JP2011205962A - 防草方法及び防草装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】除草剤や刈り取りよりも効果的な、新しい防草方法及び防草装置を提供する。
【解決手段】人工紫外線を雑草に照射して該雑草を枯殺又は成長抑制する。特に、人工紫外線の照射と除草剤の散布とを併用することが好ましい。人工紫外線が作物、果樹、花木、芝草等の有用植物にも照射することになる場合には、人工紫外線の波長、照射強度及び照射時間を前記有用植物の生長を阻害しない条件に制御したり、有用植物領域を紫外線の照射から遮蔽したり、有用植物領域に照射しないように人工紫外線の照射方向を変えたりすることが好ましい。本発明の防草装置は、雑草を枯殺又は成長抑制するために、人工紫外線を照射する紫外線照射装置13を備え、そうした紫外線照射装置13は、トラクター、路側帯、パイプライン11、高架台、鉄塔台等の防草箇所に設置されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、紫外線を用いて雑草を枯殺又は成長抑制する防草方法及び防草装置に関する。
水田、畑、ゴルフ場等において、雑草を枯らしたり成長を抑制したりすること(本願では「防草」という。)は、主に除草剤によって行われている。一方、公園、道路、河川、飛行場、工場敷地、送電線鉄塔下等の公共性の高い緑地帯では、除草剤の利用は制限されている。そのため、刈り払い機や除草機(「モアー」ともいう。)等による機械的な刈り取りが中心である。除草剤や刈り取り以外の防草手段としては、防草シートや被覆植物を用いたマルチング、合鴨や鯉による生物防除、米糠や木酢液を用いた防草、が知られている。なお、本発明に関連する先行技術文献は見つからなかった。
除草剤による防草は、高い防草効果を発揮する。しかし、散布時の風による飛散や散布後の降雨による水系への流れ込みによって、防草対象外の有用作物に薬害を生じさせるおそれがあるとともに、魚類を始めとした野生生物に悪影響を及ぼすおそれもある。また、上記の除草剤の飛散や流出により農薬残留が問題となる可能性もある。
一方、肩掛け式の刈り払い機や乗用モアーによる機械的な防草は、高速回転する鋭利な刃で草刈りを行うことから、慎重に作業を行わなければならない。肩掛け式の刈り払い機では、刈り払い機そのものがかなり重いという難点がある。また、刈り払い機やモアーの駆動力はガソリンや軽油を燃料とするものであることから、大量の化石燃料の消費と二酸化炭素の排出を伴い、地球温暖化防止の観点からすれば好ましくない。
また、防草シートによる防草は、経年劣化により防草効果が低下したり、剥がれた防草シートが架線等に引っ掛かったり、使用済の防草シートの廃棄処分に難点があったりする。また、被覆値物による防草は、被覆植物自体の耐寒性、耐乾牲、耐久性、初期養生に要する維持管理費に問題がある。また、アイガモによる防草は、特定の雑草にしか効果がないこと、作物収穫後のアイガモの処分や扱い等が課題となっている。
このように、除草剤やモアーによる刈り取りを始めとした従来の防草方法は、防草効果や生態系に対する安全性等において、いずれも課題を抱えている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、除草剤や刈り取りよりも効果的な、新しい防草方法及び防草装置を提供することにある。
本発明者は、防草技術についての研究を行っている過程で、特定波長の光を雑草に照射することによって、雑草を効果的に防草できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記課題を解決するための本発明に係る防草方法は、人工紫外線を雑草に照射して該雑草を枯殺又は成長抑制することを特徴とする。この発明によれば、人工紫外線を照射することにより、雑草を効果的に枯殺又は成長抑制することができる。
本発明に係る防草方法において、前記紫外線の照射と除草剤の散布とを併用する。この発明によれば、紫外線単独や除草剤単独の場合に比べて防草をより効果的に行うことができる。特に除草剤を散布した後に紫外線を照射すれば、除草剤のみの防草よりも顕著な防草を実現でき、除草剤の使用量を著しく低減できるとともに、その紫外線で除草剤自体の分解を行うことができ、安全性の面でも極めて有望である。
本発明に係る防草方法において、前記紫外線が作物、果樹、花木、芝草等の有用植物にも照射することになる場合に、該紫外線の波長、照射強度及び照射時間を前記有用植物の生長を阻害しない条件に制御する。この発明によれば、有用植物と雑草が混在している場合であっても、有用植物と雑草の種類に応じて紫外線の照射条件を制御すれば、有用植物には悪影響を与えないで雑草のみを防草することができる。
本発明に係る防草方法において、前記紫外線が作物、果樹、花木、芝草等の有用植物領域にも照射することになる場合に、前記有用植物領域を紫外線の照射から遮蔽する、又は、前記有用植物領域に照射しないように前記紫外線の照射方向を変える。この発明によれば、有用植物と雑草が混在している場合であっても、(i)有用植物領域を紫外線の照射から遮蔽するようにしたり、(ii)有用植物領域に照射しないように紫外線の照射方向を変えたりすれば、有用植物には悪影響を与えないで雑草のみを防草することができる。
上記課題を解決するための本発明に係る防草装置は、雑草を枯殺又は成長抑制するために、人工紫外線を照射する紫外線照射装置を備えたことを特徴とする。この発明によれば、人工紫外線を照射する紫外線照射装置を備えるので、雑草を効果的に枯殺又は成長抑制することができる。
本発明に係る防草装置において、前記紫外線照射装置が、トラクターの前若しくは後ろに、又は、路側帯、パイプライン、高架台、鉄塔台等の防草箇所に設置されている。この発明によれば、紫外線照射装置を、トラクターの前又は後ろ、路側帯構造物、パイプライン、高架台や鉄塔台等の防草箇所に、紫外線が雑草に当たるようにして設けることにより、防草を行うことができる。
本発明に係る防草装置において、発電装置をさらに備える。この発明によれば、紫外線照射電源としての発電装置を備えていることが好ましい。特に太陽電池や風力発電等の発電装置を備えれば、化石燃料を消費することなく効果的な防草を行うことができる。
本発明に係る防草装置において、前記紫外線照射装置から照射する紫外線を作物、果樹、花木、芝草等の有用植物領域にも照射することになる場合に、前記有用植物領域を紫外線の照射から遮蔽する遮蔽板、又は、前記有用植物領域に照射しないように前記紫外線の照射方向を変える角度変更装置、をさらに備える。この発明によれば、有用植物と雑草が混在している場合であっても、有用植物には悪影響を与えないで雑草のみを防草することができる。
本発明に係る防草方法及び防草装置によれば、雑草を効果的に枯殺又は成長抑制することができる。特に、紫外線の照射と除草剤の散布とを併用することにより、それぞれ単独で行う場合に比べて防草をより効果的に行うことができる。
こうした本発明に係る防草方法及び防草装置は、除草剤や刈り取りよりも省資源的であり、土壌や作物への化学物質の残留の危険性を低減できる。さらに、機械的な防草技術に比べて安全で、炭酸ガスの排出も低減でき、環境に配慮した防草技術である。特に、水田、畑、果樹園、茶園、林業地、ゴルフ場、公園、墓苑、道路の中央分離帯若しくは路側帯、鉄道の線路法面若しくは高架下、河川の堤防法面、飛行場、工場敷地、送電線鉄塔下、等において行われている防草作業を省力化できる防草方法及び防草装置として有効である。
本発明に係る防草方法を適用した一例を示す写真である。 本発明に係る防草方法を適用した他の一例を示す写真である。 本発明に係る防草装置の一例を示す模式的な構成図である。 本発明に係る防草装置の他の一例を示す模式的な構成図である。 本発明に係る防草装置のさらに他の一例を示す模式的な構成図である。
本発明に係る防草方法及び防草装置について図面を参照しつつ説明する。本発明はその技術的特徴を有する範囲を包含する限り、以下に示す形態等に限定されない。
本発明に係る防草方法は、人工紫外線を雑草に照射して該雑草を枯殺又は成長抑制することに特徴がある。また、本発明に係る防草装置は、雑草を枯殺又は成長抑制するために、人工紫外線を照射する紫外線照射装置を備えたことに特徴がある。なお、「人工紫外線」とは、太陽光に含まれる紫外線と区別したものである。本願では人工紫外線を単に「紫外線」ともいう。以下、各構成について詳しく説明する。
(雑草)
雑草は特に限定されず、各種の雑草を挙げることができる。特に本発明の対象になる雑草は、その雑草の存在が不利益を生じさせ、通常、除草剤を散布して防草したり、刈り払い機や除草機(モアー)で刈り取りして防草したりするものを挙げることができる。例えば、水田、畑、果樹園、茶園等の農地で有用植物又は有用作物の生育や品質を阻害する雑草;林業地で森林の生育や品質を阻害する雑草;ゴルフ場の特にグリーン上やフェアウエイで、見た目やプレーの妨げになる雑草;公園、墓苑等で見た目や整然さを損なわせる雑草;道路の中央分離帯若しくは路側帯、鉄道の線路法面若しくは高架下、河川の堤防法面、飛行場、工場敷地、送電線鉄塔下等で、安全性や見た目を損なわせる雑草、等を挙げることができる。
雑草の例は非常に多く、それらを十分に列挙することはできないが、一例としては、イネ科に属する葉の細いヌカキビ、メヒシバ、コバンソウ等を挙げることができる。また、大豆の葉のように葉が広いコハコベ、エゾノギシギシ、カラスノイエンドウ、タチスベリヒユ、スベリヒユ等を挙げることができる。本発明は、こうした雑草に適用可能であるが、もちろんこれら以外の雑草、例えばイヌビエ、イヌビユ、シロザ、ノアサガオ、その他雑草であってもよい。
(紫外線)
紫外線は、工業的にはその特徴を活かして多方面で利用されている反面、生物や有機物を分解する性質を有するものとして知られている。特に波長が短くなるほどその影響は大きくなり、例えば、有機物やタンパク質の分解、殺菌、害虫駆除、微生物除去等に利用されている。「紫外線」と呼ばれるもののうち、波長200〜380nmの紫外線は近紫外線と呼ばれる。この近紫外線については、地表に届く太陽光線に約5.6%含まれる波長315〜380nmの紫外線をUV−Aといい、地表に届く太陽光線に約0.5%含まれる波長280〜315nmの紫外線をUV−Bといい、地表に届く太陽光線に含まれない波長200〜280nmの紫外線をUV−Cということがある。
紫外線は、生体に対してDNAの破壊や活性酸素の生成をとおした細胞破壊等の作用を引き起こす。しかし、生態系において全く残留しないという特徴を持ち合わせている。本発明では、こうした特徴を有する波長200〜380nmの人工紫外線(近紫外線)を防草手段として用いる。特に、波長200〜280nmの範囲内にピーク波長を持つ紫外線と、波長280〜315nmの範囲内にピーク波長を持つ紫外線を、好ましい防草手段として用いる。これらの紫外線を除草剤や刈り取り等の従来の防草手段の代替技術又は付加技術として適用すれば、除草剤による有用植物や野生生物に対する悪影響の問題や薬物残留の問題を無くしたり低減したりすることができ、また、機械的な防草手段での重労働や大量の化石燃料の消費と二酸化炭素の排出を無くしたり低減したりすることができる。
なお、波長200〜280nmの範囲内にピーク波長を持つ紫外線と波長280〜315nmの範囲内にピーク波長を持つ紫外線は、波長315〜380nmの範囲内にピーク波長を持つ紫外線に比べて防草効果が高かった。また、紫外線の照射強度は、ランプからの紫外線出力で0.5W〜20Wの範囲内のものを好ましく用いることができるが、それより大きい紫外線出力を持つ紫外線ランプであってもよい。また、紫外線強度で表せば、0.4mW/cm〜18mW/cmの範囲内のものを好ましく適用できるが、それより大きい紫外線強度で照射してもよい。こうした紫外線出力や紫外線強度で表される紫外線は、地表に届く太陽光線に含まれる紫外線に比べてかなり強い紫外線であり、それ故、本発明で適用する紫外線は防草効果を示すことができる。
図1及び図2は、本発明に係る防草方法を適用した例を示す写真である。詳しくは後述の実施例で説明するが、図1では無照射区(A)と紫外線照射区(B)とが顕著に相違し、紫外線照射による防草効果が確認される。また、図2では、紫外線の照射と除草剤の散布とを組み合わせた場合の防草効果の比較であるが、無処理区(A)に対して紫外線照射区(B)と除草剤散布区(C)はある程度の効果が確認できるが、紫外線照射と除草剤散布の併用区(D)では顕著な防草効果が確認できる。紫外線照単独での防草効果の違いは、図1で用いた供試雑草が葉の広い広葉植物であり、図2で用いた供試雑草が葉の細いイネ科植物であることも影響しているものと考えられる。
(紫外線の照射態様)
紫外線を照射するにあたっては、対象雑草の種類、有用植物又は有用作物との共存の有無、除草剤散布との併用の有無、刈り取り手段との併用の有無、防草効果の発現速度、等を考慮し、照射態様(連続照射、間欠照射、定期照射等)、照射位置、照射強度、照射時間等を設定する。
紫外線の照射と除草剤の散布との併用は、対象となる雑草の種類にもよるが、紫外線単独や除草剤単独の場合に比べて防草をより効果的に行うことができる。特に除草剤を散布した後に紫外線を照射すれば、除草剤のみの場合よりも顕著な防草効果を達成できる。その結果、除草剤の使用量を低減することが可能となり、土壌中の残留農薬も低減できる。また、紫外線は有機化合物の分解作用も兼ね備えるので、その紫外線で除草剤自体の分解を行うことができ、安全性の面でも極めて有望である。
紫外線の照射を除草剤の散布前又は散布後のいずれで行うかは、紫外線の波長や照射条件、雑草の種類、除草剤の種類等に関連するので一概には言えないが、除草剤の特質を活かして除草剤散布後に行うことが効果的である。例えば、光合成阻害型の除草剤を使用する場合、その除草剤の防草メカニズムは、植物体内における電子伝達経路が該除草剤によって阻害され、その結果、太陽エネルギーで励起された電子が正常な系に流れず、酸素分子と結びついて活性酸素を発生させ、これが植物毒となって植物を枯死することにある。また、白化型除草剤では、クロロフィルの光酸化を防ぐカロチノイドの生合成が該除草剤によって阻害され、その結果、太陽エネルギーで励起された電子によるクロロフィルの酸化が促進され、植物が枯死することにある。したがって、植物が通常、利用している可視光線よりも高エネルギーの紫外線を除草剤散布後に照射することにより、植物内での活性酸素の生成を促進し、防草効果が相乗的に上昇して防草効果が向上する。
図2(D)は、除草剤を散布した後に紫外線を照射した併用区である。本発明者は、実際に、白化型除草剤であるビラゾキシフェンや光合成阻害型除草剤であるアトラジンと、波長280〜306nmにピーク波長を持つ紫外線とを組み合わせることにより、相乗効果の発現を確認し、除草剤の使用量を大幅に低減できることを確認できている。
紫外線と刈り取り手段との併用も、上記除草剤との併用の場合と同様、対象となる雑草の種類にもよるが、紫外線単独や刈り取り単独の場合に比べて防草をより効果的に行うことができる。
例えば、イネ科に属する細い葉の雑草は生長点が土壌内又は土壌との境界付近にあるので、そうした生長点に紫外線を照射するためには、刈り取り手段と併用して刈り取り手段後に照射することが望ましい。一方、広葉の雑草は葉に紫外線を当てればよいので、刈り取り手段と併用しなくてもよいが併用しても構わない。なお、こうしたことは、イネ科の有用植物と広葉の雑草とが併存する場合には、紫外線照射だけでも十分な防草効果があることを一方で示唆でき、実際に行った実験ではそうした示唆に基づいた結果が得られている。
刈り取りと併用する場合の紫外線の照射態様や照射条件は、防草する雑草の生育場所や刈り取り頻度によって異なって一概に言えないが、例えば、ほぼ毎日刈り取りを行うゴルフ場のグリーンやフェアウエイでの紫外線の照射条件と、道路の中央分離帯若しくは路側帯、鉄道の線路法面若しくは高架下、河川の堤防法面、飛行場、工場敷地、送電線鉄塔下等での紫外線の照射条件とは自ずと異なる。したがって、雑草の生育場所や防草効果を考慮して紫外線の照射条件が設定される。
例えば、ゴルフ場のグリーンやフェアウエイでは、紫外線を照射することができる紫外線照射装置を芝刈り機(例えば乗用芝刈り機)の前後に取り付け、芝刈りと同時に紫外線を照射する。ゴルフ場のグリーンでは、ほぼ毎日のように芝刈りが行われていることから、芝刈り機に紫外線照射装置を取り付けることにより、芝刈りと紫外線照射とを連続して行うことができる。
紫外線の照射条件は、日中と夜間では太陽光からの紫外線が重畳されるか否かの相違がある。しかし、本発明で適用する紫外線強度は、地表に届く太陽光線に含まれる紫外線強度に比べてかなり大きいので、防草効果に及ぼす太陽光線中の紫外線の重畳効果は余り考慮しなくてもよい。
(具体的な実施形態)
図3及び図4は、紫外線照射装置を少なくとも有する防草装置を既設構造物に設置し、その既設構造物周辺の防草を行う例である。また、図5は、紫外線照射装置を少なくとも有する防草装置を、モアー(除草機)やトラクターの前又は後ろに設けた例である。
図3は、道路縁石1と路面5との隙間3から出る雑草4を防草する例である。図3(A)に示す従来の態様では、道路縁石1と路面5との隙間3に雑草が生えるが、図3(B)に示すように、本発明に係る紫外線照射装置2を道路縁石1に取り付けて防草装置6とし、紫外線を隙間3に向けて照射させることにより、雑草の発生を抑えることができる。このとき、防草装置6は、紫外線照射装置2と道路縁石1とを一体とした構造物であってもよいし、紫外線照射装置2を道路縁石1の表面に取り付けたものであってもよい。
こうした防草装置6を設けることにより、従来行っていた隙間3へのシーリング作業や雑草の除去作業を無くすことができ、人件費を大幅に削減することができる。特に高速道路の中央分離帯や路側帯では、従来は車両規制を行いながらの作業になっていたが、本発明に係る防草装置を採用すれば、そうした車両規制等も不要となる。
この態様では、小さいエネルギーの紫外線を連続して当てるだけで十分な防草効果が得られるので、消費電力も小さくて済む。また、連続照射でもよいが、間欠的又は定期的な照射であっても構わない。紫外線照射装置2への電源は、電線を配設して供給することもできるし、太陽電池や風力発電等の発電装置から供給してもよい。太陽電池や風力発電等の発電装置は、化石燃料を消費することなく効果的な防草を行うことができる。なお、図3(B)に示す実施形態は、道路縁石1に限らず、ガードレール、公園の縁石、墓苑等にも同様に応用できる。
図4は、パイプライン11の下の雑草を防草する例である。製油所等のパイプライン11では、安全性(主に火災発生)の観点から、パイプライン11の周辺の雑草15を防草することが必要とされている。しかし、図4(A)に示す従来態様では、パイプライン11の周辺に雑草14が生えてしまう。そのため、従来はパイプライン11の周辺の草刈り作業を行っていた。しかし、図4(B)に示すように、本発明に係る紫外線照射装置13をパイプライン11に取り付けて防草装置16とすることにより、紫外線をパイプライン11から地面15に向けて照射させることにより、雑草14の発生を抑えることができる。このとき、防草装置16は、紫外線照射装置13をパイプライン11に取り付けて構成される。
こうした防草装置16を設けることにより、従来行っていたパイプライン11周辺の草刈り作業を無くすことができ、人件費を大幅に削減することができる。特に大型プラントや離隔地のパイプライン11の場合は好都合である。さらに、上記の場合と同様、小さいエネルギーの紫外線を連続して当てるだけで十分な防草効果が得られるので、消費電力も小さくて済む。また、連続照射でもよいが、間欠的又は定期的な照射であっても構わない。紫外線照射装置2への電源も太陽電池や風力発電等の発電装置から供給してもよい。なお、図4(B)に示す実施形態は、パイプライン11に限らず、鉄道の線路法面若しくは高架下、河川の堤防法面、飛行場、工場敷地、送電線鉄塔下、林業地等においても同様に応用できる。
図5は、畑の雑草25を防草する例である。畑作では、図5に示すように、畦24に作物26を植えて生育させる場合があるが、畦24と畦24との間に雑草15が生えると作物14の生育を阻害する場合が多く、雑草15を防草する必要がある。この形態では、紫外線照射装置22A〜22Cを接続部材21に取り付けた防草装置27を、トラクター(図示しない)に取り付けることにより、雑草25を防草することができる。
図5において、紫外線照射装置22A〜22Cを備える防草装置27は、遮蔽板及び/又は反射板23A,23B,23Cをさらに備えていることが好ましい。その理由は、図3や図4の場合と異なり、トラクターの運転する作業者が防草装置27の近くに常に居るため、こうした遮蔽板及び/又は反射板23A,23B,23Cが設けられていないと、作業者が紫外線を受けるためである。また、より効果的な防草を行おうとする場合には、UV−CやUV−Bのようなエネルギーの高い短波長の紫外線を用いたり、照射強度を増したりする必要がある。しかし、そのような条件での紫外線照射は人体や作物に対しても悪影響を及ぼす。そのため、そうした紫外線が作業者や作物に照射するのを避ける意味でも、さらに雑草25に選択的に照射する意味でも、遮蔽板及び/又は反射板23A,23B,23Cを設けることが望ましい。
このように、紫外線が、作物、果樹、花木、茶園等の有用植物領域にも照射することになる場合には、有用植物領域を紫外線の照射から遮蔽するための遮蔽板及び/又は反射板23A,23B,23Cを設けることが好ましい。その結果、有用植物と雑草が混在している場合であっても、有用植物領域を紫外線の照射から遮蔽できるので、有用植物には悪影響を与えないで雑草のみを防草することができる。
また、同様の場合に、有用植物領域に照射しないように紫外線の照射方向を変えること好ましく、具体的には角度変更装置を設けることが好ましい。その結果、有用植物と雑草が混在している場合であっても、有用植物領域に照射しないように紫外線の照射方向を変えることができるので、有用植物には悪影響を与えないで雑草のみを防草することができる。角度変更装置は、紫外線照射光源の方向を手動又は自動で変更するものであってもよいし、紫外線照射光源を覆うカバー(遮蔽板及び/又は反射板を兼ねる)の開口方向を動又は自動で変更するものであってもよい。
(紫外線の照射条件)
紫外線の照射は、有用植物の生育には余り影響せず、対象雑草だけを防草できることが望ましい。そのためには、紫外線の波長、照射強度及び照射時間を有用植物の生長を阻害しない条件に制御する。有用植物と雑草が混在している場合であっても、有用植物と雑草の種類に応じて紫外線の照射条件を制御することにより、有用植物には悪影響を与えないで雑草のみを防草することができる。なお、有用植物は余り影響されず、対象雑草だけを防草できる条件がない場合には、上記したような遮蔽板及び/又は反射板を設ける。
また、紫外線の照射条件によっては、特定の雑草のみを防草でき、他の雑草には余り影響しないようにすることも望ましい。例えば、後述の実施例で説明する表1に示すように、雑草の種類によって、防草効果が大きく異なる。こうした防草効果の差を利用することができる。
また、紫外線による防草効果を確実なものにするために、対象雑草の種類と生育ステージに合わせて、最適な紫外線の種類(波長)、照射強度、照射時間を設定することも可能である。
紫外線には種類や条件等の照射パラメータが複数存在するので、その照射パラメータを設定することにより、急速な防草効果を達成することもできるし、ゆっくりとした防草効果を達成することもできる点で、他の防草手段に比べて適用範囲が広い。
以上説明したように、本発明に係る防草方法及び防草装置によれば、雑草を効果的に枯殺又は成長抑制することができる。特に、紫外線の照射と除草剤の散布とを併用したり、紫外線の照射と刈り取りとを併用したりすることにより、それぞれ単独で行う場合に比べて防草をより効果的に行うことができる。
こうした本発明に係る防草方法及び防草装置は、除草剤や刈り取りよりも省資源的であり、除草剤の使用量を低減でき、また、土壌や作物への化学物質の残留の危険性を低減できる。さらに、機械的な防草技術に比べて安全で、炭酸ガスの排出も低減でき、環境に配慮した防草技術である。特に、水田、畑、果樹園、茶園、林業地、ゴルフ場、公園、墓苑、道路の中央分離帯若しくは路側帯、鉄道の線路法面若しくは高架下、河川の堤防法面、飛行場、工場敷地、送電線鉄塔下、等において行われている防草作業を省力化できる防草方法及び防草装置として有効である。
また、本発明に係る防草方法及び防草装置によれば、雑草を急性的に枯殺させることもできるし、成長や開花結実を抑制することも可能である。また、防草効果に加えて、殺菌効果や芝草の草丈伸長抑制効果も同時に実現することもできる。
以下、実験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらに制限されるものではない。
[実験1]
マメ科のリョクトウの子葉(生育ステージ)を供試雑草とし、紫外線無照射区と紫外線照射区とで対比した。紫外線の照射は、三共電気株式会社のUV−B紫外線ランプ(型名:GL15E型、ピーク波長:306nm、ランプ出力:5W、紫外線出力:3W、ランプ面での照射強度:2.4mW/cm)を用いて行った。葉面での紫外線強度は1.8〜2.0mW/cmであり、紫外線照射時間を30分とした。照射7週間後の状態を観察した。図1は、そのときの紫外線無照射区(A)と紫外線照射区(B)の写真である。両者に著しい差が見られ、紫外線による防草効果を実証できた。なお、紫外線照射強度は、デジタル紫外線強度計(株式会社FUSO、型番:YK−35UV、UVスペクトル:290〜390nm)を用いた。
[実験2]
イネ科のヒエの5〜6葉期(生育ステージ)を供試雑草とし、除草剤散布、紫外線照射処理、除草剤散布と紫外線照射との併用、3種を行って比較した。除草剤はピラゾキシフェンを用い、その3000ppmを散布した。紫外線の照射は、実験1と同じUV−B紫外線ランプを用いて行った。供試雑草の直上部での紫外線強度は1.8〜2.0mW/cmであり、紫外線照射時間を30分とした。また、除草剤と紫外線との併用は、除草剤散布を行った1週間後に紫外線を照射した。
図2は、処理後の写真である。写真の左側は、無処理のヒエであり、左から2番目は、紫外線照射のみの場合で照射から7週間後のものである。左から3番目は、除草剤散布のみの場合であり、散布後8週間後のものである。右側は、除草剤散布と紫外線照射とを併用したものであり、除草剤散布して1週間後に紫外線照射を行い、さらにその後7週間経過したときのものである。従来の除草剤散布の場合と比べ、紫外線照射と併用した場合は、防草効果が著しく高かった。葉が細く、生長点が土壌付近にあるイネ科植物に対しては、除草剤散布のみの場合に比べて、紫外線照射を併用することが望ましいことを実証した。
[実験3]
各種雑草に対する紫外線による防草効果を実証した。紫外線の照射は、実験1と同じUV−B紫外線ランプを用いて行った。植物体の直上部での紫外線強度は1.8〜2.0mW/cmであり、紫外線照射時間は30分とし、生育調査は照射10日後とした。なお、反復数は3とした。その結果を表1に示す。表1中、新鮮重とは、乾燥させない状態での質量であり、新鮮重阻害率とは、紫外線照射を行った後の供試雑草と無処理の供試雑草との質量比を表している。新鮮重阻害率(%)が0%とは、処理したものと無処理のものが全く同じであることを意味し、その阻害率(%)が大きいほど紫外線照射による防草効果が大きいことを意味している。
Figure 2011205962
表1の結果からわかるように、葉の広い供試雑草は、葉の細いイネ科の供試雑草に比べて新鮮重阻害率が大きく、紫外線照射による防草効果が大きいことがわかった。特に雑草対策が困難であるスベリヒエに対して76%程度の新鮮重阻害率であることは、本発明の防草方法の有効性を実証するものである。スベリヒエ等の広葉種はなかなか駆除できない雑草である。スベリヒエに対しては、従来は、BSF社の除草剤であるバサグランでは不十分であり、モンサント社の除草剤であるグリフォサートでは全てを枯らしてしまうという難点があった。本発明に係る防草方法は、こうした広葉種を効果的に防草できるので、防草手段としては極めて有望であるといえる。
また、イネ科の雑草と広葉種の雑草とで防草効果が大きく異なるので、こうした特徴を利用して、イネ科の有用作物(イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ等)の栽培地に生じた広葉の雑草のみを、特別な遮蔽板等を用いることなく、選択的に駆除することも可能である。なお、実験1等で用いた紫外線ランプ以外のもの、すなわち、波長200〜280nmの範囲内にピーク波長を持つ紫外線ランプや、波長280〜315nmの範囲内で上記紫外線ランプと異なるピーク波長を持つ紫外線ランプでも同様の実験を試行し、紫外線強度を含む照射条件等によっても多少異なるが、それぞれ防草効果を確認した。
1 道路縁石
2 紫外線照射装置
3 隙間
4 雑草
5 路面
6 防草装置
11 パイプライン
12 架台
13 紫外線照射装置
14 雑草
15 地面
16 防草装置
21 トラクターの接続部材
22A,22B,22C 紫外線照射装置
23A,23B,23C 遮蔽板兼反射板
24 畦
25 雑草
26 作物
27 防草装置

Claims (8)

  1. 人工紫外線を雑草に照射して該雑草を枯殺又は成長抑制することを特徴とする防草方法。
  2. 前記紫外線の照射と除草剤の散布とを併用する、請求項1に記載の防草方法。
  3. 前記紫外線が作物、果樹、花木、芝草等の有用植物にも照射することになる場合に、該紫外線の波長、照射強度及び照射時間を前記有用植物の生長を阻害しない条件に制御する、請求項1又は2に記載の防草方法。
  4. 前記紫外線が作物、果樹、花木、芝草等の有用植物領域にも照射することになる場合に、前記有用植物領域を紫外線の照射から遮蔽する、又は、前記有用植物領域に照射しないように前記紫外線の照射方向を変える、請求項1又は2に記載の防草方法。
  5. 雑草を枯殺又は成長抑制するために、人工紫外線を照射する紫外線照射装置を備えたことを特徴とする防草装置。
  6. 前記紫外線照射装置が、トラクターの前若しくは後ろに、又は、路側帯、パイプライン、高架台、鉄塔台等の防草箇所に設置されている、請求項5に記載の防草装置。
  7. 発電装置をさらに備える、請求項5又は6に記載の防草装置。
  8. 前記紫外線照射装置から照射する紫外線を作物、果樹、花木、芝草等の有用植物領域にも照射することになる場合に、
    前記有用植物領域を紫外線の照射から遮蔽する遮蔽板、又は、前記有用植物領域に照射しないように前記紫外線の照射方向を変える角度変更装置、をさらに備える、請求項5〜7のいずれか1項に記載の防草装置。
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