JP2011174447A - 超高層建物の発電システム - Google Patents

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Abstract

【課題】建物計画や景観の妨げとなることが無く、かつ効率的に風のエネルギーを活用して発電を行うことができる超高層建物の発電システムを提供する。
【解決手段】発生頻度の高い風向に面した超高層建物1の外壁面2であって、超高層建物1の高さの中間位置よりも上方位置に流入口3を形成し、屋根面5または外壁面2に隣接する外壁面9の風上側端部5a、9aに流出口6を形成するとともに、流入口3と流出口6とを外壁面2の内側に沿って配設されたダクト4によって接続し、かつダクト4内または流出口6に、ダクト内を流れる風のエネルギーによって発電する風力発電装置7、8を設置した。
【選択図】図1

Description

本発明は、超高層建物の高層部における強風を利用して、風の自然エネルギーを効果的に発電に利用するための発電システムに関するものである。
近年、環境保全の観点から二酸化炭素の削減を図るために、太陽光、風力、地熱あるいは潮力といった各種の自然エネルギーを利用して発電を行う施策が積極的に推進されている。
このような自然エネルギー利用の一種である風力発電は、一般的に、安定的な風向や風力を得る目的から、もっぱら周囲に建物等の人工の大型構造物が無い丘陵部、尾根、沿岸部等を立地場とし、ここに大型の風車を設置する方法が採られている。
一方、上記自然エネルギーの積極的な利用は、将来的には、建築分野においても強く要請される可能性が高い。
このため、例えば、都市型風力発電の一つとして、高層あるいは超高層の建物の近傍に風力発電装置を設置して、上記建物に起因するビル風を利用しようとする発案もなされているが、敷地計画や安全性、景観配慮の観点から実現が難しい。
また、都市部は、もともと風向や風速の乱れが大きいために、風力発電に関して最適環境とは言えない。
ところが、超高層建物では、周囲に高層あるいは超高層建物が少ない場合には、比較的上記乱れが少ない上空の強風を捉えることが可能である。
そこで、従来の建物を利用した風力発電システムとして、当該建物の屋根上に、風車式等の発電装置を設置するものが提案されている。
しかしながら、建物の屋上面上は、風が軒縁部において剥離することにより乱れが生じて風速が低下してしまうため、上記発電装置を、屋根面からかなり上方位置に設置するか、あるいは別途整流のための手段を講じなければならないという問題点がある。
しかも、屋根面上には、通常、設備機器類等が設置されているために、配置上の制約が大きいうえ、風を直接的に利用するために、風車等が露出することになり、景観を損ねてしまうという問題もある。
これに対して、下記特許文献1においては、建築構造物の屋根上に、ケーシング内に回転翼と発電機を格納した密閉型風力発電ユニットを設置し、上記建築構造物の四角隅部に、屋根から下階部まで延伸するとともに下端部に空気導入部を備えた導風路を配設し、この導風路の上端部を上記密閉型風力発電ユニットに接続することにより、当該導風路に流入した風を上記密閉型風力発電ユニットに送って発電をおこなう風力発電装置が開示されている。
特開2001−329941号公報
しなしながら、上記風力発電装置にあっては、上記導風路を、風の剥離が生じる建築構造物の角隅部に、しかも屋根から下階部に至るまで配置しているために、補強構造も含めて全体構成が大掛かりになり、よって特に超高層の建物には適用することが困難であるとともに、構造物から突出する上記導風路が景観上好ましくないという欠点がある。
また、空気導入部が、周囲の建物の影響を受けて風向や風速の乱れが生じやすい導風路の下端部に形成されているために、安定的かつ効率的な発電を行うことが難しいという問題点もある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建物計画や景観の妨げとなることが無く、かつ効率的に風のエネルギーを活用して発電を行うことができる超高層建物の発電システムを提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係る超高層建物の発電システムは、発生頻度の高い風向に面した超高層建物の外壁面であって、当該超高層建物の高さの中間位置よりも上方位置に流入口を形成し、屋根面または上記外壁面に隣接する外壁面の風上側端部に流出口を形成するとともに、上記流入口と流出口とを上記外壁面の内側に沿って配設されたダクトによって接続し、かつ上記ダクト内または上記流出口に、上記ダクト内を流れる風のエネルギーによって発電する風力発電装置を設置したことを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記流入口を上記外壁面の幅方向の中央部であって、かつ地上から上記超高層建物の高さの70〜80%の位置に形成したことを特徴とするものである。
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記流入口を、近隣環境も含めた気流シミュレーションまたは実験によって得られた上記超高層建物の上記外壁面において最大正圧が作用する箇所に形成したことを特徴とするものである。
なお、建築基準法において、超高層建物の高さに係る直接的な定義はないものの、同法第20条からの類推により、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において超高層建物とは、高さが60mを超える建物をいう。
一般に、超高層建物の高層部近傍においては、周辺建物が密集する低層部近傍に比べて風速が高く、かつ乱れの少ない風が吹いている。そして、上記超高層建物における風圧力分布は、風上に面した外壁面の停留点において最も高い正圧となる。また、風が上記外壁面にあたった場合に、風は、上記停留点を境に外壁面に沿って上下方向および水平方向に流れ、当該外壁面と屋根面との境の縁部および当該外壁面と隣接する外壁面との境の縁部で剥離を生じる。このため、上記屋根面の風上側の端部において、最も大きな負圧が生じ、次いで上記外壁面に隣接する外壁面の風上側の端部において大きな負圧が作用する。
したがって、請求項1〜3のいずれかに記載の発明においては、発生頻度の高い風向に面した超高層建物の外壁面であって、風圧力分布において高い正圧となる高さの中間位置よりも上方位置にダクトの流入口を形成し、大きな負圧となる屋根面または上記外壁面に隣接する外壁面の風上側の端部にダクトの流出口を形成しているために、建物に作用する風を効率的にダクトに導入して流出口から排出することができる。
また、流入口近傍では、局所的な流れの剥離等により、風速の空間分布が一様でないため、風力発電には適していない可能性が高い。そこで、風力発電装置を、当該ダクト内または流出口近傍に設けることにより、ダクト内で均質化された気流を安定して発電装置に作用させることができる。
この際に、上記ダクトを、当該超高層建物の内部である外壁面の内側に沿って配設しているために、景観上、支障となることがない。
このように、本発明によれば、建物計画や景観の妨げとなることが無く、かつ超高層建物の周囲の風の流れによって発生する圧力分布を考慮することにより、効率的に風のエネルギーを活用して発電を行うことができる。
ここで、本発明者等による100mを超える高さの超高層建物における風圧力分布の解析結果によれば、概ね地上から上記超高層建物の高さの70〜80%の位置であって、かつ風向に面した外壁面の幅方向の中央部に、最も正圧が高くなる停留点が位置することが判明している。
そこで、請求項2に記載の発明のように、上記流入口を上記外壁面の幅方向の中央部であって、かつ地上から上記超高層建物の高さの70〜80%の位置に形成すれば、概ね風の最良の流入位置に上記流入口を設けることができて好適である。
これに対して、上記超高層建物の周囲に、同様の超高層建物が林立している場合や、当該超高層建物の高さが、比較的低いような場合には、上述した停留点が必ずしも高さの70〜80%の位置、あるいは外壁面の幅方向の中央部に位置しない場合も想定される。
このような場合には、請求項3に記載の発明のように、近隣の建物や地形等の環境も含めた気流シミュレーションの解析や、模型を用いた実験によって上記超高層建物の上記外壁面における停留点(最大正圧)を求め、当該停留点に流入口を形成するようにすれば、確実に最も圧力の高い位置から最も圧力の低い位置へとダクト内に空気を通して、最も効率的な発電を行うことが可能になる。
本発明に係る超高層建物の発電システムの一実施形態の概略構成を示す斜視図である。 図1の要部の縦断面図である。 本発明の解析例として風速分布の解析に用いた建物モデルを示す斜視図である。 東京の観測記録に基づく風向発生頻度を示す図である。 風向きが外壁面に対して直角である場合の気流解析結果を示す流線図である。 図5の気流解析結果を示す平面視した風速分布である。 図5の気流解析結果を示す縦断面視した風速分布である。 図7の上部拡大図である。 風向きが外壁面に対して45°方向である場合の気流解析結果を示す流線図である。 図9の気流解析結果を示す平面視した風速分布である。 図9の気流解析結果を示す縦断面視した風速分布である。 図11の上部拡大図である。
図1および図2は、本発明の一実施形態を示すもので、図中符号1が超高層建物であり、本実施形態においては高さが100m以上であるものを想定している。
そして、この超高層建物1は、当該超高層建物1の建設地において発生頻度の最も高い風向に面した外壁面2に、風の流入口3が形成されている。
ここで、上記流入口3は、地上から超高層建物1の高さの70〜80%の位置であって、かつ外壁面2の幅方向の中央部に形成されている。そして、外壁面2の内側、すなわち超高層建物1の内部には、流入口3を下端開口として外壁面2に沿って上方に延在するダクト4が配設されている。
このダクト4は、外壁面2側が透明ガラス4aによって構成されており、上端部に、屋根面5であって、かつ外壁面2と隣接する風上側の端部5aに開口する流出口6が形成されている。そして、屋根面5上には、流出口6に臨む位置に風車7が配置された発電装置8(図1では略す。)が設置されている。
以上の構成からなる超高層建物の発電システムにおいては、ダクト4の流入口3を、最も高い正圧となる停留点またはその近傍となる風向に面した超高層建物1の外壁面2の幅方向の中央部であって、かつ地上から超高層建物1の高さの70〜80%の位置に設けている。そして、このダクト4を外壁面2の内側に沿って上方に配設して、その流出口6を最も高い負圧となる屋根面5の風上側の端部5aに形成している。
このため、上空の風向および風力が安定した強風を、効率的にダクト4に導入して流出口6から排出させつつ、当該風のエネルギーによって流出口6に設けた風車7を回転させて発電装置8によって電力として取り出すことができるとともに、ダクト4を超高層建物1における上層階のみに配設しているために、内部を流れる空気の圧力損失を小さくすることができ、よって高い発電効率を得ることができる。
この際に、ダクト4を、超高層建物1の内部である外壁面2の内側に沿って配設しているために、景観上、支障となることがない。しかも、このダクト4の外壁面2側を、透明ガラス4aによって構成しているために、内部居室への採光も得ることができる。
このように、建物計画や景観の妨げとなることが無く、かつ超高層建物1の周囲の風の流れによって発生する圧力分布を考慮することにより、効率的に風のエネルギーを活用して発電を行うことができる。
なお、上記実施形態においては、流入口3を、超高層建物1の建設地において発生頻度の最も高い風向に面した外壁面2にのみ設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、一般に風向は季節によって変化するために、例えば異なる季節において発生頻度が高くなる風向に面した他の外壁面9にも同様に流入口3およびダクト4等を設ければ年間を通じて、風のエネルギーによって発電することができて一層好適である。
また、上記実施形態においては、ダクト4の流出口6を、通常最も負圧が高くなる屋根面5の風上側端部5aに形成した場合について示したが、図1に示すように、同様にして風の剥離が生じることから、負圧が高くなる外壁面2に隣接する外壁面9の風上側の端部9aに上記流出口を形成してもよい。
さらに、発電装置8の風車7も、流出口6に臨む位置に限らず、当該ダクト4内に配置しても良い。
他方、流入口3についても、例えば超高層建物1の周囲に、同様の超高層建物が林立している場合等においては、近隣の建物や地形等の環境も含めた気流シミュレーションの解析等によって停留点(最大正圧)を求め、当該停留点に形成するようにすれば、確実に最も圧力の高い位置から最も圧力の低い位置へとダクト内に空気を通して、最も効率的な発電を行うことが可能になる。
図3〜図12は、本発明の効果を検証するために行った気流解析の結果等を示すものである。
先ず、解析にあたっては、図3に示すように、周辺に建物がない箇所に建築された高さ120mの超高層建物について、その地上から100mの位置に流入口が開口し、屋根面に流出口が開口する2m×2mのダクトを設け、高さ120mにおいて風速10m/sの風(地表面粗度区分III)が上記外壁面に向けて吹いた場合の気流シミュレーション解析を行った。
ここで、上記解析は、有限体積法に基づく定常流解析であり、改良κ−ε乱流モデルを用い、要素数83万によって、風向0°(外壁面に直角)および風向45°の2種類について行った。
図5〜図8は、風向きが0°(外壁面に対して直角)である場合の上記気流シミュレーション解析の結果を示すものであり、図9〜図12は、風向きが45°である場合の解析の結果を示すものである。
これらの結果から、ダクトの流入口を形成した外壁面に直角となる風向0°の風の場合のみならず、上記外壁面に対して45°の風向の風についても、ダクト内における気流上昇が確認された。
したがって、本発明に係る発電システムによれば、少なくとも流入口を形成した外壁面に対して、風向が±45°(計90°)の範囲である風に対して、効果的な発電を行い得ることが実証された。
また、図4は、建設地が東京である場合の風向発生頻度を示すものである。
同図によれば、発生頻度の高い風向としては、NNW、SSEを挙げることができる。したがって、上記解析結果を併せて考慮すれば、上記ダクトの流入口を、超高層建物の北側の外壁面および南側の外壁面の合計2箇所に形成すれば、年間を通じて、主たる風向の風に対してそのエネルギーを利用した発電を行うことができることが判る。
1 超高層建物
2、9 外壁面
3 流入口
4 ダクト
5 屋根面
5a 屋根面の風上側端部
6 流出口
7 風車
8 発電装置
9a 外側面の風上側端部

Claims (3)

  1. 発生頻度の高い風向に面した超高層建物の外壁面であって、当該超高層建物の高さの中間位置よりも上方位置に流入口を形成し、屋根面または上記外壁面に隣接する外壁面の風上側端部に流出口を形成するとともに、上記流入口と流出口とを上記外壁面の内側に沿って配設されたダクトによって接続し、かつ上記ダクト内または上記流出口に、上記ダクト内を流れる風のエネルギーによって発電する風力発電装置を設置したことを特徴とする超高層建物の発電システム。
  2. 上記流入口を、上記外壁面の幅方向の中央部であって、かつ地上から上記超高層建物の高さの70〜80%の位置に形成したことを特徴とする請求項1に記載の超高層建物の発電システム。
  3. 上記流入口を、近隣環境も含めた気流シミュレーションまたは実験によって得られた上記超高層建物の上記外壁面において最大正圧が作用する箇所に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の超高層建物の発電システム。
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