じくDPD法により予め測定し、サーボキャリブレーション領域SCZ内の測定結果との関係を利用して予測することができる。
DPD法を用いた場合、情報記憶媒体の傾きに対する検出信号振幅のオフセット量とオフセットが出る方向がエンボスピットのトラックピッチとデータビット長に依存して変化する特徴がある。従って、サーボキャリブレーション領域SCZ内のトラックピッチまたはデータビット長の少なくともいずれかをシステムリードイン領域SYLDIのトラックピッチまたはデータビット長に合わせることで検出信号振幅のオフセット量とオフセットが出る方向に関する検出特性をサーボキャリブレーション領域SCZ内とシステムリードイン領域SYLDI内とで一致させ、両者の相関を取り易くしてデータ領域DTA内の傾き量と方向の予測を容易にすると言う効果が生じる。
図23(c)と図25(d)に示すように追記形情報記憶媒体では内周側と外周側の2箇所にドライブテストゾーンDRTZを設けてある。ドライブテストゾーンDRTZに行う試し書きの回数が多い程、細かくパラメータを振って最適な記録条件を詳細に探すことができてデータ領域DTAへの記録精度が向上する。
書替え形情報記憶媒体では、重ね書きによるドライブテストゾーンDRTZ内の再利用が可能となるが、追記形情報記憶媒体では、試し書きの回数を多くして記録精度を上げようとすると、ドライブテストゾーンDRTZ内をすぐに使い切ってしまう虞がある。このため、本実施形態では、外周部から内周方向に沿って、逐次、拡張ドライブテストゾーンEDRTZ(Extended Drive Test Zone)の設定を可能とし、ドライブテストゾーンの拡張を可能としている。
拡張ドライブテストゾーンの設定方法とその設定された拡張ドライブテストゾーン内での試し書き方法に関する特徴として本実施形態では、
1.拡張ドライブテストゾーンEDRTZの設定(枠取り)は外周方向(データリードアウト領域DTLDOに近い方)から内周側にむけて順次まとめて設定する
… 図25(e)に示すようにデータ領域内の最も外周に近い場所(データリードアウト領域DTLDOに最も近い場所)からまとまった領域として拡張ドライブテストゾーン1 EDRTZ1を設定し、その拡張ドライブテストゾーン1 EDRTZ1を使い切った後で、それより内周側に存在するまとまった領域として拡張ドライブテストゾーン2 EDRTZ2を次に設定可能とする、
2.拡張ドライブテストゾーンEDRTZの中では、内周側から順次試し書きを行う
… 拡張ドライブテストゾーンEDRTZの中で試し書きを行う場合には内周側から外周側に沿ってスパイラル状に配置されたグルーブ領域214に沿って行い、前回試し書きをした(既に記録された)場所のすぐ後ろの未記録場所に今回の試し書きを行う
を、規定している。
データ領域内は、内周側から外周側に沿ってスパイラル状に配置されたグルーブ領域214に沿って追記される構造となっており、拡張ドライブテストゾーン内での試し書きが直前に行われた試し書き場所の後ろに順次追記する方法で行うことにより、“直前に行われた試し書き場所の確認”→“今回の試し書きの実施”の処理がシリアルに行えるため、試し書き処理が容易となるばかりでなく、拡張ドライブテストゾーンEDRTZ内での既に試し書きされた場所の管理が簡単になる。
3.拡張ドライブテストゾーンEDRTZも含めた形でデータリードアウト領域DTLDOの再設定可能、
… 図25(e)にデータ領域DTA内に2箇所拡張代替え領域1 ESPA1、拡張代替え領域2 ESPA2を設定し、2箇所の拡張ドライブテストゾーン1 EDRTZ1、拡張ドライブテストゾーン2 EDRTZ2を設定した例を示す。この場合に本実施形態では図25(f)に示すように拡張ドライブテストゾーン2 EDRTZ2までを含めた領域に対してデータリードアウト領域DTLOとして再設定できることを特徴とする。これに連動して範囲を狭めた形でデータ領域DTAの範囲の再設定でき、データ領域DTA内に存在するユーザデータの追記可能範囲205の管理が容易になる。
図25(f)のように再設定した場合には、図25(e)に示した拡張代替え領域1 ESPA1の設定場所を“既に使い切った拡張代替え領域”と見なし、拡張ドライブテストゾーンEDRTZ内の拡張代替え領域2 ESPA2内のみに未記録領域(追記の試し書きが可能な領域)が存在すると管理する。この場合、拡張代替え領域1 ESPA1内に記録され、代替えに使われた非欠陥の情報はそっくりそのまま拡張代替え領域2 ESPA2内の未代替え領域の場所に移され、欠陥管理情報が書き替えられる。この時再設定されたデータリードアウト領域DTLDOの開始位置情報は表11に示すように記録位置管理データRMD内のRMDフィールド0の最新の(更新された)データ領域DTAの配置位置情報内に記録される。
図25に示した拡張ドライブテストゾーンEDRTZ設定方法に対する他の実施例を図75に示す。図25とは異なり、図75の実施例では、
(1)図25(d)に示すデータ領域DTAとドライブテストゾーンDRTZとの間にガードトラックゾーン3 GTZ3を設定する、
(2)ガードトラックゾーン3 GTZ3のサイズ分だけ拡張ドライブテストゾーンEDRTZを設定し、ガードトラックゾーン3 GTZ3を平行にずらす、
(3)データ領域DTAの終了位置が手前側にずれるのでデータ記録領域DTAの終了位置を示した記録位置管理データRMDを記録位置管理ゾーンRMZ内に追記する。
以下、拡張ドライブテストゾーン設定前後での配置関係を図75に示す。
図75(a)に示すように、ドライブテストゾーンDRTZ内では、外周側から順次試し書きに利用される。ドライブテストゾーンDRTZの未記録領域がなくなると、図75(b)に示すように拡張ドライブテストゾーンEDRTZが設定され、前記拡張ドライブテストゾーン内の外周側から順次試し書きが行われる。このように拡張ドライブテストゾーンEDRTZが設定されると、ユーザデータが記録可能なデータ領域DTAの最終位置が73543Fhから73183Fhに変更される。
表10に示すように、最新の(更新された)データ領域DTAの配置位置情報内に、拡張ドライブテストゾーンEDRTZの有無識別情報が存在する。拡張ドライブテストゾーンEDRTZが存在する場合にはこの情報のフラグが”01h”となり、存在しない場合には”00h”になる。図75(b)に示すように拡張ドライブテストゾーンEDRTZを設定した場合には、表10に示す拡張ドライブテストゾーンEDRTZの有無識別情報が”00h”から”01h”に変更される。この変更された最新の記録位置管理データRMDは拡張ドライブテストゾーンEDRTZ設定後に記録位置管理ゾーンRMZ内に追記される。
図28を参照して、追記形情報記憶媒体におけるボーダ領域の構造について説明する。
追記形情報記憶媒体に初めて1個のボーダ領域を設定した時は、図28(a)に示すように、内周側(データリードイン領域DTLDIに最も近い側)に、ボーダ内領域BRDA(Bordered Area)#1を設定後、その後ろにボーダアウトBRDO(Border out)を形成する。引き続いて、その次のボーダ内領域BRDA(Bordered Area)#2を設定したい場合には、図28(b)に示すように前の(#1の)ボーダアウトBRDOの後ろに、次の(#1の)ボーダインBRDI(Border in)を形成した後に、次のボーダ内領域BRDA#2を設定し、次のボーダ内領域BRDA#2をクローズしたい場合には、その直後に(#2)のボーダアウトBRDOを形成する。本実施形態では、このように前の(#1の)ボーダアウトBRDOの後ろに、次の(#1の)ボーダインBRDIを形成して組みにした状態をボーダゾーンBRDZ(Border zone)と呼んでいる。
ボーダゾーンBRDZは、情報再生装置(DPD検出法を前提)で再生した時の個々のボーダ内領域BRDA間で光学ヘッドがオーバーランするのを防止するために、設定している。
従って、情報が記録された追記形情報記憶媒体を再生専用装置で再生する場合には、このボーダアウトBRDOとボーダインBRDIが既に記録されるとともに、最後のボーダ内領域BRDAの後ろに、ボーダアウトBRDOが記録されるボーダクローズ処理が実施されるなされることが前提となる。最初のボーダ内領域BRDA#1は、4080個以上の物理セグメントブロックで構成され、追記形情報記憶媒体上の半径方向で、最初のボーダ内領域BRDA#1が1.0mm以上の幅を持っている必要がある。
図28(b)では、データ領域DTA内に拡張ドライブテストゾーンEDRTZを設定した例を示している。追記形情報記憶媒体を、ファイナライズ(Finalization)した後の状態を図28(c)に示す。図28(c)の例では、拡張ドライブテストゾーンEDRTZをデータリードアウト領域DTLDO内に組み込み、さらに、拡張代替え領域ESPAも設定済みの例を示している。この場合には、ユーザデータの追加可能範囲205を残さないように、最後のボーダアウトBRDOで埋める。
上記説明したボーダゾーンBRDZ内の詳細なデータ構造を、図28(d)に示す。各情報は、後述する1PSB(Physical Segment Block)すなわち物理セグメントブロックのサイズ単位で記録される。
ボーダアウトBRDO内の先頭には、記録位置管理ゾーンへ記録された内容のコピー情報C_RMZが記録され、ボーダアウトBRDOであることを示すボーダ終了用目印STB(Stop Block)が記録される。
次のボーダインBRDIがある場合には、このボーダ終了用目印STBが記録された物理セグメントブロックから数えて“N1番目”の物理セグメントブロック(PSB)に、次にボーダ領域が存在することを示す最初の目印NBM(Next Border Marker)#1が、以降、“N2番目”の物理セグメントブロック(PSB)に、次にボーダ領域が存在することを示す2番目の目印NBM#2、“N3番目”の物理セグメントブロック(PSB)に引き続くボーダ領域が存在することを示す3番目の目印NBM#3が、それぞれ、1PSB(物理セグメントブロック)のサイズ毎に、離散的に合計3箇所に記録される。
次のボーダインBRDI内には、アップデートされた物理フォーマット情報U_PFI(Updated Physical Format Information)が記録される。現行のDVD−RまたはDVD−RWディスクでは、次のボーダ領域が来ない場合には(最後のボーダアウトBRDO内では)、図28(d)に示した“次のボーダを示す目印NBM”を記録すべき場所(1物理セグメントブロックサイズの場所)は“全くデータを記録しない場所”のまま保持される。この状態で、ボーダクローズされると、この追記形情報記憶媒体(現行のDVD−RまたはDVD−RWディスク)は、従来のDVD−ROMドライブまたは従来のDVDプレーヤでの再生が可能な状態となる。従来のDVD−ROMドライブまたは従来のDVDプレーヤでは、この追記形情報記憶媒体(現行のDVD−RまたはDVD−RWディスク)上に記録された記録マークを利用して、DPD法を用いたトラックずれ検出を行う。しかし、上記の“全くデータを記録しない場所”では、1物理セグメントブロックのサイズ(全長)にも亘って、記録マークが存在しないので、DPD法を用いたトラックずれ検出ができなくなるため、安定にトラックサーボがかからなくなる虞がある。
上記の現行のDVD−RまたはDVD−RWディスクの問題点の対策として本実施形態では、
(1)次のボーダ領域が来ない場合には、“次のボーダを示す目印NBMを記録すべき場所”には予め特定パターンのデータを記録しておく、
(2)次のボーダ領域が来る場合には上記予め特定パターンのデータが記録されている“次のボーダを示す目印NBM”の場所には、部分的かつ離散的に特定の記録パターンで『重ね書き処理』を行うことで“次のボーダ領域が来ること”を示す識別情報として利用する
と言う方法を新規に採用している。
このように重ね書きにより、次のボーダを示す目印を設定することで、(1)に示すように次のボーダ領域が来ない場合でも“次のボーダを示す目印NBMを記録すべき場所”には、予め特定パターンの記録マークが形成でき、ボーダクローズ後に、再生専用の情報再生装置でDPD法によりトラックずれ検出を行っても、安定にトラックサーボが掛かるという効果が得られる。その一方で、追記形情報記憶媒体において既に記録マークが形成されている部分に対して、部分的にでもその上に新たな記録マークを重ね書きすると、情報記録再生装置または情報再生装置において、図9に示したPLL回路の安定性が損なわれる虞がある。
その危惧対策として本実施形態ではさらに、
(3)1物理セグメントブロックのサイズの“次のボーダを示す目印NBM”の位置に重ね書きする時に、同一データセグメント内の場所により重ね書き状況を変化させる方法と、
(4)シンクデータ432内に部分的に重ね書きを行い、シンクコード431上での重ね書きを禁止する、
(5)データIDとIEDを除いた場所に重ね書きする、
と言う方法をさらに、新規に採用している。
後で詳細に説明するように、ユーザデータを記録するデータフィールド411〜418とガード領域441〜448が交互に情報記憶媒体上に記録される。データフィールド411〜418とガード領域441〜448を組み合わせた組をデータセグメント490と呼び、1個のデータセグメント長は1個の物理セグメントブロック長に一致する。
図9に示したPLL回路はVFO領域471、472内で特にPLLの引き込みがし易くなっている。従って、VFO領域471、472の直前ならばPLLが外れてもVFO領域471、472を用いてPLLの再引き込みが容易に行われるので、情報記録再生装置または情報再生装置内でのシステム全体としての影響は軽減される。
この状況を利用し上記のように(3)データセグメント内の場所により重ね書き状況を変化させ、同一データセグメント内のVFO領域471、472に近い後ろの部分で特定パターンの重ね書き量を増やすことで“次のボーダを示す目印”の判別を容易にするとともに再生時の信号PLLの精度劣化を防止できると言う効果がある。
図51と図38を用いて詳細に説明するように1個の物理セクタ内はシンクコード433(SY0〜SY3)が配置されている場所と、そのシンクコード433の間に配置されたシンクデータ434の組み合わせで構成されている。情報記録再生装置あるいは情報再生装置は情報記憶媒体上に記録されているチャネルビット列の中からシンクコード433(SY0〜SY3)を抽出し、チャネルビット列の切れ目を検出している。後述するようにデータIDの情報から情報記憶媒体上に記録されているデータの位置情報(物理セクタ番号または論理セクタ番号)を抽出している。その直後に配置されたIEDを用いてデータIDのエラーを検知している。
従って、本実施形態では(5)データIDとIED上での重ね書きを禁止するとともに(4)シンクコード431を除いたシンクデータ432内に部分的に重ね書きを行うことで、“次のボーダを示す目印NBM”内でもシンクコード431を用いたデータID位置の検出とデータIDに記録された情報の再生(内容判読)を可能にしている。
追記形情報記憶媒体におけるボーダ領域の構造に関する図28とは異なる他の実施形態を図27に示す。図27(a)、(b)は、図28(a)、(b)と同じ内容を示している。図27では、追記形情報記憶媒体をファイナライズした後の状態が、図28(c)とは異なる。
例えば、図27(c)に示すように、ボーダ内領域BRDA#3内の情報記録を終了させたのちにファイナライズしたい場合には、ボーダクローズ処理としてボーダ内領域BRDA#3の直後にボーダアウトBRDOを形成する。その後、ボーダ内領域BRDA#3の直後のボーダアウトBRDOの後ろに、ターミネイタ領域TRM(Terminator)を形成し、ファイナライズに必要な時間の短縮を図っている。すなわち、図28(c)の実施形態では、拡張代替え領域ESPAの直前までボーダアウトBRDOで埋める必要があり、このボーダアウトBRDO形成のために長時間を必要とするため、ファイナライズの時間が長くなる。
これに対して、図27(c)の実施形態では比較的長さの短いターミネータ領域TRMを設定し、ターミネータ領域TRMより外側全てを新たなデータリードアウト領域NDTLDOと再定義し、ターミネータ領域TRMより外側にある未記録部分を使用禁止領域911に設定する。すなわち、データ領域DTAがファイナライズされる時には記録データの最後(ボーダアウトBRDOの直後)にターミネータ領域TRMを形成する。この領域内のメインデータの情報を全て“00h”に設定する。この領域のタイプ情報を、データリードアウトNDTLDOの属性に設定することで、図27(c)に示すように、ターミネーター領域TRMを新たなデータリードアウト領域NDTLDOとして再定義できる。この領域のタイプ情報は、後述するように、データID内の領域タイプ情報935に記録される。すなわち、このターミネータ領域TRM内でのデータID内の領域タイプ情報935を、図30に示すように“10b”に設定することでデータリードアウトDTLDO内にあることを示す。本実施形態では、データID内領域タイプ情報935によりデータリードアウト位置の識別情報を設定することを特徴とする。
図9に示した情報記録再生装置または情報再生装置において、情報記録再生部141が追記形情報記憶媒体上の特定目標位置に粗アクセスした場合を考える。粗アクセス直後は情報記録再生部141は追記形情報記憶媒体上の何処に到達したか知るために必ずデータIDを再生し、データフレーム番号922を解読する必要がある。データID内には、データフレーム番号922の近くに領域タイプ情報935があるため、同時にこの領域タイプ情報935を解読するだけで情報記録再生部141がデータリードアウト領域DTLDO内に居るか否かが即座に分かる。これにより、アクセス制御の簡素化と高速化が可能となる。
上述したように、ターミネータ領域TRMのデータID内の設定により、データリードアウト領域DTLDOの識別情報を持たせることで、ターミネータ領域TRM検出が容易となる。
特例として、もし最終のボーダアウトBRDOが、データリードアウトNDTLDOの属性として設定された場合(すなわち、ボーダアウトBRDO領域内のデータフレームのデータID内の領域タイプ情報935が“10b”に設定された場合)には、ターミネータ領域TRMの設定は行わない。このため、データリードアウトNDTLDOの属性を持ったターミネータ領域TRMが記録されることで、ターミネーター領域TRMが、データリードアウト領域NDTLDOの一部と見なされ、データ領域DTAへの記録が不可能となり、図27(c)のように使用禁止領域911として残る場合がある。しかしながら、本実施形態では、ターミネータ領域TRMのサイズを追記形情報記憶媒体上の位置により変えることでファイナライズ時間の短縮化と処理の効率化を図っている。
このターミネータ領域TRMは、記録データの最終位置を示すだけでなく、DPD方式でトラックずれ検出を行う再生専用装置に使用した場合の、トラックずれによるオーバーランを防止するためにも利用されている。
従って、このターミネータ領域TRMの追記形情報記憶媒体上での半径方向の幅(ターミネータ領域TRMで埋められた部分の幅)としては、再生専用装置の検出特性の関係から最低でも0.05mm以上の長さが必要となる。追記形情報記憶媒体上での1周の長さは、半径位置により異なるため、1周内に含まれる物理セグメントブロック数が半径位置で異なる。
そのため、半径位置すなわち、ターミネータ領域TRM内に最初に位置する物理セクタの物理セクタ番号により、ターミネータ領域TRMのサイズが異なり、外周側に行くに従ってターミネータ領域TRMのサイズが大きくなっている。許容されるターミネータ領域TRMの物理セクタ番号の最小値は、“04FE00h”より大きい必要がある。
これは、前述したように、最初のボーダ内領域BRDA#1は、4080個以上の物理セグメントブロックで構成され、追記形情報記憶媒体上の半径方向で最初のボーダ内領域BRDA#1が1.0mm以上の幅を持っている必要があるための制約条件に基づくものである。従って、ターミネータ領域TRMは、物理セグメントブロックの境界位置から開始する必要がある。
図27(d)では、前述したと同様に、各情報が記録される場所が、1物理セグメントブロックサイズ毎に設定され、各1個の物理セグメントブロック内に32個の物理セクタ内に分散記録された合計64KBのユーザデータが記録される。それぞれの情報に対して図27(d)に示すように相対的な物理セグメントブロック番号が設定されているので、相対的な物理セグメントブロック番号の若い順に追記形情報記憶媒体に、各情報が、順次記録される。
図27に示した実施形態では、図28(d)の記録位置管理ゾーンへの記録内容のコピー情報記録領域C_RMZ内に同一内容であるRMDのコピーCRMD#0〜#4が5回多重書きされている。このように多重書きすることで再生時の信頼性を向上させ、追記形情報記憶媒体上にゴミや傷が付いても安定して記録位置管理ゾーンへの記録内容のコピー情報CRMDを再生できる。図27(d)に示した“ボーダ終了目印STB”は、図28(d)の“ボーダ終了用目印STB”と一致しているが、図27(d)の実施形態では、図28(d)の実施形態に示すような次のボーダを示す目印NBMを持たない。リザーブ領域901、902内でのメインデータの情報は、全て“00h”に設定する。
ボーダインBRDIの最初には、アップデートされた物理フォーマット情報U_PFIとして全く同じ情報が相対的な物理セグメントブロック番号としてN+1からN+6まで6回多重書きされ、図28のアップデートされた物理フォーマット情報U_PFIを構成している。このようにアップデートされた物理フォーマット情報U_PFIを多重書きすることで情報の信頼性を向上させている。
図27(d)では、ボーダゾーン内の記録位置管理ゾーンRMZをボーダインBRDI内に持たせたことを特徴とする。図24に示すようにデータリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZのサイズが比較的小さく、新たなボーダ内領域BRDAの設定を頻繁に繰り返すと記録位置管理ゾーンRMZ内に記録される記録位置管理データRMDが飽和し、途中で新たなボーダ内領域BRDAの設定が不可能になってしまう。
図27(d)の実施形態のように、ボーダインBRDI内にその後に続くボーダ内領域BRDA#3内に関する記録位置管理データRMDを記録する記録位置管理ゾーンを設けたことにより、新たなボーダ内領域BRDAの設定が複数回可能になるとともに、ボーダ内領域BRDA内での追記回数を大幅に増大できる。
このボーダゾーン内の記録位置管理ゾーンRMZが含まれるボーダインBRDIに続くボーダ内領域BRDA#3がクローズされるかデータ領域DTAがファイナライズされる場合には、記録位置管理ゾーンRMZ内の未記録状態にある予約領域273(図26)の全てに対して最後の記録位置管理データRMDを、繰り返し記録して、全て埋める必要がある。これにより、未記録状態の予約領域273をなくし、再生専用装置による再生時のDPDによるトラック外れを防止するとともに、記録位置管理データRMDの多重記録により記録位置管理データRMDの再生信頼性を向上させることができる。すなわち、リザーブ領域903の全てのデータを“00h”に設定している。
ボーダアウトBRDOは、DPD法を前提とした再生専用装置でのトラック外れによるオーバーラン防止の役割があるが、ボーダインBRDI内は、アップデートされた物理フォーマット情報U_PFIとボーダゾーン内の記録位置管理ゾーンRMZの情報を持つ以外は、特に大きなサイズを持つ必要がない。従って、新たなボーダ内領域BRDA設定をする時の(ボーダゾーンBRDZの記録に必要な)時間短縮の意味からなるべくサイズを小さくしたい。
図27(a)に対して、ボーダクローズによるボーダアウトBRDO形成前の時には、ユーザデータの追記可能範囲205は、充分広く追記回数も多く行われる可能性が高いので、ボーダゾーン内の記録位置管理ゾーンRMZには多数回記録位置管理データが記録できるように、図27(d)の“M”の値を大きく取っておく必要がある。それに比べて、図27(b)に対し、ボーダ内領域BRDA#2をボーダクローズする前でボーダアウトBRDOを記録する前の状態では、ユーザデータの追記可能範囲205が狭まっているのでボーダゾーン内の記録位置管理ゾーンRMZ内に追記される記録位置管理データの追記回数は、それ程多くはならないと考えられる。
従って、ボーダ内領域BRDA#2の直前にあるボーダインBRDI内の記録位置管理ゾーンRMZの設定サイズ“M”は。相対的に小さく取れる。すなわち、ボーダインBRDIが配置される場所が内周側の方が記録位置管理データの追記予想回数が多く、外周に行くに従って記録位置管理データの追記予想回数が少なくなるので、ボーダインBRDIサイズを外周側で小さくすると構成としている。その結果、新ボーダ内領域BRDA設定時間の短縮化と処理効率化が可能である。
図28(c)に示すボーダ内領域BRDA内に記録する情報の論理的な記録単位を、Rゾーン(R Zone)と呼ぶ。従って、1個のボーダ内領域BRDA内には、少なくとも1個以上のRゾーンが割り当てられる。現行のDVD−ROMでは、ファイルシステムトシてUDF(Universal Disc Format)に準拠したファイル管理情報と、ISO9660に準拠したファイル管理情報とが、同時に1枚の情報記憶媒体内に記録される“UDFブリッジ”というファイルシステムを採用している。ISO9660に準拠したファイル管理方法では、1個のファイルが情報記憶媒体内に、必ず連続して記録されなければならない決まりがある。
すなわち、ISO9660においては、1個のファイル内の情報が、情報記憶媒体上に離散的な位置に分割配置することが禁止されている。従って、例えば、UDFブリッジに準拠して情報が記録された場合、1個のファイルを構成する全情報が連続的に記録されるので、この1個のファイルが連続して記録される領域が、1個のRゾーンを構成するように適応させることもできる。
図29に、制御データゾーンCDZとR物理情報ゾーンRIZ内のデータ構造を示す。
図29(b)に示すように、制御データゾーンCDZ内には、物理フォーマット情報PFI(Physical Format Information)と媒体製造関連情報DMI(Disc Manufacturing Information)が、R物理情報ゾーンRIZ内には、同じくDMIとR物理フォーマット情報R_PFI(R-Physical Format Information)が、それぞれ規定されている。
媒体製造関連情報DMI内は、媒体製造国名に関する情報251と媒体メーカ所属国情報252が記録されている。販売された情報記憶媒体が特許侵害している時に製造場所がある国内または情報記憶媒体を消費して(使って)いる国内に対して侵害警告を掛ける場合が多い。情報記憶媒体内に、前記の情報の記録を義務付けることで製造場所(国名)が判明し、特許侵害警告を掛け易くすることが可能で、知的財産が保証され、技術の進歩が促進される。また、媒体製造関連情報DMI内は、その他の媒体製造関連情報253も記録されている。
物理フォーマット情報PFIもしくはR物理フォーマット情報R_PFI内には、記録場所(先頭からの相対的なバイト位置)に対応して、記録される情報の種類が規定されていることを特徴とする。すなわち、物理フォーマット情報PFIまたはR物理フォーマット情報R_PFI内の記録場所として、0バイト目から31バイト目までの32バイトの領域にはDVDファミリ内の共通情報261が記録され、32バイト目から127バイト目までの96バイトには、本実施形態で対象とするHD DVDファミリ内の共通な情報262が記録され、128バイト目から511バイト目までの384バイトには各規格書タイプやパートバージョンに関するそれぞれ独自な情報(固有情報)263が記録され、512バイト目から2047バイト目までの1536バイトには各リビジョンに対応した情報が記録される。
このように、情報内容により物理フォーマット情報内の情報配置位置を共通化することで、媒体の種類に拘わりなく記録されている情報の場所が共通となるため、情報再生装置あるいは情報記録再生装置の再生処理の共通化と簡素化が達成される。
0バイト目から31バイト目までに記録されているDVDファミリ内の共通情報261は、図29(d)に示すようにさらに、0バイト目から16バイト目までに記録されている再生専用形情報記憶媒体と書替え形情報記憶媒体、追記形情報記憶媒体の全てに共通に記録してある情報267と、17バイト目から31バイト目までに書替え形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体には共通で再生専用形では不要な(記録されていない)情報268とに区分されている。
図29に示した制御データゾーン内のデータ構造に関する他の実施形態を図31に示す。
図23(c)に示すように、制御データゾーンCDZは、エンボスピット領域211の一部として構成されている。この制御データゾーンCDZは、物理セクタ番号151296(024F00h)で始まる192個のデータセグメントを含む。
一方、図31の実施形態では、制御データゾーンCDZ内は、16データセグメントで構成される制御データセクションCTDSと、16データセグメントで構成されるコピーライトデータセクションCPDSがそれぞれ2箇所ずつ配置され、その間には、リザーブ領域RSVが設定されている。CTDSとCPDSとを、それぞれ、2箇所ずつ配置することで記録情報の信頼性を向上させるとともに、間にリザーブ領域RSVを配置することで、2箇所間の物理的な距離を広げたことにより、情報記憶媒体表面の傷等により発生するバーストエラーに対する影響を軽減している。
1個の制御データセクションCTDSの中は、図31(c)に示すように相対的な物理セクタ番号が“0”から“2”までの最初の3個の物理セクタ情報が、16回繰り返して記録されている。このように、16回多重書きすることにより、記録情報の信頼性を向上させている。
相対的な物理セクタ番号が“0”であるデータセグメント内の最初の物理セクタには、表8または表19に記載された物理フォーマット情報PFIが記録される。相対的な物理セクタ番号が“1”であるデータセグメント内の2番目の物理セクタには、媒体製造関連情報DMIが記録される。また、相対的な物理セクタ番号が“2”であるデータセグメント内の3番目の物理セクタには、コピーライトプロテクション情報CPIが記録される。相対的な物理セクタ番号が“3”から“31”までのリザーブ領域RSVは、システムで使用できるようにリザーブされている。
上記の媒体製造関連情報DMIの中身としては、0バイト目から127バイト目までの128バイトに媒体製造社名(Disc Manufacturer’s name)が記録され、128バイト目から255バイト目までの128バイトに媒体製造者が存在する場所情報(何処でこの媒体が製造されたかを示す情報または製造国名)が記録される。
上記媒体製造社名は、ASCIIコードで記載される。但し、媒体製造者名として使用可能なASCIIコードは“0Dh”までと“20h”から“7Eh”までに限られている。この領域内の最初の1バイト目から媒体製造者名が記載され、この領域内の余った部分には“0Dh”のデータで埋められる(ターミネートされる)。あるいは他の記載方法として、媒体製造者名の記載可能サイズを最初から“0Dh”までの範囲とし、それよりも媒体製造者名が長い場合には“0Dh”までで打ち切り“0Dh”の後は、“20h”で埋めてもよい。
媒体がどこで製造されたかを示す、上記の媒体製造者が存在する場所情報は、該当する国名(country)または地域(region)に予め割り当てられているASCIIコードである。なお、この領域も、媒体製造者名と同様に使用可能なASCIIコードは“0Dh”までと“20h”から“7Eh”までに限られている。従って、この領域内の最初の1バイト目から媒体製造者が存在する場所情報が記載され、余った部分には“0Dh”のデータが埋められる(ターミネートされる)。あるいは、他の記載方法として、媒体製造者が存在する場所情報の記載可能サイズを最初から“0Dh”までの範囲とし、それよりも媒体製造者が存在する場所情報が長い場合は“0Dh”までで打ち切り、“0Dh”の後は“20h”で埋めてもよい。
図31(c)のリザーブ領域RSV内は、全て“00h”のデータで埋められる。
図29または図31に示した物理フォーマット情報PFIまたはR物理フォーマット情報R_PFI内の具体的な情報内容と物理フォーマット情報PFI内情報の媒体種類(再生専用形か書替え形か追記形か)による比較を、表8に示す。
DVDファミリ内のディスクに共通な情報261のうちの再生専用形、書替え形、追記形の全てに共通に記録してある情報267としては、バイト位置0から16までに、順次規格書のタイプ(再生専用/書替え/追記)情報とバージョン番号情報、媒体サイズ(直径)、最大可能データ転送レート情報、媒体構造(単層か2層か、エンボスピット/追記領域/書き替え領域の有無)、記録密度(線密度とトラック密度)情報、データ領域DTAの配置場所情報、バーストカッティング領域BCAの有無(本実施形態は全て有り)が記録されている。
DVDファミリのうちの共通情報261において、書替え形と追記形に共通に記録する情報268として、28バイト目から31バイト目まで、順次、最大記録スピードを規定したリビジョン番号情報、最大記録スピードを規定したリビジョン番号情報、リビジョン番号テーブル(応用リビジョン番号)、クラス状態情報、および(拡張された)パートバージョン情報が記録されている。この28バイト目から31バイト目までに記載された情報により、物理フォーマット情報PFIまたはR物理フォーマット情報R_PFIの記録領域内に、記録速度に応じたリビジョン情報を持たせることになる。例えば、これまでに実用化されているが、2倍速や4倍速という、媒体への記録速度が高められた媒体が開発されると、それに応じて、その都度新たに規格書を作り直すという非常に面倒な手続きが要求される。それに対して、本実施形態では、大きく内容が変更になった時にバージョンを変更させる規格書(バージョンブック)と、記録速度等小変更に対応してリビジョンを変更して発行するリビジョンブックに分け、記録速度が向上する毎に、リビジョンのみを更新したリビジョンブックのみを発行することを可能とする。これにより、将来の高速記録対応の媒体への拡張機能を保証し、リビジョンと言う簡単な方法で規格を対応できるので新たな高速記録対応媒体が開発された場合に、高速で対応が可能になる。
特に、17バイト目の最高記録速度を規定したリビジョン番号情報の欄と18バイト目の最低記録速度を規定したリビジョン番号情報の欄を、別々に設けることで、記録速度の最高値と最低値でリビジョン番号を別に設定可能とすることを特徴とする。例えば、非常に高速に記録可能な記録膜を開発した場合、その記録膜は非常に高速での記録は可能であるが、記録速度を落とすと急に記録できなくなったりあるいは記録可能な最低速度を低くできるような記録膜は非常に高価にになったりする場合が多い。
これに対して、本実施形態のように記録速度の最高値と最低値でリビジョン番号を別に設定可能とすることで、開発(適用)可能記録膜の選択範囲を広げ、その結果、より高速記録が可能な媒体やより低価格な媒体が供給可能になると言う効果が生じる。本実施形態の情報記録再生装置では、各リビジョン毎の可能最高記録速度と、可能な最低記録速度の情報が事前に与えられている。
情報記憶媒体を、情報記録再生装置により再生しようとすると、最初に、図9に示した情報記録再生部141により、物理フォーマット情報PFIもしくはR物理フォーマット情報R_PFI内の情報が読み取られる。ここで、得られたリビジョン番号情報を元に、制御部143により、メモリ部175内に事前に記録されているリビジョン毎の可能最高記録速度と可能最低記録速度の情報が参照される。これにより、装着された情報記憶媒体の可能最高記録速度の情報と可能最低記録速度の情報が取得できる。従って、取得結果に基づいて、最適な記録速度による記録が可能となる。
次に、図29(c)に示した128バイト目から511バイト目までの各規格書のタイプとバージョンの固有情報263の意味と512バイト目から2047バイト目までの各リビジョンに固有に設定される情報の内容264について説明する。
128バイト目から511バイト目までの各規格書のタイプとバージョンの固有情報263内では、各バイト位置における記録情報の内容の意味が、タイプが異なる“書替え形情報記憶媒体”と“追記形情報記憶媒体”に依らず一致し、512バイト目から2047バイト目までの各リビジョンに固有に設定できる情報内容264として、“書替え形情報記憶媒体”と“追記形情報記憶媒体”との違いのみならず、同じ種類の媒体においてもリビジョンが異なると各バイト位置での記録情報内容の意味が異なることを許容する。
表8に示すように、タイプが異なる“書替え形情報記憶媒体”と“追記形情報記憶媒体”において、各バイト位置における記録情報の内容の意味が一致する各規格書のタイプとバージョンの固有情報263の中の情報としては、媒体製造メーカ名情報、媒体製造メーカからの付加情報、記録マークの極性(“H→L”か“L→H”かの識別)情報、記録時もしくは再生時の線速度情報、円周方向に沿った光学系のRIMインテンシティ値、半径方向に沿った光学系のRIMインテンシティ値、再生時の推奨レーザパワー(記録面上の光量値)が、順に、記録される。
特に、192バイト目の記録マークの極性(“H→L”または“L→H”の識別に利用可能される)MPD情報(Mark Polarity Descriptor)は、本実施形態の特有の記載である。例えば、従来の書替え形あるいは追記形DVDディスクでは、未記録状態(反射レベルが相対的に高い:High)に対して、記録マーク内の光反射量が低下(Low)する“H→L”(High to Low)タイプの記録膜のみ、使用が認められているが、それに対して“高速記録対応”や“低価格化”あるいは物理的な性能として“クロスイレーズの減少”や“書き替え回数上限値の増加”等のさまざまな要求が、媒体に要求されることにより、従来の“H→L”記録膜だけでは、対応し切れないことが予想できる。このため、本実施形態では、“H→L”記録膜に加え、記録マーク内で(未記録状態に対して記録時の)光反射量が増加する“L→H”記録膜の使用も許容している。これにより、既に実用化されている“H→L”だけでなく“L→H”記録膜も規格内に組み込み、記録膜の選択範囲を広げることで、高速記録が可能であり、あるいは低価格な媒体が供給できる。
具体的な情報記録再生装置の実装方法を、以下に説明する。
規格書(バージョンブック)あるいはリビジョンブックで“H→L”記録膜からの再生信号特性と“L→H”記録膜からの再生信号特性の両方を併記し、それに対応して、図9により既に説明したPR等化回路130とビタビ復号器156のそれぞれに、2通りずつの対応回路を用意しておく。
情報再生部141に、再生(記録)対象の情報記憶媒体が装着されることにより、まず始めに、システムリードイン領域SYLDIに記録されている情報を読むためのスライスレベル検出回路132が起動される。このスライスレベル検出回路132において、上述の192バイト目に記録された記録マークの極性(“H→L”か“L→H”かの識別)情報を読み取った後“H→L”か“L→H”かの判別を行い、それに合わせてPR等化回路130とビタビ復号器156の回路が切り替えられる。
続いて、データリードイン領域DTLDIまたはデータ領域DTA内に記録されている情報を再生する。上記の方法により、比較的短時間で、しかも精度良くデータリードイン領域DTLDIまたはデータ領域DTA内の情報を読むことが(再生することが)可能となる。なお、17バイト目に最高記録速度を規定したリビジョン番号情報が、18バイト目に最低記録速度を規定したリビジョン番号情報が記載されているが、前記情報は最高と最低を規定した範囲情報でしかない。最も安定に記録するためには、記録時に最適な線速情報が必要となるので、その情報が193バイト目に記録されている。また、リビジョン毎に固有に設定できる情報内容264内に含まれる各種の記録条件(ライトストラテジ)情報に先立つ位置に光学系条件情報として、194バイト目に、“円周方向に沿った光学系のRIMインテンシティ値”ならびに195バイト目に、“半径方向に沿った光学系のRIMインテンシティ値”の情報が配置されている。これらの情報は、引き続いて後ろ側(後段)に記録(配置)される記録条件を割り出す(求める)時に使用した光学ヘッドの光学系の条件情報を意味している。
リムインテンシティとは情報記憶媒体の記録面上に集光する前に対物レンズに入射する入射光の分布状況を意味し、
『入射光強度分布の中心強度を“1”とした時の対物レンズ周辺位置(瞳面外周位置)での強度値』
で定義される。
対物レンズへの入射光強度分布は、点対称ではなく、楕円分布をもつ。このため、情報記憶媒体の半径方向と円周方向で、それぞれRIMインテンシティ値が異なる。従って、RIMインテンシティ値として、2通りの値が記録される。RIMインテンシティ値が大きいほど情報記憶媒体の記録面上での集光スポットサイズが小さくなるので、このRIMインテンシティ値により最適な記録パワー条件が大きく変わる。
情報記録再生装置は、自分が持っている(自身に組み込まれている)光学ヘッドのリムインテンシティ値の情報を予め知っている(メモリ145に記憶されている)ので、まず情報記憶媒体内に記録されている円周方向と半径方向のそれぞれのRIMインテンシティ値を読み取り、自分が持っている光学ヘッドの値と比較する。比較した結果に大きな違いが無ければ後ろ側に記録されている記録条件を適用できるが、比較した結果で大きな食い違いが有れば後ろ側に記録されている記録条件を無視し、図23または図25に記載されているドライブテストゾーンDRTZを利用して、記録再生装置側で、(自ら)試し書きをしながら最適な記録条件の割り出しを始める必要がある。
このように、193バイト目以降に記録されている記録条件を利用するか、その情報を無視して記録再生装置側で、(自ら)試し書きをしながら、最適な記録条件の割り出しを始めるかの判断を早急に行う必要がある。表8に示すように、推奨される記録条件が記録されている位置に対する先行位置に、その条件を割り出した光学系の条件情報を配置することで、まず始めにそのRIMインテンシティ情報を取得することができ、後に配置される記録条件の適合可否を、高速に判定できる。
上述したように、本実施形態では、内容が大きく変更された時にバージョンが変更される規格書(バージョンブック)と、記録速度等の小さな変更に対応してリビジョンされるリビジョンブックに分け、記録速度が向上する毎にリビジョンのみを更新したリビジョンブックのみを発行できるようにしている。従って、リビジョン番号が異なるとリビジョンブック内の記録条件が変化するので、記録条件(ライトストラテジ)に関する情報が主にこの512バイト目から2047バイト目までの各リビジョン毎に固有に設定できる情報内容264の中に記録される。
表8から明らかなように、512バイト目から2047バイト目までのリビジョン毎に固有に設定できる情報内容264としては、タイプが異なる“書替え形情報記憶媒体”と“追記形情報記憶媒体”との違いのみならず、同じ種類の媒体においても、リビジョンが異なると、各バイト位置における記録情報の内容の意味が異なることを許容する。
表8におけるピークパワー、バイアスパワー1、バイアスパワー2、バイアスパワー3の定義は、図16で定義されているパワー値に一致している。表8に示されたファーストパルスの終了時間とは図16で定義したTEFPであり、マルチパルス間隔とは図16で定義したTMPである。また、ラストパルスの開始時間とは図16で定義したTSLPであり、2Tマークのバイアスパワー2の期間とは図16で定義したTLCである。
表8に示した物理フォーマット情報とR物理フォーマット情報内のデータ構造に関する他の実施形態を表19に示す。
表19ではさらに、“アップデートされた物理フォーマット情報”についても比較して記載している。表19において、0バイト目から31バイト目までを、DVDファミリのディスクに共通の共通情報269の記録領域として利用し、32バイト目以降を各規格書用に設定している。
追記形情報記憶媒体において、図23(c)に示すようにデータリードイン領域DTLDI内のR物理情報ゾーンRIZ内に記録されたR物理フォーマット情報PFI(HD_DVDファミリのディスクに共通情報のコピー)に、ボーダゾーンの開始位置情報#1_BRD(1st Borderの最外周アドレス)が、付加されて記録されている。図28(d)または図27(d)に示すボーダインBRDI内のアップデートされた物理フォーマット情報U_PFI内には、物理フォーマット情報PFI(HD_DVDファミリの共通情報のコピー)にアップデートされた開始位置情報(自己BRDの最外周アドレス)が、付加されて記録されている。
表8では、上述したボーダゾーンの開始位置情報が197バイト目から204バイト目までに配置されているのに対して、表19に示した実施形態ではピークパワーやバイアスパワー1等である記録条件に関する情報(リビジョン毎に固有に設定できる情報内容264)よりも先行した位置で有り、かつDVDファミリ内の共通情報269よりも後の位置である133バイト目から140バイト目に配置される。
アップデートされた開始位置情報もボーダゾーンの開始位置情報と同様にピークパワーやバイアスパワー1等である記録条件に関する情報(リビジョン毎に固有に設定できる情報内容264)よりも先行した位置で有り、かつDVDファミリ内の共通情報269よりも後の位置である133バイト目から140バイト目に配置される。
なお、将来、リビジョン番号がアップしてより精度の高い記録条件が求められた場合、書替え形情報記憶媒体の記録条件情報として、197バイト目から207バイト目までを使用することも可能である。しかしながら、その場合には、表8に示した実施形態のように、追記形情報記憶媒体内に記録されるR物理フォーマット情報のボーダゾーンの開始位置情報を197バイト目から204バイト目に配置すると、記録条件の配置位置に関する“書替え形情報記憶媒体”と“追記形情報記憶媒体”との間の対応(互換性)が崩れる危険性がある。このため、表19に示すように、ボーダゾーンの開始位置情報とアップデートされた開始位置情報を、133バイト目から140バイト目に配置することで、将来記録条件に関する情報量が増加しても“書替え形情報記憶媒体”と“追記形情報記憶媒体”との間で、各種情報間の記録位置の対応(互換性)が確保できる。
ボーダゾーンの開始位置情報に関する具体的な情報内容は、133バイト目から136バイト目に、現在使用している(カレントの)ボーダ内領域BRDAの外側にあるボーダアウトBRDOの開始位置情報が物理セクタ番号PSNで記載され、137バイト目から140バイト目には、次に使用されるボーダ内領域BRDAに関するボーダインBRDIの開始位置情報が物理セクタ番号(PSN)で記載されている。
アップデートされた開始位置情報に関する具体的な情報内容は、ボーダ内領域BRDAが新たに設定された場合の最新のボーダゾーン位置情報を示し、133バイト目から136バイト目に、現在使用している(カレントの)ボーダ内領域BRDAの外側にあるボーダアウトBRDOの開始位置情報が物理セクタ番号PSNで記載され、137バイト目から140バイト目には次に使用されるボーダ内領域BRDAに関するボーダインBRDIの開始位置情報が物理セクタ番号PSNで記載されている。次のボーダ内領域BRDAが記録不可能な場合には、ここ(137バイト目から140バイト目)は全て“00h”で埋められる。
表8に示した実施形態に比べ、表19の実施形態では“媒体製造メーカ名情報”と“媒体製造メーカからの付加情報”が削除され、128バイト目から記録マークの極性(“H→L”か“L→H”かの識別)情報が配置される。
表8または表19で4から15バイト目に記録されているデータ領域DTAの配置場所情報内に記録される詳細な情報の内容比較を表9に示す。媒体の種別と物理フォーマット情報PFIとR物理フォーマット情報R_PFIの区別なくデータ領域DTAの開始位置情報が共通に記録されている。終了位置を示す情報として、再生専用形情報記憶媒体の中では、データ領域DTAの終了位置情報が記録されている。追記形情報記憶媒体の物理フォーマット情報PFI内では、ユーザデータの追記可能範囲の最後の位置情報が記録されているが、この位置情報は例えば、図25(e)に示した例では、ζ点の直前位置を意味している。
これに対して、追記形情報記憶媒体のR物理フォーマット情報R_PFI内では、該当するボーダ内領域BRDAの中において、既に記録されているデータの最後の位置情報が記録される。
また、再生専用形情報記憶媒体内では、再生側光学系から見た手前の層である“0層”内での最後のアドレス情報が、書替え形情報記憶媒体内ではランド領域とグルーブ領域間の各開始位置情報の差分値の情報が、それぞれ、記録されている。
図23(c)に示すように、データリードイン領域DTLDI中に記録位置管理ゾーンRMZが存在する。一方、図28(d)に示すように、そのコピー情報が、記録位置管理ゾーンへの記録内容のコピー情報C_RMZとして、ボーダアウトBRDO内にも、記録されている。この記録位置管理ゾーンRMZの中は、図24(b)に示すように、1物理セグメントブロックサイズと同じデータサイズを持った記録位置管理データRMDが記録され、その記録位置管理データRMDの内容が更新される毎に更新された新たな記録位置管理データRMDとして、順次、後ろに追記可能である。この1個の記録位置管理データRMD内の詳細なデータ構造を、表10、表11、表12、表13、表14および表15に示す。記録位置管理データRMD内はさらに、1個あたり2048バイトサイズに規定されたRMDフィールド情報RMDFに分割されている。
記録位置管理データRMD内の最初の2048バイト(先頭の1個)は、リザーブ領域としてリザーブされている。
次の2048バイトサイズのRMDフィールド(RMDF)0には、記録位置管理データフォーマットコード情報、対象の媒体が、a)未記録状態か、b)ファイナライズ前の記録途中か、c)ファイナライズ後か、のいずれかであるかを示す媒体状態情報、ユニークディスクID(ディスク識別情報)、データ領域DTAの配置位置情報と最新の(更新された)データ領域DTAの配置位置情報、記録位置管理データRMDの配置位置情報が順次配置されている。
データ領域DTAの配置位置情報の中には、初期状態でのユーザデータの追記可能範囲204(図25(d))を示す情報として、データ領域DTAの開始位置情報と、初期時におけるユーザデータの記録可能範囲204の最終位置情報〔図25(d)の実施形態ではこの情報はβ点の直前位置を示す〕が記録される。
表19に説明した物理フォーマット情報と、R物理フォーマット情報に関する他の実施例の更なる他の実施例について、表21に示す。
表21に示した実施例では、表19に示した実施例に比べて、
(1)32バイト目に存在する最大の再生速度が何倍速であるかを示す情報、
(2)133バイト目に存在する1番目の記録速度が何倍速であるかを示す情報、
(3)134バイト目に存在する2番目の記録速度が何倍速であるかを示す情報、
(4)148バイト目に存在する16番目の記録速度が何倍速であるかを示す情報、
(5)149バイト目として、データ領域DTAでの光反射率、
(6)150バイト目として、トラック形状とプッシュプル信号振幅、
(7)151バイト目として、オントラック信号情報(追記形情報記憶媒体の場合)もしくはランドトラック上でのオントラック信号情報(書替え形情報記憶媒体の場合)、
(8)152バイト目として、書替え形情報記憶媒体内のグルーブトラック上でのオントラック信号情報、
(9)256バイトから263バイト目に存在するR物理フォーマット情報内のボーダゾーンの開始位置を示す物理セクタ番号PSN、および、
アップデートされた物理フォーマット情報内に存在するボーダゾーンの開始位置を示すアップデートされた物理セクタ番号が記録されている。
表21の32バイト目に存在する“最大の再生速度が何倍速になるかの(何倍速であるかを示す)情報”に関し、さらに詳細に説明する。
“最大の再生速度が何倍速になるかの(何倍速であるかを示す)情報”は、標準の再生速度を表す1倍速の情報を1とした場合の、それに対する10分の何倍かの値(10を分母として示す)で情報が記録される。例えば、最大の再生速度が標準1倍速の場合には、“1=10/10”であり、この情報(最大の再生速度が何倍速になるかの情報)の枠内には“10”の値が入る。また、例えば最大の再生速度が標準速度の2倍(2倍速)の場合は、標準速度の“10分の20”になるため、“最大の再生速度が何倍速かになるかの情報”の枠内に入る値は“2”ではなく、“20”の値が記録されている。
表21の133バイト目から148バイト目まで存在するn番目の記録速度が何倍速になるかの情報も上述したのと同様、“標準速度に対する10分の何倍か”の値(10を分母として示す)で記録される。例えば、1番目の記録速度が標準速度、すなわち1倍になる場合には、標準速度の“10/10倍”になるので、1番目の記録速度が何倍速になるかの情報として、“10”の値が記録される。実際に記録されるデータは、2進法の値で記録されるので、“10”の値は“0000 1010b”として記録される。また、134バイト目に記録された2番目の記録速度が何倍速になるかの情報として標準速度の2倍速になる場合には、“標準速度×20/10”となるため、この欄には“20”の値を意味する“0001 0100b”として記録される。
もし、対象の追記形情報記憶媒体の記録速度が“標準倍速(1倍速)のみ”だけが定義されている場合には、134バイト目から148バイト目に記載される“2番目以降の記録速度が何倍速になるかの情報”の枠内は全てリザーブ領域として扱われ、“0000 0000b”の値が記録される。
表21の149バイト目に記録されるデータ領域DTAでの光反射率は、“実際の値をパーセント表示した値に“1/2”を掛けた値”で記録される。例えば、データ領域DTAでの反射率が“20%”の場合“20=40/2”であるから、この場合は、データは“40”の値を意味する“0010 1000b”が記録される。
表21の150バイト目に存在するトラック形状とプッシュプル信号振幅は、トータル1バイトの情報として、最初の上位1ビット目に、トラック形状情報、下位7ビットに、プッシュプル信号振幅の順に記録される。
前記上位1ビット目のトラック形状は、トラックがグルーブ領域の上に存在する場合、すなわちグルーブ領域上に記録マークが形成される場合に、トラック形状の値として“0b”が設定され、トラックがランド上に存在する場合(ランド領域上に記録マークが形成される場合)に、トラック形状として“1b”の値が設定される。また、下位7ビットで記録されるプッシュプル信号の振幅値は、記録マークが記録される前(未記録)の状態において、図65(a)に示される加算器26の出力である(I1+I2)DC成分を分母とし、図57に示す(I1−I2)の信号の振幅である(I1−I2)PPを分子とした分数計算の結果の値として、プッシュプル信号が定義される((I1−I2)PP/(I1+I2)DC)。
図11に示した情報再生装置または情報記録再生装置では、ウォブル信号検出部135でプッシュプル信号を用いたトラックずれ検出を兼用している。
トラックずれ検出回路(ウォブル信号検出部135)では、上記プッシュプル信号(I1−I2)PP/(I1+I2)DCの値として、
0.1 ≦ (I1−I2)PP/(I1+I2)DC ≦0.8
の範囲で、安定にトラックずれが検出できる。
特に、“H→L”記録膜に対しては、
0.26≦ (I1−I2)PP/(I1+I2)DC ≦0.52
の範囲、“L→H”記録膜に対しては、
0.30≦ (I1−I2)PP/(I1+I2)DC ≦0.60
の範囲で、一層安定に、トラックずれを検出できる。
従って、本実施形態において、プッシュプル信号は、
0.1≦ (I1−I2)PP/(I1+I2)DC ≦0.8
の範囲、好ましくは“H→L”記録膜に対しては
0.26≦ (I1−I2)PP/(I1+I2)DC ≦0.52
の範囲、“L→H”記録膜に対しては、
0.30≦ (I1−I2)PP/(I1+I2)DC ≦0.60
の範囲に入るように、情報記憶媒体の特性を規定している。
上記の範囲は、データリードイン領域DTLDIあるいはデータ領域DTA、データリードアウト領域DTLDOにおける既記録場所(記録マークが存在する場所)と未記録場所(記録マークが存在しない場所)の両方において成り立つように規定しているが、本実施形態はそれに限らず、例えば既記録場所(記録マークが存在する場所)のみで成り立つまたは未記録場所(記録マークが存在しない場所)のみで成り立つように規定することもできる。
さらに、本実施形態では、既記録場所と未記録場所での図57に示す“(I1−I2)”の信号の振幅“(I1−I2)PPafter”と“(I1−I2)PPbefore”との比率として、
“H→L”記録膜および“L→H”記録膜に関わらず、
0.7 ≦ (I1−I2)PPafter/(I1−I2)PPbefore、
(I1−I2)PPafter/(I1−I2)PPbefore ≦1.50
を満足するように、情報記憶媒体特性を規定している。
表21の150バイト目であるトラック形状とプッシュプル信号振幅内の下位7ビットに記載されるプッシュプル信号振幅の値は、実際のプッシュプル信号振幅値に対する百分率で表示される。
例えば、プッシュプル信号の振幅が0.70(70%)の場合には、“0.7=70/100”であるから、この欄内に記載されるデータは、“70”の値を2進法で表現した“0100 0110b”となる。
追記形情報記憶媒体の場合は、表21の151ビット目に“オントラック信号の情報”が記録される。本実施形態においては、追記形情報記憶媒体では、トラッキングの対象は、プリグルーブ領域上(プリグルーブ領域上に記録マークが形成される)であるから、オントラック信号は、プリグルーブ領域上をトラッキングした時の検出信号レベルを意味している。すなわち、オントラック情報は、例えば図65(b)や、図66(b)に示されるトラックループON時の未記録領域の信号レベル“(Iot)groove”を意味している。この欄に実際に記録される情報としては、150バイト目のプッシュプル信号振幅と同様に、百分率で表示される。例えば、オントラック信号が0.70(70%)の場合には、“0.70=70/100”に対応するため、オントラック信号領域には“70”の値を2進法で表現した“0100 0110b”の情報が記載される。
表21の151バイト目は、書替え形情報記憶媒体の場合には、ランド(トラック)上でのオントラック信号情報が記録される。また、書換え型情報記憶媒体の場合には、表21の152バイト目に示すように、グルーブ(トラック)上でのオントラック信号情報が記録される。
ランド(トラック)上のオントラック信号情報とグルーブ(トラック)上のオントラック信号情報のそれぞれも、前述したオントラック信号情報と同様に、百分率(100分のnの値)で記載される。すなわち、例えばランド(トラック)上もしくはグルーブ(トラック)上でのオントラック信号が0.70の場合には、“70/100”であるから“70”の値を2進法で表現した“0100 0110b”の情報が記載される。
表21において、256バイト目から263バイト目には、R物理フォーマット情報とアップデートされた物理フォーマット情報内のボーダゾーンの開始位置を示す情報が記録される。
R物理フォーマット情報内において、256バイト目から259バイト目には、現在のボーダアウトBRDO(図27(c)参照)の開始位置を表す物理セクタ番号が、260バイト目から263バイト目には、次のボーダ内領域に対応したボーダインBRDIの開始位置を示す物理セクタ番号PSNの情報が、それぞれ記録される。アップデートされた物理フォーマット情報内において、256バイト目から259バイト目に、現在のボーダアウトBRDO(図27(c)参照)の開始位置を表す物理セクタ番号PSNが、260バイト目から263バイト目までは、次のボーダインBRDIの開始位置を表す物理セクタ番号PSNが、それぞれ記録される。ここで、次のボーダ内領域BRDAが存在しない場合には、次のボーダインの開始位置を示す物理セクタ番号として、“00h”が、記録される。
表19の4バイト目から15バイト目に記録されるデータ領域DTAの配置場所情報、または表21の4バイト目から15バイト目までに配置されるデータ領域DTAの配置場所情報の詳細な情報を表22に示す。
表22に示すデータ領域DTAの配置場所情報は、物理フォーマット情報PFIおよびR物理フォーマット情報R−PFI、アップデートされた物理フォーマット情報U−PFI内で若干異なる情報が記録される。すなわち、再生専用形情報記憶媒体内では、最初にデータ領域の開始位置情報が物理セクタで記録され、次にデータ領域の終了位置情報、その後(最後)に、0層(L0層)の最後のアドレス情報が、それぞれ、物理セクタ情報で記録される。
それに対し、書替え形情報記憶媒体においては、ランド領域内でのデータ領域DTAの開始位置情報、ランド領域内でのデータ領域DTAの終了位置情報、ならびにランド領域とグルーブ領域との間の各開始位置情報の差分値が、それぞれ、物理セクタ番号で記録される
一方で、追記形情報記憶媒体においては、データ領域の開始位置情報を表す物理セクタ番号、ユーザデータの追記可能範囲の最後の位置情報を表す物理セクタ番号が、それぞれ、記録される。
本実施形態において、追記形情報記憶媒体のうちのデータ領域の開始位置情報は、図25(d)に示すように、データ領域DTAの最初の位置を表す物理セクタ番号PSN、すなわち、実質的に“030000h”の値が記録される。
また、ユーザデータの追記が可能範囲の最後の位置情報として、図25(d)に示すように、データ領域(DTA)の最後の位置であるβの位置の直前の情報、実質的には“73543Fh”の値が記録される。
但し、本実施形態における追記形情報記憶媒体においては、初期の段階で図25(f)に示すように、拡張代替領域ESPAを最初から設定している場合があり、その場合には、ユーザデータの使用可能範囲205が、ゼータ(ζ)点の直前位置までしか記録できない。すなわち、拡張代替領域ESPAが設定されている場合には、ゼータ(ζ)点の直前の位置を示す物理セクタ番号が記録される。
R物理フォーマット情報R_PFIにおいては、データ領域DTAの開始位置情報を表す物理セクタ番号(030000h)が記録されるとともに、該当するボーダ内領域の中での最後のRゾーン内で、最後に記録された場所を示す物理セクタ番号が記録される。
アップデートされた物理フォーマット情報U_PFI内では、データ領域DTAの開始位置情報を表す物理セクタ番号(030000h)と該当するボーダ内領域の中での最後のRゾーン内で最後に記録された場所を示す物理セクタ番号が記録される。
本実施形態では、図25(e)および図25(f)に示すように、ユーザデータの追記可能範囲204内に拡張ドライブテストゾーンEDRTZと拡張代替領域ESPAの追加設定を可能としているが、このように拡張すると、ユーザデータの追記可能範囲205が狭くなる。このため、誤って、それぞれの拡張領域(ドライブテストゾーン)EDRTZと(拡張代替領域)ESPAにユーザデータを記録されることがないように“最新の(更新された)データ領域DTAの配置位置情報”内に、関連情報が記録される。
すなわち、拡張ドライブテストゾーンEDRTZの有無識別情報により、拡張ドライブテストゾーンEDRTZが増設されたかどうかが分かり、拡張代替え領域ESPAの有無識別情報により拡張代替え領域ESPAが増設されたか否かが分かる。
また、記録位置管理データRMD内で管理するユーザデータの追記が可能な範囲205に関する記録可能範囲情報として、表10に示すように、RMDフィールド0内の最新の(更新された)データ領域DTAの配置位置情報内に記録されている最新のユーザデータの記録可能範囲205の最終位置を規定したことで、図25(f)に示したユーザデータの追記可能範囲205を即座に判定可能である。これにより、今後記録可能な未記録領域のサイズ(未記録の残量)が高速で検出可能となる。
このことは、例えばユーザが指定した録画予約時間に合わせて最適な記録時転送レートが設定可能となり、実現可能な最も高画質、かつ、ユーザが指定した録画予約時間を漏れなく媒体内に録画できる。
図25(d)の実施形態を例に取ると、前記の“最新のユーザデータの記録可能範囲205の最終位置”は、ζ点の直前位置を意味する。これらの位置情報は、物理セクタ番号で記述する代わりに、他の実施形態として、ECCブロックアドレス番号で記述することも可能となる。
本実施形態では32セクタで1ECCブロックとしているので、特定のECCブロック内の先頭に配置されたセクタの物理セクタ番号の下位5ビットは、隣接するECCブロック内の先頭位置に配置されたセクタのセクタ番号と一致する。ECCブロック内の先頭に配置されたセクタの物理セクタ番号の下位5ビットが“00000”になるように、物理セクタ番号を設定した場合には、同一ECCブロック内に存在する全てのセクタの物理セクタ番号の下位6ビット目以上の値が一致する。従って、上述の同一ECCブロック内に存在するセクタの物理セクタ番号の下位5ビットデータを除去し、下位6ビット目以上のデータのみを抽出したアドレス情報を、“ECCブロックアドレス情報”(またはECCブロックアドレス番号)と定義する。
一方、ウォブル変調により予め記録されたデータセグメントアドレス情報(または物理セグメントブロック番号情報)は、上述のECCブロックアドレスと一致するので、記録位置管理データRMD内の位置情報をECCブロックアドレス番号で記述すると、
(1)特に、記録位置管理データRMD内の位置情報単位とウォブル変調とにより予め記録されたデータセグメントアドレスの情報単位が一致するため差分の計算処理が容易となるために、未記録領域へのアクセスが高速化される
(2)アドレス情報記述に必要なビット数が1アドレス当たり5ビット節約できるために、記録位置管理データRMD内の管理データサイズを小さくできる
という、効果が得られる。
また、1物理セグメントブロック長は、1データセグメント長に一致するので、1データセグメント内に1ECCブロック分のユーザデータが記録できる。従って、アドレスの表現として、“ECCブロックアドレス番号”や、“ECCブロックアドレス”もしくは“データセグメントアドレス”あるいは“データセグメント番号”または“物理セグメントブロック番号”等により任意に表現される“アドレス”とは、全て同義語と考えることができる。
表10に示すように、RMDフィールド0内に記録されている記録位置管理データRMDの配置位置情報には、この記録位置管理データRMDを内部に、順次、追記できる記録位置管理ゾーンRMZの設定されたサイズ情報がECCブロック単位または物理セグメントブロック単位で記録されている。
また、図24(b)に示したように、1個の記録位置管理ゾーンRMDが、1個の物理セグメントブロック毎に記録されているので、この情報により、記録位置管理ゾーンRMZの中に、何回アップデート(更新)された記録位置管理データRMDが追記できるかが分かる。
その次には、記録位置管理ゾーンRMZ内における、現在の記録位置管理データ番号が記録される。これは、記録位置管理ゾーンRMZ内で既に記録された記録位置管理データRMDの数情報を意味している。例えば、図24(b)に示した例が“記録位置管理データRMD#2内の情報”である、とすると、この情報は、記録位置管理ゾーンRMZ内で2番目に記録された記録位置管理データRMDであるから、“2”の値が、この欄の中に記録される。その次には、記録位置管理ゾーンRMZ内での残量情報が記録される。この情報は、記録位置管理ゾーンRMZ内において、さらに追加可能な記録位置管理データRMDの数情報を意味し、物理セグメントブロック単位(=ECCブロック単位=データセグメント単位)で記述される。
上述の3つの情報の間には、
[RMZの設定されたサイズ情報]
=[現在の記録位置管理データ番号]+[RMZ内での残量]
の関係が成立する。
このように、本実施形態では、記録位置管理ゾーンRMZ内の記録位置管理データRMDの既使用量または残量情報を、記録位置管理データRMDの記録領域内に記録することを特徴の一つとしている。
例えば、1枚の追記形情報記憶媒体に1回で全ての情報を記録する場合には、記録位置管理データRMDは1回だけ記録すれば良い。反面、1枚の追記形情報記憶媒体に、非常に細かくユーザデータの追記(図25(f)でのユーザデータの追記可能範囲205内へのユーザデータの追記)を繰り返そうとする場合には、追記毎に更新された記録位置管理データRMDも追記する必要がある。この場合、頻繁に記録位置管理データRMDを追記すると、図24(b)に示した予約領域273の余裕(残り)がなくなり、情報記録再生装置としては、それに対する処置(特別な対応)が必要となる。このため、記録位置管理ゾーンRMZ内の記録位置管理データRMDの既使用量または残量情報を、記録位置管理データRMDの記録領域内に記録することで、記録位置管理ゾーンRMZ領域内において追記が不可能な状態が事前に分かり、情報記録再生装置の早めの対処が可能となる。
本実施形態では、図25(e)から(f)への移行で示したように、拡張ドライブテストゾーンEDRTZを内部に含めた形でデータリードアウト領域DTLDOを設定できる(図1(E4))。このため、拡張ドライブテストゾーンEDRTZを内部に含めた状態でデータリードアウト領域DTLDOを設定する場合は、データリードアウト領域DTLDOの開始位置が、図25(e)のβ点からε点へ変化する。この状況を管理するため、表10のRMDフィールド0の最新の(更新された)データ領域DTAの配置位置情報内に、データリードアウト領域DTLDOの開始位置情報を記録する欄が設けられている。
前述したように、ドライブテスト(試し書き)は、基本的にデータセグメント(ECCブロック)単位で拡張可能なクラスタ単位で記録される。このため、データリードアウト領域DTLDOの開始位置情報は、ECCブロックアドレス番号で記述される。なお、他の実施形態として、最初のECCブロック内の最初に配置される物理セクタの物理セクタ番号、または物理セグメントブロック番号、データセグメントアドレス、ECCブロックアドレスで記述することも可能である。
RMDフィールド1には、対応媒体の記録を行った情報記録再生装置の履歴情報が記録され、それぞれの情報記録再生装置毎に、製造メーカ識別情報、ASCIIコードにより記述されたシリアル番号とモデル番号、ドライブテストゾーンを用いた記録パワー調整の日時情報および追記時に行った記録条件情報等のリビジョン毎に固有に設定できる情報264(表8参照)内の全記録条件情報のフォーマットに従って、記述される。
RMDフィールド2は、ユーザ使用領域であって、例えば記録した(記録したい)コンテンツの情報等が、ユーザにより記録できる。
RMDフィールド3内には、各ボーダゾーンBRDZの開始位置情報が記録される。すなわち、表11に示すように、最初(1番目)から50番目までのボーダアウトBRDOの開始位置情報が、物理セクタ番号で記載される。
例えば、図28(c)に示した実施形態では、最初のボーダアウトBRDOの開始位置は、η点の位置を表し、2番目のボーダアウトBRDOの開始位置は、θ点の位置を示している。
RMDフィールド4内では、拡張ドライブテストゾーンの位置情報が記録される。最初に、図24(c)に記載されたデータリードイン領域DTLDI内のドライブテストゾーンDRTZ内で既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報と図25(d)〜(f)に記載されたデータリードアウト領域DTLDO内のドライブテストゾーンDRTZ内で既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報とが記録される。
ドライブテストゾーンDRTZ内では、内周側(物理セクタ番号の小さい方)から外周方向(物理セクタ番号が大きくなる方向)に向かって、順次、試し書きに使用される。
試し書きに使用される場所と単位は、追記単位であるクラスタ単位に従うため、ECCブロック単位となることはいうまでもない。
従って、既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報としてECCブロックアドレス番号で記載されるか、または物理セクタ番号で記載される場合は、試し書きに用いられたECCブロックの最後に配置された物理セクタの物理セクタ番号を記載することになる。
1度試し書きに使用された場所は、(既に記録されているので、当然記録できず)、従って、次に試し書きを行う場合には、既に試し書きに使用された最後の位置の次の位置となる。
このように、ドライブテストゾーンDRTZ内で既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報、すなわちドライブテストゾーンDRTZ内の既使用量を利用して情報記録再生装置は、次に何処から試し書きを開始すればよいかを特定可能となる(瞬時に分かる)。
また、その情報から、ドライブテストゾーンDRTZ内に、次に試し書きが可能な空きスペースがあるか否かを判定できる。
データリードイン領域DTLDI内のドライブテストゾーンDRTZ内には、引き続き追加の試し書きが可能な領域サイズ情報、あるいはドライブテストゾーンDRTZを使い切ってしまったか否かを示すフラグ情報と、データリードアウト領域DTLDO内のドライブテストゾーンDRTZ内で引き続き追加の試し書きが可能な領域サイズ情報、あるいはドライブテストゾーンDRTZを使い切ってしまったか否かを示すフラグ情報とが記録される。
データリードイン領域DTLDI内のドライブテストゾーンDRTZのサイズとデータリードアウト領域DTLDO内のドライブテストゾーンDRTZのサイズは予め分かっているので、両者あるいはいずれか一方(データリードイン領域DTLDI内のドライブテストゾーンDRTZ内あるいはデータリードアウト領域DTLDO内にあるドライブテストゾーンDRTZ内)の領域内の既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報だけで、ドライブテストゾーンDRTZ内に引き続いて追加の試し書きが可能な領域のサイズ(残量)を割り出すことは可能である。しかしながら、上述の情報、すなわち引き続き追加の試し書きが可能な領域サイズ情報あるいはドライブテストゾーンDRTZを使い切ってしまったか否かを示すフラグ情報を記録位置管理データRMD内に記録することにより、ドライブテストゾーンDRTZ内の残量が分かり、拡張ドライブテストゾーンEDRTZを新規に設定する必要があるか否かの判断までの要求される時間を短縮できる。他の実施形態として、この欄に、ドライブテストゾーンDRTZ内でさらに追加試し書きできる領域サイズ(残量)情報の代わりにこのドライブテストゾーンDRTZを使い切ってしまったか否かを示すフラグ情報を記録することもできる。なお、既にDRTZを使い切ってしまったことが瞬時に分かるフラグを設定することにより、例えば誤ってこの領域に対しても試し書きが試行される危険性を排除できる。
RMDフィールド4内では、拡張ドライブテストゾーンEDRTZにおける追加設定回数情報も保持(記録)される。
図25(e)に示すように、例えば拡張ドライブテストゾーン(EDRTZ)1と拡張ドライブテストゾーン(EDRTZ)2の2箇所に拡張ドライブテストゾーンEDRTZを設定したことにより、“拡張ドライブテストゾーンEDRTZの追加設定回数=2”となる。なお、フィールド4内では、拡張ドライブテストゾーンEDRTZ毎の範囲情報と既に試し書きに使用された範囲情報が記録される。
このように、拡張ドライブテストゾーンEDRTZの位置情報を、記録位置管理データRMD内で管理可能とすることにより、拡張ドライブテストゾーンEDRTZの複数回の拡張設定が可能となる。また、追記形情報記憶媒体においては、記録位置管理データRMDの更新追記という工程により、逐次拡張された拡張ドライブテストゾーンEDRTZの位置情報を正確に管理できる。これにより、ユーザデータの追記可能範囲204(図25(d))と誤って判断されて、拡張ドライブテストゾーンEDRTZ上にユーザデータが重ね書きされる危険性を排除できる。
上述したように、試し書きの単位もクラスタ単位(ECCブロック単位)で記録されるので、拡張ドライブテストゾーンEDRTZ毎の範囲は、ECCブロックアドレス単位で指定される。
図25(e)に示した実施形態では、最初に設定した拡張ドライブテストゾーンEDRTZの開始位置情報は、拡張ドライブテストゾーン(EDRTZ)1を最初に設定することにより、γ点を示し、最初に設定した拡張ドライブテストゾーンEDRTZの終了位置情報は、β点の直前位置が対応する。位置情報の単位は、同じくECCブロックアドレス番号または物理セクタ番号で記述される。
表10、表11の実施形態では、拡張ドライブテストゾーンEDRTZの終了位置情報を示したが、それに限らず代わりに拡張ドライブテストゾーンEDRTZのサイズ情報を記載しても良い。この場合には、最初に設定した拡張ドライブテストゾーン1EDRTZ1のサイズは、“β−γ”となる。最初に設定した拡張ドライブテストゾーンEDRTZ内で既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報もECCブロックアドレス番号または物理セクタ番号で記述される。
なお、最初に設定した拡張ドライブテストゾーンEDRTZ内に、さらに追加の試し書きの可能な領域のサイズ(残量)情報が記録される。この場合、既に拡張ドライブテストゾーン(EDRTZ)1のサイズとその中で既に使用されている領域のサイズとが、上記の情報から分かっているので引き続いて追加試し書きに利用可能な領域のサイズ(残量)が、自動的に求められるが、上記の拡張ドライブテストゾーンEDRTZ内でさらに追加試し書きできる領域サイズ(残量)情報の欄を設けることにより、新たなドライブテスト(試し書き)をする時に現在のドライブテストゾーンで足りるか否かを即時判定できる。これにより、拡張ドライブテストゾーンEDRTZの追加が必要か否かが判断されるまでに要求される判断時間を、さらに短縮化できる。なお、領域サイズ(残量)情報の欄は、追加試し書きできる領域サイズ(残量)情報が記録できるように規定されているが、他の実施形態として、拡張ドライブテストゾーンEDRTZを使い切ってしまったか否かを示すフラグ情報に置き換えることも可能である。既に使い切ってしまったことが瞬時に分かるフラグが設定されていれば、誤って、EDRTZ領域に、試し書きが試行される危険性が排除できることは言うまでもない。
図9に示した情報記録再生装置で新たに拡張ドライブテストゾーンEDRTZを設定し、そこに試し書きを行う処理方法の一例について説明する。
(1)追記形情報記憶媒体を情報記録再生装置に装着する
→(2)情報記録再生部141でバーストカッティング領域BCAに形成されたデータを再生し、制御部143へ送る→制御部143内で転送された情報を解読し、次のステップへ進めるか判定する
→(3)情報記録再生部141でシステムリードイン領域SYLDI内の制御データゾーンCDZに記録されてある情報を再生し、制御部143へ転送する
→(4)制御部143内で推奨記録条件を割り出した時のリムインテンシティの値(表8の194、195バイト目)と情報記録再生部141で使われている光学ヘッドのリムインテンシティの値を比較し、試し書きに必要な領域サイズを割り出す
→(5)情報記録再生部141で記録位置管理データ内の情報を再生し、制御部143へ送る。制御部ではRMDフィールド4内の情報を解読し、(4)で割り出した試し書きに必要な領域サイズの余裕の有無を判定し、余裕がある場合には(6)へ進み、余裕がない場合には(9)へ進む
→(6)RMDフィールド4内から試し書きに使用するドライブテストゾーンDRTZまたは拡張ドライブテストゾーンEDRTZ内の既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報から今回試し書きを開始する場所を割り出す
→(7) (6)で割り出した場所から(4)で割り出したサイズ分試し書きを実行する
→(8) (7)の処理により試し書きに使用した場所が増えたので、既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報を書き替えた記録位置管理データRMDをメモリー部175に一時保存し、(12)へ進む
→(9)RMDフィールド0に記録されてある“最新のユーザデータの記録可能範囲205の最終位置”の情報または表9に示した物理フォーマットPFI内のデータ領域DTAの配置場所情報内に記録されている“ユーザデータの追記可能範囲の最後の位置情報”を情報記録再生部141で読み取り、制御部143内でさらに、新たに設定する拡張ドライブテストゾーンEDRTZの範囲を設定する
→(10) (9)の結果に基付きRMDフィールド0に記録されてある“最新のユーザデータの記録可能範囲205の最終位置”の情報を更新するとともにRMDフィールド4内の拡張ドライブテストゾーンEDRTZの追加設定回数情報を1だけインクリメント(回数を1だけ加算)し、さらに新たに設定する拡張ドライブテストゾーンEDRTZの開始/終了位置情報を付け加えた記録位置管理データRMDをメモリー部175に一時保存する
→(11) →(7)→(12)へ移動する
→(12) (7)で行った試し書きの結果得られた最適な記録条件でユーザデータの追記可能範囲205内に必要なユーザ情報を追記する
→(13) (12)に対応して新たに発生したRゾーン内の開始/終了位置情報(表13)を追記して更新された記録位置管理データRMDをメモリー部175に一時保存する
→(14)制御部143が制御して情報記録再生部141がメモリー部175に一時保存されている最新の記録位置管理データRMDを記録位置管理ゾーンRMZ内の予約領域273(例えば、図24(b))内に追加記録する。
表13に示すように、RMDフィールド5内は、拡張代替え領域ESPAの位置情報が記録される。すなわち、本実施形態の追記形情報記憶媒体においては、代替え領域が拡張可能であり、その代替え領域の位置情報が位置管理データRMDで管理される。
図25(e)に示す実施形態では、拡張代替領域(ESPA)1と拡張代替領域(ESPA)2の2箇所に、拡張代替領域ESPAを設定しているので、RMDフィールド5内の最初に記載されている“拡張代替領域ESPAの追加設定回数”は“2”となる。最初に設定した拡張代替領域ESPA1の開始位置情報は、δ点位置、最初に設定した拡張代替領域ESPA1の終了位置情報は、γ点の直前の位置、2番目に設定した拡張代替領域ESPA2の開始位置情報は、ζ点の位置、2番目に設定した拡張代替領域ESPA2の終了位置情報は、ε点の直前位置に対応する。
表13のRMDフィールド5内は、欠陥管理に関する情報が記録される。
表13のRMDフィールド5内の最初の欄に、データリードイン領域DTLDIに隣接した代替領域ESPA内で既に代替えに使用したECCブロックの数情報または物理セグメントブロック数情報が記録される。本実施形態では、ユーザデータの追記可能範囲204内で発見された欠陥領域に対しては、ECCブロック単位で代替え処理が実行される。
1ECCブロックである1個のデータセグメントが1個の物理セグメントブロック領域に記録されるので、既に行われた代替え回数は、既に代替えに使用したECCブロックの数または物理セグメントブロック数もしくはデータセグメント数に等しくなる。従って、この欄に記載される記載情報の単位は、ECCブロック単位または物理セグメントブロック単位もしくはデータセグメント単位となる。
追記形情報記憶媒体では、代替え領域SPAあるいは拡張代替え領域ESPAにおいて交替処理として使用される場所は、ECCブロックアドレス番号の若い内周側から、順次使用される場合が多い。従って、この欄の情報は、他の実施形態として、代替えへの使用済み場所の最後の位置情報として、ECCブロックアドレス番号を記載することも可能である。
表13に示すように、最初に設定した拡張代替領域(ESPA)1および2番目に設定した拡張代替領域(ESPA)2のそれぞれには、同様の情報を記録する欄が規定されている存在する。記載される情報は、“最初に設定した拡張代替領域ESPA1内の既に代替えに使用したECCブロックの数情報または物理セグメントブロック数情報あるいは代替えへの使用済み場所の最後の位置情報、すなわちECCブロックアドレス番号”と“2番目に設定した拡張代替領域ESPA2内の既に代替えに使用したECCブロックの数情報または物理セグメントブロック数情報あるいは代替えへの使用済み場所の最後の位置情報、すなわちECCブロックアドレス番号”である。
これらの情報を利用して、
(イ)次に代替え処理する時にユーザデータの追記可能範囲205内で見つかった欠陥領域に対する新たに設定すべき代替え場所が即座に分かる
… 代替えへの使用済み場所の最後の位置の直後に新たな代替えを実行
(ロ)計算により、代替領域SPAまたは拡張代替領域ESPA内の残量が求められ、(残量が足りない場合には、)新たな拡張代替領域ESPAの設定の必要性の有無が弁別可能
という利点が得られる。
データリードイン領域DTLDIに隣接した代替領域SPAのサイズは、事前に知られているので、代替領域SPA内で既に代替えに使用したECCブロックの数に関する情報が有れば代替領域SPA内での残量を計算できる。しかしながら、代替領域SPA内での残量情報である今後代替えに使用可能な未使用場所のECCブロックの数情報または物理セグメントブロック数情報の記録枠を設けることで、代替領域SPA内の未使用のECCブロックの数情報または物理セグメントブロック数情報を即座に特定できる。すなわち、引き続き拡張代替領域ESPAの設定が必要か否かを判定する際に要求される時間が低減可能である。
同様な理由から、本実施形態では“最初に設定した拡張代替領域ESPA1内での残量情報”と“2番目に設定した拡張代替領域ESPA2内での残量情報”も記録できる枠が設けられている。すなわち、追記形情報記憶媒体において、代替領域SPAを拡張可能とし、その位置情報を記録位置管理データRMD内で管理する形となっている。
図25(e)に示すように、ユーザデータの追記可能範囲204内に必要に応じて任意の開始位置、任意のサイズで拡張代替領域(ESPA)1、拡張代替領域(ESPA)2等が、拡張設定できる。従って、RMDフィールド5内に、拡張代替領域ESPAの追加設定回数情報が記録され、最初に設定した拡張代替領域ESPA1の開始位置情報や2番目に設定した拡張代替領域ESPA2の開始位置情報が設定可能となっている。これらの開始位置情報は、物理セクタ番号またはECCブロックアドレス番号あるいは物理セグメントブロック番号もしくはデータセグメントアドレスで記述される。
表10、表11の実施形態では、拡張代替領域ESPAの範囲を規定する情報として、“最初に設定した拡張代替領域ESPA1の終了位置情報”や“2番目に設定した拡張代替領域ESPA2の終了位置情報”を記録するが、他の実施形態として、それら終了位置情報の変わりに、拡張代替領域ESPAのサイズ情報が、ECCブロック数、物理セグメントブロック数、データセグメント数、ECCブロック数あるいは物理セクタ数のいずれか(または2以上の併記により)記録されてもよいことはいうまでもない。
RMDフィールド6には、欠陥管理情報が記録される。
本実施形態では、欠陥処理に関する情報記憶媒体に記録する情報の信頼性を向上する方法として、
(1)欠陥場所に記録を予定していた情報を、代替場所に記録する一般的な(周知の)“交替モード”、
(2)同じ内容の情報を、情報記憶媒体上の異なる場所に2回記録して信頼性を上げる“多重化モード”
の2種類の方法を(選択的に)対応可能としている。
どちらのモードで処理するかに関する情報が、表14に示す、記録位置管理データRMD内の2次欠陥リストエントリ情報内の“欠陥管理処理の種別情報”内に記録される。
2次欠陥リストエントリ情報内の内容は、
(1´)交替モードの場合には、
欠陥管理処理の種別情報を“01”に設定し(従来のDVD−RAMと同様)、
“交替元ECCブロックの位置情報”として、ユーザデータの追記が可能範囲205の中で欠陥場所として発見されたECCブロックの位置情報を意味し、本来この領域に記録すべき情報を記録することなく、代替領域内等への記録を案内する。“交替先ECCブロックの位置情報”は、例えば図25(e)の代替領域SPAまたは拡張代替領域(ESPA)1、拡張代替領域(ESPA)2の中に設定される交替先の場所の位置情報を示し、ユーザデータの追記が可能範囲205内で発見された欠陥場所に記録すべき情報の記録に用いられる。
(2´)多重化モードの場合には、
欠陥管理処理の種別情報を“10”に設定し、
“交替元ECCブロックの位置情報”として、非欠陥の場所であり、記録予定の情報が記録されるとともに、その記録された情報が、正確に再生できる場所の位置情報を表す。“交替先ECCブロックの位置情報”は、図25(e)の代替領域SPAまたは拡張代替領域(ESPA)1、拡張代替領域(ESPA)2の中に設定される多重化のために上記“交替元ECCブロックの位置情報”に記録された情報と全く同じ内容が記録される場所の位置情報を表す。
上記“(1)および(1´)交替モード”で記録した場合には、記録直後の段階では、情報記憶媒体へ記録された情報が正確に読み出せることは確認される。しかし、その後にユーザの不手際等で、情報記憶媒体に傷やゴミが付着して、上記記録が再生できなくなる危険性がある。それに対して、上記“(2)および(2´)多重化モード”で記録した場合には、ユーザの不手際等で、情報記憶媒体に傷やゴミが付着して、部分的に情報が再生できなくなったとしても、他の部分に同じ情報がバックアップされているので情報再生の信頼性が格段に向上する。
この時に読めなかった情報については、上記バックアップされている情報を利用して、“(1)交替モード”の交替処理を実行することでさらに信頼性が向上する。従って、上記“(2)多重化モード”の処理、あるいは“(1)交替モード”の処理と“(2)多重化モード”の処理を組み合わせることで、傷やゴミの対策も考慮に入れた、記録後の高い情報再生信頼性を確保できる。上記ECCブロックの位置情報を記述する方法としては、上記ECCブロックを構成する先頭位置にある物理セクタの物理セクタ番号を記述する方法以外に、ECCブロックアドレスまたは物理セグメントブロックアドレスあるいはデータセグメントアドレスを記載することも可能である。
本実施形態では、1ECCブロックサイズのデータが入るデータ上の領域をデータセグメントと呼ぶ。データを記録する場所の情報記憶媒体上の物理的な単位として物理セグメントブロックが定義されており、1個の物理セグメントブロックサイズと1個のデータセグメントを記録する領域のサイズが一致している。
本実施形態では、交替処理前に、事前に検出された欠陥位置情報も記録できる仕組みも持っている。これにより、情報記憶媒体の製造メーカが、出荷直前にユーザデータの追記可能範囲204内の欠陥状態を検査し、発見された欠陥場所を、(交替処理前に)事前に記録したり、ユーザにより、情報記録再生装置においてイニシャライズ処理が実行された場合に、ユーザデータの追記可能範囲204内の欠陥状態を検査し、発見された欠陥場所を、(交替処理前に)事前に記録できるようにしてある。
このように、交替処理前に事前に検出された欠陥位置を示す情報が、表14に示す2次欠陥リストエントリ情報内の“欠陥ブロックの代替ブロックへの交替処理有無情報SLR(Status of Linear Replacement)”であり、
欠陥ブロックの代替ブロックへの交替処理有無情報SLRが“0”の時には、
… “交替元ECCブロックの位置情報”で指定された欠陥ECCブロックに対して交替処理がなされ、
“交替先ECCブロックの位置情報”で指定された場所に再生可能な情報が記録されている。
欠陥ブロックの代替えブロックへの交替処理有無情報SLRが“1”の時には、
… “交替元ECCブロックの位置情報”で指定された欠陥ECCブロックは交替処理前の段階で事前に検出された欠陥ブロックを意味し、
“交替先ECCブロックの位置情報”の欄は、ブランク(何も情報が記録されてない)である。
このように、欠陥場所が事前に判明している場合、情報記録再生装置がユーザデータを追記形情報記憶媒体に追記する段階で、高速に(かつリアルタイムで)最適な交替処理が可能となる。特に、映像情報(特に動画)等を情報記憶媒体に記録する場合には、記録時の連続性を保証する必要が有り、上記情報に基づく、高速な交替処理が重要となる。
ユーザデータの追記可能範囲205内に欠陥があると、代替領域SPAあるいは拡張代替領域ESPA内の所定場所で交替処理が実行される。交替処理が実行されたことは、上述のRMDフィールド6内に、その交替処理毎に1個の2次欠陥リストエントリSDLE(Secondary Defect List Entry)情報が付加された欠陥ECCブロックの位置情報と代替えに利用されたECCブロックの位置情報との組の情報として、記録される。
ユーザデータの追記可能範囲205内に、新たにユーザデータの追記を繰り返す時に、新たな欠陥場所が発見された場合、その部分についても交替処理が実施される。従って、2次欠陥リストエントリ情報の数が増える。この2次欠陥リストエントリ情報の数が増えた記録位置管理データRMDは、図24(b)に示すように、記録位置管理ゾーンRMZ内の予約領域273内に追記することにより欠陥管理の管理情報領域(RMDフィールド6)が拡張できる。
この拡張を可能とすることにより、以下の理由から、欠陥管理情報自体の信頼性を向上させることができる。
(1)記録位置管理ゾーンRMZ内の欠陥場所を回避して記録位置管理データRMDを記録できる
… 図24(b)に示す記録位置管理ゾーンRMZ内でも欠陥場所が発生する場合がある。記録位置管理ゾーンRMZ内で新たに追記した記録位置管理データRMDの内容を追記直後に確認(ベリファイ)することで欠陥による記録不可能な状態を検知できる。その場合には、その隣に記録位置管理データRMDを書き直すことで記録位置管理データRMDを高い信頼性を高めることができる。
(2)情報記憶媒体表面に付いた傷等により過去の記録位置管理データRMDの再生が不可能となった場合においても、ある程度のバックアップが可能となる
… 例えば、図24(b)の例では、記録位置管理データRMD#2を記録した後で情報記憶媒体表面に傷が生じ、記録位置管理データRMD#2の再生が不可能になった状態を例として想定する。この場合、代わりに、記録位置管理データRMD#1の情報を再生することで、ある程度、過去の欠陥管理情報(RMDフィールド6内の情報)を修復できる。
RMDフィールド6の先頭には、RMDフィールド6のサイズ情報が記録されており、このフィールドサイズを可変と規定することにより、欠陥管理の管理情報領域(RMDフィールド6)を拡張可能としている。各RMDフィールドは、2048サイズ(1物理セクタサイズ分)に設定していることは既に説明したが、情報記憶媒体の欠陥が多く、交替処理回数が所定回数を超えた場合、2次欠陥リスト情報SDL(Secondary Defect List)の情報量(サイズ)が増大し、2048バイトサイズ(1物理セクタサイズ分)では収まらなくなる。そのような状況を考慮して、RMDフィールド6は、2048サイズの複数倍(複数のセクタに跨って記録可能)に拡張可能である。つまり、“RMDフィールド6に記録された情報”の量が2048バイトを越えた場合には、複数物理セクタ分の領域をRMDフィールド6に割り当てることで、拡張可能である。
2次欠陥リスト情報SDL内には、上述した2次欠陥リストエントリ情報の他に、2次欠陥リスト情報SDLの開始位置を示す“2次欠陥リスト識別情報”が記録される。“2次欠陥リスト識別情報”は、2次欠陥リスト情報SDLを何回書き替えたかの回数情報を示す“2次欠陥リストのアップデートカウンタ(アップデート回数情報)”である。“2次欠陥リストエントリの数情報”により2次欠陥リスト情報SDL全体のデータサイズが分かる。
ユーザデータの追記可能範囲205内には、論理的にRゾーン(R Zone)単位でユーザデータが記録されることを既に説明した。すなわち、ユーザデータを記録するために予約されるユーザデータの追記可能範囲205内の一部をRゾーン(R Zone)と呼ぶ。記録条件に応じ、このRゾーンは、2種類のRゾーンに分けられる。
1つは、追加ユーザデータがさらに記録できるタイプ(Rゾーン)であり、“オープン形Rゾーン(Open R Zone)”と呼ばれ、他の1つは、ユーザデータが追加できないタイプ(Rゾーン)であり、“完結形Rゾーン(Complete R Zone)”と呼ばれる。
ユーザデータの追記可能範囲205内では、3個以上の“オープン形Rゾーン”が同時に規定できない(すなわち、ユーザデータの追記可能範囲205内では“オープン形Rゾーン”は2箇所までしか設定できない)。
ユーザデータの追記可能範囲205内で、上記2種類のいずれのRゾーンも設定されていない場所、すなわちユーザデータを記録するために(上記2種類のRゾーンのいずれかとして)予約され場所を“未指定状態のRゾーン(Invisible R Zone)”と呼ばれる。
ユーザデータの追記可能範囲205内に全てユーザデータが記録され、それ以上、追加できない場合には、この“未指定状態のRゾーン”は存在しない。
RMDフィールド7内は、254番目までのRゾーンの位置情報が記録される。RMDフィールド7内の最初に記録される“全体のRゾーンの数情報”は、ユーザデータの追記可能範囲205内に論理的に設定される“未指定状態のRゾーン”の数と“オープン形Rゾーン”の数と“完結形Rゾーン”の数の合計数を表している。
次に、最初の“オープン形Rゾーン”の数情報と2番目の“オープン形Rゾーン”の数情報が記録されるが、前述したようにユーザデータの追記可能範囲205内では3個以上の“オープン形Rゾーン”を持つことができないので、ここは“1”または“0”(最初または2番目のオープン形Rゾーンが存在しない場合)が記録される。
次には、最初の“完結形Rゾーン”の開始位置情報と終了位置情報が物理セクタ番号で記載される。
その次には。2番目から254番目までの開始位置情報と終了位置情報が、順次、物理セクタ番号で記載される。
RMDフィールド8以降は、255番目以降の開始位置情報と終了位置情報が、順次、物理セクタ番号で記載され、“完結形Rゾーン”の数に応じて最大RMDフィールド15まで(最大2047個の完結形Rゾーンまで)記載可能である。
表10〜表15に示した記録位置管理データRMD内のデータ構造に対する他の実施形態を、表16、表17に示す。
表16、表17の実施形態では、1枚の追記形情報記憶媒体上に128個までのボーダ内領域BRDAが設定可能である。従って、先頭から128個までのボーダアウトBRDOの開始位置情報が、RMDフィールド3内に記録されている。もし途中まで(128個以下)しかボーダ内領域BRDAが設定されていない場合には、それ以降のボーダアウトBRDOの開始位置情報として“00h”が設定される。これにより、RMDフィールド3内で、どこまでボーダアウトBRDOの開始位置情報が記録されているかを調べるだけで、追記形情報記憶媒体上に何個ボーダ内領域BRDAが設定されているかが、分かる。なお、表16、表17の実施形態では、1枚の追記形情報記憶媒体上に、128個までの拡張記録位置管理ゾーンRMZが設定可能である。
上述したように、拡張記録位置管理ゾーンRMZとして、
1)ボーダインBRDI内に設定された拡張記録位置管理ゾーンRMZと、
2)Rゾーンを利用して設定された拡張記録位置管理ゾーンRMZ、
の2種類存在するが、表16、表17に示した実施形態では、その2種類を区別することなく、拡張記録位置管理ゾーンRMZの開始位置情報(物理セクタ番号で表示)とサイズ情報(占有する物理セクタの数情報)の組を、RMDフィールド3内に記録することで、管理している。
表16、表17の実施形態では、拡張記録位置管理ゾーンRMZの開始位置情報(物理セクタ番号で表示)とサイズ情報(占有する物理セクタの数情報)の組の情報が記録されているが、それに限らず拡張記録位置管理ゾーンRMZの開始位置情報(物理セクタ番号で表示)と終了位置情報(物理セクタ番号で表示)の組で記録されても良い。
表16、表17の実施形態では、追記形情報記憶媒体上に設定された順番に、拡張記録位置管理ゾーンRMZの番号が付与されているが、それに限らず、開始位置として、物理セクタ番号の若い順に、拡張記録位置管理ゾーンRMZの番号が付与されてもよいことはいうまでもない。
なお、最新の記録位置管理データRMDが記録され、現在使用中(オープン形RゾーンタイプのRMDの追記が可能な)記録位置管理ゾーンの指定を、拡張記録位置管理ゾーンRMZの番号で指定している。従って、情報記録再生装置または情報再生装置は、これらの情報から。現在使用中(オープンになっている)記録位置管理ゾーンの開始位置情報を得ることができ、その結果から、どれが最新の記録位置管理データRMDであるかを識別可能である。
また、拡張記録位置管理ゾーンを追記形情報記憶媒体上に分散配置しても、表16、表17に示したデータ構造を取ることで、情報記録再生装置または情報再生装置は、どれが最新の記録位置管理データRMDであるかを、容易に識別できる。
これらの情報から現在使用中(オープンになっている)記録位置管理ゾーンの開始位置情報が分かり、その場所にアクセスすることにより、何処まで既に記録位置管理データRMDが記録されているかに関する情報が取得できる。従って、情報記録再生装置もしくは情報再生装置においては、何処に更新された最新の記録位置管理データを記録すれば良いかが容易に特定できる。
また、上述した
2)Rゾーンを利用して設定された拡張記録位置管理ゾーンRMZ
の設定を用いた場合には、1個のRゾーン全体がそのまま1個の拡張記録位置管理ゾーンRMZに対応する。すなわち、RMDフィールド3内に記載された(対応する)拡張記録位置管理ゾーンRMZの開始位置を表す物理セクタ番号が、RMDフィールド4〜21内に記載される対応したRゾーンの開始位置を表す物理セクタ番号に一致する。
表16、表17の実施形態では、1枚の追記形情報記憶媒体に、4606個(4351+255)までRゾーンが設定可能である。この設定されたRゾーンの位置情報がRMDフィールド4〜21内に記録される。
各Rゾーンの開始位置情報が物理セクタ番号の情報で表示されるとともに、各Rゾーン内での最後の記録位置を表す物理セクタ番号LRA(Last recorded Address)が、対で、記録される。
記録位置管理データRMD内に記載されるRゾーンの順番は、表16、表17の実施形態ではRゾーンの設定順であるが、それに限らず開始位置情報を表す物理セクタ番号の若い順に順番を設定することもできる。なお、対応する番号のRゾーンが設定されていない場合には、この欄には“00h”を記録する。
未指定状態のRゾーンの番号情報は、RMDフィールド4内に記載されているが、この未指定状態のRゾーンの番号情報は、未指定状態のRゾーン(データ領域DTA内でデータ記録のための領域予約がない領域)の数とオープン形Rゾーン(後から追記できる未記録領域を持っているRゾーン)の数と完結形Rゾーン(既に完結しており、後から追記できる未記録領域を持っていないRゾーン)数の合計値で示される。
表16、表17の実施形態では、追記が可能なオープン形Rゾーンの設定は、2個まで設定可能である。このように、2個までオープン形Rゾーンを設定可能とすることで、1個のオープン形Rゾーン内に連続記録や連続再生が保証される必要のある映像情報や音声情報を記録し、残りの1個のオープン形Rゾーン内には以下の情報を記録する。残りの1個のオープン形Rゾーンに記録される情報は、例えば先に記録された映像情報や音声情報に対する管理情報や、パーソナルコンピュータ等で使用される一般情報あるいはファイルシステムの管理情報等であってよく、記録すべきユーザデータの種類に依存して別のオープン形Rゾーン内に、それぞれ別々に記録することも可能である。すなわち、映像情報や音声情報(AV情報)の記録や再生等において、利便性が高められる。
表16、表17の実施形態では、どのRゾーンがオープン形RゾーンであるかをRMDフィールド4〜21内に配列されたRゾーンの配置番号で指定する。すなわち、先頭と2番目のオープン形Rゾーンに対応するRゾーンの番号で指定する。
このようなデータ構造を取ることで、オープン形Rゾーンの検索が容易となる。なお、オープン形Rゾーンが存在しない場合には、この欄は“00h”が記録される。
また、本実施形態では、完結形Rゾーン内においてはRゾーンの終了位置が最後の記録位置と一致しているが、オープン形Rゾーン内においてはRゾーンの終了位置とRゾーン内の最後の記録位置LRAとが異なっている。すなわち、オープン形Rゾーン内にユーザ情報を追記している途中(その結果、更新されるべき、記録位置管理データRMDの追記処理が完了する前の段階)では、最後の記録位置と引き続いて記録可能な最終記録位置がずれる(不一致となる)。
しかし、ユーザ情報の追記処理が完了し、更新されるべき最新の記録位置管理データRMDの追記処理が完了した後には、最後の記録位置と引き続いて記録可能な最終記録位置とが一致する。
従って、更新されるべき最新の記録位置管理データRMDの追記処理が完了した後に、新たなユーザ情報を記録する場合、図9に示した情報記録再生装置内の制御部143内では、
(1)RMDフィールド4内に記載されているオープン形Rゾーンに対応するRゾーンの番号を調べ、
(2)RMDフィールド4〜21内に記載されているオープン形Rゾーン内での最後の記録位置を表す物理セクタ番号を調べて追記可能な最終記録位置を割り出し(求め)、
(3)割り出した(求められた)追記可能な最終記録位置NWAから追記を開始する
と言う手順で、ユーザ情報が追記される(追記処理が実行される)。
このように、RMDフィールド4内のオープン形Rゾーン情報を利用して、新たな追記開始位置を割り出す(求める)ことで、簡単かつ高速に新たな追記開始位置の抽出が可能となる。
表16、表17の実施形態におけるRMDフィールド1内のデータ構造を、表18に示す。表18に示すデータ構造は、表10〜表15に示した実施形態に比べて、内側の(データリードイン領域DTLDIに属する)ドライブテストゾーンDRTZ内での記録条件を調整に用いた場所のアドレス情報と外側の(データリードアウト領域DTLDOに属する)ドライブテストゾーンDRTZ内での記録条件を調整に用いた場所のアドレス情報が追加されている。これらの情報は、いずれも物理セグメントブロックアドレス番号で記載する。さらに、表18の実施形態では、記録条件を自動的に調整可能な記録条件自動調整方法(ランニングOPC)に関する情報と記録終了時の最後のDSV(Digital Sum Value)値が付加されている。
本実施形態におけるマルチボーダにより情報が記録された追記形情報記憶媒体に対して、最後に記録された場所の位置を探す方法について、以下に説明する。
図68(a)は、情報記録再生装置における最後に記録された場所を探す方法を模式的に示したものであり具体的な処理を示すフローチャートを図69に示す。また、図68(b)では情報再生装置で最後に記録された場所を探す方法を模式的に示し、その処理を示すフローチャートを図70に示す。図68において、アクセスのためのジャンプ処理を破線で示し、実際の情報読み取り場所を実線で示してある。情報記録再生装置または情報再生装置内での実際の処理を行う場所は図9の情報記録再生部141、制御部143であり、情報再生時にPR等化回路130、PLL回路174、AD変換器169、同期コード位置検出部145、データID部とIED部抽出部171、データID部のエラーチェック部172等が働く。情報記録再生部141内には例えば図65(a)や図66(a)に示すような光学ヘッドが存在し、対物レンズ1128により集光されたレーザ光1117の集光スポットが情報記憶媒体1101上を移動してアクセスのためのジャンプ処理や情報読み取り処理を行う。また下記に示す一連の動作は制御部143が制御と管理を行う。
図68(a)に示すように情報記録再生装置においては、システムリードイン領域SYLDI内に物理フォーマット情報PFI等が記録されており、データリードイン領域DTLDI内には、内周から順にRMDディプリケーションゾーンRDZ、記録位置管理ゾーンRMZ、R物理情報ゾーンR−PFIZ、参照コード記録ゾーンRCZが順次配置されている。図68に示した実施例では、3個のボーダ内領域BRDA#1〜#3が存在している。図68に示した形で情報が記録されている追記形情報記憶媒体を、情報記録再生装置または情報再生装置に挿入すると情報記録再生装置または情報再生装置は最後に記録された位置を示す物理セクタ番号PSNを探しに行くが、この最後に記録された位置を示す物理セクタ番号PSNを探す方法を図68に示した。図68(a)に示した情報記録再生装置では、一番先にシステムリードイン領域SYLDI内の情報を再生する(図69のST31)。システムリードイン領域SYLDI内には物理フォーマット情報PFIが記録されているので、まず始めに物理フォーマット情報PFIを再生する。次にデータリードイン領域DTLDI内に存在するRMDディプリケーションゾーンRDZへアクセスし(図69のST32)、その中に最後に記録された記録位置管理データRMDを検索する(図69のST33)。前記ST33で再生を行った“対応するRMZ内の最後の記録位置管理データRMD#B”(図24(b)を参照)内には表16のRMDフィールド番号3の中に示すようにn番目の拡張記録位置管理ゾーンRMZの開始位置を示す物理セクタ番号情報が記録されているので、その中から最後に設定を行った拡張記録位置管理ゾーンRMZの開始位置を示す物理セクタ番号情報を読み取る(図69のST34)。次に、情報記録再生装置は前記最後に設定された拡張記録位置管理ゾーンRMZの位置へアクセスし、その中に最後に記録された記録位置管理データRMDを検索する。本実施形態に示す追記形情報記憶媒体において最後に記録された位置を示す物理セクタ番号PSN情報は“最後に設定を行った拡張記録位置管理ゾーンRMZ内の最後に記録された記録位置管理データRMD”内の情報から得ることができる。すなわち記録位置管理データRMD内には表15に示すRMDフィールド7以降に記載されているn番目の“完結形Rゾーン( Co
mplete R Zone )”の終了位置情報(物理セクタ番号)または表17に示す“n番目のRゾーン内最後の記録位置を表す物理セクタ番号LRA”の情報が分かるので、図69のST35に示すように最後に設定された拡張RMZ内の最後に記録された記録位置管理データRMD(例えば図24(b)のRMD#3参照)内から最後に記録された場所の物理セクタ番号PSNを読取り、その結果最後に記録された場所を知ることができる。
情報再生装置では、トラックずれ検出に、PP(Push-Pull)法ではなく、DPD法を用いるため、トラッキング制御は、エンボスピットまたは記録マークが存在する領域のみで可能である。そのため、情報再生装置は追記形情報記憶媒体の未記録領域へアクセスすることができず、図68(b)に示すように未記録領域を含むRMDディプリケーションゾーンRDZ内の再生が不可能となる。従って、その中に記録されている記録位置管理データRMDを再生できない。その代わり、情報再生装置は、物理フォーマット情報PFIおよびR物理情報ゾーンR−PFIZとアップデートされた物理フォーマット情報UPFIを再生することができるので、図68(b)に示す方法により最後に記録された場所を探すことができる。
情報再生装置ではシステムリードイン領域SYLDI内の情報再生(図70のST41)を行った後、R物理情報ゾーンR−PFIZ内に記録された既情報データ最後の位置情報(表22内に記載された“該当するボーダ内領域中の最後のRゾーン内で最後に記録された場所を示す物理セクタ番号”情報)を読取る(図70のST42)。その結果、図68(b)に示すようにボーダ内領域BRDA#1の最後の場所を知ることができ、その直後に配置されたボーダアウトBRDOの位置を確認した後、その直後に記録されたボーダインBRDI内に記録されたアップデートされた物理フォーマットUPFIの情報を読み取ることができる。本実施形態では表22内に記載された“該当するボーダ内領域中の最後のRゾーン内で最後に記録された場所を示す物理セクタ番号”を利用する前記方法の代わりに表21の256バイト目から263バイト目に記載されている“ボーダゾーンの開始位置(図27(c)から分かるように、この開始位置はボーダアウトBRDOの開始位置を意味する)を示す物理セクタ番号PSN”の情報を用いてボーダアウトBRDOの開始位置へアクセスしても良い。次に、図70のST43に示すように既記録データの最後の位置にアクセスし、アップデートされた物理フォーマット情報UFPI内の既記録データの最後の位置情報(表22)を読取る。アップデートされた物理フォーマット情報内に記録された最後に記録された物理セクタ番号PSN情報を読取り、そしてその情報に基づき最後に記録された物理セクタ番号PSNまでアクセスするという処理を最後のRゾーン内の最後に記録された物理セクタ番号PSNに到達するまで繰り返す。すなわちアクセス後に到達して情報を読取っている場所が、本当に最後のRゾーン内の最後に記録された位置かを判断し(図70のST44)、最後に記録された位置でない場合には上記のアクセス処理を繰り返す。R物理情報ゾーンR−PFIZ内と同様、本実施形態ではアップデートされた物理フォーマット情報UPFI内の“ボーダゾーンの開始位置を示すアップデートされた物理セクタ番号PSNの情報を利用してボーダゾーン(ボーダインBRDI)内に記録されているアップデートされた物理フォーマット情報UPFIの記録位置を検索しても良い。
最後のRゾーン内の最後に記録された物理セクタ番号位置を発見すると、情報再生装置は直前のボーダアウトBRDOの位置から再生を行う(図70のST45)。その後ST46に示すように、最後のボーダ内領域BRDA内を先頭から逐次再生しながら最後に記録された位置に到達する。その後、最後のボーダアウトBRDO位置の確認を行う。本実施形態に示す追記形情報記憶媒体では上記最後のボーダアウトBRDOの外側にはデータリードアウトDTLDO位置まで記録マークが記録されてない未記録領域が続く。情報再生装置は追記形情報記憶媒体上の未記録領域ではトラッキングが行われず、またそこでは物理セクタ番号PSNの情報も記録されてないので、上記最後のボーダアウトBRDO以降の位置での再生は不可能となる。そのため、最後のボーダアウト位置まで到達するとアクセス処理と連続再生処理は終了する。
表10から表14および表16から表18に示した記録位置管理データRMD内の情報内容の更新を行うタイミング(更新条件)に付いて表23を用いて説明する。記録位置管理データRMDの情報を更新する条件は、4種類存在する。
(1)RMDフィールド“0”内(表10参照)の媒体状態情報が変更される場合、
… 但しターミネータ(最後に記録されたボーダアウトBRDOの後ろ(外周側)に記録する“終端位置情報”)の記録時には記録位置管理データRMDの更新処理は行わない。
(2)RMDフィールド“3”内(表16参照)でボーダアウトBRDOの開始位置情報が変更される場合、またはオープン(追記可能な)状態になっている記録位置管理ゾーンRMZの番号が変更される場合、
(3)RMDフィールド“4”内(表17参照)で以下のいずれかの情報が変更される場合、
(i)未指定状態のRゾーン数とオープン形Rゾーン数と完結形Rゾーン数の合計数、
(ii)最初のオープン形Rゾーンの番号情報、
(iii)2番目のオープン形Rゾーンの番号情報。
本実施形態において、追記形情報記憶媒体に一連の情報記録動作を行っている期間中は、RMDの更新は行わなくて良い。例えば映像情報を録画する場合には連続記録が保障される必要がある。もし映像情報記録(録画)途中で記録位置管理データRMDの更新を行う(ために記録管理データRMD位置までのアクセス制御を行う)と、そこで映像情報の記録が中断されるために連続記録が保障されなくなる。従ってRMDの更新は映像録画が終了後に行われるのが一般的である。しかし一連の映像情報の記録動作が余りにも長期間連続すると、現時点での追記形情報記憶媒体上に最後に記録された場所と、追記形情報記憶媒体に既に記録されている記録位置管理データRMD内の最後の位置情報が大幅にずれてしまう。この時に連続記録途中の異常現象が発生して情報記録再生装置を強制終了した場合には“記録位置管理データRMD内の最後の位置情報”と強制終了直前の記録位置との間の乖離が大きくなり過ぎる。その結果、情報記録再生装置の復旧後に行う“記録位置管理データRMD内の最後の位置情報”に対する強制終了直前の記録位置に合わせたデータ修復が難しくなる危険性が発生する。そのため本実施形態では下記の更新条件をさらに追加する。
(4)最新の記録位置管理データRMD内に記録されている“Rゾーン内での最後の記録位置を示す物理セクタ番号LRA”と連続記録中に逐次変化する“現時点におけるRゾーン内での最後に記録された場所の物理セクタ番号PSN”との間の開き(“PSN−LRA”の差分結果)が8192を超えた場合(に記録位置管理データRMDの情報を更新する)
… 但し記録位置管理ゾーンRMZ内での未記録場所(図26(b)に示した予約領域273)のサイズが4物理セグメントブロック分(4×64KB)以下の場合には、更新しない。
次に拡張記録位置管理ゾーンに付いて説明する。
記録位置管理ゾーンRMZの配置場所として、本実施形態では下記の3種類を規定している。
(1)データリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZ(L−RMZ)
図27(b)から明らかなように、本実施形態では、最初のボーダ内領域に対応したボーダインBRDIをデータリードイン領域DTLDI内の一部が兼用している。そのため、図24(a)に示すように、最初のボーダ内領域に対応したボーダインBRDI内に記録されるべき記録位置管理ゾーンRMZがデータリードイン領域DTLDI内に予め設定されている。この記録位置管理ゾーンRMZ内の構造は、図24(b)に示すように64Kバイト(1物理セグメントブロックサイズ)毎に、逐次記録位置管理データRMDを追記できる。
(2)ボーダインBRDI内の記録位置管理ゾーンRMZ(B−RMZ)
本実施形態における追記形情報記憶媒体において、記録された情報を再生専用装置で再生する前には、図74に示すようなボーダクローズ処理が必要となる。一度ボーダクローズされた後に新たな情報を記録する場合には、新たなボーダ内領域BRDAを設定する必要がある。この新たなボーダ内領域BRDAに先行した位置にボーダインBRDIが設定される。
ボーダクローズ処理の段階で、最新記録位置管理ゾーン内の未記録領域(図24(b)に示す予約領域273)が塞がれてしまうため、新たなボーダ内領域BRDA内に記録された情報の位置を示す記録位置管理データRMDを記録する新たな領域(記録位置管理ゾーンRMZ)を設定する必要がある。
本実施形態では、図27(d)に示すように、新たに設定されたボーダインBRDI内に記録位置管理ゾーンRMZを設定する。
このボーダゾーン内における記録位置管理ゾーンRMZ内の構造は、図26(b)に示した“最初のボーダ内領域に対応した記録位置管理ゾーンRMZ(L−RMZ)と全く同じ構造である。また、この領域内に記録される記録位置管理データRMD内の情報は、対応したボーダ内領域BRDA内に記録されるデータに関する記録位置管理データのみならず、先行するボーダ内領域BRDA内に記録されているデータに関する記録位置管理情報も一緒に記録される。
(3)ボーダ内領域BRDA内の記録位置管理ゾーンRMZ(U−RMZ)
上記(2)で示したボーダインBRDI内のRMZ(B−RMZ)は、新たなボーダ内領域BRDAを作らない限り設定できない。また、上記(1)(図26(b))に示した最初のボーダ内領域管理ゾーンRMZ(L−RMZ)のサイズは有限であるから、追記を繰り返すうちに予約領域273が不足して、新たな記録位置管理データRMDが追記不能となる。
その問題を解消するため、本実施形態では、ボーダ内領域BRDA内に、記録位置管理ゾーンRMZを記録するためのRゾーンを新たに設け、引き続く記録を可能としている。
すなわち、上記“ボーダ内領域BRDA内における記録位置管理ゾーンRMZ(U−RMZ)”が設定されている特殊なRゾーンが存在する。
また、最初のボーダ内領域管理ゾーンRMZ(L−RMZ)内の未記録領域(予約領域273)の残りのサイズが少なくなった場合に限らず、本実施形態では、“ボーダインBRDI内の記録位置管理ゾーンRMZ(B−RMZ)”や、既に設定されている“ボーダ内領域BRDA内の記録位置管理ゾーンRMZ(U−RMZ)”内の未記録領域(予約領域273)の残りのサイズが少なくなった場合にも、新たに上記“ボーダ内領域BRDA内の記録位置管理ゾーンRMZ(U−RMZ)”を設定できる。
このボーダ内領域BRDA内の記録位置管理ゾーンRMZ(U−RMZ)に記録される情報内容は、図24(b)のデータリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZ(L−RMZ)内と全く同じ構造である。
また、この領域内に記録される記録位置管理データRMD内の情報は対応したボーダ内領域BRDA内に記録されるデータに関する記録位置管理データのみならず、先行するボーダ内領域BRDA内に記録されているデータに関する記録位置管理情報も一緒に記録される。
上記各種の記録位置管理ゾーンRMZの中で、
1.データリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZ(L−RMZ)の位置はユーザデータ記録前に予め設定されているが、本実施形態では、
2.ボーダインBRDI内の記録位置管理ゾーンRMZ(B−RMZ)と、
3.ボーダ内領域BRDA内の記録位置管理ゾーンRMZ(U−RMZ)は、
ユーザデータの記録(追記)の状況に合わせて、適宜、情報記録再生装置において設定(増設)可能であり、“拡張(形)記録位置管理ゾーンRMZ”と呼ぶ。
上記ボーダ内領域BRDA内で記録位置管理ゾーンRMZを設定する方法を図71に示し、そのフローチャートを図72に示す。図72内(a)から(c)の番号は図71の各状態を表す(a)から(c)の番号に対応している。
現在使われている記録位置管理ゾーンRMZ内の未記録領域(図26(b)の予約領域273)が15物理セクタブロック(15×64kB)以下になった場合、ボーダ内領域BRDA内での記録位置管理ゾーンRMZ(U−RMZ)の設定をすることができる。設定時のボーダ内領域BRDA内での記録位置管理ゾーンRMZ(U−RMZ)のサイズは128物理セグメントブロックのサイズ(128×64kB)とし、そこを記録位置管理ゾーンRMZ専用のRゾーンとする。
図71(a)に示す“最初のボーダ内領域に対応した記録位置管理ゾーンL−RMZ”内の未記録領域のサイズが15物理セグメントブロック以下になると、図9内の制御部143は既存の記録位置管理ゾーンL−RMZ内が満杯直前なことを検知する(図72のST51)。前記検知を行うと、図71(a)に示した非完結形Rゾーン42をクローズさせて完結形Rゾーン43に変更し(図72のST52)、次に図71(b)示すように新たな専用なRゾーンを設定してその中を“ボーダ内領域BRDAの中に存在する記録位置管理ゾーンU−RMZ”とする(図72のST53)。その結果、図71(a)に示す非完結形Rゾーン42は完結形Rゾーン43とボーダ内領域BRDAの中に存在する記録位置管理ゾーンU−RMZに分割されるが、残りの領域が図71(b)に示すように未指定状態のRゾーン44に設定される(図72のST54)。
上記の一連の処理の結果、現在使用中の記録位置管理ゾーンRMZが最初のボーダ内領域に対応した記録位置管理ゾーンRMZ(L−RMZ)からボーダ内領域BRDAの中に存在する記録位置管理ゾーンU−RMZに移る。そのため最初のボーダ内領域に対応した記録位置管理ゾーンRMZ(L−RMZ)内のクローズ処理として、図71(c)に示すように最初のボーダ内領域に対応した記録位置管理ゾーンL−RMZ内の未記録領域を最新の記録位置管理データRMD47で繰り返し記録し、未記録領域を消滅させる(図72のST55)。記録位置管理ゾーンRMZの位置の変更に伴い、図72のST56に示すように最新の記録管理データRMD47のコピー情報48をRMDディプリケーションゾーンRMZ内に記録する(図71(c))。
本実施形態における追記形情報記憶媒体では、上記3種類の記録位置管理ゾーンRMZの設定が可能になるため、1枚の追記形情報記録記憶媒体上に非常に多くの記録位置管理ゾーンRMZの存在を許容する。そのため本実施形態では最新の記録位置管理データRMD記録場所への検索容易性を目的として下記の処理を行っている。
(1)新たに記録位置管理ゾーンRMZを設定する場合には、今まで使われていた記録位置管理ゾーンRMZ内に最新の記録位置管理データRMDを多重書きし、今まで使われていた記録位置管理ゾーンRMZ内に未記録領域が存在しないようにする(それにより、現在使われているか、新たな場所に記録位置管理ゾーンが設定されたかが容易に識別可能となる)。
(2)新たに記録位置管理ゾーンRMZを設定する毎に、最新の記録位置管理データRMDのコピー情報48をRMDディプリケーションゾーンRMZ内に記録する。それにより、現在使われている記録位置管理ゾーンRMZ場所の検索を容易にしている。
図71(c)に示すように、本実施形態における追記形情報記憶媒体内では多くの未記録領域の存在を許容している。しかし、再生専用装置では、トラックずれ検出に、DPD法を用いているため、未記録領域でのトラッキングが不可能となる。そのため、追記形情報記憶媒体を再生専用装置で再生させる前に、図74に示すボーダクローズ処理を行い、未記録領域が存在しないようにする必要がある。
以下に、ボーダクローズ処理方法について説明する。
図73(a)に追記途中の追記形情報記憶媒体上でのデータ構造を示す。この状態では未記録領域54、55、56があるため、情報再生装置での再生は不可能となる。
図73(b)にボーダクローズ処理後の情報再生装置で再生可能な状態におけるデータ構造を示す。
図73(a)の状態から図74に示すボーダクローズ処理を行うことで、図73(b)の状態に変更させる。具体的なボーダクローズ処理の手順を図74のフローチャートを参照して以下に説明する。ボーダクローズ要求を受けると(ST61)、非完結形Rゾーン42に対してその内で最後に記録された位置を最終位置とする完結形Rゾーンに変更する(ST62)。次にST63に示すように非完結形Rゾーン42の既記録領域だった場所の直後にボーダアウトBRDOを設定する。さらにST64に示すようにボーダ内領域BRDA内に存在する記録位置管理ゾーンU−RMZ#3内の未記録領域54を、最新の記録位置管理データRMDを繰り返し記録して全て埋める。次にST65に示すようにRMDディプリケーションゾーンRMZ内にST64で記録した最新の記録位置管理データRMDのコピー情報を記録する。さらにボーダインBRDI内の未記録領域55、56内に所定のデータを記録し、未記録領域が存在しないようにする(ST66)。その結果、図73(b)に示すようにデータ領域DTA内のボーダアウトBRDOまでの全領域が記録されたデータで埋まる。
2048バイト単位のユーザデータを記録したデータフレーム構造からECCブロックを構成し、同期コードを付加した後、情報記憶媒体に記録する物理セクタ構造を形成するまでの変換手順の概略に付いて、図32に示す。
この変換手順は、再生専用形情報記憶媒体、追記形情報記憶媒体、書替え形情報記憶媒体のいずれにおいても、共通に採用される。変換段階に応じて、データフレーム(Data Frame)、スクランブル後のフレーム(scrambled frame)、レコーディングフレーム(Recording Frame)、または記録データフィールド(Recorded Data Field)と呼ぶ。データフレームは、ユーザデータが記録される場所であり、2048バイトからなるメインデータ、4バイトのデータID、2バイトのIDエラー検出コード(IED)、6バイトの予約バイト(Reserved Bytes)RSV、4バイトのエラー検出コード(EDC)から構成される。始めに後述するデータIDにIED(IDエラー検出コード)が付加された後、6バイトの予約バイトとデータフレームはユーザデータが記録される場所であり2048バイトからなるメインデータを付加し、さらに、エラー検出コード(EDC)を付加した後、メインデータに対するスクランブルが実行される。ここで、スクランブルされた32個のデータフレーム(スクランブルドフレーム)に対して、クロスリードソロモンエラーコレクションコード(Cross Reed-Solomon Error Correction Code)が適用されて、ECCエンコード処理が実行される。これによりレコーディングフレームが構成される。このレコーディングフレームは、アウターパリティコード(Parity of Outer-code)PO、インナーパリティコード(Parity of Inner-code)PIを含む。PO、PIは、それぞれ32個のスクランブルドフレームによりなる各ECCブロックに対して作成されたエラー訂正コードである。記録フレームは、前述したように8データビットを12チャネルビットに変換するETM(Eight to Twelve Modulation)変調される。そして、91バイト毎に先頭に同期コードSYNC(Sync Code)が付加され、32個の物理セクタが形成される。すなわち、図32の右下の枠内に記載されているように、32セクタで一つのエラー訂正単位(ECCブロック)を規定される。
後述するように、図36または図37での各枠内の“0”から“31”までの番号は、各物理セクタの番号を示し、“0”から“31”までの合計32個の物理セクタで1個の大きなECCブロックを構成する構造になっている。次世代DVDにおいては現世代DVDと同じ程度の長さの傷が情報記憶媒体表面に付いた場合でもエラー訂正処理で正確な情報が再生できることを要求される。本実施形態で大容量化を目指して記録密度を高めた。その結果、従来の1ECCブロック=16セクタの場合には、エラー訂正で補正可能な物理的傷の長さが従来のDVDに比べて短くなる。本実施形態のように、1ECCブロックを32セクタで構成する構造にすることで、エラー訂正可能な情報記憶媒体表面傷の許容長さを長くできるとともに、現行DVDのECCブロック構造との互換性あるいはフォーマットの継続性を確保できる。
図33にデータフレーム内の構造を示す。
1個のデータフレームは、172バイト×2×6行からなる2064バイトであり、その中に、2048バイトのメインデータを含む。IEDとは、ID Error Detection Codeの略でデータID情報に対する再生時のエラー検出用付加コードを意味している。REVは、Reserveの略で将来情報を設定できるための予約領域を意味している。EDCとは、Error Detection Codeの略で、データフレーム全体のエラー検出用付加コードを意味している。
図30に、図33に示されたデータID内のデータ構造を示す。データIDは、データフレーム情報921とデータフレーム番号922の情報から構成され、データフレーム番号は対応するデータフレームの物理セクタ番号922を表示している。
データフレーム情報921内は、以下の情報群を含む
フォーマットタイプ931
… 0b:CLVを表し、
1b:ゾーン構成を表す
トラッキング方法932
… 0b:ピット対応で、本実施形態ではDPD法を使用する
1b:プリグルーブ対応で、PP法またはDPP法を使用する
記録膜の反射率933
… 0b:40%以上
1b:40%以下
レコーディングタイプ情報934
… 0b:一般データ
1b:リアルタイムデータ(映像/音楽データ)
領域タイプ情報935
… 00b:データ領域DTA
01b:システムリードイン領域SYLDIか
データリードイン領域DTLDI
10b:データリードアウト領域DTLDOか
システムリードアウト領域SYLDO
データタイプ情報936
… 0b:再生専用データ
1b:書き替え可能データ
レイヤー番号937
… 0b:レイヤー0
1b:レイヤー1。
図34(a)は、スクランブル後のフレームを作成するときに、フィードバックシフトレジスタに与える初期値の例を示し、図34(b)は、スクランブルバイトを作成するためのフィードバックシフトレジスタの回路構成を示している。r7(MSB)からr0(LSB)が、8ビットずつシフトし、スクランブルバイトとして用いられる。図34(a)に示すように本実施形態では16種類のプリセット値が用意されている。図34(a)の初期プリセット番号は、データIDの4ビット(b7(MSB)〜b4(LSB))に等しい。データフレームのスクランブルの開始時には、r14〜r0の初期値は、図34(a)のテーブルの初期プリセット値にセットしなければならない。16個の連続するデータフレームに対して、同じ初期プリセット値が用いられる。次には、初期プリセット値が切り換えられ、16個の連続するデータフレームに対しては、切り換わった同じプリセット値が用いられる。
r7〜r0の初期値の下位8ビットは、スクランブルバイトS0として取り出される。その後、8ビットのシフトが行なわれ、次にスクランブルバイトが取り出され、2047回このような動作が繰り替えされる。
図35に本実施形態におけるECCブロック構造を示す。
ECCブロックは、連続する32個のスクランブルドフレームから形成されている。縦方向に192行+16行、横方向に(172+10)×2列が配置されている。
B0,0、B1,0、…、は、それぞれ1バイトである。
PO(Parity out)、PI(Parity in)は、エラー訂正コードであり、それぞれ、アウターパリティ、インナーパリティである。
本実施形態では、積符号を用いたECCブロック構造を構成している。
すなわち、情報記憶媒体に記録するデータを2次元状に配置し、エラー訂正用付加ビットとして、“行”方向に対しては、PI(Parity in)、“列”方向に対しては、PO(Parity out)を付加した構造である。
このように、積符号を用いたECCブロック構造を与えることで、イレイジャー訂正および縦と横の繰り返し訂正処理による高いエラー訂正能力を保証できる。
図35に示すECCブロック構造は。従来のDVDのECCブロック構造とは異なり、同一“行”内で、2箇所PIを設定している。
すなわち、図35において中央に記載された10バイトサイズのPIは、その左側に配置されている172バイトに対して付加される。例えば、B0,0からB0,171の172バイトのデータに対してPIとしてB0,172からB0,181の10バイトのPIを付加し、B1,0からB1,171の172バイトのデータに対してPIとしてB1,172からB1,181の10バイトのPIを付加する。
図35の右端に記載された10バイトサイズのPIは、その左側で中央に配置されている172バイトに対して付加される。すなわち、例えば、B0,182からB0,353の172バイトのデータに対してPIとしてB0,354からB0,363の10バイトのPIを付加する。
図36に、スクランブル後のフレーム配列説明図を示す。
“6行×172バイト”単位が1スクランブル後のフレームとして扱われる。
すなわち、1ECCブロックは連続する32個のスクランブル後のフレームからなる。さらに、このシステムでは、“182バイト×207バイト”をペアとして扱う。左側のECCブロックの各スクランブル後のフレームの番号にLを付け、右側のECCブロックの各スクランブル後のフレームの番号にRを付けると、スクランブル後のフレームは、図36に示すように配置されている。すなわち、左側のブロックに左と右のスクランブル後のフレームが交互に存在し、右側のブロックに、スクランブル後のフレームが交互に存在する。
すなわち、ECCブロックは、32個の連続スクランブル後のフレームから形成される。奇数セクタの左半分の各行は、右半分の行と交換されている。172×2バイト×192行は172バイト×12行×32スクランブルドフレームに等しく、データ領域となる。16バイトのPOが、各172×2列にRS(208,192,17)のアウターコードを形成するために付加される。10バイトのPI(RS(182,172,11))が、左右のブロックの各208×2行に付加される。PIは、POの行にも付加される。フレーム内の数字は、スクランブルドフレーム番号を示し、サフィックスのR,Lは、スクランブルドフレームの右側半分と、左側半分を意味する。同一のデータフレーム内を複数の小ECCブロックに分散して配置することを特徴とする。
具体的には、本実施形態では2個の小ECCブロックで大きな1ECCブロックを構成し、同一のデータフレーム内をこの2個の小ECCブロック内に交互に分散配置する。図35の説明の所で中央に記載された10バイトサイズのPIは、その左側に配置されている172バイトに対して付加され、右端に記載された10バイトサイズのPIは、その左側で中央に配置されている172バイトに対して付加されることを既に説明した。つまり図35の左端から172バイトと連続する10バイトのPIで左側(Left側)の小ECCブロックを構成し、中央の172バイトから右端の10バイトのPIで右側(Right側)の小ECCブロックを構成している。
それに対応して図36の各枠内の記号が設定されている。
例えば、図36内の“2−R”等の意味はデータフレーム番号と左右の小ECCブロックのどちらに属するか(例えば、2番目のデータフレーム内でRight側の小ECCブロックに属する)を表している。後述するように最終的に構成される各物理セクタ毎に同一物理セクタ内のデータも交互に左右の小ECCブロック内に分散配置される(図37における左半分の列は左側の小ECCブロック(図39に示した左側の小ECCブロックA)内に含まれ、右半分の列は右側の小ECCブロック(図39に示した右側の小ECCブロックB)内に含まれる。
このように同一のデータフレーム内を複数の小ECCブロックに分散配置すると物理セクタ(図37)内データのエラー訂正能力を向上させることによる記録データの信頼性向上が図れる。例えば、記録時にトラックが外れて既記録データ上をオーバーライトしてしまい、1物理セクタ分のデータが破壊された場合を考える。本実施形態では1セクタ内の破壊データを2個の小ECCブロックを用いてエラー訂正を行うため、1個のECCブロック内でのエラー訂正の負担が軽減され、より性能の良いエラー訂正が保証される。本実施形態ではECCブロック形成後でも各セクタの先頭位置にデータIDが配置される構造になっているため、アクセス時のデータ位置確認が高速化できる。
図37に、POのインターリーブ方法の説明図を示す。
図37に示すように、16のパリティ行は、1行ずつ分散される。すなわち、16のパリティ行は、2つのレコーディングフレーム置きに対して、1行ずつ配置される。
従って、12行からなるレコーディングフレームは、12行+1行となる。この行インターリーブが行なわれた後、13行×182バイトはレコーディングフレームとして参照される。したがって、行インターリーブが行なわれた後のECCブロックは、32個のレコーディングフレームからなる。
1つのレコーディング内には、図36で説明したように、右側と左側のブロックの行が6行ずつ存在する。POは左のブロック(182×208バイト)と右のブロック(182×208バイト)間では、異なる行に位置するように配置されている。図37では、1つの完結型のECCブロックとして示している。しかし、実際のデータ再生時には、このようなECCブロックが連続してエラー訂正処理部に到来する。このようなエラー訂正処理の訂正能力を向上するために、図37に示すようなインターリーブ方式がある。
図33に示した1個のデータフレーム内の構造から図37に示したPOのインターリーブ方法までの関係に付いて図39を用いて詳細に説明する。図39では図37に示したPOインターリーブ後のECCブロック構造図の上側部分を拡大し、その中に図33に示したデータID、IED、RSV、EDCの配置場所を明示することで、図33から図37までの変換のつながりが一目で分かるようにした。
図39の“0−L”、“0−R”、“1−R”、“1−L”は図36の各“0−L”、“0−R”、“1−R”、“1−L”に対応する。“0−L”や“1−L”は図33の左半分すなわち、中央線から左側の172バイトと6行で構成されるまとまりに対してメインデータのみにスクランブルを掛けた後のデータを意味する。同様に、“0−R”や“1−R”は図33の右半分すなわち、中央線から右側の172バイトと6行で構成されるまとまりに対してメインデータのみにスクランブルを掛けた後のデータを意味する。従って、図33から明らかなように“0−L”や“1−L”の最初の行(0行目)の最初から12バイト目までにデータID、IED、RSVが順番に並んでいる。
図39において、中心線から左側が左側の小ECCブロックAを構成し、中心線から右側が右側の小ECCブロックBを構成している。従って、図39から分かるように“0−L”や“2−L”内に含まれるデータID#1、データID#2、IED#0、IED#2、RSV#0、RSV#2は左側の小ECCブロックAの中に含まれる。
図36においては、左側に“0−L”や“2−L”が配置され、右側に“0−R”や“2−R”が配置されているのに対して“1−R”と“1−L”の配置は左右逆転し、右側に“1−L”が、左側に“1−R”がそれぞれ配置される。“1−L”の中の最初の行の最初から12バイト目までにデータID#1、IED#1、RSV#1が配置されているので、左右の配置が逆転した結果、図39から分かるように“1−L”内に含まれるデータID#1、IED#1、RSV#1が右側の小ECCブロックBの中に構成される。
本実施形態では、図39における“0−L”と“0−R”の組み合わせを“0番目のレコーディングフレーム”、“1−L”と“1−R”の組み合わせを“1番目のレコーディングフレーム”と呼ぶ。各レコーディングフレーム間の境界は、図39の太字で示している。
図39から分かるように、各レコーディングフレームの先頭には、データIDが、各レコーディングフレームの最後には、POとPI−Lが配置される。また、レコーディングフレームの奇数と偶数番目でデータIDが含まれる小ECCブロックが異なり、レコーディングフレームの連続に従って、データID、IED、RSVが左側と右側の小ECCブロックAとBに交互に配置される。
1個の小ECCブロック内でのエラー訂正能力には、限界が有り、特定数を越えたランダムエラーや特定長を越えたバーストエラーに対しては、エラー訂正が不可能となる。
上記のように、データID、IED、RSVを左側と右側の小ECCブロックAとBに交互に配置することで、データIDの再生信頼性を向上させることができる。すなわち、情報記憶媒体上の欠陥が多発してどちらかの小ECCブロックのエラー訂正が不可能となり、そちらに属するデータIDの解読が不可能となっても、データID、IED、RSVが左側と右側の小ECCブロックAとBに交互に配置されるために他方の小ECCブロックではエラー訂正が可能であり、残りのデータIDの解読が可能となる。
データID内のアドレス情報に連続性があるため、解読可能なデータIDの情報を用いて解読が不可能だったデータIDの情報に対して補間が可能である。その結果、図39に示した実施形態によりアクセスの信頼性を高めることができる。
図39左側の括弧で囲った番号は、POインターリーブ後のECCブロック内の行番号を示している。情報記憶媒体に記録される場合には、行番号順に左から右に沿って、順次記録される。図39において、各レコーディングフレーム内に含まれるデータIDの間隔は、常に一定間隔で配置されているため、データID位置の検索性が向上できる。
物理セクタ構造を、図38に示す。図38(a)が偶数番目の物理セクタ構造を示し、図38(b)が奇数番目のデータ構造を示す。
図38において。偶数記録データ領域(Even Recorded data field)および奇数記録データ領域(Odd Recorded data field)のいずれも最後の2シンクフレーム(すなわち、最後のシンクコードがSY3の部分とその直後のシンクデータおよびシンクコードがSY1の部分とその直後のシンクデータが並んだ部分)内のシンクデータ領域に、図37で示したアウターパリティPOの情報が挿入される。
偶数記録データ領域内の最後の2シンクフレーム箇所には、図36に示した左側のPOの一部が挿入され、奇数記録データ領域内の最後の2シンクフレーム箇所には図36に示した右側のPOの一部が挿入される。
図36に示すように、1個のECCブロックは、それぞれ左右の小ECCブロックから構成され、セクタ毎に交互に異なるPOグループ(左の小ECCブロックに属するPOか、右の左の小ECCブロックに属するPOか)のデータが挿入される。
図38(a)に示した偶数番目の物理セクタ構造と図38(b)に示した奇数番目のデータ構造は、いずれも中心線で2分割され、左側の“24+1092+24+1092チャネルビット”が、図35または図36に示した左側(Left)の小ECCブロック内に含まれ、右側の“24+1092+24+1092チャネルビット”が、図35または図36に示した右側(Right)の小ECCブロック内に含まれる。
図38に示した物理セクタ構造が情報記憶媒体に記録される場合には、1列毎に、シリアルに記録される。従って、例えば、図38(a)に示した偶数番目の物理セクタ構造のチャネルビットデータを情報記憶媒体に記録する場合には、最初に記録する2232チャネルビットのデータが左側(Left)の小ECCブロック内に含まれ、次に記録する2232チャネルビットのデータが右側(Right)の小ECCブロック内に含まる。
さらに、次に記録する2232チャネルビットのデータは左側(Left)の小ECCブロック内に含まれる。
それに対して、図38(b)に示した奇数番目のデータ構造のチャネルビットデータを情報記憶媒体に記録する場合には、最初に記録する2232チャネルビットのデータが右側(Right)の小ECCブロック内に含まれ、次に記録する2232チャネルビットのデータが左側(Left)の小ECCブロック内に含まる。さらに、次に記録する2232チャネルビットのデータは右側(Right)の小ECCブロック内に含まれる。
このように、本実施形態では同一の物理セクタ内を2個の小ECCブロック内に2232チャネルビット毎に交互に所属させていることを特徴とする。
これを別の形で表現すると、右側(Right)の小ECCブロック内に含まれデータと左側(Left)の小ECCブロック内に含まれるデータを2232チャネルビット毎に交互に分散配置した形で物理セクタを形成して情報記憶媒体に記録することになる。その結果、バーストエラーに強い構造が得られる。
例えば、情報記憶媒体の円周方向に長い傷が付き、172バイトを越えるデータの判読が不能になったバーストエラーの状態を考える。この場合の172バイトを越えるバーストエラーは、2つの小さいECCブロック内に分散配置されるので、1個のECCブロック内でのエラー訂正の負担が軽減され、より性能の良いエラー訂正が保証される。
図38に示すように、1個のECCブロックを構成する物理セクタの物理セクタ番号が偶数番号か奇数番号かで物理セクタ内のデータ構造が異なる。つまり、
(1)物理セクタの最初の2232チャネルビットデータが属する小ECCブロックが右側か左側かに振り分けられる(異なる)、
(2)セクタ毎に交互に異なるPOグループのデータが挿入される構造をとる。
その結果、ECCブロックを構成した後でも全ての物理セクタの先頭位置にデータIDが配置される構造を保証するため、アクセス時のデータ位置確認が高速化できる。
また、同一物理セクタ内に異なる小ECCブロックに属するPOを混在して挿入する例に比較して、より図37のようなPO挿入方法を採る方法が構造が簡単になり、情報再生装置内でのエラー訂正処理後の各セクタ毎の情報抽出が容易になるとともに情報記録再生装置内でのECCブロックデータの組立て処理が簡素化できる。
上記内容を具体的に実現する方法として、POのインターリーブの挿入位置を、左右で異ならせている。
図37内の狭い2重線で示された部分、あるいは狭い2重線と斜線で示された部分が、POのインターリーブの挿入位置を示し、偶数番目の物理セクタ番号では左側の最後に、奇数番目の物理セクタ番号では右側の最後に、それぞれPOが挿入される。
この構造により、ECCブロックを構成した後でも、物理セクタの先頭位置に、データID配置されるため、アクセス時のデータ位置確認が高速になる。
図38に示した同期コード(シンクコード)“SY0”から“SY3”までの具体的なパターン内容の実施形態を表20に示す。
本実施の形態の変調規則(詳細説明は後述)に対応して、State0からState2までの3状態(State)を有する。SY0からSY3までの、それぞれ、4種類のシンクコードが設定され、各状態に応じて表20の左右のグループから選択される。
現行DVD規格では、変調方式として、8/16変調(8ビットを16チャネルビットに変換のRLL(2,10)・・・Run Length Limited,d=2,k=10,すなわち“0”が連続して続く範囲の最小値が2、最大値が10)を採用しており、変調にState1からState4までの4状態、SY0からSY7までの8種類のシンクコードが設定されている。
それに比べ、本実施の形態は、同期コード(シンクコード)の種類が低減されている。情報記録再生装置または情報再生装置では、情報記憶媒体からの情報再生時に、パターンマッチング法によりシンクコードの種別を識別する。
本実施の形態のように、シンクコードの種類を大幅に減らすことにより、マッチングに必要な対象パターンが低減できる。これにより、パターンマッチングに必要な処理が簡素化され、処理効率が向上される。また、認識速度が向上できる。
表20において“#”で示したビット(チャネルビット)は、既に説明したDSV制御ビットである。DSV制御ビットは、DSV制御器(DSVコントローラ)によりDC成分を抑圧する(DSVの値が“0”に近付く)ように決定される。なお、同期コード内に極性反転チャネルビット“#”を含むことも本実施形態の特徴の1つである。すなわち、上記同期コード(シンクコード)を挟んだ両側のフレームデータ領域(図38の1092チャネルビットの領域)を含め、巨視的に見てDSV値が“0”に、近づくように“#”の値を“1”か“0”に選択でき、巨視的な視野に立ったDSV制御が可能である。
表20に示すように、本実施形態におけるシンクコードは、以下の要素を含む
(1)同期位置検出用コード部
全てのシンクコードで共通なパターンを持ち、固定コード領域を形成する。
このコードを検出することで、シンクコードの配置位置を検出できる。具体的には、表20の各シンクコードにおける最後の18チャネルビット“010000 000000 001001”が、対応する。
(2)変調時の変換テーブル選択コード部
可変コード領域の一部を形成し、変調時のState番号に対応して変化するコードである。表20の最初の1チャネルビットのところが該当する。すなわち、State1、State2のいずれかを選択する場合にはSY0からSY3までのいずれのコードでも最初の1チャネルビットが“0”となり、State0選択時にはシンクコードの最初の1チャネルビットが“1”となる。但し、例外としてState0でのSY3の最初の1チャネルビットは“0”となる。
(3)シンクフレーム位置識別用コード部
シンクコード内でのSY0からSY3までの各種類を識別するコードで、可変コード領域の一部を構成する。表20の各シンクコードにおける最初から1番目から6番目までのチャネルビット部がこれに相当する。後述するように連続して検出される3個ずつのシンクコードのつながりパターンから同一セクタ内の相対的な位置を検出できる。
(4)DC抑圧用極性反転コード部
表20における“#”位置でのチャネルビットが該当し、上述したように、このビットが反転(もしくは非反転すなわち初期状態を維持)することで、前後のフレームデータを含めたチャネルビット列のDSV値が“0”に近付くように働く。
本実施の形態では、変調方法に8/12変調(ETM:Eight to Twelve Modulation)、RLL(1,10)を採用している。すなわち、変調時に、8ビットを12チャネルビットに変換し、変換後の“0”が連続して続く範囲は最小値(d値)が1、最大値(k値)が10になるように設定している。
本実施の形態では、d=1とすることで、現行のDVD規格(従来)よりも高密度化を達成できるが、最密マークのところでは、再生信号振幅が十分に大きいとはいい難い。
そこで、図9に示すように、本実施の形態の情報記録再生装置では、PR等化回路130とビタビ復号器156とにより、PRML技術を用いて非常に安定な信号再生を可能としている。また、k=10と設定しているので、変調された一般のチャネルビットデータ内には“0”が連続して11個以上続くことがない。
この変調ルールを利用し、上記の同期位置検出用コード部では、変調された一般のチャネルビットデータ内には現れないパターンを持たせている。すなわち、表20に示すように同期位置検出用コード部では、“0”を連続的に12(=k+2)個続けている。情報記録再生装置または情報再生装置では、この部分を見付けて、同期位置検出用コード部の位置を検出する。また、余りに長く“0”が連続すると、ビットシフトエラーが起き易いので、その弊害を緩和するため、同期位置検出用コード部内では、その直後に、“0”の連続個数が少ないパターンを配置している。
本実施の形態では、d=1であるから、対応パターンとしては“101”の設定は可能であるが、上述したように“101”の部位(最密パターン)では充分に大きな再生信号振幅が得難いので、その代わりに“1001”を配置し、表20に示すような、同期位置検出用コード部のパターンとしている。
本実施の形態において、表20に示すようにシンクコード内の後ろ側の18チャネルビットを独立して(1)同期位置検出用コード部とし、前側の6チャネルビットで(2)変調時の変換テーブル選択コード部、(3)シンクフレーム位置識別用コード部、(4)DC抑圧用極性反転コード部を兼用しているところに特徴がある。シンクコード内で(1)同期位置検出用コード部を独立させることで単独検出を容易にして同期位置検出精度を高め、6チャネルビット内に(2)〜(4)のコード部を兼用化することでシンクコード全体のデータサイズ(チャネルビットサイズ)を小さくし、シンクデータの占有率を高めることで実質的なデータ効率を向上させる効果がある。
表20に示すように、本実施の形態においては、4種類のシンクコードのうち、SY0のみを図38に示すように、セクタ内の最初のシンクフレーム位置に配置している。その結果、SY0を検出するだけで、セクタ内の先頭位置を容易に検出できる(セクタ内の先頭位置が容易に割り出せる)。この配置により、セクタ内の先頭位置抽出処理が、非常に簡素化される。なお、連続する3個のシンクコードの組み合わせパターンは、同一セクタ内では、全て異なる。
表20に示すように、同期コードパターン内に、“0”が12個連続する“13T”の場所が存在する。本実施形態では、この“13T”の部分を用いて、最適な記録条件を設定するためのランニングOPCを行う。すなわち、この13Tの部分でリアルタイムに記録条件を微小に変化させ、リアルタイムで再生しながら最適な記録条件にフィードバックをかける。
それを可能にするため、図38に示した配置において、各同期コードSY0〜SY3を配置順に2個ずつペアにし、そのペアの中のどちらか一方の“13T”部分を記録マーク(マーク)に設定し、もう一方の同期コード内の“13T”部分をスペース(記録マークと記録マークの間領域)としている。
なお、2個ずつペアを与えたことで、図76に示す“13T”部分の極性制御がある。すなわち、2個ずつ繋がって配置される同期コードペアの最初の同期コードは、DC抑圧制御に利用し、ペア内の後ろの同期コードの“13Tを前の“13T”に対する逆極性に設定する。具体的な手順のフローチャートを図76に示す。
ST71に示すように同期コードの設定を開始すると、ST72に示すように一組の先頭の同期コード内の表20に示した#の値をDC抑圧制御に利用して設定する(DSVの絶対値の値が“0”に近付くように#の値を“1”か“0”に切り替える)。
次に、このときの“13T”位置での極性を調べ、“13T”の位置がマーク内かスペース上かを判定する(ST73)。
前記一組の後ろ側の同期コード(次の同期コード位置)まで待ち(ST74およびST75)、前記一組の先頭の同期コード内の13Tの位置がマーク内にある場合は、ST76に示すように、次の(一組の後半の)同期コード内の“13T”の位置がスペース上に来るように、表20に示した同期コード内の#ビットの“1”か“0”かを決める。
一方、一組の前半の同期コード内の13Tの位置がスペース上にあった場合には、ST77に示すように、次の(一組の後半の)同期コード内の“13T”の位置が、マーク内に来るように、表20に示した同期コード内の#ビットを“1”にするか、“0”にするかを決める。その後、次の(次の組の前半の)同期コードが来るまで待ち(ST78)上記の処理を繰り返す。
次に、図23に示した参照コード記録ゾーンRCZに記録される参照コードのパターン内容に付いて詳細に説明する。
現行DVDでは、変調方式として8ビットデータを16チャネルビットに変換する“8/16変調”方式を採用されている。従って、変調後の情報記憶媒体に記録されるチャネルビット列としての参照コードのパターンは“00100000100000010010000010000001”の繰り返しパターンが用いられている。
一方、本実施形態では、表5ないし表7および表20に示したように、8ビットデータを12チャネルビットに変調するETM変調を用い、RLL(1,10)のランレングス制約を行っているとともにデータリードイン領域DTLDI、データ領域DTA、データリードアウト領域DTLDOおよびミドル領域MDAからの信号再生にPRML法を採用している。従って、上記変調規則とPRML検出に最適な参照コードのパターンを設定する必要がある。
RLL(1,10)のランレングス制約に従えば“0”が連続する最小値は“d=1”で“10101010”の繰り返しパターンとなる。“1”または“0”のコードから次の隣接コードまでの距離を“T”とすると、上記パターンでの隣接する“1”間の距離は“2T”となる。
本実施形態では情報記憶媒体の高密度化のため、前述したように情報記憶媒体上に記録した“2T”の繰り返しパターン(“10101010”)からの再生信号は光学ヘッド内の対物レンズ(図9の情報記録再生部141内に存在する)のMTF(Modulation Transfer Fuction)特性の遮断周波数近傍にあるため、ほとんど変調度(信号振幅)が得られない。
従って、情報再生装置あるいは情報記録再生装置の回路調整(例えば、図13のタップ制御器332内における各タップ係数の初期最適化)に使用する再生信号として“2T”の繰り返しパターン(“10101010”)からの再生信号を用いた場合には、ノイズの影響が大きく安定化に乏しい。
このため、RLL(1,10)のランレングス制約に従って行う変調後の信号に対しては、次に密度の高い“3T”のパターンを使って回路調整を行うことが望ましい。
再生信号のDSV値を考えた場合は、“1”の直後に来る次の“1”までの間の“0”が連続する回数に比例して、DC(直流)値の絶対値が増加して、直前のDSV値に加算される。この加算されるDC値の極性は、“1”が来る毎に反転する。
従って、参照コードが連続するチャネルビット列が続いた部分で、DSV値を“0”にする方法としては、ETM変調後の12個のチャネルビット列内で、DSV値が“0”になるように設定する方法に比較して、ETM変調後の12個のチャネルビット列に出現する“1”の発生数を奇数個にして、12チャネルビットからなる1組の参照コードセルで発生するDC成分を次の組からなる12チャネルビットの参照コードセルで発生するDC成分で相殺させることが、参照コードパターン設計の自由度の面で理想的である。
このため、本実施形態では、ETM変調後の12個のチャネルビット列からなる参照コードセル内で出現する“1”の数を奇数個に設定している。
また、本実施形態では、高密度化のため、“1”の部分が記録マークもしくはエンボスピットの境界位置に一致するマークエッジ記録法を採用している。例えば、“3T”の繰り返しパターン(“100100100100100100100”)が続いた場合に、記録条件または原盤作成条件等により、記録マークもしくはエンボスピットの長さとその間にあるスペースの長さが若干異なる場合が生じる。
PRML検出法を用いた場合には、再生信号のレベル値が非常に重要となる。従って、前記のように記録マークもしくはエンボスピットの長さとその間にあるスペースの長さが若干異なった場合でも安定かつ精度良く信号検出できることが要求される。このため、その若干の異なり分を回路的に補正する必要が生じる。従って、回路定数を調整するための参照コードとしては、“3T”の長さの記録マークもしくはエンボスピットと同じく“3T”の長さのスペースが有った方が回路定数の調整の精度が向上する。そのため、本実施形態の参照コードパターンとして、“1001001”のパターンが内部に含まれると、必ず“3T”の長さの記録マークもしくはエンボスピットとスペースが配置される。
また、回路調整には、密度の詰まったパターン(“1001001”)だけでなく、密度が“疎”の状態のパターンも必要となる。従って、ETM変調後の12個のチャネルビット列の中で“1001001”のパターンを除いた部分で密度が“疎”の状態(“0”が連続して多く発生するパターン)を発生させ、かつ“1”の出現数を奇数個に設定することを考慮する。この場合、参照コードパターンは、図40に示すように“100100100000”の繰り返しが最適条件となる。
また、変調後のチャネルビットパターンを前記パターンとするには、図示していないが本実施形態のHフォーマットで規定された変調テーブルを利用する場合、変調前のデータワードを“A4h(16進)”に設定する必要がある。この“A4h(16進)”のデータは、データシンボル“164”(10進法表現)に対応する。
前記のデータ変換規則に従った具体的なデータの作り方を以下に説明する。
前述したデータフレーム構造内でメインデータ“D0〜D2047”にデータシンボル“164”(=“0A4h”)を、まず設定する。
次に、データフレーム1からデータフレーム15に対して、イニシャルプリセット番号“0Eh”で予めプリスクランブルを掛けておき、データフレーム16からデータフレーム31に対しては、イニシャルプリセット番号“0Fh”により、予めプリスクランブルを掛けておく。
予めプリスクランブルを掛けておくと、前記のデータ変換規則に従ってスクランブルを掛けた時に二重でスクランブルを掛けたことになり、(二重でスクランブルを掛けると元のパターンに戻る)データシンボル“164”(=“0A4h”)がそのまま現れる。
但し、32物理セクタの参照コード全てに、プリスクランブルを掛けるとDSV制御ができなくなるので、データフレーム0だけは事前のプリスクランブルは掛けない。
前記スクランブルを掛けた後、変調すると図40に示したパターンが情報記憶媒体上に記録される。
図41を用い、本実施形態における各種情報記憶媒体に対応するデータ記録形式(フォーマット)の比較を説明する。
図41(a)は、現行(従来)の再生専用形情報記憶媒体(DVD−ROM)と、現行(従来)の追記形情報記憶媒体(DVD−R)および現行(従来)の書替え形情報記憶媒体(DVD−RW)におけるデータ記録形式を、図41(b)は、本実施形態における再生専用形情報記憶媒体のデータ記録形式を、図41(c)は本実施形態における追記形情報記憶媒体のデータ記録形式を、図41(d)は書替え形情報記憶媒体のデータ記録形式を、それぞれ、示している。
比較のため、各ECCブロック411〜418の大きさを同じに合わせているが、図41(a)に示した従来の再生専用形情報記憶媒体DVD−ROMと従来の追記形情報記憶媒体DVD−Rおよび従来のDVD−RWでは16物理セクタにより1個のECCブロックを有する。これに対し、図41(b)〜(d)に示した本実施形態では、既に説明したが32物理セクタで1個のECCブロックをなる。
本実施形態では、図41(b)〜(d)に示すように、各ECCブロック#1411〜#8418の間に、シンクフレーム長433と同じ長さのガード領域442〜448を設けている。従来の再生専用形情報記憶媒体DVD−ROMでは図41(a)に示すように各ECCブロック#1411〜#8418が連続に記録されている。従来の追記形情報記憶媒体DVD−Rや従来のDVD−RWで従来の再生専用形情報記憶媒体DVD−ROMとデータ記録形式(フォーマット)の互換性を確保しようとしてすると、制限付きオーバーライト(Restricted Overwrite)と呼ばれる追記または書き替え処理において、書き重ねによりECCブロック内の一部が破壊され、再生時のデータの信頼性が大きく損われることがある。
一方、本実施形態のように、データフィールド(ECCブロック)相互間にガード領域442〜448を配置することにより、書き重ね場所を、ガード領域442〜448内に制限可能となる。これにより、データフィールド(ECCブロック)のデータ破壊が抑止される。
本実施形態ではさらに、上記ガード領域442〜448の長さを、図41に示すように1シンクフレームサイズであるシンクフレーム長433に合わせている。
図38に示すように、1116チャネルビットという一定のシンクフレーム長433間隔で、同期コード(シンクコード)が配置されており、図9に示す同期コード位置検出部145においては、この一定周期間隔を利用して同期コード位置を抽出している。
本実施形態でガード領域442〜448の長さシンクフレーム長433に合わせることで、再生時にガード領域442〜448を跨ったとしても、このシンクフレーム間隔が不変に保たれるので、容易に再生時の同期コード位置が検出できる。
またさらに、
(1)ガード領域442〜448を跨った場所でも同期コードの出現頻度を一致させて同期コード位置検出の検出精度を向上させる、
(2)ガード領域442〜448も含めた物理セクタ内の位置の判別を容易にする
ことを目的として、本実施形態では、ガード領域内に同期コード(シンクデータ)を配置している。
具体的には、図43に示すように、各ガード領域442〜468の開始位置に、ポストアンブル領域(Postamble field)481が形成され、そのポストアンブル領域481に、表20に示したシンクコード番号“1”の同期コード“SY1”が配置されている。
図38により既に説明したように、物理セクタ内の3個の連続する同期コードのシンクコード番号の組み合わせは、全ての場所で異なり、ガード領域442〜448内のシンクコード番号“1”まで加味した3個の連続する同期コードのシンクコード番号の組み合わせも、全ての場所で異なる。従って、任意の領域内において、連続する3個の同期コードのシンクコード番号を組み合わせることにより、物理セクタ内の位置情報のみならず、ガード領域も含めた物理セクタ内の位置の判別が可能となる。
図41に示したガード領域441〜448内の詳細な構造を図43に示す。
図43において、物理セクタ内の構造は、シンクコード431とシンクデータ432の組み合わせから構成されるが、ガード領域441〜448内も同様にシンクコード433とシンクデータ434の組み合わせから構成される。すなわち、ガード領域#3443内のシンクデータ434領域内もセクタ内のシンクデータ432と同じ変調規則に従って変調されたデータが配置される。なお、図35に示す、32個の物理セクタから構成される1個分のECCブロック#2412内の領域を、本発明では、データフィールド470と呼ぶ。
一方、図43におけるVFO(Variable Frequency Oscillator)領域471および472は、データ領域470を再生する時の情報再生装置または情報記録再生装置の基準クロックの同期合わせに利用する。この領域471、472内に記録されるデータ内容として、後述する共通の変調規則における変調前のデータは、“7Eh”の連続繰り返しとなり、変調後の実際に記録されるチャネルビットパターンは、“010001 000100”の繰り返しパターン(“0”が連続3個ずつ繰り返すパターン)となる。なお、このパターンが得られるためにはVFO領域471、472の先頭バイトは変調におけるState2の状態に設定される必要がある。
プリシンク領域477、478は、前記VFO領域471、472とデータ領域470間の境目位置を表し、変調後の記録チャネルビットパターンは“100000 100000”(“0”が連続5個ずつ繰り返すパターン)の繰り返しである。
情報再生装置または情報記録再生装置では、VFO領域471、472内の“010001 000100”の繰り返しパターンから、プリシンク領域477、478内の“100000 100000”の繰り返しパターンのパターン変化位置を検出し、データ領域470が近付くことを認識する。
ポストアンブル領域481は、データ領域470の終了位置を示すとともにガード領域443の開始位置を表している。ポストアンブル領域481内のパターンは上述したように表20に示す同期コード(シンクコード(SYNC Code))の内“SY1”のパターンと一致している。
エキストラ領域482はコピー制御や不正コピー防止用に使われる領域である。特にコピー制御や不正コピー防止用に使われない場合にはチャネルビットで全て“0”に設定する。
バッファ領域はVFO領域471、472と同じ変調前のデータは、“7Eh”の連続繰り返しとなり、変調後の実際に記録されるチャネルビットパターンは“010001 000100”の繰り返しパターン(“0”が連続3個ずつ繰り返すパターン)となる。なお、このパターンが得られるためには、VFO領域471、472の先頭バイトは変調におけるState2の状態に設定される必要がある。
図43に示すように“SY1”のパターンが記録されているポストアンブル領域481がシンクコード領域433に該当し、その直後のエキストラ領域482からプリシンク領域478までの領域が、シンクデータ領域434に対応する。
VFO領域471からバッファ領域475までの領域(つまりデータ領域470とその前後のガード領域の一部を含む領域)を、本発明では、データセグメント490と呼び、“物理セグメント”とは、異なる内容を示している。図43に示した各データのデータサイズは、変調前のデータのバイト数で表現している。
本実施形態は、図43に示した構造に限らず、他の実施形態として下記の方法を採用することもできる。すなわち、VOF領域471とデータ領域470の境界部にプリシンク領域477を配置する代わりに図43のVOF領域471、472の途中にプリシンク領域477を配置する。この他の実施形態では、データブロック470の先頭に配置される“SY0”のシンクコードとプリシンク領域477との間の距離を離すことで。距離相関を大きく取り、プリシンク領域477を仮Syncとして設定し、本物のSync位置の距離相関情報(他のSync間距離とは異なるが)として利用する。もし本物のSyncが検出できなければ、仮Syncから生成した本物が検出されるであろう位置で、Syncを挿入する。このようにしてプリシンク領域477を本物シンク(“SY0”)と多少の距離を取ることを特徴とする。プリシンク領域477をVFO領域471、472の始めに配置すると、読み取りクロックのPLLがロックしていない為プリシンクの役目が弱くなる。従って、プリシンク領域477をVFO領域471、472の中間位置に配置するのが望ましい。
本発明では、記録形(書替え形あるいは追記形)情報記憶媒体におけるアドレス情報がウォブル変調により予め記録されている。ウォブル変調方式として、±90度(合計で、180度)の位相変調を用いるとともに、NRZ(Non Returen to Zero)方法を採用して、情報記憶媒体に対してアドレス情報を事前に記録している。
図44を用いて、具体的に説明する。
本実施形態では、アドレス情報に関しては、1アドレスビット(アドレスシンボルとも呼ぶ)領域511内を4ウォブル周期で表現し、1アドレスビット領域511内は至る所周波数および振幅と位相は一致している。
アドレスビットの値として同じ値が連続する場合には、各1アドレスビット領域511の境界部(図44の“三角印”を付けた部分)で同位相が継続し、アドレスビットが反転する場合には、ウォブルパターンの反転(位相の180度シフト)が起きる。
図9に示した情報記録再生装置のウォブル信号検出部135では、上記アドレスビット領域511の境界位置(図44の“三角印”を付けた場所)と1ウォブル周期の境界位置であるスロット位置412を同時に検出している。
ウォブル信号検出部135内では、図示してないがPLL(Phase Lock Loop)回路が内蔵されており、上記アドレスビット領域511の境界位置とスロット位置412の両方に同期してPLLが掛かる。このアドレスビット領域511の境界位置またはスロット位置412がずれるとウォブル信号検出部135では同期が外れて正確なウォブル信号の再生(判読)が不可能となる。
隣接するスロット位置412間の間隔をスロット間隔513と呼び、このスロット間隔513が物理的に短い程PLL回路の同期が取り易く、安定にウォブル信号の再生(情報内容の解読)が可能となる。
図44から明らかなように、180度または0度にシフトする180度の位相変調方式を採用すると、このスロット間隔513は、1ウォブル周期と一致する。ウォブルの変調方法としてウォブル振幅を変化させるAM(Amplitude Modulation)方式では、情報記憶媒体表面に付着したゴミや傷の影響を受け易いが、上記位相変調では、信号振幅ではなく位相の変化を検出するため、比較的情報記憶媒体表面のゴミや傷の影響を受け辛い。
他の変調方式として、周波数を変化させるFSK(Frequency Shift Keying)方式では、ウォブル周期に対してスロット間隔513が長くPLL回路の同期が相対的に取り辛い。従って、本実施形態のよう、にウォブルの位相変調を利用してアドレス情報を記録すると、スロット間隔が狭く、しかもウォブル信号の同期が取り易い。
図44に示すように、1アドレスビット領域511には、それぞれ“1”または“0”のバイナリデータが割り振られるが、本実施形態におけるビットの割り振り方法を図45に示す。
図45の左側に示すように、1つのウォブルが開始する位置から、最初に外周側に蛇行するウォブルパターンをNPW(Normal Phase Wobble)と呼び“0”のデータを割り当てる。一方、右側に示すように、1つのウォブルが開始する位置から、最初に内周側に蛇行するウォブルパターンをIPW(Invert Phase Wobble)と呼び“1”のデータを割り当てる。
本実施形態では、図6(b)、(c)に示すように、プリグルーブ領域11の幅Wgを、ランド領域12の幅Wlよりも広くしている。これにより、ウォブル検出信号の検出信号レベルが下がり、C/N比が低下する。
しかしながら、本実施形態では、無変調領域を変調領域よりも広げることでウォブル信号の検出を安定化させている。
図81は、本実施形態のHフォーマットにおけるウォブルアドレスフォーマットを説明する概略図である。
図81(b)に示すように、本実施形態のHフォーマットでは、7個の物理セグメント550〜556を、1個の物理セグメントブロックとしている。
1個の物理セグメント550〜557は、図81(c)に示すように、それぞれ、17個ずつのウォブルデータユニット560〜576を含む。さらに、個々のウォブルデータユニット560〜576は、ウォブルシンク領域580、変調開始マーク581,582もしくはウォブルアドレス領域586,587のいずれかである変調領域と、全てが連続したNPWを含む無変調領域590,591を有する。
図46に、各ウォブルデータユニット内の変調領域と無変調領域の存在比(出現確率)を示す。
図46(a)から(d)のいずれも、ウォブルデータユニット内で16ウォブルを含む変調領域598と68ウォブルを含む無変調領域593を有する。なお、変調領域598よりも無変調領域593を広く規定している。
無変調領域593を広くすることで、無変調領域593を用いて、安定にウォブル検出信号、ライトクロック、あるいは再生クロックのPLL回路の同期を取ることができる。安定に同期を取るために、無変調領域593は変調領域598の幅より2倍以上広いことが望ましい。
本実施形態の追記形情報記憶媒体のHフォーマットにおけるウォブル変調を用いたアドレス情報の記録形式について説明する。
本実施形態におけるウォブル変調を用いたアドレス情報設定方法では、図41に示した“シンクフレーム長433を単位として割り振った”ことが大きな特徴である。図38に示したように、1セクタは26シンクフレームで有り、図32から、1ECCブロックは32物理セクタであるから、1ECCブロックは26×32=832個のシンクフレームを含む。
図41に示す、ECCブロック411〜418間に存在するガード領域442〜468の長さは、1シンクフレーム長433に一致するので、1個のガード領域462と1個のECCブロック411を足した長さは、832+1=833個のシンクフレームである。
なお、
833=7×17×7
と因数分解できるので、この特徴を生かした構造を持たせている。
すなわち、1個のガード領域と1個のECCブロックを足した領域の長さに等しい領域を書き替え可能なデータの基本単位としてデータセグメント531と定義(図43に示したデータセグメント490内の構造は再生専用形情報記憶媒体と書替え形情報記憶媒体、追記形情報記憶媒体の別に依らず全て一致している)し、1個のデータセグメント490の物理的な長さと同じ長さの領域を“7個”の物理セグメントに分割し、各物理セグメント毎にウォブル変調の形でアドレス情報を事前に記録しておく。
データセグメント490の境界位置と物理セグメントの境界位置は、後述する量だけ、ずれている。さらに、各物理セグメントを、それぞれ17個のウォブルデータユニットWDU(Wobble Data Unit)に分割する。上記の式から、1個のウォブルデータユニットの長さとしては、それぞれ7個のシンクフレーム分が割り当てられることが判る。
このように、17ウォブルデータユニットで物理セグメントを構成し、7物理セグメント長をデータセグメント長に合わせることにより、ガード領域442〜468を跨った範囲でシンクフレーム境界を確保し、シンクコードの検出を容易にしている。
各ウォブルデータユニット#0560〜#11571の中は、図46に示した通り16ウォブル分の変調領域598と68ウォブル分の無変調領域592、593であるから、この無変調領域592、593を利用してPLLを掛け、情報記憶媒体に記録された記録マークを再生する時の基準クロック、または新たに記録する時に使用する記録用基準クロックを安定に抽出(生成)することができる。このように、本実施形態において変調領域598に対する無変調領域592、593の占有比を大幅に大きくすることで、再生用の基準クロックの抽出(生成)または記録用基準クロックの抽出(生成)の精度と抽出(生成)安定性を大幅に向上させることができる。すなわち、ウォブルでの位相変調を行った場合、波形整形のために再生信号をバンドパスフィルターに通過させると位相変化位置前後で整形後の検出信号波形振幅が小さくなる現象が現れる。従って、位相変調による位相変化点の頻度が多くなると波形振幅変動が多くなって上記のクロック抽出精度が落ち、逆に変調領域内で位相変化点の頻度が低いとウォブルアドレス情報検出時のビットシフトが発生しやすくなると言う問題点が生じる。そのため、本実施形態では位相変調による変調領域と無変調領域を構成し、無変調領域の占有率を高くすることで上記のクロック抽出精度を向上させる効果がある。本実施形態では変調領域と無変調領域の切り替わり位置が予め予想できるので、上記のクロック抽出に対しては無変調領域にゲートを掛けて無変調領域のみの信号を検出し、その検出信号から上記クロック抽出を行うことが可能となる。特に、本実施形態による記録原理を用いた有機色素記録材料で記録層3−2を構成する場合には“3−2)本実施形態における有機色素膜に共通する基本的特徴説明”内の“3−2−D〕本実施形態におけるプリグルーブ形状/寸法に関する基本的特徴”に記載するプリグルーブ形状/寸法を用いた場合に比較的ウォブル信号が取り辛くなる。この状況に対して上記のように変調領域に対する無変調領域590、591の占有比を大幅に大きくすることでウォブル信号検出の信頼性を向上させている。
無変調領域592、593から変調領域598に移る時には、4ウォブル分または6ウォブル分を使って変調開始マークとしてのIPW領域を設定し、図46(c)、(d)に示すウォブルデータ部において、この変調開始マークであるIPW領域を検出した直後にウォブル変調されたウォブルアドレス領域(アドレスビット#2〜#0)が来るように配置されている。
図46(a)、(b)は、後述する図47(c)に示すウォブルシンク領域580に対応したウォブルデータユニット#0560内の中身を表し、図46(c)、(d)は図47(c)のセグメント情報727からCRCコード726までのウォブルデータ部に対応したウォブルデータユニットの中身を示している。図46(a)、(c)は後述する変調領域の1次配置場所(Primary position)701に対応したウォブルデータユニット内を示し、図46(b)、(d)は変調領域の2次配置場所(Secondary position)702に対応したウォブルデータユニット内を示している。図46(a)、(b)に示すようにウォブルシンク領域580ではIPW領域に6ウォブル、IPW領域に囲まれたNPW領域に4ウォブルを割り当て、図46(c)、(d)に示すようにウォブルデータ部ではIPW領域と全てのアドレスビット領域#2〜#0それぞれに4ウォブル分を割り当てている。
図47に追記形情報記憶媒体でのウォブルアドレス情報内のデータ構造に関する実施形態を示す。図47(a)には比較のため、書替え形情報記憶媒体のウォブルアドレス情報内のデータ構造を示した。追記形情報記憶媒体でのウォブルアドレス情報内のデータ構造に関する2通りの実施形態に付いて図47(b)と(c)に示す。
ウォブルアドレス領域610では12ウォブルで3アドレスビットを設定(図44を参照)している。つまり、連続する4ウォブルで1アドレスビットを構成している。このように本実施形態ではアドレス情報を3アドレスビット毎に分散配置させた構造を取っている。ウォブルアドレス情報610を情報記憶媒体内の一箇所に集中記録すると、表面のゴミや傷が付いた時に全ての情報が検出困難になる。本実施形態のようにウォブルアドレス情報610を1個のウォブルデータユニット560〜576に含まれる3アドレスピット(12ウォブル)毎に分散配置し、3アドレスビットの整数倍アドレスビット毎にまとまった情報を記録し、ゴミや傷の影響で一箇所の情報検出が困難な場合でも他の情報の情報検出を可能にできるという効果がある。
上記のようにウォブルアドレス情報610を分散配置させるとともに1物理セグメント毎にウォブルアドレス情報610を完結的に配置させることで物理セグメン毎にアドレス情報が分かるので、情報記録再生装置がアクセスした時に物理セグメント単位での現在位置を知ることができる。
本実施形態では、図44に示すようにNRZ法を採用しているので、ウォブルアドレス領域610内では連続する4ウォブル内で位相が変化することはない。この特徴を利用してウォブルシンク領域580を設定している。すなわち、ウォブルアドレス情報610内では発生し得ないウォブルパターンをウォブルシンク領域580に対して設定することで、ウォブルシンク領域580の配置位置識別を容易にしている。本実施形態では連続する4ウォブルで1アドレスビットを構成するウォブルアドレス領域586、587に対してウォブルシンク領域580位置では1アドレスビット長を4ウォブル以外の長さに設定していることを特徴とする。すなわち、ウォブルシンク領域580では図46(a)、(b)に示すようにウォブルビットが“1”になる領域(IPW領域)を4ウォブルとは異なる“6ウォブル→4ウォブル→6ウォブル”と言う図46(c)、(d)に示すようにウォブルデータ部では起こり得ないウォブルパターン変化を設定している。ウォブルデータ部では発生し得ないウォブルパターンをウォブルシンク領域580に対して設定する具体的な方法として上述したようにウォブル周期を変える方法を利用すると
(1)図9のウォブル信号検出部135内で行っているウォブルのスロット位置512(図44)に関するPLLが崩れることなく安定にウォブル検出(ウォブル信号の判定)を継続できる
(2)図9のウォブル信号検出部135内で行っているアドレスビット境界位置のずれにより容易にウォブルシンク領域580と変調開始マーク561、582の検出が行える
と言う効果が生まれる。
図46に示すようにウォブルシンク領域580を12ウォブル周期で形成してウォブルシンク領域580の長さを3アドレスビット長に一致させていることを特徴とする。これにより、1個のウォブルデータユニット#0560内での変調領域(16ウォブル分)全てをウォブルシンク領域580に割り当てることで、ウォブルアドレス情報610の開始位置(ウォブルシンク領域580の配置位置)の検出容易性を向上させている。このウォブルシンク領域580は物理セグメント内の最初のウォブルデータユニットに配置されている。このようにウォブルシンク領域580を物理セグメント内の先頭位置に配置することで、ウォブルシンク領域580の位置を検出するだけで容易に物理セグメントの境界位置を抽出できると言う効果が生じる。
図46(c)、(d)に示すように、ウォブルデータユニット#1561〜#11571内ではアドレスビット#2〜#0に先行し、先頭位置に変調開始マークとしてのIPW領域(図45参照)が配置されている。それに先行した位置に配置されている無変調領域592、593では連続的にNPWの波形になっているので、図9に示したウォブル信号検出部135ではNPWからIPWへの切り替わり目を検出して変調開始マークの位置を抽出する。
参考までに図47(a)に示した書替え形情報記憶媒体におけるウォブルアドレス情報610の中身は、
(1)物理セグメントアドレス601
… トラック内(情報記憶媒体221内での1周内)での物理セグメント番号を示す情報
(2)ゾーンアドレス602
… 情報記憶媒体221内のゾーン番号を示している
(3)パリティー情報605
… ウォブルアドレス情報610からの再生時のエラー検出用に設定された物で、予約情報604からゾーンアドレス602までの14アドレスビットを各アドレスビット単位で個々に加算し、加算結果が偶数か奇数かの表示を行う情報で、このアドレスパリティ情報605の1アドレスビットも含めた合計15アドレスビットに対して各アドレスビット単位で排他的OR(Exclusive OR)を取った結果が“1”になるようにパリティー情報605の値を設定する
(4)ユニティー領域608
… 前述したように各ウォブルデータユニットの中は16ウォブル分の変調領域598と68ウォブル分の無変調領域592、593から構成されように設定し、変調領域598に対する無変調領域592、593の占有比を大幅に大きくしている。さらに、無変調領域592、593の占有比を広げて再生用基準クロックまたは記録用基準クロックの抽出(生成)の精度と安定性をより向上させている。ユニティー領域608内は全てNPW領域が連続しており、均一位相の無変調領域になっている
が記録される。
上記各情報に割り当てたアドレスビット数を図47(a)に示した。上述したようにウォブルアドレス情報610内はそれぞれ3アドレスビット毎に分離されて各ウォブルデータユニット内に分散配置される。情報記憶媒体表面のゴミや傷によりバーストエラーが発生しても異なる各ウォブルデータユニットを跨ってエラーが広がっている確率は非常に低い。従って、同一情報が記録される場所として異なるウォブルデータユニット間を跨る回数を極力減らし、各情報の切れ目とウォブルデータユニットの境界位置を一致させるように工夫している。これにより、仮に情報記憶媒体表面のゴミや傷によりバーストエラーが発生して特定の情報が読めなくても、他の各ウォブルデータユニット内に記録された他の情報が読めるようにしてウォブルアドレス情報の再生信頼性を向上させている。
図47(a)〜(c)に示すようにウォブルアドレス情報610内でユニティ領域608、609を最後に配置した所も本実施形態の大きな特徴となっている。上述したようにユニティ領域608、609ではウォブル波形はNPWに成っているので、実質的に3個もの連続したウォブルデータユニット内で連続してNPWが続く。この特徴を利用して図9のウォブル信号検出部135では3個のウォブルデータユニット576分の長さで連続してNPWが続く場所を探すことで容易にウォブルアドレス情報610の最後に配置されたユニティ領域608の位置が抽出でき、その位置情報を利用してウォブルアドレス情報610の開始位置を検出できる。
図47(a)に示した各種アドレス情報の内、物理セグメントアドレス601とゾーンアドレス602は隣接トラック間で同じ値を示しているのに対し、グルーブトラックアドレス606とランドトラックアドレス607は隣接トラック間で値が変わる。従って、グルーブトラックアドレス606とランドトラックアドレス607が記録される領域には不定ビット領域504が現れる。この不定ビット頻度を低減させるため、本実施形態ではグルーブトラックアドレス606とランドトラックアドレス607に関してはグレイコードを用いてアドレス(番号)を表示している。グレイコードとは元の値が“1”変化した時の変換後のコードが何処でも“1ビット”だけしか変化しないコードを意味している。これにより不定ビット頻度を低減させてウォブル検出信号のみならず記録マークからの再生信号も信号検出安定化が図れる。
図47(b)、(c)に示すように追記形情報記憶媒体においても書替え形情報記憶媒体と同様ウォブルシンク領域680を物理セグメント先頭位置に配置し、物理セグメントの先頭位置あるいは隣接する物理セグメント間の境界位置の検出を容易にしている。図47(b)に示した物理セグメントのタイプ識別情報721は上述したウォブルシンク領域580内のウォブルシンクパターンと同様物理セグメント内の変調領域の配置位置を示すことで同一物理セグメント内の他の変調領域598の配置場所が事前に予測でき、次に来る変調領域検出の事前準備ができるので変調領域での信号検出(判別)精度を上げることができると言う効果がある。
具体的には、
物理セグメントのタイプ識別情報721が“0”の時は、図49(b)に示す物理セグメント内全てが1次配列場所(Primary Position)になっているか、あるいは図49(d)に示す1次配置場所と2次配置場所の混合状態を表し、
物理セグメントのタイプ識別情報721が“1”の時は、図49(c)に示すように物理セグメント内の全てが2次配置場所(Secondary Position)になっていることを示す。
上記の実施形態に対する他の実施形態としてウォブルシンクパターンと物理セグメントのタイプ識別情報721の組み合わせにより物理セグメント内の変調領域の配置場所を示すこともできる。前記2種類の情報を組み合わせることで図49(b)から(d)に示した3種類以上の変調領域の配置パターンを表現でき、変調領域の配置パターンを複数持たせることが可能となる。なお上記の実施形態ではウォブルシンク領域580と物理セグメントのタイプ識別情報721が含まれている物理セグメント内の変調領域の配置場所を示しているが、本発明ではそれに限らず例えば、他の実施形態としてウォブルシンク領域580と物理セグメントのタイプ識別情報721は次に来る物理セグメント内の変調領域の配置場所を示しても良い。この場合、グルーブ領域に沿って連続的にトラッキングしている場合に次の物理セグメント内の変調領域の配置場所が事前に分かり、変調領域検出の準備時間が長く取れる。
図47(b)に示した追記形情報記憶媒体における層番号情報722とは片面1記録層か片面2記録層の場合のどちらの記録層を示しているかを表し、
“0”の時には片面1記録層媒体か片面2記録層の場合の“L0層”(レーザ光入射側の手前層)
“1”の時には片面2記録層の“L1層”(レーザ光入射側の奥側の層)
を意味する。
物理セグメント順番情報724は同一物理セグメントブロック内の相対的な物理セグメントの配置順を示している。図47(a)と比較して明らかなようにウォブルアドレス情報610内での物理セグメント順番情報724の先頭位置は書替え形情報記憶媒体における物理セグメントアドレス601の先頭位置に一致している。物理セグメント順番情報位置を書替え形に合わせることで媒体種別間の互換性を高め、書替え形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体の両方が使える情報記録再生装置でのウォブル信号を用いたアドレス検出用制御プログラムの共有化よ簡素化が図れる。
図47(b)のデータセグメントアドレス725はデータセグメントのアドレス情報を番号で記述する。既に説明したように本実施形態では32セクタで1ECCブロックを構成する。従って、特定のECCブロック内の先頭に配置されたセクタの物理セクタ番号の下位5ビットは隣接するECCブロック内の先頭位置に配置されたセクタのセクタ番号と一致する。ECCブロック内の先頭に配置されたセクタの物理セクタ番号の下位5ビットが“00000”になるように物理セクタ番号を設定した場合には同一ECCブロック内に存在する全てのセクタの物理セクタ番号の下位6ビット目以上の値が一致する。従って、上記同一ECCブロック内に存在するセクタの物理セクタ番号の下位5ビットデータを除去し、下位6ビット目以上のデータのみを抽出したアドレス情報をECCブロックアドレス(またはECCブロックアドレス番号)とする。ウォブル変調により予め記録されたデータセグメントアドレス725(または物理セグメントブロック番号情報)は上記ECCブロックアドレスと一致するので、ウォブル変調による物理セグメントブロックの位置情報をデータセグメントアドレスで表示すると、物理セクタ番号で表示するのと比べて5ビットずつデータ量が減り、アクセス時の現在位置検出が簡単になると言う効果が生まれる。
図47(b)、(c)のCRCコード726は物理セグメントのタイプ識別情報721からデータセグメントアドレス725までの24アドレスビットに対するCRCコード(エラー訂正コード)またはセグメント情報727から物理セグメント順番情報724までの24アドレスビットに対するCRCコードで部分的にウォブル変調信号を誤って判読してもこのCRCコード726により部分的に修正できる。
追記形情報記憶媒体では残りの15アドレスビット分に相当する領域はユニティ領域609に割り当てられ、12番目から16番目までの5個のウォブルデータユニット内は全てNPWになっている(変調領域598が存在しない)。
図47(c)における物理セグメントブロックアドレス728とは7個の物理セグメントから1個のユニットを構成する物理セグメントブロック毎に設定されるアドレスで、データリードインDTRDI内の最初の物理セグメントブロックに対する物理セグメントブロックアドレスを“1358h”に設定する。データ領域DTAを含め、データリードインDTLDI内の最初の物理セグメントブロックからデータリードアウトDTLDO内の最後の物理セグメントブロックまで順次この物理セグメントブロックアドレスの値が1ずつ加算されて行く。
物理セグメント順番情報724は1個の物理セグメントブロック内での各物理セグメントの順番を表し、最初の物理セグメントに対して“0”、最後の物理セグメントに対して“6”を設定する。
図47(c)の実施形態において物理セグメント順番情報724より先行した位置に物理セグメントブロックアドレス728を配置所に特徴がある。例えば、表18に示したRMDフィールド1のようにアドレス情報をこの物理セグメントブロックアドレスで管理する場合が多い。これらの管理情報に従って所定の物理セグメントブロックアドレスにアクセスする場合、図9内に示したウォブル信号検出部135内ではまず始めに図47(c)に示したウォブルシンク領域580の場所を検出し、その後ウォブルシンク領域580の直後に記録された情報から順次解読していく。物理セグメント順番情報724より先行した位置に物理セグメントブロックアドレスがある場合には、先に物理セグメントブロックアドレスを解読し、物理セグメント順番情報724を解読せずに所定の物理セグメントブロックアドレスか否かを判定できるため、ウォブルアドレスを用いたアクセス性が向上すると言う効果がある。
セグメント情報727内はタイプ識別情報721と予約領域723から構成されている。タイプ識別情報721は物理セグメント内の変調領域の配置場所を表し、このタイプ識別情報721の値が
“0b”の場合は後述する図49(b)の状態を表し、
“1b”の場合には後述する図49の(c)または(d)の状態を表している。
図47(c)においてウォブルシンク領域580の直後にタイプ識別情報721が配置されていることを特徴とする。上述したように図9内に示したウォブル信号検出部135内ではまず始めに図47(c)に示したウォブルシンク領域580の場所を検出し、その後ウォブルシンク領域580の直後に記録された情報から順次解読していく。従って、ウォブルシンク領域580の直後にタイプ識別情報721を配置することで即座に物理セグメント内の変調領域の配置場所確認が行えるため、ウォブルアドレスを用いたアクセス処理の高速化が実現できる。
図54を用いて隣接トラックからのウォブル信号のクロストークの発生について記述する。
図54に示すように記録可能な情報記憶媒体上ではプリグルーブ領域1011が蛇行(ウォブル)しながら配置されている。情報再生時およびトラックループON時には集光スポット1027は、プリグルーブ領域1011をトレースしながらトラッキングしている。しかし、プリグルーブ領域1011のウォブル周波数がトラッキングサーボ帯域より高いため、トラッキング補正は行われず、ウォブル信号(図57(a)において光検出器1025内の光検出セル1025aから検出される検出信号I1と、光検出セル1025bから検出される検出信号I2との差分(I1−I2)により検出される信号)が検出される。図54に示すように隣接トラック間でウォブルの位相が逆相になっている場合は、集光スポット1027が図54の(a)のような位置にいる時は隣接トラックからのウォブル信号のクロストークは出ないが、集光スポット1027が図54の(b)の位置にきた時は隣接トラックのプリグルーブ領域1015の一部が集光スポット1027の中に入り込むため隣接トラックのウォブル信号がクロストークとしてあらわれる。
本実施形態では、ウォブル信号のクロストーク量を特定以下に抑えるように再生信号品質を規定したところに特徴がある。
図56のフローチャートを参照してウォブル検出信号の最大振幅(Wppmax)と最小振幅(Wppmin)の測定方法について記述する。ステップST01に示すようにウォブル信号をスペクトラムアナライザに入力する。
ここで、スペクトラムアナライザのパラメータは
中心周波数 697kHz
周波数スパン 0 Hz
レゾリューションバンドウィドゥス 10kHz
ビデオバンドウィドゥス 30Hz
に設定している。
次に、ステップST02でウォブル信号周波数が所定値になるようにディスクの回転数を変えて線速を調整する。
本実施形態では、Hフォーマットを使用しているため、ウォブルの信号周波数の所定値としては、697kHzに設定している。
次に、ウォブル検出信号のキャリアレベルの最大値(Cwmax)と最小値(Cwmin)の測定例について記述する。
図55に示すように本実施形態の追記型記憶媒体ではCLV(Constant Lineor Vilocity)記録方式を使用しているため、トラック位置により隣接トラック間でのウォブル位相が変化する。隣接トラック間のウォブル位相が一致した場合、最もウォブル検出信号のキャリアレベルが高くなり、最大値(Cwmax)になる。また、隣接トラック間のウォブル位相が逆位相になった時、隣接トラックのクロストークの影響でウォブル検出信号が最も小さくなり、最小値(Cwmin)になる。従って、トラックに沿って内周から外周方向にトレースしている場合、検出されるウォブル検出信号のキャリアの大きさは図55に示すように4トラック周期で変動する。
本実施形態では、4トラック毎にウォブルキャリア信号を検出し、4トラック毎の最大値(Cwmax)と最小値(Cwmin)を測定する。
以下、ステップST03で最大値(Cwmax)と最小値(Cwmin)のペアを30ペア以上のデータとして蓄積する。
次に、下記の計算式を利用して、ステップST04で最大値(Cwmax)と最小値(Cwmin)の平均値から最大振幅(Wppmax)と最小振幅(Wppmin)を算出する。
下記の式において、Rはスペクトラムアナライザのターミネートされた抵抗値を表している。以下に、CwmaxとCwminの値からWppmaxとWppminを換算する式を説明する。
dBm単位系では、0dBm=1mWを基準とする。ここで、電力Wa=1mWとなる電圧振幅Voは、
Wao=IVo =Vo×Vo/R =1/1000W
である。従って、
Vo=(R/1000)1/2
となる。
次に、ウォブル振幅Wpp[V]とスペクロルアナライザで観測されたキャリアレベルCw[dBm]の関係は下記の通りとなる。ここで、Wppは正弦波なので、振幅を実効値に直すと、
Wpp−rms=Wpp/(2×21/2)
Cw=20×log(Wpp−rms/Vo)[dBm]
となる。
従って、
Cw=10×log(Wpp−rms/Vo)2
上式のlogを変換して
(Wpp−rms/Vo)2
= 10(Cw/10)
={[Wpp/(2×21/2)]/Vo}2
={Wpp/(2×22)/(R/1000)1/2}2
=(Wpp2/8)/(R/1000)。
WPP22
=(8×R)/(1000×10(Cw/10))
=8×R×10(−3)×10(Cw/10)
=8×R×10(Cw/10)(−3)。
Wpp={8×R×10(Cw/10)(−3)}1/2 (61) 。
次に、ウォブル信号とトラックずれ検出信号の特性を図57に示す。
図9に示す情報記録再生部141の中に、図57(a)に示す光学ヘッドが存在する。そして、図57(a)に示す光学ヘッドで検出されたトラックずれ検出信号である(I1−I2)の信号が、図9に示す情報記録再生部141から出力され、図9のウォブル信号検出部135に入力される。
図9の情報記録再生部141の中に存在する光学ヘッド内の構造を説明する。
図57(a)に示すように、半導体レーザ1021から出射されたレーザ光がコリメートレンズ1022により平行光になり、ビームスプリッタ1023を介して対物レンズ1028で集光され、情報記憶媒体1001のプリグルーブ領域1011内に照射される。プリグルーブ領域1011は微小な蛇行(ウォブル)を行っている。ウォブルされたプリグルーブ領域1011から反射された光は再び対物レンズ1028を通過し、ビームスプリッタ1023で反射され、集光レンズ1024で光検出器1025に照射される。
光検出器1025は光検出セル1025−1と光検出セル1025−2から構成され、それぞれの光検出セル1025−1、1025−2から検出された信号I1とI2の差分が得られ、この信号が図9に示されるウォブル信号検出部135に入力される。
図57(a)に示す光学ヘッドはウォブル信号とプッシュプル方式のトラックずれ検出信号のいずれも検出できる。
トラックループONの時は、ウォブル周波数の帯域がトラッキング帯域より高いため、光学ヘッドからはウォブル信号が検出される。ここで、隣接トラック間のプリグルーブのウォブル位相が等しいときは、Wppmaxの最大振幅が得られ、逆相になったときには隣接トラックのクロストークの影響でウォブル信号振幅が低下し最小振幅Wppminになる。
本実施形態では、最大振幅(Wppmax)と最小振幅(Wppmin)間の条件を規定し、より安定なウォブル検出をできるように工夫している。すなわち、図9のウォブル信号検出部135では、ウォブル検出信号の振幅値が最大3倍まで変化しても安定に信号が検出できるよう作られている。また、クロストークの影響で、ウォブル検出信号の振幅の変化率が2分の1以下であることが望ましい。
従って本実施形態では、その中間の値を取り、許容されるウォブル信号の最大値をウォブル信号の最小値で割った値(Wppmax÷Wppmin)を2.3以下に設定している。
本実施形態では、(Wppmax÷Wppmin)の値を2.3以下に設定しているが、図9に示したウォブル信号検出部135の性能からは、(Wppmax÷Wppmin)の値は3以下でも安定に信号を検出することができる。また、より精度の高いウォブル検出を行う場合には、(Wppmax÷Wppmin)の値を2.0以下にすることもできる。上記の条件を満足するように、プリグルーブ領域1011の蛇行振幅を設定する。
図57(b)に示すようにトラックループをOFFにした場合には、光学ヘッドからはトラックずれ検出信号が現れる。この時のトラックずれ検出信号の最大振幅を(I1−I2)ppで表す。この(I1−I2)ppの値は、光検出セル1025−1から検出されるI1の信号と光検出セル1025−2から検出されるI2の信号の差を求めることにより得られる。ここで得られた信号は遮断周波数(カットオフ周波数)30kHzのローパスフィルタを通過した後に信号処理される。このローパスフィルタは1次フィルタで構成される。また、この(I1−I2)ppの値は未記録のデータ領域(DTA)および、未記録領域のデータリードイン領域(DTLDI)あるいは、データリードアウト領域(DTLDO)で測定する。
次に、図58を参照してトラックずれ検出信号の振幅値(I1−I2)ppの測定方法を記述する。
ステップST11で、図57(a)に示す光学ヘッドから得られた(I1−I2)の信号を遮断周波数(カットオフ周波数)fc=30kHzのローパスフィルタに入力する。
ステップST12で、ローパスフィルタ出力に対してトラック毎に振幅値を測定し、30サンプル以上蓄積する。
ステップST12で得られたサンプルの平均を取ることにより、ステップST13で、(I1−I2)ppを求める。
本実施形態では、トラックループOFF時のトラックずれ検出信号の振幅(I1−I2)ppに対するウォブル信号の振幅の最小値(Wppmin)を規定しているところに特徴がある。
図9に示す本実施形態の情報記憶再生装置においては、ウォブル信号検出部135でウォブル信号を検出するとともに、同一の検出回路を用いてトラックずれ検出信号を検出していることを特徴とする。ウォブル信号検出部135でウォブル信号とトラックずれ検出信号をともに検出することにより、一個の検出回路で二つの仕事を処理(兼用)することができるため、回路の簡素化を図ることができる。
ウォブル信号検出部135の特徴として、この回路のダイナミックレンジをトラックずれ検出信号の振幅値(I1−I2)ppに最適化して合わせることがある。この場合、同一回路でウォブル信号を検出する為、ウォブル検出信号の振幅値の最小値(Wppmin)がトラックずれ検出信号の振幅値より大幅に小さいと、ウォブル検出信号の検出精度が低下し、安定な処理が行われなくなる。
従って、図9のウォブル信号検出部135では、安定に信号を検出するため、トラックずれ検出信号の振幅値(I1−I2)ppに対するウォブル信号の振幅値の最小値(Wppmin)を0.2より大きくすることが望ましい。しかし、ウォブル信号検出部の信号特性としては、トラックずれ検出信号の振幅値(I1−I2)ppの5%まで安定にウォブル信号を検出することができる。上記の条件を満足するようにプリグルーブ領域11の蛇行振幅を設定する。
従って、本実施形態では、上記の中間を取ってトラックずれ検出信号の振幅値(I1−I2)ppに対するウォブル検出信号の振幅値の最小値(Wppmin)を0.1以上に設定している。その結果、(I1−I2)ppに対するウォブル検出信号の検出精度を高くすることを保証できる。本実施形態では、以上のようにウォブル検出信号の振幅を設定するとともに、ウォブル信号のC/N比を規定し、ウォブル信号の検出精度を上げていることを特徴としている。
次にウォブル信号に対する、C/N比を測定する回路を図59に示す。
本実施形態におけるウォブル検出信号のC/N比は図57(a)に示す光学ヘッドから出力される(I1−I2)の信号を用いて検出する。プリグルーブ領域1011からのウォブル検出信号は、図27に示すデータリードイン領域(DTLDI)あるいは、データ領域(DTA)もしくは、データリードアウト領域(DTLDO)上をトレースした時の(I1−I2)の信号(図57)で検出される。ウォブル検出信号の評価はウォブル検出信号の下記に示すNBSNR(Narrow−Band Signal−to−Noise Ratio)により実行される。本実施形態では、ウォブル検出信号の2乗結果のNBSNRの値を20dB以上、好ましくは26dB以上に設定している。上記の条件を満足するようにプリグルーブ領域1011のノイズ成分が少ないように情報記憶媒体を製造する。
このウォブル検出信号の2乗結果のNBSNRの値は、未記録トラック上で26dB以上で、既記録トラック上でも、26dB以上を満足している必要がある。
以下に、本実施形態における、NBSNRの測定回路と測定方法について説明を行う。
図57(a)に示す光学ヘッドから出力される(I1−I2)の信号がウォブル信号1030としてプリアンプ回路1031に入力され、一次のバンドパスフィルタ回路1032に入力される。
次に、バンドパスフィルタ回路1032を通過した信号は2乗回路1033により2乗の波形に変換されたのち、スペクトラムアナライザ1034に入力される。
このときのスペクトラムアナライザ1034のパラメータは、
中心周波数 1.39MHz
周波数スパン 500kHz
レゾリューションバンドウィドゥス 10kHz
ビデオバンドウィドゥス 10kHz以上
スイープ時間 50ms
128回以上のアベレージング
に設定している。
次に、図60のフローチャートを参照して具体的なNBSNRの測定方法について記述する。
はじめに、400トラック以上連続したランダムデータを情報記憶媒体上に記録する(ステップST21)。
次に、ステップST21で記録したトラック上をトラックジャンプをせずにトラッキングしながらキャリアレベルとノイズレベルを測定する(ステップST22)。
ステップST22により測定したキャリアレベルとノイズレベルの差によりNBSNRを求める(ステップST23)。
図63に2乗した後のウォブル検出信号のスペクトラムアナライザ波形を示す。キャリアレベルは、スペクトラムの中の最大ピーク値で示される。また、ノイズレベルは図63に示すように1.14MHzから1.19MHzまでと1.59MHzから1.64MHzまでの平均値をノイズレベルとして規定する。
次に、本実施形態においてウォブル検出信号のC/N比を測定するのに2乗回路(図59の1033)を用いた理由を説明する。図61に示すようにHフォーマットの実施形態においては、ウォブル検出信号を位相変調により与えている。位相変調の場合、図61(a)に示すように位相の変わり目部分(NPWとIPWの間)の切り替わり部分αで多くの周波数成分を持つ。そのために、図61(a)のウォブル検出信号の波形をスペクトラムアナライザ1034で分析すると、図62のようにキャリアの周辺に大きなピークが現れる。そのために、ノイズレベルを規定するのが難しくなる。
それに比べ図61(b)に示すように位相変調により変調されたウォブル検出信号の2乗を取ると、IPW領域とNPW領域との2乗した波形が同じ波形になるため、位相の切り替わり目のような部分が現れず、非常に安定した信号が得られ、図62のキャリア信号の周辺の持ち上がり部分がなくなる結果、図63のようなシングルピークのキャリアレベルの信号が得られる。
次に、図59に示したNBSNR測定回路の特性について説明を行う。
図59のバンドパスフィルタ回路1032は、バンドパスフィルタの中心周波数を697kHzに設定し、Q値を1.0にする。図59の2乗回路1033は遮断周波数(カットオフ周波数)を5.0MHz以上に設定している。
図64に示すf0の周波数が図61(a)に示す元のウォブル周波数に対応し、図64の2f0の周波数は図61(b)に示す2乗された後の周波数に対応する。図59におけるスペクトラムアナライザ1034の解析結果から下記のSpを定義する。
すなわち、図64の周波数2f0におけるキャリアレベルC(2f0)と周波数f0におけるキャリアレベルC(f0)との差分を、
Sp=C(2f0)−C(f0)
と表す。
本実施形態では、上記Spの値を、図59に示したNBSNR測定回路の評価に利用する。
C(2f0)およびC(f0)のキャリアレベルは、レゾリューションバンドウィドゥスが10kHzにおける各周波数のスペクトラムアナライザ1034を使った平均値で計算されている。図59における入力ウォブル信号1030のNBSNRが50dBの時、697kHz(f0)のキャリアレベルとの差を示すSpの値が−30dB以下になるようにNBSNR測定回路を調整する必要がある。また、入力ウォブル信号1030のNBSNRが30dBの時、2乗信号のNBSNRが23dB以上の必要がある。図59のスペクトラムアナライザ1034のレゾリューションバンドウィドゥスは10kHzに設定している。
以上説明したように、本実施形態は下記の効果を奏する。
(1)トラックずれ検出信号である(I1−I2)ppに対するウォブル検出信号の振幅の最小値(Wppmin)の比率を0.1以上にすることにより、トラックずれ検出信号のダイナミックレンジに比べて十分に大きなウォブル検出信号が得られ、その結果ウォブル検出信号の検出精度を大きく取ることができる。
(2)ウォブル検出信号の振幅の最大値(Wppmax)と、ウォブル検出信号の振幅の最小値(Wppmin)との比率を2.3以下にすることにより、隣接トラックからのウォブルのクロストークの影響を大きく受けずに安定にウォブル信号を検出することができる。
(3)ウォブル検出信号の2乗結果のNBSNRの値を26dB以上に確保することにより、C/N比が高い安定なウォブル信号を確保させ、ウォブル信号の検出精度を向上させることができる。
本実施形態の追記形情報記憶媒体ではグルーブ領域の上に記録マークを形成し、CLV記録方式を採用している。この場合隣接トラック間でのウォブルスロット位置がずれるため、ウォブル再生信号に隣接ウォブル間の干渉が乗り易いことを説明した。この影響を除去するため、本実施形態では変調領域が隣接トラック間で互いに重ならないように変調領域をずらす工夫をしている。
具体的には、図48に示すように変調領域の配置場所に、1次配置場所(Primary Position)701と2次配置場所702(Secondary Position)を設定可能とする。基本的には配置場所として仮に全て1次配置場所で配置を行い、隣接トラック間で変調領域が一部重なる場所が生じたら部分的に2次配置場所にずらす方法を取る。例えば、図48においてグルーブ領域505の変調領域を1次配置(Primary Position)場所に設定すると隣接するグルーブ領域502の変調領域とグルーブ領域506の変調領域とが一部重なってしまうので、グルーブ領域505の変調領域を2次配置場所にずらす。これにより、ウォブルアドレスからの再生信号における隣接トラックの変調領域間の干渉を防止し、安定にウォブルアドレスを再生できる効果が生じる。
変調領域に関する具体的な1次配置場所と2次配置場所は、同一のウォブルデータユニット内配置場所の切り替えにより設定する。本実施形態では変調領域より無変調領域の占有率を高く設定しているので、同一のウォブルデータユニット内での配置変更のみで1次配置場所と2次配置場所の切り替えが行える。具体的には、1次配置場所(Primary Position)701では、図46(a)、(c)に示すように1個のウォブルデータユニット内の先頭位置に変調領域598を配置し、2次配置場所(Secondary Position)702では、図46(b)、(d)に示すように1個のウォブルデータユニット560〜571内の後半位置に変調領域598を配置する。
図46で示した1次配置場所(Primary Position)701と2次配置場所(Secondary Position)702の適応範囲すなわち、1次配置場所または2次配置場所が連続的に続く範囲を本実施形態では物理セグメントの範囲に規定している。すなわち、図49に示すように同一物理セグメント内での変調領域の配置パターンを(b)から(d)までの3種類(複数種類)持たせ、物理セグメントのタイプ識別情報721の情報から物理セグメント内での変調領域の配置パターンを図9のウォブル信号検出部135が識別すると、同一物理セグメント内の他の変調領域598の配置場所が事前に予測できる。その結果、次に来る変調領域検出の事前準備ができるので変調領域での信号検出(判別)精度を上げることができると言う効果がある。
図49(b)は、物理セグメント内のウォブルデータユニットの配置を示し、各枠内に記述された番号は同一物理セグメント内のウォブルデータユニット番号を示す。0番目のウォブルデータユニットは1段目に示すようにシンクフィールド711と呼び、このシンクフィールド内の変調領域にウォブルシンク領域が存在している。1番目から11番目のウォブルデータユニットをアドレスフィールド712と呼び、このアドレスフィールド712内の変調領域にアドレス情報が記録される。さらに、12番目から16番目のウォブルデータユニット内はウォブルパターンが全てNPWのユニティフィールド713になっている。
図49(b)、(c)、(d)に記載された“P”のマークはウォブルデータユニット内で変調領域が1次配置場所になっていることを示し、“S”のマークはウォブルデータユニット内で変調領域が2次配置場所になっていることを示している。“U”のマークはウォブルデータユニットがユニティフィールド713に含まれ、変調領域が存在しないことを示している。図49(b)に示した変調領域の配置パターンは物理セグメント内全てが1次配置場所(Primary position)になっていることを示し、図49(c)に示した変調領域の配置パターンは物理セグメント内全てが2次配置場所(Secondary position)になっていることを示す。図49(d)は同一物理セグメント内で1次配置場所と2次配置場所が混合されており、0番目から5番目のウォブルデータユニット内で変調領域が1次配置場所になり、6番目から11番目のウォブルデータユニット内で変調領域が2次配置場所になる。図49(d)のようにシンクフィールド711とアドレスフィールド712を合わせた領域に対して1次配置場所と2次配置場所を半々にすることで細かく隣接トラック間での変調領域の重なりを防止することができる。
図49に示すように、本実施形態では、追記形情報記憶媒体上における物理セグメント内の変調領域の配置場所が3種類存在している。具体的な追記形情報記憶媒体上での各半径位置での変調領域配置タイプの設定例について以下に説明を行う。基本的な考え方は、下記に示す通りである。
基本的な変調領域の配置場所のタイプ設定の目的は隣接トラック間での変調領域が重なることを防止するためにある。隣接する2トラック間での変調領域の配置状況を図82に示す。i番目のトラックの開始位置がn番目の物理セグメントと一致する場合を考える。追記形情報記憶媒体において1トラック内での円周に沿った方向での基準位置は任意に設定できるため、i番目のトラックにおいてn番目の物理セグメントの開始位置を基準位置(i番目のトラックの開始位置)と考える。ここでiとnというのは正数を表す。i番目の物理トラックはj個の物理セグメントから構成されており、端数値としてk個のウォブルデータユニットと、m個のウォブルが存在する場合を考える。ここにおいて、j、k、m も正数を意味する。もし、kとmの値が0でない場合には、n+j番目の物理セグメントはi番目のトラックとi+1番目のトラックにまたがって配置されている。i番目のトラックとi+1番目のトラック間での変調領域の配置関係は図82に示したmの値で決定される。上述したようにi番目のトラックにおいてn番目の物理セグメントの開始位置をi番目のトラックの開始位置(基準位置)と考え、図83(a)、(b)に示す状態ではi番目のトラック上は全て1次配置場所における変調領域94が設定される場合を考える。隣接トラック間での変調領域が重ならないように設定するためには、mが21以上かつ63未満の時に図83(a)に示すようにタイプ1の配置タイプが選ばれ、i+1番目のトラックでは1次配置場所における変調領域94が設定される。それ以外の場合では、図83(b)に示すようにタイプ2の配置タイプが選ばれ、i+1番目のトラックでは2次配置場所における変調領域95が設定される。
図84に示すタイプ3の配置タイプが選ばれる場合には、1個の物理セグメント内にタイプ1の配置タイプからタイプ2の配置タイプに移行される変化点が存在する(選択される)。タイプ3の配置タイプが選ばれる場合には、mとkの両方の値の条件により設定される。
タイプ3の配置タイプは、
1.kが6以上で12未満、かつmが0以上で21未満、あるいは
2.kが5以上で11未満であるとともに、mが63以上で84未満の場合
に選ばれる。
具体的な変調領域の配置タイプ選定方法を図85のフローチャートに示す。
変調領域の配置タイプの選定を開始すると(ST81)、まず始めにST82に示すように内周側の(図82〜図84におけるi番目の)トラック1周分のウォブル数 NW を見積もる。実際の1トラック分のウォブル数には端数(小数点以下の値)が現れるが、その実際の値に対して小数点1桁目の切り捨て処理を行いデシマル関数値に概算して“1トラック分のウォブル数”として整数値である NW の値を求める。次に図82で定義した jとk、m の値を計算する(ST83)。ここで、xをyで割ったときの余りの値を“ x mod y ”と定義する。そしてST83で行う j、k、m の値の計算を下記の各式を用いる。
(1) j ={ Nw − ( Nw mod 1428)}/1428
(2) m = Nw mod 84
(3) k ={( Nw − m )/84 }mod 17
次にST84に示すように、2トラック間での配置タイプを選択する。
具体的な配置タイプの条件を下記に示す。
条件(1)
21 ≦ m < 63 の場合、
2トラックに対して、2j個の物理セグメントがタイプ1の変調領域配置タイプ(図49(b))として選定される。
条件(2) 0 ≦ k < 6 および 0 ≦ m < 21 であるか、または
0 ≦ k < 5 および 63 ≦ m < 84 の場合には
2トラックに対して、j個の物理セグメントがタイプ1の変調領域配置タイプ(図49(b))として選定され、j個の物理セグメントがタイプ2の変調領域配置タイプ(図49(c))として選択される。
条件(3)
6 ≦ k < 12 および 0 ≦ m < 21 であるか、または
5 ≦ k < 11 および 63 ≦ m < 84 の場合、
2トラックに対して、j個の物理セグメントがタイプ1の変調領域配置タイプ(図49(b))として選定され、1個の物理セグメントがタイプ3の変調領域配置タイプ(図49(d))として選択されるとともに、j個の物理セグメントがタイプ2の変調領域配置タイプ(図49(c))として選択される。
条件(4)
12 ≦ k < 17 および 0 ≦ m < 21 であるか、または
11 ≦ k < 17 および 63 ≦ m < 84 の場合には
2トラックに対して、j+1個の物理セグメントがタイプ1の変調領域配置タイプ(図49(b))として選定され、j+1個の物理セグメントがタイプ2の変調領域配置タイプ(図49(c))として選択される。
さらに上記のST82からST84の処理を全トラック行い、全トラック分の選択が終了した(ST85)後、変調領域の配置タイプの選定が終了(ST86)する。
以上説明したウォブル変調によりアドレス情報が事前に記録されている物理セグメントもしくは物理セグメントブロックに対して前述したデータセグメントデータを記録する方法について説明する。書替え形情報記憶媒体および追記形情報記憶媒体いずれも連続してデータを記録する単位としてレコーディングクラスタ単位でデータを記録する。図50にこのレコーディングクラスタ内のレイアウトを示す。レコーディングクラスタ540、542内はデータセグメントが1個以上(整数個)連続して繋がり、その始めか終わりに拡張ガードフィールド528、529が設定されている。レコーディングクラスタ540、542単位で新たにデータを追記または書き替えした時に隣接したレコーディングクラスタとの間に隙間ができないように、隣接したレコーディングクラスタとの間に物理的にオーバーラップさせて一部重ね書きさせるために拡張ガードフィールド528、529がレコーディングクラスタ540、542内に設定される。レコーディングクラスタ540、542内に設定される拡張ガードフィールド528、529の位置として図50(a)の実施形態ではレコーディングクラスタ540の最後に拡張ガードフィールド528を配置している。
この方法を用いた場合には、図51(a)に示すポストアンブル領域526の後ろに拡張ガードフィールド528が来るので、特に書替え形情報記憶媒体では書替え時に誤ってポストアンブル領域526を破壊することはなく、書替え時のポストアンブル領域526の保護が行え、データ再生時のポストアンブル領域526を用いた位置検出の信頼性が確保できる。
他の実施形態として、図50(b)のようにレコーディングクラスタ542の最初に拡張ガードフィールド529を配置することもできる。この場合には、図50(b)と図51を組み合わせて分かるようにVFO領域522の直前に拡張ガードフィールド529が来るので、書替えまたは追記した時にVFO領域522を充分長く取ることができるためデータフィールド525再生時の基準クロックに関するPLL引き込み時間を長く取れ、データフィールド525内に記録されたデータの再生信頼性を向上させることができる。
このように書き替え単位を表すレコーディングクラスタが1個以上のデータセグメントから構成される構造にすることで、少ないデータ量を何度も書き替えることの多いPCデータ(PCファイル)と多量のデータを一度に連続して記録するAVデータ(AVファイル)の同一情報記憶媒体への混在記録処理を容易にできると言う効果が生まれる。すなわち、パーソナルコンピュータ用に使われるデータは比較的少量のデータを何度も書き替える場合が多い。
従って、書替えまたは追記のデータ単位を極力小さく設定するとPCデータに適した記録方法になる。本実施形態では図32に示すように32物理セクタからECCブロックが構成されので、ECCブロックを1個のみ含むデータセグメント単位で書き替えまたは追記を行うことが効率良く書替えまたは追記を行う最小の単位となる。すなわち、書替え単位または追記単位を表す記録用クラスタ内に1個以上のデータセグメントが含まれる本実施形態における構造がPCデータ(PCファイル)に適した記録構造となる。
AV(Audio Video)データでは、非常に多量な映像情報や音声情報が途中で途切れることなく連続的に記録される必要がある。この場合、連続的に記録されるデータは1個のレコーディングクラスタとしてまとめて記録される。AVデータ記録時に1個のレコーディングクラスタを構成するデータセグメント毎にランダムシフト量やデータセグメント内の構造、データセグメントの属性等を切り替えると、切り替わり処理の時間が掛かり、連続記録処理が難しくなる。
本実施形態では、図50に示すように同一形式(属性やランダムシフト量を変えず、データセグメント間に特定情報を挿入することなく)のデータセグメントを連続して並べてレコーディングクラスタを構成することで多量のデータを連続して記録するAVデータ記録に適した記録フォーマットを提供できるだけでなく、レコーディングクラスタ内の構造の簡素化を果たして記録制御回路と再生検出回路の簡素化を達成して情報記録再生装置または情報再生装置の低価格化を可能とする。
図50に示されたレコーディングクラスタ540内の(拡張ガードフィールド528を除いた)データセグメントが連続して並んだデータ構造は図41(b)に示した再生専用情報記憶媒体および図41(c)に示した追記形情報記憶媒体と全く同じ構造をしている。このように再生専用形/追記形/書替え形に依らず全ての情報記憶媒体で共通のデータ構造になっているため、媒体の互換性が確保され、互換性が確保された情報記録再生装置または情報再生装置の検出回路の兼用化が図れ、高い再生信頼性が確保できるとともに低価格化の実現が可能となる。
図50の構造を取ることで必然的に同一レコーディングクラスタ内では全てのデータセグメントのランダムシフト量が一致する。書替え形情報記憶媒体ではランダムシフトさせてレコーディングクラスタを記録する。本実施形態では同一レコーディングクラスタ540内では全てのデータセグメントのランダムシフト量が一致しているので同一レコーディングクラスタ540内で異なるデータセグメントを跨って再生した場合にVFO領域(図51の522)での同期合わせ(位相の設定し直し)が不要となり連続再生時の再生検出回路の簡素化と再生検出の高い信頼性確保が可能となる。
書替え形情報記憶媒体に記録する書替え可能なデータ記録方法を図51に示す。
以下に書替え形情報記憶媒体を中心に説明するが、追記形情報記憶媒体に対する追記方法も基本的に同じ方法を取っている。本実施形態の書替え形情報記憶媒体におけるレコーディングクラスタ内のレイアウトは、図50(a)のレイアウトを取る例を使って説明するが、本実施形態においてはそれに限らず書替え形情報記憶媒体に対して図50(b)に示したレイアウトを採用しても良い。
書替え可能なデータに関する書替えは、図51(b)および(e)に示すレコーディングクラスタ540、541単位で行われる。1個の記録用クラスタは、後述するように、1個以上のデータセグメント529〜531と、最後に配置される拡張ガードフィールド528から構成される。すなわち、1個の記録用クラスタ531の開始はデータセグメント531の開始位置に一致し、VFO領域522から始まる。
複数のデータセグメント529、530を連続して記録する場合には、図51(b)、(c)に示すように同一のレコーディングクラスタ531内に複数のデータセグメント529、530が連続して配置されるとともに、データセグメント529の最後に存在するバッファ領域547と次のデータセグメントの最初に存在するVFO領域532が連続してつながっているため両者間の(記録時の記録用基準クロックの)位相が一致している。連続記録が終了した時にはレコーディングクラスタ540の最後位置に拡張ガード領域528を配置する。この拡張ガード領域528のデータサイズは変調前のデータとして24データバイト分のサイズを持っている。
図51(a)と図51(c)の対応から分かるように書替え形のガード領域461、462の中にポストアンブル領域546、536、エキストラ領域544、534、バッファ領域547、537、VFO領域532、522、プリシンク領域533、523が含まれ、連続記録終了場所に限り拡張ガードフィールド528が配置される。書替え時の重複箇所541で拡張ガード領域528と後側のVFO領域522が一部重複するように書き換えまたは追記を行う所に本実施形態の特徴があるそのように一部重複させて書替えまたは追記することでレコーディングクラスタ540、541間に隙間(記録マークが形成されない領域)の発生を防止し、片面2記録層の記録可能な情報記憶媒体における層間クロストークを除去することで安定した再生信号を検出できる。
本実施形態における1個のデータセグメント内の書替え可能なデータサイズは、
67+4+77376+2+4+16=77469(データバイト)
となる。1個のウォブルデータユニット560は、
6+4+6+68=84(ウォブル)
であるから、17個のウォブルデータユニットが1個の物理セグメント550となる。
7個の物理セグメント550〜556の長さが1個のデータセグメント531の長さに一致しているので1個のデータセグメント531の長さ内には、
84×17×7=9996(ウォブル)
が配置される。
従って、上記の式から1個のウォブルに対して、
77496÷9996=7.75(データバイト/ウォブル)
が対応する。
図52に示すように、物理セグメントの先頭位置から24ウォブル以降に、次のVFO領域522と拡張ガードフィールド528の重なり部分が来るが物理セグメント550の先頭から16ウォブルまではウォブルシンク領域580となるが、それ以降68ウォブル分は無変調領域590内になる。したがって24ウォブル以降の次のVFO領域522と拡張ガードフィールド528が重なる部分は無変調領域590内となる。
このように、物理セグメントの先頭位置24ウォブル以降にデータセグメントの先頭位置が来るようにすることで重複箇所が無変調領域590内になるだけでなくウォブルシンク領域580の検出時間と記録処理の準備時間が相応に取れるので、安定でかつ精度の良い記録処理を保証できる。
本実施形態における書替え形情報記憶媒体の記録膜は、相変化記録膜を用いている。
相変化記録膜では、書き替え開始/終了位置近傍で記録膜の劣化が始まるので、同じ位置での記録開始/記録終了を繰り返すと記録膜の劣化による書き替え回数の制限が発生する。本実施形態では上記問題を軽減するため、書き替え時には図52に示すようにJm+1/12データバイト分ずらし、ランダムに記録開始位置をずらしている。
図51(c)、(d)では、基本概念を説明するため拡張ガードフィールド528の先頭位置とVFO領域522の先頭位置が一致しているが、本実施形態では、厳密には、図52のように、VFO領域522の先頭位置がランダムにずれている。
現行の書替え形情報記憶媒体であるDVD−RAMデイスクでも、記録膜として相変化記録膜を使用し、書替え回数の向上のために、ランダムに記録開始/終了位置をずらしている。現行のDVD−RAMディスクでのランダムなずらしを行った時の最大ずらし量範囲は8データバイトに設定している。現行のDVD−RAMディスクでの(ディスクに記録される変調後のデータとして)チャネルビット長は平均0.143μmに設定されている。本実施形態の書替え形情報記憶媒体実施形態ではチャネルビットの平均長さは表7から(0.087+0.093)÷2=0.090(μm)となる。
物理的なずらし範囲の長さを現行のDVD−RAMディスクに合わせた場合には、本実施形態でのランダムなずらし範囲として最低限必要な長さは上記の値を利用して、
8バイト×(0.143μm÷0.090μm)=12.7バイト
となる。
本実施形態では、再生信号検出処理の容易性を確保するため、ランダムなずらし量の単位を変調後の“チャネルビット”に合わせた。
本実施形態では、変調に8ビットを12ビットに変換するETM変調(Eight to Twelve modulation)を用いているので、ランダムなずらし量を表す数式表現として、データバイトを基準とし、
Jm/12(データバイト)
で表す。
Jmの取り得る値としては、上式の値を用いて、
12.7×12=152.4
であるから、Jmは“0”から“152”となる。
以上の理由から、上式を満足する範囲で有ればランダムなずらしの範囲長さは現行DVD−RAMディスクと一致し、現行DVD−RAMディスクと同様な書き替え回数を保証できる。
本実施形態では、現行以上の書き替え回数を確保するため、最低限必要な長さに対してわずかにマージンを持たせ、
ランダムなずらし範囲の長さを14(データバイト)
に設定している。
これらの式から、
14×12=168
であり、Jmの取り得る値は、“0”〜“167”となる。
上記のようにランダムシフト量をJm/12(0≦Jm≦154)より大きな範囲とすることで、ランダムシフト量に対する物理的な範囲の長さが現行DVD−RAMと一致するため、現行DVD−RAMと同様な繰り返し記録回数を保証できる。
図51において記録用クラスタ540内でのバッファ領域547とVFO領域532の長さは一定となっている。図50(a)からも明らかなように同一の記録用クラスタ540内では全てのデータセグメント529、530のランダムずらし量Jmは至る所同じ値になっている。内部に多量のデータセグメントを含む1個の記録用クラスタ540を連続して記録する場合には、記録位置をウォブルからモニターしている。
すなわち、図47に示すウォブルシンク領域580の位置検出をしたり、図46の無変調領域592、593内ではウォブルの数を数えながら情報記憶媒体上の記録位置を記録と同時に確認している。この時に、ウォブルのカウントミスや情報記憶媒体を回転させている回転モータの回転ムラによりウォブルスリップ(1ウォブル周期分ずれた位置に記録すること)が生じ、情報記憶媒体上の記録位置がずれることが希にある。
本実施形態の情報記憶媒体では、上記のように生じた記録位置ずれが検出された場合には、図51の書替え形のガード領域461内で調整し、記録タイミングを修正する。ここでは、Hフォーマットに付いて説明しているがこの基本的な考え方は後述するようにBフォーマットでも採用されている。
図51においてポストアンブル領域546、エキストラ領域544、プリシンク領域533ではビット欠落やビット重複が許容できない重要な情報が記録されるが、バッファ領域547、VFO領域532では特定パターンの繰り返しになっているため、この繰り返し境界位置を確保している限りでは1パターンのみの欠落や重複が許容される。従って、本実施形態では、ガード領域461の中で、特にバッファ領域547、またはVFO領域532で調整し、記録タイミングを修正する。
図52に示すように本実施形態では、位置設定の基準となる実際のスタートポイント位置はウォブル振幅“0”の(ウォブルの中心)位置と一致するように設定される。
しかし、ウォブルの位置検出精度は低いので本実施形態では図52内の“±1max”と記載されているように、実際のスタートポイント位置は最大、
±1データバイト”までのずれ量
を許容している。
図51および図52において、データセグメント530でのランダムシフト量をJm(上述したように記録用クラスタ540内は全てのデータセグメント529のランダムシフト量は一致する)とし、その後に、追記するデータセグメント531のランダムシフト量をJm+1とする。
上記式に示すJmとJm+1の取り得る値として例えば、中間値を取り、Jm=Jm+1=84であり、実際のスタートポイントの位置精度が充分高い場合には図51に示すように拡張ガードフィールド528の開始位置とVFO領域522の開始位置が一致する。
これに対してデータセグメント530が最大限後位置に記録され、後で追記または書き替えられるデータセグメント531が最大限前位置に記録された場合にはVFO領域522の先頭位置がバッファ領域537内へ最大15データバイトまで入り込むことがある。
バッファ領域537の直前のエキストラ領域534には特定の重要情報が記録されている。従って、本実施形態において、バッファ領域537の長さは、15データバイト以上必要となる。
図51に示した実施形態では、1データバイトの余裕を加味し、バッファ領域537のデータサイズを16データバイトに設定している。
ランダムシフトの結果、拡張ガード領域528とVFO領域522の間に隙間が生じると片面2記録層構造を採用した場合にその隙間による再生時の層間クロストークが発生する。そのため、ランダムシフトを行っても必ず拡張ガードフィールド528とVFO領域522の一部が重なり、隙間が発生しない工夫がされている。
従って、本実施形態において拡張ガードフィールド528の長さは15データバイト以上に設定する必要がある。後続するVFO領域522は、71データバイトと充分に長く取ってあるので、拡張ガードフィールド528とVFO領域522の重なり領域が、多少広くなっても信号再生時には、支障がない(重ならないVFO領域522で、再生用基準クロックの同期を取る時間が充分確保されるため)。
これにより、拡張ガードフィールド528は15データバイトよりもより大きな値に設定することが可能である。連続記録時に希にウォブルスリップが発生し、1ウォブル周期分記録位置がずれる場合があることを既に説明した。
1ウォブル周期は、7.75(≒8)データバイトに相当するので本実施形態では、
拡張ガードフィールド528の長さを(15+8=)23データバイト以上
に設定している。
図51に示した実施形態では、バッファ領域537と同様に、1データバイトの余裕を加味し、拡張ガードフィールド528の長さを24データバイトに設定している。
図51(e)においては、記録用クラスタ541の記録開始位置を正確に設定する必要がある。本実施形態の情報記録再生装置では、書替え形または追記形情報記憶媒体に予め記録されたウォブル信号を用いてこの記録開始位置を検出する。図46に示したように、ウォブルシンク領域580以外は、全て4ウォブル単位でパターンがNPWからIPWに変化している。
それに比べてウォブルシンク領域580では、ウォブルの切り替わり単位が部分的に4ウォブルからずれているため、ウォブルシンク領域580が最も位置検出し易い。
そのため、本実施形態の情報記録再生装置では、ウォブルシンク領域580位置を検出後、記録処理の準備を行い、記録を開始する。なお、レコーディングクラスタ541の開始位置は、ウォブルシンク領域580の直後の無変調領域590の中に来る必要がある。
図52に、その内容を示す。
物理セグメント(Physical segment)の切り替わり直後にウォブルシンク領域580が配置されている。ウォブルシンク領域580の長さは、16ウォブル周期分である。さらに、そのウォブルシンク領域580を検出後、記録処理の準備にマージンを見越して、8ウォブル周期分を確保している。
従って、図52に示すように、レコーディングクラスタ541の先頭位置に存在するVFO領域522の先頭位置がランダムシフトを考慮していも物理セグメントの切り替わり目位置から24ウォブル以上、後方に配置される必要がある。
図51に示すように、書替え時の重複箇所541では何度も記録処理が行われる。
書替えを繰り返すとウォブルグルーブまたはウォブルランドの物理的な形状が変化(劣化)し、そこからのウォブル再生信号品質が低下する。
本実施形態では、図51(f)に示すように書替え時あるいは追記時の重複箇所541がウォブルシンク領域580やウォブルアドレス領域586内に来るのを避け、無変調領域590内に記録されるように工夫している。
無変調領域590は、一定のウォブルパターン(NPW)が繰り返されるだけなので、部分的にウォブル再生信号品質が劣化しても前後のウォブル再生信号を利用して補間できる。
このように、書替え時あるいは追記時の重複箇所541位置を、無変調領域590内に位置させるこように設定したため、ウォブルシンク領域580またはウォブルアドレス領域586内での形状劣化によるウォブル再生信号品質の劣化を防止し、ウォブルアドレス情報610からの安定なウォブル検出信号を保証できる。
次に、追記形情報記憶媒体上に記録される追記形データの追記方法の実施形態を図53に示す。物理セグメントブロックの境界位置から24ウォブル後方の位置が書き込み開始ポイントになっている。ここから新たに追記されるデータは71データバイト分のVFO領域を形成した後、ECCブロック内のデータ領域(データフィールド)が記録される。この書き込み開始ポイントと直前に記録した記録データのバッファ領域537の終了位置が一致し、それより8データバイト分の長さだけ拡張ガードフィールド528が形成された後ろが追記データの記録終了位置(書き込み終了ポイント)になる。従って、データを追記した場合には、直前に記録されている拡張ガードフィールド529と新たに追記するVFO領域の部分で8データバイト分だけ重複記録される。
図65(a)を用いて本実施形態における、検出信号(とその信号検出回路)を説明する。半導体レーザ1121から出射されたレーザ光1117はコリメーターレンズ1122を経て平行光となる。その後ビームスプリッター1123を通過した後、対物レンズ1128により情報記憶媒体1101のプリグルーブ領域1111上に集光される。
情報記憶媒体1101のプリグルーブ領域1111で反射された光は、再度対物レンズ1128を通過後ビームスプリッター1123で反射され、集光レンズ1124を通り光検出器1125上に照射される。
光検出器1125は、光検出セル1125−1と光検出セル1125−2を有しており、光検出セル1125−1からはI1の信号が検出されるとともに、光検出セル1125−2からはI2の信号が検出される。
図57に示した検出信号(とその検出回路)では、I1とI2の差分を取ってトラックずれ検出信号とするが、図65に示す検出信号(とその信号検出回路)では、I1とI2の信号に対して加算器1126で加算し(I1+I2)の信号を検出する。図65(b)に(I1+I2)で検出された信号波形を示す。図65(b)は、図65(a)に示した光学ヘッドの対物レンズ1128による集光スポットが、情報記憶媒体1101上の各領域に照射された時の再生信号の検出信号レベルを示している。
図23(c)に示すように、本実施形態の追記形情報記憶媒体においてシステムリードイン領域SYLDI内はエンボスピット領域211となっており、至るところにエンボスピットが形成されている。そのためシステムリードイン領域SYLDI内では、図65(b)に示すようなエンボスピットからの再生信号が得られる。ここで、システムリードイン領域SYLDI内での最も高い検出信号レベルをI11HPと定義する。
本実施形態では、“光反射率”を以下のように光学ヘッドを用いて検出された検出信号レベルを用いて定義する。
まず、情報記憶媒体1101のプリピットやプリグルーブ等の微少な凹凸形状のない、特定領域に入射光量IOの平行レーザ光を照射して、情報記憶媒体1101から反射された平行レーザ光の反射光量IRを測定してRs=IR/IOの値を、光反射率Rsの基準として利用する。このように光学ヘッドを使用せずに測定した値をキャリブレートされた光反射率Rsと定義する。
次に、その所定領域での光学ヘッドを用いて検出された検出信号レベルを反射光パワーDsとし、(Rs/Ds)の値を情報記憶媒体1101の各位置で、光学ヘッドを用いて検出された検出信号レベルから“光反射率”に換算するための換算係数として利用する。すなわち図65(a)に示した光学ヘッドで上記所定領域を再生した時に加算器1126から出力される検出信号レベルを反射光パワーDsとして測定する。例えば光学ヘッドがシステムリードイン領域SYLDI内に移動し、そこで得られるに加算器1126の検出信号レベルの内の最も検出信号レベルの高いレベルI11HPを測定し、(Rs/Ds)×I11HPの値をシステムリードイン領域SYLDIにおける反射率としてI11HPと定義する。
本実施形態における、“H→L”記録膜のシステムリードイン領域SYLDIの光反射率は、16%以上および、32%以下になるように情報記憶媒体の反射率を規定していることを特徴とする。
図23(c)に示すようにエンボス領域211で形成されたシステムリードイン領域SYLDIに隣接して鏡面210で形成されたコネクション領域CNAが存在する。
図65(a)で示した光学ヘッドの対物レンズ1128により集光された集光スポットが前記コネクション領域CNAに移動したときの光反射率はエンボスピットがないため、至る所で均一な検出信号レベルになる。
次に、コネクション領域CNAに隣接してデータリードイン領域DTLDIが存在するが、このデータリードイン領域DTLDI、およびデータ領域DTAさらにデータリードアウト領域DTLDOのプリグルーブ領域214(図23(c))にはプリグルーブが存在ている。このプリグルーブ領域214上で、トラックループONをかけたときの検出信号レベルは図65(b)に示す(Iot)grooveのレベルになる。
このプリグルーブ上に記録マークを形成した場合には、“H→L”記録膜においては、記録マーク部分で光反射量が低下するため、図65(b)に示すように記録膜の検出信号レベルが(Iot)grooveのレベルよりも低下する。記録マークが記録されている領域の中での最も検出信号レベルの高いところをI11HMと定義する。このグルーブ領域214における光反射率も前記と同様(Rs/Ds)×I11HMにより定義される。
本実施形態では、“H→L”記録膜における記録マークが形成されている場所の光反射率は14%以上および28%以下になるように規定している。さらに本実施形態における“H→L”記録膜での未記録領域での光反射量(Iot)grooveのシステムリードイン領域SYLDIにおける反射率I11HPに対する比率(Iot)groove/I11HPは、0.5以上1.0以下の範囲に入るように高いレベルに規定している。
本実施形態では、図6(b)および(c)に示すようにグルーブ領域11の幅Wgを、ランド領域12の幅Wlよりも狭くすることで、図65(b)に示すように、(Iot)grooveのレベルを高くしたことを特徴とする。また、特に“H→L”記録膜においては、図6(b)または(c)に示すように記録層3−2の厚みDgを厚くすることによりグルーブとランド領域の段差量Hrを小さくし、それにより(Iot)grooveのレベルを高め、(Iot)groove/I11HPの値を、50%以上確保している。
これにより、グルーブ領域11内に記録された記録マークからの光反射量I11HMが大きくなり、グルーブ領域1111上の記録マークからの検出信号振幅の大きさが大きくなる。
次に、図66を用い、“L→H”記録膜における検出信号レベルを説明する。
図66(a)に示す光学ヘッド構造と検出信号(信号検出方法と検出回路)は、図65(a)に示すものと全く同じである。“L→H”記録膜におけるシステムリードイン領域SYLDIでの光反射量は、“H→L”記録膜と同様(Rs/Ds)×I11HPで定義される。本実施形態において、“L→H”記録膜におけるシステムリードイン領域SYLDIでの光反射率は14%以上28%以下に規定している。
“L→H”記録膜では、図6(b)、(c)に示すプリグルーブ領域11とランド領域12の記録膜3−2の厚みDg、Dlを相対的に薄くしている。
そのため、未記録領域でのトラックループON時のプリグルーブ領域214での未記録領域の検出信号レベル(Iot)grooveは、図65に示した“H→L”記録膜よりも低くなっている。
その結果、本実施形態ではデータリードイン領域DTLDIまたはデータ領域DTA、データリードアウトDTLDOでの未記録位置でのプリグルーブ領域214上での光反射量(Iot)grooveの比率(Iot)groove/I11HPを40%以上80%以下の範囲内に入るよう“H→L”記録膜よりも低めに設定している。
“L→H”記録膜においては、記録マーク内での光反射率が未記録領域の反射率よりも増加するため、図66(b)に示すような再生信号波形を有する。
図66(b)においても、光反射量は、記録マークからの再生信号の検出信号レベルの最も高いところ(I11HM)を用い、(Rs/Ds)×I11HMにより反射率を規定している。本実施形態において“L→H”記録膜での反射率は14%以上28%以下にしている。
図65および図66に示した“L→H”記録膜と“H→L”記録膜における検出信号レベルをまとめて図67に示す。
本実施形態において、システムリードイン領域SYLDI内での光反射率範囲が“L→H”記録膜と“H→L”記録膜で一部重なるように規定したことを特徴とする。
図67のシステムリードイン領域SYLDI内の“H→L”記録膜と“L→H”記録膜間での光反射率の重なり部分αが存在し、本実施形態では、この領域の光反射率範囲は、16%以上28%以下である。
本実施形態では、このシステムリードイン領域SYLDIにおける“H→L”記録膜と“L→H”記録膜の反射率範囲の重なる方法として、各記録層3−2の光学特性を制御することによりシステムリードイン領域SYLDI内での“H→L”記録膜と“L→H”記録膜の反射率の重なり部分を作っている。
さらに、本実施形態では、図67に示すようにデータリードイン領域DTLDIまたはデータ領域DTA、データリードアウト領域DTLDOでのトラックループON時の光反射率範囲の重なり部分βも持っている。
この重なり部分については、図65(b)に示すように、“H→L”記録膜における未記録領域における(Iot)grooveレベルを図66に示す“L→H”記録膜における未記録領域の検出信号レベル(Iot)grooveの信号レベルよりも高く設定することで、両者の光反射率の重なり部分βが存在するようにしていることを特徴とする。
具体的には、図6に示すように、記録層3−2の膜厚Dg、Dlの厚みを“L→H”記録膜よりも“H→L”記録膜のほうが厚くなるように設定している。その結果、“L→H”記録膜よりも“H→L”記録膜での光反射層4−2での段差Hrが小さくなり、その結果“H→L”記録膜における未記録領域の検出信号レベル(Iot)grooveが高くなる。
本実施形態では、図67に示すようにトラックループON時での光反射率範囲は“H→L”記録膜と“L→H”記録膜が一致しているばかりでなく、データ領域DTA内等での“H→L”記録膜と“L→H”記録膜間での光反射率の重なり部分βを最大にしている。
さらに、本実施形態では、システムリードイン領域内SYLDIでの光反射率が重なる部分αと、データ領域DTA内での光反射率が重なる部分βとの間の光反射率が重なる部分γが存在するようにしている。本実施形態の情報記録再生装置もしくは情報再生装置において、図11または図13に示すように、同一のプリアンプ回路304を用い、システムリードイン領域SYLDIでの再生信号と、データ領域DTAでの再生信号を検出している。プリアンプ304で安定に検出できる検出信号の最大値レベルとして光反射率が5%から50%の範囲までの場合、安定に検出できる。
従って、全ての光反射率の範囲をプリアンプ304の特性に合わせ5%から50%の範囲になるように設定している。その結果、1個のプリアンプを用いシステムリードイン領域SYLDIと、データリード領域DTAでの信号検出を兼用できるため、情報記録再生装置、または情報再生装置の低コスト化を図ることができる。
本実施形態において、図67に示すようにシステムリードイン領域SYLDIでの光反射率の重なる部分αとデータ領域DTA内での光反射率が重なる部分βとの間の光反射率が重なる部分γを大きくし、より安定にプリアンプ304での信号が検出できるようにしている。
本実施形態では、図6(b)または(c)に示すように、プリグルーブ領域11の幅Wgをランド領域12の幅Wlより広げ、データ領域DTA内等の未記録領域でのグルーブからの検出信号レベル(Iot)grooveを低くすることでαとβとの間の光反射率の重なり部分γを広くしている。
次に、に図22、図23、表4に示した“H→L”記録膜と“L→H”記録膜における光反射率に対する他の実施例を以下に説明する。図22に対応した他の実施例の光反射率が、図67であり、図23に示した実施例に対する他の実施例が図65と図66である。
図22に示したように、本実施形態における追記形情報記憶媒体において、内周側から順にバーストカッティング領域BCA、システムリードイン領域SYLDI、データリード領域DTLDIが配置されている。
前記バーストカッティング領域BCAおよびシステムリードイン領域SYLDI上に記録層を形成するとともに、記録層の厚みをバーストカッティング領域BCAおよびシステムリードイン領域SYLDI内で均一にすることにより、バーストカッティング領域BCA内に記録されたデータおよびシステムリードイン領域SYLDIに記録されたデータからの信号再生安定性を保証している。
以上説明したように、本実施形態における追記形情報記憶媒体においては、内周側から順に、バーストカッティング領域BCA、システムリードイン領域SYLDI、データリード領域DTLDIが配置されている。
バーストカッティング領域BCAおよびシステムリードイン領域SYLDI上に記録層を形成するとともに、記録層の厚みをバーストカッティング領域BCAおよびシステムリードイン領域SYLDI内で均一にすることにより、バーストカッティング領域BCA内に記録されたデータおよびシステムリードイン領域SYLDIに記録されたデータからの信号再生安定性を保証している。
記録層形成領域の最内周直径値Φbは、バーストカッティング領域BCAの最内周直径ΦBCAinよりも小さく(ΦBCAin > Φm)している。換言すると、バーストカッティング領域BCAの最内周直径は、 ΦBCAin = Φm + α で表すことができる。
これにより、成形機の吸盤跡の外径部を結んだ最外周直径値Φbに対し、記録層形成領域の最内周直径値Φmを大きく設定することにより、記録層形成時の吸盤跡に起因して、記録層の塗布ムラが発生することを除去している。
なお、この発明は、前記各実施の形態に限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々な変形もしくは変更が可能である。また、各実施の形態は、可能な限り適宜組み合わせて、もしくは一部を削除して実施されてもよく、その場合は、組み合わせもしくは削除に起因したさまざまな効果が得られる。