JP2011141128A - 速度計測装置および方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ウェブの速度を正確に計測する。
【解決手段】速度計測装置は、測定対象のウェブ11にレーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、ウェブ11からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動するレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれる干渉波形の数を数える信号抽出部7と、信号抽出部7の計数結果に基づいてウェブ11の速度を算出する演算部8とを備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブの速度を計測する速度計測装置および方法に関するものである。
紙、フィルム、セロファン、金属箔、ゴムなどのロール状に巻き取った物体(以下、ウェブと呼ぶ)を送出部から繰り出して、ウェブに対して所定の処理を行い、処理後のウェブを受取部によって巻き取るウェブ搬送装置では、ウェブの移動速度を一定に制御し、巻き出し・巻き取りしたウェブの長さを正確に計測する必要がある。
従来、ウェブの速度を計測する方法としては、特許文献1に開示された方法がある。図21は特許文献1に開示された従来の速度計測装置の構成を示すブロック図である。この速度計測装置では、レーザ/ダイオードユニット200から放射したレーザ光をレンズ201を介して測定ビーム202として例えば用紙シートなどのウェブ205の上に収斂する。測定ビーム202の経路にウェブ205がある場合、このウェブ205は測定ビーム202を反射し、これを散乱させる。この散乱する測定ビーム202の放射の1部分は元の経路をたどっていきレンズ201によってレーザ/ダイオードユニット200の放射表面上に収斂され再びレーザの光共振器に侵入する。この結果、レーザ放射の強度が変化する。このレーザ放射の強度の変化は、放射の変化を電気信号に変換するレーザ/ダイオードユニット200内のフォトダイオード及びこの電気信号を処理する電子回路203によって検出される。
電子回路203はコントローラ204の1部を形成する。コントローラ204は、ローラー206の回転を制御し、したがってウェブ205の移動をも制御することになる。ウェブ205が動く場合、ウェブ205によって反射された戻り光はドップラー偏移を被る。これはこの戻り光の周波数が変化すること、あるいは周波数偏移が起きることを意味する。この周波数偏移は、ウェブ205の動く速度によって左右される。レーザの光共振器に再侵入する戻り光は、光共振器において生成されたレーザ光と干渉する。この干渉は光共振器の中で自己結合効果が起きることを意味する。この干渉によってレーザ放射の強度は定期的に増減される。
ここで、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流としてレーザ/ダイオードユニット200のレーザに供給すると、レーザは、発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。第1の発振期間においてフォトダイオードから出力される電気信号に含まれるパルスの数と第2の発振期間においてフォトダイオードから出力される電気信号に含まれるパルスの数との差は、ウェブ205の速度に比例する。したがって、電子回路203は、このパルスの数の差からウェブ205の速度を求めることができる。
ただし、特許文献1によれば、レーザとウェブ205との間の光学経路の長さが比較的短く、レーザの発振波長変調の周波数及び振幅が比較的小さく、これに対して検出するウェブ205の移動が比較的速い場合などある一定の状況の中では、ウェブ205の速度は上記パルスの数の差に比例しなくなるとしている。この場合には、第1の発振期間においてフォトダイオードから出力される電気信号に含まれるパルスの数と第2の発振期間においてフォトダイオードから出力される電気信号に含まれるパルスの数の平均値を求めて、この平均値から一定の定数を引くことによって、ウェブ205の速度を確定する。
特許第4180369号公報
以上のように、特許文献1に開示された従来の速度計測装置では、ウェブの速度やレーザとウェブとの距離がおおよそ分かっていることを前提にしており、ウェブの状態に応じて速度の算出方法を使い分けるようにしている。しかしながら、特許文献1に開示された従来の速度計測装置では、ウェブの速度やウェブとの距離が分かっていない場合、ウェブの状態に応じて速度の算出方法を使い分けることができず、ウェブの速度を正しく算出することができないという問題点があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、自己結合型の速度計測装置において、ウェブの速度やレーザとウェブとの距離が分かっていない場合であっても対応することができ、ウェブの速度を正確に計測することができる速度計測装置および方法を提供することを目的とする。
本発明の速度計測装置は、搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブにレーザ光を放射する半導体レーザと、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記ウェブからの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手段と、この信号抽出手段の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与手段と、この符号付与手段によって符号が与えられた符号付き計数結果を用いて前記干渉波形の数の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、この距離比例個数算出手段が算出した距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手段とを備え、前記符号付与手段は、前記信号抽出手段の1回前の計数結果とこの計数結果よりも過去の計数結果を用いて算出された前記距離比例個数の2倍数との大小関係、前記信号抽出手段の計数結果の増減方向の一致不一致、あるいは計数結果の平均値の変化に応じて、前記信号抽出手段の最新の計数結果に正負の符号を付与することを特徴とするものである。
また、本発明の速度計測装置の1構成例において、前記信号抽出手段は、前記検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える干渉波形計数手段と、この干渉波形計数手段が干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する干渉波形周期測定手段と、この干渉波形周期測定手段の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する干渉波形周期度数分布作成手段と、前記干渉波形の周期の度数分布から、階級値と度数との積が最大となる階級値を前記干渉波形の周期の分布の代表値として求める代表値算出手段と、前記干渉波形の周期の度数分布から、前記代表値の0.5倍未満である階級の度数の総和Nsと、前記代表値の(n+0.5)倍以上(n+1.5)倍未満(nは1以上の自然数)である階級の度数の総和Nwnとを求め、これらの度数NsとNwnに基づいて前記干渉波形計数手段の計数結果を補正し、補正後の計数結果を出力する補正値算出手段とからなることを特徴とするものである。
また、本発明の速度計測装置の1構成例において、前記補正値算出手段は、前記干渉波形計数手段の計数結果をNa、前記代表値をT0、前記干渉波形の周期がとり得る最大値をTmaxとしたとき、補正後の計数結果Na’を、
Figure 2011141128
により求めることを特徴とするものである。
また、本発明の速度計測方法は、搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブにレーザ光を放射する半導体レーザを、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように動作させる発振手順と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記ウェブからの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手順と、この信号抽出手順の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与手順と、この符号付与手順によって符号が与えられた符号付き計数結果を用いて前記干渉波形の数の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手順と、この距離比例個数算出手順で算出した距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手順とを備え、前記符号付与手順は、前記信号抽出手順の1回前の計数結果とこの計数結果よりも過去の計数結果を用いて算出された前記距離比例個数の2倍数との大小関係、前記信号抽出手順の計数結果の増減方向の一致不一致、あるいは計数結果の平均値の変化に応じて、前記信号抽出手順の最新の計数結果に正負の符号を付与することを特徴とするものである。
本発明によれば、信号抽出手段の1回前の計数結果とこの計数結果よりも過去の計数結果を用いて算出された距離比例個数の2倍数との大小関係、信号抽出手段の計数結果の増減方向の一致不一致、あるいは計数結果の平均値の変化に応じて、信号抽出手段の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与手段を設けることにより、ウェブが変位状態であるか微小変位状態であるかを判定することができ、ウェブが変位状態である場合には、正側に折り返されている計数結果に負の符号を付与する補正を行うことができるので、距離比例個数を正しく算出することができ、結果としてウェブの速度を正しく算出することができる。したがって、本発明では、ウェブの速度や半導体レーザとウェブとの距離が分かっていない場合であっても対応することができる。
また、本発明では、計数期間中の干渉波形の周期を測定し、この測定結果から計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成し、この度数分布から、階級値と度数との積が最大となる階級値を干渉波形の周期の代表値とし、代表値の0.5倍未満である階級の度数の総和Nsと、代表値の(n+0.5)倍以上(n+1.5)倍未満である階級の度数の総和Nwnとを求め、これらの度数NsとNwnに基づいて干渉波形計数手段の計数結果を補正することにより、信号抽出手段に入力される信号に干渉波形よりも高周波のノイズが連続して発生している場合であっても、干渉波形の計数誤差を高精度に補正することができるので、ウェブの速度の計測精度を向上させることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置を適用するウェブ搬送装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。 本発明の第1の実施の形態における電流−電圧変換増幅部の出力電圧波形およびフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。 モードホップパルスについて説明するための図である。 半導体レーザの発振波長とフォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。 本発明の第1の実施の形態における演算部の構成の1例を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態における演算部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における符号付与部の動作を説明するための図である。 本発明の第1の実施の形態における符号付与部の動作を説明するための図である。 本発明の第1の実施の形態における距離比例個数算出部の動作を説明するための図である。 本発明の第2の実施の形態における演算部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態における演算部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第4の実施の形態における信号抽出部の構成の1例を示すブロック図である。 本発明の第4の実施の形態における計数結果補正部の構成の1例を示すブロック図である。 本発明の第4の実施の形態における信号抽出部の動作を説明するための図である。 モードホップパルスの周期の度数分布の1例を示す図である。 本発明の第4の実施の形態におけるカウンタの計数結果の補正原理を説明するための図である。 本発明の第5の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図である。 速度計測装置のセンサモジュールの別の配置例を示す図である。 従来の速度計測装置の構成を示すブロック図である。
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図である。図1の速度計測装置は、測定対象のウェブ11にレーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、ウェブ11からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動する発振波長変調手段となるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれる自己結合信号であるモードホップパルス(以下、MHPとする)の数を数える信号抽出部7と、信号抽出部7の計数結果に基づいてウェブ11の速度を算出する演算部8と、演算部8の計測結果を表示する表示部9とを有する。
半導体レーザ1とフォトダイオード2とレンズ3とは、センサモジュール10を構成している。また、フォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とは、検出手段を構成している。
図2は本実施の形態の速度計測装置を適用するウェブ搬送装置の構成を示すブロック図である。ウェブ搬送装置は、送出側ガイド軸100と、受取側ガイド軸101と、送出側ガイド軸100に装着される送出側ロール102と、受取側ガイド軸101に装着される受取側ロール103と、送出側ガイド軸100を駆動し、送出側ロール102を回転させる送出側モータ駆動部(不図示)と、受取側ガイド軸101を駆動し、受取側ロール103を回転させる受取側モータ駆動部(不図示)と、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する制御部104とを有する。
送出側モータ駆動部が送出側ロール102を回転させると、送出側ロール102に巻かれたウェブ11が繰り出される。受取側では、受取側モータ駆動部が受取側ロール103を回転させることにより、受取側ロール103がウェブ11を巻き取る。
制御部104は、ウェブ11の速度が所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する。
半導体レーザ1とフォトダイオード2とレンズ3とからなるセンサモジュール10は、図2に示すように送出側ガイド軸100と受取側ガイド軸101間のウェブ11上に配置され、ウェブ11に対してレーザ光を斜方照射する。レーザ光を斜方照射するのは、ウェブ11の速度を計測するためである。
図1のレーザドライバ4と電流−電圧変換増幅部5とフィルタ部6と信号抽出部7と演算部8と表示部9とは、制御部104の内部に設けられる。
次に、本実施の形態の速度計測装置の動作を詳細に説明する。以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
レーザドライバ4は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図3は、半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図である。図3において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Ttは三角波の周期である。本実施の形態では、発振波長の最大値λbおよび発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、ウェブ11に入射する。ウェブ11で反射された光の一部は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
フィルタ部6は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図4(A)は電流−電圧変換増幅部5の出力電圧波形を模式的に示す図、図4(B)はフィルタ部6の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2の出力に相当する図4(A)の波形(変調波)から、図3の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、図4(B)のMHP波形(干渉波形)を抽出する過程を表している。
次に、信号抽出部7は、フィルタ部6の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える。信号抽出部7は、論理ゲートからなるカウンタを利用するものでもよいし、FFT(Fast Fourier Transform)を利用してMHPの周波数(すなわち単位時間あたりのMHPの数)を計測するものでもよい。
ここで、自己結合信号であるMHPについて説明する。図5に示すように、ミラー層1013からウェブ11までの距離をL、レーザの発振波長をλとすると、以下の共振条件を満足するとき、ウェブ11からの戻り光と半導体レーザ1の光共振器内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(1)
式(1)において、qは整数である。この現象は、ウェブ11からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザ1の共振器内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。なお、図5において、1019はミラーとなる誘電体多層膜である。
図6は、半導体レーザ1の発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード2の出力波形との関係を示す図である。式(1)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と光共振器内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザ1の発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力をフォトダイオード2で検出すると、図6に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つがMHPである。前記のとおり、ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変化する。さらに、ウェブ11が速度を持つ場合、ドップラー効果成分によって速度に比例したMHPの数だけ増減する。
次に、演算部8は、信号抽出部7が数えたMHPの数に基づいてウェブ11の速度を算出する。図7は演算部8の構成の1例を示すブロック図である。演算部8は、信号抽出部7の計数結果等を記憶する記憶部80と、半導体レーザ1とウェブ11との平均距離に比例したMHPの数(以下、距離比例個数とする)NLを求める距離比例個数算出部81と、ウェブ11の速度を算出する速度算出部82と、信号抽出部7の計数結果の増減方向の一致不一致に応じて信号抽出部7の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与部83とから構成される。
図8は演算部8の動作を示すフローチャートである。信号抽出部7の計数結果は、演算部8の記憶部80に格納される。
演算部8の符号付与部83は、信号抽出部7の第1の発振期間P1の計数結果と第2の発振期間P2の計数結果の増減方向の一致不一致を判定し(図8ステップS100)、この判定の結果に応じて信号抽出部7の最新の計数結果に正負の符号を付与する(図8ステップS101,S102)。
図9(A)、図9(B)、図10(A)、図10(B)は符号付与部83の動作を説明するための図であり、図9(A)、図10(B)は半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図、図9(B)、図10(B)は信号抽出部7の計数結果の時間変化を示す図である。図9(B)、図10(B)において、Nuは第1の発振期間P1の計数結果、Ndは第2の発振期間P2の計数結果、NLは距離比例個数である。図3から明らかなように、第1の発振期間P1と第2の発振期間P2は交互に訪れるので、計数結果Nuと計数結果Ndも交互に現れる。なお、図9(B)、図10(B)の例では、計数結果Nuが、半導体レーザ1の照射面から、光源である半導体レーザ1との間にある決まった波の数を含む波面の位置の変位方向がウェブ11の速度方向と対向しているときの計数結果Nαである場合を示している。
ウェブ11に張力が掛かっていると、ウェブ11は張力に応じた固有の振動周波数で振動している。ウェブ11の振動に伴う半導体レーザ1とウェブ11との距離変化率が半導体レーザ1の発振波長変化率よりも小さく、ウェブ11が鉛直方向に沿って単振動している場合、第1の発振期間P1の計数結果Nuの時間変化と第2の発振期間P2の計数結果Ndの時間変化は、図9(B)に示すように互いの位相差が180度の正弦波形となる。特開2006−313080号公報では、このときのウェブ11の状態を微小変位状態としている。
一方、半導体レーザ1とウェブ11との距離変化率が半導体レーザ1の発振波長変化率よりも大きい場合、計数結果Ndの時間変化は、図10(B)の負側の波形250が正側の波形251に折り返された形になる。特開2006−313080号公報では、この計数結果の折り返しが生じている部分におけるウェブ11の状態を変位状態としている。一方、計数結果の折り返しが生じていない部分におけるウェブ11の状態は、上記の微小変位状態である。なお、特許文献1では、変位状態を、レーザとウェブとの間の光学経路の長さが比較的短く、発振波長変調の周波数及び振幅が比較的小さく、検出するウェブの移動が比較的速い場合と表現している。
計数結果の折り返しが生じている部分において、計数結果をそのまま用いて後述する距離比例個数NLを算出すると、距離比例個数NLが本来の値と異なる値になる。
つまり、距離比例個数NLを正しく求めるためには、ウェブ11が変位状態であるか微小変位状態であるかを判定し、ウェブ11が変位状態である場合には、正側に折り返されている計数結果に負の符号を付与する補正を行う必要がある。
そこで、符号付与部83は、図9(B)に示すように計数結果Nuの時間変化に対して計数結果Ndの時間変化が逆方向の場合(図8ステップS100においてNO)、ウェブ11が微小変位状態であると判定し、信号抽出部7の現時刻tの計数結果N(t)に正の符号を付与した符号付き計数結果N’(t)を出力する(図8ステップS101)。また、符号付与部83は、図10(B)に示すように計数結果Nuの時間変化に対して計数結果Ndの時間変化が同方向の場合(図8ステップS100においてYES)、ウェブ11が変位状態であると判定し、信号抽出部7の現時刻tの計数結果N(t)に負の符号を付与した符号付き計数結果N’(t)を出力する(図8ステップS102)。
現時刻tの計数結果がNuであれば、計数結果Nuの増減は、現時刻tの計数結果Nu(t)と2回前の計数結果Nu(t−2)との差Nu(t)−Nu(t−2)の符号で判別することができ、計数結果Ndの増減は、1回前の計数結果Nd(t−1)と3回前の計数結果Nd(t−3)との差Nd(t−1)−Nd(t−3)の符号で判別することができる。一方、現時刻tの計数結果がNdであれば、計数結果Nuの増減は、1回前の計数結果Nu(t−1)と3回前の計数結果Nu(t−3)との差Nu(t−1)−Nu(t−3)の符号で判別することができ、計数結果Ndの増減は、現時刻tの計数結果Nd(t)と2回前の計数結果Nd(t−2)との差Nd(t)−Nd(t−2)の符号で判別することができる。
このような増減の判別の結果、計数結果Nu,Ndが共に増加している場合あるいは共に減少している場合は、計数結果Nuの時間変化に対して計数結果Ndの時間変化が同方向であり、ウェブ11が変位状態であると判断することができる。また、計数結果Nu,Ndのどちらか一方が増加していて他方が減少している場合は、計数結果Nuの時間変化に対して計数結果Ndの時間変化が逆方向であり、ウェブ11が微小変位状態であると判断することができる。
符号付き計数結果N’(t)は、記憶部80に格納される。符号付与部83は、以上のような符号付与処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
次に、演算部8の距離比例個数算出部81は、符号付与部83によって符号が与えられた符号付き計数結果から距離比例個数NLを求める(図8ステップS103)。図11(A)、図11(B)は距離比例個数算出部81の動作を説明するための図であり、図11(A)は半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図、図11(B)は信号抽出部7の計数結果の時間変化を示す図である。
図11(A)から明らかなように、第1の発振期間P1と第2の発振期間P2は交互に訪れるので、計数結果Nuと計数結果Ndも交互に現れる。計数結果Nu,Ndは、距離比例個数NLとウェブ11の変位に比例したMHPの数(以下、変位比例個数とする)NVとの和もしくは差である。距離比例個数NLは、計数結果NuとNdの平均値に相当する。また、計数結果NuまたはNdと距離比例個数NLとの差が、変位比例個数NVに相当する。
距離比例個数算出部81は、次式に示すように現時刻t以前の符号付き計数結果を用いて、距離比例個数NLを算出する。
NL=(Nu’+Nd’)/2 ・・・(2)
式(2)において、Nu’は計数結果Nuに符号付与処理を施した後の符号付き計数結果、Nd’は計数結果Ndに符号付与処理を施した後の符号付き計数結果である。
なお、速度の計測開始初期時においては、信号抽出部7の計数結果Nu,Ndの増減方向の一致不一致を判定するのに十分な個数の計数結果Nu,Ndが得られていない。このため、符号付与部83は、信号抽出部7の計数結果Nu,Ndの増減方向の一致不一致を判定することはできず、符号付き計数結果を出力することはできない。したがって、計測開始初期時においては、距離比例個数算出部81は、式(2)の代わりに計数結果Nu,Ndを用いる次式により距離比例個数NLを算出する。
NL=(Nu+Nd)/2 ・・・(3)
つまり、距離比例個数算出部81は、計測開始初期時に式(3)を用いて距離比例個数NLを算出し、符号付与部83によって距離比例個数NLの算出に必要な符号付き計数結果が算出されるようになった後は式(2)を用いて距離比例個数NLを算出することになる。
距離比例個数算出部81が算出した距離比例個数NLは、記憶部80に格納される。距離比例個数算出部81は、以上のような距離比例個数NLの算出処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。なお、本実施の形態では、2回分の計数結果を用いて距離比例個数NLを算出しているが、2m(mは正の整数)回の計数結果を用いて距離比例個数NLを算出するようにしてもよい。
次に、演算部8の速度算出部82は、距離比例個数NLからウェブ11の速度Vを算出する(図8ステップS104)。信号抽出部7の計数結果N(すなわち、NuまたはNd)と距離比例個数NLとの差がウェブ11の速度Vに比例するため、半導体レーザ1の発振波長変調の搬送波(三角波)の半周期あたりのウェブ11の進行方向の変位Dは次式で算出できる。
D=λ/2×|N−NL|×cosθ ・・・(4)
式(4)において、λは半導体レーザ1の発振平均波長、θは図2に示すように半導体レーザ1からのレーザ光の光軸がウェブ11に対してなす角度である。搬送波の周波数をfとすると、式(4)よりウェブ11の速度Vは次式で算出できる。
V=λ×f×|N−NL|×cosθ ・・・(5)
速度算出部82は、式(5)による速度Vの算出処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。表示部9は、速度算出部82が算出したウェブ11の速度Vを表示する。
ウェブ搬送装置の制御部104は、速度算出部82の算出結果に基づいて、ウェブ11の速度Vが所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する。なお、ウェブ11の張力を求める手段は本発明の構成要件でないため記載していないが、周知の技術によりウェブ11の張力を計測し、ウェブ11の張力が所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御してもよいことは言うまでもない。
以上のように、本実施の形態では、符号付与部83を設けることにより、ウェブ11が変位状態であるか微小変位状態であるかを判定することができ、ウェブ11が変位状態である場合には、正側に折り返されている計数結果に負の符号を付与する補正を行うことができるので、距離比例個数を正しく算出することができ、結果としてウェブ11の速度を正しく算出することができる。したがって、本実施の形態では、ウェブ11の速度や半導体レーザ1とウェブ11との距離が分かっていない場合であっても対応することができ、ウェブ11の速度を正確に算出することができる。、
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、信号抽出部7の計数結果の増減方向の一致不一致に応じて信号抽出部7の最新の計数結果に正負の符号を付与しているが、信号抽出部7の1回前の計数結果とこの計数結果よりも過去の計数結果を用いて算出された距離比例個数NLの2倍数との大小関係に応じて信号抽出部7の最新の計数結果に正負の符号を付与するようにしてもよい。本実施の形態においても、速度計測装置の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1、図7の符号を用いて説明する。
図12は本実施の形態の演算部8の動作を示すフローチャートであり、第1の実施の形態と同様の処理には図8と同一の符号を付してある。
本実施の形態の符号付与部83は、現時刻tの1回前に計測された計数結果N(t−1)とこの計数結果N(t−1)よりも過去の計数結果を用いて算出された距離比例個数NLの2倍数2NLとの大小関係を判定し(図12ステップS105)、この大小関係に応じて信号抽出部7の現時刻tの計数結果N(t)に正負の符号を付与する(図12ステップS106,S107)。
現時刻tの計数結果N(t)が第1の発振期間P1の計数結果Nuであれば、1回前の計数結果N(t−1)は第2の発振期間P2の計数結果Ndである。反対に、現時刻tの計数結果N(t)が第2の発振期間P2の計数結果Ndであれば、1回前の計数結果N(t−1)は第1の発振期間P1の計数結果Nuである。符号付与部83は、具体的には以下の式を実行する。
If N(t−1)≧2NL Then N’(t)→−N(t) ・・・(6)
If N(t−1)<2NL Then N’(t)→+N(t) ・・・(7)
式(6)、式(7)は、ウェブ11が変位状態であるか微小変位状態であるかを判定するための式である。計数結果の折り返しが生じている変位状態では、N(t−1)≧2NLが成立する。したがって、符号付与部83は、式(6)に示すようにN(t−1)≧2NLが成立する場合(図12ステップS105においてYES)、信号抽出部7の現時刻tの計数結果N(t)に負の符号を付与した符号付き計数結果N’(t)を出力する(図12ステップS107)。
一方、計数結果の折り返しが生じていない微小変位状態では、N(t−1)<2NLが成立する。したがって、符号付与部83は、式(7)に示すようにN(t−1)<2NLが成立する場合(図12ステップS105においてNO)、信号抽出部7の現時刻tの計数結果N(t)に正の符号を付与した符号付き計数結果N’(t)を出力する(図12ステップS106)。
符号付き計数結果N’(t)は、記憶部80に格納される。符号付与部83は、以上のような符号付与処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
なお、式(6)の成立条件をN(t−1)>2NLにして、式(7)の成立条件をN(t−1)≦2NLにしてもよい。
第1の実施の形態と同様に、速度の計測開始初期時においては、計数結果N(t−1)とこの計数結果N(t−1)よりも過去の計数結果を用いて算出された距離比例個数NLの2倍数2NLとが得られていないため、符号付与部83は、大小関係を判定することはできず、符号付き計数結果を出力することはできない。したがって、距離比例個数算出部81は、計測開始初期時に式(3)を用いて距離比例個数NLを算出し、符号付与部83によって距離比例個数NLの算出に必要な符号付き計数結果が算出されるようになった後は式(2)を用いて距離比例個数NLを算出することになる。
速度計測装置のその他の構成は第1の実施の形態と同じである。こうして、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図10(B)で説明したような計数結果の折り返しが生じると、計数結果Nu,Ndの平均値に変化が生じる。そこで、符号付与部83は、計数結果Nu,Ndの平均値の変化に応じて信号抽出部7の最新の計数結果に正負の符号を付与するようにしてもよい。本実施の形態においても、速度計測装置の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1、図7の符号を用いて説明する。
図13は本実施の形態の演算部8の動作を示すフローチャートであり、第1の実施の形態と同様の処理には図8と同一の符号を付してある。
本実施の形態の符号付与部83は、現時刻t以前に求めた計数結果Nuの最新の平均値がこの値よりも前に求めた計数結果Nuの平均値に対して所定のしきい値以内であり、かつ現時刻t以前に求めた計数結果Ndの最新の平均値がこの値よりも前に求めた計数結果Nuの平均値に対して所定のしきい値以内である場合、計数結果Nu,Ndのそれぞれの平均値に変化無しと判断して(図13ステップS108においてNO)、現時刻tの計数結果N(t)に正の符号を付与した符号付き計数結果N’(t)を出力する(図13ステップS109)。
また、符号付与部83は、現時刻t以前に求めた計数結果Nuの最新の平均値がこの値よりも前に求めた計数結果Nuの平均値に対して所定のしきい値を超えて変化したり、現時刻t以前に求めた計数結果Ndの最新の平均値がこの値よりも前に求めた計数結果Nuの平均値に対して所定のしきい値を超えて変化したりした場合(図13ステップS108においてYES)、現時刻tの計数結果N(t)に負の符号を付与した符号付き計数結果N’(t)を出力する(図13ステップS110)。
符号付き計数結果N’(t)は、記憶部80に格納される。符号付与部83は、以上のような符号付与処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
第1の実施の形態と同様に、速度の計測開始初期時においては、計数結果Nu,Ndの平均値の変化を検出することができないため、符号付与部83は、符号付き計数結果を出力することはできない。したがって、距離比例個数算出部81は、計測開始初期時に式(3)を用いて距離比例個数NLを算出し、符号付与部83によって距離比例個数NLの算出に必要な符号付き計数結果が算出されるようになった後は式(2)を用いて距離比例個数NLを算出することになる。
速度計測装置のその他の構成は第1の実施の形態と同じである。こうして、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、信号抽出部の別の構成例を示すものである。図14は本実施の形態の信号抽出部7aの構成の1例を示すブロック図である。信号抽出部7aは、2値化部71と、論理積演算部(AND)72と、カウンタ73と、計数結果補正部74と、記憶部75とから構成される。2値化部71とAND72とカウンタ73とは、干渉波形計数手段を構成している。
図15は計数結果補正部74の構成の1例を示すブロック図である。計数結果補正部74は、周期測定部740と、度数分布作成部741と、代表値算出部742と、補正値算出部743とから構成される。
図16(A)〜図16(F)は信号抽出部7aの動作を説明するための図であり、図16(A)はフィルタ部6の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、図16(B)は図16(A)に対応する2値化部71の出力を示す図、図16(C)は信号抽出部7aに入力されるゲート信号GSを示す図、図16(D)は図16(B)に対応するカウンタ73の計数結果を示す図、図16(E)は信号抽出部7aに入力されるクロック信号CLKを示す図、図16(F)は図16(B)に対応する周期測定部740の測定結果を示す図である。
まず、信号抽出部7aの2値化部71は、図16(A)に示すフィルタ部6の出力電圧がハイレベル(H)かローレベル(L)かを判定して、図16(B)のような判定結果を出力する。このとき、2値化部71は、フィルタ部6の出力電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、フィルタ部6の出力電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、フィルタ部6の出力を2値化する。
AND72は、2値化部71の出力と図16(C)のようなゲート信号GSとの論理積演算の結果を出力し、カウンタ73は、AND72の出力の立ち上がりをカウントする(図16(D))。ここで、ゲート信号GSは、計数期間(本実施の形態では第1の発振期間P1または第2の発振期間P2)の先頭で立ち上がり、計数期間の終わりで立ち下がる信号である。したがって、カウンタ73は、計数期間中のAND72の出力の立ち上がりエッジの数(すなわち、MHPの立ち上がりエッジの数)を数えることになる。
一方、計数結果補正部74の周期測定部740は、計数期間中のAND72の出力の立ち上がりエッジの周期(すなわち、MHPの周期)を立ち上がりエッジが発生する度に測定する。このとき、周期測定部740は、図16(E)に示すクロック信号CLKの周期を1単位としてMHPの周期を測定する。図16(F)の例では、周期測定部740は、MHPの周期としてTα,Tβ,Tγを順次測定している。図16(E)、図16(F)から明らかなように、周期Tα,Tβ,Tγの大きさは、それぞれ5クロック、4クロック、2クロックである。クロック信号CLKの周波数は、MHPの取り得る最高周波数に対して十分に高いものとする。
記憶部75は、カウンタ73の計数結果と周期測定部740の測定結果を記憶する。
ゲート信号GSが立ち下がり、計数期間が終了した後、計数結果補正部74の度数分布作成部741は、記憶部75に記憶された測定結果から計数期間中のMHPの周期の度数分布を作成する。
続いて、計数結果補正部74の代表値算出部742は、度数分布作成部741が作成した度数分布から、MHPの周期の代表値T0を算出する。MHPの周期の代表値として最頻値や中央値を用いる方法もあるが、信号抽出部7aに入力される信号に2値化のしきい値付近でMHPよりも高周波のノイズによってチャタリングが連続して発生している場合には、最頻値や中央値は周期の代表値として適していない。
そこで、本実施の形態の代表値算出部742は、階級値と度数との積が最大となる階級値をMHPの周期の代表値T0とする。表1に、度数分布の数値例およびこの数値例における階級値と度数との積を示す。
Figure 2011141128
表1の例では、度数が最大である最頻値(階級値)は1である。これに対して、階級値と度数との積が最大となる階級値は6であり、最頻値とは異なる値になっている。階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値T0とする理由については後述する。代表値算出部742は、このような代表値T0の算出を、度数分布作成部741によって度数分布が作成される度に行う。
計数結果補正部74の補正値算出部743は、度数分布作成部741が作成した度数分布から、周期の代表値T0の0.5倍未満である階級の度数の総和Nsと、周期の代表値T0の(n+0.5)倍以上(n+1.5)倍未満(nは1以上nmax以下の自然数)である階級の度数の総和Nwnとを求め、カウンタ73の計数結果を次式のように補正する。
Figure 2011141128
式(8)において、Naはカウンタ73の計数結果であるMHPの数、Na’は補正後の計数結果、TmaxはMHPの周期がとり得る最大値である。
図17にMHPの周期の度数分布の1例を示す。図17において、900はMHPの周期の度数分布、901は階級値と度数との積の値(計数期間において、ある階級の信号が占める時間を示す占有値)である。
図17の例では、信号抽出部7aに入力される信号に高周波のノイズが連続して発生しているために、0.5T0未満の短い周期が分布の最頻値となっている。したがって、分布の代表値として最頻値を用いると、ノイズの周期を基準としてMHPの計数結果に補正をかけてしまうことになるので、誤った計数補正を施す結果になる。そこで、MHPの数を数える計数期間において、ある階級の信号が占める時間、つまり階級値と度数との積が最も大きい階級値を基準として、カウンタ73の計数結果を補正する。以上が、階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値T0とする理由である。
図18はカウンタ73の計数結果の補正原理を説明するための図であり、図18(A)はフィルタ部6の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、図18(B)は図18(A)に対応するカウンタ73の計数結果を示す図である。
ノイズのために、MHPの波形には欠落が生じたり、信号として数えるべきでない波形が生じたりして、結果としてAND72の出力の波形にも欠落や信号として数えるべきでない波形が生じ、カウンタ73の計数結果に誤差が生じる。
信号の欠落が生じると、欠落が生じた箇所でのMHPの周期Twは、本来の周期のおよそ2倍になる。つまり、MHPの周期が代表値T0のおよそ2倍以上の場合には、信号に欠落が生じていると判断できる。そこで、周期Tw以上の階級の度数の総和Nwを信号が欠落した回数と見なし、このNwをカウンタ73の計数結果Naに加算することで、信号の欠落を補正することができる。
また、本来1つのMHPがノイズのために2つに分割された箇所での2つのMHPのうち短いほうの周期Tsは、本来の周期のおよそ0.5倍よりも短い周期になる。つまり、MHPの周期が代表値T0の0.5倍未満の場合には、信号を過剰に数えていると判断できる。そこで、周期Ts未満の階級の度数の総和Nsを信号を過剰に数えた回数と見なし、このNsをカウンタ73の計数結果Naから減算することで、誤って数えたノイズを補正することができる。
以上が、式(8)に示した計数結果の補正原理である。なお、本実施の形態では、Twを代表値T0の2倍の値とせずに、代表値T0の(n+0.5)倍以上(n+1.5)倍未満としているが、この理由については、特開2009−47676号公報に開示されている。
補正値算出部743は、式(8)により計算した補正後の計数結果Na’の値を演算部8に出力する。信号抽出部7aは、以上のような処理を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について行う。
以上、本実施の形態で説明した信号抽出部7aを、第1〜第3の実施の形態において、信号抽出部7の代わりに使用することが可能である。
本実施の形態では、計数期間中のMHPの周期を測定し、この測定結果から計数期間中のMHPの周期の度数分布を作成し、この度数分布から、階級値と度数との積が最大となる階級値をMHPの周期の代表値T0とし、代表値T0の0.5倍未満である階級の度数の総和Nsと、代表値T0の(n+0.5)倍以上(n+1.5)倍未満である階級の度数の総和Nwnとを求め、これらの度数NsとNwnに基づいてカウンタ73の計数結果を補正することにより、信号抽出部7aに入力される信号にMHPよりも高周波のノイズが連続して発生している場合であっても、MHPの計数誤差を高精度に補正することができるので、ウェブ11の速度の計測精度を向上させることができる。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第1〜第4の実施の形態では、MHP波形を含む電気信号を検出する検出手段としてフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とを用いたが、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することも可能である。図19は本発明の第5の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の速度計測装置は、第1〜第4の実施の形態のフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5の代わりに、検出手段として電圧検出部12を用いるものである。
電圧検出部12は、半導体レーザ1の端子間電圧、すなわちアノード−カソード間電圧を検出して増幅する。半導体レーザ1から放射されたレーザ光とウェブ11からの戻り光とによって干渉が生じるとき、半導体レーザ1の端子間電圧には、MHP波形が現れる。したがって、半導体レーザ1の端子間電圧からMHP波形を抽出することが可能である。
フィルタ部6は、電圧検出部12の出力電圧から搬送波を除去する。速度計測装置のその他の構成は、第1〜第4の実施の形態と同じである。
こうして、本実施の形態では、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することができ、第1〜第4の実施の形態と比較して速度計測装置の部品を削減することができ、速度計測装置のコストを低減することができる。また、本実施の形態では、フォトダイオードを使用しないので、外乱光による影響を除去することができる。
本実施の形態では、レーザドライバ4から半導体レーザ1に供給する駆動電流をレーザ発振のしきい値電流付近に制御することが好ましい。これにより、半導体レーザ1の端子間電圧からMHPを抽出することが容易になる。
なお、第1〜第5の実施の形態において少なくとも信号抽出部7,7aと演算部8と制御部104とは、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータを動作させるためのプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供される。CPUは、読み込んだプログラムを記憶装置に書き込み、このプログラムに従って第1〜第5の実施の形態で説明した処理を実行する。
また、第1〜第5の実施の形態では、センサモジュール10を図2に示すように配置したが、これに限るものではない。例えば図20に示すように、半導体レーザ1からのレーザ光が送出側ロール102の箇所または受取側ロール103の箇所でウェブ11に入射するようにしてもよい。
本発明は、搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブの速度を測定する技術に適用することができる。
1…半導体レーザ、2…フォトダイオード、3…レンズ、4…レーザドライバ、5…電流−電圧変換増幅部、6…フィルタ部、7,7a…信号抽出部、8…演算部、9…表示部、10…センサモジュール、11…ウェブ、12…電圧検出部、71…2値化部、72…論理積演算部、73…カウンタ、74…計数結果補正部、75…記憶部、80…記憶部、81…距離比例個数算出部、82…速度算出部、83…符号付与部、100…送出側ガイド軸、101…受取側ガイド軸、102…送出側ロール、103…受取側ロール、104…制御部、740…周期測定部、741…度数分布作成部、742…代表値算出部、743…補正値算出部。

Claims (6)

  1. 搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブにレーザ光を放射する半導体レーザと、
    発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、
    前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記ウェブからの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、
    この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手段と、
    この信号抽出手段の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与手段と、
    この符号付与手段によって符号が与えられた符号付き計数結果を用いて前記干渉波形の数の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手段と、
    この距離比例個数算出手段が算出した距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手段とを備え、
    前記符号付与手段は、前記信号抽出手段の1回前の計数結果とこの計数結果よりも過去の計数結果を用いて算出された前記距離比例個数の2倍数との大小関係、前記信号抽出手段の計数結果の増減方向の一致不一致、あるいは計数結果の平均値の変化に応じて、前記信号抽出手段の最新の計数結果に正負の符号を付与することを特徴とする速度計測装置。
  2. 請求項1記載の速度計測装置において、
    前記信号抽出手段は、
    前記検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える干渉波形計数手段と、
    この干渉波形計数手段が干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する干渉波形周期測定手段と、
    この干渉波形周期測定手段の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する干渉波形周期度数分布作成手段と、
    前記干渉波形の周期の度数分布から、階級値と度数との積が最大となる階級値を前記干渉波形の周期の分布の代表値として求める代表値算出手段と、
    前記干渉波形の周期の度数分布から、前記代表値の0.5倍未満である階級の度数の総和Nsと、前記代表値の(n+0.5)倍以上(n+1.5)倍未満(nは1以上の自然数)である階級の度数の総和Nwnとを求め、これらの度数NsとNwnに基づいて前記干渉波形計数手段の計数結果を補正し、補正後の計数結果を出力する補正値算出手段とからなることを特徴とする速度計測装置。
  3. 請求項2記載の速度計測装置において、
    前記補正値算出手段は、前記干渉波形計数手段の計数結果をNa、前記代表値をT0、前記干渉波形の周期がとり得る最大値をTmaxとしたとき、補正後の計数結果Na’を、
    Figure 2011141128
    により求めることを特徴とする速度計測装置。
  4. 搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブにレーザ光を放射する半導体レーザを、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように動作させる発振手順と、
    前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記ウェブからの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、
    この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える信号抽出手順と、
    この信号抽出手順の最新の計数結果に正負の符号を付与する符号付与手順と、
    この符号付与手順によって符号が与えられた符号付き計数結果を用いて前記干渉波形の数の平均値を算出することにより、前記半導体レーザと前記ウェブとの平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数を求める距離比例個数算出手順と、
    この距離比例個数算出手順で算出した距離比例個数から前記ウェブの速度を算出する速度算出手順とを備え、
    前記符号付与手順は、前記信号抽出手順の1回前の計数結果とこの計数結果よりも過去の計数結果を用いて算出された前記距離比例個数の2倍数との大小関係、前記信号抽出手順の計数結果の増減方向の一致不一致、あるいは計数結果の平均値の変化に応じて、前記信号抽出手順の最新の計数結果に正負の符号を付与することを特徴とする速度計測方法。
  5. 請求項4記載の速度計測方法において、
    前記信号抽出手順は、
    前記検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える干渉波形計数手順と、
    この干渉波形計数手順で干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する干渉波形周期測定手順と、
    この干渉波形周期測定手順の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する干渉波形周期度数分布作成手順と、
    前記干渉波形の周期の度数分布から、階級値と度数との積が最大となる階級値を前記干渉波形の周期の分布の代表値として求める代表値算出手順と、
    前記干渉波形の周期の度数分布から、前記代表値の0.5倍未満である階級の度数の総和Nsと、前記代表値の(n+0.5)倍以上(n+1.5)倍未満(nは1以上の自然数)である階級の度数の総和Nwnとを求め、これらの度数NsとNwnに基づいて前記干渉波形計数手順の計数結果を補正し、補正後の計数結果を出力する補正値算出手順とを含むことを特徴とする速度計測方法。
  6. 請求項5記載の速度計測方法において、
    前記補正値算出手順は、前記干渉波形計数手順の計数結果をNa、前記代表値をT0、前記干渉波形の周期がとり得る最大値をTmaxとしたとき、補正後の計数結果Na’を、
    Figure 2011141128
    により求めることを特徴とする速度計測方法。
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