JP2011191283A - テーブルトップ原子炉 - Google Patents

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Abstract

【課題】 旧来のウラン235を燃料とした原子炉は放射性廃棄物やメルトダウンそして燃料自体のピークウランの問題などをも抱えその燃料の供給さえ暗雲が覆ってきた。いま原料が豊富で安価な価格で安全性の高い技術革新によるあたらしいグリーン原子炉の発明が渇望されている。
【解決手段】 本発明は小型で価格も手頃なテーブルトップ粒子加速器からの高速中性子を自在に安定的に制御することで、燃えにくく広く大量にストックされている劣化ウランやウランの数倍も埋蔵量がある同じく燃えにくいトリウムを燃焼させる方法を提供するものである。
【選択図】図3

Description

本発明は安全で低エネルギーコストで放射性廃棄物が少なくかつ有効資源の豊富な二種の核燃料と組み合わせた小型テーブルトップ(加速器駆動)原子炉による発電システムに関する。
近年、アメリカ前副大統領のアル・ゴアなどから地球文明の維持に危険信号の警鐘が鳴らされ、これを受けて国連などが活動を開始した。この地球温暖化問題の防止方策が京都議定書以来緊急に求められているが、なかなか有効な方法が発見されていない。
問題解決方法に関して、使用している既存のエネルギーの消費量を減らす方法を考案するか、新たな温室ガス効果(GHS)を排出しないグリーン・エネルギー源を考案するかその両方を考案することが急務とされる。
これまでエネルギー源としては太陽エネルギー、風力エネルギー、地熱エネルギーまたはバイオマスエネルギーなどのクリーンで再生可能な自然エネルギーが精力的に開発研究されているが、2010年3月の現時点ではいずれもコストパーフォーマンスの点で旧来の化石燃料を上回るものは実現されていない。
原子力発電は二酸化炭素を排出しないとして、近年その価値が再評価されるようになってその導入が始まったが、従来から指摘されている様々な問題、すなわち原子炉の暴走の危険性や、大量の放射性廃棄物の処分問題とその環境汚染、材料の交換時の作業者の被爆問題、そして原子炉の廃棄処分費の高いコストや万一事故がおきた場合の補償問題など数々の課題は依然として未解決のままである。また燃料のウラン資源自身の枯渇も指摘されている。さらに地球温暖化によるツナミの運動エネルギーなどによって原子力発電施設の崩壊流出の危険性や海面上昇による原子炉の水没などが起きた場合の海洋汚染による地球的規模の危機の懸念も指摘され始めている。
原子炉発電はその利点として核分裂では二酸化炭素を排出しないことが利点と一般には喧伝されているが、実は燃料のウラン235を生成する際に温室ガス効果の高いハロゲナイドコンパウンド(HC)が放出されるなどの指摘もある。これも無視することは出来ず、その正確な量は評価されていないという問題点も指摘されている。
他のエネルギー源の候補として太陽と同じ機構である核融合発電があげられるが、国際プロジェクトITERとして研究開発がスタートしているもまだその実用化にはほど遠い。
また地球温暖化に関連してエネルギー源の多様化と、よりよい効率の送電法などの必要性から、IT(Information technology)とDG(distributed generation)等の観点から電力の配電はいままでの集中型から分散型のマイクログリッド発電に向かっており発電システムもその対応が求められている。
本発明によればこれらのエネルギー問題とそれに付随した大半を解決できる可能性が高い。すなわち、豊富で安価な原料を使い、暴発・暴走(メルトダウン)のリスクが少なく、寿命が長く危険な放射性廃棄物を排出せず、二酸化炭素などの温暖化効果温室ガス(GHG)も排出しない新しいタイプの小型テーブルトップ原子炉を提供する。さらに本発明は低コストのエネルギーを使ったLED人工光により野菜ばかりか穀物などの安価で農薬などの少ない良質な食料生産の工業化を可能にする。さらに地球的規模の核兵器拡散問題や飲料水不足問題などの解決までその適用範囲は及ぶ。
大型トカマックにおいて核融合反応が短時間持続することは実証されている。しかし実用の核融合実用炉では長時間核融合反応を持続する必要がある。ところが核融合では付随的に大量の中性子が発生し核融合反応を起こすプラズマの容器を短時間で破損してしまう。現時点ではこの問題を解決する炉壁材料の実現の見通しはない。
この炉壁材料の問題を解決するために核融合炉と従来型の原子炉を組み合わせたハイブリッド炉なるものが提案されている。核融合炉で発生する中性子を原子炉の核分裂で必要とする中性子に使おうというアイデアである。しかしながらその場合には原子炉の核分裂反応で増幅される中性子が逆に核融合炉に戻る可能性も否定出来ず、二種類の複雑な炉の相互作用などの新たな問題も懸念され、さらに困難な技術的課題がでてくるのでその実現は困難を極めるであろう。
原料がウランの数倍と豊富で広い地域に分散しているトリウムを燃料とし原子炉は放射性廃棄物の量が少なく、半減期も短くなによりも核兵器に利用されるプルトニウムを排出しないことから、理想のグリーン・エネルギーとして内外で注目されはじめている。実際、米国のオークリッジ研究所では1950年代に実証炉が数年間、安全に運転されてきているという実績がある。
しかしながらトリウムは其れ自身では着火しないので着火材としてウラン235またはプルトニウム239などを必要とする。ウラン235は資源の価格の高騰や枯渇問題、プルトニウムは兵器転用やテロ問題などがあり、その入手法と厳格な安全管理が問題からくる高い管理費も問題となる。
本発明のトリウム炉はテーブルトップのサイズの加速器制御において小型未臨界炉での運転を維持する。外部の中性子テーブルトップ加速器からテーブルトップ原子炉に中性子を入射することで点火と核分裂を維持する。この中性子束を思い通りに制御することで、核分裂反応を思い通りに安定に制御できる。しかし当初のトリウム炉は加速器でなく、ウラン材料との併用でこの中性子を制御していたのでその点で問題があった。
古川和男らは1GeVの高エネルギーDTL(Drift Tube Linac)加速器からの陽子ビームを用いて中性子を補給する提案を行った(K.Furukawa et al.,Int.Conf.Accel.−driven Transmu.Tech.Appl.(Las Vegas,July25−29,1994))。古川とは独立にCERNのカルロ・ルビアはFFAG(Fixed Field Alternating Gradient Accelerator)の円形加速器からの陽子ビームを特殊な標的に照射することで中性子を補給する方法を考案した。これらを加速器駆動トリウム原子炉(Accelerator Driven Thorium Reactor,ADTR)と呼ぶ。古川もルビアもいずれもエネルギーが1GeV級の高エネルギー陽子を加速して核破砕により中性子を生成する方法をとり本発明のエネルギー領域とは異なっている。加速器駆動トリウム原子炉では加速器のビーム強度が十分である必要がある。この点でKEK(高エネルギー加速器研究機構)でのFFAG加速器での実験的性能は標準的なシンクロトロンの強度よりも低く、必要な性能にはまったく不充分であった。加速器駆動原子炉では使う加速器の種類とエネルギーの選び方が重要である。古川はドリフトチューブライナックをルビアはサイクロトロンに原理が近いFFAG円形加速器を提案している。前者は高価すぎて東海のJPARCでも断念した粒子加速器である。後者は装置の性能が不十分であることが明らかになっている。
これらの動きとは独立に濃縮ウランを種にして燃えにくい劣化ウランに中性子を反応させる(http://en.wikipedia.org/wiki/Traveling_wave_reactor)方法も提案されている。これもトリウム原子炉と同様に1950年代にファインバーグが発案している(S.M.Feinberg,Rec.of Proc.Session B−10,ICPUAE,United Nations,Geneva,Switzerland(1958))。劣化ウランU238は天然のウランでは99.3%含有されていて濃縮ウランU235の0.714%に比べて約140倍存在する。仮にウランの埋蔵量が70年弱としても、全部を燃料に使えるとすれば存在量としては7000年分にも相当することになる。以来、水素爆弾の発明者エドワードテラーも1990年代にTWRを実現しようとしてその研究に携わった(E.Teller,M.Ishikawa,and L.Wood,Lubbock,Texas,United States(1995).)が世界最大の核兵器研究所で予算も潤沢なローレンスリバモアー研究所でさえ実現にはいたらなかった。また日本では東工大の関本らがCANDLEという名前で同様の原子炉の提案を行っている(H.Sekimoto,K.Ryu,and Y.Yoshimura,“CANDLE:Nuclear Science and Engineering,139,1−12(2001))が、卓上の計算のみの研究であるようにみえる。
2009年2月TED(Technology,Entertainment,Design)でビルゲイツが次世代の夢のグリーン・エネルギーエネルギー原子炉候補として自らの出資会社でもあるIntellectual Ventures社(http://www.intellectualventures.com/特許保持管理会社)のTraveling Wave Reactorのコンピューターシミュレーションを紹介したことでTWRへの関心が一気に再燃した。これはファインバーグの系譜である。TWRはいわば劣化ウラン燃料体のマッチ棒の先に濃縮ウランの燐を点火してこれを高速度カメラで撮影・再生するようなものである。TWRの課題はコンピューターシュミュレーションでのシナリオをどのようにして具体的に実現するかである。直径数メートルで長さ数十メートルの劣化ウラン燃料体を濃縮ウランで着火しこれを100年くらいのタイムスケールでゆっくりと安定的にしかも自発的に燃焼する条件を設定することは大きな困難が伴い未だに実現されていない。燃えるままにまかせる方式なので、なんらかの乱れで連鎖反応が暴走しないことの保証がないことがTWRの最大の課題である。
大量に保存されている使い道の少ない放射性物質の劣化ウランを燃焼させる案は以前から提案されている。その代表はプルトニウムの高速増殖炉である。かつて夢の原子炉とも喧伝されたが毒性の高いプルトニウムを燃えにくい劣化ウランで囲み連鎖反応で生成させた高速中性子をプルトニウムに吸収させてプルトニウムを燃焼させる。また核分裂でのもうひとつの高速中性子を劣化ウランに吸収させプルトニウムを生成する、すなわち、プルトニウムを増殖するので増殖炉と呼ぶ。このとき中性子の速度を高速に保持しておく必要があるために、すなわち貴重な高速中性子を減速させないために、冷却水に水をつかえず、空気と反応しやすく極めて扱いにくいナトリウムを使用せざるを得なかった。この技術的困難さのために日本を除くすべての国々でこの方法を断念している。その日本ではというとナトリウムの漏出のもれが起こり計画は頓挫している。
もうひとつの方法は冷却に重水素水を使うカナダの採用したCANDU(Canadian Deuterium Uranium)である。天然ウランは燃やせるが重水のコストが高いという弱点がある。さらに重水素から危険で扱いにくいとリチウムが生成されてしまう。欠点が利点を相殺してしまいCANDU原子炉を普及させにくい。
以上の原子炉に共通の重要な問題点として原子炉の冷却の問題がある。特に高速増殖炉の場合のように冷却溶媒が液体の場合に複雑な細管で構成される熱交換器において一次側の核分裂生成物(原料)が二次冷却側に漏れさらに蒸気タービンまで到達する危険性がある。幸いトリウム原子炉では溶融塩/液体フッ素原料のすぐれた冷却法が開発されてきた。
また地球温暖化問題による社会的要請は多様な電源の開発を要求している。これらのひとつはマイクログリッドシステムの分散型電源がある。そのためには発電規模は従来の発電所よりも小型で安全なグリーン原子炉の開発が有利である
さらにいままでの原子力発電は安全性が脆弱であるという問題がある。ツナミや温暖化による海面上昇で原子炉がツナミの膨大な運動エネルギーで押し流されたり、あるいは海面下に水没し海洋汚染のリスクが指摘される。また原子力発電所は規模も大きく、国家安全保証上、ミサイルなどで攻撃をうけた場合の危険性がとりわけ高いという問題も指摘されうる。
以上の提案の問題点を纏めると、旧来の原子力発電所についてはその暴走の可能性、多量の廃棄物と放射性物質の寿命の問題、核物質原料のコスト増と資源の分布の偏在、炉システムの構成の複雑さ、冷却法の安全性の課題、放射性副産物、メガ地震やツナミ時の脆弱性、核ミサイル攻撃への脆弱性などがあげられる。また過去に提案されている大型加速器駆動原子炉の場合は、核破砕(スポレーション中性子)機構を使った高エネルギー加速器(1GeV,100mA以上)の高コスト(数千億円)の問題が大きい。ちなみに古川らの提案予算は研究開発とはいえ2兆円前後と従来の原子力発電施設のコストの数倍である。
以上の考察の結果、燃料として毒性の強いプルトニウムは使用しない、空気中の水分と激しい反応が避けられない危険なナトリウム冷却媒体は使わない、複雑で大型で高価なトカマックは使用しない、FFAGなど設計値の性能が実際には出ていない加速器は採用しない、高価な高エネルギーDTLライナックは使用しない、超低速でのスローな反応が要求される安全性の保証されていない”あるがまま”の自発的燃焼構造のTWR機構は採用しない、冷却に高価な重水は使用しない。海洋汚染の恐れの高い海岸には設置しない。溶融塩のような冷却システムの信頼性の向上。中規模以下の信頼できるマイクログリッドでの発電システムの必要性。本発明には以上の要求を満足する必要があると結論する。
本発明では小型のテーブルトップ加速器駆動原子炉のコンセプトを発案する。すなわち原子炉の外部からテーブルトップ小型加速器でビーム強度とエネルギーのコントロールされた重イオンまたは中性子を打ち込むことで原子炉を未臨界の状態で運転しつつその安全と安定性を充分に担保する。この中性子発生源としてはいままで提案されていない、より小型のテーブルトップサイズの加速器を採用することに本発明の特徴がある。核分裂材料としては劣化ウランまたはトリウムまたはそれらの組み合わせを特徴とする。特に新たなテクノロジーの開発を必要とする特殊加速器による中性子の供給と劣化ウランとトリウムの組み合わせが本発明の特徴である。
粒子加速器は陽子ビーム、重水素ビームまたは重イオンビームなどの高い強度とそれぞれの中性子生成増幅率の反応に応じた適切なエネルギーが好ましい。使用する粒子加速器は従来のニュートロンチューブやRFQをマイクロ波の周波数をあげることでさらに小型にしたものまたは熊田の発明による集団加速(電子リング)の原理のTTA(Table Top Accelerator)である(熊田雅之 特願番号2009−118006)。TTAは数メートルで数百MEV/核子以上の加速効率をもつように設計されているため中性子の発生効率をあげる事が可能である。
ここで使用する粒子加速器のタイプの三種類のいずれもが線形加速器(ライナック)に分類される。ライナックの場合は偏向電磁石を使用する必要がないので円形加速よりも小型化が容易である。すなわち高周波(RF)またはマイクロ波の周波数を上げる事で加速器のサイズを小さくすることが可能である。加速器のエネルギーを外部から注入する際に共振原理を用いるとエネルギーの注入効率がよい。共振周波数はおおむね加速器の空洞のサイズに反比例する。まずテーブルトップまたはさらに小さいデスクトップ規模の加速器を実現するために共振周波数を既存の加速器の周波数よりもさらに大幅に上げる方法を採用することとする。
高周波またはマイクロ波の周波数はIEEEの国際規約によれば、以下の周波数帯(バンド)に分類される:I−0.2,G0.2−0.25,P0.25−0.5,L0.5−1.5,S2−4,C4−8,X8−12,Ku12−18,K18−26,Ka26−40,V40−75(GHz)。本発明では従来の重イオン(ハドロン)加速器で使用されてきた周波数帯よりもさらに高いPバンドからVバンドまでを採用する。おおざっぱにいえば2mの空洞の直径は0.1GHzで共振するので1GHzなら空洞直径は20cm、10GHzならば2cm、50GHzなら4mmの直径になる。これでVバンドは鉛筆サイズの究極の小型ライナック加速器となる。これをペン・ライナックと呼ぶ事にする。このような高い周波数は決して荒唐無稽ではなく、電子陽電子の究極のレプトン加速器である将来のリニアーコライダーの一つであるCLIC(CERN Linear Collider)では10年以上もKaバンドの加速空洞の研究が続けられている。ハドロン加速器でのこれまで提案された周波数は京都大学の4ベインロッドRFQでせいぜい0.4GHzである。従来、さらに高い周波数が提案できなかった理由は小型化へのモチベーションが少なかったからであろう。必要は発明を生むがその必要性は正しい指導原理に裏打ちされたモチベーションが生む。テーブルトップ原子炉がエネルギー問題の解決の役にたつという発想があってこそ本発明のモチベーションが生まれた。
テーブルトップ加速器駆動炉の出力が小さい場合は数MeV/核子以下のイオン源の周波数をあげることで大強度かつ小型化を実現できるRFプラズマ型のニュートロンチューブ加速器を採用する。熊田の発明した永久磁石をもちいた超高磁場生成法(熊田雅之、住友特殊金属 特出願番号2001−86098、PTC出願番号PTC/JP02/02804)を使用することでサイクロトロンをあげ、その結果マイクロは周波数も最大限あげることが容易になる。数十keV/核子以上1MeV/核子前後のビームも重水素で標的も重水素のニュートロンチューブで核分裂物質の点火部つきの核分裂材料に中性子ビームを照射する。
1MeV/核子強以上から数MeV/核子の間は重水素ビームで重水素標的の重水素イオンを加速する重水素イオンRFQライナック(Radio Frequency Quadrupole,加速と収束を同時に行う線形加速器でロシア人カプチンスキーらの発明)とする。重水素イオンRFQライナックの場合はビームの品質と強度をあげるために岡村(M.Okamura,Proceedings of LINAC2006,Knoxville,Tennessee USA)の考案したイオン源はレーザーイオン源等を採用することとする。
本発明では原子炉の原料として低廉で広く豊富に(廃棄貯蔵物として)散在保存していて、かつ放射能の少ない燃料の一つとして劣化ウランを選ぶ。劣化ウランの推定埋蔵量(ktUキロトン)は:US700、ユーロデイフ(仏、伊、スペイン、ベルギー、イランの共同の濃縮事業)150、ウレンコ(独、蘭、英)15、NDA(英)20、ロシア180(天然)+365(再処理)、日本14、中国25で合計1500kton Uである(http://www.rist.or.jp/atomica/data/fig_pict.php?Pict_No=04−02−01−11−01)。エドワード テラーによれば2002年においては数千トンの石炭エネルギーに相当する劣化ウランの価格は100円弱だという。ちなみに従来の燃料資源の耐用年数は石油41年、天然ガス67年、石油164年、ウラン67年といわれている。これらと比べて劣化ウランで電力なら1000年は楽にもつと言われているから実用的にはほぼ永久にエネルギーには不自由しないといえる。トリウムの埋蔵量からの寿命と合計すれば、およそ2000年間以上は楽にエネルギーが充足するといえる。これは人類にとっていままで知られていない朗報といえる。
加速器は陽子ビーム、重水素ビームまたは重イオンビームなどの高いビーム強度と中性子生成の反応に応じた適切で臨機応変なエネルギーが好ましい。熊田の発明によるテーブルトップ加速器TTA(Table Top Accelerator)は数メートルで数百MeV/核子の加速効率を持つように設計されている。ちなみに2010年の時点で最高の電場勾配の最高記録でもILC(International Linear Collider)で開発中の電子加速器の超伝導空洞で50MeV/m以下である。
燃料が劣化ウラン238のときの核反応は、
ここでTWAの場合の最初の中性子は燃料体の入り口の濃縮ウランで生成されるが本発明のテーブルトップ加速器駆動炉ではTTAやRFQなどの線形加速器の標的から生成される中性子が劣化ウランU238と核反応をひきおこし、最終的にプルトニウムPu239を生成する。このプルトニウムPu239は二種の核分裂生成物と平均2.5の中性子を放出する。加速器から供給される中性子はこれが供給している間だけ核反応がおきているように帰還制御により調節する。
本発明では劣化ウランに変わる核燃料としてはトリウムも選択される。燃料が天然トリウムTh232の場合は加速器からの中性子の供給によりウランU233が生成されれば核分裂を起こす。すなわち、天然トリウムTh232にテーブルトップTTA加速器またはRFQ加速器からの1.2MeV以上のエネルギーの高速中性子ビームを照射しTh233を生成する。図1に示すようにTh233が中性子が燃料原子一個吸収されるごとに生じる核分裂中性子の指標の中性子増幅率ηは25meVのエネルギーの中性子にたいして2.25と大きい(ウランU235では2.08ではプルトニウムPu239 2.12)ので熱中性子炉の(中性子)増殖炉となる。上述のトリウム核反応サイクルは図2に示されている。
一般の原子炉では上述の劣化ウランU238やU235から生成されプルトニウムPu239等の核分裂では遅発中性子の割合が少なく燃料棒の制御などの帰還制御の時間的余裕が少ない。しかしテーブルトップ加速器駆動炉では中性子の供給のオン・オフ制御は蓄積された加速器技術を用いて短時間に正確に行えるので、安全性を著しく向上させることが可能となる。これがテーブルトップ加速器駆動炉の特徴である。
トリウムの材料としてはウランの3−5倍の埋蔵量があるといわれている。
その国別の内訳(キロトン)はインド360、オーストラリア300、ノルウエー170、アメリカ合衆国160、カナダ100、南アフリカ35、ブラジル16、その他95である。
粒子加速器の一番目の選択はニュートロンチューブで燃料部の前方のU235を点火し後方のトリウムを未臨界の状態で運転する構成とする。2番目の選択は重水素RFQまたは重水素TTAからの中性子で直接劣化ウランU238を未臨界で運転する構成とする。三番目の選択は重水素RFQまたは重水素TTAからの中性子で直接トリウム材料を未臨界で運転する構成とする。第四番目の選択はトリウムを劣化ウランU238の前方に配置しトリウムを重水素RFQまたは重水素TTAからの中性子で点火し後方の劣化ウランU238を未臨界状態で運転する。このように3種の粒子加速器と二種の核燃料の組み合わせはさまざまに選ぶ事が可能である。
原子炉の熱交換器は材料がSUS316(モリブデンを含む)等の一次側と二次側が対向の細管を使用している場合を考える。一次/二次間の熱の伝送量Qは
ここでK:熱通過率、F:電熱面積、Δt:高温流体入口における両流体の温度差:Δt:高温流体出口における両流体の温度差である。
熱伝送量Qをあげるためには熱通過率と温度差をあげる。つまり熱交換器の材料として高い熱伝導率のものを選び、管の内径を高圧に耐える条件で小さくする事が必要となる。SUS316は機械的強度は高いが熱伝導度は極めて悪い。溶融塩または鉛/ビスマスなどが考えられるが、特に冷却媒体の種類は問わない。
本発明では機械強度と熱伝導率の双方の要求を両立するナノサイズのカーボン粉に高圧を印加してモールドした材料を提供する。
発明を実現する具体的方法を図3で説明する。装置はテーブルトップ加速器1で陽子または重水素または各種イオンを加速して中性子標的2にイオンビーム照射を行い高速中性子を発生させる。たとえば未臨界溶融塩炉のなかでこの熱中性子ビームが炉4内の核分裂物質であるトリウムまたは劣化ウランを点火して核分裂としての熱エネルギーを放出する。ここでテーブルトップ加速器1はPバンドからVバンドニュートロンチューブ、RFQそして熊田の集団加速TTAのいずれかである。
放出したエネルギーは溶融塩から熱交換器を通して図には示していないタービンに導かれ中性子が加速器から供給している間は核分裂が持続してその間は電力を出力する。
トリウム以外の各種の各分裂物質の中性子増幅率η(E)の中性子エネルギー依存性を示す。(核分裂性核種が1個の中性子を吸収して核分裂により発生する統計的平均中性子の数)燃料のトリウム232は中性子の照射によりトリウム233に変換され、さらに中性子により、2ステップで増幅される。 トリウムサイクル テーブルトップ加速器駆動原子炉の概略
1...熊田らのテーブルトップ加速器(P−Vバンドニュートロンチューブ、P−VバンドRFQ、集団加速TTA)
2...中性子発生標的
3...燃料体(トリウムまたは劣化ウラン)
4...溶融塩炉

Claims (5)

  1. テーブルトップ加速器で発生する高速中性子で燃えにくい核分裂物質を点火・制御・維持するテーブルトップ原子炉。
  2. 請求項1に記載のテーブルトップ加速器とはP−Vバンドのマイクロ波領域のニュートロンチュブやRFQ加速器を称する。
  3. 請求項1に記載のテーブルトップ加速器とは集団加速の原理を用いたイオン加速器(ライナック)TTAを称する。
  4. 請求項1に記載のテーブルトップ原子炉において冷却体物質としてナノカーボン粉を高圧でモールドした熱伝導率のきわめて高い物質を使用する。
  5. 上記請求項1から請求項4までの装置にて温室ガスを発生せず、核分裂の暴走がなく、安価で資源が豊かで、マイクログリッドに適した小型グリーン発電を容易にする。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2014021285A1 (ja) * 2012-07-30 2014-02-06 株式会社Quan Japan 核燃料製造装置及び核燃料製造方法

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