JP2011507970A - 筋肉の能力および緊張を向上させるための方法 - Google Patents

筋肉の能力および緊張を向上させるための方法 Download PDF

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Abstract

AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)のアゴニストは、被験体の運動を改善し、エネルギー代謝を改変する。本開示は、被験体の運動の改善およびエネルギー代謝の改変のためのAMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)のアゴニストの使用に関する。本開示はまた、運動不足の被験体の筋消耗疾患および障害の治療方法および筋緊張の促進方法を提供する。AMPKとペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)δアゴニストとの組み合わせを使用して、被験体の運動能力を改善することもできる。被験体における物質によって向上した運動能力の同定方法およびPPARδの運動誘導性キナーゼとの相互作用に影響を及ぼす化合物の同定方法も開示する。

Description

(関連する出願への相互参照)
本願は、2008年7月15日に出願され、参考により本明細書中に援用された米国仮特許出願第61/080,841号の利益を主張する。本願は、米国特許出願第11/966,851号および国際特許出願第PCT/US2007/089124号の継続出願であり、米国特許出願第11/966,851号および国際特許出願第PCT/US2007/089124号に対する優先権を主張する。米国特許出願第11/966,851号および国際特許出願第PCT/US2007/089124号の両方は、2008年12月28日に出願され、それらの開示は、参考により本明細書中に援用される。
(国家の支援の承認)
本研究は、国立衛生研究所の補助金第1F32AR05380−01(NRSA研究奨励金)により支援された。したがって、米国政府は、本発明における特定の権利を有する。
発明の分野
本開示は、被験体の運動の改善およびエネルギー代謝の改変のためのAMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)のアゴニストの使用に関する。本開示はまた、運動不足の被験体の筋消耗疾患および障害の治療方法および筋緊張の促進方法を提供する。本開示はまた、被験体の運動能力の改善のためのAMPKとペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)δアゴニストとの組み合わせおよび筋緊張、筋持久力、または筋肉の能力に関連する遺伝子発現プロフィールを調整する化合物の同定方法に関する。
背景
骨格筋は、その代謝性および収縮性が異なる複数の筋線維(酸化系遅筋線維(I型)、混合型酸化系/解糖系速筋線維(Ha型)、および解糖系速筋線維(Hb型)が含まれる)から構成される適応性のある組織である(非特許文献1;非特許文献2)。I型筋線維は、脂肪酸を酸化する酵素を優先的に発現し、遅い収縮性のタンパク質イソ型を含み、解糖系筋線維よりも疲労耐性が高い(非特許文献3;非特許文献4)。II型線維は、グルコースを優先的に代謝し、速い収縮性のタンパク質イソ型を発現する(非特許文献5;非特許文献6)。
持久運動訓練によって骨格筋における複雑な再造形プログラムが誘発され、マラソン走者、登山者、およびサイクリストなどのアスリートの能力が進行性に向上する。これには、エネルギー基質の利用を変化させる筋線維内の代謝プログラムおよび構造タンパク質の変化ならびに筋疲労を軽減するように作用する収縮性を含む(非特許文献7;非特許文献8)。筋肉内の訓練ベースの適応は、遅筋収縮装置、ミトコンドリア呼吸、および脂肪酸酸化に関与する遺伝子発現の増加に関連する(非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18)。かかる運動訓練関連適応により、能力を改善し、肥満および関連代謝障害から防御することができる(非特許文献19;非特許文献20)。さらに、酸化系遅筋線維が豊富な骨格筋は筋消耗に耐性を示す(非特許文献21)。
Fluckら、Rev.Physiol.Biochem.Pharmacol.、146:159−216、2003 Pette and Staron、Microsc.Res.Tech.、50:500−509、2000 Fluckら、Rev.Physiol.Biochem.Pharmacol.、146:159−216、2003 Pette and Staron、Microsc.Res.Tech.、50:500−509、2000 Fluckら、Rev.Physiol.Biochem.Pharmacol、146:159−216、2003 Pette and Staron、Microsc.Res.Tech.、50:500−509、2000 Fluckら、Rev.Physiol.Biochem.Pharmacol、146:159−216、2003 Pette and Staron、Microsc.Res.Tech.、50:500−509、2000 Holloszy and Coyle、J.Appl.Physiol.、56:831−838、1984 Booth and Thomason、Physiol.Rev.、71:541−585、1991 Schmittら、Physiol.Genomics、15:148−157、2003 Yoshiokaら、FASEB J.、17:1812−1819、2003 Mahoneyら、FASEB J.、19:1498−1500、2005 Mahoney and Tarnopolsky、Phys .Med.Rehabil Clin.N.Am.、16:859−873、2005 Siuら、J.Appl Physiol、97:277−285、2004 Gamierら、FASEB J.、19:43−52、2005 Shortら、J.Appl Physiol、99:95−102、2005 Timmonsら、FASEB J.、19:750−760、2005 Wangら、P.Biol、2:e294、2004 Kovesら、J.Biol.Chem.、280:33588−33598、2005 Minnaardら、Muscle Nerve.31:339−48、2005
概要
本開示はまた、AMPKアゴニストを含む組成物を被験体に投与する工程を含み、それにより、筋緊張、筋肉量、または筋持久力が促進される、筋消耗疾患、筋萎縮、または老化の治療方法を提供する。1つの実施形態では、本方法は、被験体の筋緊張を促進または維持するために固定された肢を有し得るか、他の内科療法によって固定され得る被験体を治療する工程を含む。
開示は、経口AMPKアゴニストが非運動被験体のほぼ45%で運動持久力を改善するための単剤として十分であるという予想外の所見を示す。
運動効果が向上するAMPキナーゼ(AMPK)アゴニストを被験体に投与する工程を含む、被験体の運動効果を向上させる方法を開示する。AMPKアゴニストは、任意のAMPKアゴニスト、その誘導体、塩、またはエステルであり得る。1つの実施形態では、AMPKアゴニストはAICARである。本方法は、有効量のPPARδアゴニスト(例えば、GW1516)を被験体に投与し、それにより、被験体の運動効果がさらに向上する、投与する工程をさらに含むことができる。被験体は、競技動物(ヒト、、ウマ、またはイヌが含まれる)であり得る。
本開示は、さらに、運動訓練した被験体から採取した生物サンプル中のAMPKアゴニストの存在および/または表2、4、または6に列挙した1つまたは複数の分子の発現を同定する工程を含む、運動訓練した被験体における運動能力向上物質の使用を同定する方法を含む。
本開示は、薬学的に許容可能なキャリア中にAMPKアゴニストおよびPPARδアゴニストを含む組成物も提供する。組成物は、エネルギーサプリメント、飲料、食品、または医薬品であり得る。AMPKアゴニストまたはPPARアゴニストは、その塩、エステル、プロドラッグ、前駆体、または誘導体であり得る。
本開示は、予想に反して、成体におけるAMPKまたは内因性PPARδの薬理学的活性化により、かかる被験体の骨格筋の酸化系表現型への再造形を促進するか走行持久力を増大させることを示す。さらに、運動と組み合わせた内因性PPARδのアゴニスト誘導性活性化により、骨格筋で固有の「遺伝子発現サイン」が得られ、このサインは運動のみまたは薬物摂取のみのいずれかによって得られる遺伝子発現プロフィールと異なり、PPARδと運動誘導性キナーゼ(AMPKα1および/またはAMPK2など)との間の直接的な相互作用が明らかとなった。
本明細書中に記載のこれらのおよび他の発見は、開示の方法の基礎として役立つ。例えば、運動と組み合わせて使用したPPARδアゴニスト(例えば、GW1516)によって、運動のみよるよりもはるかに運動誘導性の効果を向上させる(運動持久力(例えば、走行持久力)を改善するなど)ことができるということをここで認識することができる。別の例では、運動とPPARδアゴニスト投与との組み合わせによって固有に調節される1つまたは複数の遺伝子および/またはタンパク質の発現を使用して、運動能力を向上させる薬物を使用した被験体を同定することができる。さらに他の例では、新規に同定したタンパク質複合体(PPARδおよび運動誘導性キナーゼ(AMPKα1および/またはAMPKcc2など)が含まれる)を使用して、PPARδ調節遺伝子ネットワークならびに対応する下流の生化学的効果および/または生理学的効果に影響を及ぼす可能性がある薬剤を同定することができる。
上記および他の特徴は、以下のいくつかの実施形態の詳細な説明からより明らかとなるであろう。この説明を添付の図面を参照して進行する。
図1Aは、運動不足のビヒクル処置マウス(V)、運動不足のGW1516処置マウス(GW)、運動不足のVP16−PPAR5トランスジェニックマウス(TG)、および運動不足のVP16−PPAR5トランスジェニックマウスの野生型同腹仔(WT)から単離した四頭筋中の脂肪酸酸化の3つのバイオマーカー(脱共役タンパク質3(UCP3)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(mCPTI)、およびピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ、イソ酵素4(PDK4))のmRNA発現レベルに及ぼす経口投与したPPARδアゴニスト(GW1516)の影響を示す一連の棒グラフである。データを、それぞれ3連で分析したN=4〜9マウスの平均±SEMとして示す。は、V群とGW1516群との間(p<0.05、対応のないスチューデントt検定)またはTG群とWT群との間(p<0.05、対応のないスチューデントt検定)の統計的有意差を示す。図1B〜1Dは、野生型(WT)およびPPARδヌル(KO)初代筋細胞におけるGW1516(GW)による酸化系遺伝子UCP3、mCPTI、およびPDK4の調節を示す一連の棒グラフである。はV群と表示の群との間の統計的有意差を示す(p<0.05、一元置換ANOVA;事後:ダネット多重比較検定)。図1Eは、処置前(0週)および処置後(5週間)のビヒクル処置した運動不足のマウス(V;白抜きのバー)およびGW1516処置した運動不足のマウス(GW;黒塗りのバー)の走行持久力を示す一連の棒グラフである。走行持久力を、各群における動物のトレッドミル上を走行した時間(左パネル)または距離(右パネル)によって定量する。データを、N=6マウス由来の±SDとして示す。 図2A〜2Cは、運動不足のマウス(VまたはGW)または訓練したマウス(TrまたはTr+GW)の腓腹筋に及ぼすPPARδアゴニストGW1516の投与効果を示す。図2Aは、ビヒクル処置した運動不足のマウス(V)、GW1516処置した運動不足のマウス(GW)、ビヒクル処置した運動マウス(Tr)、およびGW1516措置した運動マウス(Tr+GW)由来の腓腹筋の代表的な異染小体染色した凍結断面のデジタル画像を示す。I型(酸化系遅筋)線維は暗色に染色される。図2Bは、V、GW、Tr、およびTr+GW腓腹筋(N=3)中のI型線維の百分率(総線維に対する百分率として)を示す棒グラフである。図2Cは、マウス(N=9)のV群(左のバー)、GW群(左から2番目のバー)、Tr群(右から2番目のバー)、およびTr+GW群(右のバー)におけるミトコンドリアDNAの核DNAに対する比の変化倍率を示す棒グラフである。(B)および(C)中のデータを、平均±SEMとして示す。各棒グラフでは、は、V群とアスタリスクで示した群との間の統計的差異を示す(p<0.05、一元置換ANOVA;事後:ダネット多重比較検定)。 図3A〜3Dは、V群、GW群、Tr群、およびTr+GW群から単離した四頭筋中の遺伝子発現を示す一連の棒グラフである。図3Aは、脂肪酸酸化のバイオマーカー(UCP3、mCPTI、PDK4;左から右)の相対遺伝子発現レベルを示す。(B)は、脂肪酸貯蔵のバイオマーカー(SCD1、FAS、SREBPIc)の相対遺伝子発現レベルを示す。(C)は、脂肪酸取り込みのバイオマーカー(FAT/CD36、LPL)の相対遺伝子発現レベルを示す。データを、それぞれ3連で分析したN=9マウスの平均±SEMとして示す。は、V群とアスタリスクで示した群との間の統計的有意差を示す(p<0.05、一元置換ANOVA;事後:ダネット多重比較検定)。(D)は、四頭筋(N=3)から調製したタンパク質溶解物中の酸化系バイオマーカー(ミオグロビン、UCP3、CYCS、SCD1)およびローディングコントロール(チューブリン)のタンパク質発現レベルを示すウェスタンブロット画像を示す。 図4は、Vマウス、GWマウス、Trマウス、およびTr+GWマウスの腓腹筋中の筋肉トリグリセリドレベルのグラフを示す。データを、それぞれ3連で分析したN=9マウスの平均±SEMとして示す。は、V群とアスタリスクで示した群との間の統計的有意性を示す(p<0.05、一元置換ANOVA;事後:ダネット多重比較検定)。 図5A〜5Cは、運動訓練マウスにおける走行持久力に及ぼすGW1516処置の影響を示す棒グラフである。ビヒクル処置マウス(V;白抜きのバー)およびGW1516処置マウス(GW;黒塗りのバー)が運動訓練前(0週)および運動訓練後(5週間)にトレッドミル上を走行した(A)時間および(B)距離の棒グラフ。データを、N=6マウスの平均±SDとして示す。***は、V群とGW群との間の統計的有意差を示す(p<0.001;一元置換ANOVA;事後:チューキュー多重比較検定)。(C)は、Vマウス、GWマウス、Trマウス、およびTr+GWマウスにおける精巣上体白色脂肪の体重に対する比を示す棒グラフである。データを、それぞれ3連で分析したN=9マウスの平均±SDとして示す。は、V群とアスタリスクで示した群との間の統計的有意性を示す(p<0.05、一元置換ANOVA;事後:ダネット多重比較検定)。図5Dは、Vマウス、GWマウス、Trマウス、およびTr+GWマウス由来の精巣上体白色脂肪のH&E染色断面のデジタル画像を示す。N=3マウスから類似の結果を得た。は、V群とアスタリスクで示した群との間の統計的有意性を示す(p<0.05、一元置換ANOVA;事後:ダネット多重比較検定)。 図6は、四頭筋のマイクロアレイ分析で同定されたGW標的遺伝子、Tr標的遺伝子、およびTr+GW標的遺伝子を比較したベン図を示す。Tr+GWマウスにおける標的遺伝子の分類およびGW、TR、TR+GW、およびVP16−PPARδの筋肉中の48種の固有のTR+GW標的遺伝子の相対発現も示す。データは、各群におけるN=3サンプルの平均である。ボンフェローニ多重比較検定における選択基準はp<0.05および変化倍率1.5超を使用した。 図7Aは、運動によるAMPK活性化を示す一連のウェスタンブロット画像である。運動不足のマウス(Sed/C57B1)および運動訓練マウス(Tr/C57B1)(N=5〜7)の四頭筋におけるホスホ−AMPK(ホスホ−AMPK)レベルおよび総AMPKレベルを示す。図7Bは、VP16−PPARd過剰発現によるAMPK活性化を示す一連のウェスタンブロット画像である。運動不足の野生型マウスまたはトランスジェニックマウス(Sed/WTまたはSed/TG)の四頭筋におけるホスホ−AMPK(ホスホ−AMPK)レベルおよび総AMPKレベルを示す。 図8A〜8Cは、PPARδおよびAMPKによる筋肉遺伝子発現の相乗的調節を示す。(A)四頭筋のマイクロアレイ分析で同定されたGW、AI、およびAI+GW標的遺伝子を比較したベン図。データは、各群におけるN=3サンプルの平均である。ボンフェローニ多重比較検定における選択基準はp<0.05および変化倍率1.5超を使用した。(B)四頭筋中で同定されたTr+GWおよびAI+GW依存性遺伝子サインの比較。データは、各群におけるN=3サンプルの平均である。使用した選択基準は、図8Aで使用したものに類似している。(C)Tr+GW遺伝子サインおよびAI+GW遺伝子サインに共通していた52標的の分類。 図9A〜9Hは、ビヒクル(V)、GW1516(GW)、AICAR(AI)、および2つの薬物の組み合わせ(GW+AI)で6日間処置したマウスの四頭筋中の(A)UCP3転写物、(B)mCPTI転写物、(C)PDK4転写物、(D)SCD1転写物、(E)ATPクエン酸リアーゼ転写物、(F)HSL転写物、(G)mFABP転写物、および(H)LPL転写物の発現を示す。データを、3連で分析した各群におけるN=6マウスの平均±SEMとして示す。は、Vと表示の群との間の統計的有意差を示す(p<0.05、一元置換ANOVA;事後:ダネット多重比較検定)。 図10A〜10Lは、AMPK−PPARδ相互作用を示す。(A〜D)は、V、GW、AI、およびGW+AI(左から右のバー)で24時間処置した野生型およびPPARδヌル(KO)初代筋細胞における代謝遺伝子の発現を示す。(E〜F、J)では、AD293細胞を、上記のように、コントロールベクター、AMPKα1、cc2、および/またはPGC1αと共にPPARδ+RXRα+Tk−PPREでトランスフェクトした。(E)AMPKα1またはcc2による基底PPARδ転写活性の誘導。(F)PPARδ転写活性の用量依存性誘導は、コントロール(白抜きの三角)と比較してAMPKα1(黒塗りの円)またはAMPKcc2(黒塗りの四角)によって増強される。(G〜I、K)では、AD293細胞を表示のようにトランスフェクトし、プロセシングした。(G〜H)トランスフェクトしたAMPK(G)または内因性のAMPK(H)のFlag−PPARδでの免疫共沈降を示す代表的なブロット。(I)記載のようにトランスフェクトしたAD293細胞におけるPPARδの代謝p32標識。(J)AMPKcc2サブユニットおよびPGC1αによる基底(V)およびリガンド(GW)依存性のPPARδ転写活性の相乗的調節。(K)PPARδはFlag−PGC1αと免疫超沈降したが、AMPKα2サブユニットとはしなかった。(L)再プログラミング筋肉ゲノムにおける運動−PPARδ相互作用を示すモデル。 図11A〜11Iは、AICARが走行持久力を増加させることを示す。(A〜F)C57B1/6Jマウスを、ビヒクル(白抜きのバーまたは細線)またはAICAR(500mg/kg/日、4週間)(黒塗りのバーまたは太線)で処置した。(A)四頭筋中のUCP3、ホスホ−アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)、ホスホ−AMPK、および総AMPKレベルを示す代表的な免疫ブロット。(B)平均体重。(C)精巣上体脂肪量の体重に対する比率。(D)12時間にわたって測定した酸素消費速度(mg/kg/時間)。(E)AUCとして示した(D)中のデータ。(F)時間(上のパネル)および距離(下のパネル)の関数として測定した走行持久力。(G)AICAR処置(250mg/kg/日、6日間)によって誘導された代表的な酸化遺伝子。(H)ビヒクル(白抜きのバー)またはAICAR(黒塗りのバー)で72時間処置した野生型およびPPARdヌル初代筋芽細胞中での酸化系バイオマーカー(Scd1、Fasn、Ppargc1a、Pdk4)の発現。(I)再プログラミング筋肉遺伝子における運動とAMPK−PPARdとの間の相互作用を示すモデル。(B)および(C)(n=10)、(D)および(E)(n=4)、(F)(n=15〜20)、および(H)(n=9)中のデータを平均±SEMとして示し、は統計的有意性を示す(p<0.05、対応のないスチューデントt検定)。
配列情報
核酸配列およびアミノ酸配列を、本明細書中でGenBank受入番号によって言及することができる。かかるGenBank受入番号で示した配列は、これらの配列のままで参考として援用され、2007年12月29日時点で公知であったと理解される。
詳細な説明
本明細書中の他で特に記述しない限り、使用した用語の定義は、薬学分野で使用されている標準的な定義である。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈上で明確に別な意味に示されない限り、複数形が含まれる。したがって、例えば、「薬学的キャリア」という言及には、2つ以上のかかるキャリアの混合物などが含まれる。
また、「または」の使用は、別に示さない限り、「および/または」を意味する。同様に、「comprise」、「comprises」、「comprising」、「include」、「includes」、および「including」は交換可能であり、本発明を制限することを意図しない。
種々の実施形態の説明で用語「含む」を使用する場合、当業者は、いくつかの特定の例において、実施形態を用語「〜本質的になる」または「からなる」を使用して代替的に説明することができると理解するとさらに理解すべきである。
他で定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示に属する当業者が一般的に理解している意味を有する。本明細書中に記載のものに類似するか等価な任意の方法および試薬を開示の方法および組成物の実施で使用することができるにもかかわらず、例示的方法および材料をここに説明する。
本明細書中に記載の全ての刊行物は、その全体が方法の説明および開示のために本明細書中で参考として援用される。この方法は、刊行物に記載され、本明細書中の説明と併せて使用することができる。上記および本文を通して考察された刊行物を、本開示の出願日以前にその開示のみを目的として提供する。先行する開示のためにかかる開示が先行する権利を本発明者らが持たないことを承認すると解釈すべきではない。
一般健康に及ぼす運動の多数の利益を考慮すると、持久運動の遺伝的影響を模倣または増強する経口薬の同定は、とらえ所がないが長期にわたる医学的目的である。高用量のリスベラトロールなどの一定の天然抽出物によって持久力を改善することができる(Lagougeら、2006)。リスベラトロールの有酸素的影響は、骨格筋中のSIRT1−PGC1aコアクチベーター複合体の活性化に依存すると考えられている。しかし、これらの影響の媒介におけるSIRT1/PGC1aによってターゲティングされた下流転写因子は知られていない。より重要には、SIRT1/PGC1aおよびリスベラトロールの両方によって複数の標的が活性化され、したがって、持久力を改善するために合成薬によって選択的に活性化することができる特異的シグナル伝達経路が存在するかどうかは知られていない。
運動訓練は、代謝再プログラミングに寄与する骨格筋中の多数の転写調節因子およびセリン−トレオニンキナーゼを活性化する(Bassel−Duby and Olson、2006)。トランスジェニックマウス骨格筋中の構成的活性型PPARδ(VP16−PPARδ)の過剰発現により、酸化系筋線維の増加が予めプログラミングされ、非訓練成体マウスのほぼ100%で走行持久力が向上する(Wangら、2004)。最も理解されているセリン−トレオニンキナーゼのうちの1つはAMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)(細胞および生物の代謝の主な調節因子)である。
AMPキナーゼアゴニスト(AICARなど)がインスリン調節、糖尿病、および肥満について研究されている。しかし、AMPキナーゼによる筋緊張の促進または持久力もしくは運動の改善は以前に証明されていなかった。本開示は、AMPKアゴニストが筋消耗疾患および障害に有益な影響を与え、運動不足の被験体または固定された肢に有益であり、PPARdアゴニストとの組み合わせによって予想外の相乗効果が得られることを示す。
本開示は、PPARδアゴニスト(例えば、GW1516(ヒトで生物活性を示すことが示されている)など)によってマウスが非処置コントロールのみよりも時間および距離が60%〜75%を長くすることができることを証明する。しかし、これはかかる効果はPPARδアゴニストの投与を運動訓練と組み合わせた場合に限って認められる。この「超持久力表現型」は、運動活性化AMPKによって得られる転写増強に関与し、それにより新規の持久力遺伝子サインが得られる(例えば、図10Lを参照のこと)。
本開示はまた、この超持久力表現型を経口AMPKアゴニストによって運動訓練することなく得ることができ、かかるAMPKアゴニストが非運動被験体で走行持久力をほぼ45%改善するための単剤として十分であることを証明した。
AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)およびAMPKキナーゼ(AMPKK)は、タンパク質キナーゼカスケードを含む。AMPKカスケードは、燃料の産生および利用を細胞内で調節する。例えば、低細胞燃料(例えば、AMP濃度の増加)によってAMPK活性が増加する。一旦活性化されると、AMPKは、ATPを保存するか、別のATP生成方法を促進するように機能する。
5’AMP活性化タンパク質キナーゼまたはAMPKは、共に細胞エネルギーホメオスタシスで役割を果たす機能酵素を作成する3つのタンパク質(サブユニット)からなる。これは、多数の組織(肝臓、脳、および骨格筋が含まれる)中で発現される。AMPKの活性化により、肝臓の脂肪酸酸化およびケトン体生成を活性化し、コレステロール合成、脂肪生成、およびトリグリセリド合成を阻害し、脂肪細胞の脂肪分解および脂肪生成を阻害し、骨格筋の脂肪酸酸化および筋肉グルコース取り込みを刺激し、膵臓β細胞によるインスリン分泌を調整することが示されている。
AMPK活性化を、AMP濃度を増加させて誘発することができる。AMPKのγサブユニットは、高次構造の変化を受けてαサブユニットの活性部位(Thr−172)が露呈する。AMPKのγサブユニットの高次構造を、AMP濃度の増加下で変化させることができる。AMP濃度の増加により、AMPKのγサブユニット上の高次構造が変化するであろう。これは、2つのAMPがそのサブユニット上に存在するベートマンドメインに結合するからである。AMPのこの役割は、5−アミノ−4−イミダゾールカルボキシアミドリボシド(AICAR)に由来するAMPアナログである5−アミノ−4−イミダゾールカルボキシアミドリボチド(ZMP)を介したAMPK活性化を示す実験で証明されている。
筋肉が収縮するにつれて、ATPは加水分解され、ADPを形成する。次いで、ADPは、リン酸基を別のADPに供与することによって細胞ATPの補充を補助し、ATPおよびAMPが形成される。筋肉収縮時により多数のAMPが産生されるにつれて、AMP:ATP比は劇的に増加し、AMPKがアロステリックに活性化される。
種々のAMPKアゴニストが当該分野で公知である。かかるAMPKアゴニストを含む方法および組成物を本明細書中に提供する。かかるAMPKアゴニストの使用により、かかるAMPKアゴニストを投与されなかった被験体と比較して筋緊張および筋肉量が改善され、持久力も改善される。種々のAMPKアゴニストを本明細書中に記載し、これらは当該分野で公知である。1つの実施形態では、AMPKアゴニストはAICAR化合物を含む。開示の方法で有用な他の化合物には、AICARのアナログ(米国特許第5,777,100号(本明細書中で参考として援用される)に開示のものなど)およびAICARのプロドラッグまたは前駆体(米国特許第5,082,829号(本明細書中で参考として援用される)に開示のものなど)が含まれ、これらはAICARの生物学的利用能を増加させ、その全てが、当業者に周知である。AMPKの他のアクチベーターには、Iyengarらの米国特許出願公開第20060287356号(その開示が本明細書中で参考として援用される)に記載のものが含まれる。伝統的に公知のAMPK活性化化合物には、上記に加えて、レプチン、アディポネクチン、およびメルホルミン、AICAR(5−アミノイミダゾール−4−カルボキシアミド)が含まれる。他のAMPKアゴニストには、DRL−16536(Dr.Reddy’s/Perlecan Pharma)、BG800化合物(Betagenon)、フラン−2−カルボン酸誘導体(Hanall,KR;国際公開WO/2008/016278号(本明細書中で参考として援用される)も参照のこと)、A−769662(Abbott)(構造 I;Coolら、Cell Metabol.3:403−416、2006も参照のこと);国際公開番号WO/2006/033709号に記載のMetabasisによって開発中のAMPKアゴニスト;MT−39系列化合物(Mercury Therapeutics);およびTransTech Pharmaによって開発中のAMPKアゴニストが含まれるが、これらに限定されない。
AICARは、例えば、細胞に取り込まれてZMP(AMPKを活性化することが示されているAMPアナログ)に変換される。ZMPは細胞内AMP模倣物として作用し、十分に高レベルに蓄積された場合、AMPK活性を刺激することができる(Corton、J.M.ら.Eur.J.Biochem.229:558(1995))。しかし、ZMPはまた他の酵素の調節下でAMP模倣物として作用する。したがって、特異的AMPKアクチベーターではない(Musi、N.and Goodyear、L.J.Current Drug Targets−−Immune、Endocrine and Metabolic Disorders 2:119(2002))。
本開示は、被験体の「運動馴化状態」の刺激方法を提供する。本方法は、被験体のエネルギー欠損状態を刺激するのに十分な量のAMPKアゴニストを被験体に投与する工程を含む。「エネルギー欠損状態」は、AMPKのγサブユニットが高次構造の変化を受けて被験体の貯蔵脂肪の異化が増加するか、貯蔵ATPエネルギーが保存される状態または運動している個体で見出される代謝状態をいう。運動馴化状態を、運動せずに開示のAMPKアゴニストを使用して達成することができる(「無運動馴化」)。しかし、AMPKアゴニストの投与によって運動馴化状態を促進することができるにもかかわらず、AMPKアゴニストと投与する場合でさえも被験体が運動馴化を行うことが望ましいか適切であり得ると認識されるであろう。
刺激および運動馴化状態は、運動競技訓練に有益なだけでなく、傷害、疾患、または障害によって肢/筋肉を運動させることができない被験体、または被験体が運動不足であるか、固定されている場合にも有益である。運動馴化状態の刺激により、被験体は、肢または筋肉中の筋緊張および/または筋肉量を維持し、健康または回復を促進することができる。
運動は、運動する被験体に多くの影響を及ぼすことが知られている。分子レベル、生化学レベル、および/または細胞レベルでの運動効果(例えば、エネルギー基質の利用および筋肉の収縮性に関与する遺伝子および/または遺伝子ネットワークおよび対応するタンパク質の調節の改変)は、組織レベル、器官レベル、および/または全身レベルで認められる生理学的効果(例えば、心肺持久力、筋力、筋持久力、および/または柔軟性の増加、および/または身体の外観の改善)の基礎を形成する。
一般論として、運動はいくつかの身体活動の能力である。身体活動の単回エピソード(単位とも呼ばれる)は、特定の持続時間および特定の強度で行われる。1単位を超える運動が行われる場合、別の単位の運動は同一または異なる持続時間および同一または異なる強度を有することができる。
いくつかの実施形態では、単一単位の運動は、30分まで、45分まで、60分まで、90分まで、2時間まで、2.5時間まで、3時間まで、またはそれ以上持続することができる。典型的には、運動歴の無い場合には、PPARδアゴニストが運動誘導に有効に影響を及ぼす(有酸素能の増加または走行持久力の増加など)ために身体活動単位の繰り返しが必要である。しかし、AMPKアゴニストの投与により、有効な運動誘導性または運動促進効果が認められるように運動する必要性が排除される。
したがって、いくつかの開示の方法では、AMPKアゴニストを単独で摂取するか、PPARδアゴニストの前に摂取する場合には運動は必要ない。しかし、いくつかの例では、身体活動単位を1日以内に繰り返すことができる(例えば、2単位までの運動/日、3単位までの運動/日、4単位までの運動/日、5単位までの運動/日、またはそれを超える単位/日)。プロのアスリートまたは競技哺乳動物によっては、繰り返し単位を1日に合わせて8時間以上で運動することができる。他の方法実施形態では、運動の単位(または繰り返し単位)を1日1回、1週間に6回、1週間に5回、1週間に4回、または1週間に3回実施する。少なくともいくつかの開示の方法では、運動を、少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも3年間、または不確定に(被験体の寿命まで)継続することができる。
運動を、一般に、被験体にとって通常の活動(例えば、平均、中央値、標準、または正常活動)を超え、そして/または特定の運動を実施している被験体によって達成可能な最大活動未満の強度で行う。身体能力の任意の公知の指標を使用して、被験体が通常の活動量を超えて活動するかどうかを決定することができる(例えば、心拍数、反復率(例えば、毎秒回転数、分/マイル、昇降数/分、およびその他)、および/または筋出力の測定が含まれる)。いくつかの方法では、単位運動を、亜最大強度(例えば、約10%最大強度、25%最大強度、50%最大強度、または75%最大強度)で行う。他の方法では、単位運動を40%〜50%最大心拍数、50%〜60%最大心拍数、60%〜70%最大心拍数、または75%〜80%最大心拍数で行い、ヒト被験体の最大心拍数を以下のように計算する:220bps−(被験体の年齢)。
運動は、一般に、以下の3つの型に分類される:(i)柔軟運動(ストレッチなど)(少なくとも筋肉および関節の可動域を改善すると考えられる);(ii)有酸素運動;および(iii)無酸素運動(ウェートトレーニング、機能訓練、または短距離走など)(少なくとも筋肉の強度および筋肉量を増加させると考えられる)。
有酸素運動は、酸化的代謝または好気的代謝が(解糖代謝または嫌気的代謝と比較して)運動した骨格筋で実質的に優性である身体活動をいう。特定の方法の実施形態では、被験体は1つまたは複数の有酸素運動を行う。例示的な有酸素運動には、エアロビクス、徒手体操、サイクリング、ダンス、運動器具(ローリングマシン、サイクリングマシン(例えば、傾斜型または直立型)、クライミングマシン、エリプティカルトレーナー、および/またはスキーマシン)、バスケットボール、フットボール、野球、サッカー、フットバッグ、家事、ジョギング、武道、マッサージ、ピラティス、ローイング、ランニング、縄跳び、水泳、ウォーキング、ヨガ、ボクシング、体操、バドミントン、クリケット、陸上競技、ゴルフ、アイスホッケー、ラクロス、ラグビー、テニス、またはその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
開示の方法は、運動(ウォーキングまたはランニングのような有酸素運動など)の任意の公知または認められる効果の向上を意図する。特定の方法では、走行持久力(例えば、走行距離および/または走行時間)を向上させる。別の実施形態では、本方法および組成物は、筋肉の不動、筋消耗疾患または障害の被験体または運動不足の被験体の治療に有用である。1つのかかる実施形態では、筋緊張または筋肉量は、開示の組成物(例えば、AMPKアゴニスト、またはAMPKアゴニストまたはPPARアゴニストの組み合わせ)を投与していない被験体と比較して、筋肉の不動、筋消耗疾患または障害、または運動不足の被験体で改善または維持される。1つの実施形態では、開示の組成物および方法は、開示の組成物を投与していない被験体と比較して、筋消耗疾患を有する被験体の筋肉喪失または筋肉喪失率を5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれを超えて減少させることができる。
筋力低下、筋緊張、筋萎縮は、多数の疾患および障害(脱神経または遷延性無呼吸が含まれる)に起因する。規則的な運動が不足すると、筋線維の嵩および長さの両方が喪失し、罹患領域中の筋肉のサイズおよび外形が視覚化可能に喪失され、見かけ上痩せるか変形する。わずかな萎縮でさえ、通常、行動または力がいくらか喪失される。萎縮は、通常、神経筋疾患または傷害に起因する。しかし、筋緊張、筋萎縮、および筋力低下はまた、一定の代謝性障害、心血管障害、または内分泌障害および長期臥床から生じ得る。いくつかの筋萎縮はまた、老化と共に起こる。開示の組成物は、AMPKアゴニストのみまたはPPARdアゴニストとの組み合わせの投与を含むかかる筋力低下、筋緊張、および筋萎縮の治療に有用である。
筋消耗疾患には、典型的に肢(例えば、手、腕、または脚)から開始される筋力低下および筋萎縮が含まれる。最終的に、筋力低下および筋萎縮は、体幹、頸部、舌、喉頭、咽頭、および脚に拡大し、呼吸器の進行性の筋力低下によって呼吸機能不全に至る。他の所見には、筋肉弛緩、筋痙攣、活動後進性深部腱反射、軽度の脚筋痙縮、嚥下困難、発語障害、過剰な流涎、および鬱病が含まれる。
重度の熱傷由来の線維性瘢痕組織の形成、疼痛、および血清タンパク質の喪失は、筋肉の動きを制限し、萎縮症を発症し得る。筋萎縮は、拘縮、麻痺、および脈拍の欠損を伴う不可逆性虚血の後期の徴候である。椎間板ヘルニアにより、筋力低下、廃用、最終的に、萎縮を生じ得る。高コルチコイド症は、脚弱、最終的に、萎縮を生じ得る。甲状腺機能低下症は、四肢近位筋の筋力低下および筋萎縮を生じ得る。肢を固定する傷害により、筋萎縮および筋消耗(半月板断裂または骨折が含まれるが、これらに限定されない)または長期の膝または肢の不動に起因する他の軟骨傷害を生じ得る。多発性硬化症は、慢性進行性衰弱の結果として腕および脚の萎縮を生じる変性疾患であり、痙縮および拘縮も発症し得る。骨関節炎は、進行性衰弱および廃用の結果として最終的に関連する関節の近位に萎縮を生じる。パーキンソン病は筋硬直、筋力低下、および筋廃用を生じ、それにより筋萎縮を生じる。末梢神経の外傷または傷害または末梢神経に対する長期間の圧迫により、筋力低下および筋萎縮を生じる。末梢神経ニューロパシーにより、筋力低下を生じ、これが弛緩性麻痺にゆっくり進行し、最終的に萎縮し得る。筋肉の遠位端が一般的に最初に罹患する。関連する所見には、振動感覚の喪失;手足の感覚異常症、知覚過敏、または感覚脱失;軽度または鋭い灼熱痛;無汗症;赤色の光沢皮膚;および深部腱反射の減弱または消失が含まれる。脊髄神経根の損傷により、筋萎縮および筋力低下を生じ得る。関節リウマチにより、関節痛および関節硬直によって可動域が減少し、筋肉の使用が阻止されるので、この障害の後期に筋萎縮を生じる。脊髄損傷または脊髄外傷により、重篤な筋力低下および筋弛緩を生じ、次いで、痙攣、麻痺を生じ、最終的に萎縮を生じ得る。卒中により、対側性または両側性の脱力を生じ、最終的に、腕、脚、顔、および舌の萎縮を生じ得る。関連する徴候および症状は、血管損傷の部位および範囲に依存し、構語障害、失語症、運動失調症、失行症、失認、および同側性感覚異常症または感覚消失が含まれ得る。長期ステロイド療法は、筋肉代謝を干渉し、最も顕著には肢が萎縮し得る。上記のように、床上安静、ギブス、副子、または牽引由来の長期固定により、筋力低下および筋萎縮を生じ得る。任意のこれらの疾患または障害を、開示の組成物または組成物の組み合わせで治療することができる。他の筋消耗疾患または障害が当該分野で認識されている。
本開示は、筋肉量または筋緊張の促進または維持によってかかる疾患および障害の治療に有用な組成物および方法を提供する。例えば、AMPKアゴニスト(AICARのみまたはPPARdアゴニストとの組み合わせなど)の投与により、筋緊張または筋肉量を促進することができる。健康な被験体では、これは運動効果の向上に寄与し得る。筋肉量を喪失するか筋消耗疾患または障害を罹患する可能性のある被験体では、開示の組成物および方法により、かかる筋萎縮の速度を遅延または消失することができる。
運動効果(走行持久力など)の向上は、かかる効果が運動のみによって生じるであろう結果よりも被験体で改善されることを意味する。いくつかの方法実施形態では、運動効果の向上を、被験体におけるAMPKアゴニストまたはPPARδアゴニストの投与の中断および目的の運動効果(例えば、走行持久力などの有酸素性持久力)の減少の観察(例えば、定性的または定量的)によって決定する。いくつかの例では、AMPK−アゴニスト誘導性効果またはそのPPARδ向上部分などの目的の運動効果は、AMPKアゴニストまたはPPARδアゴニストの投与の中断の際に喪失し、運動のみでの効果の規模と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、または少なくとも約50%減少するであろう。
開示の方法を、身体活動(例えば、有酸素運動)を行うことができる任意の被験体で行うことができる。いくつかの方法実施形態では、被験体は、生きている多細胞脊椎動物(例えば、ヒトおよび/または非ヒト動物)である。他の例示的方法では、被験体は哺乳動物(ヒトおよび/または非ヒト動物(獣医学的哺乳動物または実験哺乳動物など)が含まれる)、またはより特定の例では、競技哺乳動物(ウマ、イヌ、またはヒトなど)である。さらに他の方法では、被験体は、成体、運動訓練した被験体、または健康な被験体である。いくつかの代表的な成人のヒト被験体は、16歳以上、18歳以上、または21歳以上である。いくつかの実施形態では、被験体はいかななる運動も日常的に行っていない。いくつかの実施形態では、いくつかの代表的な運動訓練被験体は、身体活動(上記に詳述)を少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも3ヶ月間、または少なくとも6ヶ月間行った。いくつかの例では、被験体は健康であり、例えば、疾患または障害に属する分野の医師への妥当な調査後に公知の疾患または障害が診断されていないか明らかと考えられる被験体である。
以下により完全に記載されるように、AMPKアゴニストを、経口、非経口、筋肉内、血管内、または任意の適切な経路で投与することができる。被験体は、任意の哺乳動物被験体(例えば、ウマ、イヌ、またはヒト)であり得る。AMPKアゴニストは、筋線維の発達および成長を促進する薬剤と組み合わせて特に有用である。かかる薬剤の例には、PPARファミリータンパク質のアゴニストが含まれる。
PPARは、リガンド誘導性転写因子の核内受容体スーパーファミリーのメンバーである。これらは、レチノイドX受容体(RXR)とヘテロ二量体を形成し、1bpで分離された六量体DNA配列の直接反復からなるコンセンサスDNA部位に結合する。リガンドの非存在下で、PPAR−RXRヘテロ二量体は、コリプレッサー、関連するヒストンデアセチラーゼ、およびクロマチン修飾酵素を補充する(いわゆる積極的抑制による転写サイレンシング)(Ordentlichら、Curr.Top.Microbiol.Immunol、254:101−116、2001;Jepsen and Rosenfeld、J.Cell Sci、115:689−698、2002;Privalsky、Ann.Rev.Physiol、65:315−360、2004)。リガンド結合によってPPAR−RXR複合体の高次構造の変化が誘導され、コアクチベーターの代わりにリプレッサーが放出される。リガンド活性化複合体は基本的な転写装置を補充し、それにより、遺伝子発現が増強される。PPARは、食事性脂肪または細胞内機構から生成された低親和性リガンドに結合する。その脂質センサーとしての役割と一致して、リガンド活性化PPARはフィードフォワード代謝カスケードをオンにして、脂質の代謝、貯蔵、および輸送に関与する遺伝子の転写を介して脂質ホメオスタシスを調節する。
以下の3つのPPARアイソタイプが哺乳動物に存在する:α(NR1C1としても公知)、γ(NR1C3としても公知)、およびδ(βまたはNR1C2としても公知)。PPARδは、ほとんどの細胞型で相対存在量にて発現し(Smith、Biochem.Soc.Trans.、30(6):1086−1090、2002)、「一般的なハウスキーピングとしての役割」を果たし得ることが早期に推測された(Kliewerら、Proc .Natl.Acad.Sci U.S.A、91:7355−7359、1994)。最近になって、PPARδトランスジェニックマウスモデルおよび低親和性PPARδアゴニストの開発に伴う発見により、多様な組織(脂肪、骨格筋、および心臓が含まれる)で有効な重要な転写調節因子としてのPPARδが明らかとなっている(概説については、例えば、Barishら、J.Clin.Invest.、116(3):590−597、2006を参照のこと)。
げっ歯類骨格筋における構成的活性型PPARδ受容体(VP16−PPARδ)導入遺伝子発現のターゲティングにより、骨格筋の酸化表現型への再造形が促進され、非運動成体マウスの走行持久力が増加した(PLoC Biol、2:e294、2004)。筋線維の認められたPPARδ媒介性再プログラミングは、脂肪酸酸化、ミトコンドリア呼吸、酸化的代謝、および遅筋収縮装置に関連する遺伝子の発現の増加に関与していた(Wangら、PLoC.Biol.、2:e294、2004)。持久力訓練を行ったアスリートに類似の表現型を有していたが、運動訓練をしていなかったこれらのVPl6−PPARδトランスジェニックマウスにより、成体で運動不足の被験体における内因性PPARδの薬理学的活性化によって実際に運動せずに運動効果を得ることができることが示唆される。一般健康に及ぼす運動の多数の利益を考慮すると、運動効果を模倣する経口薬の同定は、とらえ所がないが長期にわたる医学的目的である。
運動効果を得、ミトコンドリア発現または活性を向上するのに十分なAMPKアゴニストを投与する工程を含む、被験体における運動効果を向上させるか、筋緊張または筋肉量を促進/維持する方法を本明細書中に開示する。1つの実施形態では、被験体は運動している被験体である。別の実施形態では、被験体は運動不足の被験体である。別の実施形態では、被験体は、肢が固定されているか固定されていた。本開示は、さらに、有効量のPPARδアゴニスト(例えば、GW1516)を被験体に投与する工程を含む。運動効果の向上は、例えば、走行持久力の改善(走行距離の改善、走行時間の改善、またはその組み合わせ、被験体の少なくとも1つの骨格筋中の脂肪酸酸化の増加、および/または体脂肪(例えば、白色脂肪組織)の減少など)であり得る。いくつかの方法実施形態では、被験体は、哺乳動物(ウマ、イヌ、またはヒトのような競技哺乳動物など)、および/または成体、および/または運動訓練した被験体である。他の例示的方法では、PPARδアゴニストを、AMPKアゴニストの投与日または身体運動が行われる日に投与する。別の実施形態では、AMPKアゴニストとPPARアゴニストとの組み合わせを、身体運動を行う日に投与する。いくつかの方法では、AMPKアゴニストを経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、および/または皮下注射によって投与する。他の方法実施形態では、AMPKアゴニストの有効量は、単回用量または分割用量で約1mg/日〜約20mg/日である。いくつかの方法では、PPARδアゴニストを、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、および/または皮下注射によって投与する。他の方法実施形態では、PPARδアゴニストの有効量は、単回用量または分割用量で約1mg/日〜約20mg/日である。
開示の方法は、任意のPPARδアゴニストの使用を構想する。好ましくは、かかるアゴニストは、投与される被験体で無毒であろう。例示的なPPARδアゴニストには、GW1516、L−165041(例えば、Leibowitzら、FEBS Lett.、473(3):333−336、2000に記載)、PCT公開番号WO/2006/018174号、WO/2005/113506号、WO/2005/105754号、WO/2006/041197号、WO/2006/032023号、WO/01/00603号、WO/02/092590号、WO/97/28115号、WO/97/28149号、WO/97/27857号、WO/97/28137号、WO/97/27847、および/またはWO/98/27974号、および/または公開された米国国内段階出願または上記のいずれかに対応する交付済み米国特許(それぞれ、本明細書中で参考として明確に援用される)に記載の任意の1つまたは複数の化合物が含まれる。さらに、他のPPARδアゴニストを、例えば、PCT公開番号WO/1998/049555号または任意の対応する公開された米国国内段階出願または交付済み米国特許(それぞれ、本明細書中で参考として明確に援用される)に記載の方法を使用して同定することができる。
特定の例では、PPARδアゴニストはGW1516(当該分野でGW501516とも呼ばれる)である。GW1516は、(2−メチル−4(((4−メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−1,3−チアゾール−5−イル)メチル)スルファニル)フェノキシ)酢酸であり、これはヒトで生物活性があることが示されている(Sprecherら、Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.27(2):359−65、2007)。特定の例では、GW1516を、例えば、1mg〜20mg/日(2.5mg/日または10mg/日など)で経口投与する。
少なくともAMPKアゴニストの身体活動との組み合わせおよび/または1つまたは複数のPPARδアゴニストの投与によって1つまたは複数の運動効果を向上または刺激する方法を本明細書中に開示する。
開示の方法は、処方物を投与した被験体で運動効果が増強されるという所望の結果が得られるAMPKアゴニストのみまたはPPARδアゴニストとの組み合わせの任意の投与方法、投薬量、および/または処方物(薬学分野の当業者に周知の投与方法、投薬量、および処方物が含まれるが、これらに限定されない)の使用を構想する。
本開示のAMPKアゴニストを、薬物の形態でヒトまたは動物に投与することができる。あるいは、AMPKアゴニストを、ヒトまたは動物によって消費されるように、種々の食品および飲料またはペットフードに組み込むことができる。AMPKアゴニストを、一般的な食品または飲料に適用することができるか、機能性食品または機能性飲料、罹患被験体のための食品、または特定保健用食品、生理学的機能を有することを示す標識を有する食品(または飲料)(例えば、エネルギーサプリメント、または運動増強剤など)に適用することができる。
AMPKアゴニストのみまたはPPARδアゴニストとの組み合わせを、製剤(例えば、経口固体製剤(錠剤または顆粒など)または経口液体製剤(ローションまたはシロップなど))に処方することができる。
開示の方法におけるAMPKアゴニスト(PPARδアゴニストを含む処方物)の投与様式には、髄腔内、皮内、筋肉内、腹腔内(ip)、静脈内(iv)、皮下、鼻腔内、硬膜外、硬膜内、頭蓋内、脳室内、および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。特定の例では、AMPKアゴニストまたはAMPKアゴニストおよびPPARδアゴニストを経口投与する。AMPKアゴニスト(またはPPARδアゴニストを含む処方物)の他の都合の良い投与経路には、例えば、注入またはボーラス注射、局所、上皮または粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜ならびに直腸および腸の粘膜など)、眼、鼻、および経皮を介した吸収が含まれる。投与は、全身または局所であり得る。例えば、エアゾール化剤を含む処方物を使用した肺投与(例えば、吸入器または噴霧器による)も使用することができる。
特定の方法実施形態では、AMPKアゴニストまたはAMPKアゴニストおよびPPARδアゴニストを局所投与することが望ましいかもしれない。例えば、局所または領域への注入または潅流、局所適用(例えば、創傷包帯)、注射、カテーテル、座剤、または挿入物(例えば、多孔質、非多孔質、またはゼラチン状の材料(シラスティック膜などの膜または繊維が含まれる)から形成した挿入物)などによってこれを行うことができる。
他の実施形態では、ポンプ(移植ポンプなど)を使用して、AMPKアゴニストまたはAMPKアゴニストとPPARδアゴニスト(またはPPARδアゴニストを含む処方物)との組み合わせを送達させることができる(例えば、Langer Science 249、1527、1990;Sefton Crit.Rev.Biomed.Eng.14、201、1987;Buchwaldら、Surgery 88、507、1980;Saudekら、N.Engl.J.Med.321、574、1989を参照のこと)。別の実施形態では、AMPKアゴニスト(またはPPARδアゴニストを含む処方物)を、小胞(特に、リポソーム)中で送達させる(例えば、Langer、Science 249、1527、1990;Treatら、in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer、Lopez−Berestein and Fidler(eds.)、Liss、N.Y.、pp.353−365、1989を参照のこと)。
さらに別の方法実施形態では、AMPKアゴニストのみまたはPPARδアゴニストとの組み合わせを含む放出制御処方物を送達させることができる。放出制御系(Langer(Science 249、1527 1990)による概説で考察された放出制御系など)が公知である。同様に、放出制御処方物で有用な高分子材料が公知である(例えば、Rangerら、Macromol.ScL Rev.Macromol.Chem.23、61、1983;Levyら、Science 228、190、1985;Duringら、Ann.Neurol.25,351、1989;Howardら、J.Neurosurg.71、105、1989を参照のこと)。例えば、アゴニストを、化合物の放出制御に有用な生分解性ポリマークラス(ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸とのコポリマー、ポリεカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルソエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリラート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性のブロックコポリマーが含まれる)にカップリングすることができる。
開示の方法は、アゴニストを送達させて所望の結果を達成するAMPKアゴニストのみまたはPPARδアゴニストとの組み合わせ(またはこれを含む処方物)の任意の投薬形態の使用を意図する。投薬形態は一般的に知られており、種々のテキスト(例えば、Allenら、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery System、Eighth Edition、Philadelphia、PA:Lippincott Williams & Wilkins、2005、738 pagesが含まれる)で教示されている。開示の方法で用いる投薬形態には、固体投薬形態および固体放出調節薬物送達系(例えば、粉末および顆粒、カプセル、および/または錠剤);半固体投薬形態および経皮系(例えば、軟膏、クリーム、および/またはゲル);経皮薬物送達系;薬学的挿入物(例えば、座剤および/または挿入物);液体投薬形態(例えば、溶液および分散系);および/または滅菌投薬形態および送達系(例えば、非経口および/または生物学)が含まれるが、これらに限定されない。特定の例示的な投薬形態には、エアゾール(定量、粉末、溶液、および/または噴射剤なしが含まれる);ビーズ;カプセル(従来の送達制御、放出制御、腸溶コーティング、および/または徐放性のカプセルが含まれる);カプレット;濃縮物;クリーム;結晶;ディスク(徐放性のディスクが含まれる);点滴剤;エリキシル;乳濁液;フォーム;ゲル(ゼリーおよび/または徐放性のゲルが含まれる);球剤;顆粒;ガム;植込錠;吸入;注射;挿入物(延長放出挿入物が含まれる);リポソーム;液体(放出制御液体が含まれる);ローション;ロゼンジ;定量(例えば、ポンプ);ミスト;含嗽剤;噴霧液;視覚系;オイル;軟膏;小卵;粉末(小包、起泡性、懸濁液用粉末、懸濁液を徐放するための粉末、および/または溶液用粉末が含まれる);ペレット;ペースト;溶液(長期作用性および/または再構成性の溶液が含まれる);ストリップ;座剤(徐放性座剤が含まれる);懸濁液(レンテ、ウルトレレンテ、再構成性の懸濁液が含まれる);シロップ(徐放性シロップが含まれる);錠剤(咀嚼性、舌下、徐放、放出制御、遅効性、遅延放出、腸溶コーティング、起泡性、フィルムコーティング、即溶性、遅延放出性の錠剤が含まれる);経皮系;チンキ;および/またはオブラートが含まれる。典型的には、投薬形態は、有効量(治療有効量など)の少なくとも1つの医薬品有効成分(AMPKアゴニストまたはPPARδアゴニストなど)の薬学的に許容可能な賦形剤および/または他の成分(1つまたは複数の他の有効成分など)との処方物である。薬剤処方の目的は、有効成分(AMPKアゴニストのみまたはPPARδアゴニストとの組み合わせなど)を被験体に適切に投与することである。処方物を投与様式に適合させるべきである。用語「薬学的に許容可能な」は、連邦政府または州政府の規制当局によって承認されているか、動物、より詳細にはヒトで用いる米国薬局方または他の一般的に認識されている薬局方に列挙されていることを意味する。例示的処方物で用いる賦形剤には、例えば、1つまたは複数の以下が含まれる:結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング、甘味料、フレーバー、着色料、防腐剤、希釈剤、アジュバント、および/またはビヒクル。いくつかの例では、賦形剤は、集合的に、特定の投薬形態の総重量(および/または体積)の約5%〜95%を構成し得る。
薬学的賦形剤は、例えば、滅菌液(水および/または油(石油、動物油、植物湯、または合成起源の油(ラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、およびゴマ油など)などが含まれる)など)であり得る。処方物を静脈内投与する場合、水は例示的なキャリアである。生理食塩水、血漿媒質、デキストロース水溶液、およびグリセロール溶液を、特に注射液のための液体キャリアとして使用することもできる。経口処方物には、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、および炭酸マグネシウムなどが含まれ得るが、これらに限定されない。非経口薬学的賦形剤についてのより完全な説明を、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、19th Edition、Philadelphia、PA:Lippincott Williams & Wilkins、1995、Chapter 95に見出すことができる。賦形剤には、例えば、浸透圧を調整するための薬学的に許容可能な塩、液体キャリア(シクロデキストリンなど)、タンパク質(血清アルブミンなど)、親水性薬剤(メチルセルロースなど)、界面活性剤、緩衝液、および防腐剤なども含まれ得る。薬学的賦形剤の他の例には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、イネ、小麦、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリム、グリセロールモノステアラート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールなどが含まれる。必要に応じて、処方物は、少量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤を含むこともできる。
PPARδアゴニストを使用した投薬計画を、種々の要因(被験体の型、種、年齢、体重、性別、および健康状態;投与経路;および/または使用される特定のPPARδアゴニスト処方物が含まれる)にしたがって選択する。通常の技術を有する医師または獣医師は、被験体の運動効果の向上に有用なPPARδアゴニスト(またはその処方物)の有効量を容易に決定することができる。
経口投与に関するいくつかの実施形態では、AMPKアゴニストのみまたはPPARδアゴニストとの組み合わせの経口投薬量は、一般に、約0.001mg/kg体重/日(mg/kg/日)〜約100mg/kg/日(約0.01〜10mg/kg/日など)の範囲であろう(他で特定しない限り、有効成分の量は、遊離酸または遊離塩基であり得る中性分子に基づく)。例えば、80kgの被験体には、約0.08mg/日と8g/日との間(約0.8mg/日と800mg/日との間など)を投与するであろう。したがって、1日1回の投与のために適切に調製された医薬は、0.08mgと8gとの間(0.8mgと800mgとの間など)で含まれるであろう。いくつかの例では、AMPKアゴニストのみまたはPPARδアゴニストとの組み合わせを含む処方物を、1日に2回、3回、または4回の分割用量で投与することができる。1日2回の投与のために、上記の適切に調節された医薬は、0.04mgと4gとの間(0.4mgと400mgとの間など)で含まれるであろう。上記範囲外の投薬量がいくつの症例で必要であり得る。0.08mg〜8g/日の範囲で投与することができる1日投薬量の例には、0.1mg、0.5mg、1mg、2.5mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg、1g、2g、4g、および8gが含まれる。1日に1回を超えて投与する場合、これらの量をより少ない用量に分割することができる(例えば、薬物を1日2回投与する場合、各投与で半分の量)。
注射(例えば、静脈内注射または皮下注射)による投与を含むいくつかの方法実施形態のために、ほぼ上記の量で有効成分が送達される注射量を被験体に注射するであろう。消化器系を迂回する注射薬物形態に起因する送達有効性の相違を占めるために量を調整することができる。かかる量を、多数の適切な方法(例えば、大量の低濃度の有効成分の長期間で1回または1日に数回の投与、低体積で高濃度の有効成分の短期間の投与(例えば、1日1回))で投与することができる。典型的には、約0.01〜1.0mg/ml(例えば、0.1mg/ml、0.3mg/ml、または0.6mg/mlなど)の濃度の有効成分を含む従来の静脈内処方物を調製し、上記の1日あたりの量に等価の1日あたりの量で投与することができる。例えば、80kgの被験体に、有効成分濃度が0.5mg/mlの静脈内処方物8mlを1日2回投与し、それにより、1日あたり8mgの有効成分が投与される。
他の方法実施形態では、AMPKアゴニスト(またはその処方物)を、漸増用量のレジメンまたは負荷用量のレジメン(例えば、負荷用量は維持量の約2〜5倍である)において治療期間を通してほぼ同一用量で投与することができる。いくつかの実施形態では、用量は、組成物を投与される被験体の状態、組成物に対する見かけ上の応答、および/または当業者によって判断される他の要因にもとづいて一連のAMPKアゴニスト処方物の使用中に変化する。いくつかの実施形態では、例えば、運動効果(有酸素性持久力(例えば、走行持久力)など)を持続的に向上させるためのAMPKアゴニストまたは併用療法(またはその処方物)の長期投与を意図する。
運動訓練した被験体から採取した生物サンプル(例えば、骨格筋生検)中のZMPまたは他の天然に存在しないAMPアナログの存在および/または表2もしくは表4に列挙した分子またはそのサブセットの発現(表2または表4に列挙した少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも40の分子の発現など)を決定する工程を含む、運動訓練した被験体における運動能力向上物質の使用を同定する方法も本明細書中に開示する。
運動訓練した被験体における能力向上物質の使用を同定するいくつかの方法では、ZMPまたはAMPアナログの存在を、単独または組み合わせで、(i)発現が、1つまたは複数の(少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも35、または全てなど)脂肪分化関連タンパク質;ステアロイル−補酵素A不飽和化酵素2;アセチル−補酵素Aアセチルトランスフェラーゼ2;ATPクエン酸リアーゼ;アディポネクチン(C1Qおよびコラーゲンドメイン含有);ジアシルグリセロールO−アシルトランスフェラーゼ2;リパーゼ(ホルモン感受性);モノグリセリドリパーゼ;レジスチン;CD36抗原;脂肪酸結合タンパク質4(脂肪細胞);リポタンパク質リパーゼ;ミクロソームグルタチオンS−トランスフェラーゼ1;GPIアンカー膜タンパク質1;二重特異性ホスファターゼ7;ホメオドメイン相互作用タンパク質キナーゼ3;インスリン様成長因子結合タンパク質5;タンパク質ホスファターゼ2(以前は2A)、調節サブユニットA(PR65)(βイソ型);タンパク質チロシンホスファターゼ様(触媒アルギニンの代わりにプロリン);メンバーb;CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)(α);核内受容体サブファミリー1、グループD、メンバー2(Reverb−b);トランスフェリン;アルチェイン1;溶質輸送体ファミリー1(中性アミノ酸輸送体)(メンバー5);RIKEN cDNA 1810073N04遺伝子;ハプトグロビン;レチノール結合タンパク質4(血漿);ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1(細胞質基質);細胞死誘導性DFFA様エフェクターc;インターフェロン、α誘導タンパク質27;炭酸脱水酵素3;システインジオキシゲナーゼ1(細胞質基質);DNAセグメントChr4、Wayne State University 53(発現済);細胞質ダイニン1中間鎖2;クッペル様因子3(塩基性);甲状腺ホルモン応答性SPOT14ホモログ(クマネズミ属);シトクロムP450、ファミリー2、サブファミリーe、ポリペプチド1;補体因子D(アディプシン);および/またはトランスケトラーゼ中で上方制御されかどうか;および/または(ii)発現が、1つまたは複数のγ−グルタミルカルボキシラーゼ;3−オキソ酸CoAトランスフェラーゼ1;溶質輸送体ファミリー38(メンバー4);アネキシンA7;CD55抗原;RIKEN cDNA1190002H23遺伝子;t(12;16)悪性脂肪肉腫(ヒト)由来融合物;リソソーム膜糖タンパク質2;および/またはPuncE11の隣接物(これらの分子の1、2、3、4、5、6、7、8、または9つなど)中で下方制御されるかどうかを測定するであろう。
運動訓練した被験体における運動能力向上物質使用の例示的な同定方法は、タンパク質発現を決定する工程および/またはタンパク質をコードする遺伝子の発現を決定する工程を含む。かかる方法は、当該分野で日常的である。いくつかの例では、タンパク質または核酸の発現レベルを定量する。被験体において運動能力を向上する可能性を有する薬剤の同定方法も本明細書中に開示する。かかる方法は、(i)PPARδ受容体またはそのAMPK結合フラグメントを含む第1の成分を準備する工程;(ii)AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)、AMPKα1、AMPKα2、またはそのいずれかのPPARδ結合フラグメントを含む第2の成分を準備する工程;(iii)少なくとも1つの試験薬剤の非存在下で第1の成分および第2の成分が相互に特異的に結合することが可能な条件下で第1の成分および第2の成分を少なくとも1つの試験薬剤と接触させる工程;および(iv)少なくとも1つの試験薬剤が第1の成分および第2の成分の相互の特異的結合に影響を及ぼすかどうかを決定する工程を含むことができる。第1の成分および第2の成分の相互の特異的結合に及ぼす影響により、被験体において運動能力を向上させる可能性を有する薬剤として少なくとも1つの薬剤が同定される。
特に児童およびプロのアスリートによる運動能力向上物質(PES)の使用が問題になっている。これは、健康に悪影響を与える可能性があり、かかる実施による個体の道徳的発達および全ての公正な運動競技に対する影響に議論の余地があるからである(Committee on Sports Medicine and Fitness、Reginald L.Washington、MD、Chairperson、Pediatrics、115(4):1103−1106、2005)。本明細書中に提供した発見のうちの1つは、一定の遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)が運動と医薬品(PPARδアゴニスト)との組み合わせによって固有に調節され、それにより、身体能力が向上するということである(表2を参照のこと)。いくつかの場合、特定の遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)は、併用治療によって上方制御または下方制御されたが、いずれかの介入のみでは影響をうけなかった。他の場合、特定の遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)は、併用治療に影響をうけなかったが、単独で実施した場合の介入の一方または両方によって上方制御または下方制御された。これらの遺伝子(および/またはコードされるタンパク質)の固有の調節により、これらがPESを摂取(または投与)される運動している被験体の同定のための有用なマーカー(単独または任意の組み合わせのいずれか)になる。
PESは、特に運動能力の改善(例えば、強度、体力、速度、または持久力の増加(仕事量増加)によるか体重または体組成の変化による)のために非薬理学的用量で摂取される任意の物質である。例示的なPESには、以下が含まれる:(i)推奨される治療用量を超えた用量で摂取されるか、治療指標が存在しない場合に摂取される局方薬(処方箋薬または非処方箋薬)(例えば、刺激効果を得るための鬱血除去薬の使用、運動誘導性気管支痙攣が存在しない場合の気管支拡張薬の使用、運動競技のための基準塩酸メチルフェニデート用量の増加);(ii)使用者が体重別階級のあるスポーツに属するか、痩身によって報酬を受ける場合に体重管理のために使用される薬剤(刺激薬、痩せ薬、利尿薬、および緩下薬が含まれる);(iii)体重増加のために使用される薬剤(筋肉量増加を促進すると宣伝される市販薬が含まれる);(iv)酸素運搬能の向上のために使用される生理学的薬剤または他のストラテジー(エリスロポエチンおよび赤血球輸血(血液ドーピング)が含まれる);(v)報告された病状または欠損症の治療以外の理由のために使用される任意の物質;(vi)別の運動能力向上物質の副作用または検出性をマスキングすることが公知の任意の物質、および/または(vii)生理学的用量を超える用量または病状、訓練、および/またはスポーツへの参加によって生じる欠陥を回復させるために必要なレベルよりも高いレベルで摂取される栄養補給剤。1つの例では、PESは、AMPKアゴニスト(例えば、MPアナログを提供するもの)またはGW1516と同様である。
例えば、血清などの体液サンプル中のAICARなどのAMPKアゴニストレベルを定量するために、高感度のLC−MS/MSアッセイを使用することができる。本アッセイは、内部標準としてAMPKアクチベーターと構造が関連するアナログを使用する。例えば、アデノシンアナログであるツベルシジン(4−アミノ−7−β−D−リボフラノシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(pyrimindine);7−β−D−リボウラノシル(riburuanosyl)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−アミン;7−デアザアデノシン)は、AICARと構造的に関連し、AICARをアッセイする場合の内部標準として使用することができる。既知濃度の内部標準を含むサンプルを、LC−MS/MSによって直接分析することができる。目的の物質および内部標準を、例えば、溶媒または酸性化溶媒の勾配を使用した疎水性カラムを使用した(suing)LC−MS/MS(タンデム質量分析)システムによって分離し、選択的反応モニタリングを使用して陽イオンとして検出することができる。当該分野で公知の他の分析器および検出方法を使用することができる。アゴニスト添加血清を使用して構築した1、2、3、または4桁にわたる検量線を、AICARレベルの定量を容易にするために構築することができる。
本明細書中で同定され、且つ開示の方法で有用な物質誘導能力のバイオマーカーには、1つまたは複数(またはその任意の組み合わせ)のAMPアナログまたは表2およびいくつかの例では表4に列挙された遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)が含まれる。特定の方法実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、または少なくとも40個の表2(または表4)に列挙の遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)を、開示の方法で検出する。1つの例では、表2に列挙の各クラス(例えば、サイトカイン、脂肪代謝)由来の少なくとも1つの遺伝子(および/またはこの遺伝子によってコードされるタンパク質)を分析する。
1つの実施形態では、発現の上方制御を、1つまたは複数の以下の遺伝子(またはこの遺伝子によってコードされるタンパク質)について検出する:脂肪分化関連タンパク質;ステアロイル−補酵素A不飽和化酵素2;アセチル−補酵素Aアセチルトランスフェラーゼ2;ATPクエン酸リアーゼ;アディポネクチン(C1Qおよびコラーゲンドメイン含有);ジアシルグリセロールO−アシルトランスフェラーゼ2;リパーゼ(ホルモン感受性);モノグリセリドリパーゼ;レジスチン;CD36抗原;脂肪酸結合タンパク質4、脂肪細胞;リポタンパク質リパーゼ;ミクロソームグルタチオンS−トランスフェラーゼ1;GPIアンカー膜タンパク質1;二重特異性ホスファターゼ7;ホメオドメイン相互作用タンパク質キナーゼ3;インスリン様成長因子結合タンパク質5;タンパク質ホスファターゼ2(以前は2A)、調節サブユニットA(PR65)(βイソ型);タンパク質チロシンホスファターゼ様(触媒アルギニンの代わりにプロリン);メンバーb;CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)(α);核内受容体サブファミリー1、グループD、メンバー2(Reverb−b);トランスフェリン(transferring);アルチェイン1;溶質輸送体ファミリー1(中性アミノ酸輸送体)(メンバー5);RIKEN cDNA 1810073N04遺伝子;ハプトグロビン;レチノール結合タンパク質4(血漿);ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1(細胞質基質);細胞死誘導DFFA様エフェクターc;インターフェロン、α誘導タンパク質27;炭酸脱水酵素3;システインジオキシゲナーゼ1(細胞質基質);DNAセグメントChr4、Wayne State University 53(発現済);細胞質ダイニン1中間鎖2;クッペル様因子3(塩基性);甲状腺ホルモン応答性SP0T14ホモログ(クマネズミ属);シトクロムP450、ファミリー2、サブファミリーe、ポリペプチド1;補体因子D(アディプシン);および/またはトランスケトラーゼ。特定の方法実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、または少なくとも38個の上記遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)の上方制御を開示の方法で検出する。他の方法実施形態では、1つまたは複数の以下の遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)における発現の下方制御を検出する:γ−グルタミルカルボキシラーゼ;3−オキソ酸CoAトランスフェラーゼ1;溶質輸送体ファミリー38(メンバー4);アネキシンA7;CD55抗原;RIKEN cDNA1190002H23遺伝子;t(12;16)悪性脂肪肉腫(ヒト)由来融合物;リソソーム膜糖タンパク質2;および/またはPuncE11の隣接物。特定の方法実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、または少なくとも7個の上記遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)の下方制御を、開示の方法で検出する。
さらに他の方法実施形態では、被験体(運動した被験体または運動訓練した被験体など)由来のサンプル中の上記の上方制御された遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)と下方制御された遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)との組み合わせを検出する。
さらに他の方法実施形態は、サンプル中のAMPアナログ(例えば、ZMP)と1つまたは複数の上記上方制御された遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)および/または上記下方制御された遺伝子(および/またはこの遺伝子よってコードされるタンパク質)、および/またはPPARδ投与と組み合わせた運動による影響を受けない上記運動制御された遺伝子との組み合わせの検出を含む。
開示の方法を、1つまたは複数のかかるPESを摂取または投与することができる任意の被験体におけるPES使用の検出のために使用することができる。いくつかの方法実施形態では、被験体は、生きている多細胞脊椎動物生物(例えば、ヒトおよび/または非ヒト動物)である。他の例示的方法では、被験体は、哺乳動物(ヒトおよび/または非ヒト哺乳動物が含まれる)であるか、さらに特定の例では、競技哺乳動物(ウマ、イヌ、またはヒトなど)である。さらに他の方法では、被験体は運動訓練した被験体である。いくつかの代表的な運動訓練被験体は、身体活動(上記に詳述)を少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも3ヶ月間、または少なくとも6ヶ月間行った。他の運動訓練した被験体は、学生アスリートおよび/またはプロのアスリート(いくつかの例では、非ヒトのプロアスリート(競争馬および/またはドッグレースのイヌなど)が含まれる)であり得る。
AMPアナログおよび/またはPPARδアゴニスト取り込みと組み合わせた運動によって固有に調節される1つまたは複数の遺伝子および/またはタンパク質を検出することができる被験体の由来の任意のサンプル(例えば、生物サンプル)(本明細書全体に詳述)は、開示の方法での使用が意図される。開示の方法で用いる例示的サンプルには、血液、唾液、尿、筋肉生検(例えば、骨格筋生検)、口腔粘膜検体、糞サンプル、汗、および/または血清が含まれる。
サンプル(例えば、生物サンプル)中の遺伝子および/またはタンパク質の発現を検出する方法は周知である(例えば、米国特許第6,911,307号;同第6,893,824号;同第5,972,692号;同第5,972,602号;同第5,776,672号;同第7,031,847号;同第6,816,790号;同第6,811,977号;同第6,806,049号;同第6,203,988号;および/または同第6,090,556号を参照のこと)。特定の実施形態では、本明細書中で同定された1つまたは複数の遺伝子の発現を、任意の核酸増幅方法(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはその任意の適応法、リガーゼ連鎖反応、転写ベースの増幅システム、サイクリングプローブ反応、Qβレプリカーゼ増幅、鎖置換増幅、および/またはローリングサークル増幅など)、固体表面ハイブリッド形成アッセイ(ノーザンブロット、ドットブロット、遺伝子チップ、および/または可逆的標的捕捉など)、溶液ハイブリッド形成アッセイ(MAPテクノロジー(個別のスペクトルアドレスを割り当てるために、異なる比率の2つのスペクトルの異なるフルオロフォアでそれぞれ内部染色された、100セットの5.5ミクロンプローブ抱合ビーズの懸濁液アレイを使用する)など)、および/またはin situハイブリッド形成によって検出することができる。上記の種々の核酸検出方法は、Wolcott(Clin.Microbiol.Rev.、5(4):370−386、1992)による概説に詳述されている。いくつかのかかる核酸検出方法を実施するための他の詳述され、且つ伝統のあるプロトコールは、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2nd edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、3rd edition、Cold Spring Harbor Press、2001;Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates、1992(and Supplements to 2000);および/またはAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、4th edition、Wiley & Sons、1999で見出される。
他の実施形態では、本明細書中で同定された対応する遺伝子によってコードされる1つまたは複数のタンパク質の発現を、ウェスタンブロット、免疫組織化学、免疫沈降、抗体マイクロアレイ、ELISA、および/または機能アッセイ(例えば、キナーゼアッセイ、ATPアーゼアッセイ、基質(またはリガンド)結合アッセイ、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、または特定のタンパク質機能の測定に適切な他のアッセイ)によって検出することができる。
試験被験体において同定された発現パターンが表2に示す発現パターンに類似する場合(例えば、表2中で上方制御および下方制御と示した遺伝子が被験体においてそれぞれ上方制御および下方制御されることが認められる場合)、これは被験体がPES(PPARδアゴニスト(例えば、GW1516)など)を摂取することを示す。対照的に、試験被験体において同定された発現パターンが表2に示す発現パターンと異なる場合(例えば、表2中で上方制御および下方制御と示した遺伝子が被験体において異なって発現されないか、異なる調節パターンを示す場合)、これは被験体がPES(PPARδアゴニスト(例えば、GW1516)など)を摂取していないことを示す。
本開示は、PPARδと特定の運動誘導性キナーゼ(例えば、AMPK(AMPKのAMPKα1サブユニットおよび/またはAMPKα2サブユニットなど))との間の以前に知られていなかったタンパク質−タンパク質相互作用を同定する。PPARδとAMPKとの間の相互作用は、被験体の運動能力の向上(例えば、走行持久力などの有酸素運動能力)などの重要な機能的結果を有し得る。
上記の発見により、例えば、被験体の運動能力(例えば、有酸素運動能力(走行持久力など))を向上させる可能性を有する薬剤の同定方法が実施可能である。いくつかのかかる方法では、タンパク質−タンパク質相互作用に影響を及ぼす(例えば、向上させる、弱める、または実質的に破壊する)薬剤を同定する。他のかかる方法では、PPARδ複合体のAMPK依存性リン酸化に影響を及ぼす(例えば、増加させる、減少させる、または実質的に消失させる)薬剤を同定する。
「薬剤」は、目的または結果の達成に有用な任意の物質または物質の任意の組み合わせ(例えば、AMPK活性化カスケード(例えば、PPARδ複合体のAMPK依存性リン酸化)に関連するタンパク質活性の調整に有用な物質または物質の組み合わせ)またはタンパク質−タンパク質相互作用(例えば、PPARδ−AMPK相互作用)またはATP代謝の調整または影響に有用な任意の物質または物質の任意の組み合わせである。本明細書中に開示のPPARδ−AMPK相互作用の任意の態様を調整する可能性を有する(最終的に認識されるかどうかは問わず)任意の薬剤は、本開示のスクリーニング方法での使用が意図される。
例示的な薬剤には、ペプチド(例えば、可溶性ペプチド(ランダムペプチドライブラリーのメンバー(例えば、Lamら、Nature、354:82−84、1991;Houghtenら、Nature、354:84−86、1991を参照のこと)が含まれるが、これに限定されない)、D型および/またはL型アミノ酸から作製されたコンビナトリアルケミストリー由来の分子ライブラリー、リンペプチド(無作為または部分的に縮重する定方向リンペプチドライブラリー(例えば、Songyangら、Cell、72:767−778、1993を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない)など)、抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗イディオタイプ抗体、キメラ抗体、または単鎖抗体、ならびにFab、F(ab’)2、およびFab発現ライブラリーフラグメント、ならびにそのエピトープ結合フラグメントが含まれるが、これらに限定されない)、有機小分子または無機小分子(いわゆる天然生成物または化学コンビナトリアルライブラリーのメンバーなど)、分子複合体(タンパク質複合体など)、または核酸が含まれるが、これらに限定されない。
開示の方法で有用なライブラリー(コンビナトリアルケミカルライブラリーなど)には、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号;Furka、Int.J.Pept.Prot.Res.、37:487−493、1991;Houghtonら、Nature、354:84−88、1991;PCT公開番号WO91/19735号を参照のこと)、コードされたペプチド(例えば、PCT公開WO93/20242号)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、PCT公開番号WO92/00091号)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ディバーソマー(ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチド(Hobbsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6909−6913、1993)など)、ビニル性ポリペプチド(Hagiharaら、J.Am.Chem.Soc、114:6568、1992)、グルコース足場を有する非ペプチド性ペプチド模倣物(Hirschmannら、J.Am.Chem.Soc、114:9217−9218、1992)、小化合物ライブラリーの類似の有機合成物(Chenら、J.Am.Chem.Soc、116:2561、1994)、オリゴカルバマート(Choら、Science、261:1303、1003)、および/またはペプチジルホスホナート(Campbellら、J.Org.Chem.、59:658、1994)、核酸ライブラリー(Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Springs Harbor Press、N.Y.、1989;Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.、1989を参照のこと)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号を参照のこと)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughnら、Nat.Biotechnol、14:309−314、1996;PCT出願番号PCT/US96/10287号を参照のこと)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liangら、Science、274:1520−1522、1996;米国特許第5,593,853号を参照のこと)、および有機小分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum、C&EN、Jan 18、page 33、1993;イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジオノンおよびメタチアゾン、米国特許第5,549,974;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および同第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、同第5,288,514号を参照のこと)などが含まれるが、これらに限定されない。
開示のスクリーニング方法に有用なライブラリーを、種々の様式(空間的にアラインメントされたマルチピンペプチド合成(Geysenら、Proc Natl.Acad.Sci.、81(13):3998−4002、1984)、「ティーバッグ」ペプチド合成(Houghten、Proc Natl.Acad.Sci.、82(15):5131−5135、1985)、ファージディスプレイ(Scott and Smith、Science、249:386−390、1990)、スポットまたはディスク合成(Dittrichら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、8(17):2351−2356、1998)、またはビーズ上での分割および混合固相合成(Furkaら、Int.J.Pept.Protein Res.、37(6):487−493、1991;Lamら、Chem.Rev.、97(2):411−448、1997)が含まれるが、これらに限定されない)で産生することができる。ライブラリーは、種々の数の組成物(メンバー)(約100メンバーまで、約1000メンバーまで、約5000メンバーまで、約10,000メンバーまで、約100,000メンバーまで、約500,000メンバーまで、またはさらに500,000メンバー超など)を含むことができる。
1つの実施形態では、高処理スクリーニング法は、多数の潜在的な治療化合物(例えば、AMPK−PPARδタンパク質−タンパク質相互作用の影響因子)を含むコンビナトリアルケミカルライブラリーまたはペプチドライブラリーを準備する工程を含む。次いで、かかるコンビナトリアルライブラリーを、本明細書中に記載の1つまたは複数のアッセイでスクリーニングして、所望の特徴的な活性(AMPK−PPARδタンパク質−タンパク質相互作用の増加または減少など)を示すライブラリーメンバー(特に、化学種または化学サブクラス)を同定する。このようにして同定された化合物は、従来の「リード化合物」としての機能を果たすことができるか、これらの化合物自体を潜在的または実際の治療薬として使用することができる。いくつかの例では、候補薬剤のプールを同定し、さらにスクリーニングして、集団中のどの各薬剤またはサブプールが所望の活性を有するのかを決定することができる。PPARδは、AMPKまたは1つまたは複数のそのサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKcc2など)とタンパク質−タンパク質相互作用を形成する。AMPK−PPARδ相互作用またはPPARδ複合体のAMP依存性リン酸化に影響を及ぼす(例えば、増加または減少させる)薬剤は、被験体の運動能力(例えば、走行持久力などの有酸素運動能力)を向上させる効果を有することができ、したがって、同定が望ましい。
本明細書中に記載のスクリーニング法では、組織サンプル、単離細胞、単離ポリペプチド、および/または試験薬剤は、高処理スクリーニングに適切な様式で存在することができる。例えば、1つまたは複数の単離組織サンプル、単離細胞、または単離ポリペプチドを、マイクロタイターのウェルに挿入することができ、1つまたは複数の試験薬剤をマイクロタイタープレートの壁に添加することができる。あるいは、1つまたは複数の試験薬剤を高処理形式でマイクロタイタープレートのウェル中などに存在させ(溶液中に存在させるか、プレート表面に接着させ)、1つまたは複数の単離組織サンプル、単離細胞、および/または単離ポリペプチドと少なくとも組織サンプルもしくは単離細胞または所望のポリペプチドの機能および/または構造を保持する条件下で接触させることができる。試験薬剤を、組織または細胞に致命的でないか、ポリペプチドの構造および/または機能に悪影響を及ぼさない任意の濃度で組織サンプル、単離細胞、または単離ポリペプチドに添加することができる。試験薬剤が異なれば有効濃度も異なると予想される。したがって、いくつかの方法では、試験薬物の濃度範囲を試験することが有利である。
開示の方法は、必要に応じて、独立して、被験体、1つまたは複数の細胞または細胞抽出物、1つまたは複数の組織または組織抽出物中に含まれるか、単離ポリペプチドとしてのPPARδまたはAMPK(AMPKα1またはAMPKcc2など)または任意のこれらの機能的フラグメントの使用を構想する。PPARδリガンドは、任意選択的に開示の方法に開示の方法に含まれる(または省略される)。
2つ以上のポリペプチド(PPARδおよびAMPK(AMPKα1またはAMPKα2など)など)の間の「直接的会合」を、例えば、一方のポリペプチドの免疫沈降によっても他方のポリペプチドを特異的に沈降させるのに十分な親和性および特異性を示す相互作用ポリペプチドの少なくとも一部の間での物理的接触によって特徴づける(但し、免疫沈降抗体が相互作用に関与する部位にも影響を及ぼさないこと)。ポリペプチドの間の直接会合を、「タンパク質−タンパク質相互作用」ということもできる。タンパク質−タンパク質相互作用における一方のポリペプチドの他方への結合(例えば、PPARδのAMPK(またはMPKα1および/またはAMPKα2)への結合およびその逆)を、「特異的結合」と見なす。AMPK−PPARδ相互作用に影響を及ぼす薬剤を、種々のアッセイ(固相または溶液ベースのアッセイが含まれる)によって同定することができる。例示的な固相アッセイでは、PPARδまたはそのAMPK結合フラグメントおよびAMPKまたはそのサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKα2など)またはそのPPARδ結合フラグメントを、PPARδおよびAMPK(またはそのサブユニットまたは機能的フラグメント)が正常に相互作用する(例えば、免疫共沈降する)条件下で混合する。結合パートナーの1つを、標識した成分が容易に検出されるようにビオチン、フルオレセイン、EGFP、または酵素などのマーカーで標識する。非標識結合パートナーを支持体(マイクロタイターウェルまたはビーズなど)に吸着させる。次いで、標識した結合パートナーを、2つの結合パートナーの間の相互作用に適切な条件下で非標識結合パートナーが固定される環境に添加する。1つまたは複数の試験化合物(1つまたは複数の上記ライブラリー中の化合物など)を、相互作用結合パートナーを含む各微小環境に個別に添加する。結合パートナー間の相互作用に影響を及ぼすことができる薬剤を、例えば、反応微小環境中(例えば、マイクロタイターウェル中またはビーズ上)でシグナル(すなわち、標識された結合パートナー)の保持時間または結合を増加または減少する(例えば、増加する)薬剤として同定する。前に考察するように、薬剤の組み合わせを最初のスクリーニングで評価して、個別に試験すべき薬剤のプールを同定することができ、この過程は現在利用可能なテクノロジーを使用して容易に自動化される。
他の実施形態では、液相選択を使用して、タンパク質−タンパク質相互作用に特異的に影響を及ぼす薬剤について巨大な複合体ライブラリーをスクリーニングすることができる(例えば、Bogerら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、8(17):2339−2344、1998);Bergら、Proc.Natl.Acad.Sci.、99(6):3830−3835、2002を参照のこと)。1つのかかる例では、物理的相互作用(例えば、PPARδ(またはそのAMPK結合フラグメント)とAMPKまたはAMPKα1もしくはAMPKα2(または任意のそのPPARδ結合フラグメント))が可能な2つの各タンパク質を、異なる発光スペクトルおよび重複吸収スペクトルを有する蛍光色素分子タグで標識する。これらのタンパク質成分が個別である場合、各成分の発光スペクトルは異なり、これを測定することができる。タンパク質成分が相互作用する場合、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により、光子放出せずにドナー色素分子からアクセプター色素分子へのエネルギーの移動が起こる。アクセプター色素分子のみで、特徴的な波長の光子(光)を放出する。したがって、FRETにより、サンプルの発光スペクトルに基づいて2つの相互作用分子の動態学を決定することが可能である。このシステムを使用して、2つの標識したタンパク質成分を、これらが相互作用してFRET発光スペクトルが得られる条件下で添加する。次いで、1つまたは複数の試験化合物(1つまたは複数の上記ライブラリー中の化合物など)を、2つの標識されたタンパク質成分混合物の環境に添加し、発光スペクトルを測定する。分離した成分の発光スペクトルの減少を伴うFRET放出の増加は、薬剤(または候補薬剤のプール)がタンパク質成分間の相互作用に影響を及ぼした(例えば、向上させた)ことを示す。
PPARδ(またはそのAMPK結合フラグメント)とAMPKまたはAMPKα1もしくはAMPKα2(または任意のそのPPARδ結合フラグメント)との間の相互作用を、関連成分ポリペプチド(例えば、細胞抽出物由来)の免疫共沈降、GST−プルダウンアッセイ(例えば、精製したGSTタグ化細菌タンパク質を使用)、および/または酵母ツーハイブリッドアッセイ(各方法は当該分野で標準である)によって決定する(例えば、定量する)こともできる。試験化合物の存在下および任意選択的で非存在下での1つまたは複数のかかるアッセイのいずれかを使用して、試験化合物の非存在下またはいくつかの他の標準もしくはコントロールと比較して試験化合物の存在下でPPARδ(またはそのAMPK結合フラグメント)とAMPKまたはAMPKα1もしくはAMPKα2(または任意のそのPPARδ結合フラグメント)との間の相互作用を改善または向上させる(または、他の実施形態では、減少または阻害する)薬剤を同定することができる。
一定の実施形態では、PPARδの1つまたは複数のAMPK(AMPKα1および/またはAMPKcc2など)結合フラグメントおよび/またはAMPKの1つまたは複数のPPARδ結合フラグメント(AMPKα1および/またはAMPKα2など)を使用する。所望の結合活性を有するポリペプチドフラグメントを、当該分野で標準的な方法を使用した一連の定義のPPARδフラグメントおよび/またはAMPK(AMPKα1またはAMPKα2など)フラグメントの作製によって同定することができる。例えば、目的のタンパク質(例えば、PPARδまたはAMPK)をコードするcDNAを、都合よく存在する制限酵素部位(または他の方法)を使用して3’末端または5’末端から連続的に短縮し(但し、開始コドンを5’短縮物中に操作する)、適切な読み取り枠をインタクトなままにする(そうでなければ矯正する)ことができる。便宜上、エピトープタグ(FLAGタグなど)をコードする核酸を、短縮タンパク質コード配列と共にインフレームで(且つ実質的に隣接して)配置して、エピトープタグ化タンパク質フラグメントをコードする核酸配列を産生する。エピトープタグ化タンパク質フラグメントを、任意の従来の発現系(細菌発現系など)で発現させ、単離するかせず、エピトープタグ化タンパク質フラグメントが結合することができるタンパク質または他のタンパク質フラグメントを含むサンプルと混合することができる。タグ(またはタンパク質フラグメント他の領域)に特異的な抗体を使用して、目的のフラグメントに結合する任意のタンパク質またはタンパク質フラグメントと共に目的のフラグメントを免疫沈降することができる。目的のエピトープタグ化タンパク質フラグメントに結合するタンパク質またはタンパク質フラグメントを、特に、例えば、ウェスタンブロットによって同定することができる。
特定の方法では、PPARδ−AMPK(AMPKα1および/またはAMPKcc2など)複合体(PPARδ結合AMPKフラグメントおよび/またはAMPK結合PPARδフラグメントの一方または両方を含む複合体が含まれる)の形成またはPPARδ(またはそのAMP結合フラグメント)およびAMPK(またはそのPPARδ結合フラグメント)の相互の親和性は、かかる複合体または結合親和性の量がコントロール測定値(例えば、試験薬剤の添加前の同一の試験系または試験薬剤の非存在下での類似の試験系における)よりも少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、または少なくとも250%高い場合に増加する。他の特定の方法では、PPARδ−AMPK(AMPKα1および/またはAMPKcc2など)複合体(PPARδ結合AMPKフラグメントおよび/またはAMPK結合PPARδフラグメントの一方または両方を含む複合体が含まれる)の形成またはPPARδ(またはそのAMPK結合フラグメント)およびAMPK(またはそのPPARδ結合フラグメント)の相互の親和性は、かかる複合体または結合親和性の量がコントロール測定値(例えば、試験薬剤の添加前の同一の試験系または試験薬剤の非存在下での類似の試験系における)よりも少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、または少なくとも250%低い場合に減少する。
PPARδ複合体のAMPK(例えば、AMPKα1および/またはAMPKα2)依存性リン酸化に影響を及ぼす(例えば、増加または減少させる)試験薬剤について試験薬剤をスクリーニングする方法を開示する。PPARδ複合体のAMPK依存性リン酸化に影響を及ぼす薬剤を、種々のアッセイ(上記の固相または液体ベースのアッセイのかかる適応(検出すべき終点がPPARδ複合体の1つまたは複数の成分のリン酸化である場合))によって同定することができる。
タンパク質リン酸化の検出方法は従来の検出方法であり(例えば、Gloffke、The Scientist、16(19):52、2002;Screatonら、Cell、119:61−74、2004を参照のこと)、検出キットは種々の商業的供給者から利用可能である(例えば、Upstate(Charlottesville、VA、USA)、Bio−Rad(Hercules、CA、USA)、Marligen Biosciences、Inc.(Ijamsville、MD、USA)、Calbiochem(San Diego、CA、USA)を参照のこと)。簡潔に述べれば、リン酸化タンパク質(例えば、PPARδ複合体の1つまたは複数の成分のリン酸化)を、ゲル中のリン酸化タンパク質に特異的な色素を使用して検出することができる。あるいは、抗体特異的リン酸化タンパク質を作製するか購入することができる。リン酸化タンパク質に特異的な抗体を、特に、ビーズ(特定の色特性を有するビーズが含まれる)に係留するか、ELISAまたはウェスタンブロットアッセイで使用することができる。
1つの例では、PPARδ複合体(またはAMPKリン酸化部位を含むそのフラグメント)およびAMPKまたは1つまたは複数のそのサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKcc2など)またはリン酸化することができるその機能的フラグメントを、PPARδ複合体がAMPKによってリン酸化される条件下で混合する。PPARδ複合体を、支持体(マイクロタイターウェルまたはビーズなど)に吸着させる。次いで、AMPK(またはその1つまたは複数のサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKcc2など)またはそのリン酸化可能なフラグメント)を、複合体が固定される環境に添加する。典型的には、リン酸ドナーもこの環境に含める。任意選択的に、供与すべきリン酸塩を標識することができる。1つまたは複数の試験化合物(1つまたは複数の上記ライブラリー中の化合物など)を、各微小環境に個別に添加する。AMPK依存性リン酸化に影響を及ぼすことができる薬剤を、例えば、固定化したPPARδ複合体のリン酸化を向上する(または阻害する)薬剤として同定する。標識したリン酸ドナーに関する実施形態では、固定化したPPARδ複合体のリン酸化を、例えば、反応微小環境中(例えば、マイクロタイターウェル中またはビーズ上)での標識したリン酸塩の保持時間または結合によって決定することができる。他の実施形態では、かかる反応は溶液中で(すなわち、固定された成分を含まない)起こり得、PPARδ複合体を、(例えば、PPARδ特異的抗体またはリン酸特異的抗体との免疫沈降)および以前に考察のように決定した1つまたは複数の試験化合物の存在下(任意選択的に、非存在下)でのそのリン酸化レベルによって)溶液から単離することができる。さらに別の実施形態では、AMPKのリン酸化を測定し、したがって、AMPK活性を調整する薬剤がAMPKアゴニストとして同定される。
特定の方法では、PPARδ複合体のリン酸化は、かかる翻訳後修飾が検出可能に測定されるか、かかる翻訳後修飾がコントロール測定値(例えば、試験薬剤の添加前の同一の試験系、試験薬剤の非存在下での類似の試験系、またはAMPKの非存在下での類似の試験系における)よりも少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、または少なくとも250%高い場合に増加する。
特定の方法では、PPARδ複合体のリン酸化は、かかる翻訳後修飾が検出可能に測定されるか、かかる翻訳後修飾がコントロール測定値(例えば、試験薬剤の添加前の同一の試験系、試験薬剤の非存在下での類似の試験系、またはAMPKの非存在下での類似の試験系における)よりも少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、または少なくとも250%低い場合に減少する。
開示のスクリーニング法で有用なPPARδポリペプチドは、任意の公知のPPARδ受容体である。プロトタイプPPARδポリペプチドの本明細書中に記載の少なくともAMPK結合活性を保持するPPARδのホモログ、機能的フラグメント、または機能的バリアントも開示のスクリーニング方法で有用である(実施例6を参照のこと)。プロトタイプPPARδポリペプチドのアミノ酸配列(およびPPARδコード核酸配列)は周知である。例示的なPPARδアミノ酸配列およびPPARδコード核酸配列は、例えば、米国特許第5,861,274号、米国特許出願公開第20060154335号(それぞれ、本明細書中で参考として明確に援用される)、およびGenBank受入番号NP_035275(GI:33859590)(Mus musculusアミノ酸配列);NM_011145.3(GI:89001112)(Mus musculus核酸配列);NP_006229(GI:5453940)(Homo sapiensアミノ酸配列);NM_006238.3(GI:89886454)(Homo sapiens核酸配列);NP_037273(GI:69S13S4)(Rattus norvegicusアミノ酸配列);NM_013141.1(GL6981383)(Rattus norvegicus核酸配列);NP_990059(gi45382025)(Gallus gallusアミノ酸配列)、またはNM_204728.1(GI:45382024)(Gallus gallus核酸配列)に記載されている。いくつかの方法実施形態では、PPARδホモログまたは機能的バリアントは、プロトタイプPPARδポリペプチドと少なくとも60%のアミノ酸配列が同一である。例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%のアミノ酸配列が以下に記載のアミノ酸配列と同一である:米国特許第5,861,274号、米国特許出願公開第20060154335号、またはGenbank受入番号NP_035275(GI:33859590)(Mus musculusアミノ酸配列);NP_006229(GI:5453940)(Homo sapiensアミノ酸配列);NP_037273(GI.69$13$4)(Rattus norvegicusアミノ酸配列);またはNP_990059(gi45382025)(Gallus gallusアミノ酸配列)。他の方法実施形態では、PPARδホモログまたは機能的バリアントは、プロトタイプPPARδポリペプチドと比較した場合に1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する。例えば、以下に記載のアミノ酸配列と比較してわずか3、5、10、15、20、25、30、40、または50のアミノ酸が保存的に変化する:米国特許第5,861,274号、米国特許出願公開第20060154335号、またはGenbank受入番号NP_035275(GI:33859590)(M***未知:***s musculusアミノ酸配列);NP_006229(GI:5453940)(Homo sapiensアミノ酸配列);NP_037273(GI.69$13$4)(Rattus norvegicusアミノ酸配列);またはNP_990059(gi45382025)(Gallus gallusアミノ酸配列)。
いくつかの方法実施形態は、PPARδ機能的フラグメント(AMPK結合フラグメントなど)を含み、このフラグメントは、公知の全長PPARδポリペプチドの任意の部分(例えば、その約20、約30、約40、約50、約75、約100、約150、または約200個の連続するアミノ酸残基が含まれる)であり得る(但し、このフラグメントが目的のPPARδ機能(例えば、AMPK結合)を保持する場合)。PPARδは公知の機能的モチーフ(リガンド結合ドメイン、DNA結合ドメイン、トランス活性化ドメインなど)を含む。
哺乳動物AMP活性化キナーゼ(AMPK)は、1αサブユニット、1βサブユニット、および1γサブユニットからなるヘテロ三量体タンパク質である。少なくとも2つの公知のαサブユニットのイソ型(α1およびα2)が存在する。AMPKα1およびAMPKα2は、その触媒コア内の90%のアミノ酸配列が同一であるが、そのC末端テール中はたった61%である(Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)データベース受入番号602739;以下のウェブサイトで公的に入手可能:ncbi .nlm.nih.gov/entrez/dispomim.cgi?id=602739を参照のこと)。
開示のスクリーニング方法で有用なAMPK(AMPKα1および/またはAMPKα2など)ポリペプチドは、任意の公知のAMPKタンパク質またはそのサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKα2など)である。少なくとも本明細書中に記載のPPARδ結合活性を保持するAMPKタンパク質またはそのサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKα2など)のホモログ、機能的フラグメント、または機能的バリアントも開示のスクリーニング方法で有用である(実施例6を参照のこと)。プロトタイプAMPKサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKα2など)のアミノ酸配列(およびプロトタイプAMPKサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKα2など)をコードする核酸配列)は周知である。例示的なAMPKα1のアミノ酸配列および対応する核酸配列は、例えば、以下に記載されている:GenBank受入番号NM_206907.3(GI:94557298)(Homo sapiens転写バリアント2REFSEQ(アミノ酸配列および核酸配列が含まれる));NM 006251.5(GI:94557300)(Homo sapiens転写バリアント1 REFSEQ(アミノ酸配列および核酸配列が含まれる));NM_001013367.3(GI:94681060)(Mus musculus REFSEQ(アミノ酸配列および核酸配列が含まれる));NMJ)01039603.1(GI:88853844)(Gallus gallus REFSEQ(アミノ酸配列および核酸配列が含まれる));およびNM_019142.1(GI:11862979XRaJfWS norvegicus REFSEQ(アミノ酸配列および核酸配列が含まれる))。例示的なAMPKα2のアミノ酸配列および対応する核酸配列は、例えば、以下に記載されている:GenBank受入番号NM_006252.2(GI:46877067)(Homo sapiens REFSEQ(アミノ酸配列および核酸配列が含まれる));NM_178143.1(GI:54792085)(Mus musculus REFSEQ(アミノ酸配列および核酸配列が含まれる));NM_001039605.1(GI:88853850)(Gallus gallus REFSEQ(アミノ酸配列および核酸配列が含まれる));およびNM_214266.1(GI:47523597)(Mus musculus REFSEQ(アミノ酸配列および核酸配列が含まれる))。
いくつかの方法実施形態では、AMPKサブユニットのホモログまたは機能的バリアントは、プロトタイプAMPKα1および/またはAMPKα2ポリペプチドと少なくとも60%のアミノ酸配列が同一である;例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%のアミノ酸配列が以下に記載のアミノ酸配列と同一である:GenBank受入番号NM_206907.3;NM_006251.5;NMJ)01013367.3;NM_001039603.1;NM_019142.1;NM_0006252.2;NM_178143.1;NM_001039605.1;またはNM 214266.1。他の方法実施形態では、AMPKサブユニットのホモログまたは機能的バリアントは、プロトタイプAMPKα1および/またはAMPKα2ポリペプチドと比較した場合に1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する。例えば、以下に記載のアミノ酸配列と比較してわずか3、5、10、15、20、25、30、40、または50のアミノ酸が保存的に変化する:GenBank受入番号NM_206907.3;NM_006251.5;NM_001013367.3;NM_001039603.1;NM_019142.1;NM_006252.2;NM_178143.1;NM_001039605.1;またはNM 214266.1。例示的な保存的アミノ酸置換を、前述している。
いくつかの方法実施形態は、AMPKまたはそのサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKα2など)の機能的フラグメント(PPARδ結合フラグメントまたはPPARδリン酸化活性を有するフラグメントが含まれる)を含む。AMPKまたはそのサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKα2など)の機能的フラグメントは、全長またはインタクトなAMPKポリペプチド複合体またはそのサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKα2など)の任意の部分(例えば、その約20、約30、約40、約50、約75、約100、約150、または約200個の連続するアミノ酸残基が含まれる)であり得る(但し、このフラグメントが目的の少なくとも1つの目的のAMPK(またはAMPKα1および/またはAMPKα2)機能(例えば、PPARδ結合および/またはPPARδリン酸化活性)を保持する場合)。PPARδとAMPKとの間のタンパク質−タンパク質相互作用は、少なくともAMPKαサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKα2など)を含むと考えられる。さらに、PPARδはAMPKα1およびAMPKα2の両方に特異的に結合するので(実施例6を参照のこと)、かかる相互作用は、配列相同性が最も高いこれらのAMPKαイソ型部分によって媒介される可能性が高い(上記で考察)。したがって、いくつかの方法実施形態では、AMPKのPPARδ結合フラグメントには、AMPKのαサブユニット(AMPKα1および/またはAMPKα2など)の触媒コアドメインを含む(またはからなる)機能的フラグメントが含まれる。
「単離された」生物学的成分(ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または細胞など)は、混合したサンプル(細胞または組織抽出物など)中の他の生物学的成分から精製されている。例えば、「単離された」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドが存在していた細胞(組換えポリペプチドまたはポリヌクレオチドのための発現宿主細胞など)の他の成分から分離されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドである。
用語「精製された」は、サンプルからの1つまたは複数の外因性成分の除去をいう。例えば、組換えポリペプチドが宿主細胞中で発現される場合、ポリペプチドを、例えば、宿主細胞タンパク質の除去によって精製し、それにより、サンプル中の組換えポリペプチドの比率が増加する。同様に、組換えポリヌクレオチドが宿主細胞中で発現される場合、ポリヌクレオチドを、例えば、宿主細胞ポリヌクレオチドの除去によって精製し、それにより、サンプル中の組換えポリヌクレオチドの比率が増加する。
単離ポリペプチドまたは核酸分子は、典型的には、サンプルの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または99%超(w/wまたはw/v)含まれる。
ポリペプチドおよび核酸分子を、当該分野で一般的に知られており、且つ本明細書中に記載の方法によって単離する。ポリペプチドまたは核酸分子の純度を、多数の周知の方法(ポリペプチド用のポリアクリルアミドゲル電気泳動または核酸分子用のアガロースゲル電気泳動など)によって決定することができる。
2核酸配列間または2アミノ酸配列間の類似性を、配列間で共有される配列同一性レベルで示す。配列同一性を、典型的には、同一率で示し、百分率が高いほど2つの配列が類似する。
比較のために配列をアラインメントする方法は、当該分野で周知である。種々のプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが以下に記載されている:Smith and Waterman、Adv.Appl.Math.2:482、1981;Needleman and Wunsch、J.Mol.Biol.48:443、1970;Pearson and Lipman、Proc.Natl.Acad.ScL USA 85:2444、1988;Higgins and Sharp、Gene 73:237−244、1988;Higgins and Sharp、CABIOS 5:151−153、1989;Corpetら、Nucleic Acids Research 16:10881−10890、1988;Huangら、Computer Applications in the Biosciences 8:155−165、1992;Pearsonら、Methods in Molecular Biology 24:307−331、1994;Tatianaら、(1999)、FEMS Microbiol.Lett.、174:247−250、1999。Altschulらは、配列アラインメント法および相同性計算を詳細に考察している(J.Mol.Biol.215:403−410、1990)。National Center for Biotechnology Information(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST(商標)、Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−410、1990)は、いくつ以下の供給元(National Center for Biotechnology Information(NCBI、Bethesda、MD)が含まれる)および他のインターネットサイトから利用可能であり、これは、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxと併せて使用される。このプログラムを使用した配列同一性の決定方法の説明は、インターネット上のBLAST(商標)のヘルプから入手可能である。
約30アミノ酸を超えるアミノ酸配列の比較のために、デフォルトパラメータに設定したデフォルトBLOSUM62行列を使用して、BLAST(商標)(Blastp)プログラムの「Blast2配列」関数を使用する(ギャップ開始コスト[デフォルト=5];ギャップ継続コスト[デフォルト=2];ミスマッチのペナルティ[デフォルト=−3];マッチの評価[デフォルト=1];期待値(E)[デフォルト=10.0];ワードサイズ[デフォルト=3];表示数(V)[デフォルト=100];(B)のアラインメントの最大表示数[デフォルト=100])。短いペプチド(約30アミノ酸未満)をアラインメントする場合、デフォルトパラメータ(オープンギャップ9、伸長ギャップ1ペナルティ)に設定したPAM30行列を使用したBlast2配列関数を使用してアラインメントを行うべきである。基準配列をはるかに超える類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価した場合に同一率が増加するであろう。
核酸配列の比較のために、デフォルトパラメータに設定したデフォルトBLOSUM62行列セットを使用して、BLAST(商標)(Blastn)プログラムの「Blast2配列」関数を使用する(ギャップ開始コスト[デフォルト=11];ギャップ継続コスト[デフォルト=1];期待値(E)[デフォルト=10.0];ワードサイズ[デフォルト=11];表示数(V)[デフォルト=100];(B)のアラインメントの最大表示数[デフォルト=100])。基準配列をはるかに超える類似性を有する核酸配列は、この方法によって評価した場合に同一率が増加するであろう。
特異的結合は、一方の結合パートナー(結合剤など)と他方の結合パートナー(標的など)との間の特定の相互作用をいう。かかる相互作用は、結合パートナー間(または、しばしば、各結合パートナーの特異的領域または部分の間)の1つ、または典型的には複数の非共有結合によって媒介される。別で非特異的結合部位と対照的に、特異的結合部位は飽和性を示す。したがって、特異的結合を特徴づけるための1つの例示的な方法は、特異的結合曲線による方法である。特異的結合曲線は、例えば、第1の結合パートナーの濃度関数としての固定量の他方の結合パートナーに結合する一方の結合パートナー(第1の結合パートナー)の量を示す。第1の結合パートナーの濃度がこれらの条件下で増加するにつれて、第1の結合パートナーの結合量は飽和するであろう。別の非特異的結合部位と対照的に、相互の直接会合(例えば、タンパク質−タンパク質相互作用)に関与する特異的結合パートナーを、過剰量のいずれかの特異的結合パートナーによってかかる会合物(例えば、タンパク質複合体)から競合的に除去(または置換)することができる。かかる競合アッセイ(または置換アッセイ)は、当該分野で非常によく知られている。
本開示はまた、筋緊張または筋肉量をもたらすのに有用な薬剤の同定方法を提供する。本開示は、AICARまたはGW1516、またはAICARとGW1516との組み合わせの存在下で調整される遺伝子を含む持久力遺伝子サイン(例えば、表2および表4を参照のこと)を提供する。かかる遺伝子サインは、筋緊張または筋肉量を増加させる薬剤の同定で有用であり、それにより、身体持久力を調整することができる。GW−TR持久力遺伝子サインは、表4に記載の遺伝子組またはそのサブセットをいう。GW−TR持久力遺伝子サインは、表2に記載の遺伝子組またはそのサブセットをいう。
図6および8に示すように、各アゴニストの遺伝子発現プロフィールの重複を示す。試験すべき薬剤を被験体に投与し、筋肉サンプル(例えば、生検)または他の生物サンプル中の遺伝子発現プロフィールを測定することができる。遺伝子発現プロフィールが持久力遺伝子サイン組(例えば、GW1516およびAICAR投与に関連する重複する52遺伝子、表4を参照のこと)またはそのサブセットを含む場合、かかる薬剤を、筋肉活動の治療または調整に有用な薬剤または薬物と同定することができる。
以下の実施例を、一定の特定の特徴および/または実施形態を例示するために提供する。これらの実施例は、本発明が記載の特定の特徴または実施形態に制限されると解釈すべきではない。
(実施例1)
PPARδアゴニストの投与により、非運動被験体の身体能力は向上しない。Wangらは、PPARδ受容体の構成的活性形態の骨格筋特異的発現によって酸化系遅(I型)筋線維数が増加した骨格筋を有するトランスジェニックマウスが得られ、走行持久力が顕著に増加したと以前に証明している(Wangら、PLoC Biol.、2:e294、2004)。本実施例は、非トランスジェニックマウスへのPPARδアゴニスト(GW1516)の投与でも骨格筋中に酸化的代謝のいくつかのバイオマーカーが発現することを証明する。しかし、PPARδ経路の遺伝子活性化によって得られる結果と予想外に対照的に、薬理学的処置によるPPARδ活性化では、非トランスジェニックの運動不足(「非運動」または「非訓練」とも呼ばれる)マウスにおいて骨格筋の線維型組成は改変されず、持久力も改善されなかった。雄C57B/6Jマウス(8週齢)をJackson Laboratoryから入手し、Salk Institute動物飼育施設に収容した。動物を、実験前に1週間その周囲の気候に馴化させ、標準的なマウス固形飼料を常に利用させ、水を自由に与えた。
マウスを、1日おきに1週間の中程度のトレッドミル走行(10m/分で15分間)に馴化した。馴化後、トレッドミル上に各マウスを配置し、0m/分から15m/分に速度を段階的に増加させ、マウスが疲労するまで15m/分を維持することによって基底走行持久力を決定した。疲労するまで走行した時間および距離を、基底持久力値(0週)として記録した。
次いで、マウスを、ビヒクルまたはPPARδアゴニスト(GW1516)(5mg/kg)で1日1回にて4週間処置した。経口投与で処置した。処置期間中、マウスを標準的な実験用ケージに収容し、かかるケージ周囲の通常の移動によって得ることができる身体活動量のみを行わせた。
最終処置の72時間後の二酸化炭素窒息によって動物を安楽死させた。腓腹筋および四頭筋を単離し、凍結し、さらなる分析のために−80℃で保存した。製造者の説明書に従ってTRIzoL(商標)試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を使用して、総RNAを四頭筋から調製した。当業者に公知のプライマーを使用したリアルタイム定量PCR(QPCR)を使用して、脱共役タンパク質3(UCP3)、筋肉カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(mCPTI)、およびピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ4(PDK4)の発現レベルを決定した。
図1Aに示すように、4週間のGW1516処置により、処置マウスの四頭筋中のUCP3、mCPTI、およびPDK4の発現が誘導された(VをGWと比較する)。これらの遺伝子発現の変化は、処置4日後の早期に2〜5mg/kg/日の範囲の薬物濃度で検出された。
さらに、遺伝子発現研究では、PPARδ活性化の最大効果は、収縮の速い筋肉(四頭筋および腓腹筋)で主に検出され、収縮の遅い筋肉(ヒラメ筋)で検出されなかった。
野生型マウスおよびPPARδヌルマウスから培養した初代筋細胞を使用して(Chawlaら、Proc.Natl.Acad.ScL USA.100(3):1268−73、2003;Manら、J.Invest.Dermatol.2007;Rando and Blau、J.Cell.Biol.125(6):1275−87、1994)、GW1516による酸化遺伝子の誘導が骨格筋におけるPPARδの活性化に媒介されることが確認された(図1B〜D)。さらに、これは、構成的に活性なVPlβ−PPARδ導入遺伝子を発現するマウス由来の筋肉中の同一遺伝子組で見出される発現の変化と類似する(Wangら、PLoC Biol、2:e294、2004)(図1AのTGを参照のこと)。まとめると、これらの結果は、PPARδの薬理学的活性化によって成体骨格筋中の酸化応答を開始させることができることを示す。
骨格筋の酸化系表現型に特徴的なバイオマーカーの発現は、典型的には、かかる骨格筋の酸化能力の増加(例えば、走行持久力の増加)と相関していた。この相関は、例えば、VPlβ−PPARδトランスジェニックマウスで認められた(Wangら、PLoC Biol.、2:e294、2004)。この理由および他の理由について、GW1516処置によって同様に走行能力が増加すると予想された。したがって、リガンドの機能的効果を決定するために、処置マウスおよびコントロールマウスの年齢および体重が適合したコホートを処置前(0週)および処置後(5週間)に持久力トレッドミル能力試験に供した。処置し、さらなる運動を実施しないで標準的な実験ケージに4週間収容した後、GW1516処置マウスおよびコントロールマウスの走行持久力を、上記のように再度決定した。著しいことに、改善が期待されたにもかかわらず、GW1516処置マウスは、疲労前のトレッドミル上の走行時間または走行距離のいずれもコントロールマウスと有意に異ならなかった(図1E)。さらに、5ヶ月までの長期薬物処置によっても走行持久力は変化しなかった。
これらの結果は、非訓練成体筋肉においてさえも、PPARδの薬理学的活性化によっていくつかの転写の変化が誘導され、線維型の組成または持久力のいずれも変化させることができないことを示す。まとめると、成体C57B1/6JマウスにおけるPPARδ遺伝子プログラムの薬理学的活性化は、トレッドミル持久力の測定可能な向上を促進するのには不十分である。
(実施例2)
PPARδアゴニストの投与により、運動訓練被験体の骨格筋が再造形される。骨格筋における線維型の比率は、遺伝因子および環境因子(身体活動レベルなど)によって決定されると考えられる(Simoneau and Bouchard、FASEB J.、9(11):1091−1095、1995;Larsson and Ansved、Muscle Nerve、8(8):714−722、1985)。持久運動訓練は、I型遅筋線維、酸化酵素、およびミトコンドリア密度の増加によって骨格筋を再造形し、能力を進行性に変化させることが公知である(Holloszyら、J.Appl .Physiol.56:831−8、1984;Boothら、Physiol Rev.71:541−85、1991;Schmittら、.Physiol.Genomics.15:148−57、2003;Yoshiokaら、FASEB J.17:1812−9、2003;Mahoneyら、Phys .Med.Rehabil Clin.N.Am.16:859−73、2005;Mahoneyら、FASEB J.19:1498−500、2005;Siuら、J.Appl Physiol.97:277−85、2004;Gamierら、FASEB J.19:43−52、2005;Shortら、J Appl Physiol.99:95−102、2005;Timmonsら、FASEB J.19:750−60、2005)。本実施例は、PPARδアゴニスト処置が分子レベルで骨格筋に影響を及ぼすことを証明する。
持久運動を行っている状況でのGW1516の同時投与が線維型の組成の変化およびミトコンドリア生合成を向上させることができるかどうかを決定するために、筋線維型組成に及ぼすGW1516処置の影響を、Wangら(Phys Biol、2:e294、2004)に記載のように腓腹筋の凍結切片の異色染色によって決定した。日常的な筋原線維ATPアーゼ反応後異色染色を使用して異なる骨格筋線維型間のリン酸塩沈着の定量的相違を示し、それにより、骨格筋線維型を識別した(Doriguzziら、Histochem.、79(3):289−294、1983;Ogilvie and Feeback、Stain Technol、65(5):231−241、1990)。このアッセイでは、高ATPアーゼ活性を有する筋線維(例えば、I型(酸化系遅筋)筋線維)が暗色に染色される。
図2Aに示すように、ビヒクル処置およびGW1516処置した運動不足のマウスの腓腹筋中のI型(酸化系遅)筋線維の比率に有意差は存在しなかった。対照的に、VP16−PPAR5トランスジェニックマウスの後肢筋肉は、単色染色によってアッセイした場合にI型筋線維数の増加が認められた。訓練マウスでは、ビヒクル処置した運動不足のマウスと比較して、GW1516によってI型線維の比率が増加した(約38%)(図2Aおよび2B)。したがって、運動不足の被験体へのPPARδアゴニスト(例えば、GW1516)のみの投与により、後肢筋肉中のI型(酸化系遅)筋線維数は有意に影響されないが、訓練被験体の後肢筋肉中のI型筋線維数を増加させることができる。
線維型に及ぼす影響に加えて、運動訓練によって骨格筋のミトコンドリア生合成が増加し、これを定量的リアルタイムPCR(QPCR)を使用してミトコンドリアDNA発現レベルの関数として測定することができる。定量的リアルタイムPCRを使用して、V、GW、Tr、およびGW+Tr被験体の筋肉中のミトコンドリアDNA発現レベルを決定した。図2Cに示すように、I型線維の変化と同様に、ミトコンドリアDNA発現は薬物のみでは変化しなかったが、運動とGW1516処置との組み合わせを使用して約50%増加した(図2C)。かかる増加は、持久力の向上に寄与することが公知である(例えば、Holloszy、Med.Sci.Sports 7:155−64、1975)。遅筋線維型および速筋線維型をミオシンイソ型発現によって識別することもできる(Gauthier and Lowey、J.Cell Biol.81:10−25、1979;Fitzsimons and Hoh、Biochem.J.193:229−33、1981)。骨格筋中のミオシンイソ型発現は、種々の条件(筋力学、筋肉神経支配、または運動パラダイムの変化など)に適合する(概説については、例えば、Baldwin and Haddad、J.Appl.Physiol.、90(1):345−57、2001;Baldwin and Haddad、Am.J.Phys .Med.Rehabil.、81(11 Suppl):S40−51、2002;Parry、Exerc.Sport Sci Rev.、29(4):175−179、2001を参照のこと)。ミオシン重鎖(MHC)発現(MHC I、MHC Ha、MHC lib)に及ぼすGW1516投与の影響を、当業者に公知に方法によって決定した。運動不足のマウスにおけるGW1516処置により、ビヒクル処置されたコントロールマウスと比較して、MHC I(収縮の遅い酸化系筋線維のマーカー)の発現が増加し、MHC lib(収縮の速い解糖系筋線維のマーカー)の発現が減少した。相対的に、GW1516処置は、運動不足のマウスにおけるMHC Ha(収縮の速い酸化系/解糖系筋線維のマーカー)の発現を変化させなかった。したがって、少なくとも転写レベルでは、PPARδアゴニストは、遅筋線維表現型に特徴的ないくつかのタンパク質を誘導することができた。
VPlβ−PPARδトランスジェニックマウスの骨格筋中の構成的活性型PPARδの発現により、酸化酵素、ミトコンドリア生合成、および特殊化したI型線維収縮タンパク質の産生(筋線維型スイッチングの3つの特徴)の完全且つ調和して増加する」「長距離走行表現型」が得られた(Wangら、PLoC Biol.、2:e294、2004)。対照的に、正常な被験体におけるPPARδの薬理学的活性化により、いくつかの代謝遺伝子の調節によってVPlβ−PPARδのトランスジェネシスが部分的に繰り返されるだけであった。顕著には、PPARδアゴニストの運動不足の被験体への投与により、線維型の仕様が変化せず(単色染色によって測定)、運動持久力も向上しなかった。出生時の活性化PPARδのトランスジェニック過剰発現によって発生期筋線維を遅筋線維に分化形質転換するように予めプログラミングされ、したがって、成体トランスジェニックマウスに高い基底持久力が分与される。対照的に、線維型の仕様が成体のPPARδアゴニストへの曝露前に完了するので、薬物処理のみへの筋肉の潜在的柔軟性は実質的に存在しない。
本実施例は、成体の運動不足の被験体の骨格筋におけるPPARδ調節プログラムの遺伝学的または薬理学的な活性化では同一の結果を得られないことを示す。運動を行わない発生初期由来のトランスジェニックマウスにおけるPPARδ受容体の活性化による骨格筋仕様を遺伝子操作する能力では運動不足の正常成体におけるPPARδプログラムを薬理学的に活性化するという結果が必ずしも予想されない。骨格筋に及ぼすPPARδの影響についての細胞「テンプレート」は、遺伝子操作されたトランスジェニック被験体と比較して正常被験体で非常に異なる。例えば、正常な成体では、各筋肉群の筋線維の仕様は既に決定されており、筋線維と脊髄運動ニューロンとの間の連結はPPARδ調節プログラムの薬理学的活性化前に確立されている。トランスジェニックマウスでは、構成的活性型PPARδの導入遺伝子は全て活性である一方で、筋線維の仕様は決定されており、筋線維と運動ニューロンとの間の連結が作製される。さらに、PPARδアゴニストの1日に1回の投与による内因性PPARδ受容体活性化の影響の活性化の影響は、一過性のピーク曝露後にクリアランスされると予想され、VPlβ−PPARδ導入遺伝子の構成的活性化の影響と非常に異なる可能性が高い。
(実施例3)
PPARδアゴニスト処置と運動訓練との組み合わせは、脂肪酸代謝および脂肪酸酸化のマーカーに有意に影響を及ぼした。骨格筋の収縮装置の影響に加えて、運動訓練はまた、骨格筋ミトコンドリア密度を増加させる(例えば、Freyssenetら、Arch.Physiol.Biochem.、104(2):129−141、1996)。本実施例は、運動訓練した被験体におけるPPARδアゴニスト処置(例えば、GW1516)が運動した筋肉における脂肪酸代謝に影響を及ぼすことを示す。脂肪酸の酸化的代謝成分に及ぼすGW1516処置および運動の単独または組み合わせの影響を、脂肪酸β酸化(FAO)の選択的バイオマーカーの遺伝子発現レベルの測定によって決定した。雄C57B/6Jマウス(8〜10週齢)を、以下の4つの群(群あたり9匹)に無作為に分類した:(i)ビヒクル処置した運動不足の群(V)、(ii)GW1516処置した運動不足の群(GW)、(iii)ビヒクル処置し、運動訓練した群(Tr)、および(iv)GW1516処置し、運動訓練した群(GW+Tr)。実施例1に記載のように全群中のマウスを中程度のトレッドミル走行に馴化させ、基底走行持久力を測定した。その後、運動訓練群のマウスに、5°に傾斜したトレッドミルにて4週間(5日/週)の運動訓練を受けさせた。訓練の強度および時間を段階的に増加させた。4週間後、全運動訓練マウスは、18m/分で50分/日走行した。ビヒクルまたはGW1516を、実施例1に記載のように運動処置群または運動不足の群にそれぞれ投与した。他で示さない限り、本実施例および以下の実施例に記載のV、GW、Tr、およびGW+Tr被験体を同様に処置した。薬物処置および/または訓練プロトコール後(5週間)、群辺り6匹のマウスを走行試験に供した。これらの介入は、マウスの体重および食物摂取に影響を及ぼさない。実施例1で実施のように、RNAをリアルタイム定量PCR用に調製した。
実施例1で得られた結果を確認すると、UCP3、mCPTI、およびPDK4はGW1516によって上方制御されたが、運動によるさらなる誘導は認められなかった(図1Aおよび3Aを参照のこと)。予想外に、運動またはGW1516のみに対しては応答しないが、組み合わせると強く誘導される第2の遺伝子組が同定された。この興味深い応答プロフィールには、運動および薬物処置したマウスに新規の標的遺伝子組を負荷する脂肪酸貯蔵(ステロイル−CoA−不飽和化酵素(SCD1)、脂肪酸補酵素Aシンターゼ(FAS)、および血清応答エレメント結合タンパク質Ic(SREBPIc)など)および脂肪酸取り込み(脂肪酸輸送体(FAT/CD36)およびリポタンパク質リパーゼ(LPL)など)の調節に関与する一連の遺伝子が含まれる(図3B、3C、および6A〜C)。
遺伝子発現に加えて、ウェスタンブロッティングを使用して選択的酸化系バイオマーカー(ミオグロビン、UCP3、シトクロムc(CYCS)、およびSCD1が含まれる)のタンパク質発現を決定した。タンパク質ホモジネートを四頭筋から調製し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、ブロッティング膜に移し、ミオグロビン(Dako)、UCP3(Affinity Bioreagents)、シトクロムc(Santacruz)、SCD1(Santacruz)に特異的な抗体、およびローディングコントロールとしてのチューブリン(Sigma)を使用して探索した。PPARδアゴニストまたは運動のみでの処置と比較して、運動とGW1516処置との組み合わせを使用してミオグロビン、UCP3、シトクロムc、およびSCD1タンパク質発現の強い上方制御が認められた(図3D)。
トリグリセリドの変化を使用して、筋肉酸化能力の変化を評価することができる。筋肉トリグリセリド(mTG)含有量を、Thermo Electron Corporationのキットを使用して、以前に記載のように測定した(Wangら、PLoC Biol、2:e294、2004)。図4に示すように、mTG含有量は、ビヒクル処置した運動不足のマウスとGW1516処置した運動不足のマウスとの間で同等であり、運動訓練のみを受けたマウスの筋肉中で実質的に増加した。対照的に、運動マウスにおけるトリグリセリドの劇的増加はGW1516処置した運動訓練マウスで完全に逆転し、脂肪利用率の増加を示す(図4)。運動と薬物処置(例えば、PPARδアゴニスト投与)との組み合わせによって誘導されるが、いずれかのみによっては誘導されない遺伝子および/またはタンパク質発現は、新規の発見と考えられる。この応答型を使用して、薬理学的および生理学的遺伝子ネットワークの共通部分をさらに特徴づけることができる。例えば、1つまたは複数の薬物(例えば、PPARδアゴニスト)および運動によって固有に調節される1つまたは複数のおよび/またはタンパク質を、例えば、プロおよび/またはアマチュアのアスリートにおける違法に増強された能力のマーカーとして使用することができる。
(実施例4)
PPARδアゴニストの投与により、運動訓練した被験体の身体能力が向上する。実施例1に記載のように、GW1516処置が酸化的代謝に関連する広範なゲノムの変化を誘導するにもかかわらず、単独では走行持久力を増加させることができなかった。(VPlβ−PPARδトランスジェニックマウスにおける)PPARδ遺伝子ネットワークの構成的活性化によって距離走行表現型(俗に、「マラソンマウス」)が得られることが公知であったので、この所見は予想外であった。他方では、驚くべきことに実施例3に示すように、運動と併せたPPARδアゴニスト(例えば、GW1516)処置により、骨格筋における一連の転写および翻訳後の適用が含まれる再造形プログラムが富化した。これは、運動訓練がPPARδ標的遺伝子組をアンマスクするトリガーとしての機能を果たすことを示す。本実施例は、PPARδアゴニスト(例えば、GW1516)の投与によって運動した(訓練した)被験体における身体能力が驚くほど改善されることを証明するために使用した方法を提供する。
雄C57B/6Jマウス(8〜10週齢)を、4つの群(群あたり9匹):(i)ビヒクル処置した運動不足の群(V)、(ii)GW1516処置した運動不足の群(GW)、(iii)ビヒクル処置し、運動訓練した群(Tr)、および(iv)GW1516処置し、運動訓練した群(GW+Tr)に無作為に分類し、実施例1に記載のように中程度のトレッドミル走に馴化させ、実施例3に記載のように運動訓練した。薬物処置および/または運動プロトコールの後(5週間)、群あたり6匹のマウスを走行試験に供した。
薬物処置および/または運動プロトコールの後(5週間)、群あたり6匹のマウスの走行持久力を、基底走行持久力と同一の様式で決定した。骨格筋で認められた変化が急速な走行に起因しなかったが、運動訓練に関連していたことを確認するための各群における3匹のマウスに対する追跡持久力試験を行わなかった。
図5Aおよび5Bに示すように、運動不足のマウスにおいて走行持久力を変化させることができなかった同一の用量および持続時間のGW1516処置は、4週間の運動訓練と組み合わせた場合、ビヒクル処置した訓練マウスより走行時間が68%増加し、走行距離が70%増加する(図5Aおよび5B、5週目に比較)。運動前(0週)および運動後(5週間)および薬物処置の走行時間および走行距離の比較により、各マウスの持久力が100%増加し、組み合わせパラダイムの頑健性を強調している(図5Aおよび5B)。対照的に、同時GW1516処置しない同一の運動プロトコールはC57B1/6Jマウスの走行持久力を有意に増加させなかった。白色脂肪組織のパラフィン切片のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を、以前に記載のように行った(Wangら、PLoS Biol.、2:e294、2004;Wangら、Cell、113:159−70、2003)。図5Cに示すように、運動と組み合わせたGW1516処置により、精巣上体脂肪の体重に対する比が有意に(32%)減少し、同一群における脂肪細胞の断面積の減少がさらに明らかとなった(図5D)。したがって、GW1516と運動との組み合わせ効果は、筋肉に制限されない。
実施例2に記載の方法を使用して、GW1516処置と運動訓練との組み合わせが運動した筋肉中のI型筋線維数を有意に増加させることも証明された。しかし、GW1516処置と運動との組み合わせにより、MHC I発現およびMHC lib発現のさらなる変化は誘導されなかった。したがって、経口投与されたPPARδアゴニスト(GW1516)のみがPPARδ調節遺伝子ネットワーク中の少なくともいくつかの収縮タンパク質の発現を誘導することができるにもかわらず(実施例5を参照のこと)、認められた転写効果は、GW1516処置された運動マウスにおける異色染色によって認められたような線維型組成の転写後変化を誘導するには十分でなかった。
本実施例は、PPARδアゴニスト(例えば、GW1516)処置が運動被験体における有酸素運動能力(例えば、走行距離および持久力)を予想外に増大させることを示す。持久運動は、脂肪組織の脂肪分解の誘導によって筋肉外脂肪を筋肉トリグリセリド貯蔵に導き、酸化要求の増加を満たすことが公知である(Despresら、Metabolism、33:235−9、1984;Mauriegeら、Am.J.Physiol、273:E497−506、1997;Maderら、Int.J.Sports Med.、22:344−9、2001;Schmittら、Physiol.Genomics、15:148−57、2003;Schrauwen−Hinderlingら、J.Clin.Endocrinol.Metab.、88:1610−6、2003)。さらに、実施例3に記載のGW1516処置した運動マウスにおけるFAO成分の誘導ならびに脂肪酸貯蔵物および取り込み成分の選択的上方制御は、骨格筋中の燃料としての脂肪動員の増加を示す。
したがって、運動とGW1516処置との組み合わせにより、例えば、局所脂肪酸合成および/または脂肪組織からの脂肪酸貯蔵物の動員の増加によって被験体における筋肉酸化能力が劇的に増加する。
これは、どのようにして経口PPARδアゴニストおよび運動が協同的に筋肉ゲノムを再プログラミングし、持久力の限界を上昇させることができるのかを最初に証明している。
(実施例5)
PPARδアゴニスト処置と運動訓練との組み合わせにより、固有の遺伝子発現サインが得られた。Vマウス、GWマウス、Trマウス、およびTr+GWマウスにおける骨格筋転写プログラムの包括的研究を、マイクロアレイ分析を使用して行った。Affymetrix(商標)高密度オリゴヌクレオチドアレイマウスゲノム430A 2.0チップを使用した。
in vitro転写産物の調製、オリゴヌクレオチドアレイハイブリッド形成、およびスキャニングを、Affymetrix(商標)提供のプロトコールにしたがって行った。変動に起因する矛盾を最小にするために、発現の生データを、Affymetrix(商標)MICROARRAY SUITE(商標)5.0ソフトウェアを使用して概算し、対比較を行った。全プローブ組の整えた平均シグナルを、大域評価のために各アレイについてユーザー指定の標的シグナル値(200)に調整した。特定の除外基準を適用しなかった。フリーウェアプログラムBULLFROG7(インターネットBarlow−LockhartBrainMapNIMHGrant.orgで入手可能)およびJava(登録商標)ベースの統計ツールVAMPIRE(Hsiaoら、Bioinformatics、20:3108−3127、2004)を使用してさらなる分析を行った。
四頭筋のゲノムワイド分析により、GW1516処置、運動、および組み合わせによって96、113、および130遺伝子がそれぞれ調節されることが明らかとなった(図6)。GW1516または運動のみによって調整される標的遺伝子の約50%は同一であった。これは、遺伝子ネットワークのPPARδ活性化が同一ネットワークに対する運動効果を部分的に模倣することを証明する。
GW1516処置と運動訓練との組み合わせによって調節される130種の遺伝子およびかかる各遺伝子の分類を表1に示す。130種の調節された遺伝子には、30種の脂肪代謝遺伝子、5種の酸素キャリア、5種のミトコンドリア遺伝子、3種の炭水化物代謝遺伝子、15種のシグナル伝達遺伝子、16種の転写遺伝子、10種の輸送遺伝子、3種のステロイド生合成遺伝子、5種の熱ショック遺伝子、2種の血管形成遺伝子、5種の増殖およびアポトーシス遺伝子、2種のサイトカイン、および29種の他の遺伝子が含まれていた。表1に示す運動訓練/GW1516処置(GW+Tr)遺伝子サイン中の遺伝子の大部分が誘導された(109/130)。109種の上方制御された遺伝子を、表1中に太字でないフォントで示す(最終カラム>1)。下方制御された遺伝子を表1中に太字の斜体で示す(最終カラム<1)。
驚くべきことに、GW1516処置と運動との組み合わせにより、2つの介入の融合や完全な重複ではない固有の遺伝子発現パターン(「GW+TRプロフィール」)が確立された(図6)。この固有のサインは、GW1516および運動のみによって調節されない48種の標的遺伝子(表2)を含み、GW1516または運動のみによって調節される74種の遺伝子が除外される(そのうちのいくつかを表3に示す)。GW1516処置と運動との組み合わせについてのこのサイン(表2)は、エネルギーホメオスタシス、血管形成、酸素運搬、シグナル伝達、転写、および基質輸送(持久力適応に関与する過程である)の調節酵素をコードする遺伝子で高度に富化された。特に、酸化的代謝に関与する遺伝子の支配は、運動と薬物処置との組み合わせによって選択的に上方制御される(表1および2中の太字でない遺伝子を参照のこと)。さらに、いずれかの介入によって活性化されたいくつかのストレス関連遺伝子(熱ショックタンパク質、メタロチオネイン、および他のストレスバイオマーカーが含まれる(表3))は組み合わせによって変化せず、これはおそらく運動ベースの損傷の潜在的な減少を反映している。
32%のGW+Tr調節遺伝子は、代謝経路(脂肪酸の生合成/貯蔵(例えば、FAS、SCD1および2)、取り込み(例えば、FAT/CD36、脂肪酸結合タンパク質(FABP)、およびLPL)、および酸化(例えば、アディポネクチン、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)、PDK4、UCP3);および炭水化物代謝(例えば、フルクトース二リン酸2(FBP2)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1(PEPCKl)、乳酸デヒドロゲナーゼB)など)の酵素をコードし、これらの遺伝子は酸素輸送体およびミトコンドリアタンパク質と共に筋肉の能力に直接関連する最大の遺伝子クラスを形成する(Ikedaら、Biochem.Biophys.Res.Commun .296:395−400、2002;Achten and Jeukendrup、Nutrition.20:716−27、2004;Hittelら、J.Appl .Physiol.98:168−79、2005;Civitareseら、Cell Metab .4:75−87、2006;Nadeauら、FASEB J.17:1812−9、2006;Kiens、Physiol.Rev.86:205−43、2006;Yamauchiら、Nat.Med.8:1288−95、2006)。予想外に、確立されたPPARa標的遺伝子である脂肪酸アシルCoAオキシダーゼおよび中鎖アシル−CoAデヒドロゲナーゼ(MCAD)は、このサイン中に示されなかった。これらの代謝遺伝子の4つを除く全てが誘導され、GW1516処置を受けた運動訓練した被験体における骨格筋の酸化能力の一般的な増加を示した。
運動とGW1516処置との組み合わせによって四頭筋中で調節される他の遺伝子は、経路に関与するタンパク質(血管形成(例えば、アンギオポエチン様4タンパク質/脂質代謝の公知の調節因子でもある)、(例えば、アドレナリン作動性受容体β3、インスリン様成長因子、インスリン様成長因子結合タンパク質5)、転写(例えば、C/EBPα、Reverbβ、NURRl)、および基質輸送(例えば、トランスフェリン、塩素チャネル5)など)をコードした(Nagaseら、J.Clin.Invest.97:2898−904、1996;Singleton and Feldman、Neurobiol .Dis.8:541−54、2001;Adams、J.Appl.Physiol.93:1159−67、2002;Centrellaら、Gene.342:13−24、2004;Lundbyら、Eur.J.Appl Physiol.96:363−9、2005;Mahoneyら、FASEB J.19:1498−500、2005;Mahoneyら、Phys .Med.Rehabil Clin.N.Am.16:859−73、2005;Ramakrishnanら、J.Biol.Chem.280:8651−9、2005)。特定の理論に拘束されることを望まないが、かかる他の遺伝子は、少なくとも一部が、GW1516処置した運動訓練した被験体で認められる筋肉再造形および持久力の増加に関与する可能性が高い。
興味深いことに、持久力サインの48種の遺伝子サブセット(表2)の比較発現分析により(いずれかの介入のみではない)、「非訓練」VP16−PPAR5トランスジェニックマウスと著しい類似性が明らかとなった。この所見によって48種の遺伝子がPPARδに主に依存することが確認され、運動によって得られたシグナルがトランスジェニック過剰発現に匹敵するレベルまでPPARδ転写活性と強力作用を示すように機能することができることを示す。したがって、PPARδアゴニストと共に運動を手掛かりとして受容体転写活性を高活性化し、成体筋肉を再プログラミングするように機能することができる。
1つまたは複数の医薬品(例えば、PPARδアゴニスト)の存在下での運動に固有の影響を受ける(例えば、上方制御されるか、下方制御されるか、実質的に制御されない)遺伝子および/またはタンパク質を、例えば、運動訓練した被験体(例えば、アスリート)における「薬物ドーピング」のマーカーとして使用することができる。GW+Trによって調節されるが、GW1516処置または運動訓練のみでは調節されない48種の固有の遺伝子組を使用して、種々の能力向上薬を投与した運動被験体を同定することができると予想される。
(実施例6)
PPARδは、運動活性化キナーゼ(p44/42 MAPKおよびAMPK)と直接相互作用する。運動訓練は、骨格筋中の遺伝子発現を調節するキナーゼ(p44/42 MAPKおよびAMPKなど)を活性化することが公知である(Chenら、Diabetes、52:2205−12、2003;Goodyearら、Am.J.Physiol、271:E403−8、1996)。AMPKは、骨格筋の遺伝子発現および酸化的代謝に影響を及ぼす(Chenら、Diabetes.52:2205−12、2003、Reznickら、J.Physiol.574:33−9、2006)。運動調節キナーゼとPPARδシグナル伝達との間の相互作用を本実施例に記載する。四頭筋のタンパク質ホモジネート中のホスホ−p44/42 MAPKおよびホスホ−AMPKαサブユニットならびに総AMPKのレベルをウェスタンブロットによって決定した。ホスホ−p44/42MAPK、ホスホ−AMPKα1、および総AMPKα1抗体に特異的な抗体をCell Signalingから得た。ホスホ特異的AMPKα1抗体は、活性化ループ中の重要な活性化トレオニンを認識する。
両キナーゼ(ホスホ−p44/42MAPKおよびホスホ−AMPKαサブユニット)の活性化形態は、運動不足コントロールと比較して、運動マウスの四頭筋中にて高レベルで発現した(図7A)。以前の報告では、培養細胞中のGW1516によるAMPKの活性化にPPARδが必要ではないと主張されている(Kramerら、Diabetes.54(4):1157−63、2005およびKramerら、J.Biol .Chem.282(27):19313−2、2007)。対照的に、GW1516は運動不足の筋肉または訓練した筋肉のいずれにおいてもp44/42やAMPKを活性化できなかったことが認められた。これは、PPARδ調節効果がこれらのキナーゼを活性化する運動誘導性シグナルの下流にあることを示した。さらに、AMPKは、運動または薬物の非存在下にてVP16−PPAR5トランスジェニックマウスの筋肉中で構成的に活性なようである(図7B)。これらの結果は、相乗作用がAMPKおよびPPARδ共依存性であることを示す。
相乗作用がAMPKおよびPPARδ共依存性であることを示す場合、AMPKおよびPPARδの選択的同時活性化により、運動とPPARδとの組み合わせおよびVP16−PPARδの過剰発現によって誘発される遺伝子発現の変化を模倣する遺伝子発現の変化が誘導されるであろう。これを証明するために、運動とGW1516処置との組み合わせによって骨格筋中で誘導される転写の変化(実施例5に記載)を、AMPKアクチベーター処置(細胞透過性AMPアナログAICAR;250mg/kg/日、i.p.)およびGW1516処置(5mg/kg/日、経口経管栄養)との組み合わせの転写の変化と6日間比較した。実施例5に記載の方法を使用してゲノム分析を行った。
6日間のGW1516およびAICARの同時処置により、非訓練C57B1/6Jマウスの四頭筋中に固有の遺伝子発現サインが得られ(図8A、翻訳、タンパク質プロセシング、アミノ酸代謝、脂肪代謝、酸素キャリア、炭水化物代謝、シグナル伝達、転写、輸送、ステロイド生合成、熱ショック応答、血管形成、増殖およびアポトーシス、サイトカイン、収縮タンパク質、およびストレスなどに関連する標的遺伝子が含まれる)、これはGW1516処置と運動との組み合わせと40%の遺伝子を共有する(図8B)。2つのサイン(PPARδ活性化と運動との組み合わせまたはPPARδおよびAMPKの同時活性化)に共通の52種の遺伝子の分類(表4に列挙)により、大部分の標的が酸化的代謝に関与することが明らかとなった。
ビヒクル(V)、GW1516(GW、5mg/kg/日)、AICAR(AI、250mg/kg/日)、および2つの薬物の組み合わせ(GW+AI)で6日間処置したマウスの四頭筋中の選択的酸化遺伝子(表4に列挙の8種の遺伝子)の定量的発現分析を、実施例1に記載の方法を使用して決定した。図9A〜Hに示すように、これらのバイオマーカーのいくつか(PDK4、SCD1、ATPクエン酸リアーゼ、HSL、mFABP、およびLPLが含まれる)は、四頭筋中でGW1516およびAICARによって相乗的様式で誘導される(図9C〜9H)。興味深いことに、相乗作用はUCP3およびmCPTIで検出できなかった(図9AおよびB)。これらの遺伝子は、AMPKが構成的に活性な非訓練VP16−PPAR5マウスの四頭筋中で誘導された(表5)。
まとめると、これらの結果は、AMPKとPPARδとの間の相互作用が運動中の骨格筋トランスクリプトームの再プログラミングに実質的に寄与し得る一方で、さらなる変化が運動シグナル伝達ネットワークの他の成分とPPARδとの間のクロストークに関与し得ることを証明する。要約すれば、PPARδおよび運動は走行持久力を相乗的に調節する。理論に拘束されないが、キナーゼ活性化は、能力を有効に向上させる「持久力遺伝子発現サイン」の確立において運動中のPPARδシグナル伝達に影響を及ぼし得る。
(実施例7)
AMPKは、PPARδによる転写活性化を増加させる。実施例6に記載の遺伝子相乗作用は、AMPKが骨格筋におけるPPARδの転写活性を直接調節することを示す。これを証明するために、野生型マウスおよびPPARδヌルマウスから単離した初代筋細胞における遺伝子発現に及ぼすGW1516およびAICARの影響について分析した。初代筋細胞を、以前に記載のように野生型マウスおよびPPARδヌルマウスから単離した(Rando and Blau、J.Cell.Biol.125(6):1275−87、1994)。骨格筋C2C12細胞を、20%血清およびペニシリン/ストレプトマイシンカクテルを含むDMEM中で培養した。分化のために、80%コンフルエンスの細胞を分化培地(DMEM+2%血清)に4日間切り替えて、分化した筋細管を得た。細胞を、ビヒクル、GW1516、AICAR、またはGW1516+AICAR(GW:0.1μM;AICAR:500μM)で24時間処置した。UCP3、PDK4、LPL、およびHSLのRNA発現を、実施例1に記載のようにリアルタイム定量PCRを使用して決定した。図10A〜Dに示すように、相乗作用はPPARδに依存し、ヌル細胞中で喪失する。GW1516およびAICARによる遺伝子発現の類似の相乗的調節が、分化C2C12細胞でも認められた。これらの結果は、AMPK活性化が筋肉中のPPARδのリガンド依存性転写効果を向上させることができることを示す。より直接的にこの問題に取り組むために、レポーター遺伝子発現アッセイを使用した。
AD293細胞を、10%血清および抗生物質カクテルを含むDMEM中で培養した。製造者の説明書に従ってリポフェクタミン(商標)2000を使用して、細胞を1つまたは複数のCMX−Flag、CMX−Flag PPARδ、CMX−Tk−PPRE、またはCMX−βGAL、またはhAMPK(αlおよびα2サブユニット、Origene)発現ベクターでトランスフェクトした。抗Flag抗体抱合ビーズを、トランスフェクトした細胞由来の溶解物と共に40℃で一晩インキュベートした。Flagタグ化タンパク質またはタンパク質複合体を、非結合物質からのビーズの分離によって免疫沈降させた。ビーズを氷冷溶解緩衝液中で洗浄後、Laemmli緩衝液中で抽出した。免疫共沈降試験のために、溶解緩衝液からSDSを排除した。FLAGタグまたはAMPKαサブユニットに特異的な抗体を使用してウェスタンブロッティングを行った。
触媒AMPKα1またはcc2サブユニットのいずれか(コントロールベクターではない)のいずれかのPPARδとの同時トランスフェクションにより、AD293細胞中でのPPRE駆動レポーター遺伝子の誘導時にPPARδの基底(図10E)およびGW1516依存性転写活性(図10F)が増加した。AMPK過剰発現またはGW1516処置は、PPARδ発現ベクターを排除するトランスフェクションでレポーター活性を変化させず、RXRが影響する可能性が否定された。さらなる結果は、レポーターとの直接的な相互作用によってAMPKがPPARδ転写活性を調整することができることを示す。Flag−PPARδおよび触媒AMPKα1またはα2サブユニットのいずれかで同時トランスフェクトしたAD293細胞では、両サブユニットは、Flag−PPARδとの複合体として免疫共沈降した(図10G)。さらに、Flag−PPARδはまた、AD293細胞由来の内因性AMPKαサブユニットを免疫共沈降し、核内受容体とキナーゼとの間の直接的な物理的相互作用が確認された(図10H)。物理的相互作用にもかかわらず、AMPKはPPARδリン酸化を増加させることができなかった。
潜在的なAMPKリン酸化部位がPPARδ中に見出された一方で、これらの部位はin vitroキナーゼアッセイにおいてAMPKによってリン酸化されなかった。AMPKの存在下または非存在下でのAD293細胞中のPPARδのp32標識の測定によってこれをさらに確認した。AD293細胞を、上記のようにPPARδおよびhAMPk(α1またはα2サブユニット)発現ベクターでトランスフェクトした。トランスフェクション48時間後、細胞をリン酸塩フリーのDMEMで3回洗浄し、32P−オルトリン酸塩を含むリン酸塩フリーのDMEMと20時間インキュベートした(100μCi/5ml)。細胞を氷冷リン酸塩フリーDMEMで3回洗浄し、氷冷溶解緩衝液中に溶解した。
図10Iに示すように、全体的なPPARδリン酸化はin vivoでのAMPKによって増加しない。しかし、AMPKcc2およびコアクチベーターPGC1α(公知のAMPKのリン酸化標的)の同時トランスフェクションによって協力的に相互作用して、PPARδの基底およびリガンド依存性の転写活性の両方がさらに誘導される(図10J)。顕著には、Flag−PGC1αとAMPK(共にPPARδと独立して相互作用する)との間の有意な物理的相互作用は検出されなかった(図10K)。まとめると、これらの所見は、直接的なタンパク質−タンパク質相互作用および/またはPGC1αなどのコアクチベーターのリン酸化によってAMPKが受容体活性を強化することができる場合、AMPKがPPARδと転写複合体中に存在し得ることを示す。
これらの結果は、AMPKがPPARδと直接的に相互作用し、受容体を介して基底およびリガンド依存性の転写を劇的に増加させることを示す。物理的相互作用にもかかわらず、AMPKはPPARδをリン酸化しない。AMPKおよびその基質PGC1αは、PPARδ転写を相乗的に増加させ、共調節因子を介したAMPKによる受容体の直接的調節を示した。
in vivoでの遺伝子発現の調節において運動活性化AMPKがPPARδと相互作用するという結論は、AICAR(AMPKアクチベーター)およびGW1516での動物の処置によって骨格筋中に遺伝子サインが作製されるという所見によって強化され、これは、運動とGW1516処置との組み合わせの遺伝的影響の40%までを再現する(表4を参照のこと)。さらに、このサイン由来のいくつかの候補遺伝子は野生型においてGW1516およびAICARによって相乗的に誘導されるがPPARδヌル初代筋細胞では誘導されず、2つの薬物の相互作用の影響はPPARδによって媒介されることが証明される。一般的に調節される遺伝子の45%が酸化的代謝に関与する一方で、筋肉の能力に関連するさらなる共通の標的には、血管形成遺伝子、シグナル伝達遺伝子、およびグルコース節約遺伝子が含まれる(表4)。PPARδ−AMPK相互作用と無関係のPPARδ−運動サインの一部(図8B)が受容体と他の運動シグナル伝達物質(MAPK、カルシニューリン/NFAT、およびSIRT1など)との間のクロストークに依存し得る可能性がある。これらの可能性を図10L中にまとめている。図10Lでは、AMPKおよびシグナル伝達ネットワークのさらなる成分がリガンド化PPARδと相互作用して筋肉持久力遺伝子サインおよび増強された持久力適応が得られることを提案している。
データは、合成PPARδ活性化のみで成体マウスにおいて予め設定された筋肉の構造および持久力レベルを変化させることができない一連のゲノム変化を誘導することを示す。しかし、PPARδ活性化の運動との組み合わせにより、潜在的にAMPKなどのキナーゼとの相互作用を介して転写が新規に変化し(図10L中に示す)、筋肉の能力を劇的に向上させる表現型に筋肉トランスクリプトームがリセットされる。
(実施例8)
データは、成体マウスにおけるPPARδの薬理学的活性化により、運動シグナルと併せて走行持久力が増加し得ることを証明する。この過程におけるAMPKの中心的役割は、運動によって強く刺激され、運動せずに持久力を示すVP16−PPARdトランスジェニックマウスの筋肉で構成的に活性であるという両方の所見によって特に強調される。さらに、AMPKは、PPARδだけでなく代謝の他の転写調節因子(例えば、PGC1α、PPARα)とも相互作用することによって複数の転写プログラムを組み込むことができる(Hongら、2003;Leff、2003;Bronnerら、2004;Jaagerら、2007)。これにより、AMPKの化学的活性化が運動せずに走行持久力を増大させるのに十分であるかどうかについての問題が提起される。
この概念を試験するために、C57B/6JマウスをAICAR(500mg/kg/日)で4週間処置した。AICARは、AMPKaサブユニットおよびアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)のリン酸化を増加させ、四頭筋中のUCP3の発現を増加させた。これにより、AMPKシグナル伝達の有効な活性化が確認された(図11A)。興味深いことに、4週間の薬物処置により、精巣上体脂肪量の体重に対する比が減少し、体重が変化することなく酸素消費が増加し(図11B〜11E)、AICARが持久力を正に調節することができるという推測が支持された。実際、トレッドミル持久力試験では、ACIAR処置マウスはビヒクル処置マウスより長い時間(約23%)およびより長い距離(約44%)を走行し、運動せずに持久力を増加することができることが明らかとなった(図11F)。さらに、四頭筋の大域遺伝子発現分析により、AICAR処置のみで酸化的代謝に関連する32の遺伝子組が上方制御されることが明らかとなった(図11Gおよび表6)。特に、これらの32種の遺伝子のうちの30種はまたVP16−PPARδトランスジェニックマウスで上方制御され、AMPKによる酸化遺伝子の刺激がPPARδに依存し得ることが示唆された(表6)。
この可能性を試験するために、野生型およびPPARδヌル初代筋細胞を使用した。野生型初代細胞のAICARでの処置(72時間)により、重要な酸化系バイオマーカー遺伝子(Scd1、fasn[FAS]、Ppargc1a、Pdk4)の発現が増加した(図11H)。対照的に、AICARは、PPARδヌル細胞中で上記細胞の発現を増加させることができず、酸化遺伝子に及ぼすAMPKの転写的影響には受容体が必要であることが証明された。
データは、AMP模倣AICARがPPARδ依存様式で筋肉代謝の遺伝的再プログラミングによって運動不足のマウスの持久力を増加させることができることを示す。データはまた、運動と組み合わせたPPARδアゴニストが疲労耐性I型線維の仕様およびミトコンドリア生合成を相乗的に誘導し、最終的に身体能力を向上させることを証明する。これらの変化は、薬物−運動パラダイムに固有の筋肉持久力遺伝子サインの予想外であるが興味深い確立と相関する。かかるサインは、運動活性化されたAMPKとPPARδとの間の分子クロストークおよびおそらく物理的結合の結果である。これらの所見により、経口リガンドを使用したAMPK−PPARδシグナル伝達軸のターゲティングによって筋肉持久力を再プログラミングするための新規の薬理学的ストラテジーが確認される。
AMPKアクチベーターAICARは、その一部がPPARδ依存性酸化遺伝子の刺激によって非訓練成体における酸素消費および持久力を増加させた。持久力におけるPPARδの役割が証明されたにもかかわらず、強力且つ選択的なアゴニストでの4週間の処置では線維型の組成または持久力のいずれも変化させることができず、PPARδの直接および薬理学的活性化では走行能力を向上させるのに不十分であることが明らかとなった。対照的に、出生時の活性化PPARδのトランスジェニック過剰発現により、発生期筋線維が遅筋線維に分化形質転換するように予めプログラミングされ、したがって、成体トランスジェニックマウスに高い基底持久力を分け与える。明らかに、一旦成体で線維型の仕様が完了すると、単一転写経路の人工的活性化に対する筋肉の潜在的適応性が制限される。
これらの傾向にしたがって、合成AMP模倣物での非訓練成体における予想外であるが成功した持久力の再プログラミングは、その基質(PGC1a、PPARα、およびPPARδなど)に支配される複数の転写プログラムを同時にターゲティングし、運動に類似する遺伝的影響を誘発するAMPKの能力に関連し得る(Hongら、2003;Leff、2003;Bronnerら、2004;Jagerら、2007)。
興味深いことに、PPARδアゴニストのみによる操作に対する成体骨格筋持久力の不応性は、薬物処置と運動との組み合わせによって緩和される。実際、このストラテジーにより、いずれかのパラダイムのみに固有の持久力遺伝子サインが得られ、これは運動とPPARδシグナル伝達との間のクロストークを反映する。運動がシグナル伝達事象のカスケードを活性化するにもかかわらず、AMPKは、いくつかの理由によってこの遺伝子適応の中核をなす可能性が高い。第1に、AMPKは、低ATPレベル(運動中などに起こる)を検出し、次に酸化的代謝を増加させる代謝センサーである(Muら、2001;Reznick and Shulman、2006)。第2に、AMPKの長期的影響は、その一部が遺伝子発現の調節によって媒介される(Reznick and Shulman、2006)。第3に、AMPKが転写因子と潜在的に相互作用することができる場合、運動はAMPKの活性化および核内移行を誘導する。
最後に、AMPK活性化を欠損するトランスジェニックマウスは自発運動が減少し(Muら、2001;Thomsonら、2007)、このことは受容体シグナル伝達を調整する魅力的な運動の手掛かりとなる。
遺伝子発現の調節において運動活性化AMPKがPPARδと相互作用するという考えは、AMPKがPPARδと会合して受容体を介した基底転写およびリガンド依存性転写が劇的に増加するという証拠によって支持される。物理的相互作用にもかかわらず、AMPKは代謝標識研究においてPPARδリン酸化を誘導しない。
興味深いことに、AMPKおよびその以前に報告された基質PGC1aは相乗的にPPARδ転写を増加させ、共調節因子修飾を介したAMPKによる受容体機能の間接的調節が示唆された。それにもかかわらず、直接的タンパク質−タンパク質相互作用を介してAMPKによってPPARδが調節される可能性があり得る。
実際、類似の機構を介したAMPKによる他の転写因子の調節が以前に証明されている(Hongら、2003;Leff、2003;Bronnerら、2004)。AMPK−PPARδ相互作用の生理学的確証は、GW1516およびAICAR(AMPKアクチベーター)がいくつかの持久力関連遺伝子を野生型で相乗的に誘導するがPPARδヌル初代筋細胞で誘導しないという所見に由来する。より重要には、AICARおよびGW1516での動物の処置によって骨格筋中に遺伝子サインが作製され、これは、運動とGW1516処置との組み合わせの遺伝的影響の40%までを再現する。特に、2プロフィール間で共有される遺伝子は、酸化的代謝、血管形成、およびグルコース節約(筋肉の能力に直接関連する経路)に関与する。
運動または運動−PPARδ相互作用のいずれかによって調節される遺伝子の全てがAMPK依存性であるわけではないにもかかわらず、他の公知の運動シグナルと比較して、2つの重要な所見によって持久力の促進におけるキナーゼの重要な役割が割り当てられる(Bassel−Duby and Olson、2006;Goodyear et al.、1996;Lagouge et al.、2006)。第1に、AMPKは、運動せずに持久力を示すVP16−PPARδトランスジェニック筋肉で構成的に活性である。第2に、AICARによるAMPK活性化は、さらなる運動シグナルを持たない走行持久力を増加させるのに十分であった。顕著には、AICARによって上方制御された大部分の酸化遺伝子(32種のうち30種)は超持久力VP16−PPARdマウスで活性であり、おそらく、これらの遺伝子は筋肉の能力を改善するために必要なコアな遺伝子組である。
興味深いことに、AICARはPPARδヌル筋肉細胞における酸化遺伝子発現を誘導することができず、少なくともAMPKによる酸化的代謝の調節にはPPARδが必要であることが示された。まとめると、これらの所見は、運動を置換するために経口AMPK薬によって容易に活用することができる骨格筋トランスクリプトームおよび持久力の再プログラミングにおけるAMPKとのPPARδとの間の分子協力を証明している(図11I)。
ヒトでは、持久運動により、心肺系、内分泌系、および筋神経系が生理学的に適応する(Jones and Carter、2000;Lucia et al.、2001)。骨格筋に注目した調査にもかかわらず、PPARd、AMPK、および運動の筋肉外の影響も持久力の増加に寄与し得る。PPARdおよびAMPKアゴニストによる筋肉外適応の増強は未だ研究されていないにもかかわらず、薬物処置によって精巣上体脂肪量を減少させることができ、おそらくさらなる全身性の利点が付与される。PPARδが正常な心筋収縮性および脂肪組織の内分泌機能に重要であることは注目に値する(Wang et al.、2003;Cheng et al.、2004)。同様に、メルホルミンによるAMPKの活性化は、その血糖値を低下させる能力を媒介すると考えられる(Shaw et al.、2005)。アスリートの能力の増大に加えて、運動は広範な病理生理学的状態(呼吸器障害、心血管の異常、2型糖尿病、および癌のリスクなど)において有益な影響を及ぼす。開示は、合成PPARδ活性化および運動、より重要には、AMPK活性化のみで、骨格筋ゲノムを再プログラミングし、持久力を劇的に向上させる強い転写の手掛かりが得られることを証明する。開示は、運動模倣薬を使用して筋肉(および他の組織)の予め設定された遺伝子刷り込みを再編成するためストラテジーが、運動が有益であることが公知の消耗疾患および虚弱などの一定の筋肉疾患ならびに肥満の治療において治療可能性を有することを示す。
(実施例9)
被験体における運動効果の向上。本実施例は、健康な哺乳動物被験体において運動を増大または向上させるために使用することができる方法を記載する。特定の条件を記載しているが、当業者は、かかる条件を多少変更することができると認識するであろう。
健康な成人被験体は、少なくとも30分間(例えば、30〜90分間)の有酸素運動(例えば、ランニング)を、1週間あたり少なくとも3〜4日間(例えば、1週間あたり3〜7日間)にて少なくとも2週間(例えば、少なくとも4〜12週間)にわたって行う。最大心拍数の40%〜50%、最大心拍数の50%〜60%、最大心拍数の60%〜70%、または最大心拍数の75%〜80%で運動を行う。ここで、ヒト被験体の最大心拍数を以下のように計算する:220bps−(被験体の年齢)。
上記の有酸素運動を実施中または実施後に、被験体に、GW1516((2−メチル−4(((4−メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−1,3−チアゾール−5−イル)メチル)スルファニル)フェノキシ)酢酸)を1〜20mg/日(2.5または10mg/日など)の用量で経口投与する。被験体は、GW1516を投与しながら有酸素運動を実施し続けることができる。被験体に、GW1516を少なくとも2週間(少なくとも4週間など)投与することができる。
処置した被験体で達成される運動効果(例えば、走行持久力)を、非処置被験体のかかる効果と比較することができる。運動効果を、当該分野で公知の方法(有酸素性持久力または走行持久力の測定(例えば、疲労するまで走行した距離または特定の距離を走行するための時間の測定)など)を使用して測定することができる。いくつかの例では、目的の運動効果は、非処置被験体と比較して、処置被験体で少なくとも5%(少なくとも10%など)増加する。
(実施例10)
運動訓練した被験体における能力向上物質の同定。本実施例は、運動訓練した被験体における能力向上物質を同定するために使用することができる方法を記載する。健康な成人から得た生物サンプルを分析して、表2または表4に列挙した1つまたは複数の分子(核酸またはタンパク質)の発現の分析によって被験体がPES(例えば、GW1516)を摂取しているかどうかを決定する。適切な生物サンプルには、被験体の細胞(末梢血、尿、唾液、組織生検、または口内スワブ中に存在する細胞など)から得たゲノムDNAもしくはRNA(mRNAが含まれる)またはタンパク質を含むサンプルが含まれる。例えば、被験体の生物サンプルを、表2または4に列挙の少なくとも4つの分子(核酸またはタンパク質)の任意の組み合わせ(表2または4に列挙の少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、または少なくとも40個の分子の任意の組み合わせ(例えば、表2または4に列挙の分子の全て)など)の発現の変化(増加または減少など)についてアッセイすることができる。
例えば、サンプル由来の分子の増幅のためのPCRの使用またはmRNAまたはcDNAを単離するための市販のキットの使用による生物サンプル由来の核酸分子の単離方法は日常的方法である。しかし、分析前に核酸を単離する必要はない。核酸を、ストリンジェントな条件下で表2または4に列挙の1つまたは複数の核酸分子とハイブリッド形成するオリゴヌクレオチドプローブと接触させることができる。次いで、プローブとハイブリッド形成する核酸を検出し、定量する。オリゴヌクレオチドプローブ配列は、表2または4に列挙の配列によって示される核酸分子に特異的に結合することができる。
表2または4に列挙の分子の発現の増加または減少を、細胞レベルのmRNAの測定によって検出することができる。mRNAを、当該分野で周知の技術(例えば、ノーザン分析、RT−PCR、およびmRNA in situハイブリッド形成が含まれる)を使用して測定することができる。mRNA分析手順の詳細を、例えば、提供した実施例およびSambrookら.(ed.)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2nd ed.、vol.1−3、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に見出すことができる。
表2または4に列挙の配列に特異的なオリゴヌクレオチドを、市販の機械を使用して化学合成することができる。次いで、これらのオリゴヌクレオチドを、例えば、放射性同位体(32Pなど)または非放射性標識(ビオチン(Ward and Langerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:6633−57、1981)またはフルオロフォアなど)で標識し、ドットブロットまたは電気泳動後のゲルからの移行によって膜または他の固体支持体上に固定した各DNAサンプルとハイブリッド形成させることができる。これらの特異的配列を、例えば、オートラジオグラフィまたは蛍光定量反応(Landegrenら、Science 242:229’−37’、1989)または比色反応(Gebeyehuら、Nucleic Acids Res.15:4513−34、1987)などの方法によって視覚化する。
生物サンプル中のタンパク質も分析することができる。いくつかの例では、分析前に日常的な方法を使用してタンパク質をを単離する。
1つの例では、表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間(SELDI−TOF)質量分析を使用して、例えば、ProteinChip(商標)(Ciphergen Biosystems、Palo Alto、CA)の使用によって差次的タンパク質発現の変化を検出する。かかる方法は当該分野で周知である(例えば、米国特許第5,719,060号;米国特許第6,897,072号;および米国特許第6,881,586号を参照のこと)。SELDIは、分析物の捕捉または脱離を増強する表面上のエネルギーの流れに分析物を存在させる固相脱離方法である。したがって、特定の例では、クロマトグラフィ表面は、表2または4に列挙のタンパク質を認識する抗体を含む。サンプル中に存在する抗原は、クロマトグラフィ表面上の抗体を認識することができる。非結合タンパク質および質量分析妨害化合物を洗い流し、クロマトグラフ表面上に保持されたタンパク質を、SELDI−TOFによって分析および検出する。次いで、サンプル由来のMSプロフィールを、差次的タンパク質発現マッピングを使用して比較し、それにより、特定分子量のタンパク質の相対的発現レベルを、種々の統計的技術およびバイオインフォマティクスソフトウェアシステムによって比較することができる。
別の例では、表2または4に列挙の分子に特異的な抗体の利用能により、当該分野で周知の多数の免疫アッセイ方法の1つ(Harlow and Lane(Antibodies、A Laboratory Manual、CSHL、New York、1988)に示す方法など)によってタンパク質の検出および定量が容易になる。かかる抗体の構築方法は当該分野で周知である。任意の標準的な免疫アッセイ形式(ELISA、ウェスタンブロット、またはRIAアッセイなど)を使用して、タンパク質レベルを測定することができる。タンパク質の検出および定量のために免疫組織化学的技術を使用することもできる。例えば、組織サンプルを被験体から得、適切な特異的結合剤および任意の標準的な検出システム(西洋ワサビペルオキシダーゼに抱合した二次抗体を含むシステムなど)を使用して所望のタンパク質の存在について切片染色することができる。かかる技術に関する一般的なガイダンスを、Bancroft and Stevens(Theory and Practice of Histological Techniques、Churchill Livingstone、1982)およびAusubelら(Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York、1998)に見出すことができる。
タンパク質発現または核酸発現を検出またはさらに定量するために、試験サンプル中の発現を、PESを摂取しなかった被験体由来の細胞中で見出されるレベルと比較することができる。あるいは、試験被験体中で同定された発現パターンを、表2または4に示す発現パターンと比較することができる。
例えば、試験サンプルが表2または4に類似の発現パターンを示す場合(例えば、表2または4で上方制御および下方制御した遺伝子がそれぞれ上方制御および下方制御すべき被験体で認められる場合)、これは、被験体がPES(PPARδアゴニスト(例えば、GW1516)など)を摂取していることを示す。対照的に、試験被験体において同定された発現パターンが表2または4に示した発現パターンと異なる場合(例えば、表2または4で上方制御および下方制御した遺伝子が異なって発現すべきでない被験体で認められるか、異なる調節パターンを示す場合)、これは被験体がPES(PPARδアゴニスト(例えば、GW1516)など)を摂取していないことを示す。
正常なヒト細胞中で見出された同一タンパク質の量と比較した試験被験体の細胞中の表2に列挙した太字でないタンパク質の有意な増加は、通常、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、またはそれを超えて異なる。被験体サンプル中の表2に列挙した太字でないタンパク質の実質的な過剰発現は、PESを摂取している被験体を示し得る。同様に、正常なヒト細胞中で見出された同一タンパク質の量と比較した試験被験体の細胞中の表2に列挙した太字のタンパク質の有意な減少は、通常、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、またはそれを超えて異なる。
被験体サンプル中の表2に列挙した太字のタンパク質の実質的な過小発現は、PESを摂取している被験体を示し得る。
本開示を特定の実施形態に重点をおいて記載しているが、特定の実施形態の変形形態を使用することができ、本明細書中に特記した方法以外の方法で本開示を実施することができることが意図されることが当業者に自明であろう。したがって、本開示には、以下の特許請求の範囲によって定義された本開示の精神および範囲内に含まれる全ての修正形態が含まれる。

Claims (69)

  1. 筋消耗疾患または障害を有する被験体において筋緊張または筋肉量を改善または維持するための医薬の製造のためのAMPキナーゼアゴニストの使用。
  2. 前記AMPKアゴニストがAICARである、請求項1に記載の使用。
  3. 有効量のPPARδアゴニストをさらに含み、それにより、被験体における運動効果を向上させる、請求項1に記載の使用。
  4. 前記被験体が哺乳動物である、請求項1に記載の使用。
  5. 前記被験体が競技哺乳動物である、請求項4に記載の使用。
  6. 前記競技哺乳動物がウマ、イヌ、またはヒトである、請求項5に記載の使用。
  7. 前記被験体が成体である、請求項4に記載の使用。
  8. 前記被験体が運動訓練被験体である、請求項1に記載の使用。
  9. 前記PPARδアゴニストがGW1516である、請求項3に記載の使用。
  10. 前記PPARδアゴニストをAMPKアゴニストと同日に投与する、請求項3に記載の使用。
  11. 前記AMPKアゴニストがAICARであり、前記PPARδアゴニストがGW1516である、請求項8に記載の使用。
  12. 前記被験体が有酸素運動を行うことをさらに含む、請求項3に記載の使用。
  13. 前記運動効果が、持久力の改善である、請求項3に記載の使用。
  14. 持久力の改善が、走行距離の改善、走行時間の改善、またはその組み合わせを含む、請求項13に記載の使用。
  15. 有効量が、単一用量または分割用量で約0.5mg/kg/日〜約100mg/kg/日である、請求項1に記載の使用。
  16. 前記化合物を、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、または皮下注射のために処方する、請求項1に記載の使用。
  17. 運動効果が、被験体の少なくとも1つの骨格筋における脂肪酸酸化の増加である、請求項3に記載の使用。
  18. 運動効果が体脂肪の減少である、請求項3に記載の使用。
  19. 前記体脂肪が白色脂肪組織である、請求項18に記載の使用。
  20. 被験体における筋緊張、筋持久力、または筋肉量の治療で使用するAMPキナーゼアゴニストを含む組成物。
  21. 前記AMPKアゴニストがAICARである、請求項20に記載の組成物。
  22. 有効量のPPARδアゴニストをさらに含み、それにより、被験体における運動効果を向上させる、請求項20に記載の組成物。
  23. 前記被験体が哺乳動物である、請求項20に記載の組成物。
  24. 前記被験体が競技哺乳動物である、請求項23に記載の組成物。
  25. 前記競技哺乳動物がウマ、イヌ、またはヒトである、請求項24に記載の組成物。
  26. 前記被験体が成体である、請求項23に記載の組成物。
  27. 前記被験体が運動訓練被験体である、請求項20に記載の組成物。
  28. 前記PPARδアゴニストがGW1516である、請求項23に記載の組成物。
  29. 前記PPARδアゴニストをAMPKアゴニストと同日に投与する、請求項23に記載の組成物。
  30. 前記AMPKアゴニストがAICARであり、前記PPARδアゴニストがGW1516である、請求項28に記載の組成物。
  31. 前記被験体が有酸素運動を行うことをさらに含む、請求項23に記載の組成物。
  32. 前記運動効果が、持久力の改善である、請求項23に記載の組成物。
  33. 持久力の改善が、走行距離の改善、走行時間の改善、またはその組み合わせを含む、請求項32に記載の組成物。
  34. 有効量が、単一用量または分割用量で約0.5mg/kg/日〜約100mg/kg/日である、請求項20に記載の組成物。
  35. 前記化合物を、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、または皮下注射のために処方する、請求項20に記載の組成物。
  36. 運動効果が、被験体の少なくとも1つの骨格筋における脂肪酸酸化の増加である、請求項23に記載の組成物。
  37. 運動効果が体脂肪の減少である、請求項23に記載の組成物。
  38. 前記体脂肪が白色脂肪組織である、請求項37に記載の組成物。
  39. 運動訓練した被験体から採取した生物サンプル中の、表2または表4中に列挙した1つまたは複数の分子の発現を決定する工程を含む、運動訓練した被験体における運動能力向上物質の使用を同定する方法。
  40. (i)1つまたは複数の脂肪分化関連タンパク質;ステアロイル−補酵素A不飽和化酵素2;アセチル−補酵素Aアセチルトランスフェラーゼ2;ATPクエン酸リアーゼ;アディポネクチン(C1Qおよびコラーゲンドメイン含有);ジアシルグリセロールO−アシルトランスフェラーゼ2;リパーゼ(ホルモン感受性);モノグリセリドリパーゼ;レジスチン;CD36抗原;脂肪酸結合タンパク質4(脂肪細胞);リポタンパク質リパーゼ;ミクロソームグルタチオンS−トランスフェラーゼ1;GPIアンカー膜タンパク質1;二重特異性ホスファターゼ7;ホメオドメイン相互作用タンパク質キナーゼ3;インスリン様成長因子結合タンパク質5;タンパク質ホスファターゼ2(以前は2A)、調節サブユニットA(PR65)(βイソ型);タンパク質チロシンホスファターゼ様(触媒アルギニンの代わりにプロリン);メンバーb;CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)(α);核内受容体サブファミリー1、グループD、メンバー2(Reverb−b);トランスフェリン(transferring);アルチェイン1;溶質輸送体ファミリー1(中性アミノ酸輸送体)(メンバー5);RIKEN cDNA 1810073N04遺伝子;ハプトグロビン;レチノール結合タンパク質4(血漿);ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1(細胞質基質);細胞死誘導DFFA様エフェクターc;インターフェロン、α誘導タンパク質27;炭酸脱水酵素3;システインジオキシゲナーゼ1(細胞質基質);DNAセグメント、Chr4、ウェイン州立大学53(Wayne State University 53)(発現された);細胞質ダイニン1中間鎖2;クッペル様因子3(塩基性);甲状腺ホルモン応答性SP0T14ホモログ(クマネズミ属);シトクロムP450、ファミリー2、サブファミリーe、ポリペプチド1;補体因子D(アディプシン);および/またはトランスケトラーゼ中で発現が上方制御されるか、(ii)1つまたは複数のγ−グルタミルカルボキシラーゼ;3−オキソ酸CoAトランスフェラーゼ1;溶質輸送体ファミリー38(メンバー4);アネキシンA7;CD55抗原、RIKEN cDNA 1190002H23遺伝子;t(12;16)悪性脂肪肉腫(ヒト)由来融合物;リソソーム膜糖タンパク質2;および/またはPunc E1 1の隣接物中で発現が下方制御されるか、または(iii)(i)と(ii)との組み合わせである、請求項39に記載の方法。
  41. 発現の決定が、タンパク質発現の決定、タンパク質をコードする遺伝子の発現の決定、またはその組み合わせを含む、請求項39または40に記載の方法。
  42. タンパク質をコードする遺伝子の発現の決定を含む、請求項41に記載の方法。
  43. 前記生物サンプルが骨格筋生検である、請求項39に記載の方法。
  44. AMPKアゴニストおよびPPARδアゴニストを薬学的に許容可能なキャリア中に含む組成物。
  45. 前記AMPKアゴニストが、AICAR、その塩、エステル、プロドラッグ、前駆体、または誘導体である、請求項44に記載の組成物。
  46. 前記PPARδアゴニストが、GW1516、その塩、エステル、プロドラッグ、前駆体、または誘導体である、請求項44に記載の組成物。
  47. AMPKアゴニストを含む組成物を被験体に投与する工程を含み、前記筋緊張または筋肉量が促進される、筋消耗疾患、筋萎縮、または老化を治療する方法。
  48. 前記AMPKアゴニストがAICARである、請求項47に記載の方法。
  49. 前記組成物がPPARδアゴニストをさらに含む、請求項47または48に記載の方法。
  50. 筋肉増強剤を同定する方法であって、被験体を薬剤と接触させる工程および表2または4中の遺伝子を含む持久力遺伝子サイン組またはそのサブセットの発現を測定する工程を含み、かかる遺伝子組の発現が筋肉増強剤を示す、方法。
  51. 被験体における筋肉量または筋緊張を改善または維持するための方法であって、AMPキナーゼ(AMPK)アゴニストを被験体に投与する工程を含み、該筋緊張または筋肉量が運動不足の被験体のまたは固定された被験体で維持されるか、前記被験体で増加される、方法。
  52. 前記AMPKアゴニストがAICARである、請求項51に記載の方法。
  53. 有効量のPPARδアゴニストを被験体に投与し、それにより、被験体における運動効果を向上させる、投与する工程をさらに含む、請求項51に記載の方法。
  54. 前記被験体が哺乳動物である、請求項51に記載の方法。
  55. 前記被験体が競技哺乳動物である、請求項54に記載の方法。
  56. 前記競技哺乳動物がウマ、イヌ、またはヒトである、請求項55に記載の方法。
  57. 前記被験体が成体である、請求項54に記載の方法。
  58. 前記被験体が運動訓練被験体である、請求項51に記載の方法。
  59. 前記PPARδアゴニストがGW1516である、請求項53に記載の方法。
  60. 前記PPARδアゴニストをAMPKアゴニストと同日に投与する、請求項53に記載の方法。
  61. 前記AMPKアゴニストがAICARであり、前記PPARδアゴニストがGW1516である、請求項58に記載の方法。
  62. 前記被験体が有酸素運動を行う工程をさらに含む、請求項53に記載の方法。
  63. 前記運動効果が、持久力の改善である、請求項53に記載の方法。
  64. 持久力の改善が、走行距離の改善、走行時間の改善、またはその組み合わせである、請求項53に記載の方法。
  65. 有効量が、単一用量または分割用量で約0.5mg/kg/日〜約100mg/kg/日である、請求項51に記載の方法。
  66. 投与が、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、または皮下注射を含む、請求項51に記載の方法。
  67. 運動効果が、被験体の少なくとも1つの骨格筋における脂肪酸酸化の増加である、請求項53に記載の方法。
  68. 運動効果が体脂肪の減少である、請求項53に記載の方法。
  69. 前記体脂肪が白色脂肪組織である、請求項58に記載の方法。
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