JP2011219820A - 耐熱マグネシウム合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温下での使用に適した耐熱マグネシウム合金を提供する。
【解決手段】本発明の耐熱マグネシウム合金は、全体を100質量%としたときに(以下単に「%」とする)、1%以上4%以下の銅(Cu)と、2%以下のカルシウム(Ca)および/または2%以下のマンガン(Mn)と、0.001%以上1.5%以下のスカンジウム(Sc)と、を含み、残部がマグネシウム(Mg)と不可避不純物とからなることを特徴とする。この合金は、Ca含有量が抑制されても、高温における耐クリープ性に優れる。
【選択図】なし

Description

本発明は、高温下での使用に適したマグネシウム合金に関するものである。
アルミニウム合金よりもさらに軽量なマグネシウム合金は、軽量化の観点から航空機材料や車両材料などとして広く用いられつつある。しかしながら、マグネシウム合金は、用途によっては強度や耐熱性などが充分ではないため、さらなる特性の向上が求められている。
たとえば、一般的なマグネシウム合金として、AZ91D(ASTM記号)がある。AZ91Dの熱伝導率は60W/mK程度であるため、使用環境が高温であったり使用中に発熱したりする部材に用いられると、放熱が良好に行われず、部材に熱変形が生じることがある。特に、内燃機関のシリンダヘッドやシリンダブロックに用いられるマグネシウム合金として熱伝導率の低いマグネシウム合金を用いると、シリンダヘッドが熱変形したり、シリンダブロック内に熱がこもりシリンダボアが変形することで、摩擦が増大したり気密性が低下したりするなどの悪影響が生じる。そのため、高い熱伝導率をもつことで放熱が良好に行われ、高温下での使用に好適なマグネシウム合金が求められている。
たとえば、Mg−3%Cu−1%Caの合金組成(単位は「質量%」)をもつマグネシウム合金の熱伝導率は、熱伝導率の高いCuが含まれることで、AZ91Dの熱伝導率よりも高い。しかしながら、使用条件によっては高温での耐クリープ性などが十分ではない場合がある。
また、高温強度に優れたマグネシウム合金を開示する特許文献1には、実施例9として、Mg−2.5%Ag−2.0%Ca−0.5%Mn−3.0%Sc(単位は「質量%」)が記載されている。特許文献1には、スカンジウムは高温強度の向上に有効な元素であり通常6%を超える添加量で用いられること、スカンジウムを銀およびカルシウムと併用することで6%以下の添加量で高温強度が向上すること、が記載されている。
特許文献2には、スカンジウムを脱水処理した添加材料をマグネシウム合金溶湯に添加して混合して鋳造したマグネシウム合金鋳物が開示されている。特許文献2では、マグネシウム合金の耐熱性に影響を及ぼす合金中の水素を、脱水処理したスカンジウムに吸蔵させる。具体的には、実施例2に記載のように、Mg−6%Al−0.2%Mn系のAM60合金(単位は「質量%」)の溶湯に、アルゴン雰囲気中でアーク溶解して脱水処理したスカンジウムを1%添加している。
特開平6− 49578号公報 特開平6−279890号公報
特許文献1および特許文献2では、実施例に記載の各マグネシウム合金に対して高温での引張強度を測定している。しかし、それぞれの高温での耐クリープ性および熱伝導性に関しては不明である。特に、特許文献2の実施例2では、マグネシウム合金にアルミニウムが含まれるため、熱伝導率はMg−3%Cu−1%Ca合金よりも低いと推測される。
本発明は、上記問題点に鑑み、高温下での使用に適した耐熱マグネシウム合金を提供することを目的とする。また、その鋳造用マグネシウム合金からなる鋳物を提供することを目的とする。
本発明者等は、鋭意研究の結果、Mg−3%Cu−1%Ca合金のカルシウム含有量を増加させると、高温での耐クリープ性(高温耐クリープ性)が向上することに着目した。しかし、カルシウムの含有量を増加させると、引張強さおよび破断伸びが大きく低下することもわかった。そこで、カルシウムの含有量を少なくしても高温耐クリープ性を向上させられる他の添加元素として、スカンジウムを新たに見出した。さらには、カルシウムを含有しなくてもスカンジウムをマンガンとともに添加することで、高温での耐クリープ性を維持できることを見出した。
すなわち、本発明の耐熱マグネシウム合金は、全体を100質量%としたときに(以下単に「%」とする)、1%以上4%以下の銅(Cu)と、2%以下のカルシウム(Ca)および/または2%以下のマンガン(Mn)と、0.001%以上1.5%以下のスカンジウム(Sc)と、を含み、残部がマグネシウム(Mg)と不可避不純物とからなることを特徴とする。
前述のように、マグネシウム合金のCa含有量を増加させると、高温耐クリープ性が向上する。これは、Caが、Mg結晶粒の粒界にネットワーク状に晶出して粒界晶出物を形成するためである。この粒界晶出物により、粒界滑りが抑制される。つまり、Ca含有量が多いと、粒界晶出物が十分に形成されるため、高温耐クリープ性が向上する。しかし、Caは、結晶粒界において脆性な化合物を形成する。このような化合物が、マグネシウム合金の引張強さおよび破断伸びを大きく低下させると考えられる。
一方Scは、Mg結晶粒の粒界に晶出するのではなく、Mg結晶粒内に固溶する。そのため、Scを添加してもマグネシウム合金の破断伸びは低下しにくく、また、Scは脆性な化合物を形成しにくい。したがって、本発明の耐熱マグネシウム合金は、Scを含有することにより、Ca含有量が少なくてもマグネシウム合金の機械的特性および高温耐クリープ性を向上させることができる。
そして、本発明の耐熱マグネシウム合金は、Caを含まない場合であっても、ScおよびMnを含むことで、十分な高温耐クリープ性を示す。特に、CaとともにScおよびMnを含む耐熱マグネシウム合金では、高温耐クリープ性の向上が顕著となる。
さらに、本発明の耐熱マグネシウム合金は、Caとともに粒界晶出物を形成するCuを含む。そのため、本発明の耐熱マグネシウム合金は、Caの含有量が低くても粒界晶出物が十分に形成されるため、高い高温耐クリープ性を示す。
ところで、マグネシウム合金は、マグネシウムが酸化しやすいことから、溶湯または粉末の状態では、燃焼したり爆発したりし易いことが知られている。マグネシウム合金に含まれるCaは、そのような燃焼および爆発を抑制する働きもある。しかし、本発明の耐熱マグネシウム合金は、Scを含むことで、Caの含有量を減少させても、鋳造の際に燃焼したり加工の際に爆発したりしにくい。
本発明の耐熱マグネシウム合金は、カルシウム(Ca)の含有量が少量であっても、高温での耐クリープ性が十分に維持される。また、本発明の耐熱マグネシウム合金は、スカンジウム(Sc)を含んでいても、本来の高い熱伝導率を示す。そのため、高温環境での使用に適する。さらに、本発明の耐熱マグネシウム合金は、Caの含有量が少量であっても、耐熱マグネシウム合金溶湯の爆発、耐熱マグネシウム合金粉末の粉塵爆発、などが防止される。
本発明の耐熱マグネシウム合金であるMg−3質量%Cu−1質量%Ca−0.5質量%Mn−0.01質量%Sc合金の金属組織を金属顕微鏡で観察した結果を示す。 Mg−3質量%Cu−1質量%Ca−0.5質量%Mn−0.01質量%Sc合金の電子線マイクロアナリシス(EPMA)による分析結果を示す。 カルシウム含有量の異なるMg−Cu−Ca合金について、高温耐クリープ性、高温での破断伸び、および金属組織を示す。 マグネシウム合金のスカンジウム含有量に対する応力保持率の変化を示すグラフである。 マグネシウム合金のスカンジウム含有量に対する熱伝導率の変化を示すグラフである。 銅の含有量の異なるMg−Cu−Ca合金について、高温での引張強さ、破断伸び、および金属組織を示す。
以下に、本発明の耐熱マグネシウム合金を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「m〜n」は、下限mおよび上限nをその範囲に含む。また、その数値範囲内において、本明細書に記載した数値を任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。
なお、本明細書において、「X−Y系化合物」等の記載は、XとYとを主成分とする化合物である。すなわち、組成式でXYと示されるようなXとYとを主成分とする化合物が含まれる。
本発明の鋳造用マグネシウム合金は、銅(Cu)とカルシウム(Ca)および/またはマンガン(Mn)とスカンジウム(Sc)とを含み、残部がマグネシウム(Mg)と不可避不純物とからなる。CuとともにCaおよび/またはMnを含むことで、Mg結晶粒の結晶粒界に、主としてMg、CuおよびCaからなる粒界晶出物がネットワーク状(三次元網目状)に晶出する。粒界晶出物は、不連続部分の少ないネットワーク状であるため、粒界すべりの抑制効果が高い。
Cuの含有量は、鋳造用マグネシウム合金全体を100%としたときに、0.5〜4%である。Cuの含有量が0.5%以上であれば、結晶粒界にMg−Cu系化合物が十分に晶出する。Cuの含有量が0.5%未満では、Mg−Cu系化合物の結晶粒界への晶出が不十分なため、引張強さおよび破断伸びが満足ではなく、高い機械的特性が得られない。好ましいCuの含有量は、1%以上、2%以上、2.5%以上さらには2.7%以上である。一方、Cuが多い程、結晶粒界に晶出するMg−Cu系化合物の量も多くなるため、機械的特性は向上する。しかし、Mg−Cu系化合物が過剰になると脆い組織となるため、引張強さも破断伸びも低下する。そのため、Cuの含有量は、4%以下とする。好ましいCuの含有量は、3.5%以下、3.2%以下さらには3%以下である。
Caは、Cuとともに結晶粒界に存在して、三次元網目構造の形成に寄与する。つまり、Mg−Cu系化合物とともにMg−Ca系化合物が結晶粒界に晶出して、不連続部分の少ない良好な三次元網目構造が形成される。Caの含有量は、鋳造用マグネシウム合金全体を100%としたときに、2%以下である。Caの含有量が2%を超えると、Mg−Cu系化合物が過剰に晶出して脆い組織となるため、引張強さおよび破断伸びは低下する。そのため、Ca含有量は、少ないほど好ましく、1.5%以下さらには1%以下が好ましい。
Mnは、Mg結晶粒に固溶して、機械的特性の向上に寄与する。また、耐食性の向上にも寄与する。Mnの含有量は、2%以下である。2%を超えるMnがMgに固溶しないことは、Mg−Mn二元系状態図より明らかである。好ましいMnの含有量は、1.5%以下、1%以下、0.8%以下さらには0.6%以下である。
本発明の耐熱マグネシウム合金には、CaおよびMnのうちの少なくとも一方が、それぞれ上記の含有量を上限として含まれていればよい。高温耐クリープ性の観点からは、Caを必須の合金元素とするとよい。なかでも、CaおよびMnがともに含まれている耐熱マグネシウム合金は、特に高い高温耐クリープ性を示す。好ましいCaの含有量は、0.1%以上さらには0.2%以上である。また、好ましいMnの含有量は、0.1%以上、0.2%以上さらには0.4%以上である。なお、本発明の耐熱マグネシウム合金は、Caが含まれない場合であってもScとともにMnを含むことで、優れた機械的特性および高温耐クリープ性をもつ。
Scは、Mg結晶粒に固溶して、高温耐クリープ性の向上に寄与する。Scの含有量が0.001%以上であれば、Caおよび/またはMnと共存することで、マグネシウム合金の高温耐クリープ性が向上する。好ましいScの含有量は、0.01%以上さらには0.03%以上である。しかし、Scの含有量を増加させると、熱伝導率が低下する。そのため、Scの含有量は1.5%以下、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下さらには0.1%以下である。
また、Scは、マグネシウム合金の発火温度を上昇させる。したがって、本発明の耐熱マグネシウム合金がCaを含まない場合であっても、Scにより溶湯の燃焼などが防止される。Caを含まない場合のSc含有量は、0.05%以上さらには0.06%以上が好ましい。
本発明の耐熱マグネシウム合金の金属組織、耐酸化性、耐腐食性、常温域または高温域における強度、靱性等の機械的特性、電気的特性など、種々の特性を改善するために、微量な元素を含有させてもよい。微量改質元素は、たとえば、Zr、Sr等である。ただし、上記の基本組成への影響を考慮して、微量改質元素は含有総量で1%以下、0.8%さらには0.6%以下程度が好ましい。また、不可避的不純物としては、たとえば、Fe、Ni、Cr、Si等が挙げられる。これらの各不可避不純物は0.02%以下さらには0.01%とするのが好ましい。
以上説明した本発明の耐熱マグネシウム合金は、宇宙、航空の分野をはじめとし、自動車、電気機器など、各種分野で用いることができる。また、耐熱マグネシウム合金からなる部材としては、その高温での特性を生かして、高温環境下で使用される製品、たとえば、使用中に高温となるコンプレッサー、ポンプ類、各種ケース類を構成する部品、また、高温および高負荷の下で用いられるエンジン部品、特に、内燃機関のシリンダヘッド、シリンダブロックやオイルパン、内燃機関のターボチャージャー用インペラ、自動車等に用いられるトランスミッションケース等が挙げられる。
また、本発明の耐熱マグネシウム合金は、その形態を問わない。たとえば、鋳造により得られる鋳物であるとよい。このようなマグネシウム合金鋳物は、注湯工程と凝固工程とを経て得られる。注湯工程は、全体を100質量%としたときに、1%以上4%以下の銅(Cu)と、2%以下のカルシウム(Ca)および/または2%以下のマンガン(Mn)と、0.001%以上1.5%以下のスカンジウム(Sc)と、を含み、残部がマグネシウム(Mg)と不可避不純物とからなる合金溶湯を鋳型に注湯する工程である。凝固工程は、注湯工程後の合金溶湯を冷却させて凝固させる工程である。
マグネシウム合金鋳物は、通常の重力鋳造や加圧鋳造に限らず、ダイカスト鋳造したものでもよい。また、鋳造に使用される鋳型も砂型、金型等を問わない。凝固工程における凝固速度(冷却速度)にも特に限定はなく、三次元網目構造が形成される程度の凝固速度を鋳塊のサイズに応じて適宜選択すればよい。なお、一般的な凝固速度で凝固させれば、ネットワーク状の金属組織が得られる。
また、マグネシウム合金鋳物は、鋳放し材であるのが望ましい。さらに、鋳造後に熱処理することにより、鋳物の特性を向上させてもよい。
以上、本発明の耐熱マグネシウム合金の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、本発明の耐熱マグネシウム合金の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
<試験片#01〜#16の作製>
以下の手順で、実施例および比較例のマグネシウム合金(試験片#01〜#16)を作成した。
はじめに、電気炉中で予熱した鉄製るつぼの内面に塩化物系のフラックスを塗布し、その中に秤量した純マグネシウム地金、純Cu、必要に応じて純Scおよび純Mnを投入して溶解した。750℃に保持したこの溶湯中に、さらに、秤量したCaを添加した(溶湯調製工程)。
なお、純マグネシウム地金、純Cu、Ca、純Scおよび純Mnの配合割合を表1に示した。表1中の「−」は、未配合であることを示す。
この溶湯を十分に攪拌し、原料を完全に溶解させた後、同温度でしばらく沈静保持した。こうして得た各種の合金溶湯を所定の形状の金型に流し込み(注湯工程)、大気雰囲気中で凝固させて(凝固工程)、#01〜#16の試験片(マグネシウム合金鋳物)を鋳造した。なお、得られた試験片は、30mm×30mm×200mmであった。
また、比較材として、市販のAZ91D(ASTM規格)を用い、同様の試験片を作製した。
<合金組成の分析>
上記の手順で得られた各試料について、湿式分析により組成分析して、マグネシウム合金全体の分析組成を得た。こうして得た基本元素組成を表1に「分析値」として示した。なお、表1中の「−」は、未配合、未分析もしくは未測定、分析不可もしくは測定不可のいずれかを示す。
比較材であるAZ91Dについても同様の分析を行った。その結果、Al:8.4質量%、Zn:0.6質量%、Mn:0.3質量%であった。
<評価>
<外観観察>
いずれの試験片も、表面に金属光沢が見られた。#01〜07および#09〜16では、いずれの試験片を鋳造した場合にも、マグネシウム合金溶湯は燃焼しなかった。しかし、CaもScも含まない#08では、溶湯が一部燃焼した。#08の試験片の上面には、燃焼を硫黄で鎮火したことで生じた腐食が見られた。
<金属組織の観察>
金属顕微鏡を用いて、Mg−3Cu−1Ca−0.5Mn−0.01Sc合金(数値の単位は「質量%」で配合割合を示す)の金属組織を観察した。結果を図1に示す。結晶粒と、結晶粒界に三次元のネットワーク状に晶出した粒界晶出物と、が観察された。
さらに、このマグネシウム合金を、エレクトロンプローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて分析した。結果を図2に示す。なお、図2において、左上の写真は二次電子線像(BEI)であって、他は二次電子線像の領域の元素分布を分析した面分析結果である。Mg−3Cu−1Ca−0.5Mn−0.01Sc合金は、主としてMgからなるMg結晶粒と、CuおよびCaを含む粒界晶出物と、からなる金属組織をもち、ScおよびMnはMg結晶粒に固溶していることがわかった。
また、金属顕微鏡を用いて、試験片#01、#10、#12および#13の金属組織を観察した。結果を図3および図6に示す。
<熱伝導率の測定>
上記#01〜#16の試験片および比較材について、レーザーフラッシュ法により熱伝導率を求めた。結果を表1に示した。
<引張試験>
上記#01〜#16の試験片および比較材に対して引張試験をおこない、引張強さ、破断伸びおよび耐力を測定した。測定は、JISZ2241に準じて室温において行った。引張試験には、各試験片から14B号試験片を切り出して使用した。結果を表1に示した。
<応力緩和試験>
上記#01〜#16の試験片および比較材に対して応力緩和試験を行い、耐熱性(クリープ特性)を調べた。
応力緩和試験は、試験片に試験時間中、所定の変形量まで荷重を加えたときの応力が、時間とともに減少する過程を測定する試験である。具体的には、所定の温度の大気雰囲気中において試験片に所定の圧縮応力を負荷し、そのときの試験片の変位が一定に保たれるように、時間の経過に併せてその圧縮応力を低減する。
試験は、200℃の大気雰囲気において、100MPaを負荷して行った。応力緩和試験開始時の圧縮応力の値を100%としたとき、開始から40時間後の圧縮応力を応力保持率とし、表1に示した。
試験片#01、#11および#12は、Caの配合割合が異なるMg−Cu−Ca合金である。これらの試験片について、Ca含有量に対する応力保持率および破断伸びの変化を図3のグラフに示した。図3のグラフより、Caの含有量が多いほど応力保持率が向上するが、破断伸びは低下することがわかった。また、試験片#01および#12の金属組織を示す図3の組織写真より、Ca含有量の多い試験片#12の方が、粒界晶出物が多く晶出することがわかった。すなわち、Ca含有量が、高温耐クリープ性の向上および機械的特性の低下に関与することがわかった。
図4および図5は、#01〜#09に関し、Sc含有量に対する応力保持率および熱伝導率の変化を示すグラフである。応力保持率については、Sc量が多いほど向上した。しかし、Cuは含まれていてもCaおよびMnが含まれない#07の試験片は、応力保持率が極端に低かった。応力保持率を向上させるためには、ScとともにCaおよび/またはMnを含有する必要があることがわかった。Caが含まれない試験片#09であっても、MnとともにScを含有することで、比較材に匹敵する応力保持率が得られた。
#02〜#06は、図3のグラフから高温耐クリープ性と機械的特性とを両立するMg−3Cu−1Ca合金(#01)に対して、ScおよびMnの配合量を変更したマグネシウム合金である。Scを添加することで、機械的特性を悪化させることなく高温耐クリープ性を向上させることができることがわかった。また、CaとともにMnを含有する試験片#05および#06の応力保持率は、特に高かった。
#01〜#09のいずれの試験片も、比較材よりも熱伝導性に優れた。Scを含有する試験片であっても、熱伝導性が大きく低下することはなかった。ただし、Sc含有量が1.3%を超えると、高温耐クリープ性は向上しても、比較材よりも熱伝導性が低下すると推測される。特に、Sc含有量を0.1%以下とすることで、熱伝導性の低下が抑制されることがわかった。
また、試験片#01、#10および#13は、Cuの配合割合が異なるMg−Cu−Ca合金である。これらの試験片について、Cu含有量に対する引張強さおよび破断伸びの変化を図6のグラフに示した。Cuを1〜4質量%含有するマグネシウム合金は、機械的特性に優れることがわかった。すなわち、Cu含有量が1〜4質量%であるMg−Cu−Ca合金に対して、Scを添加することで、機械的特性とともに高温耐クリープ性をも満足する耐熱マグネシウム合金が得られることがわかった。
試験片#01、#11および#12は、Caの添加割合が異なるMg−Cu−Ca合金であった。試験片#11および#12は、試験片#01と同程度の熱伝導性および応力保持率を有することがわかった。特に試験片#11は、引張強さおよび破断伸びも試験片#01と同程度であった。すなわち、Ca含有量が0.1〜2質量%さらには0.3〜1質量%であるMg−Cu−Ca合金に対してScを添加することで、試験片#02、#03、#05および#06と同様に、機械的特性とともに高温耐クリープ性をも満足する耐熱マグネシウム合金が得られることがわかった。
また、試験片#04および#14〜#16は、Mnの添加割合が異なるMg−Cu−Ca−Mn合金であった。試験片#14〜#16は、試験片#04と同程度の熱伝導性、耐力および応力保持率を有することがわかった。特に試験片#15は、いずれの特性も試験片#04と同程度であった。すなわち、Mn含有量が0.1〜1.5質量%さらには0.4〜1質量%であるMg−Cu−Ca−Mn合金に対してScを添加することで、試験片#05および#06と同様に、機械的特性とともに高温耐クリープ性をも満足する耐熱マグネシウム合金が得られることがわかった。

Claims (8)

  1. 全体を100質量%としたときに(以下単に「%」とする)、
    1%以上4%以下の銅(Cu)と、
    2%以下のカルシウム(Ca)および/または2%以下のマンガン(Mn)と、
    0.001%以上1.5%以下のスカンジウム(Sc)と、
    を含み、残部がマグネシウム(Mg)と不可避不純物とからなることを特徴とする耐熱マグネシウム合金。
  2. 前記Caを必須とし、0.1%以上1.5%以下含む請求項1記載の耐熱マグネシウム合金。
  3. 前記Caを0.2%以上1%以下含む請求項2記載の耐熱マグネシウム合金。
  4. 前記Caとともに前記Mnを0.1%以上1%以下含む請求項2または3記載の耐熱マグネシウム合金。
  5. 前記Mnを必須とし、0.1%以上1.5%以下含む請求項1記載の耐熱マグネシウム合金。
  6. 前記Scを0.01%以上1.3%以下含む請求項1〜5のいずれかに記載の耐熱マグネシウム合金。
  7. 前記Scを0.01%以上0.1%以下含む請求項6記載の耐熱マグネシウム合金。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の耐熱マグネシウム合金からなるマグネシウム合金鋳物。
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