JP2011204669A - 色素増感型太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な光電変換効率を発揮するとともに、低コスト化が可能な色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】透明導電性膜1が形成された透明基板2と、増感色素および酸化チタン系半導体を含有し透明導電性膜1と電気的に接続される光電極3とを備えた色素増感型太陽電池において、透明導電性膜1が、チタンがドープされた酸化亜鉛であり、原子価が(4−2X)価(X=0.1〜1)で表される低原子価チタンのチタンドープ酸化亜鉛ターゲットを用いて、パルスレーザ堆積法(PLD法)、イオンプレーティング法、スパッタリング法またはエレクトロンビーム(EB)蒸着法等の製膜方法により形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、良好な光電変換効率を発揮し、大幅なコストの低減が可能な色素増感型太陽電池に関する。
従来、太陽電池としてはシリコン系太陽電池が主流であったが、精製した高純度シリコンを要し、その他の実質的に利用可能な原料も資源に有限性があり、発電コストが高いなどの問題を有していた。そこで、これに代わる太陽電池として、近年、有機顔料や有機色素の増感色素と、ヨウ素化合物とを含む電解質溶液を用いた色素増感型太陽電池が注目されている。
色素増感型太陽電池は、一般に、増感色素を固定化させた酸化チタン系半導体の多孔質膜からなる光電極、対極、およびこれら二つの電極に挟まれるように配されたヨウ素化合物を含む電解質溶液からなるセル部と、前記光電極と電気的に接続される透明導電性膜を備えた透明基板とから構成されている。
そして、太陽光が透明基板側から入射すると、光電極の増感色素が光エネルギーを吸収して励起状態となり、電子e-を放出する。放出された電子e-は酸化チタン系半導体を経由して透明導電性膜に達し、外部回路に流れる。
このとき、電子e-を放出して陽イオンになった増感色素は、電解質溶液のヨウ素イオンを酸化し、I-をI3-へと変えるが、この酸化されたヨウ素イオンI3-は、外部回路から対極に戻された電子e-によって還元され再びI-となる。このように電子e-を循環させることによって電池として機能する。
このような色素増感型太陽電池における透明導電性膜としては、(i)光透過性および良好な導電性を有すること、(ii)酸化チタン系半導体の多孔質膜作製時の加熱等により特性変化が生じないこと、(iii)電解質溶液等に侵されない化学的耐久性を有することなどが求められる。特に、酸化チタン系半導体の多孔質膜作製時における、450℃〜500℃で3時間の加熱工程に耐える必要がある。
これらを満足する透明導電性膜として、従来は、耐熱性がスズドープ酸化インジウム(ITO)膜や、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)膜、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)膜に較べて優れているため、FTO(フッ素ドープ酸化錫)透明導電性膜が使用されているが、比抵抗が高く(安定的に量産可能な方法であるスパッタ法で最も低くても10-3Ω・cm前半オーダー)、変換効率の低下を招くという問題がある(非特許文献1)。
そのため、色素増感型太陽電池用透明導電性膜として必要なシート抵抗を10Ω/□以下を満たすためには、膜厚を少なくとも1μm以上にする必要あり、そのため、可視領域、近赤外領域の透明性や光の透過性が大幅に低くなる。
この問題を解決する方法として、FTO/ITO積層型の透明導電性膜が検討されているが、希少金属インジウムによるコスト高の問題がある。レアメタルであるインジウムを使わずに、スパッタ法のような量産可能なプロセスで、安定的に低抵抗(10-4Ω・cm前半オーダー)かつ耐熱性のある安価な透明導電性膜は存在しなかった。
日本学術振興会 透明酸化物光・電子材料第166委員会編、「透明導電膜の技術(改訂2版)」、株式会社 オーム社、平成19年5月25日発行、第159頁
従来の色素増感型太陽電池で得られる光電変換効率は、未だ充分満足しうるレベルに達しておらず、実用化に向けては光電変換効率のさらなる向上が要望されている。これまで、低抵抗(10-4Ω・cm前半オーダー)かつ耐熱性(450℃〜500℃で、3時間)があり、高透過性(可視領域、近赤外領域にて透過率85%以上)である透明導電性膜は存在しなかった。
そのため、低抵抗かつ耐熱性がある透明導電性膜が望まれている。
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、良好な光電変換効率を発揮するとともに、低コスト化が可能な色素増感型太陽電池を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、チタンドープ酸化亜鉛系透明導電性膜は、大気中、500℃で3時間の加熱工程を経由しても比抵抗の変化率が1.2倍以内であり、シート抵抗が10Ω/□以内であり、比抵抗が5×10-4Ω・cm以下であり、可視領域(380nm〜780nm)、近赤外領域(780nm〜1500nm)の透過性がともに85%以上であり、光透過性および導電性等の点からも色素増感型太陽電池における透明導電性膜として最適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)透明導電性膜が形成された透明基板と、増感色素および酸化チタン系半導体を含有し前記透明導電性膜と電気的に接続される光電極とを備えた色素増感型太陽電池において、前記透明導電性膜が、チタンがドープされた酸化亜鉛である、ことを特徴とする色素増感型太陽電池。
(2)前記透明導電性膜が、原子価が4価より低い低原子価チタンをドープした酸化亜鉛ターゲットを用いて、パルスレーザ堆積法(PLD法)、イオンプレーティング法、スパッタリング法またはエレクトロンビーム(EB)蒸着法の製膜方法により形成されている、前記(1)記載の色素増感型太陽電池。
(3)前記低原子価チタンが、Ti(II)またはTi(III)である前記(2)記載の色素増感型太陽電池。
(4)前記透明導電性膜に含まれるチタンと亜鉛との原子数比が、Ti/(Zn+Ti)=0.02超0.1以下である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
(5)前記透明導電性膜の膜厚が500nm以上1000nm以下であり、比抵抗が7×10-4cm以下、シート抵抗が10Ω/□以下である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
本発明によれば、良好な光電変換効率を発揮するとともに、低コスト化が可能な色素増感型太陽電池を提供することができる。
本発明に係る色素増感型太陽電池の一実施形態を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係る色素増感型太陽電池の他の実施形態を模式的に示す概略断面図である。
本発明の色素増感型太陽電池は、透明導電性膜が形成された透明基板と、増感色素および酸化チタン系半導体を有し前記透明導電性膜と電気的に接続される光電極とを備えたものである。かかる色素増感型太陽電池は、前記透明導電性膜が、後述する特定のチタンがドープされた酸化亜鉛系透明導電性膜であること以外は、特に制限されるものではなく、例えば対向型や3層型など従来公知の種々の形態の色素増感型太陽電池が包含される。
以下、本発明にかかる色素増感型太陽電池の実施形態の一例について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の一実施形態である対向型の色素増感型太陽電池10を模式的に示す概略断面図である。
図1に示す色素増感型太陽電池10は、一方面側(図中下側)に透明導電性膜1が形成された透明基板2と、増感色素および酸化チタン系半導体を含有する光電極3を備えている。この光電極3は、透明導電性膜1と接しており、電気的に接続されている。
さらに、透明導電性膜1(光電極3)に離間対向するように導電層4が形成された対向基板5が設けられるとともに、該対向基板5の導電層4に接して対極6が形成され、該対極6と光電極3との間に電解質溶液7が充填されている。なお、光電極3と対極6の外周面は、シール層8で覆うことで封止されている。
この色素増感型太陽電池10においては、透明基板2側(図中、上側)から入射した光が光電極3に達したときに、光電極3中の酸化チタン系半導体に固定(吸着)されている増感色素が励起され、この増感色素から酸化チタン系半導体へ電子が注入される。そして、酸化チタン系半導体に注入された電子は、透明導電性膜1に集められて外部に取り出される。取り出された電子は、外部に接続された負荷を経由した後、対向基板5の導電層4を経て対極6に達し、さらに、電解質溶液7中の後述する酸化還元対によって光電極3まで運ばれ、増感色素を還元する。
このように電子を循環させることで、色素増感型太陽電池10は太陽電池として機能する。
他方、図2は、本発明の色素増感型太陽電池の他の実施形態である3層型の色素増感型太陽電池20を模式的に示す概略断面図である。
図2に示す色素増感型太陽電池20においては、透明導電性膜1は、透明基板2の一方面側(図中、下側)において透明基板2と接するとともに、溝9を介して互いに離隔するよう形成された、第1の膜部分1aおよび第2の膜部分1bからなる。
増感色素および酸化チタン系半導体を含有する光電極3は、第1の膜部分1aの透明基板2とは反対側の面上に設けられる。さらに、透明導電性膜1(光電極3)に離間対向するように対向基板5が設けられるとともに、該対向基板5の透明導電性膜1側の面には、光電極3と対向配置され、かつ透明基板2と略垂直な方向に延出し第2の膜部分1bと接する延出部6aを有する対極6が形成されている。
電解質溶液7は、光電極3と対極6との間に挟まれるともに第1の膜部分1aおよび第2の膜部分1bの間にも挟まれ、溝9に接するように形成されたセパレータ7'に保持されている。なお、光電極3と対極6の外周面は、シール層8で覆うことで封止されている。
この色素増感型太陽電池20においては、透明基板2側(図中、上側)から入射した光が光電極3に達したときに、光電極3中の酸化チタン系半導体に固定(吸着)されている増感色素が励起され、この増感色素から酸化チタン系半導体へ電子が注入される。そして、酸化チタン系半導体に注入された電子は、透明導電性膜1の第1の膜部分1aに集められて外部に取り出される。
取り出された電子は、外部に接続された負荷を経由した後、透明導電性膜1の第2の膜部分1bを経て対極6に達し、さらに、セパレータ7'に保持された電解質溶液7中の後述する酸化還元対によって光電極3まで運ばれ、増感色素を還元する。
このように電子を循環させることで、色素増感型太陽電池20は太陽電池として機能する。
図1および図2において、透明基板2は、後述する真空プロセス(スパッタリング法、イオンプレーティング法、パルスレーザー堆積(PLD)法またはエレクトロンビーム(EB)蒸着法)で透明導電性膜1を形成する際の基板加熱時に形状を維持しうるものであり、かつ透明性を有するものであれば、特に制限はない。例えば、各種ガラス等の無機材料、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリイミド、ノルボルネン系樹脂、シロキサン系樹脂、エポキシアクリル樹脂などのプラスチック類)等の高分子材料などで形成された板状物やフィルム状物(シート状物を含む)等を用いることができるが、中でも、各種ガラスが好ましく用いられる。
図1および図2において、光電極3は、増感色素および酸化チタン系半導体を含有するものであり、通常、酸化チタン系半導体粒子で形成された多孔体に増感色素を吸着させることにより得られる。
光電極3を構成する酸化チタン系半導体としては、通常、酸化チタン、好ましくはアナターゼ型酸化チタンを用いることができる。
光電極3を構成する増感色素は、可視光領域または赤外光領域の光により励起されて電子を放出する色素であれば特に限定されるものではないが、特に、200〜2500nmの波長の光により励起されて電子を放出するものが好ましい。
このような増感色素としては、金属錯体や有機色素等を用いることができる。
金属錯体としては、例えば、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィルまたはその誘導体、ヘミン、ルテニウム、オスミウム、鉄及び亜鉛の錯体(例えば、シス−ジシアネート−N,N'−ビス(2、2'−ビピリジル−4、4'−ジカルボキシレート)ルテニウム(II))等が挙げられる。
有機色素としては、例えば、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素等が挙げられる。
図1および図2において、対向基板5に形成される導電層4は、例えば、SnがドープされたIn23、FがドープされたSnO2、SbがドープされたSnO2、AlがドープされたZnO、GaがドープされたZnO、ZnがドープされたIn23、NbがドープされたTiO2、TaがドープされたTiO2等の透明導電性金属酸化物により好適に形成されるが、これらに限定されるものではない。
図1および図2において、対向基板5としては、特に制限はなく、例えば、上述した透明基板2と同様の透明基板を用いることができる。また、透明性を有さない各種基板を用いてもよい。
図1および図2において、対極6は、特に制限されるものではなく、例えば、金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素、導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、フッ素ドープ酸化スズ等)など、従来公知の色素増感型太陽電池において対極として使用されているものを用いることができる。
図1および図2において、電解質溶液7の溶質およびその溶媒は、特に制限はなく、従来公知の色素増感型太陽電池において使用されているものを用いることができる。
溶質としては、例えば、酸化還元対I3-/I-を生じるヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム;酸化還元対Br3-/Br-を生じる臭化リチウム、酸化還元対ハイドロキノン/キノンを生じるキノン等を用いることができ、これらの中でも、特に酸化還元対としてI3-/I-を生じる溶質を好適に用いられる。電解質溶液7には、さらに、光電極3から電解質溶液7中の酸化体への電子の移動を抑制するための添加剤として、例えば、4−tert−ブチルピリジン等を含有させてもよい。
溶媒としては、例えば、有機溶剤や水を使用できるが、電気的に不活性で、比誘電率が高くかつ粘度の低いものが好ましく、例えば、メトキシプロピオニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;γ−ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒;エチレンカーボネート、プロプレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられる。
図2において、電解質溶液7を保持させたセパレータ7'は、例えば、絶縁性材料からなる透明な絶縁性の多孔体に、液状またはゲル状の電解質(上述した溶質)を保持させることにより得られる。
絶縁性の多孔体としては、例えば、ガラスビーズ、二酸化ケイ素(シリカ)等の粒子で形成されたものが挙げられる。
図1および図2において、シール層8としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱架橋型樹脂、エポキシ系接着剤等で形成することができる。
なお、上記各実施形態における部材(層や膜)の形成方法やそれらの厚み等については、特に制限されず、従来公知の方法に基づき適宜実施すればよい。
以上、色素増感型太陽電池の代表的な実施形態を挙げたが、本発明にかかる色素増感型太陽電池はこれらに限定されるものではなく、光電極に電気的に接続される透明導電性膜として、チタンドープ酸化亜鉛系透明導電性膜を用いる限り、従来公知の色素増感型太陽電池の構成を適宜採用することができる。
本発明の色素増感型太陽電池は、上述したように、透明導電性膜の製膜方法を除き、公知の方法を採用して得ることができる。
以下、本発明におけるチタンドープ酸化亜鉛透明導電性膜の作製方法と該チタンドープ酸化亜鉛透明導電性膜について詳しく述べる。
(チタンドープ酸化亜鉛透明導電性膜の形成方法)
本発明におけるチタンドープ酸化亜鉛透明導電性膜の形成方法は、酸化チタン粉末と、酸化亜鉛粉末もしくは水酸化亜鉛粉末との組み合わせからなる酸化物混合体または酸化物焼結体を加工してなるターゲットを膜形成材料として、PLD法、イオンプレーティング法、スパッタリング法またはEB蒸着法等の製膜方法により形成する方法などである。
まず、膜形成材料であるターゲットを構成する特定の酸化物混合体について説明する。
前記特定の酸化物混合体は、実質的に亜鉛、チタンおよび酸素からなり、酸化亜鉛、酸化チタンが特定の原子数比で混合し、成形された混合体である。ここで、「実質的」とは、酸化物混合体を構成する全原子の99%以上が亜鉛、チタンおよび酸素からなることを意味する。
本発明における酸化亜鉛系透明導電性膜の製膜方法において用いる膜形成材料中に含まれるチタンと亜鉛との原子数比、すなわち前記特定の酸化物混合体に含まれるチタンと亜鉛との原子数比は、Ti/(Zn+Ti)=0.02超0.1以下であることが重要である。このTi/(Zn+Ti)の値が0.02以下であると、チタンのドープ効果が不充分となり、形成される透明導電性膜の導電性が低下するとともに、化学的耐久性の改善効果が不充分となるおそれがある。一方、Ti/(Zn+Ti)の値が0.1を超えると、製膜時の不純物散乱要因が増し、移動度が低下し、形成される透明導電性膜の導電性が低下するおそれがある。好ましくは、膜形成材料(ターゲット)中もしくは酸化物混合体中のチタンと亜鉛との原子数比は、Ti/(Zn+Ti)=0.025〜0.09であり、より好ましくはTi/(Zn+Ti)=0.03〜0.08である。
前記特定の酸化物混合体は、酸化亜鉛相と酸化チタン相とから構成されることが好ましい。酸化チタン相におけるチタンは、チタン(III)、チタン(II)などの低原子価チタンであることが好ましい。
また、焼結してもよいが、チタン酸亜鉛化合物相等の複合酸化物が生成しないことが重要である。酸化亜鉛と酸化チタンは相図から600℃未満であれば、加熱しても焼結せずに酸化亜鉛と酸化チタンが反応することなく、それぞれ変化なく、単相にて存在する。
さらに600℃未満であれば、加熱して成形体の強度を向上させても構わない。但し、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)は400℃以上で酸素が存在する雰囲気にて加熱すると、酸化されてしまうので、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)を用いる場合、酸素が存在しない雰囲気にて400℃以上600℃未満にて加熱する必要がある。400℃以下の場合、酸化雰囲気でも構わない。
前記した低原子価チタンとは、原子価が4価よりも低いチタンであり、チタン(II)、チタン(III)という整数の原子価を有するチタンばかりでなく、原子価が(4−2X)価(X=0.1〜1)で表される範囲のチタンである。
なお、ここで、チタン酸亜鉛化合物相とは、具体的には、ZnTiO3、Zn2TiO4のほか、これらの亜鉛サイトにチタン元素が固溶されたものや、酸素欠損が導入されているものや、Zn/Ti比がこれらの化合物から僅かにずれた非化学量論組成のものも含むものとする。
また、酸化亜鉛相とは、具体的には、ZnOのほか、これにチタン元素が固溶されたものや、酸素欠損が導入されているものや、亜鉛欠損により非化学量論組成となったものも含むものとする。なお、酸化亜鉛相は、通常、ウルツ鉱型構造をとる。
前記特定の酸化物混合体は、実質的に酸化亜鉛と酸化チタンの結晶相の混合物であることが好ましい。
また、酸化チタンの結晶相とは、具体的には、Ti23、TiOなどの低原子価酸化チタンのほか、これらの結晶にZnなど他の元素が固溶された物質も含むものとする。
ここでいう低原子価酸化チタンとは、TiO(II)、Ti23(III)という整数の原子価を有するものばかりでなく、Ti35,Ti47,Ti611、Ti59、Ti815等も含む、一般式TiO2-X(X=0.1〜1)で表される範囲の低原子価酸化チタンである。該低原子価酸化チタンは、一般式TiO2-Xの化学式で表される新規な低原子価酸化チタンである。この低原子価酸化チタンの構造は、X線回折装置(X−ray diffraction、 XRD)、X線光電子分光装置(X−ray Photoelectron Spectroscopy、 XPS)などの機器分析の結果によって確認することができる。
前記一般式:TiO2-X(X=0.1〜1)は単成分を作製するのは難しく、混合物として得られる。通常、酸化チタン(TiO2)を水素雰囲気等の還元雰囲気にて、還元剤としてカーボン等を用いて、加熱することにより作製することができる。水素濃度、還元剤としてカーボン量、加熱温度を調製することにより、低原子価酸化チタンの混合物の割合を制御することができる。
前記特定の酸化物混合体は、ガリウム、アルミニウム、錫、シリコン、ゲルマニウム、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(以下、これらを「添加元素」と称することもある)をも含有することが好ましい。このような添加元素を含有することによって、形成される透明導電性膜の比抵抗が低下し、導電性を向上させることができる。
添加元素を含有する場合、その全含有量は、原子数比で、酸化物焼結体を構成する全金属元素の総量に対して0.05%以下であることが好ましい。添加元素の含有量が前記範囲よりも多いと、酸化物混合体をターゲットとして形成される膜の比抵抗が増大するおそれがある。
前記添加元素は、酸化物の形態で酸化物混合体中に存在していてもよいし、前記酸化亜鉛相の亜鉛サイトに置換した(固溶した)形態で存在していてもよいし、前記酸化チタン相のチタンサイトに置換した(固溶した)形態で存在していてもよい。
前記特定の酸化物混合体は、必須元素である亜鉛およびチタンや前記添加元素のほかに、例えば、インジウム、イリジウム、ルテニウム、レニウムなどの他の元素を、不純物として含有していてもよい。
不純物として含有される元素の合計含有量は、原子数比で、酸化物焼結体を構成する全金属元素の総量に対して0.5%以下であることが好ましい。
前記特定の酸化物混合体の原料粉末は、チタン源として、酸化チタン粉、チタン金属粉等から選ばれる1種以上と、亜鉛源として、酸化亜鉛粉、水酸化亜鉛粉、亜鉛金属粉等から選ばれる1種以上とを、それぞれ組み合わせたものを用いることができる。特に、前記原料粉末としては、酸化チタン粉と、酸化亜鉛粉もしくは水酸化亜鉛粉との混合粉、を含むものが好ましく、酸化チタン粉と、酸化亜鉛粉もしくは水酸化亜鉛粉との混合粉を含むものがより好ましい。例えば、チタン金属と酸化亜鉛とを組み合わせたものや、酸化チタンと亜鉛金属とを組み合わせたものを原料粉末とした場合、酸化物混合体中にチタンや亜鉛の金属粒が存在しやすくなり、これをターゲットとして成膜すると、成膜中にターゲット表面の金属粒が溶融してしまいターゲットから放出されず、得られる膜の組成とターゲットの組成とが大きく異なる傾向がある。
前記酸化チタン粉としては、4価のチタンからなる酸化チタン(TiO2)、3価のチタンからなる酸化チタン(Ti23)、2価のチタンからなる酸化チタン(TiO)等の粉末を用いることができるが、TiO2を含まない低原子価酸化チタンの粉末を用いることが好ましい。前記ターゲットは、3価のチタンからなる酸化チタン(Ti23)をチタン源として得られたものであることが好ましく、その点で、前記酸化チタン粉としてはTi23の粉末を用いるのが好ましい。Ti23をチタン源とすることが好ましい理由は、Ti23の結晶構造は三方晶であり、これと混合する酸化亜鉛は六方晶のウルツ鉱であるため、結晶構造の対称性が一致し、固相焼結する際に置換固溶しやすいからである。なお、酸化チタン粉としては、純度が99重量%以上であるものを用いるのがよい。
前記した低原子価酸化チタンとは、TiO(II)、Ti23(III)という整数の原子価を有するものばかりでなく、Ti35、Ti47、Ti611、Ti59、Ti815等も含む、一般式TiO2-X(X=0.1〜1)で表される範囲のものである。低原子価酸化チタンは、一般式TiO2-Xの化学式で表される新規な低原子価酸化チタンである。この低原子価酸化チタンの構造は、X線回折装置(X−ray diffraction、 XRD)、X線光電子分光装置(X−ray Photoelectron Spectroscopy、 XPS)などの機器分析の結果によって確認することができる。
前記一般式:TiO2-X(X=0.1〜1)は単成分を作製するのは難しく、混合物として得られる。通常、酸化チタン(TiO2)を水素雰囲気等の還元雰囲気にて、還元剤としてカーボン等を用いて、加熱することにより作製することができる。水素濃度、還元剤としてカーボン量、加熱温度を調製することにより、低原子価酸化チタンの混合物の割合を制御することができる。
前記酸化亜鉛粉としては、通常、ウルツ鉱構造のZnO等の粉末が用いられ、さらにこのZnOを予め還元雰囲気で焼成して酸素欠損を含有させたものを用いてもよい。なお、酸化亜鉛粉としては、純度が99重量%以上であるものを用いるのがよい。
前記水酸化亜鉛としては、アモルファスもしくは結晶構造のいずれであってもよい。
前記原料粉末として各々用いる化合物(粉)の平均粒径は、それぞれ5μm以下であることが好ましい。また、そのBET比表面積は、特に限定されない。
前記原料粉末として酸化チタン粉と、酸化亜鉛粉もしくは水酸化亜鉛粉との混合粉を用いる場合の各粉の混合割合は、各々用いる化合物(粉)の種類に応じて、得られる酸化物成形体に含まれるチタンと亜鉛との原子数比が、Ti/(Zn+Ti)の値が上述した範囲である比率となるように適宜設定すればよい。なお、原料粉末として各々用いる化合物(粉)は、それぞれ1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記原料粉末を成形する際の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、原料粉末を混合し、得られた混合物を成形すればよい。
混合は、例えば、ボールミル、振動ミル、アトライター、ダイノミル、ダイナミックミル等の公知の混合方法を用いて行うことができ、乾式で行なってもよいし、湿式で行ってもよい。
また、混合を湿式で行う際には、成形に供する前に得られるスラリー状の混合物を乾燥してもよく、その場合、乾燥は、例えば、加熱乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて行えばよい。
得られた混合物の成形は、例えば、一軸プレス、冷間静水圧プレス(CIP)を用いて、通常1ton/cm2以上の圧力をかけて行なうことができる。
成形に際しては、後述するスパッタ法に適した形状にすればよく、例えば、円板、四角板等の形状とすればよい。また、成形後、切断や研削等を適宜組み合わせて行うことにより、寸法を調整することもできる。なお、混合物を成形するにあたり、混合物の機械的強度を高めるため熱アニールを施すようにしてもよい。
得られた成形体のアニールは、大気雰囲気、不活性雰囲気あるいは還元雰囲気(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、真空、水素等)および酸化雰囲気(大気よりも酸素濃度が高い雰囲気)のいずれかの雰囲気中、50〜600℃未満で行なう。そして、酸化雰囲気中でアニールした場合、400℃以下で行うことが望ましい。これは、TiO、Ti23がTiO2に酸化されてしまうからである。酸化チタンとしてTiO2を用いた場合、600℃未満であれば、大気雰囲気、還元雰囲気どちらでも構わない。
このようにアニールすることにより、混合成形体の機械的強度を高めることができる。
いずれの雰囲気中でアニールする際も、アニール時間(すなわち、アニール温度での保持時間)は、1時間〜15時間とすることが好ましい。アニール時間が1時間未満であると、酸化物混合体の機械的強度の向上が十分ではない。
アニールを行なう際の方法は、特に制限されるものではなく、例えば、常圧アニール法、ホットプレス法、熱間等圧プレス(HIP)、放電プラズマ焼結(SPS)、冷間等圧プレス(CIP)、ミリ波焼結、マイクロ波焼結など公知の方法を採用することができる。
前記アニール処理を施す際の不活性雰囲気あるいは還元雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、真空および水素からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる雰囲気が挙げられる。
前記アニール処理の方法としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、水素などの非酸化性ガスを導入しながら常圧で加熱する方法や、真空(好ましくは、2Pa以下)下で加熱する方法等により行うことができるが、製造コストの観点からは、前者の常圧で行う方法が有利である。なお、アニール処理後、切断や研削等を適宜組合わせて行うことにより、寸法を調整することもできる。
本発明における酸化亜鉛系透明導電性膜の形成方法に用いられるターゲットは、前記特定の酸化物混合体を加工することにより得られる。
加工方法は、特に制限されず、適宜公知の方法を採用すればよい。例えば、酸化物混合体に平面研削等を施した後、所定の寸法に切断してから、支持台に貼着することにより、ターゲットを得ることができる。また、必要に応じて、複数枚の酸化物混合体を分割形状にならべて、大面積のターゲット(複合ターゲット)としてもよい。
次に、膜形成材料であるターゲットを構成する特定の酸化物焼結体について説明する。
すなわち、本発明における透明導電性膜は、前記特定の酸化物混合体に代えて、成形体を焼結することにより得られる酸化物焼結体を加工したターゲットを用いて形成されてもよい。
膜形成材料(ターゲット)中もしくは酸化物焼結体中のチタンと亜鉛との原子数比は、Ti/(Zn+Ti)=0.02超0.1以下であることが重要であり、好ましくはTi/(Zn+Ti)=0.025〜0.09であり、より好ましくはTi/(Zn+Ti)=0.03〜0.08である。
前記特定の酸化物焼結体は、酸化亜鉛相とチタン酸亜鉛化合物相とから構成されるか、または、チタン酸亜鉛化合物相から構成されることが好ましい。このように酸化物焼結体中にチタン酸亜鉛化合物相が含まれていると、酸化物焼結体自体の強度が増すので、過酷な条件(高電力など)で成膜条件においてもターゲットにクラックが生じたりすることがない。
なお、ここで、チタン酸亜鉛化合物相とは、具体的には、ZnTiO3、Zn2TiO4のほか、これらの亜鉛サイトにチタン元素が固溶されたものや、酸素欠損が導入されているものや、Zn/Ti比がこれらの化合物から僅かにずれた非化学量論組成のものも含むものとする。
酸化亜鉛相とは、具体的には、ZnOのほか、これにチタン元素が固溶されたものや、酸素欠損が導入されているものや、亜鉛欠損により非化学量論組成となったものも含むものとする。なお、酸化亜鉛相は、通常、ウルツ鉱型構造をとる。
前記特定の酸化物焼結体は、実質的に酸化チタン相を含有しないことが好ましい。
前記特定の酸化物焼結体は、例えば、チタン源と亜鉛源とを含む原料粉末を前記した特定の酸化物混合体と同様にして成形した後、得られた成形体を焼結することにより、得ることができる。
なお、チタン源および亜鉛源は、前記した特定の酸化物混合体と同様のものを用いることができる。
得られた成形体の焼結は、例えば、成形体を非酸化性雰囲気(真空雰囲気、不活性雰囲気、還元雰囲気)にて静置し、焼成温度(最高到達温度)を600〜1700℃とし、この焼成温度での保持時間を0.5〜48時間とする条件で行えばよい。通常、酸化物焼結体を不活性雰囲気あるいは還元雰囲気にて焼結した場合は、酸素欠損の導入により、酸化物焼結体の比抵抗は低くなり、酸化雰囲気にて焼結した場合は、比抵抗は高くなる。
焼成温度は、好ましくは600〜1500℃、より好ましくは1000〜1300℃とし、保持時間は、好ましくは15時間以上、より好ましくは20時間以上とするのがよい。
焼結は、例えば、電気炉、ガス炉、還元炉等を用いて行うことができる。
また、焼結は、ホットプレス、熱間等圧プレス(HIP)、冷間等圧プレス(CIP)、放電プラズマ焼結(SPS)等を用いて、上述した成形と同時に行ってもよい。なお、焼成後、切断や研削等を適宜組み合わせて行うことにより、寸法を調整することもできる。
なお、焼結を行うに際しては、例えば、成形体をZnO粉体内に埋めた状態で分解を防止しつつ行なうことにより、得られる酸化物焼結体の密度を、好ましくは80%以上、より好ましくは90%の高密度とすることが好ましい。
高密度の酸化物焼結体からなるターゲットは、膜品質の低下、すなわち、特にfs−PLD法の場合の結晶性および表面モホロジーの低下を招く可能性のあるアブレーションプルーム内の微粒子を低減するうえで好ましい。
本発明における透明導電性膜の製膜方法に用いられるターゲットは、前記特定の酸化物焼結体を、前記した特定の酸化物混合体と同様にして加工することにより得られる。
(製膜方法)
本発明における酸化亜鉛系透明導電性膜の製膜方法は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、PLD法またはEB蒸着法により成膜を行うものであるが、その際の具体的手法や条件などについては、上述した膜形成材料を用いること以外、特に制限はなく、公知のスパッタリング法、イオンプレーティング法、PLD法またはEB蒸着法の手法や条件を適宜採用すればよい。
透明導電性膜の製膜方法の一例として、スパッタリング法による製膜方法について簡単に説明する。
スパッタリング法による成膜は、例えば、ターゲットをスパッタリング装置内に設置し、この装置内にスパッタリングガスを導入し、直流(dc)または高周波(rf)あるいは双方の電界を印可してスパッタリングを行うことにより、透明基板上に薄膜を形成することができる。
スパッタリングガスとしては、通常、不活性ガス(例えば、Arなど)が濃度99.995%以上で用いられる。必要に応じて、酸化性ガスや還元性ガスを併用することもできるが、好ましくは、実質的に酸素を含まない方がよく、酸素濃度は例えば0.05%未満であるのがよい。
スパッタリング法による成膜条件は、特に制限されないが、例えば、圧力は通常0.1〜10Pa、基板温度は通常25〜300℃で行うことができる。
スパッタリングの方式は、特に制限されるものではなく、例えば、DCスパッタリング法(直流スパッタリング法)、RFスパッタリング法(高周波スパッタリング法)、ACスパッタリング法(交流スパッタリング法)またはこれらを組み合わせた方法の中から、使用するターゲットの比抵抗等に応じて適宜採用することができる。例えば、DCスパッタリング法は、他の方式に比べて成膜速度が速く、スパッタリング効率に優れ、しかもDCスパッタリング装置は、安価で、制御が容易であり、電力消費量も少ないという利点があるが、ターゲットが絶縁体であると採用できない。これに対して、RFスパッタリング法では、ターゲットがたとえ絶縁体であっても採用することができる。
(酸化亜鉛系透明導電性膜)
本発明における酸化亜鉛系透明導電性膜は、上述した酸化亜鉛系透明導電性膜の製膜方法により成膜されたチタンドープ酸化亜鉛からなる透明導電性膜である。
かかる酸化亜鉛系透明導電性膜中に含まれるチタンと亜鉛の原子数比は、Ti/(Zn+Ti)=0.02超0.1以下、好ましくはTi/(Zn+Ti)=0.025〜0.09であり、より好ましくはTi/(Zn+Ti)=0.03〜0.08である。これにより、チタンのドープ効果により優れた導電性を発現しうるとともに、耐熱性にも優れた膜となる。耐熱性に関しては、膜厚が厚くなればなるほど、耐熱性能は向上するが、膜厚が厚くなると透過性は低下するが、本発明におけるチタンドープ酸化亜鉛透明導電性膜は、吸収が小さいため、膜厚が厚くなっても透過性を保持することができる。
色素増感型太陽電池に必要な耐熱性として、本発明におけるチタンドープ酸化亜鉛透明導電性膜は、膜厚を500nm以上にすれば、450℃〜500℃、3時間の加熱処理で、シート抵抗10Ω/□以下、比抵抗:6×10-4Ω・cm以下、抵抗の変化率を1.5倍以内に維持することができる。この酸化亜鉛系透明導電性膜は、チタンが酸化亜鉛のウルツ鉱の結晶構造の亜鉛サイトに置換固溶したものある。なお、チタンドープ酸化亜鉛透明導電性膜は、膜厚は1000nm以下であるのが好ましく、膜厚が1000nmを超えると、成膜時間が長くなりすぎて、生産効率が低くなるおそれがある。
以上のようなプロセスによって、チタンがドープされた酸化亜鉛からなる透明導電性膜が形成される。この透明導電性膜は、チタンドープ酸化亜鉛の多結晶体からなる薄膜であり、色素増感型太陽電池に要求される充分な導電性および透明性を有するとともに、色素増感型太陽電池に製造プロセスに耐える耐熱性を有している。また、化学的耐久性にも優れており、電解質溶液等による腐食の懸念もない。具体的には、前記の方法により得られた透明導電性膜の比抵抗は、通常7×10-4Ω・cm以下、好ましくは5×10-4Ω・cm以下である。また、その表面抵抗(シート抵抗)は、通常5〜15Ω/□、好ましくは5〜10Ω/□である。なお、比抵抗および表面抵抗は、例えば実施例で後述する方法によって測定することができる。
また、前記プロセスにより得られた透明導電性膜付き基板の透過率は、可視光領域で、通常80%以上、好ましくは85%以上であり、赤外領域で、通常80%以上、好ましくは85%以上である。
本発明における透明基板におけるチタンドープ酸化亜鉛透明導電性膜の膜厚は、500〜1000nmであることが好ましい。この膜厚の範囲では、耐熱性と透過性のバランスを保つことができる。
このような透明導電性膜を備えた本発明の色素増感型太陽電池は、良好な光電変換効率を発揮するとともに、大幅なコスト削減が可能なものである。なお、前記透過率および前記比抵抗は、例えば実施例で後述する方法によって測定することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
なお、実施例における各種物性の測定は、以下の方法で行なった。
<結晶性>
結晶性は、X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用いて、薄膜測定用のアタッチメントを使用して評価した。
<比抵抗>
比抵抗は、抵抗率計(三菱化学(株)製「LORESTA−GP,MCP−T610」)を用いて、四探針法により測定した。詳しくは、サンプルに4本の針状の電極を直線上に置き、外側の二探針間に一定の電流を流し、内側の二探針間に一定電流を流し、内側の二探針間に生じる電位差を測定し、抵抗を求めた。
<透過率>
透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製「V−670」)を用いて、波長190nm〜1500nmの範囲で測定した。
<表面抵抗>
表面抵抗は、比抵抗(Ω・cm)を膜厚(cm)で除することにより算出した。
<耐熱性>
透明基板を、温度500℃の大気中に3時間保持する耐熱試験に付した後、表面抵抗を測定した。耐熱試験後の表面抵抗が、耐熱試験前の表面抵抗の1.5倍以下であると、耐熱性に優れると言える。
(実施例1)
酸化亜鉛粉(ZnO粉末;純度99.9%、平均粒径1μm以下、和光純薬工業(株)製)および酸化チタン粉(Ti23粉末;純度99.9%、平均粒径1μm以下、(株)高純度化学研究所製)を原料粉末とし、これらをZn:Tiの原子数比が94:6となる割合で樹脂製ポットに入れ、湿式ボールミル混合法により湿式混合した。湿式混合は、ボールとして硬質ZrO2ボールを用い、混合時間を18時間として行った。
次いで、混合後の原料粉末スラリーを取り出し、乾燥、造粒した後、冷間静水圧プレスにて1ton/cm2の圧力をかけて成形し、直径100mm、厚さ8mmの円盤状成形体を得た。
次に、得られた成形体を、大気雰囲気中、300℃にて1時間アニールして、成形体(酸化物混合体(1))を得た。
得られた酸化物混合体(1)をエネルギー分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「EDX−700L」)にて分析したところ、ZnとTiの原子数比はZn:Ti=94:6であった(Ti/(Zn+Ti)=0.06)。この酸化物混合体(1)の結晶構造をX線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)により調べたところ、酸化亜鉛(ZnO)と酸化チタン(Ti23)の結晶相の混合物であった。
次に、得られた酸化物混合体(1)を20mmφの円盤状に加工して、スパッタリング用ターゲットを得、これを用いてスパッタリング法により透明導電性膜を成膜した透明基板を作製した。すなわち、スパッタリング装置(キャノンアネルバエンジニアリング(株)製「E−200」)内に、上記スパッタリング用ターゲットおよび膜形成用透明基板(石英ガラス基板)を設置し、Arガス(純度99.9995%以上、Ar純ガス=5N)を12sccmで導入して、圧力0.5Pa、電力75W、基板温度250℃の条件下でスパッタリングを行い、透明基板上に膜厚700nmの透明導電性膜を形成した。
形成した透明導電性膜中の組成(Zn:Ti)について、波長分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「XRF−1700WS」)を用い蛍光X線法により検量線を用いて定量分析を行ったところ、Zn:Ti(原子数比)=94:6であった。また、この透明導電性膜について、X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用い薄膜測定用のアタッチメントを使用したX線回折を行うとともに、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(TEM−EDX)を用いて亜鉛へのチタンのドープ状態を調べ、さらに電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて結晶構造を調べたところ、C軸配向したウルツ鉱型の単相であり、チタンが亜鉛に置換固溶していることがわかった。
得られた透明基板上の透明導電性膜の比抵抗は5.0×10-4Ω・cmであり、表面抵抗は7.2Ω/□であった。なお、透明基板上の比抵抗の分布は面内均一であった。
得られた透明基板の透過率は、可視領域(380nm〜780nm)で平均86%、赤外領域(780nm〜1500nm)で平均86%であった。なお、成膜前の石英ガラス基板の可視領域(380nm〜780nm)における透過率は平均94%であり、赤外領域(780nm〜1500nm)における透過率は平均94%であった。
得られた透明基板の耐熱性を評価したところ、耐熱試験後の表面抵抗は、耐熱試験前の表面抵抗の1.18倍であり、耐熱性に優れることがわかった。耐熱試験後でもシート抵抗は8.5Ω/□であり、10Ω/□以下であった。
以上のことから、得られた透明基板上の膜は、透明かつ低抵抗であるとともに、耐熱性をも兼ね備えた透明導電性膜であることが明らかである。
次に、上記で得られた透明導電性膜付透明基板を用い、図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。すなわち、透明導電性膜付透明基板の上に酸化チタンの半導体粒子ペーストの前駆体を透明導電性膜付透明基板に塗布し、次いで、塗布膜を加熱(500℃で3時間)した。加熱後の透明導電性膜付透明基板の比抵抗は5.9×10-4Ω・cmであり、シート抵抗は8.5Ω/□であった。その後、増感色素(Solaronix社製N3色素等のRu錯体)の溶液(0.3mmol/Lのエタノール溶液)に浸漬し、増感色素を吸着させたものを光電極とした。
次に、この光電極を対向電極(白金をコーティングした透明導電性膜)と距離10μm程度まで接近させ、光電極と対向電極との間隙に電解質(例えば、LiI:0.5mol/L、I2:0.05mol/L、t−ブチルピリジン:0.5mol/Lのアセトニトリル溶液)を充填した後、シール層を形成し、色素増感型太陽電池を得た。
得られた色素増感型太陽電池に太陽光を照射し、電流電圧特性を測定したところ、優れた光電変換効率が得られた。
(実施例2)
酸化亜鉛粉末(ZnO;和光純薬工業(株)製、特級)および酸化チタン粉末(Ti23;(株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を原料粉末とし、これらをZn:Tiの原子数比が96:4となる割合で混合し、原料粉末の混合物を得た。次いで、得られた混合物を金型に入れ、一軸プレスにより成形圧500kg/cm2にて成形し、直径30mm、厚さ5mmの円盤状の成形体を得た。この成形体を常圧(1.01325×102kPa)のアルゴン雰囲気下、800℃で4時間焼結して、酸化物焼結体(2)を得た。
得られた酸化物焼結体(2)をエネルギー分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「EDX−700L」)にて分析したところ、ZnとTiの原子数比はZn:Ti=96:4(Ti/(Zn+Ti)=0.04)であった。この酸化物焼結体(2)の結晶構造をX線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)により調べたところ、酸化亜鉛(ZnO)とチタン酸亜鉛(Zn2TiO4)の結晶相の混合物であり、酸化チタンは全く存在していなかった。
次に、得られた酸化物焼結体(2)を20mmφの円盤状に加工して、スパッタリング用ターゲットを得、これを用いて、実施例1と同様にして、スパッタリング法により透明基板上に膜厚700nmの透明導電性膜を形成した。
形成した透明導電性膜中の組成(Zn:Ti)について、波長分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「XRF−1700WS」)を用い蛍光X線法により検量線を用いて定量分析を行ったところ、Zn:Ti(原子数比)=96:4であった。また、この透明導電性膜について、X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用い薄膜測定用のアタッチメントを使用したX線回折を行うとともに、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(TEM−EDX)を用いて亜鉛へのチタンのドープ状態を調べ、さらに電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて結晶構造を調べたところ、C軸配向したウルツ鉱型の単相であり、チタンが亜鉛に置換固溶していることがわかった。
得られた透明基板上の透明導電性膜の比抵抗は4.8×10-4Ω・cmであり、表面抵抗は6.85Ω/□であった。なお、透明基板上の比抵抗の分布は面内均一であった。
得られた透明基板の透過率は、可視領域(380nm〜780nm)で平均86%、赤外領域(780nm〜2700nm)で平均86%であった。
得られた透明基板の耐熱性を評価したところ、耐熱試験後の表面抵抗は、耐熱試験前の表面抵抗の1.2倍であり、耐熱性に優れることがわかった。耐熱試験後でもシート抵抗は8.22Ω/□であり、10Ω/□以下であった。
以上のことから、得られた透明基板上の膜は、透明かつ低抵抗であるとともに、耐熱性をも兼ね備えた透明導電性膜であることが明らかである。
上記で得られた透明導電性膜付透明基板を用い、実施例1と同様にして、図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。得られた色素増感型太陽電池に太陽光を照射し、電流電圧特性を測定したところ、優れた光電変換効率が得られた。
(実施例3)
酸化亜鉛粉末(ZnO;和光純薬工業(株)製、特級)および酸化チタン粉末(TiO(II);(株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を原料粉末とし、これらをZn:Tiの原子数比が94:6となる割合で混合し、原料粉末の混合物を得た。
次いで、得られた混合物を金型に入れ、一軸プレスにより成形圧500kg/cm2にて成形し、直径30mm、厚さ5mmの円盤状の成形体を得た。この成形体を常圧(1.01325×102kPa)のアルゴン雰囲気下、800℃で4時間焼結して、酸化物焼結体(3)を得た。
得られた酸化物焼結体(3)をエネルギー分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「EDX−700L」)にて分析したところ、ZnとTiの原子数比はZn:Ti=94:6(Ti/(Zn+Ti)=0.06)であった。この酸化物焼結体(3)の結晶構造をX線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)により調べたところ、酸化亜鉛(ZnO)とチタン酸亜鉛(Zn2TiO4)の結晶相の混合物であり、酸化チタンは全く存在していなかった。
次に、得られた酸化物焼結体(3)を20mmφの円盤状に加工して、スパッタリング用ターゲットを得、これを用いて、実施例1と同様にして、スパッタリング法により透明基板上に膜厚700nmの透明導電性膜を形成した。
形成した透明導電性膜中の組成(Zn:Ti)について、波長分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「XRF−1700WS」)を用い蛍光X線法により検量線を用いて定量分析を行ったところ、Zn:Ti(原子数比)=94:6であった。また、この透明導電性膜について、X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用い薄膜測定用のアタッチメントを使用したX線回折を行うとともに、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(TEM−EDX)を用いて亜鉛へのチタンのドープ状態を調べ、さらに電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて結晶構造を調べたところ、C軸配向したウルツ鉱型の単相であり、チタンが亜鉛に置換固溶していることがわかった。
得られた透明基板上の透明導電性膜の比抵抗は4.8×10-4Ω・cmであり、表面抵抗は6.85Ω/□であった。なお、透明基板上の比抵抗の分布は面内均一であった。
得られた透明基板の透過率は、可視領域(380nm〜780nm)で平均86%、赤外領域(780nm〜1500nm)で平均86%であった。
得られた透明基板の耐熱性を評価したところ、耐熱試験後の表面抵抗は、耐熱試験前の表面抵抗の1.2倍であり、耐熱性に優れることがわかった。耐熱試験後でもシート抵抗は8.22Ω/□であり、10Ω/□以下であった。
以上のことから、得られた透明基板上の膜は、透明かつ低抵抗であるとともに、耐熱性をも兼ね備えた透明導電性膜であることが明らかである。
上記で得られた透明導電性膜付透明基板を用い、実施例1と同様にして、図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。得られた色素増感型太陽電池に太陽光を照射し、電流電圧特性を測定したところ、優れた光電変換効率が得られた。
(実施例4)
酸化亜鉛粉末(ZnO;和光純薬工業(株)製、特級)および酸化チタン粉末(TiO(II);(株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を原料粉末とし、これらをZn:Tiの原子数比が94:6となる割合で混合し、原料粉末の混合物を得た。混合操作後、ボールとエタノールを除去して得られた混合粉末を黒鉛からなる金型(ダイス)に入れ、黒鉛からなるパンチにて40MPaの圧力で真空加圧し、1000℃、4時間、加熱処理を行い、円盤型の焼結体を得た。
得られた酸化物焼結体(4)をエネルギー分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「EDX−700L」)にて分析したところ、ZnとTiの原子数比はZn:Ti=94:6(Ti/(Zn+Ti)=0.06)であった。この酸化物焼結体(4)の結晶構造をX線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)により調べたところ、酸化亜鉛(ZnO)とチタン酸亜鉛(Zn2TiO4)の結晶相の混合物であり、酸化チタンは全く存在していなかった。
次に、得られた酸化物焼結体(4)を20mmφの円盤状に加工して、スパッタリング用ターゲットを得、これを用いて、実施例1と同様にして、スパッタリング法により透明基板上に膜厚700nmの透明導電性膜を形成した。
形成した透明導電性膜中の組成(Zn:Ti)について、波長分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「XRF−1700WS」)を用い蛍光X線法により検量線を用いて定量分析を行ったところ、Zn:Ti(原子数比)=94:6であった。また、この透明導電性膜について、X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用い薄膜測定用のアタッチメントを使用したX線回折を行うとともに、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(TEM−EDX)を用いて亜鉛へのチタンのドープ状態を調べ、さらに電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて結晶構造を調べたところ、C軸配向したウルツ鉱型の単相であり、チタンが亜鉛に置換固溶していることがわかった。
得られた透明基板上の透明導電性膜の比抵抗は4.8×10-4Ω・cmであり、表面抵抗は6.85Ω/□であった。なお、透明基板上の比抵抗の分布は面内均一であった。
得られた透明基板の透過率は、可視領域(380nm〜780nm)で平均86%、赤外領域(780nm〜1500nm)で平均86%であった。
得られた透明基板の耐熱性を評価したところ、耐熱試験後の表面抵抗は、耐熱試験前の表面抵抗の1.2倍であり、耐熱性に優れることがわかった。耐熱試験後でもシート抵抗は8.22Ω/□であり、10Ω/□以下であった。
以上のことから、得られた透明基板上の膜は、透明かつ低抵抗であるとともに、耐熱性をも兼ね備えた透明導電性膜であることが明らかである。
上記で得られた透明導電性膜付透明基板を用い、実施例1と同様にして、図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。得られた色素増感型太陽電池に太陽光を照射し、電流電圧特性を測定したところ、優れた光電変換効率が得られた。
(実施例5)
酸化亜鉛粉末(ZnO;和光純薬工業(株)製、特級)および酸化チタン粉末(Ti23(III);(株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を原料粉末とし、これらをZn:Tiの原子数比が94:6となる割合で混合し、原料粉末の混合物を得た。混合操作後、ボールとエタノールを除去して得られた混合粉末を黒鉛からなる金型(ダイス)に入れ、黒鉛からなるパンチにて40MPaの圧力で真空加圧し、1000℃、4時間、加熱処理を行い、円盤型の酸化物焼結体(5)を得た。
得られた酸化物焼結体(5)をエネルギー分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「EDX−700L」)にて分析したところ、ZnとTiの原子数比はZn:Ti=94:6(Ti/(Zn+Ti)=0.06)であった。この酸化物焼結体(5)の結晶構造をX線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)により調べたところ、酸化亜鉛(ZnO)とチタン酸亜鉛(Zn2TiO4)の結晶相の混合物であり、酸化チタンは全く存在していなかった。
次に、得られた酸化物焼結体(5)を20mmφの円盤状に加工して、スパッタリング用ターゲットを得、これを用いて、実施例1と同様にして、スパッタリング法により透明基板上に膜厚700nmの透明導電性膜を形成した。
形成した透明導電性膜中の組成(Zn:Ti)について、波長分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「XRF−1700WS」)を用い蛍光X線法により検量線を用いて定量分析を行ったところ、Zn:Ti(原子数比)=94:6であった。また、この透明導電性膜について、X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用い薄膜測定用のアタッチメントを使用したX線回折を行うとともに、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(TEM−EDX)を用いて亜鉛へのチタンのドープ状態を調べ、さらに電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて結晶構造を調べたところ、C軸配向したウルツ鉱型の単相であり、チタンが亜鉛に置換固溶していることがわかった。
得られた透明基板上の透明導電性膜の比抵抗は5.0×10-4Ω・cmであり、表面抵抗は7.14Ω/□であった。なお、透明基板上の比抵抗の分布は面内均一であった。
得られた透明基板の透過率は、可視領域(380nm〜780nm)で平均86%、赤外領域(780nm〜1500nm)で平均86%であった。
得られた透明基板の耐熱性を評価したところ、耐熱試験後の表面抵抗は、耐熱試験前の表面抵抗の1.2倍であり、耐熱性に優れることがわかった。耐熱試験後でもシート抵抗は8.57Ω/□であり、10Ω/□以下であった。
以上のことから、得られた透明基板上の膜は、透明かつ低抵抗であるとともに、耐熱性をも兼ね備えた透明導電性膜であることが明らかである。
上記で得られた透明導電性膜付透明基板を用い、実施例1と同様にして、図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。得られた色素増感型太陽電池に太陽光を照射し、電流電圧特性を測定したところ、優れた光電変換効率が得られた。
(比較例1)
平均粒径が1μmの酸化亜鉛粉末97.7重量部と、平均粒径が0.2μmの酸化アルミニウム粉末2.3重量部とを、ポリエチレン製ポットに入れ、乾式ボールミルを用いて72時間混合し、原料粉末の混合物を得た。得られた混合物を金型に入れ、成形圧300kg/cm2の圧力でプレスを行い、成形体を得た。この成形体に3ton/cm2の圧力でCIPによる緻密化処理を施した後、以下の条件で焼結して、アルミニウムドープ酸化亜鉛の酸化物焼結体(C1)を得た。
焼結温度:1500℃
昇温速度:50℃/時間
保持時間:5時間
焼結雰囲気:大気中
得られた酸化物焼結体(C1)は、X線回折で分析したところ、ZnOとZnAl24との2相の混合組織であった。
次に、得られた酸化物焼結体(C1)を4インチφ、6mm厚の形状に加工し、インジウム半田を用いて無酸素銅製バッキングプレートにボンディングすることにより、ターゲットを作製した。そして、このターゲットを用いて、以下の条件でスパッタリング法による成膜を行い、透明基材(石英ガラス基板)上に膜厚700nmの透明導電性膜を形成し、透明基板を得た。形成した膜中のAl含有量は2.3重量%であった。
装置:dcマグネトロンスパッタ装置
磁界強度:1000Gauss(ターゲット直上、水平成分)
基板温度:200℃
到達真空度:5×10-5Pa
スパッタリングガス:Ar
スパッタリングガス圧:0.5Pa
DCパワー:300W
得られた透明基板上の透明導電性膜の比抵抗は4.0×10-4Ω・cmであり、表面抵抗は5.71Ω/□であった。
得られた透明基板の透過率は、可視領域(380nm〜780nm)で平均87%、赤外領域(780nm〜1500nm)で平均74%であった。
得られた透明基板の耐熱性を評価したところ、耐熱試験後の表面抵抗は、耐熱試験前の表面抵抗の約4500倍であり、耐熱性に大きく劣ることがわかった。
以上のことから、得られた透明基板上の膜は、透明かつ低抵抗ではあるが、耐熱性には劣る透明導電性膜であることが明らかである。
次に、上記で得られた透明導電性膜付透明基板を用い、図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。
すなわち、透明導電性膜付透明基板の上に酸化チタンの半導体粒子ペーストの前駆体を透明導電性膜付透明基板に塗布し、次いで、塗布膜を加熱(500℃で3時間)した。加熱後の透明導電性膜付透明基板の比抵抗は1.8Ω・cmであり、シート抵抗は25695Ω/□であった。その後、増感色素(Solaronix社製N3色素等のRu錯体)の溶液(0.3mmol/Lのエタノール溶液)に浸漬し、増感色素を吸着させたものを光電極とした。
次に、この光電極を対向電極(例えば、白金をコーティングした透明導電性膜)と距離10μm程度まで接近させ、光電極と対向電極との間隙に電解質(LiI:0.5mol/L、I2:0.05mol/L、t−ブチルピリジン:0.5mol/Lのアセトニトリル溶液)を充填した後、シール層を形成し、色素増感型太陽電池を得た。
得られた色素増感型太陽電池に太陽光を照射し、電流電圧特性を測定したところ、透明基板のシート抵抗が高抵抗化しすぎたため、透明導電性膜での損失が大きく光電変換効率が大幅に低下した。
(比較例2)
酸化亜鉛粉末(ZnO;和光純薬工業(株)製、特級)および酸化チタン粉末(Ti23(III);(株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を原料粉末とし、これらをZn:Tiの原子数比が99:1となる割合で混合し、原料粉末の混合物を得た。混合操作後、ボールとエタノールを除去して得られた混合粉末を黒鉛からなる金型(ダイス)に入れ、黒鉛からなるパンチにて40MPaの圧力で真空加圧し、1000℃、4時間、加熱処理を行い円盤型の酸化物焼結体(C2)を得た。
得られた酸化物焼結体(C2)をエネルギー分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「EDX−700L」)にて分析したところ、ZnとTiの原子数比はZn:Ti=99:1(Ti/(Zn+Ti)=0.01)であった。この酸化物焼結体(C2)の結晶構造をX線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)により調べたところ、酸化亜鉛(ZnO)とチタン酸亜鉛(Zn2TiO4)の結晶相の混合物であり、酸化チタンは全く存在していなかった。
次に、得られた酸化物焼結体(C2)を20mmφの円盤状に加工して、スパッタリング用ターゲットを得、これを用いて、実施例1と同様にして、スパッタリング法により透明基板上に膜厚700nmの透明導電性膜を形成した。
形成した透明導電性膜中の組成(Zn:Ti)について、波長分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「XRF−1700WS」)を用い蛍光X線法により検量線を用いて定量分析を行ったところ、Zn:Ti(原子数比)=99:1であった。また、この透明導電性膜について、X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用い薄膜測定用のアタッチメントを使用したX線回折を行うとともに、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(TEM−EDX)を用いて亜鉛へのチタンのドープ状態を調べ、さらに電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて結晶構造を調べたところ、C軸配向したウルツ鉱型の単相であり、チタンが亜鉛に置換固溶していることがわかった。
得られた透明基板上の透明導電性膜の比抵抗は1.1×10-3Ω・cmであり、表面抵抗は15.7Ω/□であった。なお、透明基板上の比抵抗の分布は面内均一であった。
得られた透明基板の透過率は、可視領域(380nm〜780nm)で平均87%、赤外領域(780nm〜1500nm)で平均87%であった。
得られた透明基板の耐熱性を評価したところ、耐熱試験後の表面抵抗は、耐熱試験前の表面抵抗の13倍であり、耐熱性に大きく劣ることがわかった。
以上のことから、得られた透明基板上の膜は、透明かつ低抵抗ではあるが、耐熱性には劣る透明導電性膜であることが明らかである。
次に、上記で得られた透明導電性膜付透明基板を用い、図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。すなわち、透明導電性膜付透明基板の上に酸化チタンの半導体粒子ペーストの前駆体を透明導電性膜付透明基板に塗布し、次いで、塗布膜を加熱(500℃で3時間)した。加熱後の透明導電性膜付透明基板の比抵抗は1.43×10-2Ω・cmであり、シート抵抗は204.1Ω/□であった。その後、増感色素(Solaronix社製N3色素等のRu錯体)の溶液(0.3mmol/Lのエタノール溶液)に浸漬し、増感色素を吸着させたものを光電極とした。
次に、この光電極を対向電極(例えば、白金をコーティングした透明導電性膜)と距離10μm程度まで接近させ、光電極と対向電極との間隙に電解質(LiI:0.5mol/L、I2:0.05mol/L、t−ブチルピリジン:0.5mol/Lのアセトニトリル溶液)を充填した後、シール層を形成し、色素増感型太陽電池を得た。
得られた色素増感型太陽電池に太陽光を照射し、電流電圧特性を測定したところ、透明基板のシート抵抗が高抵抗化しすぎたため、透明導電性膜での損失が大きく光電変換効率が大幅に低下した。
(比較例3)
酸化亜鉛粉末(ZnO;和光純薬工業(株)製、特級)および酸化チタン粉末(Ti23(III);(株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を原料粉末とし、これらをZn:Tiの原子数比が88:12となる割合で混合し、原料粉末の混合物を得た。混合操作後、ボールとエタノールを除去して得られた混合粉末を黒鉛からなる金型(ダイス)に入れ、黒鉛からなるパンチにて40MPaの圧力で真空加圧し、1000℃、4時間、加熱処理を行い円盤型の酸化物焼結体(C3)を得た。
得られた酸化物焼結体(C3)をエネルギー分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「EDX−700L」)にて分析したところ、ZnとTiの原子数比はZn:Ti=88:12(Ti/(Zn+Ti)=0.12)であった。この酸化物焼結体(C3)の結晶構造をX線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)により調べたところ、酸化亜鉛(ZnO)とチタン酸亜鉛(Zn2TiO4)の結晶相の混合物であり、酸化チタンは全く存在していなかった。
次に、得られた酸化物焼結体(C3)を20mmφの円盤状に加工することにより、ターゲットを作製し、これを用いてスパッタリング法により透明導電膜を成膜し、透明導電基板を得た。すなわち、スパッタリング装置(キャノンアネルバエンジニアリング(株)製「E−200」)内に、上記ターゲットと透明基材(石英ガラス基板)とをそれぞれ設置し、Arガス(純度99.9995%以上、Ar純ガス=5N)を12sccmで導入して、圧力0.5Pa、電力75W、基板温度250℃の条件下でスパッタリングを行い、透明基板上に膜厚800nmの透明導電膜を形成した。
形成した透明導電膜中の組成(Zn:Ti)について、波長分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「XRF−1700WS」)を用い蛍光X線法により検量線を用いて定量分析を行ったところ、Zn:Ti(原子数比)=88:12(Ti/(Zn+Ti)=0.12)であった。また、この透明導電膜について、X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用い薄膜測定用のアタッチメントを使用したX線回折を行うとともに、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(TEM−EDX)を用いて亜鉛へのチタンのドープ状態を調べ、さらに電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて結晶構造を調べたところ、C軸配向したウルツ鉱型の単相であり、チタンが亜鉛に置換固溶していることがわかったが、結晶性は低下していた。
得られた透明基板上の透明導電膜の比抵抗は2.1×10-2Ω・cmであり、表面抵抗は262.5Ω/□であった。なお、透明基板上の比抵抗の分布は面内均一であった。
得られた透明基板の透過率は、可視領域(380nm〜780nm)で平均87%、赤外領域(780nm〜1500nm)で平均87%であった。
得られた透明基板の耐熱性を評価したところ、耐熱試験後の表面抵抗は、耐熱試験前の表面抵抗の1.05倍であり、耐熱性に優れていた。
以上のことから、得られた透明基板上の膜は、透明かつ耐熱性に優れるが、高抵抗の透明導電性膜であることが明らかである。
次に、上記で得られた透明導電性膜付透明基板を用い、図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。すなわち、透明導電性膜付透明基板の上に酸化チタンの半導体粒子ペーストの前駆体を透明導電性膜付透明基板に塗布し、次いで、塗布膜を加熱(500℃で3時間)した。
加熱後の透明導電性膜付透明基板の比抵抗は2.21×10-2Ω・cmであり、シート抵抗は275.6Ω/□であった。その後、増感色素(Solaronix社製N3色素等のRu錯体)の溶液(0.3mmol/Lのエタノール溶液)に浸漬し、増感色素を吸着させたものを光電極とした。
次に、この光電極を対向電極(例えば、白金をコーティングした透明導電性膜)と距離10μm程度まで接近させ、光電極と対向電極との間隙に電解質(LiI:0.5mol/L、I2:0.05mol/L、t−ブチルピリジン:0.5mol/Lのアセトニトリル溶液)を充填した後、シール層を形成し、色素増感型太陽電池を得た。
得られた色素増感型太陽電池に太陽光を照射し、電流電圧特性を測定したところ、透明基板のシート抵抗が高抵抗化しすぎたため、透明導電性膜での損失が大きく光電変換効率が大幅に低下した。
1 透明導電性膜
2 透明基板
3 光電極
4 導電層
5 対向基板
6 対極
6a 延出部
7 電解質溶液
7' セパレータ
8 シール層
9 溝

Claims (5)

  1. 透明導電性膜が形成された透明基板と、増感色素および酸化チタン系半導体を含有し前記透明導電性膜と電気的に接続される光電極とを備えた色素増感型太陽電池において、
    前記透明導電性膜が、チタンがドープされた酸化亜鉛である、ことを特徴とする色素増感型太陽電池。
  2. 前記透明導電性膜が、原子価が4価より低い低原子価チタンをドープした酸化亜鉛ターゲットを用いて、パルスレーザ堆積法(PLD法)、イオンプレーティング法、スパッタリング法またはエレクトロンビーム(EB)蒸着法の製膜方法により形成されている、請求項1記載の色素増感型太陽電池。
  3. 前記低原子価チタンが、Ti(II)またはTi(III)である請求項2記載の色素増感型太陽電池。
  4. 前記透明導電性膜に含まれるチタンと亜鉛との原子数比が、Ti/(Zn+Ti)=0.02超0.1以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
  5. 前記透明導電性膜の膜厚が500nm以上1000nm以下であり、比抵抗が7×10-4cm以下、シート抵抗が10Ω/□以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101515820B1 (ko) * 2014-04-04 2015-05-06 국립대학법인 울산과학기술대학교 산학협력단 염료를 미리 흡착한 나노입자 금속산화물을 이용한 스프레이 방식의 플렉시블 염료감응형 태양전지의 제조방법 및 이를 이용한 제조장치

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