JP2012084423A - 非水電解液二次電池用電極板、非水電解液二次電池、および電池パック - Google Patents

非水電解液二次電池用電極板、非水電解液二次電池、および電池パック Download PDF

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Abstract

【課題】出入力特性および長寿命化の観点における耐久性の向上が図られた非水電解液二次電池用電極板を正極および/または負極に用いた非水電解液二次電池と電池パックを提供する。
【解決手段】集電体1と、上記集電体の表面の少なくとも一部に形成される電極活物質層2とを備える非水電解液二次電池用電極板10において、上記電極活物質層2に、活物質粒子6と、リチウム挿入脱離反応を示さない結晶性金属酸化物7を結着剤として含有させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解液二次電池に用いられる電極板、非水電解液二次電池および電池パックに関するものである。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、高エネルギー密度、高電圧を有し、また充放電時におけるメモリ効果(完全に放電させる前に電池の充電を行なうと次第に電池容量が減少していく現象)が無いことから、携帯機器、及び大型機器など様々な分野で用いられている。
また、現在、世界規模でCO排出抑制の取り組みが行われており、石油依存度を低減し、低環境負荷で走行可能とすることで、CO削減に大いに寄与することができるプラグインハイブリッド自動車、電気自動車に代表される次世代クリーンエネルギー自動車の開発・普及が急務とされている。これらの次世代クリーンエネルギー自動車の開発・普及には、ガソリンに依存しない駆動力が必須である。上記駆動力としてリチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池が期待されている。
上記非水電解液二次電池は、正極板、負極板、セパレータ、及び有機電解液から構成される。そして上記正極板及び負極板としては、金属箔などの集電体表面に、電極活物質層形成溶液を塗布して形成された電極活物質層を備えるものが一般に用いられている。
上記電極活物質層形成溶液は、リチウムイオン挿入脱離反応を示すことにより充放電可能な活物質粒子、樹脂製結着材、及び導電材(但し活物質が導電効果も発揮する場合などには、導電材は省略される場合がある)、あるいはさらに、必要に応じてその他の材料を用い、有機溶媒中で混練及び/又は分散させて、スラリー状に調製される。そして電極活物質層形成溶液を集電体表面に塗布し、次いで乾燥して集電体上に塗膜を形成し、必要に応じてプレスすることにより電極活物質層を備える電極板を製造する方法が一般的である(例えば特許文献1段落[0019]乃至[0026]、特許文献2[請求項1]、段落[0051]乃至[0055])。
このとき、電極活物質層形成溶液に含有される活物質粒子は、該溶液中に分散される粒子状の化合物であって、集電体表面に塗布されただけでは該集電体表面に固着され難い材料である。したがって樹脂製結着材を含まない電極活物質層形成溶液を集電体に塗布して乾燥して塗膜を形成しても、該塗膜は集電体から容易に剥離してしまう。そのため、従来の電極板における電極活物質層は、樹脂製結着材のみを介して、活物質粒子を集電体上に固着させて、形成されることが一般的であった。
特開2006−310010号公報 特開2006−107750号公報
上述するとおり、近年、リチウムイオン二次電池は、さらに電気自動車、ハイブリッド自動車、そしてパワーツールなどの高出入力特性および長寿命化が必要とされる分野に向けての開発が進められている。また携帯電話等の比較的小型の装置に用いられる二次電池も、装置が多機能化される傾向にあり、同様に、高出入力特性および長寿命化が求められていた。しかしながら、樹脂製結着材のみで活物質粒子を集電体上に固着させることにより電極活物質層が形成される従来の電極板では、出入力特性、および長寿命化の点で、充分ではなく改善が求められていた。
本発明は上記の実状に鑑みて成し遂げられた。即ち本発明は、出入力特性および長寿命化の観点における耐久性の向上が図られた非水電解液二次電池用電極板を提供し、また高い出入力特性および耐久性を示す非水電解液二次電池、および電池パックの提供を実現可能とすることを目的とする。
本発明者らは、活物質粒子を、リチウム挿入脱離反応を示さず、且つ、結晶性であり、結晶格子の連続により、少なくとも一部または全部が繋がる金属酸化物によって構成される結着物質によって、集電体上に固着させることによって、該集電体上に電極活物質層を設けることにより、出入力特性および耐久性に優れる非水電解液二次電池用電極板を提供することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、
(1)集電体と、上記集電体の表面の少なくとも一部に形成される電極活物質層とを備える非水電解液二次電池用電極板であって、上記電極活物質層が、活物質粒子および結着物質を含有しており、上記結着物質が、リチウム挿入脱離反応を示さず、且つ、結晶性であり、結晶格子の連続により、少なくとも一部または全部が繋がる金属酸化物によって構成されることを特徴とする非水電解液二次電池用電極板、
(2)上記結着物質中に、炭素成分が含有されていることを特徴とする上記(1)に記載の非水電解液二次電池用電極板、
(3)上記電極活物質層は、結着物質により、活物質粒子同士が互いに固着されるとともに、結着物質により、活物質粒子が集電体に固着されて構成されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の非水電解液二次電池用電極板、
(4)正極板と、負極板と、上記正極板と上記負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒を含む電解液とを少なくとも備えた非水電解液二次電池であって、上記正極板または負極板のいずれか一方、あるいは両方が、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の非水電解液二次電池用電極板であることを特徴とする非水電解液二次電池、
(5)収納ケースと、正極端子および負極端子を備える非水電解液二次電池と、過充電および過放電保護機能を有する保護回路とを少なくとも備え、上記収納ケースに上記非水電解液二次電池および上記保護回路が収納されて構成される電池パックにおいて、上記非水電解液二次電池が、正極板と、負極板と、上記正極板と上記負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒を含む電解液とを少なくとも備えた非水電解液二次電池であり、上記正極板または負極板のいずれか一方、あるいは両方が、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の非水電解液二次電池用電極板であることを特徴とする電池パック、
を要旨とするものである。
本発明は、活物質粒子と、リチウムイオン挿入脱離反応を示さず、結晶性であって、その一部または全部が結晶格子の連続により繋がる金属酸化物により構成される結着物質と、を含んでなる電極活物質層を備えるよう、非水電解液二次電池用電極板を構成することによって、高い出入力特性および長寿命化の観点における耐久性に優れた非水電解液二次電池用電極板の提供を可能とした。
また、本発明の電極板を、正極板および/または負極板として使用する、本発明の非水電解液二次電池および本発明の電池パックは、本発明の電極板の出入力特性の向上にともない、非水電解液二次電池自体の出入力性能、および電池パック自体の出入力性能を向上させることが可能である。
(1A)は、本発明の電極板の一実施態様における、集電体面に略垂直に切断した際の断面を示す模式図であり、(1B)は、本発明の電極板における電極活物質層の表面を示す模式図である。 本発明の電極板を本発明の電極板の別の実施態様における、集電体面に略垂直に切断した際の断面を示す模式図である。 3A〜3Dは、本発明に用いられる集電体の例示的態様を示す概略断面図である。 結晶性の酸化鉄のX線回折結果を示すグラフである。 非晶質の酸化鉄のX線回折結果を示すグラフである。 リチウム挿入脱離反応を示さない酸化チタンを用いたサイクリックボルタンメトリー試験の結果を示すサイクリックボルタモグラムである。 リチウム挿入脱離反応を示すマンガン酸リチウムを用いたサイクリックボルタンメトリー試験の結果を示すサイクリックボルタモグラムである。 本発明のリチウムイオン二次電池の一形態における概略断面図である。 本発明の電池パックの一実施態様における概略分解図である。 実施例3の電極板の電極活物質層表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真(倍率5万倍)である。
以下に、本発明の非水電解液二次電池用電極板(以下、単に「電極板」という場合がある)、非水電解液二次電池、および電池パックを実施するための形態について、順に説明する。
[非水電解液二次電池用電極板]
本発明の電極板は、集電体と、上記集電体の表面の少なくとも一部に形成される電極活物質層とを備えて構成される。そして上記電極活物質層は、リチウムイオン挿入脱離反応を示さない結晶性の金属酸化物である結着物質によって活物質粒子が集電体上に固着されてなるものである。また、上記結着物質を構成する金属酸化物は、結晶格子の連続により、少なくとも一部または全部が繋がるものであり、具体的には、例えば、隣り合う結着物質同士の一部において結晶格子が連続することにより繋がっている箇所、および/または、個の区別なく連続することによって繋がっている箇所を含んでよい。即ち、本発明における結晶性の金属酸化物から構成される結着物質は、電極活物質層中において、該金属酸化物が結晶格子の連続によって繋がっており、これによって、電極活物質層の膜強度が優れ、また、これによって、本発明の課題である、出入力特性の向上および耐久性の向上に寄与するものと推察される。
図1に本発明の電極板の一実施態様における断面模式図と表面模式図を示す。図1Aは、本発明の電極板10を、集電体1面に対し略垂直に切断した際の断面の状態を示す模式図であり、図1Bは、電極板10における電極活物質層2の表面の状態を示す模式図である。図1に示すとおり電極板10は、集電体1上に、活物質粒子6および非粒子状の結着物質8を含む電極活物質層2を備えて構成される。電極活物質層2は、活物質粒子6同士が結着物質4によって固着されるとともに、集電体1近傍に存在する活物質粒子6が結着物質4により集電体1上に直接に固着されることによって形成されている。また、電極活物質層2は、ところどころに空隙8が存在しており、これによって、電池に用いられた際に、電極活物質層2における非水電解液の浸透を可能としている。
結着物質8は、非粒子状であればその態様は特に限定されず、例えば、電極活物質層中において、一体的に生成されている態様、活物質粒子間を空隙を残して充填している態様、活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆う被膜である態様、あるいはこれらの態様の組み合わせであってよい。非粒子状の結着物質8の態様の共通する特徴は、結晶性の金属酸化物が、個の区別なく連続することによって繋がっている箇所を含み、その繋がりが、結晶格子の連続による繋がりである点にある。
また、本発明の電極板の一つの態様としては、電極板10のごとく、非粒子状の結着物質により、活物質粒子が集電体に直接に固着され、この結果、電極活物質層は、集電体表面に直接に積層されてよい。電極活物質層が集電体表面に直接に積層される結果、電極活物質層と集電体との間における電子の移動がスムーズになり、本発明の効果の1つである出入力特性の向上をさらに望ましいものとすることが可能である。
本発明の電極板の別の態様として、電極板10’を図2に示す。図2は、活物質粒子21が、粒子状の結着物質22により固着され、これによって、電極活物質層2が構成される態様の本発明の断面模式図である。粒子状の結着物質22を含む電極活物質層2の特徴は、隣り合う結着物質22同士の一部において結晶格子が連続することにより繋がっている箇所を含む点にある。
また、本発明の電極板のさらなる別の態様としては、電極活物質層中に、粒子状の結着物質と、非粒子状の結着物質のいずれも含み、粒子状の結着物質の少なくとも一部において隣り合う結着物質同士が、これを構成する金属酸化物の結晶格子の連続により繋がる箇所、および、非粒子状の結着物質の少なくとも一部において、これを構成する金属酸化物の結晶格子の連続により繋がる箇所のいずれも含む態様であってもよい(図示せず)。
電極板10、10’は、本発明の例示に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。本発明における結着物質の形状は、特に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形状であってよい。
本発明において、結着物質を構成する金属酸化物の結晶格子の連続による繋がりは、金属酸化物が粒子状であると非粒子状であると、を問わず、透過型電子顕微鏡観察によって、その断面の結晶格子を観察することにより確認することができる。また本発明において、特に、上記金属酸化物が、個の区別なく連続する態様では、X線回折によって結着物質を構成する金属酸化物の結晶性を確認した上で、走査型電子顕微鏡観察により、電極活物質層中に少なくとも一部において連続する非粒子状の結着物質を観察することによって、該結着物質を構成する金属酸化物の少なくとも一部が結晶格子の連続により繋がっていると判断することができる。
本発明の電極活物質層において、結晶格子の連続により、少なくとも一部または全部が繋がる金属酸化物によって結着物質が構成されることを可能にするためには、後述する本発明を製造する方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)に従い本発明の電極板を製造することが望ましい。即ち、本発明の製造方法は、電極活物質層形成液を集電体上に塗布して塗膜を形成し、加熱などの手段を実施することによって該塗膜から電極活物質層を形成する。その際、該集電体上において、活物質粒子の周囲に存在する金属元素含有化合物が熱分解、酸化などの反応を起こして、活物質粒子の周囲に結着物質を構成する金属酸化物が生成される。このとき、隣接する金属酸化物同士(あるいはその前駆体)の一部が接合していると、該接合部分において、両者の結晶成長が同時に進行し易い。上記接合部分において結晶成長が同時に進行する結果、本発明の電極活物質層において、結晶格子の連続により、少なくとも一部または全部が繋がる金属酸化物によって結着物質が構成されることを可能とする。
尚、本発明を説明する場合、あるいは本発明の一態様において、結着物質により固着される、という場合には、以下の2つの態様を含む。即ち、上記固着の態様は、被固着物間(例えば、活物質粒子間、活物質粒子と集電体表面との間、あるいは導電材を使用する場合には、導電材と活物質粒子間、導電材粒子間など)に、結着物質である金属酸化物が介在して両者を固着させる場合(以下、「固着態様1」)と、被固着物同士が直接接触し、接触部分を囲んで結着物質が存在することによって被固着物同士を固着させる場合(以下、「固着態様2」)とを含む。本発明の多くの実施形態では、上述する固着態様1および2のいずれか、あるいは両方が、電極活物質層中に存在する。特に、電極活物質層中に含まれる活物質粒子や導電材粒子の粒子径が小さくなるほど、固着態様2が増える傾向にある。
本発明は、電極活物質層において、上記固着態様1および2のいずれか、あるいは両方を含んで構成される場合には、導電性の向上の点で優れた効果を発揮する。上記効果を理解するために、導電材粒子を含む電極活物質層において、特に導電材粒子間の固着に着目する。導電材粒子同士が、上記固着態様1によって固着されている場合、本発明の結着物質が金属酸化物であるため、従来の樹脂製結着材に比べて、導電材粒子間での電子のやりとりの障害となり難い。またさらに、導電材粒子同士が、上記固着態様2によって固着されている場合には、粒子同士は直接に接しているため、当然に電子の流れがスムーズであり、優れた導電性が確保される。上記効果は、導電材粒子と活物質粒子間との固着に関しても、同様のことが言える。加えて、集電体と電極活物質層との境界においても、集電体面と、活物質粒子や導電材粒子とが、結着物質を介して固着されるか、あるいはこれらが直接に接触して接触部分の周囲に結着物質が存在することによって固着される。そのため、上述と同様の理由で、集電体と電極活物質層間の電子の流れがスムーズである。即ち、本発明の電極板は、金属酸化物が結着物質として電極活物質層中に存在し、且つ、固着態様1および/または2によって種々の構成材料を固着させていることにより電気抵抗を低く保つことが可能であり、特に固着態様1および2が混在することが好ましい。
本発明の電極板は、非水電解液二次電池の正極板、負極板のいずれか一方として用いることができ、あるいは正極板及び負極板の両方に本発明の電極板を用いてもよい。 本発明の電極板は、正極板として使用する場合には、樹脂製結着材のみを用いた場合と比較して出入力性能および耐久性に優れる。またさらに、本発明の電極板は、多くの金属酸化物を結着物質として適用できるという点で仕様範囲が広く、加えて、従来の負極板と合わせて使用できるので好ましい。また、本発明の電極板は、本発明の電極板を負極板として使用する場合には、上記正極板と同様に出入力性能および耐久性に優れる。加えて、本発明の電極板は、銅やアルミなどの金属基板と金属酸化物との密着性が優れ、さらには負極活物質粒子の周囲に存在する金属酸化物膜がSEI(solid electrolyte interface)として機能し、その結果、サイクル特性がさらに向上させることが可能性を有する。また特に、本発明の電極板が、正負両極に用いられた場合には、高速充放電が可能な上、サイクル特性が良好になるなどの望ましい効果が発揮され得る。
以下に、本発明の電極板の形態について、詳細に説明する。また必要に応じて本発明を正極板と負極板とに分けて説明するが、特に断りがない場合には、本発明の電極板とは、正極板および負極板のいずれも含み、また活物質粒子とは、正極活物質粒子および負極活物質粒子のいずれも含む意味で用いられる。
(集電体)
本発明に用いられる集電体は、一般的に非水電解液二次電池用正極板における正極集電体あるいは非水電解液二次電池用負極板における負極集電体として用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、上記集電体は、アルミニウム箔、ニッケル箔、銅箔などの単体又は合金から形成されているもの、もしくはカーボンシート、カーボン板、及びカーボンテキスタイル等の高い導電性を有する箔ものが好ましく用いられる。尚、本発明に用いられる集電体は、必要に応じて、電極活物質層の形成が予定される面において、表面加工処理がなされている集電体であってもよい。表面加工処理がなされている集電体としては、導電性物質が積層されているもの、化学研磨処理、コロナ処理、酸素プラズマ処理などの表面処理がなされていてもの等が挙げられる。あるいは、上記集電体は、物理的に任意の凹凸などが表面に設けられていてもよい。
上記集電体としては、例えば、図3Aに示すとおり、非水電解液二次電池用電極板20に用いられる集電体1として、それ自体が集電機能を有する金属箔などの集電基材3のみを用いることができる。集電基材3としては、上述するアルミニウム箔、ニッケル箔、カーボンシートなどが例示される。かかる場合には、集電基材3の表面101の少なくとも一部に電極活物質層2が設けられる。
また、異なる集電体の例としては、図3Bに示すとおり、非水電解液二次電池用電極板20’に用いられる集電体1’として、それ自体が集電機能を有する集電基材3の上面に、導電性を有する任意の導電性層4が設けられてなる集電体1’を用いることができる。導電性層4は、電極活物質層2と集電基材3と間の電子の移動を妨げない程度の導電性を示すものであればよい。例えば、導電性層4は、銅または銅合金からなる積層層、あるいは任意の導電性微粒子がメッキあるいはスパッタリングなどにより堆積されてなる層、あるいは一枚以上の導電性薄膜が設けられてなる層などであってよく、またこれらの例に限定されない。集電体1’において、導電性層4の表面が、集電体1’の表面102となり、電極活物質層2は、表面102の少なくとも一部に設けられる。尚、図3Bでは、任意の導電性層4が1層である態様を示した。しかし、集電体1’の構成はこれに限定されず、導電性層4は、2以上の任意の導電性層が積層された積層構成であってもよい。
また、異なる集電体の例としては、図3Cに示すとおり、非水電解液二次電池用電極板20’’に用いられる集電体1’’として、それ自体が集電機能を有する集電基材3の上面に、断続的に形成された任意の断続層5が設けられてなる集電体を用いることができる。断続層5は、上述する導電性層4と同じく導電性の層であってもよいし、あるいは導電性を示さない層であってもよい。即ち、非水電解液二次電池用電極板20’’では、集電体1’’の表面は、断続層5の表面である表面103と、断続層5が設けられておらず集電基材3自体の表面である表面103’とからなる。このとき、電極活物質層2は、表面103および表面103’のいずれとも接するよう形成することができる。非水電解液二次電池用電極板20’’では、断続層5は、導電性を有していても、有していなくてもよい。断続層5が導電性を有していない層であっても、集電体1’’の表面103’において電極活物質層2と集電基材3とが直接接するため、電極活物質層2と集電体1’’との間において電子の移動が確保される。ただし、非水電解液二次電池用電極板20’’自体の電気抵抗をより小さいものにするという観点からは、断続層5も、導電性を示すことが好ましい。
また、断続層5が導電性を示す場合、図3Dに示すように、集電体1’’の表面であって断続層5上にのみ、選択的に電極活物質層2’を設けて、非水電解液二次電池用電極板20’’’を構成してもよい。即ち、集電体1’’の表面のうち、表面103の少なくとも一部に、選択的に電極活物質層2’を設けても良い。あるいは、図示しないが、断続層5が導電性を示さない場合、集電体1’’の表面103’の少なくとも一部に選択的に電極活物質層2’を設けてもよい。
尚、上述する集電体の説明は、本発明に用いられる集電体を何ら限定するものではない。本発明に用いられる集電体は、以上に例示するとおり、本発明において集電体とは、集電機能を有する集電基材のみであってもよく、かかる態様では、電極活物質層が設けられる集電体の表面とは、該集電基材の表面を指す。あるいは、本発明において、集電体とは、集電機能を有する集電基材と、該集電基材上に設けられる任意の積層層を有していてもよい。かかる態様では、電極活物質層が設けられる集電体の表面とは、集電基材と電極活物質層との間の少なくとも一領域で電子の移動が確保される範囲において、上記積層層の表面、あるいは、積層層が設けられていない集電基材表面、あるいは、上記積層層の表面および積層層が設けられていない集電基材表面の両方を指す。
本発明に用いられる集電体は、耐熱温度が800℃以下、さらには600℃以下、特には400℃以下のものを選択することが可能である。かかる集電体の選択は、後述する本発明の製造方法における電極活物質層形成工程における温度条件との関係によって決定される。本発明の製造方法では、電極活物質層形成工程が加熱工程である場合に、例えば400℃以下の加熱温度で集電体上に直接に電極活物質層を形成することができる。したがって、上記集電体は、耐熱温度が800℃以下、さらには600℃以下、特には400℃以下のものを選択することができ、該集電体上に直接に電極活物質層が形成されてなる本発明の電極板を提供することができる。尚、400℃以下の耐熱性の低い集電体上に直接に設けられた電極活物質層は、活物質粒子と、結着物質とが同じ化合物からなる組み合わせであることが望ましいが、これに限定されない。
上記集電体の厚みは、一般に非水電解液二次電池用正極板または負極板の集電体として使用可能な厚みであれば特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましい。
(電極活物質層)
本発明における電極活物質層は、少なくとも、活物質粒子およびリチウムイオン挿入脱離反応を示さない結晶性の金属酸化物から構成される結着物質を含む。
本発明の電極板において、電極活物質層の厚みは、当該電極板に求められる電極容量や出入力特性を勘案して、適宜設計することができる。一般的には、電極活物質層の厚みは、200μm以下、より一般的には100μm以上かつ150μm以下の厚みで設計される。ただし、本発明においては、電極活物質層を非常に薄く形成することが可能である。そのため、用いられる活物質粒子の粒子径にもよるが、電極活物質層の厚みが300nm以上200μm以下の電極活物質層を形成することができる。出入力特性を向上させつつも電極容量を向上させ得るという観点からは、特に電極活物質層の膜厚を300nm以上150μm以下にすることが好ましく、500nm以上100μm以下とすることがより好ましい。即ち、電極活物質層の厚みが、上述の範囲のように薄い場合には、用いられる活物質粒子は粒子径が小さいものであり、少なくとも電極活物質層の膜厚以下の粒子径であることを意味する。また、電極活物質層の厚みが、上述の範囲のように薄い場合には、電極活物質層内における活物質粒子と集電体との距離が、短くなるので、電極板の抵抗を下げることができる。尚、本発明において電極活物質層の膜厚の下限は、主として用いられる活物質粒子の粒子径に依存し、使用可能な活物質粒子の粒子径の縮小化に伴い、さらに膜厚を薄くすることが可能である。
活物質粒子:
本発明の正極板における電極活物質層に含有される正極活物質粒子としては、一般的に非水電解液二次電池用正極板において用いられるリチウムイオン挿入脱離反応を示す活物質粒子であれば、特に限定されない。上記正極活物質の具体的な例としては、例えばLiCoO、LiMn、LiNiO、LiFeO、LiTiO、LiFePOなどのリチウム複合酸化物などを挙げることができる。また、本発明の負極板における電極活物質層に含有される負極活物質粒子としては、一般的に非水電解液二次電池用負極板において用いられるリチウムイオン挿入脱離反応を示す活物質粒子であれば、特に限定されない。上記負極活物質の具体的な例としては、例えば、グラファイト、LiTi12などを挙げることができる。
本発明に用いられる活物質粒子の粒子径は、特に限定されず、任意の大きさのものを適宜選択して使用することができる。特に、粒子径の小さい活物質粒子を用いる態様の本発明によれば、電極活物質層中における活物質粒子の表面面積の総量を増大させることができるとともに、1つの活物質粒子内におけるリチウムの移動距離を短縮することが可能であるため、飛躍的に出入力特性を向上させることができる。したがって、より高い出入力特性を求める場合には、粒子径の寸法の小さいものを選択することが望ましい。具体的には、用いる活物質粒子の粒子径は、好ましくは10μm未満、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。従来の、樹脂製結着材を用いたスラリー状の電極活物質層形成液では、用いる活物質粒子径が10μm未満となると塗工適性が不良になる傾向にあり、5μm以下であると該形成液の流動性が著しく悪くなり、印刷機などの量産設備に適用が困難となり、さらに1μm以下であると、活物質粒子を形成液中に分散すること自体が困難になる傾向にあった。これに対し、本発明を製造する場合には、上述のような問題点が回避されるため、任意に活物質粒子の粒子径を選択することができる。尚、本発明および本明細書に示す活物質粒子の粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定により測定される平均粒径(体積中位粒径:D50)である。
上記、電極活物質層中に含有される活物質粒子の粒子径は、電子顕微鏡観察結果を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)を用いて任意に選択された複数(例えば10ケ程度)の活物質粒子の最長径を測定し、その平均値を算出することにより求めることができる。
結着物質:
本発明における結着物質は、リチウムイオン挿入脱離反応を示さず、且つ、結晶性の金属酸化物から構成され、集電体上において活物質粒子を固着させることができるものである。尚、上記金属酸化物が、結晶格子の連続により、少なくとも一部または全部が繋がることは上述のとおりである。
(i)金属酸化物
上記金属酸化物は、リチウムイオン挿入脱離反応を示さない結晶性のものであり、集電体上に活物質粒子を固着させる結着作用を発揮することができるものであるという条件を満たす限り、一般的に金属と理解される元素の酸化物であれば、特に限定されない。より具体的には、上記金属酸化物は、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Fr、Ra、およびCeからなる群から選択される金属元素の1種を含む金属酸化物、または上記郡から選択される2種以上の金属元素を含む複合金属酸化物であってよい。また理由は明らかではないが、上記金属元素の中でも、特に第3周期乃至第5周期に属する金属の酸化物が結着物質として電極活物質層中に存在する場合には、より高い出力向上効果が示されるため、好ましい。即ち、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、及びSnの酸化物が結着物質として電極活物質層中に存在していることがより好ましい。さらに上記第3周期乃至第5周期に属する金属の中でも、鉄とチタンは、安価であって取扱性も容易である上、これを結着物質として含む電極板において、非常に優れた出力向上効果を示すことが可能であるため、特に好ましい。
上述で列挙する金属元素の酸化物とは、上述する金属元素のうちのいずれか1つに酸素が結合した金属酸化物、あるいは上述する金属元素から選択される2以上の金属元素を含む複合金属酸化物のいずれであってもよい。例えば、1つの金属元素を含有する金属酸化物の例としては、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化スカンジウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化セリウムなどを挙げることができる。特には、本発明の電極板における金属酸化物の好ましい例としては、CoO、MnO、NiO、FeO、TiO、などを挙げることができる。
また2以上の金属元素が含有される複合金属酸化物であって、本発明の金属酸化物として用いることができるものの例としては、例えば、セリウムの一部がガドリニウムに置換された酸化セリウム、ジルコニウムの一部がイットリウムに置換された酸化ジルコニウム、鉄とチタンの混合酸化物、インジウムとスズが混合された酸化物、ニッケルの一部がリチウムに置換された酸化ニッケルなどを挙げることができる。
本発明における金属酸化物は、結晶性であることが特定される。本発明において結晶性の金属酸化物とは、当該金属酸化物、あるいは当該金属酸化物を含む試料を、X線解析装置で解析し、当該金属酸化物のピークが検出された場合を意味する。例えば、金属元素として鉄を例に結晶性の酸化鉄と、非晶質の酸化鉄についてそれぞれのX線解析装置における具体的な分析結果を用いて説明する。
まず、Fe(NO)・9HO[分子量:404]4.0gをメタノール15gに加えて溶解させ、さらにエチレングリコール10gを混合し、試料溶液を作成した。次いで、上記試料溶液をガラス基板上に塗布したサンプル1及び2を作成し、サンプル1は、500℃で一時間加熱し、一方、サンプル2は300℃で1時間加熱した。次いで、加熱後のサンプル1及び2の塗膜面を削り、それぞれ、分析試料1及び2とし、これらについて組成分析を行った。ここで、分析試料1の組成分析の結果、Fe元素が38Atomic%、O元素が62Atomic%であり、また分析試料2の組成分析の結果、Fe元素が34Atomic%、O元素が66Atomic%であった。したがって分析試料1及び2に含有される鉄は、いずれも酸化していることが確認された。
次に、分析試料1及び2の結晶性について、X線解析装置で評価した。それぞれの分析結果について、分析試料1については図4に、分析試料2については図5示した。図4及び図5から明らかなように、図4では、横軸の32と58付近にピークが確認でき、これによって、結晶性の酸化鉄がガラス基板上に生成されていることが確認された。
一方、図5はブロードなチャートが示されるだけで何らピークが観察されず、非晶質な状態であると理解された。このように、本発明では、金属元素が酸化物となっているか否かを組成分析により確認することができ、またX線解析装置によって得られたチャートから、その金属酸化物が結晶性であるか、結晶性であるかを確認することができる。
また本発明における金属酸化物は、リチウムイオン挿入脱離反応を示さないものであることが特定される。リチウムイオン挿入脱離反応の有無については、電気化学測定(サイクリックボルタンメトリー)法により確認することができる。
具体的には、電極電位を活物質の最適な電圧範囲、例えばTiOであれば3.0Vから4.3Vまで掃引したのち、再び3.0Vまで戻す作業を3回程度繰り返すものである。走査速度は1mV/秒が好ましい。かかるサイクリックボルタンメトリー試験において、TiOは、図6に示すように酸化ピークおよび還元ピークが確認されず、リチウム挿入脱離反応を示さないことを確認することができる。一方、例えばLiMnであれば、上述の同様の試験において、図7に示すように、約3.9V付近にLiMnのLi脱離反応に相当する酸化ピークが、約4.1V付近にLi挿入反応に相当する還元ピークが出現し、リチウムイオンの挿入脱離反応の有無を確認することができる。
尚、本発明の非水電解液二次電池用電極板を製造するにあたり、電極活部質層中に含有が予定される金属酸化物のリチウムイオン挿入脱離反応の有無は、上述のとおり確認することができる。したがって、予め確認したうえで、リチウムイオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物を電極活物質層中に結着物質として存在させることができる。一方、すでに完成された電極板における電極活物質層中にリチウムイオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物が含有されているか否かは、例えば、以下のとおり確認することができる。即ち、電極活物質層を削ってサンプルを作成し、該サンプルの組成分析を実施することにより、サンプル中に、いかなる金属酸化物が含有されているかを推定することができる。そして、推定された金属酸化物よりなる塗膜を、ガラスなどの基板上に形成し、これをサイクリックボルタンメトリー試験に供することにより、当該金属酸化物がリチウムイオン挿入脱離反応を示すか示さないかを確認することができる。
本発明において、電極活物質層中における活物質粒子と金属酸化物の配合比率は特に特定されず、使用される活物質粒子の種類や大きさ、金属酸化物の種類、電極に求められる機能などを勘案して適宜決定することができる。本発明における金属酸化物は、上述のとおり、リチウムイオン挿入脱離反応を示さないものであることから、活物質粒子を集電体上に固着させるための結着物質としての役割を果たせばよい。その観点から、電極活物質層中において、結着物質である金属酸化物の占める割合は、3重量%以上、30重量%以下であることが好ましい。
(ii)炭素成分
本発明における結着物質中には、炭素成分が含まれていてもよい。結着物質中に炭素成分が含まれる、本発明の態様では、電極板の耐久性向上効果が顕著であり、好ましい。上記結着物質中に含有される炭素成分とは、電極活物質層中に、任意で添加される導電材などの炭素含有する添加成分や活物質粒子を構成する炭素成分を除くものである。上述する結着物質中に含有される炭素成分は、樹脂成分、樹脂成分の分解物、炭素元素含有の化合物の残渣あるいは炭素単体として活物質中に含有される。樹脂材料の分解物としては、エーテル基含有化合物、エステル基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、アセチレン系化合物、セルロース系化合物、あるいはこれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。
結着物質に含まれる炭素成分の存在は、一般的には、得られた電極板における電極活物質層の組成分析により検出された炭素元素量が、活物質粒子あるいは活物質粒子の一部を構成する炭素成分や導電材由来の炭素元素量の和よりも多いかどうかで、確認することができる。ただし、含有される炭素成分の量が微量な場合には、組成分析に炭素成分量が反映されないこともある。このように微量な炭素成分であっても、後述する元素マッピングなどによって、結着物質中に炭素成分が含有されていることを確認することができる。
上記炭素成分は、たとえば、後述する有機物または有機金属化合物など、電極活物質層形成液中に添加される物質中の炭素に由来する。これらは、本発明の電極板の製造において、電極活物質層中に形成される結着物質中に炭素成分として残存可能となるよう、加熱工程の加熱温度などを調整し、結着物質中に含有させることができる。ただし、結着物質中に炭素成分を含有させる方法は、これに限定されるものではない。
本発明の電極板の電極活物質層に、金属酸化物から構成され、且つ、炭素成分を含む結着物質を設けるためには、たとえば、炭素成分を提供可能な有機物や有機金属化合物を含み、且つ、導電材や、グラファイトから構成される負極活物質粒子などの炭素材料を添加する前の電極活物質層形成液を基板上に塗布して塗膜を形成し、適切な電極活物質層形成手段を実施することにより、形成される結着物質中に炭素成分が存在することを予備的に確かめる予備実験を行う。適切な電極活物質層形成工程とは、たとえば、加熱手段であってよく、かかる場合には、適切な加熱温度あるいは適切な加熱雰囲気で加熱することにより、予備試験を行う。次いで、必要な材料が含有された電極活物質層形成液を集電体上に塗布して予備実験と同様の条件で加熱工程を実施することにより、導電材や、グラファイトから構成される負極活物質粒子などの炭素材料以外の炭素成分が含有される結着物質を備える電極板を製造することができる。以上により得られた電極板では、電極活物質層の組成分析の結果によらず、結着物質中には、導電材を構成する炭素以外の炭素成分が残存すると理解される。
結着物質中に、炭素成分が含有されているか否かを、より具体的に確認するためには、透過型電子顕微鏡を用い、走査透過型電子顕微鏡法(STEM法)によって、EDX検出器でナノオーダーの元素分析により示される元素マッピングによって炭素元素を確認することができる。あるいは、EELS分光器によるナノオーダーの状態評価、HAADF検出器で組成コントラスト像を得ることによっても結着物質中に含有される炭素成分を確認することができる。より具体的には、電子顕微鏡写真観察において、本発明における電極活物質層には、活物質粒子などを固着させるための結着物質が、活物質粒子間や活物質粒子の周囲等に存在することを観察することができる。そして、上記元素マッピングや、組成コントラスト像を利用する方法によれば、該結着物質内に点在する炭素元素を確認することにより炭素成分の含有を確認することができる。また上記炭素成分は、グラファイト粒子や導電材が、同様の方法により集中的な炭素原子の存在として確認されるのとは異なり、著しくスケールの小さい炭素元素として観察されるため、グラファイト粒子や導電材とは明らかに区別される。
尚、本発明において、グラファイト粒子や導電材とは明らかに区別されるスケールの小さい炭素成分が、電極活物質層中において、結着物質外に、さらに存在していてもよい。
本発明の電極板は、結着物質中に、炭素成分が含有される態様を実施することにより、電極板の耐久性の向上が顕著になることを本発明者らは確認している。電極活物質層中に含まれる活物質粒子は、リチウムイオンが挿入脱離することにより膨潤および収縮が繰り返されて劣化し、これが電極板のサイクル特性を低下させる原因の1つとなることが知られている。これに対し、上記態様の本発明の電極板では、活物質粒子の周囲に存在する結着物質に炭素成分が含有されていることにより、該活物質粒子の膨潤、収縮が、炭素成分の存在によって抑制され、活物質として作用の寿命を長くし、結果として耐久性の向上に寄与するものと推察される。
尚、上記態様の本発明において、結着物質中に含有される炭素成分の量は、特に限定されず、一般的な組成分析において、反映されない程度の微量な含有量であっても、電極板の出入力特性の向上あるいは耐久性の向上に寄与し得る。たとえば、本発明において、結着物質中に含有される炭素成分は、結着物質を構成する金属酸化物の金属元素100モル%に対して上記炭素成分が10モル%以上含有されていることが好ましく、またその上限は特に限定されないが、50モル%以下の含有量で、充分に出入力特性および耐久性の向上に寄与することができる。
(iii)その他の添加物
上記電極活物質層は、上述する活物質粒子および結着物質である金属酸化物のみから構成することが可能であるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、さらなる添加剤が含有されていてもよい。たとえば、本発明の電極板は、導電材を使用することなく良好な導電性を発揮させることが可能であるが、より優れた導電性が望まれる場合や、活物質粒子の含有量を増大させたい場合などには、導電材を使用することが望ましい。
上記導電材としては、通常、非水電解液二次電池用電極板に用いられるものを使用することができ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック等の炭素材料が例示されるが、これに限定されるものではない。導電材の平均粒径は20nm〜50nm程度であることが好ましい。また異なる導電材としては炭素繊維(VGCF)が公知である。
導電材を電極活物質層に含有させる場合には、その含有量は特に限定されないが、一般的には、活物質粒子100重量部、あるいは活物質粒子および結着物質の総量100重量部に対して、導電材の割合が5重量部以上20重量部以下となるようにすることが望ましい。
また本発明は、樹脂製結着材を使用せずとも活物質粒子を集電体上に固着させることができるものであるが、これは電極活物質層に樹脂成分が含有されることを禁止する趣旨ではない。たとえば、電極板を用いて電池を組み立てる場合には、電解液を電極の細孔内部へしみこませる必要があり、この際、電解液の浸透性を向上させるために電極活物質層中に、樹脂成分を1〜10%ほど含有させる場合がある。このように、必要に応じて、本発明においても電極活物質層中に少量の樹脂材料を含有させてもよい。あるいは、結着物質として、金属酸化物に加え、樹脂製結着材も電極活物質層中に含有されていてもよい。
(電極板の出入力特性評価方法)
本発明の電極板の出入力特性は、放電容量維持率(%)を求めることにより評価することができる。即ち、上記放電容量維持率は、放電レート特性を評価するものであり、放電レート特性が向上した電極板は、一般的に、充電レート特性も同様に向上していると理解され、したがってこれを出入力特性の評価とすることができる。即ち、望ましい放電容量維持率が示される場合には、充放電レート特性が向上したと評価するものである。より具体的には、活物質の有する放電容量(mAh/g)の理論値が1時間で放電終了となるよう放電レート1Cを設定し、設定された1Cの放電レートにおいて実際に測定された放電容量(mAh/g)を放電容量維持率100%とする。そしてさらに放電レートを高くしていった場合の放電容量(mAh/g)を測定し、以下の数1に示す式に放電容量維持率(%)を求めることができる。
尚、上記放電容量は、三極式コインセルにより電極自体の放電容量を測定することにより求められる。
[非水電解液二次電池用電極板の製造方法]
次に、本発明の非水電解液二次電池用電極板を製造する方法(以下、単に「本発明の製造方法」という場合がある)について説明する。本発明の製造方法は、まず、リチウム挿入脱離反応を示さない金属酸化物の前駆体となる金属元素含有化合物および活物質粒子、あるいはさらに任意の添加剤を含む、電極活物質層形成液を調製する。そして本発明の製造方法は、上記電極活物質層形成液を集電体表面の所望の領域に塗布して塗膜を形成する塗布工程と、上記塗膜より電極活物質層を形成する電極活物質層形成工程と、を順に備える。
上記電極活物質層形成工程は、上記塗膜に含まれる溶媒を除去するとともに、上記塗膜中に含有される金属元素含有化合物を反応させて結晶性の金属酸化物を生成し、該金属酸化物によって上記活物質粒子を上記集電体上に固着させることによって、上記集電体上に該金属酸化物と上記活物質粒子とを含有する電極活物質層を形成する工程であってよい。
あるいは、本発明における電極活物質層形成工程は、塗布工程と上記電極活物質層形成工程との間に、任意の工程を設け、塗膜中の溶媒を除去した後に、電極活物質層形成工程を実施してもよい。即ち、電極活物質層形成工程は、予め溶媒の除去された塗膜中に含有される金属元素含有化合物を反応させて金属酸化物を生成し、該金属酸化物によって上記活物質粒子を上記集電体上に固着させることによって、上記集電体上に該金属酸化物と上記活物質粒子とを含有する電極活物質層を形成する工程であってもよい。
尚、本発明の製造方法は、正極板を製造する場合には、正極活物質層を集電体上に積層形成するために、上記電極活物質層形成液には、正極活物質粒子およびこれに適した金属元素含有化合物を添加し、また負極板を製造する場合には、負極活物質層を集電体上に積層形成するために、電極活物質層形成液には、負極活物質粒子およびこれに適した金属元素含有化合物を添加する。ただし、本発明の製造方法において、「正極」および「負極」を、まとめて「電極」として示す場合がある。
従来の樹脂製結着材を用いるスラリー状の電極活物質層形成液とは異なり、本発明の非水電解液二次電池用電極板の製造方法において用いられる、金属元素含有化合物及び活物質粒子を含有して調製される電極活物質層形成液は、含有される活物質粒子の粒子径によらず、集電体への塗布性が良好に維持される程度の粘度が示される。したがって、従来の電極活物質層形成液では、粘度の著しい向上のため使用困難であった粒子径の小さい活物質粒子を、本発明の非水電解液二次電池用電極板の製造方法では、使用することができる。また本発明の非水電解液二次電池用電極板の製造方法は、上記電極活物質層形成液の集電体への塗布性が良好であることから、所望の厚みに塗布することも可能となり、電極活物質層の薄膜化が可能である。
以上のとおり、本発明の非水電解液二次電池用電極板の製造方法によれば、電極板の出入力特性の向上へのアプローチである、粒子径の小さい活物質粒子の使用、および電極活物質の薄膜化のいずれもが、容易に実現可能である。したがって、本発明の製造方法によれば、粒子径の小さい活物質粒子を使用し、あるいはまた、電極活物質層の厚みを小さく設計することによって、さらに出入力特性が向上した非水電解液二次電池用電極板を、容易に製造することが可能である。
上記電極活物質層形成工程は、例えば、加熱工程、減圧乾燥工程、減圧加熱工程、あるいはこれらの組み合わせなどが例示されるが、これらに限定されず、集電体上に塗布された電極活物質層形成液により形成された塗膜を電極活物質層として形成可能な手段を実施する工程であれよい。例えば、上記電極活物質層形成工程は、上記塗膜中に含有される溶媒を除去する手段を実施し、次いで金属元素含有化合物を反応させる手段を実施するなど、2以上の手段を含んでもよい。
上記電極活物質層形成工程が、加熱手段を実施する加熱工程である場合には、本発明の製造方法は、金属元素含有化合物が溶解する上記電極活物質層形成液を集電体上に塗布し、該金属元素含有化合物の熱分解開始温度以上の温度で加熱して熱分解させ、これに含まれる金属元素を酸化せしめてリチウム挿入脱離反応を示さない結晶性の金属酸化物を生成することができる。上記電極活物質層形成工程において、集電体上に生成される金属酸化物は、溶液中に含まれる活物質粒子を抱き込むように集電体上で塗膜化するため、活物質粒子を集電体上に固着させることができる。上記電極活物質層形成液中に含まれる活物質粒子、あるいはさらに導電材粒子は、上記固着態様1に加え、固着態様2として示すように、粒子同士の直接の接触が良好に保たれた状態で固着される態様が含まれる。このように、固着態様1および2に示されるような固着の状態を可能とする要因は、本発明の製造方法において、金属元素含有化合物が溶媒に溶解されていること、且つ、活物質粒子等を混合した電極活物質層形成液を集電体上に塗布して電極活物質層を形成する際に、加熱などの手段により溶媒が除去され、生成される金属酸化物(結着物質)が、粒子間、あるいは粒子同士が直接に接触する接触部分の周囲に生成されることにあると推察される。この結果、本発明の製造方法は、導電性が良好で電気抵抗を低く保つことが可能な電極板を製造することができる。尚、本発明の製造方法において、電極活物質層形成液中に含まれる金属元素含有化合物は、溶媒に溶解した状態のものも含めて金属元素含有化合物と呼ぶ。
活物質粒子:
上記電極活物質層形成液に含有される活物質粒子は、上述において既に説明した正極活物質粒子、あるいは負極活物質粒子と同様であるため、ここではその説明を割愛する。尚、本発明に用いられる電極活物質層形成液は、従来の樹脂製結着材を用いた電極活物質層形成液に比べて、平均粒径の小さい活物質粒子を用いた場合であっても粘度調整が容易である。特に、本発明の製造方法に用いられる電極活物質層形成液は、活物質粒子の粒子径が10μm以下、さらには1μm以下の小さいサイズのものを用いても、塗布性が低下するほどの粘度の上昇がみられないという望ましい特徴を有している。したがって、用いられる活物質粒子の粒子径は、所望の大きさを選択することができる。
金属元素含有化合物:
上記電極活物質層形成液中に溶解される金属元素含有化合物は、電極活物質層中に含有され、結着物質として活物質粒子同士を固着させ、また、活物質粒子を集電体上に固着させ、且つ、リチウムイオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物の前駆体である。したがって、上記金属元素含有化合物は、溶液中に溶解された状態で基板上に塗布され、熱分解開始温度以上で加熱されたときに、上述する金属酸化物を生成することができるものであればよい。尚、使用する金属元素含有化合物から生成される金属酸化物が、リチウムイオン挿入脱離反応を示さないものであるか否かは、予備実験において、金属元素含有化合物を含有する溶液を基板上に塗布してこれを加熱することによって金属酸化物を形成し、上述するサイクリックボルタンメトリー法により確認することができる。上記金属元素含有化合物としては、炭素が含まれない無機金属元素含有化合物を1種以上用いてもよく、炭素が含まれる有機金属元素含有化合物を1種以上用いてもよく、あるいは、これらの組み合わせであってもよい。
上記金属元素含有化合物は、具体的には、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Fr、Ra、およびCeの群から選択されるいずれか1つ、または2つ以上の金属元素を含有する化合物であればよい。また理由は明らかではないが、上記金属元素の中でも、特に3乃至5周期に属する金属元素が含有する金属元素含有化合物を用いた場合には、生成される電極板の出入力特性がより高くなる傾向にあるため、好ましい。即ち、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、及びSnの酸化物が結着物質を構成する金属酸化物として電極活物質層中に存在していることがより好ましい。
上記金属元素含有化合物としては、例えば金属塩、あるいは金属錯体が好ましく使用される。上記金属塩としては、酢酸塩、シュウ酸塩等を挙げることができる。中でも、本発明においては、酢酸塩は汎用品として入手が容易なので、好ましく使用される。
無機金属元素含有化合物の金属塩の具体的な例示としては、塩化マグネシウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、四塩化チタン、オキソ硫酸バナジウム、クロム酸アンモニウム、塩化クロム、二クロム酸アンモニウム、酢酸クロム、硝酸クロム、硫酸クロム、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化鉄(I)、塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(III)、塩化コバルト、硝酸コバルト、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、塩化銅、硝酸銅、塩化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸イットリウム、塩化イットリウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、塩化銀、硝酸インジウム、硫酸スズ、塩化セリウム、硝酸セリウム、硝酸二アンモニウムセリウム、硫酸セリウム、塩化サマリウム、硝酸サマリウム、塩化鉛、硝酸鉛、ヨウ化鉛、リン酸鉛、硫酸鉛、塩化ランタン、硝酸ランタン、硝酸ガドリニウム、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、五塩化ニオブ、りん酸モリブデン酸アンモニウム、硫化モリブデン、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、五塩化アンチモン、三塩化アンチモン、三フッ化アンチモン、テルル酸、亜硫酸バリウム、塩化バリウム、塩素酸バリウム、過塩素酸バリウム、硝酸バリウム、タングステン酸、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、五塩化タンタル、塩化ハフニウム、硫酸ハフニウム等を挙げることができる。
有機金属元素含有化合物の金属塩の具体的な例示としては、例えば、酢酸スカンジウム、酢酸クロム、酢酸鉄(II)、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸亜鉛、酢酸銀、酢酸インジウム、酢酸セリウム、酢酸鉛、酢酸ランタン、酢酸ストロンチウム、酢酸パラジウム、酢酸バリウム、シュウ酸セリウム等を挙げることができる。
また有機金属元素含有化合物の金属錯体の具体的な例示としては、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、カルシウムジ(メトキシエトキシド)、グルコン酸カルシウム一水和物、クエン酸カルシウム四水和物、サリチル酸カルシウム二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、トリス(アセチルアセトナート)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛等を例示することができる。
より具体的な金属元素含有化合物と、これによって生成される金属酸化物の例を以下に挙げる。例えば、集電体上に金属酸化物として、NiOを生成するための金属元素含有化合物としては、Ni元素含有化合物を主原料として用いることができ、さらに、必要に応じてその他の原料を上記主原料と組み合わせて用いることもできる。Ni元素含有化合物としては、例えば、塩化ニッケル(II)六水和物、酢酸ニッケル(II)四水和物、過塩素酸ニッケル(II)六水和物、臭化ニッケル(II)三水和物、硝酸ニッケル(II)六水和物、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、次亜りん酸ニッケル(II)六水和物、及び硫酸ニッケル(II)六水和物、炭酸ニッケル等が挙げられる。
また例えば、集電体上に金属酸化物としてFeOを生成するための金属元素含有化合物としては、Fe元素含有化合物を主原料として用いることができ、さらに、必要に応じてその他の原料を上記主原料と組み合わせて用いることもできる。Fe元素含有化合物としては、例えば、塩化鉄(II)四水和物、クエン酸鉄(III)、酢酸鉄(II)、しゅう酸鉄(II)二水和物、硝酸鉄(III)九水和物、乳酸鉄(II)三水和物、及び硫酸鉄(II)七水和物等が挙げられる。
また例えば、集電体上に金属酸化物としてTiOを生成するための金属元素含有化合物としては、Ti元素含有化合物を主原料として用いることができ、さらに、必要に応じてその他の原料を上記主原料と組み合わせて用いることもできる。Ti元素含有化合物としては、例えば、四塩化チタン、及びチタンアセチルアセトナート、チタンキレート剤等が挙げられる。
上述する電極活物質層形成溶液において、溶媒中における、添加される1種または2種以上の金属元素含有化合物の添加量の合計の比率は、0.01〜5mol/L、特に0.1〜2mol/Lが好ましい。上記濃度が0.01mol/L以上であることにより、集電体と該集電体表面で生成される電極活物質層とが良好に密着し、活物質粒子の固着が図られる。また、上記濃度が、5mol/L以下であることにより、上記電極活物質層形成溶液は集電体表面へ良好に塗布できる程度の良好な粘度を維持することができ、均一な塗膜が形成される。
尚、上述に具体的に例示する金属元素含有化合物以外であっても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜、選択して金属元素を含有する化合物を使用することができる。即ち、本発明の製造方法において製造される非水電解液二次電池用電極板に設けられる電極活物質層において、好ましく電極活物質粒子を集電体上に固着させることができる結着物質であるリチウムイオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物を生成可能な前駆体となるものであれば、適宜選択して使用することが可能である。
尚、結着物質中に炭素成分を含有する態様の本発明を製造する場合には、金属元素含有化合物として、少なくとも1種の有機金属元素含有化合物を選択し、これに含まれる炭素元素が結着物質中に残存するよう、電極活物質層形成工程の条件を調製してよい。あるいは、電極活物質層形成液中に、さらに後述する樹脂材料(有機物)を添加し、該樹脂材料、あるいは樹脂材料の残渣、これに含まれる炭素元素が結着物質中に残存するよう、電極活物質層形成工程の条件を調製してよい。
結着物質中に含有される炭素成分を提供するための材料として電極活物質層形成液に添加されてよい、樹脂材料(有機物)は、具体的には、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等のビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、メタクリル樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等の単体又はこれらの2種以上の混合物、あるいはこれらの変性した樹脂などを例示することができるが、これに限定されない。
また、電極活物質層形成溶液を調製する際に、その粘度を調整する作用を発揮する粘度調整剤を、上記樹脂材料(有機物)として兼用することもできる。上記粘度調整である樹脂材料の例としては、ポリエチレングリコール、カルボキシルメチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテート、デンプン、ポリビニルアルコールあるいはポリエチレングリコールなどを例示することができる。
上述する電極活物質層形成液において、溶媒中における、添加される1種または2種以上の金属元素含有化合物の添加量の合計の比率は、0.01〜5mol/L、特に0.1〜2mol/Lが好ましい。上記濃度が0.01mol/L以上であることにより、集電体と該集電体表面で生成される電極活物質層とが良好に密着し、活物質粒子の固着が図られる。また、上記濃度が、5mol/L以下であることにより、上記電極活物質層形成液は集電体表面へ良好に塗布できる程度の良好な粘度を維持することができ、均一な塗膜が形成される。
(その他の添加剤)
また上記電極活物質層形成液には、上述する活物質粒子および金属元素含有化合物以外にも、導電材あるいは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その他の添加剤を添加してもよい。上記導電材及びその他の添加剤は、本発明の電極活物質層の説明において記載した内容と同様のものを用いることができる。
尚、上記電極活物質層形成溶液は、集電体上に形成が予定される電極活物質層における活物質粒子、金属酸化物、あるいはさらに必要に応じて導電材などのその他の添加剤が必要量含まれるように勘案して、これらの配合量が決定される。その際、溶媒に添加される溶質(即ち、活物質粒子、金属元素含有化合物および任意の添加剤)の比率は、塗布工程において集電体上への塗布性及び、電極活物質層形成工程における溶媒の除去を勘案し、適宜調整する。一般的には、電極活物質層形成溶液を100重量%としたときに、含有される溶質の総量は、30〜70重量%となるよう調整される。
(溶媒)
上記電極活物質層形成液を調製するために用いられる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、あるいは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類、トルエン、およびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
尚、上記電極活物質層形成液は、集電体上に形成が予定される電極活物質層における活物質粒子、金属酸化物、あるいはさらに必要に応じて導電材などのその他の添加剤が必要量含まれるように勘案して、これらの配合量が決定される。その際、溶媒に添加される溶質(即ち、活物質粒子、金属元素含有化合物および任意の添加剤)の比率は、塗布工程において集電体上への塗布性及び、電極活物質層形成工程における溶媒の除去を勘案し、適宜調整する。一般的には、電極活物質層形成液を100重量%としたときに、含有される溶質の総量は、30〜70重量%となるよう調整される。
次に、以上のとおり調製された電極活物質層形成液を、集電体上に塗布して塗膜を形成する。尚、本発明の製造方法において用いられる集電体は、上記非水電解液二次電池用電極板に用いられる集電体と同様であるため、ここではその説明を割愛する。
本発明の製造方法における塗布工程では、溶液の塗布方法として公知の塗布方法を、適宜選択して実施することができる。たとえば、印刷法、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコート等によって、集電体表面の任意の領域に上記電極活物質層形成液を塗布して塗膜を形成することができる。また、集電体表面が多孔質であったり、凹凸が多数設けられていたり、三次元立体構造を有したりする場合には、塗布方法は、上記方法以外であって例えば手動で塗布する方法も可能である。尚、本発明において使用する集電体は、必要に応じて、予めコロナ処理や酸素プラズマ処理等を行うことで、電極活物質層の製膜性をさらに改善することができるため好ましい。
上記電極活物層形成液の集電体への塗布量は、製造される電極板の用途等に応じて任意に決めることができる。本発明における電極活物質層は、上述のとおり非常に薄く形成することが可能であるため、薄膜化を図りたい場合には、最終的な電極活物質層の厚みが300nm〜150μm、特には500nm〜100μm程度となるように薄く塗布してよい。以上の通り、基板に電極層形成用溶液を塗布することにより、結着物質である金属酸化物の前駆体である金属元素含有化合物が含有される電極活物質層形成用の塗膜が形成される。
上記塗布工程と、電極活物質層形成工程との間、あるいは、電極活物質層形成工程の後には、さらにプレス工程を実施してもよい。上記プレス工程は、集電体上に形成された上記電極活物質層形成用塗膜を、必要に応じて乾燥させて溶媒を除去し、その後、プレスすることによって実施することができる。したがって、プレス工程後に電極活物質層形成工程を実施する場合には、該電極活物質層形成工程前に予め、塗膜中の溶媒の一部または全部が除去されていてよい。プレス方法は、従来の樹脂製結着材が含まれるスラリー状の電極活物質層形成液を集電体上に塗布して乾燥させ、次いで実施されるプレスと同様の方法で実施することができるが、これに限定されない。このように本発明の製造方法は、プレス工程を実施することによって、最終的に製造される電極板における電極活物質層の空隙率を調整し、また体積当たりのエネルギー密度を増加させることができる。
次に、上記塗布工程において形成された塗膜から電極活物質層を形成するための電極活物質層形成工程について、該塗膜を加熱する加熱工程を例に説明する。本加熱工程は、上記塗膜中に存在する金属元素含有化合物を熱分解するとともに酸化させ、且つ、該塗膜中に含まれる溶媒を除去することを目的に行われる(ただし、加熱工程前にプレス工程を実施する場合には、溶媒は実質的にはプレス前における乾燥で予め除去されている)。加熱方法としては、後述する加熱温度で、塗膜を加熱することができる加熱方法あるいは加熱装置であれば、特に限定されず、適宜選択して実施することができる。具体的な例としては、ホットプレート、オーブン、加熱炉、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、熱風送風機等のいずれかを使用するか、あるいは2以上を組み合わせて使用する方法を挙げることができる。用いられる集電体が平面状である場合には、加熱工程は、ホットプレート等を使用することが好ましい。尚、ホットプレートを用いて加熱する場合には、塗膜面側が、ホットプレート面と接しない向きに設置して加熱することが好ましい。上記加熱温度は用いられる金属元素含有化合物の種類によって異なるが、上記塗膜を通常150℃〜800℃の温度範囲において加熱することにより良好に金属元素含有化合物の熱分解が行われ、速やかに金属酸化物が生成される。
本発明の製造方法において、結晶性の金属酸化物を生成する場合に、700℃以下、さらには600℃以下、特には、400℃以下という低い加熱温度においても、結晶性の金属酸化物が生成されるのは、本発明の製造方法の特徴的な点の1つといえる。
上記加熱工程は、加熱温度を400℃以下で実施することにより、集電体の選択範囲が広がり、種々の集電体上に電極活物質層を直接に形成することができる点、および、実施温度が低いということによりコストメリットが向上する点など種々の効果が発揮されるため、好ましい。
尚、上記加熱温度は、予備的に、使用が予定される金属元素含有化合物が溶解された溶液を適当な基板上に塗布して加熱し、基板上に積層される膜を削って試料とし、組成分析を行い、金属元素と酸素の含有比率を測定することによって、金属酸化物が形成されているかどうかを判断することができる。そして、金属酸化物が生成されていた場合には、用いられた金属元素含有化合物が、基板上で熱分解開始温度以上の温度で加熱されたことが確認される。即ち、本発明において「金属元素含有化合物の熱分解開始温度」とは、加熱により金属元素含有化合物が分解され、金属元素の酸化が開始する温度、と理解することができる。また、上記思料をX線回折に供し、結晶性を示すピークを確認することにより、生成された金属酸化物が結晶性であることが確かめられる。
また特に、結着物質中に炭素元素が含有される態様の本発明を製造する場合には、電極活物質層形成液中に添加される、有機金属元素含有化合物、あるいは、樹脂材料(有機物)などの炭素成分を含む材料由来の炭素成分が、結着物質中に残存可能な温度で上記加熱工程を決定する。
また、上記加熱工程において、加熱温度を決定する際には、さらに、用いられる集電体、活物質粒子、導電材などの耐熱性も勘案することが望ましい。たとえば、一般的に正極板の集電体として用いられるアルミ箔の耐熱性は、660℃前後であるため、上記加熱温度が660℃を超える場合には、集電体を損傷するおそれがある。したがって、用いられる集電体、活物質粒子などを先に決定し、これらの耐熱性を勘案して、これらの耐熱温度と熱分解開始温度とを勘案して、金属元素含有化合物を選択してもよい。尚、本発明の製造方法に関し、「加熱温度」とは、加熱工程における最高温度を意味する。また加熱工程における加温の態様は、例えば、除々に昇温し、あるいは、一定の温度で加熱し、あるいは、段階的な温度で加熱してよく、任意に決定することができる。
尚、上記加熱工程における加熱雰囲気は、空気雰囲気であってよいが、これに限定されず、選択さえる金属元素含有化合物の種類や、加熱条件、その他の電極板の構成の内容を勘案し、適宜決定してよく、たとえば、活性ガス雰囲気としては、酸素ガス、不活性ガス雰囲気としてはアルゴンガス、または窒素ガスなどであってよく、また、還元ガス雰囲気としては、水素ガス、または一酸化炭素ガスなどであってよく、あるいは上記不活性ガスと上記還元ガスを混合したガス雰囲気などが挙げられる。
本発明の電極板は、上述のとおり製造された電極活物質層に、さらに樹脂成分を含有させてもよい。電極活物質層にさらに樹脂成分を含有させる方法は、例えば、樹脂混合液を、電極活物質層の表面に塗布し、あるいは、樹脂混合液槽に電極板を浸漬させて、該樹脂混合液を電極活物質層の空隙に浸透させ、次いで、乾燥させることによって、電極活物質層に含浸する上記樹脂混合液の溶媒を除去し、樹脂成分だけを、電極活物質層の内部に残留させる方法が挙げられる。このように、電極活物質層中に樹脂成分を含有する本発明の電極板であれば、樹脂成分の存在により、電極板の曲げ耐性が向上し、加工特性を向上させることが可能である。また、特に上記樹脂成分が、従来使用されていた樹脂製結着材である場合には、集電体に対する電極活物質層の膜密着性をより向上させることができる。
上記樹脂混合液に含まれる樹脂材料として、例えば、PVDFなどの従来の樹脂製結着材、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメトキシセルロース(CMC)や、上記粘度調整剤に挙げるものなどを選択することができるが、これに限定されない。また上記樹脂材料は、電極活物質層における空隙内に浸透可能なサイズを適宜選択する。また、樹脂混合液の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類、Nーメチルピロリドン(NMP)などのピロリドン類、トルエン、およびこれらの混合溶媒、水等などを用いることができ、該溶媒に、樹脂材料を混合させて、樹脂混合液を調製することができる。
電極活物質層中に含有される樹脂成分の量は、電極板の出入力性能を低下させない程度に調整することが望ましい。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、樹脂成分を電極活物質層中に含ませてよい。
[非水電解液二次電池]
本発明の非水電解液二次電池は、一般的には、図8に例示するように、集電体55の一方面側に電極活物質層54が設けられてなる電極板50及びこれに組み合わされる集電体1の一方面側に電極活物質層2が設けられてなる電極板10と、これらの間にポリエチレン製多孔質フィルムのようなセパレータ70とが設けられる。そして、これらが外装81、82内に収納され、且つ、外装81、82内に非水電解液90が充填された状態で密封されて製造されて、非水電解液二次電池100が構成される。尚、電極板50および電極板10は、いずれか一方が正極板であり、他方が負極板であり、少なくともいずれか一方が、本発明の電極板である。
(電極板)
本発明の非水電解液二次電池は、特に、正極板及び負極板の少なくとも一方として、上述する本発明の非水電解液二次電池用電極板を用いることを特徴とする。
特に、従来、負極板が炭素質材料より構成される場合には、これにあわせて正極板の導電性を上げるために正極板に導電材料を多量に添加することが一般的であったが、このために正極板の空隙率が低下し、電解液の浸透性が低下することにより電池の出力を増大させることが困難であった。しかしながら本発明の電極板は高出入力可能な電極板であるので、これを正極板として用いた場合には、従来のように導電材を多量に用いることなく、あるいは導電材を全く用いることなく、良好な導電性及び高出入力化を可能とする。
また非水電解液二次電池は、負極板に用いられる負極活物質として、グラファイトなどの炭素質材料ではなく、金属リチウム及びその合金、スズ、ケイ素、及びそれらの合金等、リチウムイオンを挿入脱離可能な材料を用い、負極板を構成する態様も含む。かかる態様の電池においては、本発明の電極板を負極として積極的に使用して、非水電解液二次電池を製造することができる。
また本発明の電極板を、正極板および負極板の両方に用いて非水電解液二次電池を構成することもできる。
尚、本発明の非水電解液二次電池において、正極板または負極板のいずれか一方において、本発明の電極板を用いる場合には、他方の電極板は、非水電解液二次電池において使用される従来公知の電極板を適宜使用することができる。
従来公知の正極板としては、一般的には本発明の電極板において用いられる集電体と同様の集電体表面上の少なくとも一部に、正極活物質粒子、導電材、樹脂製結着材などが添加された正極活物質層形成液を塗布して、乾燥し、必要に応じてプレスすることにより形成されたものが使用される。
一方、従来公知の負極板としては、集電体として厚み5〜50μm程度の電解銅箔や圧延銅箔等の銅箔を用い、上記集電体表面の少なくとも一部に、負極活物質層形成液を塗布して、乾燥し、必要に応じてプレスすることにより形成されたものが使用される。上記負極活物質層形成液には、一般的に、天然グラファイト、人造グラファイト、アモルファス炭素、カーボンブラック、またはこれらの成分に異種元素を添加したもののような炭素質材料からなる活物質粒子、あるいは、金属リチウム及びその合金、スズ、ケイ素、及びそれらの合金等の、リチウムイオン挿入脱離可能な材料などからなる活物質粒子、および樹脂製結着材、必要に応じて導電材などの他の添加剤が混合されることが一般的である。
(非水電解液)
本発明に用いられる非水電解液は、一般的に、非水電解液二次電池用の非水電解液として用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液が好ましく用いられる。
上記リチウム塩の例としては、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF、LiCl、及びLiBr等の無機リチウム塩;LiB(C、LiN(SOCF、LiC(SOCF、LiOSOCF、LiOSO、LiOSO、LiOSO11、LiOSO13、及びLiOSO15等の有機リチウム塩;等が代表的に挙げられる。
リチウム塩の溶解に用いられる有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状エステル類、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフランなどの環状エーテル類、及び1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどの鎖状エーテル類等が挙げられるが、これに限定されない。
上記正極板、負極板、セパレータ、非水電解液を用いて製造される本発明の非水電解液二次電池の構造は、従来公知の構造を適宜選択して採用することができる。例えば、正極板及び負極板を、ポリエチレン製多孔質フィルムのようなセパレータを介して渦巻状に巻き回して、電池容器内に収納する構造が挙げられる。また別の態様としては、所定の形状に切り出した正極板及び負極板がセパレータを介して積層されて固定され、これを電池容器内に収納する構造を採用してもよい。いずれの構造においても、例えば、正極板及び負極板を電池容器内に収納後、正極板に取り付けられたリード線を外装容器に設けられた正極端子に接続し、一方、負極板に取り付けられたリード線を外装容器内に設けられた負極端子に接続し、さらに電池容器内に非水電化液を充填した後、密閉することによって非水電解液二次電池を製造することができる。
[電池パック]
本発明の電極板を正極板および/または負極板として用いる非水電解液二次電池は、所謂、電池パックに用いられる非水電解液二次電池として使用することができる。即ち、本発明の電池パックは、本発明の電極板を正極板および/または負極板として用い、且つ、正極端子および負極端子を備える非水電解液二次電池と過放電保護機能を有する保護回路とが収納ケースに収納されて構成される。本発明の電池パックは、例えば、過充電、過放電、過電流、電池周辺回路の短絡、正負電極間の短絡などから電池を保護するための保護機能を非水電解液二次電池自体に装備するとともに、過充電や過放電を防止するための保護回路を該非水電解液二次電池と共に収納ケースに収容して一体化されてなる電池パックであってよい。本発明の電池パックは、ノートパソコン、カメラ、携帯電話等の携帯機器など、装置の規模に対して消費電力が大きい装置の電池電源装置として好適に使用することができる。
図9に、本発明の電池パックの一態様として、本発明の電極板が用いられて構成されるリチウムイオン二次電池31を用いた本発明の電池パック30の概略分解図を示す。電池パック30は、リチウムイオン二次電池31が樹脂容器36a、樹脂容器36b、および端部ケース37に収納されて構成される。このとき、リチウムイオン二次電池31の一端面であって、正極端子32および負極端子33を備える面と、端部ケース37との間には、過充電や過放電を防止するための保護回路基板34が、設けられる。保護回路基板34は、外部接続コネクタ35を備えており、外部接続コネクタ35は、樹脂容器36aに設けられた外部接続用窓38aおよび、端部ケース37に設けられた外部接続用窓38bに挿入され、外部端子と接続される。また、保護回路基板に34には、図示しない、充放電を制御するための充放電安全回路、外部接続端子とリチウムイオン二次電池31とを導通させるための配線回路などが搭載されている。尚、電池パック30は、本発明の電極板が用いられたリチウムイオン二次電池31を用いること以外は、従来公知の電池パックの構成を適宜採用することができる。図示省略するが、電池パック30は、リチウムイオン二次電池31と端部ケース37との間に、正極端子32と接続する正極リード板、負極端子33と接続する負極リード板、絶縁体などを、適宜備えてよい。
尚、本発明の電極板を用いた本発明の非水電解液二次電池は、電池パックへの使用態様以外に、上記保護回路に、さらに、過大電流の遮断、電池温度モニター等の機能を備え、且つ、該保護回路を二次電池自体に一体化させて取り付けられる態様に用いられてもよい。かかる態様では、電池パックを構成することなく、保護機能および保護回路を備える二次電池として使用することができ、汎用性が高い。尚、上述するいくつかの態様は、例示に過ぎず、本発明の電極板、あるいは本発明の非水電解液二次電池の使用を何ら限定するものではない。
(実施例1)
金属元素含有化合物としてFe(NO・9HO[分子量:404]4.0gをエタノール20gに加えて、さらに有機物としてオリコックスKC1700(共栄社化学株式会社製)を0.25g混合し、リチウムイオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物を生成する原料溶液とした。次いで、上記原料溶液に、平均粒径4μmの正極活物質LiMn10gと、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック)1.5g、炭素繊維(昭和電工株式会社製、VGCF)0.1gを混合させ、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所)で7000rpmの回転数で40分間混練することによって電極活物質層形成溶液を調製した。
集電体として厚さ15μmのアルミ板を準備し、最終的に得られる電極活物質層の重さが55g/mとなる量で、当該集電体の一面側に上記にて調製した電極活物質層形成溶液をアプリケーターで塗布して電極活物質層形成用塗膜を形成した。
次に、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、常温の電気炉(マッフル炉、デンケン社製、P90)内に設置し、1時間かけて490℃まで加熱し、その後、490℃に温度を維持したまま3時間加熱し、集電体上に正極活物質層として適切な電極活物質層が積層された本発明の非水電解液二次電池用正極板を得た。そして上記正極板を室温になるまで放置した後、所定の大きさ(直径15mmの円板)に裁断し、実施例1とした。尚、マイクロメーターを用いて電極活物質層の厚みを、任意の箇所で10点測定し、平均値を算出したところ、47μmであった。
膜形成性の確認:
実施例1を作成するにあたり、上述で得られた非水電解液二次電池用正極板を所望のサイズの円板形状に繰り抜く加工を行ったが、当該加工作業において、電極活物質層が剥離するなどの不具合なく、作用極を形成することができた。このことから、電極活物質層の膜形成性が良好であることを確認した。以下に示す実施例および比較例においても、膜形成性が良好であるとは、上述するように、不具合なく正極板を円板上に繰り抜く加工ができた場合を意味する。一方、上記繰り抜き加工において電極活物質層の一部が剥がれたり、あるいは電極活物質が集電体上から落下して三極式コインセルの作用極として使用に耐える円板が形成されなかった場合には、電極活物質層の膜形成性が不良であると評価するものとする。
膜密着性評価:
実施例1の正極板を用いて、膜密着性試験を行なった。密着性試験は、引張試験機(テンシロン)を用い、JIS K6854−1に準拠して引張強度を測定することによって、実施された。すなわち、実施例1を作成するにあたって上述で得られた正極板から、密着性測定用正極板(巾15mm、長さ200mm)を作成し、粘着テープ(ニチバン社製、ナイスタック、NW−25、幅25mm)に密着性測定用正極板を、電極活物質層側を粘着テープの粘着面に向けつつ貼りつけ、これを密着性測定用試験片とした。引張試験機(テンシロン)に密着性測定用試験片をセットし、チャック間距離150mm、テストスピード100mm/minの条件で90度剥離試験を行い、引張強度(N/m)を測定した。結果を表2に示す。
組成分析試験:
実施例1における金属酸化物を生成する原料溶液(正極活物質を添加する前の溶液)をガラス板にミヤバー10番で塗布し、電極作成時と同じ加熱条件で加熱し、得られた積層膜を削りとった。そしてその試料を用いて、X線光電子分光法(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)によって組成分析を実施したところ、Fe元素が39Atomic%、O元素が48Atomic%、C元素が13Atomic%検出された。以上の結果、電極活物質層形成液中に含有される硝酸鉄が、熱分解されて炭素成分含有の酸化鉄が生成されたことが確認された。
結晶性評価:
実施例1における金属酸化物を生成する原料溶液(正極活物質を添加する前の溶液)をガラス板にミヤバー4番で塗布し、電極作成時と同じ加熱条件で加熱し、得られた積層膜を削りとり、X線回折装置(XRD)を用いてその結晶性を評価した。その結果、結晶性を表すピークが確認され、実施例1において生成された金属酸化物は、結晶性であることが確認された。
サイクリックボルタンメトリー試験(CV試験):
また、実施例1における電極活物質層中に含有される結着物質である金属酸化物が、リチウムイオン挿入脱離反応を示さないものであるか否かを予め確認するために、以下のとおり試験を行った。まず実施例1を用い、電極電位を3.0Vから4.3Vまで掃引したのち、再び3.0Vまで戻す作業を3度繰り返した。走査速度は1mV/秒とした。2回目のサイクル結果を示すサイクリックボルタモグラムにおいて、3.9V付近にLiMnのLi脱離反応に相当する酸化ピークが、4.1V付近にLi挿入反応に相当する還元ピークが確認できた。一方、実施例1の製造に用いた、金属酸化物を生成する原料溶液(正極活物質を添加する前の溶液)をアルミ基板にミヤバー4番で塗布し、電極作成時と同じ加熱条件で加熱し、得られた積層体について、上述と同様にCV試験を行った。そして2回目のサイクル結果を示すサイクリックボルタモグラムを確認したところ、上記積層体では、電気化学的な反応が示されなかった。このことから、実施例1において結着物質を構成する金属酸化物である酸化鉄はリチウムの挿入脱離反応を示さない事が確認できた。上記CV試験の結果を、表2におけるCV試験の欄に「無」として示した。上記CV試験は、Bio Logic社製のVMP3を用いて実施した。
炭素成分の確認:
実施例1における結着物質中に炭素成分が含有されているかどうかについて、TEM−EELSによるナノレベルの高倍率マッピングによって観察したところ、電極活物質層中に生成された金属酸化物から構成される結着物質中に炭素元素が多く分布されていることを確認した。また、結着物質を構成する金属酸化物の連続する部分の断面が観察できるよう切断し、透過型電子顕微鏡観察により切断面を確認し、金属酸化物が結晶格子の連続により繋がっていることを確認した。
尚、上述する、電極活物質層形成溶液の集電体への塗布量、形成される電極活物質層の膜厚及び膜形成性、膜密着性評価、該電極活物質層中に生成される金属酸化物、上記結着物質の結晶性、CV試験の結果、および炭素成分の確認結果について表2にまとめて示す。
<三極式コインセルの作製>
エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)混合溶媒(体積比=1:1)に、溶質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を加えて、当該溶質であるLiPFの濃度が、1mol/Lとなるように濃度調整して、非水電解液を調製した。正極板として上述のとおり作製した実施例1(直径15mmの円板、含有される正極活物質の重量:7.8mg/1.77cm)を作用極板として用い、対極板及び参照極板として金属リチウム板を用い、電解液として上記にて作製した非水電解液を用い、三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル1とした。そして実施例試験セル1を下記充放電試験に供した。
充放電試験:
上述のとおり作成した三極式コインセルである実施例試験セル1において、作用極板の放電試験を実施するために、まず実施例試験セル1を下記充電試験のとおり満充電させた。
(充電試験)
実施例試験セル1を、25℃の環境下で、電圧が4.3Vに達するまで定電流(700μA)で定電流充電し、当該電圧が4.3V(満充電電圧)に達した後は、電圧が4.3Vを上回らないように、当該電流(放電レート:1C)が5%以下となるまで減らしていき、定電圧で充電を行ない、満充電させた後、10分間休止させた。尚、ここで、上記「1C」とは、上記三極式コインセルを用いて定電流放電して、1時間で放電終了となる電流値(放電終止電圧に達する電流値)のことを意味する。また上記定電流は、実施例試験セル1における作用極板において、1時間で放電可能な容量(実施例1におけるマンガン酸リチウムであれば、90mAh/g)を、この充放電試験において1時間で放電完了させるよう設定された電流値である。
(放電試験)
その後、満充電された実施例試験セル1を、25℃の環境下で、電圧が4.3V(満充電電圧)から3.0V(放電終止電圧)になるまで、定電流(700μA)(放電レート:1C)で定電流放電し、縦軸にセル電圧(V)、横軸に放電時間(h)をとり、放電曲線を作成し、正極用電極板の放電容量(mAh)を求め、当該正極用電極板の重量当たりの放電容量(mAh/g)に換算した。上記で行なった定電流(700μA)(放電レート:1C、放電終了時間:1時間)での定電流放電試験を基準として、放電レート10C、50Cにおいても、同様にして各々、定電流放電試験を行なった。そして上述と同様に単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を求めた。
(放電容量維持率(%)の算出)
作用極板の放電レート特性を評価するため、上述のとおり得られた1Cおよび50Cの各放電レートにおける単位重量当たりの各放電容量(mAh/g)を用い、上述で示した数1により放電容量維持率(%)を求めた。尚、上記放電試験により得られた単位重量当たりの放電容量(mAhr/g)及び放電容量維持率(%)は、表3にまとめて示す。
耐久性の評価:
実施例1の電極板の耐久性を評価するために、1C1000サイクル容量維持率(%)について、以下のとおり求めた。放電レート1Cにおける充放電試験を実施するために、上記放電試験にて得られた電極容量(μAh)を充電、放電時の定電流に設定し、充放電を1000サイクル実施した。そして1000サイクル目に得られた放電容量を、1サイクル目に得られた放電容量で除して、100を乗じることによって、1C1000サイクル容量維持率(%)を算出した。そして、以下のとおり評価した。
1C1000サイクル容量維持率(%)が80%以上100%以下・・・・◎
1C1000サイクル容量維持率(%)70%以上80%未満・・・・・・○
1C1000サイクル容量維持率(%)50%以上70%未満・・・・・・△
1C1000サイクル容量維持率(%)50%未満・・・・・・・・・・・×
(実施例2〜5)
活物質粒子、金属元素含有化合物、溶媒および有機物質を表1に示す内容にしたこと以外は、実施例1と同様に、正極活物質層形成液を調製した。そして、表1に示す加熱条件にしたこと及び表2に示す塗布量にしたこと以外は、実施例1と同様に、正極板を作成し、それぞれ実施例2〜5とした。
(実施例6、7)
実施例3と同様に正極板を作成した。そして、樹脂材料として、PVDF樹脂を用い、PVDFの濃度が0.1%となるようNMP溶媒に混合させて調製した樹脂混合液の満たされた浸漬槽に実施例3を10分間、浸漬させ、実施例3の空隙に上記樹脂混合液を充分に浸透させた。その後、実施例3を上記浸漬層から取りだし、150℃に加温したオーブン内に設置して15分間乾燥させて、樹脂混合液の溶媒を除去した。これによって、電極活物質層中に、樹脂製結着材が残留する正極板を作成し、これを実施例6とした。また、用いる樹脂混合液におけるPVDFの濃度を5%としたこと以外は、実施例6と同様に正極板を作成し、これを実施例7とした。
(比較例1)
非水電解液二次電池用正極板における正極活物質層を形成するための正極活物質層形成溶液を以下のとおり調製した。まず、正極活物質粒子である平均粒径4μmのLiMn粉末10g、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)1.3g、及び樹脂製結着材としてPVDF(クレハ社製、KF#1100)1.2gを用い、有機溶媒であるNMP(三菱化学社製)12gを加えて、分散及び/又は混練させて、スラリー状の正極活物質層形成溶液を得た。上記にて調製した正極活物質層形成溶液を、正極集電体である厚さ15μmのアルミ箔上に、乾燥後の正極活物質層用溶液の塗工量が55g/mとなるように塗布し、オーブンを用いて、120℃の空気雰囲気下で乾燥を行ない、正極活物質層を形成した。さらに、形成された正極活物質層の塗工密度が2.0g/cm(正極活物質層の厚さ:48μm)となるように、ロールプレス機を用いてプレスした後、所定の大きさ(15mmφ)に裁断し、140℃にて5分間、真空乾燥させて正極用電極板を作製し、比較例1とした。
(比較例2)
金属元素含有化合物を加えなかったこと以外、実施例1と同様に電極活物質層形成溶液を調製した。そして、集電体上に最終的に得られる電極活物質層の重さが52g/mとなる量に調整して塗布したこと以外は実施例1と同様に本発明の非水電解液二次電池用正極板を作成した。しかし、膜形成性が不良であり電極活物質層が剥がれてしまい、正極板を形成することができなかった。
(比較例3)
正極活物質粒子である平均粒径0.5μmのLiCoO粉末10gを使用したこと以外、比較例1と同様に電極活物質層形成溶液を調製した。そして、集電体上に最終的に得られる電極活物質層の重さが55g/mとなる量に調整して塗布したこと以外は比較例1と同様に本発明の非水電解液二次電池用正極板を作成した。しかし正極活物質用塗工組成物の粘度調整が困難で、結果として正極板を作成することができなかった。
(比較例4)
活物質粒子、金属元素含有化合物、溶媒および有機物質を表1に示す内容にしたこと以外は、実施例1と同様に、正極活物質層形成液を調製した。そして、表1に示す加熱条件にしたこと及び表2に示す塗布量にしたこと以外は、実施例1と同様に、正極板を作成し、それぞれ比較例4とした。
上述する実施例2〜7、および比較例1、4について、実施例1と同様に、形成された電極活物質層の膜厚の測定、膜形成性評価、膜密着性評価、組成分析、生成された金属酸化物の結晶性の確認、CV試験、および結着物質中に含有させる炭素成分の有無の確認についての評価を行った。結果は表2に示す。尚、組成分析の結果は、これにより推定された電極活物質中に含まれる結着物質である金属酸化物について、表2に示した。また、実施例3の活物質層の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、図10に示した。
また上述する実施例2〜7および比較例1、4についても、上記実施例試験セル1と同様に、実施例試験セル2〜7および比較例試験セル1、4を作成し、固有の定電流値及び満充電電圧値、放電終止電圧値に変更した以外は、上述と同様に充放電試験を行った。各試験セルの固有の定電流値、満充電電圧値、放電終止電圧値を表3に示した。また放電容量維持率、および出力性能評価、1C1000サイクル特性については、まとめて表3に示した。尚、表3に、各実施例および比較例における単位面積当たりの活物質の重量について記載した。
(実施例考察)
実施例1〜4、6、7は、これに対応する比較例1に対し、いずれも出入力特性および1C1000サイクル特性が良好であった。また、実施例5は、これに対応する比較例3に対し、出入力特性および1C1000サイクル特性が良好であった。
また、実施例のうち、結着物質中に炭素成分が含有されるか否かで相違する、実施例1と2、および実施例3と4について着目すると、炭素成分が含有される実施例1および実施例3が1C1000サイクル特性に優れており、炭素成分の存在により、電極板の耐久性が向上することが示された。
電極活物質層中に含まれる金属酸化物が非晶質の比較例4は、出入力特性は実施例相当の評価が得られたが、1C1000サイクル特性および膜密着性評価において、比較例1よりはよいものの、実施例より評価が低かった。
電極活物質層に樹脂製結着材を含浸させた実施例6、7は、ベースとなる実施例相当の評価が得られた。
1、1’、1’’ 集電体
2、2’ 電極活物質層
3 集電基材
4 導電性層
5 断続層
6、21 活物質粒子
7、22 結着物質
8 空隙
10、10’、20、20’、20’’’、50 非水電解液二次電池用電極板
30 電池パック
31 リチウムイオン二次電池
32 正極端子
33 負極端子
34 保護回路基板
35 外部接続コネクタ
36a、36b 樹脂容器
37 端部ケース
38a、38b 外部接続用窓
50 非水電解液二次電池用電極板(正極板)
70 セパレータ
81、82 外装
90 非水電解液
100 リチウムイオン二次電池
101、102、103、103’ 集電体の表面

Claims (5)

  1. 集電体と、上記集電体の表面の少なくとも一部に形成される電極活物質層とを備える非水電解液二次電池用電極板であって、
    上記電極活物質層が、活物質粒子および結着物質を含有しており、
    上記結着物質が、リチウム挿入脱離反応を示さず、且つ、結晶性であり、結晶格子の連続により、少なくとも一部または全部が繋がる金属酸化物によって構成されることを特徴とする非水電解液二次電池用電極板。
  2. 上記結着物質中に、炭素成分が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池用電極板。
  3. 上記電極活物質層は、結着物質により、活物質粒子同士が互いに固着されるとともに、結着物質により、活物質粒子が集電体に固着されて構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の非水電解液二次電池用電極板。
  4. 正極板と、負極板と、上記正極板と上記負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒を含む電解液とを少なくとも備えた非水電解液二次電池であって、
    上記正極板または負極板のいずれか一方、あるいは両方が、請求項1から3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用電極板であることを特徴とする非水電解液二次電池。
  5. 収納ケースと、正極端子および負極端子を備える非水電解液二次電池と、過充電および過放電保護機能を有する保護回路とを少なくとも備え、上記収納ケースに上記非水電解液二次電池および上記保護回路が収納されて構成される電池パックにおいて、
    上記非水電解液二次電池が、正極板と、負極板と、上記正極板と上記負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒を含む電解液とを少なくとも備えた非水電解液二次電池であり、
    上記正極板または負極板のいずれか一方、あるいは両方が、請求項1から3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用電極板であることを特徴とする電池パック。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113929188A (zh) * 2020-06-29 2022-01-14 佛山市顺德区美的饮水机制造有限公司 电极结构、净化结构和电极制备方法

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