JP2011205750A - 電磁共鳴電力伝送装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】共鳴によるコイルを用いた非接触電力伝送における電力損失を低下させる。
【解決手段】共鳴による送電コイルと受電コイルと、この受電コイルから電力を入力して負荷に電力を供給する受電装置とを有する共鳴電力伝送装置である。送電装置は、送電コイルに高周波電力を供給する給電装置と、給電装置と前記送電コイルとの間に設けられ、給電装置20から送電コイル10側に流れる給電電力と、送電コイルから反射されて給電装置側に流れる反射電力とを分離して、反射電力のみを抽出する電力分離装置30と、電力分離装置により分離された反射電力を再利用する再利用装置を有する。再利用装置は、給電装置から出力される給電電力の位相を検出する位相検出器32と、反射電力の位相を、位相検出器の出力する検出位相に一致させる移相器31と、移相器により移相の後、給電電力と反射電力との位相を整合させた後に、両者を合成させる合成器33とを有する。
【選択図】図1
【解決手段】共鳴による送電コイルと受電コイルと、この受電コイルから電力を入力して負荷に電力を供給する受電装置とを有する共鳴電力伝送装置である。送電装置は、送電コイルに高周波電力を供給する給電装置と、給電装置と前記送電コイルとの間に設けられ、給電装置20から送電コイル10側に流れる給電電力と、送電コイルから反射されて給電装置側に流れる反射電力とを分離して、反射電力のみを抽出する電力分離装置30と、電力分離装置により分離された反射電力を再利用する再利用装置を有する。再利用装置は、給電装置から出力される給電電力の位相を検出する位相検出器32と、反射電力の位相を、位相検出器の出力する検出位相に一致させる移相器31と、移相器により移相の後、給電電力と反射電力との位相を整合させた後に、両者を合成させる合成器33とを有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、送電コイルと受電コイルとを用いた電磁共鳴を用いた無線による電力伝送装置に関する。電気自動車のバッテリに対する無線による給電のための電力伝送に用いることができる。
非接触による電力伝送方式には、大きくは、次の2つの方式に分類される。第1は、非放射による電力伝送であり、第2は、放射による電力伝送である。第1の方式には、主として、トランスの原理を用いた周波数数kHz以下で用いる電磁誘導方式と、周波数に数十MHz程度を用いた近接場(近接場に蓄積される静的エネルギー)の電磁共鳴による電磁結合方式とがある。また、第2の方式には、マイクロ波送電による方式と、レーザ送電による方式とがある。本発明は、このうち電磁共鳴に関するものである。
電磁誘導方式を用いた電力伝送として、下記特許文献1、2の技術が知られている。特許文献1の技術は、固定部から回転部への電力伝送に、5〜10mmだけ離間した送電コイルと受電コイルとの一対の電力コイルを用いて非接触で電力を伝送する装置が開示されている。同文献によると、数百kHzの周波数電力を固定部から回転部へ伝送し、回転部に設置された各種のセンサの検出信号を、電力コイルの外に設けた一対のデータコイルで、回転部から固定部へ、数MHzの信号で伝送するようにしている。また、固定部の送電コイルの入力インピーダンスが、送電コイルと受電コイルとの間隔により変化するので、送電コイルへの給電効率を向上させるために、送電コイルへ供給する電力の周波数を変化させることが行われている。また、特許文献2においても、一次コイルから無線電力を供給して、一次コイルと電磁結合する2次コイルで受電して、2次コイルに接続されたバッテリに充電する装置が開示されている。この文献の技術は、2次コイルで発生する磁場を遮蔽する技術である。
電磁共鳴による電磁結合方式として、最近、注目されている下記非特許文献1に開示の技術が知られている。同非特許文献1の技術は、2m程度離間された、半径25cmのループ状の強く磁気結合した一対の電磁共鳴コイルを用いて、9.9MHzの正弦波電力を伝送できる技術が開示されている。
Wireless Power Transfer via Strongly Coupled Magnetic Resonances, Andre Kurs, et.al, Science Vol.317, 6 July 2007
上記の特許文献1、2の方法は、コイルの外部に共振回路を設ける方式であり、Q値が小さく、効率の良い電力伝送はできない。この方式は、本質的には、電磁誘導方式であるため、原理的には、結合係数を大きくする方向の技術であり、両コイル間の距離は、5〜10mm程度と狭くせざるを得ず、且つ、伝送効率が低くならざるを得ないという問題がある。また、10mm以上、距離が離れると、効率の良い伝送ができないばかりか、送電コイルの入力インピーダンスが変化するために、送電周波数の調整が必要である。また、これらの電力伝送方式においては、外部共振回路を用いるため、共振特性は単峰性の特性である。
一方、電磁結合方式の上記の非特許文献1に開示の技術は、原理的には、共鳴型のコイル(自己共鳴コイル、self-resonant coil) を用いて、送電コイルと受電コイルを全体としての近接場エネルギーによる電磁共鳴を用いた方式であり、原理上、Q値が高く、比較的長距離の伝送が可能であり、放射損失がないため、伝送効率が高い無線電力伝送方式である。また、電磁共鳴を用いている関係上、周波数と送電コイルと受電コイルの自己インダクタンスが大きければ、結合係数は小さくとも(原理的には、0に近い状態でも)、高い伝送効率を実現することができる。この結果、非特許文献1によれば、1m程度、両電力コイルを離間させても、90%以上の送電効率が実現できている。この共鳴の周波数特性は、双峰性の特性を示す。
しかしながら、非特許文献1の技術を用いて、大電力を送電する場合に、送電コイルと受電コイル間の距離が次第に長くなると、図4に示すように、伝送効率が高くなる2つの共鳴周波数の間隔が狭くなり、両周波数が一致する臨界結合となる。両コイル間の距離が、この臨界結合の距離を越えて、長くなると、伝送効率は、図5に示すように、急激に低下し、送電コイルから受電コイルへの電力の伝送が不可能となる。この臨界結合を生じる距離を越えて、両コイル間の距離が長くなる場合には、送電コイルに供給されていた電力が無駄に消費されることになる。
本発明は、この問題を解決するために成されたものであり、送電コイルと受電コイル間の距離が臨界結合を越えて長くなっても、電力損失を抑制し、電力伝送におけるエネルギー効率を向上させることを目的とする。
第1の発明は、共鳴による送電コイルと、この送電コイルに送電電力を供給する送電装置と、この送電コイルと電磁結合する共鳴による受電コイルと、この受電コイルから電力を入力して負荷に電力を供給する受電装置とを有する電磁共鳴電力伝送装置において、送電装置は、送電コイルに高周波電力を供給する給電装置と、給電装置と送電コイルとの間に設けられ、給電装置から送電コイル側に流れる給電電力と、送電コイルから反射されて給電装置側に流れる反射電力とを分離して、反射電力のみを抽出する電力分離装置と、電力分離装置により分離された反射電力を再利用する再利用装置と、を有することを特徴とする電磁共鳴電力伝送装置である。
本発明では、送電コイルと受電コイルは、共鳴型のコイルが用いられる。共鳴特性は、2つの共鳴周波数でピークを有する双峰性の特性を有している。本方法は、このような、送電コイルから電力を送電して、受電コイルを受電して、バッテリなどを充電する方法に用いることができる。給電装置は、10MHz程度の高周波信号を発生する信号発生器と、この高周波信号を電力増幅する電力増幅器で構成することができる。また、商用の交流電力を直流に変換した後に、上記の高周波電力に変換するインバータで構成しても良い。電力分離装置は、方向性結合器、サーキュレータなどで構成することができる。
送電コイルと受電コイルとの距離が長くなると、共鳴特性において、2つの共鳴周波数は変化し、2つの共鳴周波数は接近する。そして、2つの共鳴周波数が一致する臨界結合を越えて、送電コイルと受電コイル間の距離が長くなると、図5に示すように、送電効率は、急激に減少する。ところが、送電コイルの放射損失をシミュレーションにより求めると、図6のように、臨界結合を越えて、送電コイルと受電コイルとの間の距離が長くなっても、放射損失は、増加しないことを、本発明者は、発見した。すなわち、従来は、臨界結合を越えて、両コイル間の距離が長くなると、送電コイルからの放射損失が大きくなると考えられていたが、放射損失は増大しないことが分かった。とすると、送電コイルからの電力放射がないため、送電コイルと受電コイルとの間隔が、臨界結合を越えると、送電コイルへ入力される電力は、給電装置へ向けて反射されていることになる。この反射電力は、電力損失となる。そこで、本発明は、電力分離装置により反射電力を抽出して、その反射電力を再利用装置により、損失させることなく、有効利用するようにしている。
その再利用装置としては、第2の発明のように、給電装置から出力される給電電力又は電力分離装置から出力される反射電力の位相を変移させる移相器と、移相器により移相の後、給電電力と反射電力との位相を整合させた後に、両者を合成させる合成器と、を有する装置としても良い。すなわち、位相器により、給電電力と反射電力の位相を一致させた後に、合成器により、反射電力を給電電力に重畳させている。合成に際して、送電電力を移相しても、反射電力を移相しても良い。これにより、給電装置からの給電電力は低減されることになり、臨界結合を越える送電において、エネルギー効率の低下を抑制することができる。また、位相を一致させるには、第3発明のように、再利用装置は、給電装置から出力される給電電力の位相を検出する位相検出器を有し、移相器は、反射電力の位相を、位相検出器の出力する検出位相に一致させるようにしても良い。また、反射電力の位相を位相検出器で検出して、この位相に、送電電力の位相を一致させて、両者を合成しても良い。
また、第4発明のように、合成器の出力電力を検出する電力検出器と、電力検出器による検出値が所定値となるように給電装置の出力を制御する出力制御装置とを設けるようにしても良い。この場合に、合成器の出力電力を検出して、この電力が所定値になるように給電装置の出力を制御することで、反射電力を利用した上で、送電コイルに供給される電力を所定値に制御することができる。
また、再利用装置は、第5発明のように、電力分離装置から出力された反射電力を直流に整流する高周波直流変換装置と、高周波直流変換装置の出力する直流電力を貯蔵する蓄電池とを有する装置としても良い。すなわち、電力分離装置により分離された反射電力が、直流に整流された後に、蓄電池に蓄電されることから、反射電力を再利用することができる。この蓄電池の電力の利用は、他の装置の電源としても良いし、給電装置の電力とすることも可能である。
また、再利用装置は、第6発明のように、電力分離装置から出力された反射電力を交流電力に変換する高周波交流変換装置を有する装置としても良い。すなわち、電力分離装置により分離された反射電力が、例えば、商用周波数などの低周波交流に変換されて、交流電源として用いても良い。その変換後の交流電力は、第7発明のように、給電装置に供給して、送電電力の一部としても良い。
また、第8発明は、送電コイルと、電力分離装置と、受電コイルと、この受電コイルから給電される負荷とから成る送電系列を複数有し、再利用装置は、ある系統の電力分離装置により分離された反射電力を、他の系統の電力分離装置を介して、給電する装置であることを特徴とする。この発明では、電力伝送の系統が複数存在する。そして、一つの系統における反射電力を他の系統の送電コイルに供給している。このように反射電力を他の系統の送電電力に利用することで、送電コイルと受電コイルとが臨界結合を越えて、離間した場合の送電において、エネルギー効率の低下を抑制することができる。
本発明によると、給電装置から送電コイル側に流れる給電電力と、送電コイルから反射されて給電装置側に流れる反射電力とを分離して、反射電力のみを抽出する電力分離装置と、この反射電力を再利用する再利用装置とを設けているので、送電コイルと受電コイルとが臨界結合を越えて離間されて、送電効率が低下して、反射電力が大きくなっても、電力損失とはならず、電力の有効利用が図られる。よって、臨界結合を越える場合の送電におけるエネルギー効率の低下を抑制することができる。
また、再利用装置が、給電装置から出力される給電電力又は電力分離装置から出力される反射電力の位相を変移させる移相器と、移相器により移相の後、給電電力と反射電力との位相を整合させた後に、両者を合成させる合成器とで、構成されることで、反射電力は送電電力に重畳されて、送電コイルに出力されるために、反射電力を損失させることがない。その他、反射電力を直流に変換して、蓄電池に蓄電したり、高周波の反射電力を商用周波数などの低周波の交流電力に変換して、給電装置の電源などに用いることで、損失を低減させることができる。また、合成後の電力が所定値となるように給電装置の出力を制御することで、反射電力が帰還されても、合成送電電力の変動を防止することができる。
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
本実施例は、送電コイルと受電コイル間の距離が臨界結合に至らない程、狭い場合には、最大送電効率が実現されるように、送電周波数を変化させ、両コイル間の距離が臨界結合を越える場合には、電力損失の低減を図り、送電におけるエネルギー効率を向上させた例である。
図1は、実施例1の全体の構成を示している。送電側には、送電装置1が設けられている。送電装置1は、送電コイル10を有している。この送電コイル10は、電力増幅器20(電力トランジスタ)から給電される給電コイル12と、受電コイル40と電磁結合をする結合コイル11とで構成されている。また、受電側は、受電コイル40を有している。この受電コイル40は、送電コイル10と電磁結合する結合コイル41と、この結合コイル41から受電電力を外部へ出力するための出力コイル42とを有している。
これらの送電コイル10と受電コイル40とは、それぞれ、共鳴によるコイル(外部に共振回路を有しない自己共鳴コイル、self-resonant coil) である。結合コイル11は、結合コイル41と電磁結合する相互インダクタンスと、漏れインダクタンス(=自己インダクタンス−相互インダクタンス)と、結合コイル11の線間に存在する容量とによる直列共鳴回路を構成している。また、結合コイル41は、結合コイル11と電磁結合する相互インダクタンスと、漏れインダクタンス(=自己インダクタンス−相互インダクタンス)と、結合コイル41の線間に存在する容量とによる直列共鳴回路を構成している。そして、結合コイル11と結合コイル41とが、近接場で電磁界結合した状態で、2つの共鳴周波数を有した、結合特性が得られる。結合コイル11、41の巻数は、5.25ターンであり、直径60cmとした。この状態で、電磁波の放射はない。この共鳴によるコイルは、上記非特許文献1に詳しく記載されている。
送電装置1において、給電コイル12に電力を供給する電力増幅器20が接続されており、この電力増幅器20には信号発生装置21が接続され、その信号発生装置21には送電周波数可変装置22が接続されている。電力増幅器20と信号発生装置21とにより、給電装置が構成されている。そして、送電周波数可変装置22は、CPU23により制御される。CPU23は、メモリ、入出力インターフェースとを有したマイクロコンピュータで構成されている。CPU23には、受信アンテナ25からデータを入力する受信装置24が接続されている。受信アンテナ25は、受電側の送信アンテナ55からの電力周波数情報を受信するものである。
電力増幅器20と給電コイル12との間には、分岐器34、合成器33、分岐器37、方向性結合器30が接続されている。方向性結合器30の分岐端子には、移相器31が接続されており、その移相器31の出力端子は、合成器33に接続されている。また、分岐器34の分岐端子は、位相検出器32に接続されており、位相検出器32の出力端子は移相器31に接続されている。方向性結合器30は、電力増幅器20の出力する送電電力を給電コイル12の方向にのみ通過させ、給電コイル12から電力増幅器20に向かって流れる反射電力を移相器31の方向にのみ通過させる装置である。方向性結合器30は、送電電力と反射電力とを分離する電力分離装置を構成している。方向性結合器30に代えて、サーキュレータを用いても良い。すなわち、サーキュレータにより、電力増幅器20の出力する送電電力を給電コイル12の方向にのみ通過させ、給電コイル12からの反射電力を移相器31の方向にのみ通過させるようにしても良い。方向性結合器30は、高周波伝送において良く知られたように、複数のトランスによる結合で構成できる。分岐器34は、電力増幅器器20の出力する送電電力の一部を分岐端子に分岐する装置である。
また、分岐器34の分岐端子は、位相検出器32に接続されており、位相検出器32の出力する位相値は、移相器31に出力される。移相器31は、入力された反射電力の位相を、位相検出器32により検出された位相に、移相する装置である。この位相検出器32と移相器31の動作により、反射電力の位相が、電力増幅器20の出力する送電電力の位相に一致された後に、送電電力に重畳される。また、分岐器37の分岐端子は、電力検出器35に接続され、電力検出器35の出力端子は、出力制御装置36に接続され、出力制御装置36の出力端子は電力増幅器20に接続されている。これにより、分岐器37から分岐された、反射電力が重畳された合成送電電力は、電力検出器35により検出されて、その送電電力が所定値となるように、出力制御装置36により制御される。分岐器34、37、合成器33も、高周波伝送において良く知られたように、トランス結合により構成できる。再利用装置は、位相検出器32、移相器31、電力検出器35、出力制御装置36、分岐器34、合成器33、分岐器37とで構成されている。
受電側には受電装置2が配設されている。その受電装置2において、出力コイル42から電力を入力する受電装置(電力トランジスタ)50が接続されており、その受電装置50には、整流回路と、その整流回路に接続されるバッテリなどで構成された負荷51が接続されている。受電装置50と負荷51との間には、切換スイッチ56が設けられている。切換スイッチ56は、受電装置50と負荷51を直接接続する状態と、抵抗Rを介して、負荷51に接続する状態とで、切り換えられるように構成されている。抵抗Rは、負荷51に流れる電流値(実効値)を検出するための小さな値の抵抗である。このように構成しているのは、負荷51に給電されている状態で、最大電力が得られる周波数を求めるためである。また、負荷51に直列に挿入された抵抗Rの端子間電圧を測定することにより、負荷電流を測定し、受電電力を検出できるように構成している。抵抗Rの端子間電圧は、サンプリング装置52によりサンプリングされて、CPU53に入力して、CPU53においてデータ処理される。CPU53は、メモリ、入出力インターフェースとを有したマイクロコンピュータで構成されている。CPU53には、データを送信する送信装置54が接続されており、その送信装置54には、送信アンテナ55が接続されている。CPU53の処理した結果のデータは、送信アンテナ55を介して、受信アンテナ25へ送信されて、CPU23で処理される。また、受電装置50には、走査開始検出回路57が接続されて、その出力は、CPU53に入力している。走査開始検出回路57は、フィルタと整流回路とか成り、送電装置1による周波数走査の開始周波数を抽出して、CPU53に、周波数走査の開始タイミングを付与する回路である。
本実施例は、受電装置2の側において、最大電力周波数を求め、その値を送電装置1にデータとして送信するものである。次に、送電装置1のCPU23の処理手順及び受電装置2のCPU53の処理手順について、図2、図3のフローチャートを用いて説明する。図2の処理手順は、送電のためのメインスイッチ(図示略)がオンになった時に、開始され、その後は、メインスイッチがオフとなるまで、一定の時間間隔で繰り返されるようにタイマー割込みが決定されている。ステップ100では、送電周波数可変装置22に対して、試験電力のための走査周波数が、所定時間間隔で出力される。この走査範囲と周波数間隔は、予め決められており、受電装置2においても既知の値である。送電周波数可変装置22は、LC共鳴回路で構成されており、容量Cの値が可変な装置である。信号発生装置21は、この送電周波数可変装置22の共鳴回路により決定された周波数の正弦波を発生する回路である。信号発生装置21の出力は、電力増幅器20で増幅されて、給電コイル12に出力される。給電コイル12に供給された電力エネルギーは、電磁結合により結合コイル11に蓄積される。すなわち、静電磁力的電磁エネルギーが結合コイル12に蓄積される。さらに、この電磁エネルギーは、受電コイル40の結合コイル41、出力コイル42にも蓄積されることになる。そして、出力コイル42から、受電装置50により、受電電力が出力される。
受電装置2は、受電コイル40において、受電電力がある場合に、その電力でメインスイッチ(図示略)が自動的にオンするように構成されている。そして、走査開始検出回路57からの出力がある毎に、図3の処理手順が、CPU53により実行される。周波数走査の開始周波数が検出されると、ステップ200が実行されて、切換スイッチ56が、電力検出側に切り換えられる。そして、ステップ202において、サンプリング装置52により、抵抗Rの両端電圧がサンプリングされて、電力データが読み込まれる。この電力データは、周波数走査が終了するまで、連続的に、読み取られる。次に、ステップ204において、その電力の変化特性から最大電力となる周波数が決定される。受電装置2では、周波数走査の間隔が知られているので、時間軸と、周波数とは、対応させることができる。この特性は、図4のようになる。この特性から、ピークを与える最大電力周波数が決定される。2つのピークが検出されるので、そのピークの大きい方の周波数が最大電力周波数として決定される。
次に、ステップ206において、送信装置54に、その最大電力周波数が、電力周波数情報として、出力される。次のステップ208では、切換スイッチ56が負荷側に切り換えられる。そして、送信装置54は、その情報を送信アンテナ55から送信する。送電装置1のCPU23は、この情報が受信されると、図2のステップ102において、データ受信がYes と判定されるので、ステップ104において、送電電力周波数可変装置22において、その受信した最大電力周波数が設定される。これにより、本電力の送信周波数は、最大電力周波数となる。そして、この周波数の交流電力が送電コイル10に供給されて、電磁共鳴により、受電コイル40に電力が伝送される。
送電コイル10と受電コイル40間の伝送効率は、図4のように、送電コイル10と受電コイル40間の距離が長くなるにしたがって、電力ピークを与える2つの周波数が接近する。このような場合においても、本実施例では、常に、電力ピークを与える周波数を検出して、その周波数で送電するようにしているので、送電コイル10と受電コイル40との間の距離に係わらず、常に、最大電力伝送効率が実現される。
送電コイル10と受電コイル40との間隔が、2つの最大電力周波数、すなわち、共鳴周波数が一致する臨界結合を越えて、長くなった場合の動作について説明する。送電コイル10と受電コイル40との間隔が、臨界結合状態を越えて、長くなると、図4に示す臨界結合状態の単峰性の特性cのピークが小さくなる。この状態になると、図5に示すように、送電効率は、コイル間距離に比例して減少する。この状態に達すると、給電コイル12からの反射電力が大きくなる。この反射電力は、方向性結合器30により、移相器31に出力される。また、電力増幅器20の出力する送電電力の一部は分岐器34により分岐されて、位相検出器32に入力される。位相検出器32により検出された送電電力の位相に一致するように、反射電力の位相が移相器31により調整される。そして、移相器31により移相された反射電力は、合成器33に出力されて、合成器33において、電力増幅器20の出力する送電電力に対して同相で重畳される。反射電力と送電電力との合成である合成送電電力の一部は、分岐器37を介して、電力検出器35に入力して、合成送電電力のレベルが検出される。そして、そのレベルが所定値となるように、出力制御装置36により、電力増幅器20の増幅率が制御される。この結果、電力増幅器20の出力する送電電力は、反射電力の分だけ低下することになる。このようにして、送電コイル10と受電コイル40との間隔の距離が長くなって、送電効率が低下して反射電力が増大しても、その電力は熱損失となることなく、送電電力に重畳されて、有効利用される。
図7は、送電コイル10と受電コイル40との間の距離と、反射電力の位相との関係をシミュレーションにより求めた特性図である。反射電力の位相は、両コイル間の距離に係わらず、ほぼ一定であることが分かる。このことから、上記実施例において、分岐器34と位相検出器32を設けずに、移相器31を、電力増幅器20の出力する送電電力に対する反射電力の既知の固定された所定の位相差だけ、移相させる装置としても良い。図8は、反射電力を所定位相だけ移相させて、送電電力に重畳した場合の合成送電電力と、両コイル間の距離との関係をシミュレーションにより求めた特性図である。両コイル間の距離が短い時には、送電コイル10から受電コイル40へ高効率での電力の伝送があり、反射電力が小さいので、合成送電電力は低いが、両コイル間の距離が長くなるに連れて、電力の伝送量が低下して、反射電力が大きくなるので、合成送電電力が増大していることが分かる。これにより、反射電力が合成送電電力として再利用されていることが分かる。
本実施例では、所定時間間隔で、周波数走査を繰り返して実行して、新たに検出される最大電力周波数で、本電力伝送の周波数を決定しているので、負荷51の負荷状態が変化しても、その負荷状態に係わらず、最大電力伝送効率を実現できる。上記実施例では、周波数の走査を、所定時間間隔で実施しているが、送電装置1のメインスイッチがオンされた時にのみ、実行するようにしても良い。
実施例1では、最大電力周波数を、受電装置1の側で求めている。実施例2では、受電装置1は、図4の特性のサンプリング値を、そのまま、送信装置54で、送信するようにしている。そして、送電装置1のCPU23の側で、図4の特性を、受電装置1のCPU53が受信して、CPU23により、最大電力周波数を求める。この最大電力周波数で、本電力伝送を周波数を送電周波数可変装置22により設定している。
本実施例は、実施例1の周波数走査に換えて、パルス電力を伝送させる。すなわち、実施例1の走査周波数範囲のスペクトルを有する電力を送電装置1から出力する。そして、受電装置2では、この電力の時間特性を、サンプリング装置52により、入力される。CPU53は、この時間特性をフーリエ変換して、図4の周波数特性を演算により求める。そして、その周波数特性から最大電力周波数を求めて、実施例1と同様に、そのデータを送電装置1の側に送信する。このようにしても、最大電力周波数を決定することができる。
実施例3と異なり、受電装置2の側で、最大電力周波数を決定するのではなく、時間特性を、そのまま、実施例2のように、受電装置2から送電装置1へ送信する。送電装置1のCPU23が、この時間特性を受信して、フーリエ変換して、図4の周波数特性を求めて、その周波数特性から最大電力周波数が決定される。このようにしても、実施例1、3と同一の効果が達成される。
実施例3において、受信電力の時間特性が、サンプリング装置52で入力された後、CPU53で、フーリエ変換して、周波数特性が演算される。CPU53は、この周波数特性を、実施例2と同様に、送電装置1の側に送信している。そして、送電装置1のCPU23が、この受信した周波数特性から最大電力周波数を決定している。この構成によっても、実施例1と同一の効果を実現することができる。
全実施例において、最大電力周波数を決定する試験電力は、本電力よりも低い電力でも、本電力であっても良い。また、データ伝送は、送信アンテナ55の代わりに、受電コイル40、受信アンテナ10の代わりに、送電コイル10を用いても良い。全実施例において、10MHzを電力伝送に用いているが、この周波数は、1〜100MHz、5〜50MHzの範囲を用いることができる。なお、数100kHz帯域でも用いることができるが、自己インダクタンスを大きくとることができないので、送電コイル10と受電コイル40の間の距離を長くとっても、高い伝送効率を維持するには、上記のMHz帯域の周波数を用いるのが良い。また、データ伝送は、送信アンテナ55、受信アンテナ25を用いる場合も、受電コイル40、送電コイル10を用いる場合であっても、この周波数よりも高い300MHz、数GHz帯域の信号を用いることができる。
実施例6は、反射電力を送電電力に合成するのではなく、蓄電池に蓄積するようにした装置である。図9において、実施例1と同一の機能を有する部分には、同一符号が付されている。電力増幅器20と給電コイル12との間に、サーキュレータ60が配設されており、一つの出力端子に高周波直流変換装置61が接続されている。サーキュレータ60は、電力増幅器20の出力する送電電力を給電コイル12との接続端子にのみ通過させ、給電コイル12から入力された反射電力を高周波直流変換装置61の側にのみ通過させる装置である。高周波直流変換装置61は、10MHz程度の高周波の反射電力を直流に整流する装置である。ダイオードのブリッジ接続による全波整流回路で構成できる。高周波直流変換装置61には蓄電池62が接続されており、高周波直流変換装置61により直流に変換された直流電力は、蓄電池62に入力されて、蓄電される。再利用装置は、高周波直流変換装置61、蓄電池62とで構成されている。
実施例6は、反射電力を直流に変換して、蓄電池に蓄電する実施例であるが、本実施例は、高周波の反射電力を商用交流に変換した後、コンバータにより、電力増幅器20及び信号発生装置21に給電するものである。図10に示すように、電力増幅器20と信号発生装置21は、コンバータ64により、商用電源から、交流電力が直流に変換されて、給電される。サーキュレータ60には高周波交流変換装置63が接続されており、その高周波交流変換装置63にはコンバータ64が接続されている。サーキュレータ60から出力される反射電力は、高周波交流変換装置63により、商用交流電力に変換され、コンバータ64により直流に変換されて、電力増幅器20と信号発生装置21に、供給される。また、高周波交流変換装置63の出力する商用交流電力は、送電用周波数可変装置22、CPU23、受信装置24、その他の装置65に供給されている。このようにして、反射電力を他の装置のための交流電源として用いることができ、両コイル間の間隔が長くなった場合であっても、エネルギー効率が向上する。再利用装置は、高周波交流変換装置63、コンバータ64とで構成されている。
上記の全ての実施例は、送電コイル10と受電コイル40による電力伝送は、1系統だけである。しかし、図11に示すように、サーキュレータ601−送電コイル101−受電コイル401の系統、サーキュレータ602−送電コイル102−受電コイル402の系統、サーキュレータ603−送電コイル103−受電コイル403の系統の3系統など、複数の系統を設けても良い。この実施例では、各サーキュレータを縦続接続している。すなわち、第1系統のサーキュレータ601の反射電力出力端子を、第2系統のサーキュレータ602の送電電力入力端子に接続し、そのサーキュレータ602の反射電力出力端子を、第3系統のサーキュレータ603の送電電力入力端子に接続している。サーキュレータ601の送電電力入力端子には、分岐器34、合成器33、分岐器37を介して、電力増幅器20の出力する送電電力が入力している。また、第3系統のサーキュレータ603の反射電力出力端子は、移相器31に接続されており、サーキュレータ603から出力される反射電力は、移相器31に入力して、実施例1と同様に、送電電力に重畳されて、合成送電電力が生成される。受信側は、第1系統では、電力受信装置501、負荷511、第2系統では、電力受信装置502、負荷512、第3系統では、電力受信装置503、負荷513が設けられている。このような構成により、各系統における給電コイル121、122、123で、それぞれ反射された反射電力は、順次、他の系統に、送電される。この実施例では、第1系統において電力が効率良く伝送されている場合には、反射電力は存在しないので、他の系統は電力伝送は実現されない。第1系統のコイル間距離が長くなって、反射電力が存在するようになると、他の2つの系統に反射電力が供給されるようになる。したがって、本実施例では、3系統のうち、何れか1つの系統が臨界結合に至る前の状態で、効率の良い送電が可能となる。また、送電周波数を固定した場合には、両コイル間の距離の変化により、送電効率が変動して、反射電力を生じる。このような場合には、各系統で発生した反射電力を他の系統にまわし、最終的に残った反射電力は、合成器33を介して、電力増幅器20の出力する送電電力に重畳される。この実施例において、第3系統の反射電力は、送電電力に重畳させる代わりに、実施例6、7のように、第3系統の反射電力を蓄電池に62に蓄電したり、交流電源として用いても良い。
実施例8のようにサーキュレータを縦続接続すると、複数の系統で、同時に、効率の高い電力伝送を実現できない。本実施例では、図12に示すように、各系統を並列接続したものである。合成送電電力は、分配器38により分配されて、各系統のサーキュレータ601、602、603に、それぞれ、入力される。移相器311、312、313は、各系統毎に設けられており、各系統のサーキュレータ601、602、603から出力される反射電力は各移相器311、312、313に入力している。各反射電力は、各移相器311、312、313により、電力増幅器20の出力する送電電力の位相と一致されて、合成器33により、送電電力に合成されて、合成送電電力が生成される。このような構成にすれば、各系統毎に、独立して、送電コイルと受信コイルとの間隔が変化しても、間隔が短いときには、高伝送効率を実現し、間隔が長くなるときには、電力損失を低減させることができる。
周波数特性検出装置は、実施例では、受電装置50、切換装置56、サンプリング装置52、CPU53、及び、CPU53の処理手順のステップ200、202で実現されている。また、送信装置は、送信装置54の他、CPU53、及び、CPU53の処理手順のステップ204、206で実現されている。また、周波数走査装置は、CPU23、及び、CPU23の処理手順のステップ100で実現されている。また、周波数制御装置はCPU23、及び、CPU23の処理手順のステップ104で実現されている。また、広帯域電力出力装置は、CPU23、パルス電力を出力する信号発生装置21の他、CPU23の処理手順で、実現されている。
本発明は、電気自動車や電子機器などのバッテリへの給電を非接触で行う装置に用いることができる。
1…送電装置
2…受電装置
10…送電コイル
11,41…結合コイル
12…給電コイル
41…出力コイル
11,41…結合コイル
31…移相器
32…位相検出器
2…受電装置
10…送電コイル
11,41…結合コイル
12…給電コイル
41…出力コイル
11,41…結合コイル
31…移相器
32…位相検出器
Claims (8)
- 共鳴による送電コイルと、この送電コイルに送電電力を供給する送電装置と、この送電コイルと電磁結合する共鳴による受電コイルと、この受電コイルから電力を入力して負荷に電力を供給する受電装置とを有する電磁共鳴電力伝送装置において、
前記送電装置は、
前記送電コイルに高周波電力を供給する給電装置と、
前記給電装置と前記送電コイルとの間に設けられ、前記給電装置から前記送電コイル側に流れる給電電力と、前記送電コイルから反射されて前記給電装置側に流れる反射電力とを分離して、反射電力のみを抽出する電力分離装置と、
前記電力分離装置により分離された反射電力を再利用する再利用装置と、
を有することを特徴とする電磁共鳴電力伝送装置。 - 前記再利用装置は、
前記給電装置から出力される前記給電電力又は前記電力分離装置から出力される前記反射電力の位相を変移させる移相器と、
前記移相器による位相変移の後、前記給電電力と前記反射電力との位相を整合させた後に、両者を合成させる合成器と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁共鳴電力伝送装置。 - 前記再利用装置は、前記給電装置から出力される前記給電電力の位相を検出する位相検出器を有し、
前記移相器は、前記反射電力の位相を、前記位相検出器の出力する検出位相に一致させることを特徴とする請求項2に記載の電磁共鳴電力伝送装置。 - 前記合成器の出力電力を検出する電力検出器と、
前記電力検出器による検出値が所定値となるように前記給電装置の出力を制御する出力制御装置と
を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電磁共鳴電力伝送装置。 - 前記再利用装置は、
前記電力分離装置から出力された前記反射電力を直流に整流する高周波直流変換装置と、
前記高周波直流変換装置の出力する直流電力を貯蔵する蓄電池と
を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁共鳴電力伝送装置。 - 前記再利用装置は、
前記電力分離装置から出力された前記反射電力を交流電力に変換する高周波交流変換装置を
有することを特徴とする請求項1に記載の電磁共鳴電力伝送装置。 - 前記高周波交流変換装置の出力は、前記給電装置に供給されることを特徴とする請求項6に記載の電磁共鳴電力伝送装置。
- 前記送電コイルと、前記電力分離装置と、前記受電コイルと、この受電コイルから給電される負荷とから成る送電系列を複数有し、
前記再利用装置は、ある系統の電力分離装置により分離された反射電力を、他の系統の電力分離装置を介して、給電する装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の電磁共鳴電力伝送装置。
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