JP2011252364A - 繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントの設計方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントの設計方法であって、セグメントの主断面における繊維補強コンクリートおよび鉄筋の応力度を算定する段階において、引張領域における繊維補強コンクリートの応力−ひずみ曲線として、ひずみがゼロの状態からひび割れひずみまでの第一領域A1では、ひずみが大きくなるに連れて引張応力が増加し、ひび割れひずみから引張鉄筋の降伏ひずみまでの第二領域A2では、ひずみが大きくなるに連れて引張応力が減少し、降伏ひずみから引張鉄筋の限界ひずみまでの第三領域A3では、引張応力が一定となる引張応力−ひずみ曲線Aを用いる。
【選択図】図6
Description
このようなセグメントは、従来の鉄筋コンクリートセグメントに比べて、繊維の補強効果により曲げ強度、せん断強度等の強度特性が改善されるとともに、変形性能やタフネスが向上するため、これらの特性を利用して鉄筋量を低減することができる。
また、道路トンネルなどでセグメント自体に耐火性が要求される場合には、耐火性をコンクリートに付与することができる有機繊維を混入することで、耐火性を有するセグメントとなる。
前記繊維としては、鋼繊維単独、有機繊維単独、鋼繊維と有機繊維の混合を用いることができる。
この構成では、塩化物イオンの浸入や中性化によって繊維が腐食する可能性があるかぶり部の引張応力を無視することで、繊維補強コンクリートおよび鉄筋の応力度を適切に算定することができる。
本実施形態のセグメントは、シールドトンネルの覆工に用いられるものであり、繊維が混入された繊維補強コンクリートを用いて製作された繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントである。
繊維補強コンクリートとしては、鋼繊維が単独で混入されたもの、有機繊維が単独で混入されたもの、鋼繊維および有機繊維が混入されたものが存在しているが、本実施形態では、鋼繊維および有機繊維が混入された鋼繊維・有機繊維混合補強コンクリートを例として説明する。
なお、本実施形態では、鋼繊維の素材は、JIS G 3532(鉄線)またはJIS G 3505(軟鋼線材)に適合したものを採用しているが、同等の品質を確保することができるものであれば、溶鋼抽出法によるステンレス鋼繊維など他の素材を使用してもよい。
なお、前記したセグメントと同等の性能を確認することができるのであれば、鋼繊維の種類、有機繊維の種類、形状寸法、混入率、および鋼繊維と有機繊維との混入割合などは限定されるものではない。
繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントの設計は、限界状態設計法によって行われる。この設計方法では、繊維補強コンクリート固有の力学的特性(引張軟化特性、圧縮強度、引張強度、耐久性に関する特性)を設計に反映させている。
限界状態は、「トンネル標準示方書シールド編」に準じて、終局限界状態および使用限界状態に区分している。終局限界状態は、耐荷性および変形性に対応する限界状態であり、安全性の照査に用いる限界状態である。また、使用限界状態は、通常の使用性や機能確保に関連する限界状態であり、使用性あるいは耐久性の照査に用いる限界状態である。
「繊維補強コンクリート柱部材」の設計指針によれば、鋼繊維の混入率が0.5〜1.5vol.%の繊維補強コンクリートにおける引張強度と圧縮強度の関係は、プレーンコンクリートにおける引張強度と圧縮強度の関係と略一致することが確認されている。また、本出願人が行った実験においても、繊維混入率が0.25〜0.8vol.%の繊維補強コンクリートでは同様の関係が得られた。
このことから、繊維補強コンクリートの引張強度の特性値ftkは、「トンネル標準示方書シールド編」に示された引張強度と圧縮強度の関係式である以下の式1により求めている。
ftkは繊維補強コンクリートの引張強度の特性値(N/mm2)、
f’ckは繊維補強コンクリートの圧縮強度の特性値(N/mm2)である。
σ(ω)は引張応力(N/mm2)、 ωはひび割れ開口幅(mm)である。
σtk(ω)は特性値化された引張応力(N/mm2)、
ftは引張強度(N/mm2)である。
この引張応力−ひずみ曲線Aは、繊維補強コンクリートの引張応力とひび割れ開口幅の関係を示す引張軟化曲線に基づいて適切に定めたものである。
繊維混入率0.40〜0.65vol.%、引張鉄筋比0.25〜1.04%、圧縮強度50〜80N/mm2程度の範囲における繊維補強鉄筋コンクリート部材の実験では、繊維が引張応力を分担することで、繊維のない鉄筋コンクリート部材に比べて曲げ降伏荷重が増加し、その後も安定して荷重を保持し、圧縮側コンクリートで圧壊に至ることが確認された。つまり、ひび割れが発生した後も繊維補強コンクリートが引張応力を分担し、耐荷機構に寄与していることになる。このことから、図6の引張応力−ひずみ曲線Aは、三つの領域I,II,III(曲線A1,A2,A3)に分けてモデル化した。
σは引張応力(N/mm2)、 Ecはヤング係数(kN/mm2)である。
ひび割れひずみεcrから引張鉄筋の降伏ひずみεyまでの第二領域II(εcr≦ε<εy)は、図5の引張軟化曲線C1に基づいて設定された曲線となる領域である。ただし、低引張鉄筋比の部材においては、高引張鉄筋比の部材に比べて繊維の効果が小さくなる傾向があるため、この影響を応力の低減係数βで表している。
第二領域IIにおける引張応力−ひずみ曲線A2は、図5の引張軟化曲線C1に基づいた以下の式5による曲線で表される。この第二領域IIでは、ひずみが大きくなるに連れて引張応力が減少する。
σtk(ε)は引張軟化曲線より求めた引張応力−ひずみ関係(N/mm2)、
γcは安全係数(材料係数)である。
cはかぶり(mm)、csは鋼材の中心間隔(mm)、φは鋼材径(mm)である。
nは引張鋼材の段数である。
引張鉄筋が降伏した後には、ひび割れ位置で鉄筋がひずみ硬化し計算上の仮定であるバイリニアの関係よりも大きな応力を分担すること、また、引張鉄筋が降伏した後における繊維補強コンクリートの応力−ひずみ関係について十分な知見が得られていないことから、第三領域IIIは引張鉄筋の降伏ひずみεy時の引張応力を保持するものとしている。したがって、第三領域IIIにおける引張応力−ひずみ曲線A3は、以下の式9による直線となっている。この第三領域IIIでは引張応力が一定となっている。
N’oudは軸方向圧縮耐力の上限値(N/mm2)、 k1は部材係数で一般に1.3、
f’cdは繊維補強コンクリートの設計圧縮強度(N/mm2)、
Acは繊維補強コンクリートの断面積(mm2)、
γbは強度の低減係数で一般に0.85である。
これより、終局限界状態における繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントの設計曲げ耐力は、一般の鉄筋コンクリート製セグメントについての算定方法と同様に、平面保持を仮定した断面解析により求めることができる。
そして、セグメントの主断面における繊維補強コンクリートおよび鉄筋の応力度を算定する段階では、鋼繊維および有機繊維による引張応力を考慮することができるため、繊繊維補強コンクリートの引張応力−ひずみ曲線は、図6の引張応力−ひずみ曲線Aを用いることができる。
また、前記した終局限界状態と同様に、引張応力が曲げひび割れ強度よりも大きい場合には、図9に示すように、引張鉄筋S1のかぶり部tが負担する引張応力度をゼロと仮定したうえで、主断面における繊維補強コンクリートおよび鉄筋の応力度を算定している。
例えば、本実施形態では、鋼繊維および有機繊維が混合された繊維補強コンクリートを用いているが、鋼繊維が単独で混入された繊維補強コンクリートや、有機繊維が単独で混入された繊維補強コンクリートを用いた繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントにおいても、前記した設計手法のように、図6の引張応力−ひずみ曲線Aを用いることで、繊維補強コンクリートの材料特性を適切に評価して、繊維補強コンクリートおよび鉄筋の応力度を簡単に求めることができる。
A1 第一領域Iにおける引張応力−ひずみ曲線
A2 第二領域IIにおける引張応力−ひずみ曲線
A3 第三領域IIIにおける引張応力−ひずみ曲線
B 圧縮応力−ひずみ曲線
C1 引張軟化曲線
Claims (5)
- 繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントの設計方法であって、
前記セグメントの主断面における繊維補強コンクリートおよび鉄筋の応力度を算定する段階において、
引張領域における前記繊維補強コンクリートの応力−ひずみ曲線として、
ひずみがゼロの状態からひび割れひずみまでの第一領域では、ひずみが大きくなるに連れて引張応力が増加し、
前記ひび割れひずみから引張鉄筋の降伏ひずみまでの第二領域では、ひずみが大きくなるに連れて引張応力が減少し、
前記降伏ひずみから前記引張鉄筋の限界ひずみまでの第三領域では、引張応力が一定となる応力−ひずみ曲線を用いることを特徴とする繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントの設計方法。 - 前記応力−ひずみ曲線は、
前記第一領域においては、前記繊維補強コンクリートのヤング係数を増加勾配とする直線であり、
前記第二領域においては、引張軟化曲線に基づいて設定した曲線であることを特徴とする請求項1に記載の繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントの設計方法。 - 前記引張応力が曲げひび割れ強度よりも大きい場合には、前記引張鉄筋のかぶり部の前記繊維補強コンクリートが負担する引張応力をゼロと仮定したうえで、前記主断面における前記繊維補強コンクリートおよび前記鉄筋の応力度を算定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントの設計方法。
- 前記繊維は、鋼繊維であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントの設計方法。
- 前記繊維は、鋼繊維および有機繊維であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の繊維補強鉄筋コンクリート製セグメントの設計方法。
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