JP2011177600A - 海水淡水化システム - Google Patents

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Abstract

【課題】システム全体としてのランニングコストを低減できる海水淡水化システムを提供することにある。
【解決手段】逆浸透膜の上流側に配置され、媒体と該媒体より温度の低い海水を熱交換させる熱交換器12と、熱交換器12で冷却された媒体を冷却源として用いる発電設備16と、熱交換器12で水温を上昇した海水を加圧して前記逆浸透膜で淡水化する海水淡水化処理設備14と、を備えたものである。又、蒸発法で海水を淡水化する蒸発法海水淡水化設備46と、逆浸透膜法で海水を淡水化する逆浸透膜法海水淡水化設備48と、発電にともなって排熱を発生する発電設備16と、排熱を蒸発法海水淡水化設備46と逆浸透膜法海水淡水化設備48とに分配する排熱分配設備50と、淡水の需要量と電力の需要量に基づいて排熱分配設備50の排熱分配量を求める分配量演算部42と、を備えたものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、海水から淡水を得るための逆浸透膜を用いた海水淡水化システムに関する。
近年、逆浸透膜を用いてろ過処理を行う海水淡水化システムが増加する傾向にある。逆浸透膜は、セルロースやポリアミド等の素材で造られており、この逆浸透膜に海水の浸透圧の二倍以上の圧力を加え、塩分は膜を透過させないで水を透過させることにより淡水を得ることができる。この圧力は50MPa以上であり、場合によっては80MPaにも達するため、高圧ポンプの動力コストが高くなっている。
高圧ポンプの動力コストを低減するため、例えば〔特許文献1〕には、廃棄物の焼却により発生した熱を熱源として海水を加温し、加温した海水を海水淡水化装置に供給して淡水を得る逆浸透膜を用いた海水淡水化装置が記載されている。
〔特許文献1〕では、水の粘性抵抗が温度により変化するため、供給海水の温度を1℃上昇させるごとに真水の量が3%増大するので、高回収率での運転や逆浸透膜モジュールの本数を減少することができ、新たな燃料を消費することなく経済的に高効率運転が可能となると記載されている。
〔特許文献2〕には、中空糸膜からなる膜前処理装置,第1のpH調整装置,脱炭酸ガス塔,第2のpH調整装置4,第1の逆浸透膜装置,第2の逆浸透膜装置,平板式熱交換器,混床式イオン交換装置からなる超純水製造装置が記載されている。そして、被処理水の水温を20℃以下に制御することが記載されている。しかし、〔特許文献2〕は、混床式イオン交換装置に通水される被処理水が対象であって、混床式イオン交換装置の利用を必須としている。
特開平9−085059号公報 特開2005−177564号公報
海水は一般に大気よりも温度が低く、冷熱として利用することができる。特に深層海水の場合には水温が低く、海水淡水化の原水として取水した場合には多量の冷熱が得られることになる。海水を加温するのに加え、冷熱を有効利用できれば、システム全体としてのランニングコストの低減が可能であるが、〔特許文献1〕及び〔特許文献2〕に記載の従来の技術は、海水を加温するものであり、冷熱を利用することは配慮されていない。
海水を加温することは逆浸透膜を用いた海水淡水化システムのみならず、蒸発法と逆浸透膜法を組み合わせたハイブリッド法でも有効である。ハイブリッド法であってかつ発電設備を有する場合、逆浸透膜法の設備と蒸発法の設備とで排熱の分配量を適正化することで、システム全体としてのランニングコストを低減できる。しかし、〔特許文献1〕及び〔特許文献2〕に記載の従来の技術では、この分配量を適正化することができないものであった。
本発明の目的は、システム全体としてのランニングコストを低減できる海水淡水化システムを提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明の海水淡水化システムは、逆浸透膜の上流側に配置され、媒体と該媒体より温度の低い海水を熱交換させる熱交換器と、該熱交換器で冷却された媒体を冷却源として用いる発電設備と、前記熱交換器で水温を上昇した海水を加圧して前記逆浸透膜で淡水化する海水淡水化処理設備と、を備えたものである。
又、蒸発法で海水を淡水化する蒸発法海水淡水化設備と、逆浸透膜法で海水を淡水化する逆浸透膜法海水淡水化設備と、発電にともなって排熱を発生する発電設備と、排熱を蒸発法海水淡水化設備と逆浸透膜法海水淡水化設備とに分配する排熱分配設備と、淡水の需要量と電力の需要量に基づいて排熱分配設備の排熱分配量を求める分配量演算部と、を備えたものである。
本発明によれば、海水を冷熱として有効利用でき、発電設備の効率が向上するため、ランニングコストを低減できる。また、逆浸透膜法と蒸発法とを備えたハイブリッド法において、発電設備の排熱の分配を適正化できるためランニングコストの低減が可能となる。
本発明の実施例1の海水淡水化システムの構成図である。 発電設備としてガスタービンを適用した海水淡水化システムの構成図である。 一般的なガスタービンの吸気温度と発電端出力の関係の一例を示す図である。 発電設備として太陽光発電パネルを適用した海水淡水化システムの構成図である。 本発明の実施例2の海水淡水化システムの構成図である。
本発明の各実施例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1の海水淡水化装置の構成をブロック線図で示している。
海水10は、熱交換器12に流入され、熱交換器12によって媒体18と熱交換される。媒体18は、海水10よりも高い温度に設定されており、海水10は熱交換によって媒体18から受熱して温められ、加温海水20として熱交換器12から排出される。一方、媒体18は熱交換によって冷却され、冷却された媒体18として熱交換器12から排出される。加温海水20は、海水淡水化設備14に供給されて淡水化される。
海水淡水化設備14が蒸発法の場合、流入する加温海水20を蒸発させて淡水22を得るため、熱交換器12による加温は運転コストの低減につながる。
海水淡水化設備14が膜ろ過法の場合、流入する加温海水20を図示しない逆浸透膜でろ過して淡水22を得る。逆浸透膜でろ過する際の加圧圧力は浸透圧によって変化する。
水温が高いと浸透圧が低下し、得られる淡水22の単位量当たりの運転コストが低下する。
このように、蒸発法および逆浸透膜法のいずれにおいても、淡水化する海水10を加温することは有効である。図1には示していないが、海水淡水化設備14の前段に前処理が備えられる場合には、熱交換器12は前処理の前段又は後段に設置される。前処理として精密ろ過膜あるいは限外ろ過膜を用いる場合は、熱交換器12は前処理の前段に設置されることが望ましい。精密ろ過膜や限外ろ過膜の加圧圧力は、水の粘性抵抗によって変化するが、水の粘性抵抗は水温が高いほど低く、より少ない運転コストで前処理が可能なためである。
熱交換器12で海水10によって冷却された媒体18は、発電設備16の冷却源として用いられる。この発電設備16としては、たとえばガスタービン,復水式蒸気タービン,太陽光発電などがあり、いずれも適用可能である。冷却源としての媒体18は、ガスタービンでは吸気する空気の冷却,蒸気タービンでは背圧タービンの復水器の冷却,太陽光発電では光発電セル34の冷却に用いられる。
図2に、発電設備としてガスタービンを用いた場合の構成の一例を示す。熱交換器12で海水10により冷却された空気24は、ガスタービン32の吸気側空気26として吸気され、燃焼に用いられる。
図3は、一般的なガスタービン32の吸気温度と発電端の出力の関係の一例を示す。図3に示すように、吸気温度が低下することによる発電端の出力向上の度合いは0.5%/℃である。このことから、熱交換器12によって冷たい海水10と熱交換して、ガスタービンの吸気温度を10℃冷却することができれば、発電端出力は5%向上することになる。なお、発電端の出力向上の度合いが0.5%/℃は一例であり、0.5%/℃でなくともよい。
このように、本実施例で説明した方式を適用することで、海水10は加温されて海水淡水化設備14の効率が向上し、ガスタービンの発電端出力も向上する。また、海水10と空気24の熱交換であるため、それほど高温とはならなく、温度条件は厳しくないため、配管の材料として高級なものでなくとも内面に樹脂をコーティングすることで安価な配管材料を使用することができ、イニシャルコストを低く抑制することができる。
一般的な復水式蒸気タービンでは、冷却水温度が低いほど出力が向上する。たとえば、深層海水を取り込む場合には、深層海水の水温は海水表層部よりも低いため、蒸気タービンの冷却用に用いると発電効率を向上することが可能である。ここで、媒体として蒸気タービンの出口側の蒸気を用い、熱交換器が蒸気タービンの復水器を兼ねるようになっている。一方、深層の海水10は加温されて海水淡水化設備14の効率が向上する。
図4に太陽光発電の光発電セル34を冷却する構造の一例を示す。この場合、媒体18として、気体や海水以外の液体を用いることができるが、海水10が内部を流通する金属管と光発電セル34とを接触させるように金属を設けて熱伝達を良好にするとさらによい。
光発電セル34は、温度上昇により、例えば0.4%/℃だけ発電効率が低下する。したがって、海水10の冷熱を利用して光発電セル34の温度を低下させることで発電効率を上昇することができる。たとえば、光発電セル34を10℃冷却することができれば、発電効率は4%向上することになる。
このように、本実施例の方式を適用することで、海水10は加温されて海水淡水化設備14の効率が向上し、太陽光発電の発電端出力も向上する。なお、温度上昇による発電効率の向上の度合いが0.4%/℃は一例であり、0.4%/℃でなくともよい。
図4に示す例では、熱交換部を円筒とした場合を示しているが、この断面は円筒に限定されず、角管あるいは扁平の角管であってもよい。このような構造の場合、配管の量は増えるが温度条件は厳しくないため、配管の材料として高級なものでなくとも内面に樹脂をコーティングすることで安価な配管材料を使用することができ、イニシャルコストを低く抑えることができる。
また、微生物は水温により増殖力が異なる。加温される前の海水10の温度では、その温度に適した微生物が多数生息しており、ほかの温度域に適した微生物は少ない。したがって熱交換器12で水温を上昇させると、これまで多数生息していた微生物にとっては増殖に不適な環境となり、海水淡水化設備14が膜モジュールを備える場合にはバイオファウリングの発生を抑制することも期待できる。
図5は、本発明の実施例2の海水淡水化システムの構成のブロック線図を示している。
発電設備16の排熱38は、排熱分配設備50によって蒸発法海水淡水化設備46と逆浸透膜法海水淡水化設備48へ分配される。排熱分配設備50は、弁類で構成されるのがもっとも簡便であるが、それ以外の機構を用いてもよい。排熱分配設備50で排熱38を分配する際には、予め与えられた淡水需要量情報40に基づいて分配量演算部42で演算された分配指示情報44を用いる。分配量演算部42では、与えられた淡水需要量情報40を満足する分配量を求めるが、その解が複数存在する場合には得られる利益が最大となるもの、ランニングコストが最も低くなるもの、環境負荷が最も低くなるもの、あるいは維持管理がもっとも容易なもの、などの要求に合った分配量を求める。このうち、得られる利益が最大となる分配量の演算手順を以下に示す。
蒸発法海水淡水化設備46では、造水のために熱(主に蒸気)と電力が必要となる。いま、造水される淡水22の量をQ1[m3]、与えられる熱量をH1[J]、与えられる電力量をE1[kWh]とすると、蒸発法海水淡水化設備46のモデル式は数1,数2で与えられる。
(数1)
1=f1(H1) (1)
(数2)
1=f2′(Q1)=f2(H1) (2)
ここで、数1は、与えられる熱量H1に対して造水される淡水22の量Q1を表す。数2の左辺の与えられる電力量E1は、蒸発法海水淡水化設備46で用いられるポンプの動力が多くを占めているため、造水される淡水22の量Q1の関数となる。数1で示すように、淡水22の量Q1は与えられる熱量H1の関数であるため、電力量E1の値は結局、与えられる熱量H1の関数で表される。
一方、逆浸透膜法海水淡水化設備48においては、造水において主に電力が必要となる。造水される淡水22の量をQ2[m3]、与えられる電力量をE2[kWh]とすると、逆浸透膜法海水淡水化設備48のモデル式は数3で与えられる。
(数3)
2=f3′(E2) (3)
逆浸透膜式の海水淡水化では、海水10の浸透圧の約2倍の圧力を逆浸透膜にかけて淡水22を取り出す。浸透圧は水温によって影響を受け、水温が高いほど低下する。このため、熱を加えて原水となる海水10の水温を高めることで同じ電力量でも多くの淡水22を得ることが可能となる。この場合、数3に熱の項を加えることができ、与えられる熱量をH2[J]として数4が成り立つ。
(数4)
2=f3(E2,H2) (4)
発電設備16では電力と排熱38が発生する。発電設備16に与えられる燃料30の量をF[ton]、発生する電力量をE0[kWh]、発生する排熱38の熱量をH0[J]とすると、これらの変数は数5,数6で表すことができる。
(数5)
0=f4(F) (5)
(数6)
0=f5(F) (6)
電力量と熱量については、数7,数8が成り立つ。なお、ここでは、無駄となる排熱38がないような理想的条件を想定し、海水淡水化システムから外部へ供給される供給電力36をE3[kWh]とする。
(数7)
0=E1+E2+E3 (7)
(数8)
0=H1+H2 (8)
これらの数式を用いて、得られる利益が最大となる分配量を以下演算する。
蒸発法海水淡水化設備46及び逆浸透膜法海水淡水化設備48では、その使用に応じて維持管理費が発生する。ここでは、簡単のため、これらの維持管理費を固定値のM1[¥]およびM2[¥]と仮定する。また、淡水22の販売単価をC1[¥/m3]、電力の販売単価をC2[¥/kWh]、燃料30の購入単価をC3[¥/ton]とする。
これらの数値を用いて、コストの評価関数Yは数9で与えられる。
(数9)
Y=C1・(Q1+Q2)+C2・E3−(M1+M2+C3・F) (9)
数9の右辺第一項は、造水した淡水22を売却して得られる費用、右辺第二項は発電した電力を売却して得られる費用、右辺第三項は運転管理コストで、維持管理と燃料30の購入にかかる費用を含む。この評価関数Yの値が大きくなるように運転条件が設定されることが望ましい。数9に数1〜数8を当てはめると、評価関数Yは蒸発法海水淡水化設備46に与えられる熱量H0と逆浸透膜式海水淡水化設備に与えられる電力E2、および購入する燃料30の量Fに関する式に変換できる。これを数10に示す。
(数10)
Y=C1・(f1(H1)+f3(E2,f5(F)−H1))+C2・(f4(F)−(f2(H1)
+E2))−(M1+M2+C3・F) (10) 数10で表されるYの値を最大とする(H1,E2)の組合せを求めることで、利益を最大化することが可能となる。ただし、この式は水需要や電力需要の条件を与えていないため、条件によっては淡水22を十分に得られない解が計算される可能性がある。
そこで、水需要量Qreq[m3]を条件として与えれば、所望の淡水量を得られる排熱38の分配量を求めることができる。すなわち、数11を
(数11)
req=Q1+Q2 (11)
条件として与えると、数1と数4から数12が導出される。
(数12)
req=f1(H1)+f3(E2,H2)=f1(H1)+f2(E2,(f5(F)−H1))
(12) 数12を解くことで、逆浸透膜法海水淡水化設備48へ与えられる電力量E2は蒸発法海水淡水化設備46へ与えられる熱量H1の式、数13で表される。
(数13)
2=h(H1) (13)

数13で求められたE2とH1の関係式を数10に与えることで、評価関数Yは数14に変換される。
(数14)
Y=C1・Qreq+C2・(f4(F)−(f3(H1)+h(H1)))−(M1+M2+C3・F)
(14) すなわち、評価関数は蒸発法海水淡水化設備46へ与えられる熱量H1の式となる。この式の値を最小となるH1の値を探索することで、設定された淡水量を得られ、その上で得られる利益を最大化できる排熱38の分配量を求めることができる。
上述した手順はランニングコストが最も低くなるようなケースについて記載したが、評価関数Yの数式は数7に限定されず、この式を変えることで、環境負荷を最も低くなるようなケースなどにも適用できる。また、現実的には排熱38のうち一部が無駄になる場合がある。その場合には、数8の右辺に排熱熱量H3を加えて数10と数12を微修正することで、同様の手順により利益を最大化できる排熱38の分配量を算出することができる。
なお、各実施例における「海水10」とは、海から取水した水を海水淡水化設備に通水するための前処理を経た海水も含めて意味している。
10 海水
12 熱交換器
14 海水淡水化設備
16 発電設備
18 媒体
20 加温海水
22 淡水
24 空気
26 吸気側空気
28 圧縮空気
30 燃料
32 ガスタービン
34 光発電セル
36 供給電力
38 排熱
40 淡水需要量情報
42 分配量演算部
44 分配指示情報
46 蒸発法海水淡水化設備
48 逆浸透膜法海水淡水化設備
50 排熱分配設備

Claims (5)

  1. 逆浸透膜の上流側に配置され、媒体と該媒体より温度の低い海水を熱交換させる熱交換器と、該熱交換器で冷却された媒体を冷却源として用いる発電設備と、前記熱交換器で水温を上昇した海水を加圧して前記逆浸透膜で淡水化する海水淡水化処理設備と、を備えた海水淡水化システム。
  2. 前記媒体として空気を用い、該媒体を冷却源として用いる発電設備としてガスタービンを備え、前記媒体がガスタービンの吸気として燃焼に用いられる請求項1に記載の海水淡水化システム。
  3. 前記媒体として空気,水あるいは金属を用い、前記媒体を冷却源として用いる発電設備として太陽光発電パネルを備える請求項1に記載の海水淡水化システム。
  4. 前記媒体を冷却源として用いる発電設備として蒸気タービンを備え、媒体として蒸気タービンの出口側の蒸気を用い、熱交換器が蒸気タービンの復水器を兼ねる請求項1に記載の海水淡水化システム。
  5. 蒸発法で海水を淡水化する蒸発法海水淡水化設備と、逆浸透膜法で海水を淡水化する逆浸透膜法海水淡水化設備と、発電にともなって排熱を発生する発電設備と、排熱を蒸発法海水淡水化設備と逆浸透膜法海水淡水化設備とに分配する排熱分配設備と、淡水の需要量と電力の需要量に基づいて排熱分配設備の排熱分配量を求める分配量演算部と、を備えた海水淡水化システム。
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