(信号光とバックグランドノイズ光との関係)
図3(a)に示したように、反射光を検知する物体検出装置には、被検出物からの真の反射光(信号光)sig_realと、筐体反射等のバックグランドノイズ光(不要な反射光)sig_backと、が合算されて、かつ互いに同期した成分としての、受光素子への全入射光sig_allが入射される。
そのため、上記受光素子への全入射光sig_allに対する閾値thを、バックグランドノイズ光sig_backの受光量よりも低い値に設定した場合、真の反射光sig_realが入力されていない(被検出物が存在していない)のにも関わらず、バックグランドノイズ光sig_backの存在によって、「被検出物有り」の旨の検知結果を出力する、いわゆる誤検知が生じてしまう。
上記誤検知を防ぐために、上記物体検出装置は、バックグランドノイズ光sig_backの存在のみによって、「被検出物有り」の旨の検知結果を得ることのないような、閾値thが設定される必要があるのは明らかである。
また、ノイズ成分を除去するために、バックグランドノイズ光sig_backに対する閾値th_backと、真の反射光sig_realに対する閾値th_sigと、を別々に設定可能であることも意味がある。閾値th_back及びth_sigを個別に設定することで、閾値th_backの分解能と閾値th_sigの分解能とを個別に変えることができる。
閾値th_backの分解能と閾値th_sigの分解能とが同じである場合、例えば、バックグランドノイズ光sig_backに対する分解能を向上させたい場合、受光素子への全入射光sig_allに対する分解能を向上させざるを得ない。これにより、受光素子への全入射光sig_allに対する分解能は、オーバースペックとなり、各閾値を設定するためのレジスタ等、ICの回路規模が増大することになる。一方、閾値th_back及びth_sigを個別に設定できれば、余分な回路の増大を防ぐことができ、それぞれの信号成分に対して最適な分解能で、最適な各閾値を設定することができるため、物体検知装置としての設計自由度が高くなる。
本発明の物体検出装置では、真の反射光sig_realに対する閾値th_sigと、バックグランドノイズ光sig_backを差し引くために別途設定する閾値th_backと、を個別に設定可能であり、かつ、最終的に合算された受光素子への全入射光sig_allに対する閾値thを、閾値th_sigと閾値th_backとの和、つまり、閾値th=閾値th_sig+閾値th_backとして設定できる構成とすることで、バックグランドノイズ光sig_backの存在による誤動作が生じず、最適な分解能をもった高精度な物体検出装置が実現できる(図3(b)参照)。
詳細な構成は後述するが、例えば、物体検出装置が最終製品に実装された後、最初に、後述する閾値サーチモードで、バックグランドノイズ光sig_backに対して「バックグランドノイズ光sig_backの存在のみによっては検知とならない」最適な閾値th_backを決定する。次に、被検出物がどの程度の距離に置かれた場合、検知または非検知とするか、最終製品の仕様に応じて、検知となるべき真の反射光sig_realに対して確実に検知となるように、最適な閾値th_sigを決定する。
上記の結果得られた閾値th_backと閾値th_sigとを合算した結果、最終的な閾値thが設定された、本発明の物体検出装置は、閾値th_backを用いて、受光素子への全入射光sig_allからバックグランドノイズ光sig_backに依る成分を差し引くことができ、かつ、最適に設定された閾値th_sigを、残った真の反射光sig_realと比較した結果に応じて、検知または非検知(被検出物の有無)の判定を行うことができるので、誤動作の虞がなく、確実な物体検知動作ができることになる。
上述したように、バックグランドノイズ光sig_backに対する閾値th_backは、最終製品に実装後に変更できる構成が望ましい。例えば、閾値th_backを設定するレジスタまたはメモリが搭載された物体検出装置に、外部制御回路またはCPU(Central Processing Unit)からインターフェイスを介し、レジスタ値を調整できるような構成にすれば、図3(c)に示したように、バックグランドノイズ光sig_backが、実装した最終製品によって違っていたとしても、その値を再調整することは容易である。
(本発明の物体検出装置の概略構成)
図1は、本発明の一実施例に係る物体検出装置100の構成を示すブロック図である。
なお、物体検出装置100は、図1に示す構成に加え、図16に示すような、発光レンズ164及び受光レンズ165を備えるのが一般的である。但し、発光レンズ164及び受光レンズ165は、本発明の物体検出装置の本質的な特徴的構成でないので、便宜上、図示を省略している。
物体検出装置100は、受光素子(受光手段)1、増幅回路2、検出回路(検出手段)3、外部制御回路(例えば、CPU)5に接続されたインターフェイス回路4、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)駆動回路7、タイミング生成回路8、状態検知回路9、カウンタ回路10、閾値設定カウンタ11、デコーダ12、発光素子13、閾値制御部(閾値合算手段)A、及び、レジスタ(光別閾値設定手段)Bを備えた構成である。タイミング生成回路8、状態検知回路9、及び、カウンタ回路10は、信号処理回路Cを構成している。
また、物体検出装置100は、被検出物14の有無を検出することを目的とするものであるが、物体検出装置100と被検出物14との間には、物体検出装置100が実装される対象となる電子機器(図示せず)の筐体15が存在している場合がある。
発光素子13は、LED駆動回路7による駆動に応じて発光することで、パルス光を出射するものである。発光素子13及びLED駆動回路7の具体例としては、一般的なLED及びその駆動回路等で充分である。
受光素子1は、一般的なフォトダイオードであり、制御IC部に組み込まれているものもある。受光素子1は、発光素子13から出射されたパルス光が、被検出物14で反射されて得られた光を受光し、受光した光を光電変換により電気信号に変換し、該電気信号を増幅回路2に供給するものである。
増幅回路2は、オペアンプ等で構成されており、受光素子1からの電気信号を増幅し、次の検出回路3へ出力するものである。
検出回路3は、コンパレータ等を用いて構成されており、増幅回路2から入力された信号のレベルが、自身に設定された検出閾値より高いか低いかを検出し、この検出の結果に応じて2値化された2値信号を生成し、出力する。
ここで、検出回路3は、設定される上記検出閾値が、閾値制御部Aから供給される電流(または電圧)の値に応じて変更可能な構成となっている。具体的に、例えば検出回路3がコンパレータである場合、該コンパレータの反転入力端に、閾値制御部Aで電流値が随時制御されている電流が供給される一方、該コンパレータの非反転入力端に、増幅回路2からの信号が供給される構成とすることで、上記検出閾値の設定及び変更は、周知の技術で容易に実施できる。
閾値制御部Aは、レジスタBで各々設定される、バックグランドノイズ光sig_backに対する閾値th_backと、真の反射光sig_realに対する閾値th_sigと、のそれぞれを、切り替えてまたは加算して得られた、検出回路3の上記検出閾値に対応する所定値の電流(または電圧)を、検出回路3に出力することで、検出回路3の検出閾値の設定を行う制御部である。
図1において、閾値制御部Aは、検出回路3の検出閾値を変更するような構成となっているが、この構成に限定されるものでなく、例えば、バックグランドノイズ光sig_backで想定される受光信号電流のみを、増幅回路2の出力段または受光素子1の受光信号から直接差し引くような電流閾値を設定することも可能である。閾値制御部Aの詳細な構成は後述する。
レジスタBは、閾値th_backの値を示す情報と、閾値th_sigの値を示す情報と、を個別に格納することが可能な記憶媒体である。
レジスタBは、外部制御回路5からインターフェイス回路4を介して直接、外部制御回路5により、格納された各情報の読み出し、及び、各情報の書き込み(格納)が行われる構成である。また、レジスタBに格納された各情報は、閾値制御部Aに供給され、閾値制御部Aは、供給された各情報に応じて、検出回路3の上記検出閾値の設定を行うことが可能である。レジスタBの詳細な構成は後述する。
なお、レジスタBは、情報の読み出し及び書き込みが可能な記憶媒体、例えば、フラッシュメモリに置換されてもよい。
図1において破線で囲まれた、信号処理回路Cは、物体検出装置100に特有の信号処理を実現する回路であり、それぞれ一般的なデジタル回路である、タイミング生成回路8、状態検知回路9、及び、カウンタ回路10から構成されている。
タイミング生成回路8は、物体検出装置100を構成する各種ブロック回路の、動作のタイミングを決定している。例えば、タイミング生成回路8は、LED駆動回路7が発光素子13を駆動して発光させるタイミングに同期させるように、増幅回路2及び検出回路3を動作させる役割を担っている。同様に、タイミング生成回路8は、状態検知回路9及びカウンタ回路10に対しても、物体検知動作として必要な所望のタイミングで動作するように制御することになる。
状態検知回路9は、物体検出装置100による物体検知動作の状態を判定する回路であり、一般的なステートマシーンによって実現される回路である。
例えば、状態検知回路9は、現在の状態が非検知(被検出物14が存在していない状態)を示す状態である場合において、物体検知動作(すなわち、発光素子13からの発光)が1回行われた結果、検出回路3から「同期信号を検知」の旨の検知結果を示す2値信号が得られると、検知(被検出物14が存在している状態)を示す状態に遷移すると共に、カウンタ回路10のカウント数を1つ加算する信号を、カウンタ回路10に出力する。そして、該物体検知動作が繰り返し実施され、あらかじめ決められたカウンタ回路10のカウンタ値になった場合、もしくは、発光素子13の発光回数(N)=カウンタ回路10のカウンタ値(換言すれば、被検出物14の検知回数)になった場合に初めて、状態検知回路9は、インターフェイス回路4に「被検出物14有り」の旨示す出力を行う状態に遷移する回路である。
なお、ここで言うNとは、設定された1つの閾値thに対する測定(後述する、物体検知動作の実施)回数、すなわち、検出回路3にある1つの検出閾値として閾値thを設定したときに、発光素子13を発光させる回数を意味している。
信号処理回路Cの動作アルゴリズムの詳細については後述する。
インターフェイス回路4は、外部制御回路5と通信を行う回路であり、状態検知回路9の出力結果を外部制御回路5に出力し、かつ、外部制御回路5が、レジスタBの値を読み出したり、レジスタBに値を書き込んだりすることを実現するためのものである。また、インターフェイス回路4は、レジスタB以外の、動作モードを決定するレジスタ(図示せず)も含んでいるものとする。状態検知回路9は、この動作モードを決定するレジスタを参照しており、該レジスタは、物体検知動作の動作モードを決定する働きをしている。
閾値設定カウンタ11は、後述する閾値サーチを実施するために必要な部材であり、一般的なアップダウンカウンタである。閾値設定カウンタ11のカウンタ値の大小関係は、検出回路3の検出閾値に対応する所定値の電流(または電圧)の大小関係に対応する。閾値設定カウンタ11は、カウントアップ量及びカウントダウン量を、レジスタBに対して閾値th(閾値th_back及び/または閾値th_sig)を設定するための状態検知回路9の状態に応じて変更することができ、これにより、該閾値thの変更を、デジタル値で簡単に設定することが可能な部材である。
デコーダ12は、閾値設定カウンタ11のカウンタ値を、実際のレジスタBに対して設定(格納)すべき、閾値th_backの値を示す情報及び/または閾値th_sigの値を示す情報へとデコードする回路である。
本発明では、レジスタBのデジタル値の大小関係と、検出回路3の上記検出閾値に対応する所定値の電流(または電圧)の大小関係と、が一致しない場合を想定している。もし、レジスタBが閾値設定カウンタ11と同じように、レジスタBのデジタル値の大小関係と、検出回路3の上記検出閾値に対応する所定値の電流(または電圧)の大小関係と、が一致していれば、上記の閾値設定カウンタ11及びデコーダ12は、必要ない。この場合、例えば、状態検知回路9は、インターフェイス回路4を介して、直接、レジスタBのデジタル値を変更することになる。
また、パルス検出回路においてDC(Direct Current:直流)成分の信号は不要である。図示してはいないが、受光素子1から検出回路3までの間の任意の箇所に、適当な時定数を持ったハイパスフィルターが存在し、DC光成分は除去される構成となっている。
上述した構成により、あらかじめバックグランドノイズ光sig_backによって誤動作を引き起こす受光量が分かっていれば、それを差し引くように、閾値を、外部制御回路5から設定することによって、不要な受光成分のみを差し引いた状態で、物体検知動作を行うことができる。
(本発明の物体検出装置による、物体検知動作及び物体非検知動作の概略)
動作説明に先立ち、パルス信号を受光する本発明の物体検出装置100は、装置自体に含まれるノイズ成分により、検出結果が確率的な挙動を示す(物体検知動作毎に、検知結果が変化し得る)ことになり、このことが、誤検知を引き起こす場合がある。この確率的な挙動は、一般に正規分布となり、検知結果のばらつきを引き起こす要因となる。ここで議論を簡単にするため、このノイズ成分は、検出回路3に含まれているものに限定する。従って、例えば、その他の同期ノイズ、蛍光灯からのノイズ等は、本議論には含まれていないものとする。
検知結果のばらつきによる誤検知の確率を含んでいるため、物体検出装置100は、検出回路3において「同期信号を検知」または「同期信号を非検知」の旨の検知結果がN回得られた場合に、最終的な検知結果として「被検出物14有り」または「被検出物14無し」を外部制御回路5へと出力する。つまり、物体検出装置100では、誤検知の確率を、1回の物体検知動作に対してN乗分圧縮し、被検出物14を検知する精度を上げている。
設定された1つの閾値thに対する測定回数であるNを、どの程度の値に設定するかということは、極めて重要であり、その値を増やせば誤検知の確率を大幅に下げることができるが、測定時間が増大するというトレードオフの関係になる。一般的に、Nは、物体検出装置100を構成するシステムが許容できる誤差まで圧縮できる値となる。
そのため、Nは、外部制御回路5から設定できる構成であるのが望ましい。例えば、上述したように、Nの値を設定できるレジスタ(図示せず)をインターフェイス回路4に設け、外部制御回路5から該レジスタにより、Nの値を変更できる構成とすれば、信号処理回路Cは、設定されたN回「同期信号を検知」または「同期信号を非検知」の旨を検知してから、最終的な検知結果として、「被検出物14有り」または「被検出物14無し」を、外部制御回路5へと出力する構成とすることは容易である。なお、後述する閾値サーチモードでは、このNを、物体検出装置100の状態検知回路9が変更できる構成としている。
以上の構成を有する、物体検出装置100による物体検知動作について、その概略を図2(a)の信号処理フローと合わせて説明する。
図2(a)は、物体検知動作の流れを示すフローチャートであり、図2(b)は、物体非検知動作の流れを示すフローチャートである。
まず、物体検出装置100は、外部制御回路5からの「動作モードを設定する信号」を受けて、物体検知/非検知動作モードに遷移する。外部制御回路5からの「動作モードを設定する信号」とは、物体検知/非検知動作モードや後述の閾値サーチモードを決定する信号であり、インターフェイス回路4の動作モードを決定するレジスタ(図示せず)に記録されている。「動作モードを設定する信号」を受け取った状態検知回路9は、タイミング生成回路8を起動させ、物体検出装置100における物体検出動作が開始となる。
物体検出動作の最初の動作開始時に、図2(a)に示す、信号処理回路Cの動作アルゴリズムの処理フローではまず、N=1とし(ステップS21)、LED駆動回路7は、タイミング生成回路8による制御をトリガとして、発光素子13の駆動を実施する。これにより、発光素子13は、発光され、パルス光を出射する。(ステップS22)
発光素子13から出射されたパルス光は、被検出物14で反射され、真の反射光sig_realとして、受光素子1により受光(再生)される。
一方、物体検出装置100と被検出物14との間に、筐体15が存在している場合、発光素子13から出射されたパルス光は、筐体15で反射され、バックグランドノイズ光sig_backとして、受光素子1により受光(再生)される。ここで、バックグランドノイズ光sig_backは、真の反射光sig_realに同期する光成分となっており、これにより、受光素子1への全入射光sig_allは、真の反射光sig_realとバックグランドノイズ光sig_backとが合算された光成分を有している。
受光素子1への全入射光sig_allは、受光素子1で電気信号に変換され、増幅回路2で増幅され、検出回路3に供給される。
検出回路3には、閾値制御部Aからの所定値の電流(または電圧)が供給されており、これにより、閾値th_backと閾値th_sigとが合算された閾値thが、検出閾値として設定されている。なお、閾値制御部Aには、レジスタBにおいて個別に格納された、閾値th_backの値を示す情報と、閾値th_sigの値を示す情報と、がそれぞれ供給され、閾値制御部Aは、供給されたこれらの各情報に基づいて、閾値thに対応する電流(または電圧)を生成している。
検出回路3は、増幅回路2から供給された信号のレベルが閾値th(検出閾値)よりも、高いか低いかを検出し、この検出結果として、高い場合に「同期信号を検知」の旨示す信号を、低い場合に「同期信号を非検知」の旨示す信号を、それぞれ出力する。検出回路3は、例えば上述のコンパレータである場合、「同期信号を検知」の旨示す信号としてロジック信号のHighを出力する一方、「同期信号を非検知」の旨示す信号としてロジック信号のLowを出力することで、容易に、上記検出結果に応じて2値化された2値信号を生成し、信号処理回路Cへと出力することができる(ステップS23)。
上記2値信号は、検出回路3から、信号処理回路Cの状態検知回路9へと入力される。状態検知回路9は、入力された2値信号が「同期信号を検知」の旨示す場合(ステップS23の結果がYES)、検知を示す状態に遷移すると共に、カウンタ回路10のカウント数を1つ加算する信号を、カウンタ回路10に出力する(ステップS25)。一方、状態検知回路9は、入力された2値信号が「同期信号を非検知」の旨示す場合(ステップS23の結果がNO)、該遷移及びカウンタ回路10への信号出力を、どちらも行わず、最終的な物体検知動作の結果として「被検出物14無し」という信号を、外部制御回路5へと出力する(ステップS24)。
以上の動作により、物体検出装置100による、1回の物体検知動作は、終了する。
次に、カウンタ回路10のカウンタ値が1つ増加された(ステップS25)後、N=2となるが、あらかじめ設定されたカウンタ回路10のカウンタ値に達していないことを状態検知回路9が判断すると、ステップS26の結果はNOとなり、再度、物体検知動作を開始するように、ステップS22へと移行する。
同様の物体検知動作(測定)を、検出回路3に設定された1つの閾値thに対して繰り返し行い、あらかじめ決められたカウンタ回路10のカウンタ値になった場合、もしくは、カウンタ回路10のカウンタ値がN(ここではN=3)になった場合に、ステップS26の結果はYESとなる。そして、状態検知回路9は、インターフェイス回路4に「被検出物14有り」の旨示す出力を行う状態に遷移し、これにより、インターフェイス回路4を介して外部制御回路5には、最終的な出力結果として「被検出物14有り」という検知結果が出力される(ステップS27)。
上記、物体検知動作の説明は、「被検出物14無し」を示す非検知状態から、「被検出物14有り」を示す検知状態へ状態が遷移する、物体検知動作のフローの説明である。
次に、物体検出装置100の実動作として、「被検出物14有り」という検知状態から「被検出物14無し」という非検知状態へと遷移する場合、図2(a)に示す信号処理フローをそのまま適用すると、物体検出装置100の検知状態から非検知状態への遷移の精度が悪化する。なぜなら、図2(a)に示すステップS23において、N=1回目の測定で、「同期信号を検知」という出力を得られなければ、すぐに「被検出物14無し」という出力結果に至ってしまうためである。換言すれば、前述したことと同様に、1回の測定で、被検出物14の有無を決めてしまうことになるので、実際には被検出物14が有るにもかかわらず、「被検出物14無し」という出力結果となってしまう誤動作の虞が大きくなるため、上記遷移の精度は低下すると言える。
そこで、「被検出物14有り」を示す検知状態から、「被検出物14無し」を示す非検知状態へ状態が遷移する場合の物体検知動作(正確には物体非検知動作)において、「被検出物14有り」または「被検出物14無し」を外部制御回路5へと出力するフローを実現するためには、図2(a)の信号処理フローに係る処理内容をいくつか変更する必要がある。
変更された信号処理フローが図2(b)であり、図2(a)に示すフローから処理内容が変更されたステップには、「ステップSXXB」という具合に、末尾に「B」という添え字を施している。
ステップS23Bは「検出回路3は同期信号を検知?」というステップS23の処理内容が「検出回路3は同期信号を非検知?」という処理内容に変更されている。ステップS23Bは、状態検知回路9を、現在の状態(同期信号を検知したか否か)によって、動作を切り替えるようにすることで実現可能である。
つまり、ステップS23Bでは、検出回路3から「同期信号を非検知」という旨の信号(Low信号)が得られた場合に、カウンタ回路10のカウンタ値を上げるということになる。ステップS23からステップS23Bへの変更に係る構成変更は、状態検知回路9(ステートマシーン)を用いれば容易である。例えば、別途設けられた1つのフリップフロップ(図示せず)に記憶させる等により、被検出物14の有無に対応する2種類の状態を1組追加し、その状態に応じて、該フリップフロップの出力を、検出回路3から入力される「同期信号の検知/非検知」を示す2値信号に対して論理反転したものとして、状態検知回路9に供給すればよい。
そしてこれにより、最終的な結果である、ステップS24とステップS27との両出力結果が逆になることも明らかで、状態検知回路9は、ステップS24Bで「被検出物14有り」をステップS27Bで「被検出物14無し」と出力するように動作する。このように、物体検出装置100は、特有の信号処理動作を経て物体検知動作(物体検知/被検知モードにおける動作)を実施する。
(閾値制御部及びレジスタの具体的な構成例)
図1で示した、閾値制御部AとレジスタBとを用いて、検出回路3の検出閾値を個別に設定する構成は、簡単に実現できる。その構成例を図4(a)及び(b)に示す。
図4(a)及び(b)ともに、点線内、AとBとで囲まれた部分が、それぞれ、図1における、閾値制御部AとレジスタBとである。
図4(a)に示すレジスタBは、閾値th_sigの値を示す情報が格納される信号用閾値設定レジスタ(反射光閾値設定手段)41と、閾値th_backの値を示す情報が格納されるBG用閾値設定レジスタ(バックグランドノイズ光閾値設定手段)42と、を備えている。
信号用閾値設定レジスタ41及びBG用閾値設定レジスタ42への各情報の書き込みは、インターフェイス回路4を介して外部制御回路5から可能である。
図4(a)に示す閾値制御部Aは、閾値th_sigの値を示す情報をデコードする信号用閾値設定デコーダ43、閾値th_backの値を示す情報をデコードするBG用閾値設定デコーダ44、及び、これらのデコードされた両情報に基づいて、閾値thに対応する値の電流を生成し、検出回路3へと出力する検出回路閾値生成部45を備えている。
閾値th_sigの値を示す情報は、信号用閾値設定デコーダ43により、閾値th_backの値を示す情報は、BG用閾値設定デコーダ44により、それぞれデコードされ、検出回路閾値生成部45に入力される。
検出回路閾値生成部45としては、デジタル信号である、デコードされた上記閾値設定信号に応じて、出力する電流値を制御できる、周知のプログラマブル電流源等が利用できる。
閾値th_sigと閾値th_backとの合算値として検出回路3の閾値thを設定する場合、閾値th_sig用のプログラマブル電流源と閾値th_back用のプログラマブル電流源をそれぞれ用意し、出力ノードを共通にすることで、アナログ的に合算した電流値、すなわち合算した閾値thに対応する値の電流を、検出回路3へと出力することができる。
一方、図4(b)に示す、閾値制御部A及びレジスタBの構成例では、それぞれの信号用閾値設定レジスタ41及びBG用閾値設定レジスタ42から出力される信号は、デジタルsum及び設定デコーダ46でデジタル的に加算され、その合算された設定閾値を、同じくデジタルsum及び設定デコーダ46でデコードし、検出回路3の閾値thとして設定する。つまり、検出回路閾値生成部45としてのプログラマブル電流源は、1つで構成できる。
閾値th_sigの値を示す情報と閾値th_backの値を示す情報とは共に、外部制御回路5からインターフェイス回路4を介して変更できる構成となっているので、信号用閾値設定レジスタ41及びBG用閾値設定レジスタ42に対して、それぞれ自由に設定することができる。個別に設定された閾値th_sigと閾値th_backとを合算し、その合算値を検出回路3の閾値thと設定することで、バックグランドノイズ光による誤動作が生じない物体検出装置100を構成することが可能である。
もし、バックグランドノイズ光の発生しない環境であれば、閾値th_sigのみを設定することができる。例えば、レジスタBを構成する信号用閾値設定レジスタ41及びBG用閾値設定レジスタ42のレジスタ値を0と設定することを、検出回路閾値生成部45としてのプログラマブル電流源における電流値0であることに対応させることにより、BG用閾値設定レジスタ42のみを0とすれば、閾値th_sigだけの検出閾値にすることは容易である。またその逆も可能で、後述する閾値th_backサーチをする場合、閾値th_backだけを設定することができる。
図4(a)及び(b)に示す構成はいずれも、実際の閾値thを、2つの閾値th_sig及びth_backの和として設定する一方、真の反射光sig_realに対する閾値th_sigは、同2つの閾値の差として設定される構成であると解釈することができる。
なお、図4(a)及び(b)に示す各構成の場合、閾値制御部Aは、検出回路3に対して、連続的に閾値thに対応する値の電流を供給することになる。但し、閾値制御部Aは、検出回路閾値生成部45の動作及び非動作の各タイミングが、図1に示すタイミング生成回路8により制御されてもよく、この場合、タイミング生成回路8によるタイミング制御に応じて決定された、所望のタイミングでのみ、検出回路閾値生成部45から検出回路3へと電流が供給される構成とすることも可能である。
(閾値の判定終端条件の説明)
まず、閾値サーチの方法を説明する前に、前述したNの設定値に応じて、サーチ機能における分解能が変わることを、図7を参照して説明する。
本発明における前提条件として、実際に近接センサとして動作する時に用いられる、検出すべき反射物(被検出物14)の検知または非検知を判定するためのアルゴリズムと、本願において開示する、製品の評価時または検査時に用いられる、バックグランドノイズ光sig_backの検知または非検知を判定するためのアルゴリズムという、2つのアルゴリズムは、同一か極めて類似したものであることが望まれる。
さらに、被検出物14が存在しないが、筐体15からの不要な反射光が実際の動作時と全く同様に存在するように、周囲の物体が配置された状態等の、調整された特定の条件下において、期待される判定結果を確実に得るために、物体検出装置100において設定すべき最小の閾値を抽出し、この最小の閾値を、閾値th_backとして実際に物体検出装置100に対して設定するのが好ましい。これにより、物体検出装置100は、所望の信号成分に対する最高の感度が得られると考えられる。なおここで、期待される判定結果を得ることとは、バックグランドノイズ光sig_backに対して、実際の動作時に用いられるアルゴリズムで「被検出物14無し」となり、かつ、真の信号光sig_realに対して、同アルゴリズムで「被検出物14有り」となることを意味する。
勿論、サーチする閾値を調整するときの、最小の単位となる調整幅(最小調整幅)の違いに応じて、サーチ機能における分解能は、容易に変更し得る。図7によれば、閾値の調整幅Δthの幅(図7では、規格化した閾値Thresh/σ=0.5)を変更することで、分解能が変わるのは明らかである。
しかし、ここで重要な点は、調整幅Δth以外の要因によっても、サーチ機能における分解能を変更し得ることである。すなわち、該分解能は、期待される判定結果が得られた確率に応じてサーチを終了させる条件(以下、「判定終端条件」と言う)に応じて変更し得るものであり、どのような事象が得られた場合に、期待される判定結果が得られたとみなすかの設定に応じて変更し得るものである。
例えば、不要な反射光が無いという判定を行うに際して、物体検出装置100が、設定可能な最小の閾値(最高感度設定)から、閾値が大きくなる方向にサーチする(閾値を、ある一定間隔で上昇させていく)場合を考える。この場合、一連のサーチにおいて設定された各閾値に関して、1回のパルス発光に対する「同期信号を検知」または「同期信号を非検知」の結果を観測すると、閾値の上昇に応じて、図7に「N=1回同期信号光非検知の確率」として示すような、1回中1回「同期信号を非検知」となる確率の分布が、判定の材料となる事象として発生する。
ここで、横軸は、回路内雑音を閾値のレベル相当に換算した値、すなわち、閾値を、換算回路内雑音の標準偏差で除した、規格化した閾値Thresh/σ(単位:無し)である。横軸の値が0であることは、規格化した閾値Thresh/σが、不要反射光量にちょうど相当するレベルであることを意味し、換言すれば、後述する閾値サーチモードで抽出される最適な閾値の設定値ではない。また、縦軸には、ある事象が発生する確率(発生確率、単位:無し)を、0(0%に対応)から1(100%に対応)までの範囲で示している。
図7から明らかなように、N=1の場合、「同期信号を非検知」となる確率の分布の立ち上がりは、極めて緩やかである。従って、該分布は、実際にパルス発光させても「同期信号を非検知」となる事象を観測したとしても、横軸の概ね0±3の範囲内、すなわち、回路内雑音の標準偏差の3倍以内の範囲のどこかで発生する。
一方で、N=7とし、パルス発光させても「同期信号を非検知」となる事象が7回連続で発生するという事象を観測すると、その分布は、図7に「N=7回全て同期信号光非検知の確率」として示すように、図7の横軸の、概ね1.5±1.5の範囲内で発生する。
従って、パルス発光させても「同期信号を非検知」となる際の終端条件(閾値を調整幅Δthずつ上昇させるのを止める条件)を、上記のように、N=1に基づいて決定するのと、N=7に基づいて決定するのとでは、得られる閾値を設定するための精度が異なる。すなわち、上記パルス光の繰り返し回数Nによっても、サーチ機能における分解能が変わることになり、このNを増大するほど、サーチ機能は、高分解能にて実施可能になる。
(閾値のベタサーチ機能の説明:判定終端条件に基づく閾値サーチ機能)
例えば、バックグランドノイズ光sig_back(不要な反射光)を差し引くための閾値th_backを、物体検出装置100自身が内部でサーチし、サーチ結果として抽出(設定)した閾値th_backを、物体検出装置100の外部に出力する機能を有することは、有益である。これにより、物体検出装置100では、外部制御などの通信手段を必要とせず、かつ外部メモリに頼ることなく、さらに、外部機器の精度に依存しないで、閾値th_backを効率的に抽出できる。
ここでは、外部制御回路5からレジスタBを参照できるシステム、及び、外部制御回路5にレジスタBでの設定値を出力できるシステムについての説明を行う。
図5では、閾値抽出の一例として、閾値th_backを抽出し外部制御回路5に出力するための、閾値サーチのアルゴリズムを簡単に説明する。
まず、外部制御回路5により、物体検出装置100のシステムを閾値サーチモードに設定し(ステップS51)、閾値サーチモードにあわせた測定環境を設定する(ステップS52)。この場合、物体検出装置100は、バックグランドノイズ光sig_backが混入する構成にしたいので、携帯電話等の最終製品に実装し、筐体反射等によるバックグランドノイズ光sig_backが物体検出装置100に入射されるようにする。そして、当然、閾値サーチモードは、被検出物14が無い状態、すなわち、真の反射光sig_realが存在しない状態で始めなければならないことは言うまでもない。この設定は通常、物体検出装置100を製品に実装したメーカーが行うことになるが、しかるべき手順で行えば、エンドユーザーが閾値サーチモードを設定することも可能である。エンドユーザーが閾値サーチモードを設定することにより、バックグランドノイズ光sig_backの経年変化(例えば筐体面の汚れや歪み)に対応するように再度、閾値th_backを設定できる。
測定環境の設定が終わったら、外部制御回路5から閾値サーチを始めるスタート信号を物体検出装置100に送信する(ステップS53)。以降のフロー(点線で囲まれた部分)において、外部制御回路5は、閾値サーチ終了の信号を受け取るまで、物体検出装置100を制御する必要はなく、後述の図14(a)においても同様である。
インターフェイス回路4を通じて、スタート信号を受け取った状態検知回路9は、閾値th_backの初期設定(ステップS54)を実施する。
ここで、ステップS54では、閾値th_backの初期設定を行うが、閾値th_backは、バックグランドノイズ光sig_backの有無を、確実に区別できる閾値であるべきである。初期設定時における閾値th_backは、物体検出装置100における最小の閾値(最高感度設定)に設定してもよいし、閾値サーチモードに移行する前に、もしくは測定環境の設定時に、あらかじめ通常の物体検知動作を行い、バックグランドノイズ光sig_backの有無に応じた適切な検知結果が確実に得られるような閾値th_backを手動で見つけ出してから、見つけ出したこの閾値th_backに設定してもよい。言い換えれば、閾値サーチモードでは、バックグランドノイズ光sig_backが存在しているにも関わらず、「同期信号を非検知」となる閾値th_backを抽出することが目的である。このため、初期設定時における閾値th_backは、バックグランドノイズ光sig_backが存在している場合に、確実に「同期信号を検知」となるような値に設定されている必要がある。例外的に、閾値th_backを最小の閾値(最高感度設定)に設定した段階で、「同期信号を非検知」となれば、最小の閾値(最高感度設定)のまま、閾値サーチモードは終了となる。
以下では、バックグランドノイズ光sig_backが存在しないという判定を行うに際して、物体検出装置100が設定可能な最小の閾値(最高感度設定)から、閾値th_backが大きくなる方向にサーチする場合で、かつ、ステップS54にてさらに、Nは、システムが許容する最大の値(最大の分解能)で設定されているものとする。つまり、Nは、通常の物体検知動作にて設定される値と同じとする。
状態検知回路9から閾値th_backを設定する方法は、以下の通りである。
ステップS54の実施後、状態検知回路9は、閾値設定カウンタ11のカウンタ値を0に設定する。そのカウンタ値0が最小の閾値(最高感度設定)に、カウンタ値の最大値が取り得る閾値th_backの最大値に、それぞれ対応するように、閾値設定カウンタ11の各カウンタ値は、取り得る閾値th_backの各値と対応付けられている。デコーダ12は、閾値設定カウンタ11のカウンタ値をデコードすることで、閾値th_backの値を示す情報を得、レジスタBに書き込む。カウンタ値が0の場合、検出回路3には、初期設定閾値電流(例えば、電流値0)が出力される。
なお、レジスタBが閾値設定カウンタ11と同じように、低いカウンタ値が低い閾値に対応し、高いカウンタ値が高い閾値に対応する場合は、閾値設定カウンタ11およびデコーダ12は不要となる。この場合、状態検知回路9は、レジスタBに格納された、閾値th_backの値を示す情報を参照し、閾値th_backを直接変更することが可能である。
次に、前述したように初期設定である閾値th_backで、N回分(1つの閾値th_backに対する測定回数分)の測定による信号処理フロー(ステップS55)として、物体非検知動作(図2(b)参照)を実施する。
ここで気をつけることは、バックグランドノイズ光sig_backに対して確実に「同期信号を非検知」となる閾値th_backが、最適な閾値th_backであると言えることである。そのため、「同期信号を非検知」となる閾値th_backを抽出するための、ステップS55に係る処理は、図2(b)に示した信号処理回路Cの処理フローと同じフローで実現することができる。つまり、ステップS55では、前述した通常の物体非検知動作を実行しているに過ぎず、図2(b)に係る、ステップS27Bの結果を「筐体15無し」と、ステップS24Bの結果を「筐体15有り」と、それぞれ解釈すればよいだけである(ステップS56)。
N回の測定のうち、1度でもバックグランドノイズ光sig_backを検知した(換言すれば、図2(b)に示すステップS23Bの結果がNOである)場合、ステップS56の結果がNOであるとし、閾値th_backを変更する(ステップS57)。これにより、バックグランドノイズ光sig_backの影響、さらには、検出回路3に発生するノイズの影響で「同期信号を検知」となってしまう誤検知に係る事象も排除することになる。
前述したように、信号処理フロー(ステップS55)の結果により、ステップS56の判定は分岐する。バックグランドノイズ光sig_backが存在している場合に「同期信号を検知」となる、すなわち、図2(b)のステップS24Bに到達した場合、図6(a)に示す閾値変更フローへと移行する(ステップS57)。
図5のステップS56の結果がNOである場合、図6(a)に示すフローにおける、ステップS61Aに移行する(ステップS62Aのフローは後述)。
ステップS61Aにおいて、状態検知回路9は、設定されている閾値th_backの分解能に対応するように、閾値設定カウンタ11のカウント値を所望の量、増やす。デコーダ12は、ステップS61Aにて設定された閾値設定カウンタ11のカウンタ値をデコードして、閾値th_backの値を示す情報として、レジスタBに書き込む。これにより、ステップS61Aにより、閾値th_backの値を分解能に対応する調整幅Δth分だけ増加させることが可能になる。なお、本実施の形態では、カウンタ値を1つ上げることで、閾値th_backに最小調整幅Δthfが加算された結果、閾値th_back→閾値th_back+Δthfに増加すると仮定している。その設定された閾値th_back+Δthfを、新たな閾値th_backとし、再度、物体非検知動作を実行し、筐体15によるバックグランドノイズ光sig_backに対して「同期信号を非検知」の検知結果が得られるどうかを繰り返す。ここで後のサーチ機能で区別し易いように、調整幅Δthを現在設定されている閾値th_backの分解能とし、最小調整幅Δthfを閾値設定カウンタ11のカウント値を1増加または減少させることで変化する最小の閾値変化量と定義する。
ステップS57にて、ステップS61Aを実施することで、閾値th_backを増加し、ステップS55にて、物体非検知動作を繰り返し、最終的に、バックグランドノイズ光sig_backに対して「同期信号を非検知」の検知結果が得られた(ステップS56の結果がYESである)場合、前述した判定終端条件を満たしているかどうかを判断する(ステップS58)。ここでは、同一の閾値th_backでの信号処理フロー回数は、通常の物体検知動作と同様Nであり、閾値th_backは最小調整幅Δthfの最小分解能で調整されていることから、ステップS58の結果は常にYESとなる。そのときの閾値th_backを最適な閾値th_backとして、レジスタBに出力する(ステップS59)。
その後、物体検出装置100は、閾値サーチモードの終了信号を外部制御回路5に送信する(ステップS60)。外部制御回路5は、抽出された閾値th_backを、インターフェイス回路4を介して読み出し、今後実行する通常の物体検知動作モードの初期設定として、抽出された閾値th_backを設定することができる。
外部制御回路5は、システムの許容誤差に応じて、抽出された閾値th_backより少し高い値に、実際の動作時の閾値th_backを設定することもでき、また、そうなるように閾値th_backの抽出結果を変えることは容易である(例えば、ステップS59で、レジスタBに出力する前に、閾値th_backに対して最小調整幅Δthf×3を加える)。
図8は、上記の閾値サーチ機能の結果を、縦軸が閾値の設定コード(閾値設定カウンタ11の各カウンタ値に対応)、横軸が動作サイクル(1目盛りが、N=1回の動作に対応)であるとし、2つの筐体反射光(バックグランドノイズ光sig_back)レベル1及び2に対する動作結果を表している。
図中に略記したように、●で示されたプロットは、その閾値th_backの設定(縦軸)において、上記説明の通り、「同期信号を検知」し、次の新たな閾値th_backの設定へと移行する(閾値th_back→閾値th_back+Δthfとする)判断材料となった事象である。一方、○で示されたプロットは、1回のパルス発光に対して「同期信号を非検知」であったことを示し、N=7までそれが継続することを、確認すべき事象の1つを表している。ここでの判定終端条件の分解能は、閾値th_backの調整幅を最小調整幅Δthfとし、N=7としている。
いずれの筐体反射光レベル1及び2に対しても、最終的に出力する閾値th_backとなるのは、最小調整幅Δthfの変更後にN=7回、同期信号を非検知という事象が続いた場合になっている(判定終端条件の分解能)。
このように、外部制御回路5から物体検出装置100の制御を繰り返し行い、閾値th_backを手動で求める必要が無く、通常の物体検出動作を流用でき、かつ、簡単な回路の追加のみで閾値th_backをサーチする機能を有することは、極めて有益である。
(閾値の疎密サーチ機能:サーチ機能の高速化)
前述した閾値th_backのサーチ機能は、常に判定終端条件の分解能で閾値th_backを変更し、設定されているある閾値th_backでN回、同期信号が非検知となったときの閾値th_backを、最終的に設定すべき閾値th_backとして抽出する機能であった。しかし、そのような閾値サーチモードでは、図8で示したように、筐体反射光レベル2が大きい(バックグランドノイズ光sig_backが大きい)場合、最終的に設定すべき閾値th_backを抽出するまでに必要な動作サイクルが長くなる。
図5で説明したように、ステップS57にて設定された新たな閾値th_backで、信号処理フロー(ステップS55)を繰り返す測定回数は、何回閾値th_backをループさせるか(ある値の閾値th_backで測定を繰り返す回数)と、ステップS55にて何回のパルスが連続で検知または非検知となったときに「被検出物14有り」(同期信号を検知)または「被検出物14無し」(同期信号を非検知)の検出結果を示す信号を出力するかと、で決まる閾値th_backのサーチ機能における分解能、及び、検知とするパルスの回数に相当するNに依存する。
閾値th_backの抽出において、高い精度が必要であれば、それだけ測定回数を増やす必要がある。全体として該測定回数を増やせば、高精度の閾値th_back抽出が可能である。閾値th_backを高精度に設定できれば、信号光に対するS/N(信号対雑音比)の向上が可能になり、物体検出装置100の高精度化が見込めることになる。全体としての測定回数を減らせば、高速に閾値th_backを抽出することが可能であり、閾値th_backの抽出が短時間で終わる。
上記2つの観点から、測定回数(Nの大きさ)と、閾値th_backの最小の変動幅の設定との間には、ある程度の自由度を保持していることが望ましい。
ここでは、任意のバックグランドノイズ光sig_backの、物体検出装置100への入射強度レベルに対して、精度を犠牲にすることなく、より高速に最適な閾値th_backを探索(サーチ)する方法を説明する。
ここでの閾値th_backのサーチ機能、すなわち、閾値th_backの疎密サーチ機能では、最適な閾値th_backを、高速かつ高精度にサーチするために、最初に、相対的に分解能の低い(粗い)第1のサーチ機能が実施され、その判定結果が第1のサーチ機能を終端する判定終端条件を満たすと、相対的により分解能の高い(細かい)第2のサーチ機能に切り替えられて引き続きサーチが実施される。
図7で説明したように、上記最適な閾値th_backとは、厳密には、バックグランドノイズ光sig_backの入射強度レベルそのものに対応する閾値th_backを意味する訳ではないことには注意が必要である。すなわち、上記最適な閾値th_backとは、回路内部雑音の影響を考慮した上で、不要反射成分に対する個々の検出回路3の応答を揃えるための最適閾値を意味している。
まず、本発明の実施の形態として、最も好ましい第1及び第2のサーチ機能を有した閾値疎密サーチモードについて、図5及び図6(a)の各フローを参照して説明する。閾値疎密サーチにおいても図5の閾値サーチフローと同じように実施できる。
まず、ステップS51からステップS53までは、前述した閾値サーチ(図5参照)と同様に実行され、外部制御回路5からのスタート信号を受信後、最初に設定する閾値th_back及び閾値設定変更における調整幅Δthと、Nとの設定を開始する。ここで前述したサーチと異なることは、第1のサーチから開始するため、閾値設定変更における調整幅Δthは大きな値(すなわち、粗い条件に)設定され、Nについても、回数の少ない(分解能が低い)条件に設定される。
以降区別するため、第1のサーチ機能で用いられる閾値設定の調整幅ΔthはΔthc、測定回数NはNcと表記し、第2のサーチ機能で用いられる閾値設定の調整幅ΔthはΔthf、測定回数NはNfと表記することにする。第2のサーチ機能が前述した判定終端条件を満たす必要があることから、Δthc>Δthf、かつ、Nc<Nfの関係となる。
前述の説明で述べたのと同様にして、最小の閾値(最高感度設定)から第1のサーチを開始し、パルス発光させても「同期信号を非検知」となる閾値th_backを探索するものとする。ただし、例外的に、閾値th_backを最小の閾値(最高感度設定)に設定した段階で、「同期信号を非検知」となれば、該最小の閾値のまま、即、第2のサーチ機能へと移行するものとする。
ステップS54に係る初期設定後、信号処理フロー(ステップS55:図2(b)をさらに参照)を、N=Nc回実施することになる。初期設定では、筐体15の反射光に対して「同期信号を検知」となるので、ステップS56の結果はNOとなり、ステップS57の閾値及びNの変更フローへと移行する。
このとき、図6(a)に示したように、ステップS61Aへと到達し、設定されている調整幅Δth(=Δthc)分閾値th_backを増やすために、状態検知回路9は、閾値設定カウンタ11のカウンタ値を、Δthc分増えるように上昇させる。結果として、閾値th_back→閾値th_back+Δthcと設定された閾値が、新たな閾値th_backとなり、再度、信号処理フロー(ステップS55)が実施される。
初期設定時における閾値th_backは、ステップS57が実施される度に、Δthcずつ増加していき、ある閾値th_backで、筐体15の反射光に対して「同期信号を非検知」となったところで、次のステップに進む。
次のステップS58では、判定終端条件を満たしているかを判定する。閾値th_backの変更幅(調整幅Δth)を決めているのは状態検知回路9であるので、判定終端条件を満たしているか否かを判定するのは容易である。今、閾値th_backの変更幅はΔthc、パルス回数はNcであるので、判定終端条件(ΔthfかつNf)は満たしていないことになり、結果はNOとなるので、閾値およびNの変更フロー(ステップS57)へ進む。ステップS58からの遷移であるため、図6(a)より閾値変更フローで到達するのは、ステップS62Aとなる。ステップS62Aで、バックグランドノイズ光sig_backに対する閾値を一度、現在の閾値th_back→閾値th_back−Δthcと調整する。その後、判定終端条件を満たすように、Nc→Nf、Δthc→Δthfへと変更する。調整幅Δthの変更については、状態検知回路9が、閾値設定カウンタ11のカウントアップ量を変更することだけで実現可能である。そのため、状態検知回路9が、第1または第2のサーチ機能のいずれを実行するモードであるかを判定することができれば、閾値設定カウンタ11のカウンタ値のカウントアップ量の変更は、容易に実施することができる。閾値th_backの調整幅Δth及び測定回数Nが判定終端条件を満たすように設定された状態で、再度、ステップS55の信号処理フローを実行する。これ以降は、前述した閾値サーチと同様なフローとなるので、説明は省略する。
このようにして得られる、実際のサーチアルゴリズムが動作した例を、図10に示す。前述した図8と同様に、不要な反射光のレベルとして2つの例をそれぞれ示し、それに対して第1及び第2のサーチ機能が実施された結果が複数重ねてプロットされている。最小の閾値(最高感度設定)から第1のサーチを開始し、パルス発光させても検出されない閾値th_backを探索している、第1のサーチ機能について説明を行う。
第1のサーチ機能は、最小の閾値(最高感度設定)から、Nc=1としてパルス発光に対する検出結果を観測する。その結果、「同期信号を検知」すれば、最小調整幅Δthc=3だけ閾値設定コード(閾値設定カウンタ11のカウンタ値)をインクリメントする。
Nc=1及びΔthc=3の条件下で、最初に、バックグランドノイズ光sig_backが存在している場合に「同期信号を非検知」になった時点で、第1のサーチは完了する。
次に、Nf=7及びΔthf=1の条件での第2のサーチ機能に移行するが、その前に、一旦、上記第1のサーチ完了時点の閾値th_backから、−Δthc(すなわち、ここでは−3)だけ、閾値th_backを下げておく必要がある(理由は後述)。第2のサーチ機能は、上記シフトされた閾値から、第1のサーチ機能と同様ではあるが、Nf=7とし、各パルス発光に対する、「同期信号を検知」または「同期信号を非検知」の検知結果を観測していく。その結果、「同期信号を検知」となれば、Nfとは関係なく(判定終端条件に違反する場合は、即)、最小調整幅Δthf=1だけ、状態検知回路9により、閾値設定カウンタ11のカウンタ値がインクリメントされる。
ここで注意すべき点がある。第2のサーチにおいて、最終的に検出しようとしているのは、すなわち、判定終端条件は、Nf=7個の連続するパルス発光に対して、同期検出した結果が全て「同期信号を非検知」となる事象である。これに対し、第2のサーチを開始する上記シフトされた閾値th_backでは、まずこのような事象は発生しない。すなわち、Nf=7個のパルスを発光するよりも前に、「同期信号を検知」となる場合が、ほぼ必ず発生する。換言すれば、第1のサーチにおけるΔthcがこれを満足するように設定され、第1のサーチの完了に伴って行われる−Δthcの閾値シフトがなされなければならない。図10のトレースを注意深く見ると、上記注意点に関連する挙動が確認される。
第1及び第2のサーチのいずれに対しても、図10にも略記したように、●で示されたプロットは、その閾値設定(縦軸)において、上記説明の通り、「同期信号を検知」し、次の閾値th_backへ移行する(閾値設定をΔthcあるいはΔthfだけ増す)判断材料となった事象である。一方、○で示されたプロットは、1回のパルス発光に対して「同期信号を非検知」であったことを示し、第1のサーチであればNc=1そのものであり、第2のサーチであればNf=7までそれが継続することを確認すべき事象の1つを表している。
従って、第1のサーチで●から○に発生事象が変わったとたんに、一旦閾値th_backがΔthcだけ下がるとともに第2のサーチモードに切り替えられ、第2のサーチでは、最終的に同一値の閾値th_backに対して、○がNf=7個連続して横に並ぶことで該サーチが終端されている。
ここで、図10の結果は、閾値設定のLSB(Least Significant Bit:最下位のビット)幅、すなわち、第2のサーチモードにおける閾値th_backの最小調整幅は、図7に示した規格化閾値として、Thresh/σ=0.5を満たすように設計して得られたものである。このため、図10中のバックグランドノイズ光sig_backに近い閾値th_backが選択されている時には、図7に示した確率で○及び●のいずれの事象も生起し得る。しかし、第1のサーチにおけるΔthc/σは3単位であるため、第1のサーチで筐体反射光レベルを超え(○)、前記−Δthcのシフトとともに第2のサーチに移行した後、最初に得られる検出結果は確実に同期検出(●)となり、安定して次のΔthfのインクリメントに移ることが可能となっている。
すなわち、この例においては、第1のサーチにおける規格化された閾値増分Δthc/σは1.5、第2のサーチにおけるΔthf/σは0.5であり、その比Δthc/Δthfは3である。このように設定することにより、上記説明及び図7に示す、安定かつ迅速な終端条件への収束が実現されている。
ここで、△th2/σについて、非常に極端な設定、例えばΔthf/σ>1あるいはΔthf/σ<0.1は避けるべきであることを説明する。Δthf/σ>1のときには、容易に分かるように、第2のサーチが終端される閾値th_backの設定条件は、ほとんど唯一の値に定まるものの、実際の筐体反射光レベル及び回路内雑音と無関係なずれ(量子化誤差)が発生することになり、所望の動作を実現することができない。
また逆に、Δthf/σ<0.1と非常に小さくすると、第2のサーチが終端される閾値th_backの設定条件(抽出結果として出力される閾値の設定コード)が10以上にわたって分布することになる。また、場合によっては、終端に要する時間の分布幅も極めて大きくなってしまう。このように処理が煩雑にはなるものの、多数の物体検出装置100に対してこのようなサーチ機能を実施し、統計的に十分な量の最適な閾値th_backの抽出結果を収拾すれば、実際に差し引かれるべきバックグランドノイズ光sig_backに相当する閾値th_backを非常に精度良く確定することは可能である。しかしながら、第1のサーチによって高速な疎サーチ(粗いサーチ)を実現するという意図に反して、Δthc/σとの比を非常に大きく(例えば30)取って、Δthc/σを先に説明した程度の値(1.5)とする必要がある。この結果、仮に、実際の筐体反射光レベルを僅かに上回ったところで第1のサーチが終端され、−Δthcのシフト(Δthfの30倍のシフト)が与えられたとすると、第2のサーチの収束には非常に長い時間がかかることは、図7および図10から容易に理解されるであろう。
このような詳細な検討結果から、第2のサーチ機能における規格化閾値Δthf/σは0.1乃至2の範囲に、また第1のサーチ機能におけるΔthc/σは、Δthf/σに対して2倍乃至4倍の範囲に、設定することによって、高速なサーチ機能の収束と現実的に意味のある最適閾値の抽出/設定精度が両立されることが見出された。
以上から、本発明においては、{Δthc>Δthf,Nc<Nf}であることが望ましい。また、分解能を制御するためには、△thとNとは、上記の関係を保って連動すべきものである。例えば、{Δthc>Δthf,Nc>Nf}または{Δthc<Δthf,Nc<Nf}なる設定は、それ自体は実施可能であるとはいえ、結果的に実現される第1及び第2のサーチ機能における各分解能を、所望のものにするのは難しいうえ、何らのメリットもない。
また、本発明では、第1のサーチ機能と第2のサーチ機能とを有した、閾値th_backの疎密サーチを上記の条件で実施することが、最も有益であるとしているが、さらにサーチ機能を分解することで最適な閾値th_backの抽出の高速化が図れる場合がある。例えば、閾値th_backの設定コード数が多いとき、第1のサーチの前に、全閾値設定コードの中心点で一度物体検出動作を実施する第0サーチ機能を追加する。第0サーチ機能によって、同期信号が検知されなかったら、最小の閾値(最高感度設定)に戻り、第1サーチ機能から実施することになり、同期信号が検知された場合はその点(閾値コードの中心点)から第1サーチ機能を実施するという構成にすることで、図10で示した筐体反射光レベル1では、1動作サイクル追加になるが、筐体反射光レベル2においては、その最適な閾値th_backの抽出が高速になることは明らかである(図示せず)。
ここで重要なことは、分解能が粗い閾値サーチ機能から徐々に分解能が高い閾値サーチ機能へと変更していくことであり、最終的に終端条件を満たす閾値サーチ機能で終わることが満たされていれば、第1のサーチ機能及び第2のサーチ機能のみに限定されるわけではない。
(サーチ機能の2分法への適用)
次に、図5、図6(b)、及び図9を参照し、本願発明で開示する第1及び第2のサーチ機能を、同様の目的のために一般的によく用いられる、いわゆる2分法(バイナリーサーチ)に適用した例を示す。閾値サーチのフローは前述した内容と同じであり、閾値th_backの変更フロー(図6(b)参照)が特殊なものとなる。以下の説明は主に変更のある部分のみを詳細に説明する。
ここで2分法では、全設定範囲の中央に位置する点(閾値設定)から、それぞれ2分岐しながら設定範囲全体に広がるパスを、各分岐点での判定結果を基に選択していき、その度にΔthが半減していく。
このように、Δthは必ずしも一定に保たれる必要はないが、サーチの開始から終端に向かって小さくなっていくということは必須である。また、サーチ開始後の最初の閾値th_backの設定変化量(フルスケールの1/4)がΔthcに相当し、判定終端条件に至る際の最後の閾値th_backの変化量をΔthfと考えることができる。
また、第1のサーチではNcのみ、第2のサーチでNfのみといった形で明確に区別されるものではなく、2分法の場合には、以下に説明する配慮を加えたアルゴリズムとすることで、本願発明におけるサーチ機能を実現することができる。
まず、サーチ機能を実施するうえで初期設定値はパルス発光回数Nfで設定され、Δthは閾値設定フルスケールの1/2に設定されるものとする(ステップS54)。
2分法においては、基本的に1度通ったパスは2度と出現しない。従って、終端条件の直前において例外的な処理を行わない限りは、アルゴリズムが収束しない(設定は終端条件であるがバックグランドノイズ光sig_backを非検知とならない)場合がある。従って、終端条件以降も同期検知が確認(ステップS56の結果がNO)されてしまう場合を想定し、閾値th_backの調整幅が終端条件を満たしているかを判定し(ステップS61B)、その結果がYESであれば、閾値th_backの最小調整幅Δthfで再度インクリメントし、物体非検知動作(信号処理フロー)を実施するようにする(ステップS62B)。
上記以外の動作フローは前述した2分法の動作そのものとなる。
閾値th_backの調整幅がΔth(≠閾値th)で設定されている場合に、物体非検知動作(ステップS55)を実施し、ステップS56の結果YESとるが、ステップS58の終端条件は満たされていないので、ステップS57の閾値変更フローに遷移する。つまり筐体15が非検知であるという結果が得られていることになるので、閾値を低い方向(感度の高い方向)に調整する必要が生じるため、現在設定されている閾値th_backの調整幅Δthの半分だけ減少するように閾値th_back→閾値th_back−Δth/2と閾値が設定される(ステップS64B)。
一方、同期信号が検出された場合(ステップS56の結果がNO)であれば、その閾値th_backより高いところ最適な閾値th_backは存在すると判断できるため、現在設定されている閾値th_backの調整幅Δth(≠th)の半分だけ増加するように閾値th_back→閾値th_back+Δth/2と閾値が設定される(ステップS63B)。
以上のように、調整幅Δthの調整幅を半分ずつに減少させていくことによって、最終的にΔth=Δthfとなったあとの信号処理フローを経て、筐体15による反射光(バックグランドノイズ光sig_back)が非検知という結果になれば、閾値th_backの抽出作業は終了する。
以上説明したように、終端処理を加えた2分法によるΔth設定のアルゴリズムと、図10でも説明した、如何なるときでも、1度でも「同期信号を検出」となれば即、閾値th_backをインクリメントするというアルゴリズムを組み合わせることにより、初期の粗い分解能での第1のサーチを行い、終端条件が発生する際には最小設定幅による閾値th_backのインクリメントを行う高分解能での第2のサーチを実現することができる。また、図9から明らかなように、2分法の場合、図10と比べて筐体反射レベルの大小の影響を受けずに、疎いサーチが常に同程度の時間(動作サイクル数)で行われるというメリットがある。
(設定期間)
閾値th_backが抽出された後、すなわち、閾値th_backがレジスタBに記録された後、閾値制御部Aに閾値thを設定し検出回路3に電流を供給するまでの、設定期間を設けることが有益である(図11および図12参照)。
物体検出装置100が、通常の物体検知/非検知動作(図2(a)及び(b)参照)を実施中に、閾値thが変更された場合正しい検知結果は得られない。また、設定された閾値thが十分安定しない状態で通常の検知動作を行えば、この場合も正しい検知結果が得られない恐れがある。
そこで閾値thを設定する設定期間を設けることで、物体検出装置100としての検知動作に影響を及ぼすことなく、検知動作期間には現行どおりの精度で動作することができる。
特別に設定期間を設定することもできるが、より現実的には、物体検出装置100の休止期間に合わせて、閾値生成期間を設けることが望ましい。例えば、同期ゲート方式での物体検出装置100の休止期間とは、周囲の外乱光(DC光)を除去するための期間である。その方法は一般的にオフセットキャンセル等が用いられている。そのような手法を用いてDC光成分を除去するためには、DC成分をIC内部の容量に充電する期間が必要であるため、閾値th_backを設定する期間は十分に存在する。その間、検出回路3は、通常の検知動作を行っておらず、動作に影響を及ぼすことは無いので、オフセットキャンセル等の動作と並列に閾値生成をすることが可能である。
例えば、図12にあるようなカレントミラー回路で実施する場合、ゲート電圧を充電する期間に適用できる。図12に示すカレントミラー回路が、図4の検出回路閾値生成部45に対応し、検出回路3の閾値thを設定する電流が出力されるノードの下にあるスイッチを、信号用閾値設定レジスタ41及びBG用閾値設定レジスタ42の各デジタル値に応じてON/OFFされる場合を想定している。
上記休止期間中に既知の電流出力を持つ電流源122からの定電流によりUnitトランジスタ121と、Nの2乗で選択できるトランジスタ(検出回路3の閾値thを決定する電流源となるもの)を充電し、物体検出動作の期間となったらUnitトランジスタ121のゲート-ドレイン間のスイッチ及び電流源122からのスイッチを開放し、Nの2乗個で選択できるトランジスタを必要な閾値設定の分だけスイッチをONすることで、所望の閾値電流を検出回路3に出力した状態で、物体検出動作を実施することができる。
Nの2乗個で選択できるトランジスタの数が増えれば、上記休止期間で充電に要する時間は長くなる。上記の休止期間により、物体検出装置100は安定した物体検知動作を実施できる。
(検知距離と電流との関係)
図13で示したように、物体検出装置100において、その検知距離dと閾値(感度)電流Ithとの関係は、2乗の反比例である。それは、発光パルスの強度が距離の2乗で減衰することに由来する。
検知距離を線形で制御できることは、直感的な制御が可能であり、エンドユーザーにとって使い易い製品と言える。デジタル制御の1LSB変化に対して、検知距離が等間隔に変化するように閾値を設定できれば、ユーザー側が変換コード表などを使用せずに、容易に検知距離を元に設定を変更することができる。
例えば、電流閾値の場合の閾値電流IthをIth=Iunit×M2(Iunitは閾値電流の最小分解能、Mは自然数で閾値の設定段階)となるように制御すれば、デジタルビットの1LSBの変化に対して得られる検知距離は線形の変化となる。
閾値を電流で決定している場合の具体的な一実施例を図15に示した。
閾値電流生成回路はカレントミラー回路で構成されている。例えば図4(a)および(b)における検出回路閾値生成部45に利用される。トランジスタのドレイン側に付加されたスイッチをレジスタBからの信号で制御することで、容易に閾値電流Ithを変更することができる。
既知の電流源152はIC内部に内蔵された電流源であり、これは後述するようにウェハテストなどの製造工程検査時に所定の値になるように設定(トリミング)されているものとする。その既知の電流をカレントミラーの元のUnitトランジスタ151(ダイオード接続されたトランジスタ)に流し込みその値を電圧値として記憶する。次に既知電流とUnitトランジスタ151、Unitトランジスタ151のダイオード接続されているスイッチを開放し、Unitトランジスタ151のM2個を選択できる個数で配置されたトランジスタを閾値抽出で設定された値になるように選択し、スイッチを閉じるように電流閾値を決定すればよい。例えば、M=2のときはM2=4となるように、1個と3個のトランジスタのスイッチをONし、M=3のときはM2=9となるように、9個のトランジスタをONして電流閾値を設定する。
既知の電流が大きくて、トランジスタのサイズが小さければ、その充電時間は少なくなるが、実際は消費電流の関係で既知電流は制限され、トランジスタは、閾値thを設定するために有る程度の大きさ(面積)を必要とするので、その充電期間は無視できない。そのため、上記で述べたように、検知動作に関係の無い期間で、閾値設定のための充電期間を有するほうが効率的だといえる。
(閾値サーチアルゴリズムの応用)
物体検出装置100の存在価値は、その対象物を限定せず、特殊で高価な専用素子を用いずに、低コストで広汎な目的に使用できることにある。その結果必然的に、センサ自身の検知特性、特に検知距離の、絶対値というよりもむしろ大量生産時の均一性あるいは安定性に対する要求が極めて厳しいものになる。
この目的を達成するため、物体検出装置の製造工程において、例えば検出感度を個別に調整する手段が組み込まれ得ることは周知である。
従来技術として、集積回路の製造工程におけるトリミング技術が知られている。具体的には、フォトダイオードとプリアンプ回路が集積回路化されたICチップの製造工程において、個々に測定されたフォトダイオードの感度を補正すべく、同一チップ内のプリアンプの利得(抵抗値)を調整するために、予め集積化されたヒューズ(配線材料)をトリミング(カット)する。他の従来技術としては、集積回路とは別にトリミングすべき抵抗を同じパッケージ基板上に実装した上で、所望の特性が得られるようトリミングする手法や、集積回路内に予めトリミングすべき抵抗またはヒューズさらには切断回路や制御回路まで集積化した上で、最終製品としてパッケージに実装した後で、所望の特性が得られるようトリミングする手法なども周知である。
物体検出装置のテスト工程では、最小受信感度を決める既知電流を決定するため、トリミングビット値(レジスタ値)を設定することが必要である。その設定をするために前述した閾値サーチアルゴリズムを応用することで、トリミング設定値を効率よく決めることができる。
以下、図14(a)を用いて説明する。最初にテストモードに設定し(ステップS141)、テスト対象である被測定IC(DUT:Device Under Test)の測定環境を設定する(ステップS52)。その測定環境の設定例は図14(b)である。DUT143の内部構成は前述した図1と同じである。前述した筐体反射のバックグランドノイズ光sig_backを設定する場合、発光素子13から反射されて戻ってくる光パルスが入力であったが、ウェハテスト時の最小受信感度の調整においては、内部電流をDUT143内部で生成される既知の電流と用いてそれを電流パルス入力とするような構成をとる。さらに、当該既知電流によって検出回路3に設定すべき閾値thをも生成するような構成とすることで、前記既知電流のばらつきによらず最小受信感度の調整を行うことができるようになる。
すなわち、前記既知の振幅を有する入力電流パルスに対し、同じ既知電流から生成する閾値を用いて検出回路3の応答を調べることが可能になる。これにより、前記既知の振幅を有する入力電流パルスを検出可能な閾値thを、上述した各種閾値サーチによってサーチし、最小受信感度を予め知ることができる。このようにして抽出された、最適な閾値のサーチ結果を、インターフェイス回路4を通じて外部に出力し、これを補正するよう最小受信感度のトリミングを実施して、最終的な個々のDUTの最小受信感度を既知の精度に収めることができる。
ここで、最小受信感度レベルの入力に対して受信回路の閾値をサーチしていく際には、確からしい条件の抽出に至るまでの過程で、回路内部雑音の影響によって比較器の出力が確率的な挙動を示す(測定の都度結果が変わる)ため、上記最適閾値のサーチアルゴリズムを使用することができる。ただし、この場合は、パルスをN回非検知したかという情報ではなく、N回検知したかという情報が必要である。つまり、上記の閾値サーチと信号処理の論理が逆になることに注意する(図2(a)参照)。その結果も、図5のステップS56がステップS142のように、入力電流パルスを検知したかという判定条件に変更となるだけである。あるいは、閾値をサーチする方向も同様に閾値が高いところから、低いところに変更していくという処理の点で逆になることに注意する(図6(a)または(b)の+が−になる)。これらの点を除けば、アルゴリズムは同様に採用することができる。
以上説明したように、本発明によれば、光の反射を利用した物体検知において、不要なノイズ成分を差し引くことができ、最適な物体検知感度を設定できる。
また、その設定アルゴリズムにより、高速で高精度の設定が可能となる。
これにより、高性能な物体検出装置を実現でき、ユーザーの使い勝手も向上させることができるという効果を有する。近年搭載が進んでいる、携帯機器(電子機器)の人体検知のみならず、その他の、物体検知装置、さらには、該物体検知装置を用いた各種電子機器に対しても、同じ効果を有する。
(閾値サーチアルゴリズムの応用2、被検出物の最小感度設定)
上記で説明した手法を組み合わせることにより、携帯電話やカメラなど最終製品に実装された後、真の信号光sig_realに対する最適な閾値設定th_sigを抽出する場合にも、上記の閾値サーチ機能が応用できる。
例えば最終製品(電子機器)では、ある距離に置いた被検出物14を確実に検知したいという要望が有る。その場合に上記のような閾値サーチを行うことで最終製品ごとにその距離で「被検出物14有り」と判断される閾値を抽出することになるので、最終製品のばらつきによる距離のばらつきを抑制することができる。
その方法は上記のテストモードの設定と全く同じ手法を採用し、上記テストモードでの入力には内部で生成した入力パルス電流を用いたが、今回は実際の物体検出動作で設定するための閾値を設定するので、被検出物14からの反射光が入力信号となるだけで、その他のサーチフローに変更はない。
以上のように簡単に閾値サーチのアルゴリズムを採用し、最終製品で最適な閾値を抽出することができる。
(本発明の、積分型の物体検出装置への適用)
なお、本実施の形態では、発光素子13により光パルスを出射する、パルス受光型の物体検出装置100を想定してきたが、本発明の物体検出装置はこれに限定されず、A/D(Analog/Digital:アナログ‐デジタル)変換回路を備えた物体検出装置にも適用できる。
一般的に、A/D変換回路は、積分回路により構成されるものであり、入力電流(または電圧)のアナログ量を積分し、時間(または周波数)領域へのデジタル変換が為される。
A/D変換回路に対して、本発明を適用するためには、図1に示す物体検出装置100を新たに、図18に示す物体検出装置200の構成へと変更することで実現できる。図1に示す物体検出装置100からの変更点として、物体検出装置200は、増幅回路2が積分回路181に変更されており、閾値制御部Aの出力先がカウンタ回路10となっているという点が挙げられる。
積分回路181は、図19に示したような、オペアンプ193を用いた回路構成に変更すればよい。参照電流源191は、入力側から見て、積分コンデンサ192に充電電流Irefを供給する、既知の電流源である。
パルス受光型の検出回路である、物体検出装置100は、そのばらつきを抑制するために、N回パルスを発光したときの同期信号を全て検出して初めて、「被検出物14有り」の情報を、外部制御回路5へと出力する構成となっている。
一方、積分型である物体検出装置200は、入力信号に対して積分期間を十分とることでS/Nを確保し、検出回路3等の挙動に起因する、ランダムなばらつき要因を抑制することができる。つまり、物体検出装置200において、N回というパルスの発光回数は重要でない一方、積分期間で得られる全体の信号光量は、積分型回路のS/Nに依存することになる。反射光を測定する場合、発光素子13から発光されるパルス光は、一定の積分期間において十分なS/Nを有する回数発光している(積分したら十分な光量が得られる程度に発光している)か、もしくは、該積分期間中発光し続けるような、DC光を用いる必要がある。
積分型回路である物体検出装置200の動作では、発光素子13から発光された信号光に対して、十分な積分期間Tを単位として測定を実施する。その結果得られるデジタル値(カウント数)と、発光素子13からの発光が無い状態で同様の積分を実施した結果得られるデジタル値(カウント数)と、の差分が、ある閾値(カウント数に対するデジタル閾値)を超えていれば、物体検出装置200は、「被検出物14有り」と判断することになる。
図20は、チャージバランス方式のA/D変換方式を用いた、物体検出装置の動作結果を示している。
図18および図19を参照して、A/D変換方式の物体検出動作の概要を説明する。
被検出物14からの反射光(パルスでない場合)を受光した受光素子1は、入力側から見て、積分コンデンサ192を放電するように、受光素子1側に向けて、入力電流Iinを流す。その間、タイミング生成回路8は、参照電流源191に接続されたスイッチ194をOFFさせるように制御している。
ここで、一定の値である入力電流Iinを流し続けると、検出回路3へ出力される電圧(積分回路出力電圧)Voは、入力電流Iinと積分コンデンサ192の静電容量との比に応じて、線形に増加する。
後段の検出回路3は、電圧値が一定である参照電圧Vrefを、閾値として有しており、電圧Voが参照電圧Vrefを超えた時点で、検出回路3の出力2値信号は、論理反転する。この場合、状態検知回路9は、検出回路3の出力信号を、一つのフリップフロップで受け、論理反転信号を得たあとのクロック信号(図示せず)に応じて該フリップフロップが論理反転信号を送出することで、タイミング生成回路8を制御し、参照電流源191が積分回路181の入力に流れるように、スイッチ194をONさせる。
参照電流源191の電流Irefが、入力電流Iinより十分大きな値の電流であるものとすると、参照電流源191の電流Irefから、受光素子1からの入力電流を差し引いた電流が積分コンデンサ192に流れ込み、積分コンデンサ192は、入力側からみて充電するように働く。
次に、電圧Voが検出回路3の参照電圧Vrefを下回ると、検出回路3の出力信号は論理反転し、状態検知回路9は、その次のクロック信号に応じて論理反転信号を出力してタイミング生成回路8を制御し、参照電流源191に接続されたスイッチ194をOFFさせる。そして、再度入力電流Iinのみの放電が始まる。
このように、積分コンデンサ192の充放電を繰り返し実行することで、積分回路181は、ある一定期間(積分期間T:単位は時間)に何回検出回路3から反転信号を得られたかをカウンタ回路10でカウントするようにすれば、入力電流の大きさをカウンタ回路10のカウント数へと変換することができる。図20を見ても分かるように、入力信号が増えたら、積分回路181の出力電圧Voが増加する傾きが大きくなるので、検出回路3が反転する期間T_cycが短くなり、積分期間Tでのカウント数が増加することが容易に分かる。
同様の測定を、今度は発光素子3を発光させずに実施し、得られたカウント数を発光有りのカウント数から差し引くことで、外乱ノイズの影響がない全信号光sig_allの大小に応じた、カウント数を得ることになり、閾値制御回路Aからの閾値th(デジタル値)よりそのカウント数が大きければ、状態検知回路9は「被検出物14有り」という検知結果を示す信号を出力することになる。
上記説明は、チャージバランス方式の物体検出装置200に関するものであるが、これに限定されるものではなく、その他の方式(周知技術である、2重積分方式またはΔΣ変換方式等)のA/D変換回路にも、本発明を適用することは可能である。
図21に示したのは、2重積分のA/D変換方式であり、入力電流で一定期間充電し、参照電流でその電圧分を放電する期間を測定することで、上述したのと同様のA/D変換を実施することができる。回路構成は、図18に示す物体検出装置200と同様で実施可能であるため、ここでは説明を省略する。
ここで注目すべき点は、積分型のS/Nが十分良好にできることから、バックグランドノイズ光sig_backに対する閾値th_backを抽出することは容易である。まず、物体検出装置100の場合と同様に、物体検出装置200を外部制御回路5からバックグランドノイズ光測定モードに設定し、測定環境を、筐体15からのバックグランドノイズ光sig_backだけが入力するようにする。このとき、閾値制御部Aからの閾値制御信号は、無視されるものとする。前述した、積分回路181を用いた物体検出動作を実施すればバックグランドノイズ光sig_backに対するカウント数が得られるので、状態検知回路9は、得られたカウント数が実際の物体検知動作から差し引かれるようにするため、デコーダ12を介してレジスタBに対して、バックグランドノイズ光sig_backの信号レベルの測定結果として閾値th_backを直接設定することになる。
外部制御回路5が閾値サーチモードを解除し、通常の物体検出動作が実施される状態になると、閾値制御部Aからの制御がかかるようになり、閾値thの設定値に応じた物体検出動作を実施することができる。また、閾値サーチモードが終了したと同時に通常の物体検出動作モードに移行するよう設定することもできるので、初期状態が確実にバックグランドノイズ光sig_backのみ入射する環境であれば、バックグランドノイズ光sig_backの時間変化にも対応し、高精度に物体検出動作を実施することも可能である。
例えば、本発明の物体検出装置が携帯電話に搭載された場合、物体検出装置は、ユーザーの顔が被検出物14であると仮定し、通話時に携帯電話がユーザーの顔に近接したときに、携帯電話の画面および/またはバックライトをOFFするという用途に使用することが考えられる。
上記携帯電話が着信を受けたとき、ユーザーが通話ボタンを押したと同時に筐体反射測定モードが実行するように設定する。このとき、ユーザーの顔の位置は、物体検出装置から遠い。携帯電話のパネルからの反射光に基づく、バックグランドノイズ光sig_backが抽出され設定されたあと、ユーザーの耳に携帯電話が近づくまでの間に、物体検出動作を実施し、ユーザーの顔が近づいたら、携帯電話のバックライトをOFFとする構成にすればよい。そのような目的にも、本発明の物体検出装置は利用できる。ただしその際には一連の測定毎に、積分期間T×4の時間が必要になる。
以上のように、積分型回路においても、本発明は十分適用可能であることが分かる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。