JP2012107022A - 新規化合物およびその標的に関する組成物および方法 - Google Patents

新規化合物およびその標的に関する組成物および方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新規化学化合物、その標的を発見する方法、およびそれらの治療的用途に関する。
【解決手段】ベンゾジアゼピン誘導体、ならびに、プログラム細胞死プロセスの誤調節、自己免疫、炎症、および過増殖などに関連した多くの状態を治療するための治療的物質としてベンゾジアゼピン誘導体を使用する方法を提供する。研究、化合物スクリーニング、および診断に使用できる、新規化合物の提供につながる。これらの新規化合物の使用、ならびに特定の生物学的応答を誘発する公知の化合物(例えば、特定の標的分子に結合するおよび/または特定の細胞的事象を引き起こす化合物)の使用も可能となる。
【選択図】なし

Description

発明の技術分野
本発明は、新規化学化合物、それらの発見法、およびそれらの治療的用途に関する。特に本発明は、ベンゾジアゼピン誘導体および関連化合物、ならびにプログラムされた細胞死、自己免疫、炎症および過増殖などの過程の誤調節に関連した多くの状態を治療するために、ベンゾジアゼピン誘導体および関連化合物を治療的物質として使用する方法を提供する。
なお、本PCT出願は、米国特許出願第10/427,212号(出願日2003年5月1日)および米国特許出願第10/795,535号(出願日2004年3月8日)の優先権を主張するものであり、後者の出願は米国特許出願第10/634,114号(出願日2003年8月4日)の一部継続出願であり、前記出願は米国特許出願第10/427,211号(出願日2003年5月1日)の一部継続出願である。前記の各出願は参照として具体的に本明細書に組み入れられる。
また、本発明は一部がNIH補助金GM46831およびAI47450で支援された。米国政府は本発明に権利を有しうる。
発明の背景
多細胞生物は、細胞数の精密な制御を行っている。細胞増殖と細胞死の間の平衡は、このホメオスタシスを実現している。細胞死は、ネクローシスを介して、またはアポトーシスとして知られている細胞自死型を通して、ほぼ全ての種類の脊椎動物細胞において生じる。アポトーシスは、共通の遺伝的にプログラムされた死の機構に携わる、様々な細胞外および細胞内シグナルにより引き金を引かれる。
多細胞生物は、損傷されたまたは不必要な細胞に、その生物の利益のためにそれらを破壊することを指示するために、アポトーシスを使用する。従って、アポトーシス過程の制御は、例えば、脳内の神経シナプスの形成と同じような、余剰な相互連結(interconnecting)組織のアポトーシスによる制御された除去を必要とする胎児の指およびつま先の発生のように、通常の発生にとって非常に重要である。同様に制御されたアポトーシスは、月経開始時の子宮の内層(子宮内膜)の剥脱(sloughing)にも寄与している。アポトーシスは、組織造形(sculpting)および正常細胞維持において重要な役割を果たしている一方で、これは生物の良好な生存を脅かす細胞および侵略者(例えばウイルス)に対する第一の防御でもある。
多くの疾患が、細胞死の過程の調節不良に関連していることは驚くことではない。異常なアポトーシス調節と、様々な新生物疾患、自己免疫疾患およびウイルス疾患の病因(pathenogenicity)の間の因果関係の実験モデルが確立された。例えば、細胞媒介性免疫応答において、エフェクター細胞(例えば、細胞傷害性Tリンパ球「CTL」)は、感染した細胞がアポトーシスを受けるのを誘導することにより、ウイルス感染した細胞を破壊する。この生物は引き続き、最早エフェクター細胞が必要でなくなった時点で、エフェクター細胞を破壊するためにアポトーシス過程に頼る。自己免疫は、通常アポトーシスを誘導するCTLにより、互いにおよびそれら自身でさえ、妨害される。この過程の欠損は、エリテマトーデスおよび慢性関節リウマチのような様々な自己免疫疾患に関連している。
多細胞生物は、損傷された核酸(例えばDNA)を伴う細胞に、癌性となる前にそれら自身を破壊することを指示するためにも、アポトーシスを使用する。一部の癌を引き起こすウイルスは、正常なアポトーシス過程を中止するように感染した(形質転換された)細胞を再プログラムすることにより、この防御手段(safeguard)を突破する。例えば、いくつかのヒトパピローマウイルス(HPV)は、p53アポトーシスプロモーターを失活するタンパク質(E6)を産生することにより形質転換された細胞のアポトーシス除去を抑制することにより、子宮頚癌を引き起こすことに関連している。同様に単核細胞症およびバーキットリンパ腫の原因物質であるエプスタインバーウイルス(EBV)は、感染した細胞を、異常な細胞の通常のアポトーシス除去を妨害するようなタンパク質を産生するように再プログラムし、その結果癌細胞の増殖およびその生物全体への拡散をもたらす。
更に他のウイルスは、癌発生を直接もたらすことはせずに、細胞のアポトーシス機構を破壊的に操作する。例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した個体における免疫系の破壊は感染CD4+ T細胞(100,000個中約1個)が、非感染姉妹細胞にアポトーシスを受けることを指示することを通じて進行すると考えられる。
非ウイルス手段により生じる一部の癌も、アポトーシスによる破壊を回避するための機構を生じている。例えば、骨髄腫細胞は、Apaf-1をコードしている遺伝子の発現を阻害することにより、アポトーシスを回避する。別の癌細胞、特に肺癌および結腸癌の細胞は、異常な細胞のCTLが媒介したクリアランスの開始を阻害する可溶性デコイ分子を高レベル分泌する。アポトーシス機構の誤調節は、様々な変性状態および血管疾患にも関連している。
アポトーシス過程およびその細胞機構の制御された調節は、多細胞生物の生存にとって死活に関わることは明らかである。典型的には、アポトーシス発生を被ることを指示された細胞において生じる生化学的変化は、一連の進行で生じる。しかし先に示したように、アポトーシス調節の欠損は、生物において重篤な有害作用を引き起こしうる。
異常な細胞(例えば、癌細胞)においてアポトーシス機構の調節を制御および回復する様々な試みがある。例えば、異常な細胞が増殖する前にこれらを破壊するための細胞毒性物質を開発するために、多くの研究が行われている。細胞毒性物質はそれ自身、ヒトおよび動物の両方の健康にとって広範な利用性があり、かつほぼ全ての型の癌および過増殖性自己免疫障害、例えばエリテマトーデスおよび慢性関節リウマチなどを治療する最初の指針を示している。
臨床用途において多くの細胞毒性物質は、DNAを損傷することにより、それらの作用を発揮する(例えば、シスプラチン(シス-ジアミノジクロプラタニム(cis-diaminodichroplatanim)(II))はDNAに架橋結合するのに対し、ブレオマイシンは鎖切断を誘導する)。この核損傷は、p53システムのような細胞因子が認められるならば、損傷された細胞の死滅につながるアポトーシスカスケードを開始させる。
しかし、現存する細胞毒性化学療法剤には、重篤な欠点がある。例えば多くの公知の細胞毒性物質は、健康な細胞と罹患した細胞の間の差別をほとんど示さない。この特異性欠如は、有効性を制限しかつ/または早期死亡をもたらすような重度の副作用を生じることが多い。更に多くの現存する細胞毒性物質の長期間投与は、更なる投与の有効性を低下させるかまたは無効とする抵抗性遺伝子(例えば、bcl-2ファミリーまたは多剤耐性(MDR)タンパク質)の発現をもたらす。一部の細胞毒性物質は、p53および関連タンパク質に突然変異を誘発する。これらの考察に基づいて、理想的な細胞毒性薬物は、罹患した細胞のみを殺傷し、化学療法抵抗性となりにくいものでなければならない。
罹患した細胞を選択的に殺傷するひとつの戦略とは、罹患した細胞において発現される分子を選択的に認識する薬物の開発である。従って効果的細胞毒性化学療法剤は、疾患の指標となる分子を認識し、かつ(例えば、直接的または間接的のどちらかで)罹患した細胞の死滅を誘導するであろう。一部の型の癌細胞上のマーカーは、治療的抗体および小分子で同定されかつ標的化されているが、ほとんどの癌において、診断的および治療的探索のための独自の特性は分かっていない。更に狼瘡のような疾患について、創薬のための特異的分子標的は同定されていない。
アポトーシス過程の誤調節を特徴とする疾患および状態(例えば、ウイルス感染、過増殖性自己免疫疾患、慢性炎症状態、および癌)に罹患した被験者におけるこれらの過程を調節するための改善された組成物および方法が必要とされている。
概要
本発明は、多くの疾病および病状の治療に使用でき、研究、化合物スクリーニング、および診断に使用できる、新規化合物を提供する。本発明は、これらの新規化合物の使用、ならびに特定の生物学的応答を誘発する公知の化合物(例えば、特定の標的分子に結合するおよび/または特定の細胞的事象を引き起こす化合物)の使用も提供する。このような化合物およびその使用は本出願の全体に記載されており、多様な組成物および用途を提供する。
いくつかの好ましい組成物およびその使用を以下に記載する。本発明は、これら特定の組成物およびその使用に限定されるものではない。
本発明は、本出願の全体に記載するように、数多くの有用な組成物を提供する。本発明のいくつかの好ましい態様には下式を含む組成物を含む組成物が含まれ:
Figure 2012107022
式中、R1はナフタルアラニン;フェノール;1-ナフタレノール;2-ナフタレノール;
Figure 2012107022
およびキノリン;から選択され、式中、R2は、
Figure 2012107022
からなる群より選択され;式中、R1およびR2にはRまたはSの鏡像異性体およびラセミ混合物が含まれる。
本発明の他の好ましい態様には下式を含む組成物を含む組成物が含まれる:
Figure 2012107022
式中、R1はH、アルキル、または置換アルキルから選択され;R2は水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル、置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの置換脂肪族基、10個未満の炭素原子からなる環状脂肪族基、置換環状脂肪族基、アリール、ヘテロ環基から選択され;R3はH、アルキル、または置換アルキルから選択され、最大でも1つの置換基がヒドロキシサブグループであり;
R4は、
Figure 2012107022
から選択され、式中、n=0〜5であり;R1、R2、R3、およびR4にはRまたはSの鏡像異性体およびラセミ混合物が含まれる。
本発明のさらに別の好ましい態様には下式を含む組成物を含む組成物が含まれる:
Figure 2012107022
式中、R1はH、アルキル、または置換アルキルから選択され;R2は水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル、置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの置換脂肪族基、10個未満の炭素原子からなる環状脂肪族基、置換環状脂肪族基、アリール、ヘテロ環基から選択され;R3はH、アルキル、または置換アルキルから選択され、最大でも1つの置換基がヒドロキシサブグループであり;
R4は、
Figure 2012107022
から選択され、式中、n=0〜5であり;R1、R2、R3、およびR4にはRまたはSの鏡像異性体およびラセミ混合物が含まれる。
他の好ましい態様において、本発明は薬学的組成物を提供する。このような態様において、本発明は、オリゴマイシン付与タンパク質に結合する化合物、および薬剤(例えば、レスベラトロール、ピセタノール、エストロゲン、ランソプラゾール)を提供する。
本発明は、細胞死の調節において有用な方法および組成物も提供する。好ましい態様において、本発明は、被験者および以下からなる群より選択される式を含む組成物:
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
(式中、Rは、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル、置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの置換脂肪族基、10個未満の炭素原子からなる環状脂肪族基、置換環状脂肪族基、アリール、およびヘテロ環基から選択される)を提供し、このような組成物が被験者に投与される。
さらに別の好ましい態様において、本発明は、細胞の増殖を調節するための組成物および方法を提供する。このような態様において、本発明は、被験者および以下から選択される式を含む組成物:
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
(式中、Rは水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル、置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの置換脂肪族基、10個未満の炭素原子からなる環状脂肪族基、置換環状脂肪族基、アリール、およびヘテロ環基から選択される)を提供し、この組成物が被験者に投与される。
本発明は、細胞、組織、および器官の運命に影響を与えるための数多くの方法を提供する。本発明のいくつかの好ましい態様には、細胞死を調節する方法が含まれる。このような態様において、本発明は、ミトコンドリアを有する標的細胞および下式を含む組成物:
Figure 2012107022
(式中、R1はベンゼンよりも大きな疎水性芳香族基を含み;R2はフェノール性ヒドロキシル基を含み;R1およびR2にはRまたはSの鏡像異性体およびラセミ混合物が含まれる)を提供する。付加的な態様において、細胞は、前記組成物がオリゴマイシン感受性付与タンパク質に結合してスーパーオキシドのレベルを増大させるかまたは前記細胞内の細胞ATPレベルを変える条件下で、組成物に暴露される。
他の態様において、標的細胞はインビトロ細胞である。他の態様において、標的細胞はインビボ細胞である。さらに他の態様において、標的細胞はエクスビボ細胞である。またさらに他の態様において、標的細胞は癌細胞である。いくつかの態様において、標的細胞は、B細胞、T細胞、および顆粒球からなる群より選択される。
細胞死の調節に用いられる他の態様において、本発明は以下の組成物も提供する:
Figure 2012107022
式中、R1は、ナフタルアラニン;フェノール;1-ナフタレノール;2-ナフタレノール;
Figure 2012107022
;およびキノリンからなる群より選択され、R2は、
Figure 2012107022
からなる群より選択され、R1およびR2にはRまたはSの鏡像異性体およびラセミ混合物が含まれる。
本発明が細胞死を調節する好ましい態様において、組成物の標的細胞への暴露により、標的細胞の細胞死が増大する。
本発明は、細胞の増殖を調節するための方法および組成物も提供する。このような態様において、本発明は、ミトコンドリアを有する標的細胞の増殖、および下式を含む組成物を提供する:
Figure 2012107022
式中、R1はベンゼンよりも大きな疎水性の芳香族基を含み;R2はフェノール性ヒドロキシル基を含み;R1およびR2にはRまたはSの鏡像異性体およびラセミ混合物が含まれ;細胞は、組成物がミトコンドリアのATPシンターゼ複合体に結合してスーパーオキシドのレベルを増大させるかまたは前記細胞内の細胞ATPレベルを変える条件下で組成物に暴露される。好ましい態様において、組成物はオリゴマイシン感受性付与タンパク質に結合する。
いくつかの態様において、標的細胞はインビトロ細胞である。他の態様において、標的細胞はインビボ細胞である。さらに他の態様において、標的細胞はエクスビボ細胞である。またさらに他の態様において、標的細胞は癌細胞である。また他の態様において、標的細胞は、B細胞、T細胞、および顆粒球からなる群より選択される。さらに他の態様において、標的細胞は増殖する細胞である。
本発明が細胞の増殖を調節する他の態様において、本発明は以下の組成物を提供する:
Figure 2012107022
式中、R1は、ナフタルアラニン;フェノール;1-ナフタレノール;2-ナフタレノール;
Figure 2012107022
;およびキノリンからなる群より選択され、R2は、
Figure 2012107022
からなる群より選択される。
本発明のさらに他の好ましい態様には、(RおよびSの鏡像異性体およびラセミ混合物を含む)下式を含む組成物が含まれ:
Figure 2012107022
式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素;CH3;少なくとも2個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分(例えば、ニトロ基、ニトリル基等)を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のエーテルサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、式中、R5はOH、NO2、NR'、OR'からなる群より選択され、R'は、少なくとも1個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分(例えば、ニトロ基、ニトリル基等)を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、式中、R6は、水素、NO2、Cl、F、Br、I、SR'、およびNR'2からなる群より選択され、R'は上記R5と同様に定義され、式中、R7は、水素;少なくとも2個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、式中、R8は7個以上の非水素原子を有する任意の化学基を含む、ベンゼンよりも大きな脂肪族環基であって、アリールまたは脂肪族環基である。いくつかの態様において、R'は、化合物がその生物学的標的(例えば、ミトコンドリア)に到達するまで、R5の酸素原子をインビボでの代謝から保護する、任意の機能性基である。いくつかの態様において、R'保護基は標的部位で代謝され、R5はヒドロキシル基に変換される。
さらに、好ましい態様において、R5は細胞のミトコンドリアと相互作用する機能を有する(すなわち、R5が存在しない場合、化合物のミトコンドリア成分に対する結合親和性は低下する)。他の態様において、R1〜R4は、組成物の所望しない代謝、特にR5のヒドロキシル基の代謝を阻害する機能を有している。さらに別の態様においては、R1〜R4は、組成物の細胞内ミトコンドリアによる代謝を促進する機能を有している。他の好ましい態様において、組成物と細胞内ミトコンドリアとの相互作用にはOSCPとの結合も含まれる。また別の態様において、OSCPとの結合によりスーパーオキシドのレベルが上昇する。他の好ましい態様において、R5は、細胞の増殖を調節し、細胞のアポトーシスを調節する機能を有する。
本発明は、欠陥を生じた血管を治療するための組成物および方法も提供する。例えば、本発明は、欠陥を生じた心臓の血管を治療するための組成物および方法を提供する。好ましい態様において、欠陥を生じた血管は閉塞された血管である。いくつかの態様において、本発明は、薬物溶離ステント媒質の提供も含め、欠陥を生じた血管を治療する方法を提供する。好ましい態様において、薬物溶離ステント媒質は本発明の薬学的組成物を含む。好ましい態様において、薬学的組成物は薬物溶離ステント媒質上に塗布される。別の態様において、薬学的組成物は薬剤および薬学的に許容される賦形剤を含む。好ましい態様において、薬剤は本明細書に記載する構造のいずれかを含む。
障害のある血管に苦しむ被験者における、障害のある血管を治療するための組成物および方法の範囲内に、本発明は、さらに前記被験者を薬物溶離ステント媒質で治療することおよび薬学的組成物を欠陥を生じた血管に塗布することを含む。いくつかの態様においては、前記欠陥を生じた血管に薬学的組成物を塗布することで再狭窄が阻害される。さらに別の態様においては、薬学的組成物の塗布により、平滑筋細胞の分化、移動、および増殖が阻害される。
他の態様において、薬学的組成物にはさらに接着剤が含まれる。いくつかの態様において、接着剤は生分解性である。別の態様において、接着剤はフィブリンのりである。いくつかの態様において、本発明はさらに、治療用組成物を同定する方法を提供する。いくつかの態様において、本発明の方法はミトコンドリアF1F0-ATPアーゼを含む試料およびF1F0-ATPアーゼ阻害剤の候補物質を提供する。別の態様においては、試料を阻害剤に接触させる。別の態様においては、前記ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼのkcat/Km値が測定され、主にF1F0-ATPアーゼ-基質複合体に結合するが、ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼに結合してもミトコンドリアF1F0-ATPアーゼのkcat/Km値を変えない組成物が治療用組成物として選択される。
いくつかの好ましい態様において、本方法にはさらに、低毒性および自己免疫障害の治療能力を確認するため、選択された組成物を動物体内で試験する工程が含まれる。
他の好ましい態様において、試料はさらにミトコンドリアを含む。他の態様において、F1F0-ATPアーゼは純粋な酵素である。さらに別の態様において、F1F0-ATPアーゼは亜ミトコンドリア粒子内に配置される。
さらに好ましい態様において、ATP濃度の関数としてATPの加水分解速度または合成速度を測定することによって、kcat/Km値が決定される。さらに別の態様においては、kcat/Km値はKm、Vmax、およびkmから算出される。
さらに好ましい態様において、基質が高濃度の場合には選択された組成物の阻害活性は高く、基質が低濃度の場合には阻害活性は低くなる。
ある態様において、本発明は自己免疫障害を治療する方法を提供する。このような態様において、被験者およびミトコンドリアF1F0-ATPアーゼに結合できるがF1F0-ATPアーゼのkcat/Km値を変化させない組成物が提供され、この組成物は被験者に投与される。
定義
本発明の理解を促進するために、多くの用語および語句を以下に定義する。
本明細書において使用される「ベンゾジアゼピン」という用語は、フェニル環に融合した7員の非芳香族系環状ヘテロ環であり、ここで7員環は環状ヘテロ環の一部として2個の窒素原子を有するものを意味する。一部の局面において、この2個の窒素原子は、下記一般構造において示されるように、1位および4位にある。
Figure 2012107022
ベンゾジアゼピンは、1個のケト基(典型的には2位)、または各々2位および5位で2個のケト基で置換することができる。ベンゾジアゼピンが2位および5位に各々1個ずつ2個のケト基を有する場合、これはベンゾジアゼピン-2,5-ジオンと称される。最も一般的には、ベンゾジアゼピンは更に、6員のフェニル環もしくは7員の環状ヘテロ環のどちらかまたは両方の環上で様々な置換基により置換される。
「ベンゼンより大きい」という用語は、7個またはそれ以上の非水素原子を含む任意の化学基を意味する。
本明細書において使用される「置換脂肪族」という用語は、少なくとも1個の脂肪族水素原子が、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、チオ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、脂環式、または置換脂環式など)で置換されている、10個未満の炭素を有するアルカンを意味する。このような例は、1-クロロエチルなどを含むが、これらに限定されるわけではない。
本明細書において使用される「置換アリール」という用語は、芳香環、または少なくとも1個は芳香族である3個以下の融合環からなる融合芳香環システムであり、ここで環の炭素上の少なくとも1個の水素原子が、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、チオ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、脂環式、または置換脂環式など)で置換されているものを意味する。このような例は、ヒドロキシフェニルなどを含むが、これらに限定されるわけではない。
本明細書において使用される「脂環式」という用語は、8個未満の炭素を有するシクロアルカンまたは3個以下の融合した脂環式環からなる融合環システムを意味する。このような例は、デカリンなどを含むが、これらに限定されるわけではない。
本明細書において使用される「置換脂環式」という用語は、少なくとも1個の脂肪族水素原子が、ハロゲン、ニトロ、チオ、アミノ、ヒドロキシ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または(アリール、置換アリール、脂環式、または置換脂環式)環で置換されている、10個未満の炭素を有するシクロアルカンまたは3個以下の融合環からなる融合環システムを意味する。このような例は、1-クロロデカリル、ビシクロ-ヘプタン、オクタン、およびノナン(例えばノルボルニル)などを含むが、これらに限定されるわけではない。
本明細書において使用される「ヘテロ環」という用語は、少なくとも1個の環炭素原子が酸素、窒素または硫黄により置換されている、8個未満の炭素を有するシクロアルカンおよび/またはアリール環システム、または3個以下の融合環からなる融合環システムを意味する。このような例は、モルホリノなどを含むが、これらに限定されるわけではない。
本明細書において使用される「置換ヘテロ環」という用語は、少なくとも1個の環炭素原子が酸素、窒素または硫黄により置換され、ならびに少なくとも1個の脂肪族水素原子は、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ、ニトロ、アミノ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、脂環式、または置換脂環式)で置換されている、8個未満の炭素を有するシクロアルカンおよび/またはアリール環系、または3個以下の融合環からなる融合環系を意味する。このような例は、2-クロロピラニルを含むが、これらに限定されるわけではない。
本明細書において使用される「リンカー」という用語は、ふたつの異なる構造部分を連結している連続した最大8個の原子からなりかつこれを含む鎖を意味し、ここでそのような原子は、例えば炭素、窒素、酸素または硫黄である。エチレングリコールは、ひとつの限定的でない例である。
本明細書において使用される「低級アルキル置換アミノ」という用語は、1個の脂肪族水素原子がアミノ基で置換されているような、最大8個の炭素原子からなりかつこれを含むアルキル単位を意味する。このような例は、エチルアミノなどを含むが、これらに限定されるわけではない。
本明細書において使用される「低級アルキル置換ハロゲン」という用語は、1個の脂肪族水素原子がハロゲンで置換えられているような、最大8個の炭素原子からなりかつこれを含むアルキル鎖を意味する。このような例は、クロロエチルなどを含むが、これらに限定されるわけではない。
本明細書において使用される「アセチルアミノ」という用語は、アセチル化された第一級または第二級アミノを意味する。このような例は、アセトアミドなどを含むが、これらに限定されるわけではない。
本明細書において使用される用語である化合物の「誘導体」とは、化学修飾が、化合物の官能基でまたは芳香環上のどちらかに生じるような、化学的に修飾された化合物を意味する。本発明の非限定的な例である1,4-ベンゾジアゼピン誘導体は、この化合物の利用可能な窒素のどちらかに、N-アセチル基、N-メチル基、N-ヒドロキシ基を含んでもよい。追加の誘導体は、フェニル環上にトリフルオロメチル基を有するものを含んでもよい。
本明細書で使用される用語「ステント」または「薬物溶離ステント」は、治療部位の管腔内壁に接して配置されるとフィブリンを管腔内壁に供給し残存させる任意の器具を意味する。ステントには、特に、冠動脈閉塞症を治療するためにならびに脾血管、頚血管、腸骨血管、および膝窩血管の切開部または動脈瘤を密閉するために経皮的に送達される器具が含まれる。ステントは基盤をなすポリマーまたは金属の構造要素とその上に塗布されたフィブリンを有することができ、あるいはステントはフィブリンがポリマーに混合された複合材であってもよい。例えば、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第4,886,062号に開示されているような、変形可能な金属ワイヤーステントを前記のように1層または複数層でフィブリンを被覆するか(すなわち、金属基盤上へのフィブリノーゲン溶液およびフィブリノーゲン凝固性タンパク質溶液の塗布によるフィブリンの重合)あるいは環状フィブリンフィルム等のフィブリン前駆体を結合させた変形可能な金属ワイヤーステントを提供することができる。次にステントおよびフィブリンをバルーンカテーテルの遠位端のバルーンに配置し、従来の経皮的手段(例えば、血管形成の際に行われるような手段)で狭窄または閉塞の治療部位に送達し、バルーンを膨らませることによって身体管腔に接触させる。その後カテーテルを引き抜き、本発明のフィブリンステントを治療部位に残す。このように、ステントは、治療部位における管腔の支持構造となるとともに管腔壁へのフィブリンの確実な配置を支持する構造になることができる。一般に、薬物溶離ステントは、ステント装着部位における特定薬剤の能動的放出が可能である。
本明細書で使用される用語「カテーテル」は、一般に体腔または血管への出入りに使用されるチューブを意味する。
本明細書で使用される用語「弁膜」または「管」は、動物内の任意の管腔を意味する。その例には、動脈、静脈、毛細血管、および生物学的管腔が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
本明細書で使用するように、用語の「再狭窄」は、狭くなった任意の弁膜を意味する。その例には、例えば、動脈のバルーン膨張、切除、アテローム切除法、またはレーザー治療法等の動脈の狭窄部を広げる処置で動脈に生じた外傷に続く末梢性動脈または冠動脈の再閉塞が含まれるが、これに限定されるわけではない。
本明細書で使用するように、用語の「血管形成法」または「バルーン療法」または「バルーン血管形成法」または「経皮的経内腔的冠動脈血管形成法」は、バルーンカテーテルを用いて血管を広げ、それによって血流を改善する、血管障害の治療方法を意味する。
本明細書で使用するように、用語の「心臓カテーテル法」または「冠動脈血管造影法」は、冠動脈疾病を診断するためのカテーテルを用いる試験法を意味する。この試験法には、例えば、カテーテルを介してコントラスト増強染料を冠動脈に注入し、冠動脈の狭窄部または閉塞部を可視化することが含まれる。
本明細書において使用される「被験者」という用語は、本発明の方法で処理される生物を意味する。このような生物は、哺乳類(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)を含むが、これらに限定されるわけではなく、ヒトが最も好ましい。本発明に関連する「被験者」という用語は一般に、アポトーシス過程の調節不良により特徴付けられる状態の治療(例えば、ベンゾジアゼピン化合物の、および任意に1種または複数の他の物質の投与)を受けるであろうまたは受けている個体を意味する。
本明細書において使用される「診断された」という用語は、疾患のその徴候および症状(例えば、従来の療法に対する抵抗性)、または遺伝解析、病理分析、組織学的分析などによる認識を意味する。
本明細書において使用される「抗癌剤」という用語または「通常の抗癌剤」とは、癌の治療において使用される任意の化学療法用化合物、放射線療法、または外科的介入を意味する。
本明細書において使用される「インビトロ」という用語は、人工的環境および人工的環境内において起こる過程または反応を意味する。インビトロ環境は、試験管および細胞培養物を含むが、これらに限定されるわけではない。「インビボ」という用語は、天然の環境(例えば、動物または細胞)ならびに天然の環境内において起こる過程または反応を意味する。
本明細書において使用される「宿主細胞」という用語は、インビトロまたはインビボに配置された、任意の真核細胞または原核細胞(例えば、哺乳類細胞、鳥類細胞、両生類細胞、植物細胞、魚類細胞、および昆虫細胞)を意味する。
本明細書において使用される「細胞培養物」という用語は、任意のインビトロ細胞培養物を意味する。この用語に含まれるのは、連続する細胞株(例えば、不死化表現型を持つ)、初代細胞培養物、有限増殖細胞株(例えば、形質転換されない細胞)、ならびに卵母細胞および胚を含むインビトロにおいて維持された他の細胞集団である。
好ましい態様において、本発明の組成物および方法の「標的細胞」とは、リンパ系細胞または癌細胞を意味する段階を含むが、これらに限定されるわけではない。リンパ系細胞は、B細胞、T細胞、および顆粒球を含む。顆粒球は、好酸球およびマクロファージを含む。いくつかの態様において、標的細胞は、患者生検標本から得られた連続培養された細胞または連続培養されない細胞である。
癌細胞は、腫瘍細胞、新生物細胞、悪性細胞、転移性細胞、および過形成性細胞を含む。新生物細胞は、良性または悪性であり得る。新生物細胞が浸潤または転移しない場合は、これらは良性である。悪性細胞は、浸潤および/または転移することができるものである。過形成は、構造または機能の重大な変更を伴わない、組織または臓器内の細胞の病的蓄積である。
ひとつの具体的態様において、標的細胞は、病的成長または増殖を示す。本明細書において使用される「病的に増殖するまたは成長する細胞」という用語は、正常な成長の通常の制限によっては支配されないような、動物において増殖する細胞の局在化された集団を意味する。
本明細書において使用される「未活性化標的細胞」という用語は、G0相である細胞または刺激が適用されない細胞のどちらかを意味する。
本明細書において使用される「活性化された標的リンパ系細胞」という用語は、シグナル伝達カスケードを引き起こすように、適当な刺激によりプライミングされたリンパ系細胞、あるいは、G0相でないリンパ系細胞を意味する。活性化されたリンパ系細胞は、増殖し、活性化が誘導した細胞死を受けるか、もしくは1つまたは複数の細胞毒、サイトカイン、ならびに細胞型を特徴づける他の関連した膜会合タンパク質(例えば、CD8+またはCD4+)を産生することができる。これらは、特定の抗原をその表面に提示している標的細胞を認識および結合し、引き続きそのエフェクター分子を放出することも可能である。
本明細書において使用される「活性化された癌細胞」という用語は、シグナル伝達を引き起こすように、適当な刺激によりプライミングされた癌細胞を意味する。活性化された癌細胞は、G0相であっても無くてもよい。
活性化物質は、標的細胞との相互作用時に、シグナル伝達カスケードをもたらす刺激である。活性化刺激の例は、小分子、放射エネルギー、および細胞活性化する細胞表面受容体に結合する分子を含むが、これらに限定されるわけではない。活性化刺激により誘導された反応は、とりわけ、細胞内Ca2+、スーパーオキシド、またはヒドロキシルラジカルレベル;キナーゼもしくはホスファターゼのような酵素の活性;または、細胞のエネルギー状態により、特徴付けることができる。
ひとつの局面において、活性化物質は、細胞表面活性化受容体に結合する物質である。これらは、T細胞受容体リガンド、B細胞活性化因子(「BAFF」)、TNF、Fasリガンド(FasL)、CD40リガンド、増殖誘導リガンド(「APRIL」)、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、アミノ酸(すなわちグルタミン酸)、ステロイド、B細胞受容体リガンド、γ線照射、UV照射、細胞ストレスを増強する物質もしくは条件、または細胞表面活性化受容体を特異的に認識および結合する抗体(例えば、抗CD4、抗CD8、抗CD20、抗TACI、抗BCMA、抗TNF受容体、抗CD40、抗CD3、抗CD28、抗B220、抗CD38、抗CD19、および抗CD21)からなる群より選択することができる。BCMAはB細胞成熟抗原受容体であり、かつTACIは膜貫通アクチベーターおよびCAML相互作用子である(Gross, A.ら(2000); Laabi, Y.ら(1992)およびMadry, C.ら(1998))。抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体またはそれらの混合物を含む。
T細胞リガンドの例は、MHC分子に結合するペプチド、ペプチドMHC複合体、またはT細胞受容体の成分を認識する抗体を含むが、これらに限定されるわけではない。
B細胞リガンドの例は、B細胞受容体の成分に結合するまたは認識する分子または抗体を含むが、これらに限定されるわけではない。
細胞表面活性化受容体に結合する試薬の例は、これらの受容体のまたはそれらに対して生じた抗体(例えば、抗CD20)の天然のリガンドを含むが、これらに限定されるわけではない。RITUXIN(Genentech社、サンフランシスコ、CA)は、市販の抗CD20キメラモノクローナル抗体である。
細胞ストレスを増強する物質または条件の例は、熱、照射、酸化ストレス、または増殖因子離脱(withdrawal)などを含む。増殖因子の例は、血清、IL-2、血小板由来増殖因子(「PDGF」)などを含むが、これらに限定されるわけではない。
本明細書において使用される「有効量」という用語は、有益なまたは望ましい結果を作用するのに十分な化合物(例えば、ベンゾジアゼピン)の量を意味する。有効量は、1回または複数回の投与、塗布または用量で投与されうり、かつ特定の製剤または投与経路に限定されることが必ずしも意図されるわけではない。
本明細書において使用される「細胞死の過程の調節不良」という用語は、ネクローシスまたはアポトーシスのどちらかにより細胞死を受ける細胞の能力(例えば、素因)の異常を意味する。細胞死の調節不良は、例えば、自己免疫障害(例えば全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、移植片対宿主病、重症筋無力症、シェーングレン症候群など)、慢性炎症状態(例えば、乾癬、喘息およびクローン病)、過増殖性障害(例えば、腫瘍、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫など)、ウイルス感染症(例えば、ヘルペス、パピローマ、HIV)、ならびに変形性関節症およびアテローム動脈硬化症などのその他の状態のような、様々な状態に関連するかまたは状態により誘導される。
調節不良がウイルス感染症により誘導されるまたはこれに関連する場合に、調節不良が生じるまたは観察される時点で、このウイルス感染症が検出可能であってもなくてもよいことに注目されたい。すなわち、ウイルスが誘導した調節不良は、ウイルス感染症の症状が消失した後であっても生じ得る。
本明細書において使用される「過増殖性障害」という用語は、動物において増殖している細胞の局在化された集団が、正常な成長の通常の制限により支配されないような状態を意味する。過増殖性障害の例は、腫瘍、新生物、リンパ腫などを含む。新生物は、浸潤または転移を受けない場合は良性、およびこれらのどちらかを受ける場合は悪性と称される。転移性細胞または組織とは、細胞が、近傍の体構造を浸潤し、かつ破壊することを意味する。過形成は、構造または機能に重大な変化を伴わない、組織または臓器における細胞数の増加に関与している細胞増殖の形である。化生は、ある種の完全に分化した細胞が、別種の分化した細胞と置き換わるような制御された細胞成長の形である。化生は、上皮細胞または結合組織細胞において生じることができる。典型的化生は、若干無秩序な上皮化生に関連している。
活性化されたリンパ系細胞の病理的な成長は、最終的に自己免疫性障害または慢性感染症となることが多い。本明細書でされる用語「自己免疫性障害」は、生物が自己の分子、細胞、または組織を認識する抗体または免疫細胞を産生する任意の症状を意味する。自己免疫性障害の非限定的例には、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベルジェ病すなわちIgA腎症、腹腔スプルー、慢性疲労症候群、クローン病、皮膚筋炎、線維筋痛、移植片対宿主病、グレーヴズ病、ハシモト甲状腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、扁平苔癬、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、リウマチ熱、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、白斑等が含まれる。
本明細書において使用される「慢性炎症状態」という用語は、生物の免疫細胞が活性化された状態を意味する。このような状態は、病的続発症を伴う難治性の炎症反応を特徴とする。この状態は、単核細胞の浸潤、線維芽細胞および細血管の増殖、増大した結合組織、ならびに組織破壊により特徴付けられる。慢性炎症疾患の例は、クローン病、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、多発性硬化症、および喘息を含むが、これらに限定されるわけではない。慢性関節リウマチおよび全身性エリテマトーデスのような自己免疫疾患も、慢性炎症状態をもたらすことがある。
本明細書において使用される「同時投与」という用語は、少なくとも2種の物質(例えば、ベンゾジアゼピン類)または療法の被験者への投与を意味する。いくつかの態様において、2種またはそれよりも多い物質/療法の同時投与は、同時進行される。別の態様において、第一の物質/療法の後、第二の物質/療法が投与される。当業者は、使用される様々な物質/療法の投与の製剤および/または経路を変動できることを理解している。同時投与に適した用量は、当業者により容易に決定することができる。いくつかの態様において、物質/療法が同時投与される場合、各々の物質/療法は、それらの単独投与に適したものよりも低い用量で投与される。従って同時投与は、物質/療法の同時投与が有害であることが推定される(例えば毒性)物質の必要量を低下させるような態様に特に望ましい。
本明細書において使用される「毒性」という用語は、毒物投与前の同じ細胞または組織と比べ、細胞または組織にとって不利なまたは有害な作用を意味する。
本明細書において使用される「薬学的組成物」という用語は、特にインビボ、インビボまたはエクスビボにおける診断的または治療的用途に適した組成物を作成する、活性物質の、不活性または活性の担体との組合せを意味する。
本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝された生理食塩水、水、乳剤(例えば、水中油型または油中水型乳剤)、ならびに様々な種類の湿潤剤のような、任意の標準的薬学的担体を意味する。これらの組成物は、安定剤および保存剤も含むことができる。担体の例は、安定剤およびアジュバントがある(例えば、Martin、Remington's Pharmaceutical Sciences、第15版、Mack Publ社、イーストン、PA [1975]参照)。
本明細書において使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、被験者への投与時に、本発明の化合物またはそれらの活性代謝産物もしくは残基を提供する段階が可能である本発明の化合物の薬学的に許容される塩(例えば、酸または塩基)を意味する。当業者に公知であるように、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基から誘導することができる。酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、ホスホン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを含むが、これらに限定されるわけではない。それら自身は薬学的に許容できないシュウ酸のようなその他の酸は、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る中間体として有用な塩の調製に使用することができる。
塩基の例は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)の水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)の水酸化物、アンモニアおよび式NW4 +の化合物(式中、WはC1-4アルキルである)などを含むが、これらに限定されるわけではない。
塩の例は、下記を含むが、これらに限定されるわけではない:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩など。その他の塩の例は、Na+、NH4 +、およびNW4 +(Wは、C1-4アルキル基である)などのような適当なカチオンに複合された、本発明の化合物の化合物アニオンを含む。
治療的用途に関して、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されるものと考えられる。しかし、薬学的に許容できない酸および塩基の塩は、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製における使用を認めることができる。
本明細書において使用される「固相支持体」という用語または「固形支持体」とは、当業者が入手できおよび公知の多くの支持体を意味する最も広範な意味において使用される。固相支持体は、シリカゲル、樹脂、誘導体化されたプラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、アルミナゲルなどを含むが、これらに限定されるわけではない。本明細書において使用される「固形支持体」という用語も、合成抗原を提示しているマトリックス、細胞、リポソームなどを含む。適当な固相支持体は、望ましい最終用途および様々なプロトコールに関する適性に基づいて選択することができる。例えば、ペプチド合成に関して、固相支持体は、ポリスチレン(例えば、Bachem社、Peninsula Laboratories社などから入手できるPAM樹脂)、POLYHIPE樹脂(Aminotech社、カナダから入手)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratories社から入手)、ポリエチレングリコールとグラフト重合したポリスチレン樹脂(TENTAGEL、Rapp Polymere社、チュービンゲン、ドイツ)またはポリジメチルアクリルアミド樹脂(Milligen/Biosearch社(カリフォルニア)から入手)のような樹脂を意味する。
本明細書において使用される「病原体」という用語は、宿主に病態(例えば、感染症、癌など)を引き起こす生物学的物質を意味する。「病原体」とは、ウイルス、細菌、古細菌、真菌、原生動物、マイコプラズマ、プリオン、および寄生生物を含むが、これらに限定されるわけではない。
「細菌」という用語は、原生動物界の全ての門を含む、全ての原核生物を意味する。この用語は、マイコプラズマ、クラミジア、アクチノミセス、ストレプトマイセス、およびリケッチアを含む細菌であると見なされる全ての微生物を包含することが意図されている。球菌、桿菌、スピロヘータ、スフェロプラスト、プロトプラストなどを含む細菌の全ての形が、この定義の中に含まれる。グラム陰性またはグラム陽性である原核生物も、この用語に含まれる。「グラム陰性」および「グラム陽性」とは、当技術分野において周知のグラム染色法による染色パターンを意味する(例えば、FinegoldおよびMartin、Diagnostic Microbiology、第6版、CV Mosby、セントルイス、13-15頁[1982]参照)。「グラム陽性菌」とは、グラム染色において使用される一次色素(primary dye)を保持する細菌であり、顕微鏡下で暗青色から紫色に染色された細胞を生じる。「グラム陰性菌」とは、グラム染色において使用される一次色素を保持しないが、対比染色される細菌である。従ってグラム陰性菌は赤色に見える。
本明細書において使用される「微生物」という用語は、細菌、古細菌、真菌、原生動物、マイコプラズマ、および寄生生物を含むがこれらに限定されるわけではない、微生物の任意の種または型を意味する。これに含まれる多くの微生物が被験者に対して病原性でありうることが、本発明により考えられる。
本明細書において使用される「真菌」という用語は、二相性糸状菌を含む、糸状菌および酵母のような真核生物を意味する。
本明細書において使用される「ウイルス」という用語は、ある種の例外はあるが、光学顕微鏡では認められず、独立した代謝を欠いており、かつ生存宿主細胞内においてのみ複製することができるような、微小な感染性物質を意味する。個々の粒子(すなわちビリオン)は、典型的には、核酸およびタンパク質の殻または外皮からなり;一部のビリオンは、脂質含有膜も有する。「ウイルス」という用語は、動物、植物、ファージおよび他のウイルスを含む、全てのウイルス型を包含している。
本明細書において使用される「試料」という用語は、その最も広範な意味で使用される。アポトーシス機能の調節不良を特徴とする状態を示すことが疑われる試料は、細胞、組織または液体、細胞から単離された染色体(例えば中期染色体の塗沫(spread))、(溶液中の、またはサザンブロット分析用のような固形支持体へ結合した)ゲノムDNA、(溶液中の、またはノーザンブロット分析用のような固形支持体へ結合した)RNA、(溶液中の、または固形支持体へ結合した)cDNAなどを含み得る。タンパク質を含むことが疑われる試料は、細胞、組織の一部、1種または複数のタンパク質を含有する抽出液などを含むことができる。
本明細書において使用される「精製された」という用語または「精製する」とは、試料中の望ましくない成分を除去することを意味する。本明細書において使用される「実質的に精製された」という用語は、それらが通常会合された他の成分を、少なくとも60%含まない、好ましくは75%含まない、かつ最も好ましくは90%またはそれよりも多く含まない分子を意味する。
本明細書において使用される「抗原結合タンパク質」という用語は、特異抗原に結合するタンパク質を意味する。「抗原結合タンパク質」とは、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖およびヒト化された抗体を含む免疫グロブリン、Fab断片、F(ab')2断片、およびFab発現ライブラリーを含むが、これらに限定されるわけではない。ポリクローナル抗体の作成に関して、当技術分野において公知の様々な方法が使用される。抗体産生に関して、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどを含むがこれらに限定されるわけではない様々な宿主動物を、望ましいエピトープに対応するペプチドの注射により免疫処理することができる。好ましい態様において、このペプチドは、免疫原性担体(例えば、ジフテリア毒、ウシ血清アルブミン(BSA)、またはキーホールリンペットヘモシアニン[KLH])に複合されている。フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル、リゾレシチンのような界面活性剤表面、プルロニックポリマー、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメット-ゲラン桿菌)および座瘡菌(Corynebacterium parvum)のような可能性のあるヒトアジュバントの使用を含むがこれらに限定されるわけではない、様々なアジュバントを用い、宿主種に応じて免疫応答を増強する。
モノクローナル抗体の調製に関して、培養物中の連続細胞株により抗体分子産生を提供する任意の技術を使用することができる(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、コールドスプリングハーバー、NYを参照)。これらは、当初KohlerおよびMilsteinにより開発されたハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein、Nature、256:495-497[1975])に加え、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Kozborら、Immunol. Today、4:72[1983]参照)、ならびにヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibody and Cancer Therapy、Alan R. Liss社、77-96頁[1985]参照)を含むが、これらに限定されるわけではない。
本発明に従い、単鎖抗体の作成について説明された方法(米国特許第4,946,778号;本明細書に参照として組入れられている)を、望ましい特異的単鎖抗体を作成するために適合させることができる。追加の本発明の態様は、望ましい特異性を伴うモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な識別を可能にするために、Fab発現ライブラリーの構築に関する当技術分野において公知の技術を使用する(Huseら、Science、246:1275-1281[1989])。
抗体分子のイディオタイプ(抗原結合領域)を含む抗体断片は、公知の技術により作成される。例えば、このような断片は以下を含むが、これらに限定されるわけではない:抗体分子のペプシン消化により作成することができるF(ab')2断片;F(ab')2断片のジスルフィド橋の還元により作成することができるFab'断片、ならびに抗体分子のパパインおよび還元剤の処理により作成することができるFab断片。
抗原結合タンパク質をコードしている遺伝子を、当技術分野において公知の方法により単離することができる。抗体産生において、所望の抗体のスクリーニングは、当技術分野において公知の技術(例えば、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫放射線検定、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ(例えばコロイド状金、酵素または放射性同位元素標識の使用)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、ヘマグルチニン化アッセイなど)、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、および免疫電気泳動アッセイなど)などにより実現することができる。
本明細書において使用される「免疫グロブリン」という用語または「抗体」とは、特異抗原に結合するタンパク質を意味する。免疫グロブリンは、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化抗体、Fab断片、F(ab')2断片、ならびにクラスIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの免疫グロブリン、および分泌免疫グロブリン(sIg)を含むが、これらに限定されるわけではない。免疫グロブリンは一般に、二つの同一重鎖および二つの軽鎖を有する。しかし「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、単鎖抗体および2本鎖抗体も包含している。
本明細書において使用される「エピトープ」という用語は、特定の免疫グロブリンとの接触を生じる抗原の部分を意味する。タンパク質またはタンパク質断片が宿主動物の免疫処理に使用される場合、タンパク質の多くの領域は、このタンパク質の所定の領域または三次元構造に特異的に結合する抗体の産生を引き起こすことができ;これらの領域または構造は、「抗原決定基」と称される。抗原決定基は、抗体に結合するために、完全な抗原(すなわち、免疫応答を誘起するために使用される「免疫原」)と競合し得る。
抗体およびタンパク質またはペプチドの相互作用に関して使用される「特異的結合」という用語または「特異的に結合する」とは、その相互作用が、タンパク質上の特定の構造(すなわち、抗原決定基またはエピトープ)によって決まることを意味し;別の言い方をすると、その抗体は、一般的タンパク質よりもむしろ特異的タンパク質構造を認識しかつ結合する。例えば、抗体がエピトープ「A」について特異的である場合、標識された「A」およびその抗体を含有する反応液中にエピトープA(または遊離、未標識のA)を含むタンパク質が存在することは、その抗体に結合した標識されたAの量を減少するであろう。
本明細書において使用される「非特異的結合」という用語および「バックグラウンド結合」とは、抗体およびタンパク質またはペプチドの相互作用に関して使用される場合、特定の構造の存在によって左右されない相互作用(すなわち、抗体は、エピトープのような特定の構造よりもむしろ一般的タンパク質に結合する)を意味する。
本明細書において使用される「調節する」という用語は、化合物(例えば、ベンゾジアゼピン化合物)の活性が、細胞成長、増殖、アポトーシスなどを含むがこれらに限定されるわけではない、細胞機能の様相に対し作用する(例えば、促進または抑制する)ことを意味する。
本明細書において使用される「結合に競合する」という用語は、第二の分子(例えば、第二のベンゾジアゼピン誘導体またはミトコンドリアATP合成酵素のオリゴマイシン感受性付与タンパク質と結合する別の分子など)と同じ基質(例えば、ミトコンドリアATP合成酵素のオリゴマイシン感受性付与タンパク質)に結合する活性を持つ第一の分子(例えば、第一のベンゾジアゼピン誘導体)に関して使用される。第一の分子による結合の効率(例えば、速度論または熱力学)は、第二の分子に結合する基質の効率と同じ、またはより大きい、またはより少ないことができる。例えば、基質への結合に関する平衡結合定数(KD)は、これら2種の分子について異なり得る。
本明細書において使用される「化合物の被験者への投与に関する説明書」という用語およびそれらの文法的同等物は、細胞または組織におけるアポトーシス過程の調節不良を特徴とする状態の治療のためのキットに備えられた組成物を使用するための説明書を含む(例えば、投薬法、投与経路、治療医師が患者特異的な特徴を治療方針と関連づけるための決定樹を提供する)。この用語は同じく、自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、移植片対宿主病、重症筋無力症、シェーングレン症候群など)、慢性炎症状態(例えば、乾癬、喘息およびクローン病)、過増殖性障害(例えば、腫瘍、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫など)、ウイルス感染症(例えば、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、HIV)、ならびに変形性関節症およびアテローム動脈硬化症のような他の状態などを治療するためのキットに備えられた組成物の使用に関する説明書を特に意味する。
「被験化合物」という用語は、体の機能の疾患、疾病、病気、または障害の治療または予防、さもなければ試料の生理的状態もしくは細胞状態(例えば、細胞または組織におけるアポトーシス調節不良のレベル)の変更に使用することができる、薬学的、薬物などの任意の化学実体を意味する。被験化合物は、公知のおよび可能性のある治療的化合物の両方を含む。被験化合物は、本発明のスクリーニング法を用いることにより、治療的であると決定することができる。「公知の治療的化合物」とは、そのような治療または予防において有効であることが示された(例えば、動物実験またはヒトへ投与する前臨床試験により)治療的化合物を意味する。好ましい態様において、「被験化合物」とは、細胞におけるアポトーシスを調節する物質である。
本明細書において使用される「第三者」という用語は、アポトーシス過程の調節不良により特徴付けられる状態を治療するための化合物の投与に関して考えられる被験化合物の販売、保管、配送、または小売りに従事した実体を意味する。
発明の一般的説明
薬物の種類として、ベンゾジアゼピン化合物は、多くの疾患の治療に有効な医薬品であることが広範に試験されかつ報告されている。例えば、米国特許第4,076,823号、第4,110,337号、第4,495,101号、第4,751,223号および第5,776,946号は、各々その全体が本明細書に参照として組入れられているが、これらは、ある種のベンゾジアゼピン化合物が鎮痛薬および抗炎症薬として有効であることを開示している。同様に米国特許第5,324,726号および米国特許第5,597,915号は、各々その全体が本明細書に参照として組入れられているが、これらはある種のベンゾジアゼピン化合物が、コレシストキニンおよびガストリンのアンタゴニストであり、その結果ある種の胃腸障害の治療に有用であることを開示している。
別のベンゾジアゼピン化合物は、とりわけ心筋性虚血、敗血症性ショック症候群のような、ヒト好中球エラスターゼが媒介した状態の治療において、ヒト好中球エラスターゼのインヒビターとして試験されている(例えば、米国特許第5,861,380号参照、これはその全体が本明細書に参照として組入れられている)。その全体が本明細書に参照として組入れられている米国特許第5,041,438号は、ある種のベンゾジアゼピン化合物が、抗レトロウイルス薬として有用であることを開示している。
ベンゾジアゼピン化合物が注目されているにも関わらず、本発明が、新規ベンゾジアゼピン化合物および関連化合物、ならびに新規化合物を公知の化合物と同様に様々な疾病の治療に用いる方法を提供することが以下の記載から明らかになる。
ベンゾジアゼピン化合物は、中枢神経系(CNS)のベンゾジアゼピン受容体に結合することが知られており、したがって、不安および癲癇を含む様々なCNS障害の治療に使われている。その受容体が偶発的にCNSに存在することもある、末梢性のベンゾジアゼピン受容体も同定されている。本発明は、アポトーシス促進特性および細胞傷害特性を有するベンゾジアゼピンおよび関連化合物が組織培養で成長した形質転換細胞の治療において有用であることを示す。これらの化合物の作用の経路は、既に同定されているベンゾジアゼピン受容体を経由するものではない。
本発明の開発の間に行われた実験により、ベンゾジアゼピン化合物および関連化合物(そのいくつかは、その構造がベンゾジアゼピン化合物の全体的化学構造と相同ではなく、細胞の標的分子に結合できる点で関連している)の新規生物学的標的が同定された。具体的には、本発明は、直接的にまたは間接的に特定のミトコンドリアのタンパク質と相互作用し、所望の生物学的効果を誘発する、化合物を提供する。
このように、いくつかの態様において、本発明は、新規な細胞の標的を指向し、所望の生物学的結果を達成する、数多くの新規化合物および既知の化合物を提供する。他の態様において、本発明は、生物学的過程を調節するためにこのような化合物を使用する方法を提供する。本発明は、化合物を同定しかつ最適化するための薬剤スクリーニング方法も提供する。さらに本発明は、治療方式のモニタリングおよび/または好適な治療手順の同定のための、疾病および症状の同定用の診断マーカーを提供する。これらおよび他の研究結果および治療的有用性を以下に記載する。
OSCP成分がBz-423の結合タンパク質であることを明示するデータを示す。 Bz-423と精製ヒトOSCPとの結合等温曲線を示すグラフである。 siRNAによるOSCPの調節を示す。 本発明の化合物で治療された細胞の遺伝子発現プロファイルを表すデータを示す。Bz-423存在下で上方制御された遺伝子の発現解析からのデータを図4Aに示す。 図4A-1の続きを示す図である。 図4A-2の続きを示す図である。 図4A-3の続きを示す図である。 図4A-4の続きを示す図である。 図4A-5の続きを示す図である。 図4A-6の続きを示す図である。 図4A-7の続きを示す図である。 本発明の化合物で治療された細胞の遺伝子発現プロファイルを表すデータを示す。Bz-423存在下で下方制御された遺伝子の発現解析からのデータを図4Bに示す。 図4B-1の続きを示す図である。 図4B-2の続きを示す図である。 図4B-3の続きを示す図である。 図4B-4の続きを示す図である。 図4B-5の続きを示す図である。 図4B-6の続きを示す図である。 図4B-7の続きを示す図である。 図4B-8の続きを示す図である。 図4B-9の続きを示す図である。 図4B-10の続きを示す図である。 図4B-11の続きを示す図である。 図4B-12の続きを示す図である。 本発明の化合物で治療された細胞の遺伝子発現プロファイルを表すデータを示す。Bz-OMe存在下で上方制御された遺伝子の発現解析からのデータを図4Cに示す。 図4C-1の続きを示す図である。 図4C-2の続きを示す図である。 図4C-3の続きを示す図である。 図4C-4の続きを示す図である。 図4C-5の続きを示す図である。 図4C-6の続きを示す図である。 図4C-7の続きを示す図である。 図4C-8の続きを示す図である。 図4C-9の続きを示す図である。 図4C-10の続きを示す図である。 図4C-11の続きを示す図である。 図4C-12の続きを示す図である。 図4C-13の続きを示す図である。 図4C-14の続きを示す図である。 本発明の化合物で治療された細胞の遺伝子発現プロファイルを表すデータを示す。Bz-OMe存在下で下方制御された遺伝子の発現解析からのデータを図4Dに示す。 図4D-1の続きを示す図である。 図4D-2の続きを示す図である。 図4D-3の続きを示す図である。 図4D-4の続きを示す図である。 図4D-5の続きを示す図である。 図4D-6の続きを示す図である。 図4D-7の続きを示す図である。 図4D-8の続きを示す図である。 図4D-9の続きを示す図である。 図4D-10の続きを示す図である。 図4D-11の続きを示す図である。
発明の詳細な説明
本発明は、新規な化学的化合物、それらを見出す方法、それらの治療への利用を提供する。具体的には、本発明は、ベンゾジアゼピン誘導体および関連化合物ならびにプログラム細胞死の過程の不完全な調節、自己免疫、炎症、および過剰増殖などに関係する数多くの病状を治療するための治療剤としてベンゾジアゼピン誘導体および関連化合物を使用する方法を提供する。
本発明の例示的な組成物および方法は下記のセクションにより詳細に記載する。I.細胞死の調節因子;II.細胞成長および増殖の調節因子;III.治療された細胞の発現分析;IV.例示的化合物;V.薬学的組成物、製剤、例示的投与経路、および用量の考察;VI.薬物のスクリーニング;VII.治療への応用;およびVIII.ATPアーゼ阻害剤および治療用阻害剤の同定方法。
本発明の実践には、特に示さない限り、通常の有機化学、薬学、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、および免疫学の技術を使用し、これらは当技術分野の技術範囲内である。このような技術は、文献において十分説明されており、例えば「Molecular cloning: a laboratory manual」第2版(Sambrookら、1989);「Oligonucleotide synthesis」(M.J. Gait編、1984年);「Animal Cell Culture」(R.I. Freshney編、1987年);「Methods in enzymology」シリーズ(Academic Press社);「Handbook of experimental immunology」(D.M. WeirおよびC.C. Blackwell編);「Gene transfer vectors for mammalian Cells」(J.M. MillerおよびM.P. Calos編、1987年);「Current protocols in molecular biology」(F.M. Ausubelら編、1987年、定期的に改訂);「PCR: the polymerase chain reaction」(Mullisら編、1994年);および、「Current protocols in immunology」(J.E. Coliganら編、1991年)がある(それぞれ全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
I.細胞死の調節因子
好ましい態様において、本発明は、細胞の化合物への曝露を介して、アポトーシスを調節する。化合物の効果は、細胞数の変化を検出することによって評価できる。細胞死は、本明細書および当技術分野において記載のように分析することができる。好ましい態様において、細胞株は、密度に依存する抑制を受けることなく指数関数的な増殖を達成するまでの適当な期間、適当な細胞培養条件(例えば、気体(CO2)、温度、および媒地)下で維持される。細胞数すなわち生存度は、トリパンブルー除外法/血球計数法またはMTT染料変換アッセイ等の標準的な方法を使用して測定する。または、アポトーシスまたは壊死における染色体異常に関係する、遺伝子の発現または遺伝子産物によって、細胞を分析することができる。
好ましい態様において、本発明の化合物を細胞に曝露すると、アポトーシスを誘導する。いくつかの態様において、本発明は、細胞内ROSレベル(例えば、O2 -)の初期の増加を引き起こす。他の態様において、本発明の化合物を細胞に曝露することによって、細胞のO2 -レベルが上昇する。さらに他の態様において、本発明の化合物による細胞のO2 -レベルの上昇は、特異的にO2 -と反応する酸化還元増感剤(例えば、ジヒドロエテジウム(DHE))によって検出可能である。
他の態様において、本発明の化合物による細胞のO2 -レベルの上昇は、一定時間(例えば、10分)後に低減する。他の態様において、本発明の化合物による細胞のO2 -レベルの上昇は、一定時間後に低減し、さらに一定時間(例えば、10時間)後に再び上昇する。別の態様において、本発明の化合物による細胞のO2 -レベルの上昇は、1時間後に低減し、さらに4時間後に再び上昇する。好ましい態様において、本発明の化合物による当初の細胞のO2 -レベルの上昇と、それに続く細胞のO2 -レベルの低減、その後の再度の細胞のO2 -レベルの上昇は、異なる細胞過程(例えば、二峰性細胞機序)によるものである。
いくつかの態様において、本発明は、細胞のミトコンドリアのΔΨmの崩壊を引き起こす。好ましい態様において、本発明による細胞のミトコンドリアのΔΨmの崩壊は、ミトコンドリア選択性の電位差測定用プローブ(例えば、DiOC6)によって検出可能である。別の態様において、本発明による細胞のミトコンドリアのΔΨmの崩壊は、細胞のO2 -レベルの最初の上昇の後に起こる。
いくつかの態様において、本発明はカスパーゼの活性化が可能である。他の態様において、本発明は、ミトコンドリアからのシトクロムcの放出を誘導する。更なる態様において、本発明は、細胞基質のシトクロムcレベルを変更する。別の態様において、本発明により変更された細胞基質のシトクロムcレベルは、細胞基質内の成分の免疫ブロット法によって検出可能である。好ましい態様において、本発明による細胞基質のシトクロムcレベルの低減は、一定時間(例えば、10時間)後に検知可能である。別の好ましい態様において、本発明による細胞基質のシトクロムcレベルの低減は、5時間後に検知可能である。
他の態様において、本発明はミトコンドリアのPT孔の開口を誘導する。好ましい態様において、本発明による細胞のシトクロムcの放出は、ミトコンドリアのΔΨmの崩壊と整合する。さらに別の好ましい態様において、本発明は、ミトコンドリアのΔΨmの崩壊およびシトクロムcの放出の後に細胞のO2 -レベルの上昇を誘導する。別の好ましい態様において、細胞のO2 -レベルの上昇は、本発明によるミトコンドリアのΔΨmの崩壊およびシトクロムcの放出によって誘導される。
他の態様において、本発明は細胞のカスパーゼの活性化を誘導する。好ましい態様において、本発明によるカスパーゼの活性化は、パン-カスパーゼ感受性蛍光性基質(例えば、FAM-VAD-fmk)の総量で測定可能である。さらに別の態様において、本発明によるカスパーゼの活性化は、ミトコンドリアのΔΨmの崩壊と整合する。他の態様において、本発明は、低二倍体DNAの出現を誘導する。好ましい態様において、本発明による低二倍体DNAの出現は、カスパーゼの活性化との関係で若干遅れる。
いくつかの態様において、本発明の分子標的はミトコンドリア内に見出される。別の態様において、本発明の分子標的にはミトコンドリアのATPアーゼが含まれる。細胞のROSの主要な源には、酸化還元酵素およびミトコンドリアの呼吸鎖(以後、MRCと略称)が含まれる。好ましい態様において、シトクロムcオキシダーゼ(MRCの複合体IV)阻害剤(例えば、NaN3)は、本発明に依存する細胞のROSレベルの上昇を阻害する。他の好ましい態様において、MRCの複合体IIIのユビキノール-シトクロムc還元酵素成分の阻害剤(例えば、FK506)は、本発明に依存するROSレベルの上昇を妨げる。
いくつかの態様において、本発明の化合物による細胞のROSレベルの上昇は、本発明の化合物のミトコンドリア内の標的との結合に起因する。好ましい態様において、本発明の化合物は、2',7'-ジクロロジヒドロフルオレセイン(以後、DCFと略称)二酢酸塩をDCFに酸化する。DCFは、ROSを生成することが可能な、酸化還元活性種である。別の態様において、本発明によるDCFの生成速度は、遅滞期間の後に増大する。
アンチマイシンAは、ユビキノール-シトクロムc還元酵素を阻害することによって、O2 -を生成する。好ましい態様において、本発明は、アンチマイシンAとまったく同じやり方で、ROSの生成速度を増大させる。別の態様において、本発明は、状態3(state 3)の呼吸をサポートする好気性条件下で、アンチマイシンAとまったく同じやり方で、ROSの生成速度を増大させる。別の態様において、本発明の化合物は、MPT孔を直接には標的としない。付加的な態様において、本発明の化合物は、細胞内のS15フラクション(例えば、細胞基質;ミクロソーム)において、ROSを実質的に生成しない。さらに別の態様において、ミトコンドリアが状態4(state 4)の呼吸を行っている場合、本発明の化合物はROSを刺激しない。
MRCの複合体I〜IIIは、ミトコンドリア内の主要なROS源である。好ましい態様において、本発明による細胞のROSレベルの主要な上昇は、これらの複合体がミトコンドリアF1F0-ATPアーゼを阻害する結果である。実際、さらに別の態様において、本発明は、ウシ亜ミトコンドリア粒子(以後、SMPと略称)のミトコンドリアATPアーゼ活性を阻害する。特に好ましい態様において、本発明の化合物は、ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼのOSCP成分と結合する。
いくつかの態様において、本発明の化合物は下記の構造:
Figure 2012107022
またはその鏡像異性体を有し、式中、R1は脂肪族基またはアリールであり;R2は脂肪族基、アリール、-NH2、-HC(=O)-R5、または水素結合形成に加わる部分であり、R5はアリール、ヘテロ環、-R6-NH-C(=O)-R7、または-R6-C(=O)-NH-R7であり、R6は1〜6個の炭素原子を有する脂肪族リンカーであり、R7は脂肪族基、アリール、またはヘテロ環であり;R3およびR4は各々独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル置換アミノ、アシルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、アリール、またはヘテロアリールであり;または薬学的に許容される塩、そのプロドラッグまたは誘導体である。いくつかの好ましい態様において、R3がヒドロキシル基である場合には、R3を含む環上の一つまたは複数の位置に、ヒドロキシル基をインビボでの代謝から保護する化学基(例えば、アルキル鎖)が含まれる。
ある態様において、本発明の化合物は、C'4位のヒドロキシル基および芳香環を有することができる。好ましい態様において、本発明の化合物は、C'4位のヒドロキシル基および芳香環を有する結果として、細胞のROSレベルの上昇を誘導する。別の態様において、細胞ベースのアッセイにおける本発明の効力は、SMPを用いるATPアーゼ阻害実験結果と相関する。実際、好ましい態様において、明らかにミトコンドリアのATPアーゼ活性を阻害しない、細胞傷害性濃度(80μM)の一般的なベンゾジアゼピンおよびPBRリガンド(例えば、PK11195および4-クロロジアゼパム)に比べ、本発明は、明らかにミトコンドリアのATPアーゼ活性を阻害する。このような好ましい態様において、本発明の分子標的はミトコンドリアのATPアーゼである。
オリゴマイシンは、ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼに結合し、状態3から4への遷移を誘発し、その結果、ROS(例えば、O2 -)を生成させる、マクロライド系天然産物である。好ましい態様において、本発明はミトコンドリアF1F0-ATPアーゼのOSCP成分と結合する。いくつかの態様において、本発明のスクリーニングアッセイにより、OSCPの結合相手を決定することが可能になる。OSCPは本来蛍光性のタンパク質である。いくつかの態様において、本発明の被験化合物溶液のOSCPによって過剰発現された大腸菌試料への滴定により、OSCP固有の蛍光が消光される。他の態様において、蛍光性または放射性の被験化合物を直接結合アッセイに使用することができる。他の態様において、競合結合実験を行うことができる。この種のアッセイにおいては、OSCPに対する結合におけるBz-423と比較した被験化合物の結合能力が評価される。いくつかの態様において、本発明の化合物は、OSCP遺伝子の調節(例えば、OSCP遺伝子の発現の改変)を介して、細胞のROSレベルの上昇を低減させ、細胞におけるアポトーシスを減少させる。別の態様において、ATPアーゼモーターの分子の動きを変えることによって、本発明は機能する。
II.細胞増殖および細胞成長の調節因子
いくつかの態様において、本発明の方法および化合物は、細胞増殖の低減を誘導する。他の態様において、本発明の方法および化合物は、細胞増殖およびアポトーシスの低減を誘導する。例えば、本発明の開発中に行われた細胞培養細胞傷害性アッセイによって、本発明の方法および化合物が長期間(例えば、3日間)培養後に細胞成長を阻害することが示された。
III.治療された細胞の発現分析
本発明の開発中に、治療された細胞および非治療の細胞内で異なって発現された遺伝子を同定するための発現プロファイルが得られた。このプロファイルは、本発明の化合物によって誘導された細胞の遺伝子発現フィンガープリントを提供する。このフィンガープリントにより、本発明の化合物に応答して上方制御または下方制御された遺伝子が同定され、どの遺伝子が薬剤スクリーニングおよび化合物の治療効果のモニタリングのための診断マーカーになるかが同定された。これらの遺伝子は、本発明の化合物の効果を模倣する調節の標的にもなり得る。Bz-423存在下で上方制御された遺伝子の発現分析のデータを図4Aに示す。Bz-423存在下で下方制御された遺伝子の発現分析のデータを図4Bに示す。Bz-OMe存在下で上方制御された遺伝子の発現分析のデータを図4Cに示す。Bz-OMe存在下で下方制御された遺伝子の発現分析のデータを図4Dに示す。
例えば、発現プロファイルの分析によって、新規治療薬としてオルニチン脱炭酸酵素抗酵素1(OAZ1)が提供される。OAZ1は、プトレッシン、スペルミジン、およびスペルミンを含むポリアミンの合成および細胞内への輸送を調節する、重要な調節タンパク質である。細胞内でのポリアミンの合成には、いくつかの酵素段階が含まれるが、オルニチン脱炭酸酵素は主としてこのプロセスを調節する酵素である。細胞膜に存在するポリアミン輸送体を阻害し、オルニチン脱炭酸酵素を標的としてタンパク質を分解することによって、OAZ1は細胞内のポリアミンレベルを低減する。ポリアミンは、細胞の生存および成長に必須のものである。ポリアミンの異常な蓄積は、腫瘍の誘発、癌の成長および転移に寄与する。ポリアミンの生合成の阻害剤、および特にジフルオロメチルオルニチン(DFMO)と同定された分子は、その抗癌性および治療能力を確認するための臨床試験がおこなわれている。本発明の好ましい態様において、本発明の化合物で治療される細胞のOAZ1レベルは対照細胞の16倍に誘導される。本発明(例えば、本発明の化合物による治療、遺伝子療法など)はOAZ1レベルを誘導するための直接的または間接的な任意の方法を想定する。
OAZ1は、ポリアミン代謝の重要な制御因子であり、ポリアミン生合成の律速段階を調節するミトコンドリア酵素である、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)の阻害剤として働くことによって、ポリアミンレベルを低減するように機能する。抗酵素による阻害後、ODCが標的となりプロテオソームが分解される。ポリアミンは、細胞の安定性に密接に関係し、細胞の増殖に必要とされる。ポリアミンの合成を阻害することによって、細胞の増殖が抑制される。そのため、別の態様において、所望の生物学的効果を誘導するために、(例えば、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、遺伝子療法、公知または今後同定される阻害剤、本発明の化合物等を用いて)ODCの発現または活性が低減される。
抗酵素1の発現は、転写段階または転写後のレベルで調節される。転写後調節は、この遺伝子産生の調節において特に重要な役割を果たし、ポリマン(負のフィードバックループを介して)またはアルギニンのもう一つの代謝産物であるアグマチンのいずれかに依存する固有の転写フレームシフトによって生じる。ODCの活性は、3H-オルニチンを用いてオルニチンをプトレッシンに定量的に変換することによって得られる。いくつかの態様において、本発明の化合物を用いて細胞を治療することにより、用量依存的に明らかにODC活性が低減する。さらに別の態様において、ODC活性の低減は、同様な条件下で測定されたODCタンパク質レベルの低減に対応する。MnTBAPでプレインキュベートされた細胞では、ROSレベルが低減する。いくつかの態様において、MnTBAPでプレインキュベートされた細胞が本発明の化合物に曝露されると、ODCの阻害は逆転する。
好ましい態様において、高濃度(例えば、>10μM)の本発明の化合物で治療された細胞は、細胞抗酸化剤によって解毒されない、十分な量のROSを産生し、短時間(例えば、18時間)でアポトーシスを引き起こす。好ましい態様において、低濃度(例えば、<10μM)の本発明の化合物で治療された細胞は、アポトーシスを引き起こすには不十分であるが、ODCの阻害または細胞増殖をブロックすることが可能な、低レベルのROS応答を起こす。他の態様において、フェノール性ヒドロキシル基がClまたはOCH3で置換された、本発明の化合物の誘導体は、細胞傷害性が低く、細胞内に低レベルのROS応答を引き起こし、OSCPとゆるく結合し、しかもODC活性を阻害する。さらに別の態様において、フェノール性ヒドロキシル基がClで置換された本発明の化合物の誘導体によって治療された細胞では、非置換の化合物による治療と同程度の増殖低減が見られる。そのため、好ましい態様において、増殖をブロックするがアポトーシスは誘発しない本発明の化合物の化学的誘導体を用いて、抗増殖効果が得られる。
抗原刺激または分裂促進刺激に対応して、リンパ球は、その一つがインビトロでのマクロファージの遊走を阻止できるため遊走阻止因子(MIF)と名付けられた、タンパク質媒介物を分泌する。MIFは抗腫瘍剤でもある。さらに、マクロファージの遊走を阻止するMIFの能力は、傷の治療にも応用できる。MIFは、異なる抗原に対する免疫応答を変更することができる。MIFは、化学薬品および免疫学的解毒システムに結合する。MIFはBz-423によっておよそ10倍誘導された。したがって、本発明は、本発明の化合物の標的としてのMIFの使用を想定する。
本発明によって治療された細胞内にプロフィリンが高レベルで誘導される。プロフィリンは、アクチンモノマーと結合し、いくつかのタンパク質およびホスホイノシチドと相互作用して細胞骨格とシグナル経路を結ぶ。プロフィリンは、アクチンモノマーを取り込み、アクチン上でのATPのADPへの交換を加速し、アクチンフィラメントの代謝回転速度を増大することができる。いくつかの異なる腫瘍化癌細胞株と非腫瘍化細胞株との比較によって、腫瘍細胞内では一貫してプロフィリン1のレベルが低いことがわかった。プロフィリン1のcDNAをCAL51乳癌細胞に形質移入することによって、プロフィリン1のレベルが上昇し、細胞の成長に顕著な効果を与え、ヌードマウスにおける過剰発現細胞クローンの腫瘍発生能を抑制した。したがって、プロフィリン1の誘導(例えば、本発明の化合物または他による)により、癌細胞の腫瘍発生を抑制することができる。
本発明の化合物によって治療された細胞内にインターフェロン調節因子4(IRF-4)が通常のレベルより高いレベルで誘導される。IRF-4は、ホメオスタシスにおいて必須の役割を果たし、リンパ球の成熟に機能する、IRF転写因子ファミリーのリンパ球/脊髄球限定性メンバーである。IRF-4の発現は、静止一次T細胞内で調節され、TCR架橋またはホルボールエステルおよびカルシウムイオノホア(PMA/イオノマイシン)での治療等の刺激による活性化後にmRNAおよびタンパク質のレベルで一時的に発現される。ジャーカット細胞におけるIRF-4の安定した発現によって、インターロイキン(IL)-2、IL-4、IL-10、およびIL-13の合成が強力に推進される。IRF-4は、特徴的な一連のサイトカインを産生するTリンパ球の能力を調節するリンパ球特異的な成分の一つである。エイブルソン形質転換プロB細胞株において、強化されたIRF-4の発現は、生殖系列Igkの転写を誘導するのに十分である。IRF-4を誘導する本発明の化合物の作用は、本発明の化合物がB細胞およびT細胞の優勢プロセスにおける自己免疫疾患に対する影響だけでなく、新生物性のB細胞クローンへ影響する能力の原因となりうる。好ましい態様において、本発明の化合物によって治療された細胞内に細胞死調節タンパク質のGRIM19が通常のレベルより高いレベルで誘導される。細胞成長抑制におけるインターフェロン(IFN)経路の重要性は公知である。研究によって、IFNと全トランスレチノイル酸の組合せが、それぞれの単独使用に比べより強力にインビトロおよびインビボでの細胞成長を阻害することが示されている。IFN/RA誘導細胞死において役割を果たす特異的遺伝子は、アンチセンスノックアウト法によって同定されており、GRIM遺伝子と呼ばれる。GRIM19は、既知の細胞死カテゴリーに含まれていない、新規な細胞死関連遺伝子である。この遺伝子は、核に局在する144-aaタンパク質をコードする。GRIM19の過剰発現によって、IFN/RA治療に応答する、カスパーゼ-9の活性およびアポトーシスによる細胞死が増強される。GRIM19は、前立腺腫瘍抑制に重要なヒト染色体の19p13.2領域に存在し、このタンパク質が新規腫瘍抑制剤となり得ることを示している。本発明の化合物によるGRIM19の誘導は抗腫瘍効果をもたらす。
IV.例示的化合物
本発明の例示的化合物を以下に示す:
Figure 2012107022
またはその鏡像異性体(式中、R1は脂肪族基またはアリールであり;R2は脂肪族基、アリール、-NH2、-NHC(=O)-R5、または水素結合形成に加わる基であって、式中R5はアリール、ヘテロ環、-R6-NH-C(=O)-R7、または-R6-C(=O)-NH-R7であり、R6は1〜6個の炭素を有する脂肪族リンカーであり、R7は脂肪族基、アリール、またはヘテロ環であり;R3およびR4は独立に、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、アリール、またはヘテロ環である);または薬学的に許容される塩、そのプロドラッグまたは誘導体である。
前記構造において、R1は、1〜20個の炭素および1〜20個の水素のヒドロカルビル基である。好ましくはR1は、1〜15個の炭素を有し、より好ましくは1〜12個の炭素を有する。好ましくはR1は、1〜12個の水素を有し、より好ましくは1〜10個の水素を有する。従ってR1は、脂肪族基またはアリール基である。
「脂肪族」という用語は、通常アルキル、アルケニル、アルキニル、脂環式として公知の基を表わす。本明細書において使用される「アリール」という用語は、フェニル環のような1個の芳香環、または互いに結合された(例えばビスフェニル)または互いに融合された(例えば、ナフタレンまたはアントラセン)2個もしくはそれよりも多い芳香環を表わす。アリール基は任意に、低級脂肪族基(例えば、C1-C4アルキル、アルケニル、アルキニル、またはC3-C6脂環式)により置換することができる。加えて、脂肪族基およびアリール基は更に、-NH2、-NHCOCH3、-OH、低級アルコキシ(C1-C4)、ハロ(-F、-Cl、-Brまたは-I)のような、1つまたは複数の官能基により置換することができる。R1は第一に非極性部分であることが好ましい。
前記構造において、R2は、脂肪族、アリール、-NH2、-NHC(=O)-R5、または水素結合に参加する部分であることができ、ここでR5は、アリール、ヘテロ環、R6-NH-C(=0)-R7または-R6-C(=O)-NH-R7であり、ここでR6は、1〜6個の炭素の脂肪族リンカーであり、かつR7は、脂肪族、アリールまたはヘテロ環である。「脂肪族」および「アリール」という用語は、先に定義されている。
本明細書において使用される「水素結合に参加する部分」という用語は、プロトンを受容または供給することができ、これにより水素結合を形成する基を表わす。
水素結合に参加する部分のいくつかの特に非限定的な例は、当技術分野において周知である、フルオロ、酸素含有基および窒素含有基を含む。水素結合に参加する酸素含有基のいくつかの例は、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級カルボニル、低級カルボキシル、低級エーテル、およびフェノール基を含む。本明細書において使用される修飾語「低級」とは、各酸素含有官能基が結合している低級脂肪族基(C1-C4)を意味する。
従って例えば、「低級カルボニル」という用語は、特に、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを意味する。
水素結合形成に参加する窒素含有基のいくつかの非限定的な例は、アミノ基およびアミド基を含む。加えて、酸素および窒素の両原子を含む基も水素結合形成に参加することができる。このような基の例は、ニトロ基、N-ヒドロキシ基および亜硝酸(nitrous)基を含む。
本発明において水素結合受容体は、芳香環のπ電子であることも可能である。しかし本発明の水素結合参加者は、ホウ素のような金属原子を含むそのような基は含まない。更に本発明の実践の範囲内で形成された水素結合は、「二水素結合」として知られている2個の水素の間に形成されたものは含まない(このような二水素結合の更なる説明については、R.H. Crabtree、Science、282:2000-2001[1998]参照)。
「ヘテロ環」という用語は、例えば、1つまたは複数のヘテロ原子を含む3〜6員の芳香族または非芳香族の環を表わす。ヘテロ原子は、同じまたは互いに異なることができる。好ましくは、このようなヘテロ原子の少なくとも1個は窒素である。この環状ヘテロ環に存在することができる他のヘテロ原子は、酸素および硫黄を含む。
芳香族および非芳香族の環状ヘテロ環は、当技術分野において周知である。いくつかの限定されない芳香族環状ヘテロ環の例は、ピリジン、ピリミジン、インドール、プリン、キノリンおよびイソキノリンを含む。限定されない非芳香族ヘテロ環化合物の例は、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロリジンおよびピラゾリジンを含む。酸素含有環状ヘテロ環の例は、フラン、オキシラン、2H-ピラン、4H-ピラン、2H-クロメンおよびベンゾフランを含むが、これらに限定されるわけではない。硫黄含有環状ヘテロ環の例は、チオフェン、ベンゾチオフェン、およびパラチアジンを含むが、これらに限定されるわけではない。
窒素含有環の例は、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピリジン、ピペリジン、ピラジン、ピペラジン、ピリミジン、インドール、プリン、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、トリアゾール、およびトリアジンを含むが、これらに限定されるわけではない。
2個の異なるヘテロ原子を含む環状ヘテロ環の例は、フェノチアジン、モルホリン、パラチアジン、オキサジン、オキサゾール、チアジン、およびチアゾールを含むが、これらに限定されるわけではない。
この環状ヘテロ環は任意で、脂肪族、ニトロ、アセチル(すなわち、-C(=O)-CH3)、またはアリール基から選択された1つまたは複数の基により更に置換される。
R3およびR4の各々は、独立して、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、または置換アミノ(例えば低級アルキル置換アミノ、またはアセチルアミノもしくはヒドロキシアミノ)、または1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基であることができる。R3およびR4の各々が脂肪族基である場合、これは更に、前述のようなヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノまたは置換アミノ基のような1つまたは複数の官能基により置換することができる。「脂肪族」という用語は先に定義されたものである。あるいはR3およびR4の各々は、水素であることができる。
多くの1,4-ベンゾジアゼピンが、tile C3位で環状ヘテロ環に導入されるキラリティーのために、光学異性体として存在することは周知である。光学異性体は、文献において時には、L異性体またはD異性体として説明されることがある。あるいはこれらの異性体は、R対掌体およびS対掌体(enantiomorph)とも称される。簡便化のために、これらの異性体は、対掌体または鏡像異性体と称する。本明細書において説明される1,4-ベンゾジアゼピン化合物は、それらの鏡像異性体型に加え、ラセミ混合物も含む。従って本明細書において「ベンゾジアゼピンまたはそれらの鏡像異性体」の使用は、全ての対掌体に加えそれらのラセミ混合物を含む、説明されたまたは示されたベンゾジアゼピンを意味する。
前記説明より、多くの具体例は、前記一般式で表わされることは明らかである。従ってひとつの例において、R1は脂肪族であり、R2は脂肪族であるのに対し、別の例においては、R1はアリールであり、かつR2は水素結合形成に参加する部分である。あるいは、R1は脂肪族であり、かつR2は-NHC(=O)R5であるかまたは水素結合に参加する部分であることができ、ここでR5は、アリール、ヘテロ環、-R6-NH-C(=O)-R7または-R6-C(=O)-NH-R7であり、ここでR6は1〜6個の炭素の脂肪族リンカーであり、かつR7は、脂肪族、アリール、またはヘテロ環である。各置換基の位置での特定の基の選択から生じる多種多様な亜組合せが可能であり、このような組合せは全て本発明の範囲内である。
更に本開示を通じて与えられた数値の範囲は、その範囲内のあらゆる可能な部分範囲が考えられる融通性のある範囲として構成されることは理解されるべきである。例えば、1個〜10個の炭素の範囲を有する基の説明は、部分範囲、例えば、1個〜3個、1個〜5個、1個〜8個、または2個〜3個、2個〜5個、2個〜8個、3個〜4個、3個〜5個、3個〜7個、3個〜9個、3個〜10個などの炭素を有する基も企図している。従って、1個〜10個の範囲は、多くの可能性のある部分範囲が明確に企図されている範囲の外側境界を表わすこととが理解されるべきである。別の状況における企図される範囲の追加例で、このような範囲がその中に同様の部分範囲を含むようなものを本開示を通じて認めることができる。
本発明のベンゾジアゼピン化合物の一部の具体例は以下を含む。
Figure 2012107022
式中、R2は、
Figure 2012107022
およびジメチルフェニル(全ての異性体)およびジトリフルオロメチル(全ての異性体)である。
以下の化合物も含まれる。
Figure 2012107022
本発明は化合物Bz-423も提供する。
Figure 2012107022
Bz-423は、C-3位に疎水性置換基が存在する点で臨床用途のベンゾジアゼピンとは異なる。この置換は、Bz-423の末梢性のベンゾジアゼピン受容体(「PBR」)への結合を弱く(Kdはおよそ1μM)し、中枢神経系のベンゾジアゼピン受容体への結合を妨げるので、Bz-423は鎮静作用を持たない。
いくつかの態様において、R2は、本発明の化合物がOSCPに結合するのを可能にする任意の化学基である。いくつかの態様において、R2は疎水性芳香族基を含む。好ましい態様において、R2は、ベンゼンより大きな(例えば、非水素置換基を有するベンゼン環、2個またはそれ以上の芳香族環を有する基、7個以上の炭素原子を有する基)疎水性アミノ基を含む。
本発明の別の具体的なベンゾジアゼピン誘導体の例には以下が含まれる:
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
(R1は、Hまたはヒドロキシであり、
R2〜R6はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよく、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの脂肪族基、10個未満の炭素からなる脂環基、置換脂環基、アリール、およびヘテロ環から選択される)
Figure 2012107022
(R1〜R10はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよく、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの脂肪族基、10個未満の炭素からなる脂環基、置換脂環基、アリール、およびヘテロ環から選択される)
Figure 2012107022
Figure 2012107022
(R1〜R11はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよく、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの脂肪族基、10個未満の炭素からなる脂環基、置換脂環基、アリール、およびヘテロ環から選択される)
Figure 2012107022
(R1〜R10はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよく、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの脂肪族基、10個未満の炭素からなる脂環基、置換脂環基、アリール、およびヘテロ環から選択される)
Figure 2012107022
(R1〜R10はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよく、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの脂肪族基、10個未満の炭素からなる脂環基、置換脂環基、アリール、およびヘテロ環から選択される)
Figure 2012107022
(R1〜R6はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよく、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの脂肪族基、10個未満の炭素からなる脂環基、置換脂環基、アリール、およびヘテロ環から選択される)
Figure 2012107022
Figure 2012107022
Figure 2012107022
(式中、R1は、ナフタルアラニン;フェノール;1-ナフタレノール;2-ナフタレノール;
Figure 2012107022
およびキノリンから選択される)。
下式を含む組成物:
Figure 2012107022
式中、R1は、
Figure 2012107022
から選択される。
本発明における全ての誘導体の態様の立体構造はR、S、またはラセミ体である。
本発明のベンゾジアゼピン化合物誘導体の別の具体的な例には以下を含む:
下式を含む組成物:
Figure 2012107022
下式を含む組成物:
Figure 2012107022
式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素;CH3;少なくとも2個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分(例えば、ニトロ基、ニトリル基等)を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミノサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のエーテルサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、式中、R5は、OH;NO2;NR';OR'からなる群より選択され、R'は、少なくとも2個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分(例えば、ニトロ基、ニトリル基等)を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、式中、R6は、水素;NO2;Cl;F;Br;I;SR';およびNR'2からなる群より選択され、R'は上記R5の定義通りであり、式中、R7は、水素;少なくとも2個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、式中、R8はベンゼンより大きな脂環基であって、ベンゼンより大きな脂肪族鎖には、7個以上の非水素原子を含む任意の化学基、およびアリールまたは脂環基が含まれる。いくつかの態様において、R'は、本発明の化合物がその生物学的標的(例えば、ミトコンドリア)に到達するまで、R5の酸素原子をインビボでの代謝から保護する、任意の官能基である。いくつかの態様において、R'保護基は標的部位において代謝され、R5がヒドロキシル基に変換される。
まとめると、多数のベンゾジアゼピン化合物および関連化合物が本明細書において示されている。これらの化合物の1種または複数を、本明細書の他所に説明されたような、細胞死に関連した様々な調節不良障害を治療するために使用することができる。前述の化合物は、薬物スクリーニングアッセイおよび他の診断法においても使用することができる。
V. 薬学的組成物、製剤、ならびに例証的投与経路および投与量の考察
様々な考えられる医薬品および薬学的組成物の例証的態様を、以下に提供する。
A. 医薬品の調製
本発明の化合物は、細胞死の調節不良、異常な細胞成長および過増殖に関連した様々な状態を治療する医薬品の調製において有用である。
さらに、これらの化合物は、化合物の有効性が公知であるまたは推定されるような他の障害を治療する医薬品の調製にも有用である。このような障害は、神経障害(例えば、てんかん)または神経筋障害を含みうるが、これらに限定されるわけではない。化合物の医薬品を調製する方法および技術は、当技術分野において周知である。薬学的製剤および送達経路の例を、以下に説明する。
当業者は、多くの具体的態様を含む、本明細書に説明された化合物の1種または複数が、標準の製薬手法を適用することにより調製されることを理解するであろう。このような医薬品は、薬学の技術分野において周知である送達法を用い、被験者へ送達することができる。
B. 薬学的組成物および製剤の例
本発明のいくつかの態様において、これらの組成物は、単独で投与される一方で、一部の別の態様においては、これらの組成物は、少なくとも1種の先に定義したような活性成分/物質(例えば、ベンゾジアゼピン誘導体)を、固形支持体と共に、あるいは1種または複数の薬学的に許容される担体および任意に他の治療的物質共に含有する薬学的製剤において存在することが好ましい。各担体は、その製剤の他の成分と相溶性があり、被験者にとって有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。
考えられる製剤は、経口、経直腸、鼻腔内、局所(経皮、頬腔内、および舌下を含む)、膣内、非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)および肺内投与に適したものを含む。いくつかの態様において、製剤は、単位剤形で都合良く提供され、薬局の技術分野内で公知の方法により調製される。このような方法は、活性成分を、1種または複数の補助成分を構成している担体と共に会合させる段階を含む。一般にこれらの製剤は、活性成分を、液体担体もしくは細かく粉砕された固形担体または両方と均一かつ密接に会合(例えば、混合)させ、次に必要であるならば製品に成形することにより調製される。
経口投与に適した本発明の製剤は、各々は好ましくは、予め定められた量の活性成分を含有する、カプセル剤、カシェ剤、または錠剤として;散剤または顆粒剤として;水性もしくは非水性液体の液剤または懸濁剤として;または、水中油型液体乳剤もしくは油中水型液体乳剤としてなど、個別の単位として存在することができる。別の態様において、活性成分は、巨丸剤、舐剤またはパスタ剤などとして存在する。
いくつかの態様において、錠剤は、少なくとも1種の活性成分および任意に1種または複数の補助物質/担体を含有し、これは各物質の圧縮または成形により作製される。好ましい態様において、圧縮錠剤は、粉末または顆粒のような自在流れ型の活性成分を、任意に結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、繊維素(starch)グリコール酸ナトリウム、架橋したポビドン、架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤と混合し、適当な機械で圧縮することにより調製される。成形された錠剤は、不活性液体希釈剤により含水した粉末とした化合物(例えば、活性成分)の混合物を適当な機械で成形することにより作製される。錠剤は、任意に被覆してもまたは切り込み線をいれても良く、ならびに例えば望ましい放出プロファイルを提供するために変動する割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることにより、活性成分の徐放または制御放出を提供するように製剤化しても良い。錠剤は任意に、胃ではなく腸管の一部で放出するために、腸溶性コーティングを提供する段階もできる。
口腔内局所投与に適した製剤は、通常ショ糖およびアカシアガムまたはトラガカントガムである矯味矯臭基剤中に活性成分を含有するトローチ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアガムのような不活性基剤中に活性成分を含有する口内錠;ならびに、適当な液体担体中に活性成分を含有する含嗽剤を含む。
本発明の局所投与のための薬学的組成物は、任意に、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、液剤、パスタ剤、ゲル剤、噴霧剤、エアロゾルまたは油剤として製剤化される。代替的態様において、局所製剤は、活性成分、および任意に1種または複数の賦形剤または希釈剤が含浸された絆創膏もしくは接着性硬膏のような、貼付剤または包帯を含む。好ましい態様において、局所製剤は、皮膚または他の罹患部位を通じた活性物質の吸収または浸透を増強する化合物を含有する。このような皮膚浸透増強剤の例は、ジメチルスルホキシド(DMSO)および関連した類似体を含む。
望ましいならば、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも約30質量%の多価アルコール、すなわち、2個またはそれよりも多いヒドロキシル基を有するアルコール、例えばプロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコールならびにそれらの混合物を含む。
いくつかの態様において、本発明の油相乳剤は、公知の方法で、公知の成分により構成される。この相は典型的には、単独の乳化剤(さもなければ公知のエマルゲン(emulgent))を含み、いくつかの態様においては、この相のために更に、少なくとも1種の乳化剤の脂肪もしくは油分または脂肪および油分の両方との混合物を含有することが望ましい。
好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として作用するように、親油性乳化剤と共に含まれる。いくつかの態様においては、油分および脂肪の両方を含むことも好ましい。まとめると、乳化剤は、安定剤を伴うまたは伴わずに、いわゆる乳化ワックスを製造し、このワックスは、油分および/または脂肪と共に、クリーム製剤において油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を作製する。
本発明の製剤における使用に適したエマルゲンおよび乳剤安定剤は、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムがある。
薬学的乳剤製剤において使用されるほとんどの油分中の活性化合物/物質の溶解度は非常に低い可能性が高いため、製剤のための適当な油分および脂肪の選択は、望ましい特性(例えば、化粧料的特性)の達成に基づいている。従ってクリーム剤は、チューブまたは他の容器から流れ出ることを避けるのに適した粘稠度を伴う、油っぽくなく、非汚染性でかつ洗浄可能な製品が好ましい。直鎖または分枝鎖の、一塩基性または二塩基性のアルキルエステル、例えばジ-イソアジピン酸エステル、ステアリン酸イソセチル、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、またはCrodamol CAPとして公知の分枝鎖エステルの配合物を使用することができ、後の三種が好ましいエステルである。これらは、必要とされる特性に応じて、単独で、または組合わせて使用することができる。あるいは、白色軟パラフィンおよび/もしくは流動パラフィンまたは他の鉱油のような高い融点の脂質を使用することができる。
眼への局所投与に適した製剤も、活性成分が、適当な担体、特にその物質の水性溶媒中に溶解または懸濁された点眼剤を含む。
経直腸投与のための製剤は、例えばココアバターまたはサリチル酸のような適当な基剤を伴う坐剤として存在することができる。
膣内投与に適した製剤は、該物質に加え、当技術分野において適していることが公知である担体を含有する、ペッサリー、クリーム剤、ゲル剤、パスタ剤、泡剤またはスプレー剤として存在することができる。
担体が固形である鼻腔内投与に適した製剤は、鼻から吸い込む、すなわち鼻の傍に持ち上げられた粉末の容器から鼻道を通って迅速吸入(例えば強制)する方法で投与される、例えば約20μm〜約500μmの範囲の粒子サイズを有する、粗末を含む。別の担体が液体である投与に適した製剤は、鼻腔用噴霧剤、液滴、またはネブライザーによるエアロゾルを含むが、これらに限定されるわけではなく、該物質の水性または油性溶液を含む。
非経口投与に適した製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および処方を意図されたレシピエントの血液と等張とする溶質液を含有することができる、水性および非水性の等張の滅菌した注射液;ならびに、懸濁化剤および増粘剤を含有することができる、水性および非水性の滅菌懸濁剤、ならびに化合物を血液成分または1つまたは複数の臓器を標的化するようにデザインされているリポソームまたは他の微粒子システムを含む。いくつかの態様において、これらの製剤は、例えば、アンプルおよびバイアルのような、単回投与または反復投与のための密封容器中に存在/製剤化され、ならびに使用直前に、例えば注射用水のような滅菌液体担体の添加のみを必要とする、凍結し乾燥した(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時調合注射液および懸濁液を、先に説明したような滅菌散剤、顆粒剤、および錠剤から調製することができる。
好ましい単位剤形製剤は、物質の、本明細書において先に言及されたような、一日量または単位、分割日量(daily subdose)、またはそれらの適当な画分を含有するものである。
本発明の製剤は、先に特に言及した成分に加え、問題の製剤の型に関して当技術分野において都合の良い他の物質を含有することができることは理解されるべきであり、例えば経口投与に適したものは、甘味剤、増粘剤および香味剤のような更なる物質を含むことができる。本発明の物質、組成物および方法は、他の適当な組成物および療法と組合わせることができることも意図されている。更に別の製剤は任意に、食品添加剤(適当な甘味剤、香料、着色料など)、植物栄養剤(phytonutrient)(例えば、亜麻仁油)、鉱物(例えば、Ca、Fe、Kなど)、ビタミン、および他の許容できる組成物(例えば、複合リノレイン酸)、増量剤、および安定剤などを含む。
C. 例証的投与経路および投与量の考察
例えば、リポソーム封入、微粒子、マイクロカプセル、受容体媒介したエンドサイトーシスなどの、様々な送達システムが知られており、本発明の治療的物質(例えば、ベンゾジアゼピン誘導体)を投与するために使用することができる。送達法は、動脈内、筋肉内、静脈内、鼻腔内、および経口経路を含むが、これらに限定されるわけではない。特定の態様において、本発明の薬学的組成物が治療が必要な領域に局所的に投与されることが望ましいことがあり;これは、例えば手術時の局所輸注、注射またはカテーテル法により達成されるが、これらに限定されない。
本明細書においてそれらの意図された目的に関して有効であると確定された物質は、標的細胞の病的成長およびこれに関連した状態に易罹患性または発症のリスクのある被験者または個体へ投与することができる。物質がマウス、ラットまたはヒト患者のような被験者へ投与される場合、この物質は、薬学的に許容される担体に添加することができ、ならびに全身的または局所的に被験者へ投与することができる。有益に治療され得る患者を決定するために、組織試料を患者から採取し、その細胞を、該物質に対する感受性についてアッセイする。
治療的量は、経験的に決定され、これは治療される病理、治療される被験者ならびに物質の有効性および毒性により変更される。動物に送達される場合、この物質の有効性を更に確認する方法が有用である。動物モデルの一例は、MLR/MpJ-lpr/lpr(「MLR-lpr」)(Jackson Laboratories、バーハーバー、MEから入手可能)である。MLR-lprマウスは、全身性自己免疫疾患を発症する。あるいは他の動物モデルは、例えば、ヌードマウスに本明細書に定義された過増殖性細胞、癌細胞または標的細胞を約105〜約109個、皮下接種することにより、腫瘍成長を誘導することにより発症することができる。腫瘍が確立された時点で、本明細書に説明された化合物が、例えば腫瘍周辺への皮下注射により投与される。腫瘍サイズの縮小を決定するための腫瘍の測定は、1週間に2回、ベニエルキャリパー(venier caliper)を用いて行われる。他の動物モデルも、適宜使用することができる。前述の疾患および状態に関するそのような動物モデルは、当技術分野において周知である。
いくつかの態様において、インビボ投与は、1回投与、治療過程を通じ連続的または間欠的に実行される。投与の最も有効な手段および用量を決定する方法は、当業者に周知であり、かつ療法に使用される組成物、療法の目的、治療される標的細胞、および治療される被験者に応じて変動する。単回または反復投与は、担当医により選択された投与量レベルおよびパターンにより実行される。
これらの物質の適当な用量剤形および投与法は、当業者により容易に決定される。好ましくは、これらの化合物は、約0.01mg/kg〜約200mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kg〜約100mg/kg、更により好ましくは約0.5mg/kg〜約50mg/kgで投与される。本明細書に説明された化合物は、別の物質(例えば、増感する物質)と共に同時投与される場合、その有効量は、該物質が単独で使用される場合よりも少なくてよいことがある。
薬学的組成物は、経口、鼻腔内、非経口または吸入療法により投与することができ、ならびに錠剤、トローチ剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、アンプル、坐剤またはエアロゾルの形をとることができる。これらは更に、水性または非水性希釈剤中の活性成分の懸濁剤、液剤、および乳剤、シロップ剤、顆粒剤または散剤の形をとることもできる。薬学的組成物は、本発明の物質に加え、他の薬学的活性化合物または複数の本発明の化合物を含有することもできる。
より具体的に述べると、活性成分とも称される本発明の物質は、経口、経直腸、鼻腔内、局所(経皮、エアロゾル、頬腔内および舌下を含むが、これらに限定されるわけではない)、経膣、非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含むが、これらに限定されるわけではない)および肺内を含むが、これらに限定されるわけではないどちらか適当な経路により、療法のために投与することができる。好ましい経路は、レシピエントの状態および年齢、ならびに治療される疾患により変動することも理解される。
理想的には、この物質は、罹患部位で活性化合物の最高濃度を達成するように投与されなければならない。これは、例えば、任意に、生理食塩水内の物質の静脈内注射、または活性成分を含有する、例えば、錠剤、カプセル剤またはシロップ剤などの経口投与により達成される。
この物質の望ましい血液レベルは、罹患組織内で活性成分の治療的量を提供するための連続輸注により維持してもよい。機能的組合せの使用は、各個別の治療的化合物または薬物が単独で使用される場合に必要とされる量よりも、各抗ウイルス剤成分のより低い総用量を必要とする治療的組合せを提供し、これにより副作用を軽減することが考えられる。
D. 例証的同時投与経路および投与の考察
本発明は、本明細書において説明された化合物の1種または複数の追加の活性物質との同時投与に関連する方法も含む。実際、本発明の化合物を同時投与することにより、先行技術の療法および/または薬学的組成物を増強する方法を提供する段階は本発明の更なる局面である。同時投与法において、これらの物質は、これらの物質は、同時または逐次に投与することができる。ひとつの態様において、本明細書に説明された化合物は、他の活性物質の前に投与される。薬学的製剤および投与様式は、先に説明されたうちの任意のものであることができる。加えて、2種またはそれよりも多い同時投与された化学物質、生物学的物質または照射は、異なる様式または異なる処方で各々投与することができる。
同時投与される1種または複数の物質は、治療される状態の種類に応じて決まる。例えば、治療される状態が癌である場合、追加の物質は、化学療法薬または放射線であることができる。治療される状態が自己免疫障害である場合、追加の物質は、免疫抑制剤または抗炎症剤であることができる。治療される状態が慢性炎症である場合、追加の物質は、抗炎症剤であることができる。抗癌剤、免疫抑制剤、抗炎症剤のような同時投与され、ならびに当技術分野において周知の任意の物質であることができる追加物質は、臨床用途において現在使用されているものを含むが、これらに限定されるわけではない。放射線療法の適当な種類および線量の決定も、当技術分野の技術範囲内であるか、または比較的容易に決定することができる。
異常なアポトーシスに関連した様々な状態の治療は、一般に、下記のふたつの主要な要因により制限される:(1)薬物耐性の発生、および(2)公知の治療的物質の毒性。ある種の癌において、例えば、化学療法および放射線療法に対する抵抗性は、アポトーシスの阻害に関連していることが示されている。一部の治療的物質は、非特異的リンパ球毒性、腎毒性および骨髄毒性を含む、有害な副作用を有する。
本明細書に説明された方法は、これらの問題点の両方に対処している。薬剤耐性は、用量増大が治療的恩恵を実現するために必要な場合に、本明細書に説明された化合物を、公知の物質と共に同時投与することにより克服される。本明細書に説明された化合物は、公知の物質に対して標的細胞を増感するように見え(逆も同様)、従って治療的恩恵を実現するためにより少ないこれらの物質が必要とされる。
特許請求された化合物の増感機能は、公知の療法の毒性作用に関連した問題点にも対処している。公知の物質が毒性である場合に、全ての症例において、特に薬物耐性が必要量を増大した症例において、投与される用量を制限することが望ましい。特許請求された化合物が公知の物質と同時投与される場合、これらは必要量を減少し、このことは次に有害な作用を軽減する。更に特許請求された化合物はそれ自身は大用量で有効かつ無毒の両方であるので、これらの化合物の割合が公知の毒性治療薬よりも多い同時投与は、毒性作用を最小化する一方で、所望の作用を実現するであろう。
VI. 薬物スクリーニング
本発明の好ましい態様において、本発明の化合物、および他の可能性のある有用な化合物は、ミトコンドリアATP合成酵素複合体のオリゴマイシン感受性付与タンパク質(OSCP)部分へのそれらの結合親和性について、スクリーニングされる。特に好ましい態様において、化合物は、組換えOSCPタンパク質へのそれらの結合親和性を測定する段階により、本発明の方法における使用のために選択される。薬物および他の小分子の受容体への結合親和性を測定するための多くの適当なスクリーニングは、当技術分野において公知である。いくつかの態様において、結合親和性スクリーニングは、インビトロシステムにおいて行われる。別の態様において、これらのスクリーニングは、インビボまたはエクスビボシステムにおいて行われる。いくつかの態様において、本発明の化合物の投与後の細胞内ATPまたはpHレベルの測定は、この方法の有効性の指標を提供し、好ましい本発明の態様は、細胞内ATPレベルの定量を必要としない。
追加の態様は、本発明の特定の企図された方法および化合物の有効性を測定するための、細胞および/または組織のスーパーオキシドレベル(例えば、細胞内)の測定に関する。これに関して当業者は、細胞および/または組織におけるスーパーオキシドレベル測定に有用な多くのアッセイおよび方法を理解しかつ提供する段階ができる。
いくつかの態様において、構造に基づいた仮想スクリーニング法が、本発明の化合物のOSCPとの結合親和性を推定するために企図されている。
ベンゾジアゼピンまたは他の化合物のOSCPへの結合速度または親和性を測定する段階ができる任意の適当なアッセイを利用することができる。例は、Bz-423を用いた競合結合、表面プラズマ共鳴(SPR)および放射性免疫沈降アッセイ(Lowmanら、J. Biol. Chem.、266:10982[1991])を含むが、これらに限定されるわけではない。表面プラスモン共鳴技術は、金、銀、クロムまたはアルミニウムのような伝導性金属の薄層フィルムで被覆された表面が関連しており、ここで表面プラスモンと称される電磁波は、表面プラスモン共鳴角と称される特定の角度で金属ガラス境界面の光の入射ビームにより誘導することができる。捕獲された巨大分子の結合後の溶液と金属表面の間の界面領域の反射率の変化は、SPR角度の変化を引き起こし、これは直接測定する段階ができるか、もしくは金属表面の下側から反射した光の量の変化を引き起こす。このような変化は、SPR装置表面に結合している分子の質量および他の光学特性に直接関連することができる。このような原理に基づいたいくつかのバイオセンサーシステムが明らかにされている(例えば、国際公開公報第90/05305号参照)。いくつかの市販されているSPRバイオセンサー(例えば、BiaCore社、ウプスラ、スウェーデン)がある。
いくつかの態様において、化合物は、ミトコンドリアATP合成酵素活性を調節するそれらの能力について、細胞培養物またはインビボ(例えば、非ヒトまたはヒト哺乳類)においてスクリーニングされる。細胞増殖アッセイ(例えばPromega社、マジソン、WIおよびStratagene社、ラホヤ、CAから市販されている)および細胞に基づく二量体化アッセイを含むが、これらに限定されるわけではないどちらか適当なアッセイを利用することができる(例えば、Fuhら、Science、256:1677[1992];Colosiら、J. Biol. Chem.、268:12617[1993]参照)。本発明における使用が認められる追加のアッセイ様式は、細胞ATPレベル、および細胞スーパーオキシドレベルを測定するためのアッセイを含むが、これらに限定されるわけではない。
本発明は更に、望ましい特性(例えば、結合親和性、活性など)を増大するため、または望ましくない特性(例えば、非特異的反応性、毒性など)を最小化するために、本発明の組成物を修飾および誘導体化する方法も提供する。化学誘導体化の原理は、良く理解されている。いくつかの態様において、親化合物から誘導された子供化合物のライブラリー作成のために、反復デザイン法および化学合成法が使用される。別の態様において、慣例的実験により結果を確認する前に、コンピュータ(in silico)においてリガンド-受容体相互作用を推定およびモデル化するために、理論的デザイン法が使用される。
VII.治療への応用
A.一般的な治療への応用
特に好ましい態様において、本発明の組成物(例えば、ベンゾジアゼピン誘導体)は、損傷された細胞または組織におけるミトコンドリアATPシンターゼ(ミトコンドリアF0F1ATPアーゼと呼ばれる)活性の調節(例えば、阻害または促進)による数多くの病状(細胞または組織における壊死および/またはアポトーシス過程の不完全な調節を特徴とする疾病、異常な細胞成長および/または過剰増殖を特徴とする疾病等)のいずれか一つまたは複数に苦しむ患者に治療効果を提供する。別の好ましい態様において、本発明の組成物は、自己免疫疾患/慢性炎症(例えば、乾癬)の治療に使用される。さらに別の態様において、本発明の組成物は、障害を生じた(例えば、閉塞した)血管治療のために、狭窄症治療と組み合わせて使用される。
特に好ましい態様において、本発明の組成物は、多サブユニットタンパク質複合体であるミトコンドリアATPシンターゼ複合体の特定のサブユニットに結合することによって、ミトコンドリアATPシンターゼ複合体の活性を阻害する。本発明は特定の機序または投与される薬剤の特定の作用論に限定されないが、いくつかの態様において、本発明の組成物は、ミトコンドリアATPシンターゼ複合体のオリゴマイシン感受性付与タンパク質(OSCP)に結合する。同様に、本発明の組成物がOSCPに結合した場合、最初の作用はミトコンドリアATPシンターゼ複合体の全面的な阻害であって、結合による下流の帰結は、ATPレベルまたはpHレベルの変化ならびに活性酸素種(例えば、O2 -)の産生であると考えられる。さらに別の好ましい態様において、本発明は特定の機序または投与される薬剤の特定の作用論に限定されないが、フリーラジカルの生成によって最終的には細胞が殺されると考えられる。さらに別の態様において、本発明は特定の機序または投与される薬剤の特定の作用論に限定されないが、本発明の化合物および方法を用いたミトコンドリアATPシンターゼ複合体の阻害によって、治療的に有用な細胞増殖の阻害が行われる。
したがって、本発明で具体化される好ましい方法は、ミトコンドリアATPシンターゼ複合体のオリゴマイシン感受性付与タンパク質(OSCP)部への結合を通して損傷された細胞または組織におけるミトコンドリアATPシンターゼ複合体の活性の調節(例えば、阻害または促進)を行う、本発明の化合物を提供することで患者に治療的利点を提供する。重要なことに、OSCPはそれ自体では生物学的活性を有していない。
このように、幅広い意味において、本発明の好ましい態様は、細胞または組織における壊死および/またはアポトーシス過程の不完全な調節を特徴とする多くの疾病、または異常な細胞成長および/または過剰増殖を特徴とする疾病等を、非限定的に、ミトコンドリアATPシンターゼ複合体のオリゴマイシン感受性付与タンパク質(OSCP)成分に結合することを含め、ミトコンドリアATPシンターゼ複合体の活性を調節することによって、治療することができるという知見を対象としている。本発明は、非限定的に、本明細書に明確に記載されている、化合物および方法の実施を目的とするものである。実際、当分野の技術者なら、本明細書に特に記載されてない数多くの他の化合物(例えば、非ベンゾジアゼピン誘導体)が、ミトコンドリアATPシンターゼの活性を調節する本明細書に記載の方法に適していると理解できる。
このように、本発明は、当技術分野において公知または今後開発される任意の数多くの好適な化合物が任意選択で本発明の方法において使用可能であることを明確に企図する。例えば、非限定的に、オリゴマイシン、オサマイシン、シトバリシン、バフィロマイシン、レスベラトロル、ピセアタノール、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCD)等を含む化合物が本発明の方法において使用可能である。ただし、本発明は上記の方法または化合物に限定されない。一つの態様において、本発明の方法において有用である可能性のある化合物は、文献に記載された好適な化合物から選択することができる(例えば、K. B. Wallace and A. A. Starkov, Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol., 40:353-388(2000);A. R. Solomon et al., Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A., 97(26):14766-14771(2000)参照)。
いくつかの態様において、本発明の方法において有用である可能性のある化合物は、その効力に関し、米国国立癌研究所の癌細胞株(NCI-60)に対してスクリーニングされる(例えば、A. Monks et al., J. Natl. Cancer Inst., 83:757-766(1991);K. D. Paull et al., J. Natl. Cancer Inst., 81:1088-1092(1989)参照)。好適なスクリーニング法(例えば、自己免疫疾患モデル等)は当技術分野の範囲内である。
一つの局面において、例示的化合物の誘導体(例えば、薬学的に許容される塩、類似体、立体異性体等)または他の好適な化合物も本発明の方法において有用であると考えられる。
他の好ましい態様において、本発明の組成物は、障害を生じた(例えば、閉塞した)血管治療のために、狭窄症治療と組み合わせて使用される。別の態様において、心臓血管治療のために、狭窄症治療と組み合わせて使用される。
血管狭窄症は、血管(例えば、大動脈弁)が狭くなった時に発症する病状である。例えば、大動脈弁狭窄症は、心臓の下側の左の部屋(左心室)と大動脈と呼ばれる太い血管との間の弁が狭くなると発症する心臓の病状である。この弁が狭くなると(例えば、狭窄症)、血液が身体全体に流れる空間が小さくなりすぎる。通常は左心室が酸素の多い血液をポンピングして、全身の動脈系に枝分かれする大動脈を介して身体に送る。心臓がポンピングする時、大動脈弁の3個の弁または尖弁は一方向に開き、血液が心室から大動脈へ流れ込むのを可能にする。鼓動と鼓動の間は、弁がしっかり閉まって、血液が弁を通って逆流しないようにする。大動脈弁に障害が生じると、弁が狭くなり(狭窄し)、心臓自体を含む体の器官に送られる血液が減少する。一旦発症すると、大動脈弁狭窄症の人々の長期間の見通しは暗い。心不全を発症し大動脈弁狭窄症の治療を受けていない人の平均余命は3年またはそれ以下である。
障害が生じた弁の治療法にはいくつかの種類(例えば、バルーン膨張、切除、アテローム切除法、またはレーザー治療法)がある。障害が生じた心臓弁の治療法の一つが血管形成術である。血管形成術には、先端にバルーンをつけたチューブすなわちカテーテルを狭くなったまたは閉塞された動脈にさしこみ、動脈を広げることが含まれる。通常、バルーンを膨らませ縮ませることを数回繰り返すと、動脈腔が広がる。
血管形成術または弁拡大法に対し共通する制約は再狭窄である。再狭窄は、例えば、動脈のバルーン膨張、切除、アテローム切除法、またはレーザー治療等で動脈の狭窄部を広げた際の外傷によって、抹消動脈または冠動脈が再閉塞することである。これらの血管形成術による、再狭窄の発生率は、定義づけ、血管の位置、損傷の大きさおよび多くの形態学的および臨床的要因によるが、およそ20〜50%である。再狭窄は、血管形成術によって生じた動脈壁の損傷に対する自然治癒反応であると考えられる。治癒反応は、損傷部位での血栓症の機序で始まる。治癒過程の複雑な段階の後に、脈管内膜が過形成され、内膜の平滑筋細胞が無秩序に遊走および増殖し、細胞外のマトリックス形成と組み合わされて、動脈が再び狭窄または閉塞される。
再狭窄を防止する試みとして、金属製血管内ステントを冠動脈または抹消動脈に永続的にインプラントすることがおこなわれている。ステントは、通常、カテーテルで血管管腔に挿入され、膨らまされて動脈壁の損傷部に接触し、管腔の機械的支持体となる。しかし、ステントが配置されても再狭窄が起こることがわかっている。また、ステント自体が望ましくない局所的血栓症を引き起こす。この血栓症の問題に対処するため、ステントを入れた人々は抗凝結薬および抗血小板薬による徹底した全身的な治療も受ける。
再狭窄問題に対処するため、内皮細胞が播種されたステントが提案されている(Dichek, D. A. et al., Seeding of Intravascular Stents With Genetically Engineered Endothelial Cells;Circulation 1989;80:1347-1353)。この文献の実験では、細菌のβ-ガラクトシダーゼまたはヒト組織型プラスミノーゲン活性化因子をレトロウイルスで遺伝子導入されたヒツジの内皮細胞がステンレススチール製ステントに播種され、ステントを覆うまで生育された。したがって、内皮細胞は、血管壁に送達されると、治療のためのタンパク質を供給することができた。ステントから血管壁に治療用物質を供給する他の方法も提案されており、例えば、国際公開公報第91/12779号の「管腔内薬剤溶離性人工器官」、および国際公開公報第90/13332号の「徐放性薬剤送達系を有するステント」が挙げられる。これらの特許出願においては、再狭窄発生を低減するために、ステントから、抗血小板薬、抗凝結薬、抗菌薬、抗炎症薬、代謝拮抗剤、および他の薬剤を供給できることが示されている。さらに、一酸化窒素放出剤等の他の血管作用薬も使用できる。
再狭窄の他の原因は患部組織の過剰増殖である。好ましい態様においては、本発明の抗増殖特性によって再狭窄が阻止される。薬物溶離ステントは当技術分野において周知である(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,697,967号、米国特許第5,599,352号、米国特許第5,591,227号参照)。好ましい態様において、本発明の組成物は、障害を起こした(例えば、閉塞した)血管治療の際に薬物溶離ステントから溶離される。別の態様において、本発明の組成物は、障害を起こした心臓血管治療の際に薬物溶離ステントから溶離される。
薬学的化合物製造分野および製剤分野の技術者なら、本明細書に開示した方法で使用するための好適な化合物を選択する場合、適合性の判断には、非限定的に、各化合物の、毒性、安全性、効力、入手しやすさ、およびコストが含まれることを認識すると考えられる。
B.自己免疫疾患および慢性炎症の治療への応用
自己免疫疾患および慢性炎症は、細胞増殖調節および/または細胞アポトーシス調節が不完全なためにおこることが多い。ミトコンドリアは、細胞アポトーシスの調節および実施において重要な役割を果たしている。ミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)は、ミトコンドリア膜の内側および外側に広がる孔であって、アポトーシス促進粒子の調節において機能する。MPTPが一時的に開くことによって、シトクロームcおよびアポトーシス誘発因子がミトコンドリア膜内から放出され、その結果、細胞アポトーシスが起こる。
オリゴマイシン感受性付与タンパク質(OSCP)は、F0F1ミトコンドリアATPシンターゼ/ATPアーゼのサブユニットであって、ミトコンドリア膜内酵素のF0セクター間のプロトン勾配のカップリングにおいて機能する。好ましい態様において、本発明の化合物はOSCPと結合し、スーパーオキシドレベルおよびシトクロームcレベルを上昇させ、細胞アポトーシスを増大させ、かつ細胞増殖を阻害する。アデニンヌクレオチド転移因子(ANT)は、ミトコンドリア膜内に広がり、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)の中央に存在する、30kDのタンパク質である。チオール酸化剤およびアルキル化剤は、ANTのマトリックス側の三つの非対システインの一つまたは複数を変性することによって活性化させる、MPTPの強力な活性化因子である。4-(N-(S-グルタチオニルアセチル)アミノ)フェニル酸化砒素、
Figure 2012107022
は、ANTを阻害する。
本発明の化合物および方法は、自己免疫障害および慢性炎症障害の治療において有用である。そのような態様において、本発明は、自己免疫障害および/または慢性炎症障害を患う被験者に以下の式を有する組成物を提供し:
Figure 2012107022
Figure 2012107022
式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素;CH3;少なくとも2個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分(例えば、ニトロ基、ニトリル基等)を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のエーテルサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、式中、R5は、OH;NO2;NR';OR'からなる群より選択され、R'は、少なくとも1個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分(例えば、ニトロ基、ニトリル基等)を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、式中、R6は、水素;NO2;Cl;F;Br;I;SR';およびNR'2からなる群より選択され、R'は上記R5の定義通りであり、式中、R7は、水素;少なくとも2個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、式中、R8は、7個以上の非水素原子を含む任意の化学基を含むベンゼンより大きな脂環基であって、アリールまたは脂環基である。いくつかの態様において、R'は、本発明の化合物がその生物学的標的(例えば、ミトコンドリア)に到達するまで、R5の酸素原子をインビボでの代謝から保護する、任意の官能基である。いくつかの態様において、R'保護基は標的部位において代謝され、R5がヒドロキシル基に変換される。
VIII.ATPアーゼ阻害剤および治療用阻害剤の同定方法
本発明は、F1F0-ATPアーゼを標的とする化合物を提供する。さらに、本発明は、自己免疫疾患の治療のために、F1F0-ATPアーゼを標的とする化合物、具体的には低毒性の化合物、を提供する。さらに本発明は、F1F0-ATPアーゼを標的とする化合物を同定する方法を提供する。また、本発明は、F1F0-ATPアーゼを標的とする化合物の治療への応用を提供する。
真核細胞内のATPのほとんどはミトコンドリアF1F0-ATPアーゼによって合成される(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、C. T. Gregory et al., J. Immunol., 139:313-318(1987);J. P. Portanova et al., Mol. Immunol., 32:117-135(1987);M. J. Shlomchik et al., Nat. Rev. Immunol., 1:147-153(2001)参照)。F1F0-ATPアーゼは、正常な生理学的条件下で、ATPを合成し加水分解するが、F1F0-ATPアーゼが合成するのはATPだけである(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Nagyvary J. et al., Biochem. Educ. 1999;27:193-199 参照)。ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼは、3つの主要なドメイン:F0、F1、および末梢固定子(peripheral stator)からなる。F1は、触媒部位を含み、マトリックス内に存在する、酵素部分である(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Boyer, PD, Annu. Rev. Biochem. 1997;66:717-749参照)。このドメインは、高度に保存され、サブユニット組成のα3β3γδεを有する。ウシF1の特徴的なX線構造から、α3β3は六角形の筒状でγサブユニットが筒の中心にあることがわかっている。F0は、ミトコンドリアの膜内に存在し、プロトンチャンネルを含む。プロトンが膜内部からマトリックスに移動することによって、ATP合成を行うエネルギーが生じる。末梢固定子は、物理的にも機能的にもF0をF1に結合する数種類のタンパク質から構成される。固定子は、コンホメーション変化をF0からATP合成を調節する触媒ドメインに伝達する(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Cross RL, Biochim. Biophys. Acta 2000;1458:270-275参照)。
ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼ阻害剤は、F1F0-ATPアーゼの機構研究において非常に有用なツールである(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、James AM, J. Biomed. Sci. 2002;9:475-487参照)。F1F0-ATPアーゼ阻害剤は細胞傷害性であることが多いため、癌および他の過剰増殖障害用の治療剤として研究されてきた。マクロライド(例えば、オリゴマイシンおよびアポトリジン)はF1F0-ATPアーゼの非競合的阻害剤である(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Salomon AR, et al., PNAS 2000;97:14766-14771;Salomon AR, et al., Chem. Biol. 2001;8:71-80参照)。マクロライドはF0に結合しチャンネルを通るプロトンの流れをブロックして、F1F0-ATPアーゼを阻害する。マクロライドは強力であり(例えば、オリゴマイシンのIC50は10nMである)、[ATP]を大幅に減少させうる。そのため、マクロライドは、許容できないほど小さな治療指数を有し、高度に毒性である(例えば、オリゴマイシンのげっ歯類におけるLD50は0.5mg/kgで日用量2日分である)(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Kramar R, et al., Agents & Actions 1984, 15:660-663参照)。F1F0-ATPアーゼの他の阻害剤にはBz-423が含まれ、これは(本明細書に記載のように)F1内のOSCPに結合する。Bz-423のKi値はおよそ9μMである。
活発に呼吸している(状態3呼吸と呼ばれる)細胞内で、F1F0-ATPアーゼを阻害すると呼吸がブロックされ、ミトコンドリアは休止状態(状態4と呼ばれる)になる。状態4においては、複合体IIIでO2をO2 -に還元する、MRCが状態3に比べて減少する(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、N. Zamzami et al., J. Exp. Med., 181:1661-1672(1995)参照)。例えば、細胞をオリゴマイシンまたはBz-423で処理すると、複合体Vが阻害される結果として、細胞内のO2 -レベルが上昇する。オリゴマイシンの場合は、ATPを有する補足細胞が細胞死から保護するが、抗酸化剤に対しては保護せず、細胞死はATPの低下によることを示す(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Zhang JG, et al., Arch. Biochem. Biophys. 2001;393:87-96;McConkey DJ, et al., The ATP switch in apoptosis. In:Nieminen La, ed. Mitochondria in pathogenesis. New York:Plenum, 2001:265-277参照)。Bz-423が誘導する細胞死は抗酸化剤によってブロックされ、ATPを有する細胞を補足しても影響がなく、Bz-423がROS依存性の細胞死を行うことが示された(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、N. B. Blatt, et al., J. Clin. Invest., 2002, 110, 1123参照)。このように、F1F0-ATPアーゼ阻害剤は、毒性(例えば、オリゴマイシン)または治療性(例えば、Bz-423)のいずれかである。
本発明は、毒性F1F0-ATPアーゼ阻害剤と治療性F1F0-ATPアーゼ阻害剤とを区別する方法を提供する。治療能力を有するF1F0-ATPアーゼ阻害剤(例えばBz-423)は、新規の阻害様式を示す。具体的には、Bz-423のように利点を有するF1F0-ATPアーゼ阻害剤は、高基質濃度で酵素-基質複合体のみに結合し、kcat/Km比を変化させない、非競合的阻害剤である。この知見が、治療能力を有するF1F0-ATPアーゼ阻害剤を毒性化合物から区別する基礎となる。
本発明は、自己免疫疾患の治療として、F1F0-ATPアーゼを標的とする化合物を提供する。具体的には、本発明は、F1F0-ATPアーゼを標的とするがkcat/Km比を変化させない化合物を同定する方法を提供する。さらに、本発明は、F1F0-ATPアーゼを標的とする化合物の治療への応用を提供する。
A.ATPアーゼ阻害性化合物
本発明は、F1F0-ATPアーゼを阻害する化合物を提供する。いくつかの態様において、これらの化合物は、フリーのF1F0-ATPアーゼには結合せず、F1F0-ATPアーゼ-基質複合体には結合する。これらの化合物は、高基質濃度で最大の活性を示し、低基質濃度で最小の活性(例えば、F1F0-ATPアーゼ阻害)を示す。好ましい態様において、これらの化合物は、F1F0-ATPアーゼのkcat/Km比を変化させない。本発明のF1F0-ATPアーゼ阻害剤の特性は、急性毒性で致死性のF1F0-ATPアーゼ阻害剤であるオリゴマイシンの特性とは対照的である。オリゴマイシンは、フリーのF1F0-ATPアーゼおよびF1F0-ATPアーゼ-基質複合体の両方に結合しkcat/Km比を変更する、非競合的阻害剤である。
F1F0-ATPアーゼを阻害するがkcat/Km比を変化させない本発明の化合物は、いくつかの態様において、本明細書に記載する構造を有する。ただし、本発明の方法で治療用の阻害剤と同定される他の構造の化合物も本発明に含まれる。
B.ATPアーゼ阻害剤の同定
本発明は、自己免疫疾患の治療において有用な化合物を同定する(例えば、スクリーニングする)方法を提供する。本発明は、特定の種類の化合物に限定されない。好ましい態様において、本発明の化合物には、薬学的組成物、小分子、抗体、大分子、合成分子、合成ポリペプチド、合成ポリヌクレオチド、合成核酸、アプタマー、ポリペプチド、核酸、およびポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されるわけではない。本発明は、自己免疫疾患の治療において有用な化合物を同定する特定の方法には限定されない。好ましい態様において、自己免疫疾患の治療において有用な化合物は、F1F0-ATPアーゼを阻害する能力を有するがkcat/Km比を変化させないものとして同定される。
C.F1F0-ATPアーゼ阻害剤の治療への応用
本発明は、疾病(例えば、神経変性性疾患、アルツハイマー病、虚血性再灌流障害、運動神経性障害、非ホジキンリンパ腫、リンパ性白血病、皮膚T細胞白血病、自己免疫疾患、癌、充実性腫瘍、リンパ腫、および白血病)を治療するための方法を提供する。本発明は、特定の治療形態に限定されない。好ましい態様において、治療には、症状改善、症状予防、障害予防、および障害改善が含まれるが、これらに限定されるわけではない。本発明は、インビボ、インビトロ、および/またはエクスビボ環境内での自己免疫疾患治療に応用可能な方法を提供する。
いくつかの態様において、本発明は、標的細胞を阻害することによって、自己免疫疾患を治療する。本発明は、特定の細胞阻害方式に限定されない。好ましい態様において、細胞阻害には、細胞成長阻害、細胞増殖阻害、および細胞死が含まれるが、これらに限定されるわけではない。好ましい態様において、標的細胞の阻害は、標的細胞を本発明のF1F0-ATPアーゼ阻害剤に接触させることによって行われる。別の態様において、標的細胞の阻害は、本発明のF1F0-ATPアーゼ阻害剤がF1F0-ATPアーゼを標的化することによって行われる。本発明は、特定のF1F0-ATPアーゼ阻害剤に限定されない。好ましい態様において、F1F0-ATPアーゼ阻害剤は、F1F0-ATPアーゼを阻害する能力を有するがkcat/Km比を変化させない。別の好ましい態様において、F1F0-ATPアーゼ阻害剤はBz-423または本明細書に記載の他の化合物である。
本発明はさらに、治療が必要な被験者内の標的細胞の病状を選択的に阻害する方法を提供する。本発明は、標的細胞の病状を阻害する特定の方法に限定されない。好ましい態様において、標的細胞の病状は、本発明化合物の有効量の投与によって阻害される。本発明は、特定の化合物に限定されない。好ましい態様において、化合物は、F1F0-ATPアーゼを阻害するがkcat/Km比を変化させない。
下記実施例は、本発明のある好ましい態様を明らかにしかつ更に例証するために提供されており、それらの範囲を限定するために構成されるものではない。
実施例1
化合物の調製
ベンゾジアゼピン化合物は、固相または可溶性相(soluble phase)のどちらかのコンビナトリアル合成法に加え、良く確立された技術の個別の基本を用いて調製される。例えば、Boojamra, C.G.ら(1996);Bunin, B.A.ら(1994);Stevens, S.Y.ら(1996);Gordon, E.M.ら(1994);および、米国特許第4,110,337号および第4,076,823号を参照されたい(これらは本明細書に参照として組み入れられる)。例証のために、下記の一般的方法を提供する。
1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン化合物の調製
様々な1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン誘導体を非常に高い全体収率で調製するために改良された固相合成法が、文献において報告されている(例えば、BuninおよびEllman、J. Am. Chem. Soc.、114:10997-10998[1992]参照)。これらの改良された方法を用い、1,4-ベンゾジアゼピン-2-オンが、3種の個別の成分:2-アミノベンゾフェノン、α-アミノ酸、および(任意に)アルキル化剤から、固形支持体上で構築される。
好ましい2-アミノベンゾフェノンは、置換2-アミノベンゾフェノン、例えば、ハロ置換、ヒドロキシ置換、およびハロヒドロキシ置換2-アミノベンゾフェノン、例えば4-ハロ-4'-ヒドロキシ-2-アミノベンゾフェノンを含む。好ましい置換2-アミノベンゾフェノンは、4-クロロ-4'-ヒドロキシ-2-アミノベンゾフェノンである。好ましいα-アミノ酸は、20種の一般的天然α-アミノ酸に加え、α-アミノ酸を模倣している構造、例えばホモフェニルアラニン、ホモチロシンおよびチロキシンを含む。
アルキル化剤は、活性化されたおよび未活性化された求電子試薬両方を含み、その多種多様なものが当技術分野において周知である。好ましいアルキル化剤は、活性化された求電子試薬p-ブロモベンジルブロミドおよびブロモ酢酸t-ブチルを含む。
このような合成の第一段階において、2-アミノベンゾフェノン誘導体が、ポリスチレン固形支持体のような固形支持体に、周知の方法を用い、かつ市販の[4-(ヒドロキシメチル)フェノキシ]酢酸のような酸で切断可能なリンカーを利用し、ヒドロキシまたはカルボン酸官能基のどちらかを介して結合し、支持された2-アミノベンゾフェノンを得る(例えば、SheppardおよびWilliams、Intl. J. Peptide Protein Res.、20:451-454[1982])。アミノベンゾフェノンの2-アミノ基は、好ましくは連結試薬との反応の前に、例えば、FMOC-Cl(クロロギ酸9-フルオレニルメチル)との反応により、保護され、保護されたアミノ基2'-NHFMOCを得る。
第二段階において、保護された2-アミノ基は脱保護され(例えば、-NHFMOC基は、ジメチルホルムアミド(DMF)中におけるピペリジン処理により脱保護される)、脱保護された2-アミノベンゾフェノンは、次にα-アミノ酸(そのアミノ基はそれ自身、例えば-NHFMOC基として、保護されている)へのアミド連結を介して連結され、中間体を生じる。一般的固相ペプチド合成において使用される標準の活性化法(例えば、カルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールまたはペンタフルオロフェニル活性化エステルの使用)を使用し、カップリングを促進する。しかし好ましい活性化法は、酸捕捉剤4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルピリジンの存在下での、2-アミノベンゾフェノンの、α-N-FMOC-アミノ酸フッ化物の塩化メチレン溶液による処理を使用し、アミド連結を介した完全なカップリングを得る。この好ましいカップリング法は、非反応性アミノベンゾフェノン誘導体であっても有効であることは分かっており、4-クロロおよび3-カルボキシの両不活性置換基を有する誘導体の本質的に完全なカップリングを得る。
第三段階において、保護されたアミノ基(アミノ酸に由来する)は最初に脱保護され(例えば、-NHFMOCは、DMF中のピペリジンにより-NH2に転換することができる)、脱保護されたBz-423は、酸、例えばDMF中の5%酢酸で、60℃で処理し、支持された1,4-ベンゾジアゼピン誘導体を得る。この方法を用い、大きく異なる立体特性および電子特性を伴う様々な2-アミノベンゾフェノン誘導体の完全な環化が報告されている。
任意の第四段階において、1,4-ベンゾジアゼピン誘導体は、適当なアルキル化剤および塩基によりアルキル化され、支持された完全に誘導体化された1,4-ベンゾジアゼピンを得る。標準のアルキル化法、例えばLDA(リチウムジイソプロピルアミド)またはNaHのような過剰な強塩基を使用する;しかしこのような方法は、望ましくない他の酸性官能基の脱プロトン化および過剰なアルキル化を生じることがある。ベンゾジアゼピン誘導体(例えば、エステルおよびカルバメート官能基を伴うもの)の過剰なアルキル化を妨害することができる好ましい塩基は、アニリド官能基を完全に脱プロトン化するのに十分な塩基であるが、アミド、カルバメートまたはエステル官能基を脱プロトン化するのに十分な塩基ではない。このような塩基の例は、リチウム化された5-(フェニルメチル)-2-オキサキソリジノンであり、これはテトラヒドロフラン(THF)中-78℃で1,4-ベンゾジアゼピンと反応される。脱プロトン化された後、前述のような適当なアルキル化剤を添加する。
最終段階において、十分に誘導体化された1,4-ベンゾジアゼピンが、固形支持体から切断される。これは、例えば、適当な酸、例えばトリフルオロ酢酸、水およびジメチルスルフィドの混合物(容量比85:5:10)へ曝すことにより、実現される(酸不安定な保護基の同時除去と共に)。あるいは、前記ベンゾジアゼピンは、可溶性相で調製される。この合成法は、Gordonらの論文(J. Med. Chem.、37:1386-1401[1994])に説明されており、これは本明細書に参照として組入れられている。簡単に述べると、この方法は、適宜置換された2-アミノベンゾフェノンイミンによるアミノ酸樹脂のトランス-イミド化による、樹脂結合したイミンの生成を含む。これらのイミンは環化され、前述の固相合成における手法に類似した手法によりつながれる。前記方法を用いて調製されたベンゾジアゼピンの一般的純度は、約90%またはそれよりも高い。
1,4-ベンゾジアゼピン-2,5-ジオンの調製
1,4-ベンゾジアゼピン-2,5-ジオンの固相合成のための一般的方法は、C.J. Boojamraらの論文(J. Org. Chem.、62:1240-1256[1996])に詳細に報告されている。この方法は、本発明の化合物を調製するために使用される。
Merrifield樹脂、例えば(クロロメチル)ポリスチレンは、4-ヒドロキシ-2,6-ジメトキシベンズアルデヒドナトリウムによるアルキル化により誘導体化され、樹脂結合したアルデヒドを提供する。α-アミノエステルは次に、1%酢酸のDMF溶液中のNaBH(OAc)3を使用する還元的アミノ化により、誘導体化された支持体に結合される。この還元的アミノ化は、樹脂結合した第二級アミンの形成を生じる。
第二級アミンは、多種多様な保護されないアントラニル酸によりアシル化され、樹脂結合した3級アミドを生じる。アシル化は、カルボジイミドおよび第三級アミンの塩酸塩の存在下でカップリング反応を行うことにより実現される。ひとつの良好なカップリング剤は、1-エチル-8-[8-(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド塩酸塩である。この反応は、典型的には、無水1-メチル-2-ピロリジノンの存在下で行われる。このカップリング手法は典型的には完全なアシル化を確認するために、再度繰り返される。
アシル誘導体の環化は、ベンゾジアゼピンの環状ヘテロ環の窒素上の1位の置換基の同時導入のためにハロゲン化アルキルと反応することを介し、アニリドアニオンの形成による、塩基触媒によるラクタム化により実現される。アセトアニリドのリチウム塩は、この反応を触媒する良好な塩基である。従って、DMF/THF(1:1)中でアセトアニリドリチウムと30時間反応し、引き続き適当なアルキル化剤と反応したBz-423は、完全に誘導体化された支持体結合したベンゾジアゼピンを提供する。これらの化合物は、TFA/DMS/H2O(90:5:5)を用い、良好な収率および高い純度で、支持体から切断される。
本発明において使用されるα-アミノエステル出発材料、アルキル化剤、およびアントラニル酸誘導体の例のいくつかは、Boojamraら(1996)、前掲、1246に列記されている。追加の試薬は容易に決定され、かつ市販されているか、もしくは本発明において開示された新規置換基に到達するよう、当業者により容易に調製されるかのどちらかである。
例えば、Boojamraの論文(前掲)から、以下のことがわかる:アルキル化剤は、R1置換基を提供する;α-アミノエステル出発材料は、R2置換基を提供し、アントラニル酸は、R4置換基を提供する。これらの適宜置換されている出発材料を使用することにより、所望の1,4-ベンゾジアゼピン-2,5-ジオンに到達する。R3置換基は、α-アミノエステル出発材料のアミンの適当な置換により得られる。立体的密集が問題となる場合は、R3置換基は、1,4-ベンゾジアゼピン-2,5-ジオンが単離された後、通常の方法で結合される。
実施例2
キラリティー
本発明のベンゾジアゼピンの多くは、立体中心がα-アミノ酸およびそのエステル出発材料により導入されるキラリティーのために、光学異性体として存在することは認められるはずである。前述の一般的手法は、α-アミノ酸またはエステル出発材料のキラリティーを保存する。多くの場合において、このように保存されたキラリティーが望ましい。しかし、α-アミノ酸またはエステル出発材料の望ましい光学異性体が入手できないかもしくは高価である場合、対応する光学異性体に分離されるラセミ混合物が作成され、望ましいベンゾジアゼピン鏡像異性体が単離される。
例えば2,5-ジオン化合物の場合、Boojamra(前掲)は、鏡像異性体として純粋なα-アミノエステル出発材料の塩酸塩の、0.3当量のi-Pr2EtNおよび樹脂結合したアルデヒドとの6時間の予備平衡化、その後のNaBH(OAc)3の添加により、完全なラセミ化が実現されることを明らかにしている。前述の合成法の残りは、同じままである。必要ならば、更に1,4-ベンゾジアゼピン-2-ジオン化合物の場合と同様の段階が使用される。
個々のベンゾジアゼピンを調製する方法は、当技術分野において周知である(例えば、米国特許第3,415,814号;第3,384,635号;および、第3,261,828号を参照し、これらは本明細書に参照として組入れられている)。任意の前述の方法において、適宜置換された出発材料を選択することにより、本発明のベンゾジアゼピンが、比較的容易に調製される。
実施例3
試薬
Bz-423は、前述のように合成した。FK506は、Fujisawa(大阪、日本)から入手した。N-ベンゾイルカルボニル-Val-Ala-Asp-フルオロメチルケトン(z-VAD)は、Enzyme Systems社(リバーモア、CA)から得た。ジヒドロエチジウム(DHE)および3,3'-ヨウ化ジヘキシルオキサカルボシアニン(DiOC6(3))は、Molecular Probes社(ユージーン、OR)から得た。FAM-VAD-fmkは、Intergen社(パーチェス、NJ)から得た。マンガン(III)meso-テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリン(MnTBAP)は、Alexis Biochemicals社(サンディエゴ、CA)から購入した。ベンゾジアゼピンは、説明されたように合成した(B.A. Buninら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、91:4708-4712[1994]参照)。他の試薬は、Sigma社(セントルイス、MO)から得た。
実施例4
動物および薬物送達
雌NZB/Wマウス(Jackson Labs社、バーハーバー、ME)を、処理群および対照群に無作為に分配した。腹腔内注射により、対照マウスは、ビヒクル(50μL DMSO水溶液)を受取り、処理マウスは、ビヒクルに溶解したBz-423(60mg/kg)を与えられた。末梢血を、尾静脈から入手し、血清を調製した。脾および腎の試料は、10%緩衝化ホルマリンまたはOCT中の凍結のどちらかにより保存した。各動物からの追加の脾切片を、単独の細胞懸濁液の調製のために保存した。
実施例5
初代脾細胞、細胞株、および培養条件
初代脾細胞は、6ヵ月齢のマウスから、赤血球の等張溶解を伴う、脾の機械的破壊により得た。B細胞が豊富な画分を、CD4、CD8aおよびCD11b被覆されたマイクロビーズ(Miltenyi Biotec社、オーバーン、CA)による磁気セルソーターを用いる陰性選択により調製した。Ramos株は、ATCC(モナシス、GA)から購入した。細胞を、10%熱失活ウシ胎仔血清(FBS)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)およびL-グルタミン(290μg/ml)を添加したRPMI中で維持した。初代細胞のための培地は、2-メルカプトエタノール(50μM)も含有した。全てのインビボ試験は、0.5%DMSOおよび2%FBSで行った。インビトロ実験は、2%FBS含有培地において行った。有機化合物は、0.5%DMSO含有培地に溶解した。
実施例6
組織学
ホルマリン固定した腎切片を、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色し、糸球体の免疫複合体の沈着を、FITC複合したヤギ抗マウスIgG(Southern Biotechnology社、バーミンガム、AL)で染色した凍結した組織を用いる直接免疫蛍光により検出した。切片を、腎炎およびIgG沈着について0〜4+スケールを用い盲検様式で解析した。リンパ系過形成の程度は、H&Eで染色した脾切片を用い、0〜4+スケールでスコア化した。B細胞を同定するために、切片を、ビオチン化した抗B220(Pharmingen社;1μg/mL)で、その後ストレプトアビジン-Alexa 594(Molecular Probes社;5μg/mL)で染色した。凍結した脾切片を、TUNEL陽性細胞について、インサイチュー細胞死検出キット(Roche社)を用いて分析し、0〜4+スケールを用いて評価した。
実施例7
TUNEL染色
凍結した脾切片を、インサイチュー細胞死検出キット(Roche Molecular Biochemicals社、インディアナポリス、IN)を用いて分析した。切片は盲検により評価し、TUNEL陽性染色の量に基づいてスコアリングした(0〜4+)。B細胞は、ビオチン化された抗B220(Pharmingen社、サンディエゴ、CA;1μg/mL、1時間、22℃)で、引き続きストレプトアビジン-Alexa 594(Molecular Probes社、ユージーン、OR;5μg/mL、1時間、22℃)で染色することにより同定した。
実施例8
処理した動物由来の脾のフローサイトメトリー分析
表面マーカーを、蛍光複合した抗Thy 1.2(Pharmingen社、1μg/mL)および/または抗B220(Pharmingen社、1μg/mL)で検出した(15分間、4℃)。外膜ホスファチジルセリンを検出するために、細胞を、FITC複合したアネキシンVおよびヨウ化プロピジウム(PI)と共に、製造業者(Roche Molecular Biochemicals社)の指示に従いインキュベーションした。フローサイトメトリーによるTUNEL陽性細胞の検出には、APO-BRDUキット(Pharmingen社)を使用した。スーパーオキシドおよびMPTは、細胞を10μMジヒドロエチジウムおよび2μM 3,3'-ジヘキシルオキサカルボシアニンヨージド(DIOC6(3))(Molecular Probes社)と共に、30分間27℃でインキュベーションすることにより評価した。ヨウ化プロピジウムを用い、生存度およびDNA含量を決定した。試料は、FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson社、サンディエゴ、CA)で分析した。
実施例9
B細胞刺激
Ramos細胞を、可溶性ヤギFab2抗ヒトIgM(Southern Biotechnology Associates社、1μg/ml)および/または精製した抗ヒトCD40(Pharmingen社、クローン5C3、2.5μg/ml)で活性化した。マウスB細胞を、培養ウェルに固定したアフィニティー精製したヤギ抗マウスIgM(ICN社、オーロラ、OH;20μg/ml)および/または可溶性精製した抗マウスCD40(Pharmingen社、クローンHM40-3、2.5μg/ml)で活性化した。LPSは10μg/mlで使用した。Bz-423は、刺激を加えた直後に、培養物へ添加した。インヒビターは、Bz-423の30分前に添加した。
実施例10
統計解析
統計解析を、SPSSソフトウェアパッケージを用いて行った。統計学的有意性は、Mann-Whitney U検定を用いて評価し、変量間の相関関係は、二元ANOVAにより評価した。報告した全てのp値は片側であり、データは平均±SEMで表わした。
実施例11
細胞死および低二倍体DNAの検出
細胞生存度は、ヨウ化プロピジウム(PI、1μg/mL)染色により評価した。PI蛍光は、FACScaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson社、サンディエゴ、CA)を用いて測定した。低二倍体DNAの測定は、DNA標識液(0.2%Tritonおよび10μg/mL RNAse Aを含有するPBS中のPI 50μg/mL)中で、細胞を4℃で一晩インキュベーションした後に行った。このデータは、総計(aggregate)以外は、CellQuestソフトウェアを用いて解析した。
実施例12
O2 -、Ψmおよびカスパーゼ活性化の検出
O2 -を検出するために、細胞を、DHE(10μM)と共に、30分間37℃でインキュベーションし、エチジウム蛍光を測定するフローサイトメトリーにより分析した。ミトコンドリア膜を隔てた電位(Ψm)のフロー分析は、細胞をDiOC6(3)(20nM)で37℃で15分間標識することにより行った。Ψm崩壊に関する陽性対照は、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン(CCCP、50μM)を用いて確立した。カスパーゼ活性化アッセイは、FAM-VAD-フルオロメチルケトンで行った。この基質の処理は、フローサイトメトリーで評価した。
実施例13
細胞下画分およびシトクロムc検出
Ramos細胞(250×106細胞/試料)を、Bz-423(10μM)またはビヒクルで1〜5時間処理した。細胞をペレット化し、緩衝液(68mMショ糖、220mMマンニトール、10mM HEPES-NaOH、pH7.4、10mM KCl、1mM EDTA、1mM EGTA、10μg/mLロイペプチン、10μg/mLアプロチニン、1mM PMSF)中に再懸濁させ、氷上で10分間インキュベーションし、ホモジナイズした。ホモジネートを、4℃で5分間(800g)2回遠心し、核およびデブリをペレット化し、ならびに4℃で15分間(16,000g)遠心し、ミトコンドリアをペレット化した。上清を濃縮し、12%SDS-PAGEゲル上で電気泳動し、Hybond ECL膜(Amersham社、ピスカタウェイ、NJ)に転写した。ブロック後(5%乾燥ミルクおよび0.1%Tweenを含有するPBS)、この膜を、抗シトクロムcモノクローナル抗体(Pharmingen社、サンディエゴ、CA;2μg/mL)で、引き続き抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼで複合した二次抗体(Amersham社)でプロービングし、化学発光により検出した。
実施例14
単離されたミトコンドリアにおけるROS生成
雄のLong Evansラットを一晩絶食し、断頭により屠殺した。肝試料を、氷冷した緩衝液A(250mMショ糖、10mM Tris、0.1mM EGTA、pH7.4)中でホモジナイズし、核および細胞デブリをペレット化した(10分間、830g、4℃)。ミトコンドリアを、遠心(10分間、15,OOOg、4℃)により収集し、上清をS15画分として収集した。ミトコンドリアペレットを、緩衝液B(250mMショ糖、10mM Tris、pH7.4)で3回洗浄し、緩衝液Bで20mg/mL〜30mg/mLになるよう再懸濁した。ミトコンドリアは、2',7'-ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸(DCFH-DA、1μM)を含有する緩衝液C(200mMショ糖、10mM Tris、pH7.4、1mM KH2PO4、10μM EGTA、2.5μMロテノン、5mMコハク酸)で希釈した(0.5mg/mL)。ステート3測定に関して、ADP(2mM)を緩衝液中に含有し、Bz-423添加の前に、ミトコンドリアを2分間チャージさせた(charge)。ステート4を誘導するために、オリゴマイシン(10μM)を、緩衝液Cに添加した。DCFHの2',7'-ジクロロフルオレセイン(DCF)への酸化を、37℃で、蛍光分光計(λex:503nm;λem:522nm)でモニタリングした。O2 -およびΨmに対する作用を検出するために、ミトコンドリアを、DHE(5μM)またはDIOC6(3)(20 nM)を含有する、ビヒクル、Bz-423、またはCCCPを伴う、緩衝液C中で、37℃で15分間インキュベーションし、アリコートを蛍光顕微鏡による分析のために取り出した。
実施例15
脾細胞のフローサイトメトリー分析
脾細胞を、機械的破壊により調製し、赤血球を等張溶解により除去した。細胞を、蛍光複合した抗Thy 1.2(Pharmingen社;1μg/mL)および/または抗B220(Pharmingen社;1μg/mL)で、4℃で15分間染色した。外膜ホスファチジルセリンを検出するために、細胞を、FITC複合したアネキシンVおよびPI(Roche Molecular Biochemicals社、インディアナポリス、IN;1μg/mL)と共にインキュベーションした。
実施例16
ROSのインビボ決定
脾臓を、Bz-423またはビヒクルで処理した4ヵ月齢のNZB/Wマウスから摘出し、OCT中で凍結させた。ROS産生は、E.D. Kerverらにより説明されたように、3,3,9-ジアミノベンジジンマンガン(II)を用いて測定した(E.D. Kerverら、Histochem. J.、29:229-237[1997]参照)。
実施例17
IgG力価、BUN、およびタンパク尿
抗DNAおよびIgG力価を、P.C. Swansonらにより説明されたように、ELISAにより決定した(P.C. Swansonら、Biochemistry、35:1624-1633[1996]参照)。血清BUNは、ミシガン大学病院(University of Michigan Hospital)の臨床検査室で測定した。タンパク尿は、ChemStrip 6(Boehringer Mannheim社)を用いモニタリングした。
実施例18:ベンゾジアゼピンの研究
動物におけるベンゾジアゼピンの研究は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許出願第20010016583号(2001年8月23日公開)に記載されている。
実施例19:Bz-423誘導アポトーシスの媒介物質
Bz-423が関与する細胞死の機序を特徴づけるため、細胞内のROS、ΔΨm、シトクロームc放出量、カスパーゼの活性化、およびDNA断片化を各時間毎に測定した(結果はB細胞についてのものだけを示すが、多くの他の細胞種の応答も特徴づけている)。Bz-423への曝露後の最初の事象は、O2 -と特異的に反応する酸化還元に敏感な試薬のジヒドロエチジウム(DHE)によって染色される細胞の増加である。
O2 -のレベルは1時間後に最大となった後に低下し、継続処理の4時間後に再び上昇した。この二峰性のパターンはO2 -を制限する細胞機序を示し、「初期」および「後期」にO2 -レベルが最大になるのは異なる過程によるものであることを示唆する。
ΔΨmの崩壊は、ミトコンドリア選択性の電位差プローブであるDIOC6(3)を用いて検知した。勾配の変化は初期のO2 -応答後に始まり、5時間後に90%を超える細胞で認められた。
カスパーゼの活性化を可能にする重要な工程である、ミトコンドリアからのシトクロームcの放出は、細胞基質フラクションの免疫ブロッティングによって検討した。溶媒で処理された細胞における量を上回る細胞基質性シトクロームcレベルが5時間で検知された。この放出は、ΔΨmの崩壊と整合し、これらの結果はPT孔の開口と整合する。実際に、後期のO2 -の増大はΔΨmの崩壊およびシトクロームc放出に追随し、2回目のO2 -の増大がこれらの結果であることを示唆した。
カスパーゼの活性化は、カスパーゼ全体の感受性蛍光基質であるFAM-VAD-fmkで処理して測定した。カスパーゼの活性化はΔΨmに追随したが、一方、カスパーゼの活性化によって、低二倍体DNAの出現は若干遅くなった。まとめると、これらの結果は、Bz-423がミトコンドリア依存性アポトーシス経路を誘導することを示した。
実施例20:Bz-423のミトコンドリア直接標的化
初期のO2 -増大が他の細胞事象に先行するため、このROSが調節の役割を担っている可能性がある。非食細胞において、MRCとともに酸化還元酵素は、ROSの主要な源である。この応答の基礎を決定するために、これらの系の阻害剤を、Bz-423誘導性のO2 -調節能に関してアッセイした。これらの試薬の内、主にシトクロームcオキシダーゼ(ミトコンドリアの呼吸鎖(MRC)複合体IV)およびMRC複合体IIIのユビキノール-シトクロームcレダクターゼ成分によるO2 -の形成をブロックするマイクロモル量のFK506に作用するNaN3のみがBz-423を調節した。これらの知見は、ミトコンドリアがBz-423誘導O2 -の源であり、MRCの成分が応答に関与することを示唆した。FK506による阻害はカルシニューリンまたはFK506結合性タンパク質に対する結合に起因するが、これらのタンパク質に強く結合する天然産物(それぞれ、ラパマイシン、シクロスポリンA)はBz-423のO2 -応答を低減しなかった。
Bz-423によるO2 -産生は、ミトコンドリアすなわち標的内のミトコンドリアにROSを形成させるシグナルを送る別の区画内のタンパク質に対する結合に起因する可能性がある。これらの可能性を峻別するため、単離されたラット肝臓ミトコンドリアを、Bz-423の存在下または非存在下で二酢酸2',7'-ジクロロジヒドロフルオレセインの2',7'-ジクロロフルオレセインへの酸化をモニターすることによって、ROS産生についてアッセイした。このアッセイにおいて、DCFの産生速度は、遅滞時間(この間、内因性の還元性相当物が消費され、プローブ上の酢酸エステルが加水分解されて酸化還元活性種である2',7'-ジクロロジヒドロフルオレセインが生成される)の後に増大した。状態3の呼吸を支持する好気性条件下で、ユビキノール-シトクロームcレダクターゼを阻害することによってO2 -を生成するアンチマイシンA、およびBz-423の両方は、対照に対する各曲線の勾配の比較に基づくと、誘導期間の後にROS産生速度を2倍近くまで増大した。膨潤はみられず、Bz-423が直接にはMPT孔を標的にしないことを示した。Bz-423もアンチマイシンAも細胞成分S15画分(細胞基質およびミクロソーム)内に実質的にROSを形成せず、ミトコンドリアが状態4にある場合、アンチマイシンAがこれらの条件下で活性であるのに、Bz-423はROSを蓄積しない。以上から、これらの実験は、ミトコンドリアがBz-423の分子標的を有し、O2 -応答には状態3の呼吸が必要であることを示している。
実施例21:ミトコンドリア由来のBz-423誘導ROS
MRC複合体IおよびIIIは、ミトコンドリア内のROSの主要な源である。上記の証拠は、Bz-423誘導ROSがミトコンドリア由来であることを示唆している。この仮説の検証のために、MRC機能をノックアウトし、得られた細胞のROSをBz-423に対する応答で試験した。MRC内の複合体I〜IVは部分的にミトコンドリアDNA(mtDNA)によってコードされる。臭化エチジウム存在下で長期間培養した細胞はmtDNAが除外され、mtDNAでコードされるタンパク質が産生されず、MRCに沿った電子送達も生じないことを示す(mtDNAおよび関係するタンパク質を欠く細胞はρ0細胞と呼ばれることが多い)。臭化エチジウムはRamos細胞に対し毒性であるため、これらの実験は他の成熟B細胞株であるNamalwa B細胞でおこなった。Namalwa ρ0細胞をBz-423で処理しても、Ramos ρ細胞およびNamalwa ρ細胞の場合と同様に、ROS応答は生じなかった。
初期のROSはBz-423誘導アポトーシスが困難であるため、Namalwa ρ0細胞で得られた結果から、当然ながらこれらの細胞はBz-423の毒性効果から保護されていると予測される。しかし、6時間後、MPTは作動し、Bz-423に応答してNamalwa ρ0細胞はアポトーシスを起こした。ρ細胞においては、MRCによるプロトンポンピングによってミトコンドリアの勾配であるΔΨmが維持された。機能性MRCはρ0細胞内に存在しないため、ΔΨmはATPアーゼ(ρ0細胞におけるサブユニット6およびbの除去によって、この酵素のシンターゼ活性は失われている)として機能する複合体V(F1F0-ATPアーゼ)によって支持されている。この場合、複合体V ATPアーゼの阻害は、勾配の崩壊およびその結果としての細胞死を引き起こす。
実施例22:Bz-423のミトコンドリアF1F0-ATPアーゼ標的化
ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼに結合するマクロライド天然産物であるオリゴマイシンは、状態3から状態4への遷移を誘導し、Bz-423と同様にO2 -を生成する。これらの類似性に基づくと、F1F0-ATPアーゼもBz-423の分子標的である可能性がある。この仮説の検証のために、亜ミトコンドリア粒子(SMP)におけるATPアーゼ活性に対するBz-423の効果を試験した。実際、Bz-423は、ED50がおよそ5μMでウシSMPのミトコンドリアATPアーゼ活性を阻害した。
40を超えるBz-423の誘導体を開発して、この新規な薬剤に要求される生物学的活性を評価した。全細胞アポトーシスアッセイにおけるこれらの化合物の評価によって、C'4位のヒドロキシル基およびほぼナフチル基の大きさの芳香環が有用であることがわかった。細胞ベースアッセイにおけるこれらの類似体の能力は、SMPを用いたATPアーゼ阻害実験におけるED50値と相関した。これらの知見は、ミトコンドリアATPアーゼがBz-423の分子標的であることを示した。これらの誘導体が細胞傷害性である濃度(80μM)では、他のベンゾジアゼピンおよびPBRリガンド(例えば、PK11195および4-クロロジアゼパム)が明確にミトコンドリアATPアーゼ活性を阻害することはなく、Bz-423の分子標的がこれらの他の化合物の分子標的とは異なることを示唆した。
実施例23:Bz-423のOSCPへの結合
Bz-423の機序研究の初期の群の一部として、N-メチル基をビオチンが共有結合した(この改変によってBz-423の活性は変化しなかった)ヘキシルアミノリンカーで置換することによって、ビオチニル化類似体を合成した。この分子は、T7ファージの先端に融合タンパク質として発現される、ヒト乳癌cDNAs(Invitrogen)のディスプレイライブラリーを探索するために使用した。新しいKF506結合タンパク質を同定するために、Austinおよび共同研究者が記載したスクリーニング方法にしたがってKF506のビオチニル化バージョンを用いて、ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼのOSCP成分をBz-423に結合するタンパク質として同定した(図1)。
Bz-423が実際にOSCPに結合するか否かまたその相互作用の親和性を決定するために、ヒトOSCPを大腸菌(E. coli)内で過剰発現させた。Bz-423の溶液をOSCPに滴定することによって、固有タンパク質蛍光が消光され、200±40nMのKdが得られた(図2)。いくつかのBz-423類似体の結合も測定し、これら類似体のOSCPに対する親和性が、全細胞細胞傷害性アッセイならびにSMPを用いたF1F0-ATPアーゼ阻害実験における能力と整合することがわかった。これらのデータは、Bz-423がミトコンドリアATPアーゼ上のOSCPと結合するという強力な証拠である。Bz-423は、OSCPとの結合を介して機能するATPアーゼの唯一の公知の阻害剤である。OSCPはATP結合部位を有せずプロトンチャンネルも有しないため、ATPアーゼモーターの分子運動を変えることによって、Bz-423が機能する可能性がある。
実施例24:OSCPのRNAiノックアウトによるBz-423細胞死に対する保護
上記の化学的および生物化学的標的同定および確認のための研究を補足するため、全細胞におけるOSCPをノックアウトするための実験をおこなった。インビトロで、OSCPからATPアーゼを除去することによって、酵素の加水分解活性を変更することなく、シンターゼ機能が破壊される。酵母の場合、OSCPのノックアウトは致死的ではなく、これらの細胞においては、ATPの加水分解によってΔΨmを支持する化学ポテンシャルが提供され、ミトコンドリアの統合性が維持される。酵母のOSCPは哺乳類のタンパク質に対して限られた配列相同性しか有しない(〜30%)ため、これらの実験はヒト起源の細胞株でおこなった。
OSCPは核にコードされるため、このタンパク質をノックアウトするために、転写後遺伝子サイレンシングを実施できる技術であるRNA干渉(RNAi)を使用した。これらの実験のために、3種類のそれぞれが化学的に合成されたOSCP配列に特異的な低分子干渉RNA分子(siRNA)をオリゴフェクタミンを用いてHEK293細胞に形質移入した。これらの細胞はオリゴフェクタミンによって高収率(90%)で形質移入された。OSCP発現を、形質移入後24時間、48時間、72時間、および96時間に免疫ブロット法で分析した。OSCP発現の最大サイレンシング(64%)は形質移入後72時間で起こった(図3)。OSCP siRNAで形質移入されたHEK293細胞は、Bz-423に対応するBz-ROSおよびアポトーシスが、対照siRNAのスクランブル配列(scrambled sequence)で形質移入された細胞に比べて、低減した。これらの結果は、siRNAがOSCPの低減に有効であることを示し、Bz-423媒介性細胞死シグナル伝達にOSCPが関与することを示唆する。
実施例25:細胞増殖に対するBz-423の効果
ほとんどの1,4-ベンゾジアゼピンと同様に、Bz-423は、溶液中で遊離の薬剤の有効濃度を低減させる、ウシ血清アルブミンと強力に結合する。例えば、10%(v/v)胎児性ウシ血清(FBS)を含む組織培養培地において、およそ99%の薬剤がBSAに結合する。したがって、細胞培養細胞傷害性アッセイは、BSAへの結合を低減しフリーの[Bz-423]を増大させるために、2%のFBSを含む培地で行う。これらの条件下で、用量反応曲線は、Bz-423が一部だけ有効な制限濃度範囲が存在するほど、シャープである。いくつかのベンゾジアゼピンは抗増殖特性を有することが公知であるため、ED50未満の濃度におけるBz-423の効果を注意深く分析し、アポトーシスの誘導に加えて、Bz-423は培養3日後の細胞成長を阻害することがわかった。これらの低血清条件においては、細胞毒性効果および抗増殖効果が重なり合い、それぞれの効果を独立に研究するのが困難であった。しかし、[BSA]の増量またはFBSの10%への増量によって、用量反応曲線は平坦化し(細胞毒性ED50は増大し)、Bz-423誘導細胞毒性は抗増殖効果と明確に区別できた。低濃度(例えば、10〜15μM)でBz-423の細胞毒性は低かったが、20μMを超える濃度ではアポトーシスのみが観察された(二峰性ROS応答を含め上記の細胞死経路、および10%FBSを含む培地でもみられた)。大量の薬剤は増殖もブロックしうるが、増殖への効果がみられる以前にアポトーシスを誘導する。10%FBSを含む培地を模擬実験するために、2%FBSを含む培地にBSAを加えた実験においても用量反応曲線は同様であって、抗増殖効果および細胞毒性は血清の他の成分に影響されないことが示された。
3日間の治療の後に対照細胞に比べ細胞数が減少したことは、増殖が低減したためであって、細胞死と増殖がバランスしたためではないことを確認するために、細胞の計数に加えて、細胞の分化も調べた。PKH-67は、細胞膜に非可逆的に結合し、細胞分割に際して娘細胞に等しく分配される蛍光プローブであって、フローサイトメトリーによる細胞分割の定量を可能にする。PKH-67で染色されBz-423で処理されたRamos細胞は、細胞毒性濃度未満でも細胞分裂が低下し、細胞数の減少は抗増殖効果によるもので細胞死によるものではないことが確認された。Bz-423が誘導する抗増殖はRamos細胞に特有であるか否かを決定するため、細胞計数および細胞サイクル実験を他のB細胞株および充実性腫瘍由来の細胞株でおこなった。表3からわかるように、増殖ブロック効果はリンパ細胞に特有のものではなく、多くの組織種に共通する標的が増殖ブロックを媒介することが示唆された。
(表3)10%FBSを含む培地内で72時間処理された細胞の抗増殖のED50(μM)。研究した細胞には、Bc1-2およびBc1-xLを過剰発現するために形質移入されたRamos細胞およびクローン、p53を欠く卵巣細胞(SKOV3)、神経芽細胞腫細胞株(IMR-32、Lan-1、SHEP-1)、および悪性B細胞株が含まれる。
Figure 2012107022
実施例26:Bz-423で処理された細胞の遺伝子プロファイリング
遺伝子プロファイリング実験は、Bz-423が細胞増殖をブロックする機序を見出すためにおこなった。シクロヘキサミドをタンパク質合成の阻害剤として用いた研究において、Bz-423誘導細胞死は新タンパク質合成に依存しないことがわかった。したがって、遺伝子発現の変化は抗増殖の機序のみに関係する可能性が高い。下流効果ではなくシグナル応答カップリングに関与する変化を検知する可能性を増大させるため、Bz-423で3時間処理された細胞をプロファイリングした。この3時間というのはROSの初期最大化の直後であるが、ミトコンドリアの透過性孔の開口を含め、細胞の他の変化が起こる前である。
Bz-423の病原性細胞種に対するアポトーシス促進、細胞毒性および成長阻害特性の発見は、この種の薬剤が、自己免疫疾患、癌、および他の新生物疾病に対して治療剤となることを示した。この薬剤によって誘導される遺伝子発現の変化の分析からのさらなる実験的証拠は、この化合物の作用の機序的理解を広げ、この化合物がもたらす治療効果の数を増やした。
Bz-423によって誘導される、遺伝子発現(mRNAレベルでの)における変化を測定するためのRamos細胞を用いたインビトロ試験は、500,000個/mLの密度で細胞を培養することによっておこなった。溶剤対照(DMSO、最終濃度0.1%v/v)、Bz-423、またはBz-OMe(10μM)を細胞に加えた。4時間後、細胞を回収し、製造者プロトコルに従って、Trizol試薬(#15596-018、Life Technologies, Rockville, MD)およびRNeasy Maxi Kit(#75162、Qiagen, Valencia, CA)を用いてRNA試料を調製した。単鎖cDNAは、最初の全RNA試料中に存在するポリ(A)RNAを用いて逆転写法で合成した。単鎖cDNAは二重鎖cDNAに変換し、次いでビオチニル化UTPおよびCTPの存在下でインビトロ転写を実施してビオチン標識化cRNAを調製した。cRNAをMg2+の存在下で断片化し、ヒトゲノムU133A Genechip array(Affymetrix)にハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション結果は、GeneArray scannerを用いて定量し、Affymetrix提供の説明書に従って解析を実施した。
Bz-423、Bz-OMe、または溶媒対照で処理した細胞から単離したRNAを用いた発現プロファイリングは、およそ22,000のヒト遺伝子を提示する、HGU133A Affymetrix遺伝子チップを用いておこなった。p<0.01を含む基準を用いると、16種の遺伝子が対照細胞の8倍またはそれ以上発現した。Bz-423の分子標的に基づいて予測されたように、これらの遺伝子の多くは、解糖に関与していた。
データは、Bz処理による遺伝子変化を測定するために、処理群における対数変換平均シグナル変化が溶媒対照試料の少なくとも4倍であること、および対照の変動係数値(n=4)が10%未満であることの基準に従って、解析した。これらの遺伝子は治療応答を媒介しうる標的になる。
Bz-423およびBz-OMeによる遺伝子発現は、それぞれ固有の情報のフィンガープリントを提供する。Bz-OMeの構造は以下の通りである。
Figure 2012107022
いくつかの遺伝子の発現は、Bz-423およびBz-OMeへの曝露後に同じように変化する。このように、二つの化合物に共通して調節される遺伝子は、特に、より一般的な種類の化合物による遺伝子調節の理解に関係する。図4には、Bz-423およびBz-OMeによって処理された細胞の遺伝子発現プロファイリングを示すデータが提示されている。
実施例27:ODCレベルおよび活性へのBz-423の効果
RNAプロファイリングデータが示唆するように、ODC活性およびポリアミン代謝がBz-423に影響されるか否かを決定するため、Bz-423で処理された細胞におけるODC活性を、溶媒対照と比較して直接測定した。これらの実験において、オルニチンのプトレッシンへの変換は3H-オルニチンを用いて定量した。比較のために、対照細胞は溶媒対照、またはオルニチン脱炭酸酵素の強力な阻害剤であるジフルオロメチルオルニチン(DFMO)で処理した(Bz-423と同様に、DFMOは強力な抗増殖剤である)。図3からわかるように、Bz-423による4時間の処理は、用量依存的にODC活性を明らかに低減させ、RNAプロファイリングデータが示唆するように、とりわけアンチザイム1の増加と整合する。ODC活性の低減は、同一条件下で測定したODCタンパク質レベルの低減と整合する。
上記のように、Bz-423誘導アポトーシスは、状態3から4への遷移の結果としてMRC複合体IIIから出されるROS応答によってシグナル伝達された。アポトーシスにとって重要なROS応答が、ODCに対するこれらの効果も媒介するか否かを決定するのが次の目標であった。もしROSがODCの低減に必要なら、ROSはBz-423に対する抗増殖応答の一部として潜在的に関与するはずである。これを試験するため、Ramos細胞をBz-423、DFMO、または対照溶媒で4時間処理した。並行して、第二の細胞群をROSを制限するMnTBAPでプレインキュベートし、次いで、Bz-423、DFMO、または対照溶媒とともに培養した。MnTBAPは明らかにBz-423によるODCの阻害を逆転させた。
まとめると、これらのデータは、高レベルの[Bz-423](例えば、>10μM)が細胞の抗酸化剤で解毒されない十分な量のROSを生成し、そして18時間以内にアポトーシスを引き起こす可能性を示唆した。低レベルの[Bz-423]は、アポトーシスを引き起こすには不十分な、比例的に小さなROS応答を誘導した。ただし、この場合、ROSはODCの阻害または細胞増殖のブロックが可能である。
この仮説に整合して、フェノール性ヒドロキシル基がClで置換された(Bz-Clで示される)化合物は細胞毒性が低く(Bz-423に比べ活性はおよそ80%低下した)、細胞内に小さなROS応答を誘導したが、OSCPとの結合も強くなかった(Kdおよそ5μM)。上記仮説から予測されるように、この化合物もODC活性を阻害した(図3)。提唱したBz-423の役割および特性がROSを誘導して成長を停止させたと考え、Bz-Clを表2に示す細胞パネルに対して試験したところ、3日後にBz-ClはBz-423と同じ程度まで増殖を低減させED50値は変らないことがわかった。これらの結果は、これらの化合物の抗増殖効果が、増殖をブロックしアポトーシスを誘導しないBz-423の化学的類似体を使用して得られることを示した。
実施例28:新規細胞毒性ベンゾジアゼピンの構造活性研究
Bz-423のこれらの特性に基づいて、結合および活性に重要な新規化合物の構造的要素を調べるために、一連のBz-423誘導体を合成した。N-メチル基または塩素の水素による置換は、培養中の不死化Ramos B細胞またはJurkat T細胞に対するリンホトキシン活性に対してほとんど効果がなかった。同様に、Bz-423の両鏡像異性体は同じ活性であって、Bz-423とその分子標的との間の相互作用には2点結合が関与していることを示している。これらのデータとは対照的に、ナフタルアラニンの除去は大きな違いとなる(表1参照)。本発明は特定の機序に限定されず、機序の理解は本発明の実施には不必要であるが、部分、またはフェノール性ヒドロキシル基を水素に置換することによって、細胞傷害活性が全て失われると考えられる(表1)。これらの知見に基づいて、C'3位およびC'4位の置換基を変える検討はおこなった。1-ナフトール基を2-ナフトール基で置き換えても細胞死にはほとんど効果がなかった。同様に、ナフチルアラニン基を同等な大きさの疎水性基で置き換えてもBz-423の細胞傷害特性にはほとんど効果がなかった。対照的に、キノリン7〜9はそれぞれBz-423より活性が低い。本発明は特定の機序に限定されず、機序の理解は本発明の実施には不必要であるが、これらのデータは、Bz-423の結合部位には疎水性置換基が好ましいことを示唆していると考えられる。より小さなC3置換基はBz-423より幾分活性が低いが、酸素原子を含む芳香族基を有する化合物ははるかに細胞傷害性が低かった。これらのデータは、かさばった疎水性芳香族置換基が好適な活性に有用であることを明らかに示している。
(表1)Bz-423誘導体の能力。各化合物の存在下で用量依存的にRamos B細胞を培養することによって細胞死を評価した。細胞の生存度は24時間後のヨウ化プロピジウム除外でフローサイトメトリーを用いて測定した。このアッセイにおいて、PK11195、ジアゼパム、4-Cl-ジアゼパムのEC50は>80μMであった。
Figure 2012107022
a各EC50値は3つ組で2回測定し、誤差は±5%である。
メチル基をヒドロキシル基に対してオルト位に配置(16)することでBz-423の活性は変らないが、ヒドロキシル基をC'4位に移す(17)と、能力が1/2に低下した(表2)。対照的に、ヒドロキシル基を塩素またはアジドで置き換えること、またはフェノール基をメチル化することにより、Bz-423の細胞傷害活性を大幅に低下させる。本発明は特定の機序に限定されず、機序の理解は本発明の実施には不必要であるが、これらのデータは、C'4位の炭素原子上にあるヒドロキシル基が、おそらく標的結合の際に重要な接触を成すことにより、好適な活性に必要であることを示すと考えられる。ただし、フェノール性置換基を有する分子もMRC内で電子伝導体として機能することができる。このような薬剤はMRCから電子を受け取り、より還元電位の高い部位にある鎖に電子を戻す。この種の「酸化還元サイクル」は、ピリミジンヌクレオチドに沿った内因性還元等価物(例えば、グルタチオン)を消費し、細胞死をもたらす。これらの代替物を区別するために、標準的なNADHまたはNAD(P)H酸化アッセイを用いて、Bz-423の酸化還元サイクルを亜ミトコンドリア粒子の存在下で測定した。陽性対照(ドキソルビシンおよびメナジオン)とは異なり、Bz-423は基質酸化まで誘導せず、これは酸化還元サイクルではないことを強く示唆する。本発明は特定の機序に限定されず、機序の理解は本発明の実施には不必要であるが、まとめると、これらのデータは、化合物18〜20の活性が低いのはBz-423とその標的部位との結合を媒介する相互作用を除いたためであることを示すと考えられる。
(表2)Bz-423誘導体の能力。細胞死は表1に記載のように評価した。
Figure 2012107022
細胞はBz-423に応答して急速にO2 -を産生し、このシグナルをブロックすること(例えば、Bz-423に応答してO2 -を産生する酵素である、ユビキノールシトクロームcレダクターゼを阻害することによって)によりアポトーシスは防止される。Bz-423誘導体がBz-423と同じ様式で細胞を殺す(おそらく共通の分子標的に結合する結果として)かどうかを確認するため、マイクロモル量で効率的にユビキノールシトクロームcレダクターゼを阻害し細胞死に対して保護する、FK506の能力を試験した。FK506による阻害(およそ60%)は、ベンゼンより大きな疎水性C3側鎖を有する化合物である、化合物3〜6、12、13、16、および17だけに認められた。細胞を化合物18、19、または20のいずれかで前処理する(>40μM)ことによって、それぞれの化合物(Bz-423を含め)によって誘導される細胞死も阻害された(ほぼ60%まで)。化合物18、19、および20は、表2に記載の他のベンゾジアゼピンによる細胞傷害活性をブロックすることへの効果はなかった(ほぼ20%の阻害)。本発明は特定の機序に限定されず、機序の理解は本発明の実施には不必要であるが、これらのデータは、Bz-423ならびに化合物3〜6、12、13、16、および17が標的タンパク質内の同じ部位に結合し、共通の機序を介してアポトーシスを誘導することを強く示唆していると考えられる。他の化合物はこの部位に結合せず、異なる経路を介して死の応答を誘導する。
実施例29:ATPアーゼ活性の測定
ミトコンドリアは、文献(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Graham, J. M., Subcellular Fractionation and Isolation of Organelles:Isolation of Mitochondria from Tissues and Cells by Differential Centrifugation, in Current Protocols in Cell Biology, 1999, John Wiley & Sons, Inc:NewYork. pp. 3.3.3-3.3.4参照)に記載の通り、屠殺直後のウシの心臓から単離した。全ての緩衝液は2-メルカプトエタノール(5mM)を含む。亜ミトコンドリア粒子(SMP)は、ミトコンドリア懸濁液の各部分を0.5インチチタニウムプローブを備えたMisonix sonicater 3000をエネルギー設定8.5で使用し、超音波処理間に2分間のインターバルを入れて、ミトコンドリア懸濁液の各部分を40秒間3回超音波処理した以外は、Walkerら(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Walker, J. E., et al., Methods Enzymol, 1995. 260:p. 163-90参照)にしたがい、ウシの心臓ミトコンドリアを超音波処理して調製した。ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼ活性は、ADPの産生とピルビン酸キナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼ反応を介するNADHの酸化とをカップリングし、30℃でNADHの酸化速度を340nmで分光的にモニタリングすることによって測定した(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、McEnery, M. W. et al., J. Biol. Chem., 1986.261(4):p. 1745-52;Harris, D. A. , Spectrophotometric Assays, in Spectrophotometry and Spectrofluorimetry, D. A. Harris, Bashford, C. L., Editor. 1987.IRL Press参照)。反応混合物(最終容積0.25mL)には、Tris-HCl(100mM)、pH8.0、ATP(0〜2mM)、MgCl2(2mM)、KCl(50mM)、EDTA(0.2mM)、NADH(0.2mM)、ホスホエノールピルビン酸(1mM)、ピルビン酸キナーゼ(0.5U)、および乳酸デヒドロゲナーゼ(0.5U)が含まれた。各試料には、様々な濃度のBz-423(または溶媒対照)とともに予めインキュベートされた(30℃、5分間)、SMP(7μg)またはF1-ATPアーゼ(0.29μg)が含まれた。
上記明細書において言及された刊行物および特許は全て、本明細書に参照として組入れられている。本発明は、特定の好ましい態様に関連して説明されているが、特許請求された本発明は、このような特定の態様に過度に限定されないことは理解されなければならない。実際、当業者には明らかであるような本発明を実施するための説明された様式の様々な変更は、添付の特許請求の範囲内であることが意図されている。

Claims (28)

  1. 以下を含む、細胞死を調節する方法:
    a)以下を提供する工程:
    i)ミトコンドリアを有する標的細胞;
    ii)下式を含む組成物:
    Figure 2012107022
    (RおよびSの鏡像異性体の両方およびラセミ混合物を含む)
    (式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素;CH3;少なくとも1個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のエーテルサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なく2個の炭素原子および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、
    式中、R5はOH、NO2、OR'からなる群より選択され、
    R'は、少なくとも1個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され;式中、R6は、水素、NO2、Cl、F、Br、I、SR'、およびNR'2からなる群より選択され;R'はR5と同様に定義され、
    式中、R7は、水素;少なくとも2個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、
    式中、R8は、7個以上の非水素原子を含む任意の化学基を含むベンゼンよりも大きな脂肪族環基である)、
    b)該組成物がオリゴマイシン感受性付与タンパク質に結合し該細胞内のスーパーオキシドレベルを増大させるかまたは細胞ATPレベルを変化させる条件下で、該細胞を該組成物に曝露する工程。
  2. 標的細胞がインビトロ細胞である、請求項1記載の方法。
  3. 標的細胞がインビボ細胞である、請求項1記載の方法。
  4. 標的細胞がエクスビボ細胞である、請求項1記載の方法。
  5. 標的細胞が癌細胞である、請求項1記載の方法。
  6. 標的細胞が、B細胞、T細胞、および顆粒球からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  7. 薬剤がベンゾジアゼピンまたはベンゾジオン誘導体を含む、請求項1記載の方法。
  8. 組成物が以下を含む、請求項1記載の方法:
    Figure 2012107022
    (式中、R1はナフタルアラニン;フェノール;1-ナフタレノール;2-ナフタレノール;
    Figure 2012107022
    Figure 2012107022
    およびキノリンからなる群より選択され、
    式中、R2は、
    Figure 2012107022
    からなる群より選択され;
    式中、R1およびR2にはRまたはSの鏡像異性体の両方およびラセミ混合物が含まれる)。
  9. 曝露する工程によって標的細胞の細胞死が増大する、請求項1記載の方法。
  10. 下式を含む組成物:
    Figure 2012107022
    (式中、R1はナフタルアラニン;フェノール;1-ナフタレノール;2-ナフタレノール;
    Figure 2012107022
    Figure 2012107022
    およびキノリンからなる群より選択され、
    式中、R2は、
    Figure 2012107022
    からなる群より選択され;
    式中、R1およびR2にはRまたはSの鏡像異性体の両方およびラセミ混合物が含まれる)。
  11. 下式を含む組成物:
    Figure 2012107022
    (式中、R1はH、アルキル、または置換アルキルからなる群より選択され;R2は水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル、置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの置換脂肪族基、10個未満の炭素原子からなる環状脂肪族基、置換環状脂肪族基、アリール、ヘテロ環基からなる群より選択され;R3はH、アルキル、または置換アルキルからなる群より選択され、最大でも1つの置換基がヒドロキシサブグループであり;R4は、
    Figure 2012107022
    からなる群より選択され、式中、n=0〜5であり;R1、R2、R3、およびR4にはRまたはSの鏡像異性体の両方およびラセミ混合物が含まれる)。
  12. a)オリゴマイシン付与タンパク質に結合する化合物;および
    b)レスベラトロール、ピセタノール、エストロゲン、ランソプラゾールの群から選択される薬剤
    を含む薬学的組成物。
  13. 以下を含む、細胞死を調節する方法:
    a)被験者および
    Figure 2012107022
    Figure 2012107022
    (式中、Rは、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル、置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの置換脂肪族基、10個未満の炭素原子からなる環状脂肪族基、置換環状脂肪族基、アリール、ヘテロ環基からなる群より選択される)
    からなる群より選択される式を含む組成物を提供する工程、ならびに
    b)該組成物を該被験者に投与する工程。
  14. 以下を含む、細胞の増殖を調節する方法:
    a)被験者および
    Figure 2012107022
    Figure 2012107022
    (式中、Rは、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アミノ、低級アルキル、置換アミノ、アセチルアミノ、ヒドロキシアミノ、1〜8個の炭素および1〜20個の水素を有する脂肪族基、同様な大きさの置換脂肪族基、10個未満の炭素原子からなる環状脂肪族基、置換環状脂肪族基、アリール、およびヘテロ環基からなる群より選択される)
    からなる群より選択される式を含む組成物を提供する工程、ならびに
    b)該組成物を該被験者に投与する工程。
  15. 下式を含む薬剤を含む薬学的組成物を含む薬物溶離ステント媒質を含む、組成物:
    Figure 2012107022
    (RおよびSの鏡像異性体の両方およびラセミ混合物を含む)
    (式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素;CH3;少なくとも1個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のエーテルサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なく2個の炭素原子および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、
    式中、R5はOH、NO2、OR'からなる群より選択され、
    R'は、少なくとも1個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され;式中、R6は、水素、NO2、Cl、F、Br、I、SR'、およびNR'2からなる群より選択され、R'はR5と同様に定義され、
    式中、R7は、水素;少なくとも2個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、
    式中、R8は、7個以上の非水素原子を含む任意の化学基を含むベンゼンよりも大きな脂肪族環基であって、アリールまたは脂肪族環基である)。
  16. 被験者の血管を請求項15記載の組成物に曝露する工程を含む、血管を治療するための方法。
  17. 血管が閉塞された血管である、請求項16記載の方法。
  18. 血管が心臓血管である、請求項17記載の方法。
  19. 以下を含む、細胞死を調節する方法:
    a)被験者および下式を含む組成物を提供する工程:
    Figure 2012107022
    (RおよびSの鏡像異性体の両方およびラセミ混合物を含む)
    (式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素;CH3;少なくとも1個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のエーテルサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なく2個の炭素原子および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、
    式中、R5はOH、NO2、OR'からなる群より選択され、
    R'は、少なくとも1個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のヒドロキシサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のチオールサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、アルデヒドサブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のケトンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素を有し、カルボン酸サブグループを末端基とする、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミドサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアシル基を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個の窒素含有部分を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のアミンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のハロゲンサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖;少なくとも2個の炭素および少なくとも1個のニトロニウムサブグループを有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され;R6は、水素、NO2、Cl、F、Br、I、SR'、およびNR'2からなる群より選択され、R'はR5と同様に定義され、
    式中、R7は、水素;少なくとも2個の炭素を有する、直鎖状または分岐状の、飽和または不飽和脂肪族鎖からなる群より選択され、
    式中、R8は、7個以上の非水素原子を含む任意の化学基を含むベンゼンよりも大きな脂肪族環基である)
    b)該組成物を該被験者に投与する工程。
  20. 以下を含む、治療用組成物を同定する方法:
    a)i)ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼを含む試料、および
    ii)F1F0-ATPアーゼ阻害剤の候補物質を提供する工程;
    b)該阻害剤を該試料に接触させる工程;
    c)該ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼのkcat/Kmを測定する工程;および
    d)F1F0-ATPアーゼ-基質複合体に優先的に結合し、該ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼの結合に応じて、該ミトコンドリアF1F0-ATPアーゼのkcat/Kmを変化させない、該組成物を治療用組成物として選択する工程。
  21. e)選択された組成物を動物内で試験し、低毒性および自己免疫疾患の治療能力を同定する工程をさらに含む、請求項20記載の方法。
  22. 試料がミトコンドリアをさらに含む、請求項20記載の方法。
  23. F1F0-ATPアーゼが純粋な酵素である、請求項20記載の方法。
  24. F1F0-ATPアーゼが亜ミトコンドリア粒子内に位置する、請求項20記載の方法。
  25. kcat/Km比が、ATP濃度および阻害剤濃度の関数として、ATP加水分解速度またはATP合成速度の決定によって測定される、請求項20記載の方法。
  26. kcat/Km比が、Km、Vmax、および酵素濃度から算出される、請求項20記載の方法。
  27. 選択された組成物が、高基質濃度で高い阻害活性を有し、低基質濃度で低い活性を有する、請求項20記載の方法。
  28. a)被験者、およびミトコンドリアF1F0-ATPアーゼ-基質複合体に結合可能であるがF1F0-ATPアーゼのkcat/Km比を変化させない組成物を提供する工程;
    b)該組成物を該被験者に投与する工程;
    を含む、自己免疫疾患を治療する方法。
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