JP2011256818A - 排熱回収パワープラントおよびコンバインドプラント - Google Patents

排熱回収パワープラントおよびコンバインドプラント Download PDF

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Abstract

【課題】
既存の再生ブレイトンサイクルや分流サイクルよりも高い総合効率を有する新サイクル構成を見出し、排ガスの熱エネルギーから最大の動力を回収する。
【解決手段】
排ガスの持つ熱エネルギーから最大の動力を引き出す外燃機関で、一台の圧縮機と二台のタービンと一台の発電機と一台の前置冷却器と二台の再生熱交換器と三台の排熱ボイラからなり、圧縮機から導出された後に第一の分岐点かつ第一再生熱交換器の高圧側流路を経由した後に第二の分岐点を有する回路を、作動媒体の一部または全部が超臨界状態の二酸化炭素が循環し、前記第一の分岐点で作動媒体の予熱量、第二の分岐点で二台のタービンの負荷の割合を調整することにより、排ガスの熱エネルギーから最大の動力を回収する排熱回収パワープラントと前記回路を開放型ガスタービンのボトミングサイクルに接続したコンバインドサイクル。
【選択図】図1

Description

本発明は、産業排熱から仕事を取り出すパワーサイクルに関するものであり、特に超臨界二酸化炭素を作動媒体として比較的排ガス温度の低い熱源から仕事を取り出すサイクルの総合効率の向上に関するものである。
地球温暖化防止のためエネルギー使用合理化技術の開発が世界的な規模で推進されている。未利用エネルギー源のひとつに中温度、低温度域の工場廃熱がある。
小型の蒸気タービンでは効率が低いために費用対効果に劣り、低沸点の熱媒の利用が模索されているが実用化事例は少ない。一方、これから普及が促進するコンバインドサイクルのボトミングサイクルには蒸気タービンサイクルが用いられているが、スペース効率が悪く需要の高い都市への設置のネックになっている。
二酸化炭素は温暖化係数が1の自然冷媒であり、毒性、発火性もないので本質的に環境に優しい。二酸化炭素の臨界温度、圧力はそれぞれ304K、7.38MPaであり臨界点が常温近傍にありサイクルを構成する機器の材料選択が容易である半面、臨界点の圧力は高いので、超臨界状態で作動させるには耐圧性が要求される。
図11は再生ブレイトンサイクルを示す。作動媒体がサイクル内を循環する閉サイクルの外燃機関である。圧縮機1で圧縮された作動媒体は、再生熱交換器5でガスタービン排気の有する熱エネルギー(以下排熱)を回収し、加熱器6で加熱されてタービン2に導入され膨張仕事をする。この仕事と前記圧縮機1の所要仕事の差が正であれば外部に仕事を取り出すことができる。排気13は再生熱交換器5で低温流体に熱エネルギーを受け渡して温度を下げ、前置冷却器4でさらに冷却され所定の圧縮機入口温度で圧縮機1に導入される。
この作動媒体に二酸化炭素を用いるCO2サイクルでは、圧縮機入口の熱力学的状態を臨界点近傍領域に設定すると圧縮動力が低減しサイクル効率が向上するという長所と、再生熱交換器5で、低温高圧流体の比熱が高温低圧流体の比熱よりも大きいことに起因して再生効率が下がるという難点がある。
特許文献1は原子炉プラントを対象にこの難点を解決するサイクル構成をしめしている。比熱のアンバランスを流量配分で補償している。すなわち、再生ブレイトンサイクルに二台目の圧縮機と再生熱交換器を追加し、前置冷却器4の手前で分流し、一部を前置冷却器に導き、残部を二台目の圧縮機に導き圧縮して二台目の再生熱交換器の低温流体出口で合流させる(以下分流サイクルと称す)。このようにして、比熱のアンバランスが大きい二台目の再生熱交換器の比熱率(比熱と質量流量の積)を高温流体と低温流体とでほぼ一致させて比熱のアンバランスを解消し、再生熱交換器の再生効率を回復してサイクル効率の低下を防止している。
非特許文献1は、圧縮機を分割してインタークーラーを設置しその効果を論じている。これら、高速増殖炉型の原子炉プラントへの適用においては、前期加熱器6が原子炉または中間熱交換器に対応している。後者の場合、加熱側流体の金属ナトリウムの出口温度を、前記分流サイクルの最適運転条件における二酸化炭素の加熱器入口温度よりもやや高く設定することができる。
再生サイクルの効率はタービン膨張比が比較的低いところ(1.5〜3)に最適値があるので超臨界圧サイクルに好適である。しかし、膨張比が小さいと、従来の既知のサイクルではタービン排気13の温度が高くならざるを得ず作動媒体の循環流量が増大するという課題がある。
このようなサイクルは、原子炉や太陽熱などエクセルギーの高い(温度レベルの高い)熱源からの発電においてはエネルギー利用上の制約にならないが、幅広い温度域にエクセルギーが分布する熱源、例えば開放型ガスタービンの排熱からの動力回収には不向きである。
ここで、今後の説明を明確にするために、二種類の効率を定義する。ひとつはサイクル効率で、図11に示すサイクルが加熱器で外部から取り込む熱量を基準に効率を定義したもの、他の一つは、総合効率で、熱源が保有する熱量を基準に効率を定義したものである。後者は加熱器の熱交換効率と前記のサイクル効率の積で表現される。
例えば、鉄鋼廃熱などのガスが保有するエンタルピーの利用では、加熱器6の出口ガス15の温度は、加熱器入口12での作動媒体の温度以上になるので、それ以下の温度のエクセルギーを利用できない。この結果、廃熱の保有する熱量を基準にした総合効率は低下する。
具体的事例を以下に示す。図12は、排ガス温度900K、環境温度298Kとしエクセルギー利用率を加熱器の出口ガス温度の関数として示している。環境温度(298K)に接近するとエクセルギーは急速に低下するので、この関数は上に凸の曲線になる。CO2タービンの入口温度800K、圧力20MPa、膨張比2.6の等エントロピー膨張で二酸化炭素の温度は650Kに低下する。このとき加熱器出口の排ガス温度は650K以上でなければならないから、仮に650Kとすると、この場合のエクセルギー利用率は56%となり、44%のエクセルギーが無駄になる。これが、サイクル効率は高くても総合効率は低い理由である。
特開2004−20923
Journal of Power and Energy Systems, 2,No.3(2008)pp.1060-1073
既存の再生ブレイトンサイクルや分流サイクルよりも高い総合効率を有する新サイクル構成を見出し、排ガスから最大の動力を回収すること。
請求項1に記載の発明は、一台の圧縮機と二台のタービンと一台の発電機と一台の前置冷却器と二台の再生熱交換器と三台の排熱ボイラを結合して発電する回路であって、作動媒体が圧縮機から導出された後に第一の分岐点で第一分岐の一部と第一分岐の残部に分流し、前記第一分岐の一部は第一再生熱交換器の高圧側流路を経由した後に第二の分岐点で第二分岐の一部と第二分岐の残部に分流し、前記第二分岐の一部は第二再生熱交換器の高圧側流路を経由した後に第一の排熱ボイラを経由して高温タービンに流入し膨張仕事をしたのちに、前記第二再生熱交換器および前記第一再生熱交換器の低圧側流路を順次経由した後に前記前置冷却器を経由して前記圧縮機に戻り、前記第二分岐の残部は第三の排熱ボイラから導出された作動媒体と混合され、第二の排熱ボイラを経由して低温タービンに流入し膨張仕事をした後に、前記第一再生熱交換器の低圧側流路から導出した作動媒体と混合され前記第二再生熱交換器の低圧側流路と前置冷却器を経由して圧縮機にもどり、前記第一分岐の残部は前記第三の排熱ボイラを経由して前記第二分岐の残部と合流したのち前記第二の排熱ボイラに流入し、発電することを特徴とする排熱回収パワープラントである。
請求項2に記載の発明は、前記作動媒体が二酸化炭素であり前記回路中の前記作動媒体の一部または全てが超臨界状態であることを特徴とする請求項1に記載の排熱回収パワープラントである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の排熱回収パワープラントの加熱源がオープンサイクルガスタービンの排気であることを特徴とするコンバインドサイクルである。
請求項4に記載の発明でタービンの数をNとすると、請求項1のサイクルにN-2組(N≧3)のタービン、分岐点、排熱ボイラと再生熱交換器を組み合わせてカスケードを形成したもので、3,4・・・・n・・・・N-1番のカスケードの中で第n番目のカスケード26の構成は、第n番排熱ボイラ(IHXn)28の出口はn番分岐30の上流側に接続され、n番分岐の残部は第nタービン(Tn)27の入口に、該タービンTnの出口は、第n-1の再生熱交換器(RHXn-1)29の出口に、n番分岐の一部(Nn)31は第n-1の排熱ボイラ(IHXn-1)32の入口にそれぞれ接続されて成り立っている。この構成により、排熱の温度レベルに応じてNを選択することにより幅広い温度領域から有効に動力を回収する排熱回収パワープラントまたは請求項3に記載のコンバインドサイクルである。
請求項5に記載の発明は、第二分岐の一部(N2)10と第n分岐の一部(Nn)31(3≦n≦NのN−2個)を制御し高温タービンと低温タービンと第nタービン(3≦n≦NのN−2個の整数すべて)への流量配分と出力を調整することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4に記載のN重温度排熱回収パワープラントまたはN重温度コンバインドサイクルである。
請求項1に記載の発明によれば、従来の熱サイクルに、排ガスの低温域の熱を回収し作動媒体を予熱する加熱器6b,6cと低温タービン2bを付加し、高温タービン2aと低温タービン2bに導入される作動媒体の割合を適正化することにより、排ガスから最大の動力を引き出せる。
請求項2に記載の発明によれば、作動媒体に常温に臨界点を有する二酸化炭素を選択し超臨界状態で動作することにより、中低温度域の熱エネルギーを最も効率よく回収する熱サイクルを構成でき、かつエネルギー密度を高くしうるので、機器の小型化とプラントのスペース効率を向上できる。
請求項3に記載の発明によれば、天然ガス炊きコンバインドサイクルのボトミングを超臨界二酸化炭素の閉サイクルガスタービンで構成することにより、従来の蒸気タービンサイクルに見られる相変化が無くなるので、大型の復水器、給水加熱器が不要となりプラントの省スペース化と建設コストの低減に資する。
請求項4に記載の発明によれば、タービン、分岐点、排熱ボイラと再生熱交換器を組み合わせたN-2個のカスケードを付加することにより1000℃を越える高温から低温までの幅広い温度域の排熱から有効に動力を回収できる。
請求項5に記載の発明によれば、第二分岐の一部10を変化させて高温タービンへの流量配分を調整でき、それに加えて第n分岐の一部25(3≦n≦NのN−2個の整数すべて)を変化させて、低温タービンと第nタービンの流量配分を調整できるので排熱回収パワープラントまたはコンバインドサイクルの出力レベル制御が可能である。
本発明の実施形態である排熱回収パワープラントのサイクル構成図 高温タービンへの導入流量割合が総合効率に及ぼす影響 本発明のT−s線図 サイクル構成機器のエクセルギーロス 他のサイクルと本発明との総合効率の比較 サイクル効率、ボイラ効率と総合効率の関係を示す概念図 本発明のコンバインドサイクル タービン入り口圧力が総合効率に及ぼす影響 本発明と1,300℃級コンバインドサイクルとの比較 排ガスボイラ内の温度分布 再生ブレイトンサイクル 排熱ボイラ出口ガス温度が利用可能なエクセルギーに及ぼす影響 本発明のN重温度排熱回収パワープラントのサイクル構成図 本発明の三重温度排熱回収パワープラントのサイクル構成図
以下本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態は、請求項1と2に関する。図1に示すように、一台の圧縮機1と二台のタービン(2a,2b)と一台の発電機3と一台の前置冷却器4と二台の再生熱交換器(5a,5b)と三台の排熱ボイラ(6a,6b,6c)を結合して発電する回路であって、作動媒体が圧縮機から導出された後に第一の分岐点7で第一分岐の一部8と第一分岐の残部に分流し、前記第一分岐の一部8は第二再生熱交換器(RHX2)5bの高圧側流路を経由した後に第二の分岐点9で第二分岐の一部10と第二分岐の残部に分流し、
前記第二分岐の一部10は第一再生熱交換器(RHX1)5aの高圧側流路を経由した後に第一の排熱ボイラ(IHX1)6aを経由して高温タービン(T1)2aに流入し膨張仕事をしたのちに、前記第一再生熱交換器(RHX1)5aおよび前記第二再生熱交換器(RHX2)5bの低圧側流路を順次経由した後に前記前置冷却器(PHX)4を経由して前記圧縮機1に戻り、
前記第二分岐の残部は第三の排熱ボイラ(IHX3)6cから導出された作動媒体と混合され、第二の排熱ボイラ(IHX2)6bを経由して低温タービン5bに流入し膨張仕事をした後に、前記第一再生熱交換器5aの低圧側流路から導出した作動媒体と混合され前記第二再生熱交換器5bの低圧側流路と前置冷却器4を経由して圧縮機1にもどり、
前記第一分岐の残部は前記第三の排熱ボイラ6cを経由して前記第二分岐の残部と合流したのち前記第二の排熱ボイラ6bに流入する。高温タービン2aと低温タービン2bでの作動媒体の膨張仕事の一部は圧縮機1で作動媒体の圧縮仕事に消費され残部が発電機3を駆動して発電する。
第一の分岐点7はIHX2とIHX3の熱負荷を制御し、第二の分岐点9は高温タービンT1と低温タービンT2の流量を配分する。本サイクルの特性を計算した。計算条件は以下の通り。作動媒体には二酸化炭素を用い、サイクルの最低圧力が臨界圧力7.38MPaを越える場合を例示する。IHX1入口14排ガス温度877.15K、IHX3出口15排ガス温度358.1K、高温タービン入口温度800K,圧力20MPa、圧縮機入口温度303K,圧縮機とタービンの断熱効率はそれぞれ0.861、0.903、二台の再生熱交換器の再生効率はともに0.98。圧力損失係数は、三台の加熱器ではIHX1,2で1.5%,IHX3で0.44%、二台の再生熱交換器(RHX)の高温流体側1.33%、低温流体側0.44%であり、二台のタービンの膨張比は共に2.7である。
最適化パラメータを第一分岐の一部(以下N1)8と第二分岐の一部(以下N2)10にした。その際、1300℃級コンバインドサイクルの設計条件を参考にして、排熱ボイラ6の温度効率が略0.9かつ排熱ボイラの出口ガス温度が略360Kとなるような範囲内でパラメータを変化させて総合効率が最大になる条件を探索した。ここで、総合効率の定義は、排熱の有するエンタルピーで動力を割ったもの=サイクル熱効率と排熱ボイラ効率の積である。
図2は機器ロスが0の場合でのN2が総合効率に及ぼす影響を示す。総合効率はN2の単調増加関数である。これはエクセルギーの高い熱源の利用が消費熱量を減らすからであり、この傾向は機器ロスがあっても変わらない。前記した機器ロス有条件での最適値はN1=65%,N2=61%であり、高温タービン2aと低温タービンへ2bの流量配分率はそれぞれ、61%、39%(=100-N2),であった。
図3はこの場合のCO2サイクルの温度―エントロピー線図を示す。
破線が低温タービン2bのサイクル、実線が高温タービン2aのサイクルを示している。本実施例の動力は、破線と実線で囲まれた閉曲線の面積の各々に対応する流量分配率を乗じたものの和である。他方、従来サイクルによる動力は実線の面積に100%流量を乗じたものである。これと比べ、本発明のサイクルの動力は、四角形11,5,6,12の面積に低温タービンの流量39%(=1−N2)を乗じた分(12相対%)だけ少なく、その分CO2サイクルの効率が低い。これより、N2大でサイクル効率が増加する理由を理解できる。
一方、排ガス温度を用いた理論カルノーサイクルでのエクセルギーロスの値は10%であり、両者がほぼ一致するので本サイクルの妥当性が示せた。
図4は機器のエクセルギーロスを示す。排熱ボイラのエクセルギーロスの割合が相対的に高いが、前置冷却器でのロスは低く抑えられており、エクセルギー効率が0.71と高いことから、本実施例は優れたサイクル構成であると言える。
図5は他の代替サイクルと本発明との総合効率の比較を示す。サイクル構成AとBは第三の分岐点16と第二の圧縮機17が追加され、サイクル構成Aは第二の分岐点9が除外された構成になっている。サイクル構成Bではタービンへの流量配分は不変としたままで(N2の値を不変)予熱器(第三の排熱ボイラ、以下IHX3)への流量配分(=1−N1)を変化させることが可能である。本発明のサイクルが総合効率で優れていることがわかる。
その理由を明らかにするため、本発明とタービン流量を等しくし、予熱量の影響を調べた。IHX3への作動媒体供給量は、本発明、サイクル構成A,サイクル構成Bでそれぞれ、0.28,0.08,0.03である。サイクル構成AおよびBはいずれもCO2サイクル効率は0.41と高いが排熱ボイラ効率がともに0.19と極端に低く、総合効率が0.08で本実施例の値0.22より劣っている。これはガス側の温度効率の極端な低下による。
ガス温度低下の原因はCO2サイクル効率を向上させるために、第一分岐の残部(1−N1)の流量を下げて予熱器の作動媒体の温度を上昇させたことにある。
このため、交換熱量が変わらないものとするとガス流量が増え温度降下量が低下してIHX1,IHX2のガス温度が高く保持される。その結果IHX3でのガス温度の低下も小さく、排熱ボイラ出口15のガス温度が上昇し、ボイラ効率は低下するのである。
図6はサイクル効率、ボイラ効率と総合効率の関係を示す。これはサイクル構成Bでの計算結果をしめす。予熱器に回る流量が減少するとCO2サイクル効率が上昇し、排熱ボイラ効率が減少し、両者の積である総合効率は低下している。
その理由は、前記したように加熱器の入口ガス温度が上昇すると作動媒体の温度が上昇する。この場合、高温タービン2aの入口温度5は固定であるから、低温タービン2bの入口温度11が上昇する。既出の図3において、11,12がそれぞれ5,6に漸近するので、CO2サイクル効率は上昇し、加熱量基準の値に漸近する。一方、第三の排熱ボイラ(IHX3)の出口ガス温度は上昇するのでCO2サイクルに輸送される排熱の割合は低下し、ボイラ効率が低下する。
本実施の形態は、請求項3に関する。図7に示すように、トッピングサイクルに開放型ガスタービン、ボトミングサイクルにCO2サイクルを配備するコンバインドサイクルである。トッピングは空気圧縮機18と開放型タービン19、燃焼器20、タービン排気21からなる開放型ガスタービンで発電し、燃焼ガスのうち仕事に変換されなかったエンタルピーがタービン排気ダクト21を通じてボトミングサイクルの第一の排熱ボイラ(IHX1)6aに供給されている。
ボトミングサイクルの構成は、実施例1に記載した構成と同じく、一台の圧縮機1と二台のタービン(2a,2b)と一台の発電機3と一台の前置冷却器4と二台の再生熱交換器(5a,5b)と三台の排熱ボイラ(6a,6b,6c)を結合して発電する回路であって、作動媒体が圧縮機から導出された後に第一の分岐点7で第一分岐の一部8と第一分岐の残部に分流し、前記第一分岐の一部8は第二再生熱交換器(RHX2)5bの高圧側流路を経由した後に第二の分岐点9で第二分岐の一部10と第二分岐の残部に分流し、
前記第二分岐の一部10は第一再生熱交換器(RHX1)5aの高圧側流路を経由した後に第一の排熱ボイラ(IHX1)6aを経由して高温タービン(T1)2aに流入し膨張仕事をしたのちに、前記第一再生熱交換器(RHX1)5aおよび前記第二再生熱交換器(RHX2)5bの低圧側流路を順次経由した後に前記前置冷却器(PHX)4を経由して前記圧縮機1に戻り、
前記第二分岐の残部は第三の排熱ボイラ(IHX3)6cから導出された作動媒体と混合され、第二の排熱ボイラ(IHX2)6bを経由して低温タービン5bに流入し膨張仕事をした後に、前記第一再生熱交換器5aの低圧側流路から導出した作動媒体と混合され前記第二再生熱交換器5bの低圧側流路と前置冷却器4を経由して圧縮機1にもどり、
前記第一分岐の残部は前記第三の排熱ボイラ6cを経由して前記第二分岐の残部と合流したのち前記第二の排熱ボイラ6bに流入する。高温タービン2aと低温タービン2bでの作動媒体の膨張仕事の一部は圧縮機1で作動媒体の圧縮仕事に消費され残部が発電機3を駆動して発電する。
本実施例の特性を計算するにあたり採用した主要な仮定は以下の通りである。1,300℃級の再熱三重圧コンバインドサイクルの作動流体温度(排ガス温度、タービン入口温度など)を採用し、再生熱交換器に新型伝熱フィンのプレートフィン型熱交換器を用い、その温度効率には著者らの実験で実績のある数値0.98を用いた。またCO2タービンと圧縮機の断熱効率には、化学プラントで実績のある半径流型の値を用いて総合効率を計算した。
図8はボイラ効率一定条件下での作動圧力の影響を示す。タービン入口圧力が20〜32MPaの範囲で、総合効率が単調増加する。31MPaは超超臨界圧ボイラの仕様に対応し製造可能である。そこで、タービン入口圧力を31MPaとしてコンバインドサイクル効率を求めた。
図9はLHV基準での計算結果(図9の右図)を現状の1,300℃級の再熱三重圧コンバインドサイクルの値(図9の左図)と比較して示す。図中、ボトミングサイクルの効率(=総合効率)はトッピングガスタービンの燃料の発熱量を基準にとれば
と表すことができる。これを、棒グラフの上部に示した。ここで、
はトッピングガスタービンのサイクル効率、
は排熱ボイラの効率、
はCO2サイクルの効率である。両者には0.1%以内の相違しかない。大容量機では半径流より断熱効率が高い軸流型(蒸気タービンと同等)の断熱効率を用いると総合効率は略1%上昇する。これより本発明は1300℃級改良型コンバインドサイクルと略同等の性能を有していることがわかる。
本実施例では従来の蒸気タービンサイクルでは不可避の相変化が無いので、大型の復水器、給水加熱器が不要となりプラントの省スペース化と建設コストの低減に資する。
図10は排熱ボイラIHX1,IHX2,IHX3の温度分布を示している。ガス側温度と二酸化炭素側の温度分布がほぼ平行直線であり、ピンチポイントが無いことから、この熱交換器にも新型伝熱フィンのプレートフィン型を用いればボイラ効率の改善とボイラ容積の低減の余地がある。
本実施例は請求項4に関する。これまで例示した排ガス温度は900Kであったが、それよりも高い温度の排ガス(例えば鉄鋼廃熱など)にあっては、排熱回収タービン、排熱ボイラと再生熱交換器の組み合わせの数を増しカスケードに配置して排熱を有効に回収することができる。請求項4に記載の発明でタービンの数をNとすると、請求項1のサイクルにN-2組(N≧3)のタービン、分岐点、排熱ボイラと再生熱交換器のセットを組み合わせてカスケードを形成したものである。おのおののカスケードに回収する熱の温度域が対応しているのでn重温度排熱回収パワープラントである。
図13は本実施例の第n番目のカスケードの構成を示す。3,4・・・・n・・・・N-1番のカスケードの中で第n番目のカスケード26の構成は、第n番排熱ボイラ(IHXn)28の出口はn番分岐30の上流側に接続され、n番分岐の残部は第nタービン(Tn)27の入口に、該タービンTnの出口は、第n-1の再生熱交換器(RHXn-1)29の出口に、n番分岐の一部(Nn)31は第n-1の排熱ボイラ(IHXn-1)32の入口にそれぞれ接続されている。この構成により、排熱の温度レベルに応じてNを選択することにより幅広い温度領域から有効に動力を回収する排熱回収パワープラントまたは請求項3に記載のコンバインドサイクルを構成できる。
図14は、N=3の場合の具体的構成を示している。請求項1のサイクルに四角の破線で囲った部分すなわち第三のタービン2cと第三の分岐点24を付加したもので、前記第三の分岐点24は第三の排熱ボイラ6cの出口に設置され、第三分岐の一部25はIHX2の入口に接続され、第三分岐の残部は前記第三のタービン2cの入口に接続され、前記第三のタービン2cの出口は第二再生熱交換器(RHX2)の出口に接続された構成にすることによって、排ガス温度が変わらなければ、請求項1または請求項2または請求項3に記載のサイクルに加えさらに低温域の排熱から有効に動力を回収する排熱回収パワープラントまたは請求項3に記載のコンバインドサイクルを構成できる。
本実施例は請求項5に関する。請求項5に記載の発明は、第二分岐の一部(N2)10と第n分岐の一部(Nn)31(3≦n≦NのN−2個)を操作することにより高温タービン2aと低温タービン2bと第nタービン(3≦n≦NのN−2個の整数すべて)27への作動媒体の配分量を制御し出力を調整することを特徴とする。これは、高温タービン2a、低温タービン2b、第nのタービン27への出力配分の変更を意味している。
請求項5に記載の発明によれば、第二分岐の一部10を変化させて高温タービンへの流量配分を調整でき、それに加えて第n分岐の一部25(3≦n≦NのN−2個の整数すべて)を変化させて、低温タービン2bと第nタービン27の流量配分を調整できるので排熱回収パワープラントまたはコンバインドサイクルの出力レベル制御が可能である。
これに対し、予熱器(第三の排熱ボイラ6c)への作動媒体の分配率(第一分岐の残部1−N1)の操作はボイラ効率とサイクル効率を変化させるが、両者の積である総合効率は一定であり変化はない。これは本発明のサイクルに固有な事象である。
図1のサイクルで、第二分岐の一部10を定格値から低下すると、既出の図2に示したように、排熱ボイラ効率を維持してもCO2サイクル効率が低下するので、タービン仕事の総量が低下し発電量が減少する。本実施例ではこの事象を負荷調整に積極的に活用したものである。
この手段はCO2の循環流量の最大値(例えば圧縮機出口流量の絶対値)の増減を要しないのでプラントの特性に与える影響が少ないというメリットがある。第二分岐の一部(N2)10や第n分岐の一部31の操作には、流動抵抗の少ない三方弁が望ましく流体温度と流量の計測信号をフィードバックして所要出力を制御目標としてその開度を制御できる。
実施例1では作動媒体として最低圧力が超臨界の二酸化炭素を例示したが、一部が亜臨界状態であっても差し支えない。
本発明の作動媒体は他の自然冷媒であるアンモニアやそれと水との混合物であっても、さらには他の有機物の媒体であっても構わない。
またすべての実施例について圧縮機と前置冷却器がそれぞれ一台の場合を例示しているが、これらを複数台で置換してもよく、作用効果に影響はない。
1 圧縮機
2
タービン
2a 高温タービン(T1)
2b 低温タービン(T2)
3
発電機(G)
4
前置冷却器(PHX)
5
再生熱交換器(RHX)
5a 第一再生熱交換器(RHX1)
5b 第二再生熱交換器(RHX2)
6
排熱ボイラ(加熱器)
6a 第一の排熱ボイラ(IHX1)
6b 第二の排熱ボイラ(IHX2)
6c 第三の排熱ボイラ(IHX3)
7
第一の分岐点
8
第一分岐の一部(N1)
9
第二の分岐点
10
第二分岐の一部(N2)
11
タービン入口
12
加熱器入口
13
タービン排気
14
排熱ボイラ(加熱器)の入口ガス
15
排熱ボイラ(加熱器)の出口ガス
16
第三の分岐点
17
第二の圧縮機
18
空気圧縮機
19
開放型タービン
20
燃焼器
21
タービン排気ダクト
22
空気
23
予熱器流量割合
24
第三の分岐点
25
第三分岐の一部(N3)
26
第nカスケード部分
27
第nタービンTn ≧3)
28
第nの排熱ボイラIHXn)
29
第n-1再生熱交換器RHXn-1
30
第nの分岐点(n≧3)
31
第n分岐の一部Nn(n≧3)

Claims (5)

  1. 一台の圧縮機1と二台のタービン(2a,2b)と一台の発電機3と一台の前置冷却器4と二台の再生熱交換器(5a,5b)と三台の排熱ボイラ(6a,6b,6c)を結合して発電する回路であって、
    作動媒体が圧縮機から導出された後に第一の分岐点7で分岐し、第一分岐の一部8は第二再生熱交換器(RHX2)5bの高圧側流路を経由した後に第二の分岐点9で分岐し、第二分岐の一部10は第一再生熱交換器(RHX1)5aの高圧側流路を経由した後に第一の排熱ボイラ(IHX1)6aを経由して高温タービン(T1)2aに流入し膨張仕事をしたのちに、前記第一再生熱交換器(RHX1)5aおよび前記第二再生熱交換器(RHX2)5bの低圧側流路を順次経由した後に前記前置冷却器(PHX)4で冷却されて前記圧縮機1に戻り、
    前記第二分岐の残部は第三の排熱ボイラ(IHX3)6cから導出された作動媒体と混合され、第二の排熱ボイラ(IHX2)6bを経由して低温タービン5bに流入し膨張仕事をした後に、前記第一再生熱交換器5aの低圧側流路から導出した作動媒体と混合され前記第二再生熱交換器5bの低圧側流路と前置冷却器4を経由して圧縮機1にもどり、
    前記第一分岐の残部は前記第三の排熱ボイラ6cを経由して前記第二分岐の残部と合流したのち前記第二の排熱ボイラ6bに流入し、高温タービン2aと低温タービン2bでの作動媒体の膨張仕事の一部は圧縮機1で作動媒体の圧縮仕事に消費され残部が発電機3を駆動して発電することを特徴とする排熱回収パワープラント。
  2. 請求項1に記載の作動媒体が二酸化炭素であり前記回路中の前記作動媒体の一部または全てが超臨界状態であることを特徴とする請求項1に記載の排熱回収パワープラント。
  3. トッピングサイクルに開放型ガスタービン、ボトミングサイクルに請求項1または2に記載の排熱回収パワープラントを装備し、前記トッピングは、空気圧縮機18と開放型タービン19、燃焼器20、タービン排気21からなる開放型ガスタービンで発電し、燃焼ガスのうち仕事に変換されなかったエンタルピーがタービン排気ダクト21を通じてボトミングサイクルの第一の排熱ボイラ(IHX1)6aに供給されていることを特徴とするコンバインドサイクル。
  4. タービンの数をNとし、請求項1のサイクルに、(N-2)組(N≧3)のタービン、分岐点、排熱ボイラと再生熱交換器を組み合わせたカスケードを接続したものであって、3,4・・・・n・・・・N-1番のカスケードの中で第n番目のカスケード26の構成が、n番排熱ボイラ(IHXn)28の出口はn番分岐30の上流側に接続され、n番分岐の残部は第nタービン(Tn)27の入口に、該タービンTnの出口は、第n-1の再生熱交換器(RHXn-1)29の出口に、n番分岐の一部(Nn)31は第n-1の排熱ボイラ(IHXn-1)32の入口にそれぞれ接続されて成り立っており、排熱の温度レベルに応じてNを選択した排熱回収パワープラントまたは請求項3に記載のコンバインドサイクル。
  5. 第二分岐の一部(N2)10と第n分岐の一部(Nn)31(3≦n≦NのN−2個)を操作することにより高温タービン2aと低温タービン2bと第nタービン(3≦n≦NのN−2個の整数すべて)27への作動媒体の配分量を制御し出力を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排熱回収パワープラントまたは請求項3に記載のコンバインドサイクル。
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