JP2011093960A - 液晶材料、液晶表示素子および液晶光空間変調素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】エレクトロクリニック効果におけるチルト角を大きくすることが可能な液晶材料を提供する。
【解決手段】TFTアレイ基板10と対向基板20との間に、液晶材料を含む液晶層30を備えている。液晶材料は、不斉炭素原子(C* )を挟んで正対する位置にコア部およびオルガノシラン構造部を有している。コア部のうち、不斉炭素原子にオキソ基を介して連結されたフェニレン基には、1つあるいは2つの電子吸引性基が導入されている。この液晶材料は、全体として不斉炭素原子をカイラル中心とする構造を有しており、スメクチックA相を示す。
【選択図】図1
【解決手段】TFTアレイ基板10と対向基板20との間に、液晶材料を含む液晶層30を備えている。液晶材料は、不斉炭素原子(C* )を挟んで正対する位置にコア部およびオルガノシラン構造部を有している。コア部のうち、不斉炭素原子にオキソ基を介して連結されたフェニレン基には、1つあるいは2つの電子吸引性基が導入されている。この液晶材料は、全体として不斉炭素原子をカイラル中心とする構造を有しており、スメクチックA相を示す。
【選択図】図1
Description
本発明は、スメクチックA相を示す液晶材料、ならびにそれを用いた液晶表示素子および液晶光空間変調素子に関する。
近年、モバイル機器などの小型用途から大画面テレビなどの大型用途まで、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)を用いたアクティブマトリクス駆動方式の液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)が普及している。このLCDでは、インパルス駆動方式などを採用して液晶材料の応答速度が高速化されてはいるが、その液晶材料自体の応答速度が根本的に遅いため、動画ボケなどが生じやすいという問題がある。このため、LCDの動画表示品位は、プラズマディスプレイ(PDP:plasma display panel )および電界放出型ディスプレイ(FED:field emission display)などと比べて未だ劣っている状況にある。
LCDの高速応答化については、フレームレートを60Hzから120Hzまたは240Hzに変更する対策(ハイフレームレート駆動)がなされている。ところが、LCDの動画表示品位は、確かにTFTを含む駆動系の要因に依存するところはあるが、本質的には液晶材料自体の応答特性に大きく依存する。よって、液晶材料自体の応答特性を改善しない限り、根本的な解決にはならないため、実質的にハイフレームレート駆動を実現できているとは言えない。そこで、LCDにおいて優れた動画表示品位を実現するために、ハイフレームレート駆動に対応できる高速応答可能な液晶材料の登場が要望されている。
高速応答可能な液晶材料としては、ネマチック液晶(フレクソエレクトリック効果)、強誘電性液晶または反強誘電性液晶などが知られているが、最近では、スメクチック液晶(スメクチックA相のエレクトロクリニック効果)も検討されている。
エレクトロクリニック効果とは、スメクチックA相において一軸配向している液晶材料(液晶分子)に電界を印加した際に、その液晶分子の光軸(長軸)が電界強度に応じて傾斜する現象であり、電傾効果とも呼ばれている(例えば、非特許文献1参照。)。この場合には、偏光方向が直交する2枚の偏光板の間に液晶材料を配置すると、偏光板の光軸と液晶分子の光軸との間の角度(チルト角)に応じて透過光量が変化する。この透過光量は、T/T0 =sin2 (2θ)×sin2 (πΔnd/λ)という式で表される。ここで、T=透過光量、T0 =入射光量、θ=チルト角、Δn=液晶材料の複屈折、d=液晶層の厚さ、λ=透過光の波長である。この式によれば、チルト角が±45°であると透過率が最大になる。チルト角が最大になるリターデーション(=Δnd)における透過率とチルト角(°)との間の相関は、図8に示した通りである。
エレクトロクリニック効果により応答時間が数μs〜数十μsになるため、液晶材料の応答速度が大幅に速くなる。また、電界強度が低い範囲ではチルト角が電界強度に比例するため、透過率の電圧変調が可能になる。このため、エレクトロクリニック効果を利用した表示モードは、アクティブマトリクス駆動方式に極めて適しており、LCDに限らずに他の光学用途においても有用である。
ところが、従来のエレクトロクリニック効果を発揮する液晶材料では、LCDなどの実使用上の要求性能を考慮すると、チルト角がそれほど大きいとは言えないため、十分な光学変調が得られなかった。そこで、チルト角が大きくなる液晶材料として、コア部を有する非カイラル末端にシロキサン構造部が導入された材料系が検討されている。このような材料では、アルキル鎖よりも巨大でフレキシブルなシロキサン基を末端に有し、光学変調に関わるコア部が電界に応じて動きやすくなるため、チルト角が大きくなると考えられている(例えば、非特許文献2参照。)。この場合の最大チルト角は、約26°となる。一方、透過率はせいぜい60%程度にすぎないため、LCDなどへの実用化を考えると、未だ不十分である。
フィジカル レビュー レターズ,38巻,1977年,848頁,ガロフ等(Physical Review Letters, vol.38,1977,p848,Garpff et al. )
ケム.メイター,7,1995年,1397頁〜1402頁,ナシリ等(Chem.Mater,7,1995年,p1397〜p1402,Naciri et al. )
液晶材料の高速応答化についてはエレクトロクリニック効果が有効であるにもかかわらず、そのエレクトロクリニック効果におけるチルト角は未だ十分に大きいとは言えない。そこで、高速かつ十分な光学変調を得るために、エレクトロクリニック効果におけるチルト角をできるだけ大きくすることが切望されている。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、エレクトロクリニック効果におけるチルト角を大きくすることが可能な液晶材料を得ると共に、それを用いて高速かつ十分な光学変調が得られる液晶表示素子および液晶光空間変調素子を得ることにある。
本発明の液晶材料は、式(1)で表されると共にスメクチックA相を示すものである。式(1)に示した「C* 」は、不斉炭素原子を表している。また、本発明の液晶表示素子または液晶光空間変調素子は、一対の基板の間に液晶層を備え、その液晶層が上記した液晶材料を含むものである。なお、液晶表示素子とは、液晶層に電界が印加されると、それに応じて液晶材料(液晶分子)の長軸が傾斜するため、液晶層の透過率が変化するものである。また、液晶光空間変調素子とは、液晶層に電界が印加されると、それに応じて液晶材料の長軸が傾斜するため、液晶層に入射した光が空間変調されるものである。
本発明の液晶材料によれば、式(1)に示した構造を有しているので、そのような構造を有していない場合と比較して、スメクチックA相のエレクトロクリニック効果におけるチルト角を大きくすることができる。よって、本発明の液晶材料を用いた液晶表示素子または液晶光空間変調素子によれば、高速かつ十分な光学変調を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.液晶材料
2.液晶材料を用いた液晶表示素子
3.液晶材料を用いた液晶光空間変調素子
1.液晶材料
2.液晶材料を用いた液晶表示素子
3.液晶材料を用いた液晶光空間変調素子
<1.液晶材料>
まず、本発明の一実施形態の液晶材料について説明する。ここで説明する液晶材料は、多様な光学用途に用いられるものであり、その光学用途の具体例としては、後述するLCDなどの液晶表示素子、または光偏光スイッチなどの光空間変調素子が挙げられる。
まず、本発明の一実施形態の液晶材料について説明する。ここで説明する液晶材料は、多様な光学用途に用いられるものであり、その光学用途の具体例としては、後述するLCDなどの液晶表示素子、または光偏光スイッチなどの光空間変調素子が挙げられる。
液晶材料は、式(1)で表されるものであり、光学用途の使用温度域においてスメクチック液晶層を形成する(一軸配列したスメクチックA相を示す)性質を有している。スメクチック液晶層とは、液晶分子の長軸が層状に配列されている液晶層であり、スメクチックA相とは、スメクチック液晶層の法線方向と液晶分子の長軸方向とが一致している液晶相である。なお、光学用途の使用温度域とは、光学用途の各種機器などが一般的に使用される温度範囲であり、例えば、20℃〜50℃である。ただし、20℃〜50℃の範囲内の温度域を含んでいれば、全体の温度域は低温側および高温側に多少ずれてもよい。
この液晶材料は、式(1)から明らかなように、不斉炭素原子(C* )を挟んで正対する位置にコア部およびオルガノシラン構造部を有している。コア部は、不斉炭素原子よりも左側の部分であり、一方、オルガノシラン構造部は、不斉炭素原子よりも右側の部分である。この液晶材料では、コア部のうち、不斉炭素原子にオキソ基(−O−)を介して連結されたフェニレン基(−C6 H4 −)に、1つあるいは2つの電子吸引性基(−Z1および−Z2)が導入されている。これにより、液晶材料は、全体としてカイラルな(不斉炭素原子をカイラル中心とする)構造を有している。
R1について説明した炭素数(=4〜16)は、炭化水素基およびアルコキシ基の双方に適用される。このように炭素数が4〜16であるのは、炭素数がその範囲内である場合において液晶材料がスメクチックA相を示すからである。この炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基のいずれでもよいと共に、直鎖状または分岐状のいずれでもよい。
R2およびR3について説明したハロゲン基の種類は、特に限定されないが、中でも、フッ素基(−F)、塩素基(−Cl)または臭素基(−Br)であることが好ましい。ハロゲン化アルキル基とは、アルキル基のうちの少なくとも1つの水素がハロゲンにより置換された基であり、そのハロゲンの種類は、ハロゲン基について説明した場合と同様である。アルキル基、アルコキシ基およびハロゲン化アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、できるだけ少ないことが好ましい。液晶材料の駆動特性を確保するためには、液晶分子全体が直線状であることが好ましいからである。それらの具体例としては、メチル基(−CH3 )、メトキシ基(−OCH3 )およびトリフルオロメチル基(−CF3 )などが挙げられる。R2およびR3が結合している炭素原子は不斉炭素原子であるため、R2およびR3は互いに同じ基とはなり得ず、必ず異なる基になる。
R4〜R6について説明した炭素数(=1〜6)は、炭化水素基およびアルコキシ基の双方に適用される。このように炭素数が1〜6であるのは、炭素数がその範囲内である場合において液晶材料がスメクチックA相を示すからである。この炭化水素基は、R1と同様に、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基のいずれでもよいと共に、直鎖状または分岐状のいずれでもよい。なお、R4〜R6は、全て同じ基でも全て異なる基でもよいし、そのうちの任意の2つだけが同じ基でもよい。
X1およびX2は、同じ基でも異なる基でもよい。ただし、「X2はあってもなくてもよい」と説明しているように、Y1とY2とはX2を介さずに直接結合していてもよい。
Y1およびY2は、同じ基でも異なる基でもよい。ただし、「Y1およびY2はそれぞれあってもなくもよい」と説明しているように、Y1だけがあってY2がなくてもよいし、その逆でもよいし、双方がなくてもよい。Y1がない場合には、X1とX2とがY1を介さずに直接結合することになると共に、Y2がない場合には、X2と−C6 H2 (−Z1)(−Z2)−とがY2を介さずに直接結合することになる。
Z1およびZ2について説明したハロゲン基の種類、ならびにハロゲン化アルキル基の定義および炭素数は、R2およびR3について説明した場合と同様である。ただし、「Z1およびZ2のうちの少なくとも一方は水素基以外の基である」と説明しているように、Z1またはZ2のいずれか一方、あるいは双方は、電子吸引性基(ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基、シアノ基、水酸基またはニトロ基)である。
繰り返し単位の数であるnが1〜6であるのは、nがその範囲内である場合において液晶材料がスメクチックA相を示すからである。
Z3〜Z6について説明したハロゲン基の種類、ならびにハロゲン化アルキル基の定義および炭素数は、R2およびR3について説明した場合と同様である。アルキル基、アルコキシ基およびハロゲン化アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基(−C2 H5 )、メトキシ基、エトキシ基(−OC2 H5 )およびトリフルオロメチル基などが挙げられる。なお、Z3〜Z6は、全て同じ基でも全て異なる基でもよいし、そのうちの任意の2つだけまたは3つだけが同じ基でもよい。
中でも、式(1)に示した液晶材料は、式(2)で表されることが好ましい。エレクトロクリニック効果におけるチルト角が大きくなるからである。なお、なお、R7〜R10に関する詳細は、それぞれR1およびR4〜R6と同様である。
式(2)に示した液晶材料の具体例は、式(3−1)〜式(3−4)で表される。エレクトロクリニック効果におけるチルト角が十分に大きくなるからである。この他、式(1)に示した液晶材料の具体例は、式(3−5)〜式(3−24)で表される。
この液晶材料によれば、式(1)に示したように、不斉炭素原子を有するカイラル末端にオルガノシラン構造部を有している。このため、カイラル末端にオルガノシラン構造部を有していない場合および非カイラル末端にシロキサン構造部を有する場合と比較して、チルト角が大幅に大きくなり、そのチルト角は、約30°以上に至る。よって、スメクチックA相のエレクトロクリニック効果におけるチルト角を大きくすることができる。
次に、本発明の液晶材料に関するいくつかの適用例について説明する。
<2.液晶材料を用いた液晶表示素子>
本発明の液晶材料は、例えば、液晶表示素子に適用される。図1は、液晶表示素子の主要部の断面構成を表している。
本発明の液晶材料は、例えば、液晶表示素子に適用される。図1は、液晶表示素子の主要部の断面構成を表している。
ここで説明する液晶表示素子は、液晶材料を用いて光の透過率を制御することにより画像が形成され、その画像が観察者により直接見られることになる直視型の表示素子である。このような液晶表示素子の具体例としては、直視型LCDまたは高温ポリシリコンTFT−LCDなどが挙げられる。
図1に示した液晶表示素子は、例えば、TFTを用いたアクティブマトリクス駆動方式の透過型液晶表示素子であり、一対の基板であるTFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層30を備えている。
TFTアレイ基板10は、支持基板11の一面に画素電極12がマトリクス状に形成されたものである。支持基板11は、例えば、ガラスなどの透過性材料により形成されており、画素電極12は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO:indium tin oxide)などの透過性導電性材料により形成されている。なお、画素電極12には、スイッチング用のTFTを含む画素選択用の駆動回路(図示せず)が接続されている。
対向基板20は、支持基板21の一面に対向電極22が全面形成されたものである。支持基板21は、例えば、ガラスなどの透過性材料により形成されており、対向電極22は、例えば、ITOなどの導電性材料により形成されている。
TFTアレイ基板10および対向基板20は、液晶層30を挟んで画素電極12と対向電極22とが対向するように配置されていると共に、球状または柱状のスペーサ(図示せず)により離間されるようにシール材を用いて貼り合わされている。なお、両基板の液晶層30に接する側には、配向膜(図示せず)が設けられている。
液晶層30は、本発明の液晶材料を含む液晶混合物であり、TFTアレイ基板10と対向基板20との間に封入されている。
この他、液晶表示素子は、例えば、位相差板、偏光板、配向膜およびバックライトユニットなどの他の構成要素(いずれも図示せず)も備えている。なお、バックライトユニットは、例えば、発光ダイオード(LED:light emitting diode)などの光源を含んでいる。
この液晶表示素子では、画素電極12と対向電極22との間に電界が印加されると、その電界強度に応じてエレクトロクリニック効果により液晶分子のチルト角が変化する。これにより、バックライトユニットから発生した光の透過量(透過率)が制御されるため、階調画像が表示される。
この際、例えば、1H(Hは水平走査期間)反転駆動方式あるいは1F(Fはフィールド)反転駆動方式などが用いられる。これらの交流駆動方式では、駆動電圧の高さ(振幅の大きさ)に応じて色レベル(階調)が変化する。この場合には、駆動電圧を大きくすれば、画像のコントラストが向上する。
この液晶表示素子によれば、液晶層30が本発明の液晶材料を含んでいるので、高速かつ十分な光学変調を得ることができる。この場合の透過率は、著しく高くなり、具体的には約75°以上に至る。これにより、動画表示品位、階調性およびコントラストを大幅に向上させることができると共に、駆動電圧を低下させることができる。
<3.液晶材料を用いた液晶光空間変調素子>
また、本発明の液晶材料は、例えば、液晶光空間変調素子に適用される。図2は、液晶光空間変調素子の主要部の断面構成を表している。
また、本発明の液晶材料は、例えば、液晶光空間変調素子に適用される。図2は、液晶光空間変調素子の主要部の断面構成を表している。
ここで説明する液晶光空間変調素子は、光源から発生した光を平面的に分割し、その個々の光束の強度および位相などを変化させるものである。このような液晶光空間変調素子の具体例としては、プロジェクションディスプレイに用いられるマイクロ液晶デバイス(LCoS:liquid crystal on silicon )またはライトバルブ、あるいは光偏光スイッチなどが挙げられる。なお、ライトバルブは、例えば、上記した液晶表示素子とほぼ同様の構成を有している。この場合には、光源から発生した光が赤色、緑色および青色の光に分離され、各色の光が液晶表示素子と同様の構成を有する3つのライトバルブにより変調されたのちに合成されることにより、投射面に像が拡大投影される。
図2に示した液晶光空間変調素子は、例えば、光偏光スイッチであり、一対の基板である透明基板40,50の間に、本発明の液晶材料を含む液晶層70を備えている。透明基板40,50は、液晶層70を挟むように対向配置された電極61,62により離間されており、交流電源などの駆動装置(図示せず)から電極61,62の間に交流電界が印加されるようになっている。
透明基板40,50は、例えば、ガラスなどの透過性材料により形成されていると共に、それぞれの主面同士が平行になるように対向配置されている。透明基板40,50の対向面(互いに対向する側の面)には、例えば、垂直配向剤が塗布されており、電極61,62の間に電界が印加されていない状態では、液晶分子の長軸が主面に対して垂直に配向するようになっている。
この液晶光空間変調素子では、透明基板40に対して光Lが垂直に入射すると、その光Lは、電極61,62の間に印加された電界Eにより、その電界方向と直交する方向に偏光されて透明基板50から出射される。この場合には、E=0であると、光Lは偏光されない。これに対して、E>0であると、光Lは電界方向と直交する方向(+方向)に偏光されると共に、E<0であると、光LはE>0の場合とは逆方向(−方向)に偏光される。このときの偏光量(シフト量)は、電界強度に応じて変化する。
この液晶光空間変調素子によれば、液晶層70が本発明の液晶材料を含んでいるので、高速かつ十分な光学変調を得ることができる。これにより、三次元表示などが可能な高速光空間変調素子を実現できると共に、駆動電圧を低下させることができる。
次に、本発明の実施例について詳細に説明する。
(実験例1)
以下の手順により、式(3−1)に示した液晶材料を合成した。最初に、アルゴン(Ar)置換したフラスコ中に4−ブロモ−2−ニトロフェノールとトリフェニルホスフィンと(S)−5−ヘキセン−2−オールとのトルエン溶液を入れたのち、アゾジカルボン酸ジエチルのトルエン溶液を滴下して室温で終夜攪拌した。続いて、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィーを用いて式(4−1)で表される中間生成物1を得た。
以下の手順により、式(3−1)に示した液晶材料を合成した。最初に、アルゴン(Ar)置換したフラスコ中に4−ブロモ−2−ニトロフェノールとトリフェニルホスフィンと(S)−5−ヘキセン−2−オールとのトルエン溶液を入れたのち、アゾジカルボン酸ジエチルのトルエン溶液を滴下して室温で終夜攪拌した。続いて、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィーを用いて式(4−1)で表される中間生成物1を得た。
続いて、中間生成物1とn−ブチル−ジメチルシランとのテトラヒドロフラン溶液に触媒としてジクロロ(ジシクロペンタジエル)白金(II)を加えたのち、アルゴン雰囲気中で60℃×24時間攪拌した。続いて、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィーを用いて式(4−2)で表される中間生成物2を得た。
続いて、中間生成物2と4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノールとのエチレングリコールジメチルエーテル溶液に触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)と炭酸ナトリウム水溶液とを加えたのち、窒素雰囲気中で24時間環流攪拌した。続いて、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィーを用いて式(4−3)で表される中間生成物3を得た。
続いて、1−(3−(ジメチルアミノ)−プロピル)−3−エチルカルボジイミドメチオジンに中間生成物3とp−ドデシロキシ安息香酸と4−ジメチルアミノピリジンとのジクロロメタン溶液を加えたのち、室温で終夜攪拌した。続いて、攪拌後の溶液を水で洗浄したのち、分液して硫酸マグネシウムで乾燥させた。最後に、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィーを用いて式(3−1)に示した液晶材料を得た。
(実験例2〜4)
n−ブチル−ジメチルシランの代わりにt−ブチル−ジメチルシラン、エチルジメチルシランまたはトリエチルシランを用いたことを除き、実験例1と同様の合成手順を経ることにより、式(3−2)〜式(3−4)に示した液晶材料を得た。
n−ブチル−ジメチルシランの代わりにt−ブチル−ジメチルシラン、エチルジメチルシランまたはトリエチルシランを用いたことを除き、実験例1と同様の合成手順を経ることにより、式(3−2)〜式(3−4)に示した液晶材料を得た。
(実験例5)
(S)−5−ヘキセン−2−オールの代わりに(S)−2−ヘプタールを用いたことを除き、実験例1と同様の合成手順を経ることにより、式(5)で表される液晶材料を得た。
(S)−5−ヘキセン−2−オールの代わりに(S)−2−ヘプタールを用いたことを除き、実験例1と同様の合成手順を経ることにより、式(5)で表される液晶材料を得た。
実験例1〜5の液晶材料について、以下の諸特性を調べた。
ホットステージ、示差走査熱量測定装置および偏光顕微鏡を用いて液晶材料がスメクチックA相を示す温度範囲(℃)およびその温度幅(℃)を調べたところ、表1に示した結果が得られた。この場合には、液晶材料の相転移温度に基づいてスメクチックA相を同定した。
また、液晶材料を用いて評価用セルを作製し、最大チルト角および透過率を調べたところ、表1および図3〜図7に示した結果が得られた。図3〜図7は、それぞれ実験例1〜5におけるチルト角の電圧依存性を表しており、測定温度はそれぞれ34℃、33℃、45℃、26℃および40℃である。
評価用セルを作製する場合には、最初に、2枚のITO付きガラス基板の一面に配向膜(ポリイミド)を形成したのち、バフ材付きのローラを用いてラビングした。続いて、シリカボール(2.4μm径)が分散された紫外線硬化樹脂を用いてセル状となるように2枚のガラス基板を貼り合わせた。最後に、セルの内部に等方相となる温度で液晶材料を注入した。
最大チルト角を調べる場合には、偏光方向が直交する2枚の偏光板の間に評価用セルを配置したのち、矩形波電界を印加しながら透過光量を測定した。この際、正極性電界および負極性電界のそれぞれにおいて光量が最小になる時、光軸間角度(偏光板の光軸と評価用セルの光軸との間の角度)の半分の値となるようにチルト角を算出した。一方、透過率を調べる場合には、偏光顕微鏡の偏光板の光軸に対して無電界印加状態における評価用セルの光軸を一致させたのち、チルト角が最大になる電界を印加した時の透過光量を分光光度計で測定した。この際、偏光方向が平行となるように2枚の偏光板を配置した時に100%となるように透過率を算出した。
実験例1〜4では、実験例5と同様に、液晶材料の実用的な使用温度域(=20℃〜50℃)にほぼ対応する温度範囲においてスメクチックA相を示した。その一方で、実験例1〜4では、実験例5よりも最大チルト角および透過率が大幅に大きくなった。よって、式(1)に示した液晶材料では、スメクチックA相のエレクトロクリニック効果におけるチルト角が大幅に大きくなると共に、それに応じて透過率も大幅に大きくなることが確認された。
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はそれらで説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の液晶材料は、液晶表示素子および液晶光空間変調素子に限らず、他の光学用途に適用されてもよい。
10…TFTアレイ基板、11,21…支持基板、12…画素電極、20…対向基板、22…対向電極、30,70…液晶層、40,50…透明基板、61,62…電極。
Claims (5)
- 式(1)で表されると共にスメクチックA相を示す、液晶材料。
- 一対の基板の間に液晶層を備え、その液晶層は式(1)で表されると共にスメクチックA相を示す液晶材料を含む、液晶表示素子。
- 一対の基板の間に液晶層を備え、その液晶層は式(1)で表されると共にスメクチックA相を示す液晶材料を含む、液晶光空間変調素子。
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