JP2012032345A - 有機単分子膜の可視化方法 - Google Patents

有機単分子膜の可視化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有機単分子膜を特殊な分析装置を使用することなく可視化する技術を提供する。
【解決手段】イオン性液体を300nm〜700μmスケールで微細構造化した有機単分子膜被覆表面にスピンキャストし、光学顕微鏡あるいはレーザ顕微鏡を用いて観察することを特徴とする微細構造化した有機単分子膜の可視化方法、イオン性液体が、水や有機溶剤で溶解/除去できるものである、前記の微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
【効果】有機単分子膜にダメージを与えることなく、レーザ顕微鏡観察などにより、広範囲で可視化することが可能である。
【選択図】図2

Description

本発明は、フォトリソグラフィーや電子線ソグラフィーなどで、ナノ〜マイクロメータオーダーで微細加工された有機単分子膜を、特殊な分析装置を使用することなく、また、有機単分子膜にダメージを与えることなく、広範囲で可視化することを可能とする有機単分子膜の可視化技術に関するものである。本発明は、生体模倣化学デバイスや分子エレクトロニクスデバイスなどの分野において、これらのデバイスを実現するための重要技術として注目されている、単分子膜として形成されたナノ〜マイクロメータスケールの微細構造を簡便に可視化することを可能とする可視化技術に係るものであり、特に、イオン性液体の不揮発性、光照射/非照射(ドメイン)間のイオン性液体に対する濡れ性の違い、イオン性液体付着領域と非付着領域間の屈折率と高さの違い、を利用することにより、有機単分子膜を、特殊な装置を使用することなく、通常の実験室で使われている光学顕微鏡やレーザ顕微鏡などの簡便な手段により可視化することを可能とする有機単分子膜の可視化に関する新技術を提供するものである。
最近、有機分子の化学吸着によって形成される単分子膜に関する研究が大きく進展し、基礎だけでなく、産業応用面でも、注目されるようになった。単分子膜は、膜を構成する有機分子を、目的に応じて選択することにより、膜構造、固体表面の機能性や反応性をiniini任意にデザインすることが可能である。
例えば、NH基やCHO基のような官能基で終端された単分子膜を被覆することで、反応性に富んだ表面が形成できるのに対し、CH基やCF基のような不活性な官能基で終端された単分子膜を利用すれば、表面エネルギーを低くして、疎水化することも可能である。が
また、この単分子膜を、フォトリソグラフィーや電子線リソグラフィーなどの微細加工技術によって、ナノ〜マイクロメータスケールで微細構造化して、生体模倣化学デバイスや分子エレクトロニクスデバイスに利用する研究が進められている(例えば、非特許文献1、非特許文献2)。
これらのデバイスの実現には、有機単分子膜を用いて、基材表面に分子認識機能を付与し、特定の分子を特定の場所に精密に配置する技術が重要である。そのためには、単分子膜の微細加工技術だけでなく、単分子膜として形成されたナノ〜マイクロメータスケールの微細構造を簡便に可視化することを可能とする技術は極めて重要である。
これまでに、光、電子線、X線、イオンビーム、走査型プローブ顕微鏡などを利用した様々な単分子膜の微細加工技術が提案されている。Dulceyらは、芳香族系有機シラン単分子膜のベンゼン核を光励起する光化学反応を利用して、単分子膜を微細加工するプロセスを報告している(非特許文献3)。
杉村らは、真空紫外光を利用して、CH基やCF基で終端された有機シラン単分子膜をパターニングする手法を提案している(非特許文献4)。また、先行技術として、単分子膜の原料となる分子を含む溶液をインクとし、ポリジメチルシロキサン(PDMS)製のスタンプを判子のように使用して、特定の領域に目的とする分子を付着させて、微細パターンを形成するマイクロコンタクトプリンティング法が報告されている(非特許文献5)。
これらのナノ〜マイクロメータスケールで微細構造化された単分子膜は、Lateral force Microscope(LFM、水平力顕微鏡)や、Kelvin Probe Force Microscope(KFM、ケルビンプローブフォース顕微鏡)によって、前者は、ドメイン間の摩擦力の差(非特許文献6)、後者は、表面ポテンシャルの差(非特許文献7)、を利用して可視化されてきた。
また、他の先行技術として、Field Emission−Scanning Electron Microscope(FE−SEM、電解放射型走査型電子顕微鏡)により、電子と有機分子の相互作用を利用して、微細構造化した単分子膜を可視化する手法が報告されている。齋藤らは、加速電圧を1000V以下に制御することで、真空紫外光により微細構造化した単分子膜(オクタデシルトリメトキシシラン単分子膜)と酸化シリコン(光照射により単分子膜が分解された領域)間で、明瞭な2次電子のコントラストを得ている(非特許文献8)。
これらの手法は、いずれの手法を用いても、微細構造化した単分子膜を可視化することは可能であるものの、LFM/KFMは、局所的な領域しか観察できないこと、画像を得るまでに時間がかかること、などの欠点があり、また、FE−SEMは、観察中、電子線照射により単分子膜がダメージを受けるという問題点があった(非特許文献9)。更に、上述のように、従来、微細構造化された単分子膜のドメイン、すなわち、単分子膜被覆領域/非被覆領域(酸化シリコン)の間の2次電子のコントラストにより可視化する手法も提案されているが、当技術分野においては、有機単分子膜を、特殊な装置を使用することなく、通常の実験室で使われている光学顕微鏡やレーザ顕微鏡などの簡便な手段により可視化することを可能とする有機単分子膜の可視化に関する新しい技術を開発することが強く求められていた。
A.Ulman,An Introduction to Ultrathin Organic Films:From Langmuir−Blodgett to Self−Assembly;Academic Press:San Diego,1991 A.Ulman,Chem.Rev.1996,96,1533 C.S.Dulcey,J.H.Georger Jr.,V.Krauthamer,D.A.Stenger,T.L.Fare,J.M.Calvert,Science 1991,252,551 H.Sugimura,K.Ushiyama,A.Hozumi,and O.Takai,Langmuir 16,2000,885 A.Kumar,H.A.Biebuyck,N.L.Abbott,and G.M.Whitesides,J.Am.Chem.Soc.114,1992,9188 H.Sugimura,K.Ushiyama,A.Hozumi,and O.Takai,Langmuir 16,2000,885 M.Fujihira,Annu.Rev.Mater.Sci.1999,29,353 N.Saito,Y.Wu,K.Hayashi,H.Sugimura,O.Takai,J.Phys.Chem.B2003,107,664 Y.Wu,K.Hayashi,N.Saito,H.Sugimura,O.Takai,Surf.Interface Anal.2003,35,94
このような状況の中で、本発明者は、上記従来技術に鑑みて、有機単分子膜を、特殊な装置を使用することなく、通常の実験室で使われている光学顕微鏡やレーザ顕微鏡などの簡便な手段により可視化することを可能とする有機単分子膜の可視化に関する新しい技術を開発することを目標として鋭意研究を進めた結果、疎水性の官能基(CH基やCF基)で終端された有機単分子膜を、波長172nm又はそれ以下の真空紫外光リソグラフィーを用いて、ナノ(300nm)〜ミクロンスケール(700μm)で微細加工した後、水と同程度の表面張力を有するイオン性液体をスピンキャストして、光が照射された、すなわち、有機単分子膜が光分解された、特定の領域にのみイオン性液体が選択的に付着し(膜厚100nm以下)、それ以外の領域(疎水性のCH基やCF基終端有機単分子膜被覆領域)には付着しないという現象を利用することで、光学顕微鏡やレーザ顕微鏡で可視化できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
本発明は、1)イオン性液体の不揮発性、2)微細構造化した有機単分子膜のドメイン、すなわち、単分子膜被覆領域と非被覆領域、の間のイオン性液体に対する濡れ性の違い、3)イオン性液体付着領域と非付着領域間の屈折率と高さの違い、を利用して、ナノ〜マイクロメータオーダーで微細構造化した有機単分子膜を再現性よく広範囲で可視化することを可能とする可視化技術を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、従来技術にみられる、高価な分析装置や特殊な測定環境が必要となること、局所領域しか可視化できないこと、画像の取得に時間がかかること、観察中に有機単分子膜がダメージを受けること、などの、これまでの問題点を解決することを可能とする、微細構造化した有機単分子膜の新規可視化技術を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決する本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)イオン性液体を、300nm〜700μmスケールで微細構造化した平滑固体表面に化学結合で固定されている有機単分子膜表面に、スピンキャストした後、光学顕微鏡ないしはレーザ顕微鏡を用いて、微細構造化した有機単分子膜を観察することを特徴とする微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
(2)イオン性液体が、水と同程度の表面張力を持つものである、前記(1)に記載の微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
(3)イオン性液体が、有機単分子膜の表面から、水や有機溶剤で溶解/除去できるものである、前記(1)又は(2)に記載の微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
(4)有機単分子膜が、疎水性官能基で終端された環状、枝状、又は直鎖の構造を有しており、半導体、金属、金属酸化膜、金属酸化物、合金、ポリマー、セラミックス、ガラスの内から選択した平滑固体表面に化学結合で固定化されている、前記(1)から(3)のいずれかに記載の微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
(5)微細構造化した有機単分子膜が、疎水性と親水性領域から構成されている、前記(1)から(4)のいずれかに記載の微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
(6)有機単分子膜の膜厚が、0.5nm〜3nmである、前記(1)から(5)のいずれかに記載の微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、微細構造化した有機単分子膜の可視化方法であって、イオン性液体を、300nm〜700μmスケールで微細構造化した平滑固体表面に化学結合で固定されている有機単分子膜表面に、スピンキャストした後、光学顕微鏡ないしはレーザ顕微鏡を用いて、微細構造化した有機単分子膜を観察することを特徴とするものである。
本発明で用いられるイオン性液体は、水と同程度の表面張力を持つものであり、例えば、C16CHSO (66.4Dyn/cm)や、C CHSO (64.2Dyn/cm)が例示される。また、イオン性液体は、有機単分子膜の表面から、水や有機溶剤で溶解/除去できるものであり、例えば、エタノール、ヘキサン、アセトンが好適である。
本発明では、微細構造化した有機単分子膜は、疎水性と親水性から構成されているが、これらは、光/電子線/X線リソグラフィー、マイクロ/ナノコンタクトプリンティング、フォーカスイオンビームにより形成することができる。
本発明では、半導体、金属、金属酸化膜、金属酸化物、合金、ポリマー、セラミックス、ガラスの内から選択した平滑固体の基材表面を、予めプラズマ、紫外線、オゾンなどで処理して、不純物除去及び親水化した後、これらの基材表面に、疎水性官能基で終端された環状、枝状、直鎖構造を有する有機分子を気相から付着させることにより、膜厚が3nm以下の単分子膜を形成させる。
本発明では、続いて、当該基材表面に、フォトマスクや金属メッシュなどを介して、波長172nm又はそれ以下の真空紫外光を、10〜1000Paの真空下で、照射することにより、単分子膜を局所的に光分解し、300nm〜700μmスケールで微細構造化する。最後に、その表面に、水と同程度の表面張力を持つイオン性液体をスピンキャストする操作を行うだけで、1)光学顕微鏡ないしはレーザ顕微鏡で可視化できる、2)単分子膜にダメージを与えない、3)水や有機溶剤でリンスするだけで当該イオン性液体を溶解/除去できる、という特徴を有する、有機単分子膜の可視化技術を構築することが可能となる。
本発明で使用し得る基材としては、上述のように、半導体、金属、金属酸化膜、金属酸化物、合金、ポリマー、セラミックス、ガラスなどの材料を任意に使用することができる。これらの基材の形状は、板状で、かつ平滑であることが望ましい。何故なら、基板が平滑でないと、フォトマスクと基板表面にわずかな隙間が発生し、露光中に、その隙間からオゾンや活性酸素が拡散するため、マスクしている部位のエッジがダメージを受け、パターンの解像度が低下するからである。特に、基材の形状については、1μm以下のパターンを形成する際に注意が必要である。基材表面を、予め、酸素プラズマ、真空紫外光、オゾンなどによる処理により、当該基材表面に付着した有機物を除去することにより親水化する。その場合、好ましくは、波長172nm以下の真空紫外光を使用する。
基材の具体例としては、シリコン、ガラス、アルミニウム(含酸化アルミニウム)、酸化チタン、酸化シリコンを被覆したポリマーが好適な基材として例示される。いずれの基材も、平板状で平滑なものが望ましい。より微小な微細構造を作製する場合には、シリコン基板が好適である。
次に、基材表面の水酸基や酸素含有極性官能基と、疎水性官能基で終端された環状、枝状、直鎖状の有機シラン分子を反応させる。反応方法は、特に限定されるものではないが、好ましくは、高価な反応装置、長い処理時間、高い処理温度を必要せず、少量の原料で処理可能な気相法を用いる。
本発明では、疎水性官能基で終端された環状、枝状、直鎖状の有機シラン分子としては、具体的には、直鎖状としては、1)(Heptadecafluoro−1,1,2,2−tetrahydrodecyl)trichlorosilane、2)(Heptadecafluoro−1,1,2,2−tetrahydrodecyl)trimethoxysilane、3)n−オクタデシルトリクロロシラン、4)n−オクタデシルトリメトキシシラン、5)n−オクタデシルシラン、6)(Heptadecafluoro−1,1,2,2−tetrahydrodecyl)dimethylchlorosilane、また、環状としては、1)1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、また、枝状としては、1)bis((tridecafluoro−1,1,2,2,−tetrahydrooctyl)−dimethylsiloxy)methylsilane、2)bis((tridecafluoro−1,1,2,2,−tetrahydrooctyl)−dimethylsiloxy)methylchlorosilane、3)Di−t−buthylmethylchlorosilane、4)Di−t−buthylmethylsilane、5)[bis(nonafluorohexyldimethylsiloxy)methyl]silylethyldimethylchlorosilane、6)bis(nonafluorohexyldimethylsiloxy)methylsilane、7)[tris(trimethylsiloxy)methyl]silylethyldimethylchlorosilane、が例示される。
この場合、特に、枝状、環状構造をもった有機シラン分子の環状としては、1)1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、また、枝状としては、1)bis((tridecafluoro−1,1,2,2,−tetrahydrooctyl)−dimethylsiloxy)methylsilane、2)bis((tridecafluoro−1,1,2,2,−tetrahydrooctyl)−dimethylsiloxy)methylchlorosilane、3)Di−t−buthylmethylchlorosilane、4)Di−t−buthylmethylsilane、5)[bis(nonafluorohexyldimethylsiloxy)methyl]silylethyldimethylchlorosilane、6)bis(nonafluorohexyldimethylsiloxy)methylsilane、7)[tris(trimethylsiloxy)methyl]silylethyldimethylchlorosilane、が好適である。何故なら、これらの分子で基板表面を被覆した場合、前進接触角と後退接触角との差(いわゆるヒステリシス)がなくなるため、スピンキャストの際、イオン性液体が表面にひっかかることなくスムーズに動き、そのため、光照射領域「親水性領域」だけにイオン性液体が付着し、より明確なパターンを得ることが可能となる。
通常用いられている有機シランの分子膜では、ヒステリシスが比較的大きいため(10〜20°)、スピンキャストの際、疎水性の単分子膜が被覆された領域にもイオン性液体が残ってしまい、パターンの解像度が悪くなるという問題がある。特に、パターン幅が20μmを超えると、単分子膜被覆表面上での液残りがより顕著となる。
基材表面の水酸基や酸素含有極性官能基と、疎水性官能基で終端された環状、枝状、直鎖状の有機シラン分子を反応させる反応方法を、例えば、シリコン基材へ適用して処理する場合、処理温度は50〜180℃、処理時間は72時間以上であることが望ましい。また、例えば、ポリマー基板であれば、処理温度は50〜80℃、処理時間は3時間以上であることが望ましい。
単分子膜の膜厚は、用いる有機分子の長さに依存し、0.5nmから3nm程度まで任意に制御することが可能である。環状、枝状、直鎖有機分子の末端が不活性な官能基、例えば、CH基やCF基で終端されている場合、疎水性の表面が形成される。
続いて、当該基板上に、フォトマスクや金属メッシュを設置し、真空下、好ましくは10〜1000Paで、波長172nm又はそれ以下の真空紫外光を5〜30分間照射することにより、300nm〜700μmスケールの親水性/疎水性領域から構成される微細構造が形成される。
微細構造の形状は、特に限定されるものではなく、任意の形状を選択することが可能である。光照射後、当該微細構造化基板に、直ちに、水と同程度の表面張力を持つイオン性液体、例えば、C16CHSO (66.4Dyn/cm)や、C CHSO (64.2Dyn/cm)が好適である、をスピンキャストすると、イオン性液体は、光が照射(単分子膜が光分解)された領域(親水性領域)にのみ選択的に付着し、非照射領域(疎水性領域)には付着しないため、光学顕微鏡やレーザ顕微鏡で、微細構造を可視化することができる。
これは、イオン性液体を用いることで、はじめて実現する。何故なら、水や有機溶媒でも、親水性領域に付着させることは可能であるが、その揮発性の高さにより、瞬時に蒸発してしまうし、微細構造を可視化することはできない。イオン性液体を用いる場合、観察後、水やアルコールで当該基板をリンスするだけで、付着したイオン性液体を容易に除去でき、当該微細構造化基板の再利用も可能であり、しかも本発明の可視化方法は、単分子膜にダメージを与えない可視化方法であることが確認された。
可視化する際に用いるイオン性液体は、水と同程度の表面張力を有していることが望ましい。また、微細構造化された単分子膜の疎水性領域と親水性領域間では、イオン性液体に対する濡れ性の違いが大きいことが望ましい。特に、本発明の可視化技術を用いることにより、これまで困難であった微細構造化単分子膜の可視化が容易に実現可能となる。
上記の微細構造化単分子膜が可視化できる理由は、1)イオン性液体が不揮発性であること、2)微細構造化した有機単分子膜のドメイン間、すなわち単分子膜被覆領域と非被覆領域間、のイオン性液体に対する濡れ性が大きく違うこと、3)イオン性液体付着領域と非付着領域間の屈折率と高さが違うこと、という化学的/物理的効果によるものと推定される。
本発明は、1)イオン性液体の不揮発性、2)微細構造化した有機単分子膜のドメインすなわち単分子膜被覆領域と非被覆領域、の間のイオン性液体に対する濡れ性の違い、3)イオン性液体付着領域と非付着領域間の屈折率と高さの違い、を利用して、ナノ〜マイクロメータオーダーで微細構造化した有機単分子膜を、再現性よく、広範囲で可視化する方法であり、本発明により、LFM/KFMのような、高価で、特殊な環境を必要とせずに、広い領域を非破壊で可視化することが可能となる。
本発明では、例えば、シリコン基板に、疎水性の単分子膜(ビス(トリデカフルオロ1,1,2,2−テトラヒドロオクチルシロキシ)メチルクロロシラン)を形成し、フォトマスクを介して、波長172nm又はそれ以下の真空紫外光を局所的に照射し、単分子膜を分解した後、イオン性液体(bis(hydroxyethyl)dimethyl−ammonium methane sulfonate)をスピンキャストすると、光があたって単分子膜が除去された領域にのみイオン性液体が付着する。イオン性液体は、不揮発性のため、図2に示すようなパターン(ライン/スペース:300nm/1μm)をレーザ顕微鏡で観察することが可能となる。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)ナノ〜マイクロメータスケールで微細構造化した単分子膜に、イオン性液体を滴下し、スピンキャストすることにより、イオン性液体の不揮発性、光照射/非照射(ドメイン)間のイオン性液体に対する濡れ性の違い、イオン性液体付着領域と非付着領域間の屈折率と高さの違い、を利用することにより、可視化が可能となる。
(2)特殊な分析装置を使用することなく、通常の実験室で使われている光学顕微鏡やレーザ顕微鏡により、微細構造化単分子膜にダメージを与えることなく、広範囲で可視化することが可能である。
(3)これらの現象は、イオン性液体が蒸気圧を持たないという特殊な特性の効果により出現するものと推定される。
(4)用いるイオン性液体は、できるだけその表面張力が水に近いことが望ましく、また、ナノ〜マイクロメータスケールで微細構造化した単分子膜の終端官能基は、CH基やCF基といった表面エネルギーの低い官能基が一つ入っていることが望ましく、CH基やCF基は、表面エネルギーが低いため、イオン性液体を効率的にはじき、より明瞭なパターンを得ることが可能になる。
(5)本発明の技術を用いることにより、従来技術では困難であった単分子膜の可視化を、高価な分析装置や特殊な測定環境を必要とせず、再現性よく、広範囲に、しかも観察中に有機単分子膜にダメージを与えることなく、ナノ〜マイクロメータのオーダーで容易に可視化することが可能である。
(6)観察後、水や有機溶剤でイオン性液体を溶解、除去することが可能であり、微細構造化した基板を再利用することができる。
図1は、実施例1に係る、微細加工した環状のオルガノシリコン水素化物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン単分子膜に、イオン性液体のbis(hydroxyethyl)dimethyl−ammonium methane sulfonate(C16CHSO )を、スピンキャストした試料の光学顕微鏡写真を示すものである。図中、(a)は、ライン/スペース:1μm/3μm、(b)は、正方法:2μm×2μm、(c)は、正方形:5μm×5μm、(d)は、長方形:200μm×500μm、(e)は、円:直径700μm、である。 図2は、実施例2に係る、微細加工した枝状有機シラン、ビス(トリデカフルオロ1,1,2,2−テトラヒドロオクチルシロキシ)メチルクロロシラン単分子膜に、イオン性液体のbis(hydroxyethyl)dimethyl−ammonium methane sulfonate(C16CHSO )を、スピンキャストした試料のレーザ顕微鏡写真を示すものである。図中、ラインは、イオン性液体、ライン幅は300nm、である。 図3は、実施例2に係る、試料の水とエタノールによる洗浄(リンス)前後のX線光電子分光スペクトルを示すものである。図中、(a)は、リンス前、(b)は、リンス後、である。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、当該実施例は、本発明の好適な例を示すものであり、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
シリコン基材を、1000Pa下で、30分間、波長172nmの真空紫外光に暴露して洗浄した後、環状のオルガノシリコン水素化物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン([C16Si]、Gelest製)の蒸気を利用して、当該基材に、気相から当該分子を化学吸着させ、基板を作製した。その際の処理温度は80℃、処理時間は72時間とした。
続いて、当該基板表面に、各種フォトマスクを設置し、マスク越しに波長172nmの真空紫外光を、1000Paで、30分、照射した後、基板表面にイオン性液体のbis(hydroxyethyl)dimethyl−ammonium methane sulfonate(C16CHSO )を滴下し、スピンキャストして試料を作製した。最後に、光学顕微鏡ないしはレーザ顕微鏡で、当該試料を観察した。図1に、イオン性液体をスピンキャストした試料の光学顕微鏡写真を示す。
シリコン基材を、1000Pa下で、30分間、波長172nmの真空紫外光に暴露して洗浄した後、枝状の有機シラン、ビス(トリデカフルオロ1,1,2,2−テトラヒドロオクチルシロキシ)メチルクロロシラン(C2123ClF26Si、Gelest製)の蒸気を利用して、当該基材に、気相から当該分子を化学吸着させ、基板を作製した。その際の処理温度は70℃、150℃、処理時間は、72時間とした。
続いて、当該基板表面に、フォトマスクを設置し、マスク越しに波長172nmの真空紫外光を、1000Paで、30分、照射した後、イオン性液体bis(hydroxyethyl)dimethyl−ammonium methane sulfonate(C16CHSO )を滴下し、スピンキャストして試料を作製した。最後に、光学顕微鏡ないしはレーザ顕微鏡で、当該試料を観察した。図2に、イオン性液体をスピンキャストした試料のレーザ顕微鏡写真を示す。
実施例2で作製した試料を、エタノールとMilliQ水(Millipore社製)により、リンスした。リンス前後の化学結合状態の変化を、X線光電子分光法を用いて測定した。図3に、X線光電子分光スペクトルを示す。
比較例1
シリコン基材を、1000Pa下で、30分間、波長172nmの真空紫外光に暴露して洗浄した後、環状のオルガノシリコン水素化物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン([C16Si]、Gelest製)の蒸気を利用して、当該基材に、気相から当該分子を化学吸着させ、基板を作製した。その際の処理温度は80℃、処理時間は72時間とした。
続いて、当該基板表面に、フォトマスクを設置し、マスク越しに波長172nmの真空紫外光を、1000Paで、30分、照射した後、MilliQ水を滴下し、スピンキャストして試料を作製した。最後に、光学顕微鏡ないしはレーザ顕微鏡で、当該試料を観察した。
比較例2
シリコン基材を、1000Pa下で、30分間、波長172nmの真空紫外光に暴露して洗浄した後、環状のオルガノシリコン水素化物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン([C16Si]、Gelest製)の蒸気を利用して、当該基材に、気相から当該分子を化学吸着させた。その際の処理温度は80℃、処理時間は72時間とした。
続いて、当該基板表面に、フォトマスクを設置し、マスク越しに波長172nmの真空紫外光を、1000Paで、30分、照射した後、エタノールを滴下し、スピンキャストして試料を作製した。最後に、光学顕微鏡ないしはレーザ顕微鏡で、当該試料を観察した。
比較例3
シリコン基材を、1000Pa下で、30分間、波長172nmの真空紫外光に暴露して洗浄した後、枝状の有機シラン、ビス(トリデカフルオロ1,1,2,2−テトラヒドロオクチルシロキシ)メチルクロロシラン(C2123ClF26Si、Gelest製)の蒸気を利用して、当該基材に、気相から当該分子を化学吸着させた。その際の処理温度は70℃、150℃、処理時間は72時間とした。
続いて、当該基板表面に、フォトマスクを設置し、マスク越しに波長172nmの真空紫外光を、1000Paで、30分、照射した後、MilliQ水を滴下し、スピンキャストして試料を作製した。最後に、光学顕微鏡ないしはレーザ顕微鏡で、当該試料を観察した。
比較例4
シリコン基材を、1000Pa下で、30分間、波長172nmの真空紫外光に暴露して洗浄した後、枝状の有機シラン、ビス(トリデカフルオロ1,1,2,2−テトラヒドロオクチルシロキシ)メチルクロロシラン(C2123ClF26Si、Gelest製)の蒸気を利用して、当該基材に、気相から当該分子を化学吸着させた。その際の処理温度は70℃、150℃、処理時間は72時間とした。
続いて、当該基板表面に、フォトマスクを設置し、マスク越しに波長172nmの真空紫外光を、1000Paで、30分、照射した後、エタノールを滴下し、スピンキャストして試料を作製した。最後に、光学顕微鏡ないしはレーザ顕微鏡で、当該試料を観察した。
上述の3つの実施例、及び上述の4つの比較例で作製した試料表面を相対的に評価した。その結果、実施例1と実施例2のイオン性液体を利用した場合のみ、光学/レーザ顕微鏡で、明確なナノ(300nm)〜ミクロンパターン(1〜700μm)を観察することができた。これに対し、比較例1〜4では、各種液体は、すぐに蒸発してしまうため、そのようなパターンを観察することは不可能であった。
これらの結果は、イオン性液体が、ある種のプローブとしての役割を果たし、微細構造化したドメイン間の表面の濡れ性の違いを認識し、親水性領域に選択的に付着し、かつ、蒸発することなく、表面に付着していることを証明している。なお、実施例3の結果を示す図3からも明らかなように、リンス後、イオン性液体に起因する、窒素(N1s)、硫黄(S2p)のピークが消失していることから、エタノールとMilliQ水を用いたリンスにより、イオン性液体が、表面から除去されたことが証明された。
以上詳述したように、本発明は、有機単分子膜の可視化方法に係るものであり、本発明により、ナノ〜マイクロメータスケールで微細構造化した単分子膜に、イオン性液体を滴下し、スピンキャストすることにより、イオン性液体の不揮発性、光照射/非照射(ドメイン)間のイオン性液体に対する濡れ性の違い、イオン性液体付着領域と非付着領域間の屈折率と高さの違い、を利用することで、単分子膜の可視化が、実現可能となる。本発明では、特殊な分析装置を使用することなく、通常の実験室で使われている光学顕微鏡やレーザ顕微鏡により、微細構造化単分子膜にダメージを与えることなく、広範囲で可視化することが可能になる。この現象は、イオン性液体が蒸気圧を持たないという特殊な特性の効果により出現するものと考えられる。本発明で用いるイオン性液体は、できるだけその表面張力が水に近いことが望ましく、また、ナノ〜マイクロメータスケールで微細構造化した単分子膜の終端官能基は、CH基やCF基といった表面エネルギーの低い官能基が一つ入っていることが望ましく、CH基やCF基は、表面エネルギーが低いため、イオン性液体を効率的にはじき、より明瞭なパターンを得ることが可能になる。本発明は、従来技術では困難であった有機単分子膜の可視化を、高価な分析装置や特殊な測定環境を必要とせず、再現性よく、広範囲に、かつ観察中に有機単分子膜にダメージを与えることなく、ナノ〜マイクロメータオーダーで容易に可視化することを可能とする有機単分子膜の可視化方法を提供するものとして有用である。

Claims (6)

  1. イオン性液体を、300nm〜700μmスケールで微細構造化した平滑固体表面に化学結合で固定されている有機単分子膜表面に、スピンキャストした後、光学顕微鏡ないしはレーザ顕微鏡を用いて、微細構造化した有機単分子膜を観察することを特徴とする微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
  2. イオン性液体が、水と同程度の表面張力を持つものである、請求項1に記載の微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
  3. イオン性液体が、有機単分子膜の表面から、水や有機溶剤で溶解/除去できるものである、請求項1又は2に記載の微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
  4. 有機単分子膜が、疎水性官能基で終端された環状、枝状、又は直鎖の構造を有しており、半導体、金属、金属酸化膜、金属酸化物、合金、ポリマー、セラミックス、ガラスの内から選択した平滑固体表面に化学結合で固定化されている、請求項1から3のいずれかに記載の微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
  5. 微細構造化した有機単分子膜が、疎水性と親水性領域から構成されている、請求項1から4のいずれかに記載の微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
  6. 有機単分子膜の膜厚が、0.5nm〜3nmである、請求項1から5のいずれかに記載の微細構造化した有機単分子膜の可視化方法。
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