JP2012029653A - 細胞の多能性の評価方法 - Google Patents

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茂夫 増田
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賢吾 竹内
Takashi Yokoo
隆 横尾
Eiji Kobayashi
英司 小林
Yutaka Hanazono
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Abstract

【課題】少ない細胞数で、短時間で、安定して細胞の多能性を評価する方法を提供すること。
【解決手段】以下の工程を含む、哺乳動物細胞の多能性の評価方法:
(1)評価対象の哺乳動物細胞を非ヒト哺乳動物の組織原基中に注入すること、
(2)該組織原基を免疫不全非ヒト哺乳動物の体内に移植すること、
(3)(2)で移植を受けた免疫不全非ヒト哺乳動物を、該哺乳動物の生体内に移植された該組織原基内において多能性幹細胞が奇形腫を形成するのに十分な期間維持すること、及び
(4)移植した該組織原基の内部又は該組織原基の周囲における、評価対象の哺乳動物細胞からの奇形腫の発生の有無を解析すること。
【選択図】なし

Description

本発明は、細胞の多能性の評価方法に関する。
近年の幹細胞研究の進歩により多能性を有する種々の幹細胞が樹立されている。現在までに樹立された多能性幹細胞のうちES細胞及びiPS細胞は、多能性を維持しながら効率よく増殖する能力を有しているため(非特許文献1)、再生医療分野への応用が期待されている。多能性幹細胞を利用した再生医療においては、多能性幹細胞を特定の条件下で培養して所望の体細胞や組織へ分化させ、得られた体細胞や組織を患者の体内へ移植する。従って、再生医療を安全且つ確実に実施するためには、その出発材料である多能性幹細胞が多能性を有しているか否かを予め確認しておくことが重要である。
ヒト多能性幹細胞の多能性の評価は、通常、評価対象の細胞を免疫不全マウスの体内に直接移植し、奇形腫を形成するか否かに基づき行われている(非特許文献2)。しかしながら、この方法により安定して奇形腫形成を確認するためには、100,000〜1,000,000個もの多くの数の細胞を移植する必要がある。また、免疫不全マウスの体内において評価可能な程度の大きさの奇形腫を形成させるためには、7〜12週間もの長い期間が必要である。また、実験手技が統一されていないため、報告間での試験結果のばらつきが大きく、容易に奇形腫を形成しないことも報告されている(非特許文献2)。ヒトES細胞及びiPS細胞について、これまでに研究されてきたそれぞれ各639系統株、及び777系統株の文献調査を施行した結果、ES細胞株では56%、iPS細胞株では64%において奇形腫形成確認実験が施行されていないということが明らかとなっている(非特許文献2)。これらの事実は、ヒト多能性幹細胞の多能性の唯一の確認方法である、免疫不全マウスの体内における奇形腫形成試験には、少ない細胞数で、短時間で、安定して多能性を評価することができないという問題点が存在することを示している。従って、これらの問題点を解決した標準化された多能性の評価方法の開発が望まれている。
Nagata M. et al., J. Gene Med., vol. 5; p.921, 2003 Cell Stem Cell, vol.6; p.412-414, 2010
本発明の目的は、少ない細胞数で、短時間で、安定して細胞の多能性を評価する方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、多能性幹細胞を、ラットの胎児腎臓原基内に注入し、その胎児腎臓原基を免疫不全マウスに移入することにより、少ない細胞数で、短期間で、奇形腫が形成されることを見出し、更に検討を加えた結果、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]以下の工程を含む、哺乳動物細胞の多能性の評価方法:
(1)評価対象の哺乳動物細胞を非ヒト哺乳動物の組織原基中に注入すること、
(2)該組織原基を免疫不全非ヒト哺乳動物の体内に移植すること、
(3)(2)で移植を受けた免疫不全非ヒト哺乳動物を、該哺乳動物の生体内に移植された該組織原基内において多能性幹細胞が奇形腫を形成するのに十分な期間維持すること、及び
(4)移植した該組織原基の内部又は該組織原基の周囲における、評価対象の哺乳動物細胞からの奇形腫の発生の有無を解析すること。
[2]評価対象の哺乳動物細胞が哺乳動物iPS細胞である、[1]記載の方法。
[3]哺乳動物iPS細胞がヒトiPS細胞である、[2]記載の方法。
[4]組織原基が後腎である、[1]記載の方法。
[5]免疫不全非ヒト哺乳動物が免疫不全マウスである、[1]記載の方法。
[6]免疫不全マウスがSCIDマウスである、[5]記載の方法。
[7]該組織原基を免疫不全非ヒト哺乳動物の脂肪組織内に移植する、[1]記載の方法。
本発明の方法を用いれば、少ない細胞数で安定して多能性幹細胞の多能性を評価することができる。従来法では、通常100,000〜1,000,000個もの多くの細胞数を必要とするのに対して、本発明の方法では、従来法よりも少ない、約1,000〜10,000個程度の細胞を用いて細胞の多能性を評価する事が可能である。
本発明の方法を用いれば、短期間で多能性幹細胞の多能性を評価することができる。従来法では奇形腫を形成するまでの期間として7〜12週間必要とするが、本発明の方法では、生体内への移植後4週間程度で奇形腫が形成される。
本発明の方法においては、胎仔組織原基を足場として細胞を分化させるので、奇形腫形成率が従来法よりも良好である。
ラット後腎内に注入された、GFP標識ヒトiPS細胞の増殖を示す。 SCIDマウスの体内に生着したラット後腎を示す(A及びB)。GFP標識により注入したヒトiPS細胞の存在が確認された(C)。 後腎内に形成された奇形腫の組織学的観察結果を示す。A及びB:奇形腫のHE染色像。ほぼ全般的に神経管様組織が認められる。C:奇形腫のHE染色像。右上部分が、神経管様組織の分布に相当する。D:抗ヒトGAPDH抗体による奇形腫の染色像。E:奇形腫内の神経管様組織。F:従来法による奇形腫の形成。
本発明は、以下の工程を含む、哺乳動物細胞の多能性の評価方法を提供するものである:
(1)評価対象の哺乳動物細胞を非ヒト哺乳動物の組織原基中に注入すること、
(2)該組織原基を免疫不全非ヒト哺乳動物の体内に移植すること、
(3)(2)で移植を受けた免疫不全非ヒト哺乳動物を、該哺乳動物の生体内に移植された該組織原基内において多能性幹細胞が奇形腫を形成するのに十分な期間維持すること、及び
(4)移植した該組織原基の内部又は該組織原基の周囲における、評価対象の哺乳動物細胞からの奇形腫の発生の有無を解析すること。
本明細書中、「多能性(pluripotency)」とは、三胚葉(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)の全ての細胞または組織へ分化し得る能力を意味する。
本明細書中、「幹細胞」とは、自己複製能、増殖能及び分化能を有する未熟な細胞を意味する。
本明細書中、「多能性幹細胞」とは、上述の多能性を有する幹細胞を意味する。多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、EG細胞、iPS細胞等を挙げることが出来る。ES細胞は、内部細胞塊をフィーダー細胞上又はLIFを含む培地中で培養することにより製造することが出来る。ES細胞の製造方法は、例えば、WO96/22362、WO02/101057、US5,843,780、US6,200,806、US6,280,718等に記載されている。EG細胞は、始原生殖細胞をmSCF、LIF及びbFGFを含む培地中で培養することにより製造することが出来る(Cell, 70: 841-847, 1992)。iPS細胞は、体細胞(例えば線維芽細胞、皮膚細胞等)にOct3/4、Sox2及びKlf4(必要に応じて更にc−Myc又はn−Myc)等のリプログラミング因子を導入することにより製造することが出来る(Cell, 126: p. 663-676, 2006;Nature, 448: p. 313-317, 2007;Nat Biotechnol, 26: p. 101-106, 2008;Cell 131: p.861-872, 2007;Science, 318: p.1917-1920, 2007;Cell Stem Cells 1: p.55-70, 2007;Nat Biotechnol, 25: p.1177-1181, 2007;Nature, 448: p. 318-324, 2007;Cell Stem Cells 2: p.10-12, 2008;Nature 451: p.141-146, 2008;Science, 318: 1917-1920, 2007)。体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立した幹細胞も、多能性幹細胞としてまた好ましい(Nature, 385, 810 (1997);Science, 280, 1256 (1998);Nature Biotechnology, 17, 456 (1999);Nature, 394, 369 (1998); Nature Genetics, 22, 127 (1999); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 14984 (1999)); Rideout IIIら (Nature Genetics, 24, 109 (2000))。
本発明の方法において、評価の対象となる細胞は、多能性を有することが期待される哺乳動物細胞である。多能性を有することが期待される哺乳動物細胞としては、多能性幹細胞(例、ES細胞、iPS細胞、EG細胞等);多能性幹細胞の製造プロトコールに従って製造された細胞であって、多能性が確認されていない細胞;多能性幹細胞を培養して得られた細胞;凍結保存された多能性幹細胞を融解して得られた細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい評価対象の細胞は、iPS細胞;iPS細胞の製造プロトコールに従って製造された細胞であって、多能性が確認されていない細胞;iPS細胞を培養して得られた細胞又は凍結保存されたiPS細胞を融解して得られた細胞であり、より好ましくはiPS細胞である。
哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来る。哺乳動物は、好ましくは霊長類であり、より好ましくはヒトである。
「組織」の種類は、本発明の方法により多能性を評価することができる限り、特に限定されるものではないが、例えば、腎臓、脳、脊髄、胃、膵臓、肝臓、甲状腺、骨髄、皮膚、筋肉、肺、消化管(例: 大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、末梢血、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、骨格筋等を挙げることが出来る。「組織」は、好ましくは腎臓である。
「組織の原基」とは、哺乳動物の胎仔における当該組織の発生相当部位をいう。組織の原基は、好ましくは、腎臓の原基である後腎(メタネフロン)である。メタネフロンは、哺乳動物胎仔の尿管芽発芽部位の周囲、より詳しくは体節と側板の間に位置する。メタネフロンは、好ましくは、後腎形成中胚葉である。
評価対象の細胞の哺乳動物種と組織の原基の哺乳動物種は同一であっても異なっていてもよいが、異なる動物種を採用する方が、評価対象の細胞から発生した奇形腫を免疫組織染色等を用いて組織原基から容易に識別することが可能であるため好ましい(後述)。例えば、ヒトの細胞の多能性を評価するために、該ヒト細胞をブタやラット等の非ヒト哺乳動物の組織の原基中へ移植することが出来る。
組織の原基は非ヒト哺乳動物の胎仔から生体外に摘出される。後腎組織はラットでは通常E11.5、マウスではE9.5から形成され始めるので、組織の原基としてメタネフロンを使用する場合には、前記ステージ以降の胎仔が通常使用される。好ましくはラットでE14以降、マウスでE12以降、より好ましくはラットでE14〜16、マウスでE12〜14である。その他の哺乳動物においても、同様のステージの胎仔が好適に使用できる。しかし、その前後のステージも、条件を選定することによって適用可能である。胎仔からの組織の原基の摘出は、実体顕微鏡等を用いて行うことが可能である。
組織原基中への評価対象の細胞の注入は、実体顕微鏡下でマニピュレーターやマイクロピペット等を用いて行われる。移植する細胞の数は組織原基の大きさ等に基づき適宜設定することができるが、通常500個以上、好ましくは1000個以上の評価対象の細胞が注入される。従来法により、免疫不全哺乳動物の生体内(例えば精巣上皮内)に多能性幹細胞を直接移植し、奇形腫を形成させるためには、通常100,000〜1,000,000個の多能性幹細胞を要するが、本発明の方法では、組織原基の足場により多能性幹細胞の増殖が亢進されるので、従来法よりも少ない数の細胞数、例えば30,000個以下、好ましくは10,000個以下の評価対象の細胞を組織原基中へ注入することによっても、明確に該細胞の多能性を評価可能である。従って、本発明の方法においては、例えば500〜30,000個、好ましくは1,000〜10,000個の評価対象の細胞が組織原基内へ注入される。評価対象の細胞は、通常、生体外に摘出された組織原基中へ移植されるが、評価対象の細胞を、哺乳動物の胎仔内にある組織原基中へ移植し、その後、該幹細胞を含有する組織原基を胎仔から生体外へ摘出してもよい。腎臓原基への幹細胞の注入については、Yokoo T, et al. J Am Soc Nephrol 17;1026,2006等を参照のこと。
移植する細胞は、好ましくは単離精製されたものである。「単離精製」とは、目的とする幹細胞以外の細胞を除去する操作がなされていることを意味する。幹細胞の純度は、本発明の方法により評価を行うことができる限り特に限定されないが、通常10%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上(例えば実質的に100%)である。
評価対象の細胞は、移植される組織原基や免疫不全哺乳動物の細胞から識別し得るように標識されていてもよい。標識の種類としては、蛍光標識、発光標識、放射線同位体標識等を挙げることが出来るが、測定が簡便であり、詳細な解析が可能であることから、蛍光標識又は発光標識が好ましく、蛍光標識が最も好ましい。蛍光又は発光による細胞の標識は、細胞へ蛍光標識遺伝子又は発光標識遺伝子を導入することにより行うことが出来る。蛍光又は発光標識遺伝子には、蛍光又は発光を有するタンパク質をコードする遺伝子、及び対応する蛍光基質又は発光基質と混合することにより蛍光又は発光を生じる酵素をコードする遺伝子が含まれる。前者としては、GFP、RFP、YFP、CFP、EGFP、クサビラオレンジ等の蛍光タンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。後者としては、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ等の酵素をコードする遺伝子を挙げることが出来る。ルシフェラーゼの基質(発光)としてはルシフェリン(及び必要に応じてATP)等を挙げることができる。β−ガラクトシダーゼの基質(発光)としては、ルシフェリンガラクトシド基質(6−O−β−ガラクトピラノシルルシフェリン)等を挙げることができる。ペルオキシダーゼの基質としては、ルミノール(及び必要に応じて過酸化水素)等を挙げることができる。
細胞への発光又は蛍光標識遺伝子の導入は、自体公知の遺伝子工学的手法を用いて行うことができる。例えば、上記標識遺伝子と、評価対象の細胞内で該標識遺伝子の発現をコントロールし得るように該標識遺伝子の上流に機能的に連結されたプロモーターを含むコンストラクト(発現ベクター)により、評価対象の細胞をインビトロでトランスフェクトし、該細胞を適当な培地中で培養することによって、該標識遺伝子を細胞内に導入することができる。
トランスフェクションの方法としては、生物学的方法、物理的方法、化学的方法などを示すことができる。生物学的方法としては、例えば、ウイルスベクターを使用する方法、特異的受容体を利用する方法、細胞融合法(HVJ(センダイウイルス)、ポリエチレングリコール(PEG)、電気的細胞融合法、微少核融合法(染色体移入))が挙げられる。また、物理的方法としては、顕微注入(マイクロインジェクション)法、電気穿孔(エレクトロポレーション)法、遺伝子銃(パーティクルガン)法を用いる方法が挙げられる。化学的方法としては、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション法、DEAE−デキストラン法、プロトプラスト法、赤血球ゴースト法、赤血球膜ゴースト法、マイクロカプセル法が挙げられる。
発現ベクターとしては、プラスミドベクター、PAC、BAC、YAC、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が挙げられ、適宜選択することが出来る。
プロモーターの種類は、標識遺伝子が導入された細胞内で、該標識遺伝子の発現を誘導又は促進できるものであれば特に限定されない。該プロモーターとしては、SRαプロモーター、CMVプロモーター、PGKプロモーター、SV40プロモーター、ROSA26等を挙げることができる。
上記発現ベクターは、目的とするmRNAの転写を終結する配列(ポリA、一般にターミネーターと呼ばれる)を有していることが好ましい。その他、標識遺伝子をさらに高発現させる目的で、スプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核遺伝子のイントロンの一部を、プロモーター領域の5'上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3'下流に連結することも可能である。また、上記発現ベクターは、導入された標識遺伝子が安定に組み込まれたクローンを選択するための選択マーカー遺伝子(例:ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性などの薬剤耐性遺伝子)をさらに含み得る。
評価対象の細胞を組織原基内へ注入した後に、該組織原基をインビトロで培養してもよい。組織原基の培養は、通常の器官培養の手法を用いて行うことが出来る。例えば、ディッシュに適切な培地を加え、その上へフィルターを浮かべ、フィルターを介して培地が組織原基に供給される様にフィルター上に組織原基を配置し、ディッシュをインキュベーター内に静置することにより、組織原基の培養を行うことができる。培養条件は、組織培養技術において通常用いられている培養条件を用いることができる。例えば、培養温度は通常約30〜40℃の範囲であり、好ましくは約37℃が例示される。CO濃度は通常約1〜10%の範囲であり、好ましくは約5%が例示される。湿度は通常約70〜100%の範囲であり、好ましくは約95〜100%が例示される。培養期間は、本発明の方法により細胞の多能性を評価し得る限り、特に限定されることなく適宜設定することが出来るが、通常14日以内、好ましくは10日以内、より好ましくは7日以内である。また、培養期間は、通常30分以上、好ましくは1時間以上である。また、一態様において、インビトロにおいて培養することなく、評価対象の細胞が注入された組織原基を免疫不全非ヒト哺乳動物の体内への移植工程へ付すことも、また好ましい。
次に、組織原基が、免疫不全非ヒト哺乳動物の体内に移植される。免疫不全非ヒト哺乳動物の動物種は、該組織原基及びその中に注入された評価対象の細胞が拒絶されることなく生着し、本発明の方法により、細胞の多能性を評価し得る限り特に限定されないが、入手の容易性から、好ましくは、マウス又はラットであり、より好ましくはマウスである。免疫不全マウスとしては、例えば、SCIDマウス、RAG2ノックアウトマウス、gc/Rag2ダブルノックアウトマウス、NODマウス、NOGマウス、ヌードマウス等が挙げられるが、好ましくはSCIDマウスである。
組織原基を移植する部位は、該組織原基及びその中に注入された評価対象の細胞が生着し、本発明の方法により、細胞の多能性を評価し得る限り特に限定されないが、例えば、腸管膜脂肪、大網脂肪、精巣上皮脂肪、皮下脂肪等の脂肪組織;腎皮膜下;大腿骨骨格筋等の筋肉等が挙げられる。好ましくは、脂肪組織である。特に、腸管膜脂肪や大網脂肪内に移植した場合には、腸間膜や大網中の血管から必要な栄養を取り込むことにより、組織原基内の評価対象の細胞が良好に増殖する。
組織原基の移植を受けた免疫不全非ヒト哺乳動物は、該哺乳動物の生体内に移植された該組織原基内において多能性幹細胞が奇形腫を形成するのに十分な期間維持される。そのような維持期間は、移植された評価対象の細胞の数等に応じて適宜設定することが可能であるが、通常3週間以上、好ましくは4週間以上維持される。従来法により、免疫不全哺乳動物の生体内(例えば精巣上皮内)に多能性幹細胞を直接移植し、奇形腫を形成させるためには、通常7〜12週間もの長期間にわたり多能性幹細胞の移植を受けた免疫不全哺乳動物を維持しなければならないが、本発明の方法では、組織原基を足場により多能性幹細胞の増殖が亢進されるので、従来法よりも短い維持期間、例えば6週間以内、好ましくは5週間以内であっても、十分に該細胞の多能性を評価可能である。従って、本発明の方法においては、例えば3〜6週間、好ましくは4〜5週間、組織原基の移植を受けた免疫不全非ヒト哺乳動物が維持される。
組織原基の移植を受けた免疫不全非ヒト哺乳動物の維持飼育は、感染症の発生を回避するため、SPF環境下にて行うことが好ましい。
十分な期間維持した後に、移植した該組織原基の内部又は該組織原基の周囲における、評価対象の哺乳動物細胞から奇形腫の発生の有無が解析される。奇形腫とは内胚葉、中胚葉、および外胚葉の三胚葉の全てに由来する細胞または組織を含む組織塊をいう。当分野で一般的に用いられる組織学的解析技術を使用して、移植した該組織原基の内部又は該組織原基の周囲に評価対象の哺乳動物細胞から発生したこれらの3つの胚葉の細胞又は組織を含む組織塊が形成されているか否かを観察することにより、奇形腫発生の有無を評価することができる。奇形腫発生の有無の具体的な評価方法は、例えば、Thomson et al. Science 1998, 282:1145-1147に記載されている。
発生した奇形腫が評価対象の細胞に由来するか否かは、評価対象の細胞に発現する抗原を特異的に認識し、組織原基やレシピエントの免疫不全哺乳動物の細胞に発現する抗原を認識しない抗体により免疫組織学的染色を行うことにより判別することができる。例えば、免疫不全哺乳動物の動物種及び組織原基が由来する動物種として、評価対象の細胞が由来する動物種とは異なる動物種を採用し、評価対象の細胞が由来する動物種の抗原は特異的に認識するが、免疫不全哺乳動物の動物種及び組織原基が由来する動物種の抗原は認識しない抗体により免疫組織学的染色を行う。該抗体について陽性の細胞が、評価対象の細胞である。
或いは、上述のように、評価対象の細胞が、蛍光や発光等により標識されている場合には、その標識の有無により、発生した奇形腫が評価対象の細胞に由来するか否かを判別することが出来る。標識陽性の細胞が、評価対象の細胞である。
そして、解析の結果、評価対象の哺乳動物細胞からの奇形腫の発生が確認された場合には、その評価対象の哺乳動物細胞は多能性を有すると判定することが出来る。一方、評価対象の哺乳動物細胞からの奇形腫の発生が確認されない場合には、その評価対象の哺乳動物細胞は多能性を有しないと判定することが出来る。
本発明の方法を用いれば、例えば、多能性幹細胞(又はその候補細胞)による再生医療を実施するに先立って、その多能性幹細胞(又はその候補細胞)が多能性を維持しているか否かを評価することが出来るので、多能性幹細胞の品質コントロールに有用である。また、複数の多能性幹細胞(又はその候補細胞)の細胞株のそれぞれについて、本発明の方法により多能性の有無を評価し、多能性が確認されなかった細胞株を排除し、多能性が確認された細胞株のみを選択することにより、多能性が確認された多能性幹細胞の細胞株のストックを構築することが出来る。
刊行物、特許文献等を含む、本明細書に引用されたすべての参考文献は、引用により、それらが個々に具体的に参考として援用されかつその内容全体が具体的に記載されているのと同程度まで、本明細書に援用される。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
高橋らの方法(Cell. 2007 Nov 30;131(5):861-72)にて樹立したヒトiPS細胞に、経時的観察を容易にするため、リポフェクション法によってpPyCAG-EGFP-IPをトランスフェクションし緑色蛍光タンパクGFPを発現させ、本細胞を評価対象の細胞として用いた。
妊娠ラットより、E15.5日齢の胎仔ラットを分離し、実体顕微鏡下にて胎仔ラットから後腎を摘出し、フィルター付2重培養皿のフィルター上に静置した。1,000〜10,000個のヒトiPS細胞を実体顕微鏡下でマウスピペットを用いてラット胎仔後腎中へ注入した。注入後の後腎を定法によりフィルター付2重皿上で0−1週間、器官培養を行った。培養中の後腎内に存在するヒトiPS細胞の挙動は実体蛍光顕微鏡を用いて観察した(図1)。器官培養後、後腎を傷つけないように取り出し、SCIDマウスの腸間膜脂肪組織に移植し、SCIDマウス通常飼育条件下で4週間飼育した。
4週間の飼育後、開腹し腸間膜脂肪組織に移植した後腎が生着していることを確認した。(図2―A,B)また、摘出した後腎内には、注入したヒトiPS細胞に由来する細胞が存在することが、緑色蛍光タンパク(GFP)の標識位置を観察することで確認された(図2−C)。
摘出した後腎を10%中性緩衝ホルマリン溶液に入れ、一晩浸透させることにより、後腎、及び注入したヒトiPS細胞に由来する細胞を固定した。固定した後腎、及び注入したiPS細胞を、Hematoxylin & Eosin染色法(HE染色)を用いて染色し、顕微鏡を用いてその組織像を観察した。その組織像中に、奇形腫形成が確認された(図3−A)。その中で、神経管様組織に分化しているものを図3−Eに示す。図3−Eの右下部分が、神経管様組織の分布を示す。その他、図3−Cでは右上部分=11時〜2時方向が、神経管様組織の分布に相当する。図3−A及びBでは ほぼ全般的に神経管様組織が見られる。
また、HE染色像で呈される奇形腫像が、注入したヒトiPS細胞に由来する細胞であることを証明するためにラットGAPDHに交差反応しない抗ヒトGAPDH抗体を用いて免疫染色を行った(図3−D,F)。その結果、奇形腫形成部位と、GAPDH陽性部位は一致するということが明らかとなった(図3−C−F)。従って、形成された奇形腫が注入されたヒトiPS細胞由来であることが証明された。
一方、比較として、従来法により、奇形腫形成の確認試験を行った。100,000〜1,000,000個のヒトiPS細胞をSCIDマウスの大腿骨骨格筋中に直接注入し、SCIDマウス通常飼育条件下で7週間飼育した。
7週間の飼育後、マウス大腿骨周辺を解剖したところ腫瘍が形成されていることが確認された。また、その組織を用いてHE染色を行った結果、奇形腫像を確認し、神経管様組織も確認できた(図3−F)。
本発明の方法を用いれば、少ない細胞数で、短期間で、安定して細胞の多能性を評価することができるので、再生医療において使用する多能性幹細胞の品質管理に有用である。

Claims (7)

  1. 以下の工程を含む、哺乳動物細胞の多能性の評価方法:
    (1)評価対象の哺乳動物細胞を非ヒト哺乳動物の組織原基中に注入すること、
    (2)該組織原基を免疫不全非ヒト哺乳動物の体内に移植すること、
    (3)(2)で移植を受けた免疫不全非ヒト哺乳動物を、該哺乳動物の生体内に移植された該組織原基内において多能性幹細胞が奇形腫を形成するのに十分な期間維持すること、及び
    (4)移植した該組織原基の内部又は該組織原基の周囲における、評価対象の哺乳動物細胞からの奇形腫の発生の有無を解析すること。
  2. 評価対象の哺乳動物細胞が哺乳動物iPS細胞である、請求項1記載の方法。
  3. 哺乳動物iPS細胞がヒトiPS細胞である、請求項2記載の方法。
  4. 組織原基が後腎である、請求項1記載の方法。
  5. 免疫不全非ヒト哺乳動物が免疫不全マウスである、請求項1記載の方法。
  6. 免疫不全マウスがSCIDマウスである、請求項5記載の方法。
  7. 該組織原基を免疫不全非ヒト哺乳動物の脂肪組織内に移植する、請求項1記載の方法。
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