JP2011251969A - 抗ヒト肝性トリグリセリドリパーゼ抗体 - Google Patents

抗ヒト肝性トリグリセリドリパーゼ抗体 Download PDF

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Abstract

【課題】ヒトHLに特に結合特異性を有する抗ヒトHL抗体、及び当該抗体を用いて血中HLを簡単かつ高感度に測定する方法の提供。
【解決手段】特定な配列からなるアミノ酸配列を有するペプチド1もしくは、別の特定な配列からなるアミノ酸配列を有するペプチド8、又は上記のアミノ酸のうち1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加したアミノ酸配列を有するペプチドを免疫原として用いる、特定な配列からなるアミノ酸配列を認識する抗ヒト肝性トリグリセリドリパーゼ抗体又はそのフラグメントの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、家族性ヒト肝性トリグリセリドリパーゼ欠損症、肝疾患・低栄養状態、動脈硬化症等の診断薬として有用な高い抗原認識特異性を有する抗ヒト肝性トリグリセリドリパーゼ抗体及びこれを用いた試薬に関する。
ヒト肝性トリグリセリドリパーゼ(Hepatic triglyceride lipase,HL)はHepatocyteで合成される65kDaの糖蛋白質である。リポ蛋白リパーゼ(Lipoproteinlipase, LPL)と同様に、HLはトリグリセリドの水解を触媒し、トリグリセリドリッチなカイロミクロンや超低比重リポ蛋白(VLDL)からコレステロールリッチレムナント粒子への転換を起こす。各リパーゼはヘパリン結合蛋白質でヒトや実験動物のポストヘパリン血漿(PHP)中に見出される。初期の研究ではレムナントクリアランスでのHLの役割が確立されていた。ラットやサルへの抗HL IgGの注入によるHL活性阻害により、放射活性標識したレムナント粒子の肝臓取込みが損なわれ、血漿VLDLやLDL画分の蓄積が起こる。ヒトでは家族性HL欠損症が存在するとコレステロールやトリグリセリドを含むレムナント様粒子の血漿レベルが上がり、早発の動脈硬化性疾患を呈する。トランスジェニックのマウスやウサギでのヒトHLの発現は総血漿コレステロールの低下を呈する。高脂肪食負荷のHLノックアウトマウスでは、HLの発現により異常脂質プロファイルの矯正が起こり、大動脈コレステロールが明らかに減少する。これらの結果はHLの抗動脈硬化的役割を支持している。また、HLは肝で合成される半減期の短い糖蛋白質であることから、肝機能や栄養状態を反映する極めて臓器特異性の高い診断マーカーとしても注目されている。
健常人及び上記各種疾患に罹患している患者の体液中のHLを定量する方法として、主に原理の異なる2種類の方法(活性量及び蛋白量)が行なわれている。HLは肝内皮細胞表面に係留している酵素であることから、ヘパリンを静注して血中に遊離の状態で取り出すことが行われている。このヘパリン投与後の血漿をポストヘパリン血漿(PHP)と呼んでいる。現在、PHP中にはトリグリセリドを分解する2種類のリパーゼが存在することが知られており、HLと肝外組織の毛細血管内皮細胞表面に糖鎖を介して係留しているリポ蛋白リパーゼ(Lipoprotein lipase,LPL)である。HLを精密に測定するためには、HLとLPLを分別定量することが必要である。HLを活性量で定量する方法としては、一般的には2種の酵素(HLとLPL)の一方を何らかの方法により不活性化後、残存するもう一方の酵素を至適条件下で測定する方法がある。代表的な方法としては、(1)1MのNaClでLPLを不活性化後、PHP中の残存するHL活性を測定する方法、(2)ヘパリンセファロースカラムを用いHLとLPLをNaClの濃度により分別溶出後、それぞれの酵素活性を測定する方法などがある。しかし、(1)の方法は、NaClの選択中和後、NaClが残存する活性酵素に悪い影響を与え、活性を部分的に不活性化させてしまい、(2)のカラム法は、時間がかかり、回収率に問題があることが知られている。
HLを蛋白量で測定する方法に関しては、非特許文献1がモノクローナル抗体を用いた定量方法を報告している。しかし、原料ロット間差が知られている細胞壁由来の不溶性担体を使用し、遠心分離が必要であるなど操作が煩雑である。また、このモノクローナル抗体の抗原認識部位は知られておらず、抗原測定などに用途が限定される。
池田康行ら、メディカルイムノロジー(Medical Immunology)、第18巻、第4号、643頁、1989年
従って本発明の目的は、ヒトHLに特に結合特異性を有する抗ヒトHL抗体、及び当該抗体を用いて血中HLを簡単かつ高感度に測定する方法を提供することにある。
かかる実情において本発明者らは、高い結合特異性(抗原認識特異性)を有する抗HL抗体を得るべく種々検討した結果、配列番号1又は2のいずれか1つの配列部分がヒトHLの免疫応答優位部位であり、これらの配列に極めて高い結合特異性(抗原認識特異性)を有する抗ヒトHL抗体を得ることに成功し、更に当該抗体を用いたイムノアッセイによれば、ヒトHLを簡便かつ高感度に測定できること、また、当該抗体はHLの測定のみならず、ヒトHLの分離・精製や、本配列部分又は、本配列以外の配列に異常がある遺伝子異常症の検出にも極めて有用であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、配列番号1もしくは2で示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸のうち1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加したアミノ酸配列を認識する抗ヒトHL抗体又はそのフラグメントを提供するものである。
また、本発明は上記の抗ヒトHLモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを提供するものである。また、本発明は上記の抗ヒトHL抗体、そのフラグメント又はそれらの標識体を含有するヒトHL測定試薬を提供するものである。
また、本発明は、ヒト血液由来検体に上記の抗ヒトHL抗体、そのフラグメント又はそれらの標識体を反応させることを特徴する該検体中のヒトHL測定法を提供するものである。
更に本発明は、上記の抗ヒトHL抗体又はそのフラグメントを不溶性担体に固定化してなる固定化抗ヒトHL抗体又は固定化フラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーによりヒトHLを分離又は精製する方法を提供するものである。
本発明の抗ヒトHL抗体は、ヒトHLに対する特異性が高く、LPLに反応しないので、ヒトHL測定用抗体として有用である。従って、本発明抗体を用いれば簡便かつ高感度でヒトHLを測定することができ、動脈硬化症及び肝機能診断に有利である。
ヒトHLの免疫応答優位部位を特定した結果を示す図である。 ヘパリンセファロース4Bクロマトグラフィーにより分画したフラクションを固相化した酵素免疫測定法を用い、HTGLとLPLの分別状態を検定した結果を示す図である。 モノクローナル抗体3A2を用いたアフィニティークロマトグラフィーによるヒトHLのクロマトグラムを示す図である。 モノクローナル抗体3A2を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製されたヒトHLの精製度を示す電気泳動図である。 本発明によって確立されたサンドイッチELISAによるヒトHLの定量法の検量線を示す図である。 本発明によって確立されたサンドイッチELISAによるヒトHLの定量法の正確性を示す図である。 本発明によって確立されたサンドイッチELISAによるヒトHLの定量法の特異性を示す図である。
本発明の抗ヒトHL抗体は、ヒトHLに対して反応性を有し、かつ抗原認識部位が配列番号1もしくは2で示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸のうち1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加したアミノ酸配列を認識するものである。ここにおけるアミノ酸の変異の数及び部位は、特に限定されない。「1〜数個」とは、常用される技術、例えば部位特異的変異誘発法により生じさせることができる個数を意味し、具体的には1〜10個程度を意味するが、好ましくは1〜6個、更に好ましくは1〜3個である。
本発明の抗ヒトHL抗体は、ヒトHLに対して反応性を有し、かつヒトLPLと反応しないのが好ましい。
本発明抗ヒトHL抗体にはモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のいずれも含まれるが、モノクローナル抗体が好ましい。特に好ましい例としては、FERM P−18181として寄託されたハイブリドーマ3A2により産生され、配列番号1を認識するモノクローナル抗体3A2が挙げられる。
本発明抗体が、認識する配列番号1又は2で示されるアミノ酸配列は、ヒトHLにおける免疫応答優位部位である。このようなヒトHLの免疫応答優位部位に対する抗体は例えば次の工程(a)、(b)及び(c)により製造できる。
(a)免疫抗原の調製・選択蛋白質のアミノ酸配列及び塩基配列の一次構造を利用して、組換え蛋白質を発現させ、抗原として調製する工程(a−1)及び蛋白質の基本的な性質を利用し、親水性領域及び一次構造に動物種間が明確な合成ペプチドの配列を選択して合成する工程(a−2)である。ペプチドを選択する方法としては、ホップとウッド法(Hopp & Woods法、プロシーディングスナショナルアカデミーオブサイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、第78巻、第3824〜3828頁、1981年)、Perker antigenicity法、Protrusion index antigenicity法及びWellingantigenicity法などを使用することが出来る。合成するペプチドの種類は、好ましくは5〜10個以上、更に好ましくは5〜10個である。
(b)蛋白質の免疫応答優位部位の特定(ア)(a−1)で発現させた蛋白質抗原で哺乳動物を免疫し、得られた抗血清を(a−2)で合成したペプチドをそれぞれ固相化した担体に反応させ、抗血清中の特定のペプチドに対する抗体群の分布を評価することにより、免疫応答優位部位を特定する工程。
(イ)(a−1)で発現させた蛋白質抗原で哺乳動物を免疫し、該免疫動物の脾細胞と骨髄腫細胞とを融合させ、得られるハイブリドーマ細胞培養上清を、(a−2)で合成したペプチドをそれぞれ固相化した担体に反応せしめ、ハイブリドーマ細胞群中の特定のペプチドに対する抗体群の分布を評価することにより、免疫応答優位部位の特定する工程。
(ウ)(a−2)で合成したペプチドを担体蛋白質と結合させ、各々のペプチドと担体蛋白質の結合物を等量ずつ混合した抗原、又は、各々のペプチドを等量ずつ混合して担体蛋白質と結合させた抗原で哺乳動物を免疫し、得られた抗血清を(a−2)で合成したペプチドをそれぞれ固相化した担体に反応させ、抗血清中の特定のペプチドに対する抗体群の分布を評価することにより、免疫応答優位部位の特定する工程。
(エ)(a−2)で合成したペプチドを担体蛋白質と結合させ、各々のペプチドと担体蛋白質の結合物を等量ずつ混合した抗原、又は、各々のペプチドを等量ずつ混合して担体蛋白質と結合させた抗原で哺乳動物を免疫し、該免疫動物の脾細胞と骨髄腫細胞とを融合させ、得られるハイブリドーマ細胞培養上清を、(a−2)で合成したペプチドをそれぞれ固相化した担体に反応せしめ、ハイブリドーマ細胞群中の特定のペプチドに対する抗体群の分布を評価することにより、免疫応答優位部位の特定する工程。
上記工程(ア)及び(イ)により、選択的に高い結合特異性(抗原認識特異性)を有する抗体を製造することが容易になり、更にハイブリドーマ細胞樹立後に抗体の特異性を評価する複数の工程(ウェスタンブロティング法、高原を固相化した酵素免疫測定法、免疫沈降法、高価なペプセット(PepSetTM、倉敷紡績(株)社製)など)を大幅に省略化できる。また各々5〜10個のペプチドをそれぞれ哺乳動物に免疫する煩雑さを解消し、省力化と経費削減を達成できる。上記工程(ウ)及び(エ)により、各々5〜10個のペプチドをそれぞれ哺乳動物に免疫する煩雑さを解消し、省力化と経費削減達成ができる。
(c)蛋白質中の免疫応答優位部位に対する抗体の製造上記(イ)及び(ウ)の工程で得られたハイブリドーマ細胞から、蛋白質中の免疫応答優位部位を認識する抗体を産生するハイブリドーマを選択して、組換え蛋白質と免疫応答優位部位に対応するペプチドの2種類の抗原をそれぞれ固相化した担体に反応させ、免疫応答優位部位を認識し、蛋白質に対して高い結合特異性(抗原認識特異性)を有するハイブリドーマ細胞を製造することも出来るが、下記の(オ)、(カ)及び(キ)の工程によりモノクローナル抗体を製造するのが好ましい。
(オ)生体試料より単離した蛋白質抗原又は、(a−1)で発現させた当該蛋白質抗原で哺乳動物を免疫し、該免疫動物の脾細胞と骨髄腫細胞とを融合させ、得られるハイブリドーマ細胞から、免疫抗原と免疫応答優位部位に対応するペプチド群をそれぞれ固相化した担体に反応せしめ、免疫応答優位部位を認識し、免疫抗原に対して高い結合特異性(抗原認識特異性)を有するハイブリドーマ細胞をスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体を製造する工程。
(カ)(b)で明らかとなった蛋白質中の免疫応答優位部位に対応するペプチドを担体蛋白質と結合させた抗原で哺乳動物を免疫し、該免疫動物の脾細胞と骨髄腫細胞とを融合させ、得られるハイブリドーマ細胞から組換え蛋白質と免疫応答優位部位に対応するペプチドの2種類の抗原をそれぞれ固相化した担体に反応させ、免疫応答優位部位を認識し、蛋白質に対して高い結合特異性(抗原認識特異性)を有するハイブリドーマ細胞をスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体を製造する工程。
(キ)(b)で明らかとなった蛋白質中の免疫応答優位部位に対応するペプチドを担体蛋白質と結合させた抗原で哺乳動物を免疫し、免疫応答優位部位を認識し、蛋白質に対して高い結合特異性(抗原認識特異性)を有する抗血清及びポリクローナル抗体を製造する工程及び、抗血清を免疫応答優位部位に対応するペプチドを固相化した担体に反応させたのち、常法に従い担体を単離後、担体より抗体画分を分画して、高い結合特異性(抗原認識特異性)を有するポリクローナル抗体群を濃縮する工程。
抗原として用いられるヒトHLとしては、配列番号3記載のアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するものが挙げられる。ヒトHL蛋白質中の特定のアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えばヒトHLの配列番号1で示されるアミノ酸配列又は配列番号1記載のアミノ酸配列において、1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するペプチドや、ヒトHLの配列番号2で示されるアミノ酸配列又は配列番号2記載のアミノ酸配列において、1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するペプチドが挙げられる。上記組換えHL(配列番号3)、配列番号1の配列及び配列番号2の配列で示される配列を含むペプチド類は、常法により化学合成又は遺伝子発現させることにより得られる。ペプチドの合成法としては、「実験医学(別冊)細胞工学ハンドブック」(黒木登志夫ら編集、羊土社発行、第66〜74頁、1992年)等に記載されているような一般的な方法に従って合成できる。例えばt−BOC(tert-butyloxylcarbony 1)法、Fmoc(9-fluorenylmethyloxycarbony 1)法あるいはMAP(Multiple Antigen Peptide)法を使用することができる。遺伝子発現による方法としては、アミノ酸配列を各々発現可能なように配列した遺伝子を発現ベクターに挿入し、該発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、該形質転換細胞を培養することにより作製することができる。宿主細胞としては、原核細胞(例えば大腸菌)及び真核細胞(例えばCHO細胞)のいずれをも使用することができる。担体との結合を効果的にするためには、配列番号1又は2のいずれかで示されるペプチドのN又はC末端にシステイン、リジン、アルギニン等のアミノ酸を付与することもできる。N又はC末端にシステインを付与した場合、システインのアミノ基あるいはカルボキシ基はフリーにし、反対側の末端はブロックする。また、アミノ末端をフリーにして合成し、カルボキシ末端をアミドにし、担体との結合にビスイミドエステルを用いてもよい。ペプチドの担体としては、アルブミン、グロブリン等の哺乳動物由来蛋白質、キーホールリンペットヘモシアニン等の蛋白質、不活性化した結核菌等の微生物、ポリリジン、ポリアスパラギン等のポリアミノ酸、多糖類などが使用できる。
ヒトHLをコードするDNAとしては、例えば、配列番号3記載のアミノ酸配列からなるヒトHLをコードするDNA(配列番号4)を利用できる。配列番号4記載の塩基配列からなるDNAは、常法に従って化学合成することができ、またヒト肝臓から常法に従って抽出したmRNAを鋳型とし、配列番号4記載の塩基配列にしたがって設計したプライマーを用いたRT−PCR法により増幅することもできる。更に、ヒトHLをコードするDNAは、常法に従って作製したヒト肝臓由来のcDNAライブラリーから、配列番号4記載の塩基配列に従って設計したプローブを用いて得ることもできる。ヒトHLをコードするDNAからのヒトHLの調製は、例えば、ヒトHLをコードするDNAを含む組換えベクターを作製し、該ベクターより適当な宿主細胞を形質転換し、該形質転換体を適当な培地で培養して得られる培養物を精製することにより行うことができる。
本発明のモノクローナル抗体は、実験医学(別冊)細胞工学ハンドブック(黒木登志夫ら編集、羊土社発行、第66〜第74頁、1992年)及び単クローン抗体実験操作入門(安東民衛ら著作、講談社発行、1991年)等に記載されているようなモノクローナル抗体の一般的な製造方法に従って、いわゆる細胞融合によって製造されるハイブリドーマ(融合細胞)から製造することができる。かかるハイブリドーマは、抗原を哺乳動物に免疫することにより抗体産生細胞を取得し、該抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、該ハイブリドーマをクローン化し、哺乳動物の免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって製造される。
具体的には、精製ヒトHLを抗原として、又は当該ヒトHLのアミノ酸配列の一部である配列番号1又は2のいずれかの配列からなるペプチド、もしくはこれと担体との結合物を抗原として該抗原を哺乳動物(ヒト抗体を産生するように遺伝子工学的に作出されたヒト抗体産生マウスのようなトランスジェニック動物も含む)、具体的には、マウス、ラット、ハムスター、モルモットあるいはウサギ、更に具体的にはマウス、ラットあるいはハムスターの皮下内、筋肉内、静脈内、フットパッド内あるいは腹腔内に1〜数回注射することにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1〜14日毎に1〜4回免疫を行なって、最終免疫より約1〜5日後に免疫感作された該哺乳動物から抗体産生細胞が取得される。
ハイブリドーマの創製は、例えばケーラー及びミルシュタインらの方法(ネイチャー(Nature)、第256巻、第495〜第497頁、1975年)及びそれに準じる修飾方法に従って行なうことができる。即ち、前述の如く免疫感作された哺乳動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄あるいは扁桃等、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ又はヒト等の哺乳動物、より好ましくはマウス、ラット又はヒトに由来する自己抗体産生能のないミエローマ細胞とを細胞融合することにより調製される。例えばマウス由来のミエローマ細胞としては、例えばマウス由来ミエローマP3/X63−AG8.653(653)、P3/NS1/1−Ag4−1(NS−1)、P3/X63−Ag8.U1(P3U1)、SP2/O−Ag14(Sp2/O,Sp2)PA1、F0あるいはBW5147、ラット由来ミエローマ210RCY3−Ag.2.3.、ヒト由来ミエローマU−266AR1、GM1500−6TG−A1−2、UC729−6、CEM−AGR、D1R11あるいはCEM−T15等を使用することができる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは、ハイブリドーマを、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェル中培養上清の哺乳動物の免疫感作で用いた抗原に対する反応性を、例えばRIA、ELISA等の酵素免疫測定法によって測定することにより行なうことができる。ここでは、前述の(c)の(オ)及び(カ)の工程により効率的にヒトHLに対する抗体を産生するハイブリドーマが選択できる。
目的のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをクローニングする方法は、通常の方法に従えば良く、特に限定されない。ハイブリドーマのクローニングは、例えば、限界希釈法、軟寒天法、フィブリンゲル法、蛍光励起セルソーター法等により行なうことができる。
ハイブリドーマからのモノクローナル抗体の生産は、ハイブリドーマをインビトロ又はインビボで培養し、得られた培養上清又は哺乳動物の腹水から単離することにより行なうことかできる。インビトロの培養では、モノクローナル抗体を産生させるために用いられる既知の栄養培地、あるいは既知の基本培地から誘導調整されるあらゆる栄養培地を用いて実施することができる。基本培地としては、例えば、Ham'F12培地、MCDB1553培地あるいは低カルシウムMEM培地等の低カルシウム培地及びMCDB104培地、MEM培地、D−MEM培地、RPMI−1640培地、ASF104培地あるいはRD培地等の高カルシウム培地等が挙げられ、該基本培地は、目的に応じて、例えば血清、ホルモン、サイトカイン及び/又は種々無機あるいは有機物質等を含有することができる。インビボの培養では、マウス、ラット、モルモット、ハムスター又はウサギ等、好ましくはマウス、もしくはラット、より好ましくはマウスの腹水等で実施することができる。モノクローナル抗体の単離、精製は、上述の培養上清あるいは腹水を、飽和硫酸アンモニウム、ユーグロブリン沈殿法、カプロイン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAE、DE52等)、抗イムノグロブリンカラムあるいはプロテインAカラム等のアフィニティーカラムクロマトグラフィーに供すること等により行なうことができる。
本発明のポリクローナル抗体は、前記モノクローナル抗体の調製で挙げたのと同様の文献に記載されているような一般的な方法に従って、調製することができる。すなわち、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ブタ、ウマあるいはウシ等の哺乳動物やニワトリなどの鳥類、好ましくはラット、モルモット、ウサギあるいはヤギに、配列番号1又は2のいずれかのペプチド、もしくはそれらの混合物又はその担体との結合物を、モノクローナル抗体の製造方法で述べたような方法で免疫して、これにより製造されるヒトHLに反応性を有する抗体を含む血清、乳あるいは卵を、上記モノクローナル抗体の場合と同様にして単離、精製することにより調製することができる。
精製蛋白質を用いるポリクローナル抗体の生産方法は、良く知られた方法であるが、抗原にごくわずかにでも抗原性を有する夾雑物があれば、それらに対する抗体も共に生産されてしまうことが問題となっている。また、精製蛋白質をヒト生体試料から得ようとする場合は、倫理的な問題、原材料中の感染性物質による作業者の健康への問題、製造物のロット間差の問題など、多くの問題がある。これに対し本発明の配列番号1又は2の配列のペプチドを利用する方法は、原料に由来する問題がなく、製造ロット間差についてもほとんど無視することができ、更に、配列番号1又は2の配列が、蛋白質発現やペプチド合成設備を有する施設であれば容易に入手することができるなど、生体試料由来の精製蛋白質を用いる方法に比べ、数多くのメリットがあり、極めて有用である。また、配列番号1又は2は、選択的に蛋白質の免疫応答優位部位に対する高い結合特異性(抗原認識特異性)抗体を製造する様に設計されており、免疫抗原としての優位性は極めて高い。以上のようにして得られた本発明の抗ヒトHL抗体は、蛋白分解酵素であるペプシン、パパイン等で処理する等の常法により、抗体フラグメント、すなわちFab'又はF(ab')2とすることができ、本発明の測定法や精製法においては、本発明の抗ヒトHL抗体のみならず、このような抗体フラグメントを使用することもできる。
上記本発明の抗ヒトHL抗体、そのフラグメント又はそれらの標識体を用いれば、簡便かつ高感度にヒト血液由来検体中のHLを検出又は定量することが可能となる。ヒト血液由来検体としては、特に限定されないが、例えば、血漿、血清等が挙げられる。
検体を測定するためには、上記で得られた抗体を用いて免疫学的測定方法を実施すればよい。測定方法としては、免疫比濁法、酵素免疫測定法、ラテツクス免疫測定法、ラジオイムノアッセイ、フロロイムノアッセイ、イムノクロマトアッセイ、光学免疫測定法などを利用することができる。本発明の測定系としては、得られたヒトHLに対する抗体を用い放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、免疫比濁法、免疫沈降法、イムノクロマト法などの公知の免疫測定方法を構築することにより、ヒトHLを測定することができる。標識として酵素を使うことは有利であり、酵素としては、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、及びβ−D−ガラクトシダーゼなどが好適である。また、標識に金コロイド、ラテックスやカーボン粒子のような目視で判別できるものを用いても有利である。
免疫測定法の一つの例として、いわゆる競合免疫測定法がある。例えば、検体に放射性同位体等で標識したヒトHLを一定量混合し、更に抗ヒトHL抗体を混合し検体中のヒトHL及び標識ヒトHLを反応させる。検体中のヒトHLは、標識ヒトHLと競合して抗ヒトHL抗体と反応するため、検体中にヒトHLが存在する分、標識ヒトHLとの反応が減少する。反応後、抗ヒトHL抗体をあらかじめ固相担体に結合させておくか、抗イムノグロブリン抗体、プロテインAと抗ヒトHL抗体を反応させることにより、結合、非標識ヒトHLを分離する。一般に用いられる方法により結合していない分画を洗い、標識されている放射性同位元素等を検出することによりヒトHLを測定することが可能となる。
免疫測定法のもう一つの例として、いわゆるサンドイッチ系がある。例えば、抗ヒトHL抗体をマイクロタイタープレート、ビーズ、ニトロセルロース膜、ナイロン膜等の免疫測定法に一般に用いられる担体に結合させ、これを検体と接触させる事により、検体中のヒトHLを担体上にある抗ヒトHL抗体と反応させる。一般に用いられている方法により結合していない分画を洗い、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、ビオチン等で標識した抗ヒトHL抗体と接触させ、担体上にある抗ヒトHL抗体と結合したヒトHLと反応させる。一般に用いられている方法により結合していない分画を洗い、標識されている放射性同位元素、酵素、蛍光物質、ビオチン等を検出することによりヒトHLを測定することが可能となる。また、金コロイド、ラテックスやカーボン粒子のような視覚的に判定可能な物質を前述の抗体の一方に標識をして、上述のサンドイッチ系又は競合法に応用し、判定することも可能である。この測定系に用いる抗ヒトHL抗体、標識抗ヒトHL抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、又はその組み合わせのいずれを用いることも可能である。
ここで肝要なことは、担体に結合する抗体とヒトHLとの複合体が標識抗体と結合できるよう、抗体を組み合わることであり、このような抗体の組み合わせは、前述の系の組み立て、その系に適用してみることにより選択することができる。
凝集検定も有利な実施形態であり、前述の抗体の一方で被覆された粒子と、他の抗体で被覆された粒子を作製する。検出すべき物質への粒子の結合により、凝集が起こり、これは濁りの変化を判定あるいは検出することができる。また、代表的なヒトHL蛋白質濃度を測定できる免疫測定法であるサンドイッチELISA法の場合、本発明のモノクローナル抗体3A2をプラスチックプレートに固定化し、2次抗体に本発明のポリクローナル抗体、3次抗体にペルオキシダーゼ標識抗ウサギ抗体を用いるのが好ましい。
本発明の抗ヒトHL抗体又はフラグメントを不溶性担体に固定化してなる固定化抗ヒトHL抗体又は固定化フラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、試料中に含まれるヒトHLを分離又は精製することができる。
このようなヒトHLを分離又は精製に用いられる不溶性担体としては、(1)ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、ナイロン樹脂等のプラスチックやガラスに代表されるような水不溶性物質からなるプレート、試験管、もしくはチューブ等の内容積を有するもの、ビーズ、ボール、フィルター、あるいはメンブレン等のほか、(2)セルロース系担体、アガロース系担体、ポリアクリルアミド系担体、デキストラン系担体、ポリスチレン系担体、ポリビニルアルコール系担体、ポリアミノ酸系担体、多孔性シリカ系担体等を用いることができる。
このようなアフィニティークロマトグラフィーとしては、例えば(a)不溶性担体として上記(1)のフィルター、メンブレン等を用い、これに本発明の抗ヒトHL抗体又はその抗体フラグメントを固定化した後、この不溶性担体と試料を接触させることにより試料中に含まれるヒトHLを分離する方法、(b)不溶性担体として上記(2)のようなセルロース系担体等を用い、これに本発明の抗ヒトHL抗体又はその抗体フラグメントを常法により固定化(物理的吸着、架橋による高分子化、マトリックス中への封印あるいは非共有結合等による固定化)し、この不溶性担体をガラス製、プラスチック製あるいはステンレス製等のカラムに充填し、カラム(例えば、円柱状カラム)に、試料(例えば、血漿、血清等の体液試料、培養上清あるいは遠心上清等)を通じて溶出させることにより、試料中に含まれるヒトHLを分離又は精製する方法が挙げられる。
上記(b)のアフィニティークロマトグラフィーに用いられる不溶性担体(2)の具体例としては、本発明の抗ヒトHL抗体又はその抗体フラグメントを固定できるものであれば、特に限定されないが、例えば、市販品であるアマシャムファルマシア バイオテク(amersham pharmacia biotech)社製のSepharose 2B、Sepharose 4B、Sepharose 6B、CNBr-Activated 4B、AH-Sepharose 4B、CH-Sepharose4B、Activated CH-Sepharose 4B、Epoxy-activated Sepharose 6B、Activated thiol-Sepharose 4B、Sephadex、CM-Sephadex、ECH-Sepharose 4B、EAH-Sepharose 4B、NHS-activated SepharoseあるいはThiopropyl Sepharose 6B等、バイオラッド(Bio-Rad)社製のBio-Gel A、Cellex、Cellex AE、Cellex-CM、Cellex PAB、Bio-Gel P、Hydrazide Bio-Gel P、Aminoethyl Bio-Gel P、Bio-Gel CM、Affi-Gel 10、Affi-Gel 15、Affi-Prep 10、Affi-Gel Hz、Affi-Prep Hz、Affi-Gel 102、CMBio-Gel A、Affi-Gel heparin、Affi-Gel 501あるいはAffi-Gel 601等、和光純薬工業社製のクロマゲルA、クロマゲルP、エンザフィックスP-HZ、エンザフィックスP-SHあるいはエンザフィックスP-AB等、セルバ(Serva)社製のAE-Cellurose、CM-CelluroseあるいはPAB Cellurose等を挙げることができる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1(組換えヒトHL蛋白質の製造)
(1)ヒトHLをコードするcDNAの調製
市販ヒト肝臓由来のcDNAライブラリー(宝酒造(株)社製)を鋳型として、特異的プライマー〔センスプライマー:5'−GGAATTCGGACAAAGCCTGAAACCAG-3'(配列番号5)、アンチセンスプライマー:5'-GTTTCGCTTTCTAGTCTACTCCTAGGC-3'(配列番号6)〕を用いて、下記の条件でPCRを行い、ヒトHLのcDNAをクローニングした。すなわち、特異的プライマーを用いて、PCRにより増幅したDNA断片を、下記の条件で制限酵素EcoRI及びBamHIの2種により切断後、常法により、アガロース電気泳動により分離し、約1.4KbpのDNA断片をゲルごと切り出した後、Geneclean II(BIO 101社製)で抽出し、目的とするcDNA断片を得た。
<PCR試薬条件>Takara Ex TaqTM(5units/μl) 0.25〜0.5μl10X Ex TaqTM Buffer 10μldNTP Mixture(各2.5mM) 8μlTemplate(cDNAライブラリー) 1μlPrimer(配列番号5) 0.2〜1.0μlPrimer(配列番号6) 0.2〜1.0μl滅菌蒸留水 最終液量100μlへ
<PCR温度反応条件>95℃、5.0分以下の3ステップを37回繰り返した。
95℃、0.5分65℃、1.0分72℃、2.0分
<制限酵素反応条件>得られた各PCR産物10μl当り、制限酵素バッファー(50mM NaCl, 100mMTirs-HCl, 10mM MgCl2,0.025% Triton X-100, pH7.5)を1μl及び制限酵素EcoRI及びBamHI(BioLabs社製)を2μl添加して、37℃で一晩反応させ消化させた。
このようにして得られた、約1.4KbpのDNA断片を、DNA LigationKit(宝酒造(株)社製)を用いて、上記条件により、制限酵素EcoRI及びBamHIの2種により切断したpMAL−p2ベクター(BioLabs社製)に挿入した。次いで、このpMAL−p2_HLベクターを、大腸菌JM109コンピテントセル(Invitrogen社製)に導入した。更に、この大腸菌より、プラスミドDNAを抽出し、プラスミドDNAのシーケンスを行い、約1.4Kbpの目的とするcDNA断片の塩基配列を確認した。このようにして得られた、約1.4KbpのPCR産物は、目的とするヒトHLをコードするcDNAであることが確認された。
(2)組換えヒトHL蛋白質の調製
上記で得られたヒトHLのcDNAをマルトース結合蛋白質(MBP)の下流に組み込み、MBPとHLの結合蛋白質として発現するように構築されたプラスミド(pMAL−p2_HLベクター)を形質転換した大腸菌を100μg/mLのAmpicillinを含むLB培地5mLに植菌し、37℃で一晩振盪培養した。この培養液を100μg/mLのアンピシリン及び0.3mMのイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を含むLB培地100mLに植菌し、37℃で2時間振盪培養した。培養液を遠心(4,000×g,10min)で集菌し、菌体を200mMのNaCl及び1mMのEDTAを含む20mMのトリス緩衝液(pH7.4)(以下、緩衝液(A)と呼ぶ。)で懸濁、遠心(4,000×g,10min)し、菌体を洗浄した。菌体を緩衝液(A)の100mLで懸濁後、超音波処理して菌体を破砕させた。これを遠心(9,000×g,10min)し、上清を回収して粗酵素液とした。得られた粗精製酵素をガラスカラム管に充填し緩衝液(A)で平衡化したアミロースレジン(BioLabs社製)に添加した。吸着し酵素を緩衝液(A)で十分洗浄後、10mMのmaltoseを含む緩衝液(A)で溶出させた。溶出パターンを波長280nmの吸光度により観察し、精製組換えヒトHLとMBPの結合蛋白質画分を得た。
実施例2(抗ヒトHLモノクローナル抗体の調製)
(a)免疫抗原の選択・調製
一般的に蛋白質の構造として外部に露出している部位と考えられるアミノ酸配列中の親水性の高い部位を免疫抗原又はハイブリドーマ細胞のスクリーニングに用いるためヒトHLの蛋白構造解析を行なった。塩基配列・アミノ酸配列の解析は専用ソフトDNASIS-Macv.3.6(日立ソフトウェア社製)を使用した。抗原認識部位として提示されやすい親水性領域推定法として、ホップとウッド法(Hopp &Woods)法、プロシーディングスナショナルアカデミーオブサイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第78巻、第3824〜第3828頁、1981年)を参考にした。また、ある動物種に異種の抗原を免疫した際、抗原として提示されるアミノ酸配列としては、抗原のアミノ酸に動物の種差が明瞭に認められる領域を免疫することが重要であることを考え、ホモロジー検索を行い、より種差のある配列を選択した。ヒトHLのアミノ酸配列からハイドロホビシティ(Hydrophobicity)を計算した。全体としては疎水性が強いが、N末端、中央部及びC末端に親水性の領域がある。遺伝子配列が決定されている動物のHLアミノ酸配列間のホモロジー検索結果(Multiple alignment)、全体的にHLアミノ酸配列は動物種差がほとんど無く、N末端とC末端に若干の種差が認められるのみであった。上記疎水性部位の推定及び由来動物の異なるHLのアミノ酸配列のホモロジー評価、更に個々のアミノ酸の構造特性、担体との結合性を総合的に判断して、抗原として使用する、あるいは抗体を製造するハイブリドーマの選択に使用する配列を決定した。
上記観点より、本実施例で合成し用いたペプチドは、配列番号3で示されるヒトHLのアミノ酸配列中、24〜43番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号1;以下「ペプチド1」という)、45〜63番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド2」という)、255〜275番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド3」という)、330〜338番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド4」という)、367〜385番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド5」という)、428〜446番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド6」という)、467〜476番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド7」という)、490〜499番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号2;以下「ペプチド8」という)とした。これらのペプチド合成は、tBOC(tert-butyloxylcarbonyl)法、Fmoc(9-fluorenylmethyloxycarbonyl)法等により行なった。
合成ペプチドと担体蛋白の結合法には、担体蛋白としてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を用いた。10mgの担体用のKLH(PIERCE社製)を蒸留水の1mLに溶解させ、Sulfo−SMCC(PIERCE社製)の2mgを、1mLの蒸留水に溶解し、その100μlとKLH溶液200μlを混合し、室温で1時間攪拌した。0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化したPD−10(ファルマシアバイオテック社製)に添加した。0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)で溶出させ、溶出パターンを波長280nmでの吸光度で測定した。該溶出パターンに従いマレイミド活性化KLHを回収後、合成ペプチド(4mg/mL蒸留水)の0.5mLを加え、室温で2時間攪拌し、100倍容のPBSで透析し、免疫抗原あるいは酵素免疫測定法に供した。
(b)蛋白質の免疫応答優位部位の特定
(b−1)(a)で発現させた蛋白質抗原で哺乳動物を免疫し、得られた抗血清を(a)で合成したペプチドをそれぞれ固相化した担体に反応させ、抗血清中の特定のペプチドに対する抗体群の分布を評価することにより、免疫応答優位部位の特定する工程は以下の通りに実施した。
組換えヒトHLを用いた場合、免疫方法は8〜10週令のBALB/cマウスの皮下あるいは、静脈内あるいは腹腔内に、精製組換えヒトHLを適当なアジュバンド「例えば、フロインドアジュバンドあるいは、リビアジュバンドシステム(Ribi Ajuvant System、RIBI IMMUNOCHEM RESEARCH社製)と共に注射することにより初回(0日)免疫した。初回免疫から14日目、28日目、42日目に精製組換えヒトHLを皮下あるいは腹腔内に注射することにより追加免疫し、最終投与2週間後に全血液を採取し、その血清を取得した。合成ペプチドと担体蛋白の結合物を用いた場合、0.3mgの結合物とフロインドの完全アジュバンド(Freud's Complete adjuvant、Sigma社製)を等量混合し、ウサギ四肢及び背中の皮膚数十ヶ所に注射して免疫した。2ヵ月〜3ヵ月の間に5〜6回同様に投与した。最終投与2週間後に全血液を採取し、その血清を取得した。下記に示した論理的・戦略的に選択後合成した合成ペプチドを固相化した酵素免疫測定法を用い、マウス血清中の抗体群の検定を実施した。
(b−2)(a)で合成したペプチドを担体蛋白質と結合させ、各々のペプチドと担体蛋白質の結合物を等量ずつ混合した抗原、又は、各々のペプチドを等量ずつ混合して担体蛋白質と結合させた抗原で哺乳動物を免疫し、得られた抗血清を(a)で合成したペプチドをそれぞれ固相化した担体に反応させ、抗血清中の特定のペプチドに対する抗体群の分布を評価することにより、免疫応答優位部位の特定する工程は以下の通りに実施した。
合成ペプチドと担体の結合物に付いては、各々の合成ペプチドを担体と結合させ、担体との結合物としたのち、(1)ペプチド2、4〜8の担体との結合物を等量ずつ混合した免疫抗原と、(2)ペプチド1及び2の担体との結合物を等量ずつ混合した免疫抗原の2種類を用い、各々のペプチドをウサギに免疫する煩雑さを解消し、省力化を達成した。得られた抗血清に付いては、下記に示した合成ペプチドを固相化した酵素免疫測定法を用い、マウス血清中の抗体群の検定を実施した。
ペプチド1〜8を1mg/mLの濃度で高純度の蒸留水に溶解させた。150mMのNaClを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4:以下PBSという)に溶解ペプチド各々を10μg/mLの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。0.05%のTween 20を含むPBS(以下、T−PBSという)で2回洗浄後、ブロッキング試薬(ブロックエース、大日本製薬社製)を350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合残基をブロックした。T−PBSにより2回洗浄後、第1次抗体として、T−PBSに上記で調製したマウス血清及びウサギ血清の各々を100倍に希釈後、50μl/穴ずつ分注し室温で2時間放置する。T−PBSにより2回洗浄後、第2抗体として、ヤギの抗マウスイムノグロブリン−ペルオキシダーゼ結合物及び抗ウサギイムノグロブリン−ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製)の50000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。T−PBSにより2回洗浄後、OPD基質液(o−フェニレンジアミンヂアミン2塩酸塩の60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)の20mLに溶かした溶液に、30%の過酸化水素の20μlを加えた溶液)を50μl/穴ずつ分注し発色後、1.5Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させる。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定する。組換えヒトHLをマウスに免疫して得られた血清を抗血清(a)、ペプチド2、4〜8の担体との結合物を等量ずつ混合した免疫抗原をウサギに免疫して得られた血清を抗血清(b)、ペプチド1及び2の担体との結合物を等量ずつ混合した免疫抗原をウサギに免疫して得られた血清を抗血清(c)とした。この結果を表1及び 図1に示す。
組換えヒトHLをマウスに免疫して得られた血清を抗血清(a)中では、ペプチド1に対する抗体群が優位に多く、ペプチド1が、ヒトHLのアミノ酸配列中で免疫応答優位部位であった。ペプチド2、4〜8の担体との結合物を等量ずつ混合した免疫抗原ウサギに免疫して得られた血清を抗血清(b)中では、ペプチド8に対する抗体群が優位に多く、ペプチド8が、ヒトHLのアミノ酸配列中で免疫応答優位部位であることが、明らかとなった。ペプチド1及び2の担体との結合物を等量ずつ混合した免疫抗原をウサギに免疫して得られた血清を抗血清(c)中では、ペプチド2よりペプチド1に対する抗体群が優位に多く、ペプチド1が、ヒトHLのアミノ酸配列中で免疫応答優位部位であった。
以上の結果から、抗ヒトHLモノクローナル抗体を製造する場合、ペプチド1又は8を哺乳動物に免疫することにより抗体産生細胞を取得し、該抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、該ハイブリドーマをクローン化し、哺乳動物の免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって製造できることが明らかとなった。同様に、抗ヒトHLポリクローナル抗体を製造する場合、ペプチド1又は8を哺乳動物に免疫することにより抗血清を取得し、製造できることが明らかとなった。また、ペプチド1に対する抗HL抗体を取得する場合、哺乳動物としてマウス又はウサギが好適であり、ペプチド8に対する抗HL抗体を取得する場合、哺乳動物としてウサギが好適であることが明らかとなった。
(c)蛋白質中の免疫応答優位部位に対する抗体の製造
(c−1)(b)で明らかとなった蛋白質中の免疫応答優位部位に対応するペプチドを担体蛋白質と結合させた抗原で哺乳動物を免疫し、該免疫動物の脾細胞と骨髄腫細胞とを融合させ、得られるハイブリドーマ細胞から組換え蛋白質と免疫応答優位部位に対応するペプチドの2種類の抗原をそれぞれ固相化した担体に反応させ、免疫応答優位部位を認識し、蛋白質に対して高い結合特異性(抗原認識特異性)を有するハイブリドーマ細胞をスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体を製造する工程は以下の通りに実施した。
免疫方法は、8〜10週令のBALB/cマウスの皮下あるいは、静脈内あるいは腹腔内に、ペプチド1の担体との結合物を適当なアジュバンド(例えば、フロインドアジュバンドあるいは、リビアジュバンドシステム(RIBI Ajuvant System、RIBI IMMUNOCHEM RESEARCH社製)と共に注射することにより初回(0日)免疫した。初回免疫から14日目、28日目、42日目にペプチド1の担体との結合物を皮下あるいは腹腔内に注射することにより追加免疫し、更に下記に述べるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ調製の前々日及び前日にも同様にして採集免疫し、マウスから脾細胞を調製して細胞融合に用いた。
8−アザグアニン耐性マウス骨髄腫細胞P3−U1を正常培地(RPMI−1640に1.5mMのグルタミン及び13%の牛胎児血清を加えた培地)に培養(37℃、CO2、5%通気)し、4日後に2×107以上の細胞を得た。
RPMI−1640(日水製薬社製)でよく洗浄した免疫マウス脾細胞1×108個とマウス骨髄腫細胞2×107個と混合し、1500rpmで5分間遠心分離にかけた。沈殿として得られた脾細胞とP3−U1の混合した細胞群をほぐした後、攪拌しながら50%のポリエチレングリコール及び、10%のDMSO混合溶液の1mLを加え、2分後にRPMI−1640を徐々に加え、全容量が50mLとなるようにした。1000rpmで5分間遠心分離後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、HAT培地(上記正常培地にヒポキサンチン10-4M、チミジン1.5×10-5M、及びアミノプテリン4×10-7Mを加えた培地)の30mLを加え、5mL容メスピペットでゆるやかに細胞を懸濁し、5%CO2インキュベーター中37℃で2時間培養した。1500rpmで5分間遠心分離後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、HAT培地に懸濁し、96穴培養プレートに200μl/穴ずつ分注し、5%CO2インキュベーター中37℃で10〜14日間培養した。
抗ヒトHLモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは、抗原を固相化した酵素免疫測定法を用いて行なった。実施例1で調製した組換えヒトHL及びペプチド1をPBSに1μg/mLの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。T−PBSを350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。T−PBSにより2回洗浄後、T−PBSを50μL/穴ずつ分注し、第1次抗体として、クリーンベンチ内でハイブリドーマ培養上清を96穴EIAプレートに100μl/穴ずつ移し、4℃で一晩又は室温で2時間放置した。T−PBSにより2回洗浄後、第2抗体として、ヤギの抗マウスイムノグロブリン−ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製)の5000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。T−PBSにより2回洗浄後、OPD基質液(o−フェニレンジアミン2塩酸塩の60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)の20mLに溶かした溶液に、30%の過酸化水素の20μlを加えた溶液)を50μl/穴ずつ分注し発色後、1.5Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させる。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定した。
抗HLモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが認められた穴について、限界希釈法によりクローニングを2〜4回繰返し、安定して抗体産生の認められたものを、抗HLモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択した。樹立されたハイブリドーマ3A2を2001年1月24日付けにて通産省工業技術院生命工学工業技術研究所に、寄託番号FERM P−18181として寄託した。
(c−2)モノクローナル抗体の大量調製プリスタン処理(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカンの0.5mL/匹を腹腔内投与し、1〜2週間飼育する。)した10週令マウス(BALB/c)に上記のハイブリドーマ株各1×106個細胞/匹を腹腔内注射した。10〜21日後にハイブリドーマ株は腹水癌化し、腹腔内に腹水があるマウスから、腹水(4〜10mL/匹)を採取し、遠心分離して固形分を除去した。上清を50%硫安塩析後、PBSで一晩透析し、これを粗精製モノクローナル抗体とした。
(c−3)(b)で明らかとなった蛋白質中の免疫応答優位部位に対応するペプチドを担体蛋白質と結合させた抗原で哺乳動物を免疫し、免疫応答優位部位を認識し、蛋白質に対して高い結合特異性(抗原認識特異性)を有する抗血清及びポリクローナル抗体を製造する工程及び、抗血清を免疫応答優位部位に対応するペプチドを固相化した担体に反応させたのち、常法に従い担体を単離後、担体より抗体画分を分画して、高い結合特異性(抗原認識特異性)を有するポリクローナル抗体群を濃縮する工程は以下の通りに実施した。
上記(a)で調製したペプチド1又は8と担体(KLH)の結合物の0.1〜0.3mgとフロインドの完全アジュバンド(Freud's Complete adjuvant、Sigma社製)を等量混合し、ウサギ四肢及び背中の皮膚数十ヶ所に注射して免疫した。2ヶ月〜3ヶ月の間に5〜6回同様に投与した。最終投与2週間後に全血液を採取し、その血清を取得した。血清を50%硫安塩析後、PBSで一晩透析し、これを粗精製ポリクローナル抗体とした。
(c−4)(抗ヒトHL抗体、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の精製)
上記で取得したモノクローナル抗体3A2の粗精製モノクローナル抗体及び、粗精製ポリクローナル抗体に、MAPS II結合バッファー(バイオラッド社製)を等量加え、0.45μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過し、白沈を除いた。得られた濾液をHiTrap Protein Aアフィニティーカラム(ファルマシアバイオテック社製)にて添加した。MAPS II結合バッファーで洗浄後、MAPS II溶出バッファー(バイオラッド社製)で溶出させた(3mL/チューブ,約10本)。溶出パターンを波長280nmでの吸光度で測定し、溶出パターンに従い、抗体を含む分画を回収した。
(アイソタイプの決定)
マウスモノクローナル抗体アイソタイプ決定キット(ZYMED社製)を用い、キット添付の実験操作プロトコールに従って操作を行い、モノクローナル抗体3A2のアイソタイプを決定した。3A2はIgG2a,κであることが確認された。
実施例3(アフィニティークロマトグラフィーによるヒトHLの精製
ヒトPHPから実施例2で調製した精製モノクローナル抗体3A2を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、高純度のヒトHLを精製した。
(1)固相化モノクローナル抗体(カラム充填用吸着体)の調製CNBr活性化セファロース4B(CNBr-activated Sepharose 4B、ファルマシアバイオテック社製)を用い、添付のプロトコールに従って操作を行なった。CNBr活性化セファロース4Bを1mMの塩酸で20分間膨潤させ、G3グレードの細孔のグラスフィルター付きブフナーロート上で同1mMの塩酸で洗浄する。ゲルを0.5Mの塩化ナトリウムを含む0.1Mの炭酸水素ナトリウム(pH8.3)の緩衝液(以下、結合バッファーという。)に懸濁し、結合バッファーに対し一晩透析した抗体を添加し、室温で2時間混合し抗体とゲルを結合させる。11000rpmで5分間遠心分離し上清を除去し、0.1Mのトリス緩衝液(pH8.0)に懸濁後、室温で2時間放置する。グラスフィルターにより濾過後、グラスフィルター上で結合バッファー及び0.5Mの塩化ナトリウムを含む0.1Mの酢酸緩衝液(pH4.0)で交互に洗浄する。最後に適当量のPBSに懸濁しカラムに充填させる。
(2)ヘパリンセファロース4Bクロマトグラフィーによる精製複数の健常人から採血したヘパリン負荷後の末梢血を、常法に従い遠心分離により血球系細胞を除去し、ヒト血漿PHPを得、使用時まで−80℃で保存した。−80℃保存ヒト血漿200mLを37℃恒温槽で溶解し、不溶物を除くために遠心(5000×g,30min,4℃)した。このPHPをガラスカラム管(2×40cm、バイオラッド社製)に充填し、0.3MのNaCl及び10%のGlycerolを含む5mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化したHeparin-Sepharose 4Bに添加した。0.3MのNaCl及び10%のGlycerolを含む5mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄後、0.3〜1.5MのNaCl、10%のGlycerolを含む5mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で濃度勾配溶出させた(8mL/チューブ,65本)。溶出パターンを波長280nmでの吸光度と下記に示した分画したフラクションを固相化した酵素免疫測定法を用い、HTGLとLPLの分別状態を検定した。
各々の分画したフラクションを、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原プレートに固相化した。T−PBSを350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。T−PBSにより2回洗浄後、T−PBSを50μl/穴ずつ分注し、第1次抗体として、実施例3で調製した精製抗ヒトHLモノクローナル抗体3A2及び、精製した抗LPLモノクローナル抗体(特開平05−223822記載のモノクローナル抗体が適当である。)を10μg/mLの濃度に希釈後、50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置した。T−PBSにより2回洗浄後、第2抗体として、ヤギの抗マウスイムノグロブリン−ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製)の5000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。T−PBSにより2回洗浄後、OPD基質液(o−フェニレンジアミン2塩酸塩の60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)の20mLに溶かした溶液に、30%の過酸化水素の20μlを加えた溶液)を50μl/穴ずつ分注し発色後、1.5Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させる。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定した。
結果を図2に示す。実施例2で調製した精製抗ヒトHLモノクローナル抗体3A2により検出されたHL蛋白質は、約0.8MのNaCl濃度で溶出されており、チャン(Chao-Fu Cheng)ら(ザ ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)、第260巻、第19号、第10720−10727頁、1985)の文献の結果と一致しており、本発明の抗ヒトHLモノクローナル抗体3A2が、特異的にヒトHLを認識していることを示している。また、本発明の抗ヒトHLモノクローナル抗体3A2は、抗LPLモノクローナル抗体で検出される約1.5MのNaCl濃度で溶出されるLPLには、交差反応性を示さず、〔1〕ヒトHLに対して抗原抗体反応が認められる。〔2〕少なくともヒトリポ蛋白リパーゼに対しては、抗原抗体反応が認められない、ことが証明された。
(3)アフィニティークロマトグラフィーによる精製上記(2)で調製したHLを含む溶液をPBSに対して一晩透析後、(1)で調製したアフィニティーカラムに加えた。カラムをPBSで洗浄し、3MのNaSCNを含むPBSで溶出させ、溶出画分のパターンを、波長280nmでの吸光度により測定した。結果を図3に示す。該溶出パターンに従い、ヒトHLを含む画分を集め、PBSで透析し、極めて高純度の精製ヒトHLを調整した。
常法に従ってSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)により解析した。結果を図4に示す。泳動・スポット画像解析ソフトDensitograph Ver.4.03C(アトー(株)社製)を用い分子量と純度を評価した結果、分子量約65,000の一種からなり、極めて高い純度であることが確認された。
実施例4サンドイッチELISAによるヒトHLの定量法の確立
(1)固相化抗体の作製PBSに精製モノクローナル抗体3A2又は、精製ポリクローナル抗体を10μg/mLに希釈し、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗体をプレートに固相化した。T−PBSで2回洗浄後、1%のBSAを含むT−PBSを350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。内容物を除去後、1%のBSA及び10%のシュークロースを含むT−PBSを350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置後、内容物を除去して自然乾燥させた。
(2)モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のペルオキシダーゼ標識5mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)にペルオキシダーゼ(以下、HRPという)を10mg/mLの濃度で溶解した溶液に、メタ過ヨウ酸ナトリウムを蒸留水で1000mg/mLの濃度で溶解した溶液を、HRP:メタ過ヨウ酸ナトリウム=1mg:0.43mgの比で加え、暗所、室温で30分間反応させた。次いで反応液を5mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)で平衡化したセファデックスG−25(1.5×30cm、ファルマシアバイオテック社製)のカラムに添加して、活性化HRP画分を回収した。次に精製モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を0.1Mの重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.3)で一晩透析した溶液に、活性化HRP画分を重量比1:1で混合し、暗所、室温で1時間反応させた。反応後、テトラヒドロホウ酸ナトリウムを蒸留水で2mg/mLの濃度で溶解した溶液を、反応液500μlに対して10μlで混合し、暗所、室温で15分間反応させた。反応後、等量の飽和硫安を加え、氷上で1時間放置した。12,000rpmで10分間遠心分離後、上清を除去してHRP標識抗体を回収し、PBSに懸濁した。波長280nmでの吸光度を測定し、吸光度を用い以下の試験を行った。
(3)サンドイッチELISAによる定量系(2抗体法)
(1)で作製した固相化抗体、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体(以下、固相化マイクロプレートという)を用いる。固相化マイクロプレートの各ウェルに0.2%のBSA及び0.05%のTriton X-100を含むPBS(以下、BT−PBSという)で希釈した測定試料(ヘパリン負荷前血漿、PHP、精製HL)を50μl/穴ずつ加え、室温で2時間インキュベートした。固相化マイクロプレートをT−PBSで2回洗浄後、BT−PBSBで希釈した(2)で作製したHRP標識モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体溶液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間インキュベートした。固相化マイクロプレートをT−PBSで2回洗浄後、OPD基質液(o−フェニレンジアミン2塩酸塩の60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)の20mLに溶かした溶液に、30%の過酸化水素の20μlを加えた溶液を50μl/穴ずつ分注し発色後、1.5Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させた。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定した。
(4)サンドイッチELISAによる定量系(3抗体法)
(1)で作製した固相化抗体、モノクローナル抗体3A2(以下、固相化マイクロプレート)を用いる。固相化マイクロプレートの各ウェルにBT−PBSで希釈した測定試料(ヘパリン負荷前血漿、PHP、精製HL)を50μl/穴ずつ加え、室温で2時間インキュベートした。固相化マイクロプレートをT−PBSで2回洗浄後、第2抗体としてBT−PBSでポリクローナル抗体を10μg/mLに希釈した溶液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間インキュベートした。固相化マイクロプレートをT−PBSで2回洗浄後、第3抗体として、ヤギの抗ウサギイムノグロブリン−ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製)の5000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。固相化マイクロプレートをT−PBSで2回洗浄後、OPD基質液(o−フェニレンジアミン2塩酸塩の60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)の20mLに溶かした溶液にね30%の過酸化水素の20μlを加えた溶液を50μl/穴ずつ分注し発色後、1.5Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させた。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定した。又は、TMB基質(PIERCE社製)を50μl/穴ずつ分注し発色後、2.0Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させた。プレートリーダーにて吸光度を450nmで測定した。被検体中のHL濃度は、各々精製HL及び標準PHPを標準物質として作成した検量線から求めた。
(5)検量線作製(精製HL)
実施例3で調製した精製HLを標準物質として、(4)で確立したサンドイッチELISAを用いて検量線を作製した。結果を図5に示す。10〜1000ng/mLの濃度範囲で良好な検量線が得られた(y=0.315Ln(x)−0.5275、相関係数:R2=0.9963)。この検量線から被検体中のHL濃度を計算した。
(6)測定系の正確性確認(5)で作成した検量線から、同時に測定したPHPを40倍、80倍及び160倍して測定後、各点のHL濃度を計算して、希釈直線性から測定系の正確性を確認した。結果を図6に示す。40〜160倍まで良好な希釈直線性を示した(y=894.41x−0.9684、相関係数:R2=0.9857)。
(7)サンドイッチELISA系の特異性検討特異性を検討するため、ヘパリン負荷前血漿及びヘパリン負荷後血漿(PHP)を40倍、80倍及び160倍して測定後、各点のHL濃度を計算して、特異性を確認した。結果を図7に示す。ヘパリン負荷後血漿(PHP)は、40〜160倍まで良好な希釈直線性(y=551.94x+2.2692、相関係数:R2=0.9816)を示し、ヘパリンを静注して肝内皮細胞表面に係留しているHLを血中に遊離の状態で取り出し、特異的に測定していることが明らかとなった。一方、ヘパリン負荷前血漿は、HLが肝内皮細胞表面に係留した状態であり、血中に遊離で存在するHLはほとんどないが、微量のHL(y=24.878x+5.3756、相関関数:R2=0.9322)を測定できた。

Claims (3)

  1. 配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド1もしくは配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するペプチド8、又は配列番号1もしくは2で示されるアミノ酸のうち1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加したアミノ酸配列を有するペプチドを免疫原として用いる、配列番号1又は2で示されるアミノ酸配列を認識する抗ヒト肝性トリグリセリドリパーゼ抗体又はそのフラグメントの製造方法。
  2. 配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド1もしくは配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するペプチド8、又は配列番号1もしくは2で示されるアミノ酸のうち1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加したアミノ酸配列を有するペプチドを免疫感作して取得された抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させ、得られるハイブリドーマからペプチド1又は8に対して特異的親和性を示す抗体を産生するハイブリドーマを選択し、次いで該ハイブリドーマを培養する工程を含む、請求項1記載の抗ヒト肝性トリグリセリドリパーゼ抗体又はそのフラグメントの製造方法。
  3. 免疫原が配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド1であって、ハイブリドーマ3A2(FERM P−18181)を培養する工程を含む、請求項1記載の抗ヒト肝性トリグリセリドリパーゼ抗体又はそのフラグメントの製造方法。
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