JP2012077053A - 口腔の細菌叢を変化させる方法 - Google Patents

口腔の細菌叢を変化させる方法 Download PDF

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勝正 大川
Naoto Sugiyama
直人 杉山
Tadashi Nagasawa
正 長澤
Akane Yuki
茜 結城
Ichiro Fujishima
一郎 藤島
Tomohisa Ono
友久 大野
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Abstract

【課題】 口腔の全細菌数を減少させるばかりでなく、口腔の常在の細菌種の割合を増やすとともに有害な細菌種の割合を減らすよう細菌叢を変化させることができ、又、食品成分を剤として使用することで安全性が高く、この剤の効果を高めるような性質を持ち、特定細菌種への選択性を高めることが可能な簡易な口腔の細菌叢を変化させる方法と口腔細菌叢改善剤提供すること。
【解決手段】 カフェインを含有する加温された液で、口腔内を暴露、或いは口腔内に通過させ、口腔の全細菌数を減少させるばかりでなく、常在の細菌種の割合を増やし、有害な細菌種の割合を減らす。
【選択図】 なし

Description

この発明は、口腔の細菌叢を変化させる方法と口腔細菌叢改善剤に係り、特に、ヒト口腔の細菌叢を変化させることを主な目的とし、細菌の生存率を低下させると同時に、常在の細菌種とう蝕原因細菌や歯周病細菌などの有害な細菌種の生存率の低下の状態に差をつけることにより、常在の細菌種を優位にして細菌叢を改善し、口腔をより清潔にすることができるように工夫したものに関する。
ヒト口腔の細菌叢では、「Storeptococcus mitis」(以下、「S.mitis」という。)が最も優勢な常在の細菌種(非特許文献1)であり、口腔内の細菌数のおよそ8割を占めるといわれている。S. mitisなどのレンサ球菌は、「過酸化水素を産生することによって、病原微生物の侵入や定着を抑制していると考えられている」(非特許文献2〜3)。したがって、S. mitisなどの口腔に常在な細菌種の割合を増やすよう口腔の細菌叢を変化させることは、口腔の衛生状態において重要な意義を持つ。しかし、S. mitisは、加齢によりその割合が低下するといわれている(非特許文献2、4)。
なお、「Storeptococcus salivarius」(以下、「S.salivarius」という。)なども多く検出される常在の細菌種(非特許文献5)であり、プロバイオティクスに用いられる細菌種である。
一方、口腔の疾病には、主に「う蝕」や「歯周病」などがあり、これらは細菌を原因していることは周知の事実である。さらに、これらの細菌は、近年問題となっており、唾液などを誤嚥して発症する高齢者の誤嚥性肺炎患者から検出される細菌種(非特許文献6)としても知られている。なお、誤嚥性肺炎の起因菌には、日和見感染菌やS. mitisと同じ属の「Storeptococcus pneumoniae」(以下、「S.pneumoniae」という。)、β溶血性を示すアンギノサスグループのレンサ球菌など(非特許文献7)がある。これらの細菌種の割合を低下させるよう細菌叢を変化させることは、口腔の衛生状態を改善する上で重要である。
細菌叢の変化に関しては、プロバイオティクス(特許文献1〜8)、有害な細菌種の抑制(特許文献9〜16)、有益な細菌種の増殖と有害な細菌種の抑制(特許文献17〜19)、細菌叢の除去(特許文献20)などに関する剤や方法が提案されている。
ただし、これらの提案の多くは、特定細菌種の増減を比較するのみで、常在の細菌種に対する影響を検証しているものは少ない。また、プロバイオティクスにおいては、これのみでは口腔細菌叢の改善は難しいとの考え(非特許文献2)が示されている。さらに、有害な細菌種を抑制する場合、常在の細菌種をより強く抑制しまうと、結果として細菌叢は有害な細菌種が優勢になっている可能性がある。
特開2004−189709号公報 特開平11−169167号公報 特開平05-004927号公報 特表2005-517439号公報 特表2003−534362号公報 米抄2005/0074416号公報 米抄2003/0170184号公報 米抄2002/0012637号公報 特開2003−089641号公報 特開2002−128697号公報 特開平11−060455号公報 特開平10−291920号公報 特開平05−310544号公報 特表2007-523891号公報 特表2007-509927号公報 米抄2006/0110447号公報 特開2005−320275号公報 特開平08−175947号公報 特開平08−175946号公報 特開2000−139962号公報
Smith 他、Oral. Microbiol. Immunol.、 8、1−4、1993年 前田 他、歯薬療法、25(3)、61−68、2006年 Hillman 他、Arch. Oral. Biol.、30、791−795、1985年 Morita 他、Oral. Micro. Immunol.、19、386−389、2004年 Tappuni 他、J. Dent. Res.、72、31−36、1993年 Bartlett 他、Am. J. Med.、56、202−20、1974年 花田、口腔内細菌と誤嚥性肺炎. セミナー わかる!摂食・嚥下リハビリテーション、医歯薬出版、pp.14−25、2005年
上記従来の構成によると次のような問題があった。
すなわち、従来の方法によると、口腔の全細菌数を減少させることはできるが、常在の細菌種の割合を増やすとともに有害な細菌種の割合を減らすように細菌叢を変化させることはできず、それらを可能にする方法や剤が求められていた。
なお、それらの方法においては、安全で、剤の効果を高めるような性質を持ち、特定細菌種への選択性を高める簡易な手法が望ましい。
本発明はこのような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、口腔の全細菌数を減少させるばかりでなく、口腔の常在の細菌種の割合を増やすとともに有害な細菌種の割合を減らすよう細菌叢を変化させることができ、又、食品成分を剤として使用することで安全性が高く、この剤の効果を高めるような性質を持ち、特定細菌種への選択性を高めることが可能な簡易な口腔の細菌叢を変化させる方法と口腔細菌叢改善剤提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、細菌種の生存率を指標とした探索を試み、設定した温度範囲に加温されたお茶などの成分であるカフェインを用いることにより、細菌の生存率を低下させるとともに、口腔常在の細菌種の生存率を低下させるが、有害な細菌種の生存率をより低下させることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、請求項1による口腔の細菌叢を変化させる方法は、カフェインを0.02wt%以上の濃度で含有し、50℃以上、60℃以下に加温された液で、口腔内を30秒間以上暴露し、細菌種間の生存率に差をつけることで、細菌叢を変化させることを特徴とするものである。
又、請求項2による口腔の細菌叢を変化させる方法は、カフェインを0.02wt%以上の濃度で含有し、50℃以上、65℃以下に加温された液を、口腔内に通過させることにより、細菌種間の生存率に差をつけて細菌叢を変化させることを特徴とするものである。
又、請求項3による口腔の細菌叢を変化させる方法は、請求項1又は請求項2記載の口腔の細菌叢を変化させる方法において、上記カフェインは0.6wt%以下の濃度であることを特徴とするものである。
又、請求項4による口腔細菌叢改善剤は、カフェインを0.02wt%以上の濃度で含有していることを特徴とするものである。
又、請求項5による口腔細菌叢改善剤は、請求項4記載の口腔細菌叢改善剤において、上記カフェインは0.6wt%以下の濃度であることを特徴とするものである。
又、請求項6による口腔細菌叢改善剤、請求項4記載の口腔細菌叢改善液において、50℃以上、65℃以下に加温されていることを特徴とするものである。
以上述べたように本願の請求項1記載の発明による口腔の細菌叢を変化させる方法によれば、50℃以上、60℃以下に加温された食品成分であり、安全性の高いと考えられるカフェインが、濃度0.02wt%以上含まれる液に30秒間以上暴露し、細菌数を減少させるとともに、常在の細菌種と有害な細菌種の生存率に差をつけることで、常在の細菌種を優位にするよう細菌叢を変化させることができる。
又、請求項2記載の発明による口腔の細菌叢を変化させる方法によれば、請求項1と同様に50℃以上、65℃以下に加温されたカフェイン濃度0.02wt%以上含まれる液を、口腔の目的部位に通過させることにより、細菌数を減少させるとともに、常在の細菌種と有害な細菌種の生存率に差をつけて細菌叢を変化させることができる。
又、請求項3による口腔の細菌叢を変化させる方法は、請求項1又は請求項2記載の口腔の細菌叢を変化させる方法において、上記カフェインは0.02wt%以上であって0.6wt%以下の濃度であるので、ヒトの健康に害を及ぼすこともない。
又、請求項4による口腔細菌叢改善剤によれば、カフェインを0.02wt%以上の濃度で含有しているので、それを所定の条件下で使用することにより、口腔内の細菌叢を改善することができる。
又、請求項5による口腔細菌叢改善剤は、請求項4記載の口腔細菌叢改善剤において、上記カフェインは0.02wt%以上であって0.6wt%以下の濃度であるので、ヒトの健康に害を及ぼすこともない。
又、請求項6による口腔細菌叢改善剤によれば、カフェインを0.02wt%以上であって0.6wt%以下の濃度で含有し、50℃以上、65℃以下に加温されているので、それを所定の条件下で使用することにより、口腔内の細菌叢を改善することができる。
以下、本発明の一実施の形態を説明する。
まず、カフェインは、世界で天然カフェインとして年間3000トンから4000トンが製造されるといわれている。日本では、茶などから抽出精製される。
本発明における方法において使用するカフェインは、洗口液又は飲料の液中に含有される状態にある。これらの液は、カフェインを0.02wt%以上を含有し、50℃から65℃に加温される。
洗口液による実施の場合、液は50℃から60℃の範囲に加温され、口腔内に30秒間以上暴露する。好ましくは、液の温度が、使用する者ごとに体感される温度で、熱さなどの苦痛を許容できる温度よりも低い温度の範囲において、高温であることが必要である。又、好ましくは、暴露時には口腔内でよく振とうされることが必要である。又、暴露の後、洗口液は吐き出す。液中のカフェインの濃度は、好ましくは、0.6wt%以内で、この範囲において高濃度であることが必要である。
ただし、洗口液量とカフェイン濃度の関係において求められる全カフェイン量は、暴露時に誤飲した場合、ヒトの健康に危害を及ぼさないことを想定した量であることが必要である。又、本暴露において、使用する者がカフェインの苦味を感じるときは、これを低減する成分の含まれることが好ましい。
飲料により実施する場合、液は50℃から65℃に加温され、洗口液と同様の方法により実施するか、若しくは、目的部位に通過させながら飲料する方法で実施する。
飲料により実施する場合であって、洗口と同じ方法で実施するとき、液温は、好ましくは50℃から60℃に加温され、暴露後の液は吐き出すか、若しくは飲料する。暴露の後に飲料するときは、飲料の液量とカフェイン濃度の関係により求められる全カフェイン量及び他に日常的に摂取しているカフェイン量との合計は、ヒトの健康に危害を及ぼさないことを想定した量であることが必要である。
飲料により実施する場合であって、目的部位に繰り返し通過させながら飲料する方法で実施するとき、液は好ましくは50℃から65℃の範囲に加温されることが必要である。又、液の温度は、使用する者の体感温度により熱さによる苦痛を許容できる温度よりも低い温度の範囲において、高温に加温されることが好ましい。飲料の液量とカフェイン濃度の関係により求められる全カフェイン量及び他に日常的に摂取しているカフェイン量との合計が、ヒトの健康に危害を及ぼさないことを想定した量であることが必要である。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
使用する細菌種は、独立行政法人理化学研究所又はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから分譲を受けた。独立行政法人理化学研究所から分譲された細菌種は、それぞれの手順書に従い復元した。各細菌種は、液体窒素中に、マイクロバンク(PRO−LAB DIAGNOSTICS)又は、滅菌したスキムミルク液で保存した。口腔内で最も優勢な常在細菌種(非特許文献1)としては、S. mitis(JCM12971)とし、他にS. salivarius (JCM5705)を使用した。有害と考えられる細菌種としては、う蝕に関連するStoreptococcus mutans(JCM5705)(以下、「S. mutans 」という。)、歯周病に関連するBacteroides fragilis(JCM11019)(以下、「B. fragilis 」という。)、Capnocytophaga ochracea(JCM12966)(以下、「C. ochracea 」という。)、Fusobacterium nucleatum(JCM8532)(以下、「F. nucleatum 」という。)、及びPrevotella melaninogenica(JCM6325)(以下、「P. melaninogenica 」という。)を使用した。
使用する各細菌は、Bacto(商標)BRAIN HEART
INFUSION(Becton Dickinson and Company)により、細菌種ごと適切な条件で培養し、遠心分離により菌体を集めた。集められた細菌は、滅菌された生理食塩水に懸濁の後遠心分離することで洗浄し、最終的に滅菌された生理食塩水に懸濁した。懸濁液内の生菌数は、106から108CFU/mlであった。
各細菌の生存率は、培養法による生菌数の測定により行った。この際、使用する培地は、細菌種により、5%の羊脱繊血を含むBactoTM BRAIN HEART
INFUSION Agar(Becton Dickinson and Company)、ポアメディア(登録商標)にトリプチソイ寒天培地(栄研化学株式会社)、ポアメディア(登録商標)羊血液寒天培地(栄研化学株式会社)、トリプチケースソイ羊血液寒天培地(シスメックス株式会社)を用いた。実施の操作は、好気の条件で行った。培養条件は、37℃で、細菌種により好気、微好気、嫌気条件で24時間から78時間培養した。培養後は、コロニー数を計測した。生存率は、下記の数1により求めた。
ただし、操作中、時間毎に生菌数が減少する嫌気性の細菌については、時間と生菌数の関係を指数近似曲線により求めて「実施前の細菌液を希釈して測定した生菌数」を補正した。
Figure 2012077053
下記の表1に実施例1〜8、比較例1〜7を示す。実施例1から実施例6は、洗口液としてカフェインを0.6wt%配合した生理食塩水を用い、30秒間暴露する方法であり、加温される温度は、順に35℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃である。
実施例7及び実施例8は、洗口液としてカフェインを0.02wt%配合した生理食塩水を用い、30秒間暴露する方法であり、加温される温度は、順に50℃及び60℃である。
比較例9及び比較例2は、洗口液としてカフェインを配合しない生理食塩水を用い、30秒間暴露する方法であり、加温される温度は、順に50℃及び60℃である。
比較例3〜比較例7は、市販の洗口液により30秒間暴露する方法であり、加温される温度は35℃である。市販の洗口液5種類は、それぞれ「A」、「B」、「C」、「D」、「E」と仮称する。
実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例7の方法において、9mlの洗口液を使用し、これにS. mitisの細菌液1mlを加えて実施した後、生存率を求めた。
S. mitis の生存率を表1に示す。細菌叢を変化させるとき、細菌数を減らすとともに、口腔内に常在し、最優勢の細菌であるS. mitis が生存していなければならないと考えられる。よって、最初の評価は、口腔に常在で最優勢とされるS. mitis の生存率が低下し、かつ生存が確認できた方法を適(○)、生存率が上昇するか、生存が確認できなかった方法を不適(×)とした。比較例3、比較例5、比較例6、比較例7は、S. mitis の生存が確認できず、口腔中の常在の細菌の割合を低下させる危険があると考えられる。同じカフェイン濃度0.6wt%での実施を比較すると、実施例1では、S. mitis の生存率を若干低下させたが、実施例2では逆に生存率を上昇させ、実施例3〜実施例6では生存率を低下させた。よって、加温される温度が50℃からの暴露が、適当な温度である。ただし、実施例6の加温される温度65℃では、S. mitis の生存率が極端に小さい値のため、30秒間の暴露時間では適当でない。このため、請求項1における加温される温度は、50℃から60℃が適当である。また、暴露時間が短い場合、細菌の生存率は上昇すると考えられる。よって、目的部に通過させるため暴露時間の短い請求項2では、加温される温度が65℃でも適当である。さらに、50℃及び60℃に加温されたカフェイン濃度0.02wt%の実施例及びカフェインを配合しない比較例においても、S. mitis の生存が確認できた。
実施例1〜実施例8、比較例1、比較例2までの結果及び35℃、暴露時間0秒における生存率100%について、生存率を目的変数、温度、カフェイン濃度及び暴露時間を目的変数として変数増加法により変数選択−重回帰分析したころ、下記の数2が得られ、S. mitis の生存率は、カフェイン濃度及び暴露時間は変数として組み込まれず、温度のみ組み込まれた。このことから、口腔の最優勢の常在細菌S. mitis の生存率は、カフェイン濃度と暴露時間の影響を強く受けないことが判明した。
ただし、細菌の生存率は重回帰式により表現されるとは限らず、本式は統計的な有意性を確認するためのものである。
Figure 2012077053
Figure 2012077053
S. mitis の生存率を低下させ、かつ生存が確認できた実施例3、実施例5、実施例7、実施例8、比較例1〜比較例7の方法において、9mlの洗口液を使用し、これに口腔に常在でプロバイオティクスに用いられるS. salivarius の細菌液1mlを加えて実施した後、生存率を求めた。
S. salivarius の生存率を表2に示す。
ただし、方法は上記と同じであるので、表中に条件は付さない。細菌叢を変化させるとき、細菌数を減らすとともに、口腔内に常在し、プロバイオティクスに用いられるS. salivarius が生存しているのが好ましい。よって、評価は、生存率が低下し、かつ生存が確認できた方法を適(○)、生存率が上昇するか、生存が確認できなかった方法を不適(×)とした。比較例3、比較例5〜比較例7は、S. mitis 同様S. salivarius の生存が確認できず、口腔中の常在の細菌の割合を低下させる危険がある。比較例3、比較例5〜比較例7は、口腔の常在細菌2菌種の生存率が、いずれも0であったので、以降の検証からは除外した。
Figure 2012077053
実施例3から比較例2までの結果及び35℃、暴露時間0秒における生存率100%について、S.mitis と同様に生存率を目的変数、温度、カフェイン濃度及び暴露時間を目的変数として変数増加法により変数選択−重回帰分析したころ、下記の数3が得られ、S.salivarius の生存率は、カフェイン濃度及び暴露時間は変数として組み込まれず、加温される温度のみ組み込まれた。このことから、口腔の常在細菌S. salivarius の生存率は、S.mitisと同様にカフェイン濃度と暴露時間の影響を強く受けないことが判明した。
Figure 2012077053
実施例3、実施例5、実施例7、実施例8、比較例1、比較例2、比較例4の方法において、9mlの洗口液を使用し、これにう蝕の原因となるS. mutans 細菌液1mlを加えて実施した後、生存率を求めた。
S. mutans の生存率を下記の表3に示す。
ただし、方法は上記と同じであるので表中に条件は、付さない。また、上記に示した口腔に常在で最優勢とされるS. mitis の生存率をあわせて併記した。細菌叢を変化させるとき、細菌数を減らすとともに、口腔に常在の細菌S. mitis よりも有害な細菌の生存率をより多く低下させる必要がある。よって、評価は、下記の数4により算出された数値に関して、表4のように評価した。なお、特に不良となった実施例は、当該有害細菌を増加させてしまう可能性があるため、次の実施からは除外した。
Figure 2012077053
Figure 2012077053
Figure 2012077053
市販洗口液Bによる方法では、S. mutans に関して評価は「特に不良」となり、口腔常在細菌よりもう蝕にかかる細菌を優位にしてしまう可能性がある。したがって、次の実施から除外した。カフェインを含まない生理食塩水による方法では、良(○)であったが、カフェインを含有した方法でより計算値Aが大きかった。よって、本発明におけるカフェイン濃度0.02wt%以上の濃度は、S. mutans に対して有効であり、30秒以上の暴露において50℃から60℃の範囲はS. mutans に対して有効である。さらに、温度60℃、カフェイン濃度0.6wt%の実施例5−3は、S.mitisの生存率が最も低く、計算値Aも小さいことから、加温される温度及びカフェイン濃度がより高い方法がより有効となる。
実施例3、実施例5、実施例7、実施例8、比較例1、比較例2までS. mutansの生存率の結果及び温度35℃、暴露時間0秒における生存率100%について、生存率を目的変数、温度、カフェイン濃度及び暴露時間を目的変数として変数増加法により変数選択−重回帰分析し、下記の数5が得られ、S. mutans の生存率は、暴露時間が変数として組み込まれず、カフェイン濃度及び温度が組み込まれた。このことから、カフェイン濃度の影響を強く受けない口腔常在のS. mitis 及びS.salivariusと異なりS. mutansの生存率は、温度とカフェイン濃度の影響も強く受けていることが判明した。
Figure 2012077053
実施例3、実施例5、実施例7、実施例8、比較例1、比較例2の方法において、9mlの洗口液を使用し、これに歯周病の原因となるB. fragilis 、C. ochracea 、F. nucleatum 及びP. melaninogenica の細菌液1mlをそれぞれ加えて実施した後、生存率を求めた。
歯周病菌に関する実施については、B. fragilis 、C. ochracea 、F. nucleatum 及びP. melaninogenica の順に、それぞれの結果を表5、表6、表7及び表8に示す。評価は、S.mutansと同様の方法で行った。B. fragilis では、全ての実施例で良(○)又は特に良(◎)であった。C. ochracea では、比較例1−5を除いた実施例全てで良(○)であった。カフェインを含まない比較例1−5のみ不良(△)となったため、カフェインを含有する方法がより適切であった。F. nucleatum では、実施例7−6及び比較例1−6を除いた実施例で、良(○)又は特に良(◎)であった。比較例1−5、実施例7−6及び比較例1−6の結果は、カフェイン量が少量で定温であるものが不適の範囲に入ったことから、温度が高い温度で、カフェイン濃度が高いことが好ましい。P. melaninogenica では、全てが良(○)又は特に良(◎)であった。このとき、50℃よりも60℃の実施例で、評価の結果が特に良かったことから、高い温度であることの適性が確認できた。
Figure 2012077053
Figure 2012077053
Figure 2012077053
Figure 2012077053
歯周病菌を用いた各実施例の結果については、S. mutansと同様に、変数選択−重回帰分析し、B. fragilis 、C. ochracea 、F. nucleatum 及びP. melaninogenica の順に、それぞれ下記の数6、数7、数8及び数9を得た。実施した全ての歯周病菌において、変数として温度及びカフェイン濃度が組み込まれ、歯周病菌においてもS. mutans と同様に両者の併用による有効性の確認できた。また、B. fragilis 及びF. nucleatum は変数として暴露時間が組み込まれた。
Figure 2012077053
Figure 2012077053
Figure 2012077053
Figure 2012077053
S. mutans、B. fragilis 、C. ochracea 、F. nucleatum 及びP. melaninogenica の計算値Aについて、実施例ごとの平均は、実施例3が−49、実施例5が−69、実施例7が−30、実施例8が−69、比較例1が−1、比較例2が−54となった。30秒間の暴露において、加温される温度が50℃のとき、カフェイン濃度0.0wt%、0.02wt%及び0.6wt%の順に、計算値Aは−1、−30、−49となり本発明におけるカフェイン濃度の範囲を含めることで、カフェインを含まないものよりも明らかに低い数値を示しており、有効である。加温される温度が60℃のとき、カフェイン濃度0.0wt%、0.02wt%及び0.6wt%の順に、計算値Aは−54、−69、−69となり本発明におけるカフェイン濃度の範囲を含めることで、カフェインを含まないものよりも低い数値を示しており、有効である。よって、う蝕及び歯周病に関連する細菌種において、請求項1における、カフェインを0.02wt%以上の濃度で含有し、50℃以上、60℃以下に加温された液で、口腔内を30秒間以上暴露し、細菌種間の生存率に差をつけることで、細菌叢を変化させる方法は有効である。
請求項2記載の発明における、口腔の目的部位に通過させる方法については、暴露時間が短く、実験操作上各細菌種の生存率の実測は困難である。細菌の生存率は重回帰式により表現されるとは限らないが、重回帰式により取り込まれた変数が各細菌種の生存率に特に影響を及ぼしていることは明確である。求められた重回帰式の数2、数5から数9までの中で、暴露時間が変数として組み込まれたのは、B. fragilis 及び F. nucleatum の2細菌種のみである。これらの回帰係数は定数項に比較して小さいため、暴露時間が短ければこの影響も少ないこととなる。したがって、暴露時間が変数として組み込まれなかった細菌種においては、暴露時間の影響は更に少ないこととなる。よって、30秒間よりも短い時間の暴露においても、実施例1から比較例7の生存率の相対的な相違は、変わらないものと推察される。したがって、口腔の目的部位に通過させる方法における、カフェイン濃度0.02wt%以上で、加温される温度50℃以上から60℃以下は有効である。
請求項2記載の発明における加温される温度の65℃については、始めに、求められた重回帰式の数2、数5から数9までの加温される温度の回帰係数により比較した。すなわち、S.mitis の加温される温度の回帰係数2.21よりも、有害な細菌種の回帰係数が大きければ、より強く加温される温度の影響を受けることとなり、計算値Aはより低い値を示す。S.mitis の加温される温度の回帰係数よりも大きな回帰係数を示す細菌種は、S.mutans の2.39、F. nucleatum の6.83及びP. melaninogenica の3.81である。よって、S.mutans 、F. nucleatum 及びP. melaninogenica において、加温される温度が65℃でも口腔の目的部位に通過させる方法は有効である。
B. fragilis 及びC. ochracea の回帰係数は、それぞれ1.24及び1.77である。加温される温度が65℃を推定すると、60℃の生存率からの計算で、B. fragilis がカフェイン濃度0.02wt%で生存率40%、0.6wt%で生存率35%、C. ochracea がカフェイン濃度0.02wt%で生存率33%、0.6wt%で生存率52%となる。実測値は異なるが、相対的な比較であるので、S.mitisも同様に計算すると、カフェイン濃度0.02wt%で生存率59%、0.6wt%で生存率76%となり、いずれの条件においてもS. mitisの生存率は、B. fragilis 及びC. ochracea の生存率よりも高い。したがって、B. fragilis 及びC. ochracea において、加温される温度が65℃でも口腔の目的部位に通過させる方法は有効である。
なお、比較例8から9、実施例9から実施例17では、S.mitis 、S. mutans、B. fragilis 、C. ochracea 、F. nucleatum 及びP. melaninogenica に関して、通過時間を1秒間として、数2、数5から数9の重回帰式により計算した生存率を求めた。この生存率から数4により計算値Aを算出し、平均値を求め、評価した。
ただし、生存率の推定値が負値となったものは、0.0%と補正した。
結果及び評価は表9に示す。各細菌種の生存率は、必ずしも重回帰式に従うことはないが、本評価においても、上記の結果を裏付けるものとなった。評価は、全ての実施例で良(○)又は特に良(◎)となった。ただし、加温される温度が35℃では、S.mitis の生存率が100%を超えており、F. nucleatum 及びP. melaninogenica の生存率では、カフェインを含まない方法及びカフェイン濃度0.02wt%で同様に100%を超え、S.mitisにおける45℃の実施例1−2でも100%を超えていた。このため、35℃から45℃の実施においては、S.mitisの生存率を高めるリスクが上がると考えられ、適当でない。さらに、同じカフェイン濃度における温度毎の計算値Aを比較すると、45℃と50℃の差は10前後あり、50℃より高い温度では、このような大きな差は認められない。よって、50℃より高い温度で生存率の差を大きくせしめていることとなる。したがって、本発明の請求項2における加温される温度の50℃以上は、有効である。50℃から65℃の範囲において、計算値Aの平均は、加温される温度が高いほど低値を示した。よって、本発明における加温される温度の65℃は有効であり、より高い温度であることが望ましい。また、同じ温度に加温された場合、カフェイン濃度0.02wt%では、カフェインを含まないときに比べて、全て低い値を示した。また、カフェイン濃度0.6wt%による方法では、0.02wt%の同じ温度の計算値Aよりも低い値を示しており、濃度が高いほど有効性が増していることがわかる。よって、本発明の請求項2におけるカフェイン濃度0.02wt%以上は有効である。
Figure 2012077053
本発明の口腔の細菌叢を変化させる方法と口腔細菌叢改善液は、口腔の全細菌数を減少させるばかりでなく、口腔の常在の細菌種の割合を増やし、有害な細菌種の割合を減らすよう細菌叢を変化させるもので、食品成分を剤として使用することで安全性が高く、この剤の効果を高めるような性質を持ち、特定細菌種への選択性を高める簡易な方法を提供できる。
本発明の口腔の細菌叢を変化させる方法と口腔細菌叢改善液は、カフェインを含む洗口液の使用方法、或いは飲料の使用に応用が可能で、細菌叢を変化させることで、口腔内を清潔にできる。

Claims (6)

  1. カフェインを0.02wt%以上の濃度で含有し、50℃以上、60℃以下に加温された液で、口腔内を30秒間以上暴露し、細菌種間の生存率に差をつけることで、細菌叢を変化させることを特徴とする口腔の細菌叢を変化させる方法。
  2. カフェインを0.02wt%以上の濃度で含有し、50℃以上、65℃以下に加温された液を、口腔内に通過させることにより、細菌種間の生存率に差をつけて細菌叢を変化させることを特徴とする口腔の細菌叢を変化させる方法。
  3. 請求項1又は請求項2記載の口腔の細菌叢を変化させる方法において、
    上記カフェインは0.02wt%以上であって0.6wt%以下の濃度であることを特徴とする口腔の細菌叢を変化させる方法。
  4. カフェインを0.02wt%以上の濃度で含有していることを特徴とする口腔細菌叢改善剤。
  5. 請求項4記載の口腔細菌叢改善剤において、
    上記カフェインは0.02wt%以上であって0.6wt%以下の濃度であることを特徴とする口腔細菌叢改善剤。
  6. 請求項4記載の口腔細菌叢改善液において、
    50℃以上、65℃以下に加温されていることを特徴とする口腔細菌叢改善液。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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